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特許7597718肺がんを処置するための抗CEACAM5イムノコンジュゲートの使用
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  • 特許-肺がんを処置するための抗CEACAM5イムノコンジュゲートの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】肺がんを処置するための抗CEACAM5イムノコンジュゲートの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241203BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241203BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241203BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 E
A61K47/68
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021546257
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020052932
(87)【国際公開番号】W WO2020161214
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】62/802,511
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19305173.7
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19305504.3
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】オロール・アラー
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ・シャドジャ
(72)【発明者】
【氏名】セシール・コンボー
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット・デュメー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・アンリ
(72)【発明者】
【氏名】セムラ・ヨルク
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象において非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)を処置する際に使用するための、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬組成物であって、
該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、ならびに該抗体はVHおよびVLを含み、
VHは3つの相補性決定領域、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ならびに
VLは3つのCDR、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、
HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列(GFVFSSYD)を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列(ISSGGGIT)を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列(AAHYFGSSGPFAY)を含み;
LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列(ENIFSY)を含み;LCDR2はNTRのアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号7のアミノ酸配列(QHHYGTPFT)を含み、
前記対象は、腫瘍細胞集団の50%以上において、強度2+および3+からなるhCEACAM5発現を有する、
前記医薬組成物。
【請求項2】
対象は、癌胎児抗原関連細胞接着分子高発現者である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
対象は、非小細胞肺がんを処置するための薬剤または薬物を用いて事前処置された、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬剤または薬物は、化学療法剤、血管新生阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ(ROS1)阻害剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤および/またはPD-L1阻害剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
VHは、配列番号1
【化1】
を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
重鎖は、配列番号8
(EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG)
を含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
VLは、配列番号2
【化2】
を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
軽鎖は、配列番号9
(DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)
を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗体は、少なくとも1つの増殖阻害剤とコンジュゲートまたはリンクしている、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記増殖阻害剤は細胞傷害剤である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記増殖阻害剤は、化学療法剤、酵素、抗生物質、および毒素、例えば小分子毒素または酵素的に活性な毒素等、タキソイド、ビンカ、タキサン、マイタンシノイドまたはマイタンシノイドアナログ、トメイマイシンまたはピロロベンゾジアゼピン誘導体、クリプトフィシン誘導体、レプトマイシン誘導体、オーリスタチンまたはドラスタチンアナログ、プロドラッグ、トポイソメラーゼII阻害剤、DNAアルキル化剤、抗チューブリン剤、およびCC-1065またはCC-1065アナログからなる群から選択される、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記増殖阻害剤は、(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-マイタンシン)DM1、またはN2’-デアセチル-N-2’(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-マイタンシン(DM4)である、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
抗体は、開裂可能リンカーまたは開裂不能リンカーを介して少なくとも1つの増殖阻害剤と共有結合的に連結している、請求項10~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記リンカーは、N-スクシニミジルピリジルジチオブチレート(SPDB)、4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)-2-スルホ-酪酸(スルホ-SPDB)、およびスクシニミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)からなる群から選択される、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
対象の体表面積に基づき、5、10、20、30、40、60、80、100、120、135、150、170、180、190、または210mg/m2の用量レベルで投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
14日毎または3週間毎に投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
それを必要としている対象において非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)を処置する際に使用するための、抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬組成物であって、
該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、ならびに該抗体はVHおよびVLを含み、
VHは、配列番号1
【化3】
を含み、
VLは、配列番号2
【化4】
を含み、
該イムノコンジュゲートは、対象の体表面積に基づき、80、100、120、150、または180mg/m2の用量レベルで、14日毎または3週間毎に投与され、
前記対象は、腫瘍細胞集団の50%以上において、強度2+および3+からなるhCEACAM5発現を有する、
前記医薬組成物。
【請求項19】
それを必要としている対象において非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)を処置する際に使用するための、抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬組成物であって、
該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、ならびに該抗体は重鎖および軽鎖を含み、
重鎖は、配列番号8
(EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG)を含み、
軽鎖は、配列番号9
(DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)
を含み、
該イムノコンジュゲートは、対象の体表面積に基づき、80、100、120、150、または180mg/m2の用量レベルで、14日毎または3週間毎に投与され、
前記対象は、腫瘍細胞集団の50%以上において、強度2+および3+からなるhCEACAM5発現を有する、
前記医薬組成物。
【請求項20】
それを必要としている対象において非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)を処置する際に使用するための、抗体を含む、または抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬組成物であって、
該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、ならびに該抗体は重鎖および軽鎖を含み、
重鎖は、配列番号8
(EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG)を含み、
軽鎖は、配列番号9
(DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)
を含み、
前記イムノコンジュゲートに含まれる該抗体は、開裂可能リンカーまたは開裂不能リンカーを介して少なくとも1つの増殖阻害剤と共有結合的に連結しており、前記リンカーは、N-スクシニミジルピリジルジチオブチレート(SPDB)、4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)-2-スルホ-酪酸(スルホ-SPDB)、およびスクシニミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)からなる群から選択され、
前記増殖阻害剤は、(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-マイタンシン)DM1、またはN2’-デアセチル-N-2’(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-マイタンシン(DM4)であり、
前記イムノコンジュゲートは単一薬剤として投与され、
前記対象は、腫瘍細胞集団の50%以上において、強度2+および3+からなるhCEACAM5発現を有し、
前記対象は非小細胞肺がんを処置するための薬剤または薬物を用いて事前処置されていて、該薬剤または薬物は、化学療法剤および免疫チェックポイント阻害剤から選択される、
前記医薬組成物。
【請求項21】
それを必要としている対象において非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)を処置する際に使用するための、抗体を含む、または抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬組成物であって、
該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、ならびに該抗体は重鎖および軽鎖を含み、
重鎖は、配列番号8
(EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG)を含み、
軽鎖は、配列番号9
(DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)
を含み、
前記イムノコンジュゲートに含まれる該抗体は、開裂可能リンカーまたは開裂不能リンカーを介して少なくとも1つの増殖阻害剤と共有結合的に連結しており、前記リンカーは、N-スクシニミジルピリジルジチオブチレート(SPDB)、4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)-2-スルホ-酪酸(スルホ-SPDB)、およびスクシニミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)からなる群から選択され、
前記増殖阻害剤は、(N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-マイタンシン)DM1、またはN2’-デアセチル-N-2’(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-マイタンシン(DM4)であり、
前記イムノコンジュゲートはIV経路を介して2週間毎に投与され、
前記対象は、腫瘍細胞集団の50%以上において、強度2+および3+からなるhCEACAM5発現を有し、
前記対象は非小細胞肺がんを処置するための薬剤または薬物を用いて事前処置されていて、該薬剤または薬物は、化学療法剤および免疫チェックポイント阻害剤から選択される、
前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、がん、例えばCEACAM5を発現する非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQ NSCLC)等の治療処置の分野に関する。本発明の特定の態様は、肺がんを処置するためのCEACAM5アンタゴニスト、例えば抗CEACAM5抗体およびイムノコンジュゲート等の使用と関連する。
【背景技術】
【0002】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)の作用機序は、薬物の選択的かつ効率的な内部移行を実現するために、腫瘍細胞上で十分量発現している特異抗原とADCが結合することから開始する。ホジキンリンパ腫の処置についてブレンツキシマブベドチン、および再発型転移性HER2+乳がんの処置についてトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)が最近承認されたことから実証されるように、ADCを使用して腫瘍細胞を選択的に標的とする強力な細胞傷害薬(Selectively targeting potent cytotoxics to tumor cells)が、がんの処置に対する効果的戦略であることが今や明らかにされている。医学上の必要性が未だ満たされていない多くのその他の悪性疾患、例えば固形腫瘍がん等は、そのような治療オプションから利益を享受し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、肺がんは、米国において何十万もの死亡原因となっている侵襲性のがんの形態である。残念ながら、そのようながんは初期の処置後に再発する傾向を有し、そして後続する処置に対してより耐性となる。肺がんを有する個人を処置するために多数の処置法が利用されてきたにもかかわらず、より有効な処置法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、それを必要としている対象において、特に肺がん(例えば、NSQ NSCLC)を処置する方法であって、CEACAM5に特異的に結合する有効量の抗体またはイムノコンジュゲート(抗体を含む)を投与する工程を含む該方法を提示する。
【0005】
本開示は、特に、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート(ADCまたは抗体薬物コンジュゲートとも呼ばれる)、およびそれを必要としている対象においてCEACAM5を発現するがんを処置する方法であって、CEACAM5に特異的に結合する有効量の抗体またはイムノコンジュゲートを投与する工程を含む方法を提示する。例えば、がんは、ヒト癌胎児抗原関連細胞接着分子5(hCEACAM5)を発現する。様々な実施形態では、がんはhCEACAM5を高発現する。例えば、がんは、配列番号10および11を含むhCEACAM5のA3-B3ドメインを発現することから、抗体またはイムノコンジュゲートが該ドメインに結合する。
【0006】
本開示は、それを必要としている対象において、癌胎児抗原関連細胞接着分子5が高発現しているがんを処置する際に使用するための抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを提示する。様々な実施形態では、抗体は、ヒト癌胎児抗原関連細胞接着分子5(hCEACAM5)に特異的に結合し、ならびに該抗体は重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHは3つの相補性決定領域、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ならびにVLは3つのCDR、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、HCDR1は配列番号3(GFVFSSYD)のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4(ISSGGGIT)のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5(AAHYFGSSGPFAY)のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6(ENIFSY)のアミノ酸配列を含み;LCDR2はNTRのアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号7(QHHYGTPFT)のアミノ酸配列を含む。
【0007】
本開示は、それを必要としている対象において、非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQNSCLC)を処置する際に使用するための抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを提示するが、該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、ならびに該抗体はVHおよびVLを含み、VHは3つの相補性決定領域、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ならびにVLは3つのCDR、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2はNTRのアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0008】
本開示は、がん治療薬を用いて事前処置された対象を処置する際に使用するための抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを提示するが、該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、ならびに該抗体は重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHは3つの相補性決定領域、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ならびにVLは、3つのCDR、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2はNTRのアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号7のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、対象は癌胎児抗原関連細胞接着分子高発現者である。その他の実施形態では、対象は、非小細胞肺がんを処置するための薬剤または薬物を用いて事前処置された。その他の実施形態では、薬剤または薬物は、化学療法剤(chemotherapy agent)、血管新生阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ(ROS1)阻害剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される。これらの実施形態の特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤および/またはPD-L1阻害剤である。
【0009】
様々な実施形態では、がんはNSQ NSCLCである。
【0010】
様々な実施形態では、VHは、配列番号1
【化1】
を含む。
【0011】
様々な実施形態では、重鎖は、配列番号8
(EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG)
を含む。
【0012】
様々な実施形態では、VLは、配列番号2
【化2】
を含む。
【0013】
様々な実施形態では、軽鎖は、配列番号9
(DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC)
を含む。
【0014】
様々な実施形態では、抗体は、少なくとも1つの増殖阻害剤にコンジュゲートまたはリンクしている。一実施形態では、増殖阻害剤は細胞傷害剤である。抗体の様々な実施形態では、増殖阻害剤は、化学療法剤(chemotherapeutic agent)、酵素、抗生物質、および毒素、例えば小分子毒素または酵素的に活性な毒素等、タキソイド、ビンカ、タキサン、マイタンシノイドまたはマイタンシノイドアナログ、トメイマイシンまたはピロロベンゾジアゼピン誘導体、クリプトフィシン誘導体、レプトマイシン誘導体、オーリスタチンまたはドラスタチンアナログ、プロドラッグ、トポイソメラーゼII阻害剤、DNAアルキル化剤、抗チューブリン剤、およびCC-1065またはCC-1065アナログからなる群から選択される。抗体の様々な実施形態では、増殖阻害剤は、N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-マイタンシン(DM1)またはN2’-デアセチル-N2’-(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-マイタンシン(DM4)である。例えば、増殖阻害剤はDM4である。
【0015】
様々な実施形態では、抗体は、開裂可能リンカーまたは開裂不能リンカーを介して、少なくとも1つの増殖阻害剤と共有結合的に連結している。抗体の様々な実施形態では、リンカーは、N-スクシニミジルピリジルジチオブチレート(SPDB)、4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)-2-スルホ-酪酸(スルホ-SPDB)、およびスクシニミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)からなる群から選択される。例えば、リンカーはSPDBである。
