(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】赤外線吸収体、その製造方法、黒体輻射装置および放射冷却装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2023502229
(86)(22)【出願日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2022003824
(87)【国際公開番号】W WO2022181259
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2021027602
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 邦招
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄平
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087439(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176409(WO,A1)
【文献】特開2008-233850(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058833(WO,A1)
【文献】特開2006-250513(JP,A)
【文献】特開2004-333129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G01J 5/90
G02B 1/111
G02B 5/00
G02B 5/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックおよび樹脂からなる吸収層と、
前記吸収層の上に、表面に複数の微小な突起が形成された光閉じ込め構造を有し、実質的に顔料を含まない樹脂からなる表面層と、を備え、
赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下に構成される、赤外線吸収体。
【請求項2】
当該赤外線吸収体は、赤外線波長が7μm以上14μm以下の範囲において半球全反射率が0.1%以下に構成される、請求項1記載の赤外線吸収体。
【請求項3】
前記光閉じ込め構造は、表面から外方に向けて突出するように形成された複数の突起を有し、該突起は、その先端部が尾根状に連なる形状または円錐状であり、該突起の断面は、該先端部から基部に向かって次第に広がる形状を有し、隣り合う尾根または隣り合う円錐状の先端部の距離が0.1μm~100μmである、請求項1
または2記載の赤外線吸収体。
【請求項4】
前記吸収層において、前記樹脂に対する前記カーボンブラックの重量比率が、1%~20%である、請求項1~
3のうちいずれか一項記載の赤外線吸収体。
【請求項5】
前記吸収層の厚さが20μm~500μmである、請求項1~
4のうちいずれか一項記載の赤外線吸収体。
【請求項6】
前記吸収層の下に基材をさらに備え、
前記基材は熱伝導材料からなる、請求項1~
5のうちいずれか一項記載の赤外線吸収体。
【請求項7】
前記基材は、アルミニウム、銅、銀および金の群から少なくとも1種の金属を含む基板が選択される、請求項
6記載の赤外線吸収体。
【請求項8】
前記基材は、シリコン基板、SiC基板およびAlN基板の群から少なくとも1種の非金属材料基板が選択される、請求項
6記載の赤外線吸収体。
【請求項9】
前記表面層おける前記樹脂は、紫外線硬化樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂の群から少なくとも一つの樹脂が選択される、請求項1~
8のうちいずれか一項記載の赤外線吸収体。
【請求項10】
前記表面層の厚さが100μm~200μmである、請求項1~
9のうちいずれか一項記載の赤外線吸収体。
【請求項11】
請求項1~
10のうちいずれか一項記載の赤外線吸収体を備える平面黒体装置。
【請求項12】
請求項1~
10のうちいずれか一項記載の赤外線吸収体を備える放射冷却装置。
【請求項13】
赤外線吸収体の製造方法であって、
樹脂基板にイオンビームを照射するサブステップを含むモールドを準備するステップと、
カーボンブラックと樹脂により吸収層を形成するステップと、
前記吸収層の表面に実質的に顔料を含まない樹脂液を塗布して表面層の前駆体を形成するステップと、
前記樹脂液が硬化する前に、複数の微小な突起が表面に形成された前記モールドを前記前駆体の表面に型押して該樹脂液を硬化させ、光閉じ込め構造を有する表面層を形成するステップと、を含み、
