(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】塗布状況検出方法及び塗布状況検出装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241205BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/66 P
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2022123458
(22)【出願日】2022-08-02
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】大村 瑠美
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛弥
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-292487(JP,A)
【文献】特開2009-049630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/301
H01L 21/027
G01B 11/06
G01N 21/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に塗布された保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出方法であって、
前記被加工物を広帯域光源から出射された照明光で照明して前記被加工物からの反射光を受光する測定ステップと、
前記測定ステップで受光した前記反射光から前記保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出ステップと、
を有
し、
前記保護膜の屈折率と、前記被加工物の前記保護膜が塗布された面に対する前記照明光の入射角と、前記保護膜の膜厚と、に基づいて前記広帯域光源の照明波長域を決定し、
前記屈折率及び前記入射角に基づいて前記保護膜による前記照明光の屈折角が定まり、
前記屈折率をn、前記保護膜の膜厚をd、前記屈折角をθ、前記広帯域光源の照明波長域の短波長側限界をλ
L
、前記照明波長域の長波長側限界をλ
H
、前記保護膜の表面で反射する第1反射光と前記保護膜の裏面で反射する第2反射光との光路差をa=2ndcosθとした場合に、前記測定ステップでは、下記(1)式を満たす前記広帯域光源を使用する塗布状況検出方法。
【数1】
【請求項2】
被加工物に塗布された保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出方法であって、
前記被加工物を広帯域光源から出射された照明光で照明して前記被加工物からの反射光を受光する測定ステップと、
前記測定ステップで受光した前記反射光から前記保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出ステップと、
を有し、
前記保護膜の屈折率と、前記被加工物の前記保護膜が塗布された面に対する前記照明光の入射角と、前記保護膜の膜厚と、に基づいて前記広帯域光源の照明波長域を決定し、
前記屈折率及び前記入射角に基づいて前記保護膜による前記照明光の屈折角が定まり、
前記屈折率をn、前記保護膜の膜厚をd、前記屈折角をθ、前記広帯域光源の照明波長域の短波長側限界をλ
L、前記照明波長域の長波長側限界をλ
H、前記保護膜の表面で反射する第1反射光と前記保護膜の裏面で反射する第2反射光との光路差をa=2ndcosθとした場合に、前記測定ステップでは、下記(2)式を満たす前記広帯域光源を使用する
塗布状況検出方法。
【数2】
【請求項3】
前記照明光の照明波長域が400nm乃至1000nmの範囲に含まれている請求項1
又は2に記載の塗布状況検出方法。
【請求項4】
前記塗布状況検出ステップでは、前記反射光から前記被加工物の明度の分布を検出し、前記被加工物の明度の分布から前記保護膜の塗布状況を検出する請求項1
又は2に記載の塗布状況検出方法。
【請求項5】
前記測定ステップを前記被加工物への前記保護膜の塗布前及び塗布後に実行し、
前記塗布状況検出ステップでは、前記保護膜の塗布前後の前記測定ステップでそれぞれ受光した前記反射光に基づいて前記保護膜の塗布前後における前記被加工物の撮影画像を取得して、前記保護膜の塗布前後の前記撮影画像における出力値の差分又は比率から前記保護膜の塗布状況を検出する請求項1
又は2に記載の塗布状況検出方法。
【請求項6】
前記測定ステップでは、前記広帯域光源の照明光を斜め方向から前記被加工物に入射させる請求項1
又は2に記載の塗布状況検出方法。
【請求項7】
被加工物に塗布された保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出装置であって、
前記被加工物を広帯域光源
から出射された照明光で照明して前記被加工物からの反射光を受光する測定部と、
前記測定部で受光した前記反射光から前記保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出部と、
を備え
、
前記保護膜の屈折率と、前記被加工物の前記保護膜が塗布された面に対する前記照明光の入射角と、前記保護膜の膜厚と、に基づいて前記広帯域光源の照明波長域を決定し、
前記屈折率及び前記入射角に基づいて前記保護膜による前記照明光の屈折角が定まり、
前記屈折率をn、前記保護膜の膜厚をd、前記屈折角をθ、前記広帯域光源の照明波長域の短波長側限界をλ
L
、前記照明波長域の長波長側限界をλ
H
、前記保護膜の表面で反射する第1反射光と前記保護膜の裏面で反射する第2反射光との光路差をa=2ndcosθとした場合に、前記測定部では、下記(1)式を満たす前記広帯域光源を使用する塗布状況検出装置。
【数3】
【請求項8】
被加工物に塗布された保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出装置であって、
前記被加工物を広帯域光源から出射された照明光で照明して前記被加工物からの反射光を受光する測定部と、
前記測定部で受光した前記反射光から前記保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出部と、
を備え、
前記保護膜の屈折率と、前記被加工物の前記保護膜が塗布された面に対する前記照明光の入射角と、前記保護膜の膜厚と、に基づいて前記広帯域光源の照明波長域を決定し、
前記屈折率及び前記入射角に基づいて前記保護膜による前記照明光の屈折角が定まり、
前記屈折率をn、前記保護膜の膜厚をd、前記屈折角をθ、前記広帯域光源の照明波長域の短波長側限界をλ
L
、前記照明波長域の長波長側限界をλ
H
、前記保護膜の表面で反射する第1反射光と前記保護膜の裏面で反射する第2反射光との光路差をa=2ndcosθとした場合に、前記測定部では、下記(2)式を満たす前記広帯域光源を使用する塗布状況検出装置。
【数4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に塗布された保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出方法及び塗布状況検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ(被加工物)は、複数のデバイスが格子状のストリートによって格子状に区画されている。この半導体ウェーハをストリートに沿って分割することにより個々のデバイスが製造される。半導体ウェーハを複数のデバイス(チップ)に分割する装置としてレーザ加工装置がよく知られている。レーザ加工装置は、半導体ウェーハに対してレーザ光学系をストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザ光学系からレーザ光をストリートに照射することでストリートに沿って加工溝を形成するレーザ加工(アブレーション溝加工ともいう)を実行する。
【0003】
