(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】制御方法、および通信制御装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/022 20170101AFI20241204BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20241204BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241204BHJP
【FI】
H04B7/022
H04W16/26
H04W16/28
(21)【出願番号】P 2022574989
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2021001252
(87)【国際公開番号】W WO2022153484
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157284(JP,A)
【文献】特開2015-164271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0068462(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0020363(US,A1)
【文献】特開2005-159849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02- 7/12
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散アンテナシステムにおける複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームを選択する選択ステップと、
前記一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに信号の受信電力の測定結果に基づいて取得された、前記一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせを示す組合せ情報を参照し、前記一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するための候補ビームとして、
当該一部の基地局以外の基地局の複数のビームのうち、前記組み合わせ情報において前記選択ステップにより選択されたビームに予め対応付けられた候補ビームを割り当てる割り当てステップと、
を備えた制御方法。
【請求項2】
分散アンテナシステムにおける複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームを選択する選択ステップと、
前記一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに前記一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせを示す組合せ情報を参照することにより、前記一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するための候補ビームとして、前記選択ステップにより選択されたビームに予め対応付けられた候補ビームを割り当てる割り当てステップと、
を備え、
前記組合せ情報は、前記一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに前記一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせで通信が行われた回数をさらに示す
制御方法。
【請求項3】
分散アンテナシステムにおける複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームを選択する選択ステップと、
前記一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに前記一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせを示す組合せ情報を参照することにより、前記一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するための候補ビームとして、前記選択ステップにより選択されたビームに予め対応付けられた候補ビームを割り当てる割り当てステップと、
を備え、
前記組合せ情報は、前記一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに前記一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせで通信を行った場合に所定条件を満足した確率をさらに示す
制御方法。
【請求項4】
前記組合せ情報は、前記一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに前記一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせで通信が行われたときの、端末局の位置をさらに示す
請求項1に記載の制御方法。
【請求項5】
分散アンテナシステムにおける複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームの方向を選択する選択ステップと、
前記一部の基地局に対するビームの方向と、当該ビームの方向が前記一部の基地局に対して用いられたときに信号の受信電力の測定結果に基づいて取得された、前記一部の基地局以外の基地局に対して用いられたビームの方向との組み合わせを示す組合せ情報を参照し、前記一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するためのビームの方向の候補として、
当該一部の基地局以外の基地局の複数のビームのうち、前記組み合わせ情報において前記選択ステップにより選択されたビームの方向に予め対応付けられたビームの方向
の候補を割り当てる割り当てステップと、
を備えた制御方法。
【請求項6】
分散アンテナシステムにおける複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームを選択する選択部と、