形成された前記赤外線吸収体の赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下に構成される、前記製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線吸収に係る技術に関し、特に極低反射率の赤外線吸収体、その製造方法、黒体輻射装置および放射冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キルヒホッフの法則によれば、物体の輻射能は吸収能に等しい。放射率は、現実の物体からの放射輝度の、黒体からの放射輝度に対する比である。すなわち、吸収率が高く、100%に近い物体は、黒体に近く、最も効率良い放射をする。プランクの法則によれば、黒体からの放射スペクトルは、温度だけの関数で表すことができる。
【0003】
常温付近(0℃~40℃)では、物体が主に放射する赤外線の波長は、8μm~14μmになる。この赤外線の波長帯において、吸収率の高い、つまり放射率の高い物体は、放射冷却装置や基準赤外線放射体の用途として有用である。
【0004】
このような用途には、赤外線吸収率が99.5%以上と極めて高い物体が求められている。吸収率つまり放射率は、物体の材料および表面状態に依存する。研磨された金属表面では一般に放射率は低く、酸化した表面や荒らされた表面では、放射率は高くなる。放射率の高い素材として、配向性カーボンナノチューブを表面に形成した構造体が開発されており、配向性カーボンナノチューブの表面に疎水性コーティングを形成したカーボンナノチューブ構造体が知られている(特許文献1参照)。配向性カーボンナノチューブは、物理的な接触により破壊され易く、接触耐性が低いため、一般環境での使用に耐えなかった。シリコン基板の表面にICPによりエッチングして形成した微細な針状テクスチャを有する黒体校正ターゲットが開発されている(特許文献2参照)。
【0005】
本願発明者は、低反射率の光吸収体の開発を行い、発表等を行っている(特許文献3および非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/33031号明細書
【文献】米国特許第10371579号明細書
【文献】国際公開第2019/087439号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】K.Amemiya et al.,J.Mater.Chem.C,2019,7,pp5418-5425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、新規で有用な、赤外線の波長帯において反射率が極めて低い赤外線吸収体その製造方法、黒体輻射装置および放射冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、カーボンブラックおよび樹脂からなる吸収層と、上記吸収層の上に、表面に複数の微小な突起が形成された光閉じ込め構造を有し、実質的に顔料を含まない樹脂からなる表面層と、を備え、赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下である、赤外線吸収体が提供される。
【0010】
上記態様によれば、表面層の光閉じ込め構造により赤外線を表面層の内部に伝搬させて、吸収体のカーボンブラックの粒子が広い波長範囲に亘って赤外線を吸収する。これとともに、表面層は実質的に顔料を含まないので、表面層の表層近くの顔料による赤外線の散乱による外部への漏れを防止する。さらに、吸収層のカーボンブラックの粒子が赤外線を広い波長範囲に亘って吸収し、一部散乱した赤外線は、表面層の樹脂により吸収され、表面層から外部へ漏れ難い。これにより、赤外線吸収体は、半球全反射率を大幅に低下することができ、赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下になるように構成される赤外線吸収体を提供できる。
【0011】
本発明の他の態様によれば、赤外線吸収体の製造方法であって、樹脂基板にイオンビームを照射するサブステップを含むモールドを準備するステップと、カーボンブラックと樹脂により吸収層を形成するステップと、上記吸収層の表面に実質的に顔料を含まない樹脂液を塗布して表面層の前駆体を形成するステップと、上記樹脂液が硬化する前に、複数の微小な突起が表面に形成された上記モールドを上記前駆体の表面に型押して該樹脂液を硬化させ、光閉じ込め構造を有する表面層を形成するステップと、を含み、前記形成された赤外線吸収体の赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下に構成される上記製造方法が提供される。
【0012】
上記他の態様によれば、下層としてカーボンブラックと樹脂により赤外線の吸収層を形成して、上層として実質的に顔料を含まない樹脂により表面に微小な突起が形成された光閉じ込め構造を有する表面層を備える赤外線吸収体を形成でき、赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下になるように構成される赤外線吸収体を提供できる。
