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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/26 20060101AFI20241205BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01R29/26 E
G01R29/26 D
G01R35/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022528845
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2021020869
(87)【国際公開番号】W WO2021246405
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2020095710
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2018年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構先導研究プログラム/新産業創出新技術先導研究プログラム委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】関谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】植村 隆文
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 修一
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-8571(JP,A)
【文献】特開昭60-53856(JP,A)
【文献】特開2015-135284(JP,A)
【文献】国際公開第2007/088603(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/26
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の抵抗値を有する機器に含まれるノイズを計測する計測装置であって、
直流電源に接続される第1分圧回路と、
前記第1分圧回路に並列に接続される第2分圧回路と、
前記第1分圧回路から出力される第1分圧電圧と前記第2分圧回路から出力される第2分圧電圧とを計測する計測部と、
計測された前記第1分圧電圧と前記第2分圧電圧との差分を算出する算出部と、
算出された結果を出力する出力部と、
を備え、
前記第1分圧回路は、直列に接続された前記機器と第1抵抗とから前記第1分圧電圧を出力し、
前記第2分圧回路は、直列に接続され、前記機器の抵抗値に同じ抵抗値である第2抵抗と前記第1抵抗の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗とから前記第2分圧電圧を出力する計測装置。
【請求項2】
前記第1分圧回路は、直列に接続された、複数の前記機器と前記第1抵抗とから前記第1分圧電圧を出力し、
前記第2分圧回路は、直列に接続され、複数の前記機器の抵抗値に同じ抵抗値である第2抵抗と前記第1抵抗の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗とから前記第2分圧電圧を出力する請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
他の機器に対して接続され、所定の出力電圧を前記他の機器に出力可能な外部端子と、
前記算出部に接続され、前記算出部からの指示に基づいて所定値の直流電圧を発生する第1電圧発生部と、
前記第1電圧発生部によって発生された直流電圧を分圧して第3分圧電圧を前記外部端子及び前記計測部に出力する第3分圧回路と、
を備え、
前記計測部は、前記第3分圧電圧を計測し、
前記算出部は、前記他の機器に出力される予定の所定電圧に基づいて前記第1電圧発生部に所定値の直流電圧を発生させるとともに、計測された前記第3分圧電圧と出力される予定の所定電圧との差分に基づいて前記第1電圧発生部に電圧値を変化させて直流電圧を出力させる請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記計測部を調整するための基準となる基準値の直流電圧を発生する第2電圧発生部と、
前記第2電圧発生部によって発生された直流電圧を分圧して第4分圧電圧を出力する第4分圧回路と、
を備え、