レーザ加工装置による半導体ウェーハのレーザ加工を実行する場合には、レーザ加工により発生するデブリが半導体ウェーハに付着することを防止するために、予め半導体ウェーハの表面に保護膜を塗布(形成)する。この際に保護膜の膜厚は薄いので、半導体ウェーハの表面の凹凸或いは汚れ等の原因により、半導体ウェーハの表面上に保護膜が塗布されていない塗り残し領域が発生するおそれがある。この塗り残し領域が存在している状態で半導体ウェーハのレーザ加工を実行すると不良の原因となる。このため、レーザ加工前に半導体ウェーハの表面上に塗布された保護膜の塗布状況を検出する必要がある。
【0004】
特許文献1には、蛍光剤を含有する保護膜が塗布された半導体ウェーハの表面に対して励起光を照射して、半導体ウェーハの表面上で蛍光が発生しない領域を塗り残し領域として検出する蛍光検出装置が開示されている。特許文献2及び特許文献3には、保護膜が塗布された半導体ウェーハの表面に対して赤外光を照射してこの表面からの反射光を受光して、保護膜の有無による反射光の反射率の違いを検出することで、半導体ウェーハの表面上での塗り残し領域の有無を検出する保護膜検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-227532号公報
【文献】特開2017-103281号公報
【文献】特開2015-065386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の蛍光検出装置では、微弱な蛍光を検出するために、強力且つ均一な励起光源と、高感度の光電子増倍管とが必要になるため、照明光学系及び検出光学系が高価且つ複雑になる。
【0007】
特許文献2及び特許文献3に記載の保護膜検出装置においても赤外光を用いるための照明光学系及び検出光学系が高価になる。また、特許文献2及び特許文献3に記載の保護膜検出装置では保護膜の有無による反射光の反射率の違いを検出しているが、この反射率は半導体ウェーハの材質、及び半導体ウェーハの表面に対する赤外光の入射角などの各種条件により変化する。このため、保護膜の有無を判定するための反射率の閾値を単純に決定することができず、半導体ウェーハの表面に塗布された保護膜の塗布状況の検出を簡単に行うことができない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被加工物に塗布された保護膜の塗布状況の検出を低コスト且つ簡単に実行することができる塗布状況検出方法及び塗布状況検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するための塗布状況検出方法は、被加工物に塗布された保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出方法であって、被加工物を広帯域光源から出射された照明光で照明して被加工物からの反射光を受光する測定ステップと、測定ステップで受光した反射光から保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出ステップと、を有する。
【0010】
この塗布状況検出方法によれば、保護膜の塗布領域での反射光の反射率を保護膜の塗り残し領域での反射光の反射率よりも低下させることができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る塗布状況検出方法において、保護膜の屈折率と、被加工物の保護膜が塗布された面に対する照明光の入射角と、保護膜の膜厚と、に基づいて広帯域光源の照明波長域を決定する。これにより、保護膜の塗布領域での反射光の反射率を保護膜の塗り残し領域での反射光の反射率よりも低下させることができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る塗布状況検出方法において、屈折率及び入射角に基づいて保護膜による照明光の屈折角が定まり、屈折率をn、保護膜の膜厚をd、屈折角をθ、広帯域光源の照明波長域の短波長側限界をλ
L、照明波長域の長波長側限界をλ
H、保護膜の表面で反射する第1反射光と保護膜の裏面で反射する第2反射光との光路差をa=2ndcosθとした場合に、測定ステップでは、
【数A】
【0013】
(1)式を満たす広帯域光源を使用する。これにより、光源の中心波長に依らず、様々な膜厚に対して、薄膜干渉による反射率の低下が、様々な膜厚に対して少なからず発生する事象を利用することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る塗布状況検出方法において、屈折率及び入射角に基づいて保護膜による照明光の屈折角が定まり、屈折率をn、保護膜の膜厚をd、屈折角をθ、広帯域光源の照明波長域の短波長側限界をλ
L、照明波長域の長波長側限界をλ
H、保護膜の表面で反射する第1反射光と保護膜の裏面で反射する第2反射光との光路差をa=2ndcosθとした場合に、測定ステップでは、
【数B】
【0015】
(2)式を満たす広帯域光源を使用する。これにより、光源の中心波長に依らず、様々な膜厚に対して、薄膜干渉による反射率の低下が、様々な膜厚に対して少なからず発生する事象を利用することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る塗布状況検出方法において、照明光の照明波長域が400nm乃至1000nmの範囲に含まれている。これにより、保護膜の塗布領域での反射光の反射率を保護膜の塗り残し領域での反射光の反射率よりも低下させることができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る塗布状況検出方法において、塗布状況検出ステップでは、反射光から被加工物の明度の分布を検出し、被加工物の明度の分布から保護膜の塗布状況を検出する。これにより、保護膜が塗布されている塗布領域では薄膜干渉によって明度が低下することを利用して、明度の分布から保護膜の塗布状況を検出することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る塗布状況検出方法において、測定ステップを被加工物への保護膜の塗布前及び塗布後に実行し、塗布状況検出ステップでは、保護膜の塗布前後の測定ステップでそれぞれ受光した反射光に基づいて保護膜の塗布前後における被加工物の撮影画像を取得して、保護膜の塗布前後の撮影画像における出力値の差分又は比率から保護膜の塗布状況を検出する。これにより、保護膜の塗布状況を検出することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る塗布状況検出方法において、測定ステップでは、広帯域光源の照明光を斜め方向から被加工物に入射させる。これにより、被加工物の表面を広範囲で照明光により照明することができ、広範囲の保護膜の塗布状況を検出することができる。
【0020】
本発明の目的を達成するための塗布状況検出方法は、被加工物に塗布された保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出装置であって、被加工物を広帯域光源で照明して被加工物からの反射光を受光する測定部と、測定部で受光した反射光から保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、被加工物に塗布された保護膜の塗布状況の検出を低コスト且つ簡単に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の塗布状況検出装置の概略図である。
【
図2】
図1中の半導体ウェーハの断面拡大図である。
【
図3】塗布状況検出部による保護膜の塗布状況の検出の一例を説明するための説明図である。
【
図4】半導体ウェーハの材質ごとの反射光の波長と反射光の反射率との関係の一例を示したグラフである。
【
図6】保護膜の膜厚ごとの反射光の波長と反射光の反射率との関係の一例を示したグラフである。
【
図7】半導体ウェーハの表面上の位置に応じた反射光の反射角の変化を説明するための説明図である。
【
図8】反射光の反射角度ごとの反射光の波長と反射光の反射率との関係の一例を示したグラフである
