(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ペプチド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 1/10 20060101AFI20241204BHJP
C07K 1/06 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C07K1/10
C07K1/06
(21)【出願番号】P 2021548816
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2020034686
(87)【国際公開番号】W WO2021060048
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2019174364
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020077224
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506269633
【氏名又は名称】ペプチドリーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】諸留 圭介
(72)【発明者】
【氏名】半田 道玄
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504175(JP,A)
【文献】特開平10-175955(JP,A)
【文献】SPERRY, J. B. et al.,Thermal Stability Assessment of Peptide Coupling Reagents Commonly Used in Pharmaceutical Manufactur,Org. Process Res.,2018年12月22日,Vol. 22, Issue 9,pp.1262-1275,DOI: 10.1021/acs.oprd.8b00193
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C07K1/00-19/00
DB名 JSTPlus/JMEDPlus
/JST7580(JDreamIII),
CAPlus/REGISTRY/MEDLINE
/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び(2):
(1)
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドと、式
(II)
【化1】
(式中、Xはハロゲン原子を表
す)で表されるカルボン酸ハロゲン化物とを混合する工程;及び
(2)
工程(1)で得られた生成物と、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドとを混合する工程、
を含む、ペプチドの製造方法。
【請求項2】
さらに下記工程(3)乃至(5):
(3)
工程(2)又は(5)で得られたペプチドのN末端の保護基を除去する工程;
(4)
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドと式
(II)で表されるカルボン酸ハロゲン化物とを混合する工程;及び
(5)
工程(4)で得られた生成物と、工程(3)で得られた生成物とを混合する工程、
の繰り返しを1以上含む、請求項1に記載のペプチドの製造方法。
【請求項3】
Xが塩素原子又は臭素原子である、請求項1
又は2に記載のペプチドの製造方法。
【請求項4】
Xが塩素原子である、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項5】
N-保護アミノ酸におけるアミノ酸が、グリシン以外のα-アミノ酸である、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項6】
N-保護アミノ酸におけるアミノ酸が、グリシン以外のα-アミノ酸であり、そのアミノ酸側鎖の反応性官能基が保護されている、請求項
5に記載のペプチドの製造方法。
【請求項7】
グリシン以外のα-アミノ酸が、バリン、フェニルアラニン、トレオニン、ロイシン、トリプトファン、セリン、システイン、アスパラギン酸又はチロシンである、請求項
5又は
6に記載のペプチドの製造方法。
【請求項8】
C-保護アミノ酸におけるアミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端残基におけるアミノ酸が、N-置換アミノ酸以外のα-アミノ酸である、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項9】
工程(2)が、工程(1)で得られた生成物と、C-保護ペプチドとを混合する工程である、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項10】
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのN末端保護基が、カルバメート系保護基である、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のペプチドの製造方法。
【請求項11】
カルバメート系保護基が、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である、請求項
10に記載のペプチドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミド結合を形成するための縮合試薬は、医薬、農薬などの生理活性物質の製造等で広く用いられている。特に、ペプチド化合物の製造においては、複数のアミド結合を形成する必要があることから、高収率で目的物が得られる縮合試薬が強く望まれている(非特許文献1)。
ペプチド化合物の製造において、工業的に利用可能な縮合試薬としては、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU)、イソブチルクロロホルメート、ピバロイルクロリド等が知られている(特許文献1、2、非特許文献2、3)。一方で、COMUやイソブチルクロロホルメートは、自己分解による発熱性を有することが知られている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/129796号
【文献】国際公開第2012/004554号
【0004】
【文献】ケミカルレビューズ 2011年、111巻、6557-6602頁
【文献】ブルガリア科学アカデミーのレポート 2004年、57巻、53-58頁
【文献】ロシアン ジャーナル オブ バイオオーガニック ケミストリー 2009年、35巻、150-156頁
【文献】オーガニック プロセス リサーチ アンド ディベロップメント 2018年、22巻、1262-1275頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが確認したところ、ピバロイルクロリドを縮合試薬に用いて、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端と、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのC末端を反応させた場合、縮合試薬由来のピバロイル基が、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端に導入された副生成物が生成し、目的とするペプチド化合物の収率が低下することが見出された。アミド結合を繰り返し形成するペプチド化合物の製造においては、上記副生成物が不純物として蓄積する。そのため、上記方法は工業的な製造方法としては効率や経済性の点で課題が想定された。
【0006】
本発明は、自己分解による発熱のない安全な縮合試薬を用いて、高収率でペプチド化合物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有するカルボン酸ハロゲン化物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下を特徴とするものである。
[1]
下記工程(1)及び(2):
(1)
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドと、式(I)
【化1】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、
R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基を表し、R
1、R
2及びR
3中の炭素原子の総数が3乃至40である)で表されるカルボン酸ハロゲン化物とを混合する工程;及び
(2)
工程(1)で得られた生成物と、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドとを混合する工程、
を含む、ペプチドの製造方法。
[2]
さらに下記工程(3)乃至(5):
(3)
工程(2)又は(5)で得られたペプチドのN末端の保護基を除去する工程;
(4)
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドと式(I)で表されるカルボン酸ハロゲン化物とを混合する工程;及び
(5)
工程(4)で得られた生成物と、工程(3)で得られた生成物とを混合する工程、
の繰り返しを1以上含む、[1]に記載のペプチドの製造方法。
[3]
R
1、R
2及びR
3の内、2つ以上が互いに独立して、3級又は4級炭素原子を1つ以上含む脂肪族炭化水素基である、[1]又は[2]に記載のペプチドの製造方法。
[4]
R
1がメチル基であり、R
2及びR
3が互いに独立して、3級又は4級炭素原子を1つ以上含む脂肪族炭化水素基である、[1]又は[2]に記載のペプチドの製造方法。
[5]
R
2及びR
3が互いに独立して、3級又は4級炭素原子を1つ以上含むC
3-10アルキル基である、[4]に記載のペプチドの製造方法。
[6]
カルボン酸ハロゲン化物が、式(II)
【化2】
(式中、Xはハロゲン原子を表す)で表される化合物である、[1]に記載のペプチドの製造方法。
[7]
Xが塩素原子又は臭素原子である、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
[8]
Xが塩素原子である、[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
[9]
N-保護アミノ酸におけるアミノ酸が、グリシン以外のα-アミノ酸である、[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
[10]
N-保護アミノ酸におけるアミノ酸が、グリシン以外のα-アミノ酸であり、そのアミノ酸側鎖の反応性官能基が保護されている、[9]に記載のペプチドの製造方法。
[11]
グリシン以外のα-アミノ酸が、バリン、フェニルアラニン、トレオニン、ロイシン、トリプトファン、セリン、システイン、アスパラギン酸又はチロシンである、[9]又は[10]に記載のペプチドの製造方法。
[12]
C-保護アミノ酸におけるアミノ酸又はC-保護ペプチドのN末端残基におけるアミノ酸が、N-置換アミノ酸以外のα-アミノ酸である、[1]乃至[11]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
