(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】ガス供給部、処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241203BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2022203640
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2022017389
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠松 健太
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆史
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157028(JP,A)
【文献】国際公開第2020/053960(WO,A1)
【文献】特開2021-097245(JP,A)
【文献】特開2011-029441(JP,A)
【文献】特開2014-067783(JP,A)
【文献】特開2023-045011(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154823(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有するガス供給部であって、
前記第一開口部と前記第二開口部とは前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁へ向かうように噴射されて前記基板の周縁方向に供給され、
前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として、
前記第二開口部から供給されるガスが向かう方向がなす角度は、20度以上30度以下になる予め決められた角度をなるように構成されている、
ガス供給部。
【請求項2】
前記第二開口部から供給されるガスの流量は、前記第一開口部から供給されるガスの流量に対して0.7以上49.0以下になるように構成されている、
請求項1に記載のガス供給部。
【請求項3】
前記第二開口部の面積は、前記第一開口部の面積に対して0.7以上11.1以下になるように構成されている、
請求項1に記載のガス供給部。
【請求項4】
前記第一開口部及び前記第二開口部は、円形とされており、
前記第二開口部の孔径は、前記第一開口部の孔径に対して0.85以上3.3以下になるように構成されている、
請求項1に記載のガス供給部。
【請求項5】
前記第二開口部は複数設けられており、
複数の前記第二開口部からそれぞれ供給されるガスの流量、複数の前記第二開口部のそれぞれの孔径、及び複数の前記第二開口部の面積のうち、少なくとも一つがほぼ同じまたは同じになるよう構成されている、
請求項1に記載のガス供給部。
【請求項6】
前記処理室に前記基板の表面に対して垂直方向に延伸するように配置され、
前記第一開口部及び前記第二開口部は、前記垂直方向にガスが流れる流路の途中に設けられ、
前記垂直方向にガスが流れる方向に対して交差する方向にガスを供給するように構成されている、
請求項1記載のガス供給部。
【請求項7】
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有するガス供給部であって、
前記第一開口部と前記第二開口部は前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁へ向かうように噴射されて前記基板の周縁方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスの向きが前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として予め決められた角度をなすように構成されており、
前記基板の表面に対して垂直方向に延伸するように配置され、前記垂直方向に流れるガスの流路の端部には、前記処理室に供給されるガス以外のガスを放出する放出孔が形成されている、
ガス供給部。
【請求項8】
前記放出孔の孔径は、前記第一開口部の孔径及び前記第二開口部の孔径と比して大きく、又は、前記放出孔の面積は、前記第一開口部の面積及び前記第二開口部の面積と比して大きく構成されている、
請求項7記載のガス供給部。
【請求項9】
複数の前記基板が前記処理室に積載されるように配置され、
前記基板と前記基板との間に前記ガスが供給されるように前記第一開口部及び第二開口部が配置されている、
請求項1に記載のガス供給部。
【請求項10】
前記第二開口部から供給されるガスの流量、前記第二開口部の孔径、及び前記第二開口部の面積
のうち少なくとも一つは、それぞれ、前記第一開口部から供給されるガスの流量、前記第一開口部の孔径、及び前記第一開口部の面積と比して大きく構成される、
請求項1記載のガス供給部。
【請求項11】
前記第一開口部及び前記第二開口部が複数設けられ、
各々の前記第一開口部から供給されるガスは、
前記第二開口部から供給されるガスと混合されるように構成されている、
請求項1に記載のガス供給部。
【請求項12】
前記第一開口部及び前記第二開口部が形成される供給配管部が、複数設けられており、
前記供給配管部は、U字状またはY字状の連結部によって連結されている、
請求項11に記載のガス供給部。
【請求項13】
前記第一開口部及び前記第二開口部は、同じ平面上に配置されている、
請求項11に記載のガス供給部。
【請求項14】
各々の前記第一開口部から供給されるガスは、前記基板に到達する前に混合されるように構成されている、
請求項11に記載のガス供給部。
【請求項15】
各々の前記第一開口部から供給されるガスは、前記基板の中心部に到達する前に混合されるように構成されている、
請求項11に記載のガス供給部。
【請求項16】
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有し、
前記第一開口部と前記第二開口部とは前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁へ向かうように噴射されて前記基板の周縁方向に供給され、
前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として、
前記第二開口部から供給されるガスが向かう方向がなす角度は、20度以上30度以下になるように構成されている、
第一ガス供給部を備えた処理装置。
【請求項17】
前記第一開口部から供給されるガスが向かう方向を基準として、前記第二開口部から供給されるガスが向かう方向がなす角度は、前記第一ガス供給部の前記第一開口部と前記基板との配置の関係に基づいて決められる、
請求項16に記載の処理装置。
【請求項18】
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有し、
前記第一開口部と前記第二開口部とは前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁へ向かうように噴射されて前記基板の周縁方向に供給され、
前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として予め決められた角度をなすように構成されている第一ガス供給部を複数有し、
複数の前記第一ガス供給部の前記第一開口部から供給されるそれぞれのガスは混合するように構成されている処理装置。
【請求項19】
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有し、
前記第一開口部と前記第二開口部とは前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁へ向かうように噴射されて前記基板の周縁方向に供給され、
前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として予め決められた角度をなすように構成されている、第一ガス供給部と、
前記第一ガス供給部の両側に設けられ、前記第一ガス供給部から供給されるガスとは異なるガスを前記処理室に供給する第二ガス供給部を備える、
処理装置。
【請求項20】
前記第二ガス供給部から供給されるガスは、前記第一ガス供給部から供給されるガスの流量よりも少ない流量となるよう構成されている、
請求項19に記載の処理装置。
【請求項21】
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有するガス供給部であって、
前記第一開口部と前記第二開口部とは前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁へ向かうように噴射されて前記基板の周縁方向に供給され、
前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として、