前記算出部は、計測された前記第4分圧電圧に基づいて前記計測部を補正し、前記第1電圧発生部に発生させる所定値を変化させる請求項3に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本は世界に先んじて少子高齢化及び人口減少が進んでいる課題先進国であり、医療インフラ等の公共サービスの維持について、課題が顕在化しつつある。これらの課題に対して、先進的なセンサを用いて解決することが求められている。例えば、昨今では、病気の検査、非破壊検査等の社会課題に対して、ミリボルト領域ではなくマイクロボルト領域の精度のセンサが求められる等、数桁小さい信号を高精度で計測することが求められている。このような精度で計測する装置として、例えば、半導体装置内で発生する電源ノイズを計測する計測回路が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-135284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のような精度を求められる機器では、経年劣化及び使用状況により性能及び機器の電気的な特性の変化が発生する。このような変化は、計測誤差又は誤動作に繋がることから、適宜その機器の確からしさが担保されていることが求められる。
【0005】
一方、より精度の高い機器の確からしさを担保するためには、一次標準器に対して、調整対象となる対象機器の校正を行い、ずれを調整する必要がある。一次標準器の設置箇所は限られているため、容易に校正及び調整することは困難であった。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、機器の校正及び調整を容易に行うことができる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の抵抗値を有する機器に含まれるノイズを計測する計測装置であって、直流電源に接続される第1分圧回路と、前記第1分圧回路に並列に接続される第2分圧回路と、前記第1分圧回路から出力される第1分圧電圧と前記第2分圧回路から出力される第2分圧電圧とを計測する計測部と、計測された前記第1分圧電圧と前記第2分圧電圧との差分を算出する算出部と、算出された結果を出力する出力部と、を備え、前記第1分圧回路は、直列に接続された前記機器と第1抵抗とから前記第1分圧電圧を出力し、前記第2分圧回路は、直列に接続され、前記機器の抵抗値に同じ抵抗値である第2抵抗と前記第1抵抗の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗とから前記第2分圧電圧を出力する計測装置に関する。
【0007】
また、前記第1分圧回路は、直列に接続された、複数の前記機器と前記第1抵抗とから前記第1分圧電圧を出力し、前記第2分圧回路は、直列に接続され、複数の前記機器の抵抗値に同じ抵抗値である第2抵抗と前記第1抵抗の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗とから前記第2分圧電圧を出力するのが好ましい。
【0008】
また、計測装置は、他の機器に対して接続され、所定の出力電圧を前記他の機器に出力可能な外部端子と、前記算出部に接続され、前記算出部からの指示に基づいて所定値の直流電圧を発生する第1電圧発生部と、前記第1電圧発生部によって発生された直流電圧を分圧して第3分圧電圧を前記外部端子及び前記計測部に出力する第3分圧回路と、を備え、前記計測部は、前記第3分圧電圧を計測し、前記算出部は、前記他の機器に出力される予定の所定電圧に基づいて前記第1電圧発生部に所定値の直流電圧を発生させるとともに、計測された前記第3分圧電圧と出力される予定の所定電圧との差分に基づいて前記第1電圧発生部に電圧値を変化させて直流電圧を出力させるのが好ましい。
【0009】
また、計測装置は、前記計測部を調整するための基準となる基準値の直流電圧を発生する第2電圧発生部と、前記第2電圧発生部によって発生された直流電圧を分圧して第4分圧電圧を出力する第4分圧回路と、を備え、前記算出部は、計測された前記第4分圧電圧に基づいて、前記第1電圧発生部に発生させる所定値を変化させるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、機器の校正を容易にする計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の各実施形態に係る計測装置の回路構成を示す回路図である。
図2】第1実施形態の計測装置のアダプタ部を示す回路図である。
図3】第2実施形態の計測装置の外部デバイスを調整するための信号を送出する際の流れを示すフローチャートである。
図4】第3実施形態の計測装置の自身を調整する際の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態に係る計測装置1について、図1から図4を参照して説明する。