【0016】
様々な実施形態では、抗体はhuMAb2-3である。
【0017】
本発明の様々な実施形態では、対象は、腫瘍細胞集団において、50以上のパーセントスコアのhCEACAM5発現(強度2+および3+からなる)、例えば少なくとも約50以上、少なくとも約50~約80、少なくとも約80、または約100のパーセントスコアのhCEACAM5発現(強度2+および3+からなる)を有する。様々な実施形態では、hCEACAM5発現のパーセントは、腫瘍細胞集団の少なくとも約50%~約80%、腫瘍細胞集団の少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%である。様々な実施形態では、がんは、腫瘍細胞集団の少なくとも約50%、少なくとも約50%~約80%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%において、hCEACAM5を高発現する非扁平上皮非小細胞肺癌である。
【0018】
様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、静脈内に、例えば静脈内輸液により投与される。
【0019】
様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、最初の30分間に2.5mg/分の速度で投与される。様々な実施形態では、抗体の投与速度は、約30分後には5mg/分まで増加する。
【0020】
様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、対象の体表面積に基づき、5、10、20、30、40、60、80、100、120、150、180、または210mg/mの用量レベルで投与される。一実施形態によれば、抗体を含むイムノコンジュゲートは、対象の体表面積に基づき、100mg/mの用量レベル(漸増相期間中に決定された最大耐用量(MTD)に対応する)で投与される。
【0021】
様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、約2.5mg/m~約5mg/mの用量で投与される。例えば、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、約2.5mg/m~約5mg/mの用量で1時間投与される。用量として、2.5mg/mの抗体、5mg/mの抗体、および2.5mg/m~5mg/mの間のすべての用量、例えば2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、および4.75mg/mが挙げられる。様々な実施形態では、体表面積は、対象の身長および実際の身体を使用して計算される。
【0022】
様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは14日毎に投与される。様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは3週間毎に投与される。
【0023】
一実施形態では、本開示は、それを必要としている対象において、非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQNSCLC)を処置する際に使用するためのイムノコンジュゲートhuMAb2-3-SPDB-DM4を提示するが、該イムノコンジュゲートhuMAb2-3-SPDB-DM4は、100mg/mの用量レベルで2週間毎に投与される。
【0024】
一実施形態では、本開示は、それを必要としている対象において、非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQNSCLC)を処置する際に使用するためのイムノコンジュゲートhuMAb2-3-SPDB-DM4を提示するが、該イムノコンジュゲートhuMAb2-3-SPDB-DM4は、100mg/mの用量レベルで3週間毎に投与される。
【0025】
別の実施形態では、本開示は、それを必要としている対象において、非扁平上皮非小細胞肺がん(NSQNSCLC)を処置する際に使用するためのイムノコンジュゲートhuMAb2-3-SPDB-DM4を提示するが、該イムノコンジュゲートhuMAb2-3-SPDB-DM4は、150mg/mまたは170mg/mの初回用量レベル、次に100mg/mの用量レベルで2週間毎に投与される。
【0026】
様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを投与する前に、対象にはプレメディケーションが投与される。例えばプレメディケーションは、ヒスタミンH1アンタゴニストである。
【0027】
様々な実施形態では、ヒスタミンH1アンタゴニストは、ジジフェニルヒドラミンまたはデキスクロルフェニルアミンである。
【0028】
本発明の様々な実施形態では、対象は、非小細胞肺がんを処置するための薬剤または薬物を用いてこれまでに処置された。例えば、対象は、薬剤または薬物を用いて入念に事前処置され、および/または効果を有さずに処置された。本発明の様々な実施形態では、薬剤または薬物は、化学療法剤、血管新生阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ(ROS1)阻害剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される。本発明の様々な実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤および/またはPD-L1阻害剤ある。
【0029】
上記したような、使用するための抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートのいくつかの実施形態では、がんの少なくとも1つの症状の進行が、低下、低速化、停止、さもなければ良化される。これらの実施形態の特定の態様では、腫瘍増殖速度または腫瘍サイズは、抗体を用いた処置後に低下する。これらの実施形態のその他の態様では、発現細胞の発現パターン、強度、および割合は、がんの低下、低速化、または停止を示唆する。
【0030】
本開示は、本明細書に記載される抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提示する。
【0031】
本開示は、それを必要としている対象において、癌胎児抗原関連細胞接着分子が高発現しているがんを処置する際に使用するためのイムノコンジュゲートを提示するが、該イムノコンジュゲートは、hCEACAM5に特異的に結合し、そして上記したような抗体を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含み、がんの少なくとも1つの症状の進行が低下、低速化、停止し、さもなければ良化する。
【0032】
本開示は、それを必要としている対象において、NSQ NSCLCを処置する際に使用するためのイムノコンジュゲートを提示するが、該イムノコンジュゲートは、hCEACAM5に特異的に結合し、そして上記したような抗体を含むADCを含み、がんの少なくとも1つの症状の進行が、低下、低速化、停止し、さもなければ良化する。
【0033】
本開示は、入念に事前処置された、癌胎児抗原関連細胞接着分子高発現者である対象を処置する際に使用するためのイムノコンジュゲートを提示するが、該イムノコンジュゲートは、hCEACAM5に特異的に結合し、そして上記したような抗体を含むADCを含み、がんの少なくとも1つの症状の進行が低下、低速化、停止し、さもなければ良化する。
【0034】
様々な実施形態では、イムノコンジュゲートは、抗体huMAb2-3を含む。その場合、増殖阻害剤はDM4を含み;およびリンカーはSPDBを含む。様々な実施形態では、ADCはhuMAb2-3-SPDB-DM4を含む。
【0035】
様々な実施形態では、腫瘍増殖速度または腫瘍サイズは、イムノコンジュゲートを用いた処置の後に低下する。
【0036】
様々な実施形態では、発現細胞の発現パターン、強度、および割合は、がんの低下、低速化、または停止を示唆する。
【0037】
本開示は、本明細書に記載される抗体、または記載されるイムノコンジュゲート、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提示する。
【0038】
本開示は、それを必要としている対象において、癌胎児抗原関連細胞接着分子5が高発現しているがんを処置するための方法を提示するが、該方法はhCEACAM5に特異的に結合する抗体を投与する工程を含み、該抗体はVHおよびVLを含み、VHは3つの相補性決定領域、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ならびにVLは3つのCDR、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2はNTRのアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0039】
本開示は、それを必要としている対象において、NSQ NSCLCを処置するための方法を提示するが、該方法はhCEACAM5に特異的に結合する抗体を投与する工程を含み、該抗体はVHおよびVLを含み、VHは3つの相補性決定領域、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ならびにVLは3つのCDR、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、NTRのアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0040】
本開示は、がん治療薬を用いて事前処置された対象を処置するための方法を提示するが、該抗体はhCEACAM5に特異的に結合し、該抗体はVHおよびVLを含み、VHは3つの相補性決定領域、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を含み、ならびにVLは3つのCDR、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含み、HCDR1は配列番号3のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号4のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号5のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;LCDR2はNTRのアミノ酸配列を含み;およびLCDR3は配列番号7のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、対象は、癌胎児抗原関連細胞接着分子高発現者である。その他の実施形態では、対象は、非小細胞肺がんを処置するための薬剤または薬物を用いて事前処置された。その他の実施形態では、薬剤または薬物は、化学療法剤、血管新生阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ(ROS1)阻害剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される。これらの実施形態の特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤および/またはPD-L1阻害剤である。
【0041】
上記方法の様々な実施形態では、がんはNSQ NSCLCである。
【0042】
本方法の様々な実施形態では、VHは配列番号1を含む。本方法の様々な実施形態では、重鎖は配列番号8を含む。
【0043】
本方法の様々な実施形態では、VLは配列番号2を含む。本方法の様々な実施形態では、軽鎖は配列番号9を含む。
【0044】
本方法の様々な実施形態では、抗体は少なくとも1つの増殖阻害剤とコンジュゲートまたはリンクしている。例えば、増殖阻害剤は細胞傷害剤である。本方法の様々な実施形態では、増殖阻害剤は、化学療法剤、酵素、抗生物質、および毒素、例えば小分子毒素等または酵素的に活性な毒素、タキソイド、ビンカ、タキサン、マイタンシノイドまたはマイタンシノイドアナログ、トメイマイシンまたはピロロベンゾジアゼピン誘導体、クリプトフィシン誘導体、レプトマイシン誘導体、オーリスタチンまたはドラスタチンアナログ、プロドラッグ、トポイソメラーゼII阻害剤、DNAアルキル化剤、抗チューブリン剤、およびCC-1065またはCC-1065アナログからなる群から選択される。本方法の様々な実施形態では、増殖阻害剤はDM1またはDM4である。例えば、増殖阻害剤はDM4である。
【0045】
本方法の様々な実施形態では、抗体は、開裂可能リンカーまたは開裂不能リンカーを介して少なくとも1つの増殖阻害剤に共有結合的に連結している。本方法の様々な実施形態では、リンカーは、SPDB、スルホ-SPDB、およびSMCCからなる群から選択される。1つの実施形態では、リンカーはSPDBである。
【0046】
本方法の様々な実施形態では、抗体はhuMAb2-3である。本方法の様々な実施形態では、対象患者は、腫瘍細胞集団において、50以上のパーセントスコアのhCEACAM5発現(強度2+および3+からなる)を有する。例えば少なくとも約50以上、少なくとも約50~約80、少なくとも約80、または約100のパーセントスコアのhCEACAM5発現(強度2+および3+からなる)を有する。様々な実施形態では、hCEACAM5発現のパーセントは、腫瘍細胞集団の少なくとも約50%~約80%、腫瘍細胞集団の少なくとも約80%、または約100%である。本方法の様々な実施形態では、がんは、腫瘍細胞集団の少なくとも約50%、少なくとも約50%~約80%、少なくとも約80%、または約100%において、hCEACAM5を高発現する非扁平上皮非小細胞肺癌である。
【0047】
本方法の様々な実施形態では、抗体は、静脈内に、例えば静脈内輸液により投与される。
【0048】
本方法の様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、最初の30分間に2.5mg/分の速度で投与される。本方法の様々な実施形態では、抗体の投与速度は、30分後には5mg/分まで増加する。
【0049】
本方法の様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、対象の体表面積に基づき、5、10、20、30、40、60、80、100、120、150、180、または210mg/mの用量レベルで投与される。本方法の様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、約2.5mg/m~約5mg/mの用量で投与される。例えば、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、約2.5mg/m~約5mg/mの用量で1時間投与される。用量として、2.5mg/mの抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート、5mg/mの抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート、および2.5mg/m~5mg/mの間のすべての用量、例えば2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、および4.75mg/mが挙げられる。様々な実施形態では、体表面積計算は、対象の身長および実際の身体を使用してされる。
【0050】
本方法の様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、14日毎に投与される。様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、3週間毎に投与される。
【0051】
本方法の様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを投与する前に、対象にはプレメディケーションが投与され、例えばプレメディケーションはヒスタミンH1アンタゴニストである。本方法の様々な実施形態では、ヒスタミンH1アンタゴニストは、ジジフェニルヒドラミンまたはデキスクロルフェニルアミンである。
【0052】
本方法の様々な実施形態では、対象は、非小細胞肺がんを処置するための薬剤または薬物を用いてこれまでに処置された。例えば、薬剤または薬物は、化学療法剤、血管新生阻害剤、EGFR阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、受容体型チロシンキナーゼ(ROS1)阻害剤、および免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される。例えば、免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤および/またはPD-L1阻害剤である。
【0053】
上記方法のいくつかの実施形態では、がんの少なくとも1つの症状の進行が、低下、低速化、停止、さもなければ良化する。これらの実施形態の特定の態様では、腫瘍増殖速度または腫瘍サイズは、抗体を用いた処置の後に低下する。これらの実施形態のその他の態様では、発現細胞の発現パターン、強度、および割合は、がんの低下、低速化、または停止を示唆する。
【0054】
本開示は、本明細書に記載される抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提示する。
【0055】
本方法の様々な実施形態では、抗体は、hCEACAM5に特異的に結合し、そして本明細書に記載される任意の抗体を含むADCとして投与され、その場合、がんの少なくとも1つの症状の進行は、ADCを用いた投与/処置後に低下、低速化、停止し、さもなければ良化する。
【0056】
本方法の様々な実施形態では、ADCは抗体huMAb2-3を含み、その場合増殖阻害剤はDM4を含み、またリンカーはSPDBを含む。様々な実施形態では、ADCはhuMAb2-3-SPDB-DM4を含む。
【0057】
本方法の様々な実施形態では、腫瘍増殖速度および/または腫瘍サイズは、抗体および/またはイムノコンジュゲートを用いた処置後に低下する。
【0058】
本方法の様々な実施形態では、発現細胞の発現パターン、強度、および割合は、抗体および/またはイムノコンジュゲートを用いた処置の後のがんの低下、低速化、または停止を示唆する。
【0059】
本方法の様々な実施形態では、抗体および/またはイムノコンジュゲートは、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1A図1B、および図1Cは、染色強度1+、2+、3+の例をそれぞれ示す図である。
図2】保管用サンプル中の一元化されたCEACAM5発現のカテゴリーに基づき、huMAb2-3-SPDB-DM4を用いて処置された患者における最良の相対的腫瘍縮退の棒グラフを示す図である。患者のCEACAM5発現(2+/3+)は、50%未満、50%~80%、またはそれ以上である。PRは部分応答を意味する。SDは安定した疾患を意味する。PDは疾患の進行を意味する。
図3】CEACAM5高発現(肺)コホート内、および中程度の発現者コホートの患者内で処置された患者32例において観察された最良の相対的腫瘍縮退を例証する図である。患者のCEACAM5発現(2+/3+)は、50%未満または50%以上である。PRは部分応答を意味する。SDは安定した疾患を意味する。PDは疾患の進行を意味する。
図4】CEACAM5高発現(肺)コホート内で処置された患者32例における進行までの時間(TTP)を例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本開示は、NSQ NSCLCを処置するため、および疾患の少なくとも1つの症状を改善させるための医薬組成物、ならびにそのような組成物を使用する方法を提示する。このような組成物は、(CEACAM5)に特異的に結合する少なくとも1つの抗体を含み、例えば抗体は抗体huMAb2-3である。ADC huMAb2-3-SPDB-DM4は、huMAb2-3(抗CEACAM5)抗体と、微小管アセンブリを阻害する強力な抗有糸分裂剤であるマイタンシノイド誘導体4(DM4)とが合体したイムノコンジュゲートである。DM4は、血漿内で安定であり、かつ細胞内で開裂可能である最適化されたリンカーSPDB[N-スクシニミジル4-(2-ピリジルジチオ)-ブチレート]を介してhuMAb2-3と共有結合している。被標的がん細胞内で結合および内部移行した後、huMAb2-3-SPDB-DM4は分解されて、細胞傷害性のDM4代謝物を放出する。
【0062】
本明細書で使用される場合、CEACAM5が高発現しているがんとは、肺がんを含むいくつかのタイプを指す。いくつかの実施形態では、肺がんは非扁平上皮非小細胞肺がんである。特定の実施形態では、CEACAM5高発現者は、発現性腫瘍細胞集団の少なくとも50%において2+を上回る強度を有する。CEACAM5高発現者は、肺がんの約20%を占める。本明細書に記載されるADCは、DM4細胞傷害剤、SPDBリンカー、およびヒト化抗体huMAb2-3を含み、概念証明試験において投与された。データは、ADCが、肺がんのサブセットにおいて概念証明を実現したことを示す。
【0063】
ADCは、入念に事前処置されたCEACAM5高発現者を対象に第1相/2相試験において分析された。ADCは、3Lセッティングにおいて他に負けない全奏功率(Overall Response Rate)(ORR)および応答の期間(DoR)を示した。最も一般的な薬物有害反応(ADR)は、眼毒性(可逆的であり処置は中止されなかった)、および最低限度の血液学的/神経毒性であった。
【0064】
本明細書で使用される場合、「入念に事前処置された」とは、1ヶ月を超える対象の事前処置を指す。その他の実施形態では、入念に事前処置される対象は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24ヶ月を超える処置を施された。特定の実施形態では、事前処置は、1つまたはそれ以上のがん治療薬の投与である。
【0065】
非小細胞肺がん(NSCLC)
非小細胞肺がんは、悪性(がん)細胞が肺の組織内で形成される疾患である。喫煙が疾患の主要原因である。これは、小細胞肺癌以外の上皮肺がんの一種である。数種類の非小細胞肺がんが存在する。各種類の小細胞肺がんは、異なる種類のがん細胞を有する。各種類のがん細胞は、異なる方法で増殖および拡散する。非小細胞肺がんの種類は、がん内に見出される細胞の種類、および細胞が顕微鏡下でどのように見えるか、その見え方に応じて命名される:(1)扁平上皮癌:扁平上皮細胞において開始するがんであり、魚鱗にようにみえる薄く平らな細胞である。これは類表皮癌とも呼ばれる。(2)大細胞癌:数種類の大型の細胞において開始し得るがん。および(3)腺癌:肺胞の裏面を覆い、そして粘液等の物質を生成する細胞において開始するがん。
【0066】
ホジキンリンパ腫の処置についてブレンツキシマブベドチン、および再発型転移性HER2+乳がんの処置についてトラスツズマブエムタンシン(T-DM1)が最近承認されたことから実証されるように、ADCを使用して腫瘍細胞を選択的に標的とする強力な細胞傷害薬が、がんの処置に対する効果的戦略であることが近年明らかにされている。医学上の必要性が未だ満たされていない多くのその他の悪性疾患は、そのような治療オプションから利益を享受し得る。ADCの作用機序は、薬物の選択的かつ効率的な内部移行を実現するために、腫瘍細胞上で十分量発現している特異抗原とADCが結合することから開始する。
【0067】
根治手術が、ステージIのNSCLC患者にふさわしい標準的な医療である(例えば、肺切除術、肺葉切除術、区域切除術、または楔状切除術、スリーブ切除術)。アジュバント処置は、治験トライアルの一部としてのみ提供されるべきである。ステージIIおよびIIIAアジュバントシスプラチンに基づく化学療法が、完全に切除されたNSCLC腫瘍に対するゴールドスタンダードとして存続する。シスプラチンと組み合わせて、または相互に組み合わせて使用されるその他の化学療法剤として、カルボプラチン、パクリタキセル(タキソール)、アルブミン結合型パクリタキセル(nab(ナノ粒子アルブミン結合型)パクリタキセル、Abraxane)、ドセタキセル(タキソテール)、ゲムシタビン(Gemzar)、ビノレルビン(Navelbine)、イリノテカン(Camptosar)、エトポシド(VP-16)、ビンブラスチン、およびペメトレキセド(Alimta)を挙げることができる。さらに、放射線療法がN2リンパ節を有する患者で使用される。進行したステージIIIB/IVまたは手術不能のNSCLC ptsでは、処置として、複数サイクルのシスプラチンに基づく化学療法+第3世代細胞傷害剤または細胞増殖抑制薬(抗EGFR、抗VEGFR)を挙げることができる。
【0068】
肺がんを含むがんに対する処置として、血管新生阻害剤、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤、受容体型チロシンキナーゼROS1阻害剤、および免疫チェックポイント阻害剤を挙げることができる。
