(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】溶接方法、金属積層体、電気部品、および電気製品
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20241204BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20241204BHJP
B23K 26/28 20140101ALI20241204BHJP
H01M 50/536 20210101ALN20241204BHJP
【FI】
B23K26/21 G
B23K26/082
B23K26/21 N
B23K26/28
H01M50/536
(21)【出願番号】P 2021105757
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 暢康
(72)【発明者】
【氏名】松永 啓伍
(72)【発明者】
【氏名】村山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 昌充
(72)【発明者】
【氏名】茅原 崇
(72)【発明者】
【氏名】繁松 孝
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】安岡 知道
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-161862(JP,A)
【文献】特開2019-209349(JP,A)
【文献】特開2011-173146(JP,A)
【文献】国際公開第2021/246529(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01M 50/536
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、
前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、
前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、
を有し、
前記溶融池を形成する工程では、
前記レーザ光のスポットが前記金属箔の表面上で掃引されるとともに、
前記複数の金属箔および前記金属部材が前記レーザ光から吸収した吸収エネルギであって、掃引方向の単位長さあたりの吸収エネルギが、0.14[J/mm]以下である、溶接方法。
【請求項2】
前記吸収エネルギは、前記複数の金属箔のうち前記金属部材と接した金属箔が溶融しうる大きさ以上である、請求項1に記載の溶接方法。
【請求項3】
前記吸収エネルギは、前記第一方向に重ねられた複数の金属箔の厚さが400[μm]以上である場合に、0.05[J/mm]以上である、請求項2に記載の溶接方法。
【請求項4】
前記スポットの掃引速度は、300[mm/s]以上かつ10000[mm/s]以下である、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項5】
前記第一レーザ光の波長は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下であり、前記第二レーザ光の波長は、550[nm]以下である、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項6】
前記第二レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下である、請求項5に記載の溶接方法。
【請求項7】
前記レーザ光のビームは、ビームシェイパによって形成された、請求項1~6のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項8】
前記ビームシェイパは、DOEである、請求項7に記載の溶接方法。
【請求項9】
前記溶融池を形成する工程では、前記スポットの前記金属箔上での掃引軌跡が、当該掃引軌跡の少なくとも一部において、前記スポットの少なくとも一部が既に前記レーザ光の照射によって溶融した部位と重なるよう、設定される、請求項1~8のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項10】
前記掃引軌跡は、無端状の部位を含む、請求項9に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記掃引軌跡は、全体的に無端状の形状を有した、請求項10に記載の溶接方法。
【請求項12】
前記溶融池を形成する工程では、前記掃引軌跡において前記無端状の部位が形成された後、前記表面における前記無端状の部位の内側の領域で前記レーザ光のスポットが掃引される、請求項10または11に記載の溶接方法。
【請求項13】
前記掃引軌跡は、互いに隣り合って延びた複数の区間を含む、請求項9~12のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項14】
前記掃引軌跡は、前記掃引軌跡の二箇所の間を結ぶ線分状の区間を含む、請求項9~13のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項15】
前記掃引軌跡は、渦巻き状の区間を含む、請求項9~14のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項16】
前記掃引軌跡は、前記スポットが基準点周りに周回しながら当該基準点が第二方向に移動するウォブリング区間を含む、請求項9~15のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項17】
前記掃引軌跡は、前記第二方向に線状に延びた区間と、当該線状に延びた区間の後に掃引され当該線状に延びた区間と部分的に重なる前記ウォブリング区間と、を含む、請求項16に記載の溶接方法。
【請求項18】
前記掃引軌跡は、当該掃引軌跡同士が交差した部位を含む、請求項9~17のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項19】
形成された前記溶接部の幅が30[μm]以上かつ300[μm]以下である、請求項1~18のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項20】
金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、
前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、
前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、
を有し、
前記溶融池を形成する工程では、
前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔上に点状の前記レーザ光のスポットを照射した場合に形成された前記溶接部の外径、または前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔上で前記レーザ光のスポットを掃引した場合に形成された前記溶接部の幅が、30[μm]以上かつ300[μm]以下である、溶接方法。
【請求項21】
金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、
前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、