前記一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに信号の受信電力の測定結果に基づいて取得された、前記一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせを示す組合せ情報を参照し、前記一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するための候補ビームとして、
当該一部の基地局以外の基地局の複数のビームのうち、前記組み合わせ情報において前記選択部により選択されたビームに予め対応付けられた候補ビームを割り当てる割り当て部と、
を備えた通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、および通信制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯やテラヘルツ帯等の高周波数帯では、マイクロ波帯等の低周波数帯と比較して自由空間伝搬損失が大きい。そのため、補償のために特定方向に電力を集中させるビームを形成する、ビームフォーミング技術を用いる必要がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
常に通信を行う無線局の組み合わせが決まっているP-P(Point-to-Point)型の通信で、かつその無線局の位置関係や無線局周囲の伝搬環境も変化しないような場合には予め無線局の設置時などに固定的にビームフォーミングを行うこともできる。
【0004】
その一方で、複数の無線局を収容するP-MP(Point-to-Multi Point)型、または無線局の少なくとも一方が移動するような場合には固定的にビームフォーミングを行うことができない。この場合、複数の無線局のうち通信を必要とする無線局の位置や、無線局の移動、無線局周囲の伝搬環境の変化にあわせて適応的にビームの形成方向を制御する適応ビームフォーミングが必要となる。
【0005】
適応ビームフォーミングは、機械的な駆動部が不要であることから、複数のアンテナ素子を用い、その素子間で放射する電波の位相関係を調整して行われることが一般的である。ただし、その位相関係を適切に調整するためには、送信側と受信側の両無線局の各アンテナ素子間の位相関係を把握した上で適切な位相関係を導出する必要がある。すなわち、各アンテナ素子間の伝搬路の状態を送受信局間の各アンテナ素子の全組み合わせにおいて把握する必要がある。
【0006】
伝搬路の状態は送受信局間で既知の信号を送受信することで把握できるが、その送受信の間は他の通信が行えず、また受信局から送信局で伝搬路の状態を正確に伝達する必要があるため通信のオーバヘッドが増大する。
【0007】
オーバヘッドの増大を抑制するため、適応ビームフォーミングでは、予め離散的に複数設定された候補ビームに紐づけられたビームIDを含む信号を各候補ビームで送受信し、この中から最も通信に適していると判断されたビームIDを選択する技術がある。この技術は、3GPP 5G(5th Generation)やIEEE802.11adのような近年実用化が進められている無線通信システムでも規定され実装がなされている(例えば、非特許文献1、2、3参照)。
【0008】
無線局の送信側ビームを選択する際には、無線局は、各ビームを一意に特定可能な送信ビームIDをディジタル情報として埋め込んだビームサーチ信号を生成する。送信側の無線局は、このビームサーチ信号を、時間的に切り替えて生成する各ビームに載せて送信する。これにより、受信側の無線局は各ビームの受信電力を測定するとともに、ビームサーチ信号に埋め込まれた送信ビームIDを読み出してどの送信側ビームの品質が良かったかを判定し、送信側の無線局にフィードバックすることで送信側ビームを選択可能となる。
【0009】
無線局の受信側ビーム選択について、送受信に同一周波数を用いるTDD(Time Division Duplex)のようなシステムでは、送信側と同一のビームを選択することも可能である。しかし、送受信に別周波数を用いるFDD(Frequency Division Duplex)のようなシステムでは、送信側の無線局におけるビーム選択と同様に、受信側の無線局もビームサーチ信号を用いてビーム選択を行う必要がある。
【0010】
受信側の無線局におけるビーム選択で用いるビームサーチ信号は、通信相手の無線局(送信側の無線局)により生成されるため、通信相手の無線局に対して受信ビームサーチ信号の送信を要求する信号を送信する。受信側の無線局は、通信相手の無線局から送信されるビームサーチ信号に合わせて、時間的にビームサーチ信号を切り替えて受信し、受信電力を測定することでどのビームサーチ信号の品質が良かったかを判定することで受信側ビームを選択可能となる。
【0011】
ここで、ビームサーチ信号とは例えば、5GではSS(Synchronaization Signal)/PBCH(Physical Broadcast CHannel)やCSI-RS(Channel State Information-Reference Signal)である(例えば、非特許文献2参照)。
【0012】
図13に無線通信システムの一般的な従来構成を示す。信号の送受信を行うディジタル信号処理装置と1台の基地局が接続され、1セルに1アンテナの構成となる。この構成では、1台の端末局に1台の基地局から接続される。
【0013】
ここで、前述したようにミリ波帯やテラヘルツ帯等の高周波数帯ではビームフォーミング技術を用いることから、反射波や回折波の影響が小さくなる。故に、高周波数帯では、ビームが遮蔽されると通信断となる可能性が高くなり、見通し通信が基本となる特徴がある。また、空間多重技術として有力なMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術において送受信の複数アンテナ間の空間相関が高くなり、空間多重困難となる特徴がある。MIMOは送受信に複数のアンテナを設けることで、同一時間、同一周波数リソースで空間多重により最大アンテナ数倍に伝送速度が向上する技術である。
【0014】
高周波数帯では遮蔽耐性の向上効果や空間相関の低減効果を有する分散アンテナシステムが検討されている(例えば、非特許文献4、5、および特開2019-207210号公報を参照)。
