(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】フィルム用ポリエチレン
(51)【国際特許分類】
C08F 10/02 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
C08F10/02
(21)【出願番号】P 2021060391
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞見 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】なら木 健介
(72)【発明者】
【氏名】平口 侑香里
(72)【発明者】
【氏名】我妻 祐樹
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-504329(JP,A)
【文献】特公昭46-014258(JP,B1)
【文献】特公昭36-013646(JP,B1)
【文献】特開昭55-086803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価されるポリエチレンの積分分布曲線において、Log
10Mが5.25を超える成分の重量分率(W
Log10M>5.25:単位は重量%)と(Mは、ポリエチレン換算分子量を示す)、
下記(式1)で示される光散乱面積比(R
LS)との比(W
Log10M>5.25/R
LS)が、5.7以上6.7以下である、ポリエチレン。
R
LS=LS/LS’(式1)
(式中、LSは、前記ポリエチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。
LS’は、
光散乱(LS)法による重量平均分子量が9.64×10
4
であり、GPC法による重量平均分子量が9.89×10
4
である標準ポリスチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。)
【請求項2】
W
Log10M>5.25/R
LSが5.8以上6.6以下である、請求項1に記載のポリエチレン。
【請求項3】
前記ポリエチレンが高圧法低密度ポリエチレンである、請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【請求項4】
前記ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)が2~6g/10分であ
り、MFRは、JIS K7210-1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法で測定したメルトフローレートである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のポリエチレン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム用ポリエチレンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは、加工されて、重袋、シュリンク、一般包装、薄物フィルム、プロテクトフィルム、押出ラミネートフィルム、押出成形フィルム、発泡成形フィルムなどの、多種多様なフィルムとして利用される。その中でも、特に高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレン(LDPE)は、加工されて、押出ラミネートフィルムやプロテクトフィルム(保護フィルム)としての用途がある。プロテクトフィルムは、光学材料や金属板にラミネートされ(貼り付けられ)、光学材料や金属板を保護するものである。例えば、基板の回路形成に使用されるフィルム状のエッチングレジスト(ドライフィルムレジスト(Dry film resist:DFR))を保護するためのプロテクトフィルムとして利用される。このようなフィルムを製造する上で、ポリエチレンの薄膜化と取扱い易さの良好なバランスが求められる。
【0003】
特許文献1には、高圧ラジカル重合法により得られるポリエチレンからなるDFR用プロテクトフィルム、及び、フィルム中に存在するフィッシュアイの存在密度が特定範囲にあるポリエチレンフィルムからなるDFR用プロテクトフィルムが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、薄膜化と取扱い易さを更に改良したポリエチレンを提供する点に存するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、このような背景に鑑みて鋭意検討をしたところ、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記のものである。
[1]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価されるポリエチレンの積分分布曲線において、Log10Mが5.25を超える成分の重量分率(WLog10M>5.25:単位は重量%)と(Mは、ポリエチレン換算分子量を示す)、
下記(式1)で示される光散乱面積比(RLS)との比(WLog10M>5.25/RLS)が、5.7以上6.7以下である、ポリエチレン。
RLS=LS/LS’(式1)
(式中、LSは、前記ポリエチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。
LS’は、数平均分子量1000の標準ポリスチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。)
【0007】
以下、[2]から[4]は、それぞれ本発明の好ましい態様又は実施形態である。
