(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ワイヤ配置装置及びワイヤ配置方法
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20241204BHJP
B23D 15/00 20060101ALN20241204BHJP
【FI】
G01R33/02 D
B23D15/00 A
(21)【出願番号】P 2021040162
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 淳也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】立松 峻一
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206683(JP,A)
【文献】特開2019-035743(JP,A)
【文献】実開平07-019916(JP,U)
【文献】特開2001-007487(JP,A)
【文献】特許第6438618(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 33/00-33/26、
H01L 29/82、
H10N 50/00-59/00、
B23D 15/00-19/08、
23/00-31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ワイヤを基板上に直線状に配置するワイヤ配置装置であって、
上記基板を載置して固定する基板固定台と、
上記磁性ワイヤを供給するワイヤ供給部と、
上記ワイヤ供給部から供給される上記磁性ワイヤの前端を保持して、該磁性ワイヤを引き出し、上記基板上の所定の位置に配置するワイヤ引出部と、
上記基板よりも上記ワイヤ供給部側かつ上記基板の上面よりも下側において上記磁性ワイヤを挿通保持するワイヤガイドと、
上記ワイヤガイドよりも上記ワイヤ供給部側において上記磁性ワイヤを切断するワイヤカッターと、を有し、
上記磁性ワイヤの引出方向において、上記ワイヤ供給部と、上記ワイヤカッターと、上記ワイヤガイドと、上記基板とは、この順に配列され、
上記ワイヤカッターは、上記ワイヤ引出部が上記磁性ワイヤを上記ワイヤ供給部から上記ワイヤガイドよりも上記基板側に引き出した状態にて、上記磁性ワイヤ
を、上記ワイヤ配置装置における上記ワイヤ供給部と上記ワイヤガイドとの間の位置において、切断することができるよう構成されており、
上記ワイヤガイドは、上記ワイヤカッターにて切断された上記磁性ワイヤの一部を、上記引出方向及び鉛直方向の双方に直交する幅方向において位置決めガイドするガイド部を有し、
上記ワイヤ引出部は、切断された上記磁性ワイヤが上記基板上と上記ワイヤガイドとに懸架された状態を経て上記基板上を這うように、上記磁性ワイヤを前方へ引っ張り、切断された上記磁性ワイヤが上記基板上の所定位置に敷設された状態にて、上記磁性ワイヤの保持を解除することができるよう構成されている、ワイヤ配置装置。
【請求項2】
上記ワイヤガイドの上記ガイド部は、上記引出方向から見て鉛直方向に立設したガイド基準面と、上記引出方向から見て上記ガイド基準面に対して鋭角に配されると共に上記磁性ワイヤを斜め下方からガイドする傾斜下面と、上記引出方向から見て上記ガイド基準面に対して鋭角に配されると共に上記磁性ワイヤを斜め上方からガイドする傾斜上面と、を有する、請求項1に記載のワイヤ配置装置。
【請求項3】
上記傾斜上面は、上記傾斜下面に対に対する鉛直方向の位置を調整可能に構成されている、請求項2に記載のワイヤ配置装置。
【請求項4】
上記ガイド部は、上記基板側の端縁に、斜め下方を向く面であって、上記幅方向から見て上記基板側へ向かうほど上方へ向かう傾斜端面を有し、該傾斜端面の上端は、上記基板の上面以上の高さにある、請求項2又は3に記載のワイヤ配置装置。
【請求項5】
上記磁性ワイヤは、マグネトインピーダンスセンサ素子の感磁体を構成するものである、請求項1~4のいずれか一項に記載のワイヤ配置装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のワイヤ配置装置を用いて、上記基板上に上記磁性ワイヤを直線状に配置する方法であって、
上記ワイヤ供給部から供給される上記磁性ワイヤの前端を、上記ワイヤ引出部にて保持して上記磁性ワイヤを所定量引き出し、
上記ワイヤ引出部よりも上記ワイヤ供給部側における上記磁性ワイヤの下方に上記ガイド部が配されるように、上記ワイヤガイドを配設し、
上記ワイヤカッターによって、上記磁性ワイヤ
を、上記ワイヤ配置装置における上記ワイヤ供給部と上記ワイヤガイドとの間の位置において、切断し、
切断された上記磁性ワイヤの一部を、上記ワイヤガイドにて上記幅方向に位置決めガイドし、
切断された上記磁性ワイヤが上記基板上と上記ワイヤガイドとに懸架された状態を経て上記基板上を這うように、上記ワイヤ引出部によって上記磁性ワイヤを前方へ引っ張り、
切断された上記磁性ワイヤが上記基板上の所定位置に敷設された状態にて上記ワイヤ引出部による上記磁性ワイヤの保持を解除することで、上記磁性ワイヤを上記基板上の所定位置に配置する、ワイヤ配置方法。
【請求項7】
