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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-02
(45)【発行日】2024-12-10
(54)【発明の名称】復号装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/105 20140101AFI20241203BHJP
   H04N 19/136 20140101ALI20241203BHJP
   H04N 19/182 20140101ALI20241203BHJP
   H04N 19/593 20140101ALI20241203BHJP
【FI】
H04N19/105
H04N19/136
H04N19/182
H04N19/593
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023141326
(22)【出願日】2023-08-31
(62)【分割の表示】P 2022109409の分割
【原出願日】2016-07-04
(65)【公開番号】P2023159443
(43)【公開日】2023-10-31
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】千田 和博
【審査官】山▲崎▼ 雄介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-205288(JP,A)
【文献】特開2012-138774(JP,A)
【文献】国際公開第2011/083599(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/106935(WO,A1)
【文献】特開2014-161039(JP,A)
【文献】特開2011-171911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を分割した符号化対象ブロックを復号するように構成されている復号装置であって、
イントラ予測モードに基づいて決定する第1予測処理により第1予測画像を生成する第1予測部と、
前記符号化対象ブロックにおける合成領域を決定するように構成されている合成領域決定部と、
前記第1予測処理と異なる第2予測処理により第2予測画像を生成する第2予測部と、
前記合成領域に含まれる予測画像を、前記第1予測画像と前記第2予測画像との加重平均により生成する予測画像合成部とを具備しており、
前記予測画像合成部は、前記符号化対象ブロックに隣接するブロックが復号済みか否かに基づいて前記加重平均に用いる重みを決定することを特徴とする復号装置。
【請求項2】
コンピュータを請求項1に記載の復号装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復号装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)に代表される動画像の符号化方式では、フレーム間の時間的相関を利用したインター予測及びフレーム内の空間的相関を利用したイントラ予測の2種類の予測を切り替えながら予測を行って残差信号を生成した後、直交変換処理やループフィルタ処理やエントロピー符号化処理を行い得られたストリームを出力するように構成されている。
【0003】
HEVCにおけるイントラ予測では、Planar予測やDC予測や方向予測の計35種類のモードが用意されており、エンコーダで決定されたモードに従って、隣接する復号済み参照画素を用いてイントラ予測を行うように構成されている。
【0004】
ここで、イントラ予測では、フレーム内で最も左上に位置するCU(Coding Unit)等、隣接する復号済み参照画素が存在しないCUでは、規定した値(10ビットの動画像であれば「512」)を埋める処理により、予測画像を生成する際に用いる参照画素を作り出すように構成されている。
【0005】
また、従来のHEVCでは、符号化処理が、左上からラスタースキャン順に行われるために、参照画素が復号済みでない場合がある。このような場合には、最も近い復号済み参照画素を0次外挿した値を用いて予測画像を生成するように構成されている。
【0006】
CUは、複数のブロック(TU:Transform Unit)に分割され直交変換処理が施される。HEVCにおいて、適用するイントラ予測の種類を示すイントラ予測モードは、CU内で共通であり、複数のTUに対して共通したイントラ予測モードを用いて予測が行われる。
【0007】
イントラ予測では、図7に示すように、ラスタースキャン順による符号化処理により、CU#Xの左下や右上に位置する参照画素Nが復号済みでない場合が多く、このような場合に、復号済みでない参照画素が存在する方向からの方向予測を行うと予測精度が低下し、符号化効率が低減してしまうという問題点があった。
【0008】
以下、図8(a)~図8(d)を用いて、かかる問題点について具体的に説明する。図8は、従来のHEVCにおけるイントラ予測の一例について示す。
【0009】
かかる例では、図8(a)に示すように、図7の例の場合と同様に、CU#A1(フレーム内の左上のCU)の参照画素については、全てが復号済みである。同様に、図8(c)に示すように、CU#A3(フレーム内の左下のCU)の参照画素については、全てが復号済みである。
【0010】
