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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20241204BHJP
   A61F 13/476 20060101ALI20241204BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20241204BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20241204BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
A61F13/15 142
A61F13/476
A61F13/511 200
A61F13/53 300
A61F13/56 110
A61F13/53 100
A61F13/15 144
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022077594
(22)【出願日】2022-05-10
(65)【公開番号】P2023166803
(43)【公開日】2023-11-22
【審査請求日】2023-11-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸亨
(72)【発明者】
【氏名】植田 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 祥宜
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-037333(JP,A)
【文献】特開2017-006626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する前後方向及び幅方向と、
吸収体と、
前記吸収体よりも肌側に配置され、着用者の肌に当接する本体トップシートと、
前記吸収体よりも前記幅方向の外側に延出したフラップ部と、
前記フラップ部の非肌面に配置され、着用物品に止着するフラップ止着部と、を有する吸収性物品であって、
前記フラップ部は、前記吸収性物品の使用前に、前記幅方向の内側に折り畳まれて前記本体トップシートの肌側を覆っており、
前記フラップ部が折り畳まれたフラップ折り状態において、前記フラップ止着部を覆うフラップ剥離シートを有し、
前記本体トップシートの肌面よりも非肌側、かつ前記吸収体の非肌面よりも肌側には、抗菌剤が配置されており、
前記フラップ剥離シートは、前記抗菌剤を覆っており、
前記抗菌剤は、第1抗菌剤と、前記第1抗菌剤よりも非肌側に位置する第2抗菌剤と、を有し、
前記前後方向及び前記幅方向の一方である第1方向において、前記第1抗菌剤が配置された第1領域の長さは、前記第2抗菌剤が配置された第2領域の長さよりも短く、
前記前後方向及び前記幅方向の他方である第2方向において、前記第1領域の長さは、前記第2領域の長さよりも長い、吸収性物品。
【請求項2】
前記フラップ部は、前記吸収性物品の股下領域に配置され、使用時に前記着用物品の非肌側に折り返されるウイングであり、
前記股下領域よりも後側の後領域は、前記フラップ折り状態において前記前後方向の内側に折り畳まれた後折り状態で、前記フラップ剥離シートに重なっており、
前記後領域において前記フラップ剥離シートが重なる領域には、前記抗菌剤が配置されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体よりも非肌側に配置されたバックシートと、
前記バックシートの非肌面に配置され、前記吸収体と重なる領域に配置された本体止着部と、
前記吸収性物品の使用前に前記本体止着部を覆う本体カバーシートと、を有し、
前記本体カバーシートと前記本体止着部の剥離強度は、前記フラップ剥離シートと前記フラップ止着部の剥離強度よりも低い、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記第1抗菌剤は、前記本体トップシートに配置されており、
前記第2抗菌剤は、前記吸収体に配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第2抗菌剤は、吸収コアを覆うコアラップに配置されており、
前記コアラップの密度は、前記本体トップシートの密度よりも高い、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1抗菌剤は、アロエ成分及びミント成分の少なくとも一方と共に配置されている、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品は、前記本体トップシートの外側部を覆うサイドシートを有しており、
前記第1方向は、前記幅方向であり、
前記第2抗菌剤は、前記サイドシートと重なる領域に配置されている、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記抗菌剤は、常温で固体である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、パルプを有する吸収コアを備え、
前記パルプは、前記吸収コアよりも肌側に位置する肌側シートの非肌面から前記肌側シート内に延びている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2等には、抗菌剤を有する吸収性物品が開示されている。特許文献1の吸収性物品は、吸収体に抗菌剤が配置されている。特許文献2の吸収性物品は、表面シートと吸収体との間に抗菌シートが配置されている。特許文献1及び2の吸収性物品によれば、吸収性物品内に引き込んだ体液に抗菌効果を発揮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-166940号公報
【文献】特開2011-30901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の吸収性物品には、以下の問題があった。
