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特許7597656回転機械の振動監視システム、および回転機械の振動監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】回転機械の振動監視システム、および回転機械の振動監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20241203BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021103071
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002063
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】朴 ヒュンウ
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 裕太
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝志
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰雅
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-145295(JP,A)
【文献】特開2019-158801(JP,A)
【文献】特開2021-032822(JP,A)
【文献】特開2018-173332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの回転機械と、
前記回転機械に設置される少なくとも1つの振動センサと、
前記振動センサの測定値を監視する監視装置と、を備え、
前記監視装置は、
前記振動センサのセンサ設置情報を表示する表示器と、
前記表示器に表示されるセンサ設置情報を処理する処理装置と、を備え、
前記センサ設置情報は、前記回転機械の種類を画像で表す種類画像データ、前記回転機械の種類に関連付けられた前記回転機械の機種を画像で表す機種画像データ、前記回転機械の機種に関連付けられた前記振動センサの推奨設置位置を画像で表す設置位置データ、および前記推奨設置位置に関連付けられた前記振動センサの適切な設置方向を画像で表す設置方向データを含み、
前記処理装置は、前記種類画像データ、前記機種画像データ、および前記設置位置データのそれぞれを、使用者が選択可能なように前記表示器に表示させ
前記処理装置、前記振動センサ、および前記表示器の少なくとも1つは、前記振動センサの測定値を、該振動センサに関連付けられた前記設置位置データおよび前記設置方向データとともに記憶する、回転機械の振動監視システム。
【請求項2】
前記処理装置は、前記振動センサの測定値を、該振動センサに関連付けられた前記設置位置データおよび前記設置方向データとともに表示器に表示させる、請求項1に記載の回転機械の振動監視システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記振動センサの測定値に基づいて、該振動センサの取付状態を確認する、請求項1または2に記載の回転機械の振動監視システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記振動センサの測定値を所定の閾値と比較して、前記回転機械の不具合および/またはメンテナンスの必要性を決定する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の回転機械の振動監視システム。
【請求項5】
回転機械の種類を画像で表す種類画像データ、前記回転機械の種類に関連付けられた前記回転機械の機種を画像で表す機種画像データ、前記回転機械の機種に関連付けられた振動センサの推奨設置位置を画像で表す設置位置データ、および前記推奨設置位置に関連付けられた前記振動センサの適切な設置方向を画像で表す設置方向データのそれぞれを、使用者が選択可能なように前記振動センサの測定値を表示可能な監視装置の表示器に表示させ
さらに、前記振動センサの測定値を、該振動センサに関連付けられた前記設置位置データおよび前記設置方向データとともに記憶する、回転機械の振動監視方法。
【請求項6】
前記振動センサの測定値を、該振動センサに関連付けられた前記設置位置データおよび前記設置方向データとともに表示器に表示させる、請求項5に記載の回転機械の振動監視方法。
【請求項7】
前記振動センサの測定値に基づいて、該振動センサの取付状態を確認する、請求項5または6に記載の回転機械の振動監視方法。
【請求項8】
