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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241204BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241204BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
H01L21/302 104C
H01L21/302 101D
H01L29/78 301Y
H01L29/78 301X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023506283
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009641
(87)【国際公開番号】W WO2023170732
(87)【国際公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高崎 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 真
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/048995(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190036(WO,A1)
【文献】米国特許第09761491(US,B1)
【文献】国際公開第2020/217266(WO,A1)
【文献】特開2009-111330(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/180663(JP,A1)
【文献】特開平8-274103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0287912(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/336
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成されたパターン上に成膜されカーボン含有膜に覆われた金属含有膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
Reactive Ion Etchingにより前記カーボン含有膜を除去した後、プラズマから発生したラジカルによるエッチングにより前記金属含有膜を除去することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
形成されたパターン上に成膜されカーボン含有膜に覆われた金属含有膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
前記カーボン含有膜を除去した後、前記金属含有膜の上に堆積膜を異方性の高いデポジションにより堆積させる堆積工程と、
前記堆積工程後、Reactive Ion Etchingにより前記金属含有膜を除去することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理方法において、
前記金属含有膜は、Ti、Ta、Al、Co、Ru、Cu、Mo、In、TiN、TaN、TiOまたはAlOを含むことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理方法において、
前記金属含有膜は、GAA(Gate All Around)構造のFET(Field Effect Transistor)におけるワークファンクションメタル層の膜であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマ処理方法において、
前記ワークファンクションメタル層は、TiAl、TiCまたはWCNを含む層であることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理方法において、
試料がプラズマ処理される処理室と、
プラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する高周波電源と、
前記処理室内に磁場を形成する磁場形成機構と、
前記試料が載置される試料台と、
前記試料台へのイオンの入射を遮蔽し前記試料台の上方に配置された遮蔽板と、
前記遮蔽板の上方にプラズマを生成させる一方の制御または前記遮蔽板の下方にプラズマを生成させる他方の制御が選択的に行われる制御装置と、を備え、
前記一方の制御は、前記マイクロ波と電子サイクロトロン共鳴するための磁束密度の位置が前記遮蔽板の上方となるように前記磁場形成機構を制御し、
前記他方の制御は、前記磁束密度の位置が前記遮蔽板の下方となるように前記磁場形成機構を制御するプラズマ処理装置を用いて前記金属含有膜を除去することを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、半導体デバイスに対し、市場からの省電力・高速化の要求が高まり、デバイス構造の複雑化・高集積化の傾向が顕著である。例えばロジックデバイスにおいては、積層させたナノワイヤもしくはナノシートでチャネルを構成したGAA(Gate All Around)構造のFETの適用が検討されており、GAA-FETのエッチング工程では、Fin形成のための垂直加工に加え、ナノワイヤもしくはナノシート形成のため等方的な加工が必要となる。
【0003】
