(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】制御方法および無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/08 20090101AFI20241204BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20241204BHJP
H04W 92/12 20090101ALI20241204BHJP
【FI】
H04W16/08
H04W16/26
H04W92/12
(21)【出願番号】P 2023521997
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018587
(87)【国際公開番号】W WO2022244048
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526235(JP,A)
【文献】特開2017-163285(JP,A)
【文献】特開2005-333625(JP,A)
【文献】特開2007-028232(JP,A)
【文献】特開2009-278532(JP,A)
【文献】特表2016-532403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末と無線通信を行う分散アンテナと、前記分散アンテナと接続し、信号処理を行う複数の信号処理部とを備える無線通信システムにおける制御方法であって、
前記信号処理部ごとに前記信号処理部の負荷を平準化させるための基準情報を設定する設定ステップと、
前記信号処理部の負荷を示す負荷情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された前記負荷情報と、前記設定ステップにより設定された
前記負荷情報に示される負荷と比較するための基準値を示す前記基準情報とにもとづき、
前記負荷情報に示される負荷が前記基準値以上であって最も大きい前記信号処理部に接続された前記分散アンテナのうち、前記負荷情報に示される負荷が最も大きい前記分散アンテナを前記負荷情報に示される負荷が最も小さい前記信号処理部に接続しても当該信号処理部の負荷が前記基準値以上とならない場合に、前記負荷情報に示される負荷が最も大きい前記分散アンテナの接続先を、前記負荷情報に示される負荷が最も小さい前記信号処理部に割り当て、複数の前記信号処理部の負荷を平準化させる割当ステップと、
を備えた制御方法。
【請求項2】
前記割当ステップは、前記分散アンテナの接続先を切り替えるスイッチを用いて前記分散アンテナの接続先の前記信号処理部を割り当てる請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記割当ステップは、前記負荷情報に示される負荷が前記基準値以上の前記信号処理部があり、前記負荷情報に示される負荷が前記基準値未満の前記信号処理部がある場合に、前記負荷情報に示される負荷が前記基準値以上の前記信号処理部に接続された前記分散アンテナの接続先を、前記負荷情報に示される負荷が前記基準値未満の前記信号処理部に割り当てる請求項
1または請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記負荷情報は、前記分散アンテナと無線通信を行う接続ユーザ端末数、前記分散アンテナと無線通信を行うユーザ端末におけるユーザスループット、前記信号処理部におけるトラヒックバッファ数、または前記信号処理部における呼損率を示す請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記割当ステップは、前記分散アンテナの負荷を示す統計量にもとづいて、前記分散アンテナの接続先の前記信号処理部を割り当てる請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
ユーザ端末と無線通信を行う分散アンテナと、前記分散アンテナと接続し、信号処理を行う複数の信号処理部とを備える無線通信システムであって、
前記信号処理部ごとに前記信号処理部の負荷を平準化させるための基準情報を設定する設定部と、
前記信号処理部の負荷を示す負荷情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記負荷情報と、前記設定部により設定された
前記負荷情報に示される負荷と比較するための基準値を示す前記基準情報とにもとづき、
前記負荷情報に示される負荷が前記基準値以上であって最も大きい前記信号処理部に接続された前記分散アンテナのうち、前記負荷情報に示される負荷が最も大きい前記分散アンテナを前記負荷情報に示される負荷が最も小さい前記信号処理部に接続しても当該信号処理部の負荷が前記基準値以上とならない場合に、前記負荷情報に示される負荷が最も大きい前記分散アンテナの接続先を、前記負荷情報に示される負荷が最も小さい前記信号処理部に割り当て、複数の前記信号処理部の負荷を平準化させる割当部と、