まず、計測装置1の概要について説明する。なお、以下の実施形態において、「校正」とは、基準値に対して、機器の出力する信号の値のずれ(誤差)を特定することをいう。また、「調整」とは、「校正」によって特定されたずれを取り除いて、機器の出力信号を基準値に合わせることをいう。また、以下の実施形態において、単に「機器」と表現する場合には、計測対象である被対象機器(図示せず)及び調整対象である外部機器(他の機器、(図示せず))のいずれをも含むものとする。また、「分圧電圧」とは、分圧抵抗によって分割されて出力される電圧をいう。
【0013】
計測装置1は、一次標準器、又は一次標準器とトレーサビリティが確保された二次標準器等によって校正及び調整されることにより、精度の高い値を計測することができる装置である。計測装置1は、例えば、一次標準器によって計測可能な電圧の調整を受けることにより、精度の高い電圧を計測することができる。計測装置1は、例えば、直流1mVを計測可能なように調整されることにより、精度の高い直流1mVを計測することができる。
【0014】
また、計測装置1は、機器から調整の基準となる信号を外部に出力することにより、外部機器に、機器を調整するための信号を提供することができる。計測装置1は、例えば、基準となる直流1mVの電圧の信号を出力することにより、外部機器を調整するための電圧を提供することができる。
【0015】
そして、計測装置1は、機器内部で調整の基準となる信号を用いて内部を調整することにより、機器から出力される信号の精度を調整することができる。計測装置1は、例えば、機器を調整するための直流1mVの電圧の信号を出力することにより、計測装置1の内部の電圧測定機構の精度を調整することができる。
以下の実施形態において、計測装置1の構成と、上記3つの動作のそれぞれについて説明する。
【0016】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態の計測装置1の構成について図1及び図2を参照して説明する。
計測装置1は、図1及び図2に示すように、所定の抵抗値を有する機器に含まれるノイズを計測する。計測装置1は、アダプタ部10と、計測部11と、算出部12と、出力部13と、を備える。
【0017】
アダプタ部10は、例えば、ノイズ計測対象の被対象機器のノイズを計測するための回路である。アダプタ部10は、複数の分圧回路を並列に接続した構成を有する。アダプタ部10は、例えば、8つの分圧回路(8ch)を並列に接続した構成を有する。本実施形態では、2つの分圧回路を例に説明する。アダプタ部10は、図2に示すように、直流電源111と、第1分圧回路112と、第2分圧回路113と、を備える。
【0018】
直流電源111は、例えば、乾電池である。本実施形態において、直流電源111は、例えば、3.19Vの電圧を供給可能に構成される。また、直流電源111は、バイアス電圧を発生するバイアス電源(図示せず)に直列に接続される。
【0019】
第1分圧回路112は、直流電源111に接続される。第1分圧回路112は、被対象機器を接続可能なスロット120と、スロット120に直列に接続されるとともに所定の抵抗値をもつ第1抵抗130と、を有する。第1分圧回路112は、直列に接続された被対象機器と第1抵抗130とから第1分圧電圧を出力する。
【0020】
第2分圧回路113は、直流電源111に接続される。また、第2分圧回路113は、第1分圧回路112に並列に接続される。第1分圧回路112は、被対象機器に同じ抵抗値である第2抵抗140と、第2抵抗140に直列に接続されるとともに第1抵抗130の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗150と、を有する。第1分圧回路112は、直列に接続され被対象機器の抵抗値に同じ抵抗値である第2抵抗140と第1抵抗130の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗150とから第2分圧電圧を出力する。第2分圧回路113は、アダプタ部10の周囲の環境ノイズを計測すべく設けられる。
【0021】
計測部11は、例えば、ADコンバータである。計測部11は、第1分圧回路112から出力される第1分圧電圧と第2分圧回路113から出力される第2分圧電圧とを計測する。計測部11は、例えば、一次標準器等によって校正及び調整可能に構成される。すなわち、計測部11は、一次標準器によって、電圧測定精度を向上可能に構成される。
【0022】
算出部12は、例えば、CPUである。算出部12は、計測された第1分圧電圧と第2分圧電圧との差分を算出する。
【0023】
出力部13は、例えば、表示装置等である。出力部13は、算出された結果を出力する。出力部13は、例えば、算出された結果を表示することで、被対象機器のノイズの量を表示する。
【0024】
