(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-03
(45)【発行日】2024-12-11
(54)【発明の名称】多官能ビニル芳香族共重合体及びその製造方法、それから得られる共重合体ゴム、ゴム組成物、ゴム架橋物及びタイヤ部材
(51)【国際特許分類】
C08F 212/34 20060101AFI20241204BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241204BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241204BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20241204BHJP
C08L 25/02 20060101ALI20241204BHJP
C08F 236/10 20060101ALI20241204BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241204BHJP
【FI】
C08F212/34
C08K3/36
C08K3/04
C08K3/20
C08L25/02
C08F236/10
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2024019928
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2020549380の分割
【原出願日】2019-09-26
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018184931
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018208849
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019067111
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】川辺 正直
(72)【発明者】
【氏名】倉富 格
(72)【発明者】
【氏名】岩下 新一
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168347(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084128(WO,A1)
【文献】特開2008-239781(JP,A)
【文献】特開2010-209278(JP,A)
【文献】特開2013-133375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)を0.5モル%以上、40モル%以下含有し、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)を60モル%以上、99.5モル%以下含有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、構造単位(a)の少なくとも一部は下記式(2)で表される架橋構造単位(a2)と、下記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)であり、
【化1】
(式中、R1は独立に炭素数6~30の芳香族炭化水素基を示す。)
構造単位(a)に対する架橋構造単位(a2)のモル分率が、0.05~0.50範囲であり、構造単位(a)及び(b)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率が、0.001~
0.085の範囲であり、多官能ビニル芳香族共重合体の数平均分子量Mnが1,000~50,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が8.0以下であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体。
【請求項2】
多官能ビニル芳香族共重合体0.5gをトルエン100gに溶解させた溶液のHaze値が0.1以下である請求項
1に記載の多官能ビニル芳香族共重合体。
【請求項3】
モノビニル芳香族化合物が、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、m-エチルビニルベンゼン、及びp-エチルビニルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上の単量体である請求項
1に記載の多官能ビニル芳香族共重合体。
【請求項4】
ジビニル芳香族化合物、及びモノビニル芳香族化合物を含む重合原料を誘電率2.0~15.0の溶媒に溶解させた均一溶媒中、ルイス酸触媒の存在下で、20~60℃の温度で重合させることを特徴とする請求項
1に記載の多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の多官能ビニル芳香族共重合体(A)と、共役ジエン化合物(B)、又は共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)と、を共重合させて得られることを特徴とする共役ジエン系共重合体。
【請求項6】
多官能ビニル芳香族共重合体に由来する構造単位(A1)を0.001~6重量%、共役ジエン化合物に由来する構造単位(B1)を29~99.999重量%及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(C1)を0~70重量%含有することを特徴とする請求項
5に記載の共役ジエン系共重合体。
【請求項7】
前記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、更に変性剤を反応させて変性してなる請求項
5に記載の共役ジエン系共重合体。
【請求項8】
請求項
5に記載の共役ジエン系共重合体100重量部に対し、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5~200重量部を含有することを特徴とする共役ジエン系共重合体組成物。
【請求項9】
架橋剤を更に含有する請求項
8に記載の共役ジエン系共重合体組成物。
【請求項10】
請求項
9に記載の共役ジエン系共重合体組成物を架橋してなることを特徴とするゴム架橋物。
【請求項11】
請求項
10に記載のゴム架橋物を含むタイヤ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、アニオン重合開始剤存在下に於いて、共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)との共重合反応性に優れる多官能ビニル芳香族共重合体及びその製造方法、並びに、加工性に優れ、かつ、引張強度と耐摩耗性に優れる共役ジエン系共重合体、及び共役ジエン系共重合体からなる共役ジエン系共重合体組成物、並びに、それを架橋したゴム架橋物、タイヤ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)スチレン-イソプレンゴム等の共役ジエン系ゴムは、耐摩耗性、弾性、耐水性に優れ、成型材料、樹脂の改質剤等の様々な用途に用いられている。
【0003】
この共役ジエンゴムの主要な用途の一つとして、自動車用のタイヤが挙げられる。タイヤにおいて要求される特性としては、機械的強度、耐摩耗性、ウェットグリップ性等(以下、併せて、強度等ともいう。)が挙げられる。さらに近年では、省エネ性能、つまり低燃費性に優れるタイヤ(いわゆる「エコタイヤ」)の開発が活発に行われてきている。このエコタイヤは、強度等に加え、転がり抵抗が小さいことが要求される。
【0004】
タイヤの強度等を担保するために、共役ジエンゴムにカーボンブラックやシリカ等のフィラー(補強用充填剤)を添加することが知られているが、タイヤの強度等をさらに向上させるとともに、優れた転がり抵抗を付与する材料として、末端変性溶液重合型SBR(末端変性S-SBR)が注目されている。末端変性S-SBRは、SBRの分子末端に官能基を有し、この分子末端の官能基がフィラーと相互作用する。この相互作用により、SBR中のフィラーの分散性が向上するとともに、SBRの分子末端が拘束されて運動性が低下する。その結果、タイヤのヒステリシスロス(内部摩擦)が低減し、転がり抵抗が低下する。この特性を活かし、強度等と低転がり抵抗を兼ね備えたエコタイヤの開発が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1では、非極性溶媒中で有機リチウム化合物を開始剤として用い、リビングアニオン重合により、α-メチルスチレンブロックとブタジエンブロックからなるブロック共重合体を合成し、さらに必要により多官能性カップリング剤を反応させることで、高温特性とゴム的性質を兼ね備えたS-SBRを得ている。
特許文献2では、共役ジエン及びモノビニル芳香族モノマーのランダムコポリマーブロックと、ポリ共役ジエンブロックと、多官能性リチウム系開始剤由来の官能基とを有する、星形-ブロックインターポリマーが開示され、転がり抵抗の低減やトラクション特性の改善といった優れた特性を有するタイヤトレッドの作製におけるゴムとして、広く使用することができることが開示されている。
特許文献1、2は、ゴム成分に分岐構造を導入することで、ゴムの加工性を担保する効果があると考えられる。しかし、強度を担保するためのフィラーとの相互作用については、特段の工夫はなく、強度に対する寄与は十分ではない。
【0006】
特許文献3では、複数のジエン系ゴムを含むブレンドゴムに所定量のカーボンブラックを配合したゴム組成物に、分子鎖末端にカーボンブラックと相互作用のある官能基を有し、かつジエン系ゴムのゴム成分に類似するポリマー構造からなる低分子量の官能基含有ポリマーを配合してなるゴム組成物が開示されている。このゴム組成物は、カーボンブラックと相互作用を有する低分子化合物をゴムへ配合することにより、各ジエン系ゴム成分中へのカーボンブラック分配量を制御できる。そのため、各々のゴム成分の特長を有効に発現させ、例えば転がり特性とウェット特性のような背反関係にあるゴム特性の両立を図ることができる。しかし、この技術は、低分子量化合物をゴムに対して配合するため、強度に対する寄与としては十分ではない。
特許文献4では、共役ジエン単量体単位、芳香族ビニル単量体単位及び少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体単位を含む架橋ゴム粒子、並びに、特定の結合構造を有する共役ジエン単量体単位を含む共役ジエン/芳香族ビニル共重合ゴムを含有するゴム組成物が開示され、この架橋ゴム粒子はカルボン酸基、ヒドロキシル基及び/又はエポキシ基を有する単量体単位を含んでも良いと開示されている。この技術は、シリカ等の無機充填剤(フィラー)との適度な相互作用を有することから、無機充填剤の分散性や加工性に優れる。しかし、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体単位や、カルボン酸基、ヒドロキシル基及び/又はエポキシ基を有する単量体単位として開示されている物質は、いずれも低分子である。そのため、反応性が過剰に高く、架橋ゴム粒子及びゴム組成物においてゲル化が進行する恐れがあった。また、この技術は共役ジエン/芳香族ビニル共重合ゴムとは別途架橋ゴムを合成した上で、その架橋ゴムを共役ジエン/芳香族ビニル共重合ゴムと配合することが必須であり、工程の簡易性の観点で、改善が必要である。
【0007】
そこで、本出願人は、上記課題に鑑み、分岐構造及びフィラーとの相互作用機能を併せ持つ、特定の多官能ビニル芳香族共重合体化合物を、共役ジエンゴムの構成単位とすることで、加工性、強度及び均質性を兼ね備えた共重合体ゴムを提供できることを見出した(特許文献5)。
しかし、この多官能ビニル芳香族共重合体化合物においては、ゲル化については大幅に改善されるものの、依然として、ミクロゲルが少量副生するといった問題があった。
【0008】
なお、本出願人は、特許文献5で開示した多官能ビニル芳香族共重合体化合物の類似化合物について、特許文献6、7等で開示している。しかし、これらの類似化合物は、共重合体ゴムの構成単位として使用することを教えない。
また、特許文献8で開示した多官能ビニル芳香族共重合体は、分岐構造が著しく発達した高分子量体を多く含む分子量分布の広い共重合体であるために、共重合体ゴムの構成単位として使用した場合、ミクロゲルが少量副生するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-73434号公報
【文献】特表2004-517202号公報
【文献】特開2005-213381号公報
【文献】国際公開2002/000779号
【文献】国際公開2018/084128号
【文献】特開2004-123873号公報
【文献】特開2018-39995号公報
【文献】国際公開2018/181842号
【発明の概要】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決し、ミクロゲルの少量副生もなく、共重合体ゴムの製造に使用することの出来る反応性と可溶性を有する多官能ビニル芳香族共重合体が得られ、加工性、強度及び均質性を兼ね備えた共重合体ゴム材料を提供することを目的とする。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、第1の発明として、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び芳香族縮合環構造を含有するシクロオレフィン系単量体に由来する構造単位(c)を含有する多官能ビニル芳香族共重合体が共重合体ゴムの製造に際し、高い反応性を有していること、並びにこの多官能ビニル芳香族共重合体を共役ジエンゴムの構成単位として用いることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0012】
第1の本発明は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)を5モル%以上、35モル%以下含有し、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)を5モル%以上、25モル%以下含有し、及び芳香族縮合環構造を含有するシクロオレフィン系単量体に由来する構造単位(c)を40モル%以上、90モル%以下含有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、構造単位(a)の少なくとも一部は下記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)であり、
【化1】
(式中、R1は炭素数6~30の芳香族炭化水素基を示す。)
構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)モル分率は0.01~0.30の範囲であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0013】
上記多官能ビニル芳香族共重合体は、数平均分子量Mnが300~100,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であり、及びトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることができる。
【0014】
上記シクロオレフィン系単量体としては、インデン系化合物、アセナフチレン系化合物、ベンゾフラン系化合物、及びベンゾチオフェン系化合物からなる群から選ばれる1種以上の単量体が挙げられる。
【0015】
また、本発明は、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物及び芳香族縮合環構造を含有するシクロオレフィン系単量体を含む重合原料を誘電率2.0~15.0の溶媒に溶解させた均一溶媒中、ルイス酸触媒の存在下で、20~120℃の温度で重合させることを特徴とする上記の多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、上記の多官能ビニル芳香族共重合体(A)と、共役ジエン化合物(B)、又は、共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を共重合させて得られることを特徴とする共役ジエン系共重合体である。
【0017】
上記共役ジエン系共重合体は、多官能ビニル芳香族共重合体に由来する構造単位(A1)を0.001~6重量%、共役ジエン化合物に由来する構造単位(B1)を29~99.999重量%及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(C1)を0~70重量%含有することがよい。また、上記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、さらに変性剤を反応させてなることもできる。
【0018】
また、本発明は、上記の共役ジエン系共重合体100重量部に対し、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5~200重量部を含有することを特徴とする共役ジエン系共重合体組成物である。
【0019】
上記共役ジエン系共重合体組成物は、架橋剤をさらに含有することができる。
また、本発明は、架橋剤を含有する上記共役ジエン系共重合体組成物を架橋してなることを特徴とするゴム架橋物である。
【0020】
また、本発明は上記共役ジエン系共重合体組成物を含むタイヤ部材である。
【0021】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、第2の発明として、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、及び、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)を含有し、特定の架橋度、ビニル基含有構造単位のモル分率及び溶解度を有する多官能ビニル芳香族共重合体が、共重合体ゴムの製造に際し高い反応性を有していること、並びにこの多官能ビニル芳香族共重合体を共役ジエンゴムの構成単位として用いることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0022】
第2の本発明は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)を0.5モル%以上、40モル%以下含有し、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)を60モル%以上、99.5モル%以下含有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、構造単位(a)の少なくとも一部は下記式(2)で表される架橋構造単位(a2)と、下記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)であり、
【化2】
(式中、R1は独立に炭素数6~30の芳香族炭化水素基を示す。)
構造単位(a)に対する架橋構造単位(a2)のモル分率が、0.05~0.50の範囲であり、構造単位(a)及び(b)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率が、0.001~0.35の範囲であり、多官能ビニル芳香族共重合体の数平均分子量Mnが1,000~50,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が8.0以下であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0023】
上記多官能ビニル芳香族共重合体0.5gをトルエン100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値が0.1以下であることができる。
【0024】
上記モノビニル芳香族化合物が、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、m-エチルビニルベンゼン、及びp-エチルビニルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上の単量体が挙げられる。
【0025】
また、本発明は、ジビニル芳香族化合物、及びモノビニル芳香族化合物を含む重合原料を誘電率2.0~15.0の溶媒に溶解させた均一溶媒中、ルイス酸触媒の存在下で、20~120℃の温度で重合させることを特徴とする上記の多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法である。
【0026】
また、本発明は、上記の多官能ビニル芳香族共重合体(A)と、共役ジエン化合物(B)、又は共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を共重合させて得られることを特徴とする共役ジエン系共重合体である。
【0027】
上記共役ジエン系共重合体は、多官能ビニル芳香族共重合体に由来する構造単位(A1)を0.001~6重量%、共役ジエン化合物に由来する構造単位(B1)を29~99.999重量%及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(C1)を0~70重量%含有することがよい。また、上記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、更に変性剤を反応させてなることもできる。
【0028】
また、本発明は、上記の共役ジエン系共重合体100重量部に対し、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5~200重量部を含有することを特徴とする共役ジエン系共重合体組成物である。
【0029】
上記共役ジエン系共重合体組成物は、架橋剤を更に含有することができる。
また、本発明は、架橋剤を含有する上記共役ジエン系共重合体組成物を架橋してなることを特徴とするゴム架橋物である。
【0030】
また、本発明は上記共役ジエン系共重合体組成物を含むタイヤ部材である。
【0031】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、第3の発明として、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び、α,α-二置換オレフィン化合物に由来する構造単位(c)を含有する多官能ビニル芳香族共重合体ジビニル芳香族化合物が、共重合体ゴムの製造に際し高い反応性を有していること、並びにこの多官能ビニル芳香族共重合体を共役ジエンゴムの構成単位として用いることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0032】
第3の本発明は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)を0.5モル%以上、75モル%以下含有し、α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)を5.0モル%以上、75モル%以下含有し、α,α-二置換オレフィン化合物に由来する構造単位(c)を5.0モル%以上、75モル%以下含有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、構造単位(a)の少なくとも一部は下記式(2)で表される架橋構造単位(a2)と、下記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)であり、
【化3】
(式中、R1は独立に炭素数6~30の芳香族炭化水素基を示す。)
構造単位(a)に対する架橋構造単位(a2)のモル分率が、0.05~0.60の範囲であり、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率が、0.001~60の範囲であり、
