(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】側圧試験装置、型枠、及び、側圧測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N33/38
(21)【出願番号】P 2021116533
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2024-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真司
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107478812(CN,A)
【文献】特開2015-098737(JP,A)
【文献】特開2021-031360(JP,A)
【文献】特開平04-238245(JP,A)
【文献】実開昭56-137048(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0007695(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリートから型枠に作用する側圧を測定するための側圧試験装置であって、
底板部と、該底板部の上方に立設され、内部空間を形成する筒状の側壁部と、から構成される型枠と、
前記内部空間に収容可能に構成され、前記フレッシュコンクリートの密度よりも大きい密度を有する少なくとも一つの錘と、
前記側壁部に配置され、前記フレッシュコンクリートから前記型枠に作用する側圧を測定する少なくとも一つの圧力計と、を備え、
前記側壁部は、前記フレッシュコンクリートを前記内部空間に収容可能に形成された第一領域と、該第一領域の上方に連続して形成されるとともに、前記錘を前記内部空間に収容可能に形成された第二領域と、を備え、
前記第二領域は、前記内部空間を側方に開放する側壁開放部を備えるとともに、該側壁開放部から前記内部空間に前記フレッシュコンクリート及び前記錘を投入可能に構成される、
側圧試験装置。
【請求項2】
さらに、前記側壁開放部を閉塞するシャッター材を備える、請求項1に記載の側圧試験装置。
【請求項3】
前記圧力計は、前記底板部から上方に10cm以上30cm以下離間して配置される、請求項1又は2に記載の側圧試験装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載の側圧試験装置に用いられる型枠であって、
底板部と、該底板部の上方に立設され、内部空間を形成する筒状の側壁部と、から構成され、
前記側壁部は、フレッシュコンクリートを前記内部空間に収容可能に形成された第一領域と、該第一領域の上方に連続して形成されるとともに、錘を前記内部空間に収容可能に形成された第二領域と、を備え、
前記第二領域は、前記内部空間を側方に開放する側壁開放部を備える、
型枠。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一つに記載の側圧試験装置を用いて、フレッシュコンクリートから型枠に作用する側圧を測定する側圧測定方法であって、
前記フレッシュコンクリートを前記側壁開放部から前記型枠の内部空間に投入し、少なくとも前記圧力計を覆う高さまで打込む打込工程と、
前記打込工程後、前記錘を前記側壁開放部から前記型枠の内部空間に投入し、前記フレッシュコンクリート上に載荷する載荷工程と、
前記打込工程及び前記載荷工程と並行して、前記圧力計を用いて、前記フレッシュコンクリートから前記型枠に作用する側圧を測定する側圧測定工程と、を備える、
側圧測定方法。
【請求項6】
前記打込工程において、前記フレッシュコンクリートを層状に重ねて打込む、請求項5に記載の側圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側圧試験装置、該側圧試験装置に用いられる型枠、及び、該側圧試験装置を用いた側圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレッシュコンクリートが型枠内に打ち込まれると、フレッシュコンクリートによる圧力(側圧)が型枠に作用する。この側圧を考慮して型枠を設計しなければ、打ち込み中に型枠が変形あるいは破損し、フレッシュコンクリートが流出する事故につながる虞がある。特に、近年、生産性向上の観点から、流動性を高めたコンクリートの検討が進められているが、このようなコンクリートでは、より側圧が大きくなる傾向にある。
【0003】