前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、
を有し、
前記溶融池を形成する工程では、
前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔上に点状の前記レーザ光のスポットを照射し、
前記レーザ光の前記複数の金属箔および前記金属部材への投入エネルギが、1.0[J]以下である、溶接方法。
【請求項22】
前記投入エネルギは、前記複数の金属箔のうち前記金属部材と接した金属箔が溶融しうる大きさ以上である、請求項21に記載の溶接方法。
【請求項23】
金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、
前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、
前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、
を有し、
前記溶融池を形成する工程では、
前記レーザ光のスポットが前記金属箔の表面上で掃引されるとともに、
前記スポットの前記金属箔上での掃引軌跡は、前記スポットが基準点周りに周回しながら当該基準点が第二方向に移動するウォブリング区間と、前記第二方向に線状に延びて前記ウォブリング区間と部分的に重なった区間と、を含む、溶接方法。
【請求項24】
金属部材と、
前記金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔と、
前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接した溶接部と、
を備え、
前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔において、前記溶接部が点状に形成された場合の外径、または前記溶接部が線状に形成された場合の幅が、30[μm]以上かつ300[μm]以下である、金属積層体。
【請求項25】
請求項24に記載の金属積層体を、導体として備えた、電気部品。
【請求項26】
請求項24に記載の金属積層体を、導体として備えた、電気製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接方法、金属積層体、電気部品、および電気製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のタブと端子とがレーザ溶接によって接合されている電池が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の溶接においては、所要の接合強度の確保は勿論のこと、例えばレーザ光を照射した部位における複数の金属箔の切断や、金属箔の部分的な断裂のような欠陥を生じさせないことは、重要である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、複数の金属箔と金属部材とが重なった積層体を溶接することが可能な、より改善された新規な溶接方法、ならびに当該溶接方法によって溶接された、金属積層体、電気部品、および電気製品を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溶接方法は、例えば、金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、を有し、前記溶融池を形成する工程では、前記レーザ光のスポットが前記金属箔の表面上で掃引されるとともに、前記複数の金属箔および前記金属部材が前記レーザ光から吸収した吸収エネルギであって、掃引方向の単位長さあたりの吸収エネルギが、0.14[J/mm]以下である。
【0007】
前記溶接方法にあっては、前記吸収エネルギは、前記複数の金属箔のうち前記金属部材と接した金属箔が溶融しうる大きさ以上であってもよい。
【0008】
前記溶接方法にあっては、前記吸収エネルギは、前記第一方向に重ねられた複数の金属箔の厚さが400[μm]以上である場合に、0.05[J/mm]以上であってもよい。
【0009】
前記溶接方法にあっては、前記スポットの掃引速度は、300[mm/s]以上かつ10000[mm/s]以下であってもよい。
【0010】
前記溶接方法にあっては、前記第一レーザ光の波長は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下であり、前記第二レーザ光の波長は、550[nm]以下であってもよい。
【0011】
前記溶接方法にあっては、前記第二レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下であってもよい。
【0012】
前記溶接方法にあっては、前記レーザ光のビームは、ビームシェイパによって形成されてもよい。
【0013】
前記溶接方法にあっては、前記ビームシェイパは、DOEであってもよい。
【0014】
前記溶接方法にあっては、前記溶融池を形成する工程では、前記スポットの前記金属箔上での掃引軌跡が、当該掃引軌跡の少なくとも一部において、前記スポットの少なくとも一部が既に前記レーザ光の照射によって溶融した部位と重なるよう、設定されてもよい。
【0015】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、無端状の部位を含んでもよい。
【0016】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、全体的に無端状の形状を有してもよい。
【0017】
前記溶接方法にあっては、前記溶融池を形成する工程では、前記掃引軌跡において前記無端状の部位が形成された後、前記表面における前記無端状の部位の内側の領域で前記レーザ光のスポットが掃引されてもよい。
【0018】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、互いに隣り合って延びた複数の区間を含んでもよい。
【0019】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、前記掃引軌跡の二箇所の間を結ぶ線分状の区間を含んでもよい。
【0020】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、渦巻き状の区間を含んでもよい。
【0021】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、前記スポットが基準点周りに周回しながら当該基準点が第二方向に移動するウォブリング区間を含んでもよい。
【0022】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、前記第二方向に線状に延びた区間と、当該線状に延びた区間の後に掃引され当該線状に延びた区間と部分的に重なる前記ウォブリング区間と、を含んでもよい。
【0023】
前記溶接方法にあっては、前記掃引軌跡は、当該掃引軌跡同士が交差した部位を含んでもよい。
【0024】
前記溶接方法にあっては、形成された前記溶接部の幅が30[μm]以上かつ300[μm]以下であってもよい。
【0025】
本発明の溶接方法は、例えば、金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、を有し、前記溶融池を形成する工程では、前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔上に点状の前記レーザ光のスポットを照射した場合に形成された前記溶接部の外径、または前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔上で前記レーザ光のスポットを掃引した場合に形成された前記溶接部の幅が、30[μm]以上かつ300[μm]以下である。