【
図9】広帯域光源の照明光の照明波長域の設定を説明するための説明図であって、保護膜の膜厚ごとの照明光の波長と反射光の反射率との関係の一例を示したグラフである。
【
図10】保護膜の膜厚の最小厚みに対応した反射光の波長と反射光の反射率との関係の一例を示したグラフである。
【
図11】第1実施形態の塗布状況検出装置による保護膜の塗布状況の検出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】第2実施形態の塗布状況検出装置による保護膜の塗布状況の検出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】第3実施形態の塗布状況検出装置の概略図である。
【
図14】第4実施形態の塗布状況検出装置の概略図である。
【
図15】複数の膜厚及び複数の反射角の組み合わせごとに、照明光の照明波長域と反射光の低下率との関係を計算した実施例1のグラフである。
【
図16】複数の膜厚及び複数の反射角の組み合わせごとに、照明光の照明波長域と反射光の低下率との関係を計算した実施例2のグラフである。
【
図17】複数の膜厚及び複数の反射角の組み合わせごとに、照明光の照明波長域と反射光の低下率との関係を計算した実施例3のグラフである。
【
図18】複数の膜厚及び複数の反射角の組み合わせごとに、照明光の照明波長域と反射光の低下率との関係を計算した実施例4のグラフである。
【
図19】アルミニウム製の半導体ウェーハの表面上に形成された保護膜の膜厚ごとに、照明光の波長と反射光の反射率との関係を計算した実施例5のグラフである。
【
図20】
図19に示した4種類の膜厚ごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光を使用した場合の反射光の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
【
図21】アルミニウム製の半導体ウェーハの表面上に形成された保護膜の膜厚ごとに、照明光の波長と反射光の反射率との関係を計算した実施例6のグラフである。
【
図22】
図21に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光を使用した場合の反射光の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
【
図23】銅製の半導体ウェーハの表面上に形成された保護膜の膜厚ごとに、照明光の波長と反射光の反射率との関係を計算した実施例7のグラフである。
【
図24】
図23に示した4種類の膜厚ごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光を使用した場合の反射光の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
【
図25】銅製の半導体ウェーハの表面上に形成された保護膜の膜厚ごとに、照明光の波長と反射光の反射率との関係を計算した実施例8のグラフである。
【
図26】
図25に示した4種類の膜厚ごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光を使用した場合の反射光の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
【
図27】シリコン製の半導体ウェーハの表面上に形成された保護膜の膜厚ごとに、照明光の波長と反射光の反射率との関係を計算した実施例9のグラフである。
【
図28】
図27に示した4種類の膜厚ごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光を使用した場合の反射光の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
【
図29】シリコン製の半導体ウェーハの表面上に形成された保護膜の膜厚ごとに、照明光の波長と反射光の反射率との関係を計算した実施例10のグラフである。
【
図30】
図29に示した4種類の膜厚ごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光を使用した場合の反射光の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
【
図31】アルミニウム製の半導体ウェーハの表面上に形成された保護膜の膜厚ごとに、照明光の波長と反射光の反射率との関係を計算した比較例のグラフである。
【
図32】
図31に示した4種類の膜厚ごとに、「照明波長域d」~「照明波長域f」の照明光を使用した場合の反射光の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の塗布状況検出装置10の概略図である。
図2は、
図1中の半導体ウェーハWの断面拡大図である。
図1及び
図2に示すように、塗布状況検出装置10は、被加工物である半導体ウェーハWのレーザ加工前に、この半導体ウェーハWの表面上にスピンコートなどの公知の塗布方法で塗布(形成)された保護膜9の塗布状況を検出、すなわち半導体ウェーハWの表面上の保護膜9の塗り残しの有無を検出する。以下、「半導体ウェーハWの表面」とは、半導体ウェーハWの表面上において、保護膜9が塗布されている塗布領域WA(
図3参照)では保護膜9の表面を指し、保護膜9の塗り残し領域WB(
図3参照)では半導体ウェーハWの表面自体を指す。
【0024】
塗布状況検出装置10は、大別して、本発明の測定部を構成する照明光学系12及び検出光学系16と、制御装置20と、を備える。
【0025】
照明光学系12は、半導体ウェーハWの表面の法線Hに対して傾斜した照明光軸O1を有しており、半導体ウェーハWの表面を斜め方向から照明する。この照明光学系12は、照明光軸O1に沿って配置された広帯域光源13と拡散板14とを備える。
【0026】
広帯域光源13は、例えば、白色光のような広帯域光を照明光L1として出射する。なお、広帯域光は可視波長域の光に限定されるものではなく、近赤外域及び近紫外域の光が含まれていてもよい。この照明光L1の照明波長域については後述する。
【0027】
拡散板14は、広帯域光源13から出射された照明光L1を拡散した後に半導体ウェーハWの表面に対して斜め方向に入射させる。これにより、半導体ウェーハWの表面の広範囲を照明光L1で照明することができる。なお、広帯域光源13が面光源であれば拡散板14は省略してもよい。また、拡散板14の代わりに反射板等を配置してもよい。
【0028】
半導体ウェーハWの表面上に入射角θ
1で入射した照明光L1は、半導体ウェーハWの表面(保護膜9の表面を含む)により反射される。これにより、半導体ウェーハWの表面から反射角θ
3で反射光L2が出射される。ここで、半導体ウェーハWの表面上の中で保護膜9の塗布領域WAに入射角θ
1で入射した照明光L1の反射光L2は、保護膜9の表面で反射された第1反射光L2Aと、保護膜9の裏面で反射された第2反射光L2Bと、を含む(
図2参照)。なお、
図2中の符号θ
2は、保護膜9による照明光L1の屈折角を示す。
【0029】
保護膜9の塗布領域WAでは、保護膜9の表裏面でそれぞれ反射された第1反射光L2A及び第2反射光L2Bが互いに干渉する薄膜干渉が発生する。このため、第1反射光L2A及び第2反射光L2Bは、照明光L1(反射光L2)の波長、半導体ウェーハWの材質、反射角θ3(入射角θ1)、及び保護膜9の膜厚dによって互いに強め合ったり弱め合ったりする。これにより、塗布領域WAで反射される反射光L2の反射率が変化する。
【0030】
一方、半導体ウェーハWの表面上の中で保護膜9の塗り残し領域WB(
図3参照)に入射角θ
1で入射した照明光L1の反射光L2は、半導体ウェーハWの表面で反射された光のみを含む。これにより、塗り残し領域WBでは、薄膜干渉による反射光L2の反射率の変化は発生しない。
【0031】
検出光学系16は、法線Hに対して照明光軸O1とは逆方向側に傾斜した検出光軸O2を有しており、半導体ウェーハWの表面(塗布領域WA、塗り残し領域WB、