半導体デバイスの製造工程においては、上述のような半導体デバイスの複雑化に対応することが求められている。半導体デバイス加工で用いられるプラズマエッチング装置には、GAA-FETの加工を例にとるとイオンとラジカルの両方を照射して異方性エッチングを行う機能と、ラジカル等の中性粒子のみを照射して等方性エッチングを行う機能の両方が求められるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1において、イオンの入射を遮蔽する遮蔽板をチャンバ内に設置し、前記遮蔽板の下方でプラズマを生成することでイオンとラジカルの両方を照射するプラズマ処理を実行し、あるいは前記遮蔽板の上方でプラズマを生成することでラジカルのみによる処理を実行することが可能な装置が提案されている。
【0005】
特許文献2においては、孔または溝の側壁に形成されたパターンに埋め込まれた膜の前記パターン以外の部分をプラズマエッチングにより除去するプラズマ処理方法において、前記孔または溝の底面の前記膜を除去した後、前記孔または溝の深さ方向に垂直な方向の前記膜を除去することを特徴とするプラズマ処理方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献3においては、半導体デバイスの小型化要求を満たすために、開口部の側面にCF系デポを堆積させるデポ堆積ステップにより開口部のサイズを調整する手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-93226号公報
【文献】国際公開第2016/190036号
【文献】特開2009-111330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、デバイス構造の複雑化・高集積化の傾向はより顕著となっている。例えばGAA-FETのエッチング工程においては、目的の構造を安定的に作成するためには、特許文献2で示すように孔または溝の底面の膜を除去した後、孔または溝の深さ方向に垂直な方向の膜を除去する手法や、特許文献3で示すCF系デポ堆積による開口部サイズ調整だけでは十分とは言えず、孔または溝の深さ方向(第2方向)のメタルゲート(ワークファンクションメタル)膜のみ、あるいは孔または溝の深さ方向(第2方向)に垂直な方向(第1方向)のメタルゲート(ワークファンクションメタル)膜のみを除去できることが望ましい。
【0009】
本発明では、金属含有層を選択的に除去することが可能な、制御性の高いプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
【0010】
より具体的には、孔または溝の深さ方向のメタルゲート(ワークファンクションメタル)膜のみ、あるいは、孔または溝の深さ方向に垂直な方向のメタルゲート(ワークファンクションメタル)膜のみの除去が可能な、制御性の高いプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、代表的な本発明にかかるプラズマ処理方法の一つは、形成されたパターン上に成膜されカーボン含有膜に覆われた金属含有膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、カーボン含有膜を除去した後、プラズマから発生したラジカルによるエッチングにより金属含有膜を除去することを特徴とするプラズマ処理方法によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーボン含有層を除去した後、ラジカルエッチングにより、金属含有層の第1層の選択的な除去が可能となる。従って、複雑化・高集積化の進むデバイスの、目的の構造を安定的に作成するために、制御性の高いプラズマ処理方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図1B図1Bは、本発明の第1の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図1C図1Cは、本発明の第1の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図2A図2Aは、本発明の第2の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図2B図2Bは、本発明の第2の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図2C図2Cは、本発明の第2の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図2D図2Dは、本発明の第2の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図3A図3Aは、本発明の第3の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の3次元断面形状の一例を示す図である。
図3B図3Bは、本発明の第3の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の3次元断面形状の一例を示す図である。
図3C図3Cは、本発明の第3の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の3次元断面形状の一例を示す図である。
図3D図3Dは、本発明の第3の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の3次元断面形状の一例を示す図である。
