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特許7598360ケイ素含有膜の堆積のためのシラシクロアルカンを含む組成物及びその組成物を使用する方法
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  • 特許-ケイ素含有膜の堆積のためのシラシクロアルカンを含む組成物及びその組成物を使用する方法 図1
  • 特許-ケイ素含有膜の堆積のためのシラシクロアルカンを含む組成物及びその組成物を使用する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ケイ素含有膜の堆積のためのシラシクロアルカンを含む組成物及びその組成物を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20241204BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20241204BHJP
   H01L 21/471 20060101ALI20241204BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/316 C
H01L21/471
C23C16/42
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022504645
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 US2020043478
(87)【国際公開番号】W WO2021016553
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】62/878,724
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ニコラス バーティス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ゴードン リッジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ミン リー
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シアオ
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0009141(US,A1)
【文献】国際公開第2019/055393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/316
H01L 21/471
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性化学堆積プロセスでケイ素含有膜を堆積するための方法であって、
表面特徴を備える基材を、-20℃~150℃の範囲の1つ又は複数の温度の反応器中に配置する工程;
式I:
【化1】
(式中、R1が、水素、直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基、環状のC3~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルケニル基及び直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルキニル基からなる群から選択され;R2が、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルキニル基及び環状のC3~C10アルキル基からなる群から選択され;R3及びR4が、水素及び直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択され;nが、3~6の整数である)によって表される少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物を、前記反応器中に導入する工程、式Iによって表される前記シラシクロアルカン前駆体化合物のR およびR の少なくとも一方もしくは両方は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基または少なくとも1つの三重結合を有するアルキニル基から選択される
プラズマ源を前記反応器中に提供して、前記少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を少なくとも部分的に反応させて、流動性液体を形成する工程
を含み、前記流動性液体が、前記表面特徴の一部を少なくとも部分的に充填し、前記少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物を実質的に含有しない、方法。
【請求項2】
前記プラズマ源が酸素を含み、水(H2O)プラズマ、酸素プラズマ、オゾン(O3)プラズマ、NOプラズマ、N2Oプラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、二酸化炭素(CO2)プラズマ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマ源が窒素を含み、窒素プラズマ、窒素及び水素を含むプラズマ、窒素及びヘリウムを含むプラズマ、窒素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア及びヘリウムを含むプラズマ、アンモニア及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニア及び窒素を含むプラズマ、NF3、NF3プラズマ、有機アミンプラズマ並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマ源が水素を含み、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマ並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
堆積プロセスがプラズマ強化化学気相堆積であり、かつ前記プラズマがインサイチュで生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
堆積プロセスがプラズマ強化化学気相堆積であり、かつ前記プラズマがリモートで生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応器の圧力が100torr以下に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
堆積された膜が、膜の特性を改善又は改質するために、堆積の後に、熱アニール、UVアニール又は電子ビーム処理によってさらに処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記後処理が反応性環境中で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ケイ素含有膜が、炭化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、炭素ドープされた窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜及び炭素ドープされた酸窒化ケイ素膜からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記シラシクロアルカン前駆体化合物が、IC又はICP-MSによって測定した場合に、10ppm以下の濃度で、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crからなる群から選択される不純物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
流動性化学堆積プロセスでケイ素含有膜を堆積するための方法であって、
ポア、ビア又はトレンチを有する表面特徴を備える基材を、-20℃~150℃の範囲の1つ又は複数の温度の反応器中に配置する工程;
式I:
【化2】