前記振動センサの測定値を所定の閾値と比較して、前記回転機械の不具合および/またはメンテナンスの必要性を決定する、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の回転機械の振動監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ、ファン、電動機、および圧縮機などの回転機械に発生する振動を監視するシステム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプ、ファン、電動機、および圧縮機などの回転機械を運転すると、該回転機械に配置された部品の機械的な動作(例えば、回転、および摺動など)によって回転機械に振動が生じる。そのため、回転機械の点検には、通常、振動の監視が含まれる。回転機械の使用者は、該回転機械に生じている振動を定期的に測定し、その測定値および測定値の経時的な変化を監視して、不具合(異常)の発生、およびメンテナンスの必要性などを判断する。
【0003】
回転機械に生じる振動を監視するために、一般的には、ハンディタイプの振動計が用いられている。より具体的には、点検者がハンディタイプの振動計を回転機械の複数の測定箇所に押し付けて振動を測定する。この場合、ハンディタイプの振動計が押し付けられる測定箇所が測定のたびに変わり、加えて、点検員の経験・スキルによっても測定データがばらついてしまう。そのため、振動測定データの信頼性を高めるために、振動センサを所定の位置に予め設置した回転機械が普及しつつある。振動センサを回転機械の所定の位置に常設することで、信頼性の高い振動測定データをいつでも取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6867220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
適切な振動データを入手するためには、適切な設置位置に振動センサを取り付ける必要がある。例えば、負荷側軸受と反負荷側軸受とを有する回転機械の場合、反負荷側軸受近くに設置した振動センサだけでは、負荷側軸受の異常を検知できないことがある。そのため、回転機械の種類によっては、振動センサを負荷側軸受の近傍と反負荷側軸受の近傍に配置しなければならない。
【0006】
さらに、振動センサの設置方向を、該振動センサの設置位置に応じた適切な方向に一致させた状態にしなければ、正確な振動データを入手できない。例えば、回転軸の軸方向、半径方向、および水平方向の3軸方向の振動を測定可能な振動センサの場合、回転軸に対するこれら3軸の測定方向を適切な方向に一致させた状態で振動センサを設置しなければならない。
【0007】
しかしながら、回転機械の種類は多く、各回転機械で振動センサの適切な設置位置は異なる。さらに、振動センサの設置位置ごとに、振動センサの適切な設置方向も異なる。そのため、振動センサおよび回転機械に不慣れな使用者では、振動センサを回転機械の適切な設置位置に適切な設置方向で設置することは困難である。特に、既設の回転機械に振動センサを取り付ける場合に、振動センサの設置位置および設置方向を間違って取り付けてしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、振動センサを、適切な設置位置に適切な設置方向で取り付けて、正確な振動データを取得可能な回転機械の振動監視システム、および回転機械の振動監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、少なくとも1つの回転機械と、前記回転機械に設置される少なくとも1つの振動センサと、前記振動センサの測定値を監視する監視装置と、を備え、前記監視装置は、前記振動センサのセンサ設置情報を表示する表示器と、前記表示器に表示されるセンサ設置情報を処理する処理装置と、を備え、前記センサ設置情報は、前記回転機械の種類を画像で表す種類画像データ、前記回転機械の種類に関連付けられた前記回転機械の機種を画像で表す機種画像データ、前記回転機械の機種に関連付けられた前記振動センサの推奨設置位置を画像で表す設置位置データ、および前記推奨設置位置に関連付けられた前記振動センサの適切な設置方向を画像で表す設置方向データを含み、前記処理装置は、前記種類画像データ、前記機種画像データ、および前記設置位置データのそれぞれを、使用者が選択可能なように前記表示器に表示させる、回転機械の振動監視システムが提供される。
【0010】
一態様では、前記処理装置は、前記振動センサの測定値を、該振動センサに関連付けられた前記設置位置データとともに表示器に表示させる。
一態様では、前記処理装置は、前記振動センサの測定値に基づいて、該振動センサの取付状態を確認する。