【0026】
本発明の溶接方法は、例えば、金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、を有し、前記溶融池を形成する工程では、前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔上に点状の前記レーザ光のスポットを照射し、前記レーザ光の前記複数の金属箔および前記金属部材への投入エネルギが、1.0[J]以下である。
【0027】
前記溶接方法にあっては、前記投入エネルギは、前記複数の金属箔のうち前記金属部材と接した金属箔が溶融しうる大きさ以上であってもよい。
【0028】
本発明の溶接方法は、例えば、金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔に、第一レーザ光と、当該第一レーザ光よりもエネルギ密度が低い第二レーザ光と、を含むレーザ光を照射して、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接する溶接方法であって、前記レーザ光を照射して前記複数の金属箔と前記金属部材とに渡る溶融池を形成する工程と、前記溶融池を固化して溶接部を形成する工程と、を有し、前記溶融池を形成する工程では、前記レーザ光のスポットが前記金属箔の表面上で掃引されるとともに、前記スポットの前記金属箔上での掃引軌跡は、前記スポットが基準点周りに周回しながら当該基準点が第二方向に移動するウォブリング区間と、前記第二方向に線状に延びて前記ウォブリング区間と部分的に重なった区間と、を含む。
【0029】
本発明の金属積層体は、例えば、金属部材と前記金属部材上に第一方向に重なった複数の金属箔と、前記金属部材と前記複数の金属箔とを溶接した溶接部と、を備え、前記複数の金属箔のうち前記金属部材とは反対側の金属箔において、前記溶接部が点状に形成された場合の外径、または前記溶接部が線状に形成された場合の幅が、30[μm]以上かつ300[μm]以下である。
【0030】
本発明の電気部品は、例えば、前記金属積層体を、導体として備える。
【0031】
本発明の電気製品は、例えば、前記金属積層体を、導体として備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、例えば、複数の金属箔と金属部材とが重なった積層体を溶接することが可能な、より改善された新規な溶接方法、ならびに当該溶接方法によって溶接された、金属積層体、電気部品、および電気製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、第1実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態のレーザ溶接装置の加工対象としての金属積層体の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のレーザ溶接装置の加工対象としての金属積層体を含む電池の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)を示す例示的な模式図である。
【
図5】
図5は、照射するレーザ光の波長に対する金属の光の吸収率を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施形態の溶接方法の手順を示す例示的なフローチャートである。
【
図7】
図7は、金属積層体において溶接部と金属箔との境界に断裂が生じる仕組みを示す例示的かつ模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、参考例の溶接方法により溶接部に切断が生じた場合の例示的な断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の溶接方法により良好な接合状態が得られた場合の例示的な断面図である。
【
図10】
図10は、参考例の溶接方法により金属箔の一部に断裂が生じた場合の例示的な断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図16】
図16は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図17】
図17は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図18】
図18は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図19】
図19は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図20】
図20は、実施形態の溶接方法による金属箔の表面上におけるレーザ光のスポットの軌跡の一例を示す模式図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態のレーザ溶接装置に含まれる回折光学素子の原理の概念を示す説明図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)の一例を示す模式図である。
【
図24】
図24は、第3実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0035】
以下に示される実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0036】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに直交している。Z方向は、加工対象Wの表面Wa(加工面、溶接面)の法線方向であり、金属箔12の厚さ方向であり、金属箔12および金属積層体10の積層方向である。
【0037】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位、レーザ光、方向等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0038】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のレーザ溶接装置100の概略構成図である。
図1に示されるように、レーザ溶接装置100は、レーザ装置111と、レーザ装置112と、光学ヘッド120と、光ファイバ130と、を備えている。レーザ溶接装置100は、溶接装置の一例である。
【0039】
レーザ装置111,112は、それぞれ、レーザ発振器を有しており、例えば、数kWのパワーのレーザ光を出力できるよう構成されている。レーザ装置111,112は、400[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光を出射する。レーザ装置111,112は、内部に、例えば、ファイバレーザや、半導体レーザ(素子)、YAGレーザ、ディスクレーザのような、レーザ光源を有している。レーザ装置111,112は、複数の光源の出力の合計として、数kWのパワーのマルチモードのレーザ光を出力できるよう構成されてもよい。
【0040】
レーザ装置111は、例えば、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光を出力する。レーザ装置111は、第一レーザ装置の一例である。一例として、レーザ装置111は、レーザ光源として、ファイバレーザかあるいは半導体レーザ(素子)を有する。レーザ装置111が有するレーザ発振器は、第一レーザ発振器とも称されうる。