多官能ビニル芳香族共重合体の数平均分子量Mnが300~50,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であることを特徴とする多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0033】
上記α,α-二置換オレフィン化合物が、イソブチレン、ジイソブチレン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、1-メチル-1-シクロペンテン、2-メチル-1-ヘキセン、1-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、2-メチル-1-オクテン、2-メチル-1-ノネン、2-メチル-1-デセン、2-メチル-1-ドデセン、2-メチル-1-テトラデセン、2-メチル-1-ヘキサデセン、2-メチル-1-オクタデセン、2-メチル-1-エイコセン、2-メチル-1-ドコセン、2-メチル-1-テトラコセン、α-メチルスチレンからなる群から選ばれる1種以上の単量体を挙げることができる。
上記α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物が、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、m-エチルビニルベンゼン、及びp-エチルビニルベンゼンからなる群から選ばれる1種以上の単量体が挙げられる。
【0034】
また、本発明は、ジビニル芳香族化合物、α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物、及び、α,α-二置換オレフィン化合物を含む重合原料を誘電率2.0~15.0の溶媒に溶解させた均一溶媒中、ルイス酸触媒の存在下で、0~120℃の温度で重合させることを特徴とする上記の多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法である。
【0035】
また、本発明は、上記の多官能ビニル芳香族共重合体(A)と、共役ジエン化合物(B)、又は共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を共重合させて得られることを特徴とする共役ジエン系共重合体である。
【0036】
上記共役ジエン系共重合体は、多官能ビニル芳香族共重合体に由来する構造単位(A1)を0.001~6重量%、共役ジエン化合物に由来する構造単位(B1)を29~99.999重量%及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(C1)を0~70重量%含有することがよい。また、上記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、更に変性剤を反応させてなることもできる。
上記共役ジエン系共重合体100重量部に対し、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5~200重量部を含有することができる。
上記共役ジエン系共重合体組成物は、架橋剤を更に含有することができる。
【0037】
また、本発明は、架橋剤を含有する上記共役ジエン系共重合体組成物を架橋してなることを特徴とするゴム架橋物である。
また、本発明は上記共役ジエン系共重合体組成物を含むタイヤ部材である。
【0038】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、共重合体ゴムの製造に使用することが出来る反応性と可溶性を有していることから、その原料として適する。本発明の共役ジエン系共重合体は、分岐構造及びフィラーとの相互作用機能を併せ持つ構造単位を有することから、加工性及び強度を兼ね備えるゴムとして優れる。更に、ゲル状物質ができにくく、均質となり、成型材料、樹脂の改質剤等に適用できる。
更に、この共役ジエン系共重合体にフィラーを含有し、架橋させた架橋ゴム組成物は、フィラーの分散性に優れることから、機械的強度、耐摩耗性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
第1の本発明の多官能ビニル芳香族共重合体について説明する。
【0040】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び芳香族縮合環構造を含有するシクロオレフィン系単量体に由来する構造単位(c)を含有する。
そして、数平均分子量Mnが300~100,000であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表される分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であり、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることがよい。
【0041】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、溶媒可溶性であることが好ましいので、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体、あるいは単に共重合体ともいう。
本明細書でいう構造単位は、共重合体の主鎖中に存在する繰り返し単位を言う。
【0042】
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、そのビニル基が1つだけ反応したものと、2つが反応したものなどいくつかの構造の異なるものがあり得るが、ビニル基が1つだけ反応した構造の構造単位である上記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)を、モル分率として0.01~0.30の範囲で含む。
好ましい下限は、0.04であり、より好ましくは、0.05である。また、好ましい上限は0.25であり、より好ましくは、0.20である。上記の範囲とすることによって、可溶性を維持しながら、共役ジエン系化合物との共重合の際に、優れた反応性を有し、ジエン系ゴムとの相溶性に優れ、加工性、引張強度、耐摩耗性にも優れた共重合ゴムを得ることができる。このモル分率が0.01より小さいと、共役ジエン化合物等との共重合反応性が低下する傾向にあり、0.30よりも大きいと、共重合の際にミクロゲルが生成する傾向にある。
ここで、上記モル分率は、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率であり、これは下記式(12)で計算される。
(a1)/[(a)+(b)+(c)] ・・・(12)
ここで、(a)、(b)、(c)及び(a1)は、それぞれ構造単位(a)、(b)、(c)及び(a1)の存在量(モル)を示す。
【0043】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、好ましくはジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)を5~35モル%含有する。
構造単位が、構造単位(a)、(b)及び(c)だけからなる場合は、構造単位(a)のモル分率は、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対して0.05~0.35となる。このモル分率は、下記式(13)で計算される。
(a)/[(a)+(b)+(c)] ・・・(13)
(ここで、(a)、(b)、及び(c)は、式(2)と同義である。)
上記モル分率は、好ましい下限は0.06、より好ましくは0.07である。また、好ましい上限は、0.30、より好ましくは0.25である。
なお、構造単位(a)、(b)及び(c)以外の構造単位を含む場合においては、好ましい下限は0.02、より好ましくは0.05であり、さらに好ましくは0.07である。また、好ましい上限は、0.35、より好ましくは0.30であり、さらに好ましくは0.25である。
【0044】
一方、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)のモル分率は、0.05~0.25である。好ましい下限は0.07である。また、好ましい上限は、0.23、より好ましくは0.20である。
【0045】
上記シクロオレフィン系単量体に由来する構造単位(c)のモル分率は、0.40~0.90であり、好ましい下限は0.45、より好ましくは0.50、さらに好ましくは0.65である。また、好ましい上限は、0.86、より好ましくは0.80である。
構造単位(b)のモル分率は、構造単位(a)、(b)及び(c)だけからなる場合は、下記式(14)で計算され、構造単位(c)のモル分率は下記式(15)で計算される。
(b)/[(a)+(b)+(c)] ・・・(14)
(c)/[(a)+(b)+(c)] ・・・(15)
(ここで、(a)、(b)、及び(c)は、式(12)と同義である。)
なお、構造単位(a)、(b)及び(c)以外の構造単位を含む場合においても、構造単位(b)又は構造単位(c)の好ましいモル分率は、上記の範囲である。
【0046】
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、共役ジエン系化合物との共重合反応性を発現させるための分岐成分としてのビニル基を含み、一方、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)は、硬化反応に関与するビニル基を有しないため、成形性や相溶性等を与える。また、シクロオレフィン系単量体に由来する構造単位(c)は、その導入量が多官能ビニル芳香族共重合体の分子量、分子量分布に影響を及ぼすことから、反応性、ゲルの生成しやすさや相溶性を与えることになる。したがって、構造単位(a)のモル分率が0.05に満たないと硬化物の耐熱性が不足し、0.35を超えると成形加工性が低下する。また、構造単位(b)のモル分率が0.25を超えると耐熱性が低下し、0.05に満たないと成形加工性が低下する。一方、構造単位(c)のモル分率が0.90を超えると耐熱性が低下し、0.40に満たないと成形加工性が低下する。
【0047】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体のMn(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量)は、好ましくは300~100,000であり、より好ましくは400~50,000、更に好ましくは500~10,000である。Mnが300未満であると共重合体中に含まれる単官能の共重合体の量が増えるため、共役ジエン化合物との共重合反応性が低下する傾向にあり、また、Mnが100,000を超えると、ゲルが生成しやすくなり、また、成形加工性や引張破断伸びが低下する傾向にある。分子量分布(Mw/Mn)の値は、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.0以下、より好ましくは1.0~7.0である。最も好ましくは、1.3~6.0である。Mw/Mnが10.0を超えると、共重合ゴムの加工特性が悪化する傾向にあり、また、ゲルが発生する傾向にある。
【0048】
本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムから選ばれる溶剤に可溶であるが、有利には上記溶剤のいずれにも可溶である。溶剤に可溶で、多官能な共重合体であるためには、ジビニルベンゼンのビニル基の一部は架橋せずに残存し適度な分岐度であることが必要である。かかる共重合体又はその製造方法は上記特許文献等で知られている。そして、溶剤100gに50g以上溶解するものであることがよい。より好ましくは80g以上溶解するものである。
【0049】
第2の本発明の多官能ビニル芳香族共重合体について説明する。
【0050】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、及びモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)を含有する。
そして、上記構造単位(a)の少なくとも一部は上記式(2)で表される架橋構造単位(a2)と、上記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)を含む。
構造単位(a)に対するジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)の占める割合を示すモル分率(架橋度ともいう。)が0.05~0.50の範囲である。また、構造単位(a)及び(b)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率が、0.001~0.35の範囲である。
【0051】
架橋構造単位(a2)の上記架橋度は、0.05~0.50の範囲であるが、好ましい下限は、0.06であり、より好ましくは、0.07である。また、好ましい上限は0.45であり、より好ましくは、0.40である。特に好ましくは、0.35であり、最も好ましくは0.30である。上記の範囲とすることによって、可溶性を維持しながら、共役ジエン系化合物との共重合の際に、優れた反応性を有し、ジエン系ゴムとの相溶性に優れ、加工性、引張強度、耐摩耗性にも優れた共重合ゴムを得ることができる。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体の製法により、上記の架橋度と後述の式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)とは、独立に任意に制御して変えられるパラメーターであるが、上記架橋度が0.05より小さいと、多官能ビニル芳香族共重合体の架橋度が小さいことに由来して、式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)の分子内での架橋反応が起こりやすく、共役ジエン化合物等との共重合の際にミクロゲルが生成する傾向にある。一方、0.50よりも大きいと、多官能ビニル芳香族共重合体自身の分子量の増大を招き、分子量分布が広くなる傾向にあることから、耐摩耗性が低下する傾向にある。
【0052】
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、そのビニル基が1つだけ反応したものと、2つが反応したものなどいくつかの構造の異なるものがあり得るが、ビニル基が1つだけ反応した構造の構造単位である上記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)を、上記モル分率として0.001~0.35の範囲で含む。
好ましい下限は、0.005であり、より好ましくは、0.01である。また、好ましい上限は0.30であり、より好ましくは、0.20である。上記の範囲とすることによって、可溶性を維持しながら、共役ジエン系化合物との共重合の際に、優れた反応性を有し、ジエン系ゴムとの相溶性に優れ、加工性、引張強度、耐摩耗性にも優れた共重合ゴムを得ることができる。このモル分率が0.001より小さいと、共役ジエン化合物等との共重合反応性が低下する傾向にあり、0.35よりも大きいと、共重合の際にミクロゲルが生成する傾向にある。
ここで、上記モル分率は、構造単位(a)及び(b)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率であり、これは下記式(23)で計算される。
(a1)/[(a)+(b)] (23)
ここで、(a)、(b)及び(a1)は、それぞれ構造単位(a)、(b)及び(a1)の存在量(モル)を示す。
【0053】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)を0.5~40モル%含有する。
構造単位が、構造単位(a)及び(b)だけからなる場合は、構造単位(a)のモル分率は、構造単位(a)及び(b)の総和に対して0.005~0.40となる。このモル分率は、下記式(24)で計算される。
(a)/[(a)+(b)] (24)
(ここで、(a)及び(b)は、式(23)と同義である。)
上記モル分率は、好ましい下限は0.006、より好ましくは0.007である。また、好ましい上限は、0.30、より好ましくは0.25である。
なお、構造単位(a)及び(b)以外の構造単位を含む場合においては、好ましい含有率の下限は0.2モル%、より好ましくは0.5モル%であり、更に好ましくは0.7モル%である。また、好ましい上限は、35モル%、より好ましくは30モル%であり、更に好ましくは25モル%である。
【0054】
一方、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)のモル分率は、0.60~0.995である。好ましい下限は0.70である。より好ましい下限は0.75である。また、好ましい上限は、0.994、より好ましくは0.993である。
【0055】
構造単位(b)のモル分率は、構造単位(a)及び(b)だけからなる場合は、下記式(25)で計算される。
(b)/[(a)+(b)] (25)
(ここで、(a)及び(b)は、式(23)と同義である。)
なお、構造単位(a)及び(b)以外の構造単位を含む場合においても、構造単位(b)の好ましいモル分率は、上記の範囲である。
【0056】
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、共役ジエン系化合物との共重合反応性を発現させるための分岐成分としてのビニル基を含み、一方、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)は、硬化反応に関与するビニル基を有しないため、成形性や相溶性等を与える。したがって、構造単位(a)のモル分率が0.005に満たないと硬化物の耐熱性が不足し、0.40を超えると成形加工性が低下する。また、構造単位(b)のモル分率が0.995を超えると耐熱性が低下し、0.60に満たないと成形加工性が低下する。
【0057】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体には、上記構造単位に加えて、他の構造単位を含有することができる。他の構造単位の詳細は製造方法の説明から理解される。
【0058】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体のMn(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量)は、1,000~50,000であり、好ましくは1,200~45,000、より好ましくは1,400~30,000である。更に好ましくは、1,600~20,000であり、最も好ましくは2,000~10,000である。Mnが1,000未満であると共重合体中に含まれる単官能の共重合体の量が増えるため、共役ジエン化合物との共重合反応性が低下する傾向にあり、また、50,000を超えると、ゲルが生成しやすくなる他、成形加工性や引張破断伸びが低下する傾向にある。分子量分布は、8.0以下、好ましくは7.0以下、より好ましくは、1.3~6.0である。Mw/Mnが8.0を超えると、共重合ゴムの加工特性が悪化する傾向にある他、ゲルが発生する傾向にある。
【0059】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムから選ばれる溶剤に可溶であるが、有利には上記溶剤のいずれにも可溶である。溶剤に可溶で、多官能な共重合体であるためには、ジビニルベンゼンのビニル基の一部は架橋せずに残存し適度な分岐度であることが必要である。かかる共重合体又はその製造方法は上記特許文献等で知られている。そして、溶剤100gに50g以上溶解するものであることがよい。より好ましくは80g以上溶解するものである。
【0060】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、このトルエン溶液のHaze値(濁り度)が0.1以下であることがよい。ここで、Haze値は、多官能ビニル芳香族共重合体0.5gをトルエン100gに溶解させた溶液を石英セルに入れ、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値をいう。
このHaze値は、溶剤への可溶性の評価にも関係し、Haze値が低いことは可溶性が優れること又はゲルが少ないことを意味する。
【0061】
第3の本発明の多官能ビニル芳香族共重合体について説明する。
【0062】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び、α,α-二置換オレフィン化合物に由来する構造単位(c)を含有する。
そして、上記構造単位(a)の少なくとも一部は上記式(2)で表される架橋構造単位(a2)と、上記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)を含む。
構造単位(a)に対するジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)の占める割合を示すモル分率(架橋度ともいう。)が0.05~0.60の範囲である。また、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率が、0.001~0.60の範囲である。
【0063】
架橋構造単位(a2)の上記架橋度は、0.05~0.60の範囲であるが、好ましい下限は、0.06であり、より好ましくは、0.07である。また、好ましい上限は0.55であり、より好ましくは、0.50である。特に好ましくは、0.45であり、最も好ましくは0.40である。最適には0.20~0.40の範囲である。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体の製法により、上記の架橋度と式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)とは、独立に任意に制御して変えられるパラメーターであるが、架橋構造単位(a2)の上記架橋度が0.05より小さいと、多官能ビニル芳香族共重合体の架橋度が小さいことに由来して、式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)の分子内での架橋反応が起こりやすく、共役ジエン化合物等との共重合の際にミクロゲルが生成する傾向にある。一方、0.60よりも大きいと、多官能ビニル芳香族共重合体自身の分子量の増大を招き、分子量分布が広くなる傾向にあることから、耐摩耗性が低下する傾向にある。
【0064】
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、そのビニル基が1つだけ反応したものと、2つが反応したものなどいくつかの構造の異なるものがあり得るが、ビニル基が1つだけ反応した構造の構造単位である上記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)を、上記モル分率として0.001~0.60の範囲で含む。
好ましい下限は、0.005であり、より好ましくは、0.01である。また、好ましい上限は0.55であり、より好ましくは、0.50である。最適には0.10~0.50の範囲である。上記の範囲とすることによって、可溶性を維持しながら、共役ジエン系化合物との共重合の際に、優れた反応性を有し、ジエン系ゴムとの相溶性に優れ、加工性、引張強度、耐摩耗性にも優れた共重合ゴムを得ることができる。このモル分率が0.001より小さいと、共役ジエン化合物等との共重合反応性が低下する傾向にあり、0.60よりも大きいと、共重合の際にミクロゲルが生成する傾向にある。
ここで、上記モル分率は、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率であり、これは下記式(33)で計算される。
(a1)/[(a)+(b)+(c)] (33)
ここで、(a)、(b)、(c)及び(a1)は、それぞれ構造単位(a)、(b)、(c)及び(a1)の存在量(モル)を示す。
【0065】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)を0.5~60モル%含有する。
構造単位が、構造単位(a)、(b)及び(c)だけからなる場合は、構造単位(a)のモル分率は、構造単位(a)、(b)及び(c)の総和に対して0.005~0.75となる。このモル分率は、下記式(34)で計算される。