これに対して、図8(b)に示すように、CU#A1内に位置する参照画素W1~W3は復号済みであるが、CU#A3内に位置する参照画素B1~B4は復号されていないので、そのままCU#A2(フレーム内の右上のCU)の予測画像を生成する際の参照画素とすることはできない。
【0011】
このため、従来のHEVCでは、図8(b)に示すように、CU#A1内に位置する復号済み参照画素W1~W3の一番下に位置する参照画素W1の値を、CU#A3内の同じ列に位置する未復号参照画素B1~B4にコピーするように規定されている。
【0012】
同様に、従来のHEVCでは、図8(d)に示すように、CU#A3内に位置する復号済み参照画素B1~B3の一番下に位置する参照画素B1の値を、CU#A3の下側に存在するCU内の同じ列に位置する未復号参照画素P3にコピーするように規定されている。
【0013】
したがって、図8の例のように、左下から右上に向かって方向予測が行われる場合、生成された予測画像の多くはコピーで埋められた未復号参照画素により構成されているため、予測精度が低下し、符号化効率が低減してしまうという問題点があった。
【0014】
かかる問題点を解決するために、TU分割が行われるイントラ予測において、CU内に存在する複数のTUに対する符号化処理順として、ラスタースキャン順(例えば、Z型)の他、U型やX型等の符号化順に自由度を持たせることによって予測精度の向上を図る技術が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】望月等、「平均値座標に基づいた適用イントラ予測方式」、情報処理学会研究報告、vol、2012-AVM-77、No.12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上述の非特許文献1に規定されている技術では、CU単位でどのような符号化処理順を用いるのかについてのフラグを伝送する必要があるため、伝送する情報量が増大してしまう他、全ての符号化処理順の中からどの符号化処理順が良いかを選択するために、符号化装置側では全ての組み合わせを試す必要があり、符号化装置側の計算時間が増大してしまうという問題点があった。
【0017】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、符号化装置によって伝送する情報量を増大させることなく、また、符号化装置側の計算時間を増大させることなく、予測精度や符号化効率を向上させることができる符号化装置、復号装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の特徴は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を分割した符号化対象ブロックを復号するように構成されている復号装置であって、予測モードに基づいて決定する第1予測処理により第1予測画像を生成する第1予測部と、前記符号化対象ブロックに対応する合成領域を決定するように構成されている合成領域決定部と、前記第1予測処理と異なる第2予測処理により第2予測画像を生成する第2予測部と、前記合成領域に含まれる予測画像を、前記第1予測画像と前記第2予測画像との加重平均により生成する予測画像合成部とを具備しており、前記予測画像合成部は、前記符号化対象ブロックに隣接するブロックが復号済みか否かに基づいて前記加重平均に用いる重みを決定することを要旨とする。一実施形態に係る符号化装置は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して符号化するように構成されている符号化装置であって、イントラ予測モードに基づいて、前記符号化対象ブロック内において復号済みでない隣接画素から予測画像が生成される合成領域を決定するように構成されている合成領域決定部と、前記合成領域に含まれるか否かに基づいて、各領域の予測画像の生成方法を変更するように構成されているイントラ予測部とを具備することを要旨とする。
【0019】
一実施形態に係る復号装置は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して復号するように構成されている復号装置であって、イントラ予測モードに基づいて、前記符号化対象ブロック内において復号済みでない隣接画素から予測画像が生成される合成領域を決定するように構成されている合成領域決定部と、前記合成領域に含まれるか否かに基づいて、各領域の予測画像の生成方法を変更するように構成されているイントラ予測部とを具備することを要旨とする。
【0020】
一実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、上述の符号化装置として機能させるためのプログラムであることを要旨とする。
【0021】
一実施形態に係るプログラムは、コンピュータを、上述の復号装置として機能させるためのプログラムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、符号化装置によって伝送する情報量を増大させることなく、また、符号化装置側の計算時間を増大させることなく、予測精度や符号化効率を向上させることができる符号化装置、復号装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1の実施形態に係る符号化装置1の機能ブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態において予測画像が生成される様子の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態において予測画像が生成される様子の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る復号装置3の機能ブロック図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、第2の実施形態において予測画像が生成される様子の一例を示す図である。
