(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】通信システム、通信方法、ネットワーク装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 45/24 20220101AFI20241204BHJP
【FI】
H04L45/24
(21)【出願番号】P 2022553384
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2020037475
(87)【国際公開番号】W WO2022070394
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128314
【氏名又は名称】沖川 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100229725
【氏名又は名称】中島 裕美
(72)【発明者】
【氏名】川上 優平
(72)【発明者】
【氏名】木村 英明
(72)【発明者】
【氏名】森田 章弘
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0091445(US,A1)
【文献】特開2019-149772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0356599(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0021015(US,A1)
【文献】A. Sajassi et al.,BGP MPLS-Based Ethernet VPN,Request for Comments: 7432,2015年02月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
H04L 41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EVPN(Ethernet Virtual Private Network)である第1のネットワークとL2網である第2のネットワークが複数の経路で接続されている通信システムであって、
前記複数の経路は、前記第2のネットワークから前記第1のネットワークへの
ユニキャストフレーム、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームのうち、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレーム
のいずれかであると判定されたフレームのみの転送を抑止する転送抑止部を備え、
前記複数の経路のうちの特定の経路のみが前記転送抑止部を無効化し、
ユニキャストフレーム、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームを、前記第2のネットワークから前記第1のネットワークへ転送し、
前記複数の経路に備わるネットワーク装置は、
前記第1のネットワークを介して前記第1のネットワークと前記第2のネットワークの境界に設置されるネットワーク装置の識別情報を取得し、取得した情報を用いて、前記転送抑止部の有効化を判定するBUM疎通可否判定部と、
前記BUM疎通可否判定部の判定に従い、前記転送抑止部を有効化する転送抑止有効化部と、
を備え、
前記BUM疎通可否判定部は、EVPNに備わるDF(Designated forwarder)機能を用いて、前記転送抑止部の有効化を判定する、
通信システム。
【請求項2】
前記複数の経路のうちの少なくともいずれかの経路は、
前記第1のネットワークに接続されている第1のネットワーク装置と、前記第2のネットワークに接続されている第2のネットワーク装置と、
が接続され、
前記第1のネットワーク装置が前記BUM疎通可否判定部を備え、前記第2のネットワーク装置が前記転送抑止有効化部及び前記転送抑止部を備える、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
EVPN(Ethernet Virtual Private Network)である第1のネットワークとL2網である第2のネットワークが複数の経路で接続されている通信システムが実行する通信方法であって、
前記複数の経路は、前記第2のネットワークから前記第1のネットワークへの
ユニキャストフレーム、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームのうち、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレーム
のいずれかであると判定されたフレームのみの転送を抑止する転送抑止部を備え、
前記複数の経路のうちの特定の経路のみが前記転送抑止部を無効化し、
ユニキャストフレーム、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームを、前記第2のネットワークから前記第1のネットワークへ転送し、
前記複数の経路に備わるネットワーク装置が、
前記第1のネットワークを介して前記第1のネットワークと前記第2のネットワークの境界に設置されるネットワーク装置の識別情報を取得し、取得した情報を用いて、前記転送抑止部の有効化を判定するBUM疎通可否判定ステップと、
前記BUM疎通可否判定ステップでの判定に従い、前記転送抑止部を有効化する転送抑止有効化ステップと、