(a)/[(a)+(b)+(c)] (34)
(ここで、(a)、(b)及び(c)は、式(33)と同義である。)
上記モル分率は、好ましい下限は0.006、より好ましくは0.007である。また、好ましい上限は、0.70、より好ましくは0.60である。最適には、0.10~0.55である。
なお、構造単位(a)、(b)及び(c)以外の構造単位を含む場合においては、好ましい含有率の下限は0.2モル%、より好ましくは0.5モル%であり、更に好ましくは0.7モル%である。また、好ましい上限は、50モル%、より好ましくは45モル%であり、更に好ましくは40モル%である。
【0066】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)を5.0~75モル%含有する。モル分率で言えば、0.05~0.75である。好ましい下限は0.06である。より好ましい下限は0.07である。また、好ましい上限は、0.70、より好ましくは0.65である。最適には、0.30~0.60である。
【0067】
構造単位(b)のモル分率は、構造単位(a)、(b)及び(c)だけからなる場合は、下記式(35)で計算される。
(b)/[(a)+(b)+(c)] (35)
(ここで、(a)、(b)及び(c)は、式(33)と同義である。)
なお、構造単位(a)、(b)及び(c)以外の構造単位を含む場合においても、構造単位(b)の好ましいモル分率は、上記の範囲である。
【0068】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、α,α-二置換オレフィン化合物に由来する構造単位(c)を5.0~75モル%含有する。モル分率で言えば、0.05~0.75である。好ましい下限は0.06である。より好ましい下限は0.07である。また、好ましい上限は、0.70、より好ましくは0.65である。最適には、0.10~0.40である。
【0069】
構造単位(c)のモル分率は、構造単位(a)、(b)及び(c)だけからなる場合は、下記式(36)で計算される。
(c)/[(a)+(b)+(c)] (36)
(ここで、(a)、(b)及び(c)は、式(33)と同義である。)
なお、構造単位(a)、(b)及び(c)以外の構造単位を含む場合においても、構造単位(c)の好ましいモル分率は、上記の範囲である。
【0070】
ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)は、共役ジエン系化合物との共重合反応性を発現させるための分岐成分としてのビニル基を含み、一方、α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)は、硬化反応に関与するビニル基を有しないため、成形性や相溶性等を与える。α,α-二置換オレフィン化合物に由来する構造単位(c)は、連鎖移動反応を起こしやすいため、分子量を制御する機能を有している。
さらに、構造単位(a)のモル分率が0.005に満たないと硬化物の耐熱性が不足し、0.75を超えると成形加工性が低下する。また、構造単位(b)のモル分率が0.75を超えると耐熱性が低下し、0.05に満たないと成形加工性が低下する。一方、構造単位(c)のモル分率が0.75を超えると耐熱性が低下し、0.05に満たないと、分子量が増大し、他の樹脂との相溶性や成形加工性が低下する。
【0071】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体には、上記構造単位に加えて、他の構造単位を含有することができる。他の構造単位の詳細は製造方法の説明から理解される。
【0072】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体のMn(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量)は、300~50,000であり、好ましくは500~45,000、より好ましくは600~40,000である。更に好ましくは、700~35,000であり、最も好ましくは800~30,000である。最適には900~3,000である。Mnが300未満であると共重合体中に含まれる単官能の共重合体の量が増えるため、共役ジエン化合物との共重合反応性が低下する傾向にあり、また、50,000を超えると、ゲルが生成しやすくなる他、成形加工性や引張破断伸びが低下する傾向にある。分子量分布は、10.0以下、好ましくは9.0以下、より好ましくは、1.3~8.0である。最適には2.0~6.0である。Mw/Mnが10.0を超えると、共重合ゴムの加工特性が悪化する傾向にある他、ゲルが発生する傾向にある。
【0073】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムから選ばれる溶剤に可溶であるが、有利には上記溶剤のいずれにも可溶である。溶剤に可溶で、多官能な共重合体であるためには、ジビニルベンゼンのビニル基の一部は架橋せずに残存し適度な分岐度であることが必要である。かかる共重合体又はその製造方法は上記特許文献等で知られている。そして、溶剤100gに50g以上溶解するものであることがよい。より好ましくは80g以上溶解するものである。
【0074】
次に、第1、第2、第3の本発明の多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法について説明する。この製造方法により、上記本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を有利に製造することができる。
【0075】
本発明の製造方法では、ジビニル芳香族化合物、及びモノビニル芳香族化合物などの必須成分を含む重合原料を誘電率2.0~15.0の溶媒に溶解させた均一溶媒中、ルイス酸触媒の存在下で、20~60℃の温度で重合させるとよい。
【0076】
ジビニル芳香族化合物は共重合体を分岐させ、多官能とさせると共に、共重合体を共役ジエン化合物と共重合する際に分岐を生成させるための架橋成分として重要な役割を果たす。ジビニル芳香族化合物の例としては、ジビニルベンゼン(各異性体含む)、ジビニルナフタレン(各異性体を含む)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成形加工性の観点から、より好ましくはジビニルベンゼン(m-体、p-体又はこれらの異性体混合物)である。
【0077】
モノビニル芳香族化合物は、共重合体の溶剤可溶性、相溶性、及び加工性を改善する。
モノビニル芳香族化合物の例としては、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニルなどのビニル芳香族化合物;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルビニルベンゼン、m-エチルビニルベンゼン、p-エチルビニルベンゼンなどの核アルキル置換ビニル芳香族化合物;などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。共重合体のゲル化を防ぎ、溶媒への溶解性、相溶性、加工性の改善するために、特にスチレン、エチルビニルベンゼン(各異性体含む)、エチルビニルビフェニル(各異性体を含む)、及び、エチルビニルナフタレン(各異性体を含む)がコスト及び入手の容易さの観点から、好まれて使用される。相溶性とコストの観点から、より好ましくは、スチレン、エチルビニルベンゼン(m-体、p-体又はこれらの異性体混合物)である。
α位に置換基を有しないものが好ましい。
【0078】
第1の発明において、シクロオレフィン系単量体は、芳香族縮合環構造を含有するが、これは連鎖移動剤としても働き、重合時に共重合体の分子量と分子量分布を制御することによって、炭化水素系樹脂材料の高度の誘電特性を維持しながら、溶剤可溶性及び加工性を改善する。
シクロオレフィン系単量体としては、芳香族環とこれに縮合するシクロオレフィン環からなる単量体であればよく、シクロオレフィン環はカチオン重合可能な不飽和結合を有すればよく、環構成原子として酸素原子や硫黄原子のような異種原子を含んでもよい。また、芳香族環やシクロオレフィン環は、アルキル基、アルコキシ基、アシル基等の置換基を有してもよい。
好ましいシクロオレフィン系単量体としては、インデン系化合物、アセナフチレン系化合物、ベンゾフラン系化合物、及びベンゾチオフェン系化合物からなる群から選ばれる単量体を挙げることができる。
【0079】
インデン系化合物としては、インデン、アルキルインデン類、ハロゲン化インデン類、アリールインデン類、アルコキシインデン類、アルコキシカルボニルインデン類、アシルオキシインデン類、アルキルシリルインデン類及びアルキルスタンニルインデン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
アセナフチレン系化合物としては、アセナフチレン、アルキルアセナフチレン類、ハロゲン化アセナフチレン類、アリールアセナフチレン類、アルコキシアセナフチレン類、アルコキシカルボニルアセナフチレン類、アシルオキシアセナフチレン類、アルキルシリルアセナフチレン類及びアルキルスタンニルアセナフチレン類からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
ベンゾフラン系化合物、及びベンゾチオフェン系化合物についても、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェンの他に、インデン系化合物、アセナフチレン系化合物と同様の置換基で変性されたベンゾフラン類、及びベンゾチオフェン類であっても良い。また、ベンゾフラン系化合物は、1-ベンゾフランであっても、2-ベンゾフランであってもよい。ベンゾチオフェンも同様である。
【0080】
上記に具体的に例示したシクロオレフィン系単量体は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。これらのシクロオレフィン系単量体で、工業的な入手の容易さ、誘電特性、並びに、本発明の共重合体の分子量制御の効果の高さの観点から、インデン系化合物、及びアセナフチレン系化合物が好適に使用される。最も好ましくは、共重合反応性と分子量制御の効果の高さの観点から、インデンが使用される。
【0081】
第3の本発明において、α,α-二置換オレフィン化合物は、共重合体の分子量を制御する機能を有していることから、溶剤可溶性、相溶性、及び加工性を改善する。α,α-二置換オレフィン化合物の例としては、イソブチレン、ジイソブチレン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、1-メチル-1-シクロペンテン、2-メチル-1-ヘキセン、1-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、2-メチル-1-オクテン、2-メチル-1-ノネン、2-メチル-1-デセン、2-メチル-1-ドデセン、2-メチル-1-テトラデセン、2-メチル-1-ヘキサデセン、2-メチル-1-オクタデセン、2-メチル-1-エイコセン、2-メチル-1-ドコセン、2-メチル-1-テトラコセン、α-メチルスチレンからなる群から選ばれる1種以上の単量体が挙げられるが、これらに制限されるものではない。共重合体の分子量、分子量分布を制御し、ゲルの発生を防ぎ、溶媒への溶解性、相溶性、加工性の改善するために、脂肪族基で置換されたα,α-二置換オレフィン化合物、例えばイソブチレン、ジイソブチレン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ヘキセン、及びイソプレン、或いは芳香族基で置換されたα,α-二置換オレフィン化合物であればα-メチルスチレンを、コスト及び入手の容易さの観点から好ましく使用できる。製造の容易さとコストの観点から、より好ましくは、イソブチレン、ジイソブチレン、α-メチルスチレンである。
【0082】
また、本発明の共重合体の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物などの必須成分の他に、トリビニル芳香族化合物、トリビニル脂肪族化合物やジビニル脂肪族化合物及びモノビニル脂肪族化合物等の他の単量体を使用し、他の単量体に由来する構造単位(e)を共重合体中に導入することができる。
【0083】
上記他の単量体の具体例としては、好ましくは、1,3,5-トリビニルベンゼン、1,3,5-トリビニルナフタレン、1,2,4-トリビニルシクロへキサン、エチレングリコールジアクリレート、ブタジエン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。他の単量体は、全単量体の30モル%未満の範囲内で使用されることがよい。それにより、他の単量体に由来する構造単位(e)は、共重合体中の構造単位の総量に対して30モル%未満の範囲内とされる。
【0084】
本発明の共重合体の製造方法では、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物などの必須成分、必要により更に他の単量体を含むモノマーを、ルイス酸触媒の存在下に重合することにより共重合体を製造する。
【0085】
第1の本発明において、モノマーとなる各成分の使用割合は、ジビニル芳香族化合物、モノビニル芳香族化合物、及びシクロオレフィン系単量体の合計100モル%に対し、次の範囲とすることがよい。
ジビニル芳香族化合物;5~35モル%、好ましくは6~30モル%、より好ましくは7~25モル%である。
モノビニル芳香族化合物;5~25モル%、好ましくは6~23モル%、より好ましくは7~20モル%。
シクロオレフィン系単量体;40~90モル%、好ましくは45~86モル%、より好ましくは50~80モル%。
【0086】
第2の本発明において、モノマーとなる各成分の使用割合は、ジビニル芳香族化合物、及びモノビニル芳香族化合物の合計100モル%に対し、次の範囲とすることがよい。
ジビニル芳香族化合物;0.2~45モル%、好ましくは0.3~40モル%、より好ましくは0.4~35モル%である。
モノビニル芳香族化合物;55~99.8モル%、好ましくは60~99.7モル%、より好ましくは65~99.6モル%。
【0087】
第3の本発明において、モノマーとなる各成分の使用割合は、ジビニル芳香族化合物、α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物、及び、α,α-二置換オレフィン化合物の合計100モル%に対し、次の範囲とすることがよい。
ジビニル芳香族化合物;0.2~75モル%、好ましくは0.3~65モル%、より好ましくは0.4~55モル%、最適には5~50モル%。
α位に置換基を有しないモノビニル芳香族化合物;7~99モル%、好ましくは10~95モル%、より好ましくは15~90モル%。
α,α-二置換オレフィン化合物;5~99モル%、好ましくは10~95モル%、より好ましくは15~90モル%、最適には20~60モル%。
【0088】
ここで使用されるルイス酸触媒(e)としては、金属イオン(酸)と配位子(塩基)からなる化合物であって、電子対を受け取ることのできるものであれば特に制限なく使用できる。ルイス酸触媒の中でも得られる共重合体の耐熱分解性の観点から、金属フッ化物又はその錯体が好ましく、特にB、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ti、W、Zn、Fe及びV等の2~6価の金属フッ化物又はその錯体が好ましい。これらの触媒は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。得られる共重合体の分子量及び分子量分布の制御及び重合活性の観点から、三フッ化ホウ素のエーテル錯体が最も好ましく使用される。ここで、エーテル錯体のエーテルとしては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等がある。
【0089】
ルイス酸触媒は、全モノマー成分の合計100モルに対し、ルイス酸触媒を0.001~100モルの範囲内で使用することがよく、より好ましくは0.01~50モルである。最も好ましくは0.1~10モルである。100モルを越えると、重合速度が大きくなりすぎるため、分子量分布の制御が困難となる。また、0.001モルに満たないと、重合速度が小さくなりすぎるため、コストの増大を招き、工業的実施には適さなくなる。
【0090】
本発明の共重合体の製造方法では、所望により助触媒として、1種以上のルイス塩基化合物を使用することができる。
上記ルイス塩基化合物の具体例としては、次の化合物が挙げられる。
1)酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル等のエステル系化合物、
2)メチルメルカプトプロピオン酸、エチルメルカプトプロピオン酸等のチオエステル系化合物、
3)メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゾフェノン等のケトン系化合物、
4)メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等のアミン系化合物、
5)ジエチルエーテル、テトラヒドロラン等のエーテル系化合物、
6)ジエチルスルフィド、ジフェニルスルフィド等のチオエーテル系化合物、及び
7)トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ビニルホスフィン、プロペニルホスフィン、シクロヘキセニルホスフィン、ジアルケニルホスフィン、トリアルケニルホスフィンなどのホスフィン系化合物。
これらの中でも、ルイス酸触媒と相乗的に作用して、重合速度及び重合体の分子量分布を容易に制御できる点からエステル系化合物及びケトン系化合物が好ましく使用される。
これらのルイス塩基化合物は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0091】
助触媒成分であるルイス塩基化合物は、重合反応時に、対アニオンであるルイス酸触媒に配位することによって、活性種であるカルボカチオンと対アニオンの相互作用を制御することによって、連鎖移動剤として機能するシクロオレフィン化合物と、ジビニル芳香族化合物並びにモノビニル芳香族化合物との間の相対的な反応頻度を調節する。通常、ルイス塩基化合物を添加することによって、活性種であるカルボカチオンと対アニオンの相互作用が強まる為、ジビニル芳香族化合物並びにモノビニル芳香族化合物が過度に挿入反応を起こすのを抑え、シクロオレフィン化合物の挿入反応後の連鎖移動反応を生じ易くして、分子量の制御が容易となる。
【0092】
助触媒としてのルイス塩基化合物は、好ましくは、全モノマーの合計100モルに対し0.005~500モル、より好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.1~50モルである。上記範囲内であれば、重合速度が適切に保持されると同時に、モノマー間の反応の選択性が向上して、生産性に優れると共に、分子量の過度な増大や低下が抑えられ、成型加工性に優れる共重合体が得られる。
【0093】
重合反応は、上記モノマーの混合物とルイス酸触媒を含む重合原料を、誘電率2.0~15.0の溶媒に溶解させた均一溶媒中、20~120℃の温度でカチオン共重合させる。
【0094】
上記溶媒としては、カチオン重合を本質的に阻害しない化合物であり、かつ触媒、重合添加剤、助触媒、単量体及び生成するビニル芳香族共重合体を溶解して、均一溶液を形成するもので、誘電率が2.0~15.0の範囲内である有機溶媒がよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。溶媒の誘電率が2.0未満であると、分子量分布が広くなるため好ましくなく、15.0を超えると重合速度が低下する。
【0095】
有機溶媒としては、重合活性、溶解性のバランスの観点からトルエン、キシレン、n-へキサン、シクロへキサン、メチルシクロへキサン又はエチルシクロへキサンが特に好ましい。また、溶媒の使用量は、得られる重合溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合終了時において重合溶液中の共重合体の濃度が1~90wt%、好ましくは10~80wt%、特に好ましくは20~70wt%となるように決定される。この濃度が1wt%に満たない場合は、重合効率が低いことに起因して、コストの増大を招き、90wt%を越えると、分子量及び分子量分布が増大し、成形加工性の低下を招く。
【0096】
可溶性多官能ビニル芳香族重合体を製造する際、20~120℃の温度で重合させることが必要である。好ましくは、40~100℃である。重合温度が120℃を超えると、反応の選択性が低下するため、分子量分布の増大やゲルの発生といった問題点が生じ、20℃未満で重合を行うと、触媒活性が著しく低下するので、多量の触媒を添加する必要が生じる。
【0097】
重合反応停止後、共重合体を回収する方法は特に限定されず、例えば、加熱濃縮法、スチームストリッピング法、貧溶媒での析出などの通常用いられる方法を用いればよい。
【0098】
上記製造方法で得られる多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)、及び芳香族縮合環構造を含有するシクロオレフィン系単量体に由来する構造単位(c)を含有すると共に、ジビニル芳香族化合物に由来する構造単位(a)の内、少なくとも一部が、上記式(1)で表されるビニル基含有構造単位(a1)として存在する。そして、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶である。
【0099】
第1、第2、第3の本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、未反応のビニル基を有するので、単独で重合硬化、成形させてもよいが、他の重合性樹脂又は単量体と共に共重合させて第二の共重合体とすることがよい。特に、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、共役ジエンを含む他の単量体と共重合させて共役ジエン系共重合体(ゴム)を得るために優れる。
【0100】
原料として上記の本発明の多官能ビニル芳香族共重合体(A)と、1)共役ジエン化合物(B)、又は2)共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を共重合させることにより、本発明の共役ジエン系共重合体が得られる。芳香族ビニル化合物(C)を使用しない場合は、ブタジエンゴムやイソプレンゴムのようなジエン系ゴムを得ることができ、芳香族ビニル化合物(C)を使用することによりSBRのような共役ジエン系共重合体を得ることができる。この共役ジエン系共重合体は、ゴムの特性を示すので、共重合体ゴムともいう。
【0101】
共役ジエン系共重合体を得る重合工程においては、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体(A)と有機リチウム化合物とを反応させて多官能アニオン重合開始剤を予め所定の反応器で調製しておき、共役ジエン系化合物の重合を行う反応器に供給して重合または共重合反応を行う方法(方法I)や、多官能ビニル芳香族共重合体(A)及び共役ジエン化合物(B)、又は、多官能ビニル芳香族共重合体(A)、共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を含む原料と、有機リチウム化合物(又はアニオン重合開始剤)を、共重合を行う反応器に一括供給して共重合反応を行う方法(方法II)、さらには、共役ジエン化合物(B)、又は、共役ジエン化合物(B)及び芳香族ビニル化合物(C)を所定の反応器に供給して、共役ジエン系化合物の重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合を行い、反応器中に生成した活性末端を有する共役ジエン系化合物の重合体、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体と多官能ビニル芳香族共重合体(A)を反応させ、共役ジエン系共重合体を合成する方法(方法III)などを採用することができる。
