(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】送信装置、中継装置、及び受信装置
(51)【国際特許分類】
H04N 21/2383 20110101AFI20241204BHJP
H04N 21/61 20110101ALI20241204BHJP
【FI】
H04N21/2383
H04N21/61
(21)【出願番号】P 2020162746
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】白井 規之
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
【審査官】醍醐 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191904(JP,A)
【文献】特開2008-124934(JP,A)
【文献】特開2007-104334(JP,A)
【文献】特開2008-228082(JP,A)
【文献】特開2007-336408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISDB-T変調信号を生成する変調部と、放送所を識別するTxID信号を発生するTxID信号発生部と、前記ISDB-T放送信号に前記TxID信号が付加された信号を送信する送信部とを備える送信装置において、
前記TxID信号は、ISDB-T変調信号のうちワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をT
OFDM[μ秒]、GI長をT
GI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をD
xとしたとき、
ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数f
TXIDは、
f
TxID =(T
OFDM/T
GI)×D
x
TxID信号のシンボル長T
TxID[μ秒]は、
T
TxID = T
OFDM/f
TxID
を満足することを特徴とする、送信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信装置において、
前記TxID信号発生部は、TxIDの符号化を行うID符号化部と、キャリア変調部と、前記TxID信号を付加しないサブキャリアに対応するNull挿入処理を行うNull挿入部と、OFDM変調部とを備えることを特徴とする、送信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の送信装置において、
前記TxID信号は、TxID信号が挿入されるサブキャリア番号及びTxIDのコードの少なくとも一方を異ならせることにより、前記放送所を識別することを特徴とする、送信装置。
【請求項4】
放送波を受信しIF信号に変換する放送波中継部と、前記IF信号から他局のTxID信号を削除し自局のTxID信号を挿入する中継局TxID信号挿入部と、自局のTxID信号が挿入されたIF信号を放送波として出力する送信部とを備える中継装置において、
前記TxID信号は、ISDB-T変調信号のうちワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をT
OFDM[μ秒]、GI長をT
GI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をD
xとしたとき、
ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数f
TXIDは、
f
TxID =(T
OFDM/T
GI)×D
x
TxID信号のシンボル長T
TxID[μ秒]は、
T
TxID = T
OFDM/f
TxID
を満足することを特徴とする、中継装置。
【請求項5】
請求項4に記載の中継装置において、
前記中継局TxID信号挿入部は、他局のTxID信号を生成しこれを位相調整しながら前記IF信号から除去する回路部と、自局のTxIDの符号化を行うID符号化部、キャリア変調部、前記TxID信号を付加しないサブキャリアに対応するNull挿入処理を行うNull挿入部、及びOFDM変調部とを備え、自局のTxID信号を挿入する回路部とを備えることを特徴とする、中継装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の中継装置において、
自局のTxID信号は、放送波に含まれる他局のTxID信号とは、異なるサブキャリアに挿入されること、及び、異なるTxIDのコードであること、の少なくとも一方を満たすことを特徴とする、中継装置。
【請求項7】
放送波を受信する受信部と、放送波を送信した放送所を判定するTxID判定部とを備える受信装置において、
前記TxID判定部は、ISDB-T変調信号のうちワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をT
OFDM[μ秒]、GI長をT
GI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をD
xとしたとき、
ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数f
TXIDは、
f
TxID =(T
OFDM/T
GI)×D
x
TxID信号のシンボル長T
TxID[μ秒]は、
T
TxID = T
OFDM/f
TxID
を満足するTxID信号に基づいて、前記放送所を判定することを特徴とする、受信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の受信装置において、
前記TxID判定部は、放送波をOFDM復調し等化後のIQ値に基づいてTxIDキャリアレプリカIQ値を出力するTxIDキャリア判定部と、キャリア復調部と、
