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特許7598201ウェハボートハンドリング装置、縦型バッチ炉および方法
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  • 特許-ウェハボートハンドリング装置、縦型バッチ炉および方法 図1
  • 特許-ウェハボートハンドリング装置、縦型バッチ炉および方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ウェハボートハンドリング装置、縦型バッチ炉および方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20241204BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20241204BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/324 W
H01L21/22 511A
H01L21/22 511B
H01L21/68 A
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020074463
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2020188254
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】62/848,758
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デ リダー, クリス へー.エム.
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/103978(WO,A1)
【文献】特開2018-026535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/22
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型バッチ炉の処理チャンバの下方に配置されるように構成されているウェハボートハンドリング装置であって、前記ウェハボートハンドリング装置は、
ウェハボートハンドリング空間を画定している壁を有する主筐体と、
ウェハボートを支持する少なくとも1つのウェハボート支持部を有し、前記ウェハボートハンドリング空間内の冷却位置まで前記ウェハボートを搬送するよう構成されているボート搬送部と
前記ウェハボートハンドリング空間に気体を供給し、および、前記ウェハボートハンドリング空間から前記気体を取り出すことで、前記ウェハボートハンドリング装置の前記主筐体内にミニエンバイロメントを形成する気体循環システムとを備え、
前記壁のうち前記冷却位置に隣接する部分は、前記冷却位置にある前記ウェハボートから熱放射吸収によって熱を取り去るべく熱放射表面吸収率が少なくとも0.6である壁部であり、
前記壁部は、前記壁部を冷却するべく液体冷却剤が利用時に流れるよう形成および配置されている冷却チャネルを含み、
前記気体循環システムは、前記冷却位置にある前記ウェハボートから対流により熱を取り去るべく、前記ウェハボートハンドリング空間に供給される前記気体を冷却する気体循環システム用熱交換器を有し、
前記冷却チャネルは、前記気体循環システム用熱交換器の一部である複数の冷却チャネルを含み、前記複数の冷却チャネルの冷却機能は、前記壁部が吸収する熱放射および対流によって前記気体が吸収する熱が前記複数の冷却チャネル内の前記液体冷却剤によって取り去られるように設定されてい
ウェハボートハンドリング装置。
【請求項2】
前記壁部は金属壁部である、請求項1に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項3】
前記金属壁部は陽極酸化アルミニウム壁部である、請求項2に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項4】
前記壁部は塗料が塗られた金属壁部を含む、請求項1に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項5】
前記ボート搬送部は、
少なくとも2つのウェハボート支持部を含む回転可能テーブルであって、前記主筐体の内部で中心の垂直軸を中心として回転可能であり、複数の回転位置に位置決めが可能である回転可能テーブルと、
前記回転可能テーブルに実装されている垂直方向に延在する壁構造であって、各ウェハボート支持部において、対応する垂直方向に延在するウェハボートチャンバを少なくとも部分的に画定する、垂直方向に延在する壁構造と