図3参照)で反射された反射光L2を受光する。この検出光学系16は、検出光軸O2に沿って配置されたレンズ17及び検出器18を含む。
【0032】
レンズ17は、半導体ウェーハWの表面にて反射された反射光L2を検出器18の受光面に集光する。
【0033】
検出器18は、検出に用いる波長域に感度を有する2次元受光センサであり、例えば、撮像素子(カメラ)及びフォトディテクタなどが用いられる。検出器18は、レンズ17を通して受光した反射光L2の受光信号を制御装置20へ出力する。
【0034】
制御装置20は、照明光学系12及び検出光学系16の動作を統括的に制御して、半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の塗布状況を検出する。制御装置20は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置20の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0035】
制御装置20は、不図示の制御プログラムを実行することで、測定制御部21及び塗布状況検出部22として機能する。
【0036】
測定制御部21は、広帯域光源13及び検出器18の動作制御を実行する。この測定制御部21は、例えばオペレータによる測定開始操作或いは半導体ウェーハWが所定の検査位置にセットされるのに応じて、広帯域光源13による照明光L1の出射と、検出器18による反射光L2の受光及び受光信号の出力と、を実行させる。これにより、検出器18から塗布状況検出部22に対して反射光L2の受光信号が入力される。
【0037】
塗布状況検出部22は、検出器18から入力された反射光L2の受光信号に基づいて、半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の塗布状況を検出する。
【0038】
図3は、塗布状況検出部22による保護膜9の塗布状況の検出の一例を説明するための説明図である。
図3の符号3A,3Bに示すように半導体ウェーハWの表面に保護膜9を塗布した場合において、符号3Cに示すように半導体ウェーハWの表面上において保護膜9が塗布された領域は塗布領域WAとなり、保護膜9の塗り残しが発生した領域は塗り残し領域WBとなる。
【0039】
塗布領域WAで反射された反射光L2の反射率(強度)は、保護膜9での薄膜干渉によって、塗り残し領域WBで反射された反射光L2の反射率(強度)以下になる。このため、塗布領域WAの反射光L2の反射率が塗り残し領域WBの反射光L2の反射率よりも小さくなる場合には、検出器18で受光される塗布領域WAからの反射光L2の強度が塗り残し領域WBからの反射光L2の強度よりも小さくなる。この場合には、検出器18から出力される受光信号に基づいて検出される半導体ウェーハWの表面の明度の分布(明暗)から、半導体ウェーハWの表面上での塗布領域WA及び塗り残し領域WBの分布を検出可能である。
【0040】
そこで、塗布状況検出部22は、検出器18から入力された反射光L2の受光信号に基づいて、半導体ウェーハWの表面の明度分布を検出することで、保護膜9の塗布状況を検出、すなわち、塗り残し領域WBの有無を検出する。
【0041】
このように塗布状況検出部22が反射光L2の受光信号に基づいて保護膜9の塗布状況を高精度に検出するためには、半導体ウェーハWの表面上での塗布領域WAの明度が塗り残し領域WBの明度よりも十分に低下している必要がある。このため、塗布領域WAでの反射光L2の反射率が塗り残し領域WBでの反射光L2の反射率よりも十分に低下している必要がある。
【0042】
ここで、塗布領域WAでの反射光L2の反射率は薄膜干渉の影響を受ける。塗布領域WAでの反射光L2の反射率は、以下の
図4から
図8に示すように、反射光L2(照明光L1)の波長、半導体ウェーハWの材質、反射角θ
3、及び保護膜9の膜厚dなどの各種の測定条件によって変化する。
【0043】
図4は、半導体ウェーハWの材質ごとの反射光L2の波長と反射光L2の反射率との関係の一例を示したグラフである。
【0044】
図4に示すように、反射光L2の波長及び半導体ウェーハWの材質[シリンコン(Si)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)]の違いによって、塗布領域WAでの反射光L2の反射率が変化する。
【0045】
図5は、保護膜9の断面拡大図である。
図6は、保護膜9の膜厚dごとの反射光L2の波長と反射光L2の反射率との関係の一例を示したグラフである。
【0046】
図5に示すように、保護膜9の塗布方法であるスピンコートの特性、及び半導体ウェーハWの表面上に形成されている配線パターンの凹凸の影響等によって、保護膜9の膜厚dは均一にはならない。そして、
図6に示すように、反射光L2の波長及び保護膜9の膜厚dの違いによって、塗布領域WAでの反射光L2の反射率が変化する。
【0047】
図7は、半導体ウェーハWの表面上(塗布領域WA上)の位置に応じた反射光L2の反射角θ
3の変化を説明するための説明図である。
図8は、反射光L2の反射角θ
3ごとの反射光L2の波長と反射光L2の反射率との関係の一例を示したグラフである。
【0048】
図7に示すように、照明光学系12は、拡散板14を通して半導体ウェーハWの表面の広範囲を照明光L1で照明するため、半導体ウェーハWの表面上(塗布領域WA上)の位置に応じて照明光L1の入射角θ
1が変化する。このため、半導体ウェーハWの表面上の位置に応じて、検出器18に入射する反射光L2の反射角θ
3が変化する。そして、
図8に示すように、反射光L2の波長及び反射角θ
3の違いによって、塗布領域WAでの反射光L2の反射率が変化する。
【0049】
このように塗布領域WAでの反射光L2の反射率は、反射光L2(照明光L1)の波長、半導体ウェーハWの材質、反射角θ
3、及び膜厚dなどの各種の測定条件によって変化する。このため、既述の
図4、
図6、及び
図8に示すように、照明光L1の照明波長域が狭帯域(単波長を含む)である場合には、測定条件によっては塗布領域WAでの反射光L2の反射率が塗り残し領域WBでの反射光L2の反射率よりも十分に低下しないおそれがある。この場合には塗布領域WAの明度と塗り残し領域WBの明度との差が小さくなり、塗布状況検出部22による保護膜9の塗布状況(塗り残し領域WBの有無)の検出精度が低下するおそれがある。
【0050】
そこで本実施形態では、反射光L2の波長域、すなわち広帯域光源13から出射される照明光L1の照明波長域を調整することで、照明波長域以外の測定条件(半導体ウェーハWの材質、反射角θ3、及び膜厚dなど)に関係なく、塗布領域WAでの反射光L2の反射率を塗り残し領域WBでの反射光L2の反射率よりも十分に低下させる。
【0051】
図9は、広帯域光源13の照明光L1の照明波長域の設定を説明するための説明図であって、保護膜9の膜厚dごとの照明光L1(反射光L2)の波長と反射光L2の反射率との関係の一例を示したグラフである。なお、図中の膜厚d=0μmは保護膜9が塗布されてない半導体ウェーハWを示す。
【0052】
図9に示すように、照明光L1の波長に対する反射光L2の反射率の変化を示す波形(以下、反射率波形という)は略三角関数的な波形となり、膜厚dの大きさに応じて反射率波形の波長が変化する。このため、膜厚dごとに、ある照明光L1の波長では反射光L2の反射率が高くなり、別の照明光L1の波長では反射光L2の反射率が低くなる。従って、照明光L1として照明波長域が例えば400nm乃至1000nmの範囲内に含まれる広帯域光を用いることで、照明光L1の照明波長域に亘って反射光L2の反射率が平均化される。その結果、「膜厚d>0」での反射光L2の反射率を「膜厚d=0」での反射光L2の反射率よりも確実に低下させることができる。
【0053】
そこで本実施形態では、複数の膜厚dに対応する反射率波形の中で波長が最も長くなる反射率波形の1周期分T(1波長分)、すなわち塗布状況を検出可能な膜厚dの最小厚み(
図9では膜厚d=0.5μm)に対応する反射率波形の1周期分Tに亘って反射光L2の反射率が平均化されるように、照明光L1の照明波長域を決定する。具体的には照明光L1の照明波長域を、波長400nm乃至1000nmの範囲内(後述の