吸収性物品は、使用前に吸収性物品を運ぶ過程で抗菌剤が脱落し、使用時に十分な抗菌効果を得られないおそれがあった。また、吸収性物品を着用物品に取り付ける際に、吸収性物品を取り付け操作する過程で抗菌剤が脱落し、使用時に十分な抗菌効果を得られないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、使用前の抗菌剤の脱落を抑制し、吸収性物品の使用時に抗菌効果を発揮できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
吸収性物品は、互いに直交する前後方向及び幅方向と、吸収体と、前記吸収体よりも肌側に配置され、着用者の肌に当接する本体トップシートと、前記吸収体よりも前記幅方向の外側に延出したフラップ部と、前記フラップ部の非肌面に配置され、着用物品に止着するフラップ止着部と、を有する。前記フラップ部は、前記吸収性物品の使用前に、前記幅方向の内側に折り畳まれて前記本体トップシートの肌側を覆っている。前記フラップ部が折り畳まれたフラップ折り状態において、前記フラップ止着部を覆うフラップ剥離シートを有する。前記本体トップシートの肌面よりも非肌側、かつ前記吸収体の非肌面よりも肌側には、抗菌剤が配置されている。前記フラップ剥離シートは、前記抗菌剤を覆っている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、吸収性物品の展開状態の肌側から見た平面図である。
図2図2は、吸収性物品の展開状態の肌側から見た平面図である。
図3図3は、吸収性物品の展開状態の非肌側から見た平面図である。
図4図4は、吸収性物品のフラップ折り状態の肌側から見た平面図である。
図5図5は、吸収性物品の後折り状態の肌側から見た平面図である。
図6図6は、図1に示すA-A線に沿った断面図である。
図7図7は、肌側シート及び吸収コアの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1に係る吸収性物品は、互いに直交する前後方向及び幅方向と、吸収体と、前記吸収体よりも肌側に配置され、着用者の肌に当接する本体トップシートと、前記吸収体よりも前記幅方向の外側に延出したフラップ部と、前記フラップ部の非肌面に配置され、着用物品に止着するフラップ止着部と、を有する。前記フラップ部は、前記吸収性物品の使用前に、前記幅方向の内側に折り畳まれて前記本体トップシートの肌側を覆っている。前記フラップ部が折り畳まれたフラップ折り状態において、前記フラップ止着部を覆うフラップ剥離シートを有する。前記本体トップシートの肌面よりも非肌側、かつ前記吸収体の非肌面よりも肌側には、抗菌剤が配置されている。前記フラップ剥離シートは、前記抗菌剤を覆っている。本態様によれば、フラップ剥離シートによって本体トップシートの肌側から抗菌剤を覆っており、使用前の待ち運び時等に本体トップシート側から抗菌剤が脱落することを抑制できる。使用前の抗菌剤の脱落を抑制することで、使用時の抗菌効果を発揮できる。また、抗菌剤は、本体トップシートの肌面よりも非肌側に位置し、着用者に直に触れ難く、着用者の肌に直に抗菌剤が触れることによる違和感を抑制できる。よって、抗菌剤の含有量を多くする等、適切な量の抗菌剤を配合でき、また、フラップ剥離シートによってその脱落を防止することで、使用時に適切な抗菌効果を着用者に付与できる。
【0009】
好ましい態様によれば、態様2に係る発明は、態様1に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記フラップ部は、前記吸収性物品の股下領域に配置され、使用時に前記着用物品の非肌側に折り返されるウイングである。前記股下領域よりも後側の後領域は、前記フラップ折り状態において前記前後方向の内側に折り畳まれた後折り状態で、前記フラップ剥離シートに重なっている。前記後領域において前記フラップ剥離シートが重なる領域には、前記抗菌剤が配置されている。本態様によれば、後領域に抗菌剤を配置し、その抗菌剤の脱落をフラップ剥離シートによって抑制できる。後領域は、排泄口(例えば、膣口)に対向して配置される股下領域よりも後側に位置し、当該排泄口から体液が流れて行きやすい部分(例えば、会陰部)に当たる。排泄口から体液が流れて行きやすい部分において、使用時における抗菌効果を発揮できる。
【0010】
好ましい態様によれば、態様3に係る発明は、態様1又は2に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記フラップ部は、前記フラップ折り状態において前記本体トップシートに当接するフラップトップシートを有する。前記フラップトップシートは、前記フラップトップシートの厚み方向の中心よりも肌側に位置するフラップ肌側領域を有する。前記本体トップシートは、前記本体トップシートの厚み方向の中心よりも肌側に位置する本体肌側領域と、前記本体トップシートの厚み方向の中心よりも非肌側に位置する本体非肌側領域と、を有する。前記本体非肌側領域の抗菌剤の量は、前記本体肌側領域の抗菌剤の量よりも多い。前記フラップ肌側領域の抗菌剤の量は、前記本体肌側領域の抗菌剤の量よりも少ない。本体非肌側領域の抗菌剤は、本体肌側領域の抗菌剤の量よりも多い。これにより、着用者の肌に抗菌剤を直に触れることを抑制しつつ内部に引き込んだ体液に対して抗菌効果を発揮できる。フラップ肌側領域の抗菌剤の量は、本体肌側領域の抗菌剤の量よりも少ない。これにより、太ももの内側に抗菌剤が直に触れることを抑制できる。一方、本体トップシートは、フラップトップシートと比較して、体液が付着し易い。本体肌側領域の抗菌剤に多くの抗菌剤を配置することで、効率的に抗菌剤を配置し、適切な量の抗菌剤によって抗菌効果を発揮できる。
【0011】
好ましい態様によれば、態様4に係る発明は、態様1から3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。吸収性物品は、前記吸収体よりも非肌側に配置されたバックシートと、前記バックシートの非肌面に配置され、前記吸収体と重なる領域に配置された本体止着部と、前記吸収性物品の使用前に前記本体止着部を覆う本体カバーシートと、を有する。前記本体カバーシートと前記本体止着部の剥離強度は、前記フラップ剥離シートと前記フラップ止着部の剥離強度よりも低い。本態様によれば、本体カバーシートと本体止着部を剥離させる強度が比較的低いため、本体カバーシートと本体止着部をスムーズに剥離させ、抗菌剤の脱落を抑制できる。また、フラップ剥離シートとフラップ止着部の剥離強度が比較的高く、本体止着部を着用物品に止着する際に意図せずにフラップ剥離シートがフラップ止着部から剥がれることを抑制できる。よって、本体止着部を着用物品に止着する際にフラップ剥離シートによって本体トップシートを覆い続け、抗菌剤の脱落をより抑制できる。