を有し、
前記回転可能テーブルは、ウェハボートチャンバ毎に、前記ウェハボートチャンバおよび内部に収容されている前記ウェハボートが前記冷却位置に位置決めされる回転位置を持つ
請求項1からの何れか一項に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項6】
前記気体循環システムは、前記冷却位置にある前記ウェハボートチャンバに少なくとも、前記気体を供給するよう構成されている、請求項に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項7】
前記気体循環システムは、
各ウェハボートチャンバ内にある気体供給エリアであって、前記垂直方向に延在する壁構造に分散して設けられている複数の気体供給開口を含む気体供給エリアと、
各ウェハボートチャンバ内にある気体排出エリアであって、前記ウェハボートチャンバが前記冷却位置にある場合に少なくとも、複数の気体排出開口を含む気体排出エリアと、
前記複数の気体供給開口と流体連通している流入ダクトと、
前記複数の気体排出開口と流体連通している流出ダクトと、
前記流出ダクトから前記流入ダクトまで延在し、少なくとも1つの気体配流器を含む再循環チャネルと
を有する、請求項に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項8】
前記気体排出エリアのうち少なくとも前記複数の気体排出開口を含む部分は、熱放射表面吸収率が少なくとも0.6である前記壁部に設けられている、請求項に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項9】
前記垂直方向に延在する壁構造は、前記ウェハボートが放射する熱を前記壁部の方向に反射するよう構成されている反射面を含む、請求項からの何れか一項に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項10】
前記壁部は、前記壁部がヒートシンクとして機能するような厚みを持つ、請求項1からの何れか一項に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項11】
前記壁部のうち前記ウェハボートハンドリング空間とは反対側の外面が熱交換面拡大形状を持つことにより、前記壁部はヒートシンクとして機能し、前記熱交換面拡大形状は、フィン、ピン、孔および粗表面のうち少なくとも1つを含む、請求項1から10の何れか一項に記載のウェハボートハンドリング装置。
【請求項12】
縦型バッチ炉アセンブリであって、
ウェハボートに収容されているウェハを処理する処理チャンバと、
請求項1から11の何れか一項に記載のウェハボートハンドリング装置であって、前記処理チャンバの下方に配置されているウェハボートハンドリング装置と、
前記ウェハボートハンドリング装置から前記処理チャンバへと、そして、逆方向へと、ウェハボートを搬送するよう構成されている垂直ウェハボートリフトアセンブリと
を備える、縦型バッチ炉アセンブリ。
【請求項13】
ウェハボートハンドリング装置においてウェハボートを冷却する方法であって、前記方法は、
請求項1から11の何れか一項に記載のウェハボートハンドリング装置を用意する段階と、
前記ウェハボートハンドリング装置が有する前記少なくとも1つのウェハボート支持部上にウェハボートを用意する段階と、
前記ウェハボートを前記冷却位置まで搬送する段階と、
前記ウェハボートからの熱放射を、熱放射表面吸収率が少なくとも0.6である前記壁部を利用して吸収する段階と
を備える、方法。
【請求項14】
請求項13に記載のウェハボートハンドリング装置においてウェハボートを冷却する方法であって、前記方法はさらに、
前記ウェハボートハンドリング空間に供給される気体を冷却する段階と、
前記冷却位置にある前記ウェハボートから対流を利用して熱を取り去る段階と
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、ウェハボートハンドリング装置に関する。ウェハボートハンドリング装置は、ウェハボートに収容されている複数のウェハを処理する縦型バッチ炉の処理チャンバの下方に配置されるよう構成されているとしてよい。本開示はさらに、上記のウェハボートハンドリング装置を備える縦型バッチ炉アセンブリに関する。本開示はまた、ウェハボートハンドリング装置においてウェハボートを冷却する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハボートハンドリング装置は、縦型バッチ炉の処理チャンバの下方に配置されるよう構成されているとしてよいが、ウェハボートに収容されている複数のウェハを処理するために用いられるとしてよい。ウェハボートハンドリングは、バッチ炉の処理チャンバまでウェハボートを垂直方向に搬送するよう、そして、処理チャンバからウェハボートを受け取るよう構成されているとしてよい。バッチ炉から受け取ったウェハボートは、温度が高く、処理済みウェハをウェハボートから取り出す前に冷却位置で冷却する必要があるとしてよい。
