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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】接合用治具、および接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20241204BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L27/146 F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020186771
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076381
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和典
(72)【発明者】
【氏名】峰尾 圭忠
(72)【発明者】
【氏名】為村 成亨
(72)【発明者】
【氏名】難波 正和
(72)【発明者】
【氏名】新井 俊希
(72)【発明者】
【氏名】渡部 俊久
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
(72)【発明者】
【氏名】久保田 節
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-128734(JP,U)
【文献】特開2011-009351(JP,A)
【文献】特開2019-021712(JP,A)
【文献】特開2013-004701(JP,A)
【文献】特開2013-183096(JP,A)
【文献】特開2008-288460(JP,A)
【文献】特開平08-148632(JP,A)
【文献】特開2016-111109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/146
H01L 21/52
H01L 21/60
H01L 21/68
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合装置により上側基板と下側基板とを接合する接合方法であって、
導電性を有し、前記上側基板を受ける受け部、および前記下側基板を嵌めることが可能な貫通孔を有する接合用治具を、前記接合装置の下側ステージに静電チャックで固定するステップと、
前記上側基板を、前記受け部に装填するステップと、
前記上側基板を、前記接合装置の上側ステージに静電チャックで固定するステップと、
前記上側ステージを上昇させて、前記下側基板を、前記貫通孔に装填するステップと、
前記上側ステージと前記下側ステージとを接近させて、加圧処理および加熱処理を実施するステップと、
接合した前記上側基板および前記下側基板を、前記接合装置から取り出すステップと、
を含む、ことを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用治具、および接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4K、8K(スーパーハイビジョン)の高精細なテレビ方式の撮像装置(テレビカメラ)では、その高感度化が求められている。テレビカメラの内部で、光を電気信号に変換するために撮像素子が用いられるが、高精細なテレビ方式になる程、多画素化が求められ、1画素当たりの受光面積が低下する。このため、テレビカメラにおいて、感度の不足が大きな問題となっている。この問題を解決するため、結晶セレン膜を用いて光電変換された電荷をアバランシェ増倍させ、光感度を向上させる撮像素子が提案されている。
【0003】
信号読み出し回路基板上に結晶セレン膜を配置して、これを光電変換部とする固体撮像素子を実現するためには、信号読み出し回路基板上に無欠陥で結晶性に優れた良質な結晶セレン膜を何らかの方法で形成する必要がある。このような結晶セレン膜を得るために、まず、単結晶サファイア基板上に透明信号電極、N型半導体として動作する酸化ガリウム膜を、順番に配置する。この状態で一旦、酸素雰囲気中において800度の高温処理を施して酸化ガリウム膜を結晶化させる。さらに、酸化ガリウム膜上にP型半導体(PN接合フォトダイオード)として動作するセレン膜を非晶質な状態で形成し、その後、200度の加熱を施すことで良質な結晶セレン膜を得られる(例えば、非特許文献1参照)。しかし、非特許文献1では、良質な結晶セレン膜を、信号読み出し回路基板上に形成することができておらず、光電変換膜単体の動作検証に留まっている。
【0004】
実用化を考慮すると、信号読み出し回路基板上には、結晶セレン膜、酸化ガリウム膜、透明信号電極が、この順に配置されるが、結晶セレン膜が酸化ガリウムの結晶化工程の温度である800度に耐えられずに、剥離又は再蒸発して失う問題が生じる。また、800度の加熱処理を施さないとしても、スパッタリング法による酸化ガリウムの成膜時のガス放電により、結晶セレン膜にダメージが与えられることで、結晶セレン膜の内部の欠陥が増加し、撮像素子としての性能が著しく劣化してしまう。さらに、信号読み出し回路の配線材料であるアルミニウムの耐熱性が350度であることから、この観点からも酸化ガリウム膜の性能向上に必要とされる800度の加熱処理が容易でないことが示される。
【0005】
そこで、サファイア基板上にアモルファスセレン膜を形成し、信号読み出し回路基板上にアモルファスセレン膜を形成し、双方のアモルファスセレン膜を加圧して接合し、結晶化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
さて、上述のアモルファスセレン膜の表面同士の接合では、長時間にわたって双方表面が空気中の酸素又は水分などに曝されると付着力が劣化すること、また、接合界面に空気が噛でしまい欠陥が生じることなどが、これまでの試作実験から明らかとなっている。そのため、既存の接合装置を使用して、真空中での接合を実現したい要望がある。しかし、既存の接合装置では、シリコンウエハを基板として使用することが前提で設計されているために、接合する双方基板の把持に問題が生じる。大気中では基板把持が可能な「真空チャック」は、真空中ではその効果を得ることができない。
【0007】
そこで真空中の基板把持には、「静電チャック」と呼ばれる方式が一般的に用いられる(非特許文献2参照)。電圧を印加したステージ(電極)上と対象物との間に生じるクーロン力(逆電圧の誘導)によって安定した吸着効果を実現する。しかし、対象物の基板が導電性を有する基板(例えば、シリコン基板)であれば前述の効果が得られるが、対象物の基板が絶縁性を有する基板(例えば、サファイア基板、ガラス基板)では、真空中で把持することが困難となる。例えば、ガラス基板を把持するには、高電圧(±2.0KV以上)を印加しなければならず、読み出し回路基板側への放電又は短絡による動作不良などの悪影響が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-097809号公報
【0009】
【文献】峰尾ほか、NHK技研、「酸化ガリウム/結晶セレンフォトダイオードの電気特性」、応用物理学会春季大会2019年予稿集、10P-PB4-11、(2019年)
【文献】國岡ほか、「静電チャックの吸着・剥離時間測定方法」、計測自動制御学会論文集、Vol.30,No.6,P729/731、(1994年)、[online]、[2020年8月14日検索]、インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicetr1965/30/6/30_6_729/_pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の接合方法では、真空中、大気中を問うことなく、さらには静電チャック方式であっても、容易に上側基板および下側基板を把持しながら、高精度な位置合せを担保した状態で、上側基板と下側基板との接合を実現することは困難であった。このため、製造された接合型固体撮像素子の光電変換膜が、信号読出し回路側(上側・下側基板)との位置合せが困難なため、その位置合せズレが要因で生じる光電変換膜の欠陥又は出力画像ムラが起因して、雑音の原因となる暗電流が増加し、撮像特性の安定化を図ることが困難であった。
【0011】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する接合型固体撮像素子を製造可能な接合用治具、および接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態に係る接合用治具は、接合装置により上側基板と下側基板とを接合する際に使用される接合用治具であって、導電性を有し、前記上側基板を受ける受け部、および前記下側基板を嵌めることが可能な貫通孔を有する、ことを特徴とする。