一態様では、前記処理装置は、前記振動センサの測定値を所定の閾値と比較して、前記回転機械の不具合および/またはメンテナンスの必要性を決定する。
【0011】
一態様では、回転機械の種類を画像で表す種類画像データ、前記回転機械の種類に関連付けられた前記回転機械の機種を画像で表す機種画像データ、前記回転機械の機種に関連付けられた前記振動センサの推奨設置位置を画像で表す設置位置データ、および前記推奨設置位置に関連付けられた前記振動センサの適切な設置方向を画像で表す設置方向データのそれぞれを、使用者が選択可能なように前記振動センサの測定値を表示可能な監視装置の表示器に表示させる、回転機械の振動監視方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記振動センサの測定値を、該振動センサに関連付けられた前記設置位置データとともに表示器に表示させる。
一態様では、前記振動センサの測定値に基づいて、該振動センサの取付状態を確認する。
一態様では、前記振動センサの測定値を所定の閾値と比較して、前記回転機械の不具合および/またはメンテナンスの必要性を決定する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置位置データおよび該設置位置データに関連付けられた設置方向データを利用して、視覚を通じて回転機械に振動センサを適切な位置に適切な方向で取り付けることができる。したがって、振動センサを取り付ける使用者が回転機械に不慣れであっても、正確な振動データを取得することができる。その結果、使用者は回転機械の不具合の発生および/またはメンテナンスの必要性を正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る回転機械の振動監視システムを示す模式図である。
図2図2は、監視装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、表示器に表示される種類画像データの一例を示す模式図である。
図4図4は、表示器に表示される機種画像データの一例を示す模式図である。
図5図5は、表示器に表示される機種画像データの一例を示す模式図である。
図6図6は、表示器に表示される設置位置データの一例を示す模式図である。
図7図7は、表示器に表示される設置方向データの一例を示す模式図である。
図8図8は、表示器に表示される振動データの一例を示す模式図である。
図9図9は、各振動センサの閾値または許容範囲を設定または変更する際に表示器に表示される画面の模式図である。
図10図10は、振動センサの設置方向が正常であるか否かを判定する方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11(a)は、回転軸に対して軸方向X、垂直方向Y、および水平方向Zの3軸方向の振動が測定可能な振動センサが正常に設置されている状態を示す模式図であり、図11(b)は、振動センサが図11(a)に示す正常設置状態からずれた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る回転機械の振動監視システムを示す模式図である。図1に示す振動監視システムは、2つの回転機械(ポンプ)1と、各回転機械1に取り付けられる振動センサ7と、振動センサ7の測定値を監視する監視装置5と、を備える。図1に示す振動監視システムにおける回転機械1はポンプであるが、回転機械1の種類は任意である。例えば、回転機械1は、ファン、電動機、および圧縮機であってもよい。さらに、振動監視システムは、1つの回転機械1を有していてもよいし、3つ以上の回転機械1を有していてもよい。すなわち、振動監視システムは、少なくとも1つの回転機械1を有する。
【0016】
図1に示す監視装置5は、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、およびノート型パソコンなどのモバイル端末装置であるが、監視装置5は、例えば、デスクトップコンピュータなどの携帯に不向きなインテリジェント端末装置であってもよい。この場合、監視装置5は、回転機械1が設置される工場の監視室に設けられていてもよい。
【0017】
図1に示すように、振動監視システムは、監視装置5とデータを送受信可能なクラウドシステム8を有していてもよい。クラウドシステム8は、回転機械1が設置される工場内で構築されていてもよいし、回転機械1が設置される工場外で構築されていてもよい。
【0018】
さらに、振動監視システムは、各回転機械1に設置される少なくとも1つの振動センサ7を備える。振動センサ7は、回転機械1の運転時に発生する振動を測定する機械であり、回転機械1の使用者は、振動センサ7の測定値に基づいて、回転機械1の不具合(例えば、故障)および/またはメンテナンスの必要性を判断する。本実施形態では、各振動センサ7は、監視装置5と有線および/または無線で接続可能であり、回転機械1に生じた振動の測定値を含むデータを監視装置5と送受信可能に構成されている。例えば、各振動センサ7は、測定値を保存可能なメモリ(図示せず)と、監視装置5とデータを送受信するための通信機(図示せず)を備えている。