これらの重合方法の内、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体(A)との共重合反応の効率の点で、方法Iが好ましい。
【0102】
共役ジエン化合物(B)としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘプタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中で、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
芳香族ビニル化合物(C)としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルキシレン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、tert-ブトキシジメチルシリルスチレンおよびイソプロポキシジメチルシリルスチレンなどを、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができるが、これらの中では、特にスチレンが好ましい。
【0104】
共役ジエン化合物(B)として、1,3‐ブタジエンを使用し、芳香族ビニル化合物としてスチレンを使用する場合は、いわゆるスチレン‐ブタジエンゴム(SBR)が得られる。また、芳香族ビニル化合物としてスチレンを使用しない場合で、共役ジエン化合物(B)として、1,3‐ブタジエンを使用する場合は、いわゆるブタジエンゴム(BR)が得られる。共役ジエン化合物(B)としてイソプレンを使用し、芳香族ビニル化合物(C)の構造単位がない場合は、イソプレンゴム(IR)となる。中でもスチレン‐ブタジエンゴム(SBR)構造を有すると、耐摩耗性、耐熱性、耐老化性に優れ、特に好ましい。
【0105】
開始剤として用いられる有機リチウム化合物としては、特に限定されず、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-プロピルリチウム、iso-プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4-ジリチオブタン、1,5-ジリチオペンタン、1,6-ジリチオヘキサン、1,10-ジリチオデカン、1,1-ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4-ジリチオベンゼン、1,2-ジリチオ-1,2-ジフェニルエタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリリチオ-2,4,6-トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。それらの中でも、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0106】
共役ジエン系共重合体を製造する際、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤として、また重合速度の改善等の目的で、下記の極性化合物を添加することが好ましい。
極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。これらの極性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
極性化合物の使用量は、得られる共役ジエン系共重合体組成物の目的等と効果の程度に応じて選択されるが、開始剤の有機リチウム化合物1モルに対して0.005~100モルであることが好ましい。
【0107】
共役ジエン系共重合体は所定の溶媒中で重合することが好ましい。特に、上記誘電率を満足する溶媒中にて行うことが好ましい。溶媒としては、特に限定されず、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が用いられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素系溶媒が挙げられる。
上記した共役ジエン系化合物及び重合溶媒は、それぞれ単独であるいはこれらの混合液を、有機金属化合物を用いて処理しておくことが好ましい。これにより、共役ジエン化合物や重合溶媒に含まれているアレン類やアセチレン類を処理できる。その結果、高濃度の活性末端を有する重合体が得られるようになり、高い変性率を達成できるようになる。
【0108】
本発明の共役ジエン系共重合体の重合活性末端に、さらに変性剤を反応させることもできる。本明細書では、この反応により得られる共役ジエン系共重合体を、変性共役ジエン系共重合体ともいう。
【0109】
本実施の形態に用いる変性剤(「末端変性剤」ともいう)は、前記共役ジエン系共重合体の重合活性末端に反応可能な官能基を有する化合物が使用される。末端変性剤としては、特に限定されないが、単官能の化合物を用いると、直鎖状の両末端変性ジエン系共重合体が得られ、多官能の化合物を用いると、分岐状の両末端変性ジエン系共重合体が得られる。好ましくは、末端変性剤として窒素、ケイ素、スズ、リン、酸素、硫黄、ハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む単官能又は多官能の化合物が用いられる。また、オニウム生成剤を含む末端変性剤を加えて反応させ、上記変性共役ジエン系共重合体にオニウム構造を導入することができる。また、これらの元素を含む官能基を分子中に複数含有する末端変性剤、又はこれらの元素を複数含む官能基を含有する末端変性剤を用いることもできる。これらの末端変性剤を連続的に加える工程により、例えば、車両用タイヤ等の成形品にした場合に、より転がり抵抗が小さく、耐摩耗性に優れ、引張り強度及び引裂き強度に優れる加硫ゴム組成物が得られる傾向にある。
【0110】
以下、本発明で使用できる各種の末端変性剤について述べる。ただし、例示したものに限定されるものではない。
【0111】
末端変性剤としての窒素含有化合物としては、例えば、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物等が挙げられる。
末端変性剤としてのケイ素含有化合物としては、例えば、ハロゲン化ケイ素化合物、エポキシ化ケイ素化合物、ビニル化ケイ素化合物、アルコキシケイ素化合物、窒素含有基を含むアルコキシケイ素化合物等が挙げられる。
【0112】
末端変性剤としてのスズ含有化合物としては、例えば、ハロゲン化スズ化合物、有機スズカルボキシレート化合物等が挙げられる。末端変性剤としてのリン含有化合物としては、例えば、亜リン酸エステル化合物、ホスフィノ化合物等が挙げられる。末端変性剤としての酸素含有化合物としては、例えば、エポキシ化合物、エーテル化合物、エステル化合物等が挙げられる。末端変性剤としての硫黄含有化合物としては、例えば、メルカプト基誘導体、チオカルボニル化合物、イソチオシアナート等が挙げられる。末端変性剤としてのハロゲン含有化合物としては、例えば、上記のハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物等が挙げられる。
【0113】
末端変性剤としてのオニウム生成剤としては、例えば、1級又は2級のアミンを形成しうる保護化アミン化合物(アンモニウムを生成する)、ヒドロホスフィンを形成しうる保護化ホスフィン化合物(ホスフォニウムを生成する)、水酸基、チオールを形成しうる化合物(オキソニウム、スルホニウムを生成する)等が挙げられ、オニウム生成剤と上記変性共役ジエン系重合体を結合するための官能基をそれぞれ分子中に有する末端変性剤を用いることが好ましい。上記変性共役ジエン系重合体を結合するための官能基としては、例えば、カルボニル基(ケトン、エステル等)、ビニル基等の不飽和基、エポキシ基、ハロゲン化ケイ素基、アルコキシケイ素基等が挙げられる。
【0114】
末端変性剤の具体例として、イソシアナート化合物としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(CMDI)、フェニルイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ブチルイソシアナート、1,3,5-ベンゼントリイソシアナート等が挙げられる。また、イソシアヌル酸誘導体として、例えば、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5-トリ(オキシラン-2-イル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン等が挙げられる。
【0115】
窒素基含有カルボニル化合物の具体例としては、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-(2-メトキシエチル)-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-メチル-2-キノロン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、メチル-2-ピリジルケトン、メチル-4-ピリジルケトン、プロピル-2-ピリジルケトン、ジ-4-ピリジルケトン、2-ベンゾイルピリジン、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、N,N-ジメチル-N’,N’-ジフェニル尿素、N,N-ジエチルカルバミン酸メチル、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチル-N’,N’-ジメチルアミノアセトアミド、N,N-ジメチルピコリン酸アミド、N,N-ジメチルイソニコチン酸アミド等が挙げられる。
【0116】
窒素基含有ビニル化合物の具体例としては、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N-メチルマレイミド、N-メチルフタルイミド、N,N-ビストリメチルシリルアクリルアミド、モルホリノアクリルアミド、3-(2-ジメチルアミノエチル)スチレン、(ジメチルアミノ)ジメチル-4-ビニルフェニルシラン、4,4’-ビニリデンビス(N,N-ジメチルアニリン)、4,4’-ビニリデンビス(N,N-ジエチルアニリン)、1,1-ビス(4-モルホリノフェニル)エチレン、1-フェニル-1-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)エチレン等が挙げられる。
【0117】
窒素基含有エポキシ化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、4,4-メチレン-ビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、1,4-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ビス(ジグリシジルアミノ)ベンゾフェノン、4-(4-グリシジルピペラジニル)-(N,N-ジグリシジル)アニリン、2-[2-(N,N-ジグリシジルアミノ)エチル]-1-グリシジルピロリジン、ビス(グリシジルメチルアニリン)、N,N‘-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルオルソトルイジン、N,N-ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0118】
ハロゲン化ケイ素化合物の具体例としては、ジブチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、トリス(トリメチルシロキシ)クロロシラン、トリス(ジメチルアミノ)クロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジクロロシリル)エタン、1,4-ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,4ビス(メチルジクロロシリル)ブタン等が挙げられる。
【0119】
エポキシ化ケイ素化合物の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、エポキシ変性シリコーン等が挙げられる。
【0120】
アルコキシケイ素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリフェノキシメチルシラン、メトキシ置換ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0121】
窒素含有基を含むアルコキシケイ素化合物の具体例としては、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-モルホリノプロピルトリメトキシシラン、3-ピペリジノプロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(4-メチル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、1-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-3-メチルヘキサヒドロピリミジン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(3-トリエチルシリル-1-イミダゾリジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(3-トリメチルシリル-1-ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノ-2-(ジメチルアミノメチル)プロピルトリメトキシシラン、ビス(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-N-メチルアミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-N-メチルアミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、トリス(トリメトキシシリル)アミン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N,N’,N’-テトラ(3-トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-シアノプロピルトリメトキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-メチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-8-(4-メチルピペラジニル)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン、2,2-ジメトキシ-8-(N,N-ジエチルアミノ)メチル-1,6-ジオキサ-2-シラシクロオクタン等が挙げられる。
【0122】
1級又は2級のアミンを形成しうる保護化アミン化合物として、不飽和結合と保護化アミンを分子中に有する化合物の具体例としては、4,4’-ビニリデンビス〔N,N-ビス(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N,N-ビス(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N,N-ビス(t-ブチルジメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-メチル-N-(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-エチル-N-(トリメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-メチル-N-(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-エチル-N-(トリエチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-メチル-N-(t-ブチルジメチルシリル)アニリン〕、4,4’-ビニリデンビス〔N-エチル-N-(t-ブチルジメチルシリル)アニリン〕、1-〔4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノフェニル〕-1-〔4-N-メチル-N-(トリメチルシリル)アミノフェニル〕エチレン、1-〔4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノフェニル〕-1-〔4-N,N-ジメチルアミノフェニル〕エチレン等が挙げられる。
1級又は2級のアミンを形成しうる保護化アミン化合物として、アルコキシシランと保護化アミンを分子中に有する化合物の具体例としては、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(4-トリメチルシリル-1-ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(3-トリエチルシリル-1-イミダゾリジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(3-トリメチルシリル-1-ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリメトキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-フェニル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-ブチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-メチル-1-アザ-2-シラシクロペンタン等が挙げられる。
【0123】
ハロゲン化スズ化合物の具体例としては、テトラクロロスズ、テトラブロムスズ、トリクロロブチルスズ、トリクロロオクチルスズ、ジブロムジメチルスズ、ジクロロジブチルスズ、クロロトリブチルスズ、クロロトリオクチルスズ、クロロトリフェニルスズ、1,2-ビス(トリクロロスタニル)エタン、1,2-ビス(メチルジクロロスタニル)エタン、1,4-ビス(トリクロロスタニル)ブタン、1,4ビス(メチルジクロロスタニル)ブタン等が挙げられる。
【0124】
有機スズカルボキシレート化合物の具体例としては、エチルスズトリステアレート、ブチルスズトリオクタノエート、ブチルスズトリスステアレート、ブチルスズトリラウレート、ジブチルスズビスオクタノエート等が挙げられる。
【0125】
亜リン酸エステル化合物の具体例としては、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェノキシド等が挙げられる。
【0126】
ホスフィノ化合物の具体例としては、P,P-ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリメトキシシシラン、P,P-ビス(トリエチルシリル)ホスフィノプロピルメチルエトキシシラン等の保護化ホスフィノ化合物、3-ジメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシシラン、3-ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシシラン等が挙げられる。
【0127】
酸素含有化合物の具体例として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル、1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のポリエポキシ化合物、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル等のエステル化合物が挙げられ、これらは重合体末端に水酸基を生成する。
【0128】
硫黄含有化合物の具体例として、S-トリメチルシリルチオプロピルトリメトキシシシラン、S-トリエチルシリルチオプロピルメチルジエチルシラン等の保護化チオール化合物、S-メチルチオプロピルトリメトキシシシラン、S-エチルチオプロピルメチルジエトキシシシラン、N,N-ジエチルジチオカルバミン酸エチル、フェニルイソチオシアナート、フェニル-1,4-ジイソチオシアナート、ヘキサメチレンジイソチオシアナート、ブチルイソチオシアナート等が挙げられる。
【0129】
上記の末端変性剤の使用量は、共役ジエン系共重合体のリビング末端1当量に対して、好ましくは0.5当量を超え、10当量以下、より好ましくは0.7当量を超え、5当量以下、更に好ましくは1当量を超え、4当量以下である。なお、本実施の形態において、共役ジエン系重合体のリビング末端の量は、重合に使用した有機リチウム化合物の量と該有機リチウム化合物に結合しているリチウム原子の数から算出してもよいし、得られた共役ジエン系共重合体の数平均分子量から算出してもよい。
末端変性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0130】
本発明の共役ジエン系共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、加工性や物性を考慮して10万~200万が好ましく、15万~100万がより好ましい。重量平均分子量は、ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを用いたGPCを使用してクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により求めることができる。
【0131】
本発明の共役ジエン系共重合体の構造単位の組成に関して、芳香族ビニル化合物(C)を使用しない場合は、多官能ビニル芳香族共重合体(A)と共役ジエン化合物(B)との割合は、下記の範囲とすることが好ましい。
多官能ビニル芳香族共重合体(A)に由来する構造単位(A1)は、0.001~6重量%であり、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.005~5重量%、更に好ましくは0.01~5重量%であり、共役ジエン化合物(B)に由来する構造単位(B1)は、29~99.999重量%であり、好ましくは80~99.999重量%であり、より好ましくは90~99.995重量%、更に好ましくは95~99.99重量%である。
【0132】
芳香族ビニル化合物(C)を使用する場合は、上記割合は下記の範囲とすることが好ましい。構造単位(A1)は、上記と同様の範囲であり、構造単位(B1)は30~97.999重量%、好ましくは45~94.995重量%であり、更に好ましくは55~89.99重量%である。芳香族ビニル化合物(C)に由来する構造単位(C1)は、2~50重量%、好ましくは5~45重量%であり、更に好ましくは10~40重量%である。
変性共役ジエン系共重合体である場合は、末端変性剤に由来する構造単位(H1)は、1~0重量%であることがよい。構造単位(H1)を含む場合は、上記割合の計算において、構造単位(H1)は外数とし、計算には含めない。
構造単位(A1)は、共役ジエン系共重合体に分岐構造を与え、分子量を増加させる、及び/又は、末端変性剤の導入量を増加させるなどして、共役ジエン系共重合体の物性を向上させ、及び/又は補強性充填剤の分散性を向上させる。
【0133】
共役ジエン系共重合体のミクロ構造(シス、トランス、ビニル結合量)は極性化合物等の使用により任意に変えることができるが、末端が変性される前の状態において、共役ジエン単位中に占めるビニル結合(1,2-結合)の含有量は、10~80モル%が好ましい。本発明の共役ジエン系共重合体を後述する共役ジエン系共重合体組成物とし、更にこれを架橋させて、自動車タイヤとして使用する場合、転がり抵抗性能と耐摩耗性を高度にバランスさせるには、20~75モル%が好ましく、30~75モル%がより好ましく、40~70モル%が更に好ましい。このとき、共役ジエン結合単位中に占めるシス結合とトランス結合との質量比は、シス結合/トランス結合=1/1.1~1.5が好ましい。
【0134】