[13]
工程(2)が、工程(1)で得られた生成物と、C-保護ペプチドとを混合する工程である、[1]乃至[12]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
[14]
N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのN末端保護基が、カルバメート系保護基である、[1]乃至[13]のいずれか1つに記載のペプチドの製造方法。
[15]
カルバメート系保護基が、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である、[14]に記載のペプチドの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、工業的に適用可能な試薬を用い、高収率で目的とするペプチドを得ることができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書における「n-」はノルマル、「s-」はセカンダリー、「t-」及び「tert-」はターシャリー、「Me」はメチル、「Et」はエチル、「Bu」はブチル、「Bn」はベンジル、「Boc」はt-ブトキシカルボニル、「Cbz」はベンジルオキシカルボニル、「Fmoc」は9-フルオレニルメトキシカルボニル、「Trt」はトリチル、「NMP」はN-メチルピロリドンを意味する。
【0010】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0011】
「アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖状の、飽和脂肪族炭化水素の1価の基を意味する。「C1-6アルキル基」とは、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基などが挙げられる。
【0012】
「C1-40アルキル基」とは、炭素数が1乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基(以下、2,3-ジヒドロフィチル基ということもある。)などが挙げられる。
【0013】
「C3-10アルキル基」とは、炭素数が3乃至10個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、オクチル基、デシル基、2,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルヘキシル基、2,2,3,4-テトラメチルヘキシル基、4-エチル-2,2-ジメチルヘキシル基などが挙げられる。
【0014】
「シクロアルキル基」とは、環状の飽和脂肪族炭化水素の1価の基を意味する。「C3-6シクロアルキル基」とは、炭素数が3乃至6個であるシクロアルキル基を意味し、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0015】
「アルケニル基」とは、二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素の1価の基を意味する。「C2-6アルケニル基」とは、炭素数が2乃至6個であるアルケニル基を意味し、具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基などが挙げられる。
【0016】
「アルキニル基」とは、三重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素の1価の基を意味する。「C2-6アルキニル基」とは、炭素数が2乃至6個であるアルキニル基を意味し、具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基などが挙げられる。
【0017】
「アラルキル基」とは、芳香族炭化水素を置換基として有するアルキル基を意味する。「C7-14アラルキル基」とは、炭素数が7乃至14個であるアラルキル基を意味し、具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、1-ナフチルプロピル基などが挙げられる。
【0018】
「C6-14アリール基」とは、炭素数が6乃至14個である芳香族炭化水素基を意味し、その具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、ビフェニル基などが挙げられる。
【0019】
「C6-14ハロアリール基」とは、1つ以上のハロゲン原子で置換された炭素数が6乃至14個である芳香族炭化水素基を意味し、その具体例としては、4-クロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、5-フルオロ-1-ナフチル基、6-ブロモ-2-ナフチル基、6,7-ジヨード-1-アントリル基、10-ブロモ-9-アントリル基、4’-クロロ-(1,1’-ビフェニル)-2-イル基などが挙げられる。
【0020】
「C6-14アリールオキシ基」とは、炭素数が6乃至14個であるアリールオキシ基を意味し、具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、2-アントリオキシ基、9-アントリオキシ基、ビフェニルオキシ基などが挙げられる。
【0021】
「5-10員複素環基」とは、環を構成する原子の数が5乃至10個であり、かつ環を構成する原子中に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より独立して選ばれる1乃至4個のヘテロ原子を含有する単環系又は縮合環系の複素環基を意味する。この複素環基は飽和、部分不飽和、不飽和のいずれであってもよく、具体例としては、ピロリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、ピペリジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、アゼパニル基、オキセパニル基、チエパニル基、アゼピニル基、オキセピニル基、チエピニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリニル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、クロメニル基、イソクロメニル基などが挙げられる。
【0022】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0023】
「C1-40アルコキシ基」とは、炭素数が1乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ドコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基、テトラコンチルオキシ基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシルオキシ基(以下、2,3-ジヒドロフィチルオキシ基ということもある。)などが挙げられる。
【0024】
「C3-6シクロアルコキシ基」とは、炭素数が3乃至6個であるシクロアルキルオキシ基を意味し、具体例としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0025】
「モノC1-6アルキルアミノ基」とは、1個の前記「C1-6アルキル基」がアミノ基に結合した基を意味し、具体例としては、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノ-n-プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、モノ-n-ブチルアミノ基、モノイソブチルアミノ基、モノ-t-ブチルアミノ基、モノ-n-ペンチルアミノ基、モノ-n-ヘキシルアミノ基などが挙げられる。
【0026】
「ジC1-6アルキルアミノ基」とは、同一又は異なる2個の前記「C1-6アルキル基」がアミノ基に結合した基を意味し、具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジ-n-ペンチルアミノ基、ジ-n-ヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-n-プロピルアミノ基、N-イソプロピル-N-メチルアミノ基、N-n-ブチル-N-メチルアミノ基、N-イソブチル-N-メチルアミノ基、N-t-ブチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-n-ペンチルアミノ基、N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ基、N-エチル-N-n-プロピルアミノ基、N-エチル-N-イソプロピルアミノ基、N-n-ブチル-N-エチルアミノ基、N-エチル-N-イソブチルアミノ基、N-t-ブチル-N-エチルアミノ基、N-エチル-N-n-ペンチルアミノ基、N-エチル-N-n-ヘキシルアミノ基などが挙げられる。
【0027】
「C1-6アルコキシカルボニル基」とは、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシカルボニル基を意味し、具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0028】
「トリC1-6アルキルシリル基」とは、同一又は異なる3個の前記「C1-6アルキル基」がシリル基に結合した基を意味し、具体例としては、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ジ-t-ブチルイソブチルシリル基などが挙げられる。
【0029】
「トリC1-6アルキルシリルオキシ基」とは、同一又は異なる3個の前記「C1-6アルキル基」がシリルオキシ基に結合した基を意味し、具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、t-ブチルジメチルシリルオキシ基、ジ-t-ブチルイソブチルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0030】
「ビシクロアルキル基」とは、2個の橋頭炭素を含み、かつ2個の環を有する飽和脂肪族炭化水素の一価の基を意味し、具体例としては、オクタヒドロインデン-3-イル基、オクタヒドロナフタレン-4-イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル基又はビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基などが挙げられる。また「C5-10ビシクロアルキル基」とは、炭素数が5乃至10個であり、「C5-7ビシクロアルキル基」とは、炭素数が5乃至7個である、ビシクロアルキル基を意味する。
【0031】
「トリシクロアルキル基」とは、少なくとも3個の橋頭炭素を含み、かつ3個の環を有する飽和脂肪族炭化水素の一価の基を意味し、具体例としては、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-1-イル(アダマンタン-1-イル)基又はトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン-2-イル(アダマンタン-2-イル)基などが挙げられる。また「C5-15トリシクロアルキル基」とは、炭素数が5乃至15個であり、「C7-15トリシクロアルキル基」とは、炭素数が7乃至15個である、トリシクロアルキル基を意味する。
