(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】男性用の吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/533 20060101AFI20241204BHJP
A61F 13/471 20060101ALI20241204BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61F13/533 100
A61F13/471
A61F13/47 300
(21)【出願番号】P 2022069226
(22)【出願日】2022-04-20
【審査請求日】2023-10-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 侑也
(72)【発明者】
【氏名】下津 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼阪 翔士
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-511955(JP,A)
【文献】特開2019-063118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0138070(US,A1)
【文献】中国実用新案第212037960(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/533
A61F 13/471
A61F 13/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の股下側と腹側に延びる前後方向と、
前記前後方向に直交する幅方向と、
体液を保持する吸収体と、
前記吸収体の変形を誘導する変形誘導部と、を有する男性用の吸収性物品であって、
前記吸収体の前記幅方向の長さは、変化しており、
前記変形誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の長さが最も長い最大幅位置における前記吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線と交差する交差変形部を有し、
前記交差変形部は、前記前後方向に沿って延びており、
前記吸収体よりも肌面側に配置された液透過性のトップシートと、
前記吸収体よりも非肌面側に配置された液透過性のバックシートと、を有し、
前記吸収体の前記前後方向の中心よりも前側の前領域と、前記吸収体の前記前後方向の中心よりも股下側の後領域と、には、前記トップシートと前記バックシートを圧縮したシート圧搾部がそれぞれ形成されており、
前記前領域の前記シート圧搾部のパターンと、前記後領域の前記シート圧搾部のパターンと、は異なる、男性用の吸収性物品。
【請求項2】
着用者の股下側と腹側に延びる前後方向と、
前記前後方向に直交する幅方向と、
体液を保持する吸収体と、
前記吸収体の変形を誘導する変形誘導部と、を有する男性用の吸収性物品であって、
前記吸収体の前記幅方向の長さは、変化しており、
前記変形誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の長さが最も長い最大幅位置における前記吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線と交差する交差変形部を有し、
前記交差変形部は、前記前後方向に沿って延びており
前記交差変形部の前記前後方向の長さは、前記交差変形部の前記幅方向の長さよりも長く、
前記吸収体よりも肌面側に配置された液透過性のトップシートと、
前記吸収体よりも非肌面側に配置された液透過性のバックシートと、を有し、
前記吸収体の前記前後方向の中心よりも前側の前領域と、前記吸収体の前記前後方向の中心よりも股下側の後領域と、には、前記トップシートと前記バックシートを圧縮したシート圧搾部がそれぞれ形成されており、
前記前領域の前記シート圧搾部のパターンと、前記後領域の前記シート圧搾部のパターンと、は異なる、男性用の吸収性物品。
【請求項3】
前記交差変形部は、前記吸収体の前記幅方向の中心に対して一対で設けられており、
前記仮想線における前記交差変形部の外側縁と前記吸収体の外側縁との距離をD1とし、前記仮想線における前記交差変形部の内側縁同士の距離をD2とすると、
D1>D2を満たす、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項4】
前記交差変形部は、前記吸収体の前記幅方向の中心に対して一対で設けられており、
前記仮想線における前記交差変形部の外側縁と前記吸収体の外側縁との距離をD1とし、前記仮想線における前記交差変形部の内側縁同士の距離をD2とすると、
D2>D1を満たす、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項5】
前記変形誘導部は、前記吸収体において周囲よりも吸収材料の目付が低い低目付部と、少なくとも前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、のうち少なくとも一方によって構成されている、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項6】
前記変形誘導部は、前記交差変形部と、中央変形部と、を有し、
前記交差変形部は、前記吸収体において周囲よりも吸収材料の目付が低い低目付部によって構成され、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心に対して一対で設けられており、
前記中央変形部は、少なくとも前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部によって構成され、前記交差変形部の間に配置されている、請求項
5に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項7】
前記変形誘導部の前記前後方向の長さは、前記吸収体の前記前後方向の長さの半分以上である、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項8】