を備えた無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法および無線通信システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
5G(第5世代移動通信システム)においてはミリ波帯の高周波数帯が使用されており、6G等の将来の無線システムにおいて更なる高速化や大容量化を実現していくために、より広い帯域幅を確保可能な更に高い周波数帯の使用が想定されている。
【0003】
高周波数帯は伝搬損失が大きく、直進性の高い性質が知られており、通信エリアをカバーする上で接続性を向上させるために、分散アンテナシステムが検討されている(非特許文献1参照)。
【0004】
図8は、一般的な基地局構成の一例を示したものである。
図8の基地局構成は、物理層より上位のレイヤの処理が行われるBBU(Base Band Unit)と、RF処理および一部物理層を含むこともあるRRH(Remote Radio Head)と、アンテナとを含む。UEはユーザ端末を示す。アンテナはRRHから張り出していても一体となっていてもよい。
【0005】
図9は分散アンテナシステムの基地局構成の一例を示したものである。
図9の基地構成は、
図8と同様にBBUと、RRHと、アンテナとを含む。
図9の基地局構成では、RRHから複数のアンテナが張り出され、同一セルが複数のアンテナによりカバーされる。これにより、
図9の基地局構成では、通信エリアを広げることができる。また、複数アンテナを協調してMIMO(Multiple Input and Multiple Output)を行うことで通信容量の拡大も期待することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】株式会社NTTドコモ, “ドコモ6Gホワイトペーパー2.0版”, 2020年7月
【文献】K. Ito, M. Suga, Y. Shirato, N. Kita, and T. Onizawa, “A novel centralized beamforming scheme for radio-over-fiber systems with fixed wavelength allocation,” IEICE Communications Express, Vol. 8, No. 12. pp. 584-589, 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した
図8や
図9のような基地局構成の場合、アンテナとセルリソースが固定で紐づいている。そのため、
図8や
図9のような基地局構成では、セルによってトラヒック量や接続ユーザ数の分布が偏ったりするなど、負荷の時間的変動に追従することができない。その結果、スループットの低下やセルリソース不足または余剰などを引き起こす確率が高くなる。
【0008】
なお、既存技術において、
図9のような基地局構成で1セルリソースを複数アンテナにコピー分配することで、1セルリソース内の複数エリアに跨るリソース制御を行うことはできるが、複数セルリソースに跨るリソース制御は行うことができない。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、負荷の変動に追従可能な制御方法および無線通信システムを実現することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ユーザ端末と無線通信を行う分散アンテナと、前記分散アンテナと接続し、信号処理を行う複数の信号処理部とを備える無線通信システムにおける制御方法であって、前記信号処理部ごとに前記信号処理部の負荷を平準化させるための基準情報を設定する設定部と、前記信号処理部の負荷を示す負荷情報を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された前記負荷情報と、前記設定ステップにより設定された前記基準情報とにもとづき、前記分散アンテナの接続先の前記信号処理部を割り当て、複数の前記信号処理部の負荷を平準化させる割当ステップと、を備えた制御方法である。
【0011】