図10参照)において1周期分Tに相当する波長帯域幅に設定する。以下、このような条件を満たす照明光L1の照明波長域の決定方法について具体的に説明する。
【0054】
照明光L1の照明波長域は、保護膜9の屈折率と、照明光L1の入射角θ
1(屈折角θ
2)と、保護膜9の膜厚dと、に基づいて定められる。ここで、保護膜9の屈折率を「n」とし、既述の
図2に示した第1反射光L2Aと第2反射光L2Bとの光路差を「a」とした場合に、この光路差aは「a=2ndcosθ
2」で表される。なお、屈折角θ
2は、屈折率n及び入射角θ
1に基づいて定められる。
【0055】
そして、照明光L1の照明波長域の短波長側限界をλLとし、照明光L1の長波長側限界をλHとした場合には、波長λLは光路差aの中に、[(2ndcosθ2)/λL]個だけ含まれる。この状態で波長を長くしていったときに次に波長λHで光路差aと等しくなったと仮定すると、以下の[数1]式の関係が満たされる。
【0056】
【0057】
上記[数1]式は、以下の[数2]式~[数6]式に変形可能であり、最終的に以下の[数7]式に変形される。なお、[数7]式の代わりに[数8]式にも変形可能である。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
図10は、保護膜9の膜厚dの最小厚み(ここではd=0.5μm)に対応した反射光L2の波長と反射光L2の反射率との関係の一例を示したグラフである。
図10に示すように、上記[数7]式([数8]式でも可、以下同じ)は、照明光L1の照明波長域が1周期分T以上の波長帯域幅であれば、膜厚dが最小厚みであっても塗布領域WAでの反射光L2の反射率を低下させて、塗布状況検出部22による保護膜9の塗布状況の検出を実行可能であることを示す。従って、上記[数7]式を満たす照明波長域の照明光L1を出射可能な広帯域光源13を使用する。
【0066】
なお、上述の1周期分Tに亘って反射光L2の反射率が平均化されるように照明光L1の照明波長域を決定する代わりに、半周期分T/2(半波長分)に亘って反射光L2の反射率が平均化されるように照明光L1の照明波長域を決定してもよい。この場合には、上記[数1]式を変形した下記の[数9]式から下記の[数10]式を求め、この[数10]式を満たす広帯域光源13を使用する。なお、[数9]式から[数10]式の代わりに下記の[数11]式を求め、この[数11]式を満たす照明波長域の照明光L1を出射可能な広帯域光源13を使用してもよい。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
なお、複数の半導体ウェーハWの材質(
図4参照)に対応する反射率波形の中で波長が最も長くなる反射率波形の1周期分T又は半周期分T/2に亘って反射光L2の反射率が平均化されるような照明光L1の照明波長域についても同様の方法で決定可能である。また、複数の反射角θ
3(
図8参照)に対応する反射率波形の中で波長が最も長くなる反射率波形の1周期分T又は半周期分T/2に亘って反射光L2の反射率が平均化されるような照明光L1の照明波長域についても同様の方法で決定可能である。
【0071】
さらに、複数の測定条件(例えば半導体ウェーハWの材質、反射角θ3、膜厚d)に対応する反射率波形の中で波長が最も長くなる反射率波形の1周期分T又は半周期分T/2に亘って反射光L2の反射率が平均化されるような照明光L1の照明波長域を決定してもよい。この場合には、上述の測定条件に関係なく、塗布領域WAでの反射光L2の反射率を塗り残し領域WBでの反射光L2の反射率よりも十分に低下させることができる。
【0072】
図11は、本発明の塗布状況検出方法に係る、第1実施形態の塗布状況検出装置10による保護膜9の塗布状況の検出処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
図11に示すように、最初に、複数の測定条件(半導体ウェーハWの材質、反射角θ
3、及び膜厚d)に対応する反射率波形の中で、波長が最も長くなる反射率波形の1周期分T又は半周期分T/2に亘って反射光L2の反射率が平均化されるような照明光L1の照明波長域を決定する(ステップS1)。そして、決定した照明波長域に対応した照明光L1を出射可能な広帯域光源13を塗布状況検出装置10に使用する。なお、広帯域光源13が照明光L1の照明波長域を変更可能である場合には、制御装置20が、ステップS1で決定された照明波長域になるように広帯域光源13を制御する。これにより、塗布状況検出装置10による保護膜9の塗布状況の検出準備が完了する。
【0074】
オペレータによる測定開始操作がなされたり、或いは保護膜9が塗布された半導体ウェーハWが所定の検査位置にセットされたりすると、測定制御部21が、広帯域光源13による照明光L1の出射と(ステップS2)、検出器18による反射光L2の受光及び受光信号の出力と(ステップS3)、を実行させる(本発明の測定ステップに相当)。これにより、検出器18から塗布状況検出部22に対して反射光L2の受光信号が入力される。
【0075】
次いで、塗布状況検出部22が、検出器18から入力された反射光L2の受光信号に基づいて、半導体ウェーハWの表面の明度分布を検出する(ステップS4)。この際に、ステップS1で決定した照明波長域の広帯域光源13を使用することで、この照明波長域に亘って反射光L2の反射率が平均化される。これにより、塗布領域WAで反射された反射光L2の反射率を、薄膜干渉により塗り残し領域WBで反射された反射光L2の反射率よりも十分に低下させることができ、半導体ウェーハWの表面上での塗布領域WAの明度と塗り残し領域WBの明度との差を大きくすることができる。
【0076】
そして、塗布状況検出部22は、半導体ウェーハWの表面の明度分布の検出結果に基づいて、半導体ウェーハWの表面上の保護膜9の塗布状況を検出、すなわち、塗り残し領域WBの有無を検出する(ステップS5、本発明の塗布状況検出ステップに相当)。上述の通り、塗布領域WAの明度と塗り残し領域WBの明度との差を大きくなるように照明光L1の照明波長域を調整しているので、塗布状況検出部22による保護膜9の塗布状況の検出精度を向上させることができる。
【0077】
以上のように第1実施形態の塗布状況検出装置10では、照明光L1として広帯域光を用いることで反射光L2の反射率が平均化されるため、塗布領域WAで反射された反射光L2の反射率を塗り残し領域WBで反射された反射光L2の反射率よりも十分に低下させることができる。その結果、励起光源及び高感度の光電子増倍管を使用したり、或いは赤外光に対応した照明光学系及び検出光学系を使用したりする必要が無くなるので、半導体ウェーハWの表面に塗布された保護膜9の塗布状況の検出を簡単且つ低コストに実行することができる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の塗布状況検出装置10について説明を行う。上記第1実施形態の塗布状況検出装置10では、塗布状況検出部22が半導体ウェーハWの表面の明度分布の検出結果に基づいて半導体ウェーハWの表面上の保護膜9の塗布状況を検出している。これに対して第2実施形態の塗布状況検出装置10では、保護膜9の塗布前後の半導体ウェーハWの表面からの反射光L2に基づいて半導体ウェーハWの表面上の保護膜9の塗布状況を検出する。
【0079】
なお、第2実施形態の塗布状況検出装置10は、制御装置20の測定制御部21及び塗布状況検出部22の機能が一部異なる点を除けば上記第1実施形態の塗布状況検出装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0080】
図12は、本発明の塗布状況検出方法に係る、第2実施形態の塗布状況検出装置10による保護膜9の塗布状況の検出処理の流れを示すフローチャートである。なお、ステップS10の照明光L1の照明波長域の決定については、既述の
図11で説明した第1実施形態と同じであるのでここでは具体的な説明は省略する。
【0081】