上記基板上に、複数本の上記磁性ワイヤを平行に整列させる、請求項6に記載のワイヤ配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ配置装置及びワイヤ配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マグネトインピーダンスセンサ素子(以下において適宜「MIセンサ素子」ともいう。)を製造するにあたり、基板上に、感磁体としての磁性ワイヤを配置することがある。このように、基板上に磁性ワイヤを配置するために、従来、ワイヤ配置装置が開発され、例えば特許文献1に、磁性ワイヤ整列装置及び磁性ワイヤ整列方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の装置及び方法は、基板における所定の位置からの磁性ワイヤのずれを防ぎ難いという課題がある。
すなわち、特許文献1に記載の磁性ワイヤ整列方法においては、磁性ワイヤを基板上の所定の位置に引き出した後に、磁性ワイヤを切断する。切断時においては、カッターからの外力が磁性ワイヤに作用したり、磁性ワイヤのテンションが急激に変動したりすることがある。これにより、切断された磁性ワイヤが多少なりとも暴れるおそれがある。それゆえ、磁性ワイヤを基板における所定の位置に精度よく引き出しても、その後のワイヤの切断時に、磁性ワイヤが基板における所定の位置からずれてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、基板における所定の位置からの磁性ワイヤのずれを防ぐことができるワイヤ配置装置及びワイヤ配置方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、磁性ワイヤを基板上に直線状に配置するワイヤ配置装置であって、
上記基板を載置して固定する基板固定台と、
上記磁性ワイヤを供給するワイヤ供給部と、
上記ワイヤ供給部から供給される上記磁性ワイヤの前端を保持して、該磁性ワイヤを引き出し、上記基板上の所定の位置に配置するワイヤ引出部と、
上記基板よりも上記ワイヤ供給部側かつ上記基板の上面よりも下側において上記磁性ワイヤを挿通保持するワイヤガイドと、
上記ワイヤガイドよりも上記ワイヤ供給部側において上記磁性ワイヤを切断するワイヤカッターと、を有し、
上記磁性ワイヤの引出方向において、上記ワイヤ供給部と、上記ワイヤカッターと、上記ワイヤガイドと、上記基板とは、この順に配列され、
上記ワイヤカッターは、上記ワイヤ引出部が上記磁性ワイヤを上記ワイヤ供給部から上記ワイヤガイドよりも上記基板側に引き出した状態にて、上記磁性ワイヤを、上記ワイヤ配置装置における上記ワイヤ供給部と上記ワイヤガイドとの間の位置において、切断することができるよう構成されており、
上記ワイヤガイドは、上記ワイヤカッターにて切断された上記磁性ワイヤの一部を、上記引出方向及び鉛直方向の双方に直交する幅方向において位置決めガイドするガイド部を有し、
上記ワイヤ引出部は、切断された上記磁性ワイヤが上記基板上と上記ワイヤガイドとに懸架された状態を経て上記基板上を這うように、上記磁性ワイヤを前方へ引っ張り、切断された上記磁性ワイヤが上記基板上の所定位置に敷設された状態にて、上記磁性ワイヤの保持を解除することができるよう構成されている、ワイヤ配置装置にある。
【0007】
本発明の他の態様は、上記ワイヤ配置装置を用いて、上記基板上に上記磁性ワイヤを直線状に配置する方法であって、
上記ワイヤ供給部から供給される上記磁性ワイヤの前端を、上記ワイヤ引出部にて保持して上記磁性ワイヤを所定量引き出し、
上記ワイヤ引出部よりも上記ワイヤ供給部側における上記磁性ワイヤの下方に上記ガイド部が配されるように、上記ワイヤガイドを配設し、
上記ワイヤカッターによって、上記磁性ワイヤを、上記ワイヤ配置装置における上記ワイヤ供給部と上記ワイヤガイドとの間の位置において、切断し、
切断された上記磁性ワイヤの一部を、上記ワイヤガイドにて上記幅方向に位置決めガイドし、
切断された上記磁性ワイヤが上記基板上と上記ワイヤガイドとに懸架された状態を経て上記基板上を這うように、上記ワイヤ引出部によって上記磁性ワイヤを前方へ引っ張り、
切断された上記磁性ワイヤが上記基板上の所定位置に敷設された状態にて上記ワイヤ引出部による上記磁性ワイヤの保持を解除することで、上記磁性ワイヤを上記基板上の所定位置に配置する、ワイヤ配置方法にある。
【発明の効果】
【0008】
上記ワイヤ配置装置は、切断された上記磁性ワイヤを、上記ワイヤ引出部によって基板の所定位置まで引き出すことができるよう構成されている。それゆえ、切断時に外力が磁性ワイヤに作用したり、磁性ワイヤのテンションが急激に変動したりしても、それが磁性ワイヤの位置ずれに影響することはない。その結果、基板における所定の位置からの磁性ワイヤのずれを防ぐことができる。
【0009】
上記ワイヤ配置方法においては、切断された上記磁性ワイヤを、上記ワイヤ引出部によって基板の所定位置まで引き出す。それゆえ、切断時における磁性ワイヤへの外力の作用や磁性ワイヤのテンション変動等があったとしても、それが基板に対する磁性ワイヤの位置ずれに影響することはない。その結果、基板における所定の位置からの磁性ワイヤのずれを防ぐことができる。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、基板における所定の位置からの磁性ワイヤのずれを防ぐことができるワイヤ配置装置及びワイヤ配置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における、磁性ワイヤを切断する直前の、ワイヤ配置装置の平面図。
【
図2】実施形態1における、磁性ワイヤを引き出した状態の、ワイヤ配置装置の平面図。
【
図4】実施形態1における、ワイヤガイドの斜視図。
