(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信装置、無線通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20241204BHJP
H04W 84/00 20090101ALI20241204BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20241204BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20241204BHJP
【FI】
H04B7/185
H04W84/00 110
H04W84/06
H04W4/38
(21)【出願番号】P 2022570968
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048812
(87)【国際公開番号】W WO2022137528
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糸川 喜代彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 康義
(72)【発明者】
【氏名】五藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】坂元 一光
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第07974227(US,B1)
【文献】国際公開第2011/135615(WO,A1)
【文献】特開2014-204177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
H04W 84/00
H04W 84/06
H04W 4/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムであって、
前記端末装置は、
送信データに所定
のプリアンブルパターンが付与されたデータを示
す信号を前記中継装置へ送信
する端末装置送信部
を備え、
前記中継装置は、
前記プリアンブルパターンのリストを記憶する中継装置記憶部
と、
前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記信号に含まれる
前記プリアンブルパターンと前記リストに含まれる
前記プリアンブルパターンとを照合し、照合結果に応じて前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する
振分部と、
前記基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信部と、
を備える
無線通信システム。
【請求項2】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムであって、
前記端末装置は、
前記中継装置から送信された、前記複数の端末装置を識別する少なくとも1つの識別情報を含む端末識別情報リストを受信する端末装置受信部と、
送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信部と、
前記端末識別情報リストに自装置の識別情報が含まれているか否かに応じて、前記信号を前記中継装置へ送信するタイミングを異ならせるように前記端末装置送信部を制御する送信制御部と、
を備え、
前記中継装置は、
前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記
信号の受信タイミングに基づいて前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する
振分部と、
前記基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信部と、
を備える
無線通信システム。
【請求項3】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムであって、
前記端末装置は、
前記中継装置から送信された報知信号を受信する端末装置受信部と、
送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信部と、
前記報知信号に前記複数の端末装置を識別する少なくとも1つの識別情報を含む端末識別情報リストが含まれており、前記端末識別情報リストに自装置の識別情報が含まれている場合、又は、前記報知信号に前記端末識別情報リストが含まれていない場合、前記信号を前記中継装置へ送信する
ように前記端末装置送信部を制御する送信制御部と、
を備え、
前記中継装置は、
前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記
信号の受信タイミングに基づいて前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する
振分部と、
前記端末識別情報リストが含まれる前記報知信号と前記端末識別情報リストが含まれない前記報知信号とを異なるタイミングで前記端末装置へ送信し、前記基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信部と、
を備える
無線通信システム。
【請求項4】
第1基地局装置と、
第2基地局装置と、
を有し、
前記中継装置送信部は、
前記第1基地局装置と通信可能なタイミングで、前記所定のキューに記録された前記送信データを前記第1基地局装置へ送信し、
前記第2基地局装置と通信可能なタイミングで、前記所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを前記第2基地局装置へ送信する
請求項1から
3のうちいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
複数の前記第1基地局装置を有する
請求項
4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムであって、
前記端末装置は、
送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信部
を備え、
前記中継装置は、
前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、
前記基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを先に送信し、前記所定のキューとは異なるキューに記録された前記送信データを後に送信する
ように、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信部と、
を備える
無線通信システム。
【請求項7】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、第1基地局装置と、第2基地局装置と、を有する無線通信システムであって、
前記端末装置は、
送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信部
を備え、
前記中継装置は、
前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、
前記第1基地局装置と通信可能なタイミングで、所定のキューに記録された前記送信データを前記第1基地局装置へ送信し、
前記第2基地局装置と通信可能なタイミングで、前記所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを前記第2基地局装置へ送信する中継装置送信部と、
を備え、
前記中継装置送信部は、前記所定のキューに記録された前記送信データを前記中継装置と前記第2基地局装置との間の距離が相対的に近いタイミングで送信し、前記所定のキューとは異なるキューに記録された前記送信データを前記距離が相対的に遠いタイミングで送信す
る
無線通信システム。
【請求項8】
前記中継装置は、飛行体である前記移動体に搭載され、
前記中継装置送信部は、前記所定のキューに記録された前記送信データを前記第2基地局装置の位置における前記中継装置の仰角が相対的に大きいタイミングで送信し、前記所定のキューとは異なるキューに記録された前記送信データを前記仰角が相対的に小さいタイミングで送信する
請求項
4又は
5に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記中継装置は、低軌道衛星に備えられ、
前記端末装置及び前記
基地局装置は、地球上に設置される、
請求項1から請求項
8のうちいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項10】
移動体に搭載された無線通信装置であって、
プリアンブルパターンのリストを記憶する中継装置記憶部
と、
端末装置から送信された、送信データを含む信号を受信する受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記信号に含まれる
前記プリアンブルパターンと前記リストに含まれる
前記プリアンブルパターンとを照合し、照合結果に応じて前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する
振分部と、
基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する送信部と、
を備える無線通信装置。
【請求項11】
移動体に搭載された無線通信装置であって、
複数の端末装置を識別する少なくとも1つの識別情報を含む端末識別情報リストを記憶する端末識別情報リスト記憶部
と、
端末装置から送信された、送信データを含む信号を受信する受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記
信号の受信タイミングに基づいて前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する
振分部と、
前記端末識別情報リストが含まれる報知信号と前記端末識別情報リストが含まれない報知信号とを異なるタイミングで前記端末装置へ送信し、基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する送信部と、
を備える無線通信装置。
【請求項12】
前記送信部は、
第1基地局装置と通信可能なタイミングで、前記所定のキューに記録された前記送信データを前記第1基地局装置へ送信し、
前記第1基地局装置とは異なる第2基地局装置と通信可能なタイミングで、前記所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを前記第2基地局装置へ送信する
請求項
10又は11に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記送信部は、前記所定のキューに記録された前記送信データを先に送信し、前記所定のキューとは異なるキューに記録された前記送信データを後に送信する
請求項1
0から1
2のうちいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項14】
移動体に搭載された無線通信装置であって、
端末装置から送信された、送信データを含む信号を受信する受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、
第1基地局装置と通信可能なタイミングで、所定のキューに記録された前記送信データを前記第1基地局装置へ送信し、
前記第1基地局装置とは異なる第2基地局装置と通信可能なタイミングで、前記所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを前記第2基地局装置へ送信する送信部と、
を備え、
前記送信部は、前記所定のキューに記録された前記送信データを自装置と前記第2基地局装置との間の距離が相対的に近いタイミングで送信し、前記所定のキューとは異なるキューに記録された前記送信データを前記距離が相対的に遠いタイミングで送信す
る
無線通信装置。
【請求項15】
飛行体であ
る移動体に搭載された無線通信装置であって、
端末装置から送信された、送信データを含む信号を受信する受信部と、
前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、
前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、
第1基地局装置と通信可能なタイミングで、所定のキューに記録された前記送信データを前記第1基地局装置へ送信し、
前記第1基地局装置とは異なる第2基地局装置と通信可能なタイミングで、前記所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを前記第2基地局装置へ送信する送信部と、
を備え、
前記送信部は、前記所定のキューに記録された前記送信データを前記第2基地局装置の位置における自装置の仰角が相対的に大きいタイミングで送信し、前記所定のキューとは異なるキューに記録された前記送信データを前記仰角が相対的に小さいタイミングで送信す
る
無線通信装置。
【請求項16】
低軌道衛星に備えられ、
前記端末装置及び前記基地局装置は、地球上に設置される、
請求項1
0から請求項1
5のうちいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項17】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムによる無線通信方法であって、
前記端末装置が、送信データ
に所定のプリアンブルパターンが付与されたデータを示す信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信ステップと、
前記中継装置が、前記プリアンブルパターンのリストを記憶する中継装置記憶ステップと、
前記中継装置が、前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信ステップと、
前記中継装置が、前記信号に含まれる
前記プリアンブルパターン
と前記リストに含まれる前記プリアンブルパターンとを照合し、照合結果に応じて前記送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分ステップと、
前記中継装置が、基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された
前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す
前記信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信ステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項18】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムによる無線通信方法であって、
前記端末装置が、前記中継装置から送信された、前記複数の端末装置を識別する少なくとも1つの識別情報を含む端末識別情報リストを受信する端末装置受信ステップと、
前記端末装置が、送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信ステップと、
前記端末装置が、前記端末装置送信ステップにおいて、前記端末識別情報リストに自装置の識別情報が含まれているか否かに応じて、前記信号を前記中継装置へ送信するタイミングを異ならせるように制御する送信制御ステップと、
前記中継装置が、前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信ステップと、
前記中継装置が、前記信号の受信タイミングに基づいて前記送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、
前記中継装置が、前記基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信ステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項19】
複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムによる無線通信方法であって、
前記端末装置が、前記中継装置から送信された報知信号を受信する端末装置受信ステップと、