前記第二開口部から供給されるガスが向かう方向がなす角度は、20度以上30度以下になるように構成されている、ガス供給部を用いて、前記ガスを前記処理室に供給して、前記基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法。
【請求項22】
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有し、
前記第一開口部と前記第二開口部とは前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁へ向かうように噴射されて前記基板の周縁方向に供給され、
前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として予め決められた角度をなすように構成されている、ガス供給部であって、
複数の前記ガス供給部の前記第一開口部から供給されるそれぞれのガスは混合するように構成されている、
ガス供給部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス供給部、処理装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1-3参照)。これらの文献によれば、処理ガスを供給するノズルと不活性ガスを供給するノズルを設け、処理ガスが基板上を均等に流れるように基板の処理に寄与しない不活性ガスを供給している。しかしながら、依然として処理ガスを均等に流すことが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-062053号公報
【文献】特開2019-203182号公報
【文献】国際公開2021/020008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理ガスが基板上を均等に流れることを可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一態様によれば、
基板が配置されている処理室にガスをそれぞれ供給する第一開口部と第二開口部とを有する技術であって、
前記第一開口部と前記第二開口部とは前記基板の表面に対して平行方向に並んでおり、
前記第一開口部から供給されるガスは前記基板の中心方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスは前記基板の周縁方向に供給され、
前記第二開口部から供給されるガスの向きが前記第一開口部から供給されるガスの向きを基準として予め決められた角度をなすように構成されている技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理ガスが基板上を均等に流れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態に係る基板処理装置を示した概略構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る基板処理装置のガス供給部及び反応管等を示した断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る基板処理装置に備えられた制御部を示したブロック図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る基板処理装置の成膜シーケンスを示した図面である。
【
図5】本開示の実施形態に係るガス供給部に備えられたガスノズルを示した正面図及び断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るガス供給部のシミュレーション結果と、従来のガス供給部のシミュレーション結果とを表で示した図面である。
【
図7】本開示の実施形態に係るガス供給部の評価指数であるガス分圧ΔPaを説明するのに用いた説明図である。
【
図8】本開示の実施形態に係るガス供給部のシミュレーション結果であって、第二開口部の孔径を変えた場合のガス流れ等を表で示した図面である。
【
図9】本開示の実施形態に係るガス供給部のシミュレーション結果であって、第二開口部の孔径を変えた場合の流量比等を表で示した図面である。
【
図10】本開示の実施形態に係るガス供給部のシミュレーション結果であって、第二開口部の傾斜角度を変えた場合のガス流れ等を表で示した図面である。
【
図11】本開示の実施形態に係るガス供給部のシミュレーション結果であって、ガスノズルを流れるガスの流量を変えた場合の流量比等を表で示した図面である。
【
図12】本開示の実施形態に係るガス供給部に対する第1変形例を示した正面図及び断面図である。
【
図13】本開示の実施形態に係るガス供給部に対する第2変形例を示した正面図及び断面図である。
【
図14】本開示の実施形態に係るガス供給部に対する第3変形例を示した正面図及び断面図である。
【
図15】本開示の実施形態に係る基板処理装置のガス供給部及び反応管等を示した他の変形例である。
【
図16A】本開示の実施形態に係るガス供給部の一例を示す図である。
【
図16B】本開示の実施形態に係るガス供給部の一例を示す図である。
【
図17】本開示の実施形態に係るガス供給部のシミュレーション結果であって、第二開口部の孔径を変えた場合のガス分圧ΔPaをグラフで示した図面である。
【
図18】本開示の実施形態に係るガス供給部のシミュレーション結果であって、第二開口部の孔径を変えた場合のガス流れ等を表で示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の実施形態>
以下、本開示の実施形態について、
図1~
図18を用いて説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものである。また、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。さらに、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。また、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行き方向(水平方向)を示す。
【0009】
(基板処理装置10の全体構成)
基板処理装置10は、
図1に示されるように、各部を制御する制御部280及び処理炉202を備えている。処理炉202は、加熱手段であるヒータ207を有する。ヒータ207は、鉛直方向に延びる円筒形状であって、下端が開放されており、図示しないヒータベースに支持されている。ヒータ207は、処理ガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。なお、制御部280については、詳細を後述する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器を構成する反応管203が配置されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)、または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により形成されている。基板処理装置10は、いわゆるホットウォール型である。
【0011】
反応管203は、円筒状の内管12と、内管12を囲むように設けられた円筒状の外管14とを有している。内管12は、外管14と同心円状に配置され、内管12と外管14との間には、間隙Sが形成されている。
【0012】
内管12は、下端が開放され、上端が平坦状で、上端が閉塞された円筒状とされている。また、外管14も、下端が開放され、上端が平坦状で、上端が閉塞された円筒状とされている。さらに、内管12と外管14との間に形成された間隙Sには、
図2に示されるように、ノズル室222が形成されている。なお、ノズル室222については、詳細を後述する。
【0013】
この内管12の内部には、
図1に示されるように、基板としてのウェハ200を処理する処理室201が形成されている。また、この処理室201は、ウェハ200を水平姿勢で鉛直方向に多段に整列した状態で保持可能な基板保持具の一例であるボート217を収容可能としている。そして、内管12は、収容されたウェハ200を包囲する。
【0014】
さらに、内管12の周壁には、供給スリット235aと、供給スリット235aと対向するように、排出部の一例である第一排気口236が形成されている。供給スリット235aは、水平方向に延びており、鉛直方向に並んで複数形成されている。また、内管12の周壁において第一排気口236の下方には、第一排気口236より開口面積が小さい第二排気口237が形成されている。
【0015】
反応管203の下端は、円筒状のマニホールド226によって支持されている。マニホールド226は、例えばニッケル合金やステンレス等の金属で構成されるか、又は石英若しくはSiC等の耐熱性材料で構成されている。マニホールド226の上端部にはフランジが形成されており、このフランジ上に外管14の下端部が設置されている。また、このフランジと外管14の下端部との間には、Oリング等の気密部材220が配置されており、反応管203の内部が気密状態とされている。
【0016】