【0013】
さらに、一実施形態に係る接合用治具において、前記受け部のZ軸方向の長さは、前記上側基板のZ軸方向の長さより短く、前記接合用治具の底面から前記受け部の底面までの距離は、前記下側基板のZ軸方向の長さより短い、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、一実施形態に係る接合用治具において、前記受け部のZ軸方向の長さは、前記上側基板のZ軸方向の長さよりα短く、前記接合用治具の底面から前記受け部の底面までの距離は、前記下側基板のZ軸方向の長さより前記α短く、前記αは、0.1mm以上0.5mm以下である、ことを特徴とする。
【0015】
さらに、一実施形態に係る接合用治具において、前記受け部は、X軸方向の長さが、前記上側基板のX軸方向の長さより長く、且つ、Y軸方向の長さが、前記上側基板のY軸方向の長さより長く、前記貫通孔は、X軸方向の長さが、前記下側基板のX軸方向の長さより長く、且つ、Y軸方向の長さが、前記下側基板のY軸方向の長さより長い、ことを特徴とする。
【0016】
さらに、一実施形態に係る接合用治具において、前記受け部は、X軸方向の長さが、前記上側基板のX軸方向の長さよりA長く、且つ、Y軸方向の長さが、前記上側基板のY軸方向の長さよりB長く、前記貫通孔は、X軸方向の長さが、前記下側基板のX軸方向の長さよりC長く、且つ、Y軸方向の長さが、前記下側基板のY軸方向の長さよりD長く、前記A、前記B、前記C、および前記Dは、0.05mm以上1.0mm以下である、ことを特徴とする。
【0017】
さらに、一実施形態に係る接合用治具において、前記接合用治具の下面は、微鏡面仕上げが施されており、前記接合用治具の上面は、粗仕上げが施されている、ことを特徴とする。
【0018】
さらに、一実施形態に係る接合用治具において、前記接合用治具は、アルミニウム、銅、または、ステンレスの何れか1つの材質により形成される、ことを特徴とする。
【0019】
一実施形態に係る接合用治具は、接合装置により上側基板と下側基板とを接合する際に使用される接合用治具であって、前記下側基板を嵌めることが可能な第1貫通孔を有する枠部材と、前記第1貫通孔に取り付け可能又は前記第1貫通孔から取り外し可能であり、且つ、第2貫通孔を介して前記上側基板を受ける受け部材と、を備えることを特徴とする。
【0020】
一実施形態に係る接合方法は、接合装置により上側基板と下側基板とを接合する接合方法であって、導電性を有し、前記上側基板を受ける受け部、および前記下側基板を嵌めることが可能な貫通孔を有する接合用治具を、前記接合装置の下側ステージに静電チャックで固定するステップと、前記上側基板を、前記受け部に装填するステップと、前記上側基板を、前記接合装置の上側ステージに静電チャックで固定するステップと、前記上側ステージを上昇させて、前記下側基板を、前記貫通孔に装填するステップと、前記上側ステージと前記下側ステージとを接近させて、加圧処理および加熱処理を実施するステップと、接合した前記上側基板および前記下側基板を、前記接合装置から取り出すステップと、を含む、ことを特徴とする。
【0021】
一実施形態に係る接合方法は、接合装置により上側基板と下側基板とを接合する接合方法であって、前記下側基板を嵌めることが可能な第1貫通孔を有する枠部材を、前記接合装置の下側ステージに静電チャックで固定し、第2貫通孔を介して前記上側基板を受ける受け部材を、前記第1貫通孔に装填するステップと、前記上側基板を、前記受け部材に装填するステップと、前記上側基板を、前記接合装置の上側ステージに静電チャックで固定するステップと、前記上側ステージを上昇させて、前記受け部材を、前記第1貫通孔から取り外し、前記下側基板を、前記第1貫通孔に装填するステップと、前記上側ステージと前記下側ステージとを接近させて、加圧処理および加熱処理を実施するステップと、接合した前記上側基板および前記下側基板を、前記接合装置から取り出すステップと、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する接合型固体撮像素子を製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本発明の一実施形態に係る接合前の接合型固体撮像素子の構成の一例を示す模式断面図である。
図1B】本発明の一実施形態に係る接合型固体撮像素子の構成の一例を示す模式断面図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式平面図である。
図2B】本発明の第1実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図2C】本発明の第1実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る接合方法の一例を示すフローチャートである。
図4A】本発明の第1実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図4B】本発明の第1実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図4C】本発明の第1実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図4D】本発明の第1実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図4E】本発明の第1実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図4F】本発明の第1実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図5A】本発明の第2実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式平面図である。
図5B】本発明の第2実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図5C】本発明の第2実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る接合方法の一例を示すフローチャートである。
図7A】本発明の第2実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図7B】本発明の第2実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図7C】本発明の第2実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図7D】本発明の第2実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図7E】本発明の第2実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図7F】本発明の第2実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図8A】本発明の第3実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式平面図である。
図8B】本発明の第3実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式断面図である。
図8C】本発明の第3実施形態に係る接合用治具の構成の一例を示す模式斜視図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る接合方法の一例を示すフローチャートである。
図10A】本発明の第3実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図10B】本発明の第3実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図10C】本発明の第3実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図10D】本発明の第3実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図10E】本発明の第3実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図10F】本発明の第3実施形態に係る接合方法の一例を示す模式断面図である。