(式中、R1が、水素、直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基、環状のC3~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルケニル基及び直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルキニル基からなる群から選択され;R2が、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルキニル基及び環状のC3~C10アルキル基からなる群から選択され;R3及びR4が、水素及び直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択され;nが、3~6の整数である)によって表される少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物を、前記反応器中に導入する工程、式Iによって表される前記シラシクロアルカン前駆体化合物のR およびR の少なくとも一方もしくは両方は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基または少なくとも1つの三重結合を有するアルキニル基から選択される
酸素及び窒素のうち1つ又は両方を含むプラズマ源を前記反応器中に提供して、前記少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を少なくとも部分的に反応させて、流動性液体を形成する工程
を含み、前記流動性液体が、前記表面特徴の一部を少なくとも部分的に充填し、前記少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物を実質的に含有しない、方法。
【請求項13】
前記プラズマ源が酸素を含み、水(H2O)プラズマ、酸素プラズマ、オゾン(O3)プラズマ、NOプラズマ、N2Oプラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、二酸化炭素(CO2)プラズマ及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラズマ源が水素を含み、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマ並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プラズマ源が窒素を含み、窒素プラズマ、窒素及び水素を含むプラズマ、窒素及びヘリウムを含むプラズマ、窒素及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア及びヘリウムを含むプラズマ、アンモニア及びアルゴンを含むプラズマ、アンモニア及び窒素を含むプラズマ、NF3、NF3プラズマ、有機アミンプラズマ並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
堆積プロセスがプラズマ強化化学気相堆積であり、かつ前記プラズマがインサイチュで生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
堆積プロセスがプラズマ強化化学気相堆積であり、かつ前記プラズマがリモートで生成される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記反応器の圧力が100torr以下に保持される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
堆積された膜が、膜の特性を改善又は改質するために、堆積の後に、熱アニール、UVアニール又は電子ビーム処理によってさらに処理される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記後処理が反応性環境中で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ケイ素含有膜が、炭化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、炭素ドープされた窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜及び炭素ドープされた酸窒化ケイ素膜からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、1,1-ジビニル-1-シラシクロブタン、1-メチル-1-ビニル-1-シラシクロブタン、1-エチル-1-ビニル-1-シラシクロブタン、1,1-ジビニル-1-シラシクロペンタン、1-メチル-1-ビニル-1-シラシクロペンタン、1-エチル-1-ビニル-1-シラシクロペンタン、1,1-ジビニル-1-シラシクロヘキサン、1-メチル-1-ビニル-1-シラシクロヘキサン、1-エチル-1-ビニル-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジアリル-1-シラシクロブタン、1-メチル-1-アリル-1-シラシクロブタン、1-エチル-1-アリル-1-シラシクロブタン、1,1-ジアリル-1-シラシクロペンタン、1-メチル-1-アリル-1-シラシクロペンタン、1-エチル-1-アリル-1-シラシクロペンタン、1,1-ジアリル-1-シラシクロヘキサン、1-メチル-1-アリル-1-シラシクロヘキサン、1-エチル-1-アリル-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジエチニル-1-シラシクロブタン、1-メチル-1-エチニル-1-シラシクロブタン、1-エチル-1-エチニル-1-シラシクロブタン、1,1-エチニル-1-シラシクロペンタン、1-メチル-1-エチニル-1-シラシクロペンタン、1-エチル-1-エチニル-1-シラシクロペンタン、1,1-ジエチニル-1-シラシクロヘキサン、1-メチル-1-エチニル-1-シラシクロヘキサン又は1-エチル-1-エチニル-1-シラシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、IC又はICP-MSによって測定した場合に、10ppm以下の濃度で、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crからなる群から選択される不純物を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの第一のシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物が、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(又はブチルヒドロキシトルエンを表すBHT)、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、プロピルエステル3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2-(1,1-ジメチルエチル)-1,4-ベンゼンジオール、ジフェニルピクリルヒドラジル、4-tert-ブチルカテコール、N-メチルアニリン、p-メトキシジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、p-ヒドロキシジフェニルアミン、フェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート)メタン、フェノチアジン、アルキルアミドノイソ尿素、チオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、環状ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)及びオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)からなる群から選択される安定剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物が、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(又はブチルヒドロキシトルエンを表すBHT)、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、