【0041】
他方、レーザ装置112は、例えば、550[nm]以下の波長の第二レーザ光を出力する。レーザ装置112は、第二レーザ装置の一例である。一例として、レーザ装置112は、レーザ光源として、半導体レーザ(素子)を有する。レーザ装置112は、400[nm]以上500[nm]以下の波長の第二レーザ光を出力するのが好適である。レーザ装置112が有するレーザ発振器は、第二レーザ発振器とも称されうる。
【0042】
光ファイバ130は、レーザ装置111,112と光学ヘッド120とを光学的に接続している。言い換えると、光ファイバ130は、それぞれ、レーザ装置111,112から出力されたレーザ光を光学ヘッド120に導く。
【0043】
光学ヘッド120は、レーザ装置111,112から入力されたレーザ光を、加工対象Wに向かって照射する光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と、集光レンズ122と、ミラー123と、フィルタ124と、ガルバノスキャナ126と、を備えている。コリメートレンズ121、集光レンズ122、ミラー123、フィルタ124、およびガルバノスキャナ126は、光学部品とも称されうる。
【0044】
コリメートレンズ121(121-1,121-2)は、それぞれ、光ファイバ130を介して入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0045】
ミラー123は、コリメートレンズ121-1で平行光となった第一レーザ光を反射し、ガルバノスキャナ126へ向かわせる。
【0046】
フィルタ124は、第一レーザ光を透過し、かつ第二レーザ光を透過せずに反射するハイパスフィルタである。ミラー123からの第一レーザ光は、フィルタ124を透過し、ガルバノスキャナ126へ向かう。他方、コリメートレンズ121-2からの第二レーザ光は、フィルタ124で反射され、ガルバノスキャナ126へ向かう。
【0047】
ガルバノスキャナ126は、複数のミラー126a,126bを有している。複数のミラー126a,126bの角度を変更することで、光学ヘッド120からのレーザ光Lの出射方向を切り替え、これにより、加工対象Wの表面上でレーザ光Lの照射位置を変更することができる。ミラー126a,126bの角度は、それぞれ、例えば制御装置によって制御されたモータ(いずれも不図示)によって変更される。光学ヘッド120は、レーザ光Lを照射しながら、レーザ光Lの出射方向を変更することにより、加工対象Wの表面Wa上で、レーザ光Lを掃引することができる。
【0048】
集光レンズ122は、ガルバノスキャナ126から到来した平行光としてのレーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、加工対象Wへ照射する。
【0049】
加工対象Wは、金属部材11と、複数の金属箔12とが、Z方向に積層された金属積層体10である。金属積層体10は、積層体とも称されうる。金属積層体10は、金属部材11と、複数の金属箔12と、溶接部14と、を有している。溶接部14は、金属部材11と複数の金属箔12とを溶接し、機械的かつ電気的に接続している。
【0050】
図2は、金属積層体10の断面図である。金属部材11は、一例として、Z方向と交差して広がった板状の形状を有している。ただし、金属部材11は、板状の部材には限定されない。複数の金属箔12は、金属部材11のZ方向の端面11a上に、Z方向に積層されている。
【0051】
金属積層体10は、レーザ溶接装置100によって溶接されるに際し、不図示の固定治具によって上述した積層状態で一体的に仮止めされ、金属箔12の表面Waの法線方向がZ方向と略平行となる姿勢で、セットされる。固定治具は、例えば、Z方向に互いに離間して配置された2枚の金属板である。当該2枚の金属板は、Z方向と交差した姿勢で、積層された金属部材11と複数の金属箔12とをZ方向に挟む。当該2枚の金属板のうち光学ヘッド120と面した金属板には、レーザ光Lが貫通可能な貫通穴が設けられる。
【0052】
表面Waは、金属積層体10のZ方向の端面であり、複数の金属箔12のうち金属部材11とは反対側の金属箔12、言い換えると金属部材11から最も離れた金属箔12の、当該金属部材11とは反対側の面である。レーザ光Lは、表面Waに対してZ方向の反対方向に向けて、言い換えると、表面Waに対して金属部材11とは反対側からZ方向に沿って、照射される。なお、金属部材11の端面11aとは反対側の面は、金属積層体10の裏面Wbである。表面Waは、レーザ光Lの照射面とも称され、光学ヘッド120と面した対向面とも称されうる。Z方向は、第一方向の一例である。
【0053】
このようなレーザ光Lの照射により、溶接部14は、表面Waから、Z方向の反対方向に向けて延びることになる。Z方向の反対方向は、溶接部14の深さ方向とも称されうる。また、レーザ光Lが表面Wa上で掃引方向SDに掃引されることにより、溶接部14は、
図2と略同様の断面形状で、掃引方向SDにも延びることになる。なお、掃引方向SDは、レーザ光Lが照射されている位置における一時的な方向である。また、
図1,2のように、掃引方向SDがX方向である場合にあっては、当該X方向と直交するY方向は、溶接部14の幅方向とも称されうる。
【0054】
図3は、金属積層体10を有した電気製品としての電池1の断面図である。電池1は、金属積層体10の一つの適用例である。この場合、金属積層体10は、導体としての電気部品の一例であり、電気製品に含まれる電気部品の一例である。電気部品は、電気製品の構成部品とも称されうる。
【0055】
図3に示される電池1は、例えば、ラミネート型のリチウムイオン電池セルである。電池1は、フィルム状の二つの外装材20を有している。二つの外装材20の間には収容室20aが形成されている。収容室20a内には、複数の扁平な正極材13p、複数の扁平な負極材13m、および複数の扁平なセパレータ15が、収容されている。収容室20a内では、正極材13pと負極材13mとが、セパレータ15が間に介在した状態で、交互に積層されている。複数の正極材13pおよび複数の負極材13mからは、それぞれ金属箔12が延びている。
図3の例では、正極材13pのそれぞれから延びた複数の金属箔12は、電池1のY方向の反対側の端部において金属部材11上に重ねられ、当該端部において金属部材11と複数の金属箔12とが溶接された金属積層体10が設けられている。正極側では、金属部材11の一部のみが外装材20の外に露出し、金属部材11の他の一部、複数の金属箔12、および溶接部14は、外装材20の外には露出していない。金属部材11は、電池1の正極端子を構成している。他方、負極材13mのそれぞれから延びた複数の金属箔12は、電池1のY方向の端部において金属部材11上に重ねられて、当該端部において金属部材11と複数の金属箔12とが溶接された金属積層体10が設けられている。負極側でも、金属部材11の一部のみが外装材20の外に露出し、金属部材11の他の一部、複数の金属箔12、および溶接部14は、外装材20の外には露出していない。金属部材11は、電池1の負極端子を構成している。
【0056】
図3に示されるように、金属積層体10は、それぞれ、二つの外装材20の間に挟まれている。金属積層体10と外装材20との間は、封止材等により気密あるいは液密が確保される。このため、金属積層体10の表面Waおよび裏面Wbは、凹凸ができるだけ小さいか、少ないか、あるいは無い状態であるのが好ましい。なお、電池1がリチウムイオン電池セルである場合、正極端子としての金属積層体10を構成する金属箔12は、例えば、アルミニウム系金属材料で作られ、負極端子としての金属積層体10を構成する金属箔12は、例えば、銅系金属材料で作られる。正極端子および負極端子は、電気部品の一例である。金属積層体10または金属部材11は、電極タブや、タブとも称されうる。また、金属部材11は、導電部材とも称されうる。
