(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】ゴム混練用配合材およびゴム混練用配合材を用いた密閉梱包物、ゴム混練用配合材の製造方法およびゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/46 20060101AFI20241204BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20241204BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20241204BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20241204BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20241204BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20241204BHJP
B29B 11/14 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
B65D65/46
B65D81/24 E
B65D77/04 F
B65D77/04 B
C08L21/00
C08L15/00
C08L23/04
B29B11/14
(21)【出願番号】P 2023507129
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011607
(87)【国際公開番号】W WO2022196688
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021044606
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 浩
(72)【発明者】
【氏名】太田 さとみ
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-036936(JP,A)
【文献】特開2004-148705(JP,A)
【文献】特表2012-507411(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0113864(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112389870(CN,A)
【文献】特開2019-189744(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044893(WO,A1)
【文献】特開2007-223199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/46
B65D 81/24
B65D 77/04
C08L 21/00
C08L 15/00
C08L 23/04
B29B 11/14
C08J 3/20
B29B 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低水蒸気透過性の密閉用容器(C)と、
前記密閉用容器(C)の内部に密閉され
たゴム混練用配合材と、
からなる、密閉梱包物
であり、
前記ゴム混練用配合材が、
融点が60~140℃の重合体(a)から作製された厚みが30~100μmの密閉用袋(A)と、
前記密閉用袋(A)の内部に密閉された液状ジエン系ゴム(B)と、
からなり、
前記重合体(a)が、低密度ポリエチレン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記液状ジエン系ゴム(B)は官能基によって変性された共役ジエン単位を含む変性重合体であり、
前記共役ジエンはイソプレン、ブタジエン、およびβ-ファルネセンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、
前記官能基は、アミノ基、アミド基、イミノ基、ニトリル基、イミダゾール基、ウレア基、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、メルカプト基、チオール基、ジスルフィド基、トリスルフィド基、テトラスルフィド基、イソシアネート基、酸無水物基、ジカルボン酸モノエステル基、ジカルボン酸モノアミド基、ボロン酸エステル基、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基であり、
前記密閉用容器(C)が、無機物層が積層された、重合体シートまたは重合体フィルムから作製された容器である、
密閉梱包物。
【請求項2】
前記変性重合体の官能基が、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ボロン酸エステル基、ジカルボン酸モノエステル基及びジカルボン酸モノアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基である、請求項1に記載の密閉梱包物。
【請求項3】
前記変性重合体の官能基が、アルコキシシリル基である、請求項1または2に記載の密閉梱包物。
【請求項4】
前記液状ジエン系ゴム(B)に含まれる共役ジエン単位となる共役ジエンが、ブタジエンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の密閉梱包物。
【請求項5】
前記液状ジエン系ゴム(B)が、さらに芳香族ビニル化合物単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の密閉梱包物。
【請求項6】
前記密閉用容器(C)の材料の透湿度が4.0g/m
2・24h以下である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の密閉梱包物。
【請求項7】
前記密閉用容器(C)の形状が、
袋状、ドラム状、箱状のいずれかである、請求項
1~6のいずれか一項に記載の密閉梱包物。
【請求項8】
前記密閉用容器(C)の内部に、さらに乾燥剤が配設されている、請求項
1~7のいずれか一項に記載の密閉梱包物。
【請求項9】
前記密閉用容器(C)の無機物層が、アルミニウム層である、請求項1~8のいずれか一項に記載の密閉梱包物。
【請求項10】
請求項1~9に記載の密閉梱包物の製造方法であり、
前記低水蒸気透過性の密閉用容器(C)の開口部から、