【0003】
ウェハボートハンドリング装置では、熱交換器を用いて冷却される空気または気体を循環させることによって、この冷却処理の効果を高めるとしてよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この「概要」部分は、いくつかの概念を選んで簡潔に紹介するために記載されている。これらの概念は、以下に記載する本開示の実施形態例の詳細な説明においてさらに詳細に説明する。この「概要」部分は、請求の対象となる主題のうち重要または不可欠な特徴を特定することを意図しているものではなく、請求の対象となる主題の範囲を限定するために用いられることを意図しているものでもない。
【0005】
ウェハボート冷却機能を持つウェハボートハンドリング装置を改良することを目的としてよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
壁のうち冷却位置に隣接する部分は、ステンレススチールを材料とするのが普通であるが、ステンレススチールの熱放射表面吸収率は0.3から0.4であるとしてよい。熱放射表面吸収率とは、入射する熱放射に対する吸収された熱放射の割合である。壁の一部の熱放射表面吸収率を0.3から0.4とすることで、入射する熱の大部分は反射されて壁からウェハボートに戻っていくので、ウェハボートの冷却に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
このため、ウェハボートハンドリング装置を提供するとしてよい。より具体的には、縦型バッチ炉の処理チャンバの下方に配置されるよう構成されているウェハボートハンドリング装置を提供するとしてよい。ウェハボートハンドリング装置は、主筐体と、ボート搬送部とを備えるとしてよい。主筐体は、ウェハボートハンドリング空間を画定する壁を有するとしてよい。ボート搬送部は、ウェハボートを支持する少なくとも1つのウェハボート支持部を有するとしてよく、ウェハボートハンドリング空間内の冷却位置までウェハボートを搬送するよう構成されているとしてよい。壁のうち冷却位置に隣接する部分は、冷却位置にあるウェハボートから熱放射吸収によって熱を吸収するべく、熱放射表面吸収率が少なくとも0.60である壁部であってよい。熱放射表面吸収率とは、入射する熱放射に対する吸収された熱放射の割合である。
【0008】
壁部の熱放射表面吸収率を少なくとも0.6とすることによって、放射熱の反射が大幅に減るとしてよい。この結果、ウェハボートの冷却がより迅速に行われるとしてよい。つまり、ウェハボートにある処理済みのウェハを取り出すタイミングが早くなり、ウェハボートハンドリング装置の運転効率が上がる。
【0009】
別の実施形態によると、ウェハボートに収容されているウェハを処理する処理チャンバと、本発明に係るウェハボートハンドリング装置とを備える縦型バッチ炉アセンブリを提供する。ウェハボートハンドリング装置は、処理チャンバの下方に配置される。縦型バッチ炉はさらに、ウェハボートハンドリング装置から処理チャンバへと、そして、逆方向へと、ウェハボートを搬送するよう構成されている垂直ウェハボートリフトアセンブリを備える。
【0010】
当該縦型バッチ炉の利点は、ウェハボートハンドリング装置に関して上述した利点と同様としてよい。
【0011】
最後に、本発明は、ウェハボートハンドリング装置においてウェハボートを冷却する方法を提供する。より具体的には、当該方法は、本発明に係るウェハボートハンドリング装置を用意する段階と、ウェハボートハンドリング装置が有する少なくとも1つのウェハボート支持部にウェハボートを用意する段階と、ウェハボートを冷却位置まで搬送する段階と、ウェハボートからの熱放射を壁部を利用して吸収する段階とを備える。
【0012】
当該方法の利点は、ウェハボートハンドリング装置および縦型バッチ炉に関して上述した利点と同様である。
【0013】
先行技術に対する利点および本発明を要約することを目的として、本発明の目的および利点を上述した。言うまでもなく、このような目的または利点の全てが本発明の任意の特定の実施形態で必ずしも実現され得るわけではないと理解されたい。このため、例えば、当業者であれば、本発明の具現化または実行に際して、本明細書で教示または示唆される一または複数の利点が実現または最適化されるが、必ずしも本明細書で教示または示唆される他の目的または利点が実現されるものではないことを認めるであろう。