図11A】変形例に係る接合用治具の構成の一例を示す模式平面図である。
図11B】変形例に係る接合用治具の構成の一例を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、重複する説明を省略する。各図において、説明の便宜上、各構成の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している。なお、本明細書における「上」、「下」とは、図面に描かれた座標軸表示のZ軸に平行な方向を意味するものとする。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1A乃至図4Fを参照して、第1実施形態に係る接合用治具100の構成の一例について説明する。接合用治具100は、例えば、接合型固体撮像素子600(図1B参照)を製造する場合に、接合装置により、信号読み出し回路基板(上側基板)670と透明基板(下側基板)680とを接合する際に使用される治具である。図1Aに示すように、上側基板670上に形成される第1アモルファスセレン膜610Aと下側基板680上に形成される第2アモルファスセレン膜610Bとが接合すると、図1Bに示すように、結晶セレン膜610を備える光電変換部700が形成される。上側基板670と下側基板680とは、真空中で接合されてもよいし、大気中で接合されてもよい。
【0026】
接合装置は、例えば、接合型固体撮像素子600を製造する場合、この分野で用いられる公知の装置を適用できる。真空中での接合を可能とする接合装置としては、例えば、WAP-100N(bondtech社製)などが挙げられる。
【0027】
<接合型固体撮像素子>
まず、図1Aおよび図1Bを参照して、上述した接合型固体撮像素子600の構成の一例について、簡単に説明する。
【0028】
接合型固体撮像素子600は、上側基板670と、第1電極650と、接合膜640と、結晶セレン膜610と、接合膜630と、酸化ガリウム膜620と、第2電極660と、下側基板680と、をこの順に備える。結晶セレン膜610、酸化ガリウム膜620、接合膜630、および接合膜640は、光電変換部700として機能する。なお、図1Bにおいて、第1アモルファスセレン膜と第2アモルファスセレン膜との接合面を、点線610Sで示している。
【0029】
〔結晶セレン膜〕
結晶セレン膜610は、接合型固体撮像素子600における光電変換部700であって、P型半導体として機能する。結晶セレン膜610は、膜厚が特に限定されるものではないが、0.1μm以上であることが好ましい。結晶セレン膜610は、膜厚が0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であれば、その膜厚は十分であるため、可視光全域で十分な感度を得られる接合型固体撮像素子600を実現できる。また、結晶セレン膜610は、膜厚の上限が特に限定されるものではないが、5μm以下、好ましくは2μm以下であると、効率良く形成されるため、生産性の観点で好ましい。
【0030】
〔酸化ガリウム膜〕
酸化ガリウム膜620は、接合型固体撮像素子600における光電変換部700であって、N型半導体として機能する。酸化ガリウム膜620は、膜厚が2nm以上100nm以下であることが好ましい。酸化ガリウム膜620は、膜厚が2nm以上であると、電極からの正孔注入電荷を効率良く阻止することができる。また、酸化ガリウム膜620は、膜厚が100nm以下、より好ましくは50nm以下であると、外部印加電圧が効率良く結晶セレン膜610側に加わることとなる。
【0031】
なお、酸化ガリウム膜620に、例えば、スズ、シリコン、ゲルマニウムなどの不純物を添加してもよい。
【0032】
〔接合膜〕
接合膜630は、接合型固体撮像素子600における光電変換部700であって、結晶セレン膜610と酸化ガリウム膜620とを接合し、結晶セレン膜610および酸化ガリウム膜620により挟持される。接合膜630は、結晶セレン膜610と酸化ガリウム膜620とを接合できればその材料は特に制限されないが、テルル(Te)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)からなる群から選択される一種からなることが好ましく、結晶セレン膜610と酸化ガリウム膜620とを確実に接合するためには、テルルを用いることがより好ましい。
【0033】
接合膜630は、膜厚が0.1nm以上10nm以下であることが好ましい。接合膜630は、膜厚が0.1nm以上であると、結晶セレン膜610と酸化ガリウム膜620との接着力を効果的に高くでき、好ましい。また、接合膜630は、膜厚が10nm以下、より好ましくは3nm以下であると、結晶セレン膜610中への欠陥形成を防止できるため、暗電流増加を抑制することができ、好ましい。
【0034】
なお、接合膜630は、結晶セレン膜610と酸化ガリウム膜620との間の全域に連続して形成されていてもよい。あるいは、接合膜630は、面内方向の一部に孔が設けられ、結晶セレン膜610と酸化ガリウム膜620との間の一部領域に形成されていてもよい。いずれの場合であっても、結晶セレン膜610と酸化ガリウム膜620との接合が確保されていればよい。
【0035】
接合膜640は、接合型固体撮像素子600における光電変換部700であって、第1電極650が設けられた上側基板670と結晶セレン膜610とを接合する。接合膜640は、上側基板670と結晶セレン膜610とを接合できればその材料は特に制限されないが、テルル(Te)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)からなる群から選択される一種からなることが好ましく、上側基板670と結晶セレン膜610とを確実に接合するためには、テルルを用いることがより好ましい。
【0036】
接合膜640は、膜厚が0.1nm以上10nm以下であることが好ましい。接合膜640は、膜厚が0.1nm以上であると、上側基板670と結晶セレン膜610との接着力を効果的に高くでき、好ましい。また、接合膜640は、膜厚が10nm以下、より好ましくは3nm以下であると、結晶セレン膜610中への欠陥形成を防止できるため、暗電流増加を抑制することができ、好ましい。
【0037】
なお、接合膜640は、上側基板670と結晶セレン膜610と間の全域に連続して形成されていてもよい。あるいは、接合膜640は、面内方向の一部に孔が設けられ、上側基板670と結晶セレン膜610と間の一部領域に形成されていてもよい。いずれの場合であっても、上側基板670と結晶セレン膜610との接合が確保されていればよい。
【0038】
〔第1電極〕
第1電極650は、上側基板670の表面に各画素と対応して設けられ、光電変換部700と上側基板670との間に設けられる。第1電極650には、例えば、電源の負極が接続されている。第1電極650としては、例えば、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属膜を用いることができる。なお、図1Aおよび図1Bでは、上側基板670の一部が、第1電極650と同じ層に第1電極650とは異なるハッチで示されている。
【0039】
〔第2電極〕
第2電極660は、光の入射側であり、光電変換部700を介して第1電極650と反対側に設けられ、光電変換部700と下側基板680との間に設けられる。第2電極660には、例えば、電源の正極が接続されている。第2電極660は、透光性を有する材料で形成されることが好ましい。第2電極660としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化亜鉛スズ)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などの透明酸化物導電膜を用いることができる。第2電極660は、第1電極650と同じ材料で形成されてもよいし、第1電極650と異なる材料で形成されてもよい。第2電極660の膜厚は特に制限されないが、5nm以上30nm以下とすることが好ましい。
【0040】
〔上側基板〕
上側基板670は、例えば、シリコン基板上にCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)構造が形成された基板である。上側基板670は、導電性を有する基板である。上側基板670は、表面に第1電極650が設けられている。上側基板670は、接合膜640を介して、光電変換部700における結晶セレン膜610と接合されている。
【0041】
〔下側基板〕