【
図5】実施形態1における、ワイヤガイドの正面図。
【
図6】実施形態1における、ワイヤガイドの側面図。
【
図7】
図6の矢印VIIから見たガイド部の正面拡大図。
【
図8】実施形態1における、側方ブロックを除いた状態で見えるガイド部の側面図。
【
図9】実施形態1における、MIセンサ素子の平面図。
【
図10】実施形態1における、基板上に磁性ワイヤを配置した状態の部分拡大平面図。
【
図11】実施形態1における、磁性ワイヤをガイドするガイドポストの平面図。
【
図13】実施形態1における、ワイヤ配置方法の説明図であって、ワイヤ引出部が磁性ワイヤをチャックする前の状態を示す説明図。
【
図14】実施形態1における、ワイヤ引出部が磁性ワイヤをチャックした状態を示す説明図。
【
図15】実施形態1における、ワイヤ引出部が磁性ワイヤを引き出すと共に、ワイヤガイドを配設した状態を示す説明図。
【
図16】実施形態1における、ワイヤカッターが磁性ワイヤを切断する直前の状態を示す説明図。
【
図17】実施形態1における、磁性ワイヤが切断された状態を示す説明図。
【
図18】実施形態1における、上方ブロックを組み付けた状態を示す説明図。
【
図19】実施形態1における、磁性ワイヤを基板上に這わせ始める状態を示す説明図。
【
図20】実施形態1における、磁性ワイヤを基板上に這わせている状態を示す説明図。
【
図21】実施形態1における、磁性ワイヤの後端がワイヤガイドの前端を通過する直前の状態を示す説明図。
【
図22】実施形態1における、磁性ワイヤを基板上の所定位置まで引き出した状態を示す説明図。
【
図23】実施形態1における、磁性ワイヤの後端がワイヤガイドの前端を通過する直前の状態を示す拡大説明図。
【
図25】実施形態2における、
図24の矢印XXVから見た基板の正面図。
【
図29】実施形態3における、後方から見た基板の正面図。
【
図31】実施形態3における、前方から見た基板の正面図。
【
図32】実施形態4における、ワイヤ配置方法の平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記ワイヤ配置装置は、例えば、マグネトインピーダンスセンサ素子の製造過程において用いる装置とすることができる。すなわち、上記磁性ワイヤは、マグネトインピーダンスセンサ素子の感磁体を構成するものとすることができる。MIセンサ素子における感磁体を構成する磁性ワイヤは、例えば、直径1~150μm程度の細いワイヤである。なお、磁性ワイヤの直径は、好ましくは3~80μm程度、さらに好ましくは5~30μm程度とすることができる。また、MIセンサ素子は、極めて微細な素子であり、その中の所定の位置に磁性ワイヤを配置するには、高精度の配置装置が求められる。かかる観点において、本開示の上記ワイヤ配置装置は特に有用となる。
【0013】
また、上記ワイヤガイドの上記ガイド部は、上記引出方向から見て鉛直方向に立設したガイド基準面と、上記引出方向から見て上記ガイド基準面に対して鋭角に配されると共に上記磁性ワイヤを斜め下方からガイドする傾斜下面と、上記引出方向から見て上記ガイド基準面に対して鋭角に配されると共に上記磁性ワイヤを斜め上方からガイドする傾斜上面と、を有するものとすることができる。この場合には、ワイヤガイドによる磁性ワイヤの位置決め精度を、容易に向上させることができる。
【0014】
また、上記傾斜上面は、上記傾斜下面に対に対する鉛直方向の位置を調整可能に構成されているものとすることができる。この場合には、上記ガイド部を、上記ガイド基準面に沿った小さい領域に形成することができる。その結果、ワイヤガイドによる磁性ワイヤの位置決め精度を、より向上させることができる。
【0015】
また、上記ガイド部は、上記基板側の端縁に、斜め下方を向く面であって、上記幅方向から見て上記基板側へ向かうほど上方へ向かう傾斜端面を有し、該傾斜端面の上端は、上記基板の上面以上の高さにあるものとすることができる。この場合には、切断された上記磁性ワイヤの後端がガイド部から抜ける際に、磁性ワイヤの弾性力によって磁性ワイヤの後端が跳ね上がることを抑制することができる。その結果、基板への磁性ワイヤの配置精度を、確実に向上させることができる。
【0016】
また、上記ワイヤ配置方法において、上記基板上に、複数本の上記磁性ワイヤを平行に整列させるものとすることができる。この場合には、隣接配置される磁性ワイヤに対するワイヤ引出部の干渉が生じないような留意が必要となる。本開示のワイヤ配置方法においては、上述のように、先に切断された磁性ワイヤが、基板上を這うように、基板上に引き出される。そのため、隣接する磁性ワイヤに対するワイヤ引出部の干渉を防ぎやすい。
【0017】
(実施形態1)
ワイヤ配置装置及びこれを用いたワイヤ配置方法にかかる実施形態につき、
図1~
図23を参照して説明する。
ワイヤ配置装置1は、磁性ワイヤ7を基板8上に直線状に配置する装置である。
ワイヤ配置装置1は、
図1~
図3に示すごとく、基板固定台3と、ワイヤ供給部2と、ワイヤ引出部4と、ワイヤガイド5と、ワイヤカッター6と、を有する。
【0018】
基板固定台3は、基板8を載置して固定する。ワイヤ供給部2は、磁性ワイヤ7を供給する。ワイヤ引出部4は、ワイヤ供給部2から供給される磁性ワイヤ7の前端を保持して、磁性ワイヤ7を引き出し、基板8上の所定の位置に配置する。ワイヤガイド5は、基板8よりもワイヤ供給部2側かつ基板8の上面8aよりも下側において磁性ワイヤ7を挿通保持する。ワイヤカッター6は、ワイヤガイド5よりもワイヤ供給部2側において磁性ワイヤ7を切断する。