プロピルエステル3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2-(1,1-ジメチルエチル)-1,4-ベンゼンジオール、ジフェニルピクリルヒドラジル、4-tert-ブチルカテコール、N-メチルアニリン、p-メトキシジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、p-ヒドロキシジフェニルアミン、フェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート)メタン、フェノチアジン、アルキルアミドノイソ尿素、チオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、環状ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)及びオキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)からなる群から選択される安定剤をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年7月25日に提出された米国仮特許出願62/878724号に基づく優先権を主張していて、その仮特許出願の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
少なくとも1つのシラシクロアルカンを含むケイ素前駆体を使用する、流動性の、定比又は不定比の、炭化ケイ素又は炭窒化ケイ素の膜を堆積するための方法及び組成物が、本明細書において説明される。より具体的には、誘電体膜を堆積するのに使用される、シラシクロアルカン前駆体を使用する堆積プロセス、例えば、以下に限定するものではないが、流動性化学気相堆積(FCVD)、リモートプラズマ強化化学気相堆積(RPCVD)、インサイチュ補助リモートプラズマ強化化学気相堆積(インサイチュ補助RPCVD)、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)、サイクル性リモートプラズマ強化化学気相堆積(C-RPCVD)、及びシラシクロアルカン前駆体を含む組成物が本明細書において説明される。
【背景技術】
【0003】
低圧化学気相堆積(LPCVD)プロセスは、窒化ケイ素膜の堆積のために半導体産業において使用される、広く受け入れられている方法のうちの1つである。アンモニアを使用する低圧化学気相堆積(LPCVD)は、妥当な成長速度及び均質性を得るために、650℃超の堆積温度を必要とする場合がある。典型的には、改善された膜特性を提供するために、より高い堆積温度が用いられる。窒化ケイ素を成長させるための、より一般的な産業的方法のうち1つは、シラン、ジクロロシラン及び/又はアンモニアを前駆体として使用する、750℃超の温度でのホットウォール反応器中での低圧化学気相堆積による。しかし、この方法を使用することには複数の欠点がある。例えば、特定の前駆体、例えばシランは、自然発火性である。このことは、取り扱い及び使用において問題となり得る。さらに、ジクロロシランから堆積された膜は、堆積プロセスの間に副生成物として形成される特定の不純物、例えば塩素及び塩化アンモニウム、を含有する場合がある
【0004】
米国特許第9455138号明細書は、1回以上のプロセスサイクルを行って、プラズマ強化原子層堆積(PEALD)によって、基材上のトレンチ中に誘電体膜を形成するための方法であって、それぞれのプロセスサイクルが、(i)ケイ素含有前駆体をパルスで供給する工程、(ii)窒素含有ガスが存在しない中で、30~800sccmの流量で、水素含有反応体ガスを供給する工程、(iii)反応空間に貴ガスを供給する工程、並びに(iv)反応空間中に、反応体ガス及び希ガスが存在し、かつ任意の前駆体が存在しない中でRF電力を適用して、1原子層厚さ/サイクル未満の成長速度で、誘電体膜を構成する単層を基材上に形成する工程を含む、方法を開示している。
【0005】
米国特許第9234276号明細書は、SiC膜を提供するための方法及びシステムを開示している。SiCの層は、1つ以上のSi-H結合及び/又はSi-Si結合を有する1つ又は複数のSi含有前駆体を用いるプロセス条件の下で提供することができる。Si含有前駆体はまた、1つ以上のSi-O結合及び/又はSi-C結合を有する場合がある。実質的に低いエネルギー状態にある1つ又は複数のラジカル種がSi含有前駆体と反応して、SiC膜を形成することができる。1つ以上のラジカル種は、リモートプラズマ源において形成することができる。
【0006】
米国特許第8846536号明細書は、流動性誘電体膜を堆積及び改質する方法を開示している。1つ又は複数の統合プロセスによって、流動性誘電体膜の湿式エッチング速度を、少なくとも10の要素によって変更することができる。
【0007】
米国特許出願公開第2013/0217241号明細書は、Si-C-N含有流動性層の堆積及び処理を開示している。Si及びCは、Si-C含有前駆体に起因するものである場合があり、一方でNは、N含有前駆体に起因するものである場合がある。初期のSi-C-N含有流動性層が、流動性を可能とする構成成分を除去するように処理される。これらの構成成分の除去は、エッチング耐性を上昇させ、収縮を減少させ、膜張力及び電気特性を調節する場合がある。後処理は、熱アニール、UV暴露又は高密度プラズマであってよい。
【0008】
米国特許第8889566号明細書は、局所的なプラズマによってケイ素前駆体を励起して第二のプラズマを用いて堆積することによって、流動性膜を堆積する方法を開示している。ケイ素前駆体は、シリルアミン、高次シラン又はハロゲン化シランである場合がある。第二の反応体ガスは、NH3、N2、H2及び/又はO2である場合がある。
【0009】
米国特許第7825040号明細書は、アルコキシシラン又はアミノシラン前駆体を導入して、プラズマ反応によって流動性Si含有膜を堆積することによって、ギャップを充填する方法を開示している。前駆体は、Si-C結合又はC-C結合を含有しない。
【0010】
米国特許第8889566号、7521378号及び8575040号明細書は、ガス層ポリマー化である流動性化学気相堆積プロセスを使用する、酸化ケイ素膜を堆積する手法を説明している。化合物、例えばトリシリルアミン(TSA)を使用してSi、H及びN含有オリゴマーを堆積していて、そのオリゴマーは、続いて、オゾン暴露を使用してSiOx膜に酸化されていた。
【0011】
米国特許第8846536号明細書は、流動性誘電体膜を堆積及び改質するための方法を開示している。1つ又は複数の統合プロセスによって、流動性誘電体膜の湿式エッチング速度を、少なくとも10の要素によって変更することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、当分野において、流動性の、高純度の炭化ケイ素又は炭窒化ケイ素膜を堆積して、半導体製造プロセス中にビア又はトレンチを充填するための低温(例えば400℃以下、とりわけ150℃以下の処理温度)の方法であって、膜が、他の堆積方法又は前駆体を使用する他の窒化ケイ素膜と比較して、以下の特徴:2.2グラム/立方センチメートル(g/cc)以上の密度、(希釈フッ化水素酸(HF)中で測定して)低い湿式エッチング速度、及びそれらの組み合わせのうち1つ又は複数を有する、方法を提供する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの態様において、流動性化学堆積プロセスでケイ素含有膜を堆積するための方法であって、表面特徴を備える基材を、-20℃~約150℃の範囲の1つ又は複数の温度の反応器中に配置する工程;式I:
【化1】