[2]
WLog10M>5.25/RLSが5.8以上6.6以下である、[1]に記載のポリエチレン。
[3]
前記ポリエチレンが高圧法低密度ポリエチレンである、[1]または[2]のいずれかに記載のポリエチレン。
[4]
前記ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)が2~6g/10分である、[1]から[3]のいずれかに記載のポリエチレン。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄膜化と取扱い易さを更に改良したポリエチレンを提供することができる。本発明の特徴は、ポリエチレンの中~高分子量成分量と超高分子量成分量の割合が、延伸性とヘイズのバランスに関係することを見出し、延伸性とヘイズのバランスを更に改良し、薄膜化と取扱い易さを更に改良したポリエチレンを提供することである。薄膜化は、ポリエチレンの延伸性として評価することができ、取扱い易さは、フィルム表面の凹凸、例えば、フィルムのヘイズとして評価することができる。本発明のポリエチレンを製造するための方法及び装置においては、反応器内部の圧力および反応器内部の反応ゾーンにおける温度差を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のポリエチレンの製造フローの一実施形態の概略プロセス図を示す。
【
図2】
図2は、本発明のポリエチレンの製造フローの一実施形態の概略プロセス図を示す。
【
図3】
図3は、本発明のポリエチレンの製造フローの一実施形態の概略プロセス図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施例及び比較例で製造されたポリエチレンフィルムのヘイズと溶融延伸性(最低厚み)との間の関係を示す。
【
図5】
図5は、実施例1及び比較例1で製造されたポリエチレンの高分子量成分の重量分率を算出するためのGPCクロマトグラム(GPC積分分布曲線)を示す。
【
図6】
図6は、実施例1及び比較例1で製造されたポリエチレンの光散乱面積を測定するためのLS(光散乱検出器)クロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ポリエチレン>
本発明のポリエチレンは、下記のものである:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価されるポリエチレンの積分分布曲線において、Log10Mが5.25を超える成分の重量分率(WLog10M>5.25:単位は重量%)と(Mは、ポリエチレン換算分子量を示す)、
下記(式1)で示される光散乱面積比(RLS)との比(WLog10M>5.25/RLS)が、5.7以上6.7以下である、ポリエチレン。
RLS=LS/LS’(式1)
(式中、LSは、前記ポリエチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。
LS’は、数平均分子量1000の標準ポリスチレン40mgをオルトジクロロベンゼン20mLに溶解させた溶液の光散乱面積を示す。)
本発明の好ましい態様又は実施形態では、WLog10M>5.25/RLSが5.8以上6.6以下である。
本発明のポリエチレンの、Log10Mが5.25を超える成分の重量分率(WLog10M>5.25:単位は重量%)及び光散乱面積比(RLS)は、下記に記載する方法に従って測定した。
【0011】
本発明のポリエチレンは、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどの種々のポリエチレンであることができるが、低密度ポリエチレンが好ましく、高圧法低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0012】
本発明のポリエチレンのメルトフローレート(MFR、単位:g/10分)は、特に限定されないが、JIS K7210-1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法で測定したメルトフローレートは、0.3~30(g/10分)が好ましく、1~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。MFRが低い場合、薄膜化が困難になる可能性があり、MFRが高い場合、安定したフィルム成形が困難になる可能性がある。
【0013】
本発明のポリエチレンの密度(単位:kg/m3)は、特に限定されないが、910~930kg/m3が好ましく、918~930kg/m3がより好ましく、920~928kg/m3が更に好ましい。密度が910kg/m3未満ではフィルムの剛性が低下する可能性があり、作業性が悪くなりすぎる可能性がある。930kg/m3を超える場合にはフィルムの柔軟性が低下する可能性があり、プロテクトフィルムとして使用した場合にフィルムの密着性に問題が生じる可能性がある。
【0014】
本発明のポリエチレンの用途は、重袋、シュリンク、一般包装、薄物フィルム、プロテクトフィルム(保護フィルム)、押出ラミネートフィルム、押出成形フィルム、発泡成形フィルムなどの、多種多様なフィルムである。その中でも、好ましい用途は、押出ラミネートフィルムやプロテクトフィルムであり、特に好ましい用途は、プロテクトフィルムである。
【0015】