【0012】
好ましい態様によれば、態様5に係る発明は、態様1から4のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記抗菌剤は、第1抗菌剤と、前記第1抗菌剤よりも非肌側に位置する第2抗菌剤と、を有する。本態様によれば、第1抗菌剤と第2抗菌剤が、吸収性物品の厚み方向の異なる位置に設けられている。そのため抗菌効果を発揮するタイミングが異なる。よって、異なるタイミングで異なる抗菌効果を発揮でき、より適切な抗菌効果を付与できる。
【0013】
好ましい態様によれば、態様6に係る発明は、態様5に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記第1抗菌剤は、前記本体トップシートに配置されており、前記第2抗菌剤は、前記吸収体に配置されている。本態様によれば、吸収体に第2抗菌剤が配置されているため、吸収体に保持された体液に対して、吸収体内に止まる長時間にわたって抗菌効果を発揮することができる。よって、吸収体内における菌の繁殖を抑制し、悪臭の発生を抑制できる。また、本体トップシートに第1抗菌剤が配置されているため、着用者から排出された体液が吸収体に導かれる過程で抗菌効果を発揮し、かつ一旦非肌側に引き込まれた体液が肌側に戻る過程においても抗菌効果を発揮できる。一旦非肌側に引き込まれた体液が肌側に戻り、当該体液が肌に付着した場合であっても違和感を抑制できる。
【0014】
好ましい態様によれば、態様7に係る発明は、態様6に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記第2抗菌剤は、吸収コアを覆うコアラップに配置されており、前記コアラップの密度は、前記本体トップシートの密度よりも高い。本態様によれば、繊維密度が比較的高いコアラップによって、非肌側に引き込まれた体液コアラップが移行したときに、液を拡散しつつ抗菌効果を発揮できる。
【0015】
好ましい態様によれば、態様8に係る発明は、態様6又は7に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記第1抗菌剤は、アロエ成分及びミント成分の少なくとも一方と共に配置されている。本態様によれば、本体トップシートに、アロエ成分及びミント成分の少なくとも一方を付与することにより、本体トップシートを通過する体液に対して抗菌効果を発揮しつつ、肌に対してアロエ成分及びミント成分の少なくとも一方による肌への保護効果を発揮できる。
【0016】
好ましい態様によれば、態様9に係る発明は、態様5から8のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記前後方向及び前記幅方向の一方である第1方向において、前記第1抗菌剤が配置された第1領域の長さは、前記第2抗菌剤が配置された第2領域の長さよりも短い。第1領域の第1方向の長さが短いため、第1抗菌剤の効果を発揮できる第1領域を局所的に配置し、当該第1領域において集中的に抗菌効果を発揮できる。例えば、第1抗菌剤を排泄口(膣口)に対向する領域に配置することで、排泄口から排出された体液に対して迅速かつ適切に抗菌効果を発揮できる。一方、第2領域の第1方向の長さが長いため、非肌側に引き込まれた体液に対して広い範囲で、抗菌効果を発揮できる。
【0017】
好ましい態様によれば、態様10に係る発明は、態様9に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記前後方向及び前記幅方向の他方である第2方向において、前記第1領域の長さは、前記第2領域の長さよりも長い。本態様によれば、第1領域は、第1方向において比較的短く、第2方向において比較的長い。一方、第2領域は、第1方向において比較的長く、第2方向において比較的短い。第1領域と第2領域の長さの大小関係が方向によって異なるため、第1抗菌剤と第2抗菌剤がそれぞれ配置されたシートの拡散態様に応じて抗菌剤の配置を調整し、拡散する体液に対して適切な抗菌効果を発揮できる。
【0018】
好ましい態様によれば、態様11に係る発明は、態様9又は10に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収性物品は、前記本体トップシートの外側部を覆うサイドシートを有している。第1方向は、前記幅方向である。前記第2抗菌剤は、前記サイドシートと重なる領域に配置されている。本態様によれば、第1抗菌剤よりも非肌側に位置する第2抗菌剤の幅方向の長さが長く、幅方向の広い範囲で抗菌効果を発揮できる。当該第2抗菌剤がサイドシートと重なる領域に配置されているため、幅方向に広い範囲で配置された第2抗菌剤と接した体液がリウェットした場合であっても、排泄口の側部(例えば、大陰唇)に当該体液を介して抗菌剤が付着することを抑制できる。よって、肌の違和感を抑制できる。
【0019】
好ましい態様によれば、態様12に係る発明は、態様1から11のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記抗菌剤は、常温で固体である。抗菌剤は、常温で固体であって揮発しないため、抗菌剤の位置がずれにくく、意図した位置に抗菌剤を配置し、抗菌効果を発揮できる。加えて、揮発した抗菌剤が肌に付着することに起因する肌の違和感を抑制できる。
【0020】
好ましい態様によれば、態様13に係る発明は、態様1から12のいずれか1項に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収体は、パルプを有する吸収コアを備える。前記パルプは、前記吸収コアよりも肌側に位置する肌側シートの非肌面から前記肌側シート内に延びている。本態様によれば、パルプによって肌側シート側から吸収コアに迅速に体液を引き込むことができ、迅速かつ効率的に抗菌作用を発揮することができる。
【0021】