図4A図4Aは、本発明の第4の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図4B図4Bは、本発明の第4の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図4C図4Cは、本発明の第4の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図4D図4Dは、本発明の第4の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図5A図5Aは、本発明の第5の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図5B図5Bは、本発明の第5の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図5C図5Cは、本発明の第5の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図5D図5Dは、本発明の第5の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の第6の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略全体構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0015】
[第1の実施形態]
図1A図1Cは、本発明の第1の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。図1Aに示す試料は、たとえば、半導体ウエハであり、Si(シリコン)やSiOx(シリコン酸化物)等のベース層204、Si、SiN(窒化シリコン)、SiOx等からなる複数の柱状構造203、TiN(窒化チタン、チタンナイトライド)、TaN(窒化タンタル、タンタルナイトライド)、TiO(酸化チタン)、AlO(酸化アルミニウム)等からなるハードメタル層(金属含有層または金属含有膜)202、カーボン含有層(カーボン含有物、カーボン含有膜とも言う)201により形成される。金属含有層202はTi(チタン)、Ta(タンタル)、Al(アルミニウム)、Co(コバルト)、Ru(ルテニウム)、Cu(銅)、Mo(モリブデン)、In(インジウム)、TiN(窒化チタン、チタンタイトライド)、TaN(窒化タンタル、タンタルナイトライド)、TiO(酸化チタン)またはAlO(酸化アルミニウムのいずれかを含む構成としてもよい。
【0016】
ここで、ハードメタル層(金属含有層)202は、図1Bに示すように、第1方向に形成された第1層212と、第1方向と交差する第2方向に形成された第2層211と、を含む構成とされている。
【0017】
一例として、柱状構造203の第1方向に沿う柱の幅は40nm、柱状構造203の第1方向に沿う柱間距離は80nm、柱状構造203の第2方向に沿う柱の高さは200nmである。ここで、例えばAr(アルゴン)、N(窒素)、H(水素)を主としたガス系によるReactive Ion Etching(RIE)によりカーボン含有層201を除去すると、ハードメタル層202が露出した状態となる。このとき、ハードメタル層202の側壁部(第2方向のハードメタル層211)には、除去したカーボン含有層の再付着物205がごく微量堆積する(図1B)。ここに、例えばCl(塩素)を主としたガス系による、ラジカルエッチングのようなイオンアシストのない弱いエッチングを行うと、ハードメタル層202の側壁部ではカーボン含有層の再付着物205によりエッチングが阻害され、それ以外、すなわちベース層204の表面に対して水平方向(第1方向に相当する)のハードメタル層202の第1層212のみを選択的に除去し、ベース層204の表面に対して垂直方向(第2方向に相当する)のハードメタル層202の第2層211のみを選択的に残した構造の形成が可能となる(図1C)。ここで、Reactive Ion Etching(RIE)は、プラズマから発生したイオンとラジカルを用いたエッチングのことである。ラジカルエッチングは、プラズマから発生したラジカルによるエッチングのことである。
【0018】
第1の実施形態は次のようにまとめることができる。すなわち、形成されたパターン(柱状構造203のパターン)の上に成膜され、カーボン含有膜(201)に覆われた金属含有膜(202:212,211)をプラズマエッチングするプラズマ処理方法であり、カーボン含有膜(201)を除去した後、ラジカルエッチングにより金属含有膜(第1層212)を除去するものである。
【0019】
以上に示したように、カーボン含有層201のエッチング時の再付着物(205)と、ラジカルエッチングを適切に利用することで、ベース層204の表面に対して水平方向のハードメタル層202の第1層212のみの選択的な除去が可能となる。
【0020】
[第2の実施形態]
図2A図2Dは、本発明の第2の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の断面形状の一例を示す図である。図2Aに示す試料は、SiやSiOx等のベース層204、Si、SiN、SiOx等からなる柱状構造203、TiN、TaN、TiO、AlO等またはそれらに準ずる材料からなるハードメタル層(金属含有層または金属含有膜)202、カーボン含有層(カーボン含有膜)201により形成される。一例として、柱の幅は40nm、柱間距離は80nm、柱の高さは200nmである。ここで、例えばAr、N、Hを主としたガス系によるReactive Ion Etching(RIE)によりカーボン含有層201を除去すると、ハードメタル層202が露出した状態となる。ここに、例えばCHF(トリフルオロメタン)、He(ヘリウム)を主としたガス系を用い、異方性の高いデポジションによる薄膜の堆積プロセスを実施し、ハードメタル層202のベース層204の表面に対して水平方向な層(第1層212)の上にのみ薄膜な堆積膜(薄膜のデポジション層とも言う)206を堆積させる(図2B)。一方、ハードメタル層202のベース層204の表面に対して垂直方向な層(第2層211)には堆積膜206は付着しない。