次に、本実施形態に係る計測装置1の動作について説明する。
まず、計測部11は、一次標準器等によって調整される。計測部11は、例えば、所定の期間ごとに一次標準器等によって調整される。次いで、スロット120に、被対象機器が接続される。
【0025】
次いで、直流電源111から電力が供給されることにより、第1分圧電圧及び第2分圧電圧が出力される。計測部11は、第1分圧電圧及び第2分圧電圧のそれぞれを計測する。
【0026】
次いで、算出部12は、計測された第1分圧電圧と第2分圧電圧との差を算出する。すなわち、算出部12は、被対象機器に印加して出力される電圧から、環境ノイズの電圧を引くことで、被対象機器に含まれるノイズを算出する。次いで、出力部13は、算出された値を被対象機器のノイズとして出力する。
【0027】
以上の第1実施形態に係る計測装置1によれば、以下の効果を奏する。
(1)所定の抵抗値を有する機器に含まれるノイズを計測する計測装置1であって、直流電源111に接続される第1分圧回路112と、第1分圧回路112に並列に接続される第2分圧回路113と、第1分圧回路112から出力される第1分圧電圧と第2分圧回路113から出力される第2分圧電圧とを計測する計測部11と、計測された第1分圧電圧と第2分圧電圧との差分を算出する算出部12と、算出された結果を出力する出力部13と、を備え、第1分圧回路112は、直列に接続された機器と第1抵抗130とから第1分圧電圧を出力し、第2分圧回路113は、直列に接続され、機器の抵抗値に同じ抵抗値である第2抵抗140と第1抵抗130の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗150とから第2分圧電圧を出力する。これにより、周囲の環境ノイズを加味しつつ、容易に精度良く被対象機器のノイズを計測することができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る計測装置1について、図1及び図4を参照して説明する。第2実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第2実施形態に係る計測装置1は、他の機器に対して基準となる信号を出力するものである。すなわち、第2実施形態に係る計測装置1は、他の機器に対する標準器として動作するものである。
【0029】
第2実施形態に係る計測装置1は、図1に示すように、外部端子16と、第1電圧発生部14と、第3分圧回路15と、をさらに備える点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態に係る計測装置1は、算出部12が、後述する第1電圧発生部14に対して発生する電圧を指示可能な点で第1実施形態と異なる。また、第2実施形態に係る計測装置1は、計測部11が、後述する第3分圧回路15から出力される第3分圧電圧を計測する点で、第1実施形態と異なる。
【0030】
外部端子16は、例えば、他の機器(外部機器)に対して接続され、所定の出力電圧を他の機器に出力可能な端子である。本実施形態において、外部端子16は、例えば、直流1mVの電圧を外部機器に出力可能な端子である。
【0031】
第1電圧発生部14は、例えば、DAコンバータである。第1電圧発生部14は、算出部12に接続され、算出部12からの指示に基づいて所定値の直流電圧を発生する。第1電圧発生部14は、例えば、-10Vから+10Vの間の電圧を220ビットの分解能で変化させて出力することができる。本実施形態において、第1電圧発生部14は、一例として、+10Vの直流電圧を発生する。
【0032】
第3分圧回路15は、第1電圧発生部14によって発生された直流電圧を分圧して第3分圧電圧として、外部端子16及び計測部11に出力する。第3分圧回路15は、例えば、直列に接続される99.999kΩの抵抗と、1Ωの抵抗とから第3分圧電圧を出力する。すなわち、本実施形態において、第3分圧回路15は、-1mVから+1mVの直流電圧の信号を出力する。
【0033】
次に、本実施形態に係る計測装置1の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、算出部12は、他の機器に出力される予定の所定電圧に基づいて、第1電圧発生部14に所定値の直流電圧を発生させる(ステップS1)。本実施形態において、算出部12は、例えば他の機器に直流0.5mVの電圧を出力する場合、5Vの電圧の発生を第1電圧発生部14に指示する。
【0034】
次いで、第1電圧発生部14は、指示された電圧を発生する(ステップS2)。次いで、計測部11は、第3分圧回路15から出力される第3分圧電圧を計測する(ステップS3)。
【0035】