下側基板680は、光の入射側であり、光電変換部700を介して上側基板670と反対側に設けられる。下側基板680は、絶縁性を有する基板である。下側基板680は、透光性を有する材料で形成されることが好ましい。下側基板680としては、例えば、ガラス基板、サファイア基板、シリコン基板などを用いることができる。下側基板680の材料は、第2電極660の材料に応じて適宜選択されることが好ましい。
【0042】
<接合用治具>
次に、図2A図2B、および図2Cを参照して、第1実施形態に係る接合用治具100の構成の一例について、説明する。
【0043】
以下、第1実施形態では、上側基板670のX軸方向の長さが、下側基板680のX軸方向の長さより長く、上側基板670のY軸方向の長さが、下側基板680のY軸方向の長さより長い場合について説明する。
【0044】
上側基板670は、X軸方向の長さがXsub1、Y軸方向の長さがYsub1、Z軸方向の長さがZsub1、で表される。例えば、上側基板670のX軸方向の長さXsub1は、31.2mmである。例えば、上側基板670のY軸方向の長さYsub1は、27.0mmである。例えば、上側基板670のZ軸方向の長さZsub1は、0.725mmである。
【0045】
下側基板680は、X軸方向の長さがXsub2、Y軸方向の長さがYsub2、Z軸方向の長さがZsub2、で表される。例えば、下側基板680のX軸方向の長さXsub2は、18.0mmである。例えば、下側基板680のY軸方向の長さYsub2は、25.0mmである。例えば、下側基板680のZ軸方向の長さZsub2は、1.1mmである。
【0046】
なお、上側基板670の外周部には回路動作用のワイヤなどが接続されるため、上側基板670および下側基板680の形状は、Xsub1>Xsub2、Ysub1>Ysub2という関係を満たすことが一般的である。しかしながら、後述の第2実施形態では、上側基板670および下側基板680の形状が、Xsub1≦Xsub2、Ysub1≦Ysub2という関係を満たす場合に使用される接合用治具200について、後述の第3実施形態では、上側基板670および下側基板680の形状が、Xsub1>Xsub2、Ysub1<Ysub2という関係を満たす場合に使用される接合用治具300について、説明する。
【0047】
接合用治具100は、上側基板670を受ける受け部10、および下側基板680を嵌めることが可能な貫通孔20を有する。接合用治具100は、例えば、アルミニウム、銅、または、ステンレス(SUS301・302・303・304、又は400番など)の何れか1つの材質により形成される。接合用治具100が導電性を有する材質で形成されることで、後述する接合装置の下側ステージに、静電チャックを用いて、接合用治具100を強固に固定することが可能となる。
【0048】
受け部10は、X軸方向の長さがX、Y軸方向の長さがY、Z軸方向の長さがZ、で表される。
【0049】
受け部10は、X軸方向の長さXが、上側基板670のX軸方向の長さXsub1より、所定長A長くなるように設定されている。これにより、後述する接合工程において、受け部10に、上側基板670を装填することが可能となる(図4B参照)。所定長Aは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長A=0.2mmの場合、受け部10のX軸方向の長さXは、次式を満たす。
【数1】
【0050】
受け部10は、Y軸方向の長さYが、上側基板670のY軸方向の長さYsub1より、所定長B長くなるように設定されている。これにより、後述する接合工程において、受け部10に、上側基板670を装填することが可能となる(図4B参照)。所定長Bは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長B=0.2mmの場合、受け部10のY軸方向の長さYは、次式を満たす。
【数2】
【0051】
受け部10は、Z軸方向の長さZが、上側基板670のZ軸方向の長さZsub1より、所定長α短くなるように設定されている。これにより、後述する接合工程において、接合装置の上側ステージに、上側基板670を付着させ易くなる(図4B図4C参照)。所定長αは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長α=0.2mmの場合、受け部10のZ軸方向の長さZは、次式を満たす。
【数3】
【0052】
貫通孔20は、X軸方向の長さがX、Y軸方向の長さがY、Z軸方向の長さがZ、で表される。
【0053】
貫通孔20は、X軸方向の長さXが、下側基板680のX軸方向の長さXsub2より、所定長C長くなるように設定されている。これにより、後述する接合工程において、貫通孔20に、下側基板680を装填することが可能となる(図4D参照)。所定長Cは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長C=0.2mmの場合、貫通孔20のX軸方向の長さXは、次式を満たす。
【数4】
【0054】
貫通孔20は、Y軸方向の長さYが、下側基板680のY軸方向の長さYsub2より、所定長D長くなるように設定されている。これにより、後述する接合工程において、貫通孔20に、下側基板680を装填することが可能となる(図4D参照)。所定長Dは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長D=0.2mmの場合、貫通孔20のY軸方向の長さYは、次式を満たす。
【数5】
【0055】
貫通孔20は、Z軸方向の長さZ(接合用治具100の底面から受け部10の底面までの距離)が、下側基板680のZ軸方向の長さZsub2より、所定長α短くなるように設定されている。これにより、後述する接合工程において、接合装置の上側ステージに付着した上側基板670を、下側基板680に接合させ易くなる(図4D図4E参照)。所定長αは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長α=0.2mmの場合、貫通孔20のZ軸方向の長さZは、次式を満たすように設定されている。
【数6】
【0056】
上述のように、受け部10におけるX軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、Z軸方向の長さ、貫通孔20におけるX軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、Z軸方向の長さが、上側基板670および下側基板680の形状に基づいて、適切に設定されることで、後述する接合工程において、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0057】
第1実施形態に係る接合用治具100を使用することで、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する接合型固体撮像素子600を製造可能となる。
【0058】
<接合方法>
図3、および図4A図4Fを参照して、第1実施形態に係る接合方法の一例について説明する。上述の接合用治具100を用いて、下記のステップS101~S106を実施することにより、上側基板670上に形成される第1アモルファスセレン膜610Aと下側基板680上に形成される第2アモルファスセレン膜610Bとを接合する場合を一例に挙げて説明する。
【0059】
以下、各工程の詳細を順次説明する。なお、同一の構成要素に同一の参照番号を付しており、各構成要素の材料、膜厚などの説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。また、図面において、接合型固体撮像素子600が備える第1電極650、接合膜640、接合膜630、酸化ガリウム膜620、第2電極660などの記載は省略している。
【0060】
接合方法は、接合装置1000により上側基板670と下側基板680とを接合する接合方法であって、上側基板670を受ける受け部10、および下側基板680を嵌めることが可能な貫通孔20を有する接合用治具100を、接合装置1000の下側ステージ1020に静電チャックで固定するステップ(S101)と、上側基板670を、受け部10に装填するステップ(S102)と、上側基板670を、接合装置1000の上側ステージ1010に静電チャックで固定するステップ(S103)と、上側ステージ1010を上昇させて、下側基板680を、貫通孔20に装填するステップ(S104)と、上側ステージ1010と下側ステージ1020とを接近させて、加圧処理および加熱処理を実施するステップ(S105)と、接合した上側基板670および下側基板680を、接合装置1000から取り出すステップ(S106)と、を含む。
【0061】