【0019】
図示はしないが、振動センサ7と監視装置5との間のデータの送受信を、中継器を介して行ってもよい。さらに、振動センサ7を、クラウドシステム8とデータを送受信可能に構成してもよい。この場合、振動センサ7のデータと監視装置5とのデータの送受信は、クラウドシステム8を介して行われる。
【0020】
図2は、監視装置5の一例を示す模式図である。図2に示す監視装置5は、スマートフォンであり、表示器10と、該表示器10に表示される情報(および/またはデータ)を処理可能な処理装置11と、振動センサ7およびクラウドシステム8などの外部機器とデータを送受信するための通信機(図示せず)と、を備えている。表示器10は、例えば、タッチパネルとして構成される。処理装置11は、例えば、CPUまたはGPUなどの演算処理装置である。このような演算処理装置は、後述する様々な画像データおよび振動センサ7の測定値を高速で処理できる。
【0021】
本実施形態では、処理装置11は、振動センサ7を適切な設置位置に適切な設置方向で設置するためのセンサ設置情報を表示器10に表示させる。センサ設置情報は、回転機械1の種類を画像で表す種類画像データ、回転機械1の種類に関連付けられた回転機械1の機種を画像で表す機種画像データ、回転機械1の機種に関連付けられた振動センサ7の推奨設置位置を画像で表す設置位置データ、および推奨設置位置に関連付けられた振動センサ7の適切な設置方向を画像で表す設置方向データを含んでいる。
【0022】
本実施形態では、センサ設置情報は、振動センサ7のメモリ(図示せず)に予め格納されており、回転機械1の使用者が監視装置5を操作することで、センサ設置情報が振動センサ7から監視装置5に送信される。一実施形態では、センサ設置情報は、監視装置5に予め格納されていてもよいし、クラウドシステム8に予め格納されていてもよい。センサ設置情報がクラウドシステム8に格納されている場合は、回転機械1の使用者が監視装置5を操作することで、センサ設置情報がクラウドシステム8から監視装置5に送信される。
【0023】
使用者が振動センサ7を回転機械1に設置する際には、使用者は監視装置5を操作して、センサ設置情報を表示器10に表示させ、センサ設置情報に基づいて振動センサ7を設置する。この作業により、使用者が振動センサ7の設置に不慣れな場合でも、振動センサ7を適切な設置位置に適切な設置方向で取り付けることができる。その結果、使用者は適切な振動センサ7の測定値を得ることができるので、回転機械1の不具合および/またはメンテナンスの必要性を正確に決定することができる。
【0024】
図3は、表示器10に表示される種類画像データの一例を示す模式図である。図3に示す種類画像データは、回転機械1の種類が「ポンプ」、「ファン」、および「その他」から選択できるように構成されている。より具体的には、図3に示す種類画像データは、「ポンプ」、「ファン」、および「その他」に対応するボタンを有している。使用者は、図3に示す種類画像データから振動センサ7を設置する回転機械1に対応するボタンを押す(または、触る)ことで、回転機械1の種類を選択する。
【0025】
使用者が、回転機械1の種類を選択すると、処理装置11は、回転機械1の種類に関連付けられた回転機械1の機種を画像で表す機種画像データを表示器10に表示させる。図4および図5は、表示器10に表示される機種画像データの一例を示す模式図である。図4および図5は、図3に示す種類画像データで「ポンプ」が選択された場合の機種画像データの例を示している。
【0026】
図4に示す機種画像データは、横軸ポンプに対応する画像データであり、図5に示す機種画像データは、立軸ポンプに対応する画像データである。使用者は、監視装置5を操作する(例えば、表示器10の表面をスワイプする)ことで、図4および図5に示す機種画像データを切り替えることができる。使用者は、回転機械1と表示器10に表示された機種画像データを比較しながら、視覚を通じて振動センサ7を設置すべき回転機械1の機種を選択できる。そのため、使用者が振動センサ7を設置すべき回転機械1の機種の選択を間違えることが防止される。使用者は、振動センサ7を設置する回転機械1の機種を表示器10に表示させた状態で、「次へ」と表示されたボタンを押す(または触れる)ことで回転機械1の機種を選択することができる。
【0027】
