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特許7597565板状物の加工方法、及び、パッケージ基板の加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】板状物の加工方法、及び、パッケージ基板の加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241203BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20241203BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20241203BHJP
【FI】
H01L21/78 P
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B24B41/06 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020207655
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094649
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】木内 逸人
(72)【発明者】
【氏名】金子 智洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌照
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-013452(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139357(WO,A1)
【文献】特開平02-142874(JP,A)
【文献】特開2001-226650(JP,A)
【文献】特開2012-052037(JP,A)
【文献】特開2014-135424(JP,A)
【文献】特開2016-136558(JP,A)
【文献】特開2019-054123(JP,A)
【文献】特開2019-212710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレートと、光重合開始剤と、加熱によって膨張する発泡剤と、を含む液状の紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を用いた板状物の加工方法であって、
表面に凹部が形成される板状物の表面に液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を供給する供給ステップと、
該供給ステップを実施した後、該板状物を真空雰囲気中に配設することで液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を該凹部に充填する充填ステップと、
液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させ板状物の該表面に保護層を形成する硬化ステップと、
該保護層が形成された板状物を切削する切削ステップと、
該切削ステップを実施した後、該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を加熱して板状物から該保護層を剥離する剥離ステップと、を備えた板状物の加工方法。
【請求項2】
該発泡剤は、可塑性樹脂からなる外殻と、該外殻に内包される低沸点炭化水素と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の板状物の加工方法。
【請求項3】
(メタ)アクリレートと、光重合開始剤と、加熱によって膨張する発泡剤と、を含む液状の紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を用いたパッケージ基板の加工方法であって、
該パッケージ基板は、表面に複数の分割予定ラインと、該分割予定ラインを横断する電極と、が形成されるとともに該電極には表面に開口する該分割予定ラインを横断する凹部がそれぞれ形成され、
該パッケージ基板の表面に液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を供給する供給ステップと、
該供給ステップを実施した後、該パッケージ基板を真空雰囲気中に配設することで液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を該凹部に充填する充填ステップと、
該充填ステップを実施した後、液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させる硬化ステップと、
該硬化ステップを実施した後、切削ブレードで該分割予定ラインに沿って該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物とともに該パッケージ基板を切削する切削ステップと、
該切削ステップを実施した後、該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を加熱して該パッケージ基板から該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を除去する除去ステップと、を備えたパッケージ基板の加工方法。
【請求項4】
該発泡剤は、可塑性樹脂からなる外殻と、該外殻に内包される低沸点炭化水素と、を有する、ことを特徴とする請求項3に記載のパッケージ基板の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型の樹脂組成物及び樹脂組成物を利用した加工方法に関するものであり、より詳しくは、熱剥離の機能を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されるように、凹部を備えたパッケージ基板において、凹部に形成されるバリを適切に除去する技術が知られている。
【0003】
特許文献1では、加工対象となるパッケージ基板の表面において、分割予定ラインに交差する凹部(キャビティ)が形成され、パッケージ基板が個々のチップに分割された後に凹部に電極が形成される構成としている。分割加工の際に、凹部の内側面に沿ってバリが形成されるため、このバリを高圧洗浄水で除去することとしている。