本発明のポリエチレンからフィルム(プロテクトフィルムなど)を製造するためのフィルム成形方法としては、公知のフィルム成形方法を採用することができる。たとえば、フィルム成形に当たっては、インフレーション法(空冷法、水冷法)、Tダイ法等何れのフィルム成形方法によることも可能で、場合により一軸延伸、二軸延伸処理等の延伸処理を加えることもできる。フィルム成形における成形温度、引取り速度に特に制限はないが、一般には成形温度130~230℃、引取り速度5~150m/min程度が好適である。フィルム厚みは適宜に選択されるが、フィルム(プロテクトフィルムなど)としては一般的には5~100μm程度が好ましく、さらに好ましくは10~60μmの厚みである。さらにより好ましくは12~25μmの厚みである。なお、本発明のポリエチレンには、本発明の効果を発揮する範囲で、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のポリオレフィン系樹脂をブレンドしてもよい。また、必要に応じて通常ポリオレフィンで使用される添加剤、具体的には酸化防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。なお、重合反応系にラジカル重合禁止剤を共存させてポリエチレンを製造する場合、反応系内に存在させたラジカル重合禁止剤は一定量が製品中に残存する。この残存ラジカル重合禁止剤が酸化防止能をも有し、かつその濃度が十分な場合などには、製品ポリエチレン中には特に酸化防止剤を加えないとすることもできる。
【0016】
<ポリエチレンの製造方法>
本発明のポリエチレンを製造するための方法は、特に限定されず、例えば、下記のものである:
下記要件を有するポリエチレンの製造方法:
・高圧エチレンを、重合開始剤の存在下に、槽型反応器を用いて重合する、ポリエチレンの製造方法;
・槽型反応器内に、少なくとも2つの異なる温度領域を有する反応ゾーンが存在する;
・槽型反応器内の当該反応ゾーンの上流部に位置する温度領域に重合開始剤及びエチレンが供給され、エチレンが重合されてポリエチレンが生成する;
・槽型反応器内の当該上流部の温度領域で生成したポリエチレン及び未反応エチレンが、当該反応器内の当該反応ゾーン内で当該上流部に連通する下流部に位置する温度領域に流動され、かかる下流部の温度領域でポリエチレンが更に生成する;
・重合開始剤が供給される槽型反応器内の当該反応ゾーンの上流部に位置する温度領域の温度(T1[℃])と、下流部に位置する温度領域の温度(T2[℃])との差(ΔT[℃])が、2.1℃以上8.4℃以下である。
【0017】
当該製造方法で使用されるエチレンの圧力は、例えば100~280MPa、好ましくは100~250MPaであることができる。更に好ましくは156~174MPaである。好ましい範囲を下回ると光散乱面積およびLog10Mが5.25を超える成分の重量分率が大きくなり、ヘイズが高くなり溶融延伸性が低下する。また、好ましい範囲を上回ると光散乱面積およびLog10Mが5.25を超える成分の重量分率が小さくなり、ヘイズが低くなり溶融延伸性が向上する。
【0018】
当該製造方法で使用される重合開始剤は、特に限定されず、例えば、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルへキシルペルオキシジカーボネート、第三ブチルペルオキシビバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、第三ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)、第三ブチルペルオキシイソブチレート、第三ブチルペルオキシラウレート、第三ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、第三ブチルペルオキシアセテート、第三ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、第三ブチルハイドロペルオキシド、シ第三ブチルペルオキシドなどを挙げることができる。
【0019】
当該製造方法で使用される反応器は槽型反応器である。使用される反応器の数は、特に限定されず、例えば、2つの反応器、3つの反応器あるいは4つ以上の反応器を使用することもできる。2つの反応器が使用される場合には、当該2つの反応器は、それぞれ、前段の反応器及び後段の反応器と呼ぶこともある。
【0020】
当該製造方法で使用される反応器内に、少なくとも2つの異なる温度領域を有する反応ゾーンが存在することができる。反応ゾーンは、3つの異なる温度領域、4つの異なる温度領域、あるいは、5つ以上の異なる温度領域を有しても良い。反応器内に、2つの反応ゾーン、3つの反応ゾーンあるいは4つ以上の反応ゾーンなどの、2つ以上の反応ゾーンが存在しても良い。反応ゾーンは、反応帯と呼ぶこともある。
【0021】
反応器内の当該反応ゾーンの上流部に位置する温度領域に重合開始剤及びエチレンが供給され、エチレンが重合されてポリエチレンが生成することができる。反応器内の当該上流部の温度領域で生成したポリエチレン及び未反応エチレンが、当該反応器内の当該反応ゾーン内で当該上流部に連通する下流部に位置する温度領域に流動され、かかる下流部の温度領域でポリエチレンが更に生成することができる。反応器が縦型反応器(例えば、槽型反応器)の場合には、上流部及び下流部は、それぞれ、上部及び下部と呼ぶこともある。
【0022】
重合開始剤が供給される反応器内の当該反応ゾーンの上流部に位置する温度領域の温度(T1[℃])と、下流部に位置する温度領域の温度(T2[℃])との差(ΔT[℃])が、2.1℃以上8.4℃以下であることができる。好ましくは、ΔT[℃]が、2.2℃以上8.0℃以下である。好ましくは、ΔT[℃]=T2[℃]―T1[℃]である、
ΔT[℃]が8.4以上もしくは2.1以下になると、Log10Mが5.25を超える成分の重量分率が大きくなり、溶融延伸性が低下する。
【0023】
<ポリエチレンの製造装置>