【0014】
従属項においてさまざまな実施形態を請求するが、図面に図示している例を参照しつつさらに説明する。これらの実施形態は組み合わせるとしてもよいし、または、互いに別々に適用するとしてもよい。
【0015】
これらの実施形態はすべて、本明細書で開示した本発明の範囲に含まれるものとする。上記およびその他の実施形態は、添付図面を参照することで、以下に記載する実施形態の詳細な説明から、当業者には容易に明らかになるであろう。本発明は開示しているどの特定の実施形態にも限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書の結論となる請求項では本発明の実施形態とみなしている内容を具体的に指摘すると共に明確に請求しているが、本開示の実施形態の利点は、添付図面を参照しつつ読むことで本開示の実施形態例の説明からより容易に理解され得るものである。添付図面は以下の通りである。
【0017】
図1】実施形態に係るウェハボートハンドリング装置の例を示す斜視図である。
【0018】
図2】実施形態に係るウェハボートハンドリング装置の例を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願では同様または対応する特徴は同様または対応する参照符号で表す。さまざまな実施形態の説明は図面に図示した例に限定されるものではなく、詳細な説明および請求項で用いる参照番号は、実施形態の説明を限定することを意図したものではなく、図面に図示した例を参照することで実施形態を明確にするために記載している。
【0020】
特定の実施形態および例を以下で開示するが、本発明の範囲は、具体的に開示した実施形態および/または本発明の利用、ならびに、それらから自明である変形例および均等例よりも広いことは、当業者であれば理解するであろう。このように、開示している本発明の範囲は以下で説明する具体的に開示した実施形態によって限定されるべきではないことを意図している。本願で提示する図面は、任意の具体的な材料、構造または装置の実際の見え方であることを意味するものではなく、本開示の実施形態を説明するために用いられる理想的な表現に過ぎない。
【0021】
本明細書で用いる場合、「ウェハ」という用語は、利用され得る1もしくは複数の原材料を意味するものであるとしてよく、または、装置、回路もしくはフィルムを上面に形成するための1もしくは複数の原材料を意味するものであるとしてよい。
【0022】
最も一般的な言葉で説明すると、本開示は、縦型バッチ炉の処理チャンバの下方に配置されるよう構成されているウェハボートハンドリング装置10を提供する。縦型バッチ炉は、ウェハボート12に収容されている複数のウェハを処理するよう構成されているとしてよい。ウェハボートハンドリング装置10は、主筐体と、ボート搬送部20とを備えるとしてよい。主筐体14は、ウェハボートハンドリング空間18を画定している壁16を持つとしてよい。ボート搬送部20は、ウェハボート12を支持する少なくとも1つのウェハボート支持部22を有するとしてよく、ウェハボートハンドリング空間18内の冷却位置24までウェハボート12を搬送するよう構成されているとしてよい。壁のうち冷却位置24に隣接する部分は、ウェハボート12から熱放射吸収によって熱を取り去るべく、熱放射表面吸収率が少なくとも0.6である壁部26を含む。熱放射表面吸収率とは、入射する熱放射に対する吸収された熱放射の割合である。壁部26は金属製であるとしてよい。
【0023】
冷却位置に隣接する壁部26は、熱放射表面吸収率が0.6から0.99の間であるとしてよい。熱放射表面吸収率は、ウェハボートの温度が赤外スペクトルに影響を与えるので、ウェハボートの温度の関数として変化するとしてよい。壁部26の(室温での)熱放射表面吸収率は、ウェハを搭載したウェハボートの温度が摂氏70度から摂氏200度の範囲内にある場合、0.6から0.99の間であるとしてよい。壁部26の(室温での)熱放射表面吸収率は、ウェハを搭載したウェハボートの温度が摂氏70度から摂氏100度の範囲内にある場合、0.65から0.95の間であるとしてよい。
【0024】
言うまでもなく、壁部のうち少なくとも、ウェハボートハンドリング空間、特に、冷却位置にあるウェハボートに面している側は、ウェハボート12から熱を熱放射吸収によって取り去るべく、熱放射表面吸収率が少なくとも0.6となっているとしてよい。ウェハボートは、冷却位置において冷却している間、温度が摂氏25度から摂氏800度であるとしてよい。
【0025】
ある実施形態において、壁部26は金属製であるとしてよい。金属には、陽極酸化アルミニウムが含まれるとしてよい。陽極酸化アルミニウムを原料とする壁部の熱放射表面吸収率は、0.6から0.99の間であるとしてよい。