前記最大幅位置は、前記吸収体の前記前後方向の中心よりも腹側に位置しており、
前記交差変形部は、前記吸収体の前記前後方向の中心と前記仮想線の間において連続している、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項9】
前記最大幅位置は、前記吸収体の前記前後方向の中心よりも腹側に位置しており、
前記変形誘導部は、前記吸収体の前記前後方向の中心よりも股下側において、前記幅方向に延びる幅変形部を有する、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項10】
前記幅変形部と前記交差変形部は、連なっている、請求項9に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項11】
着用者の身体の装着位置を示す目印部を有する、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収体は、パルプが積層された吸収コア、又は不織布によって構成されている、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項13】
前記前後方向及び前記幅方向の少なくとも一方に伸長可能な弾性部材を有する、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【請求項14】
前記吸収性物品を着用物品に止着する止着部を有し、
前記止着部の少なくとも一部は、前記交差変形部よりも前記幅方向の外側に配置されている、請求項1
又は請求項2に記載の男性用の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性用軽失禁パッド等の男性用の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、男性の陰茎に当てられる男性用の吸収性物品が開示されている。特許文献1の吸収性物品は、吸収体の幅方向の側部に立体変形誘導溝が設けられており、立体変形誘導溝を基点に変形することで、吸収性物品の幅方向中央部に陰茎が収容される空間が形成される。また、特許文献2の吸収性物品は、吸収体の幅方向の中央にチャネルエンボスが設けられており、装着時に男性用の吸収性物品を屈曲しやすくすることで、陰茎に対するフィット性を向上させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-48906号公報
【文献】特開2019-63118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1及び2には、以下の問題があった。特許文献1及び2の吸収体は、いずれも幅方向の長さが一定でなく、変化している。そのため、吸収性物品を装着すると、陰茎の側部に対して立ち上がる吸収体の幅方向の長さが異なる。吸収体の幅方向の長さが比較的短い領域(例えば、特許文献1及び2の吸収性物品における股下側の領域)では、吸収体の幅が比較的短いため、陰茎に対してフィットし易い。一方、吸収体の幅方向の長さが比較的長い領域(例えば、特許文献1及び2の吸収性物品における腹側の領域)では、吸収体の幅が比較的長く、陰茎の収容空間が大きくなりすぎ、ずれによって漏れが生じるおそれがあった。特に、吸収体の幅方向の長さが最大となる位置では、陰茎の収容空間が大きくなり過ぎ、漏れが生じるおそれが高くなりやすかった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、陰茎を収容する空間を確保しつつ当該空間が大きくなりすぎることを抑制し、ずれによる漏れを抑制できる男性用の吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様1に係る男性用の吸収性物品は、着用者の股下側と腹側に延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向と、体液を保持する吸収体と、前記吸収体の変形を誘導する変形誘導部と、を有する。前記吸収体の前記幅方向の長さは、変化している。前記変形誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の長さが最も長い最大幅位置における前記吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線と交差する交差変形部を有する。前記交差変形部は、前記前後方向に沿って延びている。
【0007】
態様2に係る男性用の吸収性物品は、着用者の股下側と腹側に延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向と、体液を保持する吸収体と、前記吸収体の変形を誘導する変形誘導部と、を有する。前記吸収体の前記幅方向の長さは、変化している。前記変形誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の長さが最も長い最大幅位置における前記吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線と交差する交差変形部を有する。前記交差変形部の前後方向の長さは、前記交差変形部の前記幅方向の長さよりも長い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る男性用の吸収性物品の肌面側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る男性用の吸収性物品の非肌面側から見た平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すA-A線に沿った男性用の吸収性物品の断面図である。
【
図4】