図7図7は、従来のHEVCにおいて予測画像が生成される様子の一例を示す図である。
図8図8は、従来のHEVCにおいて予測画像が生成される様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、図1図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3について説明する。ここで、本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3は、HEVCにおけるイントラ予測に対応するように構成されている。
【0025】
本実施形態に係る符号化装置1は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して符号化するように構成されている。なお、本実施形態では、符号化対象のCUの左側及び上側に隣接する画素は全て復号済みであるものとする。
【0026】
また、本実施形態に係る符号化装置1は、CUを複数のTUに分割することができるように構成されていてもよい。したがって、本実施形態では、符号化対象ブロックは、CUであってもよいし、TUであってもよい。以下、本実施形態では、符号化対象ブロックとしてCUが用いられるケースを例にして説明する。
【0027】
また、本実施形態では、CUの符号化順及び復号順として、従来のHEVCで用いられているラスタースキャン順(図7図8に示すようなZ型)が用いられているケースを例にして説明しているが、かかる符号化順及び復号順として、U型やX型等の他の符号化順及び復号順が用いられていてもよい。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る符号化装置1は、イントラ予測モード決定部11と、合成領域決定部12と、イントラ予測部13と、残差信号生成部14と、直交変換・量子化部15と、逆直交変換・逆量子化部16と、局部復号画像生成部17と、メモリ部18と、エントロピー符号化部19とを具備している。
【0029】
イントラ予測モード決定部11は、CUに適用する最適なイントラ予測モードを決定するように構成されている。
【0030】
合成領域決定部12は、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モードに基づいて、CU内において復号済みでない隣接画素から予測画像が生成される合成領域Xを決定するように構成されている。
【0031】
具体的には、図2に示すように、合成領域決定部12は、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モードの方向が左下から右上に向かう方向である場合(すなわち、左下から右上に向かって方向予測が行われる場合)に、CU#A2内において復号済みでない隣接画素B1~B4から予測画像が生成される合成領域Xを決定するように構成されていてもよい。
【0032】
また、本発明は、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モードの方向が右上から左下に向かう方向である場合(すなわち、右上から左下に向かって方向予測が行われる場合)にも適用可能であるが、以下、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モードの方向が左下から右上に向かう方向である場合(すなわち、左下から右上に向かって方向予測が行われる場合)を例に挙げて説明する。
【0033】
なお、本明細書の図において、イントラ予測モードの方向(予測方向)を示す矢印は、HEVC規格書における記載と同様に、イントラ予測の対象の画素から参照画素に向かうものとする(以下同様)。
【0034】
イントラ予測部13は、合成領域決定部12によって決定された合成領域Xに含まれるか否かに基づいて、各領域の予測画像の生成方法を変更するように構成されている。
【0035】
具体的には、イントラ予測部13は、図3(a)に示すように、CU#A2において、合成領域Xに含まれていない領域(すなわち、参照画素W1~W3が復号済みである領域)Yでは、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モードを用いて、復号済み参照画素W1~W3に基づいて予測画像を生成するように構成されている。
【0036】
一方、イントラ予測部13は、図3(b)に示すように、CU#A2において、合成領域Xに含まれている領域(すなわち、参照画素B2~B4が復号済みでない領域)では、予め規定した予測方法を用いて予測画像を生成するように構成されている。
【0037】
ここで、予め規定した予測方法とは、例えば、DC予測やPlanar予測等のイントラ予測の他、隣接する復号済み参照画素の値の平均等で予測画像を生成する予測方法等が挙げられる。
【0038】
なお、符号化装置1及び復号装置3において、かかる予測方法について予め決定していれば、如何なる予測方法を使う場合であっても、符号化装置1から復号装置3に対して、かかる予測方法を示す新たなフラグを伝送する必要はない。
【0039】