【0004】
このように、パッケージ基板の分割加工後にバリを除去することで、パッケージの実装時にバリが落下して実装不良を引き起こすなどの不具合を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-181569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パッケージの小型化に伴い、パッケージ基板に形成される電極のサイズや凹部のサイズも小さくなっており、今後もより小さくなっていくことが想定される。
【0007】
ここで、凹部が小さくなると、隙間が小さくなるため、高圧洗浄水ではバリを除去することがより困難なものとなる。
【0008】
特に、電極の内側に凹部が形成されるパッケージ基板においては、分割加工時において電極部分が切削ブレードで切削された際に、電極の内側の凹部に電極のバリが入り込み、この電極のバリが高圧洗浄水では十分に除去できずに異物として残ってしまうことが懸念される。
【0009】
以上に鑑み、本発明は、凹部を切削ブレードで切削した場合にバリを生じにくくするために、板状物の表面に保護層を形成するのに好適な新規の樹脂組成物や、樹脂組成物を利用した新規な加工方法を提案するものである。
【0010】
また、特に、凹部が形成されるものについては、凹部が小さいと凹部に入り込んだ樹脂組成物が除去できず、異物として残存してしまうことが懸念される。
【0011】
さらに、凹部が形成されるパッケージ基板等の板状物の他、凹部がない板状物についても、樹脂組成物にて保護層を形成した場合には後に保護層が除去されるものであるが、この場合も異物が残存しないようにする必要がある。
【0012】
そこで、本発明は、保護層を形成した後に除去されやすい樹脂組成物や、樹脂組成物を利用した新規な加工方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
本発明の一態様によれば、
液状の紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物であって、
(メタ)アクリレートと、
光重合開始剤と、
加熱によって膨張する発泡剤と、を含む液状の紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物とする。
【0015】
また、本発明の一態様によれば、
該発泡剤は、可塑性樹脂からなる外殻と、該外殻に内包される低沸点炭化水素と、を有する、こととする。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、
液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を用いた板状物の加工方法であって、
板状物の表面に液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を供給する供給ステップと、
液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させ板状物の該表面に保護層を形成する硬化ステップと、
該保護層が形成された板状物を切削する切削ステップと、
該切削ステップを実施した後、該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を加熱して板状物から該保護層を剥離する剥離ステップと、を備えた板状物の加工方法とする。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、
液状の紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を用いたパッケージ基板の加工方法であって、
該パッケージ基板は、表面に複数の分割予定ラインと、該分割予定ラインを横断する電極と、が形成されるとともに該電極には表面に開口する該分割予定ラインを横断する凹部がそれぞれ形成され、
該パッケージ基板の表面に液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を供給する供給ステップと、
該供給ステップを実施した後、該パッケージ基板を真空雰囲気中に配設することで液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を該凹部に充填する充填ステップと、
該充填ステップを実施した後、液状の該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させる硬化ステップと、
該硬化ステップを実施した後、切削ブレードで該分割予定ラインに沿って該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物とともに該パッケージ基板を切削する切削ステップと、
該切削ステップを実施した後、該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を加熱して該パッケージ基板から該紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物を除去する除去ステップと、を備えたパッケージ基板の加工方法とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、液状の樹脂組成物を用いることにより、表面に凹部が形成される板状物について、凹部への充填がされやすいものとなり、また、凹部に充填された状態で紫外線の照射によって樹脂組成物を硬化させることで、凹部を樹脂組成物で埋めることができる。これにより、凹部の周囲の電極部分を切削することで生じたバリが凹部の空間に伸長してしまうことを防止できる。さらに、発泡剤を含むことで加工後の加熱により樹脂組成物を膨張させることができ、樹脂組成物が凹部や表面から剥離しやすいものとすることができる。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、凹部の有無に関わらず板状物の表面に保護層を形成するための樹脂組成物として用いることができ、剥離しやすい保護層を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】被加工物となる板状物の一例としてのパッケージ基板を示す図。
