(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】アルキル置換エチレンアミンを含有するエポキシ樹脂系繊維マトリックス組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20241203BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C08J5/04 CFC
C08G59/50
(21)【出願番号】P 2021561727
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2020060220
(87)【国際公開番号】W WO2020212258
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-04-05
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コプクツィンスキー,マタエウス
(72)【発明者】
【氏名】アルテンホフ,アンスガー ゲレオン
(72)【発明者】
【氏名】コラッサ,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ジプフェル,ハンネス フェルディナント
(72)【発明者】
【氏名】エイダムスハウス,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】パストレ,イェルヒ
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0385332(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03219740(EP,A1)
【文献】特表2018-515655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C08K 3/00-13/08
C08J 5/04-5/10、5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維からなる繊維成分とエポキシ樹脂及び硬化剤を含むマトリックス成分とを有する繊維-マトリックス組成物であって、硬化剤が、式I
H
2N-A-(NH-A-)
nNH
2 (I)
[式中、
Aは独立に式-CHR-CH
2-又は-CH
2-CHR-(式中、R=H、エチル、又はメチルである)のエチレン基であるが、式Iのアルキル置換エチレンアミンの少なくとも1つのAは、式-CHR-CH
2-又は-CH
2-CHR-(式中、R=エチル又はメチルである)のアルキルエチレン基であり、
n=1~4である]
の少なくとも1種のアルキル置換エチレンアミンを含むことを特徴とする、繊維-マトリックス組成物。
【請求項2】
Aが独立に式-CH(CH
3)-CH
2-又は-CH
2-CH(CH
3)-のメチルエチレン基であり、n=1~4である、請求項1に記載の繊維-マトリックス組成物。
【請求項3】
アルキル置換エチレンアミンが、式II
H
2N-A-NH-A-NH
2 (II)
[式中、Aは独立に式-CH(CH
3)-CH
2-又は-CH
2-CH(CH
3)-のメチルエチレン基である]
のジメチルジエチレントリアミンである、請求項1に記載の繊維-マトリックス組成物。
【請求項4】
アルキル置換エチレンアミンが、繊維-マトリックス組成物中の硬化剤の総量を基準として、少なくとも50重量%を占める、請求項1から3のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及び水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
【請求項6】
強化繊維が、ガラス繊維若しくは炭素繊維又はそれらの混合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
【請求項7】
強化繊維にマトリックス成分が含浸されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
【請求項8】
硬化複合材料を製造する方法であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物を提供すること、次いで硬化させることを含む、方法。
【請求項9】
硬化させることが、70~180℃の範囲の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
繊維-マトリックス組成物が、強化繊維にマトリックス成分を含浸させることにより提供される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
a.多数の強化繊維を配列して束を得る工程と、
b.束を含浸デバイスに通して引き抜いて、束の中の強化繊維にマトリックス成分を含浸させる工程と、
c.含浸済みの強化繊維の束を第2の加熱デバイスに通して引き抜き、第2の加熱デバイス中で束を70~180℃の範囲の温度で硬化させて、硬化複合材料を得る工程と
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
a.1つ以上の強化繊維にマトリックス成分
を含浸させ、次いでこのようにして得られた1つ以上の含浸済み強化繊維を巻芯上に巻きつけて、未硬化複合材料を得る工程と、
b.未硬化複合材料を70~180℃の範囲の温度で硬化させて、硬化複合材料を得る工程とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
強化繊維が、連続繊維フィラメント、連続繊維ロービング、又は連続繊維マットの形態で使用される、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から7のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物を硬化した硬化複合材料。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化複合材料からなる、成形物。
【請求項16】
請求項14に記載の硬化複合材料からなる、鉄筋。
【請求項17】
エポキシ樹脂系複合材料の製造における硬化剤としての、式I
H
2N-A-(NH-A-)
nNH
2 (I)
[式中、
Aは独立に式-CHR-CH
2-又は-CH
2-CHR-(式中、R=H、エチル、又はメチルである)のエチレン基であるが、式Iのアルキル置換エチレンアミンの少なくとも1つのAは、式
-CHR-CH
2-又は-CH
2-CHR-(式中、R=エチル又はメチルである)のアルキルエチレン基であり、
n=1~4である]
のアルキル置換エチレンアミンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル置換エチレンアミン、例えばジメチルジエチレントリアミン(DMDETA、ジメチル-1,4,7-トリアザヘプタンとも言う)を硬化剤として含む、エポキシ樹脂系繊維-マトリックス組成物に関する。本発明は、繊維-マトリックス組成物から、特に引き抜き成形及びフィラメントワインディング法により硬化複合材料を製造する方法、並びにそれにより得られる硬化複合材料にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、一般に公知であり、それらの靱性、可撓性、接着性、及び耐薬品性を理由として、表面被覆のための材料として、接着剤として、並びに成形及び積層のため、並びに繊維強化複合材料を製造するために使用される。
【0003】
少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物から開始して、重付加反応(鎖延長)により例えば2つのアミノ基を有するアミノ化合物と共に硬化させることが可能である。高い反応性を有するアミノ化合物は、一般に、所望の硬化の少し前に添加される。したがってそのような系は、二成分系(2K系)と呼ばれる。