また、合成領域決定部12によって決定された合成領域は、イントラ予測モードの方向及び隣接する画素が復号済みであるか否かによって一意に決定することができるため、符号化装置1から復号装置3に対して、新たに合成領域がどの領域であるかを示すフラグを伝送する必要はない。
【0040】
例えば、図3(b)に示すように、イントラ予測部13は、CU#A2における合成領域Xに含まれている領域内の画素X1の位置では、Planar予測を用いて、画素W3、画素D1、画素D2及び画素D4を合成することによって予測画像を生成するように構成されていてもよい。ここで、画素D4には、画素B4の値がコピーされており、画素B4には、画素W1の値がコピーされている。
【0041】
残差信号生成部14は、イントラ予測部13によって生成された予測画像と原画像との差分により残差信号を生成するように構成されている。
【0042】
直交変換・量子化部15は、残差信号生成部14によって生成された残差信号に対して直交変換処理及び量子化処理を施し、量子化された変換係数を生成するように構成されている。
【0043】
逆直交変換・逆量子化部16は、直交変換・量子化部15によって生成された量子化された変換係数に対して、再び逆量子化処理及び逆直交変換処理を施し、量子化された残差信号を生成するように構成されている。
【0044】
局部復号画像生成部17は、逆直交変換・逆量子化部16によって生成された量子化された残差信号に対してイントラ予測部13によって生成された予測画像を加えることで局部復号画像を生成するように構成されている。
【0045】
メモリ部18は、局部復号画像生成部17によって生成された局部復号画像を参照画像として利用可能に保持するように構成されている。
【0046】
エントロピー符号化部19は、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モード等を含むフラグ情報や量子化された変換係数に対してエントロピー符号化処理を施してストリーム出力するように構成されている。
【0047】
また、本実施形態に係る復号装置3は、動画像を構成するフレーム単位の原画像をCUに分割して復号するように構成されている。また、本実施形態に係る復号装置3は、本実施形態に係る符号化装置1と同様に、CUを複数のTUに分割することができるように構成されている。
【0048】
図4に示すように、本実施形態に係る復号装置3は、エントロピー復号部31と、合成領域決定部32と、イントラ予測部33と、逆量子化・逆変換部34と、局部復号画像生成部35と、メモリ部36とを具備している。
【0049】
エントロピー復号部31は、符号化装置1から出力されたストリームから、変換係数やフラグ情報等を復号するように構成されている。ここで、変換係数は、符号化装置1によって、フレーム単位の原画像をCUに分割して符号化された信号として得られた量子化された変換係数である。また、フラグ情報は、予測モード等の付随する情報を含む。
【0050】
合成領域決定部32は、エントロピー復号部31によって出力されたイントラ予測モードに基づいて、CU内において復号済みでない隣接画素から予測画像が生成される合成領域Xを決定するように構成されている。
【0051】
具体的には、図2に示すように、合成領域決定部32は、エントロピー復号部31によって出力されたイントラ予測モードの方向が左下から右上に向かう方向である場合(すなわち、左下から右上に向かって方向予測が行われる場合)に、CU#A2内において復号済みでない隣接画素B1~B4から予測画像が生成される合成領域Xを決定するように構成されていてもよい。
【0052】
イントラ予測部33は、合成領域決定部32によって決定された合成領域X及びエントロピー復号部31によって出力されたイントラ予測モードを用いて、予測画像を生成するように構成されていてもよい。
【0053】
具体的には、イントラ予測部33は、イントラ予測部13と同様に、合成領域決定部12によって決定された合成領域Xに含まれるか否かに基づいて、各領域の予測画像の生成方法を変更するように構成されている。
【0054】
例えば、イントラ予測部33は、図3(a)に示すように、CU#A2において、合成領域Xに含まれていない領域(すなわち、参照画素W1~W3が復号済みである領域)Yでは、エントロピー復号部31によって出力されたイントラ予測モードを用いて、復号済み参照画素W1~W3に基づいて予測画像を生成するように構成されている。
【0055】
一方、イントラ予測部33は、図3(b)に示すように、CU#A2において、合成領域Xに含まれている領域(すなわち、参照画素B2~B4が復号済みでない領域)では、上述の予め規定した予測方法を用いて予測画像を生成するように構成されている。
【0056】
逆量子化・逆変換部34は、エントロピー復号部31によって出力された量子化された変換係数に対して逆量子化処理及び逆変換処理(例えば、逆直交変換処理)を施すことによって、残差信号を生成するように構成されている。
【0057】
局部復号画像生成部35は、イントラ予測部33によって生成された予測画像と逆量子化・逆変換部34によって生成された残差信号とを加えることで局部復号画像を生成するように構成されている。
【0058】
メモリ部36は、局部復号画像生成部35によって生成された局部復号画像を、イントラ予測及びインター予測のための参照画像として利用可能に保持するように構成されている。
【0059】
図5に、本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3によって予測画像を生成する動作の一例について説明するためのフローチャートについて示す。
【0060】