前記端末装置が、送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信ステップと、
前記端末装置が、前記端末装置送信ステップにおいて、前記報知信号に前記複数の端末装置を識別する少なくとも1つの識別情報を含む端末識別情報リストが含まれており、前記端末識別情報リストに自装置の識別情報が含まれている場合、又は、前記報知信号に前記端末識別情報リストが含まれていない場合、前記信号を前記中継装置へ送信するように制御する送信制御ステップと、
前記中継装置が、前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信ステップと、
前記中継装置が、前記信号の受信タイミングに基づいて前記送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、
前記中継装置が、前記端末識別情報リストが含まれる前記報知信号と前記端末識別情報リストが含まれない前記報知信号とを異なるタイミングで前記端末装置へ送信し、前記基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す前記信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信ステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項20】
移動体に搭載された無線通信装置による無線通信方法であって、
プリアンブルパターンのリストを記憶する中継装置記憶ステップと、
端末装置から送信された、送信データを含む信号を受信する受信ステップと、
前記信号に含まれる
前記プリアンブルパターン
と前記リストに含まれる前記プリアンブルパターンとを照合し、照合結果に応じて前記送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分ステップと、
基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された
前記送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す
前記信号を前記基地局装置へ送信する送信ステップと、
を有する無線通信方法。
【請求項21】
請求項1
0から1
6のうちいずれか一項に記載の無線通信装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線通信装置、無線通信方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
小型の端末装置をインターネットに接続させて様々なアプリケーションを実現するIoT(Internet of Things)システムが普及している。IoTシステムの応用例として、複数のIoT端末が、気温、室温、加速度、及び光度などの環境情報をセンシングして無線信号で送信し、クラウド側で環境情報を収集するシステムが知られている。各種センサを備えたIoT端末は、様々な場所に設置される。例えば、海上のブイや船舶、及び山岳地帯など、基地局の設置が困難な場所のデータを収集するためにIoTを活用することも想定されている。
【0003】
一方で、通信衛星又はUAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)などを中継局として、地上の複数の通信装置の間で無線通信を行う無線システムがある。通信衛星を中継局とする無線システムとして、高度1,000[km]前後の低い軌道を周回する低軌道衛星(LEO:Low Earth Orbit)を用いる場合と、高度36,000[km]を周回する静止衛星(GEO:Geostationary Orbit)を用いる場合とがある。低軌道衛星は、静止衛星に比べて伝搬距離が短い。そのため、低軌道衛星を中継局とする場合、低遅延かつ低伝搬損失な通信の実現が可能である。また、この場合、低軌道衛星や地上の通信装置が備える高周波回路の構成が容易になる。ところが、低軌道衛星は、静止衛星とは異なり地球の上空を周回するため、地上の通信装置から見た衛星方向が常時変化する。地上の各通信装置における低軌道衛星の一周回当たりの可視時間は約10分程度以下である。そのため、低軌道衛星と地上の各通信装置とが通信可能な時間帯が制限される。
【0004】
一方で、IoT端末の通信に適した低電力かつ低伝送レートで広域通信が可能な無線システムとしてLPWA(Low Power Wide Area)が知られている。昨今、通信衛星がLPWAを用いてIoT端末からデータを収集する衛星IoTシステムの検討が行われている。一般的に、通信衛星と地上の通信装置との間の無線通信は、地上の複数の通信装置の間で直接通信を行う無線通信に比べて伝搬距離が長い。しかしながら、低軌道衛星を用いることによりLPWAの適用が可能になる。このような衛星IoTシステムの場合、通常のLPWAのみでは困難であった、航空分野、船舶分野、及びルーラルエリアでのIoT端末の収容が可能になる。また、この場合、ハブ局を必要としないためサービス展開が容易になる。
【0005】
ところで、低軌道衛星を利用した無線システムでは、前述の通り、低軌道衛星と地上の各通信装置とが通信可能な時間帯が制限される。そのため、通信可能な時間帯の間にデータの転送が完了しなかった場合、次の通信可能な時間帯になるまでデータの転送が保留される。そのため、例えば低軌道衛星を利用した衛星IoTシステムでは、IoT端末が低軌道衛星へデータを送信してから低軌道衛星が地上の通信装置へ当該データを転送するまでに、長い遅延時間が生じることがある。このような課題に対し、例えば特許文献1に記載の衛星通信システムは、同一の送受信局に対して複数の衛星チャネルを割り当ててデータ伝送を行うことにより高効率伝送の実現を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の衛星通信システムは、複数の衛星チャネルを用いることから、送受信側の双方の通信装置において、複数のキャリア(搬送波)を同時に送受信可能な機構を必要とする。しかしながら、衛星IoTシステムでは、IoT端末は、例えば海上及び山岳地帯のような僻地において長時間駆動しなければならないことがある。そのため、IoT端末には、装置の簡素化、小型軽量化、及び低消費電力が要求されることがある。これらのことから、衛星IoTシステムでは、データの転送遅延を抑制するために装置を複雑化することは難しいという課題がある。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、装置の複雑化を抑えつつ、データの転送遅延を抑制することができる無線通信システム、無線通信装置、無線通信方法、及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムであって、前記端末装置は、送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信部を備え、前記中継装置は、前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信部と、前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、前記基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信部と、を備える無線通信システムである。
【0010】
本発明の一態様は、移動体に搭載された無線通信装置であって、端末装置から送信された、送信データを含む信号を受信する受信部と、前記信号に含まれる前記送信データを記憶する複数のキューと、前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分部と、基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す信号を前記基地局装置へ送信する送信部と、を備える無線通信装置である。
【0011】
本発明の一態様は、複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置と、を有する無線通信システムによる無線通信方法であって、前記端末装置が、送信データを含む信号を前記中継装置へ送信する端末装置送信ステップと、前記中継装置が、前記端末装置から送信された前記信号を受信する中継装置受信ステップと、前記中継装置が、前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分ステップと、前記中継装置が、基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す信号を前記基地局装置へ送信する中継装置送信ステップと、を有する無線通信方法である。
【0012】
本発明の一態様は、移動体に搭載された無線通信装置による無線通信方法であって、端末装置から送信された、送信データを含む信号を受信する受信ステップと、前記信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて前記信号に含まれる前記送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する振分ステップと、基地局装置と通信可能なタイミングで、前記複数のキューのうち所定のキューに記録された送信データを優先して、前記複数のキューに記録された前記送信データを示す信号を前記基地局装置へ送信する送信ステップと、を有する無線通信方法である。
【0013】
本発明の一態様は、上記の無線通信装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、装置の複雑化を抑えつつ、データの転送遅延を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態による無線通信システムの構成図である。
【
図2】同実施形態による基地局の設置位置を示す模式図である。
【
図3】同実施形態による移動中継局に記録された特定サービスリストの一例を示す図である。
【
図4】同実施形態による無線通信システムの処理を示すフロー図である。
【
図5】同実施形態による無線通信システムの処理を示すフロー図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態による無線通信システムの構成図である。
【
図7】同実施形態による無線通信システムの処理を示すフロー図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態による無線通信システムの構成図である。
【
図9】同実施形態による無線通信システムの処理を示すフロー図である。
【
図10】本発明の第4の実施形態による無線通信システムの構成図である。
【
図11】同実施形態による無線通信システムの処理を示すフロー図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態による無線通信システムの構成図である。
【
図13】同実施形態による無線通信システムの処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による無線通信システム1の構成図である。無線通信システム1は、移動中継局2と、端末局3と、基地局4-1と、基地局4-2とを有する。複数の端末局3からそれぞれ送信された情報は、移動中継局2を介して伝送され、基地局4-1又は基地局4-2によって収集される。無線通信システム1は、即時性が要求されない情報の伝送を行う通信システムである。
【0018】
無線通信システム1が有する移動中継局2、端末局3、基地局4-1、及び基地局4-2のそれぞれの数は任意であるが、端末局3の数は多数であることが想定され、基地局4-1の数は複数であることが想定される。なお、基地局4-1と基地局4-2との違いについては後述される。
【0019】
移動中継局2は、移動体に搭載され、通信可能なエリアが時間の経過により移動する中継装置の一例である。移動中継局2は、例えば、LEO(Low Earth Orbit)衛星に備えられる。LEO衛星の高度は凡そ2000[km]以下であり、地球の上空を1周約1.5時間程度で周回する。
【0020】
移動中継局2は、地球の上空を移動しながら、複数の端末局3のそれぞれから送信されたデータを無線信号により受信する。移動中継局2は、受信したこれらのデータを蓄積し、蓄積しておいたデータを、基地局4-1との通信が可能なタイミングで一括して基地局4-1へ無線送信する。又は、移動中継局2は、蓄積しておいたデータを、基地局4-2との通信が可能なタイミングで一括して基地局4-2へ無線送信する。基地局4-1及び基地局4-2は、端末局3が収集したデータを移動中継局2から受信する。
【0021】
移動中継局2として、静止衛星や、ドローン、HAPS(High Altitude Platform Station)などの無人航空機に搭載された中継局を用いることが考えられる。しかし、静止衛星に搭載された中継局の場合、地上のカバーエリア(フットプリント)は広いものの、高度が高いために、地上に設置されたIoT端末に対するリンクバジェットは非常に小さい。一方、ドローンやHAPSに搭載された中継局の場合、リンクバジェットは高いものの、カバーエリアが狭い。さらには、ドローンにはバッテリーが、HAPSにはバッテリー及びそれを充電する太陽光パネルが必要である。
【0022】
本実施形態では、LEO衛星に移動中継局2を搭載する。よって、リンクバジェットは限界内に収まることに加え、LEO衛星は、大気圏外を周回するために空気抵抗がなく、燃料消費も少ない。また、ドローンやHAPSに中継局を搭載する場合と比較して、フットプリントも大きい。
【0023】
LEO衛星に搭載された移動中継局2は、高速で移動しながら通信を行うため、個々の端末局3、基地局4-1、及び基地局4-2が移動中継局2と通信可能な時間が限られている。具体的には、地上端末局から見ると、移動中継局2は、凡そ10分程度以下で上空を通り過ぎる。また、端末局3には、様々な仕様の無線通信方式が使用される。
【0024】
そこで、移動中継局2は、移動中の現在位置におけるカバレッジ内の端末局3から端末アップリンク信号を受信し、受信した端末アップリンク信号の波形データを保存しておく。移動中継局2は、カバレッジに基地局4-1が存在するタイミングにおいて、端末アップリンク信号の波形データを設定した基地局ダウンリンク信号を、基地局4-1に無線送信する。又は、移動中継局2は、カバレッジに基地局4-2が存在するタイミングにおいて、端末アップリンク信号の波形データを設定した基地局ダウンリンク信号を、基地局4-2に無線送信する。基地局4-1及び基地局4-2は、移動中継局2から受信した基地局ダウンリンク信号を復調して端末アップリンク信号の波形データを得る。基地局4-1及び基地局4-2は、波形データが表す端末アップリンク信号に対して復調及び復号を行うことにより、端末局3が送信したデータである端末送信データを得る。
【0025】
端末局3は、地上や海上など地球上に設置される。複数の端末局3は、互いに異なる場所に存在する。端末局3は、例えば、IoT端末である。端末局3は、センサが検出した環境データ等のデータを収集し、移動中継局2へ無線により送信する。同図では、2台の端末局3のみを示している。
【0026】
基地局4-1及び基地局4-2は、地上や海上など地球上に設置される。複数の基地局4-1、及び基地局4-2は、互いに異なる場所に存在する。
図2は、第1の実施形態による基地局4-1及び基地局4-2の設置位置を示す模式図である。
図2において、黒塗りの星印は基地局4-1の設置位置を示し、白抜きの星印は基地局4-2の設置位置を示す。
図2に示されるように、例えば基地局4-1は、地球上において、互いに異なる複数の箇所に設置される。また、例えば基地局4-2は、地球上の一箇所に設置される。
【0027】
本実施形態において、基地局4-1は、特定サービス用の基地局装置であり、基地局4-2は、一般サービス用の基地局装置である。特定サービス用の基地局装置とは、移動中継局2から、特定サービスのデータを受信する基地局装置である。一方、一般サービス用の基地局装置とは、移動中継局2から、特定サービスのデータ及び一般サービスのデータを受信する基地局装置である。なお、一般サービス用の基地局装置は、移動中継局2から、一般サービスのデータのみを受信する基地局装置であってもよい。
【0028】