(2)吸収性物品の構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品1について説明する。図1及び図2は、吸収性物品1の肌側T1から見た平面図である。図1は、後述する第1抗菌剤81が配置された第1領域R81を斜線で示しており、図2は、後述する第2抗菌剤82が配置された第2領域R82を斜線で示している。図3は、吸収性物品1の非肌側T2から見た平面図である。図4は、フラップ折り状態における吸収性物品1の肌側T1から見た平面図である。図5は、後折り状態における吸収性物品1の肌側T1から見た平面図である。図6は、図1に示すA-A線に沿った断面図である。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、断面図においては、各構成部材を離間した状態で示しているが、実際の製品においては、各構成部材は当接してよい。
【0022】
吸収性物品1は、互いに直交する前後方向L及び幅方向Wを有する。前後方向Lは、着用者の前側と後側とに延びる方向によって規定される。言い換えると、前後方向Lは、吸収性物品1において前後に延びる方向である。吸収性物品1は、前後方向Lと幅方向Wの両方に直交する厚み方向Tを有する。厚み方向Tは、着用者側に向かう肌側T1と、着用者から離れる側の非肌側T2と、に延びる。本明細書において、「肌側」は、使用中に着用者の肌に面する側に相当する。「非肌側」は、使用中に着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。なお、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外縁である。本発明における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。また、本発明における前端部及び後端部は、前後方向Lにおける縁を含む前後方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、前後方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。
【0023】
図1に示すように、吸収性物品1は、股下領域S3、前領域S1及び後領域S2を有する。股下領域S3は、着用者の排泄口(例えば膣口)に当接する排泄口当接部を有する領域である。吸収性物品1が着用物品(例えば、下着)に装着されたときに、股下領域S3は、着用物品の股下に対向して配置され、着用者の両足の間に配置される領域である。前領域S1は、股下領域S3よりも前側に位置する。後領域S2は、股下領域S3よりも後側に位置する。股下領域S3は、後述するウイング41が配置される領域であってよい。換言すると、ウイング41の前端縁が、前領域S1と股下領域S3の境界を構成し、ウイング41の後端縁が、後領域S2と股下領域S3の境界を構成してよい。
【0024】
吸収性物品1は、下着のような着用物品の内側に取り付けられて使用される物品であってよい。吸収性物品1は、例えば、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナーを例示できる。本実施の形態の吸収性物品1は、生理用ナプキンである。吸収性物品1は、吸収体20を有する。吸収体20は、液体を吸収する吸収材料を含む吸収コア22を含む。吸収材料は、例えば、親水性繊維、パルプ25(図7参照)、及び高吸水性高分子(SAP)の少なくともいずれかを含む。吸収コア22は、コアラップ21によって包まれていてよい。コアラップ21は、少なくとも吸収体20よりも肌側T1で吸収コア22を覆っていればよい。コアラップ21は、吸収コア22よりも肌側T1に配置される第1コアラップ211と、吸収コア22よりも非肌側T2に配置される第2コアラップ212と、を有してよい。第1コアラップ211と第2コアラップ212は、同じシートによって構成されていてもよいし、別々のシートによって構成されていてもよい。変形例において、吸収コア22は、コアラップ21によって覆われていなくてもよい。
【0025】
吸収性物品1は、吸収体20よりも肌側T1に配置され、着用者の肌に当接する本体トップシート31を有する。本体トップシート31は、着用者の肌に対向し、吸収性物品1の肌面を有する。本体トップシート31は、液透過性を有する。本体トップシート31は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造を有する任意のシート状の材料から構成されてよい。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。本体トップシート31は、吸収体20の肌面に当接していてもよい。または、本体トップシート31と吸収体20の間に、他のシート部材(例えば、体液の引き込み性を向上させるセカンドシート)が配置されていてもよい。本実施の形態では、本体トップシート31と吸収体20の間に、セカンドシート38が配置されている。吸収性物品1は、本体トップシート31の外側部を覆う一対のサイドシート32を有してよい。一対のサイドシート32は、幅方向Wに離間してよい。各サイドシート32は、フラップ部40に配置されてよい。サイドシート32の内側縁は、吸収体20に重なってよく、サイドシート32の外側縁は、フラップ部40の外側縁に配置されてよい。
【0026】
吸収性物品1は、吸収体20よりも非肌側T2に配置されるバックシート35を有する。バックシート35は、液不透過性のシートを有しており、少なくとも吸収体20の非肌面を覆う。バックシート35は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。
【0027】
吸収性物品1は、少なくとも吸収体20を厚み方向Tに圧縮した圧搾部90が形成されてよい。圧搾部90は、吸収体20と共に本体トップシート31が圧搾されていてもよく、吸収体20と共に本体トップシート31及びセカンドシート38が圧縮されていてもよい。本実施の形態では、吸収体20、本体トップシート31及びセカンドシート38が重なる領域では、吸収体20、本体トップシート31及びセカンドシート38が共に圧縮されている。また、吸収体20及び本体トップシート31が重なり、セカンドシート38が重ならない領域では、吸収体20及び本体トップシート31共に圧縮されている。圧搾部は80、前後方向Lに延びる一対の第1圧搾部91及び一対の第2圧搾部92を有する。第2圧搾部92は、第1圧搾部91よりも幅方向の外側に位置する。一対の第1圧搾部91間には、点状圧搾部93が配置されている。点状圧搾部93は、点状であり、平面視にて間隔を空けて複数設けられている。