【0019】
ワイヤカッター6は、ワイヤ引出部4が磁性ワイヤ7をワイヤガイド5よりも基板8側に引き出した状態(
図1、
図16に示す状態)にて磁性ワイヤ7を切断することができるよう構成されている。
ワイヤガイド5は、ワイヤカッター6にて切断された磁性ワイヤ7の一部を、引出方向及び鉛直方向の双方に直交する幅方向において位置決めガイドするガイド部50を有する。
【0020】
ワイヤ引出部4は、切断された磁性ワイヤ7が基板8上とワイヤガイド5とに懸架された状態(
図17~
図20に示す状態)を経て基板8上を這うように、磁性ワイヤ7を引き出す。そして、切断された磁性ワイヤ7が基板8上の所定位置まで引き出された状態(
図22に示す状態)にて、磁性ワイヤ7の保持を解除することができるよう構成されている。
【0021】
本形態において、
図1~
図3に示すごとく、ワイヤ供給部2は、磁性ワイヤ7が巻回されたボビン21と、ボビン21から引き出された磁性ワイヤ7をガイドする第1のガイドローラ221及び第2のガイドローラ222とを有する。ボビン21、第1のガイドローラ221及び第2のガイドローラ222は、互いに平行な回転軸の周りに回転可能に、支持壁24に取り付けられている。
【0022】
図3に示すごとく、第1のガイドローラ221は、ボビン21よりも基板固定台3に近い側であって、かつボビン21よりも下方に配置されている。第2のガイドローラ222は、第1のガイドローラ221よりも基板固定台3に近い側であって、かつ第1のガイドローラ221よりも下方に配置されている。なお、本形態において、ワイヤ供給部2と基板固定台3とは、共通基盤11の上に固定されている。すなわち、支持壁24は、共通基盤11の上に固定されている。
【0023】
磁性ワイヤ7は、ボビン21から、第1のガイドローラ221の下側と、第2のガイドローラ222の上側に懸架されつつ、基板8に向かって引き出される。
【0024】
ワイヤ供給部2は、第2のガイドローラ222に対して外周側から対向配置されたブレーキ23を有する。ブレーキ23は、磁性ワイヤ7における第2のガイドローラ222に沿った部分を押さえることができるよう構成されている。すなわち、ブレーキ23と第2のガイドローラ222との間に、磁性ワイヤ7を挟持し、磁性ワイヤ7の移動を阻止することができる。ブレーキ23は、第2のガイドローラ222に対して進退可能に設けられており、必要なタイミングで、磁性ワイヤ7をロックしたり、ロックを解除したりする。ブレーキ23における磁性ワイヤ7に当接する部位は、例えば、ゴム等からなる。
【0025】
基板固定台3は、磁力発生部31を備えている。磁力発生部31は、磁性ワイヤ7を基板8上に吸引する。磁力発生部31は、例えば、永久磁石を基板固定台3に埋設してなる。これにより、基板固定台3に載置された基板8の上に引き出された磁性ワイヤ7を、基板8側に吸引することができる。なお、磁力発生部31に替えて、例えば、エア圧や静電気を利用する等、他の手段によって、磁性ワイヤ7を基板8側に引き付けておくこともできる。
【0026】
また、基板固定台3は、共通基盤11の上に固定された基礎台12の上に固定されている。
【0027】
ワイヤ引出部4は、磁性ワイヤ7を把持するチャック部41と、リニアガイド40に対してスライド可能に保持されるスライド保持部42とを有する。リニアガイド40は、基礎台12に固定されており、基板固定台3に対して間接的に固定されている。リニアガイド40は、略水平方向に配設されている。また、リニアガイド40の長手方向が、磁性ワイヤ7の引出方向と略一致する。
【0028】
磁性ワイヤ7の引出方向を、適宜、X方向というものとする。また、X方向において、ワイヤ供給部2から基板8に向かう側を前方、その反対側を後方というものとする。また、鉛直方向を、適宜Z方向ともいう。また、X方向とZ方向との双方に直交する方向を、適宜Y方向というものとする。
【0029】
このように配設されたリニアガイド40に沿って、ワイヤ引出部4がX方向にスライド可能となっている。また、ワイヤ引出部4は、基板固定台3の上方を通過するように、スライド移動するよう構成されている。
【0030】
ワイヤガイド5は、基礎台12に着脱可能に取り付けられる。すなわち、
図4~
図6に示すワイヤガイド5を、基礎台12もしくはこれに固定された部材に固定する。ワイヤガイド5は、基板固定台3との相対位置関係が変わらないように固定できれば、その固定先は特に限定されるものではない。
【0031】
ワイヤガイド5のガイド部50は、
図7に示すごとく、ガイド基準面503と、傾斜下面501と、傾斜上面502と、を有する。ガイド基準面503は、X方向から見て鉛直方向に立設した面である。傾斜下面501は、X方向から見てガイド基準面503に対して鋭角に配されると共に磁性ワイヤ7を斜め下方からガイドする。傾斜上面502は、
X方向から見てガイド基準面503に対して鋭角に配されると共に磁性ワイヤ7を斜め上方からガイドする。
【0032】
ワイヤガイド5は、
図4~
図6に示すごとく、下方ブロック51と上方ブロック52と側方ブロック53とを組み合わせてなる。下方ブロック51は、基礎台12に固定される。下方ブロック51の上側に、上方ブロック52が組付けられる。また、下方ブロック51及び上方ブロック52のY方向に面する側面に、側方ブロック53が組付けられる。
【0033】
ワイヤガイド5において、下方ブロック51と上方ブロック52と側方ブロック53との間に、ガイド部50が形成される。