特定サービスとは、端末局3から送信される端末送信データが、一般サービスより優先的に地上の基地局装置(基地局4-1又は基地局4-2)へ転送されるサービスである。例えば、特定サービスは、より迅速に(より転送遅延なく)端末送信データが基地局装置へ転送されることが望まれるサービス等である。例えば、特定サービスは、短時間でも変化し易い情報を含む端末送信データを伝送するサービスである。例えば、特定サービスは、移動する端末局3の位置を特定するサービス、又は何らかの移動体の位置を特定するサービス等である。例えば、特定サービスは、海洋における船舶の位置をセンサによって正しく得るためのサービス等である。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態では、特定サービス用の基地局装置である基地局4-1は地球上の複数の箇所に設置されている。また、基地局4-1だけでなく、一般サービス用の基地局装置である基地局4-2も、特定サービスの端末送信データを受信することができる。そのため、移動中継局2が、いずれかの基地局4-1との通信可能範囲又は基地局4-2との通信可能範囲に位置していれば、特定サービス用の端末送信データは基地局4-1又は基地局4-2へ転送可能な状態となる。
【0030】
一方、一般サービスとは、特定サービス以外のサービスである。例えば、一般サービスは、迅速な端末送信データの転送が要求されないサービス等である。例えば、一般サービスは、短時間では変化し難い情報を含む端末送信データを伝送するサービスである。例えば、一般サービスは、低軌道衛星の周回頻度(例えば、1日あたり2回)程度の端末送信データの受信であっても支障が生じないサービス等である。例えば、一般サービスは、一か月間に潮流がどのように変化するかを解析するためのデータを示す端末送信データを提供するサービス、又は一か月間に海洋の水温がどのように変化するかを解析するためのデータを示す端末送信データを提供するサービス等である。
【0031】
図2に示されるように、本実施形態では、一般サービス用の基地局装置である基地局4-2は地球上の一箇所のみに設置されている。そのため、移動中継局2が、基地局4-2との通信可能範囲に位置しているときに限り、一般サービス用の端末送信データは基地局4-2へ転送可能な状態となる。
【0032】
各装置の構成を説明する。
移動中継局2は、アンテナ21と、端末通信部22と、データ記憶部23と、基地局通信部24と、アンテナ25とを備える。
【0033】
端末通信部22は、受信部221と、受信波形記録部222と、判定部223と、特定サービスリスト記憶部224と、報知信号送信部225とを有する。
報知信号送信部225は、端末局3に対し、自己の移動中継局2への端末送信データの送信を許可することを報知する制御信号(以下、「報知信号」という。)を送信する。報知信号送信部225は、報知信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する。
【0034】
報知信号送信部225は、LPWAにより信号を送信する。LPWAには、LoRaWAN(登録商標)、Sigfox(登録商標)、LTE-M、NB-IoT等の任意の無線通信方式を用いることができる。報知信号送信部225は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、自局が端末ダウンリンク信号の送信に使用するチャネルを決定する。端末局3は、報知信号を受信したことに応じて、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を開始する。
【0035】
なお、端末通信部22は、自己の移動中継局2を搭載しているLEO衛星の軌道情報と、各端末局3の位置とに基づいて、予め計算された端末局3ごとの送信開始タイミングを予め記憶していてもよい。LEOの軌道情報は、例えば、任意の時刻におけるLEO衛星の位置、速度、移動方向などを得ることが可能な情報である。送信時刻は、例えば、送信開始タイミングからの経過時間で表してもよい。報知信号送信部225は、予め記憶された端末局3ごとの送信開始タイミングにおいて、報知信号が設定された端末ダウンリンク信号を各端末局3へ送信するようにしてもよい。
【0036】
なお、端末通信部22は、端末局3を識別する端末識別情報、及び端末局3の位置を示す位置情報を予め記憶していてもよい。報知信号送信部225は、現在の自局の位置と端末局3の位置とに基づいて通知対象とする端末局3を決定し、特定された端末局3の端末識別情報を特定するようにしてもよい。報知信号送信部225は、特定された端末識別情報を報知信号に含めて送信するようにしてもよい。
【0037】
特定サービスリスト記憶部224は、特定サービスリストを記憶する。特定サービスリストとは、特定サービスの端末送信データに付与されているプリアンブルパターンのリストである。なお、例えば特定サービスが複数存在する場合には、各特定サービスにそれぞれ対応付けられた固有のプリアンブルパターンが、特定サービスリストに含まれているような構成であってもよい。
【0038】
特定サービスリストは、例えば、複数の基地局4-1又は基地局4-2のうちいずれかの基地局装置から移動中継局2へ予め送信され、特定サービスリスト記憶部224に記録される。なお、特定サービスリストは、基地局4-1及び基地局4-2以外の装置から移動中継局2へ送信される構成であってもよい。また、特定サービスリストは、移動中継局2の運用開始前に予め特定サービスリスト記憶部224に記録される構成であってもよい。
【0039】
図3は、第1の実施形態による移動中継局2の特定サービスリスト記憶部224に記録された特定サービスリストLの一例を示す図である。
図3に示されるように、特定サービスリストLには、3つのプリアンブルパターン(プリアンブルパターンA、プリアンブルパターンC、及びプリアンブルパターンF)が含まれる。すなわち、プリアンブルパターンA、プリアンブルパターンC、又はプリアンブルパターンFが付与される端末送信データは、特定サービスの端末送信データであることを示す。
【0040】
受信部221は、アンテナ21により端末アップリンク信号を受信する。端末アップリンク信号は、報知信号送信部225から送信された報知信号を端末局3が受信したことに応じて当該端末局3から送信される信号である。端末アップリンク信号には、端末送信データとプリアンブルパターンとが含まれる。受信部221は、受信した端末アップリンク信号を判定部223へ出力する。
【0041】
判定部223は、受信部221から出力された端末アップリンク信号を取得する。判定部223は、取得された端末アップリンク信号からプリアンブルパターンを抽出する。判定部223は、特定サービスリスト記憶部224に記憶された特定サービスリストを参照し、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと、特定サービスリストに含まれるプリアンブルパターンとを照合する。判定部223は、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと同一のプリアンブルパターンが特定サービスリストに含まれているか否かを示す照合結果と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222へ出力する。
【0042】
受信波形記録部222は、判定部223から取得した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222は、アンテナ21における端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報とをデータ記憶部23に書き込む。
【0043】
このとき、受信波形記録部222は、特定サービスリストに含まれているプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合、データ記憶部23の優先キュー231に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む。一方、受信波形記録部222は、特定サービスリストに含まれていないプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合、データ記憶部23の一般キュー232に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む。
【0044】
データ記憶部23は、優先キュー231と、一般キュー232とを有する。優先キュー231及び一般キュー232は、受信波形記録部222により書き込まれた受信時刻と受信波形情報とを記憶する。
【0045】
基地局通信部24は、任意の無線通信方式の基地局ダウンリンク信号により受信波形情報を、基地局4-1又は基地局4-2へ送信する。基地局通信部24は、記憶部241と、制御部242と、送信データ変調部243と、送信部244とを備える。
【0046】
記憶部241は、移動中継局2を搭載しているLEO衛星の軌道情報と、基地局4-1及び基地局4-2の位置とに基づいて、それぞれの基地局4-1及び基地局4-2ごとに予め計算された送信開始タイミングを記憶する。LEOの軌道情報は、任意の時刻におけるLEO衛星の位置、速度、移動方向などを得ることが可能な情報である。送信時刻は、例えば、送信開始タイミングからの経過時間で表してもよい。
【0047】
制御部242は、記憶部241に記憶された送信開始タイミングにおいて、受信波形情報を基地局4-1又は基地局4-2に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。
送信データ変調部243は、データ記憶部23から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。送信部244は、基地局ダウンリンク信号を電気信号から無線信号に変換し、アンテナ25から送信する。
【0048】
このとき、送信開始タイミングが特定サービス用の基地局装置である基地局4-1への送信開始タイミングである場合には、制御部242は、優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4-1に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。送信データ変調部243は、優先キュー231から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。
【0049】
一方、送信開始タイミングが一般サービス用の基地局装置である基地局4-2への送信開始タイミングである場合には、制御部242は、まず優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4-2に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。送信データ変調部243は、優先キュー231から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。優先キュー231に記録された受信波形情報の伝送が完了した場合、又は、優先キュー231に受信波形情報が記録されていない場合、制御部242は、一般キュー232に記録された受信波形情報を基地局4-2に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。送信データ変調部243は、一般キュー232から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。
【0050】
このように、移動中継局2は、特定サービス用の基地局装置である基地局4-1への送信可能タイミングとなった場合には、特定サービスの端末送信データを示す受信波形情報を優先キュー231から取り出して、基地局4-1へ送信する。また、移動中継局2は、一般サービス用の基地局装置である基地局4-2への送信可能タイミングとなった場合には、まず特定サービスの端末送信データを示す受信波形情報を優先キュー231から取り出して基地局4-2へ送信した後、次に一般サービスの端末送信データを示す受信波形情報を一般キュー232から取り出して基地局4-2へ送信する。
【0051】
また、前述の通り本実施形態では、特定サービス用の基地局装置である基地局4-1は地球上の複数の箇所に設定され、一般サービス用の基地局装置である基地局4-2は地球上の1箇所のみに設定されている。以上のような構成によって、一般サービスの端末送信データに対し、特定サービス用の端末送信データがより優先的に地球上の基地局装置へ伝送される。
【0052】
端末局3は、データ記憶部31と、送信部32と、1本または複数本のアンテナ33と、受信部34と、送信制御部35とを備える。
データ記憶部31は、センサデータ、及びプリアンブルパターンなどを記憶する。センサデータは、端末局3を有するIoT端末によって生成され、端末局3から移動中継局2へ送信されるデータである。センサデータは、例えば、端末局3を有するIoT端末の周囲の温度、湿度、又は潮流等を示す環境データである。
【0053】
受信部34は、移動中継局2から送信された報知信号を受信する。受信部34は、報知信号を受信したことを送信制御部35へ通知する。
送信制御部35は、受信部34から報知信号を受信したことを通知されると、送信部32を制御し、端末アップリンク信号の送信を開始させる。
【0054】
送信部32は、送信制御部35の制御の下で、移動中継局2への端末アップリンク信号の送信を行う。送信部32は、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出す。また、送信部32は、データ記憶部31からプリアンブルパターンを読み出す。送信部32は、読み出した端末送信データ及びプリアンブルパターンを設定した端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する。
【0055】
送信部32は、例えば、LPWA(Low Power Wide Area)により信号を送信する。LPWAには、LoRaWAN(登録商標)、Sigfox(登録商標)、LTE-M(Long Term Evolution for Machines)、NB(Narrow Band)-IoT等があるが、任意の無線通信方式を用いることができる。
【0056】
また、送信部32は、他の端末局3と時分割多重、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)などにより送信を行ってもよい。送信部32は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、自局が端末アップリンク信号の送信に使用するチャネル及び送信開始タイミングを決定する。また、送信部は、使用する無線通信方式において予め決められた方法により、複数本のアンテナ33から送信する信号のビーム形成を行ってもよい。
【0057】
本実施形態において、基地局4-1及び基地局4-2は同様の構成を有する。
基地局4-1及び基地局4-2は、アンテナ41と、受信部42と、基地局信号受信処理部43と、端末信号受信処理部44とを備える。
【0058】
受信部42は、アンテナ41により受信した端末ダウンリンク信号を、電気信号に変換する。
基地局信号受信処理部43は、受信部42が電気信号に変換した受信信号の復調及び復号を行い、受信波形情報を得る。基地局信号受信処理部43は、受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
【0059】
端末信号受信処理部44は、受信波形情報が示す端末アップリンク信号の受信処理を行う。このとき、端末信号受信処理部44は、端末局3が送信に使用した無線通信方式により受信処理を行って端末送信データを取得する。端末信号受信処理部44は、端末信号復調部441と、端末信号復号部442とを備える。
【0060】
端末信号復調部441は、波形データを復調し、復調により得られたシンボルを端末信号復号部442に出力する。端末信号復調部441は、波形データが示す信号に対して、移動中継局2のアンテナ21が受信した端末アップリンク信号のドップラーシフトを補償する処理を行ってから、復調を行ってもよい。アンテナ21が受信した端末アップリンク信号が受けるドップラーシフトは、端末局3の位置と、移動中継局2が搭載されているLEOの軌道情報に基づき予め計算される。
端末信号復号部442は、端末信号復調部441が復調したシンボルを復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。
【0061】
無線通信システム1の動作を説明する。
図4は、端末局3から端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1の処理を示すフロー図である。本フロー図が示す処理は、移動中継局2の報知信号送信部225が端末局3へ向けて報知信号を送信した際に開始される。なお、このとき端末局3は、外部又は内部に備えられた図示しないセンサが検出したデータを取得し、取得したデータをセンサデータとしてデータ記憶部31に随時書き込んでいる状態である。