【0028】
吸収性物品1は、吸収体20よりも幅方向Wの外側に延出したフラップ部40を有してよい。フラップ部40は、ウイング、ヒップフラップを例示できる。本実施の形態のフラップ部40は、ウイング41によって構成されている。ウイング41は、股下領域S3に配置され、着用時に着用物品の非肌側T2に折り返される。変形例において、フラップ部40は、ウイング41を備えずにヒップフラップのみによって構成されていてもよいし、ウイングとヒップフラップの両方を有していてもよい。ヒップフラップは、着用時に着用物品の非肌側T2に折り返されず、着用者の肌に接するように配置される。図4に示すように、フラップ部40は、吸収性物品1の使用前に、幅方向Wの内側に折り畳まれて本体トップシート31の肌側を覆う。図4は、フラップ部40が折り畳まれたフラップ折り状態を示しており、ウイング41は、前後方向Lに沿うフラップ折り目FL3を基点に幅方向Wの内側に折り畳まれている。フラップ部40は、フラップ部40の肌面を構成するフラップトップシート45と、フラップ部40の非肌面を構成するフラップバックシート46と、を有してよい。本実施の形態のフラップトップシート45は、サイドシート32によって構成されている。変形例において、フラップトップシート45は、サイドシート32以外のシートによって構成されていてもよい。フラップトップシート45は、フラップ折り状態において本体トップシート31に当接する。本実施の形態のフラップバックシート46は、バックシート35によって構成されている。すなわち、バックシート35は、吸収性物品1全体の非肌面を構成する。
【0029】
図3に示すように、吸収性物品1は、着用物品に止着される止着部60を有する。止着部60は、吸収体20と重なる領域に配置された本体止着部61と、フラップ部40に配置されたフラップ止着部62と、を有してよい。本体止着部61は、バックシート35の非肌面に配置されている。フラップ止着部62は、フラップ部40の非肌面を構成するシート(本実施の形態では、バックシート35)の非肌面に配置されている。止着部60には、着用物品に止着する粘着剤が塗布されていてもよいし、着用物品に止着するメカニカルフックが配置されていてもよい。吸収性物品1の使用前の状態では、フラップ止着部62は、フラップ剥離シート72によって覆われている。より詳細には、フラップ折り状態において、フラップ剥離シート72は、一対のフラップ部40を跨ぐように配置され、一対のフラップ止着部62の両方を覆っている。使用時に着用者によってフラップ剥離シート72が剥離されることで、フラップ止着部62が露出する。吸収性物品1の使用前の状態では、本体止着部61は、本体カバーシートによって覆われてよい。使用時に着用者によって本体カバーシートが剥離される。本体カバーシートは、吸収性物品1を個別に包装する個包装シート75、及び個包装シート75と本体止着部61の間に配置された本体剥離シート(図示せず)の少なくともいずれか一方であってよい。なお、説明の便宜上、図4及び図5では、個包装シート75を示しているが、図1から図3では、個包装シート75を省略している。本体カバーシートは、例えば、紙にシリコンを塗工したもの、フィルムにシリコンを塗工したもの、個包装シートに用いられるフィルムにシリコンを塗工したものを用いてよい。個包装シート75は、フィルム、不織布を例示できる。
【0030】
次いで、このように構成された吸収性物品1の折り畳み態様について説明する。吸収性物品1は、図4に示すように、フラップ部40がフラップ折り目FL3を基点に幅方向Wの内側に折り畳まれたフラップ折り状態となる。フラップ折り状態では、吸収性物品1は、フラップ折り目FL3以外の折り目によって折り畳まれていない。フラップ折り状態では、吸収性物品1は、個包装シート75上に配置されている。なお、本実施の形態では、フラップ折り目FL3によって、フラップ部40のみならず、前領域S1から後領域S2の全体に亘って吸収性物品1が折り畳まれている。次いで、フラップ折り状態で、吸収性物品1の後領域S2は、幅方向Wに沿った第1折り目FL1を基点に、前後方向Lの内側に折り畳まれる。図5は、後領域S2が前後方向Lの内側に折り畳まれた後折り状態を示している。次いで、図示しないが、吸収性物品1は、第1折り目FL1よりも前側に位置する第2折り目FL2を基点に前後方向に折り畳まれる。これにより、個包装シート75によって吸収性物品1が個別に包装された個包装状態となる。なお、変形例において、吸収性物品1は、第1折り目FL1を基点に折り畳まれた後であって、第2折り目FL2を基点に折り畳まれる前に、第1折り目FL1と第2折り目FL2の間に位置する第3折り目を基点に、第3折り目よりも後側の領域を折り畳み、その後に第2折り目FL2を基点に前後方向に折り畳まれることによって個包装状態となってもよい。第1折り目FL1、フラップ折り目FL3は、吸収性物品1の肌面同士が向き合うように吸収性物品1を折り畳む折り目である。
【0031】
本実施の形態の吸収性物品1は、抗菌剤80を有しており、使用時に抗菌効果を発揮できるように構成されている。次いで、使用時に抗菌効果を発揮するための構成について詳細に説明する。抗菌剤80は、例えば、塩化ベンザルコニウム液を水等の適宜な溶媒で希釈して生成された抗菌液を使用可能である。詳しくは、塩化ベンザルコニウム液を5%に希釈した水溶液とエタノールと水とを、それぞれ0.25%、10%、89.75%の割合で配合することにより、上記の抗菌液を生成することができて、この例では、この抗菌液を使用している。そして、吸収性物品1が市場に供給される時点では、水などの溶媒は既に蒸発していて、これにより、これら各シートや吸収体の内部には、塩化ベンザルコニウムが主な抗菌成分として残存した状態になっている。ちなみに、上述の配合割合や配合成分は一例であって何等これに限らない。すなわち、これ以外の配合割合や配合成分で抗菌液を生成しても良い。また、更に言えば、上記の抗菌液以外に、塩化セチルピリジウム、塩化ベンゼトニウム、ポリアミノプロピルビグアニド、パラベン等を抗菌剤80として使用しても良い。抗菌剤80は、常温で固体であることが好ましい。抗菌剤80は、常温で固体であって揮発しないため、抗菌剤80の位置がずれにくく、意図した位置に抗菌剤80を配置し、抗菌効果を発揮できる。加えて、揮発した抗菌剤80が肌に付着することに起因する肌の違和感を抑制できる。本実施形態では、常温とは、20℃をいうものとする。また、固体とは、融点が40度を超えるものとする。