【0057】
図4は、表面Wa上に照射されたレーザ光Lのビーム(スポット)を示す模式図である。ビームB1およびビームB2のそれぞれは、そのビームの光軸方向と直交する断面の径方向において、例えばガウシアン形状のパワー分布を有する。ただし、ビームB1およびビームB2のパワー分布はガウシアン形状に限定されない。また、
図4のように各ビームB1,B2を円で表している各図において、当該ビームB1,B2を表す円の直径が、各ビームB1,B2のビーム径である。各ビームB1,B2のビーム径は、そのビームのピークを含み、ピーク強度の1/e
2以上の強度の領域の径として定義する。なお、図示されないが、円形でないビームの場合は、掃引方向SDと垂直方向における、ピーク強度の1/e
2以上の強度となる領域の長さをビーム径と定義できる。また、表面Waにおけるビーム径は、スポット径と称する。
【0058】
図4に示されるように、本実施形態では、一例として、レーザ光Lのビームは、表面Wa上において、第一レーザ光のビームB1と第二レーザ光のビームB2とが重なり、ビームB2がビームB1よりも大きく(広く)、かつ、ビームB2の外縁B2aがビームB1の外縁B1aを取り囲むよう、形成されている。この場合、ビームB2のスポット径D2は、ビームB1のスポット径D1よりも大きい。また、ビームB2のエネルギ密度は、ビームB1のエネルギ密度よりも低く設定されている。表面Wa上において、ビームB1は、第一スポットの一例であり、ビームB2は、第二スポットの一例である。
【0059】
また、本実施形態では、
図4に示されるように、表面Wa上において、レーザ光Lのビーム(スポット)は、中心点Cに対する点対称形状を有しているため、任意の掃引方向SDについて、スポットの形状は同じになる。よって、レーザ光Lの表面Wa上での掃引のために光学ヘッド120と加工対象Wとを相対的に動かす移動機構を備える場合、当該移動機構は、少なくとも相対的に並進可能な機構を有すればよく、相対的に回転可能な機構は省略できる場合がある。
【0060】
加工対象Wとしての金属部材11および金属箔12は、それぞれ、導電性を有した金属材料で作られ得る。金属材料は、例えば、銅系金属材料や、アルミニウム系金属材料、ニッケル系金属材料、鉄系金属材料、チタン系金属材料などであり、具体的には、銅や、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、ニッケル、ニッケル合金、鉄、ステンレス、チタン、チタン合金等である。金属部材11および金属箔12は、同じ材料で作られてもよいし、異なる材料で作られてもよい。
【0061】
[波長と光の吸収率]
ここで、金属材料の光の吸収率について説明する。
図5は、照射するレーザ光Lの波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。
図5のグラフの横軸は波長であり、縦軸は吸収率である。
図5には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、およびチタン(Ti)について、波長と吸収率との関係が示されている。
【0062】
材料によって特性が異なるものの、
図5に示されている各金属に関しては、一般的な赤外線(IR)のレーザ光(第一レーザ光)を用いるよりも、青や緑のレーザ光(第二レーザ光)を用いた方が、エネルギの吸収率がより高いことが理解できよう。この特徴は、銅(Cu)や、金(Au)等においては顕著となる。
【0063】
使用波長に対して吸収率が比較的低い加工対象Wにレーザ光が照射された場合、大部分の光エネルギは反射され、加工対象Wに熱としての影響を及ぼさない。そのため、十分な深さの溶融領域を得るには比較的高いパワーを与える必要がある。その場合、ビーム中心部は急激にエネルギが投入されることで、昇華が生じ、キーホールが形成される。
【0064】
他方、使用波長に対して吸収率が比較的高い加工対象Wにレーザ光が照射された場合、投入されるエネルギの多くが加工対象Wに吸収され、熱エネルギへと変換される。すなわち、過度なパワーを与える必要はないため、キーホールの形成を伴わず、熱伝導型の溶融となる。
【0065】
本実施形態では、加工対象Wの第二レーザ光に対する吸収率が、第一レーザ光に対する吸収率よりも高くなるよう、第一レーザ光の波長、第二レーザ光の波長、および加工対象Wの材質が、選択される。この場合、掃引方向が
図4に示される掃引方向SDである場合、レーザ光Lのスポットの掃引により、加工対象Wの溶接される部位(以下、被溶接部位と称する)には、まずは、第二レーザ光のビームB2の、
図4におけるSDの前方に位置する領域B2fによって、第二レーザ光が照射される。その後、被溶接部位には、第一レーザ光のビームB1が照射され、その後、第二レーザ光のビームB2の、掃引方向SDの後方に位置する領域B2bによって、再度第二レーザ光が照射される。
【0066】
したがって、被溶接部位には、まずは、領域B2fにおける吸収率が高い第二レーザ光の照射により、熱伝導型の溶融領域が生じる。その後、被溶接部位には、第一レーザ光の照射によって、より深いキーホール型の溶融領域が生じる。この場合、被溶接部位には、予め熱伝導型の溶融領域が形成されているため、当該熱伝導型の溶融領域が形成されない場合に比べて、より低いパワーの第一レーザ光によって所要の深さの溶融領域を形成することができる。さらにその後、被溶接部位には、領域B2bにおける吸収率が高い第二レーザ光の照射により、溶融状態が変化する。このような観点から、第二レーザ光の波長は550[nm]以下とするのが好ましく、500[nm]以下とするのがより好ましい。
【0067】
また、発明者らの実験的な研究により、
図4のようなビームのレーザ光Lの照射による溶接にあっては、スパッタやブローホールのような溶接欠陥を低減できることが確認されている。これは、ビームB1が到来する前にビームB2の領域B2fによって加工対象Wを予め加熱しておくことにより、ビームB2およびビームB1によって形成される加工対象Wの溶融池がより安定化するためであると推定できる。
【0068】
[溶接方法]
図6は、レーザ溶接装置100による加工対象Wのレーザ溶接の手順の一例を示すフローチャートである。
図6に示されるように、まずは、保持具によって金属部材11と複数の金属箔12とが一体的に仮止めされた金属積層体10、すなわち加工対象Wが、レーザ光Lが表面Waに照射される状態にセットされる(S11)。そして、加工対象Wの表面Wa上にレーザ光Lを照射することにより、複数の金属箔12と金属部材11とに渡る溶融池を形成する(S12)。S12において、レーザ光Lは、Z方向の反対方向に略沿って照射される。また、S12においては、ビームB1およびビームB2を含むレーザ光Lが表面Waに照射されている状態で、レーザ光Lと金属積層体10とが相対的に動かされてもよい。この場合、表面Wa上のレーザ光Lのスポットは、当該表面Wa上を掃引方向SDに移動する、言い換えると掃引される。レーザ光Lの照射により形成された溶融池は、温度の低下に伴って固化し、溶接部14が形成される(S13)。このようにして、複数の金属箔12と金属部材11とが溶接され、金属積層体10が一体化される。
【0069】
[断裂]
発明者らは、複数の金属箔12と金属部材11との溶接に際し、溶接部14と金属箔12との境界Bにおいて、断裂が生じる場合があることを見出すとともに、適切な条件の設定によって、断裂が生じるのを回避できることを見出した。