従来、側圧の算定方法としては、フレッシュコンクリートを液体とみなし、側圧を液圧(液体の密度×重力加速度×深さ)として算定する方法がある。液圧は、実際の側圧よりも大きくなるため、この方法で算定された側圧に基づき設計された型枠は、変形や破損等が生じにくく最も安全であるものの、必要以上の補強を行うことで型枠コストが高くなってしまう。そこで、事前の予備実験(以下、側圧試験と記す)で側圧を測定し、その結果に基づき型枠を設計することが行われている。例えば、非特許文献1では、実物大の型枠を組み立てて、実際の工事を模擬した方法でフレッシュコンクリートを打ち込み、側圧を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】河井徹,黒田泰弘,武川芳廣「低発熱セメントを用いた高流動コンクリートの諸性質に関する実験的研究」,土木学会論文集,公益社団法人土木学会、No.462/VI-18,p.111-120、1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1のように実際の工事を模擬して型枠を組み立てた場合、側圧が大きくなるような打上がり高さが大きい部材では、型枠の高さも大きくなる。このような型枠は、組み立てが大掛かりなものとなるため、その準備に時間と労力を要するだけでなく、フレッシュコンクリートの打ち込みを最上部から行うために、ホッパー、クレーン等の設備が必要になる。また、フレッシュコンクリートの打設量が多いと、フレッシュコンクリートの材料を準備し、製造するために時間と労力を要する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、側圧試験の作業効率を向上させることができる側圧試験装置、型枠、及び、側圧測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る側圧試験装置は、フレッシュコンクリートから型枠に作用する側圧を測定するための側圧試験装置であって、底板部と、該底板部の上方に立設され、内部空間を形成する筒状の側壁部と、から構成される型枠と、前記内部空間に収容可能に構成され、前記フレッシュコンクリートの密度よりも大きい密度を有する少なくとも一つの錘と、前記側壁部に配置され、前記フレッシュコンクリートから前記型枠に作用する側圧を測定する少なくとも一つの圧力計と、を備え、前記側壁部は、前記フレッシュコンクリートを前記内部空間に収容可能に形成された第一領域と、該第一領域の上方に連続して形成されるとともに、前記錘を前記内部空間に収容可能に形成された第二領域と、を備え、前記第二領域は、前記内部空間を側方に開放する側壁開放部を備えるとともに、該側壁開放部から前記内部空間に前記フレッシュコンクリート及び前記錘を投入可能に構成される。
【0008】
前記側圧試験装置は、フレッシュコンクリートが収容される第一領域の上方に、前記フレッシュコンクリートの密度よりも大きい密度を有する錘が収容される第二領域を備えるため、前記内部空間にフレッシュコンクリートのみが収容される場合に比べて、型枠全体の高さを低くすることができる。このように型枠を小型化することにより、該型枠の組立てに要する時間と労力を削減することができる。また、フレッシュコンクリートの打設量を減らすことができるため、フレッシュコンクリートの材料の準備と製造に要する時間と労力を削減することができる。さらに、前記第二領域は、前記内部空間を側方に開放する側壁開放部を備えるとともに、該側壁開放部から前記内部空間に前記フレッシュコンクリート及び前記錘を投入可能に構成されることにより、前記フレッシュコンクリート及び前記錘の投入を型枠の最上部から行う必要がなくなり、ホッパー、クレーン等の設備が不要となる。その結果、側圧試験の作業効率を向上させることができる。
【0009】
本発明に係る側圧試験装置は、さらに、前記側壁開放部を閉塞するシャッター材を備えていてもよい。
【0010】
前記側圧試験装置は、斯かる構成により、内部空間に収容された錘が側壁開放部から側壁部の外側に落下することを防止することができる。
【0011】
本発明に係る側圧試験装置は、前記圧力計が、前記底板部から上方に10cm以上30cm以下離間して配置されていてもよい。
【0012】
前記側圧試験装置は、斯かる構成により、底板部とフレッシュコンクリートとの間の摩擦による影響を受けにくくし、より正確な側圧を測定することができる。
【0013】
本発明に係る型枠は、側圧試験装置に用いられる型枠であって、底板部と、該底板部の上方に立設され、内部空間を形成する筒状の側壁部と、から構成され、前記側壁部は、フレッシュコンクリートを前記内部空間に収容可能に形成された第一領域と、該第一領域の上方に連続して形成されるとともに、錘を前記内部空間に収容可能に形成された第二領域と、を備え、前記第二領域は、前記内部空間を側方に開放する側壁開放部を備える。
【0014】
前記型枠は、前記第二領域が、前記内部空間を側方に開放する側壁開放部を備えるとともに、該側壁開放部から前記内部空間にフレッシュコンクリート及び錘を投入可能に構成されることにより、前記フレッシュコンクリート及び前記錘の投入を型枠の最上部から行う必要がなくなり、ホッパー、クレーン等の設備が不要となる。その結果、側圧試験の作業効率を向上させることができる。
【0015】