【0032】
「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基等が挙げられ、具体例としては、C1-40アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C7-14アラルキル基などが挙げられる。
【0033】
「3級又は4級炭素原子を1つ以上含む脂肪族炭化水素基」とは、脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の内、1つ以上が3級又は4級炭素原子である基を意味し、具体例としては、2-メチルブタン-2-イル基、3-メチルブタン-2-イル基、3,3-ジメチルブタン-2-イル基、t-ブチル基、3-ペンチル基、2,2,4-トリメチルペンタン-3-イル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンタン-3-イル基、4-エチル-2,2-ジメチルヘキサン-3-イル基、3-ヘプチル基、2,2,4,8,10,10-ヘキサメチルウンデカン-5-イル基、3-メチルシクロブチル基、2-メチルシクロペンチル基、4-イソプロピルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0034】
「3級又は4級炭素原子を1つ以上含むC3-10アルキル基」とは、C3-10アルキル基を構成する炭素原子の内、1つ以上が3級又は4級炭素原子である基を意味し、具体例としては、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルヘキシル基、2,2,3,4-テトラメチルヘキシル基、2,2,4,4-テトラメチルペンチル基、4-エチル-2,2-ジメチルヘキシル基などが挙げられる。
【0035】
「アミノ酸側鎖の反応性官能基」とは、アミノ酸側鎖に存在し、他の基と反応して共有結合を形成し得る基を意味し、具体例としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、チオール基などが挙げられる。これらの官能基を側鎖に含有するアミノ酸としては、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、リシン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジンなどが挙げられる。
また、「アミノ酸側鎖の反応性官能基が保護されている」とは、上記の反応性官能基に、ペプチド化学等で一般的に用いられる保護基が導入されていることを意味する。
【0036】
「置換基を有してもよい」とは、無置換であるか、又は化学的に許容される任意の数の任意の置換基で置換されていることを意味する。
【0037】
「置換基を有している」とは、化学的に許容される任意の数の任意の置換基で置換されていることを意味する。
【0038】
上記の「任意の置換基」は、本発明が対象とする反応に悪影響を与えない置換基であれば特に種類は限定されない。
【0039】
「置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基」における「置換基」としては、例えば、C6-14アリール基、C6-14アリールオキシ基、5-10員複素環基、ヒドロキシ基、C1-40アルコキシ基、C3-6シクロアルコキシ基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、アミノ基、モノC1-6アルキルアミノ基、N-アセチルアミノ基、ジC1-6アルキルアミノ基、ハロゲン原子、C1-6アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、N-メチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基、トリC1-6アルキルシリル基、トリC1-6アルキルシリルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基等が挙げられる。
【0040】
「N-保護アミノ酸」及び「N-保護ペプチド」とは、アミノ酸主鎖に存在するアミノ基又はペプチドN末端のアミノ基が保護されており、アミノ酸主鎖に存在するカルボキシ基又はペプチドC末端のカルボキシ基が無保護である、アミノ酸又はペプチドを意味する。
【0041】
「C-保護アミノ酸」及び「C-保護ペプチド」とは、アミノ酸主鎖に存在するカルボキシ基又はペプチドC末端のカルボキシ基が保護されており、アミノ酸主鎖に存在するアミノ基又はペプチドN末端のアミノ基が無保護である、アミノ酸又はペプチドを意味する。
【0042】
本発明で使用されるアミノ酸には、N-置換アミノ酸も含まれる。
【0043】
「N-置換アミノ酸」とは、アミノ酸主鎖に存在するアミノ基に置換基が一つ導入されたアミノ酸を意味し、具体例としては、N-C1-6アルキルアミノ酸、N-C2-6アルケニルアミノ酸、N-C2-6アルキニルアミノ酸、N-C6-14アリールアミノ酸、N-C1-6アルコキシアミノ酸(該C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C6-14アリール及びC1-6アルコキシは、置換基を有してもよく、そのような置換基の例は、上記「置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基」における「置換基」の例と同じである)などが挙げられる。
【0044】
上記N-C1-6アルキルアミノ酸は、アミノ基に、好ましくはC6-14アリール基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルコキシカルボニル基、ジC1-6アルキルアミノ基、5-10員複素環基又はトリC1-6アルキルシリル基を有してもよいC1-6アルキル基が一つ導入されたアミノ酸であり、より好ましくはC6-14アリール基、C1-6アルコキシ基、又はC1-6アルコキシカルボニル基を有してもよいC1-6アルキル基が一つ導入されたアミノ酸であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基又はベンジル基が一つ導入されたアミノ酸である。
【0045】
本発明で使用される「アミノ酸由来の基」は、アミノ酸の主鎖に存在する1級又は2級アミノ基の窒素原子上から水素原子が除かれ、且つ主鎖に存在するカルボキシ基からヒドロキシ基が除かれた2価の基を意味する。
【0046】
本発明で使用される「ペプチド由来の基」は、N末端を構成するアミノ酸の1級又は2級アミノ基の窒素原子上から水素原子が除かれ、且つC末端を構成するアミノ酸のカルボキシ基からヒドロキシ基が除かれた2価の基を意味する。
【0047】
α-アミノ酸の立体構造は特に限定されないが、好ましくはL体である。
【0048】
本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物及び特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物及び方法論を記載及び開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0049】
(本発明のペプチドの製造法の具体的な説明)
以下に本発明のペプチド製造法は各工程(1)乃至(5)として記載される単位工程を、すべて又は適宜組み合わせることで行うことができる。
なお、本具体的な説明は以下に基づき説明される。
(a)工程(1)乃至(5)の記載におけるR1、R2及びR3は、上記と同義である。
(b)反応の具体的な条件は、本発明のペプチドの製造が達成される限りにおいて特に制限されない。各反応における好ましい条件は適宜詳述される。
(c)各反応は、必要に応じて溶媒中で行うことができ、好ましくは溶媒中で行う。各反応で記載される溶媒は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0050】
工程(1)
本工程は、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドをカルボン酸ハロゲン化物と混合する工程である。本工程は、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのC末端をカルボン酸ハロゲン化物で活性化する工程である。本発明の一態様では、式(III)P1-A1-OH(式中、P1はN末端保護基であり、A1は、アミノ酸由来の基又はペプチド由来の基を表す。)で表されるN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドを、カルボン酸ハロゲン化物と混合する工程である。
【0051】
カルボン酸ハロゲン化物は、下記式(I)で表される。
【0052】
【化3】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、R
1、R
2及びR
3は、互いに独立して、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基を表し、R
1、R
2及びR
3中の炭素原子の総数が3乃至40である。)
【0053】
式(I)で表されるカルボン酸ハロゲン化物は、好ましくは、R
1、R
2及びR
3の内、2つ以上が互いに独立して、3級又は4級炭素原子を1つ以上含む脂肪族炭化水素基であるカルボン酸ハロゲン化物であり、より好ましくは、R
1がメチル基であり、R
2及びR
3が互いに独立して、3級又は4級炭素原子を1つ以上含む脂肪族炭化水素基であるカルボン酸ハロゲン化物であり、更に好ましくは、R
1がメチル基であり、R
2及びR
3が互いに独立して、3級又は4級炭素原子を1つ以上含むC
3-10アルキル基であるカルボン酸ハロゲン化物であり、特に好ましくは、下記式(II)に示す化合物である。
【化4】
【0054】
式(I)及び式(II)のXで示されるハロゲン原子は、ハロゲン原子であれば特に制限されないが、好ましくは塩素原子又は臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0055】
カルボン酸ハロゲン化物の使用量は、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドに対して、好ましくは0.2当量乃至50当量、より好ましくは0.5当量乃至20当量、さらに好ましくは0.8当量乃至5当量である。
【0056】
式(III)のP1で示されるN末端保護基は特に制限されないが、その具体例としては、カルバメート系保護基(9-フルオレニルメトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、2-(p-ビフェニル)イソプロピルオキシカルボニル基等)、アミド系保護基(アセチル基、トリフルオロアセチル基等)、イミド系保護基(フタロイル基等)、スルホンアミド系保護基(p-トルエンスルホニル基、2-ニトロベンゼンスルホニル基等)、ベンジル基等であり、好ましくは9-フルオレニルメトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基であり、より好ましくは9-フルオレニルメトキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基である。