【0013】
本発明のその他の態様によれば、上記態様の赤外線吸収体を備える平面黒体装置が提供される。また、本発明のその他の態様によれば、上記態様の赤外線吸収体を備える放射冷却装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る赤外線吸収体の構造を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係る赤外線吸収体の吸収原理の説明図である。
【
図3A】光閉じ込め構造の表面形状の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【
図3B】光閉じ込め構造の表面形状の他の例を示す電子顕微鏡写真である。
【
図4】第2の実施形態に係る赤外線吸収体の構造を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る赤外線吸収体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】モールドの形成方法を示すフローチャートである。
【
図9】一実施形態に係る平面黒体装置の概略構成を示す模式図である。
【
図10】一実施形態に係る放射冷却装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。なお、複数の図面間において共通する要素については同じ符号を付し、その要素の詳細な説明の繰り返しを省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る赤外線吸収体の構造を示す模式図である。
図1を参照するに、第1の実施形態に係る赤外線吸収体10は、吸収層11と、吸収層11の上に形成された表面層12を有する。吸収層11は、カーボンブラックを含む樹脂層である。表面層12は、実質的に顔料を含まない樹脂からなる樹脂層である。表面層12の表面12aには、光閉じ込め構造13が形成されている。
【0017】
吸収層11の厚さは、20μm~500μmの範囲を有することが好ましく、20μm~300μmの範囲を有することがさらに好ましい。吸収層11が過度に厚いと熱伝導性が低下し、吸収層11が過度に薄いと赤外線吸収率が低下する。吸収層11は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂の群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いることができる。吸収層11は、赤外線吸収性が広帯域に亘って良好な点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂の群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いること好ましい。
【0018】
吸収層11は、カーボンブラックを含む。カーボンブラックは、赤外線波長領域において広い帯域に亘って高い赤外線吸収性を有する。カーボンブラックは、種々の粒径のもの、例えば、平均粒径が10nm~300nmのものを用いることができる。吸収層11においては、樹脂に対するカーボンブラックの重量比率が、1%~20%であることが好ましい。カーボンブラックの重量比率が1%よりも小さい場合には、赤外線吸収率を確保するために吸収層11を厚くすることになり、熱伝導性が低下する。カーボンブラックの重量比率が20%よりも大きい場合、樹脂にカーボンブラックを良好に分散させることが難くなる。
【0019】
吸収層11は、カーボンブラックに加えて、赤外線吸収性をより高める観点から配向性カーボンナノチューブを含んでもよい。また、吸収層11は、カーボンブラックに加えて、無機黒色顔料、例えば、アルミニウム、白金、金、銀、アルミニウム酸化物の微粒子、およびこれらの混合物を含んでもよい。
【0020】
表面層12の厚さは、100μm~200μmの範囲を有することが、高さ数十μmの多数の突起からなる光閉じ込め構造13を十分に形成できる点で好ましい。なお、厚さは、表面層12の底から表面の平均高さの平面(いわゆるISO 25178における基準表面)までの距離とする。表面層12は、紫外線硬化樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂の群から少なくとも一つの樹脂であることが好ましい。
【0021】