図4は、着用状態の男性用の吸収性物品を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1に係る男性用の吸収性物品は、着用者の股下側と腹側に延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向と、体液を保持する吸収体と、前記吸収体の変形を誘導する変形誘導部と、を有する。前記吸収体の前記幅方向の長さは、変化している。前記変形誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の長さが最も長い最大幅位置における前記吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線と交差する交差変形部を有する。前記交差変形部は、前記前後方向に沿って延びている。本態様によれば、最大幅位置における吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線に交差変形部が交差するため、仮想線上に吸収体の変形基点が設けられ、最大幅位置における吸収体が折れ曲がる。よって、陰茎の収容空間をコンパクトに形成し、ずれによる漏れを抑制できる。また、交差変形部が前後方向に延びているため、交差変形部による折り基点が前後方向に延び、吸収体を幅方向に折り曲げ易い。よって、陰茎の外周を覆うような形状に吸収体が変形し易く、フィット性を向上できる。
【0010】
態様2に係る男性用の吸収性物品は、着用者の股下側と腹側に延びる前後方向と、前記前後方向に直交する幅方向と、体液を保持する吸収体と、前記吸収体の変形を誘導する変形誘導部と、を有する。前記吸収体の前記幅方向の長さは、変化している。前記変形誘導部は、前記吸収体の前記幅方向の長さが最も長い最大幅位置における前記吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線と交差する交差変形部を有する。前記交差変形部の前後方向の長さは、前記交差変形部の前記幅方向の長さよりも長い。本態様によれば、最大幅位置における吸収体の外側縁同士を結ぶ仮想線に変形誘導部が交差するため、仮想線上に吸収体の変形基点が設けられ、最大幅位置における吸収体が折れ曲がる。よって、陰茎の収容空間をコンパクトに形成し、ずれによる漏れを抑制できる。また、交差変形部の前後方向の長さが幅方向の長さよりも長く、縦長であるため、交差変形部による折り基点が前後方向に延び、吸収体を幅方向に折り曲げ易い。よって、陰茎の外周を覆うような形状に吸収体が変形し易く、フィット性を向上できる。
【0011】
好ましい態様によれば、態様3に係る発明は、態様1又は態様2に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記交差変形部は、前記吸収体の前記幅方向の中心に対して一対で設けられている。前記仮想線における前記交差変形部の外側縁と吸収体の外側縁との距離をD1とし、前記仮想線における前記交差変形部の内側縁同士の距離をD2とすると、D1>D2を満たす。本態様によれば、一対の交差変形部によって、吸収体の前記幅方向の中心を挟んだ両側を、吸収体の前記幅方向の中心に対して着用者側に起立させ、陰茎の収容空間を立体的に形成し易い。また、D1>D2を満たすため、陰茎の側方に立ち上げる壁を高く形成でき、横漏れを抑制できる。
【0012】
好ましい態様によれば、態様4に係る発明は、態様1又は態様2に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記交差変形部は、前記吸収体の前記幅方向の中心に対して一対で設けられている。前記仮想線における前記交差変形部の外側縁と吸収体の外側縁との距離をD1とし、前記仮想線における前記交差変形部の内側縁同士の距離をD2とすると、D2>D1を満たす。一対の交差変形部によって、吸収体の前記幅方向の中心を挟んだ両側を、吸収体の前記幅方向の中心に対して着用者側に起立させ、陰茎の収容空間を立体的に形成し易い。また、D2>D1を満たすため、陰茎を収容する収容空間の幅方向の長さを確保し、吸収容量を確保できる。
【0013】
好ましい態様によれば、態様5に係る発明は、態様1から態様4のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記変形誘導部は、前記吸収体において周囲よりも吸収材料の目付が低い低目付部と、少なくとも前記吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部と、のうち少なくとも一方によって構成されている。低目付部からなる変形誘導部によれば、厚み差及び剛性差によって吸収体が変形する。また、低目付部によって吸収体を分断でき、低目付部に到達した体液の拡散を抑制できる。よって、吸収体の外縁への体液の拡散を抑止し、吸収体の外縁からの漏れを抑制できる。圧搾部からなる変形誘導部によれば、厚み差及び剛性差によって吸収体が変形する。また、圧搾部によって体液を引き込み、吸収体の外縁への体液の拡散を抑止し、吸収体の外縁からの漏れを抑制できる。
【0014】
好ましい態様によれば、態様6に係る発明は、態様5に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記交差変形部は、前記低目付部によって構成され、かつ前記吸収体の前記幅方向の中心に対して一対で設けられている。前記変形誘導部は、前記圧搾部によって構成され、前記交差変形部の間に配置された中央変形部を有する。吸収体の幅方向の中心を挟んだ両側に、低目付部によって構成された交差変形部が設けられている。そのため、吸収体の幅方向の中心を挟んだ両側に前後方向に延びる折り基点が形成される。また、一対の交差変形部によって挟まれた領域は、圧搾部によって構成された中央変形部を有しており、中央変形部によってその剛性が高くなり、形状を維持し易くなる。よって、一対の交差変形部によって挟まれた領域が立体的に膨らむように変形し、陰茎の収容空間を形成することができる。
【0015】
好ましい態様によれば、態様7に係る発明は、態様1から態様6に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記変形誘導部の前後方向の長さは、前記吸収体の前記前後方向の長さの半分以上である。本態様によれば、変形誘導部の前後方向の長さを長く設けることで、幅方向に比べて変形しにくい前後方向でも狙いの吸収体の変形を誘導することができる。
【0016】