前記ゴム混練用配合材を投入する投入工程、
前記投入工程の後、密閉用容器(C)の開口部を密閉する密閉工程と、
を少なくとも有する、密閉梱包物の製造方法。
【請求項11】
前記密閉工程において、
前記開口部の密閉がヒートシールで行われる、請求項
10に記載の密閉梱包物の製造方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載の
密閉梱包物の密閉用容器(C)から取り出されたゴム混練用配合材と、固形ゴムと、を混練する混練工程を含むゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム混練用配合材およびゴム混練用配合材を用いた密閉梱包物に関する。さらには、ゴム混練用配合材の製造方法およびゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から架橋ゴムの原料となるゴム組成物は、その製造の際の加工性を改良することなどを目的として、可塑剤を添加する場合がある。しかし、可塑剤として一般に使用されるオイルは、ブリードアウトの問題が発生する場合がある。この問題を解消するために、オイルと同程度の可塑化効果を有し、ゴム組成物の主成分である固形ゴムと共架橋可能な可塑剤として、ゴム組成物の一成分として液状ジエン系ゴムを使用することが従来から検討されている(例えば、特許文献1参照)。
また、液状ジエン系ゴムは、優れた粘接着特性を付与することが可能なため、粘接着特性が必要なゴム組成物に使用される場合もある。例えば、金属材料等の極性の高い材料に対する粘接着性を向上するために、液状ジエン系ゴムとして、無水マレイン酸変性液状ジエン系ゴムを含むゴム組成物が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
さらに、近年、固形ゴムに対してシリカやカーボンブラック等のフィラーを配合することにより機械強度を向上させたゴム組成物が、耐摩耗性や機械強度を必要とするタイヤ用途などに広く使用されている。このフィラーが配合されたゴム組成物から得られる架橋物の物性を優れたものとするために、その架橋物中のフィラーの分散状態を理想的な状態とするために、シリカに対して反応性を有するシラノール基を有する液状ジエン系ゴムを含むゴム組成物の使用が検討されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-047337号公報
【文献】特開昭55-048231号公報
【文献】国際公開第2018/043699号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液状ジエン系ゴムを、事前に何らかの容器に入れて計量した後、これをゴム混練用の装置に直接投入しようとしても、液状ジエン系ゴムは粘性が高く容器に残存しやすく、その作業性に問題がある。液状ジエン系ゴムを入れた容器ごと、ゴム混練用の装置に投入することも考えられなくはないが、一般に、容器を形成する材料がゴム組成物の特性に悪影響を与える可能性が想定される。
【0006】
また、官能基を有する液状ジエン系ゴム、特にシラノール基やアルコキシシリル基などの水に対する反応性が高い基を有する液状ジエン系ゴムは、工業的に使用する上では、長期間保存しても、その基の特性をできる限り損なわない状態であることが望まれる。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みなされたものであって、液状ジエン系ゴム(B)を所定量確実に供給することができ、取扱い性に優れたゴム混練用配合材およびこのゴム混練用配合材を用いた密閉梱包物を提供することを目的とする。
さらには、液状ジエン系ゴム(B)の物性を所定の状態に維持したまま、所定量確実に供給することのできるゴム混練用配合材の製造方法を提供することを目的とする。
また、作業性に優れるゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、鋭意検討を行った結果、特定の密閉用袋の内部に液状ジエン系ゴムが密閉されたゴム混練用配合材、および、該ゴム混練用配合材が特定の密閉用容器の内部に密閉された密閉梱包物によれば、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下〔1〕~〔13〕に関する。
〔1〕 融点が60~140℃の重合体(a)から作製された厚みが30~100μmの密閉用袋(A)と、
前記密閉用袋(A)の内部に密閉された液状ジエン系ゴム(B)と、
からなる、ゴム混練用配合材。
〔2〕 前記重合体(a)が、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、およびシンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンからなる群より選択される少なくとも1つである、〔1〕に記載のゴム混練用配合材。
〔3〕 低水蒸気透過性の密閉用容器(C)と、
前記密閉用容器(C)の内部に密閉された〔1〕または〔2〕に記載のゴム混練用配合材と、
からなる、密閉梱包物。
〔4〕 前記密閉用容器(C)の材料の透湿度が4.0g/m2・24h以下である、〔3〕に記載の密閉梱包物。
〔5〕 前記密閉用容器(C)が、金属板、および、無機物層が積層された重合体シートまたはフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1つの材料から作製された容器である、〔3〕または〔4〕に記載の密閉梱包物。
〔6〕 前記液状ジエン系ゴム(B)が、水に対する反応性が高い基を有する液状ジエン系ゴム(B1)である、〔3〕~〔5〕のいずれかに記載の密閉梱包物。
〔7〕 前記密閉用容器の形状が、
袋状、ドラム状、箱状のいずれかである、〔3〕~〔6〕のいずれかに記載の密閉梱包物。
〔8〕 前記密閉用容器(C)の内部に、さらに乾燥剤が配設されている、〔3〕~〔7〕のいずれかに記載の密閉梱包物。
〔9〕 融点が60~140℃の重合体(a)から作製された厚みが30~100μmの密閉用袋(A)の開口部から、前記密閉用袋(A)内へ液状ジエン系ゴム(B)を充填する充填工程と、
前記充填工程の後、前記密閉用袋(A)の開口部を密閉する密閉工程と、
を少なくとも有する、ゴム混練用配合材の製造方法。
〔10〕 前記密閉工程において、
前記開口部の密閉がヒートシールで行われる、〔9〕に記載のゴム混練用配合材の製造方法。
〔11〕 低水蒸気透過性の密閉用容器(C)の開口部から、〔1〕または〔2〕に記載のゴム混練用配合材を投入する投入工程、