【0062】
端末局3の受信部34は、移動中継局2から送信される報知信号の受信を待ち受ける(ステップS111)。受信部34は、報知信号を受信した場合(ステップS111・YES)、報知信号を受信したことを送信制御部35へ通知する。送信制御部35は、受信部34から報知信号を受信したことを通知されると、送信部32を制御し、端末アップリンク信号の送信を開始させる。
【0063】
送信部32は、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出す(ステップS112)。また、送信部32は、データ記憶部31からプリアンブルパターンを読み出す(ステップS113)。送信部32は、読み出した端末送信データ及びプリアンブルパターンを設定した端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する(ステップS114)。端末局3は、ステップS111からの処理を繰り返す。
【0064】
移動中継局2の受信部221は、端末局3から送信された端末アップリンク信号をアンテナ21により受信する(ステップS121)。送信元の端末局3の無線通信方式によって、同一の周波数については時分割で1台の端末局3からのみ端末アップリンク信号を受信する場合と、同一の周波数で同時に複数台の端末局3から端末アップリンク信号を受信する場合がある。受信部221は、受信した端末アップリンク信号を判定部223へ出力する。
【0065】
判定部223は、受信部221から出力された端末アップリンク信号を取得する。判定部223は、取得された端末アップリンク信号からプリアンブルパターンを抽出する(ステップS122)。判定部223は、特定サービスリスト記憶部224に記憶された特定サービスリストを参照し、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと、特定サービスリストに含まれるプリアンブルパターンとを照合する(ステップS123)。
【0066】
判定部223は、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと同一のプリアンブルパターンが特定サービスリストに含まれているか否かを示す照合結果と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222へ出力する。受信波形記録部222は、判定部223から出力された照合結果と端末アップリンク信号とを取得する。
【0067】
受信波形記録部222は、特定サービスリストに含まれているプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合(ステップS124・YES)、データ記憶部23の優先キュー231に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む(ステップS125)。一方、受信波形記録部222は、特定サービスリストに含まれていないプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合(ステップS124・NO)、データ記憶部23の一般キュー232に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む(ステップS126)。移動中継局2は、ステップS121からの処理を繰り返す。
【0068】
図5は、移動中継局2から基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1の処理を示すフロー図である。本フロー図が示す処理は、移動中継局2の基地局通信部24が有する制御部242が、複数の基地局4-1及び基地局4-2のうちいずれかの送信開始タイミングとなることを待ち受けている状態において開始される。
【0069】
移動中継局2の基地局通信部24が有する制御部242は、記憶部241に記憶された送信開始タイミングであることを検出すると(ステップS211)、受信波形情報の送信を送信データ変調部243及び送信部244に指示する。送信開始タイミングが特定サービス用の基地局装置である基地局4-1への送信開始タイミングである場合には(ステップS212・YES)、制御部242は、優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4-1に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。
【0070】
送信データ変調部243は、優先キュー231から受信波形情報を送信データとして読み出す(ステップS213)。送信データ変調部243は、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。送信部244は、受信波形情報が設定された基地局ダウンリンク信号を電気信号から無線信号に変換し、アンテナ25から送信する(ステップS214)。移動中継局2は、ステップS211からの処理を繰り返す。
【0071】
一方、送信開始タイミングが一般サービス用の基地局装置である基地局4-2への送信開始タイミングである場合には(ステップS212・NO)、制御部242は、まず優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4-2に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。送信データ変調部243は、優先キュー231から受信波形情報を送信データとして読み出す(ステップS215)。送信データ変調部243は、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。送信部244は、受信波形情報が設定された基地局ダウンリンク信号を電気信号から無線信号に変換し、アンテナ25から送信する(ステップS216)。
【0072】
優先キュー231に記録された受信波形情報の伝送が完了した場合、又は、優先キュー231に受信波形情報が記録されていない場合、制御部242は、一般キュー232に記録された受信波形情報を基地局4-2に送信するように送信データ変調部243及び送信部244を制御する。送信データ変調部243は、一般キュー232から受信波形情報を送信データとして読み出す(ステップS217)。送信データ変調部243は、読み出した送信データを変調して基地局ダウンリンク信号を生成する。送信部244は、受信波形情報が設定された基地局ダウンリンク信号を電気信号から無線信号に変換し、アンテナ25から送信する(ステップS218)。移動中継局2は、ステップS211からの処理を繰り返す。
【0073】
基地局4-1又は基地局4-2のアンテナ41は、移動中継局2から基地局ダウンリンク信号を受信する(ステップS221)。受信部42は、アンテナ41が受信した基地局ダウンリンク信号を電気信号の受信信号に変換して、基地局信号受信処理部43に出力する。基地局信号受信処理部43は、受信信号を復調し、復調した受信信号を復号する(ステップS222)。基地局信号受信処理部43は、復号により得られた受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
【0074】
端末信号受信処理部44は、受信波形情報に含まれる波形データが表す端末アップリンク信号の受信処理を行う(ステップS223)。具体的には、端末信号復調部441は、波形データが表す受信信号に含まれる無線通信方式固有の情報に基づいて、端末局3が端末アップリンク信号の送信に用いた無線通信方式を特定する。端末信号復調部441は、特定した無線通信方式に従って、波形データが表す受信信号を復調し、復調により得られたシンボルを、端末信号復号部442に出力する。端末信号復号部442は、端末信号復調部441から入力したシンボルを特定された無線通信方式により復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。
【0075】
なお、端末信号復号部442は、SIC(Successive Interference Cancellation)のように、計算負荷が大きな復号方式を用いることも可能である。基地局4a-1又は基地局4a-2は、ステップS221からの処理を繰り返す。
【0076】
以上説明したように、本実施形態における無線通信システム1では、端末局3が、送信データに所定のプリアンブルパターンが付与されたデータを示す端末アップリンク信号を移動中継局2へ送信する。移動中継局2は、特定サービスリストLを記憶しており、端末アップリンク信号に含まれるプリアンブルパターンと特定サービスリストLに含まれるプリアンブルパターンとを照合する。移動中継局2は、照合結果に応じて端末アップリンク信号に含まれる送信データを優先キュー231又は一般キュー232のいずれかに振り分けて記録する。移動中継局2は、基地局4-1及び基地局4-2と通信可能なタイミングで、優先キュー231に記録された送信データを優先して、優先キュー231及び一般キュー232キューに記録された送信データを示す信号を基地局4-1又は基地局4-2へ送信する。
【0077】
このような構成を有することにより、無線通信システム1は、複数の衛星チャネルを用いる必要がなく、送受信側(端末局3側及び基地局4-1、4-2側)の双方の通信装置において複数のキャリア(搬送波)を同時に送受信可能な機構を必要としない。また、このような構成を有することにより、無線通信システム1は、例えば、より迅速に(より転送遅延なく)端末送信データが基地局装置へ転送されることが望まれる特定サービスを優先して送信データを伝送することができる。よって、本実施形態における無線通信システム1は、装置の複雑化を抑えつつ、データの転送遅延を抑制することができる。
【0078】
なお前述の通り、本実施形態における移動中継局2は、優先キュー231に振り分けられる対象となるプリアンブルパターンのリストである特定サービスリストLを保持している構成である。但し、この構成に限られるものではなく、例えば、移動中継局2が、優先キュー231に振り分けられる対象となる端末ID(Identifier:識別子)のリスト(以下、「優先端末IDリスト」という。)を保持している構成であってもよい。ここでいう端末IDとは、各々の端末局3を識別する識別情報である。
【0079】
この場合、端末局3は、報知信号を受信した際に、端末送信データと、自装置を識別する端末IDとを設定した端末アップリンク信号を移動中継局2へ送信するようにすればよい。そして、移動中継局2は、受信した端末アップリンク信号から端末IDを抽出し、抽出された端末IDと、優先端末IDリストに含まれる端末IDとを照合すればよい。移動中継局2は、抽出された端末IDが優先端末IDリストに含まれている場合に、受信波形情報を優先キュー231に書き込めばよい。
【0080】
(第2の実施形態)
本実施形態では、移動中継局は、複数本のアンテナにより基地局ダウンリンク信号を送信する。以下では、基地局ダウンリンク信号の送信に、MIMO(Multiple Input Multiple Output)を用いる場合を例にして、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0081】
図6は、第2の実施形態による無線通信システム1aの構成図である。同図において、
図1に示す第1の実施形態における無線通信システム1と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。無線通信システム1aは、移動中継局2aと、端末局3と、基地局4a-1と、基地局4a-2とを有する。複数の端末局3からそれぞれ送信された情報は、移動中継局2aを介して伝送され、基地局4a-1又は基地局4a-2によって収集される。
【0082】
無線通信システム1aが有する移動中継局2a、端末局3、基地局4a-1、及び基地局4a-2のそれぞれの数は任意であるが、端末局3の数は多数であることが想定され、基地局4a-1の数は複数であることが想定される。本実施形態において、基地局4a-1は、特定サービス用の基地局装置であり、基地局4a-2は、一般サービス用の基地局装置である。
【0083】
移動中継局2aは、アンテナ21と、端末通信部22と、データ記憶部23と、基地局通信部26と、複数のアンテナ25とを備える。
基地局通信部26は、MIMOにより基地局4a-1又は4a-2へ受信波形情報を送信する。基地局通信部26は、記憶部261と、制御部262と、送信データ変調部263と、MIMO送信部264とを備える。
【0084】
記憶部261は、移動中継局2aを搭載しているLEO衛星の軌道情報と、基地局4a-1又は基地局4a-2の位置とに基づいて、予め計算された送信開始タイミングを記憶する。さらに、記憶部261は、各アンテナ25から送信する基地局ダウンリンク信号の送信時刻毎のウェイトを予め記憶している。送信時刻毎のウェイトは、LEO衛星の軌道情報と、基地局4a-1又は基地局4a-2が備える各アンテナ局410の位置とに基づいて計算される。なお、送信時刻によらず、一定のウェイトを使用してもよい。
【0085】
制御部262は、記憶部261に記憶された送信開始タイミングにおいて、受信波形情報を基地局4a-1又は4a-2に送信するように送信データ変調部263及びMIMO送信部264を制御する。さらに、制御部262は、記憶部261から読み出した送信時刻毎のウェイトをMIMO送信部264に指示する。
送信データ変調部263は、データ記憶部23から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データをパラレル信号に変換した後、変調する。
【0086】
MIMO送信部264は、変調されたパラレル信号に、制御部262から指示されたウェイトにより重み付けを行い、各アンテナ25から送信する基地局ダウンリンク信号を生成する。MIMO送信部264は、生成した基地局ダウンリンク信号をアンテナ25からMIMOにより送信する。
【0087】
このとき、送信開始タイミングが特定サービス用の基地局装置である基地局4a-1への送信開始タイミングである場合には、制御部262は、優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4a-1に送信するように送信データ変調部263及びMIMO送信部264を制御する。制御部262は、優先キュー231から読み出した送信時刻毎のウェイトをMIMO送信部264に指示する。送信データ変調部263は、優先キュー231から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データをパラレル信号に変換した後、変調する。
【0088】
一方、送信開始タイミングが一般サービス用の基地局装置である基地局4a-2への送信開始タイミングである場合には、制御部262は、まず優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4a-2に送信するように送信データ変調部263及びMIMO送信部264を制御する。制御部262は、優先キュー231から読み出した送信時刻毎のウェイトをMIMO送信部264に指示する。送信データ変調部263は、優先キュー231から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データをパラレル信号に変換した後、変調する。
【0089】
優先キュー231に記録された受信波形情報の伝送が完了した場合、又は、優先キュー231に受信波形情報が記録されていない場合、制御部242は、一般キュー232から読み出した送信時刻毎のウェイトをMIMO送信部264に指示する。送信データ変調部263は、一般キュー232から受信波形情報を送信データとして読み出し、読み出した送信データをパラレル信号に変換した後、変調する。
【0090】
本実施形態において、基地局4a-1及び基地局4a-2は同様の構成を有する。
基地局4a-1及び基地局4a-2は、複数のアンテナ局410と、MIMO受信部420と、基地局信号受信処理部430と、端末信号受信処理部44とを備える。アンテナ局410は、移動中継局2aの複数のアンテナ25のそれぞれからの信号の到来角差が大きくなるように他のアンテナ局410と離れた位置に配置される。各アンテナ局410は、移動中継局2aから受信した基地局ダウンリンク信号を電気信号に変換してMIMO受信部420に出力する。
【0091】