最初に、保護膜9の塗布前の半導体ウェーハWが塗布状況検出装置10にセットされる(ステップS11)。この半導体ウェーハWは、製品用ウェーハに限定されずに各種試験用ウェーハを用いてもよい。
【0082】
次いで、測定制御部21が、広帯域光源13による照明光L1の出射(ステップS12)と、検出器18による反射光L2の受光及び受光信号の出力(ステップS13)と、を実行させる(本発明の測定ステップに相当)。これにより、検出器18から塗布状況検出部22に対して反射光L2の受光信号が入力され、塗布状況検出部22が反射光L2の検出信号に基づいて半導体ウェーハWの撮影画像を取得する(ステップS14)。
【0083】
なお、ステップS14で取得された撮影画像を不図示の記憶部(データベースを含む)に記憶させておくことで、測定条件[照明光L1の波長、半導体ウェーハWの材質、入射角θ1(反射角θ3)]が共通であれば、次回以降の保護膜9の塗布状況の検出を行う場合にステップS11からステップS14までの処理を省略可能である。
【0084】
撮影画像の取得が完了すると、保護膜9の塗布後の半導体ウェーハWが塗布状況検出装置10にセットされる(ステップS15)。
【0085】
そして、測定制御部21が、広帯域光源13による照明光L1の出射(ステップS16)と、検出器18による反射光L2の受光及び受光信号の出力(ステップS17)と、を繰り返し実行させる(本発明の測定ステップに相当)。これにより、検出器18から塗布状況検出部22に対して反射光L2の受光信号が入力され、塗布状況検出部22が反射光L2の検出信号に基づいて半導体ウェーハW(塗布領域WA、塗り残し領域WB)の撮影画像を取得する(ステップS18)。
【0086】
塗布状況検出部22は、保護膜9の塗布前後の半導体ウェーハWの撮影画像を取得すると、保護膜9の塗布前後の撮影画像における出力値(画素値)の差分又は比率から半導体ウェーハWの表面上の保護膜9の塗布状況を検出する(ステップS19、ステップS20)。例えば塗布状況検出部22は、撮影画像が8bit画像である場合には、下記の[数12]式により比率を演算する。そして、塗布状況検出部22は、比率の演算結果が予め定めた閾値[例えば248(255の97%)]以上となるか否かに基づいて、半導体ウェーハWの表面上の保護膜9の塗布状況を検出する。
【0087】
【0088】
以上のように第2実施形態においても、ステップS10で決定した照明波長域の広帯域光源13を使用することで、この照明波長域に亘って反射光L2の反射率が平均化されるため、塗布領域WAで反射された反射光L2の反射率を塗り残し領域WBで反射された反射光L2の反射率よりも十分に低下させることができる。その結果、塗り残し領域WBの有無が上記の比率の演算結果に明確に反映されるので、塗布状況検出部22による保護膜9の塗布状況の検出精度を向上させることができる。これにより、第2実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0089】
[第3実施形態]
図13は、第3実施形態の塗布状況検出装置10の概略図である。上記各実施形態の塗布状況検出装置10では、斜め方向から半導体ウェーハWの表面を照明光L1で照明すると共に、半導体ウェーハWの表面から斜め方向に反射された反射光L2を検出器18で受光している。これに対して
図13に示すように、第3実施形態の塗布状況検出装置10では同軸落射照明方式を採用している。なお、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0090】
第3実施形態の塗布状況検出装置10は、照明光学系12A及び検出光学系16Aと、ビームスプリッタ32と、制御装置20と、を備える。
【0091】
照明光学系12Aは、法線Hに対して垂直な照明光軸O1Aを有しており、ビームスプリッタ32に向けて照明光L1を出射する。この照明光学系12Aは、照明光軸O1Aに沿って配置された広帯域光源13とレンズ30とを備える。
【0092】
広帯域光源13は、上記各実施形態と同様に照明光L1を出射する。この際に、照明光L1の照明波長域は上記第1実施形態と同様の方法で決定される。これにより、広帯域光源13から出射された照明光L1は、レンズ30を通してビームスプリッタ32に入射する。
【0093】
ビームスプリッタ32は、照明光軸O1Aと、後述の検出光学系16Aの検出光軸O2Aとの交点に配置されている。ビームスプリッタ32は、照明光学系12Aから入射した照明光L1の一部を半導体ウェーハWの表面に向けて反射する。これにより、半導体ウェーハWの表面に対して照明光L1が垂直入射する。また、ビームスプリッタ32は、半導体ウェーハWの表面にて反射された反射光L2の一部を透過して検出光学系16Aへ出射する。
【0094】
検出光学系16Aは、法線Hに対して平行な検出光軸O2Aを有しており、この検出光軸O2Aに沿って配置されたレンズ17及び検出器18を含む。検出器18は、ビームスプリッタ32からレンズ17を通して入射した反射光L2を受光して受光信号を制御装置20へ出力する。
【0095】
第3実施形態の制御装置20は、上記各実施形態の制御装置20と同じ構成であり、測定制御部21及び塗布状況検出部22として機能する。これにより、上記各実施形態と同様に、測定制御部21による広帯域光源13及び検出器18の動作制御と、塗布状況検出部22による保護膜9の塗布状況の検出と、が実行される。これにより、第3実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0096】
なお、第3実施形態で説明した同軸落射照明方式は検出光学系16Aの視野中央部を拡大観察するのに適しているため、広範囲な半導体ウェーハWの表面の保護膜9の塗布状況の検出を行う場合には、上記各実施形態で説明した斜め照明方式を採用することが好ましい。
【0097】
[第4実施形態]
図14は、第4実施形態の塗布状況検出装置10の概略図である。
図14に示すように、第4実施形態の塗布状況検出装置10はリング照明方式を採用している。なお、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0098】
第4実施形態の塗布状況検出装置10は、リング照明光源12B及び検出光学系16Bと、制御装置20と、を備える。
【0099】
リング照明光源12Bは、半導体ウェーハWの表面の上方側に配置されており、リング状の照明光L1を出射する。これにより、リング照明光源12Bからの照明光L1が半導体ウェーハWの表面に入射し、半導体ウェーハWの表面にて反射された反射光L2の一部がリング照明光源12Bの中央空間領域を通過して検出光学系16Bに入射する。
【0100】
検出光学系16Bは、既述の第3実施形態の検出光学系16Aと同様に法線Hに対して平行な検出光軸O2Bを有しており、この検出光軸O2Bに沿って配置されたレンズ17及び検出器18を含む。検出器18は、レンズ17を通して入射した反射光L2を受光して受光信号を制御装置20へ出力する。
【0101】
第4実施形態の制御装置20は、上記各実施形態の制御装置20と同じ構成であり、測定制御部21及び塗布状況検出部22として機能する。これにより、上記各実施形態と同様に、測定制御部21による広帯域光源13及び検出器18の動作制御と、塗布状況検出部22による保護膜9の塗布状況の検出と、が実行される。これにより、第4実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0102】
なお、リング照明方式は、上記第1実施形態及び第2実施形態で説明した斜め照明方式と同様に半導体ウェーハWの表面の広範囲を照明可能ではあるが、視野中央部は照明光L1が正反射されないので上記第1実施形態及び第2実施形態よりも保護膜9の塗布状況の検出精度が低下するおそれがある。このため、上記第1実施形態及び第2実施形態で説明した斜め照明方式を採用することが好ましい。
【0103】
[その他]
上記各実施形態では、半導体ウェーハWの表面上に塗布された保護膜9の塗布状況を検出する塗布状況検出装置10を例に挙げて説明したが、各種の被加工物に塗布された各種保護膜の塗布状況を検出する塗布状況検出装置にも本発明を適用可能である。
【0104】