図7に示すごとく、ガイド部50における傾斜下面501は、下方ブロック51によって形成され、ガイド部50における傾斜上面502は、上方ブロック52によって形成され、ガイド部50におけるガイド基準面503は、側方ブロック53によって形成される。
【0034】
図6、
図8に示すごとく、下方ブロック51における、側方ブロック53及び上方ブロック52に隣接する角部に、複数の下側凹部511と複数の下側凸部512とがX方向に交互に並んで配設されている。下側凸部512の突出端における側方ブロック53側の角部には、上方へ向かうほど側方ブロック53から遠ざかるテーパ面512aが形成されている。このテーパ面512aが、上記傾斜下面501を構成する。
【0035】
上方ブロック52における、側方ブロック53及び下方ブロック51に隣接する角部に、複数の上側凹部521と複数の上側凸部522とがX方向に交互に並んで配設されている。上側凸部522の突出端における側方ブロック53側の角部には、下方へ向かうほど側方ブロック53から遠ざかるテーパ面522aが形成されている。このテーパ面522aが、上記傾斜上面502を構成する。
【0036】
すなわち、下方ブロック51の下側凹部511に、上方ブロック52の上側凸部522が配置され、上方ブロック52の上側凹部521に、下方ブロック51の下側凸部512が配置されるように、下方ブロック51と上方ブロック52とが組み合わされる。このとき、下側凸部512のテーパ面512aの下端よりも、上側凸部522のテーパ面522aの上端の方が上側に位置するようにする。これにより、
図7に示すごとく、X方向から見たときに三角形状に表れるガイド部50が形成される。
【0037】
傾斜上面502は、傾斜下面501に対に対する鉛直方向(Z方向)の位置を調整可能に構成されている。
【0038】
図4~
図6に示すごとく、側方ブロック53は、下方ブロック51に対して、固定ネジ541にて固定されている。上方ブロック52は、側方ブロック53に対して、着脱容易に固定される。ここで、上方ブロック52は、係合部542が側方ブロック53に係合した状態で、図示を省略するクランプ機構等にて、側方ブロック53に固定される。また、
図5に示すごとく、上方ブロック52には、下方ブロック51に対する位置調整用の調整ネジ543が設けてある。調整ネジ543は、鉛直方向に配置されると共に、上方ブロック52の鍔部523に螺合されている。
【0039】
下方ブロック51と一体化された側方ブロック53に、上方ブロック52を組み付ける際、調整ネジ543の下端を下方ブロック51の一部に当接させた状態にて、上方ブロック52を側方ブロック53に固定する。これにより、鉛直方向における下方ブロック51に対する上方ブロック52の位置決めを行う。そのため、鍔部523から下方への調整ネジ543の突出長さを調整することで、下方ブロック51に対する上方ブロック52の位置の調整を行うことができる。その結果、傾斜下面501に対する傾斜上面502の鉛直方向(Z方向)の位置を調整することができる。
【0040】
図8に示すごとく、ガイド部50は、基板8側の端縁に、傾斜端面55を有する。すなわち、ガイド部50における、X方向の前端部分に、傾斜端面55が設けてある。傾斜端面55は、斜め下方を向く面であって、幅方向(Y方向)から見て基板8側へ向かうほど上方へ向かう面である。つまり、Y方向から見たとき、傾斜端面55は、X方向の前方へ向かうほど、Z方向の上方へ向かうように、傾斜している。
【0041】
そして、傾斜端面55の上端551は、基板8の上面8a以上の高さにある。本形態においては、傾斜端面55の上端551を、基板8の上面8aよりも上側に配置している。ただし、傾斜端面55の上端551を、基板8の上面8aと同等の位置にすることもできる。
【0042】
図1~
図3に示すごとく、ワイヤカッター6は、第2のガイドローラ222とワイヤガイド5との間において、磁性ワイヤ7を切断できる位置に配設されている。ワイヤカッター6は、Y方向に進退可能に配置されている。すなわち、ワイヤカッター6は、共通基盤11に固定されたカッター保持部61に対して、Y方向にスライド可能に保持されている。
【0043】
本形態において、磁性ワイヤ7は、
図9に示すごとく、MIセンサ素子80の感磁体を構成するものである。磁性ワイヤ7は、例えば、直径1~150μm程度の細いワイヤである。なお、磁性ワイヤ7の直径は、好ましくは3~80μm程度、さらに好ましくは5~30μm程度とすることができる。また、磁性ワイヤ7は、アモルファスワイヤでもある。例えば、磁性ワイヤ7として、CoFeSiB系合金からなるものを用いることができる。
図1~
図3に示すごとく、ワイヤ供給部2において、磁性ワイヤ7はボビン21に巻回されている。
【0044】
基板8は、MIセンサ素子80の基板81を構成するものであり、例えば、シリコン等の半導体からなる。基板8は、複数のMIセンサ素子80の基板81を構成するものである。
【0045】
MIセンサ素子80は、
図9に示すごとく、基板81と、磁性ワイヤ7と、検出コイル82と、電極配線83a、83bとを有する。磁性ワイヤ7は基板81の上に配設されている。検出コイル82は、磁性ワイヤ7の周りを螺旋状に周回するように形成されている。電極配線83aは、磁性ワイヤ7の両端にそれぞれ電気的に接続されている。電極配線83bは、検出コイル82の両端にそれぞれ電気的に接続されている。
【0046】