TxIDのコードを復号するID復号部とを備えることを特徴とする、受信装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の受信装置において、
前記TxID判定部は、TxID信号が挿入されるサブキャリア番号及びTxIDのコードの少なくとも一方に基づいて、前記放送所を判定することを特徴とする、受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、中継装置、及び受信装置に関し、特に、現行の地上デジタルテレビジョン放送を送受信する送信装置、中継装置、及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の地上デジタルテレビジョン放送方式(ISDB-T:Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)は、1チャンネルの伝送帯域を13個の帯域(OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)セグメント)に分割して、セグメントごとに、伝送パラメータや伝送する情報を設定する方式である(非特許文献1)。例えば、モバイル端末等のために、1セグメントを割り当てて、ノイズに強い放送を行うことにより、電波が弱い場合でも、また高速移動中においても安定した受信が可能である「ワンセグ」放送を実現している。
【0003】
また、日本の地上放送では、OFDMがマルチパス妨害に強いことを積極的に利用し、複数の放送所同士が同一周波数でネットワークを構成する単一周波数ネットワーク(SFN:single frequency network)が構築されている。SFNにより周波数の有効利用が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】ARIB STD-B31 一般社団法人 電波産業会
【文献】ATSC 3.0 Standard:Physical Layer Protocol A/322:2020 P245-249 <URL: HYPERLINK "https://www.atsc.org/wp-content/uploads/2020/01/A322-2020-Physical-Layer-Protocol.pdf" https://www.atsc.org/wp-content/uploads/2020/01/A322-2020-Physical-Layer-Protocol.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現行の地上放送伝送方式(ISDB-T)の変調信号では、放送所を識別する信号、いわゆる、放送所ID信号が伝送されていない。そのため、エリア内で受信した放送波がどこの放送所から送信された電波かを識別することはできない。特に、単一周波数ネットワーク(SFN)のエリア内では、複数の放送所から送信される電波が混在して受信されるため、これらを分離して観測することは難しい。以下、どこの放送所(送信親局、中継局を含む。)から送信する信号かを識別する情報を、「TxID(transmitter identification)」という。
【0006】
TxIDを放送波(ISDB-T変調信号)と併せて伝送することでエリア内における放送所の把握が容易となるが、ISDB-TにはTxIDの伝送機能がないため、現行の放送システムに大幅な変更を加えることなくTxIDを伝送するためには、ISDB-Tの変調装置とは別装置から外付けでTxIDを付与できることが望ましい。
図9は、ISDB-T変調信号(ISDB-T信号、又は、変調信号と略すことがある。)とTxID信号(TxIDを伝送する信号であり、放送所ID信号ということがある。)の時間関係を示す例である。TxID信号は、OFDMシンボルとして送信される。
図9では、ISDB-T変調信号とTxID信号を別個に発生させて、ISDB-T変調信号にTxID信号を非同期で付加して送信する場合を示している。このとき、TxID信号がISDB-T変調信号のFFT窓内で不連続点を持つ可能性がある。
【0007】
このような関係で合成された信号をISDB-Tの受信機又は測定器で復調すると、TxID信号の不連続に起因する干渉成分が生じ、信号の受信品質を劣化させる。このため、TxID信号はISDB-T変調信号のFFT窓の中で不連続点を持たないような信号とするか、ISDB-T変調信号と同期させて送信する必要がある。しかし、後者の場合、TxID信号発生装置はISDB-T変調装置との同期部を持つ必要があり、装置が複雑となる。
【0008】
また、米国の次世代地上伝送方式であるATSC3.0では、帯域全体に対して低電力でTxID信号を多重する手法が用いられるが(非特許文献2)、この手法をISDB-Tに適用した場合、ワンセグと固定受信の両方の階層に対して受信品質の劣化を招いてしまう。
【0009】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、ISDB-T変調信号の復調に影響を与えず、SFN環境においても放送所を特定できる放送所ID信号の送受信を可能とする、送信装置、中継装置、及び受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る送信装置は、ISDB-T変調信号を生成する変調部と、放送所を識別するTxID信号を発生するTxID信号発生部と、前記ISDB-T放送信号に前記TxID信号が付加された信号を送信する送信部とを備える送信装置において、前記TxID信号は、ISDB-T変調信号のうちワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をTOFDM[μ秒]、GI長をTGI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をDxとしたとき、ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数fTXIDは、fTxID =(TOFDM/TGI)×Dx、 TxID信号のシンボル長TTxID[μ秒]は、TTxID = TOFDM/fTxID を満足することを特徴とする。