【0004】
原理上は、アミン系硬化剤(アミノ硬化剤)は、それらの化学構造に従って、脂肪族、脂環式、又は芳香族型に分類される。さらに、分類はアミノ基の置換度によって可能であり、これは第1級、第2級、又は第3級である場合がある。しかし、第3級アミンについては、エポキシ樹脂の硬化の触媒メカニズムを前提としているが、一方で第2級及び第1級アミンにおけるポリマー網目構造の形成の基本は、化学量論的な硬化反応である。
【0005】
一般に、脂肪族アミンが、エポキシ硬化において第1級アミノ硬化剤の中で最も高い反応性を示すことが示されている。脂環式アミンによって典型的にはいくらか遅い反応が示され、一方で芳香族アミン(アミノ基が芳香族環の炭素原子に直接結合しているアミン)は、圧倒的に最も遅い反応性を有する。
【0006】
これらの既知の反応性の違いは、加工時間及び硬化速度を必要に応じて調整することができるように、エポキシ樹脂の硬化において利用される。繊維強化複合材料(複合材)の製造において、強化繊維の埋め込み又は含浸に使用されるエポキシ樹脂組成物(マトリックス成分)が非常に長い加工時間(ポットライフ:その間に組成物を加工することができる時間)を有する場合に望ましい。引き抜き成形法による、又は注入法若しくは射出法、例えば真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)若しくは樹脂トランスファー成形(RTM)などによる複合材の製造において、特に、大きい部材の製造において、マトリックス成分が効率的に強化繊維を濡らし強化繊維の周囲に均質に分布するのに十分に長い加工時間が必要とされる。同じ理由で、マトリックス成分の低い混合粘度も望ましい。同時に、短い生産サイクル及びひいては高い生産性を可能にするために、マトリックス成分は、高温において許容可能な時間内で硬化するべきである。
【0007】
脂環式アミン、例えばイソホロンジアミン(IPDA)は、比較的長い加工時間を可能にし、適切な配合を仮定した場合に、同時に高い硬化速度及び低い混合粘度も可能にする(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、Wiley-VCH、Weinheim、ドイツ、2012年、13巻、Epoxy Resins、H. Pham & M. Marks、15.1.1.2章、タブ14(オンライン: 15.10.2005、DOI: 10.1002/14356007.a09_547.pub2))。さらに、脂環式アミン、例えばIPDAにより硬化されたエポキシ樹脂は一般に、ガラス転移温度が高いことで注目されている。したがって、脂環式アミンは、特に複合材の製造にも使用される。複合材の製造において同様に使用される芳香族アミン及び無水物には、長い硬化時間及び高い硬化温度が必要とされるという欠点がある。さらに、無水物による硬化は、一般に比較的もろい樹脂を生じさせる。EP2307358Aは、IPDA及びD230ポリエーテルアミンによるエポキシ樹脂硬化においてテトラメチルグアニジンを加えると、同時にポットライフを延長させ硬化速度を速くすることができると述べている。しかし、そこに記載される系は、比較的低いガラス転移温度を有する。
【0008】
引き抜き成形法による複合材の製造は、硬化性組成物を特に必要とする。引き抜き成形法では、最初に繊維束に硬化性組成物(マトリックス成分)が含浸され、次いで高温で硬化されて複合材部材(引き抜き成形プロファイル)を得るデバイスに、連続法で長繊維(例えばガラス、炭素、又はアラミド繊維)の束を通して引き抜く。使用されるマトリックス成分は、一般にポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂に基づく硬化性組成物である。例えば、マトリックス成分を含有する浴に繊維を通して引き抜くことにより(浴法又は「樹脂浴引き抜き成形」)、又はマトリックス成分を圧力下で繊維の間に射出することにより(射出法又は「樹脂射出引き抜き成形」)、繊維に含浸させることができる。硬化及び成形の場合は、含浸済み繊維ストランドを、100~200℃の範囲内の温度でマトリックス成分が硬化する加熱ゾーンに通して引き抜く。引き抜き成形法の場合は、マトリックス成分は、第1に含浸工程を実行するのに十分に長いポットライフを有していなければならないが、第2に高温で急速に硬化もしなければならない。硬化速度は、繊維ストランドを加熱ゾーンに通して引き抜くことができるスピードを制限し、ひいてはこの方法の処理量を制限する。実際には、使用されるマトリックス成分は、典型的には、硬化剤としての無水物を促進剤(例えばイミダゾール又は第3級アミン)と組み合わせたものに基づくエポキシ樹脂系である(例えば、Araldite(登録商標)LY 1564(ビスフェノールAエポキシ樹脂及びブタンジオールジグリシジルエーテル反応性希釈剤の混合物)、Aradur(登録商標)917(4-メチルテトラヒドロフタル酸無水物及びテトラヒドロフタル酸無水物の混合物)、及びAccelerator 960-1(2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)の混合物に関する、又はAraldite(登録商標)LY 1556(ビスフェノールAエポキシ樹脂)、Aradur(登録商標)917、及びAccelerator DY 070(1-メチルイミダゾール)の混合物に関する、2012年にHuntsmanにより発行された技術データシートに記載されている)。不利なことに、エポキシ樹脂の無水物硬化は、アミノ硬化とは対照的に、比較的もろい製品を生じさせる(Lee & Neville、Handbook of Epoxy Resins (1967)、12~36頁以下)。
【0009】
WO2016/177533は、エポキシ樹脂及びアミノ硬化剤、例えばIPDAで構成されるマトリックス成分を有する鉄筋を製造するための引き抜き成形法を記載している。したがって、無水物硬化剤よりもむしろIPDAの使用が、改善されたアルカリ安定性及びより高いガラス転移温度を実現する。IPDA系エポキシ樹脂系の場合のポットライフは、無水物硬化剤に基づく系よりも明らかに短いが、引き抜き成形法での使用には十分である。
【0010】
したがって、この背景に反して、特に引き抜き成形法において、既知の脂環式アミノ硬化剤IPDAを使用したエポキシ樹脂系のように、比較的長いポットライフ及び室温(23℃)での低い混合粘度を特徴とし、高いガラス転移温度及び良好な機械的特性(特に低い脆性など)を有する硬化エポキシ樹脂をもたらすが、同時に穏やかな硬化温度、例えば70~180℃、特に90~150℃での比較的高い硬化速度を可能にする、アミノ硬化剤を使用したエポキシ樹脂系繊維-マトリックス組成物が探求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】EP2307358A
【文献】WO2016/177533
【非特許文献】
【0012】
【文献】Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、Wiley-VCH、Weinheim、ドイツ、2012年、13巻、Epoxy Resins、H. Pham & M. Marks、15.1.1.2章、タブ14(オンライン: 15.10.2005、DOI: 10.1002/14356007.a09_547.pub2)
【文献】Lee & Neville、Handbook of Epoxy Resins (1967)、12~36頁以下