表面層12の表面12aには、光閉じ込め構造13が形成される。光閉じ込め構造13は、表面層12の表面12aに形成された多数の微小な突起から構成される。光閉じ込め構造13は、外部から入射した赤外線を含む光を突起の基部の内部に、さらに表面層12の内部に取り込む。光閉じ込め構造13は、具体的には、表面から外方に向けて突出するように形成された複数の突起を有する。突起は、その先端部が尾根状に連なる形状または円錐状の形状を有する。突起の断面は、先端部から基部に向かって次第に広がる形状を有する。先端部が尾根状に連なる形状の場合、隣り合う尾根が0.1μm~100μmであることが好ましく、中赤外線の波長範囲では、1μm~100μmであることがさらに好ましい。先端部が円錐状の場合、隣り合う先端部の距離は、0.1μm~100μmであることが好ましく、中赤外線の波長範囲では、1μm~100μmであることがさらに好ましい。光閉じ込め構造13は、例えば、後述する
図6により形成されるモールドの表面の凹凸形状が転写された形状を有する。
【0022】
表面層12は、実質的に顔料を含まない。表面層12に顔料が含まれると顔料によって赤外線が散乱され、特に表面層12の表面に近い部分の顔料により赤外線がより多く散乱され、表面層12から外部に漏れてしまう。このような場合、赤外線吸収体の吸収率を低下させてしまうことになる。「実質的に顔料を含まない」とは、顔料を全く含まない場合に限らず、顔料を含有しているが、本発明の効果を奏する範囲で、顔料の粒子による赤外線の散乱量が無視できる程度に顔料が微量である場合を指す。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る赤外線吸収体の吸収原理の説明図である。
図2を参照するに、外部からの赤外線IRは、表面層12の光閉じ込め構造13の多数の突起14の表面に入射する。入射した赤外線の一部は、突起14の表面で反射し、赤外線の他の一部は突起14の内部に入射する。突起14の形状が基部に向かって広がっているので、反射した赤外線は、実線で示すように、突起14のより基部に近い方に進行し、表面層12の外方にはほぼ漏れることはない。反射した赤外線の強度は、反射する度に低下する。
【0024】
赤外線は、突起14の内部に入射し(破線で示す。)、表面層12を形成する樹脂内を伝搬する。表面層12は、実質的に顔料の粒子を含まないので、顔料の粒子による散乱がなく、散乱した赤外線が表面層12から外方に漏れるのを防止できる。赤外線の一部は、表面層12の樹脂により吸収される。
【0025】
赤外線は、吸収層11に到達し、広い波長範囲に亘ってカーボンブラックの粒子15によって吸収される。一部の赤外線はカーボンブラックの粒子15によって散乱される。散乱した赤外線は、他のカーボンブラックの粒子15に吸収および散乱される。赤外線のごく一部は、表面層12に戻るが、表面層12の樹脂により吸収され、表面層12から外部に漏れる赤外線はごくわずかになる。
【0026】
図3Aは、光閉じ込め構造の表面形状の一例を示す電子顕微鏡写真である。
図3Aを
図1と合わせて参照すると、光閉じ込め構造13には、表面層12の表面12aに複数の突起が尾根状に連なり、その裾野が次第に広がる多数の突起が形成されている。隣り合う尾根が1μmから数10μm離隔して形成されていることが分かる。この光閉じ込め構造13の形状は、後の
図6のS106において作製されたモールドを用いた場合に形成される。そのモールドを用いて、再転写したモールドを用いてもよい。
【0027】
図3Bは、光閉じ込め構造の表面形状の他の例を示す電子顕微鏡写真であり、
図3Aの赤外線吸収体を形成した際に用いたモールドを再転写したモールドを用いた場合に形成される。
図3Bを参照するに、光閉じ込め構造は、複数の突起を有し、突起の先端部が円錐状であり、突起の断面は、先端部から該表面に向かって次第に広がる形状を有する、隣り合う円錐状の先端部が1μm~数10μm離隔して形成されていることが分かる。
【0028】
なお、赤外線吸収体10は、吸収層11の下に基材(不図示)を有してもよい。基材は、例えば、吸収層11を塗布等して形成するために用いるもの、例えばPDMSでもよく、後述する第2の実施形態のように、熱伝導材料によるものでもよい。
【0029】
本実施形態に係る赤外線吸収体10では、表面層12の光閉じ込め構造13により赤外線を表面層12の内部に取り込んで吸収層11に伝搬させ、吸収層11のカーボンブラックの粒子は、広い波長範囲に亘って赤外線を吸収する。これとともに、表面層12は実質的に顔料を含まないので、顔料の粒子による散乱がなく、散乱した赤外線が表面層12から外方に漏れるのを防止できる。さらに、吸収層11のカーボンブラックの粒子が赤外線を広い波長範囲に亘って吸収し、一部散乱した赤外線は、表面層12の樹脂により吸収され、表面層12から外部へ漏れ難い。これにより、赤外線吸収体10は、反射率を大幅に低下することができ、赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下になるように、さらには、赤外線波長が7μm以上14μm以下の範囲において半球全反射率が0.1%以下になるように構成することができる。
【0030】