【0011】
また、前記送信装置は、前記TxID信号発生部が、TxIDの符号化を行うID符号化部と、キャリア変調部と、前記TxID信号を付加しないサブキャリアに対応するNull挿入処理を行うNull挿入部と、OFDM変調部とを備えることが望ましい。
【0012】
また、前記送信装置は、前記TxID信号が、TxID信号が挿入されるサブキャリア番号及びTxIDのコードの少なくとも一方を異ならせることにより、前記放送所を識別することが望ましい。
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係る中継装置は、放送波を受信しIF信号に変換する放送波中継部と、前記IF信号から他局のTxID信号を削除し自局のTxID信号を挿入する中継局TxID信号挿入部と、自局のTxID信号が挿入されたIF信号を放送波として出力する送信部とを備える中継装置において、前記TxID信号は、ISDB-T変調信号のうちワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をTOFDM[μ秒]、GI長をTGI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をDxとしたとき、ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数fTXIDは、fTxID =(TOFDM/TGI)×Dx、 TxID信号のシンボル長TTxID[μ秒]は、TTxID = TOFDM/fTxID を満足することを特徴とする。
【0014】
また、前記中継装置は、前記中継局TxID信号挿入部が、他局のTxID信号を生成しこれを位相調整しながら前記IF信号から除去する回路部と、自局のTxIDの符号化を行うID符号化部、キャリア変調部、前記TxID信号を付加しないサブキャリアに対応するNull挿入処理を行うNull挿入部、及びOFDM変調部とを備え、自局のTxID信号を挿入する回路部とを備えることが望ましい。
【0015】
また、前記中継装置は、自局のTxID信号が、放送波に含まれる他局のTxID信号とは、異なるサブキャリアに挿入されること、及び、異なるTxIDのコードであること、の少なくとも一方を満たすことが望ましい。
【0016】
上記課題を解決するために本発明に係る受信装置は、放送波を受信する受信部と、放送波を送信した放送所を判定するTxID判定部とを備える受信装置において、前記TxID判定部は、ISDB-T変調信号のうちワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をTOFDM[μ秒]、GI長をTGI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をDxとしたとき、ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数fTXIDは、fTxID =(TOFDM/TGI)×Dx、 TxID信号のシンボル長TTxID[μ秒]は、TTxID = TOFDM/fTxID を満足するTxID信号に基づいて、前記放送所を判定することを特徴とする。
【0017】
また、前記受信装置は、前記TxID判定部が、放送波をOFDM復調し等化後のIQ値に基づいてTxIDキャリアレプリカIQ値を出力するTxIDキャリア判定部と、キャリア復調部と、前記TxIDのコードを復号するID復号部とを備えることが望ましい。
【0018】
また、前記受信装置は、前記TxID判定部が、TxID信号が挿入されるサブキャリア番号及びTxIDのコードの少なくとも一方に基づいて、前記放送所を判定することが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明における送信装置、中継装置、及び受信装置によれば、ISDB-T変調信号の復調に影響を与えず、SFN環境においても放送所を特定できる放送所ID信号の送受信をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】非同期で重畳可能なTxID信号とISDB-T変調信号の関係を示す図である。
【
図2】TxID信号とISDB-TのSP信号との重なりを説明する図である。
【
図3】データ信号とTxID信号のコンスタレーションの例を示す図である。
【
図4】既存測定器を用いて、TxID信号を観測する概念図である。
【
図5】実施の形態1の送信装置のブロック図の一例である。
【
図6】実施の形態2の中継装置のブロック図の一例である。
【
図7】実施の形態3の受信装置のブロック図の一例である。
【
図9】ISDB-T変調信号とTxID信号の時間関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明で利用するTxID信号の構造について、説明する。
【0022】
図1に、非同期で重畳可能なTxID信号とISDB-T変調信号の関係を示す。左図が時間領域の関係であり、右図が周波数領域での関係である。TxID信号が変調信号に与える影響を小さくするため、ISDB-T変調信号のうちワンセグ放送部にのみ、低電力でTxID信号を多重する。以下では、現行の放送信号で用いられている数値を前提に説明する。
【0023】