を実行し、
前記BUM疎通可否判定ステップでは、EVPNに備わるDF(Designated forwarder)機能を用いて、前記転送抑止部の有効化を判定する、
通信方法。
【請求項4】
EVPN(Ethernet Virtual Private Network)である第1のネットワークとL2網である第2のネットワークの境界に接続されるネットワーク装置であって、
前記第2のネットワークから前記第1のネットワークへの
ユニキャストフレーム、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームのうち、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレーム
のいずれかであると判定されたフレームのみの転送を抑止する転送抑止部と、
前記第1のネットワークを介して前記第1のネットワークと前記第2のネットワークの境界に設置されるネットワーク装置の識別情報を取得し、取得した情報を用いて、前記転送抑止部の有効化を判定するBUM疎通可否判定部と、
前記BUM疎通可否判定部の判定に従い、前記転送抑止部を有効化する転送抑止有効化部と、
を備え、
前記BUM疎通可否判定部は、EVPNに備わるDF(Designated forwarder)機能を用いて、前記転送抑止部の有効化を判定
し、
前記転送抑止部の無効化時には、ユニキャストフレーム、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームを、前記第2のネットワークから前記第1のネットワークへ転送する、
ネットワーク装置。
【請求項5】
請求項4に記載のネットワーク装置に備わる各機能部としてコンピュータを実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のネットワーク間を接続するネットワーク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークシステムにおいて、信頼性向上や大きく迂回した接続を回避するために、複数拠点でネットワークを相互に接続するといった要望がある。EVPN(Ethernet VPN(Virtual Private Network))と通常のL2網を複数の境界装置で接続する場合、EVPNの基本機能であるDF(Designated forwarder)選定機能を活用することにより、EVPNからL2網への方向の通信については、ユニキャストをall-act設定で通信しつつ、BUM(Broadcast, Unknown Unicast, Multicast)の二重配信を抑制可能とすることができる。
【0003】
しかし、従来技術においては、L2網からEVPNへの方向の通信では、ユニキャスト/BUM問わず同一の設定しかできない。このため、all-act設定とするとBUMが複数の境界装置を経由して二重配信されてしまう、single-act設定とすると、ユニキャスト/BUMともユーザ装置と地理的に離れた境界装置を経由して(網を大きく迂回して)転送される場合がある、といった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、L2網からEVPNへの通信においても、ユニキャストはユーザ装置と地理的に近い境界装置を経由して転送させつつ、BUMの二重配信を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る通信システムは、
第1のネットワークと第2のネットワークが複数の経路で接続されている通信システムであって、
前記複数の経路は、第2のネットワークから第1のネットワークへのブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームの転送を抑止する転送抑止部を備え、
前記複数の経路のうちの特定の経路のみが前記転送抑止部を無効化し、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームを、第2のネットワークから第1のネットワークへ転送する。
【0007】
本開示に係る通信方法は、
第1のネットワークと第2のネットワークが複数のネットワーク装置で接続されている通信システムが実行する通信方法であって、
前記複数の経路は、第2のネットワークから第1のネットワークへのブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームの転送を抑止する転送抑止部を備え、
前記複数の経路のうちの特定の経路のみが前記転送抑止部を無効化し、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームを、第2のネットワークから第1のネットワークへ転送する。
【0008】
本開示に係るネットワーク装置は、
第1のネットワークと第2のネットワークの境界に接続されるネットワーク装置であって、
第2のネットワークから第1のネットワークへのブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム及びマルチキャストフレームの転送を抑止する転送抑止部と、
前記第1のネットワークを介して前記第1のネットワークと前記第2のネットワークの境界に設置されるネットワーク装置の識別情報を取得し、取得した情報を用いて、前記転送抑止部の有効化を判定するBUM疎通可否判定部と、