(式中、R1が、水素、直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基、環状のC3~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルケニル基及び直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルキニル基からなる群から選択され;R2が、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルキニル基及び環状のC3~C10アルキル基からなる群から選択され;R3及びR4が、水素及び直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択され;nが、3~6の整数である)によって表される少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物を、反応器中に導入する工程;プラズマ源を反応器中に提供して、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を少なくとも部分的に反応させて、流動性液体を形成する工程を含み、流動性液体が、表面特徴の一部を少なくとも部分的に充填し、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物を実質的に含有しない、方法が提供される。本発明の特定の実施態様において、少なくとも2つのSi-H基を含む、少なくとも1つの第二のケイ素化合物、例えばシラン、ジシラン、トリシラン、トリシリルアミン及びその誘導体、有機アミノシラン、例えばジイソプロピルアミノシラン、ジイソプロピルアミノジシランを用いて、得られるケイ素含有膜中のケイ素の含有量を調節することができる。
【0014】
別の態様において、流動性化学堆積プロセスでケイ素含有膜を堆積するための方法であって、ポア、ビア又はトレンチを有する表面特徴を備える基材を、-20℃~約150℃の範囲の1つ又は複数の温度の反応器中に配置する工程;式I:
【化2】
(式中、R1が、水素、直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基、環状のC3~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルケニル基及び直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルキニル基からなる群から選択され;R2が、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルキニル基及び環状のC3~C10アルキル基からなる群から選択され;R3及びR4が、水素及び直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択され;nが、3~6の整数である)によって表される少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物を、反応器中に導入する工程;酸素及び窒素のうち1つ又は両方を含むプラズマ源を反応器中に提供して、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を少なくとも部分的に反応させて、流動性液体を形成する工程を含み、流動性液体が、表面特徴の一部を少なくとも部分的に充填し、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物を実質的に含有しない、方法が提供される。本発明の特定の実施態様において、少なくとも2つのSi-H基を含む、少なくとも1つの第二のケイ素前駆体、例えばシラン、ジシラン、トリシラン、トリシリルアミン及びその誘導体、有機アミノシラン、例えばジイソプロピルアミノシラン、ジイソプロピルアミノジシランを用いて、得られるケイ素含有膜のケイ素の含有量を調節することができる。
【0015】
本発明の実施態様は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例に従って堆積され、不活性環境中で、400℃で熱アニールされた膜のSEM顕微鏡像である。
図2図1の堆積されたままの膜についてのFTIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において説明される組成物又は配合物、及びその組成物又は配合物を使用する方法は、後堆積処理に際して望ましい膜特性を提供するケイ素含有膜を、基材表面の少なくとも一部に堆積することによって、先行技術の問題を克服する。特定の実施態様において、基材は表面特徴を備える。ケイ素含有膜は、炭化ケイ素膜、炭素ドープされた窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜及び炭素ドープされた酸窒化ケイ素膜からなる群から選択される。本明細書において使用されるとき、用語「表面特徴」は、基材又は部分的に製造された基材が、以下:ポア、トレンチ、シャロートレンチアイソレーション(STI)、ビア、凹部特徴又は類似のもの、のうち1つ又は複数を備えることを意味する。組成物は、予備混合された組成物、(堆積プロセスにおいて使用される前に混合された)予備混合物又は(堆積プロセスの間に混合された)インサイチュ混合物であってよい。従って、本開示において、用語「混合物」、「配合物」及び「組成物」は、相互交換可能である。
【0018】
1つの態様において、流動性化学堆積プロセスでケイ素含有膜を堆積するための方法であって、表面特徴を備える基材を、-20℃~約150℃の範囲の1つ又は複数の温度の反応器中に配置する工程;式I:
【化3】
(式中、R1が、水素、直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基、環状のC3~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルケニル基及び直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルキニル基からなる群から選択され;R2が、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルキニル基及び環状のC3~C10アルキル基からなる群から選択され;R3及びR4が、水素及び直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択され;nが、3~6の整数である)によって表される少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物を、反応器中に導入する工程;プラズマ源を反応器中に提供して、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を少なくとも部分的に反応させて、流動性液体を形成する工程を含み、流動性液体が、表面特徴の一部を少なくとも部分的に充填し、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物を実質的に含有しない、方法が提供される
【0019】
1つの特定の実施態様において、流動性化学堆積プロセスでケイ素含有膜を堆積するための方法であって、ポア、ビア又はトレンチを有する表面特徴を備える基材を、-20℃~約150℃の範囲の1つ又は複数の温度の反応器中に配置する工程;式I:
【化4】
(式中、R1が、水素、直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基、環状のC3~C10アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルケニル基及び直鎖又は分岐鎖のC2~C10アルキニル基からなる群から選択され;R2が、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルケニル基、直鎖又は分岐鎖のC2~C6アルキニル基及び環状のC3~C10アルキル基からなる群から選択され;R3及びR4が、水素及び直鎖又は分岐鎖のC1~C10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択され;nが、3~6の整数である)によって表される少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物を、反応器中に導入する工程;酸素及び窒素のうち1つ又は両方を含むプラズマ源を反応器中に提供して、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物を少なくとも部分的に反応させて、流動性液体を形成する工程を含み、流動性液体が、表面特徴の一部を少なくとも部分的に充填し、少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体化合物が、自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物を実質的に含有しない、方法が提供される。