ISDB-T変調信号の復調時にOFDMシンボルと同じ1008μ秒で信号を切り出すFFT(fast Fourier transform)窓は、GI(Guard Interval)の長さである126μ秒の範囲で最適位置が探索される。このため、TxID信号を126μ秒の中で周期性を持つ信号(TxID信号の1OFDMシンボル長=GIの126μ秒の整数分の1)として同じシンボルを繰り返し発生すれば、FFT窓の位置に関わらず、FFT窓の両端及び内部で周期性を保つことができる。なお、TxIDは固定であるから、同じ信号(シンボル)を繰り返すことにより、確実な伝送を行うことができる。
【0024】
図1は、TxID信号の1OFDMシンボル長を、GIと同じ126μ秒とした例である。このとき、ISDB-Tの受信機及び測定器内部で、ISDB-T変調信号のFFT窓でTxID信号が切り出されてもシンボル間干渉は生じないため、TxID信号を付加する際に、ISDB-T変調信号との同期をとる必要がない。
【0025】
次に、TxID信号とSP(Scattered Pilot)信号との重なり(衝突)を避けるための条件を検討する。
図2は、TxID信号とISDB-TのSP信号との重なりを説明する図である。左側が時間領域であり、右側が周波数領域である。
【0026】
TxID信号1のように、TxIDのOFDMシンボル長がGIと同じ126μ秒である場合には、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル(1008μ秒)内に8周期収まるため、周波数領域ではISDB-T変調信号のサブキャリアのうち8サブキャリア毎にTxIDのキャリアが割り当てられる。一方、ISDB-Tではデータキャリア以外にも伝搬路推定用の既知信号であるSP信号が伝送され、SP信号は一般に3サブキャリア間隔で配置される。このため、TxID信号1の8サブキャリア毎に挿入されるTxIDは、SP信号と24サブキャリア毎に重なってしまう。伝送路推定を正確に行うためには、SP信号がノイズの影響を受けないこと、すなわち、SP信号とTxID信号が衝突しないことが望ましい。例えば、キャリア間隔を2倍(TxIDのOFDMシンボル長を1/2)にして、
図2のTxID信号2のように、16サブキャリア毎に挿入されるTxIDについても、48サブキャリア毎にSP信号と衝突してしまう。
【0027】
これに対し、
図2のTxID信号3に示すように、TxIDを24サブキャリア毎に挿入する信号とすることで、SP信号とTxID信号が重なる(衝突する)ことを回避できる。なお、このとき、TxIDの時間信号は126/3=42μ秒で1周期のOFDM信号となる。
【0028】
これまで、現行の放送波の数値を前提に、TxID信号の条件を説明したが、これをISDB-Tの規格の範囲内で一般化すると、次のとおりである。
【0029】
ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をTOFDM[μ秒]、GI長をTGI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をDxとしたとき、
ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数fTXIDは、
fTxID =(TOFDM/TGI)×Dx
TxID信号のシンボル長TTxID[μ秒]は、
TTxID = TOFDM/fTxID
【0030】
なお、上記の条件を現行の放送波に対応する、TOFDM =1008[μ秒]、TGI =126[μ秒]、Dx =3の場合、
fTxID =(1008/126)×3=8×3=24
TTxID =1008/24=42[μ秒]
となり、前述の数値が導かれる。
【0031】
次に、TxIDによる放送所の識別方法について、説明する。
【0032】
TxID信号を前述したように24サブキャリア間隔で搬送波を有する信号とした場合、SP信号と重ならない位置にTxID信号を配置するには、挿入する基準となるサブキャリア位置として16パターンを取ることができる。したがって、表1に示すように、基準とするサブキャリア位置でTxIDをグループ分けし(すなわち、TxID信号が挿入されるサブキャリアをグループ化し)、放送所ごとにグループが異なるTxIDを用いれば、放送所同士がSFNを構築していた場合でも、TxIDのサブキャリア位置から、受信側で放送所を分離することが可能である。
【0033】
例えば、表1に基づいて、グループ0のTxIDを用いる送信所は、セグメント番号0(ワンセグ放送部)、サブキャリア番号1,25,49,・・・を利用する。また、グループ1のTxIDを用いる送信所は、セグメント番号0、サブキャリア番号2,26,50,・・・を利用する。このようなサブキャリアの利用を行うことにより、特に、親局と中継局とでSFNを組んでいる場合に、識別が容易である。
【0034】
また、TxIDのサブキャリアに対してQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)などのキャリア変調技術を用いて情報を多重することもできる。現行の放送波では、ワンセグ帯域内のサブキャリアの本数は432本であるから、例えば、QPSKを適用する場合、1つのTxIDで2bit×18(=432/24)=36bitの情報を伝送でき、1つのTxIDグループの中で放送所IDを細かく割り当てることが可能である。
【0035】
【0036】
次に、TxIDの観測方法について説明する。
図3は、データ信号とTxID信号のコンスタレーションの例である。この例では、データ信号(データキャリア)とTxID信号の両者をQPSKで伝送している。TxID信号のないデータ信号のみのサブキャリアの場合は、データ信号がQPSKの位置(●)に観測される。TxID信号が付加されたサブキャリアの場合は、データ信号にTxID信号が重畳されるから、QPSKのデータ信号のIQ信号を中心にTxIDのIQ信号がQPSKの位置(△)に観測される。なお、SP信号は、BPSKの位置(○)に観測される。