第1に、図5を参照して、本実施形態に係る符号化装置1によって予測画像を生成する動作の一例について説明する。
【0061】
図5に示すように、ステップS101において、符号化装置1は、CUに適用する最適なイントラ予測モードを決定する。
【0062】
ステップS102において、符号化装置1は、ステップS101において決定されたイントラ予測モードに基づいて、CU内において復号済みでない隣接画素から予測画像が生成される合成領域Xを決定する。
【0063】
ステップS103において、符号化装置1は、CU内において、予測画像を生成する領域が合成領域に含まれているか否かについて判定する。「No」の場合、本動作は、ステップS104に進み、「Yes」の場合、本動作は、ステップS105に進む。
【0064】
ステップS104において、符号化装置1は、ステップS101において決定されたイントラ予測モードを用いて、復号済み参照画素に基づいて予測画像を生成する。
【0065】
ステップS105において、符号化装置1は、上述の予め規定した予測方法を用いて予測画像を生成する。
【0066】
第2に、図5を参照して、本実施形態に係る復号装置3によって予測画像を生成する動作の一例について説明する。
【0067】
図5に示すように、ステップS101において、復号装置3は、エントロピー復号処理によって得られた情報に基づいてイントラ予測モードを決定する。
【0068】
ステップS102において、復号装置3は、ステップS101において決定されたイントラ予測モードに基づいて、CU内において復号済みでない隣接画素から予測画像が生成される合成領域Xを決定する。
【0069】
ステップS103において、復号装置3は、CU内において、予測画像を生成する領域が合成領域に含まれているか否かについて判定する。「No」の場合、本動作は、ステップS104に進み、「Yes」の場合、本動作は、ステップS105に進む。
【0070】
ステップS104において、復号装置3は、ステップS101において決定されたイントラ予測モードを用いて、復号済み参照画素に基づいて予測画像を生成する。
【0071】
ステップS105において、復号装置3は、上述の予め規定した予測方法を用いて予測画像を生成する。
【0072】
本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3によれば、イントラ予測モードの方向(予測方向)の参照先に未復号画素が含まれている場合、隣接する復号済み参照画素をコピーすることで補間した参照画素を用いて生成した予測画像と予め規定した予測方法を用いて生成した予測画像とを合成することにより新たな予測画像を生成することで、予測精度低下を抑制することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
以下、図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3について、上述の第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3との相違点に着目して説明する。
【0074】
本実施形態に係る符号化装置1では、イントラ予測部13は、合成領域Xに含まれる領域と合成領域Xに含まれない領域Yとの間の境界領域において、所定条件が満たされる場合に、かかる境界領域の予測画像に対して平滑フィルタを適用するように構成されている。
【0075】
同様に、本実施形態に係る復号装置3では、イントラ予測部33は、合成領域Xに含まれる領域と合成領域Xに含まれない領域Yとの間の境界領域において、所定条件が満たされる場合に、かかる境界領域の予測画像に対して平滑フィルタを適用するように構成されている。
【0076】
例えば、図6の例では、かかる境界領域には、合成領域Xに含まれる領域内の画素X1、X2、X3、X4及び合成領域Xに含まれない領域Y内の画素Y1、Y2、Y3が位置する領域が該当する。
【0077】
また、所定条件としては、かかる境界領域における不連続性が所定閾値よりも高いことが挙げられる。ここで、不連続性の評価としては、例えば、水平方向の差分や垂直方向の差分や斜め方向の差分等の線形結合で表わす方法が挙げられる。
【0078】
すなわち、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、かかる境界領域における不連続性の評価の値が所定閾値よりも高い場合には、かかる境界領域の予測画像に対して平滑フィルタを適用するように構成されている。
【0079】
例えば、図6の例では、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、かかる境界領域における不連続性の評価の値が所定閾値よりも高い場合には、合成領域Xに含まれる領域内の画素X1、X2、X3、X4及び合成領域Xに含まれない領域Y内の画素Y1、Y2、Y3が位置する領域の予測画像に対して平滑フィルタを適用するように構成されている。
【0080】
なお、図6の例では、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、合成領域Xに含まれる領域内の画素X5、X6、X7が位置する領域の予測画像に対しても平滑フィルタを適用するように構成されている。
【0081】
ここで、符号化装置1と復号装置3との間で、上述の所定閾値を共有することで、符号化装置1から復号装置3に対して新たなフラグを伝送する必要がなくなる。
【0082】