【0057】
式(III)で示されるN-保護アミノ酸におけるアミノ酸、及びN-保護ペプチドのC末端残基におけるアミノ酸は、特に制限されないが、好ましくはα-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸又はδ-アミノ酸であり、より好ましくはα-アミノ酸又はβ-アミノ酸であり、更に好ましくはα-アミノ酸であり、より更に好ましくはグリシン以外のα-アミノ酸であり、特に好ましくはバリン、フェニルアラニン、トレオニン、ロイシン、トリプトファン、セリン、システイン、アスパラギン酸又はチロシンである。なおこれらのアミノ酸に2以上のアミノ基が存在する場合(例えば、アルギニン、リシン等)、2以上のカルボキシ基が存在する場合(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、又は反応性官能基が存在する場合(例えば、システイン、セリン等)、ペプチドの形成に関与しないアミノ酸の側鎖に存在する反応性官能基は、保護されていても良い。
【0058】
式(III)において、A1がペプチド由来の基である場合、その基に含まれるアミノ酸残基の数は特に制限されないが、好ましくは2乃至40であり、より好ましくは2乃至20である。
【0059】
本工程は、必要に応じて、塩基を添加して実施することができる。
【0060】
本工程で使用する塩基は、特に制限は無いが、その例としては、脂肪族アミン(例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン)、芳香族アミン(例えば、ピリジン、イミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)、アミジン(例えば、ジアザビシクロウンデセン)、アルカリ金属塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム)等が挙げられる。好ましくは、脂肪族アミンであり、より好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン又はN-メチルモルホリンである。
【0061】
本工程で使用する塩基の使用量は、カルボン酸ハロゲン化物に対して、好ましくは0.2当量乃至50当量、より好ましくは0.5当量乃至20当量、さらに好ましくは0.8当量乃至5当量である。
【0062】
本工程で使用する溶媒は、活性化反応を妨げない限り特に限定されないが、その例としては、含ハロゲン炭化水素溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、トルエン、キシレン)、エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル)、アミド溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド)、ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル)、ケトン溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、脂肪族炭化水素溶媒(例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン)、エステル溶媒(例えば、酢酸エチル)等が挙げられる。好ましくはニトリル溶媒、アミド溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくはアセトニトリル、テトラヒドロフラン又はN,N-ジメチルアセトアミドである。
【0063】
溶媒の使用量は、カルボン酸ハロゲン化物に対して、好ましくは100質量倍以下であり、より好ましくは1質量倍乃至50質量倍であり、さらに好ましくは3質量倍乃至20質量倍である。
【0064】
本工程は必要に応じて、油浴や冷却浴を用いて温度を制御してもよく、温度は、特に制限は無いが、-40℃から混合物の還流温度までが好ましく、より好ましくは-20℃乃至50℃であり、さらに好ましくは-10℃乃至30℃である。
【0065】
本工程により、C末端が活性化されたN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドが形成される。したがって、本工程により得られる生成物は、C末端が活性化されたN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチド、あるいはそれらのいずれかを含む混合物を意味する。このようにして得られたC末端が活性化されたN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドは、精製工程を経ることなく、反応液のまま、又は(粗)精製物として単離して、C-保護ペプチドと混合してもよい。
【0066】
工程(2)
本工程は、工程(1)で得られた生成物と、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを混合する工程である。本工程は、工程(1)で得られたC末端が活性化されたN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドと、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを混合する工程である。本発明の一態様では、工程(1)で得られたC末端が活性化されたN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドと、式(IV)H-A2-OP2(A2は、アミノ酸由来の基又はペプチド由来の基を表し、P2はC末端保護基である。)で表されるC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを混合する工程である。
【0067】
式(IV)で示されるC-保護アミノ酸におけるアミノ酸、及びC-保護ペプチドのN末端残基におけるアミノ酸は、特に制限されないが、好ましくはα-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸又はδ-アミノ酸であり、より好ましくはα-アミノ酸又はβ-アミノ酸であり、更に好ましくはα-アミノ酸であり、より更に好ましくはフェニルアラニン、グリシン、バリン、プロリン、ロイシン又はオルニチンである。なお、これらのアミノ酸に2以上のアミノ基が存在する場合(例えば、アルギニン、リシン等)、2以上のカルボキシ基が存在する場合(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、又は反応性官能基が存在する場合(例えば、システイン、セリン等)、ペプチドの形成に関与しないアミノ酸側鎖の反応性官能基は、保護されていても良い。
【0068】
式(IV)において、A2がペプチド由来の基である場合、その基に含まれるアミノ酸残基の数は特に制限されないが、好ましくは2乃至40であり、より好ましくは2乃至20である。
【0069】
式(IV)のP2で示されるC末端保護基は、アミノ酸又はペプチドの合成で一般的に使用される保護基であれば特に制限されないが、例えばメチル基、エチル基、t-ブチル基、ベンジル基、アリル基、シリル基などが挙げられる。
【0070】
式(IV)において、P2は固相担体由来の基であってもよく、態様は特に制限されないが、直接又はリンカーを介して結合する。固相担体は特に制限されないが、例えばニトロセルロース、アガロースビーズ、修飾セルロース繊維、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリスチレン又はポリアクリルアミド等の合成樹脂が挙げられる。リンカーとしては、特に制限されないが、例えば2-クロロトリチル(2-ClTrt)、4-(ヒドロキシメチル)安息香酸、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-2-イルメタノール、4-(ヒドロキシメチル)フェノキシ酢酸、3-ヒドロキシ-キサンテン-9-オン、N-メトキシ-3-アミノプロピオン酸、3-メトキシ-2-ニトロピリジン等が挙げられる。
【0071】
本工程で使用する溶媒は、特に限定されないが、その例としては、含ハロゲン炭化水素溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、トルエン、キシレン)、エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル)、アミド溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル)等が挙げられる。好ましくはニトリル溶媒、アミド溶媒又はエーテル溶媒であり、より好ましくはアセトニトリル、テトラヒドロフラン又はN,N-ジメチルアセトアミドである。
【0072】
溶媒の使用量は、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドに対して、好ましくは100質量倍以下であり、より好ましくは1質量倍乃至50質量倍であり、さらに好ましくは3質量倍乃至20質量倍である。
【0073】
得られた混合物は、必要に応じて、油浴や冷却浴を用いて温度を制御する。混合物の温度は、特に制限は無いが、-40℃から反応混合物の還流温度までが好ましく、より好ましくは-20℃乃至50℃であり、さらに好ましくは-10℃乃至30℃である。
【0074】
本工程で使用するC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドが塩になっている場合、有機アミンを添加することで、フリー体に変換することができる。
【0075】
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドの塩をフリー体に変換する際に使用する有機アミンは、特に制限は無いが、その例としては脂肪族アミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン)、芳香族アミン(例えば、ピリジン、イミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)等が挙げられる。好ましくは、脂肪族アミンであり、より好ましくはトリエチルアミン又はN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
【0076】
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドの塩をフリー体に変換する際に使用する有機アミンの使用量は、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドに対して、好ましくは0.01当量乃至50当量、より好ましくは0.1当量乃至20当量、さらに好ましくは0.2当量乃至5当量である。
【0077】
また、本発明のペプチドの製造方法において、工程(2)で得られたペプチドに対して、下記工程(3)乃至(5)を所望の回数繰返すことにより、ペプチド鎖をさらに伸長することができる。