本実施形態に係る赤外線吸収体10は、表面層12が樹脂を硬化して形成されているので、表面12aに形成された光閉じ込め構造13は従来の赤外線吸収体よりも接触耐性が高く、手で触れても光閉じ込め構造13が劣化しにくく半球全反射率の増加が抑制される。
【0031】
[第2の実施形態]
図4は、第2の実施形態に係る赤外線吸収体の構造を示す模式図である。
図4を参照するに、赤外線吸収体20は、吸収層11と、吸収層11の上に形成された表面層12を有し、さらに吸収層11の下に基材23を有する。赤外線吸収体20は、それ以外は、
図1に示した第1の実施形態に係る赤外線吸収体10と同様の構成を有するとともに、同様の作用・効果を有する。基材23は、熱伝導材料からなる。これにより、平面黒体装置の温度制御用の媒体と基材23とを接触するように構成することで、赤外線吸収体20の温度を制御しやすく、かつ赤外線吸収体20の温度の均一性を高めることができる。また、放射冷却装置において、冷却対象物と基材23とを接触するように構成することで、赤外線吸収体20の赤外線の放射により、冷却対象物を効率良く冷却できる。基材23は、アルミニウム、銅、銀および金の群から少なくとも1種の金属を含む基材を選択してもよく、シリコン基板、SiC基板およびAlN基板の群から少なくとも1種の非金属材料を含む基材を選択してもよい。
【0032】
図5は、第1の実施形態に係る赤外線吸収体の製造方法を示すフローチャートである。
図5を
図1と合わせて参照しつつ、本実施形態の赤外線吸収体の製造方法を説明する。
【0033】
最初に、複数の微小な突起が表面に形成されたモールドを準備する(S100)。モールドの作製手法は、
図6において説明する。
【0034】
次いで、カーボンブラックと樹脂により吸収層を形成する(S110)。具体的には、カーボンブラック、樹脂、樹脂材料によっては溶剤を自転公転ミキサー、ニーダ、ボールミル等で混練する。混練物を基板や樹脂シート、例えばPDMSに塗布して硬化させる。樹脂は、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂の群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いることができる。吸収層11は、赤外線吸収性が広帯域に亘って良好な点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂および塩化ビニル樹脂の群から選択される少なくとも一つの樹脂を用いること好ましい。カーボンブラックは、赤外線波長領域の広い帯域において高い赤外線吸収性を有する。カーボンブラックは、種々の粒径のもの、例えば、平均粒径が10nm~300nmのものを用いることができる。樹脂に対するカーボンブラックの重量比率が、1%~20%であることが好ましい。カーボンブラックの重量比率が1%よりも小さい場合、赤外線吸収率を確保するために吸収層11の厚さを増加すると熱伝導性が低下する。カーボンブラックの重量比率が20%よりも大きい場合、樹脂にカーボンブラックを良好に分散し難くなる。硬化後の吸収層の厚さは、20μm~500μmの範囲を有することが好ましく、20μm~300μmの範囲を有することがさらに好ましい。
【0035】
吸収層の表面に実質的に顔料を含まない樹脂液を塗布して、表面層の前駆体を形成する(S120)。具体的には、吸収層の表面に樹脂と樹脂材料によっては溶剤を含む樹脂液を塗布する。樹脂は、紫外線硬化樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂の群から少なくとも一つの樹脂であることが好ましい。紫外線硬化樹脂は、紫外線照射により短時間で硬化できる点で好ましく、さらに常温で硬化できる点で好ましい。
【0036】
次いで、樹脂液が硬化する前に、複数の微小な突起が表面に形成されたモールドを前駆体の表面に型押して樹脂液を硬化させ、表面に光閉じ込め構造13を有する表面層12を形成する(S130)。モールドの表面には、複数の微小な突起が形成されており、型押しすることで表面層の前駆体の表面に転写して、光閉じ込め構造13を形成する。樹脂液は紫外線硬化樹脂であることが好ましく、紫外線硬化樹脂に他の樹脂を含んでもよい。モールドは、紫外線を透過する素材であることが好ましい。これにより短時間で表面層の前駆体を硬化することができる。これにより、赤外線波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下に構成される赤外線吸収体10が形成される。赤外線吸収体10は、S110で用いた基板や樹脂シートを剥離してもよく、剥離しなくてもよい。S100で準備したモールドは、例えば、以下のようにして形成する。
【0037】
図6は、モールドの形成方法を示すフローチャートである。
図6を参照しつつ、モールドの形成方法を説明する。
【0038】