【0026】
これに代えて、または、これに加えて、壁部26は塗料が塗られた金属壁部を含むとしてよい。塗料が塗られた金属壁部の熱放射表面吸収率は、0.6から0.99の間であるとしてよい。
【0027】
この結果、陽極酸化アルミニウムおよび塗料が塗られた金属面はどちらも、熱放射吸収を改善するとしてよい。このため、ウェハボートは、例えば、ウェハボートが炉から搬出された時点の温度である摂氏300度から摂氏800度の間から、冷却が終了する時点の温度である摂氏25度から摂氏100度の間まで、より短時間で冷却されるとしてよい。つまり、ウェハボートにある処理済みのウェハを取り出すタイミングが早くなり、ウェハボートハンドリング装置の運転効率が上がるとしてよい。
【0028】
ある実施形態において、壁部26は、壁部26を冷却するよう液体冷却剤が利用時に流れるよう形成および配置されている冷却チャネル30を含むとしてよい。壁部26は、ウェハボート12からの熱放射を吸収することによって、温度が上昇するとしてよい。冷却チャネルを流れる液体によって壁部26を冷却することによって、液体冷却材は壁部26が吸収する熱を放出するとしてよい。これによって、壁部26の温度が高くなり過ぎないように抑制する。
【0029】
冷却チャネル30に加えて、または、代えて、壁部26はウェハボート12から熱を取り去るヒートシンクとして構成されるとしてもよい。このため、壁部26は、壁部26がヒートシンクとして機能するような厚みになっているとしてよい。
【0030】
これに代えて、または、これに加えて、壁部26のうちウェハボートハンドリング空間18の反対側の外面62は、熱交換面拡大形状を持つので、壁部26はヒートシンクとして機能するとしてよい。熱交換面拡大形状は、フィン、ピン、孔および粗表面のうち少なくとも1つを含む。ヒートシンクは、熱を伝達する受動型の熱交換器である。壁部26は、壁部26のうちウェハボートハンドリング空間18に向いた内面28では、ウェハボート12から熱放射を吸収する。壁部26は、ヒートシンクとして具現化されている壁部26のうち外面62では、吸収した熱を、例えば、放射および/または対流によって放出しているとしてよい。吸収した熱の放射および/または対流は、フィン、ピン、孔および/または粗表面等の表面拡大形状によって効果が高められるとしてよい。ヒートシンクは、上述した冷却チャネル30のように能動型の熱交換器を含むとしてもよいが、必須ではない。ヒートシンクは、ヒートパイプ等の受動型の熱交換器を含むとしてもよい。
【0031】
ある実施形態において、ボート搬送部20は、少なくとも2つのウェハボート支持部を含む回転可能テーブル34を有するとしてよい。回転可能テーブル34は、主筐体14の内部で中心の垂直軸36を中心として回転可能であり、複数の回転位置に位置決めが可能である。回転可能テーブル34には垂直方向に延在する壁構造38が実装されているとしてよく、壁構造38は、各ウェハボート支持部22において、対応する垂直方向に延在するウェハボートチャンバ40を少なくとも部分的に画定するとしてよい。回転可能テーブル34は、ウェハボートチャンバ40毎に、当該ウェハボートチャンバおよびその内部に収容されているウェハボートが冷却位置24に位置決めされる回転位置を持つとしてよい。
【0032】
ボート搬送部20についてはさまざまな実施形態が公知である。本実施形態では、ボート搬送部20は、回転可能テーブル34および垂直方向に延在する壁構造38を有する。回転可能テーブル34および壁構造38を組み合わせたものは、カルーセルとしても公知である。回転可能テーブル34は、ウェハボート12を冷却するべく、自身が有するウェハ支持部22を、ウェハ支持部22上に配置されているウェハボート12と共に冷却位置24まで回転させるとしてよい。回転可能テーブル34を回転させることでウェハボートチャンバ40およびその内部に収容されているウェハボートを他の回転位置まで移動させるが、そのような回転位置には、垂直方向にウェハボート12を処理チャンバ66に投入すると共にウェハボート12を処理チャンバ66から受け取るための投入/受け取り位置、および、可能であれば主筐体14の壁16に設けられている開口を通してウェハボート12との間でウェハを搬送するための搬送位置が含まれる。
【0033】
垂直方向に延在する壁構造38を有する回転可能テーブル34を利用する利点としては、垂直方向に延在する壁構造38によって形成されているウェハボートチャンバ40毎に、ミニエンバイロメントが形成され得る点が挙げられる。つまり、第1のウェハボートチャンバ40にあるウェハボート12は、第2のウェハボートチャンバ38にあるウェハボート12から到来する破片の影響を受けない。実際のところ、各ウェハボートチャンバ40には調整されたミニエンバイロメントが形成されている。これによって、ウェハ汚染の可能性が大幅に減る。