前記BUM疎通可否判定部の判定に従い、前記転送抑止部を有効化する転送抑止有効化部と、
を備える。
【0009】
本開示のプログラムは、本開示に係るネットワーク装置に備わる各機能部としてコンピュータを実現させるためのプログラムであり、本開示に係る装置が実行する通信方法に備わる各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、L2網からEVPNへの通信においても、ユニキャストはユーザ装置と地理的に近い境界装置を経由して転送させつつ、BUMフレームの二重配信を抑止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】複数のネットワーク装置を介してネットワーク間を接続した様子を表す図である。
【
図2】NW#2からNW#1への方向の二重配信を抑止するネットワーク装置を表す図である。
【
図3】本開示のシステムの動作の一例を示す説明図である。
【
図4】複数のネットワーク装置を介してネットワーク間を接続した様子を表す図である。
【
図5】NW#2からNW#1への方向の二重配信の抑止を複数の装置により実現する際の、NW#1側に設置するネットワーク装置を表す図である。
【
図6】NW#2からNW#1への方向の二重配信の抑止を複数の装置により実現する際の、NW#2側に設置するネットワーク装置を表す図である。
【
図7】本開示のシステムの動作の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明に係わる複数のネットワーク装置を介してネットワークを相互に接続しつつ、ユニキャストフレームはすべてのネットワーク装置を介して疎通させるとともに、BUMフレームの二重配信を抑止するネットワークシステムを説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。なお、本開示の複数のネットワーク装置を介してネットワークを相互に接続しつつ、ユニキャストフレームはすべてのネットワーク装置を介して疎通させるとともに、BUMフレームの二重配信を抑止するネットワークシステムは情報通信産業に適用することができる。
【0013】
以降、複数の装置間で直接的、あるいは、間接的にトラヒック疎通を可能とした通信網をネットワークと呼ぶ。また、任意のネットワークの縁、異なる言い方をすればエッジ、に設置するネットワーク装置を単に境界装置と呼ぶ。
【0014】
図1に、本開示のシステム構成の一例を示す。本開示の通信システムは、ネットワーク10及び20間の接続に複数の境界装置を用いる。例えば、
図1に示すように、第1のネットワーク(以降、NW#1と記載する。)であるネットワーク10と第2のネットワーク(以降、NW#2と記載する。)であるネットワーク20の間に複数の境界装置11、境界装置12を設ける。これにより、ネットワーク10及び20を接続する複数の経路が設けられる。境界装置11と境界装置12は、ネットワーク10及び20を直接接続しているとは限らず、ネットワーク10、およびネットワーク20において、複数の装置を経由することで疎通可能である。
【0015】
境界装置11と境界装置12によるネットワーク接続により、境界装置が同時に複数故障しない限りは通信を継続することが可能となる。また、境界装置11をユーザ装置が設置された拠点に、境界装置12を別のユーザ装置が設置された拠点に設置する、といった方法により、地理的に離れた拠点を経由することなくネットワーク10とネットワーク20を介したユーザ間の通信が可能となる。
【0016】
一方で、ネットワークがそれぞれイーサネット(商標登録)サービスの場合、前記のようなネットワーク間の接続に複数の境界装置を用いる方法には課題が生じる。
図1において、ネットワーク10、ネットワーク20がいずれもイーサネット等に代表されるOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルのレイヤ2での通信を提供するサービスと仮定する。この時、ネットワーク10から境界装置11を介してネットワーク20に到達したトラヒック(フレーム)は、境界装置12を介して再びネットワーク10に流入する可能性がある。このような課題に対する対応策として、例えば先行文献1がある。
【0017】
また、別の課題として、特にBUMフレームの二重配信がある。BUMとは、ブロードキャスト、unknownユニキャスト、マルチキャストの総称であり、これらのフレームは、L2ネットワークにおいて到達可能なすべての装置にフレームを転送する。すなわち、ネットワーク20に接続するユーザ装置23から送信されたBUMフレームは、境界装置11、境界装置12の両方に到達する。いま、境界装置11、境界装置12の両装置が前記BUMフレームをネットワーク10に転送した場合、ネットワーク10に接続するユーザ装置13にそれぞれ到達する。これは、ユーザ装置23から送信された単一のBUMトラヒックが、複数台の境界装置を介して転送することにより、ユーザ装置13に多重配信されることを意味する。
【0018】
