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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ATP産生促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241205BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20241205BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241205BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20241205BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20241205BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q7/00
A23L33/105
A23L2/00 F
A61K36/232
A61K36/185
A61P17/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020160818
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053924
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】小方 美幸
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084216(JP,A)
【文献】特開2006-160655(JP,A)
【文献】特開2009-256272(JP,A)
【文献】特開2009-263337(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106580801(CN,A)
【文献】特開2010-070461(JP,A)
【文献】特開2011-055837(JP,A)
【文献】特開2015-093848(JP,A)
【文献】特開2009-256270(JP,A)
【文献】特開2003-321373(JP,A)
【文献】特開2003-292432(JP,A)
【文献】特開2003-009811(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0111142(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/06、36/07-36/9068
A23L 2/00-2/84、5/40-5/49、31/00-33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシタバの抽出物及び/又はスターフルーツの抽出物を有効成分として含有する、脱毛症を予防及び/又は改善するために用いられるATP産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATP産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ATP(Adenosine triphosphate;アデノシン三リン酸)は、生体のエネルギー物質として重要な役割を果たしている。生体内におけるATPの産生量を上げることにより、細胞の増殖、代謝、修復等の機能の活性化につながると考えられている。
【0003】
生体内のエネルギー物質として重要な役割を担うATPの産生能が低下すると、細胞の機能が低下し、老化や細胞死の促進につながる。低下した細胞の機能を促進させるためには、細胞分裂に必要なエネルギーを細胞に補給することが重要である。細胞におけるATPの産生を促進することができれば、その細胞を活性化して細胞分裂を促し、その細胞の機能を回復することができると考えられる。ATPの産生を促進することは、細胞の増殖、代謝、修復等の機能の活性化につながるとともに抗老化(アンチエイジング)の効果を奏することにも期待される。従来、ATP産生促進作用を有するものとして、大麦若葉(特許文献1)、白金族金属コロイド(特許文献2)、グリコーゲン(特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-073476号公報
【文献】特開2008-156314号公報
【文献】特開2003-321373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全性の高い天然物の中からATP産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするATP産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明は、アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有するATP産生促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安全性の高い天然物の中からATP産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするATP産生促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るATP産生促進剤は、アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する。
【0009】
本実施形態において使用される抽出原料は、アシタバ(学名:Angelica keiskei)、スターフルーツ(学名:Averrhoa carambola)、ウメ(学名:Prunus mume Siebold et Zuccarini)、モモ(学名:Prunus persica Batsch)、及び甘草である。
【0010】
アシタバ(Angelica keiskei)は、房総半島、伊豆半島、伊豆半島等に自生しているセリ科シシウド属に属する多年草であり、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るアシタバの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、根部、またはこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部及び/又は茎部である。
【0011】
スターフルーツ(Averrhoa carambola)は、カタバミ科ゴレンシ属に属し、新鮮な果実は食用にされる。スターフルーツは、沖縄、中国東南部や雲南その他熱帯各地で栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るスターフルーツの構成部位としては、例えば、葉部、幹部、花部、蕾部、果実部、種子部、根部、またはこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0012】
ウメ(Prunus mume Siebold et Zuccarini)は、バラ科に属する落葉小高木であって、中国や日本で古くから栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るウメの構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、花部、蕾部、果実部、果肉部、果皮部、根部、またはこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは果実部又は果肉部である。
【0013】
モモ(Prunus persica Batsch)は、バラ科サクラ属に属する落葉小高木であって、中国や日本で古くから栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るモモの構成部位としては、例えば、葉部、幹部、枝部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、種子部、地上部又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0014】
甘草は、マメ科グリチルリーザ(Glycyrrhiza)属に属する多年生草本である。甘草には、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glycyrrhiza inflata)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)等、様々な種類のものがあり、これらを抽出原料として使用することが好ましい。抽出原料として使用し得る甘草の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、種子部、花部、根部又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0015】
上記の抽出原料からの抽出物に含まれるATP産生促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出等に一般に用いられている抽出方法によって、上記抽出原料からATP産生促進作用を有する抽出物を得ることができる。なお、抽出物には、抽出処理によって抽出原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0016】
上記抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0017】
抽出に用いられる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、またはこれらの混合物等が挙げられ、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。各抽出原料に含まれるATP産生促進作用を有する成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に抽出することができる。