図10に示すごとく、基板8には、予め、電極配線83a、83bと、検出コイル82の一部である下側コイル配線821とが、MIセンサ素子80の複数個分、形成されている。基板8には、MIセンサ素子80が、X方向にも、Y方向にも、それぞれ複数個分並んで形成される。
【0047】
そして、電極配線83a、83bと、下側コイル配線821とが、MIセンサ素子80の複数個分、形成された状態の基板8の上に、ワイヤ配置装置1によって、複数の磁性ワイヤ7を並列配置することとなる。
【0048】
また、
図10~
図12に示すごとく、基板8の上面8aには、磁性ワイヤ7をガイドするガイドポスト84が、形成されている。一対のガイドポスト84の間に、磁性ワイヤ7を通過させるように配置することで、基板8に対する磁性ワイヤ7の位置決めを行うことができる。基板8には、複数対のガイドポスト84が形成されている。ガイドポスト84は、基板8の上面8aから突出し、例えば、磁性ワイヤ7の直径と同程度、突出している。また、一対のガイドポスト84の間の間隙は、磁性ワイヤ7の直径と略同程度、あるいは磁性ワイヤ7の直径よりも僅かに大きく形成されている。
【0049】
なお、複数対のガイドポスト84の代わりに、基板8の上面8aに、磁性ワイヤ7を配置すべき軸線に沿って溝を形成しておくこともできる(図示略)。この溝に、磁性ワイヤ7を配置することで、基板8に対する磁性ワイヤ7の位置決めを行うこともできる。
【0050】
ワイヤ配置装置1を用いて、基板8上に磁性ワイヤ7を直線状に配置する方法につき、
図13~
図22を参照して説明する。
【0051】
図13、
図14、
図15に示すごとく、ワイヤ供給部2から供給される磁性ワイヤ7の前端を、ワイヤ引出部4にて保持して磁性ワイヤ7を所定量引き出す。ここで、「ワイヤ供給部2から供給される」とは、ワイヤ供給部2自身が磁性ワイヤ7を送り出すのではなく、ワイヤ引出部4が磁性ワイヤ7を引き出すことによって、結果として磁性ワイヤ7が供給されることを意味する。
図15に示すごとく、ワイヤ引出部4よりもワイヤ供給部2側における磁性ワイヤ7の下方にガイド部50が配されるように、ワイヤガイド5を配設する。
【0052】
次いで、
図16、
図17に示すごとく、ワイヤカッター6によって、磁性ワイヤ7をワイヤガイド5よりもワイヤ供給部2側にて切断する。
図18に示すごとく、切断された磁性ワイヤ7の一部を、ワイヤガイド5にて幅方向Yに位置決めガイドする。
【0053】
図18~
図22に示すごとく、切断された磁性ワイヤ7が基板8上とワイヤガイド5とに懸架された状態を経て基板8上を這うように、ワイヤ引出部4によって磁性ワイヤ7を引き出す。
切断された磁性ワイヤ7が基板8上の所定位置まで引き出された状態(
図22、
図2参照)にてワイヤ引出部4による磁性ワイヤ7の保持を解除する。これにより、磁性ワイヤ7を基板8上の所定位置に配置する。
【0054】
以下において、本形態のワイヤ配置方法につき、詳説する。
図13に示すように、まず、ワイヤ供給部2のボビン21から、磁性ワイヤ7を、第1のガイドローラ221及び第2のガイドローラ222に懸架させ、磁性ワイヤ7の前端を、第2のガイドローラ222から突出させる。この状態において、ブレーキ23によって、磁性ワイヤ7の一部を第2のガイドローラ222に押し付けて固定する。
【0055】
ワイヤ引出部4は、
図14に示すごとく、リニアガイド40に沿ってワイヤ供給部2側に後退し、チャック部41によって磁性ワイヤ7の前端をチャックする。その後、ブレーキ23を、磁性ワイヤ7から解除する。
磁性ワイヤ7をチャックしたワイヤ引出部4は、
図15に示すごとく、リニアガイド40に沿って、X方向に前進する。これにより、ワイヤ供給部2から前方へ磁性ワイヤ7が引き出される。
【0056】
そして、引き出された磁性ワイヤ7の下方にガイド部50が配置されるように、ワイヤガイド5を取り付ける。ワイヤガイド5は、上述したように、基礎台12に固定される。また、このとき、ワイヤガイド5は、下方ブロック51と側方ブロック53とが互いに組付けられた状態にあるが、上方ブロック52は組付けられていない。なお、
図15~
図22においては、便宜上、ワイヤガイド5の側方ブロック53を透過させて、下方ブロック51及び上方ブロック52の輪郭を描いている。
【0057】
次いで、
図16に示すごとく、ワイヤカッター6を、第2のガイドローラ222の前側に隣接する位置に配置し、磁性ワイヤ7を切断する。このとき、ブレーキ23によって磁性ワイヤ7を固定しておく。
【0058】
図17に示すごとく、切断された磁性ワイヤ7は、その切断部よりも前側の部分が、ワイヤガイド5の下方ブロック51の上に落下し、ガイド部50に横たわる。そして、磁性ワイヤ7は、重力によって、下方ブロック51の傾斜下面501に沿って、下方へ移動しつつ側方ブロック53のガイド基準面503側へ移動する(
図7参照)。これにより、ガイド部50における磁性ワイヤ7は、ガイド基準面503と傾斜下面501との間の角部に配置される。また、磁性ワイヤ7における、ワイヤガイド5の後方にはみ出た部分は、重力によって下方へ垂れる。
一方、磁性ワイヤ7における、切断部の後側の部分の前端は、第2のガイドローラ222から少し飛び出した状態、すなわち、
図13と同様の初期位置に配された状態となる。
【0059】
次いで、
図18に示すごとく、ワイヤガイド5の上方ブロック52を、下方ブロック51及び側方ブロック53に取り付ける(
図4~
図6参照)。このとき、調整ネジ543(
図5参照)によって、下方ブロック51に対する上方ブロック52のZ方向の位置を微調整する。これにより、