好ましい態様によれば、態様8に係る発明は、態様1から態様7に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記最大幅位置は、前記吸収体の前後方向の中心よりも腹側に位置している。前記交差変形部は、前記吸収体の前後方向の中心と前記仮想線の間において連続している。本態様によれば、吸収体の前後方向の中心と前記仮想線の間において連続した変形基点を設けることができ、吸収体の前後方向の中心と仮想線の間に亘って吸収体を折り曲げることがえきる。仮想線と交差する部分のみに吸収体の変形基点を設ける構成と比較して、吸収体を広い範囲で変形させ、フィット性を向上できる。
【0017】
好ましい態様によれば、態様9に係る発明は、態様1から態様8に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記最大幅位置は、前記吸収体の前後方向の中心よりも腹側に位置している。前記変形誘導部は、前記吸収体の前後方向の中心よりも股下側において、前記幅方向に延びる幅変形部を有する。本態様によれば、股下側の領域において幅変形部によって幅方向に延びる折り目を形成し、吸収体を前後方向に折り曲げることができる。そして、吸収体の前後方向の中心よりも腹側の領域では、交差変形部によって陰茎に沿うような変形を誘導できる。
【0018】
好ましい態様によれば、態様10に係る発明は、態様9に係る発明において、以下の特徴を有してよい。幅変形部と交差変形部は、連なっている。本態様によれば、幅変形部と交差変形部が協働して、前後方向に吸収体が折れ曲がるとともに幅方向に吸収体が折れ曲がり、より立体的に吸収体が変形する。陰茎を覆うように吸収体を配置でき、体液の漏れをより抑制できる。
【0019】
好ましい態様によれば、態様11に係る発明は、態様1から態様10に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記変形誘導部は、前記吸収体の外縁に到達している。変形誘導部が吸収体の外縁に到達していない構成と比較して、変形誘導部によって吸収体の外縁まで変形させることができ、吸収体を意図した形状に変形させ易い。よって、フィット性をより向上させ、体液の漏れを抑制できる。
【0020】
好ましい態様によれば、態様12に係る発明は、態様1から態様11に係る発明において、以下の特徴を有してよい。吸収性物品は、着用者の身体の装着位置を示す目印部を有する。本態様によれば、使用者は、目印部によって装着位置を把握でき、適切な位置に装着することで、体液の漏れを抑制できる。
【0021】
好ましい態様によれば、態様13に係る発明は、態様1から態様12に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収体は、パルプが積層された吸収コア、又は不織布によって構成されている。吸収コアからなる吸収体によれば、パルプによって体液の吸収容量を確保し、体液の漏れを抑制できる。また、不織布からなる吸収体によれば、吸収コアと比較して厚みが薄く、また剛性が低いため、柔軟に変形し易い。身体により沿うように変形することで体液の漏れを抑制できる。
【0022】
好ましい態様によれば、態様14に係る発明は、態様1から態様13に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記前後方向及び前記幅方向の少なくとも一方に伸長可能な弾性部材を有する。本形態によれば、弾性部材によっても吸収性物品、特に吸収体を変形させることができ、吸収性物品をより意図した形状に変形させ易い。よって、フィット性をより向上させ、体液の漏れを抑制できる。
【0023】
好ましい態様によれば、態様15に係る発明は、態様1から態様14に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収性物品を着用物品に止着する止着部を有する。前記止着部の少なくとも一部は、前記交差変形部よりも前記幅方向の外側に配置されている。本態様によれば、交差変形部を基点に起立した壁部分が着用物品に止着するため、当該壁の位置がずれ難くなり、収容空間を維持し易くなる。
【0024】
好ましい態様によれば、態様16に係る発明は、態様1から態様15に係る発明において、以下の特徴を有してよい。吸収性物品は、前記吸収体よりも肌面側に配置された液透過性のトップシートと、前記吸収体よりも非肌面側に配置された液透過性のバックシートと、を有する。前記吸収体の前後方向の中心よりも前側の前領域と、前記吸収体の前後方向の中心よりも股下側の後領域と、には、前記トップシートと前記バックシートを圧縮したシート圧搾部がそれぞれ形成されている。前記前領域の前記シート圧搾部のパターンと、前記後領域の前記シート圧搾部のパターンと、は異なる。使用者は、シート圧搾部のパターンの違いによって前領域と後領域を区別して認識できる。よって、吸収性物品を適切な向きで装着でき、適切に装着することでフィット性をより向上させ、体液の漏れを抑制できる。
【0025】
(2)吸収性物品の実施形態
以下、図面を参照して、実施形態に係る男性用の吸収性物品(以下、吸収性物品とする)1について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0026】
図1は、実施形態に係る男性用の吸収性物品1の肌面側から見た平面図であり、
図2は、実施形態に係る男性用の吸収性物品1の非肌面側から見た平面図である。
図3は、
図1に示すA-A線に沿った男性用の吸収性物品1の断面図である。なお、本実施の形態の吸収性物品1は、男性用の吸収性物品であり、下着等の着用物品の内側に装着した状態で使用される。なお、図面では、吸収性物品1を皺が形成されない状態まで伸長させた伸長状態を示している。また、以下の説明において、構成部材の位置関係及び状態は、特段の記載がない限り、伸長状態における位置関係及び状態である。また、断面図においては、各構成部材を離間した状態で示しているが、実際の製品においては、各構成部材は当接してよい。
【0027】