【0032】
抗菌剤80は、本体トップシート31の肌面よりも非肌側T2、かつ吸収体20の非肌面よりも肌側の領域(図6に示す領域X)に配置されている。なお、抗菌剤80は、領域Xに少なくとも配置されていればよく、領域X以外(例えば、本体トップシート31の肌面、バックシート35)に配置されていてもよい。図4に示すフラップ折り状態において、フラップ剥離シート72は、抗菌剤80を覆っている。なお、抗菌剤80の少なくとも一部が、フラップ剥離シート72によって覆われていればよい。抗菌剤80は、フラップ剥離シート72によって覆われていない領域に配置されていてもよい。吸収性物品1の肌面は、吸収性物品1の非肌面と比較して通気性が高く、抗菌剤80が脱落しやすい。しかし、フラップ剥離シート72によって本体トップシート31の肌側を覆っており、使用前の待ち運び時等に本体トップシート31側から抗菌剤80が脱落することを抑制できる。また、フラップ折り状態では、フラップ剥離シート72によって覆われている領域の一部は、フラップ部40によっても覆われる。そのため、フラップ部40及びフラップ剥離シート72の両方によって抗菌剤80の脱落を防止できる。吸収性物品1を着用物品に取り付ける際に、フラップ折り状態において吸収性物品1を着用物品に一旦取り付け、その後にフラップ剥離シート72を外して、フラップ部40を着用物品に止着することがある。当該装着態様にあっては、フラップ折り状態において吸収性物品1を着用物品に一旦取り付ける際に、フラップ剥離シート72によって抗菌剤80の脱落を抑制でき、装着操作時の抗菌剤80の脱落を抑制できる。使用前の抗菌剤80の脱落を抑制することで、使用時の抗菌効果を発揮できる。また、抗菌剤80は、本体トップシート31の肌面よりも非肌側に位置し、着用者に直に触れ難く、着用者の肌に直に抗菌剤80が触れることによる違和感を抑制できる。よって、抗菌剤80の含有量を多くする等、適切な量の抗菌剤80を配合でき、また、フラップ剥離シート72によってその脱落を防止することで、使用時に適切な抗菌効果を着用者に付与できる。
【0033】
後領域S2は、図5に示す後折り状態で、フラップ剥離シート72に重なっており、後領域S2においてフラップ剥離シート72が重なる領域には、抗菌剤80が配置されてよい。すなわち、後折り状態で、後領域S2の抗菌剤80が配置された領域(第1領域R81、第2領域R82)の少なくとも一部は、フラップ剥離シート72によって覆われてよい。当該構成によれば、後領域S2に抗菌剤80を配置し、その抗菌剤80の脱落をフラップ剥離シート72によって抑制できる。後領域S2は、排泄口(例えば、膣口)に当接する股下領域S3よりも後側に位置し、当該排泄口から体液が流れて行きやすい部分(例えば、会陰部)に当たる。排泄口から体液が流れて行きやすい部分において、使用時における抗菌効果を発揮できる。
【0034】
図6に示すように、フラップトップシート45は、フラップトップシート45の厚み方向Tの中心45Cよりも肌側T1に位置するフラップ肌側領域451と、フラップトップシート45の厚み方向Tの中心45Cよりも肌側に位置するフラップ非肌側領域452と、を有する。フラップ肌側領域451とフラップ非肌側領域452は、フラップトップシート45を厚み方向に二等分した領域である。本体トップシート31は、本体トップシート31の厚み方向Tの中心31Cよりも肌側T1に位置する本体肌側領域311と、本体トップシート31の厚み方向Tの中心31Cよりも非肌側T2に位置する本体非肌側領域312と、を有する。本体肌側領域311と本体非肌側領域312は、本体トップシート31を厚み方向Tに二等分した領域である。本体非肌側領域312の抗菌剤80は、本体肌側領域311の抗菌剤80の量よりも多くてよい。これにより、着用者の肌に抗菌剤80を直に触れることを抑制しつつ内部に引き込んだ体液に対して抗菌効果を発揮できる。フラップ肌側領域451の抗菌剤80の量は、本体肌側領域311の抗菌剤80の量よりも少なくてよい。これにより、太ももの内側に抗菌剤80が直に触れることを抑制できる。また、フラップ部40がウイング41の形態にあっては、フラップ肌側領域451は、そのほとんどの領域が着用物品の非肌側T2に配置され、体液が付着しない。一方、本体トップシート31は、フラップトップシート45と比較して、体液が付着し易い。本体肌側領域311の抗菌剤80に多くの抗菌剤80を配置することで、効率的に抗菌剤80を配置し、適切な量の抗菌剤80によって抗菌効果を発揮できる。フラップ肌側領域451の抗菌剤80の量は、フラップ非肌側領域452の抗菌剤80の量よりも多くてよい。これにより、フラップ部(例えば、ヒップフラップ)に導かれた体液に対して、フラップ部に引き込んだ後に直ぐに(フラップ非肌側領域に到達する前に)抗菌効果を付与できる。
【0035】
なお、抗菌剤80の量は、重量の絶対値の比較でなく、定量によって比較できる。具体的には、本体トップシート及びフラップトップシートをそれぞれ液体窒素で凍結して切断する。切断した断面において、XPS(X線光電子分光)又はSEM-EDX(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法)を用いて、抗菌剤80の構成元素のピーク強度、又は該抗菌剤80に特徴的なピークのピーク強度を測定する。このピーク強度を領域で比較することにより、領域の坪量を比較できる。抗菌剤80の定量は、各領域における該抗菌剤80の存在量と、その構成元素のピーク強度又は該抗菌剤80に特徴的なピークのピーク強度との相関関係に基づく検量線を用いることによって求められる。
【0036】