マニホールド226の下端の開口には、シールキャップ219がOリング等の気密部材220を介して気密に取り付けられている。そして、反応管203の下端の開口が気密に塞がれている。シールキャップ219は、例えばニッケル合金やステンレス等の金属で構成され、円盤状に形成されている。また、石英またはSiC等の耐熱性材料が、シールキャップ219の外側を覆うようにしてもよい。
【0017】
シールキャップ219上にはボート217を支持するボート支持台218が設けられている。ボート支持台218は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成されており、断熱部として機能する。
【0018】
ボート217は、ボート支持台218上に立設されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成されている。ボート217は、ボート支持台218に固定された図示しない底板とその上方に配置された天板とを有しており、底板と天板との間に複数本の支柱217a(
図2参照)が架設されている。
【0019】
ボート217には、内管12の内部の処理室201で処理される複数枚のウェハ200が保持されている。複数枚のウェハ200は、互いに一定の間隔をあけながら水平姿勢を保持し、互いに中心を揃えた状態でボート217の支柱217aに支持されている。換言すれば、ウェハ200は、板厚方向を鉛直方向として鉛直方向に間隔をあけて並べられている。そして、ウェハ200の積載方向が反応管203の軸方向となっている。つまり、ウェハ200の中心がボート217の中心軸にあわせられ、ボート217の中心軸は反応管203の中心軸に一致している。
【0020】
シールキャップ219の下側には、ボートを回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267の回転軸265は、シールキャップ219を貫通してボート支持台218に接続されており、回転機構267によって、ボート支持台218を介してボート217を回転させることでウェハ200を回転させる構成となっている。
【0021】
シールキャップ219は、反応管203の外部に設けられた昇降機構としてのエレベータ115によって鉛直方向に昇降される。これにより、ボート217が処理室201に対して搬入、及び搬出されるようになっている。
【0022】
マニホールド226には、処理室201の内部にガスを供給する供給配管(供給配管部)としてのガスノズル340aを支持するノズル支持部350aが、マニホールド226を貫通するようにして設置されている。ノズル支持部350aは、例えばニッケル合金やステンレス等の材料により形成されている。
【0023】
ノズル支持部350aの一端には、処理室201の内部ヘガスを供給するガス供給管310aが夫々接続されている。また、ノズル支持部350aの他端には、ガスノズル340aが接続されている。ガスノズル340aは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により形成されている。なお、ガスノズル340a、及びガス供給管310aについては、詳細を後述する。
【0024】
一方、反応管203の外管14には、排気口230が形成されている。排気口230は、第二排気口237よりも下方に形成されている。また、この排気口230には、排気管231が接続されている。
【0025】
処理室201の内部の圧力を検出する圧力センサ245、及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が、排気管231に接続されている。真空ポンプ246に対して下流側の排気管231は、図示しない廃ガス処理装置等に接続されている。これにより、真空ポンプ246の出力及びAPCバルブ244の開度を制御することで、処理室201の内部の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気できるように構成されている。
【0026】
また、反応管203の内部には、温度検出器としての図示しない温度センサが設置されており、温度センサにより検出された温度情報に基づいて、ヒータ207への供給電力を調整することで、処理室201の内部の温度が所望の温度分布となるように構成されている。
【0027】
この構成において、処理炉202では、バッチ処理される複数枚のウェハ200を多段に積載するボート217がボート支持台218によって処理室201の内部へ搬入される。そして、ヒータ207が、処理室201へ搬入されたウェハ200を所定の温度に加熱する。このような処理炉を有する装置は、縦型バッチ装置と呼ばれる。
【0028】
〔ノズル室222〕
ノズル室222は、鉛直方向に延びており、
図2に示されるように、内管12の外周面12cと外管14の内周面14aとの間の間隙Sに形成されている。具体的には、内管12の外周面12cから外管14へ向けて延出した第一仕切18aと内管12の外周面12cから外管14へ向けて延出した第二仕切18bとの間で、かつ、第一仕切18aの先端と第二仕切18bの先端とを繋ぐ円弧状の天板20と内管12との間に、ノズル室222が形成されている。
【0029】
〔ガスノズル340a〕
ガスノズル340aは、鉛直方向に延びており、
図2に示したように、ノズル室222に配置されている。ガスノズル340aは、処理ガスである原料ガスまたは反応ガスを処理室201の内部に供給する処理ガスノズルとして用いられる。ガスノズル340aは、I字型(I字状)のロングノズルとして構成されている。また、ガスノズル340aの周面には、供給スリット235aと平行な方向(すなわち水平方向)で夫々対向するようにガスを噴射するガス噴出口としての開口部234が形成されている。開口部234は、第一開口部234aと第二開口部234bとを含んで構成されている。このガスノズル340aを含んでガス供給部342aが構成されている。なお、第一開口部234a及び第二開口部234bについては、詳細を後述する。
【0030】
〔ガス供給管310a、310b〕
ガス供給管310aは、
図1に示されるように、ノズル支持部350aを介してガスノズル340aと連通している。
【0031】
ガス供給管310aには、ガスの流れ方向において上流方向から順に、処理ガスとしての原料ガスを供給する原料ガス供給源360a、流量制御器の一例であるマスフローコントローラ(MFC)320a、及びバルブ330aが夫々設けられている。
【0032】
なお、原料ガス供給源360a、MFC320a、及びバルブ330aによりガス供給系が構成されている。
【0033】
また、ガス供給管310aのバルブ330aよりもガスの流れ方向において下流側には、処理ガスとしての不活性ガスを供給するガス供給管310bが接続されている。ガス供給管310bには、ガスの流れ方向において上流方向から順に、処理ガスとしての不活性ガスを供給する不活性ガス供給源360b、MFC320b、及びバルブ330bが夫々設けられている。不活性ガス供給源360b、MFC320b、及びバルブ330bにより不活性ガス供給系が構成されている。
【0034】
〔制御部280〕
図3は、基板処理装置10の制御構成を示すブロック図であり、基板処理装置10の制御部280(所謂コントローラ)は、コンピュータとして構成されている。このコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、及びI/Oポート121dを備えている。
【0035】
RAM121b、記憶装置121c、及びI/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。制御部280には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0036】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121cの内部には、基板処理装置10の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。
【0037】
プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順を制御部280に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。
【0038】
本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0039】
I/Oポート121dは、前述のMFC320a、320b、バルブ330a、330b、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ、回転機構267、及びエレベータ115等に接続されている。
【0040】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すことが可能なように構成されている。
【0041】
CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC320a、320bによる各種ガスの流量調整動作、バルブ330a、330bの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作を制御することが可能なように構成されている。また、CPU121aは、圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、温度センサに基づくヒータ207の温度調整動作を制御することが可能なように構成されている。さらに、CPU121aは、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、エレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0042】
制御部280は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、前述のプログラムを格納した外部記憶装置123を用意し、この外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態の制御部280を構成することができる。外部記憶装置としては、例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等が挙げられる。
【0043】
〔基板処理装置の動作概要〕
次に、基板処理装置10の動作概要を、制御部280が行う制御手順に従って
図4に示す成膜シーケンスを用いて説明する。
図4には、本実施形態に係る成膜シーケンスにおけるガスの供給量(縦軸)と、ガス供給のタイミング(横軸)とがグラフで示されている。なお、反応管203には、予め所定枚数のウェハ200が載置されたボート217が搬入されており、シールキャップ219によって反応管203が気密に閉塞されている。
【0044】
制御部280による制御が開始されると、制御部280は、
図1に示す真空ポンプ246及びAPCバルブ244を作動して排気口230から反応管203の内部の雰囲気を排気する。さらに、制御部280は、回転機構267を制御し、ボート217及びウェハ200の回転を開始する。なお、この回転については、少なくとも、ウェハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0045】
図4に示す成膜シーケンスでは、処理工程排出工程を1サイクルとし、この1サイクルを所定回数実行してウェハ200に対する成膜が完了する。そして、この成膜が完了すると、前述した動作の逆の手順により、ボート217が反応管203の内部から搬出される。さらに、ウェハ200は、図示しないウェハ移載機により、ボート217から移載棚のポッドに移載され、ポッドは、ポッド搬送機により、移載棚からポッドステージに移載される。さらに、ウェハ200は、外部搬送装置により、筐体の外部に搬出される。
【0046】
以下、成膜シーケンスの1サイクルについて説明する。なお、成膜シーケンスが実行される前の状態では、バルブ330a、330bは、閉じられている。
【0047】
[処理工程]
制御部280による各部の制御によって、排気口230から反応管203の内部の雰囲気が排気されると、制御部280は、バルブ330aを開作動して、ガスノズル340aの開口部234から原料ガスを噴射させる。
【0048】
このとき、制御部280は、圧力センサ245から得られる圧力が一定になるように真空ポンプ246及びAPCバルブ244を作動して反応管203の内部の雰囲気を排気口230から排出し、反応管203の内部を負圧とする。これにより、原料ガスは、ウェハ200上を平行に流れた後、第一排気口236及び第二排気口237を通って間隙Sの上部から下部へ流れ、排気口230を介して排気管231から排気される。ここで、制御部280は、MFC320aによってガスの供給量を制御する。
【0049】
[排出工程]
所定時間経過して第1の処理工程が完了すると、制御部280は、バルブ330aを閉作動して、ガスノズル340aからの原料ガスの供給を停止する。さらに、制御部280は、バルブ330bを開作動して、ガスノズル340aの開口部234から不活性ガスを噴射させる。
【0050】
なお、排出工程では、バルブ330bを閉のままにして減圧する工程(減圧工程)を有してもよく、また、上述のように反応管203の内部の内部に不活性ガスを噴射させる(パージ工程)と減圧工程を繰り返し行うようにしてもよい。
【0051】
このように、処理工程、排出工程を1サイクルとし、これを所定回数実行することにより、ウェハ200の処理が完了する。なお、上記は処理ガスが1種類であったが、処理ガスが2種類(例えば、原料ガスと反応ガス)の場合は、第1の処理工程(原料ガスを供給)、第1の排出工程、第2の処理工程(反応ガスを供給)、及び第2の排出工程を1サイクルとしてもよい。この場合、上述のガス供給系を原料ガス用だけでなく、原料ガス用と反応ガス用に2つ設けてもよい。
【0052】
(要部構成)
次に、鉛直方向に延びたガスノズル340aの周面に形成された開口部234、及びガスノズル340aの先端に形成された放出孔344について説明する。
【0053】
開口部234は、前述したように、鉛直方向に並んで形成された供給スリット235aと平行な方向(すなわち水平方向)で対向するように形成されている。具体的には、1個の供給スリット235aと対向するように、開口部234は、
図5に示されるように、水平方向に並んで複数個(例えば、3個)形成されている。つまり、水平方向に並んで形成された複数の開口部234の孔列が、鉛直方向に並んでいる。換言すると、複数の開口部234の孔列は、ウェハ200の表面に対して平行な方向に並ぶように設けられている。
【0054】
また、
図1に示されるように、開口部234は、下方から上方へ向かってガスが流れるガスノズル340aにおいて、ガスが流れる流路の途中に形成されている。そして、鉛直方向において開口部234が形成されている領域内に、複数枚のウェハ200が全て配置されるようになっている。
【0055】
さらに、処理室201に積載された状態で配置されているウェハ200とウェハ200との間にガスが供給されるように第一開口部234a及び第二開口部234bが形成されている。また、
図5に示されるように、水平方向に並んだ3個の開口部234の内、中央の第一開口部234aは、ウェハ200の中心に向ってガスを供給するように開口されている。また、第一開口部234aとガスノズル340aの中心CP1を通る基準線CL1を挟んで一対の第二開口部234bが、基準線CL1に対して対称に形成されている。なお、この基準線CL1が延びる方向は、第一開口部234aからガスが供給される方向である。
【0056】
この構成において、第一開口部234a及び第二開口部234bは、ガスノズル340aの内部を流れるガスの流れ方向に対して交差する方向(直交する方向)にガスを噴射する。具体的には、第一開口部234a及び第二開口部234bは、水平方向にガスを噴射する。そして、第一開口部234a及び第二開口部234bから噴射されるガスは、処理室201に積載されたウェハ200とウェハ200と間に供給される。
【0057】
また、第二開口部234bと中心CP1と通る基準線CL2が、基準線CL1に対して傾斜する角度を傾斜角度(
図5のR1)とすると、傾斜角度R1は、予め決められた角度とされている。つまり、第二開口部234bから供給されるガスが向かう方向は、第一開口部234aから供給されるガスが向う方向を基準として予め決められた傾斜角度R1だけ傾斜している。さらに、第一開口部234a、第二開口部234bは、円形状とされており、第一開口部234a、第二開口部234bの孔径は、予め決められた値とされている。
【0058】
この構成において、第一開口部234aから噴射されて処理室201へ供給されるガスはウェハ200の中心へ向い、第二開口部234bから噴射されて処理室201へ供給されてガスはウェハ200の周縁へ向う。ここで、本実施形態における開口部234の形状は、図示されているように円形状であるが、この形態に限定されず、楕円形状、三角形状、スリット形状(四角形状)、また五角形状でも良い。放出孔344の形状についても同様である。また、放出孔344は、一つである必要はなく、複数の孔であってもよい。この場合、放出孔344をなす複数の孔の全断面積が、開口部234の断面積より大きくなれば良いのは言うまでもない。
【0059】
また、本実施形態のガスノズル340aは、直管(ストレートノズル)タイプのノズルであるが、この形態に限定されない。例えば、
図16に示すような折り返しタイプ(Uターンタイプ)のノズルであってもよい。
図16(A)が、折り返し部の後に第一開口部234a、第二開口部234bがそれぞれ設けられているタイプであり、
図16(B)が折り返し部の前に第一開口部234a、第二開口部234bがそれぞれ設けられているタイプである。なお、
図16に図示しないが折り返し部の前後に開口部234を設けてもよいのは言うまでもない。
【0060】
図16に示すように、折り返しタイプ(Uターンタイプ)のノズルであれば、開口部234から供給されるガスのみウェハ200方向に向かって流れることになる。つまり、後述する放出孔344から放出されるガスは、反応管203の下方に向けられるため、ウェハ200に対する処理に影響を与えることはない。