上述した重合方法により得られる共役ジエン系共重合体の重合体溶液に、必要に応じて反応停止剤を添加してもよい。反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ステアリン酸、ラウリン酸、オクタン酸等の有機酸;水等が使用できる。
【0135】
共役ジエン系共重合体の重合反応を行った後、必要に応じて重合体に含まれる金属類を脱灰してもよい。脱灰の方法としては、例えば、水、有機酸、無機酸、過酸化水素等の酸化剤等を、重合体溶液に接触させて金属類を抽出し、その後水層を分離する方法が用いられる。
【0136】
さらに、共役ジエン系共重合体の重合体溶液に酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤等が挙げられる。
【0137】
共役ジエン系共重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、従来公知の方法を適用できる。例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が適用できる。
【0138】
本発明の共役ジエン系共重合体組成物は、共役ジエン系共重合体100質量部に対して、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤を0.5~200質量部含むことが好ましい。
【0139】
共役ジエン系共重合体組成物に含有されるシリカ系無機充填剤としては、SiO2又はケイ酸塩を構成単位の主成分とする固体粒子を使用することが好ましい。ここで、主成分とは、全体の50質量%以上を占める成分を意味し、好ましくは70質量%以上を占める成分であり、より好ましくは90質量%以上を占める成分である。
【0140】
シリカ系無機充填剤の具体例としては、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラスナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。シリカ系無機充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も使用できる。これらの中で、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。
【0141】
シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が使用できるが、それらの中でも、破壊特性の改良とウェットスキッド抵抗性能との両立がより優れている点から、湿式シリカが好ましい。
【0142】
良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、170~300m2/gであることが好ましく、200~300m2/gであることがより好ましい。
【0143】
共役ジエン系共重合体組成物におけるシリカ系無機充填剤の配合量は、共役ジエン系共重合体100質量部に対し、0.5~200質量部であることが好ましい。ゴム成分である共役ジエン系共重合体100質量部に対するシリカ系無機充填剤の配合量の上限は、好ましくは100質量部以下であり、さらに好ましくは75質量部以下である。下限は、好ましくは5質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上であり、特に好ましくは35質量部以上である。シリカ系無機充填剤の配合量が前記範囲内であると、充填剤の添加効果が発現し、また、シリカ系無機充填剤の分散性が良好となり、得られる組成物の加工性が向上し、かつ機械強度が向上する。
【0144】
共役ジエン系共重合体組成物には、シリカ系無機充填剤以外の補強性充填剤として、カーボンブラックを添加してもよい。
【0145】
カーボンブラックとしては、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。補強効果に優れる観点から、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
【0146】
カーボンブラックの配合量は、共役ジエン系共重合体100質量部に対し、0.5~200質量部であり、3~100質量部が好ましく、5~50質量部がさらに好ましい。
【0147】
共役ジエン系共重合体組成物には、シリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に、補強性充填剤としての金属酸化物や金属水酸化物を添加してもよい。金属酸化物は、化学式MxOy(Mは金属原子を表し、x,yは各々1~6の整数を表す。)を構成の主成分とする固体粒子であることが好ましい。ここで、主成分とは、全体の50質量%以上を占める成分を意味し、好ましくは70質量%以上を占める成分であり、より好ましくは90質量%以上を占める成分である。
【0148】
金属酸化物として、例えば、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等が挙げられる。金属酸化物及び金属水酸化物は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、金属酸化物及び金属水酸化物以外の無機充填剤との混合物も使用できる。
【0149】
共役ジエン系共重合体組成物においては、シランカップリング剤を含有させてもよい。シランカップリング剤は、共役ジエン系共重合体(とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、それぞれに対する親和性又は結合性の基を有している。
【0150】
シランカップリング剤の具体例としては、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、ビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィド等が挙げられる。
【0151】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ系無機充填剤100質量部に対し、0.1~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、1~15質量部がさらに好ましい。シランカップリング剤の配合量を上記数値範囲とすることで、十分な配合効果を得ることができるとともに、経済性を良好なものにできる。
【0152】
上記の共役ジエン系共重合体組成物は、上記各成分を混合することにより製造することができる。
【0153】
共役ジエン系共重合体と、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物及びカーボンブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤、及び、所望によりシランカップリング剤とを混合する方法については、特に限定されるものではない。例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、ゴム成分と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0154】
本発明において、充填材表面へのポリマー濃縮能の程度については、当該変性共役ジエン系重合体の25℃におけるバウンドラバー量で表すことができる。上述した混練終了後の共役ジエン系共重合体組成物(ゴム組成物)中のバウンドラバー量は、耐摩耗性及び破壊強度の改善の観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
なお、バウンドラバー量は後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0155】
共役ジエン系共重合体組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
【0156】
加硫剤の使用量は、特に限定されないが、共役ジエン系共重合体100質量部に対し、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、例えば、120℃~200℃であることが好ましく、140℃~180℃がより好ましい。
【0157】
加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。
【0158】
加硫促進剤の使用量は、特に限定されないが、共役ジエン系共重合体100質量部に対し、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。
【0159】
本発明態の共役ジエン系共重合体組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を配合してもよい。ゴム用軟化剤としては、鉱物油、液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
【0160】
ゴムの軟化、増容、加工性の改良を図るために使用される、プロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30~45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。本実施の形態において用いるゴム用軟化剤としては、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。
【0161】
ゴム用軟化剤の配合量は、特に限定されないが、共役ジエン系共重合体100質量部に対し、10~80質量部であることが好ましく、20~50質量部がより好ましい。
【0162】
共役ジエン系共重合体組成物には、本実施の形態の目的を損なわない範囲内で、上述した以外の軟化剤や充填剤、さらに耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。充填剤としては、具体的には炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
目的とする製品の硬さや流動性を調節するために、必要に応じて配合する軟化剤としては、例えば、流動パラフィン、ヒマシ油、アマニ油等が挙げられる。耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤としては、公知の材料を適用できる。
【0163】
本発明のゴム架橋物は、上記のゴム組成物を架橋処理することによって得られる。例えば、タイヤは、上記のゴム組成物をタイヤの形状(具体的には、トレッドの形状)に応じて押し出し加工し、成形し、これを加硫機中で加熱加圧することによって、トレッドを製造し、このトレッドと他の部品を組み立てることにより、目的とするタイヤを製造することができる。
【0164】
本発明の共役ジエン系共重合体組成物(ゴム組成物)は、上記ゴム架橋物とした際に機械的強度および耐摩耗性に優れる。そのため、上述の通り、低燃費タイヤ、大型タイヤ、高性能タイヤなどのタイヤのトレッドや、サイドウォール部材等のタイヤ部材に好適に適用できる。また、前記タイヤ部材の他にも、ゴムベルト、ゴムホース、履物用材料等にも好適に使用できる。
【実施例】
【0165】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各例中の部は特に記載がない場合いずれも重量部であり、各物性の評価は以下に示す方法によって行った。
【0166】
1)分子量及び分子量分布
分子量及び分子量分布測定は、GPC(東ソー製、HLC-8220GPC)を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/分、カラム温度38℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
【0167】
2)多官能ビニル芳香族共重合体の構造
日本電子製JNM-LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C-NMR及び1H-NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム-d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
【0168】
3)ムーニー粘度(ML(1+4)100℃ )
JIS K6300‐1に従って、L形ローター、予熱1分、ローター作動時間4分、温度100℃ で求めた。
【0169】
4)マイクロゲル化物の確認(Haze)
共重合体ゴム 0.5gをトルエン 100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置(日本電色社製、SZ-Σ90)を用い測定した。
Haze値が0.5未満であるときをマイクロゲルなし:○とし、Haze値が0.5を越えたときをマイクロゲル有り:×とした。
【0170】
5)ガラス転移温度(Tg)
乾燥後の厚さが20μmになるように、ガラス基板に多官能ビニル芳香族共重合体をトルエンに溶解させた溶液を均一に塗布し、ホットプレートを用いて90分で30分間加熱し、乾燥させた。ガラス基板とともに得られた樹脂膜はTMA(熱機械分析装置)にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に220℃で20分間加熱処理することにより残存する溶媒を除去するとともに多官能ビニル芳香族共重合体を硬化させた。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャン測定を行い、接線法で軟化温度を求めた。
【0171】
6)共役ジエン単位のビニル結合の含有量
試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定し、所定の波数における吸光度によりハンプトン(スチレン-ブタジエン共重合体)の方法の計算式に従いビニル結合量を求めた。装置は、パーキンエルマー社製のSpectrum100を用いた。
【0172】
7)バウンドラバー量(%)
変性共役ジエン系重合体100質量部と湿式シリカ(BET法比表面積:205±10m2/g、東ソウ・シリカ株式会社製、商品名「ニプシルAQ」)60質量部とを混練室内容積2リットルの密閉式混練装置を使用して、{(混練されているゴム組成物の体積/混練室内容積)×100}が60%にて混練りし、最高混練温度160℃に達した時点で、当該ゴム混練り物を排出して、バウンドラバー量測定用ゴム組成物Mを得る。
このゴム組成物M0.2gを1mm角に裁断して質量を測定した後、トルエン25mL中に加えて、25℃にて48時間放置した後、ADVANTEC社製ガラス繊維フィルターでろ過し、トルエン不溶分を分離した後、分離したトルエン不溶分を25℃にて真空乾燥した後秤量し、下記式によりバウンドラバー量を求める。
バウンドラバー量(%)={(トルエン不溶分の質量―ゴム組成物M中の湿式シリカの質量)/(ゴム組成物Mの質量―ゴム組成物M中の湿式シリカの質量)}×100
なお、シリカのBET法比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定する。
【0173】
8)引張強度
JIS K6251の引張試験法により300%モジュラスを測定した。
第1の本発明においては、比較例1で得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。
第2の本発明においては、実施例20Bで得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。
第3の本発明においては、実施例10Cで得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。
指数値が大きいほど引張り強度に優れることを示す。
【0174】
9)耐摩耗性
JIS K6264に準拠したランボーン型摩耗試験機を使用した方法を用い、スリップ率が30%の摩耗量を測定した。
第1の本発明においては、比較例1で得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。
第2の本発明においては、実施例20で得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。
第3の本発明においては、実施例10で得られた架橋ゴムの測定値を100として、指数化した。
指数値が大きいほど耐摩耗性は良好である。
【0175】
10)溶剤可溶性
共重合体が、トルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、およびクロロホルムに可溶で、前記各溶媒100gに対し、共重合体が100g以上溶解し、ゲルの生成は認められなかった場合を、溶剤可溶性〇とした。
【0176】
実施例で使用した原料またはその略号は次のとおり。
DVB-630;ジビニルベンゼン成分とエチルビニルベンゼン成分の混合物;ジビニルベンゼン成分含有率63.0wt%、日鉄ケミカル&マテリアル製)
インデン;和光純薬製
BHT;2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール
BTESPA;ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)メチルアミン
【0177】
<第1の本発明の実施例>
実施例1A
DVB-630 92.98g(ジビニルベンゼン成分0.45モル、エチルビニルベンゼン成分0.26モル)、インデン276.58g(2.29モル)、酢酸n-プロピル1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、70℃で、60ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.5mL)を添加し、2.5時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収した。得られた共重合体を秤量して、共重合体1A 221.7gが得られたことを確認した。
実施例及び比較例において、得られた共重合体は可溶性多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0178】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体1AのMnは828、Mwは2620、Mw/Mnは3.17であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体Aには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を13.8モル%(15.1wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計7.9モル%(8.8wt%)、及び、インデンに由来する構造単位を78.2モル%(76.1wt%)含有していた。多官能ビニル芳香族共重合体1A中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位(構造単位(a1)に相当)は11.0モル%(12.1wt%)であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tg:182℃であり、軟化温度は280℃以上であった。TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.52wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は良好○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体1Aは溶剤可溶性〇であった。
【0179】
実施例2A
DVB-630 187.11g(ジビニルベンゼン成分0.90モル、エチルビニルベンゼン成分0.53モル)、インデン182.37g(1.57モル)、酢酸n-プロピル1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、70℃で、40ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(5.0mL)を添加し、3.5時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、メタノール4,500mLを使用して、強撹拌下、再沈、ろ過、乾燥を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体を回収した。得られた多官能ビニル芳香族共重合体を秤量して、多官能ビニル芳香族共重合体2A 238.7gが得られたことを確認した。
【0180】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体2AのMnは1240、Mwは3580、Mw/Mnは2.89であった。共重合体2Aには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を29.6モル%(31.3wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計17.9モル%(19.2wt%)、及びインデンに由来する構造単位を52.5モル%(49.5wt%)含有していた。多官能ビニル芳香族共重合体2A中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位の含有量は、19.5モル%(20.6wt%)であった。
また、硬化物のTgは205℃であり、軟化温度は280℃以上であった。TGA測定の結果、350℃における重量減少は0.96wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体2Aは溶剤可溶性〇であった。
【0181】
実施例3A
DVB-630 31.16g(ジビニルベンゼン成分0.15モル、エチルビニルベンゼン成分0.09モル)、インデン 320.83g(2.76モル)、酢酸n-プロピル 1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、70℃で、80ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(10.0mL)を添加し、3.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、メタノール4,500mLを使用して、強撹拌下、再沈、ろ過、乾燥を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体を回収した。得られた多官能ビニル芳香族共重合体を秤量して、多官能ビニル芳香族共重合体3A 256.3gが得られたことを確認した。
【0182】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体3AのMnは659、Mwは2560、Mw/Mnは3.88であった。共重合体3Aには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を5.1モル%(5.8wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計2.9モル%(3.3wt%)、及び、インデンに由来する構造単位を92.0モル%(90.9wt%)含有していた。多官能ビニル芳香族共重合体3A中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位の含有量は、3.3モル%(3.8wt%)であった。
また、硬化物のTgは192℃であり、軟化温度は280℃以上であった。TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.63wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体3Aは溶剤可溶性〇であった。
【0183】
比較例1A