【0070】
図7は、断裂が生じる仕組みを示す断面図であって、(a)は、溶融池Mが形成された状態(S12)を示し、(b)は、溶融池Mが固化して溶接部14が形成された状態を示している。
図7の例では、(b)に示されるように、溶接部14と複数の金属箔12との間の境界Bに、断裂14aが生じている。これは、溶融池Mが冷却して固化され溶接部14となる際に収縮し、金属箔12が当該収縮に追従できなくなり、境界Bにおいて断裂14aが生じるものと推察される。
【0071】
[断裂が生じ難い条件]
発明者らは、実験的な研究により、以下の(1)~(4)のような知見を得た。実験において、加工対象W(金属積層体10)は、アルミニウム系材料で作られた金属部材11および金属箔12を含み、金属箔12の厚さは20[μm]、金属箔12の枚数は20枚であり、第一レーザ光の波長は、1070[nm]、第二レーザ光の波長は、465[nm]であった。
【0072】
(1)溶接部14の体積が小さいほど、断裂14aが生じ難い。具体的に、溶接部14が点状に形成された場合の外径、または溶接部14が線状に形成された場合の幅は、30[μm]以上かつ300[μm]以下である場合には、断裂14aが生じ難いことが判明した。溶接部14が点状に形成された場合の外径、または溶接部14が線状に形成された場合の幅が300[μm]よりも大きい場合には、溶融池M(溶接部14)の体積が大きくなり、溶接部14と金属箔12との間の境界Bにおいて断裂14aが生じた。また、溶接部14は、複数の金属箔12と金属部材11との十分な溶接状態を得るため、レーザ光Lの照射によって複数の金属箔12のうち金属部材11と接した金属箔12が溶融することが必要である。この点、加工速度が速い(または投入エネルギ量が小さい)場合には、溶融池M(溶接部14)が表面Waから金属部材11に到達できず、言い換えると、金属部材11と接した金属箔12が溶融できず、溶接部14による複数の金属箔12と金属部材11との十分な溶接状態が得られなかった(後述の「非接合」)。その対策として、第二レーザ光に対して第一レーザ光のパワーを高くすると複数の金属箔12において溶融池Mが形成されず複数の金属箔12が切断されてしまった(後述の「切断」)。なお、スポット径D2は、レーザ光Lのスポットが表面Wa上で掃引された場合のビームの幅でもある。
【0073】
(2)レーザ光Lのスポットが表面Wa上で掃引されない場合、すなわち、スポット溶接である場合、複数の金属箔12および金属部材11への投入エネルギが、1.0[J]以下であると、断裂14aが生じ難いことが判明した。投入エネルギが1.0[J]よりも大きい場合には、溶融池M(溶接部14)の体積が大きくなり、溶接部14と金属箔12との間の境界Bにおいて断裂14aが生じた。また、上述したように、溶接部14は、複数の金属箔12と金属部材11との十分な溶接状態を得るため、レーザ光Lの照射によって複数の金属箔12のうち金属部材11と接した金属箔12が溶融することが必要である。この観点から、投入エネルギは、金属部材11と接した金属箔12が溶融しうる大きさ以上であることが必要である。
【0074】
(3)レーザ光Lのスポットが表面Wa上で掃引される場合、複数の金属箔12および金属部材11による吸収エネルギE(式(1))が、0.14[J/mm]以下であると、断裂14aが生じ難いことが判明した。吸収エネルギEは、以下の式(1)のように定義する。
E=A・Pw/V ・・・(1)
ここに、Eは、吸収エネルギ[J/mm]、Aは、金属による吸収率、Pwは、レーザ光Lのパワー[W]、Vは、掃引速度[mm/s]である。表1は、実験結果であって、各サンプル(実験No.)における掃引速度[mm/s]、吸収エネルギ[J/mm]、および結果を示している。
【表1】
【0075】
表1の「結果」において、「切断」は、複数の金属箔12が掃引方向SDに対して交差した方向(幅方向、Y方向)に分離して溶接部14が形成されなかった状態である。
図8は、「切断」の状態の一例を示す断面図である。
図8に示されるように、この場合、溶接部14は形成されず、隙間14cが形成され、複数の金属箔12は、掃引方向SDと交差したY方向(幅方向)において、切断されている。また、レーザ光Lの照射によって複数の金属箔12が溶融した金属材料は、レーザ光Lのエネルギや重力によって複数の金属箔12と金属部材11との間に移動し、残渣14bとして残存している。
【0076】
「接合」は、複数の金属箔12と金属部材11とに渡る溶接部14が形成され、当該複数の金属箔12と金属部材11とが、当該溶接部14を介して良好に、機械的かつ電気的に接合された状態である。
図9は、「接合」の状態の一例を示す断面図である。表1の「結果」においては、「接合」のみが、許容される状態である。
【0077】
「断裂」は、境界Bにおいて溶接部14といずれかの金属箔12との間が切れてしまった状態、すなわち断裂14aが生じてしまった状態である。
図10は、「断裂」の状態の一例を示す断面図である。
図10に示されるように、断裂14aは、レーザ光Lの出射源に近い部位T、言い換えると金属部材11から遠い部位Tに生じやすい。
図10から、断裂14aは、金属箔12がY方向(幅方向)に引き延ばされることによって生じていることがわかる。
【0078】
また、「非接合」は、溶接部14が複数の金属箔12を貫通しきれず金属部材11に到達していない状態、を示す。
【0079】
上述した実験を含む検討から、吸収エネルギが、0.14[J/mm]以下である場合には、「断裂」とはならず、「接合」となること、すなわち良好な接合状態が得られることが判明した。さらに、吸収エネルギは、「非接合」とならない大きさ、すなわち、複数の金属箔12のうち金属部材11と接した金属箔12が溶融しうる大きさ以上であることが必要である。一例として、アルミニウム系材料で作られた金属部材11および金属箔12を含み、金属箔12の厚さが20[μm]、金属箔12の枚数が20枚であった場合、複数の金属箔12のうち金属部材11と接した金属箔12が溶融しうる吸収エネルギの大きさは、0.05[J/mm]であり、金属箔12の合計の厚さが400[μm]以上である場合には、吸収エネルギを0.05[J/mm]以上とすることが好適であることが判明した。なお、表1中実験No.1については、第二レーザ光を照射せず第一レーザ光のみを照射したため「切断」となった。また、発明者らは、このような吸収エネルギの範囲を得るためには、掃引速度は、300[mm/s]以上かつ10000[mm/s]以下であるのが好適であることを見出した。
【0080】
(4)レーザ光Lのスポットが表面Wa上で掃引される場合、掃引軌跡の始点および終点で断裂14aが生じ易く、掃引軌跡が無端状の区間を有する場合、当該無端状の区間では断裂14aが生じ難いことが判明した。掃引軌跡の掃引方向の端部では、溶接部14と複数の金属箔12との間の境界Bの面積が広くなり、断裂14aが生じ易くなる。この点、掃引軌跡の無端状の区間では、溶接部14と複数の金属箔12との間の境界Bの面積をより小さくすることができるため、断裂14aが生じ難くなる。
図11~20に、好適な接合状態が得られる種々の軌跡Pの例を示す。
【0081】
図11は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P1(P)を例示している。なお、
図11,12,14,16~20中の太い実線は、レーザ光Lのスポットの中心位置の軌跡を示している。
図11に示されるように、軌跡P1は、無端状の区間Peと、複数の線分状の区間Plと、を有している。無端状の区間Peは、閉路とも称されうる。無端状の区間Peは、長円状の形状を有している。