【0037】
図3から明らかなように、上述の方法で生成し放送波に重畳させたTxID信号は、ワンセグのデータキャリアにとって誤差成分となるため、既存のMER(Modulation Error Ratio:変調誤差比)の測定装置を用いて、TxID信号を測定できる。
【0038】
図4は、既存測定器を用いて、TxID信号を観測する概念図である。SFN環境において放送所Aと放送所Bから電波を受信しており、放送所AがTxIDグループ1のTxID信号を送信し、放送所BがTxIDグループ2のTxID信号を送信しているとする。既存測定器を用いて、サブキャリア毎のMERを測定することで、TxID信号が挿入されるサブキャリア位置を解析することが可能である。さらに、TxID信号が重畳するサブキャリアと、表1に示したテーブルを照合することで、TxIDのグループを特定することができる。すなわち、TxID信号が重畳するサブキャリアを解析し、放送所を特定することができる。
【0039】
また更に、既存測定器によりサブキャリア対MER特性を測定すると、
図4に示すように、横軸にサブキャリア番号、縦軸をMERの値とした特性が得られる。ここで、MERは大きいほど電波品質が良いことを示すから、サブキャリアに重畳するTxID信号が大きい(強度が強い)ほど、電波品質は低くなり、MERは小さい値となる。したがって、
図4において、TxIDグループ1に対応するサブキャリアのMERが小さく(電波品質が悪く)、TxIDグループ2に対応するサブキャリアのMERが大きい(電波品質が良い)とすれば、TxIDグループ1のTxID信号が強いこと、すなわち、放送所Aから強い放送波を受けていることが測定できる。このように、MERの大小から、放送所から送信される電波毎の受信電力関係を解析可能である。
【0040】
以下、本発明の実施の形態である、送信装置、中継装置、及び受信装置について説明する。
【0041】
(実施の形態1)
実施の形態1として、放送所を識別するTxID信号を送信する機能を備えた送信装置について説明する。この送信装置は、親局の放送所で使用される。
図5に、本実施形態の送信装置のブロック図の一例を示す。
【0042】
送信装置は、通常の放送信号であるISDB-T変調信号を生成する変調部10と、放送所を識別するTxID信号を発生するTxID信号発生部20と、ISDB-T変調信号にTxID信号が付加された信号を送信する送信部30とを備える。
【0043】
この送信装置で送信されるTxID信号は、前述のとおり、ISDB-T変調信号のワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をTOFDM[μ秒]、GI長をTGI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をDxとしたとき、
ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数fTXIDは、
fTxID =(TOFDM/TGI)×Dx
TxID信号のシンボル長TTxID[μ秒]は、
TTxID = TOFDM/fTxID
を満足するTxID信号である。
【0044】
変調部10は、通常の放送信号を生成するISDB-T方式の変調部であり、例えば、映像・音声等のコンテンツを符号化し、多重化して、誤り訂正・キャリア変調・インターリーブ等を行い、OFDMフレームを構成した後にIFFT(Inverse Fast Fourier transform)を行い、ISDB-T変調信号(OFDM放送波)を出力する。なお、変調部10の構成は、ISDB-Tの規格に基づいて公知であるので、説明を省略する。
【0045】
TxID信号発生部20は、IDリスト21と、ID制御部22と、ID符号化部23と、キャリア変調部24と、Null挿入部25と、OFDM変調部26と、D/A(デジタル/アナログ)変換部27とを備え、放送所を識別するTxID信号をIF(Intermediate Frequency)信号として出力する。各ブロックについて簡単に説明する。
【0046】
IDリスト21は、TxIDのリストであり、各局名とその局に対応するTxIDをテーブルで持っている。
【0047】
ID制御部22は、IDリスト21を制御し、変調してTxID信号とする局名、すなわち、自局のID(TxID)を指定して、IDリスト21からID符号化部23へ出力させる。
【0048】
ID符号化部23は、TxIDの符号化を行う。TxID(コード)のビット数と1シンボル内のTxIDを付加できるキャリア本数で送れるビット数とを調整し、必要に応じて、データの繰り返しや誤り訂正等を行う。
【0049】
キャリア変調部24は、ID符号化部23で符号化され出力されたビットデータを、所定の変調方式で変調する。例えば、TxIDの符号化データをQPSKでキャリア変調する。
【0050】
Null挿入部25は、TxID信号を付加しないサブキャリアに対応する処理(Null挿入処理)を行う。TxID信号を例えば24サブキャリア毎に挿入する場合は、挿入サブキャリアの間隔をあけるために、その間のサブキャリアに対応する23個分のスペースに相当するNull(0)データを挿入する。
【0051】
OFDM変調部26は、Null挿入部25から出力された信号を、OFDM変調する。この変調により、所定のサブキャリア位置(例えば、24サブキャリア毎)に、TxIDを表す信号を含むOFDM信号が出力される。
【0052】
D/A変換部27は、OFDM変調部26で変調された信号をデジタル/アナログ変換し、IF信号を出力する。このIF信号が、TxID信号となる。
【0053】
このTxID信号発生部20からは、例えば、前述したシンボル長が1008μ秒であって、その内部で24周期同じ信号が繰り返されるTxID信号が出力される。なお、このTxID信号発生部20の構成は一例であって、例えば、短い(42μ秒)の信号を生成して、これを24回繰り返す方法でTxID信号を生成してもよい。