このような問題を回避する方法としては、ネットワーク20からネットワーク10への方向に疎通するトラヒックについて、転送可能な境界装置を1台に限定するという方法が考えられる。すなわち、ネットワーク間を接続する複数の境界装置のうち、単一のネットワーク装置のみをActive状態とし、ある時刻においては、前記Active状態のネットワーク装置のみを用いるという方法である。しかしながら、L2網では、ユニキャスト/BUM問わず同一の設定しかできない。例えば、all-active設定では全トラヒックが素通し、single-active設定ではユニキャスト/BUMすべてのトラヒックが1つの境界装置を経由してのみ疎通する。このため、Active状態のネットワーク装置のみを用いた場合、2つのネットワーク間を往来可能な境界装置が限定されることから、地理的に離れた拠点を経由する必要が生じる可能性がある。
【0019】
本開示はこの発明は上記事情に着目してなされたものである。この開示発明の観点は、以下のような構成要素を備えている。すなわち、
本開示に係る通信システムは、
境界装置において、EVPNからL2網への方向のDF選定機能とフィルタ機能を組み合わせ、
L2網からEVPNへの方向においては、all-act設定としつつ、
EVPNからL2網への方向で境界装置がDFとなっている場合はBUMも転送し、
EVPNからL2網への方向で境界装置が非DFとなっている場合はBUMの転送を抑止する。
本開示では、DFとなっている境界装置を特定のネットワーク装置と呼び、特定のネットワーク装置で接続されている経路を特定の経路と呼ぶ。
【0020】
より具体的には、本開示に係るネットワーク装置は、
ネットワーク10及び20の縁に接続されている境界装置であって、
NW#1を介してネットワーク装置に関する情報の送受信を行った結果に基づき、NW#1からNW#2への方向のブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム、マルチキャストフレームを送信可能なネットワーク装置を決定する転送判定部と、
NW#2からNW#1への方向の転送抑止を実現する転送抑止部と、を有し、
NW#1からNW#2への方向のフレームを送信可能なネットワーク装置を決定する転送判定部に基づき、NW2からNW1への方向の前記転送抑止部を有効化する。
以下、NW#1からNW#2への方向をNW#1→NW#2方向と記載し、NW#2からNW#1への方向をNW#2→NW#1方向と記載する。
【0021】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る境界装置11の構成例を
図2に示す。本実施形態に係る境界装置11は、NW#2側物理ポート111と、NW#1側物理ポート112と、NW#2側ポートフレーム受信部113と、NW#2→NW#1方向転送抑止部114と、NW#1側ポートフレーム送信部115と、NW#1側ポートフレーム受信部116と、NW#1→NW#2方向転送抑止部117と、NW#2側ポートフレーム送信部118と、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119と、転送抑止有効化部11aと、境界装置情報DB11bと、を有する境界装置である。境界装置12も境界装置11と同様の構成を備える。
【0022】
本実施形態は、境界装置11及び12がこれらの構成を備えることで、ネットワークを相互に接続しつつ、ネットワーク10及び20間を往来することを防止し、フレームが二重配信されることを防止する。境界装置11及び12は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。なお、本実施形態は、イーサネット(商標登録)に代表されるOSI参照モデルのレイヤ2のネットワークシステムを対象とする。
【0023】
また、本実施形態で、NW#1を介して、NW#1とNW#2間をまたがる境界装置に関する情報を交換するものとする。具体的には、それぞれの境界装置の境界装置情報DB11bにおいて、NW#1とNW#2の境界に設置された旨を示す境界装置情報を保持しており、前記保持している境界装置情報をNW#1を介して交換する。境界装置情報は、DF装置の識別情報などの、DFがどの装置であるのか(自装置か、他の境界装置か)を判別可能な任意の情報である。境界装置情報は、自装置の識別情報、接続先の境界装置の識別情報、接続されている自装置及び接続先の装置のポート番号が含まれていてもよい。識別情報は、例えば、MACアドレス及びネットワーク内で定められたノードIDである。
【0024】
本開示では、この情報交換により、NW#1とNW#2間をまたがる境界装置が複数存在することを判断する。この時、それぞれの境界装置がいずれもBUMトラヒックを転送した場合にNW#1からNW#2方向に多重配信となることから、BUMトラヒックを転送可能な境界装置を一意に決定することが必要となる。NW#1とNW#2間をまたがる境界装置が全ての境界装置の間で共有されているのであれば、あらかじめ定めた計算手法により、BUMトラヒックを転送可能な境界装置を一意に決定することも可能である。この計算方法は、一意の境界装置を決定可能な任意の方法を採用することができ、例えば、境界装置のノードIDが小さい方をDFとすることが例示できる。
【0025】
上記のような、境界装置情報の共有、ならびに、NW#1からNW#2方向へBUMトラヒックを透過するような単一の境界装置を選定する手法として、例えば、NW#1は、EVPN(Ethernet VPN)技術を利用する方法がある。EVPNのDF(Designated forwarder)選定機能を活用し、NW#1からNW#2方向のBUMトラヒックについて多重配信を抑止できる。例えば、境界装置11及び12に備わるNW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119は、EVPNに備わるDF機能を用いて境界装置12をDFに選定し、NW#2→NW#1方向転送抑止部114の有効化/無効化を判定する。