【0069】
血管新生阻害剤として、アキシチニブ(Inlyta)、ベバシズマブ(Avastin)、カボザンチニブ(Cometriq)、エベロリムス(Afinitor、Zortress)、レナリドマイド(Revlimid)、パゾパニブ(Votrient)、ラムシルマブ(Cyramza)、レゴラフェニブ(Stivarga)、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、サリドマイド(Synovir、Thalomid)、バンデタニブ(Caprelsa)、アフリベルセプト、およびZiv-アフリベルセプト(Zaltrap)を挙げることができるが、但しこれらに限定されない。
【0070】
上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤として、ゲフィチニブ(Iressa)、エルロチニブ(Tarceva)、ラパチニブ(Tykerb)、セツキシマブ(Erbitux)、ネラチニブ(Nerlynx)、オシメルチニブ(Tagrisso)、パニツムマブ(Vectibix)、バンデタニブ(Caprelsa)、ネシツムマブ(Protrazza)、およびダコミチニブ(Vizimpro)を挙げることができるが、但しこれらに限定されない。
【0071】
免疫チェックポイント阻害剤として、プログラム死1(PD-1)受容体(PD-1)結合剤(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ)、プログラム死-リガンド1(PD-L1)結合剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)、CTLA-4結合剤(例えば、イピリムマブ)、OX40またはOX40L結合剤、アデノシンA2A受容体結合剤、B7-H3結合剤、B7-H4結合剤、BTLA結合剤、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ結合剤、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)結合剤、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)結合剤、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェートNADPHオキシダーゼアイソフォーム(NOX2)結合剤、T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3(TIM-3)結合剤、T細胞活性化のV-ドメインIgサプレッサー(VISTA)結合剤、グルココルチコイド誘発型TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)結合剤、ならびにシアル酸結合免疫グロブリン型レクチン7(SIGLEC7)結合剤を挙げることができるが、但しこれらに限定されない。
【0072】
CEAおよびCEACAM
癌胎児抗原(CEA)は、細胞接着に関与する糖タンパク質である。CEAは、妊娠の最初の6ヶ月において胎児腸により通常発現されるタンパク質として1965年に初めて同定され(GoldおよびFreedman、J Exp Med、121巻、439頁、1965年)、また膵臓、肝臓、および結腸のがんにおいて見出された。CEAファミリーは免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。18個の遺伝子から構成されるCEAファミリーは、2つのタンパク質のサブグループ:癌胎児抗原関連細胞接着分子(CEACAM)サブグループ、および妊娠特異的糖タンパク質サブグループに細分化される。
【0073】
ヒトでは、CEACAMサブグループは、7つのメンバー:CEACAM1、CEACAM3、CEACAM4、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、およびCEACAM8から構成される。非常に多くの試験から、当初同定されたCEAと同一であるCEACAM5が、結腸直腸、胃、肺、乳房、前立腺、卵巣、子宮頸部、および膀胱の腫瘍細胞の表面上で高発現しており、またいくつかの正常な上皮組織、例えば結腸内の円柱上皮細胞やゴブレット細胞、胃内の胃腺頚部粘液細胞、ならびに食道および子宮頸部内の扁平上皮細等胞において弱く発現していることが明らかとなった。したがって、CEA-CAM5は、腫瘍を特異的に標的とするアプローチ、例えばイムノコンジュゲート等に適する治療目標を構成し得る。本発明は、CEACAM5を標的とする抗体を提供し、そして抗体は、リンカーを使用してin vivoで細胞傷害剤にコンジュゲートし、そしてNSQ NSCLCを有する対象に対して安全に投与されることを示す。データは、様々な肺がん細胞におけるhCEACAM5発現は、約50以上、約50~約80、または約100のパーセントスコア(強度2+、および3+からなる)であったことを示す。CEACAMファミリーメンバーの細胞外ドメインは、配列類似性に基づき、3つのタイプ、A、B、およびNに分類されている反復した免疫グロブリン様(Ig様)ドメインから構成される。CEACAM5は、7つのそのようなドメイン、すなわちN、A1、B1、A2、B2、A3、およびB3を含有する。
【0074】
CEACAM5の一方のA1、A2、およびA3ドメイン、および他方のB1、B2、およびB3ドメインは高い配列相同性を示し、ヒトCEACAM5のAドメインは84~87%、およびBドメインは69~80%のペアワイズ配列類似性を示す。さらに、その構造内にAドメインおよび/またはBドメインが存在するその他のヒトCEACAMメンバー、すなわちCEACAM1、CEACAM6、CEACAM7、およびCEACAM8は、ヒトCEACAM5と相同性を示す。特に、ヒトCEACAM6タンパク質のAドメインおよびBドメインは、ヒトCEACAM5のA1ドメインおよびA3ドメイン、ならびにB1~B3ドメインのいずれかと、それぞれ配列相同性を示し、ヒトCEA-CAM5のAドメインおよびBドメインにおいて観測される相同性より高くさえある。
【0075】
CEAを標的とした診断目的または治療目的の観点から、非常に多くの抗CEA抗体が生成された。関連する抗原に対する特異性が、この分野における懸念として、例えばSharkeyら(1990、Cancer Research 50巻,2823頁)により常に記載されてきた。上記相同性に起因して、これまでに記載された抗体のいくつかは、異なる免疫グロブリンドメイン中に存在するCEACAM5の反復性のエピトープと結合することから、その他のCEACAMメンバー、例えばCEACAM1、CEACAM6、CEACAM7、またはCEA-CAM8等に対して交差反応性を示し、CEACAM5に対する特異性に欠けることが実証される。CEA標的療法の観点から、ヒトCEACAM5発現腫瘍細胞と結合するが、しかしその他のCEACAMメンバーを発現するいくつかの正常組織とは結合しないような、抗CEACAM5抗体の特異性が望まれる。CEACAM1、CEACAM6、およびCEACAM8が、ヒトおよびヒト以外の霊長類の好中球により発現されるとして記載されており、それらが顆粒球形成を制御し、そして免疫応答において役割を演じていることが明らかにされていることは注目すべきである。
【0076】
抗CEACAM6抗体薬物コンジュゲート、例えばGenentech社により開発されたマイタンシノイド抗CEACAM6抗体等が記載されているが(Stricklandら、2009年、J Pathol,218巻、380頁)、ヒト以外の霊長類においてCEACAM6依存性の造血毒性を誘発することが明らかにされている。この毒性は、骨髄において抗体薬物コンジュゲートが蓄積すること、ならびに果粒球およびその細胞前駆体が枯渇することに起因し、著者らは主要な安全上の懸念とみなした。つまり、より正確には、治療を目的とした場合、抗CEACAM5抗体がCEACAM1、CEACAM6、CEACAM7、またはCEACAM8と交差反応することで、正常組織に対する毒性が高まることにより化合物の治療指数が減少し得る。したがって、CEACAMファミリーのその他の分子と交差反応せずにCEACAM5を特異的に標的とする抗体であって、特に抗体薬物コンジュゲート(ADC)として使用され、または標的細胞の殺傷を引き起こす何らかのその他の作用機序を有する抗体を得ることは非常に有利である。
【0077】
それに加えて、CEACAM5は、低レベルであるものの、一部の正常細胞組織において発現していることが記載されており、ヒトCEACAM5ならびにカニクイザル(Macaca Fascicularis)CEACAM5に結合する能力を有する抗CEACAM5抗体の開発は、そのような抗体を、その安全性プロファイルを評価するために、カニクイザルを対象として前臨床毒性学試験において容易にテストすることができるので重要である。治療抗体の有効性は標的内エピトープの位置に依存し得ることが明らかにされているので、機能的抗体の場合(Doernら、2009年、J.Biol.Chem,284巻,10254頁)、およびエフェクター機能が関係する場合(Beersら Semin Hematol,47巻:107~114頁)のいずれにおいても、ヒト/サル交差反応性抗体が、ヒトおよびカニクイザルタンパク質において、それらの共通する反復Ig様相同ドメイン内エピトープに結合することが明らかにされなければならない。
【0078】
そのような抗体の種間交差反応性に対する必要性と、ヒトおよびカニクイザルのCEACAM5に対する特異性(すなわち、その他のカニクイザルおよびヒトCEACAMメンバーとは交差反応性を有さない)とが相まって、ヒトおよびカニクイザルのCEACAMタンパク質間の全体的な配列相同性を踏まえれば、さらに複雑性の程度を高める。
【0079】
実際、カニクイザルのCEACAM5配列について、ヒトのCEACAM5配列(AAA51967.1/GI:180223、アミノ酸702個)に対して全体的ペアワイズアライメントを行っても、78.5%の同一性しか示さなかった。カニクイザルのCEACAM1、CEACAM5、およびCEACAM6遺伝子をクローン化し、そしてヒトおよびカニクイザルのA、B、およびNドメインの全体的アライメントを実施した。このアライメントから、ヒトとマカクCEACAM5に共通し、かつその他のあらゆるファミリーメンバーとは共有されない理想的なエピトープの位置がそこに限定されるような領域は、もしあっても非常にわずかしか存在しないことが予測された。これらの理由から、ヒトとカニクイザルのCEACAM5間で交差反応するが、その他のヒトおよびカニクイザルのCEACAMメンバーとは交差反応しない抗体を開発しようとしても、成功する確率は低いと予想された。注目すべきことに、これまでに記載された抗CEACAM5抗体は、カニクイザルの交差反応性についてほとんど報告されておらず、例外は非常に少ない(MT111)。
【0080】
抗ヒトCEACAM5抗体、例えばImmunomedics社のラベツズマブ(hMN14としても知られている、Sharkeyら、1995年,Cancer Research 55巻,5935頁)等は、臨床トライアルですでに使用されている。この抗体は、関連する抗原とは結合しないことが明らかにされているが、しかしカニクイザル由来のCEACAM5とも交差反応しない。注目すべきこととして、Micromet社のMT111抗体(MedImmune社のMEDI-565抗体としても知られている)は、ヒトCEA-CAM5およびヒトCD3と結合する二重特異性抗体である(Pengら、PLoS ONE 7巻(5):e3641頁;国際公開第2007/071426号)。MT111は、ヒトおよびカニクイザルのCEACAM5を認識する抗体に由来する単鎖可変断片(scFv)を、ヒトCD3を認識する抗体に由来するscFvと融合させることにより生み出されたといわれている。MT111は、その他のCEACAMファミリーメンバーと結合しないことも報告されている(Pengら、PLoS ONE 7巻(5):e3641頁)。MT111は、ヒトCEA-CAM5のA2ドメイン内にある高次構造エピトープと結合する。この高次構造エピトープは、ヒトCEACAM5のスプライスバリアント(腫瘍上で完全長CEACAM5と同時に発現している)では失われている(Pengら、PLoS ONE 7巻(5):e3641頁)。それに加えて、MT111がカニクイザルCEACAM5内の同一エピトープと結合するという証拠は存在しない。
【0081】
治療を目的して最適な特性を有する、CEACAM5表面タンパク質に対する新規抗体を生成するという試みにおいて、マウスが組換えタンパク質および腫瘍細胞を用いて免疫化された。有利なプロファイルを有する免疫グロブリン(IgG)のみを選択するために、CEACAMファミリーのいくつかの組換えタンパク質上でELISAを使用し、および関連する細胞系と共にフローサイトメトリーを使用しながら、数百ものハイブリドーマがスクリーニングされた。思いがけずに、ハイブリドーマクローンが選択し、所望の特性のすべてを含む対応する成熟IgGを生成することが可能であった。該IgGは、高親和性をもって、ヒトCEACAM5のA3-B3ドメインと特異的に結合し、かつヒトCEACAM1、CEACAM6、CEACAM7、およびCEACAM8タンパク質を認識しない。細胞の文脈において、この抗体は、腫瘍細胞に対して高い親和性(ナノモルの範囲)を示す。それに加えて、この抗体は、カニクイザルCEACAM5タンパク質とも結合し、サル/ヒトの親和性の比は10未満またはそれに等しい。
【0082】
CEACAM5のA3-B3ドメインを標的とすることにより、完全長ヒトCEACAM5、およびPengらにより同定されたそのスプライスバリアントの両方に結合する能力を有することから、この抗体は腫瘍標的能力が向上している。
【0083】
最後に、CEACAM5は、内部移行が不十分な表面タンパク質として文献に記載されており(Schmidtら、2008年,Cancer Immunol.Immunother.57巻,1879頁においてレビューされている)、したがって抗体薬物コンジュゲートにとって好ましい目標とはならない可能性がある。先行技術で報告されたものも顧みず、本発明者らは、上記文献の著者らが生み出した抗体は、結合後にCEACAM5-抗体複合体を内部移行させることができ、そして細胞傷害剤と合体した場合、腫瘍細胞上で細胞傷害活性をin vitroで誘発することを明らかにした。細胞傷害剤と合体した同一抗体は、ヒト原発性結腸および胃腫瘍を担持するマウスにおいて、腫瘍増殖を顕著に阻害することもできる。本明細書においてそのまま組み入れる国際公開第2014079886号を参照。
【0084】
定義
本明細書で使用される場合、定量的な用語における用語「約」とは、それが修飾する数値の±10%を指す(数値が細分化できない、例えば分子またはヌクレオチドの数等の場合には最も近傍の整数に丸められる)。例えば、慣用句「約100mg」は90mg~110mgを包含する(その数値を含む);慣用句「約2500mg」は、2250mg~2750mgを包含する。パーセントに適用されるとき、用語「約」とは、そのパーセントに対して±10%を指す。例えば、慣用句「約20%」は18~22%を包含し、および「約80%」は72~88%を含む(その数値を含む)。それに加えて、「約」が定量的な用語と連携して本明細書において使用される場合、数値±10%に付加して、該定量的な用語の正確な数値もやはり検討および記載されるものと理解されよう。例えば、用語「約23%」は、23%そのものについて明示的に検討、記載し、それを含む。
【0085】
用語「a」または「an」の実態とは、1つまたはそれ以上のその実態を指す;例えば、「a symptom(症状)」とは、1つまたはそれ以上の症状を表すものと理解されることに留意する。したがって、用語「a」(または「an」)、「1つまたはそれ以上(one or more)」、および「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書において交換可能に使用することができる。
【0086】
さらに、「および/または」は、本明細書で使用される場合、2つ所定の特性またはコンポーネントのそれぞれについて、その他方を含むまたは含まない特別な開示として受け取られる。したがって、用語「および/または」は、本明細書において、「Aおよび/またはB」等のような慣用句において使用される場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むように意図されている。同様に、用語「および/または」は、「A、B、および/またはC」等のような慣用句で使用される場合、下記の側面:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)のそれぞれを含むように意図されている。
【0087】
いくつかの側面が、言語「~を含む(comprising)」と共に本明細書に記載される場合には必ず、「~からなる(consisting of)」および/または「~から実質的になる(consisting essentially of)」の用語で記載される別の類似したいくつかの側面も提供されるものと理解されよう。
【0088】
本明細書で使用される場合、「CEACAM5」は、「CD66e」(表面抗原分類66e)またはCEAとしても知られている「癌胎児抗原関連細胞接着分子5」を指す。CEACAM5は、細胞接着に関与する糖タンパク質である。CEACAM5は、特に結腸直腸、胃、肺、および子宮の腫瘍細胞表面上で高発現している。
【0089】
シグナルペプチド(位置1~34)およびプロペプチド(位置686~702)を含む完全長ヒトCEACAM5の参照配列は、受託番号AAA51967.1(配列番号52)としてジェンバンクデータベースから入手可能である。白人集団において2%よりも高い頻度で5つの非同義SNPが同定されているが、そのうちの4つはヒトCEACAM5(配列番号58)のNドメイン(位置80、83、112、113)、最後の1つはA2ドメイン(位置398)に局所化している。ジェンバンクAAA51967.1は、主要なハプロタイプを含有する(I80、V83、I112、I113、およびE398)。
【0090】
本発明者らによりクローン化されたカニクイザルCEACAM5の細胞外ドメインの配列は、配列番号12に開示されている。参照によってそのまま組み入れる、国際公開第2014079886号も参照。
配列番号12
QLTIESRPFNVAEGKEVLLLAHNVSQNLFGYIWYKGERVDASRRIGSCVIRTQQITPGPAHSGRETIDFNASLLIQNVTQSDTGSYTIQVIKEDLVNEEATGQFRVYPELPKPYITSNNSNPIEDKDAVALTCEPETQDTTYLWWVNNQSLPVSPRLELSSDNRTLTVFNIPRNDTTSYKCETQNPVSVRRSDPVTLNVLYGPDAPTISPLNTPYRAGEYLNLTCHAASNPTAQYFWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYMCQAHNSATGLNRTTVTAITVYAELPKPYITSNNSNPIEDKDAVTLTCEPETQDTTYLWWVNNQRLSVSSRLELSNDNRTLTVFNIPRNDTTFYECETQNPVSVRRSDPVTLNVLYGPDAPTISPLNTPYRAGENLNLSCHAASNPAAQYFWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYMCQAHNSATGLNRTTVTAITVYVELPKPYISSNNSNPIEDKDAVTLTCEPVAENTTYLWWVNNQSLSVSPRLQLSNGNRILTLLSVTRNDTGPYECGIQNSESAKRSDPVTLNVTYGPDTPIISPPDLSYRSGANLNLSCHSDSNPSPQYSWLINGTLRQHTQVLFISKITSNNNGAYACFVSNLATGRNNSIVKNISVSSGDSAPGSSGLSA
【0091】
「ドメイン」は、タンパク質の任意の領域であり得、配列相同性に基づいて一般的に定義され、多くの場合、特定の構造的または機能的実体と関連する。CEACAMファミリーメンバーはIg様ドメインから構成されることが公知である。ドメインという用語は、個々のIg様ドメイン、例えば「Nドメイン」等、または連続したドメインの群、例えば「A3-B3ドメイン」等を指すのに本文書では使用される。
【0092】
ヒトCEACAM5のドメインの成り立ちは、以下の通りである(ジェンバンクAAA51967.1に基づく;配列番号13):
配列番号13
MESPSAPPHRWCIPWQRLLLTASLLTFWNPPTTAKLTIESTPFNVAEGKEVLLLVHNLPQHLFGYSWYKGERVDGNRQIIGYVIGTQQATPGPAYSGREIIYPNASLLIQNIIQNDTGFYTLHVIKSDLVNEEATGQFRVYPELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPETQDATYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDTASYKCETQNPVSARRSDSVILNVLYGPDAPTISPLNTSYRSGENLNLSCHAASNPPAQYSWFVNGTFQQSTQELFIPNITVNNSGSYTCQAHNSDTGLNRTTVTTITVYAEPPKPFITSNNSNPVEDEDAVALTCEPEIQNTTYLWWVNNQSLPVSPRLQLSNDNRTLTLLSVTRNDVGPYECGIQNELSVDHSDPVILNVLYGPDDPTISPSYTYYRPGVNLSLSCHAASNPPAQYSWLIDGNIQQHTQELFISNITEKNSGLYTCQANNSASGHSRTTVKTITVSAELPKPSISSNNSKPVEDKDAVAFTCEPEAQNTTYLWWVNGQSLPVSPRLQLSNGNRTLTLFNVTRNDARAYVCGIQNSVSANRSDPVTLDVLYGPDTPIISPPDSSYLSGANLNLSCHSASNPSPQYSWRINGIPQQHTQVLFIAKITPNNNGTYACFVSNLATGRNNSIVKSITVSASGTSPGLSAGATVGIMIGVLVGVALI
【0093】
【表1】
【0094】
したがって、ヒトCEACAM5のA3-B3ドメインは、配列番号13の位置499~685に位置するアミノ酸から構成される。
【0095】
カニクイザルCEACAM5のドメインの成り立ちは以下の通りである(クローン化された細胞外ドメイン配列;配列番号12に基づく):
【0096】
【表2】
【0097】
したがって、カニクイザルCEACAM5のA3-B3ドメインは、配列番号53の位置465~654に位置するアミノ酸から構成される。
【0098】
「コーディング配列」または発現産物、例えばRNA、ポリペプチド、タンパク質、または酵素等「をコードする」配列は、発現されると、当該RNA、ポリペプチド、タンパク質、または酵素の生成を引き起こすヌクレオチド配列であり、すなわちヌクレオチド配列は、当該ポリペプチド、タンパク質、または酵素に対応するアミノ酸配列をコードする。タンパク質に対応するコーディング配列は、開始コドン(通常ATG)および終止コドン含む場合もある。
【0099】
本明細書で使用される場合、特異的タンパク質(例えば、抗体)と呼ぶ場合、天然型のアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびにバリアントおよび修飾された形態が含まれ、その起源または調製方式を問わない。天然型のアミノ酸配列を有するタンパク質は、天然界から得られるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有するタンパク質である。そのような天然配列のタンパク質は、天然界から単離可能、または標準的な組換えおよび/または合成方法を使用して調製可能である。天然配列のタンパク質は、天然に存在するトランケートされたまたは可溶性の形態、天然に存在するバリアント形態(例えば、選択的にスプライスされた形態)、天然に存在する対立遺伝子バリアント、および翻訳後修飾を含む形態を特に含む。天然配列のタンパク質は、翻訳後修飾、例えばいくつかのアミノ酸残基のグリコシル化、またはリン酸化、またはその他の修飾等を有するタンパク質を含む。
【0100】
用語「遺伝子」とは、1つまたはそれ以上のタンパク質または酵素の全部または一部を含む、アミノ酸の特定の配列をコードする、またはそれに対応するDNA配列であって、例えば遺伝子が発現する条件を決定する制御DNA配列、例えばプロモーター配列等を含む場合もあれば、含まない場合もあるDNA配列を意味する。構造遺伝子ではないいくつかの遺伝子は、DNAからRNAに転写されるが、しかしアミノ酸配列に翻訳されない。その他の遺伝子は、構造的遺伝子の制御因子として、またはDNA転写の制御因子として機能し得る。特に、遺伝子という用語は、タンパク質をコードするゲノム配列、すなわち制御因子、プロモーター、イントロン、およびエクソン配列を含む配列を意図し得る。