(3)工程(2)又は(5)で得られたペプチドのN末端の保護基を除去する工程。
(4)N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドと式(I)で表されるカルボン酸ハロゲン化物とを混合する工程。
(5)工程(4)で得られた生成物と、工程(3)で得られた生成物とを混合する工程。
工程(4)及び(5)は、上記工程(1)及び(2)と同様の操作、又は一般的なペプチド合成反応により実施することができる。
【0078】
工程(4)で使用される「N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチド」は、工程(1)で使用されるものと同一であっても、異なっていてもよい。同様に、工程(4)で使用される「式(I)で表されるカルボン酸ハロゲン化物」は、工程(1)で使用されるものと同一であっても、異なっていてもよい。
【0079】
本発明のペプチド製造法においては、次工程の反応に影響を及ぼさない範囲で工程(1)乃至(5)で得られるペプチドの精製を適宜省略することが可能である。
【0080】
工程(3)
本工程は、工程(2)又は工程(5)で得られたペプチドから、N末端保護基を除去する工程である。
【0081】
本工程で使用する脱保護条件は、N末端保護基の種類により適宜選択されるが、例えば、9-フルオレニルメトキシカルボニル基の場合は、2級又は3級アミン(例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリエチルアミン)で処理することにより行なわれ、t-ブトキシカルボニル基の場合は、酸(例えば、トリフルオロ酢酸、塩酸、ルイス酸)で処理することにより行われ、ベンジルオキシカルボニル基やアリルオキシカルボニル基の場合は、中性で、例えば金属触媒の存在下、水素添加することにより行われる。
【0082】
各反応において、反応基質がヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基又はカルボニル基を有する場合(特にアミノ酸又はペプチドの側鎖に官能基を有する場合)、これらの基にペプチド化学等で一般的に用いられるような保護基が導入されていてもよく、反応後に必要に応じて保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0083】
保護及び脱保護は、一般的に知られている保護基を用いて、保護・脱保護反応(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版(Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth edition)、グリーン(T.W.Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(2006年)など参照)を行うことにより実施することができる。
【実施例】
【0084】
以下に参考例、比較例及び実施例としての合成例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0085】
本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
【0086】
本明細書において、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタノイル基をISTAと、ピバロイル基をPivと表記する場合がある。
【0087】
なお、合成例中、「(v/v)」は(体積/体積)を、「M」はmol/Lを意味する。
【0088】
ISTA-Cl、ISTA-Brの安全性評価は、METTLER TOLED社製 示差走査熱量測定装置を用い、下記に示す<測定条件>にて測定した。
<測定条件>
昇温域:30-300 ℃
昇温速度:10℃ /min
使用パン:スイスインスティチュート社製 Auパン M20
【0089】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析は、特に記載が無い場合は、Waters社製ACQUITY UPLC H-Class/QDa、Waters社製ACQUITY UPLC H-Class/SQD2、又はShimadzu社製LC-20AD/Triple Tof5600のいずれかを用いて測定した。
【0090】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析の記載において、ESI+はエレクトロスプレーイオン化法のポジティブモードであり、M+Hはプロトン付加体を意味する。
【0091】
以下、特に記載のない場合、各生成物及び副生成物の定量収率は、高速液体クロマトグラフィーを用いた分析<分析条件1>によって算出した。
<分析条件1>
高速液体クロマトグラフィー:SHIMADZU製 LC-20
カラム:Agilent製Poroshell 120 EC-C18(2.7 μm、3.0×100 mm)
カラムオーブン温度:40℃
溶離液:0.025 vol% トリフルオロ酢酸、アセトニトリル: 0.025 vol%トリフルオロ酢酸水溶液
95:5(0-12分)、95:5(12分-18分)、10:90(18.1分-23分)(v/v)
溶離液速度:0.7mL/分
検出波長:210nm
【0092】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製は、特に記述がない場合は、山善製Hi-Flashカラム、バイオタージ製SNAP Ultra Silica Cartridge、メルク製シリカゲル60又は富士シリシア化学製PSQ60Bのいずれかを用いた。
【0093】
以下の参考例、実施例において収率又は定量収率が100%を超える場合がある。これらは、いずれも測定誤差、原料又は生成物の純度の影響、もしくはその他の技術常識に基づく要因により100%を超えたものである。以下の実施例においては、収率が100%を超えた場合の原因について、個別に言及はしないが、当業者であれば、これらの実施例の科学的妥当性を十分に理解しうる。
【0094】
以下の、参考例、合成例において、目的物と副生成物の定量収率を示す場合があるが、これらは反応の結果生じるものである。また、定量収率を示す際に、副生成物の収率に関して特に記載がない場合には、副生成物が生じなかったことを意味する。
【0095】
参考例1:ISTA-Clの示差走査熱量測定による安全性評価
ISTA-Cl(16.8mg)をAuパンに入れ、封止し、熱量測定を実施した。発熱ピークは確認されなかった。これにより、ISTA-Clは自己分解による発熱性が無いことが明らかとなった。なお、COMU、イソブチルクロロホルメートの発熱量は、それぞれ773.17J/g、467.31J/gである(非特許文献4)。
【0096】
参考例2:ISTA-Brの示差走査熱量測定による安全性評価
ISTA-Br(14.9mg)をAuパンに入れ、封止し、熱量測定を実施した。発熱ピークは確認されなかった。これにより、ISTA-Brは自己分解による発熱性が無いことが明らかとなった。
【0097】
参考例3:ISTA-Brの合成
【化5】
2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタノイックアシッド(4.0g、14.06mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(0.031g、0.422mmol)をキシレン(4.0mL)と混合させ、0℃にてチオニルブロミド(4.8g、21.15mmol)を加え、室温に昇温し、1時間撹拌した。得られた反応液に対して減圧蒸留を行い、2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタノイルブロミド(4.31g、収率88%)を透明な液体として得た。
【0098】
参考例4:Fmoc-Val-Phe-OEtの合成
【化6】
【0099】
Fmoc-Val-OH(0.177g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(1.8mL)と混合させ、0℃にてピバロイルクロリド(0.058g、0.479mmol)を加え1時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)、酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Val-Phe-OEt(目的物)の定量収率は79%であり、Piv-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は21%であった。
Piv-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;278.0(M+H)+
【0100】
参考例5:Cbz-Val-Phe-OEtの合成
【化7】
【0101】
Cbz-Val-OH(0.131g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(1.3mL)と混合させ、0℃にてピバロイルクロリド(0.058g、0.479mmol)を加え1時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のCbz-Val-Phe-OEt(目的物)の定量収率は77%であり、Piv-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は22%であった。
【0102】
参考例6:Boc-Val-Phe-OEtの合成
【化8】
【0103】
Boc-Val-OH(0.114g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(1.1mL)と混合させ、0℃にてピバロイルクロリド(0.058g、0.479mmol)を加え1時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のBoc-Val-Phe-OEt(目的物)の定量収率は79%であり、Piv-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は18%であった。
【0104】
参考例7:Fmoc-Trp(Boc)-Ala-OBnの合成
【化9】
【0105】
Fmoc-Trp(Boc)-OH(0.293g、0.556mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.078g、0.602mmol)をアセトニトリル(2.9mL)と混合させ、0℃にてピバロイルクロリド(0.061g、0.509mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-OBn(0.1g、0.463mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.072g、0.556mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Trp(Boc)-Ala-OBn(目的物)の定量収率は84%であり、Piv-Ala-OBn(副生成物)の定量収率は10%であった。
Piv-Ala-OBn MASS(ESI+)m/z;264.9(M+H)+
【0106】
参考例8:Fmoc-Val-Phe-Phe-OEtの合成
【化10】