【0026】
境界装置11が非DFである場合、境界装置11に備わるNW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119はBUMトラヒックを転送しないと判定する。この場合、境界装置11に備わる転送抑止有効化部11aは、NW#2→NW#1転送抑止部114を有効化する。これにより、
図3に示す境界装置11のように、境界装置11でNW#2→NW#1方向の転送を抑止することができる。
【0027】
境界装置12がDFである場合、境界装置12に備わるNW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119はBUMトラヒックを転送可能と判定する。この場合、境界装置12に備わる転送抑止有効化部11aは、NW#2→NW#1転送抑止部114を無効化する。これにより、
図3に示す境界装置12のように、境界装置12でNW#2→NW#1方向の転送を行うことができる。
【0028】
境界装置11が非DFである場合に、NW#2、すなわち
図1のネットワーク20、からのフレームをNW#2側物理ポート111で受信し、前記受信したフレームをNW#1、すなわち
図1のネットワーク10、に送信する、境界装置11の処理手順を以下に示す。
【0029】
境界装置11のNW#2側物理ポート111にフレームが到達した場合、当該フレームはNW#2側ポートフレーム受信部113に渡される。NW#2側ポートフレーム受信部113は、受信したフレームがBUMフレーム、すなわち、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム、マルチキャストフレームのいずれかであるか、あるいはユニキャストフレームであるかを判定する。BUMフレームに該当する場合は、NW#2→NW#1方向転送抑止部114にフレームを送信する。ユニキャストフレームの場合、NW#2側ポートフレーム受信部113は、レイヤ2のネットワークシステムの処理、すなわち、MACアドレスの学習状況に応じて当該フレームを送信するポートを選定し、選定されたポートからフレーム送信を行う。
【0030】
NW#2→NW#1方向転送抑止部114は、転送抑止有効化部11aにおいてNW#2→NW#1方向のフレーム転送を抑止する指示が与えられた場合、BUMフレームの転送抑止を実施する。転送を抑止する方法としては、BUMフレームに対するフィルタ機能を用いても良いし、BUMフレームを一時的に保持するバッファ長を0にすることによりフレーム廃棄を実施する方法でも良い。なお、転送抑止有効化部11aにおいてNW#2→NW#1方向のフレーム転送を抑止する指示を発出する条件については後述する。
【0031】
境界装置11がDFであり、転送抑止有効化部11aにおいてNW#2→NW#1方向のBUMフレーム転送を抑止する指示が与えられなかった場合、NW#2→NW#1方向転送抑止部114は、レイヤ2のネットワークシステムの処理に従ってBUMフレームを送信する物理ポートを選定する。本実施形態では、BUMフレームを送信する物理ポートの一つとしてNW#1側物理ポート112が存在する場合について述べるため、前記BUMフレームをNW#1側ポートフレーム送信部115に送信する。
【0032】
NW#1側ポートフレーム送信部115は、NW#1側物理ポート112からBUMフレームを送信する。
【0033】
境界装置11が非DFである場合に、NW#1、すなわち
図1のネットワーク10、からのフレームをNW#1側物理ポート112で受信し、前記受信したフレームをNW#2、すなわち
図1のネットワーク20、に送信する、境界装置11の処理手順を以下に示す。なお、NW#1からNW#2方向のBUMフレーム転送については、EVPNのDF機能を活用しても良い。
【0034】
境界装置11のNW#1側物理ポート112にフレームが到達した場合、当該フレームはNW#1側ポートフレーム受信部116に渡される。NW#1側ポートフレーム受信部116は、受信したフレームがBUMフレーム、すなわち、ブロードキャストフレーム、unknownユニキャストフレーム、マルチキャストフレームのいずれかであるか、あるいはユニキャストフレームであるかを判定する。BUMフレームに該当する場合は、NW#1→NW#2方向転送抑止部117にフレームを送信する。ユニキャストフレームの場合は、レイヤ2のネットワークシステムの処理、すなわち、MACアドレスの学習状況に応じて当該フレームを送信するポートを選定し、選定されたポートからフレーム送信を行う。
【0035】
NW#2→NW#1方向転送抑止部117は、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119の判定結果に基づく転送抑止有効化部11aからの指示に従い、BUMフレームの転送抑止を実施する。BUMトラヒックの転送不可と判定した境界装置、すなわち、EVPNにおけるDF選定された装置以外の境界装置において、転送抑止有効化部11aがNW#1→NW#2方向転送抑止部117を有効化し、NW#1→NW#2方向転送抑止部117においてBUMトラヒックの転送を抑止する。
【0036】