図4Aに示すように、ステップS101において、作業者は、接合用治具100を、接合装置1000の下側ステージ1020に静電チャック(非特許文献2参照)で固定する。例えば、真空中で、上側基板670と下側基板680とを接合する場合には、真空チャックを用いることができないため、静電チャックを用いることが好ましい。接合用治具100は、下面100Bに、あらかじめ微鏡面仕上げが施されている。下面100Bの算術平均粗さRaは、0.8mm以下であることが好ましい。下面100Bに微鏡面仕上げが施されることで、接合用治具100は、接合装置1000の下側ステージ1020に吸引され易くなる。これにより、接合用治具100が接合装置1000の下側ステージ1020からずれてしまうなどの不具合を回避することができるため、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0062】
図4Bに示すように、ステップS102において、作業者は、上側基板670を、接合用治具100の受け部10に装填する。接合用治具100は、その寸法が、受け部10のX軸方向の長さXが上側基板670のX軸方向の長さXsub1より長く、受け部10のY軸方向の長さYが上側基板670のY軸方向の長さYsub1より長くなるように設定されているため、上側基板670を、接合用治具100の受け部10に装填することが可能となる。この際、接合用治具100の受け部10と上側基板670の下面670Bの一部とは、接触した状態となる。なお、本工程を真空中で実施する場合には、接合用治具100の貫通孔20に、あらかじめ下側基板680を装填しておいてもよい。
【0063】
図4Bおよび図4Cに示すように、ステップS103において、作業者は、接合装置1000の上側ステージ1010を下降させて、上側基板670を、接合装置1000の上側ステージ1010に静電チャックで固定する。その後、作業者は、接合装置1000の上側ステージ1010を上昇させる。接合用治具100は、上面100A(受け部10の底面)に、あらかじめ粗面仕上げが施されている。上面100Aの算術平均粗さRaは、8.0mm以上であることが好ましい。上面100Aに粗面仕上げが施されることで、接合用治具100は、接合装置1000の上側ステージ1010に吸引され難くなる。これにより、接合装置1000の上側ステージ1010が上昇する際に、接合用治具100が、接合装置1000の上側ステージ1010にくっついてしまうなどの不具合を防止することができるため、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0064】
図4Dに示すように、ステップS104において、作業者は、下側基板680を、接合用治具100の貫通孔20に装填する。接合用治具100は、その寸法が、貫通孔20のX軸方向の長さXが下側基板680のX軸方向の長さXsub2より長く、貫通孔20のY軸方向の長さYが下側基板680のY軸方向の長さYsub2より長くなるように設定されているため、下側基板680を、接合用治具100の貫通孔20に装填することが可能となる。また、接合用治具100が接合装置1000の下側ステージ1020に固定されているため、当該治具に装填された下側基板680の位置ずれが生じない。したがって、下側基板680が、上側基板670のように、導電性を有しない基板であっても、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0065】
図4Eに示すように、ステップS105において、作業者は、接合装置1000の内部の真空排気を行って、接合用治具100を、接合装置1000の下側ステージ1020に強固に固定し、接合装置1000の上側ステージ1010と接合装置1000の下側ステージ1020とを接近させて、所定の圧力(例えば、10MPa程度)での加圧処理、および所定の温度(例えば、160度程度)での加熱処理を行って、第1アモルファスセレン膜610Aと第2アモルファスセレン膜610Bとを接合する。これにより、第1アモルファスセレン膜610Aおよび第2アモルファスセレン膜610Bが結晶化し、結晶セレン膜610を備える光電変換部700が形成される(図1B参照)。なお、本工程において、加熱処理を実施せずに、加圧処理のみを実施してもよい。本発明の接合用治具100は、受け部10のZ軸方向の長さZが上側基板670のZ軸方向の長さZsub1より所定長α短く、貫通孔20のZ軸方向の長さZが下側基板680のZ軸方向の長さZsub2より所定長α短く設定されているため、加圧処理時に接合装置1000の上側ステージ1010が接合用治具100と接触することはなく、適切な加圧処理が可能である。
【0066】
また、本工程の前に、必要に応じて、真空雰囲気中にアルゴンガスなどを微量充填することにより、上側基板670の表面、および下側基板680の表面に対するプラズマ放電によるクリーニングを実施することも可能である。
【0067】
図4Fに示すように、ステップS106において、作業者は、大気開放した後、接合型固体撮像素子600を、接合装置1000から取り出す。
【0068】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、図1Bに示すような接合型固体撮像素子600を製造することができる。第1実施形態に係る接合用治具100を使用することで、真空中、大気中を問うことなく、さらには、静電チャック方式であっても、容易に各基板を把持しながら、高精度な位置合せを担保した状態で、上下双方の基板接合を実現することができる。接合型固体撮像素子600は、第1実施形態に係る接合用治具100を使用して製造されているため、上下基板双方の基板位置がズレることなく、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を実現できる。
【0069】
〔第2実施形態〕
<接合用治具>
図5A図5B、および図5Cを参照して、第2実施形態に係る接合用治具200の構成の一例について説明する。なお、第1実施形態と重複する部分については、重複した説明を省略する場合がある。
【0070】
以下、第2実施形態では、上側基板670のX軸方向の長さが、下側基板680のX軸方向の長さと同等又は短く、上側基板670のY軸方向の長さが、下側基板680のY軸方向の長さと同等又は短い場合(Xsub1≦Xsub2、Ysub1≦Ysub2)について説明する。
【0071】
例えば、上側基板670のX軸方向の長さXsub1は、18.0mmである。例えば、上側基板670のY軸方向の長さYsub1は、25.0mmである。例えば、上側基板670のZ軸方向の長さZsub1は、0.725mmである。
【0072】
例えば、下側基板680のX軸方向の長さXsub2は、31.2mmである。例えば、下側基板680のY軸方向の長さYsub2は、27.0mmである。例えば、下側基板680のZ軸方向の長さZsub2は、1.1mmである。
【0073】
接合用治具200は、枠部材30と、受け部材40と、を備える。
【0074】
枠部材30は、下側基板680を嵌めることが可能な貫通孔(第1貫通孔)31を有する。枠部材30は、例えば、アルミニウム、銅、または、ステンレスの何れか1つの材質により形成される。
【0075】
受け部材40は、貫通孔31に取り付け可能又は貫通孔31から取り外し可能である。受け部材40は、貫通孔(第2貫通孔)41を有する。受け部材40は、貫通孔41を介して、上面40Aで上側基板670を受ける。受け部材40は、例えば、テフロン(登録商標)などの樹脂材料、ゴム、プラスチックの何れか1つの材質により形成される。
【0076】
貫通孔31は、X軸方向の長さがX、Y軸方向の長さがY、Z軸方向の長さがZ+Z、で表される。貫通孔41は、X軸方向の長さがX、Y軸方向の長さがY、Z軸方向の長さがZ、で表される。なお、受け部材40は、X軸方向の長さがX、Y軸方向の長さがY、Z軸方向の長さがZ、で表される。
【0077】
貫通孔31は、X軸方向の長さXが、下側基板680のX軸方向の長さXsub2より、所定長E長くなるように設定されている。これにより、貫通孔31に、下側基板680を装填することが可能となる(図7D参照)。所定長Eは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長E=0.2mmの場合、貫通孔31のX軸方向の長さXは、次式を満たす。
【数7】
【0078】
貫通孔31は、Y軸方向の長さYが、下側基板680のY軸方向の長さYsub2より、所定長F長くなるように設定されている。これにより、貫通孔31に、下側基板680を装填することが可能となる(図7D参照)。所定長Fは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長F=0.2mmの場合、貫通孔31のY軸方向の長さYは、次式を満たす。
【数8】
【0079】