前記投入工程の後、密閉用容器(C)の開口部を密閉する密閉工程と、
を少なくとも有する、密閉梱包物の製造方法。
〔12〕 前記密閉工程において、
前記開口部の密閉がヒートシールで行われる、〔11〕に記載の密閉梱包物の製造方法。
〔13〕 〔1〕または〔2〕に記載のゴム混練用配合材と、固形ゴムと、を混練する混練工程を含むゴム組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム混練用配合材によれば、液状ジエン系ゴム(B)を密閉用袋(A)に密閉しているため、取扱い性が困難であった液状ジエン系ゴム(B)を所定量確実に供給することができる。
さらに本発明の密閉梱包物によれば、密閉用袋(A)と密閉用容器(C)の二重の密閉構造を成しているため、液状ジエン系ゴム(B)の物性を所定の状態に維持したまま、所定量確実に供給することができる。
また、本発明のゴム混練用配合材の製造方法によれば、簡単な工程で確実に液状ジエン系ゴム(B)を密閉することができ、液状ジエン系ゴム(B)の取扱い性を高めることができる。
さらに、本発明のゴム組成物の製造方法によれば、作業性よく組成物を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のゴム混練用配合材を示した概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の密閉梱包物の一実施形態を示した概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の密閉梱包物の他の実施形態を示した概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の密閉梱包物の他の実施形態を示した概略図である。
【
図5】
図5は、本発明のゴム混練用配合材の製造工程を示した工程図である。
【
図6】
図6は、本発明の密閉梱包物の製造工程を示した工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づきより詳細に説明する。
【0012】
<ゴム混練用配合材10>
本発明のゴム混練用配合材10は、
図1に示したように、密閉用袋(A)と、この密閉用袋(A)の内部に密閉された液状ジエン系ゴム(B)と、から成るものであり、特に密閉用袋(A)は、融点が60~140℃の重合体(a)から作製された厚みが30~100μmの密閉用袋である。
【0013】
液状ジエン系ゴム(B)とは、液状の重合体でありその重合体を構成する単量体単位として共役ジエンに由来する共役ジエン単位を含む。共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、α-ファルネセン、β-ファルネセン;2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、ミルセン、及びクロロプレン等のブタジエン、イソプレン、α-ファルネセン、及びβ-ファルネセン以外の共役ジエン(b1)が挙げられる。液状ジエン系ゴム(B)に含まれる共役ジエン単位となる共役ジエンとしては、イソプレン、ブタジエン、α-ファルネセン、β-ファルネセンが好ましく、イソプレン、ブタジエン、β-ファルネセンがより好ましい。これら共役ジエンは1種単独で用いられてもよく、2種以上組み合わせて用いられてもよい。
【0014】
液状ジエン系ゴム(B)は、その重合体を構成する全単量体単位のうち、50質量%以上がイソプレン、ブタジエン、α-ファルネセン、及びβ-ファルネセンからなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体に由来する単量体単位であることが好ましい一態様である。イソプレン単位、ブタジエン単位、α-ファルネセン単位、及びβ-ファルネセン単位の合計含有量は、液状ジエン系ゴム(B)の全単量体単位に対して60~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、80~100質量%がさらに好ましく、90~100質量%が特に好ましく、実質的に100質量%であってもよい。
【0015】
上記液状ジエン系ゴム(B)に含まれ得るイソプレン単位、ブタジエン単位、α-ファルネセン単位、及びβ-ファルネセン単位以外の他の単量体単位としては、前述したブタジエン及びイソプレン以外の共役ジエン(b1)単位、芳香族ビニル化合物(b2)単位などが挙げられる。
【0016】
芳香族ビニル化合物(b2)としては、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンが好ましい。
【0017】
上記液状ジエン系ゴム(B)における、ブタジエン単位、イソプレン単位、α-ファルネセン単位、及びβ-ファルネセン単位以外の他の単量体単位の含有量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、35質量%以下が特に好ましく、30質量%以下が最も好ましい。例えば、芳香族ビニル化合物(b2)単位が上記範囲以下であると、ゴム組成物の加工性が向上する傾向にある。
【0018】
液状ジエン系ゴム(B)は、共役ジエン単位を含む未変性重合体であってもよいし、官能基によって変性された共役ジエン単位を含む変性重合体であってもよいし、未変性重合体または変性重合体に含まれる共役ジエン単位が有する炭素-炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加された水添重合体また水添変性重合体であってもよい。さらに、官能基によって変性された共役ジエン単位を含む変性重合体は、水に対する反応性が高い基を有する液状ジエン系ゴム(B1)であってもよい。
【0019】
液状ジエン系ゴム(B)が、官能基によって変性された共役ジエン単位を含む変性重合体である場合、その官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、イミノ基、ニトリル基、イミダゾール基、ウレア基、水酸基、エーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、メルカプト基、チオール基、ジスルフィド基、トリスルフィド基、テトラスルフィド基、イソシアネート基及び、無水カルボン酸基などの酸無水物基、ジカルボン酸モノエステル基、及びジカルボン酸モノアミド基などの酸無水物由来の官能基、ボロン酸エステル基、ビニル基、アクリロイル基およびメタクリロイル基等が挙げられる。