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、特に引き抜き成形法において、比較的長いポットライフ及び室温での低い混合粘度を有すると同時に、70~180℃、特に90~150℃の穏やかな硬化温度で改善された硬化速度を有する、そのようなエポキシ樹脂系繊維-マトリックス組成物を提供することである。組成物は、好ましくは、エポキシ樹脂及び脂環式アミノ硬化剤IPDAで構成される組成物と同様に高いガラス転移温度及び良好な機械的特性(特に低い脆性)を硬化樹脂に対して可能にするべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の文脈において、アルキル置換エチレンアミン、例えばジメチルジエチレントリアミン(DMDETA)の使用は、それが構造的には脂肪族アミンであるにもかかわらず、脂環式アミノ硬化剤IPDAに匹敵するポットライフ及び室温での粘度を有し、同様のガラス転移温度及び同様に良好な機械的特性を有する硬化エポキシ樹脂を生じさせるが、同時に70~180℃、特に90~150℃の穏やかな硬化温度で特に急速に硬化し、そのため引き抜き成形法での使用に特に良く適していることが分かった。アルキル置換エチレンアミン、例えばDMDETAは、脂肪族アミンに特有である急速硬化と、脂環式アミンに特有である比較的長いポットライフ及び比較的高いガラス転移温度とを予想外に併せ持つ。
【0015】
したがって本発明は、強化繊維からなる繊維成分とエポキシ樹脂及び硬化剤を含むマトリックス成分とを有する繊維-マトリックス組成物であって、硬化剤が、式I
H2N-A-(NH-A-)nNH2 (I)
[式中、
Aは独立に式-CHR-CH2-又は-CH2-CHR-(式中、R=H、エチル、又はメチルである)のエチレン基であるが、式Iのアルキル置換エチレンアミンの少なくとも1つのAは、式
-CHR-CH2-又は-CH2-CHR-(式中、R=エチル又はメチルである)のアルキルエチレン基であり、
n=1~4、好ましくはn=1又は2、特にn=1である]
の少なくとも1種のアルキル置換エチレンアミン、例えばジメチルジエチレントリアミン(DMDETA)を含むことを特徴とする、繊維-マトリックス組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい実施形態において、本発明のアルキル置換エチレンアミンは、式I
[式中、
Aは独立に式-CH(CH3)-CH2-又は-CH2-CH(CH3)-のメチルエチレン基であり、
n=1~4、好ましくはn=1又は2である]
の化合物である。
【0017】
特に好ましい実施形態において、本発明のアルキル置換エチレンアミンは、ジメチルジエチレントリアミン(DMDETA)、式II
H2N-A-NH-A-NH2 (II)
[式中、Aは独立に式-CH(CH3)-CH2-又は-CH2-CH(CH3)-のメチルエチレン基である]
の化合物又は式IIの複数の化合物の異性体混合物である。好ましくは、本発明のDMDETAは、式IIa、IIb、若しくはIIcである異性体、又は式IIa、IIb、及びIIcである異性体の混合物(又はこれらの3種の異性体のうち2種の混合物)である。
【0018】
【0019】
DMDETA異性体混合物の本発明による使用では、特に式IIa及びIIbの化合物から本質的になる混合物が使用される。これらの混合物は、例えば、少なくとも60重量%の程度まで、特に少なくとも80重量%の程度まで、式IIa及びIIbの化合物からなる。
【0020】
本発明のDMDETAの経験的なアミン硬化剤当量(AHEWemp)は、好ましくは25~30g/eqの範囲である。
【0021】
エポキシ樹脂の硬化剤としてのDMDETAの根本的な有用性は、細部にはわたらないが、Akhmadeyeva及びZagidullin(Mukmeneva編、Materialy Yubileinoi Nauchno-Metodicheskoi Konferentsii「III Kirpichnikovskie Chteniya」、Kazan、ロシア連邦、3月25~28日、2003年、473~475頁)によって言及された。
【0022】
本発明によるエポキシ樹脂は、典型的には2~10個、好ましくは2~6個、さらにより好ましくは2~4個、特に2個のエポキシ基を有する。エポキシ基は、特に、アルコール基とエピクロロヒドリンとの反応において形成されるようなグリシジルエーテル基である。エポキシ樹脂は、一般に1000g/mol未満の平均分子量(Mn)を有する低分子量化合物、又はより高い分子量の化合物(ポリマー)であってもよい。そのようなポリマーエポキシ樹脂は、好ましくは2~25単位、より好ましくは2~10単位のオリゴマー化度を有する。前記樹脂は、脂肪族若しくは脂環式化合物、又は芳香族基を有する化合物であってもよい。特に、エポキシ樹脂は、2つの芳香族若しくは脂肪族6員環を有する化合物又はそれらのオリゴマーである。工業的に重要なエポキシ樹脂は、エピクロロヒドリンと、少なくとも2つの反応性水素原子を有する化合物、特にポリオールとの反応により得られるものである。特に重要なのは、エピクロロヒドリンと、少なくとも2つ、好ましくは2つのヒドロキシ基及び2つの芳香族又は脂肪族6員環を含む化合物との反応により得られるエポキシ樹脂である。そのような化合物としては、特にビスフェノールA及びビスフェノールF、並びにまた水素化ビスフェノールA及び水素化ビスフェノールFが挙げられ、対応するエポキシ樹脂は、ビスフェノールA若しくはビスフェノールFの、又は水素化ビスフェノールA若しくは水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテルである。本発明に従って使用されるエポキシ樹脂は、典型的にはビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)である。本発明による適切なエポキシ樹脂としては、テトラグリシジルメチレンジアニリン(TGMDA)、及びトリグリシジルアミノフェノール、又はそれらの混合物も挙げられる。エピクロロヒドリンと他のフェノール、例えばクレゾール又はフェノール-アルデヒド付加体との反応生成物、例えばフェノール-ホルムアルデヒド樹脂など、特にノボラックも適切である。エピクロロヒドリンに由来しないエポキシ樹脂も適切である。有用な樹脂の例としては、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応によるエポキシ基を含むエポキシ樹脂が挙げられる。室温(23℃)で液体であるエポキシ樹脂又はそれらの混合物の使用が、本発明に従って優先される。エポキシ当量(EEW)は、エポキシ基1モル当たりのエポキシ樹脂の平均質量(g)を示す。
【0023】
本発明の繊維-マトリックス組成物のマトリックス成分は、好ましくは少なくとも50重量%の程度までエポキシ樹脂からなる。
【0024】
特定の実施形態において、本発明の繊維-マトリックス組成物は、反応性希釈剤をさらに含んでいてもよい。本発明の文脈における反応性希釈剤は、硬化性組成物の混合粘度(初期粘度とも言う)を低下させ、硬化性組成物の硬化の過程で、エポキシ樹脂及び硬化剤の網目構造を発達させながら化学結合を形成する化合物である。本発明の文脈における好ましい反応性希釈剤は、1つ以上のエポキシ基を含む、低分子量有機化合物、好ましくは脂肪族の化合物である。
【0025】
本発明の反応性希釈剤は、好ましくは、ブタン-1,4-ジオールビスグリシジルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、ネオデカン酸グリシジル、バーサチック酸グリシジル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、C8~C10-アルキルグリシジルエーテル、C12~C14-アルキルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMP)、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルパラアミノフェノール(TGPAP)、ジビニルベンジルジオキシド、及びジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択される。それらはより好ましくは、ブタン-1,4-ジオールビスグリシジルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C8~C10-アルキルグリシジルエーテル、C12~C14-アルキルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMP)、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジビニルベンジルジオキシド、及びジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択される。それらは特に、ブタン-1,4-ジオールビスグリシジルエーテル、C8~C10-アルキルモノグリシジルエーテル、C12~C14-アルキルモノグリシジルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオールビスグリシジルエーテル(HDDE)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMP)、グリセロールトリグリシジルエーテル、及びジシクロペンタジエンジエポキシドからなる群から選択される。