本発明の一態様は、ユーザ端末と無線通信を行う分散アンテナと、前記分散アンテナと接続し、信号処理を行う複数の信号処理部とを備える無線通信システムであって、前記信号処理部ごとに前記信号処理部の負荷を平準化させるための基準情報を設定する設定部と、前記信号処理部の負荷を示す負荷情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記負荷情報と、前記設定部により設定された前記基準情報とにもとづき、前記分散アンテナの接続先の前記信号処理部を割り当て、複数の前記信号処理部の負荷を平準化させる割当部と、を備えた無線通信システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、負荷の変動に追従可能な制御方法および無線通信システムを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】無線通信システム1の構成を示すブロック図である。
【
図3】CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態における無線通信システム1の構成を示すブロック図である。無線通信システム1は、CS(Central Station)100、スイッチ20、および分散アンテナ30で構成される。UEはユーザ端末を示す。
【0015】
無線通信システム1は、アナログRoF(Radio over Fiber)技術が用いられている。具体的に、CS100から分散アンテナ30が設けられる張出局へ、アナログ信号の波形情報が光ファイバで伝送される。これにより、信号処理機能をCS100に集約することで、張出局は分散アンテナ30、増幅器、E/O変換、O/E変換などの機能を持てばよいので、張出局の小型化や省電力化が可能となる。
【0016】
CS100は、スイッチ20を介して、分散アンテナ30と通信する。また、CS100は、ビームフォーミング技術を集約局のみで対応する遠隔ビーム制御を行う。スイッチ20は、分散アンテナ30とCS100とに接続される。スイッチ20は、CS100の制御により、分散アンテナ30を、CS100に設けられた複数の信号処理部に動的に割り当てる。
【0017】
図2は、CS100の構成等を示すブロック図である。CS100は、N個(Nは2以上の整数)の信号処理部10-1、10-2、…、10-N、取得部40、割当部50、および設定部60を含む。信号処理部10-1、10-2、…、10-Nの各々を特に区別しない場合には、信号処理部10と表現する。また、
図2の構成において、J個(Jは2以上の整数)の分散アンテナ30-1、30-2、…、30-Jが設けられている。分散アンテナ30-1、30-2、…、30-Jの各々を特に区別しない場合には、分散アンテナ30と表現する。
【0018】
信号処理部10は、不図示の上位装置から受信した信号に対して各種処理を行い、分散アンテナ30に出力する。また、信号処理部10は、分散アンテナ30から受信した信号に対して各種処理を行い、上位装置に出力する。
【0019】
信号処理部10には、いくつかの分散アンテナ30が割り当てられる。信号処理部10は、割り当てられた分散アンテナと送受信する信号に関する処理を行う。各々の信号処理部10に割り当てる分散アンテナ30は、割当部50の制御によりスイッチ20を用いて変更可能である。
【0020】
取得部40は、信号処理部10の負荷を示す負荷情報を、信号処理部10ごとに取得する。本実施形態では、負荷情報として、分散アンテナと無線通信を行う接続ユーザ端末数や、ユーザ端末におけるユーザスループットや、信号処理部10におけるトラヒックバッファ数や、または信号処理部10における呼損率や、信号処理部10におけるパケットロス率や、信号処理部10におけるトラヒック量を示す情報としているが、これに限るものではない。
【0021】
設定部60は、信号処理部10ごとに信号処理部10の負荷を平準化させるための基準情報を信号処理部10ごとに設定する。基準情報は、負荷情報に示される負荷と比較するための基準値を示す。設定された基準情報は、割当部50が参照可能である。本実施形態では、基準情報が示す基準値としてターゲット値と閾値とがある。ターゲット値は、接続ユーザ端末数、ユーザスループット、トラヒックバッファ数や、または呼損率を対象に設定される。閾値は、パケットロス率、またはトラヒック量を対象に設定される。なお、これらは一例であり、負荷を示す値であれば、ターゲット値としても閾値としても構わない。
【0022】
割当部50は、負荷情報と、基準情報とにもとづき、分散アンテナ30の接続先の信号処理部10を割り当て、複数の信号処理部10の負荷を平準化させる。割当部50は、分散アンテナ30の接続先を切り替えるスイッチ20を用いて分散アンテナ30の接続先の前記信号処理部10を割り当てる。
【0023】
割当部50は、各信号処理部10における上記負荷情報にもとづき、分散アンテナ30単位で各信号処理部10に動的に割り当てる。改めて割り当てが行われると、新たに割り当てられた信号処理部10に、割り当てられた分散アンテナ30とその分散アンテナ30に接続するユーザを引き継ぐことで信号処理部10の負荷の平準化を行う。
【0024】