【0020】
上記変性重合体の製造方法としては、例えば、重合停止剤を添加する前に、重合活性末端と反応し得る四塩化錫、ジブチル錫クロリド、テトラクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン及び2,4-トリレンジイソシアネート等のカップリング剤や、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及びN-ビニルピロリドン、N-メチルピロリドン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、ジメチルイミダゾリジノン等の重合末端変性剤、又は特開2011-132298号公報に記載のその他の変性剤を添加する方法が挙げられる。また、単離後の未変性の液状ジエン系ゴムに変性化合物、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、共役ジエン単位に含まれる炭素-炭素不飽和結合と反応する基を有するシラン化合物を、付加した変性重合体を用いることもできる。
【0021】
上記不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0022】
上記不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物;マレイン酸モノエステル、イタコン酸モノエステル、フマル酸モノエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステル;グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸モノアミド、イタコン酸モノアミド、フマル酸モノアミドなどの不飽和ジカルボン酸モノアミド;マレイン酸イミド、イタコン酸イミドなどの不飽和カルボン酸イミドなどが挙げられる。
【0023】
共役ジエン単位に含まれる炭素-炭素不飽和結合と反応する基を有するシラン化合物としては、下記式(1)で表されるシラン化合物が好適化合物の一例である。
【0024】
【0025】
上記式(1)中、R1は炭素数1から6の2価のアルキレン基である。二価の炭素数1~6のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基が挙げられる。R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチル基、エチル基又はフェニル基を示す。ただし、R2、R3及びR4の少なくとも1つはメトキシ基、エトキシ基又はフェノキシ基である。
【0026】
変性化合物を、未変性の液状ジエン系ゴムに付加させる方法は特に限定されず、例えば、液状ジエン系ゴム中に変性化合物、さらに必要に応じてラジカル触媒を加えて、有機溶媒の存在下又は非存在下に加熱する方法を採用することができる。また加熱時には老化防止剤を添加してもよい。
【0027】
液状ジエン系ゴム(B)の重量平均分子量(Mw)は1,000以上500,000以下が好ましく、2,000以上300,000以下がより好ましく、2,000以上200,000以下がさらに好ましく、2,000以上150,000以下がよりさらに好ましく、2,000以上100,000以下が特に好ましい。液状ジエン系ゴム(B)のMwが前記範囲内であると本発明のゴム組成物の加工性が良好になるなど、優れた特性のゴム組成物が得られる。なお、本明細書において液状ジエン系ゴム(B)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。本発明においては、Mwが異なる2種以上の液状ジエン系ゴム(B)を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
液状ジエン系ゴム(B)の分子量分布(Mw/Mn)は1.0~20.0が好ましく、1.0~15.0がより好ましく、1.0~10.0がさらに好ましく、1.0~5.0がよりさら好ましく、1.0~3.0が特に好ましく、1.0~2.0がより特に好ましく、1.0から1.5が極めて好ましい。Mw/Mnが前記範囲内であると、得られる液状ジエン系ゴム(B)の粘度のばらつきが小さくなり好ましい。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCの測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比を意味する。
【0029】
液状ジエン系ゴム(B)の多量体面積比は40%以下が好ましく、35%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましく、25%以下がよりさらに好ましい。多量体面積比が前記範囲内であると、得られる液状ジエン系ゴム(B)の粘度のばらつきが小さくなり、より好ましい。なお、多量体面積比とは、GPC測定により得られるGPCクロマトグラムの重合体由来の全面積を100%として、分子量がMt(ピークトップ分子量)×1.45以上の領域にある重合体の割合を意味する。
【0030】
上記液状ジエン系ゴム(B)の38℃で測定した溶融粘度は、0.1~4,000Pa・sが好ましく、0.1~3,500Pa・sがより好ましく、0.1~3,000Pa・sがさらに好ましい。液状ジエン系ゴム(B)の溶融粘度が前記範囲内であると、得られるゴム組成物の柔軟性が向上するため、加工性が向上する。なお、本発明において液状ジエン系ゴム(B)の溶融粘度は、38℃においてブルックフィールド粘度計(B型粘度計)により測定した値である。
【0031】
液状ジエン系ゴム(B)の製造方法は特に制限はなく、例えば、アニオン重合法により製造できる。
【0032】
密閉用袋(A)の内部の液状ジエン系ゴム(B)は、密閉用袋(A)の上部開口(図示せず)を閉じることで、密閉用袋(A)の内部に密閉されるようになっている。なお、密閉用袋(A)の上部開口を閉じる手段としては特に限定されるものでは無いが、例えばヒートシール(熱溶着)を用いることができる。
図1中、符号16は密閉領域である。
【0033】