【0026】
本発明の反応性希釈剤は、好ましくは、エポキシ樹脂の量を基準として最大で30重量%、より好ましくは最大で25重量%、特に1重量%~20重量%の割合を占める。
【0027】
本発明のマトリックス成分の硬化剤は、本発明のアルキル置換エチレンアミンだけでなく、さらなる脂肪族、脂環式、及び芳香族ポリアミン、又はさらなる第1級モノアミンも含んでいてもよい。適切なさらなる脂肪族、脂環式、又は芳香族ポリアミンの例としては、ジシカン、ジメチルジシカン(DMDC)、イソホロンジアミン(IPDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、メチレンジアニリン(例えば4,4'-メチレンジアニリン)、ポリエーテルアミン、例えばD230ポリエーテルアミン、D400ポリエーテルアミン、D2000ポリエーテルアミン、又はT403ポリエーテルアミンなど、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン(DODA)、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン(TTD)、ポリアミノアミド、例えばVersamid140など、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、トルエン-2,4-ジアミン、トルエン-2,6-ジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン及び2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン(MCDA)の混合物、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン(DETDA)、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、ジアミノジフェニルオキシド、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニル、1,12-ジアミノドデカン、1,10-ジアミノデカン、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、プロパン-1,2-ジアミン、プロパン-1,3-ジアミン、2,2'-オキシビス(エチルアミン)、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4-エチル-4-メチルアミノ-1-オクチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メンテンジアミン、メタ-キシリレンジアミン(MXDA)、ベンゼン-1,3-ジメタンアミンとスチレンとの反応生成物(Gaskamine(登録商標)240)、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEPIP)、ネオペンタンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン(DMAPAPA)、オクタメチレンジアミン、4,8-ジアミノトリシクロ[5.2.1.0]デカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、並びにピペラジンが挙げられる。さらなる脂肪族、脂環式、又は芳香族ポリアミンとして優先的に適しているのは、ジシカン、ジメチルジシカン(DMDC)、イソホロンジアミン(IPDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、ポリエーテルアミン、例えばD230ポリエーテルアミン、D400ポリエーテルアミン、D2000ポリエーテルアミン、又はT403ポリエーテルアミンなど、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン(DODA)、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン(TTD)、ポリアミノアミド、例えばVersamid140など、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン及び2-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン(MCDA)の混合物、1,2-ジアミノシクロヘキサン(DACH)、2,4-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン、2,6-ジアミノ-3,5-ジエチルトルエン(DETDA)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、メタ-キシリレンジアミン(MXDA)、ベンゼン-1,3-ジメタンアミンとスチレンとの反応生成物(Gaskamine(登録商標)240)、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEPIP)、並びにジメチルアミノプロピルアミノプロピルアミン(DMAPAPA)である。適切なさらなる第1級モノアミンの例としては、ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)及びジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)が挙げられる。
【0028】
特定の実施形態において、本発明のアルキル置換エチレンアミンは、繊維-マトリックス組成物中の硬化剤の総量を基準として、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%を占める。好ましい実施形態において、繊維-マトリックス組成物は、いかなる無水物硬化剤も含まない。特定の実施形態において、繊維-マトリックス組成物は、本発明のアルキル置換エチレンアミンは別として、いずれのさらなる硬化剤も含まない。
【0029】
本発明の文脈における硬化剤は、アミノ硬化剤又は無水物硬化剤を意味すると理解される。本発明の文脈におけるアミノ硬化剤は、2以上のNH官能価を有するアミンを意味すると理解される(したがって、例えば第1級モノアミンはNH官能価が2であり、第1級ジアミンはNH官能価が4であり、3つの第2級アミノ基を有するアミンはNH官能価が3である)。本発明の文脈における無水物硬化剤は、分子内カルボン酸無水物、例えば4-メチルテトラヒドロフタル酸無水物を意味すると理解される。
【0030】