【0054】
変調部10から出力されるISDB-T変調信号と、TxID信号発生部20から出力されるIF信号(TxID信号)は、加算部で加算される。そして、送信部30は、ISDB-T変調信号とTxID信号が加算されたIF信号を、所定の送信周波数に変換して送信する。
【0055】
この送信装置により、TxID信号をISDB-T変調信号に非同期で付加し、送信することができる。TxID信号発生部20は、既存の変調部10及び送信部30の構成に影響を与えないから、既存の送信装置に外付けで付加することができる。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態2として、放送所を識別するTxID信号を送信する機能を備えた中継装置について説明する。この中継装置は、中継局の放送所で使用される。
図6に、本実施形態の送信装置のブロック図の一例を示す。
【0057】
中継装置は、放送波を受信しIF信号に変換する放送波中継部40と、このIF信号から他局(親局)のTxID信号を削除し自局(中継局)のTxID信号を挿入する中継局TxID信号挿入部50と、中継局のTxID信号が挿入されたIF信号を放送波として出力する送信部30とを、備える。
【0058】
なお、この中継装置で挿入される自局のTxID信号は、前述のとおり、ISDB-T変調信号のワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をTOFDM[μ秒]、GI長をTGI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をDxとしたとき、
ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数fTXIDは、
fTxID =(TOFDM/TGI)×Dx
TxID信号のシンボル長TTxID[μ秒]は、
TTxID = TOFDM/fTxID
を満足するTxID信号である。
【0059】
そして、この中継装置で挿入される自局のTxID信号は、放送波に含まれる他局(親局)のTxID信号とは、異なるサブキャリアに挿入されること、及び、異なるTxIDのコードであること、の少なくとも一方を満たす。
【0060】
放送波中継部40は、親局の放送所から受信した放送波を、伝送周波数からIF信号に変換し、中継されたISDB-T変調信号(他局のTxID信号を含む)として、中継局TxID信号挿入部50に出力する。
【0061】
中継局TxID信号挿入部50は、A/D変換部51、加算(減算)部52、加算部53、D/A変換部54、OFDM復調部55、伝送路推定部56、乗算部57、IDリスト58、ID制御部59、ID符号化部60、キャリア変調部61、Null挿入部62、位相調整部63、OFDM復調部64、MER測定部65、及びOFDM変調部66,67を備える。
【0062】
この内、A/D変換部51、加算(減算)部52、OFDM復調部55、伝送路推定部56、乗算部57、IDリスト58、ID制御部59、親局IDが入力される上側のID符号化部60、キャリア変調部61、Null挿入部62、位相調整部63、OFDM復調部64、MER測定部65、OFDM変調部66は、放送波に含まれる他局(親局)のTxID信号を削除するための回路部である。
【0063】
また、IDリスト58、ID制御部59、自局IDが入力される下側のID符号化部60、キャリア変調部61、Null挿入部62、OFDM変調部67、加算部53は、自局(中継局)のTxID信号を挿入するための回路部である。各ブロックについて簡単に説明する。
【0064】
A/D変換部51は、放送波中継部40から出力されたIF信号(中継されたISDB-T変調信号とTxID信号)をA/D変換し、加算(減算)部52とOFDM復調部55へ出力する。
【0065】
OFDM復調部55は、デジタル化された変調信号をOFDM復調し、各サブキャリアの信号を出力する。
【0066】
伝送路推定部56は、SP信号等を利用し、各サブキャリアがどういう伝搬路を通ったか、すなわち、遅延プロファイル、周波数特性等、伝搬路特性の推定を行う。なお、ここで伝送路特性を推定するのは、後述の親局IDの除去をする際に、正確に伝送路特性を考慮しないと受信信号に含まれるTxID信号成分を、正確に一致させることができないからである。
【0067】
IDリスト58からOFDM変調部66に至るブロックは、親局のTxID信号の生成処理を行っている。送信装置の処理と重複する部分は、説明を簡略化する。
【0068】
IDリスト58には、各局のIDがテーブル化されている。ID制御部59は、まず、親局IDを推定し、IDリスト58から上側のID符号化部60へ親局IDを出力させる。ID符号化部60は、入力された親局IDを符号化する。キャリア変調部61は、符号化された親局IDを所定の変調方式(例えば、QPSK)で変調する。Null挿入部62は、TxID信号を付加しないサブキャリアに対応する23個分のNull(0)データを挿入する。
【0069】
位相調整部63は、Null挿入部62から出力される信号の位相を調整する。受信信号において変調信号とTxID信号は非同期であるから、TxID信号と変調信号のシンボルタイミングは未知であり、シンボルのずれを探索する必要がある。位相調整部63により、少しずつ信号の位相をずらし、OFDM変調部66でOFDM変調して親局TxID信号を生成する。さらに、伝送路推定部56で推定された伝送路特性を乗算部57で乗算し、受信信号に含まれる親局TxID信号を正確に復元する。復元された親局TxID信号を加算(減算)部52で受信信号から引き算して除去する。なお、OFDM復調部64は、親局TxID信号が減算された受信信号をOFDM復調し、次いで、MER測定部65でサブキャリアのMER特性を観察する。OFDM変調部66から出力する親局TxID信号が、受信信号に含まれる親局TxID信号と一致して引き算したときに受信品質がよくなるから、OFDM復調部64とMER測定部65でループを構成して、一致する位相を探索し、位相調整部63で最適な位相を調整することにより、受信信号に含まれる親局TxID信号を除去することができる。