【0020】
別の実施態様において、本発明の方法における使用のためのケイ素前駆体は、式Ia:
【化5】
(式中、R1及びR2は上で規定されるとおりであり、mは1~4である)の構造によって表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つのシラシクロアルカン前駆体である。
【0021】
(式Iaを含む)式Iを有する例示的な化合物は、1,1-ジビニル-1-シラシクロブタン、1-メチル-1-ビニル-1-シラシクロブタン、1-エチル-1-ビニル-1-シラシクロブタン、1,1-ジビニル-1-シラシクロペンタン、1-メチル-1-ビニル-1-シラシクロペンタン、1-エチル-1-ビニル-1-シラシクロペンタン、1,1-ジビニル-1-シラシクロヘキサン、1-メチル-1-ビニル-1-シラシクロヘキサン、1-エチル-1-ビニル-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジアリル-1-シラシクロブタン、1-メチル-1-アリル-1-シラシクロブタン、1-エチル-1-アリル-1-シラシクロブタン、1,1-ジアリル-1-シラシクロペンタン、1-メチル-1-アリル-1-シラシクロペンタン、1-エチル-1-アリル-1-シラシクロペンタン、1,1-ジアリル-1-シラシクロヘキサン、1-メチル-1-アリル-1-シラシクロヘキサン、1-エチル-1-アリル-1-シラシクロヘキサン、1,1-ジエチニル-1-シラシクロブタン、1-メチル-1-エチニル-1-シラシクロブタン、1-エチル-1-エチニル-1-シラシクロブタン、1,1-エチニル-1-シラシクロペンタン、1-メチル-1-エチニル-1-シラシクロペンタン、1-エチル-1-エチニル-1-シラシクロペンタン、1,1-ジエチニル-1-シラシクロヘキサン、1-メチル-1-エチニル-1-シラシクロヘキサン又は1-エチル-1-エチニル-1-シラシクロヘキサンを含むが、それらに限定されない。
【0022】
式I及びIaによって表される化合物について、好ましくは、少なくとも1つのR1若しくはR2、又はその両方は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基、又は少なくとも1つの三重結合を有するアルキニル基から選択される。
【0023】
上の式において、及び本明細書を通じて、用語「直鎖又は分岐鎖のアルキル」は、1~10個、3~10個又は1~6個の炭素原子を有する直鎖の官能基を意味する。上の式において、及び本明細書を通じて、用語「分岐鎖のアルキル」は、3~10個又は1~6個の炭素原子を有する直鎖の官能基を意味する。例示的な直鎖のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基を含むが、それらに限定されない。例示的な分岐鎖のアルキル基は、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、tert-ペンチル、イソヘキシル及びネオヘキシルを含むが、それらに限定されない。特定の実施態様において、アルキル基は、それに結合された1つ又は複数の官能基、例えば、以下に限定するものではないが、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基又はそれらの組み合わせを有してよい。他の実施態様において、アルキル基は、それに結合された1つ又は複数の官能基を有しない。アルキル基は、飽和であるか、又は代わりに不飽和であってよい。
【0024】
上の式において、及び本明細書を通じて、用語「環状のアルキル」は、3~10個又は5~10個の原子を有する環状の基を意味する。例示的な環状のアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチル基を含むが、それらに限定されない。特定の実施態様において、環状のアルキル基は、1つ又は複数のC1~C10の直鎖、分岐鎖の置換基又は酸素若しくは窒素原子を含有する置換基を有してよい。この実施態様又は他の実施態様において、環状のアルキル基は、1つ又は複数の、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルコキシ基、例えばメチルシクロヘキシル基又はメトキシシクロヘキシル基を、置換基として有してよい。
【0025】
上の式において、及び本明細書を通じて、用語「アリール」は、3~10個の炭素原子、5~10個の炭素原子又は6~10個の炭素原子を有する芳香族の環状の官能基を意味する。例示的なアリール基は、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル及びo-キシリルを含むが、それらに限定されない。
【0026】
上の式において、及び本明細書を通じて、用語「アルケニル基」は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有し、かつ2~12個、2~10個又は2~6個の炭素原子を有する基を意味する。例示的なアルケニル基は、ビニル又はアリル基を含むが、それらに限定されない。
【0027】
用語「アルキニル基」は、1つ又は複数の炭素-炭素三重結合を有し、かつ2~12個又は2~6個の炭素原子を有する基を意味する。例示的なアルキニル基は、エチニル又は2-プロピン-1-イル基を含むが、それらに限定されない。
【0028】
用語「アルキレン基」は、アルキルから2つの水素原子を取り除くことによって誘導される基を意味する。例示的なアルキレン基は、メチレン(-CH2-)又はエチレン(-CH2CH2-)基を含むが、それらに限定されない。
【0029】
上の式において、及び本明細書を通じて、用語「不飽和の」は、本明細書において使用されるとき、官能基、置換基、環又はブリッジが、1つ又は複数の炭素二重又は三重結合を有することを意味する。不飽和の環の例は、芳香族環、例えばフェニル環であってよいが、それらに限定されない。用語「飽和の」は、官能基、置換基、環又はブリッジが、1つ又は複数の二重又は三重結合を有しないことを意味する。
【0030】
特定の実施態様において、式中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及び/又は環状のアルキル基のうち1つ又は複数は、「置換されている」か、あるいは例えば水素原子の位置において置換された1つ又は複数の原子又は原子の群を有してよい。例示的な置換基は、酸素、硫黄、ハロゲン原子(例えばF、Cl、I又はBr)、窒素、アルキル基及びリンを含むが、それらに限定されない。他の実施態様において、式中のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族及び/又はアリール基のうち1つ又は複数は、非置換であってよい。
【0031】
本明細書において説明されるケイ素前駆体化合物は、反応チャンバー、例えばプラズマ強化CVD反応器に、種々の手法で輸送することができる。1つの実施態様において、液体輸送システムを利用することができる。代替の実施態様において、液体輸送とフラッシュ気化を組み合わせたプロセスユニット、例えばMSP Corporation of Shoreview,MNによって製造されたターボ気化器を用いることができ、低揮発性材料を容量測定的に輸送することを可能とし、このことは、前駆体の熱分解を伴わない再現可能な輸送及び堆積をもたらす。液体輸送配合物において、本明細書において説明される前駆体は、無希釈の液体の形態で輸送することができるか、又は代わりに、本明細書において説明される前駆体を含む溶媒配合物又は溶媒組成物で、用いることができる。従って、特定の実施態様において、前駆体配合物は、所与の最終使用用途において、基材上に膜を形成するのに望ましい及び有利である場合がある適した特徴の1つ又は複数の溶媒構成成分を含んでよい。
【0032】
直接プラズマ又はリモートプラズマ源のいずれかを使用して、堆積を行うことができる。リモートプラズマ源について、デュアルプレナムシャワーヘッドを使用して、ケイ素前駆体の蒸気と、シャワーヘッド内部のラジカルとの予備混合を妨げて、それによって粒子が生成することを回避することができる。シャワーヘッド部分のテフロン(登録商標)コーティングを行って、ラジカルの寿命及びラジカルの伝達を最大化することができる。