【0034】
ある実施形態において、ウェハボートハンドリング装置はさらに、気体循環システム42を備えるとしてよい。気体循環システム42は、ウェハボートハンドリング空間18に気体を供給すると共にウェハボートハンドリング空間18から気体を排出させることで、ウェハボートハンドリング装置10の主筐体14内にミニエンバイロメントを形成する。気体循環システム42は、気体循環システム用熱交換器44を有するとしてよい。気体循環システム用熱交換器44は、対流により冷却位置24にあるウェハボート12から熱を取り去るべく、ウェハボートハンドリング空間18に供給される気体を冷却する。
【0035】
気体循環システム42は、ウェハボートおよびウェハボートにあるウェハを冷却するための第2の方法を提供する。ウェハを搭載したウェハボート12を冷却する第1の方法は、壁部26の熱放射表面吸収率を少なくとも0.60として、熱放射を吸収する方法である。ウェハを搭載したウェハボート12を冷却する第2の方法は、熱対流を利用する方法である。熱対流は、冷却された気体をウェハボートハンドリング装置に、特に、冷却位置にあるウェハボートチャンバ40に少なくとも供給することで高められる。対流を利用して、ウェハボート12およびウェハから、気体循環システム42が供給する冷却された気体へと熱を伝達させる。高温のウェハを搭載したウェハボートから熱を取り去るために2つの方法を適用することで、ウェハボートハンドリング装置10の冷却機能が高められるので、冷却時間が短くなる。
【0036】
ある実施形態において、気体循環システム42は、少なくとも冷却位置24にあるウェハボートチャンバ40に気体を供給するよう構成されているとしてよい。全てのウェハボートチャンバ40を冷却する必要があるわけではない。冷却位置24にあるウェハを搭載したウェハボート12を冷却するだけで十分であるとしてよい。
【0037】
ある実施形態において、気体循環システム42は、気体供給エリア、気体排出エリア50、流入ダクト54、流出ダクト56および再循環チャネルを有するとしてよい。図2に図示している流出ダクト56は、垂直方向に延在する壁構造38によって画定されている。別の実施形態では、垂直方向に延在する壁構造38の周方向壁部38aを省略して、流出ダクト56が直接主筐体14の壁16によって画定されるようにするとしてもよい。この実施形態では、主筐体14の壁16のうち、冷却位置にあるウェハボートに対応付けられている流出ダクト56を画定している部分もまた、熱放射表面吸収率が少なくとも0.6であるとしてよく、別の実施形態では、冷却チャネルを含むとしてよい。本実施形態によればさらに、冷却効果が改善されるとしてよい。流出ダクト56は、垂直方向に延在する壁構造38と主筐体14の壁16との間の通路として具現化されているとしてよい。各ウェハボートチャンバ40内の気体供給エリア46は、垂直方向に延在する壁構造38に分散して設けられている複数の気体供給開口を含むとしてよい。各ウェハボートチャンバ40内の気体排出エリア50は、ウェハボートチャンバ40が冷却位置24にある場合に少なくとも、複数の気体排出開口を含むとしてよい。流入ダクト54は、気体供給開口と流体連通しているとしてよい。流出ダクト56は、気体排出開口と流体連通しているとしてよい。再循環チャネルは、流出ダクト56から流入ダクト54まで延在しているとしてよく、少なくとも1つの気体配流器を含むとしてよい。このため、気体循環システム42は、閉ループの循環システムを形成する。気体配流器は、再循環チャネルを通るように、そして、気体循環システム42を通るように、気体を配流して、冷却位置にあるウェハを搭載したウェハボート12を少なくとも冷却するとしてよい。流入ダクト54および/または流出ダクト56は、垂直方向に延在する壁構造38によって形成されるとしてよい。そして、ダクト54、56は両方とも、回転可能テーブル34上のウェハボートチャンバ40と共に回転する。
【0038】
気体排出エリア50のうち少なくとも複数の気体排出開口が設けられている部分は、熱放射表面吸収率が少なくとも0.60である壁部26に設けられているとしてよい。このようにすることで、流出ダクト56は、流出ダクト56は回転可能テーブル34と共に回転する必要がないが主筐体14に接続され得るように、形成されるとしてよい。これによって、流出ダクト56の形成は技術的に難易度が下がるのでコストが下がる。
【0039】
ある実施形態において、冷却チャネル30は、気体循環システム用熱交換器44の一部である複数の冷却チャネル30を含むとしてよい。複数の冷却チャネル30はこのため、壁部26と同時に、気体循環システム42内の気体を冷却するとしてよい。冷却チャネル30の冷却機能は、金属壁部26が吸収する熱放射および対流によって気体が吸収する熱が、冷却チャネル30内の液体冷却材によって取り去られるように、設定されているとしてよい。このため、効果的な冷却効果が得られる。