【0070】
なお、親局TxIDは、既知の場合は、既知の特定の親局TxIDを選択して除去すればよいが、親局TxIDが不明の場合は、ID制御部59で様々なTxIDを発生し、親局TxIDの探索を行う。
【0071】
また、ID制御部59は、自局(中継局)IDをIDリスト58から選択し、下側のID符号化部60へ出力させる。ID符号化部60は、入力された自局IDを符号化する。キャリア変調部61は、符号化された自局IDを所定の変調方式(例えば、QPSK)で変調する。Null挿入部62は、TxID信号を付加しないサブキャリアに対応する23個分のNull(0)データを挿入する。Nullデータが挿入された信号をOFDM変調部67でOFDM変調し、自局のTxID信号を生成する。この工程は、送信装置で行った自局TxID信号の生成処理と同じである。
【0072】
なお、他局(親局)IDと自局(中継局)IDのコードを異ならせることに代えて(又は加えて)、他局(親局)のTxID信号が挿入されるサブキャリア番号と、自局(中継局)のTxID信号が挿入されるサブキャリア番号とを異ならせることにより、放送所の違いを示してもよい。
【0073】
加算部53は、OFDM変調部67から出力された自局TxID信号を、親局TxID信号が除去された受信信号(ISDB-T変調信号)に加算する。この加算処理は、非同期であってよい。
【0074】
D/A変換部54は、ISDB-T変調信号と自局TxID信号が加算された信号をD/A変換し、IF信号を出力する。
【0075】
そして、送信部30は、ISDB-T変調信号と自局TxID信号が加算されたIF信号を、所定の送信周波数に変換して送信する。
【0076】
この中継装置により、他局のTxID信号を除去し、自局TxID信号をISDB-T変調信号に非同期で付加して、送信することができる。
【0077】
(実施の形態3)
実施の形態3として、放送所を識別するTxID信号を受信・検出する機能を備えた受信装置について説明する。この受信装置は、一般家庭を含む任意の受信場所で使用される。
図7に、本実施形態の受信装置のブロック図の一例を示す。
【0078】
受信装置は、放送波を受信する受信部70と、放送波を送信した放送所を判定するTxID判定部80とを備えている。なお、
図7の受信装置は、ISDB-T変調信号を復調し、映像・音声等のコンテンツを復号するコンテンツ処理部は省略されている。
【0079】
この受信装置で受信する放送波に含まれるTxID信号は、前述のとおり、ISDB-T変調信号のワンセグ放送部に付加され、ISDB-T変調信号のOFDMシンボル長をTOFDM[μ秒]、GI長をTGI[μ秒]、周波数方向のSP挿入比率をDxとしたとき、
ISDB-T変調信号の1OFDMシンボル中におけるTxID信号の周期数fTXIDは、
fTxID =(TOFDM/TGI)×Dx
TxID信号のシンボル長TTxID[μ秒]は、
TTxID = TOFDM/fTxID
を満足するTxID信号である。
【0080】
受信部70は、受信した放送波を、伝送周波数からIF信号に変換し、ISDB-T変調信号にTxID信号が付加されたIF信号として、TxID判定部80に出力する。
【0081】
TxID判定部80は、A/D変換部81、ガード相関部82、TxID合成位相測定部83、GI除去部84、OFDM復調部85、伝搬路等化部86、伝搬路推定部87、TxIDキャリア判定部88、キャリア復調部89、ID復号部90、ID照合部91を備える。
【0082】
A/D変換部81は、受信部70から出力されたIF信号(ISDB-T変調信号とTxID信号を含む)をA/D変換し、ガード相関部82へ出力する。
【0083】
ガード相関部82は、A/D変換された受信信号に対しガード相関をとる。すなわち、TxID信号は変調信号と非同期であるため、どれだけ位相がずれているかを検知する必要がある。この位相のずれを検出するためガード相関をとり、相関のピーク位置を求める。ガード相関はOFDMの受信では一般に行われる処理である。
図8は、ガード相関結果の例を示したものである。本実施形態では、TxID信号は42μ秒で繰り返されるため、42μ秒間隔でTxID信号の相関ピークが発生する。また、放送波の相関ピークが1つ現れる。
【0084】
TxID合成位相測定部83は、ガード相関結果から放送波(サブキャリアの信号)とTxID信号の位相差φ(
図8では時間差として表される)を検出して出力する。この検出された位相差φは、後述のTxIDキャリア判定部の処理で用いられる。ガード相関結果において、放送波の相関ピークに対して次に続くTxID信号のピークとの差が位相差φである。しかし、隣接したピークはピークの山が近すぎで測定が難しいことから、
図8に示すように、放送波のピークと離れたTxID信号のピーク(例えば、3番目に現れるTxID信号のピーク)との差を検出し、TxID信号のピークが42μ秒ごとに発生することに基づいて、検出された差(φ+84μ秒)から84μ秒(=42μ秒×2)をマイナスすることにより、位相差φを求めてもよい。
【0085】
GI除去部84は、A/D変換された受信信号からガードインターバルを除去し、OFDMシンボルをOFDM復調部85に出力する。
【0086】
OFDM復調部85は、入力されたOFDMシンボルに対してOFDM復調を行い、各サブキャリアのIQ信号を求めて、伝搬路等化部86と伝搬路推定部87に出力する。
【0087】