図11では、無端状の区間Peは、始点Pesと終点Peeとが同じ位置となっているが、始点Pesおよび終点Peeは、必ずしも同じ位置となる必要はない。例えば、始点Pesおよび終点Peeは、それぞれ、レーザ光Lのスポットの軌跡Pe上の他の位置と重なるように位置してもよいし、レーザ光Lのスポットの軌跡Pe上からレーザ光Lのビームの幅(スポット径D2)以下の間隔で離間していてもよい。無端状の区間Peは、無端状の部位の一例である。また、線分状の区間Plは、無端状の区間Peのうち互いに離間した互いに平行な直線状の部位の間で掛け渡されている。すなわち、線分状の区間Plは、始点Plsから始まるとともに終点Pleで終わっており、始点Plsは、無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接し、終点Pleは、別の無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接している。すなわち、線分状の区間Plは、従前に溶融した部位から始まり、従前に溶融した部位で終わっている。
図11の軌跡P1は、複数の無端状の区間、あるいは閉路を有していると言うことができる。なお、当該線分状の区間Plは、曲線状であってもよい。
【0082】
図12は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P2(P)を例示している。
図12に示されるように、軌跡P2も、
図11の例と同様に、無端状の区間Peと、線分状の区間Plと、を有している。また、当該線分状の区間Plの始点Plsは、無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接し、終点Pleは、別の無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接している。すなわち、
図12の例でも、線分状の区間Plは、従前に溶融した部位から始まり、従前に溶融した部位で終わっている。
図12の軌跡P2も、複数の無端状の区間、あるいは閉路を有していると言うことができる。ただし、
図12の例では、線分状の区間Plは、それぞれ、無端状の区間Peのうち互いに離間した曲線状の部位の間で掛け渡されており、無端状の区間Peのうち直線状の部位と平行である。無端状の区間Peのうち直線状の部位と、複数の線分状の区間Plとは、互いに隣り合って延びている。
【0083】
図11,12に示す例では、線分状の区間Plの全ての始点Plsおよび終点Pleが無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接しているが、線分状の区間Plの一部の始点Plsおよび終点Pleが無端状の区間Pe上に位置してもよい。ただし、線分状の区間Plの全ての始点Plsおよび終点Pleが無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接する方が好ましい。
【0084】
図13は、
図12のXIII-XIII断面図である。
図13では、従前の溶融池M(または溶接部14)を二点鎖線で示し、最新の溶融池Mを実線で示している。
図13に示されるように、最新の線分状の区間Plの掃引によって形成された最新の溶融池Mは、従前の無端状の区間Pe(直線状の部位)または線分状の区間Plの掃引によって形成された従前の溶融池M(または溶接部14)と部分的に重なるよう、設定されている。この例では、隣り合う溶融池M同士(または、隣り合う最新の溶融池Mおよび従前の溶接部14)は、幅方向(Y方向)に部分的に重なっている。このように、最新の溶融池Mが従前の溶融池M(または溶接部14)と部分的に重なる場合、溶接部14と複数の金属箔12との境界Bが生じないため、断裂14aは生じない。このような重なり合いを得るため、線分状の区間Plは、そのスポットの一部が、従前の無端状の区間Peまたは線分状の区間Plの掃引においてレーザ光Lの照射によって溶融した部位と部分的に重なるよう、設定される。この例では、無端状の区間Peの内側は、溶融池M(溶接部14)で塗り潰されたような状態となる。
【0085】
図14は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P3(P)を例示している。
図14に示されるように、軌跡P3は、渦巻き状の形状を有するとともに、全体的に無端状の形状を有している。すなわち、軌跡P3は、無端状の区間Peのみを有している。無端状の区間Peは、始点Pesから始まるとともに終点Peeで終わっており、始点Pesは、無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接し、終点Peeも、無端状の区間Pe上に位置するかあるいは接している。すなわち、無端状の区間Peは、従前に溶融した部位から始まり、従前に溶融した部位で終わっている。
【0086】
図15は、
図14のXV-XV断面図である。
図15でも、従前の溶融池M(または溶接部14)を二点鎖線で示し、最新の溶融池Mを実線で示している。
図15に示されるように、最新の無端状の区間Peの掃引によって形成された最新の溶融池Mは、従前の無端状の区間Peの掃引によって形成された従前の溶融池M(または溶接部14)と部分的に重なるよう、設定されている。この例でも、隣り合う溶融池M同士(または、最新の溶融池Mおよび従前の溶接部14)は、幅方向(Y方向)に部分的に重なっている。このような重なり合いを得るため、無端状の区間Peは、そのスポットの一部が、従前の無端状の区間Peの掃引においてレーザ光Lの照射によって溶融した部位と部分的に重なるよう、設定される。この例でも、無端状の区間Peの内側は、溶融池M(溶接部14)で塗り潰されたような状態となる。
【0087】
図16は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P4(P)を例示している。
図16に示されるように、軌跡P4も、全体的に無端状の形状を有している。すなわち、軌跡P4は、無端状の区間Peのみを有している。ただし、この例では、
図16に示されるように、無端状の区間Peの前段は、長円状の区間であり、無端状の区間Peの後段は、当該長円状の区間の内側において、レーザ光Lのスポットが基準点周りに周回しながら当該基準点がX方向に移動するウォブリング区間である。
図16中の一点鎖線の矢印Lcは、基準点のX方向への移動軌跡である。X方向は第二方向の一例である。なお、発明者らは、断裂14aを生じないという観点においてウォブリングが有効であり、吸収エネルギがより高くウォブリング無しの場合には断裂14aが生じる条件にあってもウォブリングの場合には好適な接合状態が得られる場合があることを確認した。
【0088】
なお、
図14,16では、軌跡Pが始点Pesおよび終点Peeを一つずつ有する例を示したが、これには限られない。軌跡Pは、全体的に無端状の形状であればよく、例えば、始点Pesおよび終点Peeを複数有してもよい。また、軌跡Pは、本実施形態で得られる効果を阻害しない範囲で、局所的に他の掃引経路を有してもよい。
【0089】
図17は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P5(P)を例示している。
図17に示されるように、軌跡P5は、ウォブリング区間Pwと、ウォブリング区間Pwと部分的に重なったX方向に延びた線分状の区間Plと、を有している。この例では、レーザ光Lのスポットは、線分状の区間Plで掃引された後、ウォブリング区間Pwで掃引される。ウォブリング区間Pwは、複数の無端状の区間(閉路)を有している。よって、この例でも、軌跡Pが無端状の区間Peを有した他の例と同様の効果が得られる。