本発明のポリエチレンを製造するための装置は、上記で説明した本発明のポリエチレンを製造するための方法と同様の特徴を有する。
【0024】
<製造方法及び製造装置の具体例>
本発明のポリエチレンを製造するための方法及び装置のための反応装置及び反応条件等は、特に限定されないが、例えば、下記のような反応装置及び反応条件等を有する製造法を挙げることができる。
高温高圧下でエチレンを2個またはそれ以上の槽型反応器を熱交換器を含む配管によって直列に連結された複合反応器を用い、前段の槽型反応器から排出された反応混合物を熱交換器によって冷却し、冷却された反応混合物を再び後段の槽型反応器に導入して重合させる方法において、原料エチレンの大部分を下部反応帯と下部反応帯を有する前段の槽型反応器の上部反応帯に注入し、残余の原料エチレンは上部反応帯と下部反応帯を有する後段の槽型反応器の上部反応帯に注入し、前記前段の槽型反応器の上部反応帯に注入された原料エチレンは、重合開始剤の存在下、100~280MPaの圧力、130~200℃の温度で重合させ、かくして得られた反応混合物を該前段の槽型反応器の下部反応帯に導き、重合開始剤の存在下、220~280℃の温度で重合させ、該前段の槽型反応器の末端から排出された反応混合物を、前段の槽型反応器と後段の槽型反応器との間に設置された熱交換器によって120℃以上であるが、該前段の槽型反応器の下部反応帯における反応温度より20℃以上低い温度に冷却した後、前記後段の槽型反応器に注入し、該後段の槽型反応器の上部反応帯では重合開始剤の存在下、100~280MPaの圧力、130~200℃の温度で重合させ、かくして得られた反応混合物を該後段の槽型反応器の下部反応帯に導き、重合開始剤の存在下、220~280℃の温度で重合させるポリエチレンの製造法。
【0025】
ポリエチレンの製造方法の実施に際して、例えば、前段および/あるいは後段の槽型反応器の上部反応帯に注入する原料エチレンおよび重合開始剤の注入点の個数を、反応器の長さ方向に沿ってそれぞれ2個以上にすることができる。なお、重合開始剤は原料エチレンと同じ注入点から注入してもよいが、原料エチレンと異なる注入点から注入してもよい。上部反応帯に注入する前記原料エチレンおよび重合開始剤の注入点の位置の組み合せは種々考えられるが、最適な位置の組み合せは、当業者が適宜決定することができる。
【0026】
原料エチレンの大部分は、例えば、前段の槽型反応器の上部反応帯に注入されることもできるが、原料エチレンの大部分とは全原料エチレンの60%以上を意味する。
【0027】
エチレンの反応圧力は、例えば100~280MPa、好ましくは100~250MPaであることができる。反応圧力については、例えば、前段の槽型反応器での反応圧力から後段の槽型反応器へ通ずる配管での圧力損失分を差引いた値が後段の槽型反応器における圧力の最大値となるが、その範囲内で前段の槽型反応器出口にある圧力調節弁によって任意に調節できる。
【0028】
反応温度は、例えば、前段、後段の槽型反応器における上部反応帯では例えば130~250℃、好ましくは140~250℃であることができ、下部反応帯では例えば200~280℃、好ましくは200~270℃であることができる。例えば、上部反応帯における反応温度は前段あるいは後段の槽型反応器とで異なっていてもよい。下部反応帯についても同様である。
【0029】
例えば、前段および後段の槽型反応器における上部反応帯に使用される重合開始剤は、10時間に半減期を得るための分解温度が40~80℃である重合開始剤が好ましく、具体的にはジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルへキシルペルオキシジカーボネート、第三ブチルペルオキシビバレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、第三ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)、第三ブチルペルオキシイソブチレートなどがあげられる。
例えば、該前段および後段の上部反応帯においてエチレンの重合に用いられる重合開始剤の使用量は、エチレン1000000重量部に付して50~1000重量部であることもできる。
例えば、前段および後段の槽型反応器における下部反応帯に使用される重合開始剤は、10時間の半減期を得るための分解温度が70~140℃である重合開始剤が好ましく、具体的には第三ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)、第三ブチルペルオキシインブチレート、第三ブチルペルオキシラウレート、第三ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、第三ブチルペルオキシアセテート、第三ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、第三ブチルハイドロペルオキシド、シ第三ブチルペルオキシドなどがあげられる。
例えば、該前段および後段の下部反応帯において、エチレンの重合に用いられる重合開始剤の使用量は、エチレン1000000重量部に対して5~500重量部であることもできる。
例えば、重合開始剤は、第1、第2槽型反応器の1部反応帯あるいは下部反応帯において、1種又は2種以上の混合物を使用できる。
【0030】
原料エチレンガス中には、エチレンに対して、例えば0.1~10モル%の連鎖移動剤を含むことができる。