図14に高周波数帯分散アンテナシステムの構成を示す。高周波数帯分散アンテナシステムは、信号の送受信を行うディジタル信号処理装置と複数台の基地局が接続され、1セルに複数の分散アンテナを備える構成となる。この構成では、1台の端末局に複数台の分散配置された基地局から接続される。
【0015】
これにより、1台の端末局の複数アンテナと複数台の分散配置された基地局のアンテナ間でMIMO技術を利用することで空間相関が低減され、空間多重可能となる(シングルユーザMIMO)。ただし、この実現には端末局と複数の分散アンテナそれぞれのリンクに対してビーム選択が不可欠となる。
【0016】
ここで、高周波数帯MIMO伝送を行うための一般的な送信ビーム選択方法について説明する。まず、無線局の各送信アンテナで予め離散的に複数設定された候補ビームに紐づけられた送信ビームIDと各送信アンテナに紐づけられたアンテナIDをディジタル情報として埋め込んだビームサーチ信号を、時間的に切り替えて各送信アンテナ、各送信ビームに載せて送信する。
【0017】
そして、相手側の無線局は各受信アンテナで各ビームサーチ信号の受信電力を測定するとともに、ビームサーチ信号に埋め込まれた送信ビームIDとアンテナIDを読み出して、送信側の無線局に送受信アンテナのペアと送信ビームIDと受信品質をフィードバックする。これを受信した無線局はMIMOによる空間多重数分の複数の送信ビームを受信品質から選択する。これに加え、相手側の無線局が複数受信ビームを選択することにより、この複数の送受信ビーム間でMIMO処理し、高周波数帯MIMO伝送を可能とする。
【0018】
なお、分散アンテナシステムを適用したセルラ通信システムでは、集中制御を行うために、通信制御装置が具備される。この通信制御装置はユーザスケジューリングやリソース制御等を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【文献】“5Gマルチアンテナ技術,”NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル,Vol.23,No.4,pp.30-39,2016年1月
【文献】武田和晃 他,“5Gにおける物理レイヤ要素技術と高周波数帯利用に関する検討状況,”NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル,Vol.25,No.3,pp。23-32,2017年10月
【文献】滝波浩二 他,“ミリ波帯無線LANシステムの標準化動向と要素技術,” 電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン,No.38,秋号,pp.100-106,2016年
【文献】内田大誠 他,“端末高密度/遮蔽環境での高周波数帯分散アンテナシステムの一検討,”電子情報通信学会総合大会 通信講演論文集1,B-5-87,p.375,2020年3月
【文献】岩渕匡史 他,“多数多様な中継系による高周波数帯マルチパス形成制御の提案,”電子情報通信学会総合大会 通信講演論文集1,B-5-101,p.389,2020年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
1セルに複数の分散アンテナが配置される高周波数帯分散アンテナシステムでは、1つの端末局が複数の分散アンテナそれぞれに対してビームサーチを行い、複数ビームの選択をする必要がある。このため、高周波数帯分散アンテナシステムでは、分散アンテナ数分のビームサーチのためのオーバヘッドが増大し、データ伝送の効率が低下する。つまり、分散アンテナを増やすことによりオーバヘッドが増加することが課題であった。
【0021】
上記事情に鑑み、本発明は、分散アンテナシステムで生じるオーバヘッドを抑制する技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の一態様は、分散アンテナシステムにおける複数の基地局の通信を制御する通信制御装置の制御方法であって、複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームを選択する選択ステップと、前記一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するための候補ビームとして、前記選択ステップにより選択されたビームに予め対応付けられた候補ビームを割り当てる割り当てステップと、を備えた制御方法である。
【0023】
本発明の一態様は、分散アンテナシステムにおける複数の基地局の通信を制御する通信制御装置であって、複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームを選択する選択部と、前記一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するための候補ビームとして、前記選択部により選択されたビームに予め対応付けられた候補ビームを割り当てる割り当て部と、を備えた通信制御装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、分散アンテナシステムで生じるオーバヘッドを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態における分散アンテナシステムの全体構成図である。
【
図5】基地局#1のビームとして、ビーム#1が選択された場合のビーム例を示す図である。
【
図6】一の端末局に対する複数の基地局の送信ビームを割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】一の端末局に対する複数の基地局の受信ビームを割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】複数の基地局に対する一の端末局が送信するビームのビーム方向を割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】複数の基地局に対する一の端末局が受信するビームのビーム方向を割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】所定条件を満足した確率を示す組合せ情報の一例である。
【
図12】端末局の位置をさらに示す組合せ情報の一例である。
【
図13】無線通信システムの一般的な従来構成を示す図である。
【