【0021】
ここで、例えばClを主としたガス系による、Reactive Ion Etching(RIE)を行うと、堆積膜206により保護されたハードメタル層202の第1層212のみを選択的に残し、ベース層204の表面に対して垂直方向(第2方向に相当する)のハードメタル層202の第2層211のみを選択的に除去することが可能となる(図2C)。このときのClを主としたガス系によるReactive Ion Etching(RIE)は、Clを主としたガス系によるラジカルエッチングに比べカーボン除去性能に優れるため、カーボン含有層201の再付着物205の有無は問わない。このあと、堆積膜206を除去することで、ベース層204の表面に対して水平方向(第1方向に相当する)のハードメタル層202の第1層212のみを選択的に残した構造の形成が可能となる(図2D)。
【0022】
第2の実施形態は次のようにまとめることができる。すなわち、形成されたパターン(柱状構造203のパターン)上に成膜され、カーボン含有膜(201)に覆われた金属含有膜(202:212,211)をプラズマエッチングするプラズマ処理方法であり、金属含有膜(202の第1層212)の上に堆積膜(206)を堆積させた後、Reactive Ion Etchingにより金属含有膜(202の第2層211)を除去するものである。ここで、堆積膜(206)を堆積させた後、Reactive Ion Etchingによりパターン(203)の側壁の金属含有層(202の第2層211)を除去する
以上に示したように、異方性の高いデポジションによる薄膜な堆積膜206の堆積プロセスとReactive Ion Etching(RIE)を適切に利用することで、ベース層204の表面に対して垂直方向のハードメタル層(第2層211)のみの選択的な除去が可能となる。
【0023】
[第3の実施形態]
図3A図3Dは、本発明の第3の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の3次元断面形状の一例を示す図である。
【0024】
図3Aは、GAA(Gate All Around)構造のFET(Field effect transistor)におけるGAA―Forksheet構造の一例を示している。GAA―Forksheet構造は、カーボンマスク層301、WFM(ワークファンクションメタル)層302、Hi-k膜(高誘電率膜)303、Si層304、Low-k膜(低誘電率膜)305、SiO層(シリコン酸化膜層)306、プラグ部(金属部)307により構成される。ここから、カーボンマスク層311をプラグ307の先端部が露出するまでエッチングする(図3B)。なお、WFM層302は第1の実施形態および第2の実施形態で示したハードメタル層(202、211、212)に対応するものである。また、WFM層302は、例えば、TiAl(チタニウムアルミニウム)、TiC(炭化チタン)、WCNを含む、またはそれらに準ずる材料を有する層である。
【0025】
ここで、WFM層302の露出部のエッチングを考える。WFM層302のエッチングをウェットプロセスで行うと、面内ばらつきによりウエハ全体でジャストエッチングを行うことは難しく、場所によってはWFM層312に示すようにオーバーエッチングされてしまうことが懸念される(図3C)。
【0026】
一方、第1の実施形態および第2の実施形態で示した、ベース層204と水平方向のハードメタル層(212)のみの除去およびベース層204と垂直方向のハードメタル層(211)のみの除去を用いれば、オーバーエッチングとなってもパターン内にエッチングが進行することなく、図3DにWFM層314で示すような形状をウエハ全体で形成することが可能となる。つまり、第1の実施形態のカーボン含有物を除去した後、ラジカルエッチングにより金属含有層(202の第1層212)を除去することと、第2の実施形態の金属含有層(202の第1層212)の上に堆積膜206を堆積させた後、Reactive Ion Etching(RIE)によりパターン203の側壁の金属含有層(202の第2層211)を除去することとの組み合わせにより、任意の方向の金属含有層(202:212,211)を除去することができる。
【0027】
[第4の実施形態]
図4A図4Dは、本発明の第4の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の形状の一例を示す図である。
【0028】
図4Aはラインパターンの上面図の一例で、図4B図4Aの点線部401の断面形状の一例である。図4Bに示す試料は、SiOx等の溝状に加工された絶縁層403、TiN、TaN等からなるハードメタル層(金属含有層)402により形成される。ハードメタル層(金属含有層)402は、図4Bに示すように、第1方向に形成された第1層412と、第1方向と交差する第2方向に形成された第2層411と、を含む構成とされている。ここで、第2の実施形態で示したように、異方性の高いデポジションによる薄膜の堆積プロセスとReactive Ion Etching(RIE)を適切に利用することで、溝の側壁のハードメタル層(第2層411)のみを除去し、溝の底部と上面部のみにハードメタル層412を形成することができる(図4C)。
【0029】
ここで、さらにTiN、TaN等からなるハードメタル層404を成膜することで、溝底部に対して側壁のみハードメタル層を薄膜化することが可能となる(図4D)。