[実施例及び比較例]
以下、本発明の実施例1~10及び比較例を示し、照明光L1として広帯域光を用いることで、塗布領域WAで反射された反射光L2の反射率が塗り残し領域WBで反射された反射光L2の反射率よりも低下することを説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0105】
<実施例1>
図15は、複数の膜厚d及び複数の反射角θ
3の組み合わせ(計55パターン)ごとに、照明光L1の照明波長域と反射光L2の低下率との関係を計算した実施例1のグラフである。
【0106】
図15に示すように、11種類の膜厚d(900nm、920nm、940nm、960nm、980nm、1000nm、1020nm、1040nm、1060nm、1080nm、1010nm)と、5種類の反射角θ
3(10°、20°、30°、40°、50°)と、の計55パターン(=11×5)の組み合わせの半導体ウェーハWを想定した。そして、個々の組み合わせにおいて、照明光L1の照明波長域の短波長側限界λ
Lを500nmに固定した状態で長波長側限界λ
Hを段階的に大きくしながら各段階での反射光L2の低下率を計算した。なお、低下率0%は、保護膜9が塗布されていない半導体ウェーハW等の表面で反射された反射光L2の低下率を示す(以下、同じ)。
【0107】
長波長側限界λHを段階的に大きくすること、すなわち、照明光L1の照明波長域を段階的に広げるほど、この照明波長域に亘る反射光L2の反射率の平均化によって、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の反射率が低下することが確認された。
【0108】
<実施例2>
図16は、複数の膜厚d及び複数の反射角θ
3の組み合わせ(計55パターン)ごとに、照明光L1の照明波長域と反射光L2の低下率との関係を計算した実施例2のグラフである。
【0109】
図16に示すように、実施例1と同様に、11種類の膜厚dと、5種類の反射角θ
3と、の計55パターン(=11×5)の組み合わせの半導体ウェーハWを想定した。そして、個々の組み合わせにおいて、照明光L1の照明波長域の長波長側限界λ
Hを600nmに固定した状態で短波長側限界λ
Lを段階的に小さくしながら各段階での反射光L2の低下率を計算した。なお、
図16中の矢印A1は上記[数7]式を満たす範囲を示し、矢印A2は上記[数10]式([数11]式でも可、以下同じ)を満たす範囲を示す。
【0110】
短波長側限界λLを段階的に小さくすること、すなわち、照明光L1の照明波長域を段階的に広げるほど、この照明波長域に亘る反射光L2の反射率の平均化によって、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の反射率が低下することが確認された。特に矢印A1、A2に示す照明波長域では、反射光L2の反射率が十分に低下することが確認された。また、矢印A1に示す照明波長域では矢印A2に示す照明波長域よりも反射光L2の反射率が低下することが確認された。
【0111】
<実施例3>
図17は、複数の膜厚d及び複数の反射角θ
3の組み合わせ(計55パターン)ごとに、照明光L1の照明波長域と反射光L2の低下率との関係を計算した実施例3のグラフである。
【0112】
図17に示すように、実施例1と同様に、11種類の膜厚dと、5種類の反射角θ
3と、の計55パターン(=11×5)の組み合わせの半導体ウェーハWを想定した。そして、個々の組み合わせにおいて、7種類の照明光L1の照明波長域ごとの反射光L2の低下率を計算した。ここで7種類の照明波長域のパターンは、長波長側限界λ
Hを1000nmから400nmまで100nmずつ段階的に変化させて、個々の長波長側限界λ
Hごとに下記の[数13]式を満たす短波長側限界λ
Lを設定したものである。
【0113】
【0114】
照明光L1の照明波長域を上記[数13]式、すなわち上記[数10]式を満たす範囲に設定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の反射率が低下することが確認された。
【0115】
<実施例4>
図18は、複数の膜厚d及び複数の反射角θ
3の組み合わせ(計55パターン)ごとに、照明光L1の照明波長域と反射光L2の低下率との関係を計算した実施例4のグラフである。
【0116】
図18に示すように、実施例1と同様に、11種類の膜厚dと、5種類の反射角θ
3と、の計55パターン(=11×5)の組み合わせの半導体ウェーハWを想定した。そして、個々の組み合わせにおいて、7種類の照明光L1の照明波長域ごとの反射光L2の低下率を計算した。ここで7種類の照明波長域のパターンは、ここで、7種類の照明波長域のパターンは、長波長側限界λ
Hを1000nmから400nmまで100nmずつ段階的に変化させて、個々の長波長側限界λ
Hごとに下記の[数14]式を満たす短波長側限界λ
Lを設定したものである。
【0117】
【0118】
照明光L1の照明波長域を上記[数14]式、すなわち上記[数7]式を満たす範囲に設定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の反射率が低下することが確認された。さらに、実施例4では、実施例3よりも反射光L2の反射率が低下することが確認された。
【0119】
<実施例5>
図19は、アルミニウム製の半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の膜厚dごとに、照明光L1の波長と反射光L2の反射率との関係を計算した実施例5のグラフである。
図19に示すように、4種類の膜厚d(0μm、0.5μm、1μm、1.5μm)の半導体ウェーハWを想定した。そして、第3実施形態の塗布状況検出装置10のような同軸落射照明方式により4種類の半導体ウェーハWごとに照明光L1の波長(350nmから1000nm)と反射光L2の反射率との関係を計算した。
【0120】
なお、
図19中の「照明波長域a」は、屈折率n=1.5、入射角θ
1=0°、及び膜厚d≧0.5μmの条件で上記[数7]式を最低限満たす波長域である。なお、上記[数7]式の屈折角θ
2は、屈折率n及び入射角θ
1に基づいて定められる。また、
図19中の「照明波長域b」及び「照明波長域c」は、上記条件で余裕をもって上記[数7]式を満たす波長域である。
【0121】
図20は、
図19に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光L1を使用した場合の反射光L2の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
図20に示すように、上記[数7]式を満たすように照明光L1の照明波長域を決定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。さらに、照明光L1の照明波長域が広くなるほど、反射光L2の反射率の平均化によって、反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。
【0122】
<実施例6>
図21は、アルミニウム製の半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の膜厚dごとに、照明光L1の波長と反射光L2の反射率との関係を計算した実施例6のグラフである。
図21に示すように、実施例5と同様に4種類の膜厚d(0μm、0.5μm、1μm、1.5μm)の半導体ウェーハWを想定した。そして、第1実施形態又は第2実施形態の塗布状況検出装置10のような斜め照明方式により4種類の半導体ウェーハWごとに照明光L1の波長(350nmから1000nm)と反射光L2の反射率との関係を計算した。
【0123】
なお、
図21中の「照明波長域a」は、屈折率n=1.5、入射角θ
1=45°、及び膜厚d≧0.5μmの条件で上記[数7]式を最低限満たす波長域である。また、
図21中の「照明波長域b」及び「照明波長域c」は、上記条件で余裕をもって上記[数7]式を満たす波長域である。
【0124】
図22は、