MIMO受信部420は、複数のアンテナ局410から受信した基地局ダウンリンク信号を集約する。MIMO受信部420は、LEO衛星の軌道情報と、各アンテナ局410の位置とに基づいて、各アンテナ局410のそれぞれが受信した基地局ダウンリンク信号に対する受信時刻毎のウェイトを記憶している。MIMO受信部420は、各アンテナ局410から入力した基地局ダウンリンク信号に対して、その基地局ダウンリンク信号の受信時刻に対応したウェイトを乗算し、ウェイトが乗算された受信信号を合成する。なお、受信時刻によらず同じウェイトを用いてもよい。基地局信号受信処理部430は、合成された受信信号の復調及び復号を行い、受信波形情報を得る。基地局信号受信処理部430は、受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
【0092】
無線通信システム1aの動作を説明する。
端末局3から端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1aの処理は、
図4に示される第1の実施形態の無線通信システム1の処理と同様である。
【0093】
図7は、移動中継局2aから基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1aの処理を示すフロー図である。本フロー図が示す処理は、移動中継局2aの基地局通信部26が有する制御部262が、複数の基地局4a-1及び基地局4a-2のうちいずれかの送信開始タイミングとなることを待ち受けている状態において開始される。
【0094】
移動中継局2aの基地局通信部26が有する制御部262は、記憶部261に記憶された送信開始タイミングであることを検出すると(ステップS311)、受信波形情報の送信を送信データ変調部263及びMIMO送信部264に指示する。送信開始タイミングが特定サービス用の基地局装置である基地局4a-1への送信開始タイミングである場合には(ステップS312・YES)、制御部262は、優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4a-1に送信するように送信データ変調部263及びMIMO送信部264を制御する。
【0095】
送信データ変調部263は、優先キュー231に蓄積していた受信波形情報を送信データとして読み出し(ステップS313)、読み出した送信データをパラレル変換した後、変調する。MIMO送信部264は、送信データ変調部263が変調した送信データに制御部262から指示されたウェイトにより重み付けを行って、各アンテナ25から送信する送信信号である基地局ダウンリンク信号を生成する。MIMO送信部264は、生成した各基地局ダウンリンク信号をアンテナ25からMIMOにより送信する(ステップS314)。移動中継局2aは、ステップS311からの処理を繰り返す。
【0096】
一方、送信開始タイミングが一般サービス用の基地局装置である基地局4a-2への送信開始タイミングである場合には(ステップS312・NO)、制御部262は、まず優先キュー231に記録された受信波形情報を基地局4a-2に送信するように送信データ変調部263及びMIMO送信部264を制御する。
【0097】
送信データ変調部263は、優先キュー231に蓄積していた受信波形情報を送信データとして読み出し(ステップS315)、読み出した送信データをパラレル変換した後、変調する。MIMO送信部264は、送信データ変調部263が変調した送信データに制御部262から指示されたウェイトにより重み付けを行って、各アンテナ25から送信する送信信号である基地局ダウンリンク信号を生成する。MIMO送信部264は、生成した各基地局ダウンリンク信号をアンテナ25からMIMOにより送信する(ステップS316)。
【0098】
優先キュー231に記録された受信波形情報の伝送が完了した場合、又は、優先キュー231に受信波形情報が記録されていない場合、制御部262は、一般キュー232に記録された受信波形情報を基地局4a-2に送信するように送信データ変調部263及びMIMO送信部264を制御する。
【0099】
送信データ変調部263は、一般キュー232に蓄積していた受信波形情報を送信データとして読み出し(ステップS317)、読み出した送信データをパラレル変換した後、変調する。MIMO送信部264は、送信データ変調部263が変調した送信データに制御部262から指示されたウェイトにより重み付けを行って、各アンテナ25から送信する送信信号である基地局ダウンリンク信号を生成する。MIMO送信部264は、生成した各基地局ダウンリンク信号をアンテナ25からMIMOにより送信する(ステップS318)。移動中継局2aは、ステップS311からの処理を繰り返す。
【0100】
基地局4a-1の各アンテナ局410又は基地局4a-2の各アンテナ局410は、移動中継局2aから基地局ダウンリンク信号を受信する(ステップS321)。各アンテナ局410は、受信した基地局ダウンリンク信号を電気信号に変換した受信信号をMIMO受信部420に出力する。MIMO受信部420は、各アンテナ局410から受信した受信信号のタイミングを同期させる。MIMO受信部420は、各アンテナ局410が受信した受信信号にウェイトを乗算して加算する。基地局信号受信処理部430は、加算された受信信号を復調し、復調した受信信号を復号する(ステップS322)。基地局信号受信処理部430は、復号により得られた受信波形情報を端末信号受信処理部44に出力する。
【0101】
端末信号受信処理部44は、
図5に示される第1の実施形態の処理フローにおけるステップS223と同様の処理により、受信波形情報に含まれる波形データが表す端末アップリンク信号の受信処理を行う(ステップS323)。すなわち、端末信号復調部441は、波形データが表す受信信号に含まれる無線通信方式固有の情報に基づいて、端末局3が端末アップリンク信号の送信に用いた無線通信方式を特定する。
【0102】
端末信号復調部441は、特定した無線通信方式に従って、波形データが表す受信信号を復調し、復調により得られたシンボルを端末信号復号部442に出力する。端末信号復号部442は、端末信号復調部441から入力したシンボルを、特定された無線通信方式により復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。なお、端末信号復号部442は、SICのように、計算負荷が大きな復号方式を用いることも可能である。基地局4a-1又は基地局4a-2は、ステップS321からの処理を繰り返す。
【0103】
以上説明したように、本実施形態における無線通信システム1aでは、端末局3が、送信データに所定のプリアンブルパターンが付与されたデータを示す端末アップリンク信号を移動中継局2aへ送信する。移動中継局2aは、特定サービスリストLを記憶しており、端末アップリンク信号に含まれるプリアンブルパターンと特定サービスリストLに含まれるプリアンブルパターンとを照合する。移動中継局2aは、照合結果に応じて端末アップリンク信号に含まれる送信データを優先キュー231又は一般キュー232のいずれかに振り分けて記録する。移動中継局2aは、基地局4a-1及び基地局4a-2と通信可能なタイミングで、優先キュー231に記録された送信データを優先して、優先キュー231及び一般キュー232キューに記録された送信データを示す信号を基地局4a-1又は基地局4a-2へ送信する。
【0104】
このような構成を有することにより、無線通信システム1aは、複数の衛星チャネルを用いる必要がなく、送受信側(端末局3側及び基地局4a-1、4a-2側)の双方の通信装置において複数のキャリア(搬送波)を同時に送受信可能な機構を必要としない。また、このような構成を有することにより、無線通信システム1aは、例えば、より迅速に(より転送遅延なく)端末送信データが基地局装置へ転送されることが望まれる特定サービスを優先して送信データを伝送することができる。よって、本実施形態における無線通信システム1aは、装置の複雑化を抑えつつ、データの転送遅延を抑制することができる。
【0105】
また、上述した実施形態によれば、移動中継局2aは、複数の端末局3から受信し、蓄積しておいたデータを、基地局4a-1、4a-2と通信可能なタイミングで、短い時間で一括して品質良く送信することができる。
【0106】
(第3の実施形態)
本実施形態では、移動中継局は、複数のアンテナにより端末アップリンク信号を受信する。以下では、第2の実施形態との差分を中心に説明する。
【0107】
図8は、第3の実施形態による無線通信システム1bの構成図である。同図において、
図6に示す第2の実施形態における無線通信システム1aと同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。無線通信システム1bは、移動中継局2bと、端末局3と、基地局4b-1と、基地局4b-2とを有する。複数の端末局3からそれぞれ送信された情報は、移動中継局2bを介して伝送され、基地局4b-1又は基地局4b-2によって収集される。
【0108】
無線通信システム1bが有する移動中継局2b、端末局3、基地局4b-1、及び基地局4b-2のそれぞれの数は任意であるが、端末局3の数は多数であることが想定され、基地局4b-1の数は複数であることが想定される。本実施形態において、基地局4b-1は、特定サービス用の基地局装置であり、基地局4b-2は、一般サービス用の基地局装置である。
【0109】
移動中継局2bは、N本のアンテナ21(Nは2以上の整数)と、端末通信部22bと、データ記憶部23と、基地局通信部26と、複数本のアンテナ25とを備える。N本のアンテナ21をそれぞれ、アンテナ21-1~21-Nと記載する。
【0110】
端末通信部22bは、N個の受信部221bと、N個の受信波形記録部222bと、N個の判定部223bとを有する。N個の受信部221bを、受信部221b-1~221b-Nと記載し、N個の受信波形記録部222bを、受信波形記録部222b-1~222b-Nと記載し、N個の判定部223bを、判定部223b-1~223bNと記載する。
【0111】
受信部221b-n(nは1以上N以下の整数)は、アンテナ21-nにより端末アップリンク信号を受信する。端末アップリンク信号は、報知信号送信部225bから送信された報知信号を端末局3が受信したことに応じて当該端末局3から送信される信号である。端末アップリンク信号には、端末送信データとプリアンブルパターンとが含まれる。受信部221b-nは、受信した端末アップリンク信号を判定部223b-n(nは1以上N以下の整数)へ出力する。
【0112】
判定部223b-nは、受信部221b-nから出力された端末アップリンク信号を取得する。判定部223b-nは、取得された端末アップリンク信号からプリアンブルパターンを抽出する。判定部223b-nは、特定サービスリスト記憶部224bに記憶された特定サービスリストを参照し、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと、特定サービスリストに含まれるプリアンブルパターンとを照合する。判定部223b-nは、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと同一のプリアンブルパターンが特定サービスリストに含まれているか否かを示す照合結果と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222b-n(nは1以上N以下の整数)へ出力する。
【0113】
受信波形記録部222b-nは、受信部221b-nが受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222b-nは、アンテナ21-nのアンテナ識別子と、アンテナ21-nにおける端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報をデータ記憶部23に書き込む。アンテナ識別子は、アンテナ21-nを特定する情報である。データ記憶部23は、アンテナ21-1~21-Nのそれぞれが受信した端末アップリンク信号の波形データを含む受信波形情報を記憶する。
【0114】
このとき、受信波形記録部222b-nは、特定サービスリストに含まれているプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合、データ記憶部23の優先キュー231に、上記のアンテナ識別子と受信時刻と受信波形情報とを書き込む。一方、受信波形記録部222は、特定サービスリストに含まれていないプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合、データ記憶部23の一般キュー232に、上記のアンテナ識別子と受信時刻と受信波形情報とを書き込む。
【0115】
本実施形態において、基地局4b-1及び基地局4b-2は同様の構成を有する。
基地局4b-1及び基地局4b-2は、複数のアンテナ局410と、MIMO受信部420と、基地局信号受信処理部430と、端末信号受信処理部450とを備える。
【0116】
端末信号受信処理部450は、受信波形情報が示す端末アップリンク信号の受信処理を行う。このとき、端末信号受信処理部450は、端末局3が送信に使用した無線通信方式により受信処理を行って端末送信データを取得する。端末信号受信処理部450は、分配部451と、N個の端末信号復調部452と、合成部453と、端末信号復号部454とを備える。N個の端末信号復調部452をそれぞれ、端末信号復調部452-1~452-Nと記載する。
【0117】
分配部451は、受信波形情報から同じ受信時刻の波形データを読み出し、読み出した波形データを、その波形データに対応付けられたアンテナ識別子に応じて端末信号復調部452-1~452-Nに出力する。つまり、分配部451は、アンテナ21-nのアンテナ識別子に対応付けられた波形データを、端末信号復調部452-nに出力する。
【0118】
端末信号復調部452-1~452-Nはそれぞれ、波形データが表す信号を復調し、復調により得られたシンボルを合成部453に出力する。端末信号復調部452-nは、波形データが表す信号に対して、移動中継局2のアンテナ21-nが受信した端末アップリンク信号のドップラーシフトを補償する処理を行ってから、復調を行ってもよい。各アンテナ21-nが受信した端末アップリンク信号が受けるドップラーシフトは、端末局3の位置と、移動中継局2bが搭載されているLEOの軌道情報に基づき予め計算される。
【0119】
合成部453は、端末信号復調部452-1~452-Nのそれぞれから入力したシンボルを加算合成し、端末信号復号部454に出力する。端末信号復号部454は、加算合成されたシンボルを復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。
【0120】
無線通信システム1bの動作を説明する。
図9は、端末局3から端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1bの処理を示すフロー図である。本フロー図が示す処理は、移動中継局2bの報知信号送信部225bが端末局3へ向けて報知信号を送信した際に開始される。なお、このとき端末局3は、外部又は内部に備えられた図示しないセンサが検出したデータを取得し、取得したデータをセンサデータとしてデータ記憶部31に随時書き込んでいる状態である。
【0121】
図9おいて、
図4に示す第1の実施形態と処理フローと同じ処理には、同一の符号を付している。端末局3は、
図4に示す第1の実施形態の処理フローにおけるステップS111~ステップS114の処理と同様の処理を行う。なお、端末局3は、他の端末局3と時分割多重、OFDM、MIMOなどにより送信を行ってもよい。
【0122】
移動中継局2bの受信部221b-1~221b-Nは、端末局3から送信された端末アップリンク信号をアンテナ21-nにより受信する(ステップS421)。送信元の端末局3の無線通信方式によって、同一の周波数については時分割で1台の端末局3からのみ端末アップリンク信号を受信する場合と、同一の周波数で同時に複数台の端末局3から端末アップリンク信号を受信する場合がある。受信部221b-nは、受信した端末アップリンク信号を判定部223b-nへ出力する。
【0123】
判定部223b-nは、受信部221から出力された端末アップリンク信号を取得する。判定部223b-nは、取得された端末アップリンク信号からプリアンブルパターンを抽出する(ステップS422)。判定部223b-nは、特定サービスリスト記憶部224bに記憶された特定サービスリストを参照し、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと、特定サービスリストに含まれるプリアンブルパターンとを照合する(ステップS423)。
【0124】