図14】高周波数帯分散アンテナシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態における分散アンテナシステム100の全体構成図である。分散アンテナシステム100は、1つのセル10に1つの通信装置200を備える。また、分散アンテナシステム100は、セル10内に複数の基地局300-1、300-2、300-3、300-4、300-5、300-6、300-7、300-8、300-9、300-10、300-11を備える。
図1では、一例として11の基地局が示されているが、複数備えていればよく、11に限るものではない。
【0027】
以下、基地局300-1、300-2、300-3、300-4、300-5、300-6、300-7、300-8、300-9、300-10、300-11のそれぞれを特に区別しない場合には任意の1台を基地局300と表現する。分散アンテナシステム100において、各々の基地局300は、通信装置200と接続される。
【0028】
分散アンテナシステム100において、端末局400は、2つ以上の無線ストリームを用いてMIMO(Multiple Input Multiple Output)伝送可能である。
図2は、端末局400と基地局300との接続例を示す図である。
図2には、端末局400、基地局300A、300B、および通信装置200が示されている。基地局300A、300Bは、基地局300のいずれかの基地局を示す。
【0029】
端末局400は、ビーム521、522、523のうち、ビーム521を用いて基地局300Aと通信する。端末局400は、ビーム521、522、523のうち、ビーム523を用いて基地局300Bと通信する。基地局300Aは、ビーム501、502、503のうち、ビーム502を用いて端末局400と通信する。基地局300Bは、ビーム511、512、513のうち、ビーム512を用いて端末局400と通信する。これにより、端末局400は2つの無線ストリームを用いてMIMO伝送する。
【0030】
高周波数帯では、見通し通信が前提となるために、基地局300が用いるビームの方向は、基地局300からみた端末局400の方位に一致する可能性が高い。また、反射波を用いる場合でもその反射経路数は少なく、用いるビームの方向は概ね変化しないと考えられる。このことから、一つの端末局400に向けて複数の基地局300がMIMO伝送する場合、一の基地局がビーム選択を行った後には、他の基地局が用いるビームは、過去経験則的に組み合わせたビームと同一になる可能性が高い。
【0031】
図2の例を用いて具体的に説明すると、基地局300Aが選択処理の結果、ビーム502を選択したとする。なお、ここでの選択処理とは、基地局300が、フィードバック結果(例えば受信電力等)が最も良好であったビームを端末局400と通信するビームとして選択する処理を示す。
【0032】
基地局300Aがビーム502を選択した場合、基地局300Bが用いるビームは、ビーム512となる可能性が高い。よって、まず組合せ情報を記憶しておく。組合せ情報とは、ある端末局400との通信する場合の基地局を一意に示す情報と、当該基地局において送信するビームを一意に示す情報が基地局ごとに設けられた情報である。例えば、
図2の場合、(基地局300A、ビーム502)、(基地局300B、ビーム512)が組合せ情報である。この組合せ情報に示されるビームは、フィードバック結果が最も良好であったビームである。したがって、組合せ情報は、ある端末局400と最も良好な通信を行うための情報である。
【0033】
このような組合せ情報を記憶しておき、基地局300Aが用いるビームとしてビーム502が選択された場合、記憶しておいた組合せ情報を参照して、基地局300Bが用いるビームをビーム512とする。このようにすることで、本来であれば、基地局300Bは、ビーム511、512、513のそれぞれで選択処理を行うところ、ビーム512のみの選択処理で足りるため、オーバヘッドの増大を抑制することができる。
【0034】
図3は、通信装置200の構成を示すブロック図である。通信装置200は、ディジタル信号処理装置210、および通信制御装置220で構成される。ディジタル信号処理装置210は、基地局300と通信制御装置220とに接続する。ディジタル信号処理装置210は、通信制御装置220の指示に従い、基地局300に信号を送信するとともに、基地局300から受信した信号を通信制御装置220に出力する。
【0035】
通信制御装置220は、信号生成指示部221、受信結果取得部222、選択部223、組合せ情報記憶部224、および割当部225で構成される。
【0036】
信号生成指示部221は、ディジタル信号処理装置210に各種信号の生成の指示と、当該各種信号を送信する基地局300を指定する情報を出力する。指定された基地局300は、信号を生成し、生成した信号を端末局400に送信する。
【0037】
受信結果取得部222は、端末局400から種々の情報を取得する。例えば、受信結果取得部222は、ディジタル信号処理装置210により復号された、端末局400から受信したフィードバック結果と、当該フィードバック結果に対応するビームを一意に示す送信ビームIDとを取得する。また、受信結果取得部222は、端末局400から送信された受信ビームサーチ信号の受信電力を測定し受信結果が最も良好であった受信ビームIDを取得する。
【0038】
選択部223は、複数の基地局のうちの一部の基地局において端末局と通信するためのビームを選択する。組合せ情報記憶部224は、組合せ情報を記憶する。割当部225は、一部の基地局以外の基地局において端末局と通信するための候補ビームとして、選択部223により選択されたビームに予め対応付けられた候補ビームを割り当てる。
【0039】
図4は、組合せ情報の一例を示す図である。組合せ情報は、一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが一部の基地局で用いられたときに一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせを示す。
【0040】
図4に示されるように、組合せ情報は、基地局を一意に示す情報(基地局#1や、基地局#5など)と、当該基地局において送信するビームを一意に示す情報(ビーム#2やビーム#9など)が基地局ごとに設けられた情報である。また「結果#・」は、複数の組合せ情報を特定するための情報である。
【0041】