図7に示す、下方ブロック51と上方ブロック52と側方ブロック53との間に形成されるガイド部50の大きさを調整する。また、ガイド部50におけるX方向の全体にわたり、磁性ワイヤ7が配置されるようにする。
【0060】
この状態から、
図19、
図20、
図21に示すごとく、ワイヤ引出部4を、リニアガイド40に沿って、X方向の前方へ移動させる。これにより、磁性ワイヤ7は、ガイド部50を通りながら、基板8の上面8aに移動する。この間、磁性ワイヤ7は、基板8の上面8aとガイド部50とに懸架された状態(
図19、
図20、
図21に示す状態)にある。磁性ワイヤ7におけるガイド部50に配された部分は、
図7に示すガイド基準面503に接触した状態で位置決めされている。
【0061】
また、基板固定台3は、磁力発生部31を有するため、基板8上に引き出された磁性ワイヤ7は、下方へ吸着される。それゆえ、磁性ワイヤ7は、
図20~
図22に示すごとく、基板8の上面8aに密着しながら、基板8上を這うようにして、基板8上の所定の位置に敷設される。このとき、磁性ワイヤ7は、基板8の上に予め設けてあるガイドポスト84(
図11、
図12参照)の間を通るように、X方向に移動しつつ配設される。
【0062】
図23に示すごとく、磁性ワイヤ7の後端は、ワイヤガイド5の前端を通過する直前、傾斜端面55に接触する。このとき、磁性ワイヤ7の後端は、その弾性力によって、傾斜端面55に押し付けられた状態となる。しかし、傾斜端面55の上端551が、若干、基板8の上面8aよりも上側に位置しているため、磁性ワイヤ7の後端は、特に跳ね上がることなく、傾斜端面55を通過する。
【0063】
そして、
図22に示すごとく、磁性ワイヤ7の前端が所定位置まで引き出された状態において、ワイヤ引出部4は、磁性ワイヤ7のチャックを解除する。これにより、磁性ワイヤ7の前端も落下し、磁性ワイヤ7の全体が、基板8の上面8aの所定位置に配置される。
【0064】
この一連の動作を、基板8の位置をY方向に少しずつずらしながら、複数回繰り返す。すなわち、基板固定台3は、基板8をY方向に移動させる移動機構を備えている。そして、1本の磁性ワイヤ7を基板8に配置するごとに、基板8の位置を、Y方向に所定量移動させて、上述の磁性ワイヤ7の配置動作を繰り返す。
【0065】
このようにして、基板8上に、複数本の磁性ワイヤ7を平行に整列させる(
図10参照)。
【0066】
複数本の磁性ワイヤ7が整列された基板8に対して、さらに、検出コイル82の上側配線等を形成した後、基板8を切断して、個別のMIセンサ素子80とする。このとき、各磁性ワイヤ7もX方向に切断されて、個別のMIセンサ素子80の感磁体となる。以上により、
図9に示すごとく、複数のMIセンサ素子80を製造する。
【0067】
次に、本形態の作用効果につき、説明する。
上記ワイヤ配置装置1は、切断された磁性ワイヤ7を、ワイヤ引出部4によって基板8の所定位置まで引き出すことができるよう構成されている。それゆえ、切断時に外力が磁性ワイヤ7に作用したり、磁性ワイヤ7のテンションが急激に変動したりしても、それが磁性ワイヤ7の位置ずれに影響することはない。その結果、基板8における所定の位置からの磁性ワイヤ7のずれを防ぐことができる。
【0068】
また、ワイヤガイド5のガイド部50は、ガイド基準面503と傾斜下面501と傾斜上面502とを有する。これにより、ワイヤガイド5による磁性ワイヤ7の位置決め精度を、容易に向上させることができる。
【0069】
また、傾斜上面502は、傾斜下面501に対に対する鉛直方向の位置を調整可能に構成されている。それゆえ、ガイド部50を、ガイド基準面503に沿った小さい領域に形成することができる。その結果、ワイヤガイド5による磁性ワイヤ7の位置決め精度を、より向上させることができる。
【0070】
また、ガイド部50は、基板8側の端縁に傾斜端面55を有し、傾斜端面55の上端551は、基板8の上面8a以上の高さにある。これにより、切断された磁性ワイヤ7の後端がガイド部50から抜ける際に、磁性ワイヤ7の弾性力によって磁性ワイヤ7の後端が跳ね上がることを抑制することができる。その結果、基板8への磁性ワイヤ7の配置精度を、確実に向上させることができる。
【0071】
磁性ワイヤ7は、MIセンサ素子80の感磁体を構成するものである。MIセンサ素子80における感磁体を構成する磁性ワイヤは、上述のように極めて細い。また、MIセンサ素子80は、極めて微細な素子であり、その中の所定の位置に磁性ワイヤ7を配置するには、高精度の配置装置が求められる。かかる観点において、本開示のワイヤ配置装置1は特に有用となる。
【0072】
また、本形態のワイヤ配置方法は、基板8上に、複数本の磁性ワイヤ7を平行に整列させるものである。この場合、隣接配置される磁性ワイヤ7に対するワイヤ引出部4の干渉が生じないような留意が必要となる。本形態のワイヤ配置方法においては、上述のように、先に切断された磁性ワイヤ7が、基板8上を這うように、基板8上に引き出される。そのため、隣接する磁性ワイヤ7に対するワイヤ引出部4の干渉を防ぎやすい。
【0073】
以上のごとく、本形態によれば、基板における所定の位置からの磁性ワイヤのずれを防ぐことができるワイヤ配置装置及びワイヤ配置方法を提供することができる。
【0074】
(実施形態2)
本形態は、
図24、
図25に示すごとく、基板8の後方端部に、複数の端縁ガイド溝部85を設けた形態である。
端縁ガイド溝部85は、Y方向に配列される磁性ワイヤ7の本数分、形成されている。各端縁ガイド溝部85は、溝状に形成されている。また、端縁ガイド溝部85は、