次に、CS100の処理の流れを4つのフローチャートを用いて説明する。4つのフローチャートのうちの2つは、基準としてターゲット値を用いるもので、残りの2つは、基準として閾値を用いるものである。まず、ターゲット値を用いる2つのフローチャートについて説明する。
【0025】
図3は、CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示されるフローチャートは、基準としてターゲット値を用いる場合の1つ目のフローチャートである。
【0026】
図3において、設定部60は、信号処理部10ごとにターゲット値Taを設定する(ステップS101)。信号処理部10-n(n=1~N)のターゲット値をTa(n)とする。
【0027】
取得部40は、各信号処理部10から上述した負荷情報を取得する(ステップS102)。取得された負荷情報は、割当部50に出力される。信号処理部10-nから取得された負荷情報が示す負荷をx(n)とする。このx(n)は、信号処理部10-nに接続された分散アンテナ30における負荷の総和である。例えば、分散アンテナ30のうち、多くのUEが接続されている分散アンテナ30は、そうではない分散アンテナ30と比較して負荷が大きい。
【0028】
そこで、信号処理部10-nにM(n)個の分散アンテナ30が接続され、その分散アンテナ30の各々の負荷をa(n、k)(k=1~M(n))とすると、x(n)=a(n、1)+…+a(n、M(n))である。なお、分散アンテナ30の総数はJであるので、M(1)+…+M(N)=Jである。
【0029】
次いで、割当部50はTa(n)≦x(n)があるか否かを判定する(ステップS103)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷x(n)が基準となるターゲット値Ta(n)以上の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS103では、Ta(n)≦x(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Ta(n)≦x(n)がない場合には(ステップS103:NO)、ステップS102に戻る。
【0030】
Ta(n)≦x(n)がある場合には(ステップS103:NO)、割当部50は、Ta(n)>x(n)があるか否かを判定する(ステップS104)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷x(n)が基準となるターゲット値Ta(n)未満の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS104では、Ta(n)>x(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Ta(n)>x(n)がない場合には(ステップS104:NO)、ステップS102に戻る。
【0031】
Ta(n)>x(n)がある場合には(ステップS104:YES)、割当部50は、Ta(n)≦x(n)を満足するx(n)=a(n、1)+…+a(n、M(n))のa(・、・)のうち、最大値a(p、q)と、最小値a(r、s)を取得する(ステップS105)。すなわち、割当部50は、負荷がターゲット値以上の信号処理部10に接続された分散アンテナ30のうち、最も負荷の大きいものと最も負荷の小さいものとを取得する。
【0032】
割当部50は、x(n)の最小値x(t)を取得する(ステップS106)。なお、x(t)は、Ta(t)>x(t)を満たしている。割当部50は、最大値a(p、q)<Ta(t)-x(t)か否かを判定する(ステップS107)。右辺は、ターゲット値と負荷の差であることから、信号処理部10-tが受け入れ可能な負荷を示している。よって、a(p、q)<Ta(t)-x(t)を満たす場合は、最大値a(p、q)の負荷の分散アンテナ30を信号処理部10-tに割り当てても信号処理部10-tの負荷はターゲット値未満であることを示している。
【0033】
a(p、q)<Ta(t)-x(t)の場合には(ステップS107:YES)、割当部50は、スイッチ20により、a(p、q)の負荷の分散アンテナ30の割当先を、信号処理部10-pから信号処理部10-tに移行し(ステップS108)、ステップS102に戻る。なお、
図3では、簡略化して「pからtに割当先を移行」と記載している。
【0034】
一方、a(p、q)<Ta(t)-x(t)ではない場合には(ステップS107:NO)、割当部50は、スイッチ20により、a(r、s)の負荷の分散アンテナ30の割当先を、信号処理部10-rから信号処理部10-tに移行し(ステップS109)、ステップS102に戻る。なお、
図3では、簡略化して「sからtに割当先を移行」と記載している。
【0035】