一実施形態では、機種画像データは、振動センサ7を設置すべき回転機械1のシリーズナンバーまたは型番を表示するボタンを含んでいてもよい。回転機械1の機種を選択する際に、使用者は、回転機械1に取り付けられたタグに記載されたシリーズナンバーまたは型番に一致するシリーズナンバーまたは型番を表示器10に表示された機種画像データのボタンから選択することができる。
【0028】
使用者が、回転機械1の機種を選択すると、処理装置11は、回転機械1の機種に関連付けられた振動センサ7の推奨設置位置を画像で表す設置位置データを表示器10に表示させる。図6は、表示器10に表示される設置位置データの一例を示す模式図である。設置位置データは、例えば、回転機械1の製造者が推奨する振動センサ7の設置位置を回転機械1の外観画像に表示するデータである。図6は、図4に示す横軸ポンプに対応する機種画像データが選択された場合の設置位置データを示している。図6では、8つの推奨設置位置が示されているが、使用者は、全ての推奨設置位置に振動センサ7を設置してもよいし、示された8つの推奨設置位置のなかからいくつかの設置位置を選択して振動センサ7を設置してもよい。
【0029】
図6に示す設置位置データは、各推奨設置位置に割り当てられたセンサ番号を選択する選択ボタン15を含んでいる。使用者は、選択ボタン15を操作して、設置される振動センサ7のセンサ番号(すなわち、設置位置)を選択し、この状態で「次へ」と表示されたボタンを押す(または触れる)。使用者が「次へ」と表示されたボタンを押すと、処理装置11は、選択された推奨設置位置に関連付けられた振動センサ7の適切な設置方向を画像で表す設置方向データを表示器10に表示する。
【0030】
図7は、表示器10に表示される設置方向データの一例を示す模式図である。使用者は、選択された振動センサ7の設置位置に対応する、表示器10に表示された適切な設置方向を、視覚を通じて認識できる。したがって、使用者は、振動センサ7の設置方向を間違えることなく、回転機械1に取り付けることができる。
【0031】
複数の振動センサ7を回転機械1に取り付ける場合は、使用者は、図7に示すキャンセルボタンを押して、図6に示す設置位置データを表示器10に表示させる。次いで、使用者は、選択ボタン15を操作して、設置される次の振動センサ7のセンサ番号(すなわち、設置位置)を選択して、表示器10に次の振動センサ7の適切な設置方向を表示させる。使用者が、これらの作業を設置される全ての振動センサ7に対して行うことで、全ての振動センサ7を適切な設置位置に適切な設置方向で取り付けることができる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、使用者は、振動センサ7の適切な設置位置および設置方向を視覚を通じて確認しながら、振動センサ7を回転機械1に取り付けることができる。したがって、使用者が回転機械1に不慣れであっても、振動センサ7を適切な設置位置および設置方向で回転機械1に取り付けることができる。その結果、正確な振動データを振動センサ7から取得することができるので、使用者は回転機械の不具合の発生および/またはメンテナンスの必要性を正確に判断することができる。
【0033】
振動センサ7の測定値は、振動センサ7、監視装置5、およびクラウドシステム8のいずれかに、振動センサ7の設置位置と設置方向に関連付けて保存される。一実施形態では、振動センサ7の測定値を、振動センサ7、監視装置5、およびクラウドシステム8のいずれか2つまたは全てに、振動センサ7の設置位置と設置方向に関連付けて保存してもよい。振動センサ7の測定値を複数の機器に保存する場合、振動センサ7の測定値が保存された機器のうちの1つが故障しても、他の機器から振動センサ7の測定データを復元できる。
【0034】
使用者が回転機械1の振動データ(すなわち、振動センサ7の測定値)を確認するときは、処理装置11は、振動センサ7、監視装置5、およびクラウドシステム8のいずれかに保存された振動センサ7の測定値と、該測定値に関連付けられた、振動センサ7の設置位置と設置方向とともに表示器10に表示させるのが好ましい。
【0035】
図8は、表示器10に表示される振動データの一例を示す模式図である。図8に示す振動データは、振動センサ7の取付位置が振動センサ7のセンサ番号により明示された回転機械1の外観図と、センサ番号によって特定される各振動センサ7の測定値、および該測定値に関連付けられた、振動センサ7の設置位置・設置方向を示す一覧表と、を含んでいる。図8に示されるような振動データによれば、使用者は、一見して各振動センサ7の測定値と測定箇所とを特定することができる。したがって、使用者は、一見して不具合が発生している振動センサ7およびその取付位置を把握することができる。
【0036】