本発明の繊維-マトリックス組成物のマトリックス成分において、エポキシ樹脂及びNH官能価に基づいておおよその化学量論比で、エポキシ化合物(エポキシ基を有する任意の反応性希釈剤を含めたエポキシ樹脂)及びアミノ硬化剤を使用することが優先される。エポキシ基とNH官能価との特に適切な比は、例えば1:0.8~1:1.2である。或いは、本発明の特定の実施形態において、エポキシ化合物(エポキシ基を有する任意の反応性希釈剤を含めたエポキシ樹脂)及びアミノ硬化剤は、本発明の繊維-マトリックス組成物のマトリックス成分において、エポキシ化合物のEEW及びアミノ硬化剤のAHEWempに基づいておおよその当量比で、好ましくは1:0.8~1:1.2の範囲の比で使用される。
【0031】
本発明の強化繊維は、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、若しくは玄武岩繊維、又はそれらの混合物である。ガラス繊維及び炭素繊維、特にガラス繊維が特に優先される。使用されるガラス繊維は、典型的にはEガラスの繊維であるが、Rガラス、Sガラス、及びTガラスの繊維も使用される。ガラスタイプの選択は、複合材料の機械的特性に影響を与えることがある。本発明によれば、強化繊維は、単繊維の形態で使用されるが、好ましくは繊維フィラメント、繊維ロービング、繊維マット、又はそれらの組み合わせの形態で使用される。強化繊維を繊維ロービングの形態で使用することが、特に優先される。強化繊維は、例えば数mmからcmまでの長さを有する短繊維片、又は数cmから数mまでの長さを有する中繊維片、又は数m以上の範囲の長さを有する長繊維片の形態をとっていてもよい。本発明によれば、特に引き抜き成形法又はフィラメントワインディング法において、強化繊維は、好ましくは連続繊維フィラメント、連続繊維ロービング、又は連続繊維マットの形態で使用される。本発明の文脈における連続繊維フィラメント、連続繊維ロービング、又は連続繊維マットは、少なくとも10m、好ましくは少なくとも100m、特に少なくとも200mの長さを有する。
【0032】
本発明の繊維-マトリックス組成物は、さらなる添加剤、例えば不活性希釈剤、硬化促進剤、顔料、着色剤、フィラー、剥離剤、強靭化剤、流動化剤、消泡剤、難燃剤、又は増稠剤も含んでいてもよい。そのような添加剤は、典型的には機能的な量で添加される、すなわち、例えば、顔料は、典型的には所望の色を組成物に与える量で添加される。本発明の組成物は、典型的には、繊維-マトリックス組成物全体を基準として、すべての添加剤を全体で0重量%~50重量%、好ましくは0重量%~20重量%、例えば2重量%~20重量%含む。本発明の文脈において、添加剤は、エポキシ化合物でも硬化剤(アミノ硬化剤及び/又は無水物硬化剤)でも強化繊維でもない、繊維-マトリックス組成物へのあらゆる添加物を意味すると理解される。
【0033】
本発明の繊維-マトリックス組成物は、好ましくはマトリックス成分含浸強化繊維を含む。
【0034】
本発明はまた、エポキシ樹脂系複合材料の製造における硬化剤としての、本発明のアルキル置換エチレンアミンの使用にも関する。
【0035】
DMDETAは、例えば、アンモニアを用いたモノイソプロパノールアミン(MIPOA)のアミノ化によるプロパン-1,2-ジアミン(PDA)の調製において副生成物として生成し得る。或いは、水素及び場合によりさらにアンモニアの存在下で、PDAを使用してMIPOAを触媒によるアルコールアミノ化することにより、選択的に調製することもできる。さらに、DMDETAは、Akhmadeyeva及びZagidullin(Mukmeneva編、Materialy Yubileinoi Nauchno-Metodicheskoi Konferentsii「III Kirpichnikovskie Chteniya」、Kazan、ロシア連邦、3月25~28日、2003年、473~475頁)に従って、1,2-ジクロロプロパンから調製することもできる。本発明の他のアルキル置換エチレンアミンは、対応する方法で調製できる。
【0036】
本発明は、本発明の繊維-マトリックス組成物から硬化複合材料を製造する方法をさらに提供する。そのような硬化複合材料を製造するための本発明の方法において、本発明の繊維-マトリックス組成物を提供し、次いで硬化させる。この目的のために、マトリックス成分の構成成分を互いに接触させ混合し、強化繊維と接触させ(マトリックス成分による強化繊維の含浸、又はマトリックス成分中への強化繊維の混合(埋め込み))、次いで実用的な温度で硬化させる。繊維-マトリックス組成物は、好ましくは強化繊維にマトリックス成分を含浸させることにより提供される。硬化は、好ましくは、少なくとも70℃、より好ましくは少なくとも90℃の温度で行われる。硬化は、180℃未満の温度で、特に150℃未満の温度で、特に70~180℃の温度範囲内で、最も好ましくは90~150℃の温度範囲内で行うことができる。硬化は、好ましくは標準圧力下で行うことができる。
【0037】
本発明は、本発明の繊維-マトリックス組成物で構成された、特にマトリックス成分含浸強化繊維で構成された、硬化複合材料をさらに提供する。より詳細には、本発明は、本発明の繊維-マトリックス組成物、特にマトリックス成分含浸強化繊維を硬化させることにより得ることができる又は得られる硬化複合材料を提供する。より詳細には、本発明は、硬化複合材料を製造するための本発明の方法により得ることができる又は得られる硬化複合材料を提供する。本発明に従って硬化される複合材料、又はそれらのマトリックス成分は、比較的高いガラス転移温度Tgを有する。
【0038】
本発明は、硬化複合材料、例えば鉄筋を製造するための本発明の特に好ましい方法として、以下の工程:
a.多数の強化繊維を配列して束を得る工程と、
b.束を含浸デバイスに通して引き抜いて、束の中の強化繊維に硬化性組成物を含浸させる工程と、
c.束を70~180℃の範囲の温度で硬化させる加熱デバイスに、含浸済みの強化繊維の束を通して引き抜いて、硬化複合材料を得る工程と
を含む引き抜き成形法であって、
硬化性組成物が本発明のマトリックス成分である、引き抜き成形法も提供する。強化繊維は、好ましくは少なくとも1m、特に少なくとも10mの長さを有する、好ましくはガラス繊維又は炭素繊維、特にガラス繊維である。強化繊維は、好ましくは連続繊維フィラメント、連続繊維ロービング、若しくは連続繊維マット、又はそれらの組み合わせの形態をとる。束の表面に繊維が直接現れるのを避けるために、マトリックス成分リッチな表面ベールを束に加えてもよい。工程bの含浸デバイスは、好ましくは強化繊維の束を浸漬する硬化性組成物を入れた浴である、又は硬化性組成物が圧力下で強化繊維の表面の束の中に注入される、硬化性組成物を備えた注入デバイスである。特に、工程bの含浸デバイスは、硬化性組成物が圧力下で強化繊維の表面の束の中に注入される、硬化性組成物を備えた注入デバイスである。工程cの加熱デバイスにおいて90~150℃の範囲の温度で含浸済みの強化繊維の束を硬化させることが優先される。この方法の特定の実施形態において、強化繊維の束は、含浸デバイスにおけるより良好な含浸のために広げてもよい。特定の実施形態において、硬化複合材料が特定の断面(例えば長方形の又は円形の断面)を有するプロファイルの形態をとるように、含浸済みの強化繊維の束は、加熱デバイスでの硬化の間、特定の断面となるように成形されてもよい。連続法として引き抜き成形法を行うことが優先される。連続法における含浸デバイス及び加熱デバイスは、強化繊維の束がデバイスに通されて引き抜かれる一定のスピードで、強化繊維の十分な含浸及び十分な硬化が保証されるように設計されている。均一で実用的な含浸は、マトリックス成分の十分に長いポットライフを必要とする。同時に、加熱デバイスの比較的短い加熱ゾーン又は比較的速い引き抜き成形スピードを実現するために、加熱デバイスの硬化温度でマトリックス成分を急速硬化させることが重要である。速い引き抜き成形スピードは、この方法の生産性にとって極めて重要である。引き抜き成形法により製造されるプロファイルは、例えばコンクリート構造物の建築における鉄筋として使用できる。
【0039】
本発明はまた、硬化複合材料、例えば鉄筋を製造するための本発明の特に好ましい方法として、以下の工程:
a.1つ以上の強化繊維に硬化性組成物を含浸させ、次いでこのようにして得られた1つ以上の含浸済み強化繊維を巻芯上に巻きつけて、未硬化複合材料を得る工程と、