連鎖移動剤としては、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンのようなパラフィン類、フロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、3-メチルペンテン-1のようなα-オレフイシ類、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドのようなアルデヒド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素などの1種又は2種以上の混合物が使用できる。
【0031】
<
図1、
図2及び
図3での実施(ポリエチレンの製造)における具体例>
図1での実施(実施例1~3)、
図2での実施(実施例4及び5)及び
図3での実施において、例えば、下記の各条件を採用することができる。
図1での実施において:
二次圧縮機の吐出圧力(配管9)は、例えば100~300MPa、好ましくは150~250MPaであることができ;
原料エチレン総供給量(原料エチレンのガスレート)(配管9)は、例えば5~30ton/時間、好ましくは10~20ton/時間であることができ;
槽型反応器20上部の原料エチレン供給量(配管10)は、例えば1~15ton/時間、好ましくは3~10ton/時間であることができ;
槽型反応器20下部の原料エチレン供給量(配管11)は、例えば1~20ton/時間、好ましくは5~10ton/時間であることができ;。
槽型反応器21上部の原料エチレン供給量(配管12)は、例えば1~15ton/時間、好ましくは3~10ton/時間であることができ;
槽型反応器20上部の重合開始剤供給量(配管13)は、例えば1~10kg/時間、好ましくは2~8kg/時間であることができ;
槽型反応器20下部の重合開始剤供給量(配管14)は、例えば1~10kg/時間、好ましくは2~8kg/時間であることができ;
槽型反応器21上部の重合開始剤供給量(配管15)は、例えば1~10kg/時間、好ましくは1~8kg/時間であることができ;
槽型反応器21下部の重合開始剤供給量(配管16)は、例えば0~10kg/時間、好ましくは0~8kg/時間であることができる。
【0032】
図2での実施において:
二次圧縮機の吐出圧力(配管5)は、例えば100~300MPa、好ましくは150~250MPaであることができ;
原料エチレン総供給量(原料エチレンのガスレート)(配管5)は、例えば5~30ton/時間、好ましくは10~20ton/時間であることができ;
槽型反応器11上部の原料エチレン供給量(配管6)は、例えば1~15ton/時間、好ましくは3~10ton/時間であることができ;
槽型反応器11下部の原料エチレン供給量(配管7)は、例えば1~20ton/時間、好ましくは5~10ton/時間であることができ;
槽型反応器11上部の重合開始剤供給量(配管8)は、例えば1~10kg/時間、好ましくは2~8kg/時間であることができ;
槽型反応器11下部の重合開始剤供給量(配管9)は、例えば1~10kg/時間、好ましくは1~8kg/時間であることができる。
【0033】
図3での実施において:
二次圧縮機の吐出圧力(例えば100~300MPa、好ましくは150~250MPa、より好ましくは160~220MPa)の範囲で圧縮された原料エチレン総供給量(例えば5~30ton/時間、好ましくは10~20ton/時間、より好ましくは14.0~18.0ton/時間)の原料エチレンは配管3から槽型反応器6の温度領域1に供給されることができ;
槽型反応器6の圧力は155~215MPaであることができ;
槽型反応器6の内部には、温度領域が2つ存在し、上部から温度領域1及び2が存在し、それぞれの温度領域に温度計が挿入されていることができ;
槽型反応器6の温度領域1には配管4から重合開始剤(例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)が例えば1~10kg/時間、好ましくは1~8kg/時間、より好ましくは3.0~6.0kg/時間で供給されることができ;
槽型反応器6の温度領域1に配管3から供給される原料エチレンと配管4から供給される重合開始剤(例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)とによってエチレンが重合されてポリエチレンが生成する。温度領域1で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域2へ送られ、エチレンが継続して重合されポリエチレンが生成する;
槽型反応器6の温度領域2で生成したポリエチレンと未反応エチレンは、槽型反応6の底部から排出され圧力調整弁5を通って熱交換器および分離器に導入され、分離器で生成ポリエチレンと未反応エチレンに分離され、生成ポリエチレンが得られる。
【0034】
<ポリエチレンの物性の測定方法>
下記の実施例および比較例で製造されたポリエチレンの物性は、次の方法に従って測定した。
【0035】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210-1995に規定された方法において、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法によりメルトフローレートを測定した。
【0036】
(2)密度(単位:kg/m3)
JIS K6922-2に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112に規定された方法に従い、A法により測定した。
【0037】
(3)Log
10Mが5.25を超える成分の重量分率(W
Log10M>5.25、単位:重量%)(Mは、ポリエチレン換算分子量を示す)