【0040】
ある実施形態において、垂直方向に延在する壁構造38は、ウェハボート12が放射する熱を壁部26の方向に反射するように構成されている反射面を含むとしてよい。ウェハボート12から放射される熱は通常、壁部26に向かって放射されるだけでなく、ウェハボート12の周方向において全体から放射される。つまり、ウェハボートハンドリング装置10の他の部分もこの熱放射を受け取るということである。垂直方向に延在する壁構造38の反射面は、この熱放射を吸収する代わりに、壁部26の方向に熱放射を反射する。これによって、壁部26による熱放射の吸収が増加するので、ウェハボートハンドリング装置の冷却効率が高まる。
【0041】
本開示はさらに、ウェハボート12に収容されているウェハを処理する処理チャンバ66と、処理チャンバ66の下方に配置されている本発明に係るウェハボートハンドリング装置10と、ウェハボートハンドリング装置10から処理チャンバ66へと、そして、逆方向へと、ウェハボート12を搬送するよう構成されている垂直ウェハボートリフトアセンブリ68とを備える縦型バッチ炉アセンブリを提供する。
【0042】
縦型バッチ炉アセンブリの効果および利点は「発明の概要」部分で説明しており、これらの効果および利点を参照によりここに挿入するものとする。
【0043】
最後に、本開示は、ウェハボートハンドリング装置10においてウェハボート12を冷却する方法を提供する。当該方法は、本発明に係るウェハボートハンドリング装置10を用意する段階と、ウェハボートハンドリング装置10が有する少なくとも1つのウェハボート支持部22にウェハボート12を用意する段階と、ウェハボート12を冷却位置24まで搬送する段階と、熱放射表面吸収率が少なくとも0.60である壁部26を利用してウェハボート12からの熱放射を吸収する段階とを備える。
【0044】
当該方法の効果および利点は「発明の概要」部分で説明しており、これらの効果および利点を参照によりここに挿入するものとする。
【0045】
ある実施形態において、当該方法はさらに、ウェハボートハンドリング空間18に供給される気体を冷却して、対流により冷却位置24にあるウェハボート12から熱を取り去る段階を備える。
【0046】
熱放射を吸収することでウェハボート12を冷却することに加えて、冷却された気体が、ウェハボート12を冷却する第2の方法を実現する。つまり、ウェハボートハンドリング空間18に供給される冷却された気体を利用した熱の対流によって、冷却を行う。これによってさらに、ウェハボートハンドリング装置10の冷却機能が高まる。
【0047】
部分的に添付図面を参照しつつ本発明の実施形態例を上述してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではないと理解されたい。当業者であれば、特許請求された発明を実施する際に、図面、明細書、および添付の特許請求の範囲を検討することによって、開示した実施形態に対する変形例に想到し実現することができる。
【0048】
本明細書で「一実施形態」または「実施形態」と言及する場合、当該実施形態に関連して記述される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書で何度も「一実施形態において」または「ある実施形態において」という表現が見られるが、必ずしも全て同じ実施形態を指しているわけではない。
【0049】
さらに、上述したさまざまな実施形態のうち1または複数の実施形態の特定の特徴、構造または特性は、それぞれ別個に利用および実装され得るものであり、任意の適切な方法で組み合わせて、明示的に説明されていない新たな実施形態を構成するとしてもよいことに留意されたい。詳細な説明および請求項で記載した参照番号は、実施形態に説明を限定するものではなく、請求項を限定するものでもない。参照番号は説明を明確にすることのみを目的として用いている。
【符号の説明】
【0050】
10-ウェハボートハンドリング装置
12-ウェハボート
14-主筐体
16-壁
18-ウェハボートハンドリング空間
20-ボート搬送部
22-ウェハボート支持部
24-冷却位置
26-壁部
28-壁部内面
30-冷却チャネル
34-回転可能テーブル
36-中心の垂直軸
38-垂直方向に延在する壁構造
40-ウェハボートチャンバ
42-気体循環システム
44-気体循環熱交換器
46-気体供給エリア
50-気体排出エリア
54-流入ダクト
56-流出ダクト
62-壁部外面
66-処理チャンバ
68-垂直ウェハボートリフトアセンブリ
図1
図2