【0101】
「配列同一性」の割合(%)は、比較ウィンドウにおいて最適にアライメントされた2つの配列を比較することにより決定されるが、その場合、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列を最適にアライメントするために、参照配列(付加または欠損を含まない)と比較して付加または欠損(すなわち、ギャップ)を含み得る。割合(%)は、両方の配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が生ずる位置の数を決定して一致した位置の数を求め、それを比較ウィンドウ内の位置の合計数で割り算し、その結果に100を掛けて配列同一性の割合(%)を求めることにより計算される。比較のための最適な配列アライメントが、例えば、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(Mol.Biol.48巻:443頁(1970年))を使用する、グローバルペアワイズアライメントにより実施される。配列同一性の割合(%)は、例えばBLOSUM62マトリックス、および下記のパラメーター、すなわちギャップオープン=10、ギャップエクステンド=0.5と共に、Needleプログラムを使用して容易に決定可能である。
【0102】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似した化学特性(例えば、電荷、サイズ、または疎水性)を備える側鎖R基を有する別のアミノ酸残基に置換する置換である。一般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。類似した化学特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の群の例として、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;2)脂肪族ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン;3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン;6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸;ならびに7)イオウ含有側鎖:システインおよびメチオニンが挙げられる。保存的アミノ酸置換基は、アミノ酸のサイズに基づいて定義される場合もある。
【0103】
本開示には、CEACAM5と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を対象に投与する工程を含む方法が含まれる。本明細書で使用される場合、用語「hCEACAM5」とは、ヒトCEACAM5に特異的に結合するヒトサイトカイン受容体を意味する。特定の実施形態では、患者に投与される抗体は、hCEACAM5の少なくとも1つのドメインと特異的に結合する。
【0104】
ヒトおよびカニクイザルのCEACAM5タンパク質のいずれにも高親和性を示し、かつヒトのCEACAM1、CEACAM6、CEACAM7、およびCEACAM8タンパク質、ならびにカニクイザルのCEACAM1、CEACAM6、およびCEACAM8タンパク質と有意に交差反応しない特異的マウス抗CEACAM5抗体を生成、スクリーニング、および選択するために、試験を実施した。
【0105】
いわゆる「抗体MAb1」は:
-配列
【化3】
(配列番号14、CDRを太文字で示す)からなる重鎖の可変ドメインであって、FR1-Hがアミノ酸位置1~25を占め、CDR1-Hがアミノ酸位置26~33を占め、FR2-Hがアミノ酸位置34~50を占め、CDR2-Hがアミノ酸位置51~58を占め、FR3-Hがアミノ酸位置59~96を占め、CDR3-Hがアミノ酸位置97~109を占め、およびFR4-Hがアミノ酸位置110~120を占める重鎖の可変ドメインと、
-配列
【化4】
(配列番号15、CDRを太文字で示す)からなる軽鎖の可変ドメインであって、FR1-Lがアミノ酸位置1~26を占め、CDR1-Lがアミノ酸位置27~32を占め、FR2-Lがアミノ酸位置33~49を占め、CDR2-Lがアミノ酸位置50~52を占め、FR3-Lがアミノ酸位置53~88を占め、CDR3-Lがアミノ酸位置89~98を占め、およびFR4-Lがアミノ酸位置99~108を占める軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0106】
いわゆる「抗体MAb2」は:
-配列
【化5】
(配列番号16、CDRを太文字で示す)からなる重鎖の可変ドメインであって、FR1-Hがアミノ酸位置1~25を占め、CDR1-Hがアミノ酸位置26~33を占め、FR2-Hがアミノ酸位置34~50を占め、CDR2-Hがアミノ酸位置51~58を占め、FR3-Hがアミノ酸位置59~96を占め、CDR3-Hがアミノ酸位置97~109を占め、およびFR4-Hがアミノ酸位置110~120を占める重鎖の可変ドメインと、
-配列
【化6】
(配列番号17、CDRを太文字で示す)からなる軽鎖の可変ドメインであって、FR1-Lがアミノ酸位置1~26を占め、CDR1-Lがアミノ酸位置27~32を占め、FR2-Lがアミノ酸位置33~49を占め、CDR2-Lがアミノ酸位置50~52を占め、FR3-Lがアミノ酸位置53~88を占め、CDR3-Lがアミノ酸位置89~97を占め、およびFR4-Lがアミノ酸位置98~107を占める軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0107】
抗体MAb2のバリアントは、CDR2-L内にK52R置換を導入することによってもやはり生成された。本明細書において「Mab2K52R」と呼ばれるこのバリアントは、ヒトおよびカニクイザルのCEACAM5に対して、MAb2と実質的に同一の親和性を有する。
【0108】
いわゆる「抗体MAb3」は:
-配列
【化7】
(配列番号18、CDRを太文字で示す)からなる重鎖の可変ドメインであって、FR1-Hがアミノ酸位置1~25を占め、CDR1-Hがアミノ酸位置26~33を占め、FR2-Hがアミノ酸位置34~50を占め、CDR2-Hがアミノ酸位置51~57を占め、FR3-Hがアミノ酸位置58~95を占め、CDR3-Hがアミノ酸位置96~108を占め、およびFR4-Hがアミノ酸位置109~119を占める重鎖の可変ドメインと
-配列
【化8】
(配列番号19、CDRを太文字で示す)からなる軽鎖の可変ドメインであって、FR1-Lがアミノ酸位置1~26を占め、CDR1-Lがアミノ酸位置27~32を占め、FR2-Lがアミノ酸位置33~49を占め、CDR2-Lがアミノ酸位置50~52を占め、FR3-Lがアミノ酸位置53~88を占め、CDR3-Lがアミノ酸位置89~98を占め、およびFR4-Lがアミノ酸位置99~108を占める軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0109】
いわゆる「抗体MAb4」は:
-配列
【化9】
(配列番号20、CDRを太文字で示す)からなる重鎖の可変ドメインであって、FR1-Hがアミノ酸位置1~25を占め、CDR1-Hがアミノ酸位置26~33を占め、FR2-Hがアミノ酸位置34~50を占め、CDR2-Hがアミノ酸位置51~58を占め、FR3-Hがアミノ酸位置59~96を占め、CDR3-Hがアミノ酸位置97~109を占め、およびFR4-Hがアミノ酸位置110~120を占める重鎖の可変ドメインと
-配列
【化10】
(配列番号21、CDRを太文字で示す)からなる軽鎖の可変ドメインであって、FR1-Lがアミノ酸位置1~26を占め、CDR1-Lがアミノ酸位置27~32を占め、FR2-Lがアミノ酸位置33~49を占め、CDR2-Lがアミノ酸位置50~52を占め、FR3-Lがアミノ酸位置53~88を占め、CDR3-Lがアミノ酸位置89~97を占め、およびFR4-Lがアミノ酸位置98~107を占める軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0110】
いわゆる「抗体MAb5」は:
-配列
【化11】
(配列番号22、CDRを太文字で示す)からなる重鎖の可変ドメインであって、FR1-Hがアミノ酸位置1~25を占め、CDR1-Hがアミノ酸位置26~33を占め、FR2-Hがアミノ酸位置34~50を占め、CDR2-Hがアミノ酸位置51~58を占め、FR3-Hがアミノ酸位置59~96を占め、CDR3-Hがアミノ酸位置97~109を占め、およびFR4-Hがアミノ酸位置110~120を占める重鎖の可変ドメインと、
-配列
【化12】
(配列番号23、CDRを太文字で示す)からなる軽鎖の可変ドメインであって、FR1-Lがアミノ酸位置1~26を占め、CDR1-Lがアミノ酸位置27~32を占め、FR2-Lがアミノ酸位置33~49を占め、CDR2-Lがアミノ酸位置50~52を占め、FR3-Lがアミノ酸位置53~88を占め、CDR3-Lがアミノ酸位置89~97を占め、およびFR4-Lがアミノ酸位置98~107を占める軽鎖の可変ドメインと
を含む。
【0111】
これらの抗体の複数の変化型およびバリアントは、参照によってそのまま組み入れる国際公開第2014079886号に記載されている。一実施形態では、本発明の抗体は、抗体huMAb2-3またはそのバリアント、すなわちヒトおよびカニクイザルのCEACAM5タンパク質のA3-B3ドメインと結合する単離された抗体であり、そして:
a)配列番号8の配列、もしくはそれに対して少なくとも85%同一の配列からなる重鎖;または
b)配列番号9の配列、もしくはそれに対して少なくとも85%同一の配列からなる軽鎖、または
重鎖および軽鎖を含む。
【0112】
様々な実施形態では、本発明は、ヒトおよびカニクイザルのCEACAM5と結合する抗体に関する。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトおよびカニクイザルのCEACAM5のA3-B3ドメインと結合する。より具体的には、抗体は、ヒトおよびカニクイザルのA3-B3ドメインと、それが単離された形態として発現されるか、または可溶性細胞外ドメイン中に存在するか、または膜係留型完全長CEACAM5タンパク質であるか、それらとは無関係に結合することができる。
【0113】
白人集団において2%よりも高い頻度のSNPは、ヒトCEACAM5のA3-B3ドメインにおいて報告されておらず、CEACAM5上の抗体エピトープ(複数可)が集団の一部で変化しているというリスクが最低限に抑えられるので、抗体がこのドメインに対して特異的であることが有利である。
【0114】
一実施形態によれば、本発明による抗体は、ヒトおよびカニクイザルのCEACAM5表面タンパク質に対して特異的である。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒトCEACAM1、ヒトCEACAM6、ヒトCEACAM7、ヒトCEACAM8、カニクイザルCEACAM1、カニクイザルCEACAM6、およびカニクイザルCEACAM8タンパク質と結合しない、または有意に交差反応しない。
【0115】
様々な実施形態では、抗体は、上記ヒトおよびカニクイザルのCEACAMタンパク質の細胞外ドメインと結合しない、または有意に交差反応しない。
【0116】
ヒトCEACAM1完全長タンパク質は、受託番号NP_001703.2としてジェンバンクデータベースにおいて入手可能である。ヒトCEACAM1の細胞外ドメインは、このタンパク質の位置35~428を占めるアミノ酸から構成される。ヒトCEACAM6完全長タンパク質は、受託番号NP_002474.3としてジェンバンクデータベースにおいて入手可能である。ヒトCEACAM6の細胞外ドメインは、このタンパク質の位置35~327を占めるアミノ酸から構成される。
【0117】
ヒトCEACAM7完全長タンパク質は、受託番号NP_008821.1としてジェンバンクデータベースにおいて入手可能である。ヒトCEACAM7の細胞外ドメインは、このタンパク質の位置36~248を占めるアミノ酸から構成される。
【0118】
ヒトCEACAM8完全長タンパク質は、受託番号NP_001807.2としてジェンバンクデータベースにおいて入手可能である。ヒトCEACAM8の細胞外ドメインは、このタンパク質の位置35~332を占めるアミノ酸から構成される。
【0119】
カニクイザルのCEACAM1細胞外ドメインは、完全長タンパク質の位置35~428を占めるアミノ酸、すなわちタンパク質のアミノ酸1~394から構成される。
【0120】
カニクイザルのCEACAM6細胞外ドメインは、完全長タンパク質の位置35~327を占めるアミノ酸、すなわちタンパク質のアミノ酸1~293から構成される。
【0121】
カニクイザルのCEACAM8細胞外ドメインは、完全長タンパク質の位置35~332を占めるアミノ酸、すなわちタンパク質のアミノ酸1~298から構成される。
【0122】
用語「抗体」とは、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合により相互接続した4本のポリペプチド鎖、すなわち2本の重鎖(H)および2本の軽鎖(L)を含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHとして省略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLとして省略される)、および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域と混在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化される。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、次の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。いくつかの実施形態では、抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖細胞系配列のFRと同一であり得る、また自然にまたは人工的に改変される場合がある。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれより多くのCDRのサイドバイサイド分析に基づき定義することができる。
【0123】
用語「抗体」には、本明細書で使用される場合、完全な抗体分子の抗原結合断片も含まれる。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」等の用語には、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在し、酵素的に取得可能であり、合成または遺伝子工学的に操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質が含まれる。抗体の抗原結合断片は、任意の適する標準的な技術、例えばタンパク質消化、または抗体の可変ドメインおよび場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を伴う組換え遺伝子工学技術等を使用して、例えば完全な抗体分子から誘導することができる。そのようなDNAは公知であり、および/または例えば商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であり、または合成することも可能である。例えば1つもしくはそれ以上の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適なコンフィギュレーションに配置するため、またはコドンを導入するため、システイン残基を創出するため、アミノ酸を修飾、付加、もしくは削除する等のために、DNAは、化学的にまたは分子生物学技術を使用することにより配列決定および操作可能である。
【0124】
抗原結合断片の非限定的な例として:(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)単鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の高度可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最低限度の認識ユニット(例えば単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド、または限定されたFR3-CDR3-FR4ペプチド等が挙げられる。その他の工学操作された分子、例えばドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠損抗体(domain-deleted antibody)、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、1価のナノボディおよび2価のナノボディ)、小型モジュラー免疫医薬品(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメイン等も、本明細書で使用される場合、表現「抗原結合断片」に包含される。
【0125】
抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの可変ドメインを一般的に含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のドメインであり得、そして1つまたはそれ以上のフレームワーク配列と隣接しまたはインフレームの関係にある少なくとも1つのCDRを一般的に含む。VLドメインと会合したVHドメインを有する抗原結合断片では、VHおよびVLドメインは、任意の適する配置で互いに相対して位置し得る。例えば、可変領域はダイマー性であり得、そしてVH-VH、VH-VL、またはVL-VLダイマーを含有する。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VHドメインまたはVLドメインを含有し得る。
【0126】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインと共有的にリンクした少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。抗体の抗原結合断片内に見出すことができる、可変および定常ドメインの非限定的な代表的コンフィギュレーションとして:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLが挙げられる。上記列挙した代表的コンフィギュレーションのいずれかを含む、可変および定常ドメインの任意のコンフィギュレーションにおいて、可変および定常ドメインは、互いに直接リンクし得る、または完全もしくは部分的ヒンジまたはリンカー領域によりリンクし得る。ヒンジ領域は、様々な実施形態において、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個またはそれ超)のアミノ酸(単一のポリペプチド分子内の隣接した可変および/または定常ドメインの間で可撓性または半可撓性の結びつきをもたらす)から構成される場合がある。それに加えて、抗体の抗原結合断片は、様々な実施形態において、互いに、および/または1つもしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメインと非共有結合的に会合した(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)状態で、上記列挙した可変および定常ドメインコンフィギュレーションのいずれかのホモダイマーまたはヘテロダイマー(またはその他の多量体)を含む場合がある。
【0127】
特殊な実施形態では、本発明の方法で使用するための抗体または抗体断片は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であり得る、または1つより多くの標的ポリペプチドのエピトープに対して特異的な抗原結合ドメインを含有し得る多重特異性抗体であり得る。本発明の文脈において使用可能である代表的な二重特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメインおよび第2のIgCH3ドメインの使用と関係し、第1および第2のIgCH3ドメインは互いに少なくとも1つのアミノ酸だけ異なり、また少なくとも1つのアミノ酸の差異は、アミノ酸の差異が欠けている二重特異性抗体と比較して、二重特異性抗体のプロテインAに対する結合を低下させる。1つの実施形態では、第1のIgCH3ドメインはプロテインAに結合し、そして第2のIgCH3ドメインはプロテインA結合を低下させまたは阻害する突然変異、例えばH95R(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングによればH435R)の改変等を含有する。第2のCH3は、Y96Fの改変(IMGTによる;EUによればY436F)をさらに含み得る。第2のCH3に見出され得るさらなる改変として:IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる;EUによればD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I);IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGT;EUによればN384S、K392N、およびV422I);ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる;EUによれば、Q355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)が挙げられる。上記二重特異性抗体フォーマット上の変化が、本発明の範囲内で検討される。本明細書で開示される代表的二重特異性抗体フォーマットを含む、任意の多重特異性抗体フォーマットは、様々な実施形態において、抗CEACAM5抗体の抗原結合断片の文脈において使用されるように、当技術分野において利用可能なルーチン技術を使用して適合させることができる。
【0128】
本明細書で開示されるCEACAM5抗体は、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域内に、対応する生殖細胞系配列と比較して1つもしくはそれ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠損を含み得る。そのような突然変異は、本明細書で開示されるアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系配列と比較することにより、容易に確認することができる。本発明は、本明細書で開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片を含むが、その場合、1つまたはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸は、対応する生殖細胞系の残基(複数可)または対応する生殖細胞系の残基(複数可)の保存的アミノ酸置換(天然または非天然)に復帰するように突然変異している(そのような配列変化は、本明細書では「生殖細胞系復帰突然変異」と呼ぶ)。当業者は、本明細書で開示される重鎖および軽鎖可変領域配列から始めて、1つまたはそれ以上の個々の生殖細胞系復帰突然変異またはその組み合わせを含む非常に多くの抗体および抗原結合断片を容易に生み出すことができる。特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のすべてのフレームワーク残基および/またはCDR残基は、生殖細胞系配列に復帰するように突然変異している。その他の実施形態では、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に見出される突然変異した残基のみ、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3内に見出される突然変異した残基のみが生殖細胞系配列に復帰するように突然変異している。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つまたはそれより多くの生殖細胞系復帰突然変異の任意の組み合わせを含有する場合があり、すなわち、特定の個々の残基は生殖細胞系配列に復帰するように突然変異している一方、生殖細胞系配列とは異なる特定のその他の残基は維持される。ひとたび取得されると、1つまたはそれ以上の生殖細胞系復帰突然変異を含有する抗体および抗原結合断片は、1つまたはそれ以上の所望の特性、例えば結合特異性の改善、結合親和性の向上、拮抗的または作動的生物学的特性の改善または強化(場合に応じて)、免疫原性の低下等について容易にテストすることができる。この一般的な方式で得られた抗体および抗原結合断片は、本発明内に包含される。