貫通孔41は、X軸方向の長さXが、上側基板670のX軸方向の長さXsub1より、所定長G短くなるように設定されている。これにより、受け部材40は、貫通孔41を介して、上面40Aで上側基板670を受けることが可能となる(図7B参照)。所定長Gは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長G=0.2mmの場合、貫通孔41のX軸方向の長さがXは、次式を満たす。
【数9】
【0080】
貫通孔41は、Y軸方向の長さYが、上側基板670のY軸方向の長さYsub1より、所定長H短くなるように設定されている。これにより、受け部材40は、貫通孔41を介して、上面40Aで上側基板670を受けることが可能となる(図7B参照)。所定長Hは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長H=0.2mmの場合、貫通孔41のY軸方向の長さがYは、次式を満たす。
【数10】
【0081】
貫通孔31のZ軸方向の長さZ+Zと貫通孔41のZ軸方向の長さZとの差Z(=(Z+Z)-Z)は、上側基板670のZ軸方向の長さZsub1より、所定長α短くなるように設定されている。これにより、接合装置の上側ステージに、上側基板670を付着させ易くなる(図7B図7C参照)。所定長αは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長α=0.2mmの場合、差Zは、次式を満たす。
【数11】
【0082】
貫通孔41は、Z軸方向の長さZが、下側基板680のZ軸方向の長さZsub2より、所定長α短くなるように設定されている。これにより、接合装置の上側ステージに付着した上側基板670を、下側基板680に接合させ易くなる(図7D図7E参照)。所定長αは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長α=0.2mmの場合、貫通孔41のZ軸方向の長さZは、次式を満たす。
【数12】
【0083】
上述のように、枠部材30の貫通孔31におけるX軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、Z軸方向の長さ、受け部材40の貫通孔41におけるX軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、Z軸方向の長さ、受け部材40におけるX軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、Z軸方向の長さが、上側基板670および下側基板680の形状に基づいて、適切に設定されることで、後述する接合工程において、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0084】
第2実施形態に係る接合用治具200を使用することで、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する接合型固体撮像素子600A(図7F参照)を製造可能となる。
【0085】
<接合方法>
図6、および図7A図7Fを参照して、第2実施形態に係る接合方法の一例について説明する。上述の接合用治具200を用いて、下記のステップS201~S206を実施することにより、上側基板670上に形成される第1アモルファスセレン膜610Aと下側基板680上に形成される第2アモルファスセレン膜610Bとを接合する場合を一例に挙げて説明する。
【0086】
以下、各工程の詳細を順次説明する。なお、同一の構成要素に同一の参照番号を付しており、各構成要素の材料、膜厚などの説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0087】
接合方法は、接合装置1000により上側基板670と下側基板680とを接合する接合方法であって、下側基板680を嵌めることが可能な第1貫通孔31を有する枠部材30を、接合装置1000の下側ステージ1020に静電チャックで固定し、第2貫通孔41を介して上側基板670を受ける受け部材40を、第1貫通孔31に装填するステップ(S201)と、上側基板670を、受け部材40に装填するステップ(S202)と、上側基板670を、接合装置1000の上側ステージ1010に静電チャックで固定するステップ(S203)と、上側ステージ1010を上昇させて、受け部材40を、第1貫通孔31から取り外し、下側基板680を、第1貫通孔31に装填するステップ(S204)と、上側ステージ1010と下側ステージ1020とを接近させて、加圧処理および加熱処理を実施するステップ(S205)と、接合した上側基板670および下側基板680を、接合装置1000から取り出すステップ(S206)と、を含む。
【0088】
図7Aに示すように、ステップS201において、作業者は、接合用治具200が備える枠部材30を、接合装置1000の下側ステージ1020に静電チャックで固定し、接合用治具200が備える受け部材40を、枠部材30の貫通孔31に装填する。枠部材30は、下面30Bに、あらかじめ微鏡面仕上げが施されている。下面30Bの算術平均粗さRaは、0.8mm以下であることが好ましい。下面30Bに微鏡面仕上げが施されることで、接合用治具200は、接合装置1000の下側ステージ1020に吸引され易くなる。これにより、接合用治具200が接合装置1000の下側ステージ1020からずれてしまうなどの不具合を回避することができるため、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0089】
図7Bに示すように、ステップS202において、作業者は、上側基板670を、受け部材40に装填する。接合用治具200は、その寸法が、貫通孔41のX軸方向の長さXが上側基板670のX軸方向の長さXsub1より短く、貫通孔41のY軸方向の長さYが上側基板670のY軸方向の長さYsub1より短くなるように設定されているため、上側基板670を、受け部材40に装填することが可能となる。この際、受け部材40の上面40Aの一部と上側基板670の下面670Bの一部とは、接触した状態となる。
【0090】
図7Bおよび図7Cに示すように、ステップS203において、作業者は、接合装置1000の上側ステージ1010を下降させて、上側基板670を、接合装置1000の上側ステージ1010に静電チャックで固定する。その後、作業者は、接合装置1000の上側ステージ1010を上昇させる。受け部材40は、上面40Aに、あらかじめ粗面仕上げが施されている。上面40Aの算術平均粗さRaは、8.0mm以上であることが好ましい。上面40Aに粗面仕上げが施されることで、接合用治具200は、接合装置1000の上側ステージ1010に吸引され難くなる。これにより、接合装置1000の上側ステージ1010が上昇する際に、受け部材40が、接合装置1000の上側ステージ1010にくっついてしまうなどの不具合を防止することができるため、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0091】
図7Dに示すように、ステップS204において、作業者は、受け部材40を、枠部材30の貫通孔31から取り外し、下側基板680を、枠部材30の貫通孔31に装填する。接合用治具200は、その寸法が、枠部材30の貫通孔31のX軸方向の長さXが下側基板680のX軸方向の長さXsub2より長く、枠部材30の貫通孔31のY軸方向の長さYが下側基板680のY軸方向の長さYsub2より長くなるように設定されているため、下側基板680を、枠部材30の貫通孔31に装填することが可能となる。また、枠部材30が接合装置1000の下側ステージ1020に固定されているため、当該枠部材30に装填された下側基板680の位置ずれが生じない。したがって、下側基板680が、上側基板670のように、導電性を有しない基板であっても、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0092】
図7Eに示すように、ステップS205において、作業者は、接合装置1000の内部の真空排気を行って、枠部材30を、接合装置1000の下側ステージ1020に強固に固定し、接合装置1000の上側ステージ1010と接合装置1000の下側ステージ1020とを接近させて、所定の圧力(例えば、10MPa程度)での加圧処理、および所定の温度(例えば、160度程度)での加熱処理を行って、第1アモルファスセレン膜610Aと第2アモルファスセレン膜610Bとを接合する。これにより、第1アモルファスセレン膜610Aおよび第2アモルファスセレン膜610Bが結晶化し、結晶セレン膜610を備える光電変換部が形成される。
【0093】