【0107】
Fmoc-Val-OH(0.118g、0.348mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.048g、0.377mmol)をアセトニトリル(1.2mL)と混合させ、0℃にてピバロイルクロリド(0.039g、0.32mmol)を加え1時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-Phe-OEt(0.1g、0.29mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.045g、0.348mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(3.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Val-Phe-Phe-OEt(目的物)の定量収率は85%であり、Piv-Phe-Phe-OEt(副生成物)は18%であった。
Piv-Phe-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;425.2(M+H)+
【0108】
参考例9:Fmoc-Trp(Boc)-Ala-Phe-OEtの合成
【化11】
【0109】
Fmoc-Trp(Boc)-OH(0.209g、0.40mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.055g、0.43mmol)をアセトニトリル(2.1mL)と混合させ、0℃にてピバロイルクロリド(0.044g、0.36mmol)を加え1時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-Phe-OEt(0.1g、0.33mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.051g、0.40mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(3.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Trp(Boc)-Ala-Phe-OEt(目的物)の定量収率は69%であり、Piv-Ala-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は26%であった。
Piv-Ala-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;349.1(M+H)+
【0110】
合成例1:Fmoc-Val-Phe-OEtの合成
【化12】
【0111】
Fmoc-Val-OH(0.177g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(1.8mL)と混合させ、0℃にて2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタノイルクロリド(ISTA-Cl)の50質量%トルエン溶液(0.29g、0.479mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)、酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Val-Phe-OEt(目的物)の定量収率は95%であり、ISTA-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は1%であった。
Fmoc-Val-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;515.7(M+H)+
ISTA-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;461.1(M+H)+
【0112】
合成例2:Fmoc-Val-Phe-OEtの合成
【化13】
【0113】
Fmoc-Val-OH(0.207g、0.610mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.084g、0.650mmol)をアセトニトリル(1mL)と混合させ、0℃にて2-(4,4-ジメチルペンタン-2-イル)-5,7,7-トリメチルオクタノイルブロミド(ISTA-Br)(0.197g、0.566)とトルエン(0.197g)を混合させた溶液を加え1時間撹拌した。この反応液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.526mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)、酢酸エチル(6.0g)で希釈後、10質量%硫酸水素カリウム水溶液(1.0g)、水(2.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(3.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Val-Phe-OEt(目的物)の定量収率は94%であり、ISTA-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は1%であった。
Fmoc-Val-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;515.7(M+H)+
ISTA-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;461.1(M+H)+
【0114】
合成例3:Cbz-Val-Phe-OEtの合成
【化14】
【0115】
Cbz-Val-OH(0.131g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(1.3mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.29g、0.479mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のCbz-Val-Phe-OEt(目的物)の定量収率は95%であり、ISTA-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は1%であった。
Cbz-Val-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;427.6(M+H)+
【0116】
合成例4:Boc-Val-Phe-OEtの合成
【化15】
【0117】
Boc-Val-OH(0.114g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(1.1mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.29g、0.479mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のBoc-Val-Phe-OEt(目的物)の定量収率は96%であり、ISTA-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は1%であった。
Boc-Val-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;393.5(M+H)+
【0118】
合成例5:Fmoc-Phe-Phe-OEtの合成
【化16】
【0119】
Fmoc-Phe-OH(0.202g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(2.0mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.29g、0.479mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)、酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Phe-Phe-OEt(目的物)の定量収率は101%であった。
Fmoc-Phe-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;563.6(M+H)+
【0120】
合成例6:Cbz-Phe-Phe-OEtの合成
【化17】
【0121】
Cbz-Phe-OH(0.156g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(1.6mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.29g、0.479mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のCbz-Phe-Phe-OEt(目的物)の定量収率は99%であった。
Cbz-Phe-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;563.6(M+H)+
【0122】
合成例7:Fmoc-Phe-MePhe-OMeの合成
【化18】
【0123】
Fmoc-Phe-OH(0.202g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(2.0mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.29g、0.479mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-MePhe-OMe(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Phe-MePhe-OMe(目的物)の定量収率は91%であった。
Fmoc-Phe-MePhe-OMe MASS(ESI+)m/z;563.7(M+H)+
【0124】
合成例8:Fmoc-Leu-Gly-OBnの合成
【化19】
【0125】
Fmoc-Leu-OH(0.210g、0.60mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.083g、0.65mmol)をアセトニトリル(2.1mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.330g、0.55mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Gly-OBn(0.1g、0.50mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.077g、0.60mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Leu-Gly-OBn(目的物)の定量収率は98%であり、Piv-Gly-OBn(副生成物)の定量収率は1%であった。
Fmoc-Leu-Gly-OBn MASS(ESI+)m/z;501.6(M+H)+
ISTA-Gly-OBn MASS(ESI+)m/z;432.7(M+H)+
【0126】
合成例9:Fmoc-Trp(Boc)-Gly-OBnの合成
【化20】
【0127】