判定部223b-nは、端末アップリンク信号から抽出されたプリアンブルパターンと同一のプリアンブルパターンが特定サービスリストに含まれているか否かを示す照合結果と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222b-nへ出力する。受信波形記録部222b-nは、判定部223b-nから出力された照合結果と端末アップリンク信号とを取得する。受信波形記録部222b-nは、受信部221b-nが受信した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。
【0125】
受信波形記録部222b-nは、特定サービスリストに含まれているプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合(ステップS424・YES)、データ記憶部23の優先キュー231に、アンテナ21-nのアンテナ識別子と、アンテナ21-nにおける端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報を書き込む(ステップS425)。一方、受信波形記録部222b-nは、特定サービスリストに含まれていないプリアンブルパターンであることを示す照合結果を取得した場合(ステップS424・NO)、データ記憶部23の一般キュー232に、アンテナ21-nのアンテナ識別子と、アンテナ21-nにおける端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報を書き込む(ステップS426)。移動中継局2は、ステップS421からの処理を繰り返す。
【0126】
移動中継局2bから基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1bの処理は、以下の処理を除いて、
図7に示す第2の実施形態の処理フローと同様である。すなわち、ステップS323において、端末信号受信処理部450は、受信波形情報が示す端末アップリンク信号の受信処理を行う。
【0127】
具体的には、分配部451は、受信波形情報から受信時刻が同じ波形データを読み出し、読み出した波形データを、その波形データに対応付けられたアンテナ識別子に応じて端末信号復調部452-1~452-Nに出力する。端末信号復調部452-1~452-Nはそれぞれ、波形データが表す受信信号に含まれる無線通信方式固有の情報に基づいて、端末局3が端末アップリンク信号の送信に用いた無線通信方式を特定する。端末信号復調部452-1~452-Nは、特定した無線通信方式に従って、波形データが表す受信信号を復調し、復調により得られたシンボルを合成部453に出力する。
【0128】
合成部453は、端末信号復調部452-1~452-Nのそれぞれから入力したシンボルを加算合成する。加算合成により、端末局3が送信した信号は相関があるために強調されるが、ランダムに付加される雑音の影響は低減される。そのため、移動中継局2bが同時に1台の端末局3からのみ受信した端末アップリンク信号についてはダイバーシティー効果が得られる。また、移動中継局2bが同時に複数台の端末局3から受信した端末アップリンク信号についてはMIMO通信を行うことに相当する。合成部453は、加算合成したシンボルを端末信号復号部454に出力する。
【0129】
端末信号復号部454は、合成部453により加算合成されたシンボルを特定された無線通信方式により復号し、端末局3から送信された端末送信データを得る。なお、端末信号復号部454は、SICのように、計算負荷が大きな復号方式を用いることも可能である。
【0130】
以上説明したように、本実施形態における無線通信システム1bでは、端末局3が、送信データに所定のプリアンブルパターンが付与されたデータを示す端末アップリンク信号を移動中継局2bへ送信する。移動中継局2bは、特定サービスリストLを記憶しており、端末アップリンク信号に含まれるプリアンブルパターンと特定サービスリストLに含まれるプリアンブルパターンとを照合する。移動中継局2bは、照合結果に応じて端末アップリンク信号に含まれる送信データを優先キュー231又は一般キュー232のいずれかに振り分けて記録する。移動中継局2bは、基地局4b-1及び基地局4b-2と通信可能なタイミングで、優先キュー231に記録された送信データを優先して、優先キュー231及び一般キュー232キューに記録された送信データを示す信号を基地局4b-1又は基地局4b-2へ送信する。
【0131】
このような構成を有することにより、無線通信システム1bは、複数の衛星チャネルを用いる必要がなく、送受信側(端末局3側及び基地局4b-1、4b-2側)の双方の通信装置において複数のキャリア(搬送波)を同時に送受信可能な機構を必要としない。また、このような構成を有することにより、無線通信システム1bは、例えば、より迅速に(より転送遅延なく)端末送信データが基地局装置へ転送されることが望まれる特定サービスを優先して送信データを伝送することができる。よって、本実施形態における無線通信システム1bは、装置の複雑化を抑えつつ、データの転送遅延を抑制することができる。
【0132】
また、上述した実施形態によれば、移動中継局2bは、端末局3から受信した端末アップリンク信号をダイバーシティー受信や、MIMO受信などにより受信する。よって、移動中継局2bと端末局3との間のリンクバジェットを向上させることができる。
【0133】
また、上述した実施形態によれば、移動中継局2bは、複数の端末局3から受信し、蓄積しておいたデータを、基地局4b-1、4b-2と通信可能なタイミングで、短い時間で一括して品質良く送信することができる。
【0134】
(第4の実施形態)
前述の第1~第3の実施形態における無線通信システム1,1a,1bでは、移動中継局2,2a,2bが、端末局3から受信した端末アップリンク信号からプリアンブルパターンを抽出し、抽出されたプリアンブルパターンと特定サービスリストLに含まれるプリアンブルパターンとの照合結果に応じて、受信波形情報を優先キュー231又は一般キュー232のいずれかに振り分ける構成であった。
【0135】
これに対し、以下に説明する第4の実施形態における無線通信システム1cでは、移動中継局2cが、優先端末IDリストを保持している構成である。優先端末IDリストとは、優先キュー231に受信波形情報が振り分けられる対象となる端末アップリンク信号を送信する端末局3cの端末IDのリストである。ここでいう端末IDとは、各々の端末局3を識別する識別情報である。移動中継局2cは、優先端末IDリストに含まれる少なくとも1つの端末IDを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3cへ向けて送信する。報知信号を受信した端末局3cは、報知信号に含まれる端末IDと自装置に予め付与された端末IDとを照合し、照合結果に応じて、端末送信データを設定した端末アップリンク信号を移動中継局2cへ送信する。
【0136】
以下、第4の実施形態における無線通信システム1cの構成の詳細について、第1の実施形態との差分を中心に説明する。
【0137】
図10は、第4の実施形態による無線通信システム1cの構成図である。無線通信システム1cは、移動中継局2cと、端末局3cと、基地局4-1と、基地局4-2とを有する。複数の端末局3cからそれぞれ送信された情報は、移動中継局2cを介して伝送され、基地局4-1又は基地局4-2によって収集される。
【0138】
各装置の構成を説明する。
移動中継局2cは、アンテナ21と、端末通信部22cと、データ記憶部23と、基地局通信部24と、アンテナ25とを備える。
【0139】
端末通信部22cは、受信部221と、受信波形記録部222cと、判定部223cと、報知信号送信部225cと、端末IDリスト記憶部226cとを有する。
【0140】
端末IDリスト記憶部226c(端末識別情報リスト記憶部)は、優先端末IDリストを予め記憶する。前述の通り、優先端末IDリストとは、優先キュー231に受信波形情報が振り分けられる対象となる端末アップリンク信号を送信する端末局3cの端末IDのリストである。ここでいう端末IDとは、各々の端末局3cを識別する識別情報である。
【0141】
報知信号送信部225cは、端末局3cに対し、報知信号を送信する。報知信号とは、自己の移動中継局2cへの端末送信データの送信を許可することを報知する制御信号である。報知信号送信部225cは、報知信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する。
【0142】
このとき、報知信号送信部225cは、端末IDリスト記憶部226cに記憶された優先端末IDリストに含まれる端末IDのうち少なくとも1つを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3cへ向けて送信する。
【0143】
受信部221は、アンテナ21により端末局3cから送信された端末アップリンク信号を受信する。端末アップリンク信号には、端末送信データが含まれる。受信部221は、受信した端末アップリンク信号を判定部223cへ出力する。
【0144】
判定部223cは、受信部221が端末アップリンク信号を受信した際の受信タイミングを特定する。ここでいう受信タイミングとは、例えば、報知信号送信部225cが端末局3cへ向けて報知信号を送信してからの経過時間、あるいは受信時刻である。判定部223cは、例えば、経過時間が所定の時間以内であるか否かの判定、あるいは、受信時刻が所定の時刻以前であるか否かの判定を行う。判定部223cは、判定結果を示す情報と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222cへ出力する。
【0145】
受信波形記録部222cは、判定部223cから取得した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222cは、アンテナ21における端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報とをデータ記憶部23に書き込む。
【0146】
このとき、受信波形記録部222cは、前述の経過時間が所定の時間以内であることを示す判定結果を取得した場合、あるいは、前述の受信時刻が所定の時刻以前であることを示す判定結果を取得した場合、データ記憶部23の優先キュー231に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む。一方、受信波形記録部222cは、前述の経過時間が所定の時間を超過していることを示す判定結果を取得した場合、あるいは、前述の受信時刻が所定の時刻より後の時刻であることを示す判定結果を取得した場合、データ記憶部23の一般キュー232に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む。
【0147】
なお、移動中継局2cから、基地局4-1及び基地局4-2への基地局ダウンリンク信号の送信に関する構成については、第1の実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0148】
端末局3cは、データ記憶部31と、送信部32と、1本または複数本のアンテナ33と、受信部34と、送信制御部35cと、端末ID記憶部36とを備える。
【0149】
データ記憶部31は、センサデータなどを記憶する。センサデータは、端末局3cを有するIoT端末によって生成され、端末局3cから移動中継局2cへ送信されるデータである。センサデータは、例えば、端末局3cを有するIoT端末の周囲の温度、湿度、又は潮流等を示す環境データである。
【0150】
端末ID記憶部36は、自装置に予め付与された識別情報である、自装置の端末IDを予め記憶している。
【0151】
受信部34は、移動中継局2cから送信された報知信号を受信する。受信部34は、報知信号を送信制御部35cへ出力する。
【0152】
送信制御部35cは、受信部34から報知信号を取得する。送信制御部35cは、取得された報知信号に少なくとも1つ含まれている端末IDを抽出する。また、送信制御部35cは、端末ID記憶部36に予め記録されている自装置の端末IDを読み出す。送信制御部35cは、抽出された端末IDと、自装置の端末IDとを照合する。
【0153】
送信制御部35cは、照合結果に応じて移動中継局2cへの端末アップリンク信号の送信タイミングを異ならせる。例えば、送信制御部35cは、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれている場合、送信部32を制御し、即時に端末アップリンク信号の送信を開始させる。一方、送信制御部35cは、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれていない場合、送信部32を制御し、所定の時間が経過した後に端末アップリンク信号の送信を開始させる。
【0154】
送信部32は、送信制御部35cの制御の下で、移動中継局2cへの端末アップリンク信号の送信を行う。送信部32は、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出す。送信部32は、読み出した端末送信データを設定した端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する。
【0155】
このような構成を備えることにより、本実施形態における移動中継局2cは、報知信号に含まれない端末IDが付与された端末局3cに比べて、報知信号に含まれる端末IDが付与された端末局3cから、より早い受信タイミングで端末アップリンク信号を受信することができ、受信波形情報を優先キュー231に記録することができる。
【0156】
無線通信システム1cの動作を説明する。
図11は、端末局3cから端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1cの処理を示すフロー図である。本フロー図が示す処理は、移動中継局2cが、端末局3cへ向けて報知信号を送信するタイミングになった際に開始される。
【0157】
報知信号送信部225cは、端末IDリスト記憶部226cに記憶された優先端末IDリストに含まれる端末IDのうち少なくとも1つを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3cへ向けて送信する(ステップS501)。
【0158】
端末局3cの受信部34は、移動中継局2cから送信される報知信号の受信を待ち受ける(ステップS511)。受信部34は、報知信号を受信した場合(ステップS511・YES)、報知信号を送信制御部35cへ出力する。送信制御部35cは、受信部34から報知信号を取得すると、取得された報知信号に少なくとも1つ含まれている端末IDを抽出する(ステップS512)。
【0159】
送信制御部35cは、端末ID記憶部36に予め記録されている自装置の端末IDを読み出す。送信制御部35cは、抽出された端末IDと、自装置の端末IDとを照合する(ステップS513)。
【0160】
送信制御部35cは、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれている場合(ステップS513・YES)、送信部32を制御し、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出させ(ステップS515)、端末送信データが設定された端末アップリンク信号の送信を即時に開始させる(ステップS516)。
【0161】
一方、送信制御部35cは、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれていない場合(ステップS513・NO)、所定の時間だけ待機した後(ステップS514)、送信部32を制御し、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出させ(ステップS515)、端末送信データが設定された端末アップリンク信号の送信を即時に開始させる(ステップS516)。端末局3cは、ステップS511からの処理を繰り返す。
【0162】
移動中継局2cの受信部221は、端末局3cから送信された端末アップリンク信号をアンテナ21により受信する(ステップS521)。受信部221は、受信した端末アップリンク信号を判定部223cへ出力する。判定部223cは、受信部221が端末アップリンク信号を受信した際の受信タイミングを特定する(ステップS522)。ここでは一例として、受信タイミングは、報知信号送信部225cが端末局3cへ向けて報知信号を送信してからの経過時間であるものとする。判定部223cは、判定結果を示す情報と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222cへ出力する。
【0163】