【0033】
好ましくは、本発明による式Iを有するシラシクロアルカン化合物、並びに本発明による式I及びIaを有するシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物は、ハライドを実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、ハライドイオン(又はハライド)、例えば塩化物、臭化物又はヨウ化物、例えば塩化物(すなわち塩化物含有種、例えばHCl、又は少なくとも1つのSi-Cl結合を有するシラシクロアルカン化合物)、フッ化物、臭化物及びヨウ化物に関するとき、イオンクロマトグラフィ(IC)又はICP-MSによって測定した場合に(重量で)5ppm未満、好ましくはIC又はICP-MSによって測定した場合に3ppm未満、より好ましくはIC又はICP-MSによって測定した場合に1ppm未満、最も好ましくはIC又はICP-MSによって測定した場合に0ppmであることを意味する。塩化物は、式Iを有するシラシクロアルカン化合物のための分解触媒として作用することが知られている。最終生成物中の有意なレベルの塩化物は、シラシクロアルカン前駆体化合物を分解させる場合がある。シラシクロアルカン化合物の緩やかな分解は、膜堆積プロセスに直接的に影響を与えて、半導体製造者が、膜の仕様を満たすことを困難にする場合がある。加えて、貯蔵寿命又は安定性は、式Iを有するシラシクロアルカン化合物の、より速い分解速度によって負に影響を与えられ、それによって、1~2年間の貯蔵寿命を保証することを困難にする。従って、(式Iaを含む)式Iを有するシラシクロアルカン化合物の加速された分解には、これらの可燃性及び/又は自然発火性のガス状副生成物に関する安全性及び性能の懸念がある。好ましくは、式Iを有するシラシクロアルカン化合物は、金属イオン、例えばLi+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関するとき、ICP-MSによって測定した場合に、(重量で)5ppm未満、好ましくは3ppm未満、より好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppmであることを意味する。幾つかの実施態様において、式I又はIaを有するシラシクロアルカン化合物は、金属イオン、例えばLi+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を含有しない。本明細書において使用されるとき、用語、金属不純物を「含有しない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、貴金属、例えば合成において使用されるルテニウム又は白金触媒に起因する揮発性Ru又はPt錯体に関するとき、ICP-MS又は金属を測定するための他の分析方法によって測定した場合に、(重量で)1ppm未満、好ましくは0.1ppm未満であることを意味する。
【0034】
ハライドを実質的に含有しない本発明による組成物は、(1)化学合成の間に塩化物源を低減又は排除すること、及び/又は(2)最終の精製された生成物が塩化物を実質的に含有しないように、効果的な精製プロセスを行って粗生成物から塩化物を除去することによって達成することができる。塩化物源は、合成の間に、ハライド、例えばクロロジシラン、ブロモジシラン又はヨードジシラン、を含有しない試薬を使用して、それによってハライドイオンを含有する副生成物の製造を回避することによって、減少させることができる。加えて、得られる粗生成物が塩化物不純物を実質的に含有しないように、先述の試薬は塩化物不純物を実質的に含有しないべきである。同様に、合成は、ハライドベースの溶媒、触媒、又は許容できない高いレベルのハライド汚染物質を含有する溶媒を使用しないべきである。さらに、粗生成物を種々の精製方法によって処理して、最終生成物を、ハライド、例えば塩化物を実質的に含有しないものにすることができる。このような方法は先行技術においてよく説明されており、精製プロセス、例えば蒸留又は吸着を含んでよいが、それらに限定されない。一般に、蒸留を使用して、沸点の差を利用することによって所望の生成物から不純物を分離する。最終生成物がハライドを実質的に含有しないように、吸着を使用して、構成成分の異なる吸着特性を利用して分離を効果的にすることもできる。吸着材、例えば商業的に入手可能であるMgO-Al23ブレンドを使用して、ハライド、例えば塩化物を除去することができる。
【0035】
幾つかの実施態様において、本開示によるシラシクロアルカンを含む組成物は、安定剤化合物を含む。例示的な安定剤化合物は、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(又はブチルヒドロキシトルエンを表すBHT)、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPO)、2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、プロピルエステル3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2-(1,1-ジメチルエチル)-1,4-ベンゼンジオール、ジフェニルピクリルヒドラジル、4-tert-ブチルカテコール、N-メチルアニリン、p-メトキシジフェニルアミン、ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、p-ヒドロキシジフェニルアミン、フェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス(メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート)メタン、フェノチアジン、アルキルアミドノイソ尿素、チオジエチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナメート、1,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、環状ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)及び自然に存在する抗酸化剤、例えば、生種子油、麦芽油、トコフェロール及びゴムを含む。安定剤化合物の機能は、シラシクロアルカン前駆体の自己ポリマー化又は自己オリゴマー化を妨げることである。自己ポリマー化又はオリゴマー化生成物は低い揮発性を有し、プロセスツールであって、それらがプロセスツールからプロセスチャンバーへと輸送されるプロセスツールの注入器を閉塞する場合があるため、望ましくない不純物である。前駆体流の分断は、膜成長の再現性を低下させる。
【0036】
複数の実施態様において、本明細書において開示される式Iのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物は、10%以下の、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光のコンテナ中への透過を可能とするコンテナ中に貯蔵される。このようなコンテナは、望ましくない自己ポリマー化又は自己オリゴマー化生成物の任意の放射誘起形成を妨げる。幾つかの実施態様において、コンテナは、7%以下の、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を可能とする。他の実施態様において、コンテナは、5%以下の、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を可能とする。他の実施態様において、コンテナは、3%以下の、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を可能とする。他の実施態様において、コンテナは、2%以下の、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を可能とする。さらに別の実施態様において、コンテナは、1%以下の、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を可能とする。さらに他の実施態様において、コンテナは、0%の、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光のコンテナ中への透過を可能とする。