図4では、結果#1を例に説明すると、一部の基地局は基地局#1であり、一部の基地局以外の基地局は、基地局#2、基地局#5であり、基地局#1で用いられたビーム#1と、当該ビームが基地局#1で用いられたときに基地局#2において用いられたビーム#8、基地局#5において用いられたビーム#7との組み合わせが示されている。
【0042】
図5は、選択部223により基地局#1のビームとして、ビーム#1が選択された場合のビーム例を示す図である。選択部223により基地局#1のビームとして、ビーム#1が選択された場合、組合せ情報では、結果#1と結果#2が該当する。
【0043】
そこで、割当部225は、基地局#2の候補ビームとして、結果#1において、選択部223により選択されたビームに予め対応付けられたビーム#8を割り当てる。また、割当部225は、基地局#2の候補ビームとして、結果#2において、選択部223により選択されたビームに予め対応付けられたビーム#7を割り当てる。よって、基地局#2は、ビーム#7、ビーム#8を候補とする。
【0044】
同様に、割当部225は、基地局#5の候補ビームとして、結果#1において、選択部223により選択されたビームに予め対応付けられたビーム#7を割り当てる。また、割当部225は、基地局#2の候補ビームとして、結果#2において、選択部223により選択されたビームに予め対応付けられたビーム#5を割り当てる。よって、基地局#5は、ビーム#5、ビーム#7を候補とする。
【0045】
これにより、基地局#2では、ビーム#7、ビーム#8以外のビームに対するビーム選択処理が不要となり、基地局#5では、ビーム#5、ビーム#7以外のビームに対するビーム選択処理が不要となるため、オーバヘッドを抑制することができる。
【0046】
上述した構成を踏まえ、通信制御装置220の処理の流れについて4つのフローチャートを用いて説明する。以下のフローチャートにおいて、1セルに含まれる基地局数をNとする。また、N個の基地局を区別するために「基地局(・)」と表現する。基地局(・)は、基地局(1)~基地局(N)まである。
【0047】
図6は、一の端末局400に対する複数の基地局300の送信ビームを割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示されるフローチャートにおける組合せ情報は、一の端末局400とN個の基地局300とが通信する場合の、基地局300を一意に示す情報と、当該基地局300が、一の端末局400に送信するビームを一意に示す情報で構成される。
【0048】
通信制御装置220は、ループカウンタiを1で初期化する(ステップS101)。ループカウンタiは、1セルに含まれる基地局数Nをカウントするためのカウンタである。通信制御装置220は、基地局(i)の送信ビームサーチ信号の候補ビームを決定する(ステップS102)。このステップS102では、i=1であるので、基地局(1)の候補ビームが決定される。
【0049】
上述したように、1番目の基地局のビームが選択されると、組合せ情報により他の基地局の候補ビームが割り当てられる。そのため、1番目の送信ビームサーチ信号の候補ビームは組合せ情報による候補ビームの割り当てを利用できないため、通常は全ビームとするが一部のビームとしてもよい。なお、候補ビームを一部のビームとする場合は、比較的ビーム幅の広いビームで候補ビームを予め選択しておき、その中からさらにビーム幅の狭いビームを候補ビームとしてもよい。また、位置情報や画像によるセンシングなどで端末局の方位を概ね推定し、その近傍のみのビームを候補ビームとしてもよい。
【0050】
なお、位置情報として、端末局から取得するGPSによる位置情報や通信電波のRTT(Round Trip Time)(基地局-端末局間の信号のやりとりから往復時間を算出して測距)を利用した測距情報が挙げられる。また、画像によるセンシングとは、街などのカメラ映像から端末局の位置を画像認識で取得する方法である。
【0051】
通信制御装置220は、基地局(i)の候補ビームとなった送信ビームサーチ信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS103)。これによりディジタル信号処理装置210から基地局(i)に送信ビームサーチ信号の送信が指示される。基地局(i)が送信ビームサーチ信号を端末局400に送信することで、端末局400では送信ビームサーチ信号のビームごとの受信電力を測定され、その結果が基地局(i)にフィードバックされる。通信制御装置220は、ディジタル信号処理装置210を介してフィードバック結果を取得する(ステップS104)。全ての候補ビームに対するフィードバック結果を取得すると、通信制御装置220は、フィードバック結果が最も良好であった候補ビームを送信ビーム(i)として選択する。
【0052】
通信制御装置220は、カウンタiを増分し(ステップS106)、カウンタiがN+1に等しいか否かを判定する(ステップS107)。このステップS107は、全ての端末局400に対して処理が行われたか否かを判定する処理である。
【0053】
カウンタiがN+1と異なる場合には(ステップS107:NO)、通信制御装置220は、端末局400と通信するための基地局(i)の候補ビームとして、組合せ情報を参照し、送信ビーム(i-1)に予め対応付けられた候補ビームを割り当てる。具体的に、
図4の結果#1、結果#2を例にすると、基地局(1)が基地局#1が対応し、ビーム#1が送信ビーム(1)に対応する。そして、基地局(2)が基地局#2が対応し、基地局#2に候補ビームとしてビーム#8、ビーム#7が割り当てられる。
【0054】
候補ビームが割り当てられると、通信制御装置220は、上述したステップS103において、割り当てられた候補ビームの送信ビームサーチ信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS102)。
【0055】
なお、上記のように、結果#1、結果#2を例にした場合、基地局(2)にはビーム#8、ビーム#7が割り当てられたが、割り当てる候補ビームがない場合もある。この場合には、ステップS109の次のステップS103~ステップS105がスキップされ、ステップS106が行われる。これにより、オーバヘッドの増大を抑制することができる。
【0056】
カウンタiがN+1に等しい場合には(ステップS107:YES)、全ての端末局400に対して処理が行われたため、通信制御装置220は、組合せ情報を記録して(ステップS108)、処理を終了する。
【0057】