【0129】
抗体の定常領域は、抗体が補体を固定し、そして細胞依存性細胞傷害性に関与する能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、細胞傷害性に関与することが抗体にとって望ましいか否かに基づいて選択することができる。
【0130】
用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を含むように意図されている。それにもかかわらず、本開示で取り上げたヒト抗体は、様々な実施形態において、例えばCDRおよびいくつかの実施形態ではCDR3内に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発により、またはin vivoでの体細胞突然変異により導入された突然変異)を含む場合がある。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種、例えばマウス等の生殖細胞系に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフト化されている抗体を含むようには意図されない。
【0131】
用語「組み換えヒト抗体」は、本明細書で使用される場合、組換え手段により調製、発現、創出、または単離されたすべてのヒト抗体、例えば宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(以下にさらに記載される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(以下にさらに記載される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、参照によって本明細書にそのまま組み入れるTaylorら、(1992)Nucl.Acids Res.20巻:6287~6295頁を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列をその他のDNA配列にスプライシングすることと関係する任意のその他の手段により調製、発現、創出、または単離された抗体等を含むように意図されている。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。特定の実施形態では、しかしながら、そのような組換えヒト抗体は、in vitroでの突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用される場合、in vivoでの体細胞突然変異誘発)が施され、したがって組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VHおよびVL配列に由来しそれと関連するものの、in vivoではヒト抗体生殖細胞系レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0132】
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性と関連する2つの形態で存在し得る。一実施形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって共に保持されている、およそ150~160kDaの安定な4つの鎖状コンストラクトを含む。別の実施形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介してリンクしておらず、共有結合的にカップリングした軽鎖および重鎖(半抗体)から構成された約75~80kDaの分子が形成される。これらの実施形態/形態は、親和性精製後でさえも分離するのが極めて困難であった。
【0133】
用語「ヒト化抗体(humanised antibody)」または「ヒト化抗体(humanized antibody)」とは、全体的または部分的にヒト以外を起源とし、そしてヒトで生ずる免疫応答を回避または最低限に抑えるために、例えばVHおよびVLドメインのフレームワーク領域において、特定のアミノ酸を置き換えるように改変されている抗体を指す。ヒト化抗体の定常ドメインは、ほとんどの場合ヒトCHおよびCLドメインである。
【0134】
抗体配列をヒト化(humanisation)/ヒト化(humanization)するための非常に多くの方法が当技術分野において公知である;例えば、AlmagroおよびFransson(2008)Front Biosci.13巻:1619~1633頁によるレビューを参照。1つの一般的に使用される方法はCDRグラフティングまたは抗体再成形であり、ドナー抗体、一般的にはマウス抗体のCDR配列を異なる特異性のヒト抗体フレームワークスキャフォールド中にグラフティングすることと関係する。CDRグラフティングは、ヒト以外のCDRグラフト化抗体の結合特異性および親和性、したがって生物学的活性を低下させる可能性があるので、親抗体の結合特異性および親和性を保持するために、CDRグラフト化抗体の選択された位置に復帰突然変異が導入される場合もある。考え得る復帰突然変異に対応する位置の特定は、文献および抗体データベースにおいて利用可能な情報を使用して実施可能である。復帰突然変異の候補であるアミノ酸残基は、一般的に抗体分子の表面に位置する残基である一方、埋没残基または表面露出度が低い残基は通常変更されない。CDRグラフティングおよび復帰突然変異に対する代替的ヒト化技術は、ヒト以外を起源とする非表面露出残基が保持される一方、表面残基はヒトの残基に変化しているリサーフェイシングである。別の代替的技術は、「ガイド式選択(guided selection)」(Jespersら(1994年)、Biotechnology 12巻、899頁)として公知であり、また親抗体のエピトープおよび結合特性を保存する完全ヒト抗体をマウス抗体から誘導するのに使用可能である。
【0135】
様々な天然型のIgGアイソタイプにおいて第2の形態が出現する頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプと関連する構造的差異に起因するが、但しこれらに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域内で1つのアミノ酸が置換するだけでも、第2の形態の出現は(参照によってそのまま組み入れるAngalら、(1993年)Molecular Immunology 30巻:105頁)、ヒトIgG1ヒンジを使用したときに一般的に観察されるレベルまで有意に低下する可能性がある。本開示は、様々な実施形態において、例えば生産において所望の抗体形態の収率を改善するのに望ましいと考えられる、ヒンジ、CH2、またはCH3領域内の1つもしくはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
【0136】
「単離された抗体」とは、本明細書で使用される場合、その天然環境の少なくとも1つのコンポーネントから同定および分離され、および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つのコンポーネントから、または抗体が天然に存在するもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離もしくは取り出された抗体が、「単離された抗体」である。様々な実施形態では、単離された抗体には、組換え細胞中のin situ抗体も含まれる。その他の実施形態では、単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程が施された抗体である。様々な実施形態では、単離された抗体は、その他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないと考えられる。
【0137】
用語「特異的に結合する」等は、抗体またはその抗原結合断片が、抗原と生理的条件下で比較的安定な複合体を形成することを意味する。抗体が抗原と特異的に結合するかその結合を判断する方法は、当技術分野において周知されており、また例えば平衡透析、表面プラズモン共鳴等が挙げられる。例えば、CEACAM5に「特異的に結合する抗体」には、本明細書で使用される場合、表面プラズモン共鳴アッセイ法において測定される場合、約1000nM未満、約500nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM、または約0.5nM未満のKDを有して、CEACAM5またはその部分に結合する抗体が含まれる。特異的結合は、少なくとも約1×10-6Mまたはそれより小さい解離定数によっても特徴づけることができる。その他の実施形態では、解離定数は、少なくとも約1×10-7M、1×10-8M、または1×10-9Mである。ヒトCEACAM5に特異的に結合する単離された抗体は、しかしながら、その他の抗原、例えばその他(ヒト以外)の種に由来するCEACAM5分子等に対して交差反応性を有する場合がある。
【0138】
用語「表面プラズモン共鳴」とは、本明細書で使用される場合、例えば、BIACOREシステム(GE Healthcare社のBiacore Life Sciences部門、Piscataway、NJ)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタイム相互作用分析を可能にする光学現象を指す。
【0139】
用語「KD」とは、本明細書で使用される場合、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すように意図されている。
【0140】
「親和性」は、理論的には、全抗体と抗原との間の平衡会合により定義される。親和性は、様々な公知の方法、例えば表面プラズモン共鳴法を用いて会合および解離速度を測定すること、または免疫化学アッセイ法(ELISA、FACS)においてEC50(もしくは見かけのKD)を測定すること等により実験的に評価することができる。このアッセイでは、EC50は、ELISA(酵素結合型免疫吸着アッセイ法)による場合は抗原の定義された濃度において、またはFACS(蛍光活性化セルソーティング法)による場合は抗原を発現する細胞上で所定の時間曝露した後に、ベースライン-最大応答間の1/2の応答を誘発する抗体の濃度である。
【0141】
抗原1(Ag1)と結合するモノクロナール抗体は、抗原1(Ag1)および抗原2(Ag2)についてEC50が類似した範囲内にあるとき、Ag2に対して「交差反応性」である。本出願において、親和性がAg1およびAg2について同一の方法を用いて測定され、Ag1の親和性に対するAg2の親和性の比が10に等しいまたはそれ未満(例えば5、2、1または0.5)のとき、Ag1と結合するモノクロナール抗体はAg2に対して交差反応性である。
【0142】
ヒトCEACAM5またはカニクイザルCEACAM5に対する親和性は、捕捉抗原として可溶性組換えCEACAM5を使用するELISAにおいて、EC50値として決定することができる。
【0143】
本発明の抗体は、腫瘍細胞系統MKN45(DSMZ、ACC409)において、または患者由来の異種移植腫瘍細胞(Oncodesign Biotechnology社、腫瘍コレクションCReMECから入手可能なCR-IGR-034P)において、FACS分析法により決定されるような見かけの解離定数(見かけのKD)を有する場合もあり、その見かけのKDは、25nM以下、例えば20nM以下、10nM以下、5nM以下、3nM以下、もしくは1nM以下である。見かけのKDは、0.01~20nMの範囲内であり得る、または0.1~20nM、0.1~10nM、もしくは0.1~5nMの範囲内であり得る。
【0144】
さらに、本発明による抗体は、凍結およびホルマリン固定され、そしてパラフィン包埋された(FFPE)組織切片において、免疫組織化学により、CEACAM5発現を検出できることが明らかにされている。
【0145】
用語「エピトープ」とは、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域内の特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。1つの抗原が複数のエピトープを有する場合もある。したがって、抗原上の異なるエリアに異なる抗体が結合する場合があり、また異なる生物学的作用を有し得る。エピトープは、高次構造的であってもよくまた直鎖状であってもよい。高次構造的エピトープは、直鎖状ポリペプチド鎖の異なるセグメントに由来する空間的に並置されたアミノ酸によって生み出される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって生み出されたエピトープである。特定の状況では、エピトープは、抗原上に糖類の部分、ホスホリル基、またはスルホニル基を含む場合がある。
【0146】
本明細書に記載される方法にとって有用な抗CEACAM5抗体は、様々な実施形態では、該抗体の由来となった対応する生殖細胞系配列と比較して、重鎖および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域内に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入、および/または欠損を含み得る。そのような突然変異は、本明細書で開示されるアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な生殖細胞系配列と比較することにより、容易に確認することができる。本開示には、様々な実施形態では、本明細書で開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体およびその抗原結合断片の使用を伴う方法が含まれ、その場合、1つまたはそれ以上のフレームワークおよび/またはCDR領域内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が、抗体の由来となった生殖細胞系配列の対応する残基(複数可)、または別のヒト生殖細胞系配列の対応する残基(複数可)、または対応する生殖細胞系残基(複数可)の保存的アミノ酸置換(そのような配列変化は、本明細書では総じて「生殖細胞系突然変異」と呼ばれる)に突然変異している。1つまたはそれ以上の個々の生殖細胞系突然変異またはその組み合わせを含む、非常に多くの抗体および抗原結合断片を構築することができる。特定の実施形態では、VHおよび/またはVLドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基のいずれも、抗体の由来となったオリジナルの生殖細胞系配列に見出される残基に復帰するように突然変異している。その他の実施形態では、特定の残基のみ、例えばFR1の最初の8個のアミノ酸内もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に見出される突然変異残基のみ、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3内に見出される突然変異残基のみが、オリジナルの生殖細胞系配列に復帰するように突然変異している。その他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基(複数可)のうちの1つまたはそれ以上が、異なる生殖細胞系配列(すなわち、抗体のそもそもの由来となった生殖細胞系配列とは異なる生殖細胞系配列)の対応する残基(複数可)に突然変異している。さらに、抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に2つまたはそれより多くの生殖細胞系突然変異の任意の組み合わせを含有し得るが、例えば特定の個々の残基は、特定の生殖細胞系配列の対応する残基に突然変異している一方、オリジナルの生殖細胞系配列とは異なる特定のその他の残基は維持され、または異なる生殖細胞系配列の対応する残基に突然変異している。ひとたび取得されると、1つまたはそれ以上の生殖細胞系突然変異を含有する抗体および抗原結合断片は、1つまたはそれ以上の所望の特性、例えば結合特異性の改善、結合親和性の向上、拮抗的または作動的生物学的特性の改善または強化(場合に応じて)、免疫原性の低下等について容易にテストすることができる。この一般的な方式で得られた抗体および抗原結合断片の使用は、本開示内に包含される。
【0147】
本開示には、1つまたはそれ以上の保存的置換を有する、本明細書で開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む、抗CEACAM5抗体の使用を伴う方法も含まれる。例えば、本開示には、本明細書で開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比較して、例えば10またはそれより少ない、8またはそれより少ない、6またはそれより少ない、4またはそれより少ない等の保存的アミノ酸置換を含むHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗CEACAM5抗体の使用が含まれる。
【0148】
本開示によれば、抗CEACAM5抗体またはその抗原結合断片は、様々な実施形態では、国際公開第2014/079886A1号(参照によって本明細書にそのまま組み入れる)に記載されている抗CEACAM5抗体のアミノ酸配列のいずれかを含む重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、および/または相補性決定領域(CDR)を含む。
【0149】
本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)について検討される。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的特性を改善することが望ましい場合もある。ヒト以外の動物に由来する抗体のVHおよびVL内のCDRのみを、ヒト抗体のVHおよびVLのFR内に単にグラフティングすることによりヒト化抗体が生成されると、抗原結合活性は、ヒト以外の動物に由来するオリジナル抗体のそれと比較して低下し得ることが公知である。非ヒト抗体のVHおよびVLのいくつかのアミノ酸残基は、CDRだけでなくFRにおいても、抗原結合活性と直接的または間接的に関連し得ると考えられている。したがって、これらのアミノ酸残基を、ヒト抗体のVHおよびVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基に置換すると結合活性は低下する。該問題を解決するために、非ヒトCDRがグラフト化されたヒト抗体において、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、抗体の結合と直接関連し、またはCDRのアミノ酸残基と相互作用し、または抗体の三次元構造を維持し、および抗原との結合と直接関連するアミノ酸残基を特定する試みがなされなければならない。低下した抗原結合活性は、特定されたアミノ酸をヒト以外の動物に由来するオリジナル抗体のアミノ酸残基で置換することにより強化されると考えられる。
【0150】
改変および変更は、本発明の抗体の構造において、およびそれをコードするDNA配列においてなし得るが、なおも機能的抗体または望ましい特性を有するポリペプチドをもたらす。
【0151】
本発明のさらなる目的は、本発明のポリペプチドの機能保存的バリアントも包含する。例えば、特定のアミノ酸は、明らかな活性喪失を伴わずに、タンパク質構造内でその他のアミノ酸で置換し得る。タンパク質の相互作用能力および性質がその生物学的機能活性を定義するので、タンパク質配列において、もちろんそのDNAコーディング配列においても、特定のアミノ酸について置換を行うことができるが、それにもかかわらず類似した特性を有するタンパク質が取得される。したがって、本発明の抗体配列、または前記ポリペプチドをコードする対応するDNA配列において、その生物学的活性の明らかな喪失を伴わずに、様々な変更をなし得るものと考えられる。特定のアミノ酸は、類似した疎水性親水性インデックス(hydropathic index)またはスコアを有するその他のアミノ酸で置換し得、なおも類似した生物学的活性を有するタンパク質をもたらし得ること、すなわち生物学的機能的に等価なタンパク質をなおも取得し得ることは当技術分野において公知である。抗原に対する結合性を有意に失わずに置換可能なすべてのアミノ酸を識別するために、本発明の抗体またはポリペプチドにおいて、十分に立証された技術、例えばアラニンスキャニングアプローチ等を使用することも可能である。そのような残基は、抗体の抗原結合性または構造を維持することに関与しないので、中立と認定することができる。この中立位置のうちの1つまたはそれ以上が、本発明の抗体またはポリペプチドの主要な特徴を変化させることなく、アラニンまたは別のアミノ酸で置換し得る。
【0152】
中立位置は、任意のアミノ酸置換が抗体に組込み可能な位置とみなすことができる。実際、アラニンスキャニングの原理では、アラニンは特定の構造的または化学的特性を有しないので、この残基が選択される。アラニンで、タンパク質の特性を変化させずに特定のアミノ酸を置換し得る場合、すべてのアミノ酸置換に当てはまらないとしても、多くのその他のアミノ酸置換もやはり中立であり得ることが一般的に認められている。アラニンが野生型アミノ酸である逆のケースでは、特定の置換が中立であると示すことができれば、その他の置換もまた中立であり得る。これまでに概説したように、アミノ酸置換は、したがってアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばその疎水性、親水性、電荷、サイズ等に一般的に基づく。上記特性のいずれかを考慮した代表的な置換は当業者に周知されており、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシンが挙げられる。
【0153】
例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を強化するために、本発明の抗体をエフェクター機能に関して改変することが望ましい場合もある。これは、抗体のFc領域内に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を導入することにより達成される。代替的または付加的に、システイン残基(複数可)をFc領域に導入することができ、これにより、この領域において鎖間ジスルフィド結合が形成可能となる。そのように生成されたホモ二量体抗体では、内部移行能力が改善し、および/または補体媒介式の細胞殺傷および/または抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)が向上し得る(Caron PC.ら、1992;およびShopes B.1992年)。
【0154】
本発明の抗体の別の種類のアミノ酸修飾は、抗体のオリジナルのグリコシル化パターンを変化させる(すなわち抗体に見出される1つもしくはそれ以上の炭化水素部分を削除し、および/または抗体中に存在しない1つもしくはそれ以上のグリコシル化部位を付加することによる)のに有用であり得る。トリペプチド配列、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニン(Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)のいずれかが存在すると、潜在的グリコシル化部位が創出される。抗体に対するグリコシル化部位の付加または除去は、上記トリペプチド配列のうちの1つまたはそれ以上を含有するようにアミノ酸配列を変化させることにより好都合に実現される(N結合型グリコシル化部位の場合)。
【0155】
別の種類の改変では、抗体調製物の分解生成物または不均一性をもたらす可能性がある、in silicoまたは実験的に特定された配列の除去が関係する。例として、アスパラギンおよびグルタミン残基の脱アミドは、pHや表面露出度等の因子に応じて生じ得る。アスパラギン残基は、配列Asn-Gly、およびより低頻度ではあるがその他のジペプチド配列、例えばAsn-Ala等の中に主に存在するとき、特に脱アミドを受けやすい。そのような脱アミド部位、特にAsn-Glyが、本発明の抗体またはポリプペプチド中に存在するときには、したがって、関連する残基の1つを取り除くために、一般的には、保存的置換により当該部位を取り除くのが望ましいと考えられる。関連する残基のうちの1つまたはそれ以上を取り除くための配列内のそのような置換も、本発明により包含されるように意図されている。
【0156】
別の種類の共有結合性の改変には、化学的または酵素的にグリコシドを抗体にカップリングさせることが関係する。この手順は、NまたはO結合型グリコシル化に対するグリコシル化能力を有する宿主細胞内で抗体を産生させる必要がないという点において有利である。使用されるカップリングモードに応じて、糖(複数可)は、(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えばシステインのスルフヒドリル基等、(d)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基等、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基等、または(f)グルタミンのアミド基に連結し得る。例えば、そのような方法は、国際公開第87/05330号に記載されている。