【0018】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0019】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0020】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0021】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温または還流加熱下で抽出することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処処理槽に各抽出原料を投入し、必要に応じて撹拌しながら、30分~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去することにより抽出物を得ることができる。得られた抽出液から抽出溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥することにより乾燥物が得られる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には50~95℃で1~4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40~80℃で30分~4時間程度である。
【0022】
以上のようにして得られた抽出液は、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0023】
なお、得られた抽出液はそのままでもATP産生促進剤として使用することができるが、濃縮液または乾燥物としたもののほうが好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0024】
また、各抽出原料は特有の匂いと味を有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、化粧料に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。精製は、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0025】
以上のようにして得られるアシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物は、ATP産生促進作用を有しているため、その作用を利用してATP産生促進剤の有効成分として用いられ得る。
【0026】
なお、本実施形態に係るATP産生促進剤においては、アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物のうちのいずれか1種を上記有効成分として用いてもよいし、それらのうちの2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよい。アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物のうちの2種以上を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、それらの作用の程度に応じて適宜決定されればよい。
【0027】
本実施形態に係るATP産生促進剤は、アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物から選ばれる1種または2種以上を製剤化したものであってもよい。
【0028】
上記抽出物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記抽出物を製剤化したATP産生促進剤の形態としては、例えば、軟膏剤、外用液剤等が挙げられる。
【0029】
本実施形態に係るATP産生促進剤は、例えば、アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物が有するATP産生促進作用を通じて、例えば毛乳頭細胞におけるATPの産生を促進することができ、これによる種々の用途(例えば、脱毛症等の予防・改善用途等)に用いることができる。ただし、本実施形態に係るATP産生促進剤は、この用途以外にもATP産生促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0030】
また、本実施形態に係るATP産生促進剤、またはアシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物から選ばれる1種または2種以上は、優れたATP賛成促進作用を有するため、皮膚化粧料、頭皮化粧料、頭髪化粧料等の化粧料や、飲食品等に配合するのに好適である。
【0031】
アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物から選ばれる1種または2種以上や、上記ATP産生促進剤を配合可能な化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス、石鹸等が挙げられる。上記抽出物やATP産生促進剤を化粧料に配合する場合、その配合量は、化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001~1質量%である。化粧料は、上記抽出物が有するATP産生促進作用を妨げない限り、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤またはその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0032】
飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態に係る「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する組成物を幅広く含むものである。本実施形態における飲食品は、当該飲食品又はその容器や包装、その販促物等に上記抽出物が有するATP産生促進作用が表示されているものであってもよいし、保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品又は医薬品であってもよい。
【0033】
上記抽出物、又は上記抽出物から製剤化したATP産生促進剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の形態である場合、上記抽出物、又は上記抽出物から製剤化したATP産生促進剤の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
【0034】
なお、本実施形態に係るATP産生促進剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、ATP産生促進効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することも可能である。
【実施例
【0035】
以下、製造例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の製造例及び試験例等により何ら制限されるものではない。
【0036】
〔製造例1〕アシタバ抽出物の製造
アシタバの葉部及び茎部の乾燥物100gに70容量%ブチレングリコール1500mLを加え、80~90℃にて2時間加熱抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してアシタバ抽出物(15g)を得た。
【0037】
〔製造例2〕スターフルーツ抽出物の製造
スターフルーツの葉部の乾燥物100gに80容量%エタノール1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間還流抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してスターフルーツ葉抽出物(10g)を得た。
【0038】
〔製造例3〕ウメ抽出物の製造
ウメ果実から得られた果肉部100gに50容量%ブチレングリコールを加えて混合し、濾過した。得られた抽出液を乾燥してウメ抽出物(4g)を得た。
【0039】
〔製造例4〕モモ抽出物の製造
モモの葉部の乾燥物100gに30容量%ブチレングリコール1500mLを加え、80~90℃にて2時間加熱抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してモモ葉抽出物(24g)を得た。
【0040】
〔製造例5〕甘草抽出物の製造
甘草の葉部の乾燥物100gに70容量%エタノール1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間還流抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥して甘草葉抽出物(5g)を得た。
【0041】
〔試験例〕ATP産生促進作用試験
上記製造例1~5で得られたアシタバ抽出物、スターフルーツ抽出物、ウメ抽出物、モモ抽出物及び甘草抽出物について、下記の方法によりATP産生抑制作用の試験を実施した。
【0042】
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞を、増殖添加剤を含有した毛乳頭細胞増殖培地(タカラバイオ社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEMを用いて1.0×104cells/mLの細胞密度になるように希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、3日間培養した。培養終了後、培地を除去し、無血清ダルベッコMEMに溶解した被検試料を各ウェルに100μL添加し、2時間培養した。
【0043】
ATP産生促進作用は、ホタルルシフェラーゼ発光法を用いて細胞内のATP量を測定することにより評価した。具体的には、培養終了後、『「細胞の」ATP測定試薬』(東洋ビーネット社製)を各ウェルに100μL添加し、反応後の化学発光量を測定した。測定結果から、下記式によりATP産生促進率(%)を算出した。
【0044】
ATP産生促進率(%)=(A/B)×100
式中の「A」は、被験試料を添加した細胞での化学発光量を表し、「B」は、被験試料無添加の細胞での化学発光量を表す。
【0045】
上記試験の結果を表1~5に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のATP産生促進率は100%となる。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
表1~5に示すように、アシタバの抽出物、スターフルーツの抽出物、ウメの抽出物、モモの抽出物、及び甘草の抽出物は、いずれも高いATP産生促進率を示した。この結果から、これらの抽出物は、優れたATP産生促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のATP産生促進剤は、優れたATP産生促進作用を有するので、化粧料や飲食品等に配合したり、更には研究用の試薬として好適に利用できる。