密閉用袋(A)は重合体(a)から作製されており、その重合体(a)の融点は60~140℃である。重合体(a)の融点がこの範囲にあることにより、ゴム混練用配合材を保存または使用する際に液状ジエン系ゴム(B)の漏洩が抑制され、作業性に優れる。また、固形ゴムとゴム混練用配合材を混練する工程で、密閉用袋が溶融、分散することで、ゴム組成物の特性への悪影響を最小限にすることができる。漏洩の抑制、作業性およびゴム組成物の特性をより両立する観点から、重合体(a)の融点は、70~130℃であることが好ましく、80~120℃であることがより好ましい。また、漏洩の抑制の観点からは、重合体(a)の融点は、100℃超140℃以下であることが好ましく、103~140℃であることがより好ましく、105~140℃であることがさらに好ましい。
【0034】
密閉用袋(A)の厚みは30~100μmである。密閉用袋の厚みがこの範囲にあることにより、ゴム混練用配合材を保存または使用する際に液状ジエン系ゴム(B)の漏洩が抑制され、作業性に優れる。また、固形ゴムとゴム混練用配合材を混練する工程で、密閉用袋が溶融、分散することで、ゴム組成物の特性への悪影響を最小限にすることができる。漏洩の抑制、作業性およびゴム組成物の特性をより両立する観点から、密閉用袋(A)の厚みは、30~80μmであることが好ましく、40~70μmであることがより好ましい。
【0035】
また密閉用袋(A)は、上述のとおり、重合体(a)のフィルムから構成されており、そのフィルムのヒートシール強さは、1.0N/15mm以上であることが好ましく、2.5N/15mm以上であることがより好ましく、4.0N/15mm以上であることがより好ましい。またそのフィルムのヒートシール強さは、通常40N/15mm以下であることが好ましく、25N/15mm以下であることがより好ましい。ヒートシール強さは、JIS Z 0238 ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験法の袋のヒートシール強さ試験に準拠して測定した値である。
【0036】
さらに密閉用袋(A)を構成する重合体(a)は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、およびシンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、およびシンジオタクチック-1,2-ポリブタジエンからなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましい。また、漏洩の抑制の観点からは、重合体(a)は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0037】
本発明で得られるゴム混練用配合材は、ゴム混練の際に使用しやすくするために、密閉用袋(A)に密閉する際に、液状ジエン系ゴム(B)を計量して密封することが好ましい。
【0038】
このようにして構成された本発明のゴム混練用配合材10は、液状ジエン系ゴム(B)を密閉用袋(A)に密閉しているため、今まで取扱いが困難であった液状ジエン系ゴム(B)の取扱い性を高めることができ、所定量確実に供給することができる。
【0039】
また、本発明のゴム混練用配合材10は、密閉用袋(A)の内部に投入される液状ジエン系ゴム(B)の量が多い場合、液状ジエン系ゴムの漏れ防止をより確実にしたい場合などには、密閉用袋を2重または3重に重ねて用いてもよい。かかる場合、密閉用袋(A)としては、同様の融点を有する重合体(a)から作製された同様の厚みを有する密閉用袋(A)を複数用いればよい。かかる場合には、例えば、複数枚重ねた密閉用袋(A)の上部開口から最も内側の袋の内部に液状ジエン系ゴム(B)を導入し、この開口を閉じることで密閉されるようになっていればよい。上部開口部を閉じる手段としては、上述の場合と同様、例えばヒートシール(熱溶着)を用いることができる。
【0040】
<密閉梱包物20>
次いで、ゴム混練用配合材10の取扱い性をさらに高めた密閉梱包物20について説明する。
【0041】
本発明の密閉梱包物20は、
図2に示したように、低水蒸気透過性の密閉用容器22(密閉用容器(C))と、この密閉用容器22の内部に密閉された前述のゴム混練用配合材10と、からなるものである。
ここで密閉用容器22の低水蒸気透過性とは、密閉用容器が水蒸気を透過する性能が低いことを意味する。密閉用容器22は、密閉用容器の材料の透湿度が4.0g/m
2・24h以下であることが好ましく、2.0g/m
2・24h以下がより好ましく、1.0g/m
2・24h以下が更に好ましく、0.5g/m
2・24h以下が更に好ましい。
【0042】
前記密閉用容器としては、金属板、および、無機物層が積層された重合体シートまたはフィルムからなる群より選ばれる少なくとも1つの材料から作製された容器であることが好ましい。
前記金属板としては、例えば、ステンレス鋼板等の鋼板、アルミニウム板、ティンフリースチール(錫無し鋼板)、ブリキ板などが挙げられる。
前記無機物層が積層された重合体シートまたはフィルムとしては、例えば、無機物層が蒸着された重合体シートまたはフィルム、無機物層が接着剤を介して接合した重合体シートまたはフィルム、無機物層(典型的には金属層)が溶融させた熱可塑性重合体フィルムを介して接合した重合体シートまたはフィルム(典型的には無機物層がラミネートされた重合体シートまたはフィルム)などが挙げられる。
無機物層を構成する無機物は、金属および非金属無機物に大別される。
前記金属としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛などが挙げられる。前記非金属無機物としては、例えば、アルミナ、シリカなどが挙げられる。耐透湿性の点では、これら無機物の中でも、金属が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
重合体シートまたはフィルムを構成する重合体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられる。
前記密閉用容器は、取り扱い性などの観点から、無機物層が積層された重合体シートまたはフィルムが好ましく、低透湿性をより高める観点から、アルミニウム層が積層された重合体シートまたはフィルムがより好ましい。また、低透湿性をより高める観点からは、無機物層がラミネートされた重合体シートまたはフィルムが好ましく、アルミニウム層がラミネートされた重合体シートまたはフィルムがより好ましい。