本体カバーシートと本体止着部61の剥離強度は、フラップ剥離シート72とフラップ止着部62の剥離強度よりも低くてよい。本実施の形態では、本体カバーシートとして図示しない本体剥離シートに本体止着部61が接合している。そのため、本体カバーシートと本体止着部61の剥離強度は、本体剥離シートと本体止着部61の剥離強度である。一般的に、吸収性物品を着用物品に取り付ける際は、まず、本体カバーシートと本体止着部を剥離させ、本体止着部61を着用物品に止着する。このとき、本体カバーシートと本体止着部61を剥離させる強度が比較的低いため、本体カバーシートと本体止着部61をスムーズに剥離させ、抗菌剤80の脱落を抑制できる。また、フラップ剥離シート72とフラップ止着部62の剥離強度が比較的高く、本体止着部61を着用物品に止着する際に意図せずにフラップ剥離シート72がフラップ止着部62から剥がれることを抑制できる。よって、本体止着部61を着用物品に止着する際にフラップ剥離シート72によって本体トップシート31を覆い続け、抗菌剤80の脱落をより抑制できる。当該剥離強度は、例えば、インストロン(引っ張り試験機)にて、止着部によって止着したシート(例えば、本体カバーシートとバックシート)をそれぞれチャックで挟み、一方のシートを100mm/minのスピードで引っ張り、そのときの最大強度を剥離強度として比較できる。また、剥離強度を異ならせる構成は、止着部としての粘着剤の成分を異ならせる構成、止着部の面積率を異ならせる構成、本体カバーシートとフラップ剥離シートの構成を異ならせる構成を例示できる。本実施の形態では、本体止着部61とフラップ止着部62は、同じ粘着剤によって構成され、本体カバーシートとフラップ剥離シートの材質が異なる。具体的には、本体カバーシートは、フィルムにシリコン加工を施されており、フラップ剥離シートは、紙にシリコン加工されている。
【0037】
抗菌剤80は、厚み方向Tに異なる位置に設けられていてよい。詳細には、抗菌剤80は、第1抗菌剤81と、第1抗菌剤81よりも非肌側T2に位置する第2抗菌剤82と、を有してよい。第1抗菌剤81と第2抗菌剤82が、吸収性物品1の厚み方向Tの異なる位置に設けられている。そのため抗菌効果を発揮するタイミングが異なる。よって、異なるタイミングで異なる抗菌効果を発揮でき、より適切な抗菌効果を付与できる。第1抗菌剤81と第2抗菌剤は、同じ成分の抗菌剤によって構成されていてもよいし、成分が異なっていてもよい。例えば、第1抗菌剤81は、塩化ベンザルコニウムによって構成され、第2抗菌剤82は、塩化セチルピリジウムによって構成されてよい。
【0038】
第1抗菌剤81と第2抗菌剤82は、吸収性物品1を構成する構成部材のうち同じ構成部材に配置されてよい。より詳細には、例えば、第1抗菌剤81は、セカンドシート38の肌面に配置され、第2抗菌剤82は、セカンドシート38の非肌面に配置されてよい。または、第1抗菌剤81は、第1コアラップ211の肌面に配置され、第2抗菌剤82は、第1コアラップ211の非肌面に配置されてよい。
【0039】
また、第1抗菌剤81と第2抗菌剤82は、吸収性物品を構成する構成部材のうち異なる構成部材に配置されてよい。第1抗菌剤81は、本体トップシート31に配置され、第2抗菌剤82は、吸収体20に配置されてよい。第2抗菌剤82は、吸収体20を構成する第1コアラップ211、吸収コア22、及び第2コアラップ212の少なくともいずれかに配置されていればよい。本形態によれば、吸収体20に第2抗菌剤82が配置されているため、吸収体20に保持された体液に対して、吸収体20内に止まる長時間にわたって抗菌効果を発揮することができる。よって、吸収体20内における菌の繁殖を抑制し、悪臭の発生を抑制できる。また、本体トップシート31に第1抗菌剤81が配置されているため、着用者から排出された体液が吸収体に導かれる過程で抗菌効果を発揮し、かつ一旦非肌側T2に引き込まれた体液が肌側T1に戻る過程においても(リウェットする過程においても)抗菌効果を発揮できる。一旦非肌側T2に引き込まれた体液が肌側T1に戻り、当該体液が肌に付着した場合であっても違和感を抑制できる。
【0040】
変形例において、第1抗菌剤81は、本体トップシート31に配置され、第2抗菌剤82は、セカンドシート38に配置されてよい。本態様によっても、本体トップシート31に第1抗菌剤81が配置されているため、着用者から排出された体液が吸収体20に導かれる過程で抗菌効果を発揮し、かつ一旦非肌側T2に引き込まれた体液が肌側T1に戻る過程においても抗菌効果を発揮できる。また、セカンドシート38に第2抗菌剤82が配置されているため、セカンドシート38を通過する過程で、異なる抗菌効果を発揮できる。
【0041】
第2抗菌剤82は、コアラップ21に配置され、コアラップ21の密度は、本体トップシート31の密度よりも高くてよい。本態様によれば、繊維密度が比較的高いコアラップ21によって、非肌側T2に引き込まれた体液がコアラップ21に移行したときに、液を拡散しつつ抗菌効果を発揮できる。なお、第2抗菌剤82は、本体トップシート31よりも繊維密度の高いシートに配置されていればよく、第1コアラップ211及び第2コアラップ212の少なくともいずれか一方に配置されていればよい。繊維密度の異なる構成は、例えば、本体トップシート31が不織布によって構成され、コアラップがティッシュによって構成されてよい。
【0042】
本体トップシート31に配置された第1抗菌剤81は、アロエ成分及びミント成分の少なくとも一方と共に配置されてよい。本態様によれば、本体トップシート31に、アロエ成分及びミント成分の少なくとも一方を付与することにより、本体トップシート31を通過する体液に対して抗菌効果を発揮しつつ、肌に対してアロエ成分及びミント成分の少なくとも一方による肌への保護効果を発揮できる。
【0043】
本実施の形態では、第1抗菌剤81は、本体トップシート31の非肌面に配置され、第2抗菌剤82は、第1コアラップ211に配置されている。図1において、第1抗菌剤81が配置された第1領域R81に斜線を付して示しており、図2において、第2抗菌剤82が配置された第2領域R82に斜線を付して示している。第1領域R81は、本体トップシート31の幅方向Wの中央に配置され、本体トップシート31の幅方向Wの側部に設けられていない。すなわち、第1領域R81は、本体トップシート31の外側縁31Eと離間している。第2領域R82は、第1コアラップ211の全域に亘って設けられている。前後方向L及び幅方向Wの一方である第1方向D1において、第1抗菌剤81が配置された第1領域R81の長さは、第2抗菌剤82が配置された第2領域R82の長さよりも短い。本実施の形態では、第1方向D1は、幅方向Wであり、第1領域R81の幅方向Wの長さは、第2領域R82の幅方向Wの長さよりも短くてよい。第1領域R81の第1方向D1の長さが短いため、第1抗菌剤81の効果を発揮できる第1領域R81を局所的に配置し、当該第1領域R81において集中的に抗菌効果を発揮できる。例えば、第1抗菌剤81を排泄口(膣口)に対向する領域に配置することで、排泄口から排出された体液に対して迅速かつ適切に抗菌効果を発揮できる。一方、第2領域R82の第1方向の長さが長いため、非肌側T2に引き込まれた体液に対して広い範囲で抗菌効果を発揮できる。