吸収性物品1は、互いに直交する前後方向L及び幅方向Wを有する。前後方向Lは、着用者の股下側と前側とに延びる方向によって規定される。言い換えると、前後方向Lは、吸収性物品1において前後に延びる方向である。本発明において、股下側と後側は、同じ意味で用いられる。また、吸収性物品1は、前後方向Lと幅方向Wの両方に直交する厚み方向Tを有する。厚み方向Tは、着用者側に向かう肌面側T1と、着用者から離れる側の非肌面側T2と、に延びる。本明細書において、「肌面側」は、使用中に着用者の肌に面する側に相当する。「非肌面側」は、使用中に着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。なお、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外縁である。本発明における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。また、本発明における前端部及び後端部は、前後方向Lにおける縁を含む前後方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、前後方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。
【0028】
吸収性物品1は、使用時に下着等の着用物品に取り付けられる。より詳細には、吸収性物品1は、着用物品の前後方向Lの中心よりも前側に偏倚するように、着用者の股下から前側に掛けて装着される。吸収性物品1は、男性の排尿口を覆うように装着されてよい。吸収性物品1は、吸収体30と、吸収体30よりも肌面側T1に配置されたトップシート21と、吸収体30よりも非肌面側T2に配置されたバックシート22と、バックシート22の非肌面に付された止着部60と、を有してよい。
【0029】
吸収体30は、吸収コアを有してよい。吸収コアは、例えば粉砕パルプもしくは高吸収性ポリマー(SAP)、これらの混合物を含む吸収材料の積層体、又は不織布であってよい。吸収体30は、吸収コアのみによって構成されていてもよいし、吸収コアを覆うコアラップを備えてもよい。コアラップは、例えば、ティッシュや不織布シートによって構成されてよい。吸収体30は、周囲よりも吸収材料の坪量が低い低目付部35を有してよい。低目付部35は、周囲よりも少ない吸収材料が配置されていてもよいし、実質的に吸収材料が配置されてないスリットであってもよい。低目付部は、本発明の「変形誘導部」を構成する。変形誘導部については、後述にて詳細に説明する。
【0030】
トップシート21は、吸収体30よりも肌面側T1に配置された液透過性のシートである。トップシート21は、吸収体30の全体を覆い、吸収性物品1全体の肌面を構成してよい。変形例において、トップシート21は、吸収体30の幅方向Wの中央を覆うセンターシートと、吸収体の幅方向Wの側部を覆うサイドシートと、を有してもよい。吸収性物品1は、少なくとも吸収体30を厚み方向に圧縮した圧搾部38を有してもよい。圧搾部38は、吸収体30のみが圧縮されていてもよいし、トップシート21と吸収体30が圧搾されていてもよい。本実施の形態の圧搾部38は、トップシート21及び吸収体30が圧搾されており、本発明の「変形誘導部」を構成する。バックシート22は、吸収体30よりも非肌面側T2に配置された液不透過性のシートである。バックシート22は、吸収体30の全体を覆い、吸収性物品1全体の非肌面を構成してよい。吸収性物品1の外側部には、トップシート21とバックシート22を厚み方向Tに圧搾したシート圧搾部28が形成されてよい。シート圧搾部28は、吸収性物品1の外側縁に沿って連続的に配置されていてもよいし、本実施の形態のように、非連続に配置された複数のシート圧搾部28の連続体によって構成されていてもよい。シート圧搾部28の少なくとも一部は、吸収性物品1の外縁に到達してよい。
【0031】
吸収性物品1の形状及び吸収体30の形状は、吸収性物品1の幅方向Wの中心を通り、かつ前後方向Lに延びる前後中心線CLに対して対称であってよい。一方、吸収性物品1の形状及び吸収体30の形状は、吸収性物品1の前後方向Lの中心を通り、かつ幅方向Wに延びる幅中心線CWに対して非対称であってよい。吸収性物品1の幅方向Wの長さ及び吸収体30の幅方向Wの長さは、変化している。より詳細には、吸収性物品1の前端部の幅方向Wの寸法は、吸収性物品1の後端部の幅方向Wの寸法よりも長くてよい。吸収体30の前端部の幅方向Wの寸法は、吸収体30の後端部の幅方向Wの寸法よりも長くてよい。吸収性物品1の幅方向Wの寸法、及び吸収体30の幅方向Wの寸法は、吸収性物品1の前側から後側に向かって漸減している。吸収性物品1の外側縁の形状は、吸収性物品1の前端部から吸収性物品1の幅中心線CWに向かって、前後方向Lに平行であり、当該平行な領域R1では、吸収性物品1の幅方向Wの長さ及び吸収体30の幅方向Wの長さが一定である。領域R1は、吸収体30の幅方向Wの長さが最も長く構成されており、吸収体30の幅方向Wの長さが最も長い最大幅位置MPを含む。領域R1の全域に亘って、吸収体30の最大幅位置MPが設けられいてもよい。本実施の形態の吸収体30は、吸収体30の幅方向Wの長さが最も長い領域R1が前後方向Lに連続して設けられている。そのため、最大幅位置MPが複数設けられている。しかし、変形例において、最大幅位置MPは、1点であってもよい。領域R1よりも後側の領域R2では、後側に向かって、吸収性物品1の幅方向Wの長さは、徐々に短くなっている。領域R2では、吸収性物品1の外側縁の形状は、幅方向Wの内側に凹む凸状でなく、幅方向Wの外側に膨らむ凸状である。本実施の形態において領域R1と領域R2の境界は、幅中心線CWよりも前側に位置してもよい。変形例において、領域R1と領域R2の境界は、幅中心線CWに一致してもよいし、幅中心線CWよりも後側に位置してもよい。なお、変形例に係る吸収性物品1は、幅方向Wの寸法が吸収性物品1の前側から後側に向かって漸減してなくてよい。
【0032】
吸収性物品1は、軽失禁用の尿取りパッドであってよく、その吸収容量は、3ccから10ccであってよい。そのため、吸収性物品1は、コンパクトな寸法に設計されてよい。吸収性物品1の前後方向Lの長さは、200mm未満であってよく、好適には、180mm以下であり、より好適には、160mm以下であってよい。吸収性物品1の幅方向Wの長さは、180mm未満であってよく、好適には、150mm以下であり、より好適には、130mm以下であってよい。吸収体30の前後方向Lの長さは、吸収体30の幅方向Wの長さよりも長くてよい。
【0033】
図2及び