また、重合体シートまたはフィルムは複数の重合体を積層した重合体シートまたはフィルムであってもよい。例えば、無機物層の亀裂、ピンホールを抑制する観点から、密閉用容器の最外層がPETまたはナイロンなどの耐傷付き性に優れる重合体からなる外層で、その外層の内側に無機物層を有する積層フィルムであってもよい。また、その重合体シートまたはフィルムの熱溶着性を高めるために、密閉用容器の最内層はLLDPEであってもよい。これらの観点から、PET(最外層)/LLDPE(最内層)、ナイロン(最外層)/LLDPE(最内層)の順に積層された層構成を有する重合体シートまたはフィルムは、好ましい一態様であり、低透湿性をより高める観点からは、PET(最外層)/無機物(内層)/LLDPE(最内層)、ナイロン(最外層)/無機物(内層)/LLDPE(最内層)の順に積層された層構成を有する重合体シートまたはフィルムは、より好ましい一態様である。なお好ましい一態様、及びより好ましい一態様の積層フィルムにおいては、上記以外の層が含まれていてもよい。
【0043】
なお、このような密閉用容器22は、ゴム混練用配合材10の液状ジエン系ゴム(B)として、水に対する反応性が高い基を有する液状ジエン系ゴム(B1)の場合に特に効果的にある。水に対する反応性が高い基としては、例えば、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ボロン酸エステル基、酸無水物由来の官能基などが挙げられる。これら基は液状ジエン系ゴム(B1)に1種単独で含まれていてもよく、2種以上組み合わせて含まれていてもよい。
水に対する反応性が高い基を有する液状ジエン系ゴム(B1)の場合には、特に水との反応を防止する必要があるところ、このような密閉用容器22であれば水蒸気透過性が低く、ゴム混練を行う際まで、確実に液状ジエン系ゴム(B1)に含まれる上記基の特性を維持したゴム混練用配合材10を提供することができる。
【0044】
密閉用容器22は、密閉用容器22の上部開口部(図示せず)を閉じることで、密閉されるようになっている。密閉用容器22の上部開口部を密閉する手段としては特に限定されるものでは無いが、例えばヒートシール(熱溶着)を用いることができる。
図2中、符号26は密閉領域である。
【0045】
なお、密閉用容器22の形状としては、上述したゴム混練用配合材10の密閉用袋(A)と同様に袋状であることが好ましいが、他にも
図3に示したような繰り返しの使用に適した本体28と蓋体30とをメタルバンド(図示せず)や凹凸嵌合にて固定するように構成されたドラム状の密閉用容器22、あるいは
図4に示したような箱状の密閉用容器22であってもよいものである。本体28と蓋体30の接触部分には、密閉性をより高めるためガスケットまたはパッキンが取り付けられていてもよい。要はゴム混練用配合材10を確実に密閉した状態で搬送可能とする形態であれば、特に限定されないものである。
【0046】
加えて、この密閉用容器22の内部空間24に乾燥剤(図示せず)を配設してもよいものである。あるいは、内部空間24に乾燥した窒素ガスまたは空気を充てんしたり、乾燥した窒素ガスまたは空気と乾燥剤(図示せず)とを併用してもよいものである。
【0047】
このように、本発明の密閉梱包物20によれば、密閉用袋(A)と密閉用容器22の二重の密閉構造を成しているため、液状ジエン系ゴム(B)の物性を所定の状態に維持したまま、所定量確実に供給することができる。
【0048】
なお、上述の説明では、1つのゴム混練用配合材10を、1つの密閉用容器22に密閉して密閉梱包物20を作製する例を説明したが、取り扱い性などの観点から、1つの密閉用容器22に2つ以上のゴム混練用配合材10を密閉して、これを本発明の密閉梱包物としてもよい。もちろん、ゴム混練用配合材10の密閉用袋(A)は、そのまま1重で用いても2重以上に重ねて用いてもよいものである。
【0049】
<ゴム混練用配合材10の製造方法>
次いで、ゴム混練用配合材10の製造方法について説明する。
【0050】
まず初めに、
図5(a)に示したように、上部に開口部12を有する密閉用袋(A)を用意する。
次いで、
図5(b)に示したように、密閉用袋(A)内に、液状ジエン系ゴム(B)を充填する。
そして
図5(c)に示したように、密閉用袋(A)内に所定量の液状ジエン系ゴム(B)が入れられたら、液状ジエン系ゴム(B)の充填を終える。
最後に、
図5(d)に示したように、密閉用袋(A)の開口部12を密閉し、ゴム混練用配合材10が完成する。
なお、密閉用袋(A)を2重以上にしたい場合には、密閉用袋(A)を複数重ねて用意し、次いで複数重ねた密閉用袋(A)の上部の開口部12から、最も内側の密閉用袋(A)内に液状ジエン系ゴム(B)を充填し、最後にこの開口部12をヒートシールなどで密閉することで、ゴム混練用配合材10を完成するようすればよい。また、密閉用袋(A)を2重以上にしたい場合、作業性、液漏れをよりし難くすることなどを考慮して、以下のようにしてゴム混練用配合材10を完成してもよい。すなわち、1枚の袋を用意しその袋の上部の開口部12から、その袋内に液状ジエン系ゴム(B)を充填し、開口部12をヒートシールなどで密閉する。その後、液状ジエン系ゴム(B)が充填、密閉された袋の外側にさらに袋を重ね、重ねた袋の開口部をヒートシールなどで密閉し、これを必要に応じて複数回数繰り返して、ゴム混練用配合材10を完成する。
【0051】
このように本発明のゴム混練用配合材10の製造方法は、簡単な工程で確実に液状ジエン系ゴム(B)を密閉することができ、液状ジエン系ゴム(B)の取扱い性を高めることができる。
【0052】
<密閉梱包物20の製造方法>
密閉梱包物20の製造方法として、袋状の密閉用容器22を用いた場合を例に説明する。
【0053】
まず
図6(a)に示したように、上部に開口部32を有する袋状の密閉用容器22を用意する。
次いで、
図6(b)に示したように、密閉用容器22の開口部32から密閉用容器22の内部へゴム混練用配合材10を投入する。
さらに
図6(c)に示したように、密閉用容器22の開口部32を密閉し、密閉梱包物20が完成する。
【0054】
なお、密閉用容器22の開口部32を密閉する際には、例えばヒートシール(熱溶着)が用いられるが、この時に密閉用容器22の内部空間24に乾燥した窒素ガスまたは空気を封入するようにしてもよいものである。さらには、密閉用容器22の内部空間24に乾燥剤(図示せず)を配設してもよく、乾燥した窒素ガスまたは空気と乾燥剤(図示せず)とを併用してもよいものである。
このように本発明の密閉梱包物20の製造方法は、簡単な工程で確実にゴム混練用配合材10を密閉することができる。
なおゴム混練用配合材10は、1つの密閉用容器22に1つだけ密封されることに限定されず、2つ以上のゴム混練用配合材10を1つの密閉用容器22に密封してもよいものである。
【0055】
上記の密閉梱包物20の製造方法では、袋状の密閉用容器22を用いた場合を例に説明したが、