ポリエチレンの分子量分布および各種ポリエチレン換算分子量(数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により求められる。GPC測定は下記の条件で行う。ISO16014-1の記載に基づき、クロマトグラム上のベースラインを規定してピークを指定する。Log
10Mが5.25を超える成分の重量分率(W
Log10M>5.25[重量%])(Mは、ポリエチレン換算分子量を示す)は積分分布から算出する(
図5を参照)。W
Log10M>5.25[重量%]=(Log
10M>5.25の部分の積分分布曲線の積分値)/(積分分布曲線全体の積分値)。
(GPC装置およびソフトウェア)
装置:HLC-8321GPC/HT(東ソー株式会社製)
(測定条件)
GPCカラム:TSKgel GMHHR-H(S)HT 7.8mm I.D.×300mm(東ソー株式会社製) 3本
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社製、特級)にジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.1w/Vすなわち0.1g/100mLの濃度で添加して使用
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
オートサンプラー温度:140℃
システムオーブン温度:40℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
GPCカラム較正用標準物質:東ソー株式会社製標準ポリスチレンをそれぞれ下表のような組み合わせで量り取り、5mLのオルトジクロロベンゼン(移動相と同じ組成)を加え、室温で120分間静置して溶解させて調製
【表0】
(試料溶液調製条件)
溶媒:オルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社製、特級)にBHTを0.1w/V(0.1g/100mL)の濃度で添加して使用した。
試料溶液濃度:1mg/mL
溶解用自動振とう器:DF-8020(東ソー株式会社製)
溶解条件:5mgの試料を1000meshのSUS製の金網袋に封入し、試料を封入した金網袋を試験管に入れ、試験管に5mLの溶媒を加え、試験管にアルミホイルで蓋をし、試験管を浸とう器にセットし、60往復/分の撹拌速度で140℃で120分間撹拌した。
【0038】
(4)光散乱面積比(R
LS)の算出
光散乱面積比は、光散乱検出器を備えた液体クロマトグラフィー(LC)装置を用いて、各実施例及び各比較例のポリエチレンをオルトジクロロベンゼンに2mg/mLの濃度で溶解させた溶液の光散乱面積LSおよび東ソー株式会社製標準ポリスチレンF10(
光散乱(LS)法による重量平均分子量が9.64×10
4
であり、GPC法による重量平均分子量が9.89×10
4
である)をオルトジクロロベンゼンに2mg/mLの濃度で溶解させた溶液の光散乱面積LS’を測定し、以下式から算出した。
R
LS=LS/LS’(式1)
光散乱面積比(R
LS)が大きいほど、すなわち、ポリエチレンをオルトジクロロベンゼンに溶解させた溶液の光散乱面積LSが大きいほど、ポリエチレン中の超高分子量成分量が多いことを示す。
測定の条件を以下に示す。
・LC装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー株式会社製)
・光散乱検出器:PD2040(Precision Detectors社製)
・レーザー光源:波長685nm
・GPCカラム:なし
・試料溶液濃度:2mg/mL
・注入量:300μL
・測定温度:140℃
・溶解条件:145℃で2時間撹拌
・溶解用自動振とう器:DF-8020(東ソー株式会社製)
・溶媒および移動相:0.1w/VのBHTを含有するオルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社製、特級)
・移動相流速:1.0mL/分
具体的には、LC装置に、光散乱検出器(LS)を接続した。なお、光散乱検出に用いた散乱角度は90°であった。LSは、LC装置のカラムオーブン内に設置した。
試料の溶解は、詳しくは以下の手順により行った。まず、30mLのスクリューバイアルに40.0mgの試料および20.0mLの溶媒を入れて密栓し、スクリューバイアルをDF-8020(東ソー株式会社製)にセットし、140℃で2時間撹拌することにより試料を溶解させた。なお、前記方法で得られた試料溶液は、分析の前に、孔径10μmの円筒ろ紙(Whatman円筒ろ紙 直径18mm×長さ55mm、型番:2800-185)を用いてろ過を行った。ろ過は、試料の析出を避けるため140℃以上で行い、試料溶液に円筒ろ紙を浸し、浸した状態で5分間静置し平衡化させた後、円筒ろ紙内部に浸出した試料溶液を分析に供した。ろ過は溶媒の蒸発による試料溶液の濃度変化を避けるため20分間以内で行った。
なお、超高分子量成分がカラムに捕捉されるのを避けるため、GPCカラムおよびガードカラムは使用しなかった。また、クロマトグラムの取得のため、内径0.75mm、長さ5mのSUS配管1本を試料注入部とLS検出器の間に取り付けて、試料注入部および各検出器の温度を140℃とした。
得られたLSクロマトグラムに対しベースライン処理を行い、光散乱面積を算出した(
図6を参照)。
光散乱面積を求めるにあたっては、Malvern社のデータ処理ソフトOmniSEC(version4.7)を利用した。
【0039】
(5)ポリエチレンの製膜性評価
以下の加工条件でインフレーションフィルムを製膜する。成形加工時にバブルが破断するまで、段階的に引取り速度を上げていき、破断した引取り速度よりも0.5m/min低い引取り速度で製膜したフィルムについて厚みとヘイズを測定する。
加工機器:株式会社プラコー社製 EX-50型
スクリュー径:50mmΦ