図3に示すように、バックシート22の非肌面側T2の面には、吸収性物品1の使用時に着用物品に止着する止着部60が配置されてよい。止着部60は、着用物品に吸収性物品1を止めるための接着剤が付された領域、又は着用物品に吸収性物品1を止めるためのメカニカルファスナ(例えば、フック)が付された領域であってよい。止着部60は、前後方向Lに延び、かつ幅方向Wに間隔を空けて配置されてよい。変形例において、止着部60は、幅方向Wに延び、かつ前後方向Lに間隔を空けて配置されてよい。本実施の形態の止着部60は、幅方向Wに間隔を空けて5本設けられている。止着部60は、幅方向Wの両側部に位置するサイド止着部61と、サイド止着部61の間に配置され、サイド止着部61よりも前後方向Lの長さが短いセンター止着部62と、を有する。サイド止着部61は、幅中心線CWよりも前側のみに配置されてよい。センター止着部62は、幅中心線CWを跨がって配置されてよい。サイド止着部61及びセンター止着部62は、いずれも前側に偏倚して配置されている。すなわち、サイド止着部61の前端縁と吸収体30の前端縁の前後方向Lの長さは、サイド止着部61の後端縁と吸収体30の後端縁の前後方向Lの長さよりも短い。また、センター止着部62の前端縁と吸収体30の前端縁の前後方向Lの長さは、センター止着部62の後端縁と吸収体30の後端縁の前後方向Lの長さよりも短い。サイド止着部61の前端縁の前後方向Lの位置とセンター止着部62の前端縁の前後方向Lの位置は、一致してよい。センター止着部62の後端縁は、サイド止着部61の後端縁よりも後側に位置してよい。止着部60は、使用前に図示しない剥離シート又は個包装シートによって覆われていてよい。
【0034】
本実施の形態に係る吸収性物品1は、陰茎を収容する空間を確保しつつ当該空間が大きくなり過ぎることを抑制するように構成されている。次いで、当該構成について、
図4を参照して詳細に説明する。
図4は、着用状態の吸収性物品1を模式的に示した斜視図である。吸収性物品1は、吸収体30の変形を誘導する変形誘導部70を有する。変形誘導部70は、吸収体30を厚み方向Tに変形させるための基点となってよく、例えば、低目付部35(スリットを含む)、圧搾部38、及び弾性部材を例示できる。変形誘導部70は、吸収体30の幅方向Wの長さが最も長い最大幅位置MPにおける吸収体30の外側縁同士を結ぶ仮想線FLと交差する交差変形部71を有する。最大幅位置MPでは、吸収体30の幅が比較的長く、陰茎の収容空間が大きくなりすぎ、ずれによって漏れが生じるおそれがあった。しかし、最大幅位置MPにおける吸収体30の外側縁同士を結ぶ仮想線FLに交差変形部71が交差するため、仮想線FL上に吸収体30の変形基点が設けられ、最大幅位置MPにおける吸収体30が折れ曲がる。よって、陰茎の収容空間をコンパクトに形成し、ずれによる漏れを抑制できる。
【0035】
仮想線FLは、最大幅位置MPが1カ所の吸収性物品1にあっては、1本であるが、本実施の形態のように最大幅位置MPが複数箇所の吸収性物品1にあっては、複数本となる。交差変形部71は、少なくともいずれかの仮想線FLに対して交差する変形誘導部70であればよい。変形誘導部70は、交差変形部71(仮想線と交わる変形誘導部70)のみによって構成されていてもよいし、交差変形部71以外の変形誘導部70(仮想線FLと交わらない変形誘導部70)を含んでいてもよい。また、交差変形部71は、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。曲線状の変形誘導部70は、曲率の変化する部分を有してよく、例えば、幅方向Wに延びる部分(幅方向Wと平行な構成、及び幅方向Wに対して45度未満で傾斜する構成を含む)と、前後方向Lに延びる部分と、を含んでもよい。また、交差変形部71が非連続に配置された複数の変形誘導部70の集合体によって構成されて形態にあっては、各変形誘導部70(非連続に配置された各要素)の寸法よりも各変形誘導部70間の隙間が短い場合には、一体化した交差変形部71を構成し、各変形誘導部70の寸法よりも各変形誘導部70の隙間が大きい場合には、当該隙間で分断した別々の交差変形部71を構成するものとする。
【0036】
陰茎を収容する空間を確保しつつ当該空間が大きくなり過ぎることを抑制するための更なる構成は、大別して、第1形態及び第2形態がある。第1形態に係る吸収性物品1は、交差変形部71が前後方向Lに沿って延びていることを特徴とする。なお、前後方向Lに延びる構成は、前後方向Lに平行な構成のみならず、前後方向Lに対して45度以下で交差する構成も含む概念である。第1形態に係る吸収性物品1によれば、交差変形部71が前後方向Lに延びているため、交差変形部71による折り基点が前後方向Lに延び、吸収体30を幅方向Wに折り曲げ易い。よって、陰茎の外周を覆うような形状に吸収体30が変形し易く、フィット性を向上できる。
【0037】
第2形態に係る吸収性物品1は、交差変形部71の前後方向Lの長さが交差変形部71の幅方向Wの長さよりも長いことを特徴とする。交差変形部71の前後方向Lの長さは、交差変形部71の前端縁と後端縁の前後方向Lの長さであり、交差変形部71の幅方向Wの長さは、交差変形部71の外側縁同士の長さである。第2形態に係る吸収性物品1は、交差変形部71の前後方向Lの長さが幅方向Wの長さよりも長く、縦長であるため、交差変形部71による折り基点が前後方向Lに延び、吸収体30を幅方向Wに折り曲げ易い。よって、陰茎の外周を覆うような形状に吸収体30が変形し易く、フィット性を向上できる。第2形態に係る交差変形部71は、全体として縦長であればよく、幅方向Wに伸びる部分を有していてもよい。
【0038】
なお、交差変形部71は、第1形態と第2形態のいずれかの構成であってもよいし、両方の構成を兼ね備えていてもよい。次いで、第1形態及び第2形態のいずれにもおいても、好適な形態について説明する。交差変形部71は、吸収体30の幅方向Wの中心である前後中心線CLに対して一対で設けられてよい。交差変形部71が前後中心線CLに対して一対であることにより、前後中心線CLを挟んだ両側を、前後中心線CLに対して着用者側に起立させ、陰茎の収容空間を立体的に形成し易い。また、一対の交差変形部71の少なくとも一部は、前後中心線CLと離間していてよい。本実施の形態のように一対の交差変形部71の全体が前後中心線CLに対して離間していてもよい。当該構成によれば、吸収体30の中央部に対して側部を立ち上げ、陰茎の外周を覆うような形状に吸収体30が変形し易く、フィット性を向上できる。