図3に示したようなドラム状の密閉用容器22を用いた場合には、本体28から蓋体30を予め外しておき、この状態で本体28内にゴム混練用配合材10を入れてから、後で蓋体30を閉じるようにすればよい。蓋体30の本体28への密閉固定は、例えばメタルバンド(図示せず)や凹凸嵌合によるものなど公知のものが利用可能であり、特に限定されるものではないものである。
【0056】
さらに
図4に示したような箱状の密閉用容器22を用いた場合にも、上記したドラム状の密閉用容器22と同様、本体28から蓋体30を予め外しておき、この状態で本体28内にゴム混練用配合材10を入れてから、後で蓋体30を閉じるようにすればよい。蓋体30の本体28への密閉固定は、例えばメタルバンド(図示せず)や凹凸嵌合によるものなど、公知の構造が利用可能であり、特に限定されるものではないものである。
【0057】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明で用いるゴム組成物は、液状ジエン系ゴム(B)を含む密閉用袋(A)に加え、固形ゴム、及びさらに必要に応じて、フィラー、加硫剤または架橋剤、その他の添加剤などの各成分を混練することにより作製できる。液状ジエン系ゴム(B)を含む密閉用袋(A)を、ゴム組成物を作製する際に装置に直接袋ごと投入できるので、ゴム組成物を作製する際の作業性に優れる。また密閉用袋として、特定の材料からできた密閉用袋(A)を用いているため、得られるゴム組成物の特性に悪影響を与えることは極めて少ない。なお、固形ゴムとは、20℃において固形状で取り扱うことができるゴムをいい、固形ゴムの100℃におけるムーニー粘度ML1+4は通常20~200の範囲にあり、通常合成ゴム及び天然ゴムの少なくとも1種から選ばれる。また上記その他の添加剤としては、例えば、加硫促進剤、加硫助剤、シランカップリング剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、ワックス、滑剤、光安定剤、スコーチ防止剤、加工助剤、顔料や色素等の着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料などが挙げられる。
【0058】
本発明のゴム組成物の製造方法は、上記各成分を均一に混合(混練)できれば特に限定されない。ゴム組成物の製造に用いる装置としては、例えば、ニーダールーダー、ブラベンダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等の接線式又は噛合式の密閉式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、及びローラーが挙げられる。上記ゴム組成物を製造は、通常50~270℃、好ましくは130~270℃の温度範囲で行うことができる。混合(混練)を130℃以上の温度範囲で行うことにより、密閉用袋の溶融、分散が促進され、ゴム組成物の特性に優れる傾向がある。
【0059】
本発明のゴム組成物は架橋することにより架橋物(加硫ゴム)として用いることが好ましい一形態である。加硫の条件及び方法に特に制限はないが、加硫金型を用いて加硫温度120~200℃及び加硫圧力0.5~20MPaの条件で行うことが好ましい。
【0060】
上記ゴム組成物及び該ゴム組成物の架橋物を使用できる用途としては、タイヤ、ベルト、防振ゴム、電線被覆ゴム、ロール、靴、シーリング剤、粘接着剤、グリース、刷版材、OCR、OCA、塗料、防舷材、コーティング剤、ガスケット、ホース、ブレーキパッドなどが挙げられる。
【0061】
上記ゴム組成物または架橋物は、例えばタイヤの一部として好適に用いられる。
上記ゴム組成物及び該ゴム組成物の架橋物を使用できるタイヤの部位としては、例えば、トレッド(キャップトレッド、アンダートレッド)、サイドウォール、ランフラットタイヤ用ゴム補強層(ライナーなど)、リムクッション、ビードフィラー、ビードインシュレーション、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、ベルト、ベルトクッション、ブレーカー、ブレーカークッション、チェーファー、チェーファーパッド、ストリップエイペックスなどが挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例で使用した各材料は以下のとおりである。
〔密閉用袋〕
密閉用袋(A-1):低密度ポリエチレンフィルム(融点108℃;厚み49μm)製の袋(大きさ 横20cm、縦30cm)
密閉用袋(A-2):高密度ポリエチレンフィルム(融点129℃;厚み52μm)製の袋(大きさ 横20cm、縦30cm)
密閉用袋(A-3):エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム(融点86℃;厚み67μm)製の袋(大きさ 横20cm、縦30cm)
【0064】
なお各密閉用袋の材料である重合体(重合体(a))の融点は、下記測定条件により求めた。なお、下記測定の吸熱ピークの頂点となる温度を融点とした。
(融点測定条件)
DSC測定装置:DSC6200(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
測定温度範囲:30℃~200℃
昇温速度:10℃/分
【0065】
〔密閉用容器〕
密閉用容器(C-1):アルミラミネートフィルム(層構成 ポリエチレンテレフタレート12μm/ポリエチレン15μm/アルミ7μm/ポリエチレン20μm/直鎖状低密度ポリエチレン100μm)製の袋(大きさ 横28cm、縦38cm;透湿度0.2g/m2・24h)
密閉用容器(C-2):高密度ポリエチレンフィルム(厚み52μm)製の袋(大きさ 横28cm、縦38cm;透湿度4.7g/m2・24h)
密閉用容器(C-3):JIS Z 1620(鋼製ペール)に準拠した、ガスケットを有する19Lの天ぶた取り外し式バンドタイプの非危険物用ペール缶(材質:ティンフリースチール、同部分厚み約0.4mm;透湿度0.1g/m2・24h未満)
【0066】
なお、透湿度はJIS Z 0208 カップ法に準拠し、温度40℃、湿度90%RHの条件で求めた値である。なお密閉用容器(C-3)については同じ厚みを持つ同質の材料からなる板について測定を行った結果である。
【0067】
〔液状ジエン系ゴム〕
下記製造例1で作製された液状ジエン系ゴム(B1-1)
【0068】
[製造例1]
(未変性液状ジエン系ゴム(B'-1)の作製)