DVB-630 249.41g(ジビニルベンゼン成分1.20モル、エチルビニルベンゼン成分0.70モル)、インデン127.20g(1.10モル)、酢酸n-プロピル1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、70℃で、40ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(5.0mL)を添加し、3.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、メタノール4,500mLを使用して、強撹拌下、再沈、ろ過、乾燥を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体を回収した。得られた多官能ビニル芳香族共重合体を秤量して、多官能ビニル芳香族共重合体C1A 253.6gが得られたことを確認した。
【0184】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体C1AのMnは1430、Mwは5030、Mw/Mnは3.52であった。共重合体C1Aには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を40.2モル%(41.6wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計23.6モル%(25.0wt%)、及びインデンに由来する構造単位を36.2モル%(33.4wt%)含有していた。多官能ビニル芳香族共重合体C1A中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位の含有量は、26.5モル%(27.4wt%)であった。
また、硬化物のTgは168℃であり、軟化温度は280℃以上であった。TGA測定の結果、350℃における重量減少は2.13wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C1Aは溶剤可溶性〇であった。
【0185】
比較例2A
DVB-630 12.46g(ジビニルベンゼン成分0.06モル、エチルビニルベンゼン成分0.04モル)、インデン 337.44g(2.90モル)、酢酸n-プロピル 1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、70℃で、80ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(10.0mL)を添加し、4.5時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、メタノール4,500mLを使用して、強撹拌下、再沈、ろ過、乾燥を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体を回収した。得られた多官能ビル芳香族共重合体を秤量して、多官能ビニル芳香族共重合体C2A 212.6gが得られたことを確認した。
【0186】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体C2AのMnは596、Mwは1750、Mw/Mnは2.93であった。共重合体C2Aには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を1.96モル%(2.19wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計1.16モル%(1.32wt%)、及びインデンに由来する構造単位を96.88モル%(96.49wt%)含有していた。多官能ビニル芳香族共重合体C2A中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位の含有量は、1.30モル%(1.45wt%)であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tgは178℃であり、軟化温度は201℃であった。TGA測定の結果、350℃における重量減少は2.45wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C2Aは溶剤可溶性〇であった。
【0187】
比較例3A
DVB-810 320.5mL(ジビニルベンゼン成分1.82モル、エチルビニルベンゼン成分0.43モル)、酢酸n-ブチル0.28モル(36.9mL)、卜ルエン140mLを1.0Lの反応器内に投入し、70℃で40ミリモルのメタンスルホン酸を酢酸n-ブチル0.12モル(15.7mL)に溶解させた溶液を添加し、6時間反応させた。重合溶液を水酸化カルシウムで停止させた後、活性アルミナをろ過助剤として、ろ過を行った。それから、60℃で減圧脱揮し、多官能ビニル芳香族共重合体C3A 22.6gを得た。
得られた多官能ビニル芳香族共重合体C3AのMnは1085、Mwは12400、Mw/Mnは11.4であった。多官能ビニル芳香族共重合体Fには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を84.0モル%(83.8wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計16.0モル%(16.2wt%) 含有していた。多官能ビニル芳香族共重合体C3A中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位の含有量は、53.8モル%(53.6wt%)であった。
また、硬化物のTgは82℃であり、軟化温度は93℃であった。TGA測定の結果、350℃における重量減少は8.25wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C3Aは溶剤可溶性〇であった。
【0188】
実施例4A
窒素置換された内容積0.5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン245g、THF2.5g、スチレン10g、1,3-ブタジエン40g、実施例1Aで得られた共重合体1A 0.10gを加えた。25℃において、sec-ブチルリチウム50mgを含むシクロヘキサン溶液5gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg添加して重合停止し、反応溶液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体4Aを得た。得られた共役ジエン系共重合体4Aの物性を表1Aに示す。
【0189】
実施例5A
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例1Aで得られた共重合体1A 0.10gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体5Aを得た。得られた共役ジエン系共重合体5Aの物性を表1Aに示す。
【0190】
実施例6A
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例2で得られた共重合体2A 0.050gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体6Aを得た。得られた共役ジエン系共重合体6Aの物性を表1Aに示す。
【0191】
実施例7A
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例3Aで得られた共重合体3A 0.30gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は81℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体7Aを得た。得られた共役ジエン系共重合体7Aの物性を表1Aに示す。
【0192】
比較例4A
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例1Aで得られた共重合体C1A 0.0375gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに概ね可溶であったが、目視でもゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は82℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C4Aを得た。得られた共役ジエン系共重合体C4Aの物性を表1Aに示す。
【0193】
比較例5A
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例2Aで得られた共重合体C2A 0.75gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶であり、ゲルの発生は観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は78℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C5Aを得た。得られた共役ジエン系共重合体C5Aの物性を表1Aに示す。
【0194】
比較例6A
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例3Aで得られた共重合体C3A 0.020gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに部分的に可溶であり、ゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C6Aを得た。得られた共役ジエン系共重合体C6Aの物性を表1Aに示す。
表1Aにおいて、ジエン共重合体は、共役ジエン系共重合体を意味する。他の表においても同様である。
【0195】
【0196】
実施例8A
共役ジエン系共重合体4A、プロセスオイル、カーボンブラック、酸化亜鉛、ステアリン酸及び老化防止剤を、ラボプラストミルを用い、155℃、60rpmで4分間混練した。
上記混練で得られた混練物に、硫黄と加硫促進剤を加え、ラボプラストミルを用い、70℃、60rpmで1分間混練し、加硫して架橋ゴム8Aを得た。
各添加物の配合割合を表2Aに示す。また、架橋ゴム8Aの物性を表3Aに示す。
【0197】
実施例9A~11A、比較例7A~9A
共役ジエン系共重合体4Aの代わりに、上記実施例または比較例で合成した共役ジエン系共重合体5A、6A、7A、C4A、C5A、C6Aを使用した以外は、実施例8Aと同様の手法で架橋ゴム9A~11A、C7A~C9Aを得た。
使用した共役ジエン系共重合体の種類と、得られた架橋ゴム9A~11A、C7A~C9Aの物性を表3Aに示す。
【0198】
【0199】
なお、表2Aにおいて、使用した添加剤は、以下のとおり。
プロセスオイル:出光興産製 ダイナプロセスオイル AC-12
硫黄:鶴見化学工業製 粉末硫黄
酸化亜鉛:三井金属鉱業製 亜鉛華1号
ステアリン酸:日油製
シリカ:デグサ社製、ULTRASIL VN3
カーボンブラック:日鉄カーボン製 ニテロン#300
加硫促進剤:N-tert-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド
老化防止剤:大内新興化学工業製 ノクセラーNS
【0200】
【0201】
表3Aにおいて、引張強度指数、耐摩耗性指数は、比較例7Aの架橋ゴムの数値を100としたものである。表3Aより、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を使用した本発明のゴム架橋物は公知の分岐剤であるジビニルベンゼンを用いた場合と比較して、同等以上の加工性を与え、かつカーボンブラックを配合した加硫ゴムにおいて、引張強度、耐摩耗性に優れることが分かる。
【0202】
<第2の本発明の実施例>
実施例1B
DVB-630 9.30g(ジビニルベンゼン成分0.045モル、エチルビニルベンゼン成分0.026モル)、スチレン 148.79g(1.43モル)、酢酸n-プロピル1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、50℃で、200ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(25.1mL)を添加し、2.5時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体1B 90.1gを得た。
【0203】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体1BのMnは4140、Mwは9550、Mw/Mnは2.31であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体Aには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を3.0モル%(3.7wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を1.4モル%(1.8wt%)、及びスチレンに由来する構造単位を95.5モル%(94.5wt%)含有していた。前記式(2)で表されるジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)は0.24モル%(0.30wt%)であることから、架橋度は0.08であった。また、多官能ビニル芳香族共重合体1B中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位(a1)は、2.76モル%(3.40wt%)であることから、構造単位(a)及び(b)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.028であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tg:105℃であり、軟化温度は128℃であった。
TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.36wt%であった。多官能ビニル芳香族共重合体1B 0.5gをトルエン100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値は、0.00であった。
【0204】
実施例2B
DVB-630 18.60g(ジビニルベンゼン成分0.090モル、エチルビニルベンゼン成分0.053モル)、スチレン 141.34g(1.36モル)、酢酸n-プロピル1.00モル(115.0mL)を1.0Lの反応器内に投入し、60℃で、50ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(6.1mL)を添加し、3.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体2B 95.8gを得た。
【0205】
多官能ビニル芳香族共重合体2Bは、Mnは2620、Mwは11800、Mw/Mnは4.51で、ジビニルベンゼン由来の構造単位を7.37モル%(8.97wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を3.34モル%(4.12wt%)、スチレンに由来する構造単位を89.3モル%(86.9wt%)含有していた。架橋構造単位(a2)は1.55モル%(1.82wt%)、架橋度は0.21であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、5.82モル%(7.15wt%)、構造単位(a1)のモル分率は、0.058であった。
また、硬化物のTgは158℃であり、軟化温度は265℃であった。350℃における重量減少は1.28wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体2BのHaze値は、0.01であった。
【0206】
実施例3B
DVB-630 31.00g(ジビニルベンゼン成分0.150モル、エチルビニルベンゼン成分0.088モル)、スチレン 131.43g(1.262モル)、酢酸n-プロピル1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、55℃で、60ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.5mL)を添加し、5.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体3Bを96.3g得た。
【0207】
多官能ビニル芳香族共重合体3Bは、Mnは2950、Mwは13400、Mw/Mnは4.54であった。ジビニルベンゼン由来の構造単位を11.63モル%(13.91wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計5.87モル%(7.13wt%)、及び、スチレンに由来する構造単位を82.50モル%(78.96wt%)含有していた。前記架橋構造単位(a2)は3.14モル%(3.76wt%)で、架橋度は0.27であった。また、前記構造単位(a1)は、8.49モル%(10.16wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.085であった。
また、硬化物のTgは165℃であり、軟化温度は280℃以上で、350℃における重量減少は1.46wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体3BのHaze値は、0.04であった。
【0208】
実施例4B
DVB-630 46.49g(ジビニルベンゼン成分0.225モル、エチルビニルベンゼン成分0.132モル)、スチレン 119.03g(1.143モル)、酢酸n-プロピル1.50モル(172.5mL)を1.0Lの反応器内に投入し、50℃で、60ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(7.54mL)を添加し、3.5時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体4Bを96.10g得た。
【0209】
多官能ビニル芳香族共重合体4Bは、Mnは3870、Mwは23600、Mw/Mnは6.10であった。ジビニルベンゼン由来の構造単位を20.64モル%(23.98wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を9.09モル%(10.72wt%)、及びスチレンに由来する構造単位を70.27モル%(65.30wt%)含有していた。前記架橋構造単位(a2)は6.61モル%(7.67wt%)であり、架橋度は0.32で、ビニル基含有構造単位(a1)は、14.04モル%(16.31wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.140であった。
また、硬化物のTgは178℃であり、軟化温度は280℃以上であり、350℃における重量減少は1.53wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体4BのHaze値は、0.07であった。
【0210】
実施例5B
DVB-630 77.49g(ジビニルベンゼン成分0.375モル、エチルビニルベンゼン成分0.220モル)、スチレン 94.23g(0.905モル)、酢酸n-プロピル 1.57モル(180.2mL)を1.0Lの反応器内に投入し、50℃で、23.3ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(2.93mL)を添加し、5.25時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体5Bを76.19g得た。
【0211】
多官能ビニル芳香族共重合体5Bは、Mnは4230、Mwは26200、Mw/Mnは6.19であった。ジビニルベンゼン由来の構造単位を39.29モル%(43.12wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を15.08モル%(16.81wt%)、及びスチレンに由来する構造単位を45.63モル%(40.07wt%)含有していた。
前記架橋構造単位(a2)は16.89モル%(18.54wt%)で、架橋度は0.43であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、22.39モル%(24.58wt%)で、構造単位(a1)のモル分率は、0.224であった。
また、硬化物はTgレスであり、軟化温度は280℃以上であり、350℃における重量減少は1.61wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体5BのHaze値は、0.09であった。
【0212】
比較例1B
DVB-810 320.5mL(ジビニルベンゼン成分1.82モル、エチルビニルベンゼン成分0.43モル)、酢酸n-ブチル0.28モル(36.9mL)、卜ルエン140mLを1.0Lの反応器内に投入し、70℃で40ミリモルのメタンスルホン酸を酢酸n-ブチル0.12モル(15.7mL)に溶解させた溶液を添加し、6時間反応させた。重合溶液を水酸化カルシウムで停止させた後、活性アルミナをろ過助剤として、ろ過を行った。それから、60℃で減圧脱揮し、多官能ビニル芳香族共重合体C1B 22.6gを得た。
多官能ビニル芳香族共重合体C1Bは、Mnは1085、Mwは12400、Mw/Mnは11.4であり、ジビニルベンゼン由来の構造単位を84.0モル%(83.8wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計16.0モル%(16.2wt%) 含有していた。前記架橋構造単位(a2)は2.60モル%(2.59wt%)で、架橋度は0.031であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、11.40モル%(11.37wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.114であった。
また、硬化物のTgは82℃であり、軟化温度は93℃で、350℃における重量減少は8.25wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C1BのHaze値は、0.02であった。
【0213】
比較例2B
ジビニルベンゼン 1.5モル(195.3g)、エチルビニルベンゼン 0.88モル(114.7g)、スチレン 12.6モル(1314.3g)、酢酸n-プロピル 15.0モル(1532.0g)を5.0Lの反応器内に投入し、70℃で600ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収した。得られた共重合体を秤量して、共重合体C2B 820.8gが得られたことを確認した。
【0214】
共重合体C2BのMnは1490、Mwは12600、Mw/Mnは8.44であった。共重合体Gには、ジビニルベンゼン由来の構造単位:11.3モル%(13.5wt%)と、エチルビニルベンゼン由来の構造単位:5.79モル%(7.04wt%)及びスチレンに由来する構造単位:82.9モル%(79.4wt%)を含有していた。
前記架橋構造単位(a2)は5.86モル%(7.02wt%)で、架橋度は0.52であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、5.41モル%(6.48wt%)でビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.054であった。
また、硬化物はTg:162℃であり、軟化温度は280℃以上で350℃における重量減少は1.86wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C2BのHaze値は、0.14であった。
【0215】
比較例3B