伝搬路推定部87は、SP信号等を利用し、各サブキャリアがどういう伝搬路を通ったか、すなわち、遅延プロファイル、周波数特性等、伝搬路特性の推定を行い、推定された伝搬路特性を伝搬路等化部86に出力する。
【0088】
伝搬路等化部86は、得られた伝搬路特性に基づいて、各サブキャリアの信号値の等化処理を行い、等化処理されたIQ信号をTxIDキャリア判定部88に出力する。
【0089】
TxIDキャリア判定部88は、等化後IQ値を入力し、TxIDキャリアレプリカIQ値を出力する。TxIDキャリア判定部88の詳細を、
図7の下側図に示す。TxIDキャリア判定部88は、放送波データキャリアレプリカ生成部881と、TxIDキャリアレプリカ生成部882と、位相補正部883と、加算部884と、誤差測定部885とを備えている。
【0090】
TxIDキャリア判定部88は、伝搬路等化部86から出力される信号のうち、データキャリアを対象としてTxIDの判定を行う。具体的には、TxIDが重畳されるセグメント番号0の周波数の下端のサブキャリア番号を0として、表1に示したTxIDグループごとの番号に位置するサブキャリアに対し、放送波データキャリアレプリカ生成部881で発生させたデータキャリアのレプリカ信号とTxIDキャリアレプリカ生成部882から発生させたTxIDキャリアレプリカを合成したレプリカ信号と、伝搬路等化部86から出力されたデータキャリアとの誤差(MER)を測定し、誤差が最も小さくなるレプリカのパターンをとるTxIDキャリアレプリカのIQ値を出力する。例えば、TxIDキャリアがQPSKで変調される場合、放送波のデータキャリア(QPSK変調)がとりうる4点の信号点と、TxIDのキャリアがとりうる4点の信号点を組み合わせた16点を総当たりし(レプリカ生成部で様々なパターンを生成し)、データキャリアとの誤差が最も小さくなるパターンを探索する。これは、最も誤差の小さいレプリカIQ値が、正しいIDであろうと判定されるからである。
【0091】
なお、データキャリアのレプリカ信号とTxIDキャリアレプリカを合成するにあたっては、位相補正部883において、TxID合成位相測定部83で得られた実際の位相差φをTxIDキャリアレプリカに与えて位相を補正し、正確な合成波を生成する。これにより、放送所ごとに異なる位相φを補正することができる。
【0092】
キャリア復調部89は、TxIDキャリア判定部88から出力されたTxIDキャリアレプリカのIQ値に対し、キャリア復調を行う。
【0093】
次いで、ID復号部90は、キャリア復調されたデータに対して、送信側で行われた符号化処理に対応する復号処理を行い、TxID(コード)を復号する。
【0094】
TxID照合部91は、得られたTxID(コード)をTxIDのテーブルと照合することで、受信信号に含まれるTxIDがどこの放送所であるかの一覧を出力する。
【0095】
なお、本実施形態では、TxIDキャリア判定部88でTxIDキャリアレプリカIQ値を求め、TxIDのコードを求めたが、TxIDキャリア判定部88でTxID信号が挿入されているサブキャリア番号を求め、このサブキャリア番号と、表1に示したテーブルを照合することで、TxIDのグループを特定することができる。すなわち、TxID信号が重畳するサブキャリアを解析し、放送所を判定してもよい。
【0096】
上記の実施の形態1では、送信装置の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限らず、送信装置により、TxID信号を送信する送信方法として構成されてもよい。すなわち、
図5のデータの流れに従って、各ブロックが行う工程を備えた、ISDB-T放送信号及び前記TxID信号を送信する送信方法として構成されても良い。
【0097】
また、上記の実施の形態2では、中継装置の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限らず、中継装置により、TxID信号を送信する送信方法として構成されてもよい。すなわち、
図6のデータの流れに従って、各ブロックが行う工程を備えた、放送波に含まれる他局(親局)のTxID信号を削除し自局(中継局)のTxID信号を挿入する中継方法として構成されても良い。
【0098】
また更に、上記の実施の形態3では、受信装置の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限らず、受信装置により、TxID信号を受信する送信方法として構成されてもよい。すなわち、
図7のデータの流れに従って、各ブロックが行う工程を備えた、放送所を識別するTxID信号を受信・検出する受信方法として構成されても良い。
【0099】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 変調部
20 TxID信号発生部
21 IDリスト
22 ID制御部
23 ID符号化部
24 キャリア変調部
25 Null挿入部
26 OFDM変調部
27 D/A変換部
30 送信部
40 放送波中継部
50 中継局TxID信号挿入部
51 A/D変換部
52 加算(減算)部
53 加算部
54 D/A変換部
55 OFDM復調部
56 伝送路推定部
57 乗算部
58 IDリスト
59 ID制御部
60 ID符号化部
61 キャリア変調部
62 Null挿入部
63 位相調整部
64 OFDM復調部
65 MER測定部
66 OFDM変調部
67 OFDM変調部
70 受信部
80 TxID判定部
81 A/D変換部
82 ガード相関部
83 TxID合成位相測定部
84 GI除去部
85 OFDM復調部
86 伝搬路等化部
87 伝搬路推定部
88 TxIDキャリア判定部
881 放送波データキャリアレプリカ生成部
882 TxIDキャリアレプリカ生成部
883 位相補正部
884 加算部
885 誤差測定部
89 キャリア復調部
90 ID復号部
91 ID照合部