【0039】
変形誘導部70は、吸収体30の外縁に到達してよい。本構成によれば、変形誘導部70が吸収体30の外縁に到達していない構成と比較して、変形誘導部70によって吸収体30の外縁まで変形させることができ、吸収体30を意図した形状に変形させ易い。よって、フィット性をより向上させ、体液の漏れを抑制できる。本実施の形態の交差変形部71の前端縁は、幅中心線CWよりも前側かつ前後中心線CLよりも側方において、吸収体30の外側縁に到達し、交差変形部71の後端縁は、幅中心線CWよりも後側かつ前後中心線CLよりも側方において、吸収体30の後端縁に到達している。交差変形部71の前端縁は、交差変形部71の後端縁よりも幅方向の外側に位置する。一対の交差変形部71間の距離は、後側から前側に向かって長くなっている。変形例において、一対の交差変形部71の一部が前後中心線CLと交差してもよい。一対の交差変形部71の一部が前後中心線CLと交差する形態にあっては、幅中心線CWよりも前側の前領域では、一対の交差変形部71は、前後中心線CLと離間し、一対の交差変形部71が前後中心線CLと交差する部分は、幅中心線CWよりも後側の後領域であることが好ましい。当該形態によれば、前領域において陰茎の収容空間を立体的に形成し易い。交差変形部71は、吸収体30の幅方向Wを3等分した領域のうち中央に位置するセンター域と、センター域の両側に位置するサイド域と、に跨がってよい。当該構成によれは、吸収体30の幅方向Wの全体を変形させて収容空間を形成できる。
【0040】
仮想線FLにおける交差変形部71の外側縁71Eと吸収体30の外側縁30Eとの距離をD1とし、仮想線FLにおける交差変形部71の内側縁同士の距離をD2とすると、D1>D2を満たしてよい。D1は、左右のそれぞれのD1であり、その合計長さでなく、各D1とD2を比較する。当該構成によれば、D1>D2を満たすため、陰茎の側方に立ち上げる壁を高く形成でき、横漏れを抑制できる。また、他の形態において、D2>D1を満たしてよい。当該構成によれば、D2>D1を満たすため、陰茎を収容する収容空間の幅方向Wの長さを確保し、吸収容量を確保できる。なお、本実施の形態のように、仮想線が複数設けられる形態にあっては、D1>D2を満たす部分と、D2>D1を満たす部分と、を両方含んでいてもよい。両構成の効果を兼ね備えることができる。
【0041】
変形誘導部70は、低目付部35及び圧搾部38のうち少なくとも一方によって構成されてよい。低目付部35からなる変形誘導部70によれば、厚み差及び剛性差によって吸収体30が変形する。また、低目付部35によって吸収体30を分断でき、低目付部35に到達した体液の拡散を抑制できる。よって、吸収体30の外縁への体液の拡散を抑止し、吸収体30の外縁からの漏れを抑制できる。圧搾部38からなる変形誘導部70によれば、厚み差及び剛性差によって吸収体30が変形する。また、圧搾部38によって体液を引き込み、吸収体30の外縁への体液の拡散を抑止し、吸収体30の外縁からの漏れを抑制できる。
【0042】
交差変形部71は、低目付部35によって構成され、かつ吸収体30の幅方向Wの中心に対して一対で設けられてよい。また、変形誘導部70は、圧搾部38によって構成され、交差変形部71の間に配置された中央変形部72を有してよい。吸収体30の幅方向Wの中心を挟んだ両側に、低目付部35によって構成された交差変形部71が設けられている。そのため、吸収体30の幅方向Wの中心を挟んだ両側に前後方向Lに延びる折り基点が形成される。また、一対の交差変形部71によって挟まれた領域は、圧搾部38によって構成された中央変形部72を有しており、中央変形部72によってその剛性が高くなり、形状を維持し易くなる。よって、一対の交差変形部71によって挟まれた領域が立体的に膨らむように変形し、陰茎の収容空間を形成することができる。
【0043】
本実施の中央変形部72は、前後中心線CLを跨がって配置されたX字状の第1中央変形部721と、第1中央変形部721よりも前側において、前後中心線CLと離間して配置された一対の第2中央変形部722と、を有する。第1中央変形部721のX字状の中心は、前後中心線CL上に位置し、着用者の身体の位置合わせを行う指標となる。すなわち、第1中央変形部721は、後述する「目印部」を構成する。第2中央変形部722は、円弧形状であり、その円弧の中心は、第1中央変形部721のX字状の中心である。なお、本実施の形態の変形誘導部70は、交差変形部71よりも外側に配置されたサイド変形部73を有する。サイド変形部73も圧搾部38によって構成されている。サイド変形部73も円弧形状であり、その円弧の中心は、第1中央変形部721のX字状の中心である。よって、第2中央変形部722及びサイド変形73部は、同一円上に配置された円弧形状である。第2中央変形部722とサイド変形部73の間に、交差変形部71が配置されている。
【0044】
変形誘導部70の前後方向Lの長さは、吸収体30の前後方向Lの長さの半分以上であってよい。なお、複数の変形誘導部70が設けられた形態にあっては、いずれかの変形誘導部70が配置された領域の長さであってよい。すなわち、幅方向Wに延びる仮想線上にいずれの変形誘導部70も配置されていない領域の前後方向Lの長さは、吸収体30の前後方向Lの長さに対する半分未満であってよい。当該構成によれば、変形誘導部70の前後方向Lの長さを長く設けることで、幅方向Wに比べて変形しにくい前後方向Lでも狙いの変形を誘導することができる。
【0045】
最大幅位置MPは、吸収体30の前後方向Lの中心よりも腹側に位置し、交差変形部71は、吸収体30の前後方向Lの中心と仮想線FLの間において連続してよい。吸収体30の前後方向Lの中心と仮想線FLの間において連続した変形基点を設けることができ、吸収体30の前後方向Lの中心と仮想線FLの間に亘って吸収体30を折り曲げることがえきる。仮想線と交差する部分のみに吸収体30の変形基点を設ける構成と比較して、吸収体30を広い範囲で変形させ、フィット性を向上できる。なお、最大幅位置MPは、吸収体30の前後方向Lの中心よりも腹側のみに位置してもよいし、最大幅位置MPは、吸収体30の前後方向Lの中心よりも股下側にも位置してもよい。