【0157】
抗体上に存在する任意の炭化水素部分の除去は、化学的にまたは酵素的に達成される。化学的脱グリコシル化は、抗体を化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物に暴露することを必要とする。この処理は、連結糖(linking sugar)(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどすべての糖の切断を引き起こす一方、抗体はそのまま残る。化学的脱グリコシル化は、Sojahr H.ら(1987年)、およびEdge,AS.ら(1981年)により記載されている。抗体上炭化水素部分の酵素的切断は、Thotakura,NR.ら(1987年)の記載に従い、様々なエンドおよびエキソグリコシダーゼの使用により達成される。
【0158】
抗体の別の種類の共有結合性の改変は、米国特許第4,640、835号;同第4,496、689号;同第4,301、144号;同第4,670、417号;同第4,791、192号、または同第4,179,337号に定める方式で、抗体を様々な非タンパク質性ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンのうちの1つにリンクさせることを含む。
【0159】
一実施形態では、本発明の抗体は、抗体huMAb2-3またはそのバリアントである。huMAb2-3抗体に対する異なるアミノ酸配列を配列番号1~9において下記に示す。
【0160】
配列番号1の重鎖可変ドメインアミノ酸配列は、
EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSS
である。
【0161】
配列番号2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列は、
DIQMTQSPASLSASVGDRVTITCRASENIFSYLAWYQQKPGKSPKLLVYNTRTLAEGVPSRFSGSGSGTDFSLTISSLQPEDFATYYCQHHYGTPFTFGSGTKLEIK
である。
【0162】
配列番号1および2のCDR配列は以下に列挙され、そして配列番号3~7を含む。
配列番号3のアミノ酸配列は、GFVFSSYDである。
配列番号4のアミノ酸配列は、ISSGGGITである。
配列番号5のアミノ酸配列は、AAHYFGSSGPFAYである。
配列番号6のアミノ酸配列は、ENIFSYである。
軽鎖CDR2のアミノ酸配列は、NTRである。
配列番号7のアミノ酸配列は、QHHYGTPFTである。
【0163】
配列番号8の重鎖アミノ酸配列は、
EVQLQESGPGLVKPGGSLSLSCAASGFVFSSYDMSWVRQTPERGLEWVAYISSGGGITYAPSTVKGRFTVSRDNAKNTLYLQMNSLTSEDTAVYYCAAHYFGSSGPFAYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
である。
【0164】
配列番号9の軽鎖アミノ酸配列は、
【化13】
である。
【0165】
本開示によれば、本明細書で開示される抗体は、ヒトCEACAM5タンパク質のA3-B3ドメインのエピトープと結合する。本開示の抗体が結合するA3-B3ドメインエピトープのアミノ酸配列は、SGANLNL(配列番号10)およびINGIPQQHTQVLF(配列番号11)を含む。
【0166】
用語「生物学的に同等」とは、本明細書で使用される場合、同一モル用量、および類似した条件(例えば、同一投与経路)の下で投与された後に、類似したバイオアベイラビリティー(速度、および利用能の程度)を有し、したがって効果(効能および安全性の両方に関して)がコンパレーター分子と実質的に同一であると予測可能である分子を指す。抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを含む2つの医薬組成物は、それらが薬学的に等価である場合、すなわちそれらが同一投与経路において、同一の投与剤形で、同一量の有効成分を含有し、かつ同一または匹敵する標準に合致する場合、生物学的に同等である。
【0167】
特定の実施形態における本開示は、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域と配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体を、対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0168】
本開示は、そのような抗体を含む医薬組成物およびその組成物を使用する方法を提示する。
【0169】
抗体は、様々な実施形態において、配列番号1の重鎖可変領域/ドメイン内のCDRと配列番号2の軽鎖可変領域/ドメイン内のCDRとを含む。抗体は、様々な実施形態において、配列番号1の配列を含む重鎖可変領域と配列番号2の配列を含む軽鎖可変領域とを含み、CEACAM5に特異的に結合する抗体である。参照によって本明細書にそのまま組み入れる国際公開第2014/079886A1号を参照。1つの実施形態では、抗体は、配列番号8の配列を含む重鎖可変領域と配列番号9の配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0170】
イムノコンジュゲート
本発明には、細胞傷害性コンジュゲート、またはイムノコンジュゲート、または抗体薬物コンジュゲート、またはコンジュゲートも含まれる。本明細書で使用される場合、これらすべての用語は同一の意味を有し、かつ交換可能である。
【0171】
したがって、本発明は、少なくとも1つの増殖阻害剤、例えば細胞傷害剤または放射性同位体等にリンクまたはコンジュゲートした本発明の抗体を含む「イムノコンジュゲート」に関する。
【0172】
「増殖阻害剤」または「抗増殖剤」は区別なく使用可能であり、細胞、特に腫瘍細胞の増殖をin vitroまたはin vivoで阻害する化合物または組成物を指す。
【0173】
用語「細胞傷害剤」とは、本明細書で使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは阻止し、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。用語「細胞傷害剤」は、化学療法剤、酵素、抗生物質、および毒素、例えば細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素的に活性な毒素等(その断片および/またはバリアント、ならびに以下で開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤を含む)を含むように意図されている。いくつかの実施形態では、細胞傷害剤は、タキソイド、ビンカ、マイタンシノイドまたはマイタンシノイドアナログ、例えばDM1またはDM4、小型の薬物、トメイマイシンまたはピロロベンゾジアゼピン誘導体、クリプトフィシン誘導体、レプトマイシン誘導体、オーリスタチンまたはドラスタチンアナログ、プロドラッグ、トポイソメラーゼII阻害剤、DNAアルキル化剤、抗チューブリン剤、CC-1065またはCC-1065アナログ等である。
【0174】
本明細書で使用される場合、「マイタンシノイド」は、マイタンシノイドおよびマイタンシノイドアナログを指す。マイタンシノイドは、微小管形成を阻害し、および哺乳動物細胞に対して非常に有毒である薬物である。
【0175】
好適なマイタンシノイドの例として、マイタンシノールおよびマイタンシノールアナログが挙げられる。
【0176】
好適なマイタンシノール類似体の例として、修飾された芳香環を有するもの、およびその他の位置に修飾を有するものが挙げられる。そのような好適なマイタンシノイドは、米国特許第4,424,219号;同第4,256,746号;同第4,294,757号;同第4,307,016号;同第4,313,946号;同第4,315,929号;同第4,331,598号;同第4,361,650号;同第4,362,663号;同第4,364,866号;同第4,450,254号;同第4,322,348号;同第4,371,533号;同第6,333,410号;同第5,475,092号;同第5,585,499号;および同第5,846,545号に開示されている。
【0177】
修飾された芳香環を有するマイタンシノールの好適な類似体の具体例として:
(1)C-19-脱塩素(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシンP2のLAH還元により製造される);
(2)C-20-ヒドロキシ(またはC-20-脱メチル)±C-19-脱塩素(米国特許第4,361,650号、および同第4,307,016号)(ストレプトミセス属(Streptomyces)または放線菌(Actinomyces)を使用する脱メチル化、またはLAHを使用する脱塩素により製造される);および
(3)C-20-脱メトキシ、C-20-アシルオキシ(-OCOR)、±脱塩素(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを使用するアシル化により製造される)。
が挙げられる。
【0178】
その他の位置の修飾を有するマイタンシノールの好適な類似体の具体例として:
(1)C-9-SH(米国特許第4,424,219号)(HSまたはPを用いたマイタンシノールの反応により製造される);
(2)C-14-アルコキシメチル(脱メトキシ/CHOR)(米国特許第4,331,598)号;
(3)C-14-ヒドロキシメチルまたはアシルオキシメチル(CHOHまたはCHOAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジア属(Nocardia)から製造される);
(4)C-15-ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトミセス属によるマイタンシノールの変換により製造される);
(5)C-15-メトキシ(米国特許第4,313,946号および同第4,315,929号)(トレウィア・ヌディフローラ(Trewia nudiflora)から単離される);
(6)C-18-N-脱メチル(米国特許第4,362,663号および同第4,322,348号)(ストレプトミセス属によるマイタンシノールの脱メチル化により製造される);および
(7)4,5-デオキシ(米国特許第4,371,533号)(マイタンシノールのチタントリクロリド/LAH還元により製造される)。
【0179】
本発明の1つの実施形態では、本発明の細胞傷害性コンジュゲートは、正式にはN2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-マイタンシンと呼ばれる含チオールマイタンシノイド(DM1)を細胞傷害剤として利用する。DM1は下記の構造式(I):
【化14】
により表わされる。
【0180】
別の実施形態では、本発明の細胞傷害性コンジュゲートは、正式にはN2’-デアセチル-N2’-(4-メチル-4-メルカプト-1-オキソペンチル)-マイタンシンと呼ばれる含チオールマイタンシノイドDM4を細胞傷害剤として利用する。DM4は下記の構造式(II):
【化15】
により表わされる。
【0181】
本発明のさらなる実施形態では、イオウ原子を有する炭素原子上にモノまたはジアルキル置換を有する、含チオールおよび含ジスルフィドマイタンシノイドを含む、その他のマイタンシンが使用される場合もある。これらには、C-3、C-14ヒドロキシメチル、C-15ヒドロキシ、またはC-20デスメチルに、ヒンダードスルフヒドリル基を有するアシル基を有するアシル化アミノ酸側鎖を有するマイタンシノイドが含まれ、その場合、チオール官能性を有するアシル基の炭素原子は1つまたは2つの置換基を有し、前記置換基は、CH、C、直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルケニルであり、溶液中に存在し得る1~10個の試薬および任意の凝集物を有する。
【0182】
これら細胞傷害剤の例およびコンジュゲーション方法の例は、参照によって組み入れる国際公開第2008/010101号の出願においてさらに得られる。
【0183】
用語「放射線同位体」は、がんを処置するのに適する放射性同位体、例えばAt211、Bi212、Er169、I131、I125、Y90、In111、P32、Re186、Re188、Sm153、Sr89、およびLuの放射性同位体等を含むように意図されている。そのような放射性同位体は、主にβ線を一般的に放射する。一実施形態では、放射性同位体は、α線放射体の同位体、より正確にはα線を放射するトリウム227である。本発明に基づくイムノコンジュゲートは、国際公開第2004/091668号の出願に記載されるように調製することができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、少なくとも1つの増殖阻害剤と、直接または開裂可能リンカーもしくは開裂不能リンカーを介して共有結合的に連結している。
【0185】
「リンカー」とは、本明細書で使用される場合、共有結合またはポリペプチドを薬物部分に共有結合的に連結させる原子の鎖を含む化学的部分を意味する。
【0186】
コンジュゲートは、in vitro法により調製することができる。薬物またはプロドラッグを抗体にリンクさせるために、結合基が使用される。好適な結合基は当技術分野において周知されており、またジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光解離性基、ペプチダーゼ不安定基、およびエステラーゼ不安定基が含まれる。本発明の抗体と細胞傷害剤または増殖阻害剤とのコンジュゲーションは、N-スクシニミジルピリジルジチオブチレート(SPDB)、ブタン酸4-[(5-ニトロ-2-ピリジニル)ジチオ]-2,5-ジオキソ-1-ピロリジニルエステル(ニトロ-SPDB)、4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)-2-スルホ-酪酸(スルホ-SPDB)、N-スクシニミジル(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシニミジル(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHCL等)、活性なエステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル等)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)-ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート等)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を含む、但しこれらに限定されない様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用してなすことができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら(1987年)の記載に従い調製することができる。炭素標識された1-イソチオシアナトベンジルメチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための代表的なキレート剤である(国際公開第94/11026号)。
【0187】
リンカーは、細胞内での細胞傷害剤または増殖阻害剤の放出を円滑化する「開裂可能リンカー」であり得る。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、エステラーゼ不安定リンカー、光解離性リンカーまたはジスルフィド含有リンカー(例えば、米国特許第5,208,020号を参照)を使用することができる。リンカーは、場合によってより良好な忍容性をもたらす可能性のある「開裂不能リンカー」(例えば、SMCCリンカー)であってもよい。
【0188】
あるいは、本発明の抗体、および細胞傷害性または増殖阻害性のポリペプチドを含む融合タンパク質が、組換え技術またはペプチド合成により作成することができる。DNAの長さは、互いに隣接した、またはコンジュゲートの所望の特性を壊さないリンカーペプチドをコードする領域により分離したコンジュゲートの2つ部分をコードする各領域を含み得る。
【0189】
本発明の抗体は、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照)を活性な抗がん薬(例えば、国際公開第88/07378号および米国特許第4,975,278号を参照)に変換するプロドラッグ活性化酵素に対して、ポリペプチドをコンジュゲートさせることによる、依存性酵素媒介性プロドラッグ療法(Dependent Enzyme Mediated Prodrug Therapy)においても使用することができる。ADEPTに有用なイムノコンジュゲートの酵素コンポーネントは、プロドラッグをそのより活性な細胞傷害性の形態に変換するようにプロドラッグに作用することができる任意の酵素を含む。本発明の方法において有用である酵素として、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;サルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;無毒性のフルオロシトシンを抗がん剤、5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用であるプロテアーゼ、例えばセラシア属(Serratia)プロテアーゼ、サーモライシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、およびカテプシン(例えば、カテプシンBおよびL等)等;D-アミノ酸置換基を含有する、プロドラッグを変換するのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬物に変換するのに有用な炭水化物切断酵素、例えばO-ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ等;P-ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なP-ラクタマーゼ;ならびにそのアミン窒素においてフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基でそれぞれ誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なペニシリンアミダーゼ、例えばペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼ等が挙げられるが、但しこれらに限定されない。酵素は、当技術分野において周知の技法、例えば上記で議論されたヘテロ二機能性架橋試薬の使用等により、本発明のポリペプチドと共有結合し得る。
【0190】
一実施形態によれば、本発明のコンジュゲートにおいて、増殖阻害剤はマイタンシノイドであり、一実施形態ではDM1またはDM4である。
【0191】
前記コンジュゲートにおいて、抗体は、結合基により前記少なくとも1つの増殖阻害剤にコンジュゲートしている。一実施形態では、前記結合基は、開裂可能リンカーまたは開裂不能リンカー、例えばSPDB、スルホ-SPDB、またはSMCC等である。
【0192】
コンジュゲートは、式(III)
【化16】
の抗体-SPDB-DM4コンジュゲート、
【0193】
式(IV)
【化17】
の抗体-スルホ-SPDB-DM4コンジュゲート、および
【0194】
式(V)
【化18】
の抗体-SMCC-DM1コンジュゲート:
からなる群から選択することができる。
【0195】
一実施形態では、コンジュゲートは、抗体が本明細書に記載される抗体である、上記で定義したような式(III)、(IV)、または(V)のコンジュゲートである。
【0196】
一般的に、コンジュゲートは、
(i)細胞結合剤(例えば、本発明による抗体)の場合により緩衝化された水溶液を、リンカーおよび細胞傷害性の化合物からなる溶液と接触させる工程;
(ii)次に、場合により、(i)において形成されたコンジュゲートを未反応の細胞結合剤から分離する工程
を含む方法により取得可能である。
【0197】
細胞結合剤の水溶液は、バッファー、例えばリン酸カリウム、酢酸塩、クエン酸塩、またはN-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(Hepesバッファー)等を用いて緩衝化することができる。バッファーは細胞結合剤の性質に依存する。細胞傷害性の化合物は、極性有機溶媒、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルアセトアミド(DMA)に溶解した溶液の状態にある。
【0198】
反応温度は、20~40℃の間に通常含まれる。反応時間は、1から24時間まで変化し得る。細胞結合剤と細胞傷害剤との間の反応は、屈折率検出器および/またはUV検出器を備えた粒径排除クロマトグラフィー(SEC)によりモニタリングすることができる。コンジュゲート収率が過剰に低い場合には、反応時間を延長することができる。
【0199】
工程(ii)の分離を実施するために、いくつかの異なるクロマトグラフィー法が当業者により使用可能である:コンジュゲートは、例えばSEC、吸着クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、IEC等)、疎水的相互作用クロマトグラフィー(HIC)、親和性クロマトグラフィー、混合サポートクロマトグラフィー(mixed-support chromatography)、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー等、または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製することができる。透析または透析濾過による精製法も使用可能である。
【0200】
本明細書で使用される場合、用語「凝集物」とは、2つまたはそれより多くの細胞結合剤の間で形成される会合物を意味し、前記薬剤は、コンジュゲーションにより改変されている場合もあれば改変されていない場合もある。凝集物は、非常に多数のパラメーター、例えば溶液中の高濃度細胞結合剤、溶液のpH、高剪断力、結合したダイマーの数およびその疎水特性、温度等の影響の下で形成される場合がある(WangおよびGosh、2008年,J.Membrane Sci.,318巻:311~316頁、およびそこで引用された参考資料を参照);これらパラメーターのうちのいくつかの相対的影響は明確に立証されていなことに留意すること。タンパク質および抗体の場合、当業者は、Cromwellら(2006年、AAPS Jounal、8巻(3):E572~E579頁)を参照する。凝集物内の含有量は、当業者にとって周知の技術、例えばSEC等を用いて決定可能である(Walterら、1993年,Anal.Biochem.,212巻(2):469~480を参照)。
【0201】
工程(i)または(ii)の後に、コンジュゲート含有溶液は、クロマトグラフィー、限外濾過、および/または透析濾過の追加工程(iii)に供される場合がある。
【0202】
コンジュゲートは、これらの工程の終了時に水溶液の状態で回収される。
【0203】
一実施形態によれば、本発明によるコンジュゲートは、1~10、例えば2~5、特に3~4の範囲の「薬物対抗体の比」(または「DAR」)により特徴づけられる。これは、一般的にマイタンシノイド分子を含むコンジュゲートの場合に当てはまる。
【0204】
このDAR数は、コンジュゲーションで使用される実験条件(増殖阻害剤/抗体の比、反応時間、溶媒の性質、および共溶媒(もしあれば)等)と共に、使用される抗体および薬物(すなわち、増殖阻害剤)の性質に伴って変化し得る。したがって、抗体と増殖阻害剤との間で接触させると、異なる薬物対抗体の比により互いに異なるいくつかのコンジュゲート;場合によりネイキッド抗体;場合により凝集物を含む混合物がもたらされる。決定されたDARはしたがって平均値である。
【0205】
DARを決定するのに使用可能な方法は、λおよび280nmにおいて、実質的に精製されたコンジュゲートの溶液の吸収の比を分光光度法的に測定することから構成される。280nmは、タンパク質濃度、例えば抗体濃度等を測定するのに一般的に使用される波長である。波長λは、薬物と抗体との区別が可能となるように選択され、すなわち当業者にとって容易に理解されるように、λは薬物が高い吸収を有する波長であり、かつλは、薬物および抗体における吸収ピークの実質的オーバーラップを回避するために280nmから十分に離れている。マイタンシノイド分子の場合、λは252nmとして選択される。DAR計算法は、Antony S.Dimitrov(編)、LLC,2009年,Therapeutic Antibodies and Protocols,525巻,445頁、Springer Science社に由来し得る。