【0037】
固体媒体を通るUV及び可視光の透過の割合は、当業者にとって公知の任意の方法、例えば、サンプルが一方から照射され、各方向においてサンプルから出る光が測定されるUV-VIS吸収分光法によって測定することができる。商業的に入手可能な任意のUV-VIS吸収装置を、本発明に従って、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を測定するのに使用することができる。
【0038】
コンテナを作る材料及びコンテナの壁の構造の厚さは、約290nm~450nmの波長を有するコンテナ壁構造を通る光の透過を、協働的に抑制する。幾つかの実施態様において、コンテナはステンレス鋼で作られる。ガラス又は石英のコンテナが用いられる場合、コンテナは、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を妨げるのに十分な壁の厚さを有するか、又はこのようなコンテナの壁は、290nm~450nmの波長を有する紫外光及び可視光の透過を妨げる材料の層でカバーされるかのいずれかである。このような材料の例は、金属ホイル及び合成樹脂コーティングである。
【0039】
本発明において用いることができるコンテナの1つの例は、参照によって本明細書に組み込まれる、Air Products and Chemicals,Inc.(Allentown,PA)に対する米国特許第7124913号明細書において開示されている高純度化学コンテナである。
【0040】
好ましくは、本明細書において開示される式Iのシラシクロアルカン前駆体化合物で充填されたコンテナは、熱が前駆体化合物の自己ポリマー化又は自己オリゴマー化を開始する場合もあるため、15℃~30℃の温度で、より好ましくは室温で貯蔵される。
【0041】
好ましくは、本明細書において開示される式Iのシラシクロアルカン前駆体化合物を含む組成物は、水又は有機シラン不純物、例えば自己ポリマー化又は自己オリゴマー化によって形成された有機シラン不純物、を実質的に含有しない。本明細書において使用されるとき、用語「実質的に含有しない」は、自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物に関するとき、(重量で)100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満であり;ガスクロマトグラフィ(GC)によって分析される全ての自己ポリマー化又は自己オリゴマー化不純物の合計は、1.0wt%未満、好ましくは0.5wt%未満、より好ましくは0.1wt%未満、さらにより好ましくは0wt%である。
【0042】
溶媒と、本明細書において説明される少なくとも1つの化合物とを含む組成物に関するそれらの実施態様について、選択される溶媒又はそれらの混合物は、ケイ素化合物と反応しない。組成物中の溶媒の量は、0.5wt%~99.5wt%又は10wt%~75wt%である。この実施態様又は他の実施態様において、溶媒は、式I及びIIの前駆体の沸点(b.p.)に類似の沸点(b.p.)を有するか、又は溶媒のb.p.と式IIのケイ素前駆体のb.p.との差は、40℃以下、30℃以下、20℃以下、10℃以下若しくは5℃以下である。代わりに、沸点の差は、以下の端点:0、10、20、30又は40℃のうち任意の1つ又は複数からの範囲である。b.p.の差の適した範囲の例は、0~40℃、20℃~30℃又は10℃~30℃を含むが、それらに限定されない。組成物中の適した溶媒の例は、エーテル(例えば1,4-ジオキサン、ジブチルエーテル)、第三級アミン(例えばピリジン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)、ニトリル(例えばベンゾニトリル)、アルキル炭化水素(例えばオクタン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばトルエン、メシチレン)、第三級アミノエーテル(例えばビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル)又はそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。
【0043】
本明細書において説明される膜又はコーティングを形成するのに使用される方法は、流動性化学堆積プロセスである。本明細書において開示される方法のための適した堆積プロセスの例は、流動性化学気相堆積(FCVD)、リモートプラズマ強化化学気相堆積(RPCVD)、インサイチュ補助リモートプラズマ強化化学気相堆積(インサイチュ補助RPCVD)、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)、サイクル性リモートプラズマ強化化学気相堆積(C-RPCVD)を含むが、それらに限定されない。本明細書において使用されるとき、用語「流動性化学気相堆積プロセス」は、基材が1つ又は複数の揮発性前駆体にさらされて、1つ又は複数の揮発性前駆体が、基材表面で反応及び/又は分解して、流動性オリゴマーケイ素含有種を提供し、次いでさらなる処理に際して固体の膜又は材料をもたらす、任意のプロセスをいう。本明細書において使用される前駆体、試薬及び源は、時には「ガス状」と説明される場合があるが、前駆体は、液体、又は不活性ガスを伴って若しくは伴わずに、反応器中に、直接気化、バブリング若しくは昇華を介して輸送される固体のいずれかであってよいと理解される。幾つかの場合において、気化された前駆体は、プラズマ生成器を通過することができる。1つの実施態様において、膜は、(例えばリモート生成された、又はインサイチュの)プラズマベースのCVDプロセスを使用して堆積される。本明細書において使用されるとき、用語「反応器」は、反応チャンバー又は堆積チャンバーを含むが、それらに限定されない。
【0044】
特定の実施態様において、基材は、1つ又は複数の前堆積処理、例えば、以下に限定するものではないが、プラズマ処理、熱処理、化学処理、紫外光露光、電子ビーム露光及びそれらの組み合わせを受けて、膜の1つ又は複数の特性に影響を与えることができる。これらの前堆積処理は、不活性、酸化及び又は還元から選択される雰囲気の下で行うことができる。
【0045】
化合物、窒素含有源、酸素源、他の前駆体又はそれらの組み合わせのうち少なくとも1つにエネルギーが適用されて、反応を誘起して、基材上にケイ素含有膜又はコーティングを形成する。このようなエネルギーは、以下に限定するものではないが、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、フォトン、マイクロ波プラズマ、リモートプラズマ方法及びそれらの組み合わせによって提供することができる。特定の実施態様において、二次RF周波数源を使用して、基材表面におけるプラズマ特徴を変更することができる。堆積がプラズマを含む実施態様において、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器中で直接的に生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代わりにプラズマが反応器の外部で生成されて反応器中に供給されるリモートプラズマ生成プロセスを含んでよい。
【0046】
先に記載されるように、方法は、表面特徴を備える基材の表面の少なくとも一部に膜を堆積する。基材は反応器中に配置され、約-20℃~約100℃の1つ又は複数の温度に保持される。1つの特定の実施態様において、基材の温度は、チャンバーの壁の温度より低い。基材の温度は、150℃以下の温度、好ましくは50℃以下かつ-20℃以上の温度に保持される。
【0047】