次いで、ステップS4において、算出部12は、期待される電圧値(期待値)と計測された電圧値(計測値)が異なるか否かを判断する。期待値及び計測値が異なる場合(ステップS4:YES)、処理は、ステップS5に進む。一方、期待値及び計測値が同じ場合(ステップS4:NO)、処理は、ステップS6に進む。
【0036】
ステップS5において、算出部12は、第1電圧発生部14に所定値の電圧値から変更した電圧の発生を指示する(ステップS5)。算出部12は、例えば、計測された第3分圧電圧と出力される予定の所定の電圧との差分に基づいて、第1電圧発生部14に電圧値を変化させて直流電圧を出力させる。
【0037】
ステップS6において、外部端子16は、他の機器に接続される。次いで、算出部12が第1電源発生部に出力予定の電圧を発生させる。これにより、他の機器が基準とすることが可能な電圧(基準電圧)を出力する。
【0038】
以上の第2実施形態に係る計測装置1によれば、以下の効果を奏する。
(2)計測装置1は、他の機器に対して接続され、所定の出力電圧を他の機器に出力可能な外部端子16と、算出部12に接続され、算出部12からの指示に基づいて所定値の直流電圧を発生する第1電圧発生部14と、第1電圧発生部14によって発生された直流電圧を分圧して第3分圧電圧を外部端子16及び計測部11に出力する第3分圧回路15と、を備え、計測部11は、第3分圧電圧を計測し、算出部12は、他の機器に出力される予定の所定電圧に基づいて第1電圧発生部14に所定値の直流電圧を発生させるとともに、計測された第3分圧電圧と出力される予定の所定電圧との差分に基づいて第1電圧発生部14に電圧値を変化させて直流電圧を出力させる。これにより、他の機器を調整するための基準となる電圧を他の機器に提供することができる。これにより、他の機器の校正及び調整を容易に、かつ精度よく行うことができるようになる。
【0039】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る計測装置1について、図1及び図4を参照して説明する。第3実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第3実施形態に係る計測装置1は、計測部11(又は第3分圧回路15)を補正することによって、基準電圧の計測精度を内部で調整することが可能となっている。第3実施形態に係る計測装置1は、例えば、周囲の温度に影響される抵抗値の変化等を加味した上で、計測部11及び第1電圧発生部14の発生する電圧を調整することが可能な装置である。また、第3実施形態に係る計測装置1は、一次標準器によって調整された後の調整について、一次標準器を用いずに実施することが可能な装置である。
【0040】
第3実施形態に係る計測装置1は、第2電圧発生部17と、第4分圧回路18と、スイッチ部19と、を備える点で、第1及び第2実施形態と異なる。また、第3実施形態に係る計測装置1は、算出部12が、後述する第4分圧回路18によって出力される第4分圧電圧に基づいて、第1電圧発生部14に発生させる電圧の所定値を変化させる点で、第2実施形態と異なる。
【0041】
第2電圧発生部17は、例えば、経時変化や温度係数が小さい基準電圧IC等である。第2電圧発生部17は、計測部11を調整するための基準となる基準値の直流電圧を発生する。また、第2電圧発生部17は、複数の電圧を発生可能な第1電圧発生部14に対して、単一の電圧のみを発生する。本実施形態において、第2電圧発生部17は、例えば、7Vの直流電圧を発生する。
【0042】
第4分圧回路18は、第1電圧発生部14によって発生された直流電圧を分圧して第4分圧電圧として、外部端子16及び計測部11に出力する。第4分圧回路18は、第3分圧回路15に比べて、例えば、温度性能が良く、経年誤差の少ない抵抗である。第4分圧回路18は、例えば、直列に接続される699.9kΩの抵抗と、100Ωの抵抗とから第4分圧電圧を出力する。すなわち、本実施形態において、第4分圧回路18は、直流1mVの電圧の信号を出力する。
【0043】
スイッチ部19は、計測部11及び外部端子16への入力について、第3分圧電圧と、第4分圧電圧との間で切り替え可能な部材である。スイッチ部19は、例えば、算出部12による制御によって、入力元を切り替え可能に構成される。スイッチ部19は、例えば、他の機器に信号を出力する場合、算出部12による制御に基づいて、入力元を第3分圧電圧に切り替える。一方、スイッチ部19は、例えば、計測部11を調整する場合、算出部12による制御に基づいて、入力元を第4分圧電圧に切り替える。
【0044】
次に、第3実施形態に係る計測装置1の動作について、図4を参照して説明する。
まず、外部の一次標準器を用いて調整をするか否かが判断される(ステップS11)。例えば、計測装置1の使用直前、最初の調整は、外部の一次標準器を用いて実施される。外部の一次標準器を用いて調整する場合(ステップS11:YES)、処理はステップS12に進む。一方、外部の一次標準器を用いた調整をしない場合(ステップS11:NO)、処理は、ステップS13に進む。