本発明に係る側圧測定方法は、上述の側圧試験装置を用いて、フレッシュコンクリートから型枠に作用する側圧を測定する側圧測定方法であって、前記フレッシュコンクリートを前記側壁開放部から前記型枠の内部空間に投入し、少なくとも前記圧力計を覆う高さまで打込む打込工程と、前記打込工程後、前記錘を前記側壁開放部から前記型枠の内部空間に投入し、前記フレッシュコンクリート上に載荷する載荷工程と、前記打込工程及び前記載荷工程と並行して、前記圧力計を用いて、前記フレッシュコンクリートから前記型枠に作用する側圧を測定する側圧測定工程と、を備える。
【0016】
前記側圧測定方法は、前記側壁開放部から前記内部空間に前記フレッシュコンクリート及び前記錘を投入することにより、前記フレッシュコンクリート及び前記錘の投入を型枠の最上部から行う必要がなくなり、ホッパー、クレーン等の設備が不要となる。また、フレッシュコンクリート上に前記フレッシュコンクリートの密度よりも大きい密度を有する錘を載荷することにより、前記内部空間にフレッシュコンクリートのみを収容する場合に比べて、型枠全体の高さを低くすることができる。このように型枠を小型化することにより、該型枠の組立てに要する時間と労力を削減することができる。また、フレッシュコンクリートの打設量を減らすことができるため、フレッシュコンクリートの材料の準備と製造に要する時間と労力を削減することができる。その結果、側圧試験の作業効率を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る側圧測定方法は、前記打込工程において、前記フレッシュコンクリートを層状に重ねて打込む打込み方法を採用してもよい。
【0018】
前記側圧測定方法は、斯かる構成により、実際の工事で採用されている打込み方法で側圧を測定することが可能となり、より正確な側圧を測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、側圧試験の作業効率を向上させることができる側圧試験装置、型枠、及び、側圧測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る側圧試験装置1の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る側圧試験装置1の使用状態を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図2の側圧試験装置1のIII-III断面を示した断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の側圧試験装置1を用いて側圧を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態に係る側圧試験装置1、型枠2、及び、側圧測定方法について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の図面において同一又は相当する部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0022】
<側圧試験装置及び型枠>
以下、本実施形態に係る側圧試験装置1、及び、型枠2について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る側圧試験装置1の斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る側圧試験装置1の使用状態を示す正面図である。
図3は、
図2の側圧試験装置1のIII-III断面を示した断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る側圧試験装置1は、底板部21と側壁部22とから構成される型枠2と、型枠2の内部空間Rに収容可能に構成される錘3と、型枠2の側壁部22に配置される圧力計4と、を備える。
【0023】
まず、型枠2について説明する。本実施形態に係る型枠2は、底板部21と、底板部21の上方に立設され、内部空間Rを形成する筒状の側壁部22と、から構成される。すなわち、側壁部22は上下方向(
図2中のZ方向)に延びるように配置され、側壁部22の下方に底板部21が設けられる。
【0024】
底板部21は、上面視が四角形状の平板状に形成される。上面視において、底板部21は、側壁部22が立設された位置よりも外周側に延設された延出部21aを有する。該延出部21aには、補強材7(後述)を取り付けることができる。なお、上面視とは、上下方向(
図2中のZ方向)の上方から見た状態を意味する。
【0025】
底板部21の下方には、台座6が設けられている。台座6は、例えば、ボルト、ナット等の固定部材により底板部21に固定される。台座6は、例えば、パレット等のフォークリフトのフォークを差込み可能な空間が形成されたフォーク差込み部61を有する。台座6がフォーク差込み部61を有することにより、型枠2を組み立てた後であっても、フォークリフトやハンドリフトで容易に型枠2を移動することが可能となり、側圧試験の作業効率をより向上させることができる。