【0044】
前後方向L及び幅方向Wの他方である第2方向D2において、第1領域R81の長さは、第2領域R82の長さよりも長くてよい。本形態によれば、第1領域R81は、第1方向D1において比較的短く、第2方向D2において比較的長い。一方、第2領域R82は、第1方向D1において比較的長く、第2方向D2において比較的短い。第1領域R81と第2領域R82の長さの大小関係が方向によって異なるため、第1抗菌剤81と第2抗菌剤82がそれぞれ配置されたシートの拡散態様に応じて抗菌剤の配置を調整し、拡散する体液に対して適切な抗菌効果を発揮できる。例えば、第1抗菌剤81が配置された部材が比較的第1方向D1に拡散しやすい場合には、第1方向における抗菌剤の配置領域を確保できる。また、第1抗菌剤が配置された部材が比較的第2方向に拡散し難い場合には、第2方向における抗菌剤の配置領域を短くすることで、必要ない箇所に抗菌剤を付与することを抑制し、肌に抗菌剤が当たることをより抑制できる。
【0045】
第1方向D1は、幅方向Wであり、第2抗菌剤82は、サイドシート32と重なる領域に配置されてよい。本形態によれば、第1抗菌剤81よりも非肌側T2に位置する第2抗菌剤82の幅方向Wの長さが長く、幅方向Wの広い範囲で抗菌効果を発揮できる。第2抗菌剤82がサイドシート32と重なる領域に配置されているため、第2抗菌剤82と接した体液がリウェットした場合であっても、排泄口の側部(例えば、大陰唇)に当該体液を介して抗菌剤が付着することを抑制できる。よって、肌の違和感を抑制できる。また、第1領域R81は、サイドシート32の内側縁32Iよりも幅方向Wの内側に位置してよい。第1抗菌剤81は、第2抗菌剤82よりも肌側に位置し、着用者に直に触れやすい。第1抗菌剤81がサイドシート32の内側縁32Iよりも幅方向Wの内側に位置しているため、太ももの内側に抗菌剤が直に触れることを抑制できる。なお。本実施の形態では、第1方向が幅方向であり、第2方向が前後方向であったが、変形例において、第1方向が前後方向であり、第2方向が幅方向であってもよい。
【0046】
第1領域R81及び第2領域R82に重なる領域には、点状圧搾部93が設けられている。本構成によれば、点状圧搾部93によって本体トップシート31に排出された体液を迅速に非肌側T2に引き込み、当該引き込んだ体液に第1抗菌剤81及び第2抗菌剤82を接触させ、抗菌効果を発揮できる。また、図1及び図6に示すように、第1領域R81の外側縁は、セカンドシート38の外側縁38Eよりも幅方向Wの内側に位置してよく、第1圧搾部91よりも幅方向Wの外側に位置してよく、第2圧搾部92よりも幅方向Wの内側に位置してよい。当該構成によれば、第1領域R81を局所的に配置し、当該第1領域においてより集中的に抗菌効果を発揮できる。また、第1領域R81よりも幅方向Wの外側に第2圧搾部92が配置されているため、第1領域R81を越えて幅方向の外側に導かれた体液は、第2圧搾部92によって非肌側に引き込まれつつ前後方向に拡散できる。よって、第1領域を越えて幅方向の外側に導かれた体液を第2領域の広い範囲に体液を導き、当該体液に対して第2抗菌剤82による抗菌効果を発揮できる。本体止着部61の外側縁61Eは、第1領域R81の外側縁よりも幅方向Wの外側に位置し、第2領域R82の外側縁よりも幅方向Wの内側に位置してよい。当該構成によれば、第1領域R81と第2領域R82が重なる領域において、本体止着部61を介して着用物品に吸収性物品をしっかり止着して、第2領域R82のみが配置された領域(第1領域よりも幅方向の外側の領域)において、吸収性物品が柔軟に変形し、特に太ももの内側に対して抗菌剤が当たり続けることを抑制できる。
【0047】
吸収コア22のパルプ25は、肌側シート34の非肌面から肌側シート34内に延びてよい。図7は、肌側シート34及び吸収コア22の断面を模式的に示した図である。肌側シートは、吸収コア22よりも肌側T1において吸収コア22に重なって配置されたシートである。本実施の形態の肌側シート34は、本体トップシート31、セカンドシート38、サイドシート32、及び第1コアラップ211によって構成されている。よって、肌側シート34の非肌面は、第1コアラップ211の非肌面によって構成されている。パルプによって肌側シート側から吸収コアに迅速に体液を引き込むことができ、迅速かつ効率的に抗菌作用を発揮することができる。好適には、パルプ25は、本体トップシート31内に延びていてよい。当該構成によれば、本体トップシート31に排出された体液をパルプ25によって迅速に引き込み、当該体液に迅速に抗菌作用を付与できる。
【0048】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、使用前の抗菌剤の脱落を抑制し、吸収性物品の使用時に抗菌効果を発揮できる吸収性物品を提供できる。
【符号の説明】
【0050】
1 :吸収性物品
20 :吸収体
21 :コアラップ
211 :第1コアラップ
212 :第2コアラップ
22 :吸収コア
31 :本体トップシート
311 :本体肌側領域
312 :本体非肌側領域
32 :サイドシート
35 :バックシート
41 :ウイング(フラップ部)
45 :フラップトップシート
451 :フラップ肌側領域
452 :フラップ非肌側領域
46 :フラップバックシート
61 :本体止着部
62 :フラップ止着部
72 :フラップ剥離シート
75 :個包装シート
80 :抗菌剤
81 :第1抗菌剤
82 :第2抗菌剤
D1 :第1方向
FL1 :第1折り目
FL2 :第2折り目
FL3 :フラップ折り目
L :前後方向
R81 :第1領域
R82 :第2領域
S1 :前領域
S2 :後領域
S3 :股下領域
T :厚み方向
T1 :肌側
T2 :非肌側
W :幅方向
X :領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7