ジビニルベンゼン 2.25モル(292.9g)、エチルビニルベンゼン 1.32モル(172.0g)、スチレン 11.4モル(1190.3g)、酢酸n-プロピル 15.0モル(1532.0g)を5.0Lの反応器内に投入し、70℃で600ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収した。得られた共重合体を秤量して、共重合体C3B 860.8gが得られたことを確認した。
【0216】
共重合体C3BのMnは2060、Mwは30700、Mw/Mnは14.9であった。共重合体Hには、ジビニルベンゼン由来の構造単位:20.92モル%(24.29wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位:9.06モル%(10.68wt%)と、スチレンに由来する構造単位:70.02モル%(65.03wt%)を含有していた。
前記架橋構造単位(a2)は11.30モル%(13.12wt%)で、架橋度は0.54であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、9.62モル%(11.17wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.096であった。
また、硬化物はTgレスであり、軟化温度は280℃以上であり、350℃における重量減少は2.11wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C3BのHaze値は、0.17であった。
【0217】
比較例4B
ジビニルベンゼン 3.1モル(404.5g)、エチルビニルベンゼン 1.8モル(237.6g)、スチレン 7.5モル(780.7g)、酢酸n-プロピル 13.0モル(1325.7g)を5.0Lの反応器内に投入し、70℃で193ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収した。得られた共重合体を秤量して、共重合体C4B 689.2gが得られたことを確認した。
【0218】
共重合体C4BのMnは2940、Mwは39500、Mw/Mnは13.4であった。共重合体C4Bには、ジビニルベンゼン由来の構造単位:36.8モル%(40.7wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位:14.5モル%(16.3wt%)、及びスチレンに由来する構造単位:48.6モル%(43.0wt%)を含有していた。
前記架橋構造単位(a2)は20.99モル%(23.20wt%)で、架橋度は0.57であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、15.84モル%(17.50wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.158であった。
また、硬化物は、Tgレスであり、軟化温度は280℃以上であり、350℃における重量減少は2.23wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C4BのHaze値は、0.21であった。
【0219】
実施例6B
窒素置換された内容積0.5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン245g、THF2.5g、スチレン10g、1,3-ブタジエン40g、実施例1Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体1B 0.50gを加えた。25℃において、sec-ブチルリチウム50mgを含むシクロヘキサン溶液5gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg添加して重合停止し、反応溶液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体6Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体6Bの物性を表1Bに示す。
【0220】
実施例7B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例1Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体1B 0.50gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体7Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体7Bの物性を表1Bに示す。
【0221】
実施例8B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例2Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体2B 0.30gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体8Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体8Bの物性を表1Bに示す。
【0222】
実施例9B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例1Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体1B 0.50gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は81℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体9Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体9Bの物性を表1Bに示す。
【0223】
実施例10B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例2Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体2B 0.35gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は81℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体10Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体10Bの物性を表1Bに示す。
【0224】
実施例11B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例3Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体3B 0.030gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに概ね可溶であったが、目視でもゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は82℃に達した。
重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体11Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体11Bの物性を表1Bに示す。
【0225】
実施例12B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例4Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体4B 0.25gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶であり、ゲルの発生は観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は81℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体12Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体12Bの物性を表1Bに示す。
【0226】
実施例13B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例5Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体5B 0.15gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに部分的に可溶であり、ゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は81℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体13Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体13Bの物性を表1Bに示す。
【0227】
比較例5B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例1Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C1B 0.5gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに部分的に可溶であり、ゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は84℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C5Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体C5Bの物性を表1Bに示す。
【0228】
比較例6B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例2Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C2B 0.030gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに概ね可溶であったが、目視でもゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C6Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体C6Bの物性を表1Bに示す。
【0229】
比較例7B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例3Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C3B 0.25gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶であり、ゲルの発生は観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C7Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体C7Bの物性を表1Bに示す。
【0230】
比較例8B
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF2.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として50mg(0.78mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例4Bで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C4B 0.15gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに部分的に可溶であり、ゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C8Bを得た。得られた共役ジエン系共重合体C8Bの物性を表1Bに示す。
【0231】
【0232】
実施例14B
共役ジエン系共重合体6B、プロセスオイル、カーボンブラック、酸化亜鉛、ステアリン酸及び老化防止剤を、ラボプラストミルを用い、155℃、60rpmで4分間混練した。
上記混練で得られた混練物に、硫黄と加硫促進剤を加え、ラボプラストミルを用い、70℃、60rpmで1分間混練し、加硫して架橋ゴム14Bを得た。
各添加物及び配合割合は、表2Aと同様である。また、架橋ゴム14Bの物性を表3Bに示す。
【0233】
実施例15B~21B、比較例9B~12B
共役ジエン系共重合体6Bの代わりに、上記実施例又は比較例で合成した共役ジエン系共重合体7B~13B、C5B~C8Bを使用した以外は、実施例14Bと同様の手法で架橋ゴム14B~21B、C9B~C12Bを得た。
使用した共役ジエン系共重合体の種類と、得られた架橋ゴム14B~21B、C9B~C12Bの物性を表3Bに示す。
【0234】
【0235】
表3Bより、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を使用した本発明のゴム架橋物は公知の分岐剤であるジビニルベンゼンを用いた場合と比較して、同等以上の加工性を与え、かつカーボンブラックを配合した加硫ゴムにおいて、引張強度、耐摩耗性に優れることが分かる。
【0236】
<第3の本発明の実施例>
実施例1C
DVB-630 31.00g(ジビニルベンゼン成分0.150モル、エチルビニルベンゼン(m-体とp-体の混合物)成分0.088モル)、スチレン 65.72g(0.631モル)、ジイソブチレン 70.80g(0.631モル)、酢酸n-プロピル 60ミリモル(6.90mL)、トルエン 48.55g(0.527モル)を500mLの反応器内に投入し、70℃で、15.2ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.91mL)を添加し、2.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体1C 60.6gを得た。
【0237】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体1CのMnは941、Mwは2850、Mw/Mnは3.03であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体Aには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を19.0モル%(21.8wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を8.3モル%(9.6wt%)、スチレンに由来する構造単位を48.6モル%(44.6wt%)、及び、ジイソブチレンに由来する構造単位を24.2モル%(24.0wt%)含有していた。前記式(2)で表されるジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)は4.6モル%(5.2wt%)であることから、架橋度(a2/a)は0.24であった。また、多官能ビニル芳香族共重合体1C中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位(a1)は、14.4モル%(16.5wt%)であることから、構造単位(a)、(b)、及び、(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.144であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tg:167℃であり、軟化温度は280℃以上であった。
TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.41wt%であった。多官能ビニル芳香族共重合体1C 0.5gをトルエン100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値は、0.02であった。
【0238】
実施例2C
DVB-630 46.49g(ジビニルベンゼン成分 0.225モル、エチルビニルベンゼン成分 0.132モル)、スチレン 53.33g(0.512モル)、ジイソブチレン 70.80g(0.631モル)、酢酸n-プロピル 60ミリモル(6.90mL)、トルエン 48.55g(0.527モル)を500mLの反応器内に投入し、70℃で、10.0ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.26mL)を添加し、2.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体2C 66.4gを得た。
【0239】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体2CのMnは1240、Mwは4980、Mw/Mnは4.02であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体Bには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を28.2モル%(31.5wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を12.2モル%(13.8wt%)、スチレンに由来する構造単位を37.6モル%(33.6wt%)、及び、ジイソブチレンに由来する構造単位を22.0モル%(21.1wt%)含有していた。前記式(2)で表されるジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)は7.6モル%(8.5wt%)であることから、架橋度は0.27であった。また、多官能ビニル芳香族共重合体2C中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位(a1)は、20.6モル%(23.0wt%)であることから、構造単位(a)、(b)、及び、(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.206であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tg:176℃であり、軟化温度は280℃以上であった。
TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.32wt%であった。多官能ビニル芳香族共重合体2C 0.5gをトルエン100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値は、0.03であった。
【0240】
実施例3C
DVB-630 62.00g(ジビニルベンゼン成分 0.300モル、エチルビニルベンゼン成分 0.176モル)、スチレン 40.92g(0.393モル)、ジイソブチレン 70.80g(0.631モル)、酢酸n-プロピル 60ミリモル(6.90mL)、トルエン 48.55g(0.527モル)を500mLの反応器内に投入し、70℃で、8.2ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.03mL)を添加し、1.5時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体3C 56.3gを得た。
【0241】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体3CのMnは1430、Mwは5490、Mw/Mnは3.84であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体Cには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を39.4モル%(42.6wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を15.9モル%(17.4wt%)、スチレンに由来する構造単位を25.7モル%(22.2wt%)、及び、ジイソブチレンに由来する構造単位を19.1モル%(17.8wt%)含有していた。前記式(2)で表されるジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)は11.4モル%(12.3wt%)であることから、架橋度は0.29であった。また、多官能ビニル芳香族共重合体3C中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位(a1)は、28.0モル%(30.2wt%)であることから、構造単位(a)、(b)、及び、(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.280であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tg:183℃であり、軟化温度は280℃以上であった。
TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.28wt%であった。多官能ビニル芳香族共重合体3C 0.5gをトルエン100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値は、0.05であった。
【0242】
比較例1C
DVB-810 320.5mL(ジビニルベンゼン成分1.82モル、エチルビニルベンゼン成分0.43モル)、酢酸n-ブチル 0.28モル(36.9mL)、トルエン140mLを1.0Lの反応器内に投入し、70℃で40ミリモルのメタンスルホン酸を酢酸n-ブチル0.12モル(15.7mL)に溶解させた溶液を添加し、6時間反応させた。重合溶液を水酸化カルシウムで停止させた後、活性アルミナをろ過助剤として、ろ過を行った。それから、60℃で減圧脱揮し、多官能ビニル芳香族共重合体C1C 22.6gを得た。
多官能ビニル芳香族共重合体C1Cは、Mnは1085、Mwは12400、Mw/Mnは11.4であり、ジビニルベンゼン由来の構造単位を84.0モル%(83.8wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計16.0モル%(16.2wt%) 含有していた。前記架橋構造単位(a2)は2.60モル%(2.59wt%)で、架橋度は0.031であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、11.40モル%(11.37wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.114であった。
また、硬化物のTgは82℃であり、軟化温度は93℃で、350℃における重量減少は8.25wt%であった。一方、エポキシ樹脂との相溶性は○であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C1CのHaze値は、0.02であった。
【0243】
比較例2C
ジビニルベンゼン 1.5モル(195.3g)、エチルビニルベンゼン 0.88モル(114.7g)、スチレン 12.6モル(1314.3g)、酢酸n-プロピル 15.0モル(1532.0g)を5.0Lの反応器内に投入し、70℃で600ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収した。得られた共重合体を秤量して、共重合体C2C 820.8gが得られたことを確認した。
【0244】
共重合体C2CのMnは1490、Mwは12600、Mw/Mnは8.44であった。共重合体C2Cには、ジビニルベンゼン由来の構造単位:11.3モル%(13.5wt%)と、エチルビニルベンゼン由来の構造単位:5.79モル%(7.04wt%)及びスチレンに由来する構造単位:82.9モル%(79.4wt%)を含有していた。