【0026】
側壁部22は、4枚の側板23から構成される。具体的には、4枚の側板23が固定部材24で連結されて、上面視が四角形状である筒状に形成される。側壁部22の下側端部は、固定部材24により底板部21に固定され、上方が解放した内部空間Rが形成される。
【0027】
側壁部22は、フレッシュコンクリートを内部空間Rに収容可能に形成された第一領域22aと、第一領域22aの上方に連続して形成されるとともに、錘3(後述)を内部空間Rに収容可能に形成された第二領域22bと、を備える。第一領域22aは、4枚の側板23から構成され、上面視が四角形状である筒状に形成される。これにより、第一領域22aは、内部空間Rにフレッシュコンクリートを収容可能になる。
【0028】
第二領域22bは、3枚の側板23から構成され、内部空間Rを側方に開放する側壁開放部25を備える。具体的には、第二領域22bは、第一領域22aを構成する4枚の側板23のうち、3枚の側板23が上方に連続して延びることにより構成され、1枚の側板23が配置されていないことにより、側壁開放部25を形成している。すなわち、側壁部22は、底板部21からの高さが等しい3枚の側板23と、該3枚の側板23よりも高さが低い1枚の側板23とから構成されることにより、第二領域22bに側壁開放部25が形成される。これにより、第二領域22bは、内部空間Rに錘3(後述)を収容可能になるとともに、側壁開放部25から内部空間Rにフレッシュコンクリート及び錘3を投入可能になる。
【0029】
次に、錘3について説明する。錘3は、フレッシュコンクリートの密度よりも大きい密度を有する。このような錘3の材質としては、例えば、鋼、青銅、黄銅等が挙げられる。また、錘3は、錘3を移動させる作業者の負担を軽減し、錘3の投入作業を効率的に行う観点から、複数の平板状の錘31によって構成される。なお、平板状の錘31の厚みは、適宜変更することができる。
【0030】
平板状の錘31は、フレッシュコンクリートに対して均一に重みを加える観点から、上面視において四角形状に形成され、厚み方向が上下方向(
図1中のZ方向)となる向きで、側壁開放部25から内部空間Rに投入されることにより、層状に収容される。内部空間Rに収容された平板状の錘31は、フレッシュコンクリートに対して確実に重みを加える観点から、上面視において、側壁部22の内壁から1.5mm以上2.5mm以下離間して収容されることが好ましい。すなわち、上面視において、平板状の錘31の大きさは、側壁部22の内壁によって形成される四角形状の大きさよりも小さい。
【0031】
続いて、圧力計4について説明する。圧力計4は、側壁部22に配置され、フレッシュコンクリートから型枠2に作用する側圧を測定する。より詳しくは、圧力計4は、側壁部22の第一領域22aに配置される。また、圧力計4は、底板部21とフレッシュコンクリートとの間の摩擦による影響を受けにくくし、より正確な側圧を測定する観点から、底板部21から上方に10cm以上30cm以下離間して配置されることが好ましい。圧力計4としては、特に限定されず、例えば、土圧計等の従来公知の圧力計を用いることができる。
【0032】
側圧試験装置1は、側壁開放部25を閉塞可能に構成されるシャッター材5を備える。シャッター材5は、複数の平板部材51から構成される。該平板部材51は、平面視において、長手方向及び幅方向を有する四角形状であり、幅方向が上下方向(
図2中のZ方向)となる向きで、型枠2に取り付けられる。具体的には、型枠2は、側壁開放部25の上下方向に沿って延びる一対の端部に溝を形成するガイド部26を有し、複数の平板部材51は、該ガイド部26の溝に沿って上方から下方に向かって挿入される。これにより、側壁開放部25を閉塞可能になる。
【0033】
側圧試験装置1は、型枠2の転倒防止の観点から、型枠2を支持する補強材7を備える。補強材7は、側壁部22の側面に沿って上下方向に延びるとともに、該側壁部22に固定される側壁固定部71と、一方の端部が側壁固定部71の下側端部に接続され、底板部21の上面に沿って平面方向(
図1中のXY平面に沿う方向)に延びるとともに、該底板部21に固定される底板固定部72と、側壁固定部71の上側端部と底板固定部72の他方の端部とを接続する補強部73と、を備える。すなわち、補強材7は、側面視において、側壁固定部71と、底板固定部72と、補強部73と、により直角三角形状を有する。補強材7は、安全性をより向上させる観点から、側壁部22の4つの角部にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る側圧試験装置1は、フレッシュコンクリートが収容される第一領域22aの上方に、フレッシュコンクリートの密度よりも大きい密度を有する錘3が収容される第二領域22bを備えるため、内部空間Rにフレッシュコンクリートのみが収容される場合に比べて、型枠2の全体の高さを低くすることができる。このように型枠2を小型化することにより、型枠2の組み立てに要する時間と労力を削減することができる。また、フレッシュコンクリートの打設量を減らすことができるため、フレッシュコンクリートの材料の準備と製造に要する時間と労力を削減することができる。さらに、第二領域22bは、内部空間Rを側方に開放する側壁開放部25を備えるとともに、側壁開放部25から内部空間Rにフレッシュコンクリート及び錘3を投入可能に構成されることにより、フレッシュコンクリート及び錘3の投入を型枠2の最上部から行う必要がなくなり、ホッパー、クレーン等の設備が不要となる。その結果、側圧試験の作業効率を向上させることができる。