図2】(A)は樹脂組成物の供給について説明する図。(B)は樹脂組成物が供給されたパッケージ基板の表面の状態について説明する図。
図3】本発明にかかる加工方法の一実施形態の手順を示すフローチャート。
図4】充填ステップについて説明する図。
図5】硬化ステップについて説明する図。
図6】切削ステップについて説明する図。
図7】樹脂組成物により覆われたパッケージ基板に形成される切削溝について説明する図。
図8】除去ステップについて説明する図。
【0021】
図1は、被加工物となる板状物の一例としてのパッケージ基板1を示すものである。
【0022】
パッケージ基板1は、基板11の表面11aの第1の方向F1に延びる複数の第1の分割予定ライン21と、第1の分割予定ライン21と直交する第2の方向F2に延びる第2の分割予定ライン22と、が格子状に設定される。
【0023】
第1の分割予定ライン21と第2の分割予定ライン22によって区画される実装領域15の基板11の裏面11bには、図示しない半導体デバイスチップが実装され、合成樹脂16で封止されている。
【0024】
基板11の表面11a側において、各実装領域15の間には各分割予定ライン21,22が設定され、分割予定ライン21,22を横断するように電極30が配置される。
【0025】
各電極30には、各電極30の長さ方向に長い溝状の凹部32がそれぞれ形成されており、分割予定ライン21,22に沿って切削加工がされると、各電極30と各凹部32が二分割される。
【0026】
本発明では、図2(A)(B)に示すように、各電極30の各凹部32に樹脂組成物5を充填して空間を埋めることで、電極30の切削時に空間に向けてバリが伸長してしまうことを防ぐこととする。なお、電極30以外の箇所に凹部が形成される板状物についても、本発明は適用することができる。
【0027】
図2(A)(B)に示すように、樹脂組成物5は、液状の紫外線硬化型熱剥離樹脂組成物であって、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤と、加熱によって膨張する発泡剤と、を含んで構成される。
【0028】
各成分の配合比率については、特に限定されるものではないが、加熱によって膨張する発泡剤については、例えば、(メタ)アクリレートの全量に対して5重量%以上45重量%以下とすることができる。発泡剤が少な過ぎると後述する剥離性が悪くなり、逆に、発泡剤が多すぎると硬化不良が生じることや、粘土が高くなり過ぎて均一な塗布や凹部に充填がされ難くなる。
【0029】
(メタ)アクリレートとは、アクリル酸化合物であるアクリレート、又はメタクリル酸化合物であるメタクリレートを示し、(メタ)アクリレートは、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、又は、ウレタン結合を有さない(メタ)アクリレート、のいずれか、もしくは混合からなる、こととする。
【0030】
ウレタン結合(ウレタン基)を有する(メタ)アクリレートは、分子内にウレタン基を有するものをいう。例としては、ライトアクリレートIAA、AT-600、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、UF-8001G、DAUA-167、UF-07DF(いずれも共栄社化学株式会社製)、R-1235、R-1220、RST-201、RST-402、R-1301、R-1304、R-1214、R- 1302XT、GX-8801A、R-1603、R-1150D、DOCR-102、DOCR-206(いずれも第一工業製薬株式会社製)、UX-3204、UX-4101、UXT-6100、UX-6101、UX-7101、UX-8101、UX-0937、UXF-4001-M35、UXF-4002、DPHA-40H、UX-5000、UX-5102D-M20、UX-5103D、UX-5005、UX-3204、UX-4101、UX-6101、UX-7101、UX-8101、UX-0937、UXF-4001-M35、UXF-4002、UXT-6100、DPHA-40H、UX-5000、UX-5102D-M20、UX-5103、UX-5005(いずれも日本化薬株式会社製)、等である。
【0031】
ウレタン結合を有しない(メタ)アクリレートは、分子内に(ウレタン基)を有しないものをいう。例としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、等である。
【0032】
光重合開始剤は、樹脂組成物の光(紫外線)重合を開始させるためのものをいう。例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、BASF社製のIrgacure(登録商標)184等)、α-ヒドロキシアルキルフェノン(例えば、IGM Resins B.V.社製のOmnirad(登録商標)184等)、等である。
【0033】
加熱によって膨張する発泡剤は、可塑性樹脂からなる外殻と、該外殻に内包される低沸点炭化水素と、を有するもので構成される。例えば、クレハマイクロスフェアー(登録商標)(株式会社クレハ社製)、アドバンセル(登録商標)EM(積水化学工業株式会社製)、等である。
【0034】
次に、本発明にかかる板状物の加工方法の実施例について説明する。図3は、加工方法の一実施形態の手順を示すフローチャートである。以下順に各ステップについて説明する。
【0035】
<供給ステップ>
図2(A)(B)に示すように、パッケージ基板1の基板11の表面11aに液状の樹脂組成物5を供給するステップである。
【0036】
図2(A)のように、供給ノズル6から液状の樹脂組成物5を基板11の表面11aに滴下し、表面11aの全体に樹脂組成物5が行き渡るようにする。滴下後に図示せぬ塗布装置により、樹脂組成物5を広げるようにして表面11aの全体に塗布することとしてもよい。また、全体ではなく凹部の箇所にのみ供給し、凹部が樹脂組成物を埋めるようにしてもよい。
【0037】
<充填ステップ>
供給ステップを実施した後、図4に示すように、パッケージ基板1を真空雰囲気中に配設することで液状の樹脂組成物5を凹部32(図2(B))に充填するステップである。