一方、BUMトラヒックの転送可と判定した境界装置12、すなわち、EVPNにおけるDF選定された境界装置12においては、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119の判定に基づき、転送抑止有効化部11aがNW#1→NW#2方向転送抑止部117の機能を無効化する。このため、境界装置12はBUMトラヒックを転送する。
【0037】
この場合、境界装置12のNW#1→NW#2方向転送抑止部117は、レイヤ2のネットワークシステムの処理に従ってBUMフレームを送信する物理ポートを選定する。本実施形態では、BUMフレームを送信する物理ポートの一つとしてNW#2側物理ポート111が存在する場合について述べるため、前記BUMフレームをNW#2側ポートフレーム送信部118に送信する。
【0038】
境界装置12のNW#2側ポートフレーム送信部118は、NW#2側物理ポート111からBUMフレームを送信する。
【0039】
本実施形態の特徴とするところは、EVPNのDF選定に代表される、NW#1→NW2方向BUM疎通可否判定部119の情報を用いて、NW#2→NW#1方向の転送抑止を制御するところにある。すなわち、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119により、NW#1からNW#2方向のBUMトラヒックを抑止すると判定した境界装置においては、NW#2からNW#1方向のBUMトラヒックも抑止するよう、転送抑止有効化部11aに指示を与える。すでに述べたように、転送抑止有効化部11aは、NW#2→NW#1方向転送抑止部114にNW#2→NW#1方向のフレーム転送を抑止する指示を発出する。この結果、NW#1とNW#2間をまたがる境界装置に関する情報交換を行わないNW#2からNW#1方向のBUMフレームを抑止することが可能となる。
【0040】
一方、ユニキャストフレームについては転送抑止の対象外となる。したがって、NW#1とNW#2間をまがる境界装置のいずれでもNW#1からNW#2方向、および、NW#2からNW#1方向の双方にフレーム転送が可能である。
【0041】
以上説明したように、本実施形態は、DF選定の機能(NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119)と、フィルタ機能(NW#2→NW#1方向転送抑止部114)を組み合わせ、非DFの装置については、NW#2→NW#1方向のBUMトラヒック(ブロードキャスト、unknownユニキャスト、マルチキャスト)を廃棄する。
【0042】
NW#2側ポートフレーム受信部113で受信したフレームがBUMトラヒックに該当するか否かを判定し、BUMと判定されたものについてはNW#2→NW#1方向転送抑止部114にて転送を抑止する。本機能はNW#2→NW#1方向の転送抑止有効化部11aにより、初期状態で有効化されている。つまり、全ての装置において当該機能は有効化され、DFに選定された装置のみ本機能を無効とする。
【0043】
[第2の実施形態]
第1の実施形態において、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119と、転送抑止有効化部11aは異なる装置に実装されても良い。
図4に、本実施形態のシステム構成の一例を示す。
【0044】
本実施形態の通信システムは、ネットワーク30とネットワーク40が、境界装置31と境界装置41、境界装置32と境界装置42で接続されている。境界装置31及び32は第1のネットワーク装置として機能し、境界装置41及び42は第2のネットワーク装置として機能する。本実施形態の通信システムは、ネットワーク30を介してネットワーク30と他ネットワークとをまたがる境界装置に関する情報交換を行い、境界装置41でNW#2→NW#1方向の転送抑止を実施する。
【0045】
図5に、境界装置31の構成の一例示す。本実施形態に係る境界装置31は、NW#2側物理ポート311と、NW#1側物理ポート312と、NW#2側ポートフレーム受信部313と、NW#1側ポートフレーム送信部315と、NW#1側ポートフレーム受信部316と、NW#1→NW#2方向転送抑止部317と、NW#2側ポートフレーム送信部318と、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部319と、転送抑止有効化部31aと、境界装置情報DB31bと、転送抑止指示送信部31cと、を有する境界装置である。境界装置32も境界装置31と同様の構成を備える。
【0046】
図6に、境界装置41の構成の一例示す。本実施形態に係る境界装置41は、NW#2側物理ポート411と、NW#1側物理ポート412と、NW#2側ポートフレーム受信部413と、NW#2→NW#1方向転送抑止部414と、NW#1側ポートフレーム送信部415と、NW#1側ポートフレーム受信部416と、NW#2側ポートフレーム送信部418と、転送抑止有効化部41aと、転送抑止指示受信部41dと、を有する境界装置である。境界装置42も境界装置41と同様の構成を備える。
【0047】
NW#2側ポートフレーム受信部313及び413はNW#2側ポートフレーム受信部113と同様の機能を備え、NW#2→NW#1方向転送抑止部414はNW#2→NW#1方向転送抑止部114と同様の機能を備え、NW#1側ポートフレーム送信部315及び415はNW#1側ポートフレーム送信部115と同様の機能を備え、NW#1側ポートフレーム受信部316及び416はNW#1側ポートフレーム受信部116と同様の機能を備え、NW#1→NW#2方向転送抑止部317はNW#1→NW#2方向転送抑止部117と同様の機能を備え、NW#2側ポートフレーム送信部318及び418はNW#2側ポートフレーム送信部118と同様の機能を備え、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部319はNW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部119と同様の機能を備え、境界装置情報DB31bは境界装置情報DB11bと同様の機能を備える。