なお、ステップS108で記録される組合せ情報は、ステップS109で参照された組合せ情報と同じとなる可能性もある。そこで、組合せ情報を更新するときや、候補ビームの組合せ情報が全学習されていないとき(全ての組合せ情報が得られていないとき)は、組合せ情報記憶部224に記憶された候補ビームのみサーチするのではなく、優先的に組合せ情報記憶部224にあるビームをサーチして、組合せ情報記憶部224にないビームもサーチしてよい。
【0058】
図7は、一の端末局400に対する複数の基地局300の受信ビームを割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示されるフローチャートにおける組合せ情報は、一の端末局400とN個の基地局300とが通信する場合の、基地局300を一意に示す情報と、当該基地局300が、一の端末局400から受信するビームを一意に示す情報で構成される。
【0059】
通信制御装置220は、ループカウンタiを1で初期化する(ステップS201)。ループカウンタiは、1セルに含まれる基地局数Nをカウントするためのカウンタである。通信制御装置220は、基地局(i)の受信ビームサーチの候補ビームを決定する(ステップS202)。このステップS202では、i=1であるので、基地局(1)の候補ビームが決定される。
【0060】
1番目の受信ビームサーチ信号の候補ビームは組合せ情報による候補ビームの割り当てを利用できないため、通常は全ビーム全ビームとするが一部のビームとしてもよい。なお、候補ビームを一部のビームとする場合は、比較的ビーム幅の広いビームで候補ビームを予め選択しておき、その中からさらにビーム幅の狭いビームを候補ビームとしてもよい。また、上述したように位置情報や画像によるセンシングなどで端末局の方位を概ね推定し、その近傍のみのビームを候補ビームとしてもよい。
【0061】
通信制御装置220は、基地局(i)の候補ビームとなったビーム数分の受信ビームサーチ信号の送信を端末局400に依頼する送信依頼信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS203)。これによりディジタル信号処理装置210から基地局(i)に送信依頼信号の生成が指示される。基地局(i)は送信依頼信号を端末局400に送信することで、端末局400から受信ビームサーチ信号が送信される。通信制御装置220は、ディジタル信号処理装置210で測定された受信ビームサーチ信号の受信結果(受信電力等)を取得する(ステップS204)。全ての候補ビームに対する受信ビームサーチ信号の受信結果を取得すると、通信制御装置220は、受信結果が最も良好であった候補ビームを受信ビーム(i)として選択する。
【0062】
通信制御装置220は、カウンタiを増分し(ステップS206)、カウンタiがN+1に等しいか否かを判定する(ステップS207)。このステップS207は、全ての端末局400に対して処理が行われたか否かを判定する処理である。
【0063】
カウンタiがN+1と異なる場合には(ステップS207:NO)、通信制御装置220は、端末局400と通信するための基地局(i)の候補ビームとして、組合せ情報を参照し、受信ビーム(i-1)に予め対応付けられた候補ビームを割り当てる。
【0064】
候補ビームが割り当てられると、通信制御装置220は、上述したステップS203において、割り当てられた候補ビームの送信依頼信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS202)。
【0065】
なお、割り当てる候補ビームがない場合には、ステップS209の次のステップS203~ステップS205がスキップされ、ステップS206が行われる。これにより、オーバヘッドの増大を抑制することができる。
【0066】
カウンタiがN+1に等しい場合には(ステップS207:YES)、全ての端末局400に対して処理が行われたため、通信制御装置220は、組合せ情報を記録して(ステップS208)、処理を終了する。
【0067】
なお、ステップS208で記録される組合せ情報は、ステップS209で参照された組合せ情報と同じとなる可能性もある。そこで、組合せ情報を更新するときや、候補ビームの組合せ情報が全学習されていないとき(全ての組合せ情報が得られていないとき)は、組合せ情報記憶部224に記憶された候補ビームのみサーチするのではなく、優先的に組合せ情報記憶部224にあるビームをサーチして、組合せ情報記憶部224にないビームもサーチしてよい。
【0068】
図8は、複数の基地局300に対する一の端末局400が送信するビームのビーム方向を割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示されるフローチャートにおける組合せ情報は、一の端末局400とN個の基地局300とが通信する場合の、端末局400を一意に示す情報と、当該端末局400が、複数の基地局300に送信するビームのビーム方向を一意に示す情報で構成される。このフローチャートの説明では、送信するビームのビーム方向を送信ビーム方向と表現することがある。
【0069】
通信制御装置220は、ループカウンタiを1で初期化する(ステップS301)。ループカウンタiは、1セルに含まれる基地局数Nをカウントするためのカウンタである。通信制御装置220は、基地局(i)への送信ビームサーチ信号の候補ビームを決定する(ステップS302)。このステップS302では、i=1であるので、基地局(1)の候補ビームが決定される。
【0070】
1番目の送信ビームサーチ信号の候補ビームは組合せ情報による候補ビームの割り当てを利用できないため、通常は全ビームとするが一部のビームとしてもよい。なお、候補ビームを一部のビームとする場合は、比較的ビーム幅の広いビームで候補ビームを予め選択しておき、その中からさらにビーム幅の狭いビームを候補ビームとしてもよい。また、上述したように位置情報や画像によるセンシングなどで端末局の方位を概ね推定し、その近傍のみのビームを候補ビームとしてもよい。
【0071】
通信制御装置220は、送信ビームサーチ信号の送信を許可するための送信ビームサーチ信号許可信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS303)。これによりディジタル信号処理装置210から基地局(i)に送信ビームサーチ信号許可信号の送信が指示される。このステップS303における送信ビームサーチ許可信号は、ステップS301で基地局(i)への候補ビームとなった送信ビームサーチ信号か、後述するステップS308で割り当てられた送信ビーム方向の送信ビームサーチ信号の送信を許可するための信号である。