【0045】
ステップS12において、外部の一次標準器等によって計測機が調整される。具体的には、計測部11が、外部の一次標準器等から入力される基準となる国家標準電圧(例えば、1mV)を計測する。これにより、計測部11は、国家標準電圧を計測できるように校正及び調整される。次いで、処理は、ステップS13に進む。
【0046】
ステップS13において、計測部11は、第4分圧電圧を計測する。具体的には、算出部12は、スイッチ部19への入力を第4分圧電圧に切り替える。その後、計測部11は、第4分圧電圧を計測する。算出部12は、第4分圧電圧の計測値と理論値との差分を補正する。次いで、算出部12は、第4分圧電圧と同じ電圧値となる第3分圧電圧の出力を第1電圧発生部14に指示する(ステップS14)。このとき、算出部12は、スイッチ部19への入力を第3分圧電圧に変更する。
【0047】
次いで、第3分圧回路15は、第3分圧電圧を出力する(ステップS15)。計測部11は、第3分圧電圧を計測する。
【0048】
次いで、算出部12は、計測された第3分圧電圧と第4分圧電圧とを比較する(ステップS16)。第3分圧電圧と第4分圧電圧とが同じ場合(ステップS16:YES)、処理は、ステップS17に進む。一方、第3分圧電圧と第4分圧電圧とが異なる場合(ステップS16:NO)、処理は、ステップS19に進む。
【0049】
ステップS17において、第3分圧回路15に応じた第1電圧発生部14の調整が完了する。そして、一定時間経過後(例えば、1時間後)に再度の調整が実施される。一定時間経過した場合(ステップS17:YES)、処理は、ステップS13に戻る。一方、一定時間が経過していない場合(ステップS17:NO)、処理は、ステップS18に進む。
【0050】
ステップS18において、計測機器が停止されるか否かが判断される。計測機器が停止される場合(ステップS18:YES)、本フローによる処理は、終了する。一方、計測機器の動作が継続される場合(ステップS18:NO)、処理は、ステップS17に戻る。
【0051】
ステップS19において、算出部12は、第3分圧電圧と第4分圧電圧との差に基づいて、第1電圧発生回路に変更した電圧値の発生を指示する。そして、処理は、ステップS14に戻る。
【0052】
以上の第3実施形態に係る計測装置1によれば、以下の効果を奏する。
(3)計測装置1は、計測部11を調整するための基準となる基準値の直流電圧を発生する第2電圧発生部17と、第2電圧発生部17によって発生された直流電圧を分圧して第4分圧電圧を出力する第4分圧回路18と、を備え、算出部12は、計測された第4分圧電圧に基づいて、第1電圧発生部14に発生させる所定値を変化させる。これにより、周囲の温度等の環境の変化によらず、精度の良い基準電圧を外部に出力することができる。
【0053】
以上、本発明の計測装置の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態において、第1、第2、及び第3実施形態は、個別の装置として構成されてもよい。例えば、計測部11、算出部12、第1電圧発生部14、第3分圧回路15、及び外部端子16を用いて第2実施形態の計測装置1のみを構成してもよい。
【0054】
また、上記第1実施形態において、第1分圧回路112は、直列に接続された、複数の機器と第1抵抗130とから第1分圧電圧を出力してもよい。また、第2分圧回路113は、直列に接続され、複数の機器の抵抗値に同じ抵抗値である第2抵抗140と第1抵抗130の抵抗値に同じ抵抗値である第3抵抗150とから第2分圧電圧を出力してもよい。これにより、複数の機器のノイズの有無を一度に計測できるので、計測の効率を向上することができる。
【0055】
また、上記各実施形態において、算出部12は、計測装置の内部及び外部における温度のログ、計測部11や第1電圧発生部14の補正のログ、及び異常として判断された被対象機器の情報を外部のサーバ(図示せず)に送信するようにしてもよい。また、複数台の計測装置1から得られる、これら情報を外部サーバで統計的分析を行う仕組みとしても良い。これにより、外部のサーバにおいて、異常が発生した計測装置1の発見や一次標準器等との物理的な電気接続を伴わないワイヤレスでの校正及び調整を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
1 計測装置
11 計測部
12 算出部
13 出力部
14 第1電圧発生部
15 第3分圧回路
16 外部端子
17 第2電圧発生部
18 第4分圧回路
111 直流電源
112 第1分圧回路
113 第2分圧回路
130 第1抵抗
140 第2抵抗
150 第3抵抗
図1
図2
図3
図4