図7Fに示すように、ステップS206において、作業者は、大気開放した後、接合型固体撮像素子600Aを、接合装置1000から取り出す。
【0094】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、接合型固体撮像素子600Aを製造することができる。第2実施形態に係る接合用治具200を使用することで、真空中、大気中を問うことなく、さらには、静電チャック方式であっても、容易に各基板を把持しながら、高精度な位置合せを担保した状態で、上下双方の基板接合を実現することができる。接合型固体撮像素子600Aは、第2実施形態に係る接合用治具200を使用して製造されているため、上下基板双方の基板位置がズレることなく、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を実現できる。
【0095】
〔第3実施形態〕
<接合用治具>
図8A図8B、および図8Cを参照して、第3実施形態に係る接合用治具300の構成の一例について説明する。なお、第1実施形態と重複する部分については、重複した説明を省略する場合がある。
【0096】
以下、第3実施形態では、上側基板670のX軸方向の長さが、下側基板680のX軸方向の長さより長く、上側基板670のY軸方向の長さが、下側基板680のY軸方向の長さと同等又は短い場合(Xsub1>Xsub2、Ysub1≦Ysub2)について説明する。なお、上側基板670のX軸方向の長さが、下側基板680のX軸方向の長さと同等又は短く、上側基板670のY軸方向の長さが、下側基板680のY軸方向の長さより長い場合(Xsub1≦Xsub2、Ysub1>Ysub2)についても、同様の趣旨の説明を適用できることは勿論である。
【0097】
例えば、上側基板670のX軸方向の長さXsub1は、35.0mmである。例えば、上側基板670のY軸方向の長さYsub1は、25.0mmである。例えば、上側基板670のZ軸方向の長さZsub1は、1.1mmである。
【0098】
例えば、下側基板680のX軸方向の長さXsub2は、25.0mmである。例えば、下側基板680のY軸方向の長さYsub2は、35.0mmである。例えば、下側基板680のZ軸方向の長さZsub2は、1.1mmである。
【0099】
接合用治具300は、上側基板670を受ける受け部50、および下側基板680を嵌めることが可能な貫通孔60を有する。接合用治具300は、例えば、アルミニウム、銅、または、ステンレスの何れか1つの材質により形成される。
【0100】
受け部50は、X軸方向の長さXが、上側基板670のX軸方向の長さXsub1より、所定長I長くなるように設定されている。これにより、受け部50に、上側基板670を装填することが可能となる(図10B参照)。所定長Iは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長I=0.2mmの場合、受け部50のX軸方向の長さがXは、次式を満たす。
【数13】
【0101】
受け部50は、Y軸方向の長さYが、上側基板670のY軸方向の長さYsub1より、所定長J長くなるように設定されている。これにより、受け部50に、上側基板670を装填することが可能となる(図10B参照)。所定長Jは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長J=0.2mmの場合、受け部50のY軸方向の長さYは、次式を満たす。
【数14】
【0102】
受け部50は、Z軸方向の長さZが、上側基板670のZ軸方向の長さZsub1より、所定長α短くなるように設定されている。これにより、接合装置の上側ステージに、上側基板670を付着させ易くなる(図10B図10C参照)。所定長αは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長α=0.2mmの場合、受け部50のZ軸方向の長さZは、次式を満たす。
【数15】
【0103】
貫通孔60は、X軸方向の長さXが、下側基板680のX軸方向の長さXsub2より、所定長J長くなるように設定されている。これにより、貫通孔60に、下側基板680を装填することが可能となる(図10D参照)。所定長Jは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長J=0.2mmの場合、貫通孔60のX軸方向の長さXは、次式を満たす。
【数16】
【0104】
貫通孔60は、Y軸方向の長さYが、下側基板680のY軸方向の長さYsub2より、所定長K長くなるように設定されている。これにより、貫通孔60に、下側基板680を装填することが可能となる(図10D参照)。所定長Kは、例えば、0.05mm以上1.0mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長K=0.2mmの場合、貫通孔60のY軸方向の長さYは、次式を満たす。
【数17】
【0105】
貫通孔60のZ軸方向の長さZ+Zと受け部50のZ軸方向の長さZとの差Z(=(Z+Z)-Z)、すなわち、接合用治具300の底面から受け部50の底面までの距離は、下側基板680のZ軸方向の長さZsub2より、所定長α短くなるように設定されている。これにより、接合装置の上側ステージに付着した上側基板670を、下側基板680に接合させ易くなる(図10D図10E参照)。所定長αは、例えば、0.1mm以上0.5mm以下の範囲を満たすことが好ましい。所定長α=0.2mmの場合、差Zは、次式を満たす。
【数18】
【0106】
上述のように、受け部50におけるX軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、Z軸方向の長さ、貫通孔60におけるX軸方向の長さ、Y軸方向の長さ、Z軸方向の長さが、上側基板670および下側基板680の形状に基づいて、適切に設定されることで、後述する接合工程において、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0107】
第3実施形態に係る接合用治具300を使用することで、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する接合型固体撮像素子600B(図10F参照)を製造可能となる。
【0108】
<接合方法>
図9、および図10A図10Fを参照して、第3実施形態に係る接合方法の一例について説明する。上述の接合用治具300を用いて、下記のステップS301~S306を実施することにより、上側基板670上に形成される第1アモルファスセレン膜610Aと下側基板680上に形成される第2アモルファスセレン膜610Bとを接合する場合を一例に挙げて説明する。
【0109】
以下、各工程の詳細を順次説明する。なお、同一の構成要素に同一の参照番号を付しており、各構成要素の材料、膜厚などの説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0110】
接合方法は、接合装置1000により上側基板670と下側基板680とを接合する接合方法であって、上側基板670を受ける受け部50、および下側基板680を嵌めることが可能な貫通孔60を有する接合用治具300を、接合装置1000の下側ステージ1020に静電チャックで固定するステップ(S301)と、上側基板670を、受け部50に装填するステップ(S302)と、上側基板670を、接合装置1000の上側ステージ1010に静電チャックで固定するステップ(S303)と、上側ステージ1010を上昇させて、下側基板680を、貫通孔60に装填するステップ(S304)と、上側ステージ1010と下側ステージ1020とを接近させて、加圧処理および加熱処理を実施するステップ(S305)と、接合した上側基板670および下側基板680を、接合装置1000から取り出すステップ(S306)と、を含む。と、を含む。
【0111】
図10Aに示すように、ステップS301において、作業者は、接合用治具100を、接合装置1000の下側ステージ1020に静電チャックで固定する。接合用治具300は、下面300Bに、あらかじめ微鏡面仕上げが施されている。下面300Bの算術平均粗さRaは、0.8mm以下であることが好ましい。下面300Bに微鏡面仕上げが施されることで、接合用治具300は、接合装置1000の下側ステージ1020に吸引され易くなる。これにより、接合用治具300が接合装置1000の下側ステージ1020からずれてしまうなどの不具合を回避することができるため、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0112】