【0035】
本実施形態に係る側圧試験装置1は、さらに、側壁開放部25を閉塞するシャッター材5を備えることにより、内部空間Rに収容された錘3が側壁開放部25から側壁部22の外側に落下することを防止することができる。
【0036】
本実施形態に係る側圧試験装置1は、圧力計4が、底板部21から上方に10cm以上30cm以下離間して配置されることにより、底板部21とフレッシュコンクリートとの間の摩擦による影響を受けにくくし、より正確な側圧を測定することができる。
【0037】
本実施形態に係る型枠2は、第二領域22bが、内部空間Rを側方に開放する側壁開放部25を備えるとともに、側壁開放部25から内部空間Rにフレッシュコンクリート及び錘3を投入可能に構成されることにより、フレッシュコンクリート及び錘3の投入を型枠2の最上部から行う必要がなくなり、ホッパー、クレーン等の設備が不要となる。その結果、側圧試験の作業効率を向上させることができる。
【0038】
<側圧測定方法>
本実施形態に係る側圧測定方法は、上述の側圧試験装置1を用いて、フレッシュコンクリートから型枠2に作用する側圧を測定する側圧測定方法である。前記側圧測定方法は、フレッシュコンクリートを側壁開放部25から型枠2の内部空間Rに投入し、少なくとも圧力計4を覆う高さまで打込む打込工程と、前記打込工程後、錘3を側壁開放部25から型枠2の内部空間Rに投入し、フレッシュコンクリート上に載荷する載荷工程と、前記打込工程及び前記載荷工程と並行して、圧力計4を用いて、フレッシュコンクリートから型枠2に作用する側圧を測定する側圧測定工程と、を備える。以下、各工程について具体的に説明する。
【0039】
前記打込工程では、まず、フレッシュコンクリートを側壁開放部25から型枠2の内部空間Rに投入し、圧力計4の下端まで打込むことにより、下地層81を形成する。その後、所定時間経過後、フレッシュコンクリートを側壁開放部25から型枠2の内部空間Rにさらに投入し、少なくとも圧力計4を覆う高さまで打ち込み、フレッシュコンクリート層82を形成する。フレッシュコンクリート層82を形成する際、フレッシュコンクリートは、錘3との間の摩擦による影響を受けにくくし、より正確な側圧を測定する観点から、圧力計4から上方に10cm以上離間した高さまで打ち込むことが好ましい。フレッシュコンクリート層82の下方に下地層81を形成することにより、底板部21と、フレッシュコンクリート層82におけるフレッシュコンクリートとの間の摩擦による影響を受けにくくするため、より正確な側圧を測定することができる。
【0040】
前記打込工程は、より正確な側圧を測定する観点から、フレッシュコンクリートを層状に重ねて打込む。側圧試験の作業効率をより向上させる観点から、フレッシュコンクリート層82は、1層のみとすることが好ましい。なお、フレッシュコンクリートの打込み高さ、層の数等の打込みの条件は、現場状況に応じて適宜変更することができる。
【0041】
フレッシュコンクリートとしては、特に限定されるものではなく、例えば、セメントと、水と、細骨材と、粗骨材と、を含む従来公知のフレッシュコンクリートを用いることができる。
【0042】
前記載荷工程では、所定時間経過後、平板状の錘31を側壁開放部25から型枠2の内部空間Rに投入し、フレッシュコンクリート層82上に載荷する。本実施形態に係る側圧測定方法では、側圧試験の作業効率をより向上させる観点から、フレッシュコンクリートを層状に重ねて打込む打込み方法において、1層目のみをフレッシュコンクリートにより構成し、2層目以降は平板状の錘31を載荷する。2層目以降の各層は、それぞれ10枚の平板状の錘31から構成される。平板状の錘31の載荷は、1つの層の載荷(10枚の平板状の錘31の載荷)が終了した後、所定時間の間隔を空けて、次の層について平板状の錘31の載荷を行う。
【0043】
前記載荷工程では、作業中に平板状の錘31が落下するのを防止する観点から、シャッター材5を設置する。具体的には、平板状の錘31を載荷する際に、平板部材51を順次設置する。平板部材51を設置するタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば、各層の平板状の錘31の載荷が終了した時点とすることができる。
【0044】