b.未硬化複合材料を70~180℃の範囲の温度で硬化させて、硬化複合材料を得る工程と
を含むフィラメントワインディング法であって、
硬化性組成物が本発明のマトリックス成分である、フィラメントワインディング法も提供する。強化繊維は、好ましくは少なくとも1m、特に少なくとも10mの長さを有する、好ましくはガラス繊維又は炭素繊維、特にガラス繊維である。強化繊維は、好ましくは連続繊維フィラメント、連続繊維ロービング、若しくは連続繊維マット、又はそれらの組み合わせの形態をとる。工程aの含浸デバイスは、好ましくは1つ以上の強化繊維を浸漬する硬化性組成物を入れた浴である。未硬化複合材料は、好ましくは、工程bにおいて90~150℃の範囲の温度で硬化される。巻芯は、例えば円錐形であってもよく、硬化後に硬化複合材料から除去してもよい、又は例えば複合材料を硬化させた後に溶解させることができる材料から成っていてもよい、又は硬化複合材料内に残っていてもよい。フィラメントワインディング法は、好ましくは回転対称の部材の製造に使用されるが、より複雑な形状を有する芯を包み、対応した複雑な形状の部材を製造することも可能である。特定の実施形態において、フィラメントワインディング法は連続法として行われる。均一で実用的な含浸は、マトリックス成分の十分に長いポットライフを必要とする。同時に、この方法の比較的短時間の硬化又は比較的高い生産性を実現するために、加熱デバイスの硬化温度でマトリックス成分を急速硬化させることが重要である。フィラメントワインディング法により製造される部材は、例えばコンクリート構造物の建築における鉄筋として使用できる。
【0040】
本発明の方法により、特に本発明の引き抜き成形法により、及び本発明のフィラメントワインディング法により、鉄筋を製造することが可能である。本発明の複合材料でできたそのような鉄筋は特に耐候性があるが、一方で鋼でできた従来の鉄筋は腐食を受ける。したがってコンクリート構造物におけるそのような鉄筋の使用は、特に寿命の長い構造物の建築を可能にする。
【0041】
本発明は、そのため、本発明の硬化複合材料で構成される鉄筋も提供する。より詳細には、本発明は、マトリックス成分含浸強化繊維を硬化させることにより得ることができる又は得られる鉄筋を提供する。本発明は、特に、好ましくは本発明の引き抜き成形法により又は本発明のフィラメントワインディング法により、硬化複合材料を製造するための本発明の方法によって得ることができる又は得られる鉄筋を提供する。そのような鉄筋は、任意の長さ及び厚さで製造することができ、鉄筋は、好ましくは0.5~50m、特に1~20mの範囲の長さ、及び0.5~5cm、特に1~3cmの厚さを有する。そのような鉄筋の断面は、任意の形状を有していてもよく、好ましくは本質的に長方形又は円形である。コンクリート内の固定を改善するために、そのような鉄筋は、好ましくは表面プロファイル、例えば鉄筋の周りにらせんを形成する1つ以上の溝又は隆起を有する。そのような表面プロファイルは、例えば、既に硬化した鉄筋内に後で機械加工してもよく、又は対応する含浸済み強化繊維材料で硬化前に包むことによって適用されてもよい。そのような鉄筋は、風化から、並びに化学的及び熱的影響から強化繊維をさらに保護するために、又はコンクリートとの相互作用を改善するために、例えば純粋なエポキシ樹脂材料のさらなる表面コーティングも有していてもよい。
【0042】
本発明のマトリックス成分が適している硬化複合材料のさらなる製造方法は、引き抜き成形法及びフィラメントワインディング法だけでなく、貯蔵後の予備含浸した繊維又は繊維織物(例えばプリプレグ)の硬化と、注入又は射出法、例えば真空アシスト樹脂トランスファー成形(VARTM)、樹脂トランスファー成形(RTM)、並びにまた湿式圧縮法、例えばBMC(バルクモールド圧縮)及びSMC(シートモールド圧縮)による、複合材成形物の製造を含む。
【0043】
本発明は、本発明の繊維-マトリックス組成物を硬化させることにより得ることができる若しくは得られる、又は硬化複合材料を製造するための本発明の方法により得ることができる若しくは得られる、硬化複合材料にさらに関する。本発明は、本発明の硬化複合材料からなる成形物(複合材成形物)にも関する。
【0044】
ポットライフは、規格DIN 16 945(1989)(「等温粘度プロファイル」)に準拠して決定することができる。これは、反応性樹脂組成物を扱うことができる、成分の混合からの時間に関する指標を示す。この目的のために、一定温度(例えば室温(23℃))で、例えば15mmのプレート径及び例えば0.25mmのギャップを有するレオメーター(例えばせん断応力制御プレート-プレートレオメーター(例えばMCR301、Anton Paar))により、一定の粘度限界(例えば6000mPa*s)に達するまで、粘度の進行を経時的に測定する。つまり、ポットライフは、この粘度限界に達するまでの時間である。
【0045】
規格DIN 16 945(1989)によるゲル化時間は、硬化剤の反応混合物への添加と、液体状態からゲル状体への反応性樹脂組成物の移行との間の時間に関する指標を示す。温度は重要な役割を果たし、したがってゲル化時間は、各々の場合であらかじめ定められた温度について決定される。動的機械的方法、特に回転粘度測定法は、少量の試料であっても準等温的な方法で分析することを可能にし、それらの粘度/剛性プロファイル全体を取り込むことを可能にする。規格ASTM D 4473-08(2016)に準拠して、貯蔵弾性率G'とダンピングtanδの値が1である損失弾性率G''との交点がゲル化点であり、硬化剤の反応混合物への添加とゲル化点の到達との間の時間がゲル化時間である。このようにして決定されるゲル化時間は、硬化速度の尺度と考えることができる。
【0046】
硬化速度の尺度として同様に役立つ、B時間の決定において、規格DIN EN ISO 8987(2005)に従って、新たに製造された反応性樹脂組成物の試料(例えば0.5g)を高温のプレート(例えば非埋め込み式プレート、例えば145℃)に塗布し、糸状物の形成までの時間(ゲル化点)又は急激な硬化(hardening)(硬化(curing))までの時間を決定する。
【0047】
ガラス転移温度(Tg)は、例えば規格ASTM D 3418-15(2015)に従って、示差熱量計(DSC)を使用して決定することができる。これは、非常に少量の試料(例えば約10mg)をアルミニウムるつぼ中で加熱し(例えば20℃/分)、参照るつぼへの熱の流れを測定することを含む。このサイクルを3回繰り返す。ガラス転移は、2回目の測定から又は2回目及び3回目の測定の平均として決定される。熱流曲線のTgの段の評価は、半値幅に従って又は中点温度法に従って、変曲点により決定することができる。
【0048】
アミン水素当量(AHEW)は、B. Burtonらによって(Huntsman、「Epoxy Formulations using Jeffamine Polyetheramines」、4月27日、2005年、8~11頁)記載されるように、理論的に又は経験的に決定することができる。理論的に計算されたAHEWは、アミンの分子量を利用可能なアミン水素の数で割った商と定義される(例えば第1級アミノ基ごとに2個、加えて第2級アミノ基ごとに1個)。例えば、170.3g/molの分子量及び2個の第1級アミノ基、すなわち4個の利用可能なアミン水素を有するIPDAについては、理論的に計算されるAHEWは、170.3/4g/eq=42.6g/eqである。経験的なAHEWの決定は、等量のエポキシ樹脂及びアミノ硬化剤から、最大の耐熱変形性(熱変形温度(HDT))又は最大のガス(gas)転移温度(Tg)によって特徴づけられる硬化エポキシ樹脂が得られるという仮定に基づいている。したがって、経験的なAHEWを確かめるために、一定量のエポキシ樹脂及び変動する量のアミノ硬化剤の混合物を可能な限り完全に硬化させ、それらのそれぞれのHDT又はTgを決定し、このように確かめられた特徴を、出発原料の比に対してプロットする。経験的なAHEW(AHEWemp)は、以下の式:
AHEWemp=(AHmax×EEWepox)/ER
[式中、
AHmax=最大のHDT又はTgにおけるアミノ硬化剤の量(グラム)
EEWepox=試験に使用されたエポキシ樹脂のEEW値
ER=試験に使用されたエポキシ樹脂の量(グラム)]
で定義される。
【0049】
本発明の文脈において、AHEWempは、最大Tg(規格ASTM D 3418-15(2015)に準拠してDSCにより測定される)の決定に基づく経験的なアミン水素当量を意味する。経験的なAHEWempは、理論的に計算されるAHEWを得ることができない場合、例えばポリマーアミンの混合物の場合に、特に重要である。
【0050】
硬化性組成物、例えば本発明の繊維-マトリックス組成物のマトリックス成分の初期粘度(「混合粘度」)は、構成成分の混合直後に、規格DIN ISO 3219(1993)に準拠して決定することができる。混合粘度は、コーン-プレート配置(例えばコーン及びプレートの直径:50mm;コーンの角度:1°;ギャップ幅:0.1mm)を有するせん断応力制御レオメーター(例えばAnton Paar製のMCR 301)を用いたものである。測定温度は、硬化性組成物の粘度及び硬化速度に対して大きな影響を与え、そのため、これらの測定において極めて重要な要素である。したがって、比較可能にするために、混合粘度は、特定の温度、例えば室温(23℃)で決定されなければならない。
【0051】
硬化エポキシ樹脂で構成される試験片の耐衝撃性は、規格DIN EN ISO 179-1(2010)に準拠して室温でシャルピーノッチ付きバー衝撃試験により決定することができる。高い耐衝撃性は低い脆性に相当する。
【実施例】
【0052】
[実施例1a]
アミノプロパノール(MIPOA)及びプロパンジアミン(PDA)からのDMDETAの調製
管型反応器に600mlのCu触媒を装入した。窒素流下、標準圧力で、180~200℃の範囲の温度までこれを加熱することにより、触媒を活性化した。活性化の発熱を注意深く制御しながら、窒素流へ水素を測り入れた。最後に、標準圧力及び200℃の温度で6時間、純粋な水素を触媒の上に通した。触媒が活性化された後、反応器を200barの水素圧力下に置き、180~200℃の範囲の温度で、100g/時の1-アミノプロパン-2-オール(約10%の2-アミノプロパン-2-オールが混合されている)、200g/時のプロパン-1,2-ジアミン、80g/時のNH3、及び100L(STP)/時のH2の流れを反応器に通した。生成物流を標準圧力まで膨張させ、収集した。約20重量%~30重量%のDMDETAを含む、このようにして得られた粗生成物を減圧蒸留により精製して、DMDETA画分を得た。このDMDETA画分は、99%超の純度(すべてのDMDETA異性体の合計に関して)及び式IIa:IIb:IIcの異性体について約6:87:6の異性体比(GCの面積%)を有していた。
【0053】
[実施例1b]
アミノプロパノール(MIPOA)からのDMDETAの調製
管型反応器に800mlのCo/Ni/Cu触媒を装入した。水素流下、標準圧力で、280℃の温度までこれを加熱することにより、触媒を活性化した。触媒が活性化された後、反応器を200barの水素圧力下に置き、170~190℃の範囲の温度で、320g/時の1-アミノプロパン-2-オール(約10%の2-アミノプロパン-2-オールが混合されている)、200~730g/時のNH3、及び100L(STP)/時のH2の流れを反応器に通した。生成物流を標準圧力まで膨張させ、収集した。約5重量%のDMDETA並びに主生成物であるプロパンジアミン(PDA)を含む、このようにして得られた粗生成物を、減圧蒸留により精製して、DMDETA留分を得た。このDMDETA画分は、99%超の純度(すべてのDMDETA異性体の合計に関して)及び式IIa:IIb:IIcの異性体について約42:53:4の異性体比(GCの面積%)を有していた。
【0054】
[実施例2]
DMDETAによるエポキシ樹脂の硬化
表1に記載の量に従って、実施例1a又は実施例1bによるDMDETA混合物及びエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、Epilox A19-03、Leuna、EEW:185g/mol)を、撹拌機システムで混合した(2000rpmで1分)。DSC測定(示差走査熱量測定法)及びレオロジー分析を、混合の直後に行った。比較として、IPDA(Baxxodur(登録商標)EC 201、BASF)、ジエチレントリアミン(DETA、BASF)、4-メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA、Sigma-Aldrich)と促進剤2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(K54、Sigma-Aldrich)の組み合わせ、又はMTHPAと促進剤1-メチルイミダゾール(1-MI、BASF)の組み合わせを含む、対応する組成物も同様に調べた。
【0055】
開始温度(To)、発熱エンタルピー(ΔH)、及びガラス転移温度(Tg)を決定するための、DMDETA又はIPDA、DETA、MTHPA/K54又はMTHPA/1-MIの硬化反応のDSC分析を、ASTM D 3418-15(2015)に準拠して、以下の温度プロファイル:0℃→20K/分 200℃→10分 200℃を使用して行った。2回目のランでTgを決定した。結果を表1にまとめる。
【0056】
様々なアミノ硬化剤(IPDA、DETA、及びDMDETA)、並びに様々な無水物硬化剤系(MTHPA/K54及びMTHPA/1-MI)とエポキシ樹脂との反応性プロファイル(ポットライフ及びゲル化時間)を調べるためのレオロジー測定を、15mmのプレート径及び0.25mmのギャップを有するせん断応力制御プレート-プレートレオメーター(MCR 301、Anton Paar)において、様々な温度で行った。反応性樹脂組成物を扱うことができる時間の尺度としてのポットライフについて、上記のレオメーターの室温(23℃)での回転により、新たに製造された反応性樹脂組成物が6000mPa*sの粘度に達するのにかかる時間を測定した。90℃又は110℃での上記のレオメーターの振動によりゲル化時間を決定し、損失弾性率(G'')と貯蔵弾性率(G')との交点により、規格ASTM D 4473-08(2016)に準拠してゲル化時間が得られた。コーン-プレート配置(例えばコーン及びプレートの直径:50mm;コーンの角度:1°;ギャップ幅:0.1mm)を有するせん断応力制御レオメーター(例えばAnton Paar製のMCR 301)を用いて、成分が混合された直後に、規格DIN ISO 3219(1993)に準拠して混合粘度(ηo)を室温(23℃)で測定した。同様に硬化速度の尺度として役立つB時間の決定において、規格DIN EN ISO 8987(2005)に準拠して、新たに製造された反応性樹脂組成物の試料(0.5g)を145℃の非埋め込み式プレートに塗布し、繊維が形成されるのにかかる時間(ゲル化点)及び急激な硬化(hardening)(硬化(curing))までの時間を測定した。レオロジー測定の結果を表1にまとめる。
【0057】
エポキシ樹脂及びアミノ硬化剤又は無水物硬化剤系が混合された直後に、混合物を1mbarで脱ガスし、次いで硬化させた(60℃で8時間、次いで100℃で4時間、次いで160℃で2時間)。硬化後、硬化樹脂の機械的特性(引張弾性率(E-t)、引張強度(σ-M)、引張伸び(ε-M)、曲げ弾性率(E-f)、曲げ強度(σ-fM)、及び曲げ伸び(ε-fM))を、ISO 527-2:1993及びISO 178:2006に準拠して室温で決定した。結果を同様に表1にまとめる。規格DIN EN ISO 179-1(2010)に準拠して室温で、耐衝撃性をシャルピーノッチ付きバー衝撃試験により決定した。高い耐衝撃性は低い脆性に相当する。
【0058】
【0059】
[実施例3]
エポキシ樹脂及びDMDETAで構成されるマトリックスを使用した引き抜き成形物