【0061】
ここで、
図6を用いて、従来のガスノズルのように1個の開口部が鉛直方向に並んでいる場合のガス流れと、実施形態のガスノズル340aのように3個の開口部234の孔列が鉛直方向に並んでいる場合のガス流れとについて説明する。
【0062】
図6には、従来のガスノズルのガス流れについてのシミュレーションの結果と、本実施形態のガスノズル340aのガス流れについてのシミュレーションの結果とが示されている。この表から分かるように、従来のガスノズルでは、戻り流が発生し、実施形態のガスノズル340aでは、戻り流が発生していない。ここで、「戻り流」とは、開口部234から噴射されたガスの一部が、ウェハ200上でU字状に流れて、ウェハ200の中心側から周縁側へ戻る流れのことである。
【0063】
従来のガスノズルでは、1個の開口部から勢いよくガスが噴射されるため戻り流が発生しやすい。戻り流で戻っていくガスは最終的にはウェハエッジの近傍を流れて排気される。戻り流は、ウェハエッジ部の膜厚が他の部位と比して厚くなる要因の一つである。換言すれば、戻り流は、ウェハ面内の膜厚均一性の悪化の要因の一つである。
【0064】
一方、実施形態のガスノズル340aでは、3個の開口部234の内、第一開口部234aはウェハ200の中心を向いており、他の2個の第二開口部234bは、基準線CL1に対して傾斜している。3個の開口部234のそれぞれからガスを分散して噴射させることにより、戻り流の発生が抑制されている。
【0065】
また、
図6には、従来のガスノズルのガス分圧ΔPaのシミュレーションの結果と、実施形態のガスノズル340aのガス分圧ΔPaのシミュレーションの結果とが示されている。
【0066】
ここで、「ガス分圧ΔP」について
図7を用いて説明する。外径300mmのウェハのエッジ(半径145mmの領域)のガスの分圧の円周平均と、センタ(半径7mmの領域)のガスの分圧の円周平均とを算出し、それらの差分値が、ガス分圧ΔPa(以下「ΔPa」と記載することがある)である。
【0067】
図6に示されるように、従来のガスノズルのΔPaは、5.7Paで、実施形態のガスノズル340aのΔPaは、1.5Paである。実施形態のガスノズル340aのΔPaは、従来のガスノズルのΔPaと比して小さくなっている。このΔPaの結果から、実施形態のガスノズル340aは、従来のガスノズルと比して戻り流の発生が抑制されていることが分かる。
【0068】
また、ガスノズル340aの先端(上端)には、
図5に示されるように、ウェハ200とは異なる方向に向けてガスを放出する放出孔344が形成されている。この放出孔344の孔径は、第一開口部234aの孔径及び第二開口部234bの孔径と比して大きく、又は、放出孔344の断面積は、第一開口部234aの断面積及び第二開口部234bの断面積と比して大きくされている。
【0069】
この構成において、このように放出孔344を形成させることで、ガスノズル340aの内部を流れるガスがガスノズル340aの鉛直方向で均等となる。これにより、第一開口部234a及び第二開口部234bのそれぞれから供給されるガスの流量が鉛直方向で均等となる。
【0070】
次に、ガスノズル340aの開口部234の孔径を変えて熱流体シミュレーションを行った結果について、
図8、
図9に示す表を用いて説明する。なお、孔径以外の他の仕様については、同じ値である。なお、第一開口部234aの孔径を、2.7mmと一定にした。
【0071】
・評価例1では、第一開口部234aの孔径と第二開口部234bの孔径との比(孔径比)を、1:1とした。
・評価例2では、第一開口部234aの孔径と第二開口部234bの孔径との比(孔径比)を、1:0.85とした。
・評価例3では、第一開口部234aの孔径と第二開口部234bの孔径との比(孔径比)を、1:0.75とした。
【0072】
図8に示されるように、ウェハ200上のガス流れについて、評価例1、2については、ウェハ200上で戻り流が発生していない。一方、評価例3については、ウェハ200上で戻り流が発生している。但し、評価例3における戻り流については、従来例の戻り流(
図6参照)と比して度合が抑制されている。
【0073】
図9に示されるように、第一開口部234aの断面積に対する第二開口部234bの断面積の比については、評価例1では、1となり、評価例2では、0.7となり、評価例3では、0.5となった。
【0074】
図9に示されるように、第一開口部234aから供給されるガスの流量に対する第二開口部234bから供給されるガスの流量の比については、評価例1では、ほぼ1となり、評価例2では、0,69となり、評価例3では、0.49となった。
ここで、「ほぼ1」とは、1に対して±5%以内であることを意味する。
【0075】
図9の表に示されるように、ウェハ200上のΔPaについては、評価例1では、1.5Paとなり、評価例2では、2.7Paとなり、評価例3では、4.0Paとなった。
【0076】
[ウェハ上のガスの流れに関する考察]
前述した結果より、戻り流が発生しないための臨界条件は、評価例2の仕様と考えられる。評価例2のシミュレーションのガス流れを見ると、ウェハの端部に戻り流が発生しているようにも捉えられる。しかしながら、ウェハの端部の数mm(3mm~5mm)は、微細パターンが作られていないとされている領域であるため、評価例2の仕様が、実質的にウェハ上の戻り流が発生していない臨界条件とみなすことができる。
【0077】
つまり、戻り流が発生しないための流量比は、0.7以上1.0以下である。戻り流が発生しないための開口部の断面積比は、0.7以上1以下である。そして、戻り流が発生しないためのΔPaの上限値は、凡そ3.0以下である。
【0078】
次に、ガスノズル340aに形成された第二開口部234bの傾斜角度R1を変えて熱流体シミュレーションを行った結果について、
図10に示す表を用いて説明する。なお、傾斜角度R1以外の他の仕様については、同じ値である。
【0079】
・評価例4では、傾斜角度R1を20度とした。
・評価例5では、傾斜角度R1を25度とした。
・評価例6では、傾斜角度R1を30度とした。
・評価例7では、傾斜角度R1を35度とした。
・評価例8では、傾斜角度R1を45度とした。
【0080】
図10に示されるように、評価例4、5、6については、戻り流が発生していない。評価例7、8については、戻り流が発生している。これにより、傾斜角度R1が20度以上30度以下であれば、戻り流が発生しないことが分かる。なお、評価例7、8における戻り流については、従来例の戻り流(
図6参照)と比して度合が抑制されている。
【0081】
図10に示されるように、評価例4では、ΔPaは、2.6Paとなり、評価例5では、ΔPaは、2.9Paとなり、評価例6では、ΔPaは、3.1Paとなり、評価例7では、ΔPaは、7.8Paとなり、実施8では、ΔPaは、9.7Paとなった。これにより、戻り流が発生しないためのΔPaの上限値は、3.1Pa以下である。
【0082】
次に、ガスノズル340aを流れるガスの流量を変えて熱流体シミュレーションを行った結果について、
図11に示す表を用いて説明する。なお、第一開口部234a及び第二開口部234bの孔径は2.7mmとされており、これ以外の他の仕様についても同じ値である。
【0083】
・評価例9では、ガスの流量を3slmとした。
・評価例10では、ガスの流量を5.9slmとした。
・評価例11では、ガスの流量を12slmとした。
【0084】
第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されるガスの流量の流量均一性については、
図11の表で示されるように、評価例9では、±1.2%となり、評価例10では、±1.52%となり、評価例11では、±0.81%となった。
【0085】
[開口部234に関する考察]
図11に示す表より、第一開口部234aから供給される流量が、第二開口部234bから供給される流量と比して少ない傾向となっている。言い換えれば、第一開口部234aから供給されるガス流量が少ないほうが、流量均一性が高く、戻り流の抑制に対して好ましい結果となっている。つまり、第一開口部234aよりも第二開口部234bの孔径又は断面積を大きくすることで、第一開口部234aから供給されるガス流量が多くなり、戻り流の抑制に対しては好ましいと考えられる。
【0086】
図17は、開口部の径の孔径比(第一開口部234aを基準とする孔径比率)を横軸にとり、縦軸をガス分圧ΔPaとしている。つまり、
図17は、第一開口部234aと第二開口部234bの孔径比に対するガス分圧ΔPaの依存性を示す。
図17によれば、ガス分圧ΔPaの値が約3より小さいときに戻り流が発生しないため、孔径比を最も大きくした場合(
図17では孔径比は3.33)であっても戻り流が発生していないことが分かる。
【0087】
ここで、
図17に示すガス分圧ΔPaの値が2.7のポイントは、
図8に示す評価例2の条件である。また、ガス分圧ΔPaの値が1.5のポイントは、