図3のフローチャートに示されるように、割当部50は、負荷情報に示される負荷が最も大きい信号処理部10に接続された分散アンテナ30の接続先を、負荷情報に示される負荷が最も小さい信号処理部10に割り当てる。
【0036】
また、割当部50は、ステップS103、104に示されるように、負荷が基準値以上の信号処理部10があり、負荷が基準値未満の信号処理部10がある場合に、負荷が基準値以上の信号処理部10に接続された分散アンテナ30の接続先を、負荷が基準値未満の信号処理部10を割り当てる。
【0037】
また、割当部50は、ステップS107に示されるように、負荷が最も大きい信号処理部10に接続された分散アンテナ30のうち、負荷が最も大きい分散アンテナ30を負荷が最も小さい信号処理部10に接続しても当該信号処理部10の負荷が基準値以上とならない場合に、負荷が最も大きい分散アンテナ30の接続先を、負荷が最も小さい信号処理部10に割り当てる。
【0038】
このようにすることで、負荷がターゲット値以上となった信号処理部10から負荷がターゲット値未満の信号処理部10に分散アンテナ30が割り当てられるので、負荷を平準化することができる。
【0039】
以上説明した
図3のフローチャートにおいて、x(・)は取得できるが、分散アンテナ30の各々のa(・、・)が取得できない場合は、最大のx(・)から、ランダムに分散アンテナ30を選択し、それを最小のx(・)に割り当ててもよい。
【0040】
図4は、CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示されるフローチャートは、基準としてターゲット値を用いる場合の2つ目のフローチャートである。
図4において、設定部60は、信号処理部10ごとにターゲット値Taを設定する(ステップS201)。信号処理部10-n(n=1~N)のターゲット値をTa(n)とする。
【0041】
取得部40は、各信号処理部10から上述した負荷情報を取得する(ステップS202)。取得された負荷情報は、割当部50に出力される。信号処理部10-nから取得された負荷情報が示す負荷をx(n)とする。このx(n)は、信号処理部10-nに接続された分散アンテナ30における負荷の総和である。
【0042】
信号処理部10-nにM(n)個の分散アンテナ30が接続され、その分散アンテナ30の各々の負荷をa(n、k)(k=1~M(n))とすると、x(n)=a(n、1)+…+a(n、M(n))である。
【0043】
次いで、割当部50はTa(n)≦x(n)があるか否かを判定する(ステップS203)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷x(n)が基準となるターゲット値Ta(n)以上の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS203では、Ta(n)≦x(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Ta(n)≦x(n)がない場合には(ステップS203:NO)、ステップS202に戻る。
【0044】
Ta(n)≦x(n)がある場合には(ステップS203:NO)、割当部50は、Ta(n)>x(n)があるか否かを判定する(ステップS204)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷x(n)が基準となるターゲット値Ta(n)未満の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS204では、Ta(n)>x(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Ta(n)>x(n)がない場合には(ステップS204:NO)、ステップS202に戻る。
【0045】
Ta(n)>x(n)がある場合には(ステップS204:YES)、割当部50は、a(・、・)をソートする(ステップS205)。割当部50は、x(n)の最小値x(t)を取得する(ステップS206)。なお、x(t)は、Ta(t)>x(t)を満たしている。よって、信号処理部10-tの負荷はターゲット値未満である。
【0046】
割当部50は、ソートしたa(・、・)を大きい順にa(・、・)の負荷の分散アンテナ30の割当先を、スイッチ20により、信号処理部10-tに移行し(ステップS207)、ステップS102に戻る。なお、
図4では、簡略化して「tに割当先を移行」と記載している。
【0047】
上記ステップS207では、例えば、Ta(t)<x(t)となる寸前まで大きい順に割り当てていき、次いでx(t)の次に小さかったx(・)において、同様にTa(・)<x(・)となる寸前まで割り当てることを、Ta(・)≦x(・)を満たす信号処理部10がなくなるまで繰り返す。このように割当先をまず決めた上で、スイッチ20を用いて一斉に割当先を変更する。