各振動センサ7の測定値が所定の閾値を超えた場合、または振動センサ7の測定値が所定の許容範囲を超えた場合に、処理装置11は、監視装置5から警報を発してもよい。所定の閾値および所定の許容範囲は、各振動センサ7に対して設定されており、例えば、監視装置5に予め記憶されている。使用者は、警報によって回転機械1の不具合の発生および/またはメンテナンスの必要性を容易に知覚できる。
【0037】
一実施形態では、監視装置5は、使用者が各振動センサ7の閾値または許容範囲を設定または変更できるように構成されていてもよい。図9は、各振動センサ7の閾値または許容範囲を設定または変更する際に表示器10に表示される画面の模式図である。図9に示す画面には、設定または変更される閾値を入力するための入力ウインドウ17と、閾値が設定または変更される振動センサ7に割り当てられたセンサ番号を選択する選択ボタン18と、入力ウインドウ17に閾値の設定値または変更値を入力するためのテンキー19と、を含んでいる。さらに、図9に示すように、この画面でも、振動センサ7の取付位置が振動センサ7のセンサ番号により明示された回転機械1の外観図が表示されることが好ましい。使用者は、閾値が変更される振動センサ7の位置を視覚を通じて認識できるので、設定値が設定または変更されるべき振動センサ7を間違えることが防止される。
【0038】
回転機械1に振動センサ7を設置してから長期間が経過すると、回転機械1に発生した振動によって、または点検者が振動センサ7に接触することによって、振動センサ7の設置方向が初期設置方向(すなわち、適切な設置方向)からずれてしまうことがある。そこで、監視装置5は、振動センサ7の設置方向が正常であるか否かを判定する機能を有していることが好ましい。以下では、図10および図11を参照して、振動センサ7の設置方向が正常であるか否かを判定する方法について説明する。
【0039】
図10は、振動センサ7の設置方向が正常であるか否かを判定する方法の一例を示すフローチャートである。図11(a)は、回転軸に対して軸方向X、垂直方向Y、および水平方向Zの3軸方向の振動が測定可能な振動センサ7が正常に設置されている状態を示す模式図であり、図11(b)は、振動センサ7が図11(a)に示す正常設置状態からずれた状態を示す模式図である。図11(a)に示す振動センサ7は、回転軸が水平方向に延びる回転機械1に設置されている。したがって、軸方向Xは、水平方向Zと同一平面内(水平面内)にあり、垂直Y軸はこの水平面に対して鉛直方向に延びている。図11(a)および図11(b)に示す振動センサ7は重力加速度を検出可能な振動センサである。
【0040】
図10に示すように、最初に、回転機械1を停止させる(ステップ1)。次いで、監視装置5を操作して、振動センサ7の3軸の測定値を取得する。図11(a)および図11(b)に示す振動センサ7は重力加速度を検出可能な振動センサである。次いで、監視装置5の処理装置11は、3軸方向の測定値を判定用の設定値と比較する(ステップ2)。
【0041】
上述したように、この振動センサ7は、X軸方向およびZ軸方向が水平面内にあり、Y軸方向がこの水平面に対して鉛直方向に延びている。したがって、図11(a)および図11(b)を参照して説明する例では、X軸方向およびZ軸方向の判定用の設定値が0であり、Y軸方向の判定用の設定値が1である。振動センサ7が正常に設置されている場合は、図11(a)に示すように、X軸方向およびZ軸方向の測定値がほぼ0であり、Y軸方向の測定値がほぼ1となる。
【0042】
一方で、図11(b)に示すように、振動センサ7が正常設置方向からずれている場合は、3軸の測定値の少なくとも1つの測定値が判定用の設定値からずれてしまう。図11(b)に示す例では、X軸方向およびY軸方向の測定値が判定用の設定値からずれている。処理装置11は、各軸方向の測定値と判定用の設定値との間の差分に対する許容値を予め記憶している。処理装置11は、各軸方向の測定値と判定用の設定値との間の差分が許容値を超えている場合(ステップ3のYes参照)は、警報を発して使用者に振動センサ7の設置方向がずれていることを知らせる(ステップ4参照)。処理装置11は、各軸方向の測定値と判定用の設定値との間の差分が許容範囲内の場合は、警報を発さずに、設置方向の確認動作を終了する(ステップ3のNo参照)。
【0043】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 回転機械(ポンプ)
2 振動センサ
5 監視装置
7 振動センサ
8 クラウドシステム
10 表示器
11 処理装置
15,18 選択ボタン
17 入力ウインドウ
19 テンキー
図1
図2
図3
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図5
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図11