【0072】
基地局(i)は送信ビームサーチ信号許可信号を端末局400に送信することで、端末局400は送信ビームサーチ信号を送信する。基地局300は、端末局400から送信される送信ビームサーチ信号から、基地局(i)に対する端末局400の最良の送信ビーム方向(i)を選択する(ステップS304)。ただし、端末局400の向きは変化するので、最良の送信ビーム方向(i)は、基地局(i)で受信電力の最も高かった等、最良のビームID(送信ビームを一意に示す)と、端末局400から取得されるジャイロスコープ情報などに基づき決定し端末局400にビームIDをフィードバックすることで端末局は送信ビームを選択可能となる。
【0073】
通信制御装置220は、カウンタiを増分し(ステップS305)、カウンタiがN+1に等しいか否かを判定する(ステップS306)。このステップS306は、全ての基地局300に対して処理が行われたか否かを判定する処理である。
【0074】
カウンタiがN+1と異なる場合には(ステップS306:NO)、通信制御装置220は、基地局(i)と通信するための端末局400の送信ビーム方向として、組合せ情報を参照し、基地局(i-1)に予め対応付けられた送信ビーム方向を割り当てる。
【0075】
送信ビーム方向が割り当てられると、通信制御装置220は、上述したステップS303において、送信ビーム方向の送信ビームサーチ信号の送信を許可するための送信ビームサーチ信号許可信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS303)。
【0076】
なお、割り当てる送信ビーム方向がない場合には、ステップS308の次のステップS303、ステップS304がスキップされ、ステップS305が行われる。これにより、オーバヘッドの増大を抑制することができる。
【0077】
カウンタiがN+1に等しい場合には(ステップS306:YES)、全ての基地局300に対して処理が行われたため、通信制御装置220は、組合せ情報を記録して(ステップS307)、処理を終了する。
【0078】
なお、ステップS307で記録される組合せ情報は、ステップS308で参照された組合せ情報と同じとなる可能性もある。そこで、組合せ情報を更新するときや、送信ビーム方向の組合せ情報が全学習されていないとき(全ての組合せ情報が得られていないとき)は、組合せ情報記憶部224に記憶された送信ビーム方向のみサーチするのではなく、優先的に組合せ情報記憶部224にある送信ビーム方向をサーチして、組合せ情報記憶部224にないビームもサーチしてよい。
【0079】
また、通信制御装置220が端末局400の送信ビームサーチ信号の送信を許可する場合について記載したが、基地局300からの特定の信号をきっかけに端末局400が送信ビームサーチする場合や端末局400が自発的に送信ビームサーチする場合についても同様にして適用可能である。
【0080】
図9は、複数の基地局300に対する一の端末局400が受信するビームのビーム方向を割り当てる処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示されるフローチャートにおける組合せ情報は、一の端末局400とN個の基地局300とが通信する場合の、端末局400を一意に示す情報と、当該端末局400が、複数の基地局300から受信するビームのビーム方向を一意に示す情報で構成される。このフローチャートの説明では、受信するビームのビーム方向を受信ビーム方向と表現することがある。
【0081】
通信制御装置220は、ループカウンタiを1で初期化する(ステップS401)。ループカウンタiは、1セルに含まれる基地局数Nをカウントするためのカウンタである。通信制御装置220は、基地局(i)への受信ビームサーチ信号の候補ビームを決定する(ステップS402)。このステップS402では、i=1であるので、基地局(1)の候補ビームが決定される。
【0082】
1番目の受信ビームサーチ信号の候補ビームは組合せ情報による候補ビームの割り当てを利用できないため、通常は全ビームとするが一部のビームとしてもよい。なお、候補ビームを一部のビームとする場合は、比較的ビーム幅の広いビームで候補ビームを予め選択しておき、その中からさらにビーム幅の狭いビームを候補ビームとしてもよい。また、上述したように位置情報や画像によるセンシングなどで端末局の方位を概ね推定し、その近傍のみのビームを候補ビームとしてもよい。
【0083】
通信制御装置220は、受信ビームサーチ信号の送信通知信号と受信ビームサーチ信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS403)。これによりディジタル信号処理装置210から基地局(i)に受信ビームサーチ信号の送信通知信号と受信ビームサーチ信号の送信が指示される。このステップS403における受信ビームサーチ信号は、ステップS401で基地局(i)への候補ビームとなった受信ビームサーチ信号か、後述するステップS408で割り当てられた受信ビーム方向の受信ビームサーチ信号である。
【0084】
基地局(i)が受信ビームサーチ信号の送信通知信号と受信ビームサーチ信号を送信する。端末局400は送信通知信号で通知されたタイミングで基地局(i)から送信される受信ビームサーチ信号の受信電力を測定し、端末局400はその受信ビームサーチ信号の受信結果から最良の受信ビームIDと最良の受信ビーム方向(i)を選択し、基地局(i)にフィードバックする。通信制御装置220は、ディジタル信号処理装置210を介して受信ビームサーチ信号のフィードバック結果から、基地局(i)に対する端末局400の最良の受信ビーム方向(i)を取得する(ステップS404)。ただし、端末局400の向きは変化するので、最良の受信ビーム方向(i)は、受信電力の最も高かった等、最良のビームID(受信ビームを一意に示す)と、端末局400で取得されるジャイロスコープ情報などに基づき取得する。
【0085】
通信制御装置220は、カウンタiを増分し(ステップS405)、カウンタiがN+1に等しいか否かを判定する(ステップS406)。このステップS406は、全ての基地局300に対して処理が行われたか否かを判定する処理である。
【0086】