【0048】
このようにすることで、負荷がターゲット値以上となった信号処理部10から負荷がターゲット値未満の信号処理部10に分散アンテナ30が割り当てられるので、負荷を平準化することができる。
【0049】
図5は、CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示されるフローチャートは、基準として閾値を用いる場合の1つ目のフローチャートである。
【0050】
図5において、設定部60は、信号処理部10ごとに閾値Thを設定する(ステップS301)。信号処理部10-n(n=1~N)の閾値をTh(n)とする。
【0051】
取得部40は、各信号処理部10から上述した負荷情報を取得する(ステップS302)。取得された負荷情報は、割当部50に出力される。信号処理部10-nから取得された負荷情報が示す負荷をy(n)とする。このy(n)は、信号処理部10-nに接続された分散アンテナ30における負荷の総和である。例えば、分散アンテナ30のうち、多くのUEが接続されている分散アンテナ30は、そうではない分散アンテナ30と比較して負荷が大きい。
【0052】
そこで、信号処理部10-nにM(n)個の分散アンテナ30が接続され、その分散アンテナ30の各々の負荷をb(n、k)(k=1~M(n))とすると、y(n)=b(n、1)+…+b(n、M(n))である。なお、分散アンテナ30の総数はJであるので、M(1)+…+M(N)=Jである。
【0053】
次いで、割当部50はTh(n)≦y(n)があるか否かを判定する(ステップS303)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷y(n)が基準となる閾値Th(n)以上の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS303では、Th(n)≦y(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Th(n)≦y(n)がない場合には(ステップS303:NO)、ステップS302に戻る。
【0054】
Th(n)≦y(n)がある場合には(ステップS303:YES)、割当部50は、Th(n)>y(n)があるか否かを判定する(ステップS304)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷y(n)が基準となる閾値Th(n)未満の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS304では、Th(n)>y(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Th(n)>y(n)がない場合には(ステップS304:NO)、ステップS302に戻る。
【0055】
Th(n)>y(n)がある場合には(ステップS304:YES)、割当部50は、Th(n)≦y(n)を満足するy(n)=b(n、1)+…+b(n、M(n))のb(・、・)のうち、最大値b(p、q)と、最小値b(r、s)を取得する(ステップS305)。すなわち、割当部50は、負荷が閾値以上の信号処理部10に接続された分散アンテナ30のうち、最も負荷の大きいものと最も負荷の小さいものとを取得する。
【0056】
割当部50は、y(n)の最小値y(t)を取得する(ステップS306)。なお、y(t)は、Th(t)>y(t)を満たしている。割当部50は、最大値b(p、q)+y(t)<Th(t)か否かを判定する(ステップS307)。すなわち、最大値に現在の負荷を加えても閾値未満か否かを判定する。よって、b(p、q)+y(t)<Th(t)を満たす場合は、最大値b(p、q)の負荷の分散アンテナ30を信号処理部10-tに割り当てても信号処理部10-tの負荷は閾値未満であることを示している。
【0057】
b(p、q)+y(t)<Th(t)の場合には(ステップS307:YES)、割当部50は、スイッチ20により、b(p、q)の負荷の分散アンテナ30の割当先を、信号処理部10-pから信号処理部10-tに移行し(ステップS308)、ステップS302に戻る。なお、
図5では、簡略化して「pからtに割当先を移行」と記載している。
【0058】
一方、b(p、q)<Th(t)-y(t)ではない場合には(ステップS307:NO)、割当部50は、スイッチ20により、b(r、s)の負荷の分散アンテナ30の割当先を、信号処理部10-rから信号処理部10-tに移行し(ステップS309)、ステップS302に戻る。なお、
図5では、簡略化して「sからtに割当先を移行」と記載している。
【0059】
図5のフローチャートに示されるように、割当部50は、負荷情報に示される負荷が最も大きい信号処理部10に接続された分散アンテナ30の接続先を、負荷情報に示される負荷が最も小さい信号処理部10に割り当てる。