図21に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光L1を使用した場合の反射光L2の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
図22に示すように、上記[数7]式を満たすように照明光L1の照明波長域を決定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。さらに、照明光L1の照明波長域が広くなるほど、反射光L2の反射率の平均化によって、反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。
【0125】
<実施例7>
図23は、銅製の半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の膜厚dごとに、照明光L1の波長と反射光L2の反射率との関係を計算した実施例7のグラフである。
図23に示すように、半導体ウェーハWの材質が銅である点以外は既述の実施例5(同軸落射照明方式)と同様に反射光L2の反射率を計算した。なお、
図23中の「照明波長域a」~「照明波長域c」は、屈折率n(銅)以外は実施例5と同じ条件で上記[数7]式を満たす波長域である。
【0126】
図24は、
図23に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光L1を使用した場合の反射光L2の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
図24に示すように、上記[数7]式を満たすように照明光L1の照明波長域を決定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。さらに、照明光L1の照明波長域が広くなるほど、反射光L2の反射率の平均化によって、反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。
【0127】
<実施例8>
図25は、銅製の半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の膜厚dごとに、照明光L1の波長と反射光L2の反射率との関係を計算した実施例8のグラフである。
図25に示すように、半導体ウェーハWの材質が銅である点以外は既述の実施例6(斜め照明方式)と同様に反射光L2の反射率を計算した。なお、
図25中の「照明波長域a」~「照明波長域c」は、屈折率n(銅)以外は実施例6と同じ条件で上記[数7]式を満たす波長域である。
【0128】
図26は、
図25に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光L1を使用した場合の反射光L2の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
図26に示すように、上記[数7]式を満たすように照明光L1の照明波長域を決定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。さらに、照明光L1の照明波長域が広くなるほど、反射光L2の反射率の平均化によって、反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。
【0129】
<実施例9>
図27は、シリコン製の半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の膜厚dごとに、照明光L1の波長と反射光L2の反射率との関係を計算した実施例9のグラフである。
図27に示すように、半導体ウェーハWの材質がシリコンである点以外は既述の実施例5(同軸落射照明方式)と同様に反射光L2の反射率を計算した。なお、
図27中の「照明波長域a」~「照明波長域c」は、屈折率n(シリンコン)以外は実施例5と同じ条件で上記[数7]式を満たす波長域である。
【0130】
図28は、
図27に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光L1を使用した場合の反射光L2の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
図28に示すように、上記[数7]式を満たすように照明光L1の照明波長域を決定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。さらに、照明光L1の照明波長域が広くなるほど、反射光L2の反射率の平均化によって、反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。
【0131】
<実施例10>
図29は、シリコン製の半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の膜厚dごとに、照明光L1の波長と反射光L2の反射率との関係を計算した実施例10のグラフである。
図29に示すように、半導体ウェーハWの材質がシリコンである点以外は既述の実施例6(斜め照明方式)と同様に反射光L2の反射率を計算した。なお、
図29中の「照明波長域a」~「照明波長域c」は、屈折率n(シリコン)以外は実施例6と同じ条件で上記[数7]式を満たす波長域である。
【0132】
図30は、
図29に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域a」~「照明波長域c」の照明光L1を使用した場合の反射光L2の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。
図30に示すように、上記[数7]式を満たすように照明光L1の照明波長域を決定することで、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。さらに、照明光L1の照明波長域が広くなるほど、反射光L2の反射率の平均化によって、反射光L2の平均反射率が低下(低下率が増加)することが確認された。
【0133】
<比較例>
図31は、既述の実施例5と同様に、アルミニウム製の半導体ウェーハWの表面上に形成された保護膜9の膜厚dごとに、照明光L1の波長と反射光L2の反射率との関係を計算した比較例のグラフである。なお、
図31中に示す「照明波長域d」、「照明波長域e」、及び「照明波長域f」は、屈折率n=1.5、入射角θ
1=0°、及び膜厚d≧0.5μmの条件でその一部が上記[数7]式又は上記[数10]式を満たさない波長域である。
【0134】
図32は、
図31に示した4種類の膜厚dごとに、「照明波長域d」~「照明波長域f」の照明光L1を使用した場合の反射光L2の平均反射率及び低下率の計算結果を示した表である。なお、
図32中の枠FR1は上記[数7]式を満たすものを示し、枠FR2は上記[数7]式を満たさないが上記[数10]式を満たすものを示し、枠FR3は上記[数10]式を満たさないものを示す。
図32に示すように、上記[数10]式を満たさないように照明光L1の照明波長域を決定した場合には(枠FR3参照)、上記[数7]式又は上記[数10]式を満たすように照明光L1の照明波長域を決定した場合(枠FR1、FR2参照)と比較して、塗布領域WA(保護膜9)での反射光L2の平均反射率の低下が抑えられる、すなわち反射光L2の低下率が少なくなることが確認された。
【符号の説明】
【0135】
9…保護膜
10…塗布状況検出装置
12…照明光学系
12A…照明光学系
12B…リング照明光源
13…広帯域光源
14…拡散板
16…検出光学系
16A…検出光学系
16B…検出光学系
17…レンズ
18…検出器
20…制御装置
21…測定制御部
22…塗布状況検出部
30…レンズ
32…ビームスプリッタ
L1…照明光
L2…反射光
L2A…第1反射光
L2B…第2反射光
O1…照明光軸
O1A…照明光軸
O2…検出光軸
O2A…検出光軸
O2B…検出光軸
W…半導体ウェーハ
WA…塗布領域
WB…塗り残し領域
a…光路差
d…膜厚
n…屈折率
θ1…入射角
θ2…屈折角
θ3…反射角
λH…長波長側限界
λL…短波長側限界