Fmoc-Trp(Boc)-OH(0.313g、0.60mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.083g、0.65mmol)をアセトニトリル(3.1mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.330g、0.55mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Gly-OBn(0.1g、0.50mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.077g、0.60mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Trp(Boc)-Gly-OBn(目的物)の定量収率は93%であり、ISTA-Gly-OBn(副生成物)の定量収率は2%であった。
Fmoc-Trp-Gly-OBn MASS(ESI+)m/z;574.3(M+H)+ (脱Boc体として検出)
【0128】
合成例10:Fmoc-Leu-Ala-OBnの合成
【化21】
【0129】
Fmoc-Leu-OH(0.197g、0.556mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.078g、0.602mmol)をアセトニトリル(2.0mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.309g、0.509mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-OBn(0.1g、0.463mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.072g、0.556mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Leu-Ala-OBn(目的物)の定量収率は98%であった。
Fmoc-Leu-Ala-OBn MASS(ESI+)m/z;515.7(M+H)+
【0130】
合成例11:Fmoc-Trp(Boc)-Ala-OBnの合成
【化22】
【0131】
Fmoc-Trp(Boc)-OH(0.293g、0.556mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.078g、0.602mmol)をアセトニトリル(2.9mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.309g、0.509mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-OBn(0.1g、0.463mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.072g、0.556mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Trp(Boc)-Ala-OBn(目的物)の定量収率は96%であり、ISTA-Ala-OBn(副生成物)の定量収率は1%であった。
Fmoc-Trp(Boc)-Ala-OBn MASS(ESI+)m/z;688.4(M+H)+
ISTA-Ala-OBn MASS(ESI+)m/z;446.3(M+H)+
【0132】
合成例12:Fmoc-Ser(tBu)-Ala-OBnの合成
【化23】
【0133】
Fmoc-Ser(tBu)-OH(0.213g、0.556mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.078g、0.602mmol)をアセトニトリル(2.1mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.309g、0.509mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-OBn(0.1g、0.463mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.072g、0.556mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Ser(tBu)-Ala-OBn(目的物)の定量収率は97%であった。
Fmoc-Ser(tBu)-Ala-OBn MASS(ESI+)m/z;545.3(M+H)+
【0134】
合成例13:Fmoc-Cys(Trt)-Ala-OBnの合成
【化24】
【0135】
Fmoc-Cys(Trt)-OH(0.326g、0.556mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.078g、0.602mmol)をアセトニトリル(3.3mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.309g、0.509mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-OBn(0.1g、0.463mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.072g、0.556mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Cys(Trt)-Ala-OBn(目的物)の定量収率は96%であった。
【0136】
合成例14:Fmoc-Thr(tBu)-Ala-OBnの合成
【化25】
【0137】
Fmoc-Thr(tBu)-OH(0.221g、0.556mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.078g、0.602mmol)をアセトニトリル(2.2mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.309g、0.509mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-OBn(0.1g、0.463mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.072g、0.556mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Thr(tBu)-Ala-OBn(目的物)の定量収率は92%であった。
Fmoc-Thr(tBu)-Ala-OBn MASS(ESI+)m/z;559.4(M+H)+
【0138】
合成例15:Fmoc-Asp(tBu)-Phe-OEtの合成
【化26】
【0139】
Fmoc-Asp(tBu)-OH(0.215g、0.522mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.073g、0.566mmol)をアセトニトリル(2.2mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.29g、0.479mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.1g、0.435mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.068g、0.522mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Asp(tBu)-Phe-OEt(目的物)の定量収率は99%であり、ISTA-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は1%であった。
Fmoc-Asp(tBu)-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;587.7(M+H)+
【0140】
合成例16:Boc-Gly-Pro-OBnの合成
【化27】
【0141】
Boc-Gly-OH(0.086g、0.50mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.070g、0.538mmol)をアセトニトリル(0.9mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.27g、0.456mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Pro-OBn(0.1g、0.414mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.053g、0.50mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のBoc-Gly-Pro-OBn(目的物)の定量収率は91%であった。
Boc-Gly-Pro-OBn MASS(ESI+)m/z;363.1(M+H)+
【0142】
合成例17:Boc-Asp(tBu)-Leu-OMeの合成
【化28】
【0143】
Boc-Asp(tBu)-OH(0.191g、0.66mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.092g、0.715mmol)をアセトニトリル(2.0mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.367g、0.61mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Leu-OMe(0.1g、0.55mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.085g、0.66mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のBoc-Asp(tBu)-Leu-OMe(目的物)の定量収率は99%であった。
Boc-Asp(tBu)-Leu-OMe MASS(ESI+)m/z;417.1(M+H)+
【0144】
合成例18:Boc-Tyr(tBu)-Orn(Boc)-OMeの合成
【化29】
【0145】
Boc-Tyr(tBu)-OH(0.142g、0.42mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.059g、0.46mmol)をアセトニトリル(1.4mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.233g、0.39mmol)を加え2時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Orn(Boc)-OMe(0.1g、0.35mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.054g、0.42mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(2.0g)で分液後、得られた有機層のBoc-Tyr(tBu)-Orn(Boc)-OMe(目的物)の定量収率は99%であった。
Boc-Tyr(tBu)-Orn(Boc)-OMe MASS(ESI+)m/z;566.4(M+H)+