【0060】
また、割当部50は、ステップS303、304に示されるように、負荷が基準値以上の信号処理部10があり、負荷が基準値未満の信号処理部10がある場合に、負荷が基準値以上の信号処理部10に接続された分散アンテナ30の接続先を、負荷が基準値未満の信号処理部10を割り当てる。
【0061】
また、割当部50は、ステップS307に示されるように、負荷が最も大きい信号処理部10に接続された分散アンテナ30のうち、負荷が最も大きい分散アンテナ30を負荷が最も小さい信号処理部10に接続しても当該信号処理部10の負荷が基準値以上とならない場合に、負荷が最も大きい分散アンテナ30の接続先を、負荷が最も小さい信号処理部10に割り当てる。
【0062】
このようにすることで、負荷が閾値以上となった信号処理部10から負荷が閾値未満の信号処理部10に分散アンテナ30が割り当てられるので、負荷を平準化することができる。
【0063】
以上説明した
図5のフローチャートにおいて、y(・)は取得できるが、分散アンテナ30の各々のa(・、・)が取得できない場合は、最大のy(・)から、ランダムに分散アンテナ30を選択し、それを最小のy(・)に割り当ててもよい。
【0064】
図6は、CS100の処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示されるフローチャートは、基準として閾値を用いる場合の2つ目のフローチャートである。
図6において、設定部60は、信号処理部10ごとに閾値Thを設定する(ステップS401)。信号処理部10-n(n=1~N)の閾値をTh(n)とする。
【0065】
取得部40は、各信号処理部10から上述した負荷情報を取得する(ステップS402)。取得された負荷情報は、割当部50に出力される。信号処理部10-nから取得された負荷情報が示す負荷をy(n)とする。このy(n)は、信号処理部10-nに接続された分散アンテナ30における負荷の総和である。
【0066】
信号処理部10-nにM(n)個の分散アンテナ30が接続され、その分散アンテナ30の各々の負荷をb(n、k)(k=1~M(n))とすると、y(n)=b(n、1)+…+b(n、M(n))である。
【0067】
次いで、割当部50はTh(n)≦y(n)があるか否かを判定する(ステップS403)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷y(n)が基準となる閾値Th(n)以上の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS403では、Th(n)≦y(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Th(n)≦y(n)がない場合には(ステップS403:NO)、ステップS402に戻る。
【0068】
Th(n)≦y(n)がある場合には(ステップS403:YES)、割当部50は、Th(n)>y(n)があるか否かを判定する(ステップS404)。すなわち、n=1~Nにおいて、負荷y(n)が基準となる閾値Th(n)未満の信号処理部10-nがあるか否かを判定する。このステップS404では、Th(n)>y(n)を満たす信号処理部10-nが1つでもある場合には肯定判定となる。Th(n)>y(n)がない場合には(ステップS404:NO)、ステップS402に戻る。
【0069】
Th(n)>y(n)がある場合には(ステップS404:YES)、割当部50は、b(・、・)をソートする(ステップS405)。割当部50は、y(n)の最小値y(t)を取得する(ステップS406)。なお、y(t)は、Th(t)>y(t)を満たしている。よって、信号処理部10-tの負荷は閾値未満である。
【0070】
割当部50は、ソートしたb(・、・)を大きい順にb(・、・)の負荷の分散アンテナ30の割当先を、スイッチ20により、信号処理部10-tに移行し(ステップS407)、ステップS102に戻る。なお、
図6では、簡略化して「tに割当先を移行」と記載している。
【0071】
上記ステップS407では、例えば、Th(t)<y(t)となる寸前まで大きい順に割り当てていき、次いでy(t)の次に小さかったy(・)において、同様にTh(・)<y(・)となる寸前まで割り当てることを、Th(・)≦y(・)を満たす信号処理部10がなくなるまで繰り返す。このように割当先をまず決めた上で、スイッチ20を用いて一斉に割当先を変更する。
【0072】
このようにすることで、負荷が閾値以上となった信号処理部10から負荷が閾値未満の信号処理部10に分散アンテナ30が割り当てられるので、負荷を平準化することができる。
【0073】
上述した
図3~