【0038】
図4の例では、バルブ9aを介して真空源9bに接続される真空チャンバー8内にパッケージ基板1をセットし、所定時間真空引きすることで、真空チャンバー8内を真空雰囲気にする。この際に、図2(B)に示すように、凹部32に残存していた気体が抜き出されるとともに、凹部32内へと樹脂組成物5が隙間なく充填される。
【0039】
<硬化ステップ>
充填ステップを実施した後、図5に示すように、液状の樹脂組成物5に紫外線を照射して硬化させるステップである。
【0040】
図5の例では、紫外線ランプ等で構成される光源14より紫外線をパッケージ基板1の表面側に所定時間照射し、樹脂組成物5を硬化させる。樹脂組成物5が硬化することで、パッケージ基板1の表面側には、保護層50が形成される。保護層50の厚みは、例えば200μm程度とし、切削ステップにおいて剥離しない十分な厚みに設定することが好ましい。
【0041】
<切削ステップ>
硬化ステップを実施した後、図6に示すように、切削ブレード60で分割予定ライン21,22(図1)に沿って樹脂組成物5(保護層50)とともにパッケージ基板を切削するステップである。
【0042】
図6の例では、保持テーブル62の上に切削用治具64が設置され、切削用治具64にパッケージ基板1が吸引保持されるようにしている。切削用治具64には、パッケージ基板1の分割予定ライン21,22(図1)に沿って逃げ溝64aが形成されており、パッケージ基板1に切削ブレード60が切り込んだ際には、逃げ溝64aに切削ブレード60が入り込むようになっている。
【0043】
保持テーブル62は、バルブ62aを介して吸引源62bに接続され、切削用治具64の保持面に負圧を生じさせることで、パッケージ基板1が吸引保持される。
【0044】
切削の際には、切削ブレード60を所定の切込み高さに位置づけるとともに高速回転させた状態とし、図示しないノズルから切削ブレード60とパッケージ基板1とに切削水を供給しつつ保持テーブル62を加工送り方向に移動させることで、第1の方向F1に伸びる分割予定ライン21に沿って切削加工を行う。次いで、保持テーブル62を90度回転させて、第2の方向F2に伸びる分割予定ライン22(図1)に沿って切削加工を行うことで、パッケージ基板1が複数のチップ1C(図8)に分割される。
【0045】
図6に示すように、切削ブレード60により樹脂組成物5とともにパッケージ基板1が切削されることで、図7に示すように、分割予定ライン21に沿って切削溝25が形成される。この切削の際には、凹部32に隙間なく充填された樹脂組成物5が硬化されているため、凹部32に存在していた空間に向けてバリが伸長してしまうことを防ぐことができる。
【0046】
<除去ステップ>
切削ステップを実施した後、図8に示すように、樹脂組成物5を加熱してパッケージ基板1から樹脂組成物5を除去するステップである。
【0047】
図8の例では、ヒーター80の下方にパッケージ基板1をセットし、ヒーター80によりパッケージ基板1の表面に形成された樹脂組成物5を所定時間加熱する。樹脂組成物5の温度が上昇すると、樹脂組成物5に含まれる発泡剤が膨張する。即ち、発泡剤の可塑性樹脂からなる外殻が軟化するとともに、内包される低沸点炭化水素が気体に変化することで発泡した状態となり、樹脂組成物5が全体として膨張し、凹部32の内壁面や各チップ1Cの表面から剥離しやすい状況となり、高い剥離性が実現できる。なお、ヒーター80を用いて加熱するほか、ランプ、オーブン、ホットプレートなどの他の加熱手段による加熱を行うこととしてもよい。
【0048】
図8では、樹脂組成物5が全体として膨張して反り上がった状態を示しており、この状態となった樹脂組成物5を図示せぬ洗浄装置により洗浄液で洗い流すことによって容易に除去することができる。また、図8の拡大部分では、樹脂組成物5が膨張して凹部32内で膨らんで内壁面を押圧するとともに、その膨らみが抑えらず上側に盛り上がり、さらに、樹脂組成物5が全体として反り上がることで、凹部32の内壁面の間に隙間が生じ、剥離しやすくなるイメージが示される。なお、樹脂組成物5は洗浄によって洗い流すほか、エアブローによって除去することとしてもよい。
【0049】
以上のようにして本発明の液状の樹脂組成物5を用いることにより、図2(A)(B)に示すように表面に凹部32が形成されるパッケージ基板1等の板状物について、凹部32への充填がされやすいものとなり、また、凹部32に充填された状態で紫外線の照射によって樹脂組成物5を硬化させることで、凹部32を樹脂組成物5で埋めることができる。これにより、凹部32の周囲の電極30を接触することで生じたバリが凹部32の空間に伸長してしまうことを防止できる。さらに、図8に示すように発泡剤を含むことで加工後の加熱により樹脂組成物5を膨張させることができ、樹脂組成物5が凹部32や表面11aから剥離しやすいものとすることができる。
【0050】
また、以上の実施例では、パッケージ基板1を例として説明したが、凹部の有無に限らず、板状物の表面に樹脂組成物を供給して保護層を形成することによれば、必要な加工後において、容易に保護層を剥離して除去することができ、樹脂組成物が異物として残留することを防ぐことができる。この保護層は、例えば、半導体ウェーハの表面に形成されるデバイスの保護を目的として形成されるものである。
【0051】
この場合の加工方法としては、板状物の表面に液状の樹脂組成物を供給する供給ステップと、液状の樹脂組成物に紫外線を照射して硬化させ板状物の表面に保護層を形成する硬化ステップと、保護層が形成された板状物を切削する切削ステップと、切削ステップを実施した後、樹脂組成物を加熱して板状物から保護層を剥離する剥離ステップと、を備えた加工方法とするものであり、この場合、上述した真空引きによる充填ステップは省略されるものとする。
【0052】
1 パッケージ基板
1C チップ
5 樹脂組成物
6 供給ノズル
8 真空チャンバー
9a バルブ
9b 真空源
11 基板
11a 表面
11b 裏面
14 光源
15 実装領域
16 合成樹脂
21 分割予定ライン
22 分割予定ライン
25 切削溝
30 電極
32 凹部
50 保護層
60 切削ブレード
62 保持テーブル
64 切削用治具
80 ヒーター
F1 方向
F2 方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8