【0146】
合成例19:Fmoc-Val-Phe-Phe-OEtの合成
【化30】
【0147】
Fmoc-Val-OH(0.118g、0.348mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.048g、0.377mmol)をアセトニトリル(1.2mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.193g、0.32mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-Phe-OEt(0.1g、0.29mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.045g、0.348mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(3.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Val-Phe-Phe-OEt(目的物)の定量収率は96%であり、ISTA-Phe-Phe-OEt(副生成物)は1%であった。
Fmoc-Val-Phe-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;662.4(M+H)+
ISTA-Phe-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;607.4(M+H)+
【0148】
合成例20:Fmoc-Asp(tBu)-Phe-Phe-OEtの合成
【化31】
【0149】
Fmoc-Asp(tBu)-OH(0.143g、0.348mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.048g、0.377mmol)をアセトニトリル(1.4mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.193g、0.32mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-Phe-OEt(0.1g、0.29mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.045g、0.348mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(3.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Asp(tBu)-Phe-Phe-OEt(目的物)の定量収率は94%であった。
Fmoc-Asp(tBu)-Phe-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;734.4(M+H)+
【0150】
合成例21:Fmoc-Trp(Boc)-Ala-Phe-OEtの合成
【化32】
【0151】
Fmoc-Trp(Boc)-OH(0.209g、0.40mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.055g、0.43mmol)をアセトニトリル(2.1mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.220g、0.36mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Ala-Phe-OEt(0.1g、0.33mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.051g、0.40mmol)、アセトニトリル(1.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をテトラヒドロフラン(3.0g)酢酸エチル(3.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(1.0g)、水(1.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(3.0g)で分液後、得られた有機層のFmoc-Trp(Boc)-Ala-Phe-OEt(目的物)の定量収率は97%であり、ISTA-Ala-Phe-OEt(副生成物)の定量収率は1%であった。
Fmoc-Trp(Boc)-Ala-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;773.4(M+H)+
ISTA-Ala-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;531.3(M+H)+
【0152】
合成例22:Boc-Val-Phe-OEtの合成
【化33】
【0153】
Boc-Val-OH(0.340g、1.56mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.219g、1.69mmol)をアセトニトリル(3.4mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.870g、1.43mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H-Phe-OEt(0.3g、1.3mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.203g、1.32mmol)、アセトニトリル(3.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(6.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(3.0g)、水(2.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(3.0g)で分液後得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Boc-Val-Phe-OEt(0.49g、収率95%)を白色固体として得た。
Boc-Val-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;393.2(M+H)+
【0154】
合成例23:Cbz-Val-Val-Phe-OEtの合成
【化34】
【0155】
Boc-Val-Phe-OEt(0.20g、0.51mmol)を4M-HCl/1,4-ジオキサン(1.0mL)と混合させ、25℃にて2時間撹拌した。得られた反応液を濃縮し、得られた白色固体のHCl・H-Val-Phe-OEtを次の工程に使用した。
Cbz-Val-OH(0.154g、0.612mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.086g、0.663mmol)をアセトニトリル(3.0mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.340g、0.561mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、別途、HCl・H―Val-Phe-OEt(0.51mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.079g、0.612mmol)、アセトニトリル(2.0mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液をアセトニトリル(4.0g)、酢酸エチル(8.0g)で希釈後、飽和塩化アンモニウム水溶液(2.0g)、水(2.0g)を加え、分液を行った。水層を再度、酢酸エチル(5.0g)で分液後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、得られた有機層を濃縮し白色固体を得た。得られた白色固体に酢酸エチル(4.0g)を加え、析出した固体をろ取し、Cbz-Val-Val-Phe-OEt(0.26g、収率97%)を白色固体として得た。
Cbz-Val-Val-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;526.7(M+H)+
【0156】
合成例24:Fmoc-Val-Val-Val-Phe-OEtの合成
【化35】
【0157】
Cbz-Val-Val-Phe-OEt(0.10g、0.19mmol)を2,2,2-トリフルオロエタノール(4mL)に溶解させ、10質量%Pd-C(20mg)を加えた後、水素ガス雰囲気下、25℃で1時間撹拌した。反応液をろ過、濃縮し、得られたH-Val-Val-Phe-OEtを次の工程に使用した。
Fmoc-Val-OH(0.077g、0.228mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.032g、0.247mmol)をアセトニトリル(0.77mL)と混合させ、0℃にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.127g、0.21mmol)を加え3時間撹拌した。この溶液に、前工程で得られた、H-Val-Val-Phe-OEt(0.19mmol)、アセトニトリル(1.0mL)、NMP(0.2mL)を混合させた溶液を加えて1時間撹拌した。得られた反応液にジイソプロピルエーテル(10mL)を加え、析出した固体をろ取し、Fmoc-Val-Val-Val-Phe-OEt(0.14g、収率103%)を白色固体として得た。
Fmoc-Val-Val-Val-Phe-OEt MASS(ESI+)m/z;713.4(M+H)+
【0158】
合成例25:Fmoc-Phe-Phe-OHの合成
(1)H-Phe-2-ClTrt樹脂(109.9mg、0.1mmol、Merck社製、樹脂はポリスチレン)にNMP(1.0mL)を加えて、15分撹拌後溶媒を除去した。
(2)Fmoc-Phe-OH(155.0mg、0.4mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.07mL、0.4mmol)をNMP(0.8mL)に溶解後、室温にてISTA-Clの50質量%トルエン溶液(0.24mL、0.4mmol)を加え、3時間撹拌した。
(3)上記(2)で得られた溶液に、上記(1)で得られた固体を加え1時間撹拌した。反応溶媒を除去後、得られた固体を、NMP、メタノールを用いて順に洗浄後、乾燥させ、Fmoc-Phe-Phe-2-ClTrt樹脂を得た。
(4)上記(3)で得られた全量のFmoc-Phe-Phe-2-ClTrt樹脂に、酢酸/2,2,2-トリフルオロエタノール/ジクロロメタン(体積比1/2/7)(2mL)を加え、2時間撹拌した。脱離した樹脂をろ過にて除去後、反応液を減圧濃縮し、残渣にジイソプロピルエーテルを加えて析出した固体をろ過によって集め、Fmoc-Phe-Phe-OH(51.4mg、得率96.1%)を白色固体として得た。
Fmoc-Phe-Phe-OH MASS(ESI+)m/z;535.3(M+H)+
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明により、ペプチドの高効率な製造方法を提供することができる。