先に記載されるように、基材は、1つ又は複数の表面特徴を備える。1つの特定の実施態様において、1つ又は複数の表面特徴は、100μm以下の幅、1μm以下の幅又は0.5μmの幅を有する。この実施態様又は他の実施態様において、表面特徴のアスペクト比(深さ/幅の比)は、存在する場合には、0.1:1以上、1:1以上、10:1以上、20:1以上又は40:1以上である。基材は、単結晶シリコンウエハ、炭化ケイ素のウエハ、酸化アルミニウム(サファイア)のウエハ、ガラスのシート、金属ホイル、有機ポリマー膜であるか、又はポリマー、ガラス、シリコン若しくは金属の三次元の物品であってよい。基材は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、非晶質炭素、酸炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム及び同様のものの膜を含む、当分野において周知である種々の材料でコーティングされてよい。これらのコーティングは、基材を完全にコーティングしていてよく、種々の材料の複数の層であってよく、部分的にエッチングされて材料の下部の層を露出するように部分的にエッチングされてよい。表面は、その上に、あるパターンで露光され、現像されて、部分的に基材をコーティングするフォトレジスト材料を有していてもよい。
【0048】
特定の実施態様において、反応器は、大気圧未満、750torr(105パスカル(Pa))以下又は100torr(13332Pa)以下の圧力である。他の実施態様において、反応器の圧力は、約0.1torr(13Pa)~約10torr(1333Pa)に保持される。さらなる好ましい実施態様において、反応器の圧力は、約10torr(1333Pa)~約30torr(4000Pa)の範囲に保持されて、熱アニールの際のより少ない収縮で流動性酸化ケイ素を提供する。
【0049】
1つの特定の実施態様において、少なくとも1つの化合物及び窒素を含むプラズマが反応器中に導入される導入工程は、約-20℃~約150℃、約-20℃~約125℃、約-20℃~75℃、約20℃~約100℃、約20℃~約60℃、約20℃~約75℃又は約20℃~約40℃の範囲の1つ又は複数の温度で行われる。これらの実施態様又は他の実施態様において、基材は、表面特徴を備える半導体基材を含む。窒素を含むプラズマは、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、窒素/ヘリウムプラズマ、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、アンモニア/窒素プラズマ、NF3、NF3プラズマ、有機アミンプラズマ及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。少なくとも1つの化合物と窒素源とが反応して、表面特徴及び基材の少なくとも一部に(不定比である)窒化ケイ素膜を形成する。本明細書において使用されるとき、用語「有機アミン」は、少なくとも1つの窒素原子を有する有機化合物をいう。有機アミンの例は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-アミルアミン、エチレンジアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ピロール、2,6-ジメチルピペリジン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-イソプロピルアミン、エチルメチルアミン、N-メチルアニリン、ピリジン及びトリエチルアミンを含むが、それらに限定されない。
【0050】
幾つかの実施態様において、プラズマ源は水素を含み、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマ、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
特定の実施態様において、ケイ素含有膜が堆積された後に、任意選択で、基材は、窒化ケイ素膜が、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素又は炭素ドープされた酸化ケイ素の膜を形成するのに十分な特定のプロセス条件の下で、酸素含有源で処理される。酸素含有源は、水(H2O)、酸素(O2)、酸素プラズマ、オゾン(O3)、NO、N2O、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、N2Oプラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、二酸化炭素(CO2)プラズマ及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0052】
特定の実施態様において、得られるケイ素含有膜又はコーティングに、後堆積処理、例えば、以下に限定するものではないが、プラズマ処理、化学処理、紫外光露光、赤外露光、電子ビーム露光及び/又は他の処理を受けさせて、膜の1つ又は複数の特性に影響を与えることができる。このような後処理は、不活性雰囲気(ヘリウム、アルゴン、窒素など)の下で、還元雰囲気(水素若しくはアンモニアなど)の下で、又は酸化雰囲気(酸素、オゾン、水、亜酸化窒素、過酸化水素など)の下で行うことができる。
【0053】
上記の工程は、本明細書において説明される方法のための1サイクルを規定していて、サイクルは、所望の厚さのケイ素含有膜が得られるまで繰り返すことができる。この実施態様又は他の実施態様において、本明細書において説明される方法の工程は種々の順序で行うことができ、順次又は同時に(例えば別の工程の少なくとも一部の間に)、及びそれらの任意の組み合わせで行うことができると理解される。化合物及び他の試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給するための時間を変えて、得られるケイ素含有膜の定比の組成を変更して行うことができる。
【実施例
【0054】
中位の抵抗(8~12Ωcm)の単結晶シリコンウエハ基材及びSiのパターンウエハに、流動性化学気相堆積(FCVD)膜を堆積した。パターンウエハについて、パターンウエハの幅は、5:1~20:1のアスペクト比で、20~100nmである。デュアルプレナムシャワーヘッドを使用して、Applied Materials Precision 5000システムにおける改造したFCVDチャンバーにおいて、堆積を行った。チャンバーは、直接液体注入(DLI)輸送能力を備えていた。前駆体は、前駆体の沸点に従って、輸送温度で液体であった。初期の流動性酸化ケイ素膜を堆積するために、典型的な液体前駆体の流量は、約100~約5000mg/min、好ましくは1000~2000mg/minであり;チャンバー圧力は、約0.75~12Torr、好ましくは1~3Torrであった。特に、リモートの動力を、2~8Torrで作動させて、2.455GHzの周波数で0~3000Wで、MKSマイクロ波生成器によって、提供した。堆積したままの流動性膜を高密度化するために、膜を、真空中又は酸素環境中で、100~1000℃、好ましくは300~400℃で、改造したPECVDチャンバーを使用して、熱アニールした。632nmにおける厚さ及び屈折率(RI)を、SCI反射率計又はWoollamエリプソメータによって測定した。典型的な膜の厚さは、約10~約2000nmであった。ケイ素ベースの膜の水素含有分の結合特性(Si-H及びC-H)を、Nicolet透過フーリエ変換赤外分光(FTIR)ツールによって、測定し、分析した。Alのパターニングしたウエハに対する流動性及びギャップ充填効果を、Hitachi S-4800システムを2.0nmの分解能で使用して、断面の走査型電子顕微鏡観察(SEM)によって観察した。
【0055】
1-メチル-1-ビニル-1-シラシクロペンタン(MVSCP)を、リモートプラズマ源(RPS)を用いた流動性SiC膜の堆積のために使用した。MVSCP液体流は1500mg/minであり、アンモニア流は1000sccmであり、チャンバー圧力は1Torrであった。基材温度は60℃であり、マイクロ波電力は3000Wであった。堆積したままの膜を、不活性環境中で、400℃で、5分間、熱アニールした。堆積したままの膜の厚さ及び屈折率は、127.1nm及び1.550であった。
【0056】
断面SEMは、パターニングしたウエハ上で良好なギャップ充填を達成したことを示した。図1は、熱アニールの後の良好なギャップ充填と、顕著なボイドがないことを示した。図2は、堆積したままの膜についてのFTIRスペクトルを示している。
【0057】
本発明の特定の原理が、上で、態様又は実施態様と関連して説明されたが、この説明は、例示のためにのみされたものであり、本発明の範囲を限定するものではないことが、明確に理解されるべきである。
図1
図2