【0048】
境界装置31は、NW#2→NW#1方向転送抑止部114を備えず、これに代えて転送抑止指示送信部31cを備える。境界装置41は、NW#1→NW#2方向転送抑止部117及び境界装置情報DB11bを備えず、これらに代えて転送抑止指示受信部41dを備える。境界装置31の転送抑止有効化部31aは、NW#1→NW#2方向転送抑止部317の有効化/無効化を行う。境界装41の転送抑止有効化部41aは、NW#2→NW#1方向転送抑止部414の有効化/無効化を行う。
【0049】
本実施形態では、ネットワーク30と他ネットワークとをまたがる境界装置に関する情報交換することが可能な境界装置31が具備するNW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部319の情報を、転送抑止指示送信部31cを介して隣接の装置に送信する。隣接の装置となる境界装置41では、転送抑止指示受信部41dを介して転送抑止有効化部41aに、NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部319からの情報を与える。転送抑止有効化部41aは、与えられた情報に基づき、NW#2→NW#1転送抑止部414においてBUMトラヒックを転送するか抑止するかを指示する。
【0050】
例えば、境界装置31が非DFである場合、境界装置31のNW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部319はBUMトラヒックを転送しないと判定する。境界装置31の転送抑止指示送信部31cは非DFである旨を境界装置41に送信する。境界装置41の転送抑止指示受信部41dは、非DFである旨を受信すると、その旨を転送抑止有効化部41aに送信する。境界装置41の転送抑止有効化部41aは、NW#2→NW#1転送抑止部414を有効化する。これにより、
図7に示すように、境界装置41でNW#2→NW#1方向の転送を抑止することができる。
【0051】
境界装置32がDFである場合、境界装置32のNW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部319はBUMトラヒックを転送可能と判定する。境界装置32の転送抑止指示送信部31cはDFである旨を境界装置42に送信する。境界装置42の転送抑止指示受信部41dは、DFである旨を受信すると、その旨を転送抑止有効化部41aに送信する。境界装置42の転送抑止有効化部41aは、NW#2→NW#1転送抑止部414を無効化する。これにより、
図7に示すように、境界装置42でNW#2→NW#1方向の転送を行うことができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態は、DF選定の機能(NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部319)と、フィルタ機能(NW#2→NW#1方向転送抑止部414)を組み合わせ、非DFの境界装置については、NW#2→NW#1方向のBUMトラヒック(ブロードキャスト、unknownユニキャスト、マルチキャスト)の転送を抑止する。
【0053】
本実施形態では、DF判定を行う境界装置31と、実際にフレーム廃棄を行う境界装置41が分けられている。境界装置31は、DFか非DFかを隣接装置に通知する。隣接する境界装置41が通知された情報に基づき、フレーム廃棄を実施する。
図4の場合、境界装置31及び32がDFか非DFかを判定する装置であり、境界装置41及び42がフレームを廃棄する隣接装置に相当する。
【0054】
境界装置41又は42のどちらがBUMを疎通させれば良いか決定できないため、DF選定情報の受け渡しにより、これを実現することができる。境界装置31、32、41、42は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0055】
なお、本開示は、実施形態に限定されるものではない。実施形態は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10、20、30、40:ネットワーク
11、12、31、32、41、42:境界装置
13、23、33、43:ユーザ装置
111、311、411:NW#2側物理ポート
112、312、412:NW#1側物理ポート
113、313、413:NW#2側ポートフレーム受信部
114、414:NW#2→NW#1方向転送抑止部
115、315、415:NW#1側ポートフレーム送信部
116、316、416:NW#1側ポートフレーム受信部
117、317:NW#1→NW#2方向転送抑止部
118、318、418:NW#2側ポートフレーム送信部
119、319:NW#1→NW#2方向BUM疎通可否判定部
11a、31a、41a:転送抑止有効化部
11b、31b:境界装置情報DB
31c:転送抑止指示送信部
41d:転送抑止指示受信部