L/D:28
ダイス径:125mmφ
リップギャップ:2.0mm
設定温度:150℃
BUR:2.0
引取り速度:12m/min~90m/min
吐出量:23kg/h
引取機:トミー機械工業株式会社製 IFA-600
一定の引き取り速度で5分間保持し、バブル切れが起こらない場合は引取り速度を0.5m/min上げる。バブルが破断した場合、破断部をサンプリングし、破断部周辺にフィッシュアイ(FE)核が目視で見られた場合は、FE起因での破断と判断し再度評価を行う。FEが見られずバブルが破断するまで、繰り返し評価する。
【0040】
(6)ヘイズ
成形されたインフレーションフィルムについて、ASTM1003に従ってヘイズ(単位:%)を測定した。ヘイズが大きいほど、フィルムが巻き付きにくくなる(お互いにくっ付きにくくなる)ので、フィルムが取り扱い易いことを示す。
【0041】
(7)厚み
成形されたインフレーションフィルムについて、JIS Z1702に従って厚み(単位:μm)を測定した。製膜時のフィルム引取り方向に対して垂直方向に2cm間隔で筒状フィルム1周測定し、平均値を求めた。厚みの測定値が小さいほど、ポリエチレンの薄膜化に寄与することとなり、ポリエチレンの延伸性に優れることを示す。
【実施例】
【0042】
[実施例及び比較例]
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
【0043】
下記の実施例1~5及び比較例1~4でそれぞれ製造されたポリエチレンの物性値を表1に示す。
【表1】
【表1A】
ヘイズが大きいほど、フィルムが取り扱い易いことを示し、厚みが小さいほど(すなわち、厚みの逆数(1/厚み)が大きいほど)、延伸性に優れることを示すので、「ヘイズ/厚み」が大きいほど、薄膜化(延伸性)と取扱い易さ(フィルムのヘイズ)のバランスに優れていることを意味する。表1Aに示すように、実施例1~5では、「ヘイズ/厚み」は1.2以上であるのに対し、比較例1~4では、1.2未満である。実施例1~5は、比較例1~4に比べて、薄膜化(延伸性)と取扱い易さ(フィルムのヘイズ)のバランスに優れていることが確認された。
【0044】
実施例1、2、3および比較例1、2、3、4(
図1での実施例と比較例)
図1において、二次圧縮機の吐出圧力171.5~211.2MPa(表2に記載)まで圧縮された原料エチレン総供給量16.0~17.7ton/時間(表2に記載)の原料エチレンは配管9から槽型反応器20の温度領域1には配管10を通って槽型反応器20上部の原料エチレン供給量4.0~4.4ton/時間(表2に記載)で供給され、槽型反応器20の温度領域3には配管11を通って槽型反応器20下部の原料エチレン供給量8.0~8.9ton/時間(表2に記載)で供給される。残りの槽型反応器21上部の原料エチレン供給量4.0~4.4t/時間(表2に記載)の原料エチレンは配管12を通って、槽状反応器21の温度領域5に供給される。
槽型反応器20の圧力は155.1~197.3MPa、槽型反応器21の圧力は134.6~177.1MPaとする。
槽型反応器20の内部には、温度領域が4つ存在し、上部から温度領域1、2、3及び4が存在し、それぞれの温度領域に温度計が挿入されている。
また、槽型反応器21の内部には、温度領域が4つ存在し、上部から温度領域5、6、7及び8が存在し、それぞれの温度領域に温度計が挿入されている。
槽型反応器20の温度領域1には配管13から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが槽型反応器20上部の重合開始剤供給量3.5~5.1kg/時間(表2に記載)で供給され、槽型反応器20の温度領域3には配管14から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが槽型反応器20下部の重合開始剤供給量3.5~5.2kg/時間(表2に記載)で供給される。
また、槽型反応器21の温度領域5には配管15から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが槽型反応器21上部の重合開始剤供給量2.3~3.9kg/時間(表2に記載)で供給され、槽型反応器21の温度領域7には配管16から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが槽型反応器21下部の重合開始剤供給量0.0~1.7kg/時間(表2に記載)で供給される。
【0045】
槽型反応器20の温度領域1に配管10から供給される原料エチレンと配管13から供給される重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートとによってエチレンが重合されてポリエチレンが生成する。温度領域1で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域2へ送られ継続して重合される。温度領域2で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域3に送られる。
温度領域3には配管11から原料エチレンと配管14から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートがさらに供給され継続してエチレンが重合されポリエチレンが生成する。温度領域3で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域4に送られ、エチレンが継続して重合されポリエチレンが生成する。
槽型反応器20の温度領域4で生成したポリエチレンと未反応エチレンは、槽型反応20の底部から排出され圧力調整弁17を通って熱交換器18に導入され、熱交換機18で冷却され、槽型反応器21の温度領域7に供給される。