前記架橋構造単位(a2)は5.86モル%(7.02wt%)で、架橋度は0.52であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、5.41モル%(6.48wt%)でビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.054であった。
また、硬化物はTg:162℃であり、軟化温度は280℃以上で350℃における重量減少は1.86wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C2CのHaze値は、0.14であった。
【0245】
比較例3C
ジビニルベンゼン 2.25モル(292.9g)、エチルビニルベンゼン 1.32モル(172.0g)、スチレン 11.4モル(1190.3g)、酢酸n-プロピル 15.0モル(1532.0g)を5.0Lの反応器内に投入し、70℃で600ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収した。得られた共重合体を秤量して、共重合体C3C 860.8gが得られたことを確認した。
【0246】
共重合体C3CのMnは2060、Mwは30700、Mw/Mnは14.9であった。共重合体C3Cには、ジビニルベンゼン由来の構造単位:20.92モル%(24.29wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位:9.06モル%(10.68wt%)と、スチレンに由来する構造単位:70.02モル%(65.03wt%)を含有していた。
前記架橋構造単位(a2)は11.30モル%(13.12wt%)で、架橋度は0.54であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、9.62モル%(11.17wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.096であった。
また、硬化物はTgレスであり、軟化温度は280℃以上であり、350℃における重量減少は2.11wt%であった。
多官能ビニル芳香族共重合体C3CのHaze値は、0.17であった。
【0247】
比較例4C
ジビニルベンゼン 3.1モル(404.5g)、エチルビニルベンゼン 1.8モル(237.6g)、スチレン 7.5モル(780.7g)、酢酸n-プロピル 13.0モル(1325.7g)を5.0Lの反応器内に投入し、70℃で193ミリモルの三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体を添加し、4時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収した。得られた共重合体を秤量して、共重合体C4C 689.2gが得られたことを確認した。
【0248】
共重合体C4CのMnは2940、Mwは39500、Mw/Mnは13.4であった。共重合体C4Cには、ジビニルベンゼン由来の構造単位:36.8モル%(40.7wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位:14.5モル%(16.3wt%)、及びスチレンに由来する構造単位:48.6モル%(43.0wt%)を含有していた。
前記架橋構造単位(a2)は20.99モル%(23.20wt%)で、架橋度は0.57であり、ビニル基含有構造単位(a1)は、15.84モル%(17.50wt%)で、ビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.158であった。
また、硬化物は、Tgレスであり、軟化温度は280℃以上であり、350℃における重量減少は2.23wt%であった。
官能ビニル芳香族共重合体C4CのHaze値は、0.21であった。
【0249】
実施例4C
窒素置換された内容積0.5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン245g、THF0.5g、スチレン10g、1,3-ブタジエン40g、実施例1Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体1C 0.10gを加えた。25℃において、sec-ブチルリチウム10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は81℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg添加して重合停止し、反応溶液に、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体4Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体4C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体4Cの物性を表1Cに示す。
【0250】
実施例5C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例1Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体1C 0.10gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は80℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体5Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体5C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体5Cの物性を表1Cに示す。
【0251】
実施例6C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例2Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体2C 0.085gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体6Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体6C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体6Cの物性を表1Cに示す。
【0252】
実施例7C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例1Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体1C 0.10gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は81℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体7Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体7C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体7Cの物性を表1Cに示す。
【0253】
実施例8C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例2Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体2C 0.085gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は82℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体8Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体8C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体8Cの物性を表1Cに示す。
【0254】
実施例9C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例3Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体3C 0.070gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶であり、ゲルの発生は観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は78℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体9Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体9C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体9Cの物性を表1Cに示す。
【0255】
比較例5C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例1Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C1C 0.1gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに部分的に可溶であるが、ゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は84℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C5Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体C5C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成を確認した。共役ジエン系共重合体C5Cの物性を表1Cに示す。
【0256】
比較例6C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例2Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C2C 0.08gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに概ね可溶であったが、目視でもゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C6Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体C6C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成を確認した。共役ジエン系共重合体C6Cの物性を表1Cに示す。
【0257】
比較例7C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例3Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C3C 0.10gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶であるが、ゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C7Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体C7C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成を確認した。共役ジエン系共重合体C7Cの物性を表1Cに示す。
【0258】
比較例8C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、比較例4Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体C4C 0.08gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに部分的に可溶であるが、ゲルの発生が観察された。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は83℃に達した。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体C8Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体C8C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成を確認した。共役ジエン系共重合体C8Cの物性を表1Cに示す。
【0259】
【0260】
実施例10C
実施例4Cで合成した共役ジエン系共重合体4C(共重合体ゴム)、プロセスオイル、カーボンブラック、酸化亜鉛、ステアリン酸及び老化防止剤を配合し、ラボプラストミルを用い、155℃、60rpmで4分間混練した。
上記混練で得られた混練物に、硫黄と加硫促進剤を加え、ラボプラストミルを用い、70℃、60rpmで1分間混練し、加硫して架橋ゴム10Cを得た。
各添加物の配合割合を表2Cに示す。また、架橋ゴム10Cの物性を表3Cに示す。
【0261】
【0262】
なお、使用した添加剤は、以下のとおり。
プロセスオイル:出光興産製 ダイナプロセスオイル AC-12
シリカ:デグサ社製、ULTRASIL VN3
カーボンブラック:日鉄カーボン製 ニテロン#300
酸化亜鉛:三井金属鉱業製 亜鉛華1号
ステアリン酸:日油製
老化防止剤:大内新興化学工業製 ノクセラーNS
硫黄:鶴見化学工業製 粉末硫黄
加硫促進剤:N-tert-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド
【0263】
実施例11C~15C、比較例9C~12C
共役ジエン系共重合体4Cの代わりに、上記実施例又は比較例で合成した共役ジエン系共重合体5C~9C、C5C~C8Cを使用した以外は、実施例10Cと同様の手法で架橋ゴム11C~15C、C9C~C12Cを得た。
使用した共役ジエン系共重合体の種類と、得られた架橋ゴム11C~15C、C9C~C12Cの物性を表3Cに示す。
【0264】
【0265】
表3Cより、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を使用した本発明のゴム架橋物は公知の分岐剤であるジビニルベンゼンを用いた場合と比較して、同等以上のシリカの分散性と界面での密着性を与えることから、加硫ゴムにおいて、引張強度、耐摩耗性に優れることが分かる。
【0266】
実施例16C
DVB-630 46.49g(ジビニルベンゼン成分 0.225モル、エチルビニルベンゼン成分 0.132モル)、スチレン 53.33g(0.512モル)、2-メチル-1-ヘキセン 61.95g(0.631モル)、酢酸n-プロピル 60ミリモル(6.90mL)、トルエン 48.55g(0.527モル)を500mLの反応器内に投入し、70℃で、10.0ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.26mL)を添加し、2.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体16C 64.8gを得た。
【0267】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体16CのMnは1310、Mwは5070、Mw/Mnは3.87であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体Jには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を28.0モル%(32.2wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を12.2モル%(14.2wt%)、スチレンに由来する構造単位を32.5モル%(35.3wt%)、及び、2-メチル-1-ヘキセンに由来する構造単位を24.5モル%(21.2wt%)含有していた。
前記式(2)で表されるジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)は8.1モル%(9.3wt%)であることから、架橋度は0.29であった。また、多官能ビニル芳香族共重合体J中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位(a1)は、19.9モル%(22.8wt%)であることから、構造単位(a)、(b)、及び、(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.199であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tg:168℃であり、軟化温度は280℃以上であった。
TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.41wt%であった。多官能ビニル芳香族共重合体16C 0.5gをトルエン100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値は、0.04であった。
【0268】
実施例17C
DVB-630 46.49g(ジビニルベンゼン成分 0.225モル、エチルビニルベンゼン成分 0.132モル)、スチレン 53.33g(0.512モル)、2-メチル-1-ペンテン 53.10g(0.631モル)、酢酸n-プロピル 60ミリモル(6.90mL)、トルエン 48.55g(0.527モル)を500mLの反応器内に投入し、70℃で、10.0ミリモルの三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.26mL)を添加し、2.0時間反応させた。重合溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で停止させた後、純水で3回油層を洗浄し、60℃で減圧脱揮し、共重合体を回収し、多官能ビニル芳香族共重合体17C 61.5gを得た。
【0269】
得られた多官能ビニル芳香族共重合体17CのMnは1280、Mwは5260、Mw/Mnは4.11であった。13C‐NMR及び1H‐NMR分析を行うことにより、多官能ビニル芳香族共重合体17Cには、ジビニルベンゼン由来の構造単位を26.5モル%(31.7wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を11.3モル%(13.8wt%)、スチレンに由来する構造単位を35.3モル%(33.8wt%)、及び、2-メチル-1-ペンテンに由来する構造単位を26.8モル%(20.8wt%)含有していた。
前記式(2)で表されるジビニル芳香族化合物に由来する架橋構造単位(a2)は7.2モル%(8.6wt%)であることから、架橋度は0.27であった。また、多官能ビニル芳香族共重合体B中に含まれる残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位(a1)は、19.3モル%(23.1wt%)であることから、構造単位(a)、(b)、及び、(c)の総和に対するビニル基含有構造単位(a1)のモル分率は、0.193であった。
また、硬化物のTMA測定の結果、Tg:171℃であり、軟化温度は280℃以上であった。
TGA測定の結果、350℃における重量減少は1.38wt%であった。多官能ビニル芳香族共重合体17C 0.5gをトルエン100gに溶解させたサンプルを石英セルに入れ、そのHaze(濁り度)を、トルエンを基準サンプルとして、積分球式光線透過率測定装置を用い測定したときのHaze値は、0.03であった。
【0270】
実施例18C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例16Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体16C 0.085gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は82℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体18Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体18C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体18Cの物性を表4Cに示す。
【0271】
実施例19C
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン200g、THF0.5gを装入し、50℃において、n-ブチルリチウムを純分として10mg(0.16mmol)を含むシクロヘキサン溶液5gを添加した後、実施例17Cで得られた多官能ビニル芳香族共重合体17C 0.085gを含むシクロヘキサン溶液45gを30分かけて添加し、多官能アニオン重合開始剤を調製した。調製した多官能アニオン重合開始剤は、シクロヘキサンに可溶でありゲルは観察されなかった。予め不純物を除去したスチレン10g、1,3-ブタジエン40gを添加して重合を開始した。重合熱により反応溶液の温度が上昇し、最高温度は82℃に達した。重合反応終了後、反応器に変性剤としてBTESPAを21mmol添加し変性反応を実施した、80℃の温度条件で5分間の変性反応を実施して重合体溶液を得た。
重合転化率が99%に達したのを確認後、イソプロパノールを50mg(0.83mmol)添加して重合停止し、反応溶液に、BHTを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、共役ジエン系共重合体19Cを得た。得られた共役ジエン系共重合体19C 0.5gをトルエン100mLに溶解させ、0.2wt%のスダンIIIトルエン溶液を1.0g添加することにより着色し、0.2μmのPTFE製メンブレンフィルターでろ過を行い、ろ過後のメンブレンフィルター上を実態顕微鏡にて観察を行ったところ、ミクロゲルの生成はないことを確認した。共役ジエン系共重合体19Cの物性を表4Cに示す。
【0272】
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、共役ジエン系共重合体の原料として使用することができる。更に、この共役ジエン系共重合体にフィラーを含有し、架橋させた架橋ゴム組成物は、フィラーの分散性に優れ、機械的強度、耐摩耗性に優れることから、タイヤ(特にタイヤトレッド)、免震用ゴム、ゴムホース、ゴムローラー、履物材料等のエラストマー材料として有用である。
また、成型材料、樹脂の改質剤等に適用できる。電気・電子産業、宇宙・航空機産業等の分野において、誘電材料、絶縁材料、耐熱材料、構造材料等として提供することができる。また、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を含有する硬化性樹脂組成物をコーティングしたフィルム及びシートは、プラスチック光学部品、タッチパネル、フラットディスプレイ、フィルム液晶素子などで好適に使用される。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、フィルム、シート及びプリプレグの主材として使用される熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂組成物の耐熱性、誘電特性及び光学特性等の特性を改質する改質剤として使用することもできる。また、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を主材として含有する硬化性樹脂組成物を、フィルム、シート及びプリプレグに加工して使用することもできる。更に、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体を含有する硬化性樹脂組成物は光導波路や光学レンズを始めとする各種光学素子として使用することもできる。