【0046】
最大幅位置は、吸収体30の前後方向Lの中心よりも腹側に位置し、変形誘導部70は、吸収体30の前後方向Lの中心よりも股下側において、幅方向Wに延びる幅変形部75を有してよい。当該構成によれば、股下側の領域において幅変形部75によって幅方向Wに延びる折り目を形成し、吸収体30を前後方向Lに折り曲げることができる。そして、吸収体30の前後方向Lの中心よりも腹側の領域では、交差変形部71によって陰茎に沿うような変形を誘導できる。好適には、幅変形部75と交差変形部71は、連なってよい。当該構成によれば、幅変形部75と交差変形部71が協働して、前後方向Lに吸収体30が折れ曲がるとともに幅方向Wに吸収体30が折れ曲がり、より立体的に吸収体30が変形する。陰茎を覆うように吸収体30を配置でき、体液の漏れをより抑制できる。幅変形部75は、幅中心線CWよりも後側において交差変形部71と連なってよい。当該形態によれば、前領域において陰茎の収容空間を立体的に形成し易い。幅変形部75は、低目付部35によって構成されてよい。当該構成によれば、幅変形部75と交差変形部71がより協働して、吸収体30が変形し易い。
【0047】
吸収性物品1は、着用者の身体の装着位置を示す目印部80を有してよい。男性用の吸収性物品1の使用者は、女性用の吸収性物品1の使用者と異なり、吸収性物品1を長年使用していない着用者が多く、その装着方法や装着位置を適切に把握できないことがある。目印部80を設けることにより、使用者は、目印部80によって装着位置を把握でき、適切な位置に装着することで、体液の漏れを抑制できる。本実施の形態の目印部80は、第1中央変形部721によって構成されている。圧搾部38によって構成された目印部80によれば、使用者は、視認することで目印部80を把握することができ、かつ触感によっても目印部80を把握できる。他の形態において、目印部80は、圧搾部38によって構成されずに、トップシート21又は吸収体30の肌面に印刷された印刷部によって構成されていてもよい。目印部80は、吸収性物品1の肌面側T1から視認可能に構成されてよい。また、目印部80の位置は、限定されない。例えば、目印部80は、幅中心線CWよりも前側に配置されてよい。当該構成によれば、使用者が目に留まりやすく、また陰茎の先端の位置合わせをし易くなる。また、目印部80は、一対の交差変形部71の間に配置されていてもよい。当該構成によれば、一対の交差変形部71を基点として立体的に立ち上がる壁の間に、陰茎を合わせやすくなる。本実施の形態の目印部80は、X字状の第1中央変形部721であり、そのX字の中心に陰茎の先端の位置合わせをし易くなる。加えて、第2中央変形部722及びサイド圧変形73は、第1中央変形部721を囲み、かつ、同心円上に配置されている。当該第2中央変形部722及びサイド変形部73によって囲まれた領域に位置合わせもでき、第2中央変形部722及びサイド変形部73も目印部を構成してよい。
【0048】
吸収体30は、パルプが積層された吸収コア、又は不織布によって構成されてよい。吸収コアからなる吸収体30によれば、パルプによって体液の吸収容量を確保し、体液の漏れを抑制できる。また、不織布からなる吸収体30によれば、吸収コアと比較して厚みが薄く、また剛性が低いため、柔軟に変形し易い。身体により沿うように変形することで体液の漏れを抑制できる。特に、吸収容量が比較的低い吸収性物品1(例えば、10cc以下)にあっては、吸収体30として不織布を用いることができる。
【0049】
吸収性物品1は、前後方向L及び幅方向Wの少なくとも一方に伸長可能な弾性部材(図示せず)を有してよい。弾性部材の少なくとも一部は、吸収体30と重なっていてよく、吸収体30よりも肌面側T1に配置されていてもよいし、吸収体30よりも非肌面側T2に配置されてもよい。弾性部材としては、糸ゴム、伸縮シートを例示できる。本形態によれば、弾性部材によっても吸収性物品1、特に吸収体30を変形させることができ、吸収性物品1をより意図した形状に変形させ易い。よって、フィット性をより向上させ、体液の漏れを抑制できる。
【0050】
止着部60の少なくとも一部は、交差変形部71よりも幅方向Wの外側に配置されてよい。本形態によれば、交差変形部71を基点に起立した壁部分が着用物品に止着するため、当該壁の位置がずれ難くなり、収容空間を維持し易くなる。また、止着部60は、交差変形部71に重なっていてよい。本形態によれば、交差変形部71による吸収体30の折り基点の位置が安定し、吸収体30の立体形状を維持し易い。また、止着部60は、前後方向Lに沿って複数形成されており、各止着部60の外側縁は、一対の交差変形部71によって挟まれた領域に設けられていてよい。当該形態によれば、一対の交差変形部71によって挟まれた領域に、止着部60の外側縁を基点とした折り基点、すなわち、止着部60の有無による剛性差による折り基点が形成される。よって、一対の交差変形部71によって挟まれた領域が陰茎に沿うような形状により変形し易くなる。
【0051】
シート圧搾部28は、前領域(幅中心線CWよりも前側の領域)と後領域(幅中心線CWよりも後側の領域)にそれぞれ形成されており、前領域のシート圧搾部28のパターンと、後領域のシート圧搾部28のパターンと、は異なってよい。当該シート圧搾部28のパターンが異なる形態は、シート圧搾部28の形状(非連続のシート圧搾部を複数有する形態にあっては、その各要素の形状を含む)が異なる構成、シート圧搾部28の寸法、シート圧搾部の面積率が異なる構成を例示できる。当該構成によれば、使用者は、シート圧搾部のパターンの違いによって前領域と後領域を区別して認識できる。よって、吸収性物品1を適切な向きで装着でき、適切に装着することでフィット性をより向上させ、体液の漏れを抑制できる。
【0052】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 :吸収性物品
21 :トップシート
22 :バックシート
28 :シート圧搾部
30 :吸収体
35 :低目付部
38 :圧搾部
60 :止着部
70 :変形誘導部
71 :交差変形部
75 :幅変形部
80 :目印部
FL :仮想線
L :前後方向
MP :最大幅位置
T :厚み方向
T1 :肌面側
T2 :非肌面側
W :幅方向