引き抜き成形法により引き抜き成形プロファイルを製造した。この目的のために、連続ガラス繊維(E-CRガラス;PulStrand(登録商標)4100 Type 30;Owens Corning製)に、引き抜き成形装置(Px 750-08T;Pultrex製)において、100部のエポキシ樹脂(ER5700、Leuna Harze製、EEW:180.5)、15部のDMDETA(実施例1a)、及び3部の分離剤(PAT C656/3-7、Wurtz製)で構成されたマトリックス混合物を含浸させ、束ね、1.1m/分の引き抜き成形スピード及び160℃の温度で硬化させた(加熱ゾーンの長さ:1m)。これらのガラス繊維系引き抜き成形プロファイル(GF引き抜き成形物)だけでなく、連続炭素繊維(Sigrafil C T50-4.0/240-E100、SGL)を使用して炭素繊維系引き抜き成形プロファイル(CF引き抜き成形物)を対応する方法で製造したが、ただし5部の分離剤を使用し、引き抜き成形スピードを0.4m/分に設定した。
【0060】
ASTM D 3418-15(2015)に準拠して、実施例2について記載されるようにガラス転移温度(Tg)を測定した。この目的のために、一部の材料を、引き抜き成形物から取り出し粉砕して粉末とし、その繊維含量を密度勾配により除去し、残りの粉末樹脂材料でTgの決定を行った。GF引き抜き成形物は、88.7℃のガラス転移温度、及びさらなる硬化後(110℃で6時間)に92.1℃のガラス転移温度を実現した。CF引き抜き成形物は、89.1℃のガラス転移温度を実現した。
【0061】
引き抜き成形物は、繊維の体積含量が約60%であった。
【0062】
規格DIN EN ISO 14125(2011)に準拠した3点曲げ試験(装置:Z050 Allround(フィン:r=5mm、支点:r=5mm)、Zwick/Roell製)において、曲げ弾性率(E-f)、曲げ強度(σ-fM)、及び曲げ伸び(ε-fM)を、それぞれ繊維の配列に対して長手方向(0°)及び横方向(90°)で決定した。各々の場合で、23℃の温度、50%の相対湿度、50kNの力センサー、1%/分のスピード、及び120mm(長手方向の測定)又は60mm(横方向の測定)の支点幅において、3mm×15mm×200mmの寸法を有する6個の試験片(長手方向の測定)、又は3mm×15mm×150mmの寸法を有する5個の試験片(横方向の測定)を分析した。大たわみについての規格に準拠して、必要に応じて測定を補正した。結果を表2にまとめる。
【0063】
【0064】
GF及びCF引き抜き成形物の層間せん断強度(ILSS)を、各々の場合で繊維の配列に対して長手方向(0°)で、規格DIN EN ISO 14130(1998)に準拠して3点法により決定した(装置:Z050 Allround;Zwick/Roell製;ただし支点の半径は3mm)。各々の場合で、23℃の温度、50%の相対湿度、及び50kNの力センサーにおいて、3mmの厚さを有する6個の試験片を分析した。結果を表3にまとめる。
【0065】
【表3】
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
強化繊維からなる繊維成分とエポキシ樹脂及び硬化剤を含むマトリックス成分とを有する繊維-マトリックス組成物であって、硬化剤が、式I
H
2
N-A-(NH-A-)
n
NH
2
(I)
[式中、
Aは独立に式-CHR-CH
2
-又は-CH
2
-CHR-(式中、R=H、エチル、又はメチルである)のエチレン基であるが、式Iのアルキル置換エチレンアミンの少なくとも1つのAは、式-CHR-CH
2
-又は-CH
2
-CHR-(式中、R=エチル又はメチルである)のアルキルエチレン基であり、
n=1~4である]
の少なくとも1種のアルキル置換エチレンアミンを含むことを特徴とする、繊維-マトリックス組成物。
(実施形態2)
Aが独立に式-CH(CH
3
)-CH
2
-又は-CH
2
-CH(CH
3
)-のメチルエチレン基であり、n=1~4である、実施形態1に記載の繊維-マトリックス組成物。
(実施形態3)
アルキル置換エチレンアミンが、式II
H
2
N-A-NH-A-NH
2
(II)
[式中、Aは独立に式-CH(CH
3
)-CH
2
-又は-CH
2
-CH(CH
3
)-のメチルエチレン基である]
のジメチルジエチレントリアミンである、実施形態1に記載の繊維-マトリックス組成物。
(実施形態4)
アルキル置換エチレンアミンが、繊維-マトリックス組成物中の硬化剤の総量を基準として、少なくとも50重量%を占める、実施形態1から3のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
(実施形態5)
エポキシ樹脂が、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、及び水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又はそれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1から4のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
(実施形態6)
強化繊維が、ガラス繊維若しくは炭素繊維又はそれらの混合物である、実施形態1から5のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
(実施形態7)
強化繊維にマトリックス成分が含浸されている、実施形態1から6のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物。
(実施形態8)
硬化複合材料を製造する方法であって、実施形態1から7のいずれか一項に記載の繊維-マトリックス組成物を提供すること、次いで硬化させることを含む、方法。
(実施形態9)
硬化させることが、70~180℃の範囲の温度で行われる、実施形態8に記載の方法。
(実施形態10)
繊維-マトリックス組成物が、強化繊維にマトリックス成分を含浸させることにより提供される、実施形態8又は9に記載の方法。
(実施形態11)
a.多数の強化繊維を配列して束を得る工程と、
b.束を含浸デバイスに通して引き抜いて、束の中の強化繊維にマトリックス成分を含浸させる工程と、
c.含浸済みの強化繊維の束を第2の加熱デバイスに通して引き抜き、第2の加熱デバイス中で束を70~180℃の範囲の温度で硬化させて、硬化複合材料を得る工程と
を含む、実施形態8に記載の方法。
(実施形態12)
a.1つ以上の強化繊維にマトリックス成分で含浸させ、次いでこのようにして得られた1つ以上の含浸済み強化繊維を巻芯上に巻きつけて、未硬化複合材料を得る工程と、
b.未硬化複合材料を70~180℃の範囲の温度で硬化させて、硬化複合材料を得る工程とを含む、実施形態8に記載の方法。
(実施形態13)
強化繊維が、連続繊維フィラメント、連続繊維ロービング、又は連続繊維マットの形態で使用される、実施形態8から12のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態14)
実施形態8から13のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、硬化複合材料。
(実施形態15)
実施形態14に記載の硬化複合材料からなる、成形物。
(実施形態16)
実施形態14に記載の硬化複合材料からなる、鉄筋。
(実施形態17)
エポキシ樹脂系複合材料の製造における硬化剤としての、式I
H
2
N-A-(NH-A-)
n
NH
2
(I)
[式中、
Aは独立に式-CHR-CH
2
-又は-CH
2
-CHR-(式中、R=H、エチル、又はメチルである)のエチレン基であるが、式Iのアルキル置換エチレンアミンの少なくとも1つのAは、式
-CHR-CH
2
-又は-CH
2
-CHR-(式中、R=エチル又はメチルである)のアルキルエチレン基であり、
n=1~4である]
のアルキル置換エチレンアミンの使用。