カウンタiがN+1と異なる場合には(ステップS406:NO)、通信制御装置220は、基地局(i)と通信するための端末局400の受信ビーム方向として、組合せ情報を参照し、基地局(i-1)に予め対応付けられた受信ビーム方向を割り当てる。
【0087】
受信ビーム方向が割り当てられると、通信制御装置220は、上述したステップS403において、受信ビーム方向の受信ビームサーチ信号の送信をディジタル信号処理装置210に指示する(ステップS403)。
【0088】
なお、割り当てる受信ビーム方向がない場合には、ステップS408の次のステップS403、ステップS404がスキップされ、ステップS405が行われる。これにより、オーバヘッドの増大を抑制することができる。
【0089】
カウンタiがN+1に等しい場合には(ステップS406:YES)、全ての基地局300に対して処理が行われたため、通信制御装置220は、組合せ情報を記録して(ステップS407)、処理を終了する。
【0090】
なお、ステップS407で記録される組合せ情報は、ステップS408で参照された組合せ情報と同じとなる可能性もある。そこで、組合せ情報を更新するときや、受信ビーム方向の組合せ情報が全学習されていないとき(全ての組合せ情報が得られていないとき)は、組合せ情報記憶部224に記憶された受信ビーム方向のみサーチするのではなく、優先的に組合せ情報記憶部224にある受信ビーム方向をサーチして、組合せ情報記憶部224にないビームもサーチしてもよい。
【0091】
次に、組合せ情報の他の例について説明する。
図10は、
図4の組合せ情報に加え、通信回数を示す組合せ情報の一例である。すなわち、
図10に示される組合せ情報は、一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが前記一部の基地局で用いられたときに一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせで通信が行われた回数をさらに示す。
【0092】
図10に示されるように、結果ごとに通信回数(M1~M7)が設けられている。例えば、結果#1の通信回数はM1回である。このように通信回数をさらに示すことにより、例えば基地局#1においてビーム#1が選択された場合に、該当する結果#1と結果#2の通信回数M1、M2の大きさを比較して、通信回数が多い候補の方が今回の通信に該当する候補である確率が高いと判定して、通信回数が多い方を最初の候補とする。このようにすることで、適切な候補にたどりやすくなるため、よりオーバヘッドを抑制することができる。
【0093】
図11は、
図4の組合せ情報に加え、所定条件を満足した確率を示す組合せ情報の一例である。すなわち、
図11に示される組合せ情報は、一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが一部の基地局で用いられたときに一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせで通信を行った場合に所定条件を満足した確率をさらに示す。
【0094】
図11では、所定条件として通信結果が良好であったという条件を用いている。なお、通信結果が良好であるとは、例えば通信で使用した全てのビームの受信電力が所定値以上であったことやMIMO伝送時の容量が所定値以上であったことである。
図11に示されるように、結果ごとに良好確率(P1~P7)が設けられている。例えば、結果#1での良好確率はP1ある。このように良好確率をさらに示すことにより、例えば基地局#1においてビーム#1が選択された場合に、該当する結果#1と結果#2の良好確率P1、P2の大きさを比較して、良好確率が大きい候補の方が今回の通信も良好となる確率が高いと判定して、良好確率が大きい方を最初の候補とする。このようにすることで、適切な候補にたどりやすくなるため、よりオーバヘッドを抑制することができる。
【0095】
図12は、
図4の組合せ情報に加え、端末局の位置をさらに示す組合せ情報の一例である。すなわち、
図12に示される組合せ情報は、一部の基地局で用いられたビームと、当該ビームが一部の基地局で用いられたときに一部の基地局以外の基地局において用いられたビームとの組み合わせで通信が行われたときの、端末局の位置をさらに示す。
【0096】
図12に示されるように、結果ごとに端末局位置(L1~L7)が設けられている。なお、端末局位置L=(緯度、経度)である。例えば、結果#1での端末局位置はL1ある。このように端末局位置をさらに示すことにより、例えば基地局#1においてビーム#1が選択された場合に、端末局から位置を取得し、該当する結果#1と結果#2の端末局位置L1、L2のうちの近い方の候補の方が今回の通信に該当する候補である確率が高いと判定して、近い方を最初の候補とする。このようにすることで、適切な候補にたどりやすくなるため、よりオーバヘッドを抑制することができる。なお、端末局位置に代えて、例えば受信電力情報を示すようにしてもよい。これは、受信電力高いと送受信間距離が近いなど見通し通信が中心となる高周波数帯無線通信では受信電力と送受信間距離には相関があるためである。
【0097】
通信制御装置220は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成されてもよい。この場合、通信制御装置220は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、通信制御装置220として機能する。なお、通信制御装置220の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0098】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、分散アンテナシステムにおける通信制御装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0100】
10…セル、100…分散アンテナシステム、200…通信装置、210…ディジタル信号処理装置、220…通信制御装置、221…信号生成指示部、222…受信結果取得部、223…選択部、224…組合せ情報記憶部、225…割当部、300、300-1、300-2、300-3、300-4、300-5、300-6、300-7、300-8、300-9、300-10、300-11、300A、300B…基地局、400…端末局