【0206】
λ(AλD)および280nm(A280)におけるコンジュゲートの吸収は、粒径排除クロマトグラフィー(SEC)分析の単量体ピークにおいて(「DAR(SEC)」パラメーターの計算を可能にする)、または古典的分光光度計装置を使用して(「DAR(UV)」パラメーターの計算を可能にする)測定される。吸収は、以下のように表すことができる:
λD=(c×εDλD)+(c×εAλD
280=(c×εD280)+(c×εA280
式中:
およびcは、それぞれ溶液中の薬物および抗体の濃度であり、
εDλDおよびεD280は、それぞれλおよび280nmにおける薬物のモル吸光係数であり、
εAλDおよびεA280は、それぞれλおよび280nmにおける抗体のモル吸光係数である。
【0207】
2つの未知数を含むこれら2つの方程式の解から、下記の方程式が得られる:
=[(εA280×AλD)-(εAλD×A280)]/[(εDλD×εA280)-(εAλD×εD280)]
=[A280-(c×εD280)]/εA280
【0208】
平均DARは、抗体濃度に対する薬物濃度の比から計算される:DAR=c/c
【0209】
医薬組成物
本発明の抗体またはイムノコンジュゲートは、薬学的に許容される添加剤および場合により徐放性マトリックス、例えば生分解性ポリマー等と組み合わせて治療組成物を形成することができる。
【0210】
したがって、本発明の別の目的は、本発明の抗体またはイムノコンジュゲートおよび薬学的に許容される担体または添加剤を含む医薬組成物に関する。
【0211】
本発明は、医薬として使用するための本発明によるポリペプチドまたはイムノコンジュゲートとも関連する。
【0212】
「薬学的に」または「薬学的に許容される」とは、哺乳動物、特にヒト(該当する場合)に投与されるとき、有害なアレルギー性またはその他の有害反応を生成しない分子実態および組成物を指す。薬学的に許容される担体または添加剤とは、無毒性の固体、半固体、または液体充填剤、賦形剤、カプセル封じ材料、または任意のタイプの製剤補助剤(formulation auxiliary)を指す。
【0213】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性のあらゆるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌性および抗真菌性薬剤等が含まれる。好適な担体、賦形剤、および/または添加剤の例として、水、アミノ酸、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リン酸バッファー、アセテート、シトレート、スクシネート;アミノ酸および誘導体、例えばヒスチジン、アルギニン、グリシン、プロリン、グリシルグリシン等;無機塩であるNaCl、塩化カルシウム;糖または多価アルコール、例えばデキストロース、グリセリン、エタノール、スクロース、トレハロース、マンニトール等;界面活性剤、例えばポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188等;ならびにその組み合わせのうちの1つまたはそれ以上が挙げられる。多くの場合、組成物内に等張化剤、例えば糖、多価アルコール、または塩化ナトリウム等を含むことが好ましく、また製剤は、酸化防止剤、例えばトリプタミン等、および安定化剤、例えばツイーン20等も含み得る。
【0214】
医薬組成物の形態、投与経路、投薬量、およびレジメンは、当然ながら、処置される状態、疾病の重症度、患者の年齢、体重、および性別等に依存する。
【0215】
本発明の医薬組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、または眼内の投与等のために製剤化することができる。
【0216】
一実施形態では、医薬組成物は、注射可能な製剤用として薬学的に許容される媒体を含有する。これは、等張で滅菌性の生理食塩溶液(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたは塩化マグネシウム等、またはそのような塩の混合物)、または場合に応じて、滅菌処理された水もしくは生理食塩水が添加された際に、注射液の構成が可能となる乾燥状態の特に凍結乾燥された組成物であり得る。
【0217】
医薬組成物は、薬物配合デバイス(drug combination device)によって投与することができる。
【0218】
投与のために使用される用量は、様々なパラメーターの関数として、例えば使用される投与様式の関数、関連する病理学あるいは望ましい処置期間の関数として調節可能である。
【0219】
医薬組成物を調製するために、有効量の本発明の抗体またはイムノコンジュゲートを、薬学的に許容される担体または水性媒体内に溶解または分散することができる。
【0220】
注射用途に適する医薬剤形として、滅菌水溶液または分散物;ゴマ油、ピーナッツ油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌注射液または分散物を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。いずれの場合においても、剤型は滅菌状態にあり、かつ分解せずに送達用の好適なデバイスまたはシステムを用いて注射可能でなければならない。剤型は、製造および保管条件下で安定でなければならず、かつ微生物、例えば細菌や菌類等の汚染作用から保護されなければならない。
【0221】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤と好適に混合した水の中で調製することができる。分散物も、グリセリン、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物内、ならびオイル内で調製することができる。通常の保管および使用の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含有する。
【0222】
本発明の抗体またはイムノコンジュゲートは、中性または塩の形態の組成物に製剤化することができる。薬学的に許容される塩として、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)が挙げられ、そのような塩は、例えば塩化水素もしくはリン酸等の無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄等の無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、グリシン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基に由来することもある。
【0223】
担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、好適なその混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。例えば、レシチン等のコーティングを使用することにより、分散物の場合には必要とされる粒子サイズを維持することにより、および界面活性剤を使用することにより、しかるべき流動性を維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により実現可能である。多くの場合、等張化剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを組成物内で使用することにより実現可能である。
【0224】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、上記列挙したその他成分のいずれかと共に、ふさわしい溶媒中に組み込むことにより調製され、必要に応じて濾過式滅菌処理が後続する。一般的に、分散物は、滅菌された様々な有効成分を、基本的な分散媒体および上記列挙したものに由来する必要とされるその他の成分を含有する滅菌媒体中に組み込むことにより調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、有効成分+任意の望ましい追加成分の粉末(予め滅菌濾過されたその溶液に由来する)が得られる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0225】
直接注射用のより濃縮された溶液または高度に濃縮された溶液の調製もまた検討され、その場合、極めて迅速な浸透を実現し、高濃度の活性な薬剤を狭い腫瘍エリアに送達するために、溶媒としてDMSOを使用することが想定される。
【0226】
製剤化の際には、投与製剤に適合する方式および治療上有効であるような量で溶液が投与される。製剤は、様々な投与剤形(例えば上記した種類の注射液等)において容易に投与されるが、しかし薬物放出カプセル等も採用することができる。
【0227】
例えば、水溶液で非経口投与する場合、該溶液は、必要な場合、好適に緩衝化されるべきであり、また液体賦形剤が、十分な生理食塩水またはグルコースを用いてまず等張化されるべきである。このような水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適する。因みに、採用可能な滅菌水性媒体は、本開示に照らし、当業者にとって公知である。例えば、1回の投薬量が、1mlの等張NaCl溶液に溶解され、そして1000mlの皮下注入用流体(hypodermoclysis fluid)に添加され、または輸液予定部位に注射される(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第15版、1035~1038頁および1570~1580頁を参照)。投薬量の若干の変動は、処置される対象の状態に応じて必然的に生ずる。投与に関わる人員は、何れにせよ、個々の対象に対してふさわしい用量を決定する。
【0228】
本発明の抗体またはイムノコンジュゲートは、治療混合物内で製剤化される場合があり、1用量当たり約0.01~100ミリグラムほどを含む。
【0229】
非経口投与、例えば静脈内または筋肉内注射等のために製剤化された抗体またはイムノコンジュゲートに加えて、その他の薬学的に許容される形態として、例えば、経口投与用の錠剤またはその他の固体;限時放出型カプセル;および現在使用されている任意のその他の形態が挙げられる。
【0230】
特定の実施形態では、ポリペプチドを宿主細胞内に導入するために、リポソームおよび/またはナノ粒子の使用について検討される。リポソームおよび/またはナノ粒子の形成および使用は、当業者にとって公知である。
【0231】
ナノカプセルは、一般的に化合物を安定かつ再現性のある方式で捕捉することができる。細胞内ポリマー過負荷(intracellular polymeric overloading)に起因する副作用を回避するために、そのような超微細粒子(大きさの約0.1μm)は、一般的にin vivoで分解可能なポリマーを使用して設計される。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子、または生分解性ポリラクチドまたはポリラクチド-co-グリコリドナノ粒子が本発明での使用のために検討され、またそのような粒子は容易に作成可能である。
【0232】
水性媒体中に分散されたリン脂質からリポソームが形成され、そして多層同心性二分子膜小胞(multilamellar concentric bilayer vesicle)(マルチラメラ小胞(MLV)とも呼ばれる)を自発的に形成する。MLVの直径は、一般的に25nm~4μmである。MLVを超音波処理すると、コア内に水溶液を含有する、直径が200~500Åの範囲にある小型のユニラメラ小胞(SUV)が形成される。リポソームの物理特性は、pH、イオン強度、および2価カチオンの存在に依存する。
【0233】
投与方法および製剤化
本明細書に記載される方法は、治療有効量の抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを対象に投与する工程を含む。本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」は、肺がん(例えば、NSQ NSCLC)の処置を実現する治療用量である。本明細書で使用される場合、「~を処置すること」とは、肺がんと関連する1つまたはそれ以上の症状において検出可能な改善を引き起こすこと、または状態または症状(複数可)を惹起す潜在的病態機構(複数可)と相関関係を有する生物学的効果(例えば、特定のバイオマーカーレベルの減少)を引き起こすことを指す。例えば、肺がんと関連する下記の症状または状態のいずれかにおいて改善を引き起こす、抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの用量は、「治療有効量」とみなされる。
【0234】
別の事例では、ある用量の抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートが、がん(例えば、肺がん)と関連する1つまたはそれ以上のパラメーターまたは症状において検出可能な改善をもたらさないとき、またはがんの状態または症状(複数可)を惹起する潜在的病態機構(複数可)と相関関係を有する生物学的効果を引き起こさないとき、処置は有効ではなかった。
【0235】
これらの実施形態のいくつかによれば、抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは静脈内に投与される。
【0236】
本発明の方法に基づき、対象に投与される抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの治療有効量は、対象の年齢およびサイズ(例えば、体重または体表面積)、ならびに投与経路、および当業者に周知されているその他の因子に依存して変化する。
【0237】
特定の実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの用量は、対象の体表面積に応じて変化する。特定の実施形態では、対象に投与される抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの用量は、約1mg/m~約500mg/mである。いくつかの実施形態では、対象に投与される抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの用量は、約5mg~約300mg/mである。様々な実施形態では、対象に投与される抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの用量は、約5~約250mg/mである。様々な実施形態では、用量は、対象の体表面積に基づき、約5、10、20、30、40、60、80、100、120、150、180、または210mg/mである。様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、約2.5mg/m~約5mg/mの用量で投与される。例えば、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、ある期間(例えば、30分や1時間)、約2.5mg/m~約5mg/mの用量で投与される。用量として、2.5mg/mの抗体、5mg/mの抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート、ならびに2.5mg/m~5mg/mの間のすべての用量、例えば2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、および4.9mg/mが挙げられる。
【0238】
例えば、本発明は、約1mg/m、約5mg/m、10mg/m、約15mg/m、約20mg/m、約25mg/m、約30mg/m、約35mg/m、約40mg/m、約45mg/m、約50mg/m、約55mg/m、約60mg/m、約65mg/m、約70mg/m、約75mg/m、約80mg/m、約85mg/m、約90mg/m、約95mg/m、約100mg/m、約105mg/m、約110mg/m、約115mg/m、約120mg/m、約125mg/m、約130mg/m、約135mg/m、約140mg/m、約145mg/m、約150mg/m、約155mg/m、約160mg/m、約165mg/m、約170mg/m、約175mg/m、約180mg/m、約185mg/m、約190mg/m、約195mg/m、約200mg/m、約205mg/m、約210mg/m、約215mg/m、約220mg/m、約225mg/m、約230mg/m、約235mg/m、約240mg/m、約245mg/m、約250mg/m、約255mg/m、約260mg/m、約265mg/m、約270mg/m、約275mg/m、約280mg/m、約285mg/m、約290mg/m、約295mg/m、約300mg/m、約325mg/m、約350mg/m、約375mg/m、約400mg/m、約425mg/m、約450mg/m、約475mg/m、または約500mg/mの抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートが、1週間に1回または2週間に1回、患者に投与される方法を含む(但し、これらに限定されない)。様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、対象の体表面積に基づき、2週間毎に、約5、10、20、30、40、60、80、100、120、150、180、または210mg/mで投与される。
【0239】
本明細書で使用される場合、「約1~約500mg/kgで投与される」とは、参照された物質が、記載された範囲(範囲の上下の数値を含む)内の任意の数値で投与されることを意味する。例えば、「患者に投与される抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの用量は、1mg/m~500mg/mである」には、1mg/mの抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート、500mg/mの抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート、および中間のすべての用量の投与が含まれる。一実施形態では、CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、約5、10、20、30、40、60、80、100、120、150、180、または210mg/mの用量で、ある期間にわたり、例えば、14日毎に1回(すなわち、2週間毎)または3週間に1回投与される。本方法の様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、実施例1に記載されている用量で使用される。
【0240】
様々な実施形態では、用量は一定速度で投与される。あるいは、用量は可変速度で投与される。様々な実施形態では、用量は、約0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、2.5、または5mg/分の一定速度で投与される。様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、最初の30分間または最初の1時間、ある速度で投与される。様々な実施形態では、約30分または1時間の後、抗体の投速度与は変更される。例えば、速度は減少する。様々な実施形態では、速度は増加する。様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、2.5mg/分の速度で、最初の30分間または1時間投与される。様々な実施形態では、約30分または1時間の後、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの投与速度は5mg/分まで増加する。
【0241】
本発明の方法は、抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートの複数用量を患者に所定期間投与する工程を含む。例えば、抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、1日当たり約1~5回、1週間当たり約1~5回、2週間毎に約1~5回、1ヶ月当たり約1~5回、または1年当たり約1~5回投与可能である。特定の実施形態では、本発明の方法は、第1の時点において、第1の用量の抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを患者に投与する工程、その後、第2の時点において、少なくとも第2の用量の抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを患者に投与する工程を含む。第1および第2の用量は、特定の実施形態では、同一量の抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートを含有し得る。第1用量と第2用量との間の時間は、約数時間~数週間であり得る。例えば、第2の時点(すなわち、第2の用量が投与されるとき)は、第1の時点(すなわち、第1の用量が投与されるとき)の後の約1時間~約7週間であり得る。本発明の特定の代表的な実施形態によれば、第2の時点は、第1の時点の後の約1時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約2週間、約3数週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約14週間、またはそれより長期間であり得る。特定の実施形態では、第2の時点は、約1週間または約2週間である。第3の用量および後続する用量も、患者の処置課程全体を通して同様に投与することができる。本発明は、抗CEACAM5抗体もしくはその抗原結合断片、または抗体を含むイムノコンジュゲート、および場合により1つまたはそれ以上の追加の治療剤を含む治療組成物を使用する方法を提供する。本発明の治療組成物は、好適な担体、添加剤、および移入、送達、忍容性等の改善を実現するために製剤中に組み込まれるその他の薬剤と共に投与される。多数の適する製剤が、すべての製薬化学者にとって公知の処方集に見出すことができる:参照によって本明細書にそのまま組み入れるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA。このような製剤には、例えば粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(例えば、リポフェクチン等)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、カーボワックス乳剤(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。参照によって本明細書にそのまま組み入れるPowellら、“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52巻:238~311頁も参照。
【0242】
様々な送達システム、例えばリポソーム内封入(encapsulation in liposome)、微粒子、マイクロカプセル、受容体介在性エンドサイトーシスが公知であり、また本発明の医薬組成物を投与するのに使用可能である(例えば、参照によって本明細書にそのまま組み入れる、Wuら(1987)J.Biol.Chem.262巻:4429~4432頁を参照)。導入方法として、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるが、但しこれらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路により、例えば輸液またはボーラス注射により、上皮または皮膚粘膜ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)を介した吸収により投与されるが、またその他の生物学的に活性な薬剤と共に投与される場合もある。投与は、全身的または局所的であり得る。CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、皮下に投与可能である。
【0243】
医薬組成物は、小胞、例えばリポソーム等内に送達することも可能である(参照によって本明細書にそのまま組み入れるLanger(1990年)Science 249巻:1527~1533頁を参照)。特定の状況では、医薬組成物は、例えばポンプを使用する制御放出システムまたはポリマー材料中に送達可能である。別の実施形態では、制御放出システムは、組成物の標的の近傍に配置することができ、したがって全身的投与量の一部のみしか必要としない。
【0244】