図8に示す評価例1の条件である。そして、孔径比が1より大きくなるにつれて、ガス分圧ΔPaの値が小さくなっていき、孔径比1.85を境に緩やかであるがガス分圧ΔPaが上昇へ転換している。従い、理想的な孔径比の最大値は、孔径比1.85のときとわかる。
【0088】
引き続き、
図17では、孔径比が1.49以上1.85以下で、ガス分圧ΔPaの値は、1より小さい値でほぼ一定(約0.8)になっており、更に、孔径比が1.2以上2.1以下で、ガス分圧ΔPaの値は、約0.9以下となっていることが分かる。つまり、孔径比が1.2以上2.1以下であれば、ウェハ200の表面上をガスが、均等に流れていると判断することができる。この条件であれば、ガスをウェハ200表面に均等に供給することができるため、例えば、成膜に寄与するガスであれば、ウェハ面内の成膜均一性の向上が期待できる。
【0089】
図18は
図17に示す12ポイントのシミュレーションを行ったものから、孔径比が1より大きい4点(評価例12,13,14,15)を抜粋したものである。それぞれ左側から順に孔径比が、1.19、1.85、2.41、3.33であり、
図18は、
図8に対して孔径比が1より大きい場合のシミュレーション結果を示すものである。これらに示されるように、いずれの条件によっても戻り流は発生していないことが分かる。
【0090】
一方、第一開口部234aの流量より第二開口部234bの流量が多いと戻り流の発生は抑えられることが分かったが、孔径比が1.85より大きくなると、ΔPaの値が上昇に転じている説明が不明である。そこで、孔径比が2.41および3.33のシミュレーション結果を精査したところ、第一開口部234aからのガスの流れに淀みが生じていることが分かった。
図18に示すように、孔径比が2.41および3.33のシミュレーション結果として、第一開口部234aの流量に対して第二開口部234bの流量(流量比)が、それぞれ約14、約50となっており、極端に第一開口部234aの流量が少なくなっている。
【0091】
この第二開口部234bの流量が多くなり第一開口部234aの流量が少なくなると、ΔPaの値が上昇に転じ淀みが発生する現象として、第二開口部234bから供給されるガスの戻り流が原因であると考えられる。これまでは第一開口部234aのガスの流れを抑制するために第二開口部234bからガスを供給して戻り流の発生を抑制してきたが、第二開口部234bの流量が多すぎると、第二開口部234bから供給されるガスの戻り流が発生して排気方向にガスが向かわずに中心方向に向かうガスの流れが発生し、この戻り流に対して第一開口部234aから供給されるガスの流量が少ないため戻り流を打ち消しにくくなっているため、第一開口部234aから供給されるガスが淀んでいることが考えられる。
【0092】
一方、シミュレーション結果では戻り流が生じていない理由は、第一開口部234aから供給されるガスによる影響に加え、第二開口部234bが第一開口部234aを挟むように2か所に設けられているため、第二開口部234bから供給されるガスの戻り流が発生したとしても中心方向へ向かうガスの流れについてはうまく打ち消し合っているものと考えられる。他方、戻り流が発生し中心方向に向かわないガスの流れについては、第二開口部234bがそもそもウェハ200の周縁部に向けて設けられているので、ウェハ200上のガスの流れへの影響はほぼ無いものと考えられる。
【0093】
このように、第二開口部234bの流量が多くなり第一開口部234aの流量が少なくなるとΔPaの値が上昇に転じている理由は、第二開口部234bから供給されるガスの戻り流に起因する第一開口部234aから供給されるガスの淀みであると考えられる。一方、この第一開口部234aの流量が多くなり第二開口部234bの流量が少なくなるとΔPaの値が上昇する理由は、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流である。
図17に戻って、孔径比が1.19より小さいときは、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流が発生し、その影響によりΔPaが急激に上昇している一方、孔径比が2.1より大きいときは、第一開口部234aから供給されるガスの淀みが発生し、その影響によりΔPaが緩やかに上昇している。
【0094】
つまり、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流がウェハ200上のガスの流れに与える影響が大きく、一方、第一開口部234aから供給されるガスの淀みがウェハ200上のガスの流れに与える影響が直線的になっている。これは、第二開口部234bから供給されるガスの戻り流の影響というよりは、第一開口部234aから供給されるガスの流量に影響していると考えられる。つまり、ウェハ200へ、例えば、成膜寄与ガスを供給する場合、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流の影響が大きいことが分かる。
【0095】
図18に戻って、例えば、孔径比が、3.33ではΔPaが2.1Paである。また、シミュレーションの結果、ウェハ200上では戻り流の発生が表れていない(
図18において戻り流の流れを示すフローが無い)。これは、第二開口部234bからそれぞれ供給されるガスの戻り流が打ち消し合うため、戻り流のΔPaへの影響が第一開口部234aに比べかなり小さいものと考えられる。但し、第一開口部234aに対向するウェハ200上での淀みの影響が大きく反映されてしまっていると考えられる。つまり、第二開口部234bから供給されるガスの戻り流の影響は、第一開口部234aから供給されるガスの淀みの要因になっているが、ΔPaへの影響が間接的になっていると考えられる。
【0096】
図8に戻って、例えば、孔径比が、0.85(評価例2)ではΔPaが2.7Paとなり、実際に、シミュレーションの結果、ウェハ200上では戻り流の発生が表れていない(
図8において戻り流の流れを示すフローが無い)。そこで戻り流が発生してもウェハ200上での戻り流の発生を抑えたと説明していたが、厳密には、ウェハ200上では戻り流が発生しているが打ち消していたということである。
【0097】
図17に戻って、孔径比が1.19以上2.1以下のとき、ΔPaが、0.8以上0.9以下の値で安定している。従い、第一開口部234aからも第2開口部からも戻り流が発生していないと考えられる。もしくは、戻り流が発生していたとしても丁度打ち消し合っていると考えられる。
【0098】
本実施形態によれば、シミュレーション結果で戻り流の発生が示されてもウェハ200上の処理への影響を考慮すると、ΔPaが2.7以下であればよいことが分かる。つまり、
図17に示すように、孔径比で表すと、0.85以上3.33以下であればよい。このとき、断面積比は、0.7以上11.1以下である。また、戻り流が発生していた場合でも、シミュレーション結果では戻り流が抑制されている(打ち消されている)ことで判断すれば、
図18に示すように、ガス分圧ΔPaが2.1以下であればよく、
図17に示す孔径比が0.93以上2.25であればよく、更に、戻り流だけでなく淀みの影響がない条件が好ましく、例えば、ガス分圧ΔPaが0.9以下であればよいので、孔径比が1.1以上2.1以下であればよい。
【0099】
なお、上述では、孔径比を中心に詳述していたが、これは1つの指標であり、ガス流量、断面積比等も同様である。
【0100】
(第1変形例)
次に、第1変形例について
図12を用いて説明する。第1変形形態のガスノズル540a、540bは、一対設けられており、下方が開放されたU字型(U字状)の連結部542によってガスノズル540aの上端とガスノズル540bの上端が連結されている。
【0101】
具体的には、ガスが下方から上方へ流れるガスノズル540aと、ガスが上方から下方へ流れるガスノズル540bとが設けられている。そして、ガスノズル540aとガスノズル540bとは、装置奥行き方向に並んでいる。また、ガスノズル540a、540bの外形形状は、装置幅方向に延びる楕円状とされている。
【0102】
ガスノズル540aには、水平方向に並んで形成された一対の開口部534が、鉛直方向に並んで形成されている。開口部534は、第一開口部534aと第二開口部534bとから構成されている。第一開口部534aと第二開口部534bとは、楕円状のガスノズル540aの長手方向に延びる基準線CL3に対して対称に配置されている。そして、第一開口部534aは、ガスノズル540b側で、かつ、ウェハ200の中心側に向けてガスを噴射するように配置されている。
【0103】
同様に、ガスノズル540bには、水平方向に並んで形成された一対の開口部534が、鉛直方向に並んで形成されている。開口部534は、第一開口部534cと第二開口部534dとから構成されている。第一開口部534cと第二開口部534dとは、楕円状のガスノズル540bの長手方向に延びる基準線CL4に対して対称に配置されている。そして、第一開口部534cは、ガスノズル540a側で、かつ、ウェハ200の中心側に向けてガスを噴射するように配置されている。ここで、中心側というのは、第一開口部534aと第一開口部534cからそれぞれ供給されるガスが、ウェハ200の中心で混合される向きだけでなく、ウェハ200上で混合される向きであれば含む。なお、ウェハ200の中心に到達する前に混合される向きが好ましい。