【0090】
図18は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P6(P)を例示している。この例では、軌跡P6は、複数の線分状の区間Plを有しているものの、無端状の区間Peは有していない点が、
図12の例と相違している。ただし、この例でも、
図12,13の例と同様に、線分状の区間Plは、そのスポットの一部が、従前の線分状の区間Plの掃引においてレーザ光Lの照射によって溶融した部位と部分的に重なるよう、設定される。この例でも、所定範囲が溶融池M(溶接部14)で塗り潰されたような状態となり、
図12,13の例と同様の効果が得られる。
【0091】
図19は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P7(P)を例示している。この例では、軌跡P7は、長円状の無端状の区間Peを有するとともに、当該無端状の区間Peの内側に配置された複数のスポットPpを有している。この場合、溶接部14が点状に形成された場合の外径、または溶接部14が線状に形成された場合の幅は、30[μm]以上かつ300[μm]以下に設定されるとともに、投入エネルギは、1.0[J]以下に設定される。また、この例でも、最新のスポットPpにおいて形成された最新の溶融池Mは、従前のスポットPpにおいて形成された従前の溶融池M(または溶接部14)と部分的に重なるよう、設定されている。このような重なり合いを得るため、スポットPpの一部が、既に照射されたスポットPpにおいてレーザ光Lの照射によって溶融した部位と部分的に重なるよう、設定される。この例でも、無端状の区間Peの内側は、溶融池M(溶接部14)で塗り潰されたような状態となる。
【0092】
図20は、表面Wa上でのレーザ光Lのスポットの軌跡P8(P)を例示している。この例では、軌跡P8は、長円状の無端状の区間Peを有しない点を除き、
図19の軌跡P7例と同様の形状を有している。このように、無端状の区間Peが無い場合にあっても、複数のスポットPpに関する適切な条件設定により、断裂14aや切断が生じない良好な接合状態が得られる。
【0093】
以上、説明したように、発明者らの鋭意研究により、本実施形態の溶接方法によれば、レーザ光Lのスポットを照射する場合の、種々のパラメータを適切に設定することにより、断裂14aや、切断、非接合の生じない好適な接合状態が得られることが判明した。
【0094】
[第2実施形態]
図21は、第2実施形態のレーザ溶接装置100Aの概略構成図である。本実施形態では、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-2とフィルタ124との間に、DOE125を有している。この点を除き、レーザ溶接装置100Aは、第1実施形態のレーザ溶接装置100と同様の構成を備えている。
【0095】
DOE125は、第一レーザ光のビームB1の形状(以下、ビーム形状と称する)を成形する。
図22に概念的に例示されるよう、DOE125は、例えば、周期の異なる複数の回折格子125aが重ね合わせられた構成を備えている。DOE125は、平行光を、各回折格子125aの影響を受けた方向に曲げたり、重ね合わせたりすることにより、ビーム形状を成形することができる。DOE125は、ビームシェイパとも称されうる。
【0096】
なお、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-1の後段に設けられ第一レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパや、フィルタ124の後段に設けられ第一レーザ光および第二レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパ等を有してもよい。ビームシェイパによってレーザ光Lのビーム形状を適宜に整えることにより、より良好な接合状態が得られる。
【0097】
図23は、レーザ溶接装置100Aによって得られたビームのスポットの一例を示す。
図23の例では、DOE125によるビームの成形により、表面Wa上には、一つのビームB1のスポットの周囲に、複数のビームB2のスポットが、略円弧状(略円環状)に配置されている。このような場合、ビームのスポットの幅w(スポット径)は、
図23に示されるように、掃引方向SDと直交する方向に最も離れた二つのビームの中心間の距離と定義する。また、
図23の例のように、略軸対称のビームパターンとすることにより、湾曲した経路で掃引するような場合に光学ヘッド120を軌跡Pに合わせて回転させる必要がなく、より効率的に掃引を行うことができるとともに、光学ヘッド120の装置構成を簡素化できたり、光学ヘッド120の制御をより容易に行うことができたり、といった利点が得られる。
【0098】
[第3実施形態]
図24は、第3実施形態のレーザ溶接装置100Bの概略構成図である。本実施形態では、光学ヘッド120は、ガルバノスキャナ126を有さず、加工対象Wの表面Wa上でレーザ光Lの照射を行いながらレーザ光Lを掃引するために、加工対象Wとの相対位置を変更可能に構成されている。光学ヘッド120と加工対象Wとの相対移動は、光学ヘッド120の移動、加工対象Wの移動、または光学ヘッド120および加工対象Wの双方の移動により、実現されうる。このようなレーザ溶接装置100Bによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0099】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0100】
例えば、本発明は、上記実施形態とは異なる構成のリチウムイオン電池セルにも適用可能であるし、リチウムイオン電池セル以外の電池にも適用可能である。また、電池は電気製品の一例であって、本発明の電気製品は、電池には限定されない。また、電池の端子は、電気部品の一例であって、本発明の電気部品は、電池の端子には限定されない。
【0101】
また、加工対象は、めっき付き金属板のように、金属の表面に薄い他の金属の層が存在するものでもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…電池(電気製品)
10…金属積層体(積層体、電気部品)
11…金属部材
11a…端面(第一面)
12…金属箔
13p…正極材
13m…負極材
14…溶接部
14a…断裂
14b…残渣
14c…隙間
15…セパレータ
20…外装材
20a…収容室
100,100A,100B…レーザ溶接装置(溶接装置)
111…レーザ装置(第一レーザ発振器)
112…レーザ装置(第二レーザ発振器)
120…光学ヘッド
121,121-1,121-2…コリメートレンズ
122…集光レンズ
123…ミラー
124…フィルタ
125…DOE(回折光学素子)
125a…回折格子
126…ガルバノスキャナ
126a,126b…ミラー
130…光ファイバ
B…境界
B1…ビーム(第一スポット)
B1a…外縁
B2…ビーム(第二スポット)
B2a…外縁
B2b…領域
B2f…領域
C…中心点
D1…スポット径(外径)
D2…スポット径(外径)
L…レーザ光
Lc…(基準点の)移動軌跡
M…溶融池
P,P1~P8…軌跡(掃引軌跡)
Pe…無端状の区間
Pes…始点
Pee…終点
Pl…線分状の区間
Pls…始点
Ple…終点
Pp…スポット
Pw…ウォブリング区間
SD…掃引方向
T…部位
w…幅
W…加工対象
Wa…表面
Wb…裏面
X…方向(第二方向)
Y…方向
Z…方向(第一方向)