注射用調製物は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、局所注射、点滴注入等のための投与剤形を含み得る。これらの注射用調製物は、公知の方法により調製することができる。例えば、注射用調製物は、例えば、注射用として慣習的に使用される滅菌水性媒体または油性媒体中に、上記抗体またはその塩を溶解、懸濁、または乳化することにより調製することができる。注射用の水性媒体として、例えば、適する可溶化剤、例えばアルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、ノニオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ひまし油のポリオキシエチレン(50mol)付加体)]等)等と組み合わせて使用される、生理食塩水、グルコースを含有する等張溶液、およびその他の補助剤等が挙げられる。油性媒体として、例えばベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール等の可溶化剤と組み合わせて使用されるゴマ油、ダイズ油等が採用される。こうして調製された注射剤は、適するアンプル内に充填可能である。
【0245】
有利には、上記した経口または非経口用途の医薬組成物は、有効成分の用量を最適化するのに適する単位用量で投与剤形中に調製される。単位用量内のそのような投与剤形として、例えば錠剤、ピル、カプセル、注射剤(アンプル)、坐剤等が挙げられる。
【0246】
本明細書に開示される方法に基づき、抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート(または抗体もしくは該抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬製剤)は、任意の許容されるデバイスまたは機構を使用して患者に投与可能である。例えば、投与は、シリンジおよび針を使用して、または再利用可能なペンおよび/またはオートインジェクター送達デバイスを用いて実現可能である。本発明の方法は、抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート(または抗体もしくは該抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬製剤)を投与するための非常に多くの再利用可能なペンおよび/またはオートインジェクター送達デバイスの使用を含む。そのようなデバイスの例として、AUTOPEN(Owen Mumford、Inc.社、ウッドストック、英国)、DISETRONICペン(Disetronic Medical Systems社、ベルグドルフ、スイス)、HUMALOG MIX75/25ペン、HUMALOGペン、HUMALIN70/30ペン(Eli Lilly and Co.社、インディアナポリス、In)、NOVOPEN I、II、およびIII(Novo Nordisk社、コペンハーゲン、デンマーク)、NOVOPEN JUNIOR(Novo Nordisk社、コペンハーゲン、デンマーク)、BDペン(Becton Dickinson社、フランクリンレイクス、NJ)、OPTIPEN、OPTIPEN PRO、OPTIPEN STARLET、およびOPTCLIK(Sanofi-Aventis社、フランクフルト、ドイツ)が挙げられるが、但しこれらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達に適用されるディスポーザブルペンおよび/またはオートインジェクター送達デバイスの例として、SOLOSTARペン(Sanofi-Aventis社)、FLEXPEN(Novo Nordisk社)、およびKWIKPEN(Eli Lilly社)、SURECLICKオートインジェクター(Amgen社、Thousand Oaks、CA)、PENLET(Haselmeier社、シュツットガルト、ドイツ)、EPIPEN(Dey,L.P.社)、およびHUMIRAペン(AbbVie Inc.社、North Chicago、IL)他、多数が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0247】
1つの実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、プレフィルドシリンジを用いて投与される。別の実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、安全システムを備えたプレフィルドシリンジを用いて投与される。例えば、安全システムは偶発的な針刺し傷害を防止する。様々な実施形態では、抗体は、ERIS安全システム(West Pharmaceutical Services Inc.社)を備えるプレフィルドシリンジを用いて投与される。参照によって本明細書にそのまま組み入れる米国特許第5,215,534号および同第9,248,242号も参照。
【0248】
別の実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、オートインジェクターを用いて投与される。様々な実施形態では、抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲートは、PUSHCLICK技術を特徴とするオートインジェクター(SHLグループ)を用いて投与される。様々な実施形態では、オートインジェクターは、ある用量の組成物および/または抗体を対象に投与するのを可能にするシリンジを含むデバイスである。参照によって本明細書にそのまま組み入れる米国特許第9,427,531号および同第9,566,395号も参照。
【0249】
抗CEACAM5抗体または該抗体を含むイムノコンジュゲート(または抗体もしくは該抗体を含むイムノコンジュゲートを含む医薬製剤)を患者に送達するマイクロインフューザーの使用も本明細書において検討される。本明細書で使用される場合、用語「マイクロインフューザー」とは、大容量(例えば、最大約2.5mLまたはそれ超)の治療製剤を、長期間(例えば、約10、15、20、25、30分、またはそれより長時間)にわたり低速で投与するように設計された皮下送達デバイスを意味する。例えば、参照によって本明細書にそのまま組み入れる米国特許第6,629,949号;同第6,659,982号;およびMeehanら、J.Controlled Release46巻:107~116頁(1996)を参照。マイクロインフューザーは、高濃度および/または粘稠溶液中に含まれる大用量の治療用タンパク質の送達に特に有用である。
【0250】
本明細書に記載されるすべての公開資料について、目的の如何を問わず参照によって本明細書にそのまま組み入れる。
【実施例1】
【0251】
TED13751-進行した固形腫瘍を有する患者を対象とするhuMAb2-3-SPDB-DM4の安全性、薬物動態、および抗腫瘍活性を評価するための初回ヒト対象試験-治験デザイン
IV経路を介して2週間毎(q2w;14日間毎)に単一薬剤として投与されるADC(huMAb2-3-SPDB-DM4として識別される)の安全性および薬物動態を評価するための初回ヒト対象(FIH)臨床試験を、進行した切除不能または転移性の固形腫瘍を有する成人を対象に実施した。
【0252】
試験を2つのパート:漸増相および延長相に分割した。
【0253】
漸増相期間中に、CEACAM5を発現することが既知の腫瘍型を有する患者について処置集団を富化したが、ただしそれに限定しなかった;CEACAM5発現の確認は、中央検査室において最も新しい保管用組織サンプルに対するIHCを使用して後方視的に行った。循環性CEACAM5の発現も富化目的で使用した。漸増相期間中に、対象の体表面積に基づき、最大忍容量(MTD)を100mg/mに決定した。
【0254】
延長相期間中、処置集団を、腫瘍細胞集団の50%が関わる、強度2+以上のCEACAM5発現を有するNSQ NSCLCに罹患している患者に限定し、それを胃腺癌コホート内の治験処置に適格性を有する可能性のある患者について、局所的IHC評価を使用して、最も新しい保管用組織サンプルに対する事前スクリーニング中に記録した。
【0255】
2つの独立したNSQ NSCLC延長相コホートが設けられた:第1のコホート(肺コホート)、には、腫瘍細胞集団の少なくとも50%が関わる、強度2+以上のCEACAM5発現を有する患者が含まれた。第2のコホート(肺ビス(Lung bis)コホート)には、腫瘍細胞集団の21%~50%未満において、強度2+以上で陽性と事前スクリーニングされた患者が含まれた。治験実施センターが、CEACAM5アッセイ法(huMAb2-3-SPDB-DM4モノクロナール抗体に基づく)を有さず、その現地IHCプラットフォーム上で実施した場合、腫瘍のCEACAM5発現の事前スクリーニングアセスメントは一元的に実施した。上記定義を満たす保管例について、完全なスクリーニングを実施した。
【0256】
CEACAM5発現レベルは、保管用腫瘍組織および新鮮な腫瘍組織(ベースラインサンプル)の両方において実質的に後方視的かつ一元的に記録した。
【0257】
CEACAM5腫瘍発現の確認を、NSQ NSCLCを対象に、ベースライン時に収集した新鮮な腫瘍組織(延長相においてのみ必須の生検)上で、中央検査室において後方視的に実施した。保管された腫瘍材料が十分に利用可能であった場合には、発現の評価における変動について知見を得るために、中央での評価も後方視的に実施した。後方視的分析を行った結果は、患者の処置に影響しなかった。これは、全体的な応答のより良好な解釈のためであり、および進行した際のCEACAM5発現と比較する(獲得耐性機構としてのCEACAM5の喪失に関する調査)ためのベースラインとするためであった。
【0258】
最大患者60例がNSQ NSCLC(肺)コホートに含まれ、および最大患者28例がNSQ NSCLC(肺ビス)コホートに含まれた。測定可能な悪性疾患を有する患者のみが適格性を有した。事前スクリーニング手順期間中に厳格なCEACAM5発現基準を満たす悪性疾患を有するNSQ NSCLC患者について、負荷投与を行わずに最大耐用量(MTD)で処置されるか、その適格性についてさらにスクリーニングした。
【0259】
延長相に参加した最初の患者6例の安全性を、6番目の患者が2サイクルにわたり処置されたとき、次の患者が参加する前に、治験委員会によりレビューした。処置患者(3コホートに参加した)の1/3以下が、サイクル2の終了時に、計画用量のhuMAb2-3-SPDB-DM4において用量制限毒性(DLT)を経験した場合に、MTD(負荷投与を行わない)が確認された。同時点において、予備的評価は、角膜毒性予防において、一次角膜毒性予防から利益が得られるかその有無に基づいた。それに加えて、蓄積毒性の発生についても、もしあれば評価した。RECIST1.1に基づき、薬物の抗腫瘍活性を評価した。
【0260】
個々の患者に対する試験の期間には、最長4週間の組み入れ期間(ベースライン期間)、少なくとも1サイクル(2週間)の処置期間、最後の治験医薬品(IMP)投与から約30日後の処置の終了(EOT)来院、および免疫原性を評価するための少なくとも1回のフォローアップ来院(EOT来院から約30日後)が含まれた。
【0261】
組み入れ基準
I1.治験責任医師の判断において、利用可能な標準的代替療法が存在せず、かつ下記の組み入れ基準を満たす、局所的に進行したまたは転移性の固体悪性腫瘍疾患。
【0262】
I2.FFPE保管用組織から得られた、少なくとも6×5μmのスライド+必要とされる材料の総量と同一量を確保するための、3×10μm(最良)もしくは6×5μm、または等価物であり得る追加の数のスライドが、施設における現地テスト、および/または治験依頼者もしくは治験依頼者により指定された検査室への発送、腫瘍CEACAM5発現の評価(漸増相において後方視的に、および延長相において前方視的に)、および応答に関するその他の予測的バイオマーカーの調査を目的として入手可能であるものとする。不十分量の材料しか入手できなかった場合でも、患者は、主要評価用として十分量の関連する材料が存在することを評価および確認した治験依頼者と協議した後、なおも適格性を有し得る。
【0263】
I3.漸増相コホート(メインおよびビス)に参加する患者の場合:組み入れは、CEACAM5発現の出現率が高い悪性疾患、すなわちNSQ NSCLCに関わる、CEACAM5を発現しているまたは発現している可能性が高い腫瘍(ただし、それに限定しなかった)について富化された。延長相コホートに参加する患者の場合、組み入れは、NSQ NSCLCサブタイプまたはその他の肺がんサブタイプを有する患者に限定された。保管用腫瘍組織に対する現地または中央のCEACAM5発現評価に基づき、NSQ NSCLC延長相において2つの独立したコホートが存在した:修正#4の前に開始した第1のコホート(肺)には、腫瘍細胞集団の少なくとも50%が関わる、強度2+を上回るCEACAM5発現を有する患者が含まれた。第2の独立コホート(肺ビス)には、腫瘍細胞集団の21%~50%未満において強度2+を上回り陽性と事前スクリーニングされた患者が含まれた。
【0264】
I4.延長相に限り、RECIST v1.1により測定可能な少なくとも1つの病変。
【0265】
I5.生検が可能な少なくとも1つの病変(延長コホートに限る)。患者は、処置開始前に腫瘍のCEACAM5発現を後方視的に確認するためのベースライン生検に同意しなければならないが、ただし生検が可能な病変を有さないNSCLCまたはSCLCの場合を除く。
【0266】
治験薬
医薬剤形
huMAb2-3-SPDB-DM4 ADCは、I型ガラスバイアル30mLに収納された、125mg(5mg/mL)の輸液用溶液のための、抽出可能容積が25mLの濃縮物として供給された。
【0267】
1投与当たりの薬物用量
薬物は、漸増相期間中に決定された通りに、MTD(100mg/m)で2週間毎に投与した。
【0268】
患者の体表面積(BSA)は、その身長および実際の体重を使用して計算した。2.2mを超えるBSAを有する患者の場合、BSAを2.2mとして用量を計算する。
【0269】
ヒスタミンH1アンタゴニストを用いたプレメディケーション(ジフェニルヒドラミン50mg POまたは等価物[例えば、デキスクロルフェニルアミン]が、huMAb2-3-SPDB-DM4投与前およそ1時間に与えられる)が、全患者に必要とされる。
【0270】
輸液制御ポンプを使用して、huMAb2-3-SPDB-DM4が、IV輸液により2.5mg/分の速度で最初の30分間投与され、次に過敏反応が認められない場合には5mg/分まで高められる。
【0271】
投与されるIMPの正確な用量および時間(日/月/年、時:分)は、eCRFに文書化される。
【0272】
治療期間:
huMAb2-3-SPDB-DM4を1日目に投与し、そして14日毎に繰り返した;この14日という期間は、1回の処置サイクル(1サイクル)を構成した。患者は、疾患進行、非許容毒性、または中止意志が認められるまで処置を継続し得る。
【0273】
希釈および輸液方法
医薬品中には静菌剤は存在しなかった;したがって、無菌技術順守を必要とした。投与前に、各患者の用量は、賦形剤(0.9%塩化ナトリウム)の事前充填バッグから開始して、治験薬剤師により個別に調製される必要がある。
【0274】
ひとたび溶液が調製されたら、バッグ調製から用量の輸液終了まで7.5時間以内に、用量を患者に投与した。
【0275】
2種類の投与法を使用した:
・低用量につきシリンジドライバーによる輸液(最大30mg/m)。
・その他の用量につきポンプによる輸液。
【0276】
IVチューブ式投与セットとそれに連結した0.2ミクロンフィルターユニットを輸液用として使用した。治験薬は、任意のその他のIV液を用いて投与されることはなかった。しかしながら、輸液チューブ系は、通常生理食塩溶液またはhuMAb2-3-SPDB-DM4で場合によりプライミングした。注入容積が25mL以下の場合、25mLのhuMAb2-3-SPDB-DM4のフラッシュおよび破棄を、用量の輸液前に確実にする必要があった。ポンプによる輸液終了時、全用量の送達を確実にするために、必要に応じてIVラインを通常生理食塩溶液でフラッシュした。シリンジドライバーによる輸液の終了時、huMAb2-3-SPDB-DM4のシリンジ内残存量を破棄した。
【0277】
腫瘍応答評価
客観的応答または将来的な進行を評価するために、ベースラインにおいて全体的腫瘍負荷を見積り、そして後続する測定のためのコンパレーターとしてこれを使用する必要があった。ベースラインにおいて測定可能な疾患を有する患者のみが、客観的腫瘍応答が一次エンドポイントであるプロトコールに含まれた。測定可能な疾患を、少なくとも1つの測定可能な病変の存在として規定した。一次エンドポイントが腫瘍進行(進行までの時間、または固定された日付における進行の割合)である試験において、プロトコールは、参加は測定可能な疾患を有する患者に限定されるか、または非測定可能疾患しか有さない患者も適格性を有するか規定した。表2および表3を参照。
【0278】
応答基準
【表3】
【0279】
【表4】
【0280】
最良総合効果(best overall response)の評価
下記の表は、ベースライン時に測定可能な疾患を有する患者について、各時点における総合効果状態を算定した要約を提示する。
【0281】
【表5】
【0282】
【表6】
【0283】
患者に関するすべてのデータが出揃ったら、最良総合効果を判断した。完全または部分応答の確認が不要であったトライアルにおける最良効果の判断:このトライアルにおける最良応答は、すべての時点を通して最良応答として定義される(例えば、第1回目のアセスメントにおいてSD、第2回目のアセスメントにおいてPR、および最終アセスメントの際にPDを有する患者は、最良総合効果PRを有する)。SDが最良応答と考えられるとき、プロトコールが規定するベースラインからの最短時間も満たさなければならない。SDがとにかく最良時点応答であるときに、最短時間が満たされない場合、患者の最良応答は後続するアセスメントに依存する。例えば、第1回目の評価でSD、第2回目にPDを有し、そしてSDに関する最短期間を満たさない患者は、PDの最良応答を有する。第1目のSDアセスメントの後に追跡不能となった同一患者は評価不能とみなされる。
【0284】
完全または部分応答の確認が必要とされたトライアルにおける最良応答の判断:それぞれに対する基準がプロトコールに規定するような後続する時点(一般的に4週間後)において満たされる場合にのみ、完全または部分応答と言える。この状況において、最良総合効果は表5に示すように解釈された。
【0285】
CEACAM5-免疫組織化学(IHC)スコアリング法
CEACAM5染色された免疫組織化学スライドを、光学顕微鏡を用いて病理学者により評価した。
【0286】
CEACAM5陽性は、CEACAM5発現生存腫瘍細胞膜染色陽性の割合(%)により決定した。
【0287】
腫瘍細胞が、強度2+および3+で、一部または全部について円周状原形質膜染色を示す場合、CEACAM5陽性である。腫瘍細胞が強度1+(弱染色)または無染色(強度0)の染色を示す場合、陰性とみなされる。
切片上で観察されたすべての腫瘍細胞を、CEACAM5について評価した。
CEACAM5陽性細胞の割合(%)を決定するには、最低100個の生存腫瘍細胞が切片上に存在するものとする。
【0288】
スコアリングから、下記に示すように、各測定強度で染色された腫瘍細胞の割合(%)が把握される:
%CEACAM5陽性=100×膜染色が強度2+以上のCEACAM5発現腫瘍細胞の数/切片中に存在する生存腫瘍細胞の総数
図1A図1B、および図1Cは、染色強度1+、2+、3+の例をそれぞれ示す。膜染色強度2+および3+がCEACAM5陽性とみなされる。スコアリングを含むIHCプロセスの一般的な説明は、So-Woon Kimらにより提供される(Journal of Pathology and Translational Medicine 2016;50巻:411~418頁)。
【実施例2】
【0289】
TED13751-延長相-NSQ NSCLCコホート-主要相中間分析
実施例1で議論したように、現地または中央における保管用腫瘍組織上でのCEACAM5発現アセスメントに基づき、非sqNSCLC延長相には2つの独立したコホートが存在した:第1のコホートには、腫瘍細胞集団の少なくとも50%が関わる強度2+以上のCEACAM5発現を有する患者が含まれた。第2の独立コホート(肺ビス)には、腫瘍細胞集団の21%~50%未満において強度2+以上で陽性と事前スクリーニングされた患者が含まれた。両コホートを、100mg/mのhuMAb2-3-SPDB-DM4を用いて処置するために選択した。
【0290】
腫瘍細胞集団の50%以上が強度2+以上でCEACAM5を発現しているNSQ NSCLC(肺)コホートの場合、抗PDL1を用いて事前処置された患者を対象としてhuMAb2-3-SPDB-DM4の抗腫瘍活性を評価するため、およびこのサブ母集団を対象とするサブグループ分析について最低限の検出力を保証するために、抗PD1/抗PDL1で事前処置された患者、最低30例が含まれた。1%以上~50%未満において、強度2+以上でCEACAM5を発現しているNSQ NSCLC(肺ビス)コホートの場合、CEACAM5発現レベルと効能転帰との間の関連性は、軽度のCEACAM5膜染色(少なくとも1%の陽性腫瘍細胞かつ強度2+を超える腫瘍細胞が50%未満)を有する処置患者28例からなるコホートを追加することにより評価される。
【0291】
表1および表2に示すように、25.9%の客観的応答が、CEACAM5高発現(肺)コホートに認められた一方、低発現(肺ビス)コホートでは客観的応答は認められなかった。表1および表2は、huMAb2-3-SPDB-DM4を用いて処置された非小細胞肺がん患者の客観的応答結果について要約する。表は、パーセントスコアが50以上のhCEACAM5発現(強度2+および3+からなる)を有するNSCLC患者と、パーセントスコアが1~49のhCEACAM5発現を有する患者との間で客観的応答を比較する。
【0292】
【表7】
【0293】
【表8】
【0294】
さらに、図2に示すように、最良の相対的腫瘍縮退は、50~80%または80%を上回るCEACAM5発現を有する患者に認められた。
【0295】
表3および表4に示すように、応答の期間(DoR)および進行までの時間(TTP)も、高発現性(肺)コホートにおいてやはり改善した。
【0296】
【表9】
【0297】
【表10】
【0298】
それに加えて、これらの高発現患者(パーセントスコアが50以上のhCEACAM5発現)のうち、抗PD1/PDL1を用いて事前処置された患者、および抗PD1/PDL1を用いて事前処置されなかった患者において、類似した客観的応答が得られた(表5および表6)。
【0299】
【表11】
【0300】
【表12】
【実施例3】
【0301】
TED13751-延長相-NSQ NSCLC高発現者コホート-処置患者32例における主要相完全コホート分析
患者32例からなるコホートについて完全分析を行い、実施例2の中間分析を確認した。該分析により、CEACAM5≧50%のNSQ NSCLCを有する、入念に事前処置された患者において有望な抗腫瘍活性が明らかとなった。この抗腫瘍活性は、RECIST1.1に基づき25%の奏功率(response rate)と関連した(90%CI:14.70~39.20%)。
【0302】
表7に示すように、25%の客観的応答は、CEACAM5高発現(肺)コホートにおいて処置された患者32例に認められた。
【0303】
【表13】
【0304】
さらに、図3に示すように、最良の相対的腫瘍縮退は、50~80%または80%を上回るCEACAM5発現を有する患者において一般的に観察された。図4に示すように、進行までの時間(TTP)も、高発現性(肺)コホートにおいてやはり改善した。それに加えて、下記の表8に示す通り、これらの高発現性患者のうち、抗PD1/PDL1を用いて事前処置された患者、および抗PD1/PDL1を用いて事前処置されなかった患者において類似した客観的応答が得られた。
【0305】
【表14】
【実施例4】
【0306】
TED13751-延長相-NSQ NSCLC中程度発現者コホート
表9に示すように、1例のみ(患者20例において)の客観的応答が、低発現(肺ビス)コホートに認められた。
【0307】
【表15】
【0308】
結論として、これらのデータは、概念証明がhuMAb2-3-SPDB-DM4を用いて処置されたNSCLC肺がんのサブセットにおいて実現したことを実証する。特に、これらのデータは、huMAb2-3-SPDB-DM4は、肺がんのおよそ60%を占めるサブタイプであるNSQ NSCLCの処置において有効であるという結論を裏付ける。それに加えて、これらのデータは、huMAb2-3-SPDB-DM4は、NSQ NSCLCがんのおよそ20%を占める腫瘍型であるCEACAM5高発現性NSQ NSCLCの処置において特に有効であるという結論を裏付ける。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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