【0104】
また、ガスノズル540aに形成されている第一開口部534a及び第二開口部534bと、ガスノズル540bに形成されている第一開口部534c及び第二開口部534dとは、同じ平面上に設けられている。
【0105】
この構成において、ガスノズル540aの第一開口部534aから噴射されるガスと、ガスノズル540bの第一開口部534cから噴射されるガスとは、ウェハ200に到達する前に混合されるか、もしくは、ウェハ200の中心部に到達する前、つまり、ウェハ200の周縁部から中心部までの間に混合される。なお、本変形例では、形状がU字状のノズルを開示しているが、この形状によらず、V字状のノズルでもよいし、更に、N字状やW字状のノズルであってもよい。更に、本変形例でも開口部(第1開口部と第2開口部)の数については、2個以上であればよく、例えば、実施形態と同様に、3個であってもよい。
【0106】
(第2変形例)
次に、第2変形例について
図13を用いて説明する。第2変形例のガスノズル640a、640bは、一対設けられており、上方が開放されたU字型(U字状)の連結部642によってガスノズル640aの下端とガスノズル640bの下端が連結されている。そして、ガスノズル640aとガスノズル640bとは、装置奥行き方向に並んでいる。また、ガスノズル640a、640bの外形形状は、装置幅方向に延びる楕円状とされている。
【0107】
ガスノズル640aには、水平方向に並んで形成された一対の開口部634が、鉛直方向に並んで形成されている。開口部634は、第一開口部634aと第二開口部634bとから構成されている。第一開口部634aと第二開口部634bとは、楕円状のガスノズル640aの長手方向に延びる基準線CL5に対して対称に配置されている。そして、第一開口部634aは、ガスノズル640b側で、かつ、ウェハ200の中心側の方向にガスを噴射するように配置されている。
【0108】
同様に、ガスノズル640bには、水平方向に並んで形成された一対の開口部634が、鉛直方向に並んで形成されている。開口部634は、第一開口部634cと第二開口部634dとから構成されている。第一開口部634cと第二開口部634dとは、楕円状のガスノズル640bの長手方向に延びる基準線CL6に対して対称に配置されている。そして、第一開口部634cは、ガスノズル640a側で、かつ、ウェハ200の中心に向けてガスを噴射するように配置されている。
【0109】
また、ガスノズル640aに形成されている第一開口部634a及び第二開口部634bと、ガスノズル640bに形成されている第一開口部634c及び第二開口部634dとは、同じ平面上に設けられている。
【0110】
この構成において、ガスノズル640aの第一開口部634aから噴射されるガスと、ガスノズル640bの第一開口部634cから噴射されるガスとは、ウェハ200に到達する前に混合されるか、ウェハ200上で混合される。なお、本変形例では、U字状ノズルのみを開示しているが、この形態によらず、Y字状でもよいし、開口部634が設けられるガスノズル640が凹型であってもよい。更に、本変形例でも開口部の数については、2個以上であればよく、例えば、実施形態と同様に、3個であってもよい。
【0111】
次に、第3変形例について
図14を用いて説明する。第3変形形態は、ストレートノズル(直管ノズル)が複数設けられる構成である。
図14に示すように、ガスを噴射するI字型(I字状)のガスノズル740aとガスノズル740bとが個別に設けられている。そして、ガスノズル740aとガスノズル740bとは、連結されておらず、装置奥行き方向に並んでいる。また、ガスノズル740a、740bの外形形状は、装置幅方向に延びる楕円状とされている。
【0112】
ガスノズル740aには、水平方向に並んで形成された一対の開口部734が、鉛直方向に並んで形成されている。開口部734は、第一開口部734aと第二開口部734bとから構成されている。第一開口部734aと第二開口部734bとは、楕円状のガスノズル740aの長手方向に延びる基準線CL7に対して対称に配置されている。そして、第一開口部734aは、ガスノズル740b側で、かつ、ウェハ200の中心側に向けてガスを噴射するように配置されている。
【0113】
同様に、ガスノズル740bには、水平方向に並んで形成された一対の開口部734が、鉛直方向に並んで形成されている。開口部734は、第一開口部734cと第二開口部734dとから構成されている。第一開口部734cと第二開口部734dとは、楕円状のガスノズル740bの長手方向に延びる基準線CL8に対して対称に配置されている。そして、第一開口部734cは、ガスノズル740a側で、かつ、ウェハ200の中心側に向けてガスを噴射するように配置されている。
【0114】
また、ガスノズル740aに形成されている第一開口部734a及び第二開口部734bと、ガスノズル740bに形成されている第一開口部734c及び第二開口部734dとは、同じ平面上に設けられている。
【0115】
この構成において、ガスノズル740aの第一開口部734aから噴射されるガスと、ガスノズル740bの第一開口部634cから噴射されるガスとは、ウェハ200に到達する前に混合される。更に、本変形例でも開口部の数については、2個以上であればよく、例えば、実施形態と同様に、3個であってもよい。
【0116】
また、本実施形態では、第二開口部から供給されるガスの流量、第二開口部の孔径、及び第二開口部の断面積は、それぞれ、第一開口部から供給されるガスの流量、第一開口部の孔径、及び第一開口部の断面積より大きく構成されてもよい。これのより、第一開口部から供給されるガスの戻り流を抑制することができる。そして、第一開口部及び第二開口部からそれぞれ供給されるガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、膜厚のウェハ200の面内均一性を向上させることができる
【0117】
また、本実施形態において、2個設けられた第二開口部234bにおいて、2個の第二開口部234bからそれぞれ供給されるガスの流量、2個の第二開口部234bのそれぞれの孔径、及び2個の第二開口部234bの断面積が、ほぼ同じまたは同じであったが、少なくとも一つがほぼ同じまたは同じであってもよい。これにより、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流を抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態では、第一開口部234aから供給されるガスが向う方向を基準として第二開口部234bが傾斜する傾斜角度は、第一開口部234aと処理対象物としてのウェハ200の配置の関係に基づいて決めることができる。これにより、第二開口部234bから供給されるガスを処理室201のウェハ200の周縁へ向う方向に供給することができる。従って、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流を抑制することができる。
【0119】
本実施形態によれば、以下に記載(1)乃至(12)のうち少なくとも一つの効果を奏することができる。
【0120】
(1)本実施形態によれば、各熱流体シミュレーションの結果からも分かるように、第二開口部234bから噴射されて処理室201へ供給されるガスによって、第一開口部234aから噴射されて処理室201へ供給されるガスの戻り流が抑制されている。これにより、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されるガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、従来構成と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0121】
(2)本実施形態によれば、
図9及び
図18の表に示される評価例1、2,12,13,14,15のように、第二開口部234bから供給されるガスの流量を第一開口部234aから供給されるガスの流量に対して0.7以上49.0以下とすることで、評価例3と比してガスの戻り流を抑制することができる。これにより、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されたガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、評価例3と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0122】
(3)本実施形態によれば、
図9の表に示される評価例1、2,12,13,14,15のように、第二開口部の断面積を、第一開口部の断面積に対して0.7以上11.1以下とすることで、評価例3と比してガスの戻り流を抑制することができる。これにより、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されたガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、評価例3と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0123】