【0046】
槽型反応器21の温度領域5に配管12から供給される原料エチレンと配管15から供給される重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートとによってエチレンが重合されてポリエチレンが生成する。
温度領域5で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域6へ送られ継続して重合される。温度領域6で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域7に送られる。
温度領域7には槽型反応20の底部から排出され圧力調整弁17を通って熱交換器18に導入され冷却されたポリエチレンと未反応エチレンが供給され、そして配管16から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートがさらに供給され継続してエチレンが重合されポリエチレンが生成する。温度領域7で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域8に送られ、エチレンが継続して重合されポリエチレンが生成する。
【0047】
槽型反応器21の温度領域8で生成したポリエチレンと未反応エチレンは、槽型反応21の底部から排出され圧力調整弁19を通って熱交換器および分離器に導入され、分離器で生成ポリエチレンと未反応エチレンに分離され、生成ポリエチレンが得られる。
【0048】
実施例1~3及び比較例1~4のそれぞれの製造条件を表2に示す。
【表2】
【0049】
実施例1、2、3のそれぞれの温度領域の温度[℃]と温度差(ΔT)[℃]を表3に示す。
【表3】
【0050】
比較例1、2、3、4のそれぞれの温度領域の温度[℃]と温度差(ΔT)[℃]を表4に示す。
【表4】
【0051】
実施例4及び5(
図2での実施例)
図2において、二次圧縮機の吐出圧力166.9~167.0MPa(表5に記載)まで圧縮された原料エチレン総供給量14.3~17.0ton/時間(表5に記載)の原料エチレンは配管5から槽型反応器11の温度領域1には配管6を通って槽型反応器11上部の原料エチレン供給量7.2~8.5ton/時間(表5に記載)で供給され、槽型反応器11の温度領域3には配管7を通って槽型反応器11下部の原料エチレン供給量7.2~8.5kg/時間(表5に記載)で供給される。
槽型反応器11の圧力は164.2MPaとする。
槽型反応器11の内部には、温度領域が4つ存在し、上部から温度領域1、2、3及び4が存在し、それぞれの温度領域に温度計が挿入されている。
槽型反応器11の温度領域1には配管8から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが槽型反応器11上部の重合開始剤供給量3.7~3.9kg/時間(表5に記載)で供給され、槽型反応器11の温度領域3には配管9から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが槽型反応器11下部の重合開始剤供給量2.2~2.6kg/時間(表5に記載)で供給される。
【0052】
槽型反応器11の温度領域1に配管6から供給される原料エチレンと配管8から供給される重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートとによってエチレンが重合されてポリエチレンが生成する。温度領域1で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域2へ送られ継続して重合される。温度領域2で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域3に送られる。温度領域3には配管7から原料エチレンと配管9から重合開始剤であるt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートがさらに供給され継続してエチレンが重合されポリエチレンが生成する。温度領域3で生成したポリエチレンと未反応エチレンは温度領域4に送られ、エチレンが継続して重合されポリエチレンが生成する。
【0053】
槽型反応器11の温度領域4で生成したポリエチレンと未反応エチレンは、槽型反応11の底部から排出され圧力調整弁10を通って熱交換器および分離器に導入され、分離器で生成ポリエチレンと未反応エチレンに分離され、生成ポリエチレンが得られる。
【0054】
【0055】
実施例4及び5のそれぞれの温度領域の温度[℃]と温度差(ΔT)[℃]を表6に示す。
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、ポリエチレンの中~高分子量成分量と超高分子量成分量の割合を特定範囲に設定することによって、薄膜化(延伸性)と取扱い易さ(フィルム表面の凹凸、例えば、フィルムのヘイズ)のバランスを更に改良したポリエチレンを提供することができる。
本発明のポリエチレンの用途は、重袋、シュリンク、一般包装、薄物フィルム、プロテクトフィルム(保護フィルム)、押出ラミネートフィルム、押出成形フィルム、発泡成形フィルムなどの、多種多様なフィルムであり、家電機器の各種部品、各種住宅設備機器部品、各種工業部品、各種建材部品、各種自動車内外装部品などの用途に好適に用いられ、電気電子産業、家庭用品、輸送機械産業、建築建設産業等の産業の各分野において高い利用可能性を有する。
本発明のポリエチレンを製造するための方法及び装置においては、反応器内部の圧力および反応器内部の反応ゾーンにおける温度差を適切に制御することができる。