本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3によれば、合成領域Xに含まれるか否かに基づいて各領域の予測画像の生成方法を変更することに起因する境界領域の不連続性を低減することができ、符号化性能を向上させることができる。
【0083】
(第3の実施形態)
以下、図6を参照して、本発明の第3の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3について、上述の第1及び第2の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3との相違点に着目して説明する。
【0084】
本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3において、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、合成領域Xに含まれる領域において、従来のHEVCにおける予測方法を用いて生成された予測画像(コピーによって埋められた未復号参照画素に基づいて生成された予測画像)及び合成領域Xにおいて生成された予測画像(上述の予め規定した予測方法を用いて生成された予測画像)の加重平均によって予測画像を生成するように構成されている。
【0085】
なお、本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3において、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、上述の所定条件が満たされる場合にのみ、合成領域Xに含まれる領域において、従来のHEVCにおける予測方法を用いて生成された予測画像(コピーによって埋められた未復号参照画素に基づいて生成された予測画像)及び合成領域Xにおいて生成された予測画像(上述の予め規定した予測方法を用いて生成された予測画像)の加重平均によって予測画像を生成するように構成されていてもよい。
【0086】
本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3では、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、かかる加重平均を算出する際に用いる重み係数を算出するように構成されていてもよい。
【0087】
イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、重み係数として予め定めた規定の値を用いるように構成されていてもよいし、予測画像を生成する際の復号済み参照画素の信用度を用いて重み係数を算出するように構成されていてもよい。
【0088】
なお、図3(b)の例では、復号済み参照画素W1~W4の信用度は高く、コピーによって生成された参照画素B1~B4の信用度は低い。また、参照画素B1の信用度と参照画素B4の信用度を比べると、コピー元に近い参照画素B4の信用度の方が高い。
【0089】
また、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、合成領域Xに含まれる領域と合成領域Xに含まれない領域Yとの間の境界領域からの距離に応じて、かかる重み係数を算出するように構成されていてもよい。
【0090】
例えば、イントラ予測部13及びイントラ予測部33は、かかる境界領域付近では、従来のHEVCにおける予測方法を用いて生成された予測画像(コピーによって埋められた未復号参照画素に基づいて生成された予測画像)の重み係数が強くなるように算出し、かかる境界領域から離れた領域では、合成領域Xにおいて生成された予測画像(上述の予め規定した予測方法を用いて生成された予測画像)の重み係数が強くなるように算出してもよい。
【0091】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明について、上述した実施形態によって説明したが、かかる実施形態における開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。かかる開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0092】
また、上述の実施形態では特に触れていないが、上述の符号化装置1及び復号装置3によって行われる各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、かかるプログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、かかるプログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、かかるプログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0093】
或いは、上述の符号化装置1及び復号装置3内の少なくとも一部の機能を実現するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…符号化装置
11…イントラ予測モード決定部
12…合成領域決定部
13…イントラ予測部
14…残差信号生成部
15…直交変換・量子化部
16…逆量子化部・逆直交変換部
17…局部復号画像生成部
18…メモリ部
19…エントロピー符号化部
3…復号装置
31…エントロピー復号部
32…合成領域決定部
33…イントラ予測部
34…逆量子化・逆変換部
35…局部復号画像生成部
36…メモリ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8