前記側圧測定工程では、圧力計4を用いて、フレッシュコンクリートから型枠2に作用する側圧を測定する。前記側圧測定工程は、前記打込工程及び前記載荷工程と並行して行う。つまり、側圧は、下地層81を構成するフレッシュコンクリートを打ち込んだ後、フレッシュコンクリート層82を構成するフレッシュコンクリートを打ち込むのと同時に測定を開始し、すべての平板状の錘31の載荷が終了した時点で測定を終了する。側圧の測定は、より正確な測定を行う観点から、側壁部22を構成する4つの面の隣り合う2つの面にそれぞれ配置された2つの圧力計4で測定を行い、測定された側圧の平均値を算出して評価する。
【0045】
本実施形態に係る側圧測定方法は、側壁開放部25から内部空間Rにフレッシュコンクリート及び錘3を投入することにより、フレッシュコンクリート及び錘3の投入を型枠2の最上部から行う必要がなくなり、ホッパー、クレーン等の設備が不要となる。また、フレッシュコンクリート上に前記フレッシュコンクリートの密度よりも大きい密度を有する錘3を載荷することにより、内部空間Rにフレッシュコンクリートのみを収容する場合に比べて、型枠2の全体の高さを低くすることができる。このように型枠2を小型化することにより、型枠2の組立てに要する時間と労力を削減することができる。また、フレッシュコンクリートの打設量を減らすことができるため、フレッシュコンクリートの材料の準備と製造に要する時間と労力を削減することができる。その結果、側圧試験の作業効率を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係る側圧測定方法は、前記打込工程において、前記フレッシュコンクリートを層状に重ねて打込むことにより、実際の工事で採用されている打込み方法で側圧を測定することが可能となり、より正確な側圧を測定することができる。
【0047】
本発明に係る側圧試験装置、型枠、及び、側圧測定方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記及び下記の複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよい(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい)ことは勿論である。
【0048】
例えば、前記実施形態において、底板部21は、上面視が四角形状の平板状に形成される。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、底板部21は、例えば、上面視が四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状に形成されていてもよい。
【0049】
前記実施形態において、底板部21は、上面視において、側壁部22よりも外周側に延設された延出部21aを有する。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、底板部21は、延出部21aを有していなくてもよい。すなわち、上面視において、底板部21と側壁部22とは同じ大きさであってもよい。
【0050】
前記実施形態において、底板部21の下方には台座6が設けられている。また、台座6はフォーク差込み部61を有する。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、底板部21の下方に台座6が設けられていなくてもよい。また、台座6は、フォーク差込み部61を有していなくてもよい。
【0051】
前記実施形態において、側壁部22は、4枚の側板23が固定部材24で連結されて、上面視が四角形状である筒状に形成される。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、5枚以上の側板23を用いて上面視が多角形状である筒状に形成されていてもよいし、3枚の側板23を用いて上面視が三角形状である筒状に形成されていてもよい。また、側壁部22は、一体的に形成されていてもよく、例えば、1枚の側板23により上面視が円形状である筒状に形成されていてもよい。
【0052】
前記実施形態において、錘3は、複数の平板状の錘31から構成されている。また、平板状の錘3は、上面視が四角形状に形成されている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、錘3は一体的に形成されていてもよいし、フレッシュコンクリートを層状に重ねて打込む打込み方法において、層状に載荷される1層当たりの錘3が、一体的に形成されていてもよい。また、平板状の錘31は、上面視が四角形状以外の多角形状、円形状、楕円形状に形成されていてもよい。
【0053】
前記実施形態において、圧力計4は、第一領域22aを構成する4つの面の隣り合う2つの面にそれぞれ配置される。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、圧力計4は、第一領域22aを構成する4つの面の対向する2つの面にそれぞれ配置されていてもよい。また、配置される圧力計4は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0054】