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1280g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)66gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノールを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性液状ジエン系ゴム(B'-1)を得た。
【0069】
(未変性液状ジエン系ゴム(B'-1)の変性)
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、得られた未変性液状ジエン系ゴム(B'-1)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン1.0gと(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン50gを添加し、110℃で8時間反応させて、液状ジエン系ゴム(B1-1)を得た。
これら一連の操作を複数回繰り返し、以下実施例等で使用する液状ジエン系ゴム(B1-1)を作製した。
【0070】
[実施例1]
(ゴム混練用配合材の作製)
横20cm、縦30cmの密閉用袋(A-1)を2重に重ね、最も内側の袋の内部に、上記製造例1で作製した液状ジエン系ゴム(B1-1)800gを充填し、2重に重ねた密閉用袋(A)の開口部をヒートシールで密閉し、ゴム混練用配合材(1)を作製した。
【0071】
(密閉梱包物の作製)
横28cm、縦38cmの袋状の密閉用容器(C-1)にゴム混練用配合材(1)を投入し、開口部をヒートシールで密閉し、密閉梱包物(1)を作製した。
【0072】
[実施例2]
密閉用袋(A-1)を密閉用袋(A-3)に変更する以外は、実施例1と同様にして、ゴム混練用配合材(2)および密閉梱包物(2)を作製した。得られた密閉梱包物(2)の安定性試験を、下記条件に従って行った。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
(密閉梱包物の作製)
実施例1と同様にして作製したゴム混練用配合材(1)を、密閉用容器(C-3)であるペール缶の開口部から投入し、天ぶたをバンドでペール缶の胴体に締め付け、密閉梱包物(3)を作製した。得られた密閉梱包物(3)の安定性試験を、下記条件に従って行った。結果を表1に示す。
【0074】
[参考例1]
実施例1と同様にして作製したゴム混練用配合材(1)そのものの安定性試験を、下記条件に従って行った。結果を表1に示す。
【0075】
[参考例2]
密閉用袋(A-1)を密閉用袋(A-2)に変更する以外は、実施例1と同様にして、ゴム混練用配合材(3)を作製した。得られたゴム混練用配合材(3)の安定性試験を、下記条件に従って行った。結果を表1に示す。
【0076】
[参考例3]
実施例2と同様にして作製したゴム混練用配合材(2)そのものの安定性試験を、下記条件に従って行った。結果を表1に示す。
【0077】
[参考例4]
(密閉梱包物の作製)
密閉用容器(C-1)を密閉用容器(C-2)に変更する以外は、実施例1と同様にして、ゴム混練用配合材(1)を用いて密閉梱包物(1')を作製した。得られた密閉梱包物(1')の安定性試験を、下記条件に従って行った。結果を表1に示す。
【0078】
(安定性試験)
各実施例および参考例で得られた密閉梱包物またはゴム混練用配合材を、恒温恒湿機内に入れ、温度60℃、湿度85%Rhの条件下で4週間保存した。
その後、恒温恒湿機から取り出し、密閉用袋に充填されていた液状ジエン系ゴム(B1-1)を取り出した。この液状ジエン系ゴム(B1-1)の溶融粘度の変化率、官能基の変化率、多量体面積比の変化率を、それぞれ下記のようにして求め、密閉梱包物またはゴム混練用配合材の安定性を評価した。
【0079】
(溶融粘度の変化率)
溶融粘度の変化率は、上記安定性試験前後の液状ジエン系ゴム(B1-1)の38℃の溶融粘度の値から、以下の様にして算出できる。
溶融粘度の変化率=[{((安定性試験後の溶融粘度)-(安定性試験前の溶融粘度))/(安定性試験前の溶融粘度)}×100]
なお液状ジエン系ゴム(B1-1)の38℃における溶融粘度はブルックフィールド粘度計(B型粘度計)(BROOKFIELD ENGINEERING LABS. INC.製)により測定した。
【0080】
(官能基の変化率)
液状ジエン系ゴム(B1-1)に含まれる官能基の変化率は、安定性試験前後の官能基の濃度の値から以下の様にして算出できる。
官能基の変化率=[{((安定性試験後の官能基の濃度)-(安定性試験前の官能基の濃度))/(安定性試験前の官能基の濃度)}×100]
官能基の濃度とは、共役ジエンの単量体の質量に対し、共役ジエンに結合している官能基の数を意味する。官能基の濃度は、1H-NMR又は13C-NMRを用いて官能基由来のピークと重合体主鎖に由来するピークの面積比から算出することができる。なお、液状ジエン系ゴム(B1-1)の官能基由来のピークとは、アルコキシ基由来のピークを指す。
【0081】
(多量体面積比の変化率)
多量体面積比の変化率は、安定性試験前後の多量体面積比の値から以下の様にして算出できる。
多量体面積比の変化率=[{((安定性試験後の多量体面積比)-(安定性試験前の多量体面積比))/(安定性試験前の多量体面積比)}×100]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定で得られたGPCクロマトグラムから、Mt(ピークトップ分子量)×1.45以上の領域にある重合体の割合を算出し、これを多量体面積比とした。
【0082】
(GPCによるMt及びクロマトグラムの測定)
液状ジエン系ゴム(B1-1)のMt及びクロマトグラムはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置及び条件は、以下の通りである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI-8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
【0083】
【符号の説明】
【0084】
10・・・ゴム混練用配合材
12・・・開口部
16・・・密閉領域
20・・・密閉梱包物
22・・・密閉用容器
24・・・内部空間
26・・・密閉領域
28・・・本体
30・・・蓋体
32・・・開口部
A・・・密閉用袋
B・・・液状ジエン系ゴム