図24に示すZ方向の上方から見た形状も、
図25に示すX方向の後方から見た形状も、三角形状を有する。そして、端縁ガイド溝部85の底部が、Y方向に直交する直線状に形成されている。この直線状に形成された、端縁ガイド溝部85の底部は、磁性ワイヤ7を配置すべきY方向の位置に一致している。すなわち、基板8上に形成された互いに隣接する一対のガイドポスト84(
図11、
図12参照)の間の部位と、端縁ガイド溝部85の底部とは、Y方向の位置が一致している。
【0075】
このように端縁ガイド溝部85が形成されていることにより、ワイヤ引出部4によって磁性ワイヤ7が基板8上に引き出される際、磁性ワイヤ7は、端縁ガイド溝部85によって、正確なY方向の位置に位置決めガイドされる。すなわち、ワイヤ引出部4が磁性ワイヤ7の前端部を把持して基板8上に引き出す際(
図19~
図21参照)、磁性ワイヤ7の一部が、端縁ガイド溝部85にガイドされ、その底部に沿うこととなる。
【0076】
この端縁ガイド溝部85の底部は、上述のように、磁性ワイヤ7を配置すべきY方向の位置と一致している。それゆえ、
図24に示すごとく、磁性ワイヤ7は、所定のY方向の位置に、正確に位置決めされることとなる。
【0077】
また、端縁ガイド溝部85は、基板8における、MIセンサ素子80の基板81とする領域外(
図24における一点鎖線86の外側)に形成される。すなわち、基板8において、端縁ガイド溝部85が形成された部位よりも内側において、複数のMIセンサ素子80を形成する。なお、
図24において、破線は、個別のMIセンサ素子80の基板81の輪郭に相当する。
その他は、実施形態1と同様である。
【0078】
本形態によれば、より容易に、基板8における所定の位置からの磁性ワイヤ7のずれを防ぐことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0079】
(実施形態3)
本形態は、
図26~
図31に示すごとく、基板8の後方端部と前方端部に、それぞれ複数の端縁ガイド凸部850を設けた形態である。
端縁ガイド凸部850は、X方向に沿って形成されている。各端縁ガイド凸部850は、
図29、
図31に示すごとく、X方向から見た形状が、略三角形状を有する。
【0080】
図26~
図28に示すごとく、基板8の後方端部と前方端部とのそれぞれにおいて、複数の端縁ガイド凸部850が、Y方向に並んで形成されている。これらの端縁ガイド凸部850は、基板8の上面8aから上側に盛り上がるように形成されている。そして、Y方向に隣り合う端縁ガイド凸部850の間に形成される谷部が、実施形態2における端縁ガイド溝部85と同様の機能を発揮する。つまり、この隣り合う端縁ガイド凸部850の間の谷部のY方向における位置は、実施形態2と同様の位置に設けられる。
【0081】
また、本形態においては、
図26~
図28、
図30に示すごとく、基板8の後方端部のみならず、前方端部にも、端縁ガイド凸部850が設けてある。基板8の後方端部に形成された端縁ガイド凸部850と前方端部に形成された端縁ガイド凸部850とは、Y方向において、同じ位置、同じ配設ピッチにて形成されている。これにより、基板8の前方端部と後方端部との双方において、磁性ワイヤ7の位置決めを、より容易かつ確実に行うことができる。
【0082】
また、後方端部に形成された端縁ガイド凸部850の間の部分は、
図26に示すごとく、Z方向から見て、略V字状に切り欠かれている。これにより、基板8の上に引き出される磁性ワイヤ7が、端縁ガイド凸部850の間に、より確実にガイドされる。
その他は、実施形態2と同様であり、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0083】
(実施形態4)
本形態は、
図32、
図33に示すごとく、ワイヤガイド5を、そのガイド基準面503がワイヤ引出部4のチャック部41よりも若干Y方向における上方ブロック52側の位置となるように、配置する形態である。
【0084】
より正確に言うと、
図32に示すごとく、チャック部41によって磁性ワイヤ7の前端がチャックされる位置よりも、若干、例えば数十μm程度、Y方向における上方ブロック52側の位置にガイド基準面503が位置するよう、ワイヤガイド5を配置する。なお、
図32における一点鎖線は、チャック部41によって磁性ワイヤ7の前端がチャックされる位置を通り、X方向に延びる補助線である。
【0085】
このようにすることで、
図32に示すごとく、Z方向から見たとき、磁性ワイヤ7は、X方向に対して若干傾斜することとなる。これにより、チャック部41にて保持された磁性ワイヤ7を、
図33に示すごとく、確実にガイド基準面503に接触させることができる。それゆえ、Y方向における磁性ワイヤ7の位置決めを、容易かつ確実に行うことができる。
【0086】
本形態においては、上述のように、磁性ワイヤ7がX方向に対して若干傾斜するため、これに合わせて、基板8もX方向に対して若干傾斜するように、位置合わせを行う。すなわち、基板固定台3は、Z方向を軸に回動可能となっており、その回動方向における微調整を行うことができるよう構成されている。
【0087】
その他は、実施形態1と同様であり、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【符号の説明】
【0088】
1 ワイヤ配置装置
2 ワイヤ供給部
3 基板固定台
4 ワイヤ引出部
5 ワイヤガイド
50 ガイド部
6 ワイヤカッター
7 磁性ワイヤ
8 基板