図6のフローチャートは、ターゲット値または閾値との比較結果に応じて平準化するものであった。これに対し、ターゲット値または閾値と比較せずとも、所定の契機が到来したときに平準化してもよい。所定の契機としては、無線通信システム1の運用者による指示や、定期的なタイミングが挙げられる。また、契機として信号処理部10の負荷のばらつきが大きくなった時(分散が所定以上となった時)が挙げられる。
【0074】
この場合の割当方法としては、なるべく分散アンテナ30の接続先の変更回数を少なくするために、上述したa(・、・)またはb(・、・)の値にもとづき平準化する上で最小の変更回数となる適切な分散アンテナ30を選択して、選択された分散アンテナ30を移行対象としてもよい。他の割当方法としては、n=1~Nの各x(n)/Ta(n)または各y(n)/Th(n)がほぼ同じ値となるようにa(・、・)またはb(・、・)の値に基づき平準化してもよい。
【0075】
分散アンテナ30の負荷は、曜日や時間帯により異なる。そこで、曜日や時間帯ごとに分散アンテナ30の負荷を示す統計量を予め求めておき、統計量にもとづき分散アンテナ30の接続先を割り当ててもよい。例えば、日曜日の昼頃は、所定の分散アンテナ30に接続するUEが増大するという統計量が得られている場合には、日曜日の昼が到来したことを契機に、上記所定の分散アンテナ30の接続先が異なる信号処理部10となるように割り当ててもよい。
【0076】
以上説明した実施形態において、スイッチ20はCS100の外部に設けられているが、CS100の内部に設けてもよい。また、実施形態における無線通信システム1において、分散アンテナ30と信号処理部10との通信方法として、アナログRoF技術が用いられていたが、アナログRoF技術に代えて、ディジタルRoF技術を用いてもよい。これは、複数の信号処理部の負荷を平準化させる処理は、分散アンテナ30と信号処理部10との通信方法に依存しないためである。
【0077】
(変形例)
無線通信システム1において、CS100は、スイッチ20を介して分散アンテナ30と接続していたが、複数のCSとスイッチを用いた構成であってもよい。
図7に複数のCSとスイッチを用いた無線通信システム1000の構成例を示す。無線通信システム1000は、複数(M個:Mは2以上の整数)のCS100-1、100-2、…、100-Mを備える。
【0078】
CS100-1、100-2、…、100-Mは、スイッチ200を介して分散アンテナ30と接続する。無線通信システム1000は、CS100-1、100-2、…、100-Mとスイッチ200は、1本の信号線で接続されているが、これは一例であり、複数本の信号線で接続されていてもよい。
【0079】
無線通信システム1000において、CS100-1、100-2、…、100-Mは、それぞれ1つ以上の信号処理部を備えるが、
図2で説明した取得部、割当部、設定部を持たずに、スイッチ200に取得部、割当部、設定部に相当する機能を持たせてもよい。または、CS100-1、100-2、…、100-Mの上位のOPS(Operation System)を設け、このOPSで取得部、割当部、設定部に相当する機能を実現してもよい。あるいは、CS100-1、100-2、…、100-M同士で負荷情報や割当情報をやり取りすることで、取得部、割当部、設定部に相当する機能を実現してもよい。なお、無線通信システム1000において、CS100-1、100-2、…、100-Mが取得部、割当部、設定部を持たせる場合には、各CSが自ら備える信号処理部に割り当てるための取得部、割当部、設定部として機能させてもよい。
【0080】
このように複数のCSに跨る場合も本実施形態を適用することで、負荷情報の分散だけではなく、CSの故障時の冗長性も確保可能となる。
【0081】
取得部40、割当部50、および設定部60は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成されてもよい。この場合、取得部40、割当部50、および設定部60は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、取得部40、割当部50、および設定部60として機能する。なお、取得部40、割当部50、および設定部60の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0082】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ユーザ端末の接続数が大きく変化するなど、比較的負荷の変動が大きい無線通信システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…無線通信システム、10…信号処理部、20…スイッチ、30…分散アンテナ、40…取得部、50…割当部、60…設定部、100…CS