(4)本実施形態によれば、
図8の表に示される評価例1、2,12,13,14,15のように、第二開口部234bの孔径を、第一開口部234aの孔径に対して孔径比0.85以上3.33以下とすることで、評価例3と比してガスの戻り流を抑制することができる。これにより、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されたガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、評価例3と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0124】
(5)本実施形態によれば、
図10の表に示される評価例4~6のように、第二開口部234bの傾斜角度R1を20度以上30度以下とすることで、評価例7、8と比してガスの戻り流を抑制することができる。これにより、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されたガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、評価例7、8と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0125】
(6)本実施形態によれば、第二開口部234bは2個設けられており、
図8、
図9、
図18の表に示される評価例1、2、3,12,13,14,15においては、2個の第二開口部234bからそれぞれ供給されるガスの流量は、ほぼ同じまたは同じになるよう構成される。これにより、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流を抑制することができる。さらに、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されたガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、従来構成と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0126】
なお、本開示において「ほぼ同じ」とは、一方を基準として、他方が一方の±95%以内のことである。
【0127】
(7)本実施形態によれば、第二開口部234bは2個設けられており、
図8、
図9、
図18の表に示される評価例1、2、3,12,13,14,15においては、2個の第二開口部234bのそれぞれの孔径は、同じになるよう構成される。これにより、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流を抑制することができる。さらに、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されたガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、従来構成と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0128】
(8)本実施形態によれば、第二開口部234bは2個設けられており、
図8、
図9、
図18の表に示される評価例1、2、3,12,13,14,15においては、2個の第二開口部234bの断面積は、同じになるよう構成される。これにより、第一開口部234aから供給されるガスの戻り流を抑制することができる。さらに、第一開口部234a及び第二開口部234bからそれぞれ供給されたガスがウェハ200の面内を均等に流れるため、従来構成と比して、ウェハ200の面内における膜厚の均一性を向上させることができる。
【0129】
(9)本実施形態によれば、ガスノズル340aの先端に放出孔344が形成されている。このため、ガスノズル340aの内部を流れるガスは、ガスノズル340aの鉛直方向で均等となることで、第一開口部234a及び第二開口部234bのそれぞれから供給されるガスの流量を鉛直方向で均等にすることができる。
【0130】
(10)本実施形態によれば、処理室201に積載された状態で配置されているウェハ200とウェハ200との間にガスが供給されるように第一開口部234a及び第二開口部234bが形成されている。これにより、ウェハ200の間に供給される第一開口部234aからのガスの流量を第二開口部234bからのガスの流量よりも少なくすることで、ウェハ200の間に供給されるガスを均等にすることができる。また、孔径比(孔径)及び断面積比(断面積)についても同様である。
【0131】
(11)本実施形態によれば、一方のガスノズル540a、640aの第一開口部534a、634aから供給されるガスと、他方のガスノズル540b、640bの第一開口部534c、634cから供給されるガスとはウェハ200に到達する前に混合される。これにより、それぞれの第一開口部534a、534c、634a、634cから供給されるガスが混合した後、ウェハ200上に均等に供給される。そこで、ウェハ200上で戻り流が発生することなく、ウェハ200の面内をガスが均等に流れるため、膜厚の面内の均一性を向上させることができる。
【0132】
(12)本実施形態によれば、一方のガスノズル740aの第一開口部734aから供給されるガスと、他方のガスノズル740bの第一開口部734cから供給されるガスとはウェハ200に到達する前に混合される。これにより、それぞれの第一開口部734a、734cから供給されるガスが混合した後、ウェハ200上に均等に供給される。そこで、ウェハ200上で戻り流が発生することなく、ウェハ200の面内をガスが均等に流れるため、ウェハ200における膜厚の面内の均一性を向上させることができる。
【0133】
<他の変形例>
以下、本開示の他の変形例について、
図15を参照しつつ説明する。なお、本実施形態と同じところは省略し、本実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0134】
反応管203の周方向において、ノズル室222の両側には、
図15に示されるように、鉛直方向に延びる一対のノズル室822が設けられている。具体的には、装置奥行き方向の奥側にノズル室822aが設けられ、装置奥行き方向の手前側にノズル室822bが設けられている。
【0135】
ノズル室822aには、ガスノズル840aが配置されており、ガスノズル840aは、I字型(I字状)のロングノズルとして構成されている。ノズル室822bには、ガスノズル840bが配置されており、ガスノズル840bは、I字型(I字状)のロングノズルとして構成されている。
【0136】
ガスノズル840a、840bには、円状の開口部834a、834bが鉛直方向に並んで形成されている。そして、ガスノズル840a、840bの開口部834a、834bからは、不活性ガスが処理室201へ向けて噴射されるようになっている。円状の開口部834a、834bが形成されたガスノズル840a、840bを含んで第二ガス供給部842が構成されている。
【0137】
この構成において、ガスノズル840a、840bの開口部834a、834bから供給されるガスの流量は、第二開口部234bから供給されるガスの流量、及び第一開口部234aから供給されるガスの流量と異なる。また、ガスノズル340aの開口部234からガスを噴射しているときに、ガスノズル840a、840bの開口部834a、834bから微小な不活性ガスが噴射される。これにより、逆拡散が抑制される。なお、開口部834a、834bから噴射される不活性ガスは、開口部234から噴射されるガスの流れに寄与しない程度の流量に抑えられる。
【0138】
なお、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、特に説明しなかったが、第二開口部の数が第一開口部の数より多く構成されてもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、第一開口部と第二開口部とが個別に設けられた。しかし、例えば、第一開口部から噴射されるガスは処理室のウェハ200の中心方向に噴射するように構成され、第二開口部から噴射されるガスは処理室201のウェハ200の周縁方向に噴射するように構成され、第一開口部と第二開口部が連続的に設けられているスリットタイプであってもよい。
【0140】
また、基板処理装置10、810は、半導体製造装置だけでなく、例えばLCD装置のようなガラス基板を処理する装置等に用いてもよい。
【0141】
また、成膜処理として、例えば、CVD、PVD、酸化膜、窒化膜、またはその両方を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理等であってもよく、さらに、本実施形態は、アニール処理、酸化処理、窒化処理、拡散処理等の処理でも適用できる。
【符号の説明】
【0142】
10 基板処理装置(処理装置の一例)
200 ウェハ(基板の一例)
201 処理室