受信波形記録部222cは、前述の経過時間が所定の時間以内であることを示す判定結果を取得した場合(ステップS523・YES)、データ記憶部23の優先キュー231に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む(ステップS524)。一方、受信波形記録部222cは、前述の経過時間が所定の時間を超過していることを示す判定結果を取得した場合(ステップS523・NO)、データ記憶部23の一般キュー232に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む(ステップS525)。移動中継局2cは、ステップS521からの処理を繰り返す。
【0164】
なお、移動中継局2cから基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1cの処理は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0165】
以上説明したように、本実施形態における無線通信システム1cでは、移動中継局2cは、優先端末IDリストを記憶している。優先端末IDリストは、優先キュー231に受信波形情報を記録させる(特定サービスの)端末送信データを送信する端末局3cに付与された端末IDのリストである。移動中継局2cは、優先端末IDリストに含まれる端末IDを含めた報知信号を、少なくとも1つの端末局3cへ向けて送信する。端末局3cは、受信した報知信号から端末IDを抽出し、抽出された端末IDと自装置の端末IDとを照合する。端末局3cは、照合結果に応じて移動中継局2cへの端末アップリンク信号の送信タイミングを異ならせる。移動中継局2cは、端末局3cから受信した端末アップリンク信号の受信タイミングに応じて受信波形情報を優先キュー231又は一般キュー232に振り分けて記録する。
【0166】
このような構成を有することにより、無線通信システム1cは、複数の衛星チャネルを用いる必要がなく、送受信側(端末局3c側及び基地局4-1、4-2側)の双方の通信装置において複数のキャリア(搬送波)を同時に送受信可能な機構を必要としない。また、このような構成を有することにより、無線通信システム1cは、例えば、より迅速に(より転送遅延なく)端末送信データが基地局装置へ転送されることが望まれる特定サービスを優先して送信データを伝送することができる。よって、本実施形態における無線通信システム1cは、装置の複雑化を抑えつつ、データの転送遅延を抑制することができる。
【0167】
なお、本実施形態では、移動中継局2cが、優先端末IDリストに含まれる端末IDを含めた報知信号を端末局3cへ向けて送信する構成であるが、これに限られるものではない。例えば、移動中継局2cが、特定サービスを示す情報を含めた報知信号を端末局3cへ向けて送信するようしてもよい。この場合、各々の端末局3cは、例えば、自装置が提供するサービスを示す情報を予め記憶している。端末局3cは、自装置が提供するサービスを示す情報と、報知信号に含まれる特定サービスを示す情報とを照合し、照合結果に応じて移動中継局2cへの端末アップリンク信号の送信タイミングを異ならせるようにしてもよい。
【0168】
(第5の実施形態)
前述の第4の実施形態における無線通信システム1cでは、移動中継局2cが、優先端末IDリストに含まれる少なくとも1つの端末IDを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3cへ向けて送信する。報知信号を受信した端末局3cは、報知信号に含まれる端末IDと自装置に予め付与された端末IDとを照合し、照合結果に応じた送信タイミングで、端末送信データを設定した端末アップリンク信号を移動中継局2cへ送信する構成であった。
【0169】
これに対し、第5の実施形態における無線通信システム1dでは、移動中継局2dが、優先端末IDリストに含まれる少なくとも1つの端末IDを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3cへ向けて送信する場合と、端末IDを含めずに報知信号を端末局3cへ向けて送信する場合とがある。優先端末IDリストとは、前述の通り、優先キュー231に受信波形情報が振り分けられる対象となる端末アップリンク信号を送信する端末局3dの端末IDのリストである。ここでいう端末IDとは、各々の端末局3を識別する識別情報である。
【0170】
移動中継局2dは、優先端末IDリストに含まれる少なくとも1つの端末IDを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3dへ向けて送信する。次に、移動中継局2dは、所定の時間だけ待機した後に、端末IDを含まない報知信号を端末局3dへ向けて送信する。報知信号を受信した端末局3dは、報知信号に端末IDが含まれている場合、当該報知信号に含まれる端末IDと自装置に予め付与された端末IDとを照合する。端末局3dは、報知信号に含まれる端末IDに自装置の端末IDが含まれていた場合に、端末送信データを設定した端末アップリンク信号を移動中継局2dへ送信する。
【0171】
一方、報知信号を受信した端末局3dは、報知信号に端末IDが含まれていない場合、端末送信データを設定した端末アップリンク信号を移動中継局2dへ送信する。
このような構成により、第5の実施形態における無線通信システム1dでは、移動中継局2dが、優先端末IDリストに含まれる端末IDが付与された端末局3dからの端末アップリンク信号のみを先に受信し、全ての端末局3dからの端末アップリンク信号を後から受信することができる。
【0172】
以下、第5の実施形態における無線通信システム1dの構成の詳細について、第4の実施形態との差分を中心に説明する。
【0173】
図12は、第5の実施形態による無線通信システム1dの構成図である。無線通信システム1dは、移動中継局2dと、端末局3dと、基地局4-1と、基地局4-2とを有する。複数の端末局3dからそれぞれ送信された情報は、移動中継局2dを介して伝送され、基地局4-1又は基地局4-2によって収集される。
【0174】
各装置の構成を説明する。
移動中継局2dは、アンテナ21と、端末通信部22dと、データ記憶部23と、基地局通信部24と、アンテナ25とを備える。
【0175】
端末通信部22dは、受信部221と、受信波形記録部222dと、判定部223dと、報知信号送信部225dと、端末IDリスト記憶部226dとを有する。
【0176】
端末IDリスト記憶部226d(端末識別情報リスト記憶部)は、優先端末IDリストを予め記憶する。前述の通り、優先端末IDリストとは、優先キュー231に受信波形情報が振り分けられる対象となる端末アップリンク信号を送信する端末局3dの端末IDのリストである。ここでいう端末IDとは、各々の端末局3dを識別する識別情報である。
【0177】
報知信号送信部225dは、端末局3dに対し、報知信号を送信する。報知信号とは、自己の移動中継局2dへの端末送信データの送信を許可することを報知する制御信号である。報知信号送信部225dは、報知信号が設定された端末ダウンリンク信号をアンテナ21から無線により送信する。
【0178】
このとき、報知信号送信部225dは、端末IDリスト記憶部226dに記憶された優先端末IDリストに含まれる端末IDのうち少なくとも1つを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3dへ向けて送信する。次に、移動中継局2dは、所定の時間だけ待機した後に、端末IDを報知信号に含めずに、当該報知信号を端末局3dへ向けて送信する。
【0179】
受信部221は、アンテナ21により端末局3cから送信された端末アップリンク信号を受信する。端末アップリンク信号には、端末送信データが含まれる。受信部221は、受信した端末アップリンク信号を判定部223dへ出力する。
【0180】
判定部223dは、受信部221が端末アップリンク信号を受信した際の受信タイミングを特定する。ここでいう受信タイミングとは、例えば、報知信号送信部225cが端末局3dへ向けて優先端末IDリストに含まれる端末IDを含めた報知信号を送信してからの経過時間、あるいは受信時刻である。判定部223dは、例えば、経過時間が所定の時間以内であるか否かの判定、あるいは、受信時刻が所定の時刻以前であるか否かの判定を行う。判定部223dは、判定結果を示す情報と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222dへ出力する。
【0181】
受信波形記録部222dは、判定部223dから取得した端末アップリンク信号の受信波形をサンプリングし、サンプリングにより得られた値を示す波形データを生成する。受信波形記録部222dは、アンテナ21における端末アップリンク信号の受信時刻と、生成した波形データとを設定した受信波形情報とをデータ記憶部23に書き込む。
【0182】
このとき、受信波形記録部222dは、前述の経過時間が所定の時間以内であることを示す判定結果を取得した場合、あるいは、前述の受信時刻が所定の時刻以前であることを示す判定結果を取得した場合、データ記憶部23の優先キュー231に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む。一方、受信波形記録部222cは、前述の経過時間が所定の時間を超過していることを示す判定結果を取得した場合、あるいは、前述の受信時刻が所定の時刻より後の時刻であることを示す判定結果を取得した場合、データ記憶部23の一般キュー232に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む。
【0183】
なお、移動中継局2dから、基地局4-1及び基地局4-2への基地局ダウンリンク信号の送信に関する構成については、第1の実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0184】
端末局3dは、データ記憶部31と、送信部32と、1本または複数本のアンテナ33と、受信部34と、送信制御部35dと、端末ID記憶部36とを備える。
【0185】
データ記憶部31は、センサデータなどを記憶する。センサデータは、端末局3dを有するIoT端末によって生成され、端末局3dから移動中継局2dへ送信されるデータである。センサデータは、例えば、端末局3dを有するIoT端末の周囲の温度、湿度、又は潮流等を示す環境データである。
【0186】
端末ID記憶部36は、自装置に予め付与された識別情報である、自装置の端末IDを予め記憶している。
【0187】
受信部34は、移動中継局2dから送信された報知信号を受信する。受信部34は、報知信号を送信制御部35dへ出力する。
【0188】
送信制御部35dは、受信部34から報知信号を取得する。送信制御部35dは、取得された報知信号に少なくとも1つの端末IDが含まれている場合、当該端末IDを抽出する。また、送信制御部35dは、端末ID記憶部36に予め記録されている自装置の端末IDを読み出す。送信制御部35dは、抽出された端末IDと、自装置の端末IDとを照合する。
【0189】
送信制御部35dは、照合結果に応じて移動中継局2dへの端末アップリンク信号を送信するか否かを決定する。例えば、送信制御部35dは、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれている場合、送信部32を制御し、端末アップリンク信号の送信を開始させる。一方、送信制御部35dは、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれていない場合、端末アップリンク信号の送信を行わない。
【0190】
一方、送信制御部35dは、取得された報知信号に端末IDが含まれていない場合、送信部32を制御し、端末アップリンク信号の送信を開始させる。
【0191】
送信部32は、送信制御部35dの制御の下で、移動中継局2dへの端末アップリンク信号の送信を行う。送信部32は、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出す。送信部32は、読み出した端末送信データを設定した端末アップリンク信号をアンテナ33から無線により送信する。
【0192】
このような構成を備えることにより、本実施形態における移動中継局2dは、報知信号に含まれない端末IDが付与された端末局3dに比べて、報知信号に含まれる端末IDが付与された端末局3dから、より早い受信タイミングで端末アップリンク信号を受信することができ、受信波形情報を優先キュー231に記録することができる。
【0193】
無線通信システム1dの動作を説明する。
図13は、端末局3dから端末アップリンク信号を送信する場合の無線通信システム1dの処理を示すフロー図である。本フロー図が示す処理は、移動中継局2dが、端末局3dへ向けて報知信号を送信するタイミングになった際に開始される。
【0194】
報知信号送信部225dは、端末IDリスト記憶部226dに記憶された優先端末IDリストに含まれる端末IDのうち少なくとも1つを報知信号に含めて、当該報知信号を端末局3dへ向けて送信する(ステップS601)。報知信号送信部225dは、所定の時間だけ待機した後(ステップS602)、端末IDを報知信号に含めずに、当該報知信号を端末局3dへ向けて送信する(ステップS603)。
【0195】
端末局3dの受信部34は、移動中継局2dから送信される報知信号の受信を待ち受ける(ステップS611)。受信部34は、報知信号を受信した場合(ステップS611・YES)、報知信号を送信制御部35dへ出力する。送信制御部35dは、受信部34から報知信号を取得すると、取得された報知信号に端末IDが含まれているか否かを検出する(ステップS612)。
【0196】
送信制御部35dは、取得された報知信号に少なくとも1つの端末IDが含まれている場合、端末ID記憶部36に予め記録されている自装置の端末IDを読み出す。送信制御部35dは、抽出された端末IDと、自装置の端末IDとを照合する。
【0197】
送信制御部35dは、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれている場合、又は、取得された報知信号に端末IDが含まれていない場合(ステップS613・YES)、送信部32を制御し、データ記憶部31からセンサデータを端末送信データとして読み出させ(ステップS614)、端末送信データが設定された端末アップリンク信号の送信を開始させる(ステップS615)。一方、送信制御部35dは、取得された報知信号に端末IDが含まれており、かつ、抽出された少なくとも1つの端末IDの中に自装置の端末IDが含まれていない場合(ステップS613・NO)、端末アップリンク信号の送信を行わない。端末局3dは、ステップS611からの処理を繰り返す。
【0198】
移動中継局2dの受信部221は、端末局3dから送信された端末アップリンク信号をアンテナ21により受信する(ステップS621)。受信部221は、受信した端末アップリンク信号を判定部223dへ出力する。判定部223dは、受信部221が端末アップリンク信号を受信した際の受信タイミングを特定する(ステップS622)。ここでは一例として、受信タイミングは、報知信号送信部225dが端末局3dへ向けて優先端末IDリストに含まれる端末IDを含めた報知信号を送信してからの経過時間であるものとする。判定部223dは、判定結果を示す情報と、端末アップリンク信号とを、受信波形記録部222dへ出力する。
【0199】
受信波形記録部222dは、前述の経過時間が所定の時間以内であることを示す判定結果を取得した場合(ステップS623・YES)、データ記憶部23の優先キュー231に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む(ステップS624)。一方、受信波形記録部222dは、前述の経過時間が所定の時間を超過していることを示す判定結果を取得した場合(ステップS623・NO)、データ記憶部23の一般キュー232に、上記の受信時刻と受信波形情報とを書き込む(ステップS625)。移動中継局2dは、ステップS621からの処理を繰り返す。
【0200】
なお、移動中継局2dから基地局ダウンリンク信号を送信する場合の無線通信システム1dの処理は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0201】
以上説明したように、本実施形態における無線通信システム1dでは、移動中継局2dは、優先端末IDリストを記憶している。優先端末IDリストは、優先キュー231に受信波形情報を記録させる(特定サービスの)端末送信データを送信する端末局3cに付与された端末IDのリストである。
【0202】