前記実施形態において、シャッター材5は、複数の平板部材51から構成される。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、シャッター材5は、一体的に形成されていてもよい。
【0055】
前記実施形態において、補強材7は、側壁固定部71と、底板固定部72と、補強部73と、を備える。また、補強材7は、側壁部22の4つの角部に配置されている。しかしながら、本発明において補強材7の形状及び個数は、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
<フレッシュコンクリートの作製>
表1に示す配合で各材料を混合し、公称容量100Lの強制練りパン型ミキサ(60L/バッチ)にて混練して、フレッシュコンクリートを作製した。具体的には、まず、セメント、細骨材、及び、粗骨材を前記ミキサにて15秒間空練りした後、水及び各種混和剤を添加して60秒間混練した。続いて、かき落としを行った後、60秒間混練してフレッシュコンクリートを得た。
【0058】
表1に示す各成分の詳細を以下に示す。
水(W):上水道水
セメント(C):普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
細骨材(S):山砂(静岡県掛川市産)
粗骨材(G):砕石2005、硬質砂岩(茨城県岩瀬町産)
混和剤(SP):高性能AE減水剤
混和剤(SR):流動性保持剤
混和剤(AE):AE剤
【0059】
【0060】
<側圧の測定>
側圧の測定は、高さ3.5mの部材、すなわち、フレッシュコンクリートの1層当たりの高さを0.5mとした7層打ちの部材の側圧を測定することを想定して行った。また、コンクリートの打上がり速度は、1.5m/hを想定した。以下、具体的な測定方法を説明する。
【0061】
図1の側圧試験装置1を用いて、側圧の測定を行った。具体的には、型枠2の内寸を0.3m×0.3m×1.6mと設定し、側壁部22には底板部21から上方に0.1m離間した位置に圧力計4として2つの土圧計(東京測器研究所社製、KDH-200KPA)を設置した側圧試験装置1を用いた。2つの土圧計は、側壁部22を構成する4つの面の隣り合う2つの面にそれぞれ設置し、各土圧計で測定された側圧の平均値を算出して評価した。また、平板状の錘31としては、0.296m×0.296m×0.015mの平板状の鋼製の錘を用いた。
【0062】
まず、練上り60分後の上記フレッシュコンクリートを側壁開放部25から型枠2の内部空間Rに投入して、土圧計の下端、すなわち、底板部21から0.1mの高さまで打込むことにより、下地層81を形成した。続いて、上記フレッシュコンクリートを、側壁開放部25から型枠2の内部空間Rに投入して、下地層81の上端から0.5mの高さまで打込むことにより、1層目のフレッシュコンクリート層82を形成した。フレッシュコンクリート層82の形成において、フレッシュコンクリートを投入すると同時に側圧の測定を開始した。
【0063】
2層目以降は、1層目のフレッシュコンクリート層82の上に、平板状の錘31を載荷して側圧を測定した。2層目は、1層目のフレッシュコンクリートの投入が完了してから所定時間経過後に、10枚の平板状の錘31を順次側壁開放部25から投入し、1層目のフレッシュコンクリート層82の上に載荷した。1層当たりに載荷する平板状の錘31の合計質量は、1層当たりのフレッシュコンクリートの質量に基づいて決定した。具体的には、1層当たりのフレッシュコンクリートの質量が103kgであることから、1層当たりに載荷する平板状の錘31の合計質量も103kgとし、1枚当たりの質量が10.3kgである平板状の錘31を10枚載荷した。2層目の平板状の錘31をすべて載荷した後、シャッター材5として平板部材51を設置した。
【0064】
3層目以降は、2層目と同様の方法により平板状の錘31を載荷し、7層目の平板状の錘31の載荷が終了した時点で側圧の測定を終了した。側圧の測定結果を
図4に示す。なお、2層目から7層目までに載荷した平板状の錘31の高さの合計は0.9mであり、下地層81から7層目までの高さは、1.5mであった。
【0065】
側圧試験装置1を用いて側圧を測定した際には、内部空間にフレッシュコンクリートのみを収容する従来の側圧測定方法に比べて、型枠全体の高さを大幅に低くすることができるとともに、フレッシュコンクリートの打設量を減らすことができる。以上から、本発明の構成要件をすべて満たす側圧試験装置、型枠、及び、側圧測定方法は、側圧試験の作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 側圧試験装置
2 型枠
3 錘
4 圧力計
5 シャッター材
6 台座
7 補強材
21 底板部
22 側壁部
22a 第一領域
22b 第二領域
25 側壁開放部
26 ガイド部