【0030】
この手法を用いることで、溝に配線を埋め込む際に、底部を保護しながら配線幅を確保し、信頼性が高く低抵抗な配線の形成が可能となる。
【0031】
[第5の実施形態]
図5A図5Dは、本発明の第5の実施例に係るプラズマ処理方法を適用した、試料の形状の一例を示す図である。
【0032】
図5Aはホールパターンの上面図の一例で、図5B図5Aの点線部501の断面形状の一例である。図5Bに示す試料は、メタル層504、SiOx等の溝状に加工された絶縁層503、TiN、TaN等からなるハードメタル層502により形成される。ハードメタル層(金属含有層)502は、図5Bに示すように、第1方向に形成された第1層512と、第1方向と交差する第2方向に形成された第2層511と、を含む構成とされている。ここで、第1の実施形態で示したように、カーボン含有層エッチング時の再付着物と、ラジカルエッチングを適切に利用することで、ホールの底部と上面部のハードメタル層(512)のみを除去し、ホールの側壁部にのみにメタル層511を形成することができる(図5C)。
【0033】
ここで、さらにTiN、TaN等からなるハードメタル層505を成膜することで、ホールの側壁部に対して底部のみハードメタル層を薄膜化することが可能となる(図5D)。
【0034】
この手法を用いることで、ホールにビア配線を埋め込む際に、側壁部を保護しながら、底部のコンタクト抵抗を低減し、信頼性が高く低抵抗なビア配線の形成が可能となる。
【0035】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略全体構成断面図を図6に示す。本実施形態のプラズマ処理装置では、高周波電源であるマグネトロン103から導波管104および誘電体窓111を介して真空処理室117に供給される2.45GHzのマイクロ波と、磁場形成機構であるソレノイドコイル108の作る磁場との電子サイクロトロン共鳴(ElectronCyclotronResonance、ECR)によって、真空処理室117内にプラズマを生成することができる。このようなプラズマ処理装置をECRプラズマ処理装置という。
【0036】
また、試料台116に載置した試料125に整合器123を介して高周波電源124が接続されている。高周波電源124は、処理室117内にプラズマを生成するためのマイクロ波の高周波電力を供給する。真空処理室117の内部は、バルブ121を介してポンプ122に接続されており、バルブ121の開度によって内部圧力を調節できるようになっている。
【0037】
また、本プラズマ処理装置は、真空処理室117の内部に誘電体製の遮蔽部(遮蔽板とも言う)112を有する。遮蔽部112は試料台116の上方に配置されている。遮蔽部112により、真空処理室117内を、第1の領域118と第2の領域119とに分割している。
【0038】
本実施形態で用いたプラズマ処理装置は、マイクロ波の周波数が2.45GHzの場合、磁場強度0.0875Tの面付近でプラズマを生成できるという特性を有する。このため、プラズマ生成領域が遮蔽部112と誘電体窓111の間(第1の領域118)に位置するように磁場を調整すれば、遮蔽部112の誘電体窓111側でプラズマを生成でき、発生したイオンは遮蔽部112をほとんど通過できないことから(つまり、遮蔽部112は、試料台116へのイオンの入射を遮蔽する。)、ラジカルのみを試料125に照射することができる。この時、試料125では、ラジカルのみによる表面反応を主体とした等方性エッチングであるラジカルエッチングが進行する。
【0039】
これに対し、プラズマ生成領域が遮蔽部112と試料125の間(第2の領域119)に位置するように磁場を調整すれば、遮蔽部112より試料125側でプラズマを生成でき、イオンとラジカルの両方を試料125に供給できる。この時、試料125ではイオンによりラジカルの反応を促進する、イオンアシスト反応を利用した異方性エッチングであるReactive Ion Etching(RIE)が進行する。
【0040】
なお、遮蔽部112の高さ位置に対するプラズマ生成領域の高さ位置の調整あるいは切り替え(上方か下方か)、それぞれの高さ位置を保持する期間の調整等は、制御装置120を用いて行うことができる。つまり、制御装置120は、遮蔽板112の上方にプラズマを生成させる一方の制御、または、遮蔽板112の下方にプラズマを生成させる他方の制御を、選択的に行うことができる。一方の制御は、マイクロ波と電子サイクロトロン共鳴するための磁束密度の位置が遮蔽板112の上方となるように磁場形成機構を制御することにより遮蔽板112の上方にプラズマを生成させるものである。また、他方の制御は、磁束密度の位置が遮蔽板112の下方となるように磁場形成機構を制御することにより遮蔽板112の下方にプラズマを生成させるものである。
【0041】
本実施形態のプラズマ処理装置を用いることで、第1の実施形態や第3の実施形態で示したようなReactive Ion Etching(RIE)とラジカルエッチングをどちらも使用するプロセスを効率的に実施することが可能となる。
【0042】
上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
103:マグネトロン、104:導波管、108:ソレノイドコイル、111:誘電体窓、112:遮蔽部、116:試料台、117:真空処理室、118:第1の領域、119:第2の領域、120:制御装置、121:バルブ、122:ポンプ、123:整合器、124:高周波電源、125:試料
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6