移動中継局2dは、優先端末IDリストに含まれる端末IDを含めた報知信号を、少なくとも1つの端末局3dへ向けて送信する。次に、移動中継局2dは、所定の時間だけ待機した後、端末IDを含めずに報知信号を、少なくとも1つの端末局3dへ向けて送信する。端末局3dは、受信した報知信号に端末IDが含まれているか否かを検出する。端末局3dは、受信した報知信号に端末IDが含まれている場合、抽出された端末IDと自装置の端末IDとを照合する。端末局3dは、上記の検出結果及び照合結果に応じて移動中継局2dへ端末アップリンク信号を送信するか否かを決定する。例えば、端末局3dは、抽出された端末IDに自装置の端末IDが含まれている場合、又は、受信した報知信号に端末IDが含まれていない場合に、移動中継局2dへ端末アップリンク信号を送信する。移動中継局2dは、端末局3dから受信した端末アップリンク信号の受信タイミングに応じて受信波形情報を優先キュー231又は一般キュー232に振り分けて記録する。
【0203】
このような構成を有することにより、無線通信システム1dは、複数の衛星チャネルを用いる必要がなく、送受信側(端末局3d側及び基地局4-1、4-2側)の双方の通信装置において複数のキャリア(搬送波)を同時に送受信可能な機構を必要としない。また、このような構成を有することにより、無線通信システム1dは、例えば、より迅速に(より転送遅延なく)端末送信データが基地局装置へ転送されることが望まれる特定サービスを優先して送信データを伝送することができる。よって、本実施形態における無線通信システム1dは、装置の複雑化を抑えつつ、データの転送遅延を抑制することができる。
【0204】
なお、本実施形態では、移動中継局2dが、優先端末IDリストに含まれる端末IDを含めた報知信号を端末局3dへ向けて送信した後、端末IDを含めずに報知信号を端末局3dへ向けて送信したする構成であるが、これに限られるものではない。例えば、移動中継局2dが、特定サービスを示す情報を含めた報知信号を端末局3dへ向けて送信した後、サービスを示す情報を含めずに報知信号を端末局3dへ向けて送信するようしてもよい。この場合、各々の端末局3dは、例えば、自装置が提供するサービスを示す情報を予め記憶している。端末局3dは、受信した報知信号に特定サービスを示す情報が含まれているか否かを検出する。端末局3dは、受信した報知信号に特定サービスを示す情報が含まれている場合、自装置が提供するサービスを示す情報と、報知信号に含まれる特定サービスを示す情報とを照合する。端末局3dは、上記の検出結果及び照合結果に応じて移動中継局2cへの端末アップリンク信号を送信するようにしてもよい。
【0205】
以上説明した各実施形態によれば、移動中継局は、端末局から受信した無線の端末アップリンク信号を復調することなく、その受信信号波形の情報の保存及び蓄積を行い、基地局に通信可能なタイミングで無線により伝送する。基地局は、移動中継局における受信信号波形により表される端末アップリンク信号に復調・復号などの受信処理を行う。よって、低軌道衛星を用いた無線通信システムに、通信方式に依存しない非再生中継方式を適用することができる。また、非再生中継を行うため、移動中継局は、端末局に用いられる無線通信方式を実装する必要がない。例えば、新たな無線通信方式で通信する端末局が加わった場合でも、移動中継局に変更を行う必要なく、地上に設置された基地局にその無線通信方式を追加する変更を行えばよい。したがって、様々なIoTシステムの同時収容が可能であり、IoTシステムの更新にも容易に対応可能である。また、各端末局が受けた大きなドップラーシフトを移動中継局で処理せず、基地局で行うことが可能であるため、ドップラーシフトを補償するための複雑な非線形演算を移動中継局に実装する必要がない。
【0206】
なお、以上説明した各実施形態によれば、移動中継局は、端末局から受信した無線の端末アップリンク信号を復調しない構成であるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、移動中継局が、端末アップリンク信号を復調及び復号し、復号後のデータを基地局へ伝送する構成であってもよい。
【0207】
なお、上記実施形態において、移動中継局が搭載される移動体は、LEO衛星である場合を説明したが、静止衛星、ドローンやHAPSなど上空を飛行する他の飛行体であってもよい。
【0208】
なお、上記実施形態では、特定の端末送信データを優先的に伝送するための構成の一例として、特定の端末送信データを時間的により早く送信する構成について説明した。例えば、移動中継局から互いに異なる位置に点在する複数の端末局へ報知信号が送信された場合に、移動中継局の仰角が小さく、通信可能時間帯が間もなく終了する位置関係となる端末局が存在することがある。このような場合、より早く特定の端末送信データを送信することが求められることから、上記のような構成が有効である。
【0209】
但し、このような構成に限られるものではない。例えば、特定の端末送信データを優先的に伝送するための構成として、特定の端末送信データを、移動中継局と端末局との距離が相対的により近いタイミングで送信するような構成であってもよい。又は、例えば、特定の端末送信データを優先的に伝送するための構成として、特定の端末送信データを、端末局の位置における移動中継局の仰角がより大きいタイミングで送信するような構成であってもよい。一般的に、移動中継局と端末局との距離が相対的により近いタイミング、及び端末局の位置における移動中継局の仰角がより大きいタイミングでは、通信品質が良好である場合が多い。このような構成を備えることにより、移動中継局が、特定の端末送信データを、より通信品質が良好であるタイミングで送信することが可能になる。
【0210】
なお、プリアンブルパターンは、どのような単位で付与されるものであってもよい。例えば、プリアンブルパターンは、無線通信システムによって提供される複数のサービスについて、サービスごとに固有に付与されている構成であってもよい。または例えば、プリアンブルパターンは、端末局ごと、あるいは端末局の機種ごとに固有に付与されている構成であってもよい。または例えば、プリアンブルパターンは、無線通信システムによって提供されるサービスの利用者ごと、提供者ごと、あるいは端末局の利用者ごとに固有に付与されている構成であってもよい。
【0211】
なお、移動中継局に記憶されている特定サービスリストは、例えば基地局から更新用の特定サービスリストのデータを送信することによって更新が可能に構成されてもよい。この場合、無線通信システムによって提供されるサービスが新規に追加されたり、新しい端末局が設置されたりした場合でも、特定サービスリストを更新するだけで、サービスレベルの設定や変更を容易に行うことができる。なお、サービスレベルの変更とは、例えば、優先サービスから一般サービスへの変更、又は一般サービスから優先サービスへの変更である。
【0212】
なお、上記実施形態では、一例として、データ記憶部23が、優先キュー231と一般キュー232との2つのキューを有する構成であるものとした。すなわち、上記実施形態では、一例として、優先レベルが2段階(優先または一般)であるものとした。但し、このような構成に限られるものではなく、優先レベルが3段階以上に設定可能な構成であってもいよい。また、上記実施形態では、一例として、無線通信システムが、特定サービス用の基地局装置と、一般サービス用の基地局装置との2種類の基地局装置を有する構成であるものとした。但し、このような構成に限られるものではなく、例えば上記優先レベルの個数に応じて、無線通信システムが3種類以上の基地局装置を有する構成であってもよい。
【0213】
なお、基本的には、優先キュー231及び一般キュー232が十分な記憶容量を有していることが望まれる。例えば、優先キュー231及び一般キュー232に大量のデータが記録されている状態となり、通信可能時間帯の間に基地局へ全てのデータを送信しきれなかった場合でも、移動中継局の次の周回時を待って、基地局へデータの送信を再開すればよい。
【0214】
なお、それでも優先キュー231の記憶容量の上限にまでデータが蓄積された場合には、例えば、移動中継局は、優先キュー231に記録されるべきであった超過分のデータを、代わりに一般キュー232に記録するようにしてもよい。また、移動中継局は、代わりに一般キュー232に記録されたデータを、例えば、優先キュー231に空き容量が発生した場合に優先キュー231へ転記させるようにしてもよい。
【0215】
上述した実施形態によれば、無線通信システムは、複数の端末装置と、移動体に搭載された中継装置と、少なくとも1つの基地局装置とを有する。例えば、端末装置は、実施形態における端末局3、3c、3dであり、移動体は、実施形態における低軌道衛星であり、中継装置は、実施形態における移動中継局2、2a、2b、2c、2dであり、基地局装置は、実施形態における基地局4-1、4a-1、4b-1、4-2、4a-2、4b-2である。
【0216】
端末装置は、端末装置送信部を備える。例えば、端末装置送信部は、実施形態における送信部32、アンテナ33、及び送信制御部35、35c、35dである。端末装置送信部は、送信データを含む信号を中継装置へ送信する。例えば、送信データは、実施形態における端末送信データであり、信号は、実施形態における端末アップリンク信号である。
【0217】
中継装置(無線通信装置)は、中継装置受信部と、複数のキューと、振分部と、中継装置送信部とを備える。例えば、中継装置受信部は、実施形態におけるアンテナ21、21-1~21-N、及び受信部221、221b-1~221b-Nであり、複数のキューは、実施形態における優先キュー231及び一般キュー232であり、振分部は、実施形態における判定部223、223c、223dであり、中継装置送信部は、実施形態における基地局通信部24、26、及びアンテナ25である。
【0218】
中継装置受信部は、端末装置から送信された信号を受信する。複数のキューは、信号に含まれる送信データを記憶する。振分部は、信号に含まれるプリアンブルパターン又は前記信号の受信タイミングに基づいて信号に含まれる送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する。中継装置送信部は、基地局装置と通信可能なタイミングで、複数のキューのうち所定のキューに記録された送信データを優先して、複数のキューに記録された送信データを示す信号を基地局装置へ送信する。例えば、信号は、実施形態における基地局ダウンリンク信号である。
【0219】
なお、端末装置送信部は、送信データに所定のプリアンブルパターンが付与されたデータを示す信号を中継装置へ送信するようにしてもよい。この場合、中継装置は、中継装置記憶部をさらに備えていてもよい。中継装置記憶部は、プリアンブルパターンのリストを記憶する。この場合、振分部は、信号に含まれるプリアンブルパターンとリストに含まれるプリアンブルパターンとを照合し、照合結果に応じて送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録するようしてもよい。例えば、中継装置記憶部は、実施形態における特定サービスリスト記憶部224であり、プリアンブルパターンのリストは、実施形態における特定サービスリストLである。
【0220】
なお、端末装置は、端末装置受信部と、送信制御部とをさらに備えていてもよい。端末装置受信部は、中継装置から送信された、複数の端末装置を識別する少なくとも1つの識別情報を含む端末識別情報リストを受信する。送信制御部は、端末識別情報リストに自装置の識別情報が含まれているか否かに応じて、信号を中継装置へ送信するタイミングを異ならせるように端末装置送信部を制御する。この場合、振分部は、受信タイミングに基づいて送信データを複数のキューのいずれかに振り分けて記録する。例えば、端末装置受信部は、実施形態における受信部34であり、識別情報は、実施形態における端末IDであり、端末識別情報リストは、実施形態における優先端末IDリストに含まれる少なくとも1つの端末IDのリストであり、送信制御部は、実施形態における送信制御部35c、35dである。
【0221】
なお、端末装置は、端末装置受信部と、送信制御部とをさらに備えていてもよい。端末装置受信部は、中継装置から送信された報知信号を受信する。送信制御部は、報知信号に前記複数の端末装置を識別する少なくとも1つの識別情報を含む端末識別情報リストが含まれており、端末識別情報リストに自装置の識別情報が含まれている場合、又は、報知信号に端末識別情報リストが含まれていない場合、信号を中継装置へ送信する。この場合、中継装置は、中継装置送信部をさらに備えていてもよい。中継装置送信部は、端末識別情報リストが含まれる報知信号と端末識別情報リストが含まれない報知信号とを異なるタイミングで前記端末装置へ送信する。この場合、振分部は、前記受信タイミングに基づいて前記送信データを前記複数のキューのいずれかに振り分けて記録するようにしてもよい。例えば、端末識別情報リストは、実施形態における優先端末IDリストに含まれる少なくとも1つの端末IDのリストである。
【0222】
なお、無線通信システムは、第1基地局装置と、第2基地局装置とを有していてもよい。例えば、第1基地局装置は、実施形態における基地局4-1、4a-1、4b-1であり、第2基地局装置は、実施形態における基地局4-2、4a-2、4b-2である。なお、中継装置送信部は、第1基地局装置と通信可能なタイミングで、所定のキューに記録された送信データを第1基地局装置へ送信するようにしてもよい。例えば、所定のキューは、実施形態における優先キュー231である。また、中継装置送信部は、第2基地局装置と通信可能なタイミングで、所定のキューに記録された送信データを優先して、複数のキューに記録された送信データを第2基地局装置へ送信するようにしてもよい。
なお、無線通信システムは、複数の第1基地局装置を有していてもよい。
【0223】
なお、中継装置送信部は、所定のキューに記録された送信データを先に送信し、所定のキューとは異なるキューに記録された送信データを後に送信するようにしてもよい。例えば、所定のキューとは異なるキューは、実施形態における一般キュー232である。
【0224】
なお、中継装置送信部は、所定のキューに記録された送信データを中継装置と第2基地局装置との間の距離が相対的に近いタイミングで送信し、所定のキューとは異なるキューに記録された送信データを距離が相対的に遠いタイミングで送信するようにしてもよい。
【0225】
なお、中継装置は、飛行体である移動体に搭載されていてもよい。中継装置送信部は、所定のキューに記録された送信データを第2基地局装置の位置における中継装置の仰角が相対的に大きいタイミングで送信し、所定のキューとは異なるキューに記録された送信データを仰角が相対的に小さいタイミングで送信するようにしてもよい。
【0226】
なお、中継装置は低軌道衛星に備えられ、端末装置及び基地局装置は地球上に設置されていてもよい。
【0227】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0228】
上述した実施形態における移動中継局2,2a,2b、2c、2d、端末局33c,3d、及び基地局4-1,4-2,4a-1,4a-2,4b-1,4b-2をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0229】
1、1a、1b、1c、1d…無線通信システム,
2、2a、2b、2c、2d…移動中継局,
3、3c、3d…端末局,
4-1、4a-1、4b-1、4-2、4a-2、4b-2…基地局,
21、21-1~21-N…アンテナ,
22、22b,22c,22d…端末通信部,
23…データ記憶部,
24、26…基地局通信部,
25…アンテナ,
31…データ記憶部,
32…送信部,
33…アンテナ,
34…受信部,
35、35c、35d…送信制御部,
36…端末ID記憶部,
41…アンテナ,
42…受信部,
43、430…基地局信号受信処理部,
44…端末信号受信処理部,
221、221b-1~221b-N…受信部,
222、222b-1~222b-N、222c、222d…受信波形記録部,
223,223b-1~223b-N、223c、223d…判定部,
224、224b…特定サービスリスト記憶部,
225、225b、225c、225d…報知信号送信部,
226c、226d…端末IDリスト記憶部,
231…優先キュー,
232…一般キュー,
241、261…記憶部,
242、262…制御部,
243、263…送信データ変調部,
244…送信部,
264…MIMO送信部,
311…センサデータ,
312…軌道情報,
313…自己位置情報,
314…出力制御情報,
351…タイミング制御部,
352…距離算出部,
353…出力制御部,
410…アンテナ局,
420…MIMO受信部,
430…基地局信号受信処理部,
441…端末信号復調部,
442…端末信号復号部,
450…端末信号受信処理部,
451…分配部,
452-1~452-N…端末信号復調部,
453…合成部,
454…端末信号復号部