図10Bに示すように、ステップS302において、作業者は、上側基板670を、接合用治具300の受け部50に装填する。接合用治具300は、その寸法が、受け部50のX軸方向の長さXが上側基板670のX軸方向の長さXsub1より長く、受け部50のY軸方向の長さYが、上側基板670のY軸方向の長さYsub1より長くなるように設定されているため、上側基板670を、接合用治具300の受け部50に装填することが可能となる。この際、接合用治具300の受け部50と上側基板670の下面670Bの一部とは、接触した状態となる。
【0113】
図10Bおよび図10Cに示すように、ステップS303において、作業者は、接合装置1000の上側ステージ1010を下降させて、上側基板670を、接合装置1000の上側ステージ1010に静電チャックで固定する。その後、作業者は、接合装置1000の上側ステージ1010を上昇させる。接合用治具300は、上面300A(受け部50の底面)に、あらかじめ粗面仕上げが施されている。上面300Aの算術平均粗さRaは、8.0mm以上であることが好ましい。上面300Aに粗面仕上げが施されることで、接合用治具300は、接合装置1000の上側ステージ1010に吸引され難くなる。これにより、接合装置1000の上側ステージ1010が上昇する際に、接合用治具300が、接合装置1000の上側ステージ1010にくっついてしまうなどの不具合を防止することができるため、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0114】
図10Dに示すように、ステップS304において、作業者は、下側基板680を、接合用治具100の貫通孔60に装填する。接合用治具300は、その寸法が、貫通孔60のX軸方向の長さXが下側基板680のX軸方向の長さXsub2より長く、貫通孔60のY軸方向の長さYが下側基板680のY軸方向の長さYsub2より長くなるように設定されているため、下側基板680を、接合用治具300の貫通孔60に装填することが可能となる。また、接合用治具300が接合装置1000の下側ステージ1020に固定されているため、当該治具に装填された下側基板680の位置ずれが生じない。したがって、下側基板680が、上側基板670のように、導電性を有しない基板であっても、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0115】
図10Eに示すように、ステップS305において、作業者は、接合装置1000の内部の真空排気を行って、接合用治具300を、接合装置1000の下側ステージ1020に強固に固定し、接合装置1000の上側ステージ1010と接合装置1000の下側ステージ1020とを接近させて、所定の圧力(例えば、10MPa程度)での加圧処理、および所定の温度(例えば、160度程度)での加熱処理を行って、第1アモルファスセレン膜610Aと第2アモルファスセレン膜610Bとを接合する。これにより、第1アモルファスセレン膜610Aおよび第2アモルファスセレン膜610Bが結晶化し、結晶セレン膜610を備える光電変換部が形成される。
【0116】
図10Fに示すように、ステップS106において、作業者は、大気開放した後、接合型固体撮像素子600Bを、接合装置1000から取り出す。
【0117】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、接合型固体撮像素子600Bを製造することができる。第3実施形態に係る接合用治具300を使用することで、真空中、大気中を問うことなく、さらには、静電チャック方式であっても、容易に各基板を把持しながら、高精度な位置合せを担保した状態で、上下双方の基板接合を実現することができる。接合型固体撮像素子600Bは、第3実施形態に係る接合用治具300を使用して製造されているため、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を実現できる。
【0118】
<変形例>
次に、図11A、および図11Bを参照して、変形例に係る接合用治具400の構成の一例について説明する。
【0119】
変形例に係る接合用治具400が、第3実施形態に係る接合用治具300と異なる点は、第3実施形態に係る接合用治具300における受け部50の各コーナーは、角ばった形状であるのに対して、変形例に係る接合用治具400における受け部50Aの各コーナーは、円形状である点である。なお、その他の構成は、第3実施形態に係る接合用治具300と同じであるため、重複した説明を省略する。
【0120】
受け部50Aは、領域Dが、円形状となっている。上側基板670において、回路などが形成されている重要な面は、受け部50Aの底面と対向する関係上、上側基板670と受け部50Aとの接触面積は、できる限り少ないことが好ましい。したがって、受け部50Aにおいて、領域Dの形状を、円形状とすることで、上側基板670と受け部50Aとの接触面積を、図11Bに示す斜線部のみとすることができる。これにより、上側基板670の回路部分を保護しつつ、上側基板670と下側基板680との高精度な位置合わせ、および貼り合わせが可能となる。
【0121】
変形例に係る接合用治具400を使用することで、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する接合型固体撮像素子を製造可能となる。
【0122】
<その他の変形例>
本実施形態では、接合用治具100,200,300を使用して、第1アモルファスセレン膜610Aと第2アモルファスセレン膜610Bとを接合し、接合型固体撮像素子600,600A,600Bを製造する場合を一例に挙げて説明したが、接合用治具100,200,300の用途は、これに限定されない。例えば、接合用治具100,200,300は、原子間拡散作用を利用した金電極同士の接合に用いられてもよい。例えば、接合用治具100,200,300は、インジウム電極によるバンプ接合に用いられてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、接合用治具100,200,300の外形が、正方形である場合を一例に挙げて説明したが、接合用治具100,200,300の外形は、これに限定されない。例えば、接合用治具100,200,300の外形は、円形、多角形などであってもよい。例えば、接合用治具100,200,300の外形は、接合装置1000のステージの形状、大きさなどに応じて、適宜変更されてよい。
【0124】
また、本実施形態では、接合用治具100,200,300の材質として、アルミニウム、銅、ステンレスを用いる場合を一例に挙げて説明したが、接合用治具100,200,300の材質は、これに限定されない。例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどの導電性化合物であってもよい。
【0125】
また、本実施形態では、上側基板670,下側基板680の外形が、矩形である場合を一例に挙げて説明したが、上側基板670,下側基板680の外形は、これに限定されない。例えば、上側基板670,下側基板680の外形は、円形、多角形などであってもよい。例えば、上側基板670,下側基板680の外形は、それぞれの形状が異なる異種形状であってもよい。
【0126】
本発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載にしたがって時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0127】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態により制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。また、実施形態のフローチャートに記載の複数の工程を1つに組み合わせたり、あるいは1つの工程を分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0128】
10 受け部
20 貫通孔
30 枠部材
31 貫通孔(第1貫通孔)
40 受け部材
41 貫通孔(第2貫通孔)
50 受け部
60 貫通孔
100,200,300,400 接合用治具
600,600A,600B 接合型固体撮像素子
610 結晶セレン膜
610A 第1アモルファスセレン膜
610B 第2アモルファスセレン膜
610S 接合面
620 酸化ガリウム膜
630 接合膜
640 接合膜
650 第1電極
660 第2電極
670 信号読み出し回路基板(上側基板)
680 透明基板(下側基板)
700 光電変換部
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B