最初に、樹脂基板にイオンビームを照射する(S102)。具体的には、樹脂基板、例えば、アリルジグリコールカーボネート樹脂(CR-39)にサイクロトロンにより加速したイオンビームを照射する。これにより、樹脂基板の表面近傍にイオン飛跡が多数形成される。イオン飛跡はランダムに分布されることが好ましい。イオンビームとしては、酸素イオンを用いてもよいが、NeイオンとNeイオンよりも重いイオンのうちいずれかのイオンを用いることが好ましい。Neイオン以上の重さのイオンを用いると、樹脂基板のイオン飛跡に沿って選択的にエッチングが進みやすくなり、最終的なピットアスペクト比(ピット深さ/ピット半径)を大きくできるからである。樹脂基板は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、硝酸セルロースなどでもよい。
【0039】
イオンビームの加速エネルギーは200MeV以上であることが、十分な侵入深さを得られ、ピット半径を大きく取っても大きなピットアスペクト比を得られる点で好ましい。イオンビームの樹脂基板への照射密度は、適宜選択されるが、遠赤外線の波長の光をも捕えるのに必要十分なピットの密度の観点から1×105/cm2~1×107/cm2であることが好ましい。
【0040】
次いで、イオンビームを照射した樹脂基板をアルカリ溶液でエッチングして、当該樹脂基板の表面に凹凸面を形成する(S104)。具体的には、アルカリ溶液は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液を用いて、例えば70℃に加熱しながら、所定の時間、イオンビームを照射した樹脂基板を浸漬する。次いで、その樹脂基板を水洗し、乾燥する。
【0041】
次いで、S104で形成した樹脂基板の凹凸面を覆うように樹脂液を塗布し、硬化させ、樹脂基板から剥離してモールドを形成する(S106)。モールドの表面には、S104で形成した凹凸面が転写され、その凹凸面を反転した形状の凹凸面が形成される。モールドは、例えば、ガス透過性エラストマー素材、金属膜、シリコーン樹脂、光硬化性樹脂により形成する。モールドは、表面層を形成するステップ(
図5のS130)において、樹脂液の塗膜とモールドとの間に存在する気泡を脱泡し易い点で、ガス透過性エラストマー素材、例えば、PDMSを用いることが好ましい。また、金属膜のモールドを形成する場合には、S104で形成した凹凸面に、例えば、スパッタ法により厚さ50nmのTi膜および厚さ300nmのCu膜の電解めっき用の電極層を形成し、次いで、電解めっき法により電極層上に厚さ500μmのNiめっき膜を形成してもよい。モールドは無電解めっき法により形成してもよい。
【0042】
モールドの凹凸面は、具体的には、表面から外方に向けて突出するように形成された複数の突起を有する。突起は、その先端部が尾根状に連なる形状または円錐状の形状を有する。突起の断面は、先端部から基部に向かって次第に広がる形状を有する。先端部が尾根状に連なる形状の場合、隣り合う尾根が0.1μm~100μmであることが好ましく、中赤外線の波長範囲では、1μm~100μmであることがさらに好ましい。先端部が円錐状の場合、隣り合う先端部の距離は、0.1μm~100μmであることが好ましく、中赤外線の波長範囲では、1μm~100μmであることがさらに好ましい。
【0043】
S106で形成したモールドを用いて、光閉じ込め構造13を形成すると、先の
図3Aの電子顕微鏡写真に示したような、突起の先端部が尾根状に連なった凹凸面が形成される。
【0044】
なお、モールドは、S106で形成したモールドの凹凸面に樹脂液を塗布して転写した樹脂基板であってもよい。また、モールドは、S104で形成した凹凸面を有する樹脂基板であってもよい。このようなモールドを用いて光閉じ込め構造13を形成すると、
図3Bに示した突起の先端部が円錐状の形状を有する凹凸面が形成され、同様の赤外線吸収効果が得られる。
【0045】
[実施例1]
実施例1は、
図4に示した第2の実施形態の赤外線吸収体20の実施例である。基材23としてAl板を用いた。Al板の上に、吸収層11として、絵の具のアクリルガッシュ(ターナー色彩社、商品名:アクリルガッシュ普通色ランプブラック(PBk7))を、バーコーターを用いて塗布して乾燥した(厚さ100μm)。吸収層11の表面に透明のアクリル樹脂系の紫外線硬化樹脂液(パジコ社製、商品名:UV-LEDレジン 星の雫)を塗布して、厚さ150μmに形成し、
図6およびその説明により形成したPDMS製のモールドにより型押しし、モールドの裏面から紫外線を照射(紫外線ランプ(エルベール社製、商品名LED&UV LAMP)、6W、照射時間:3分)して、光閉じ込め構造を有する表面層12を形成した。実施例1の光閉じ込め構造は、
図3Aに示した形状を有する。
【0046】
[実施例2]
実施例2は、
図1に示した第1の実施形態の赤外線吸収体10の実施例である。吸収層11は、カーボンブラックを含む樹脂層として、2液性エポキシ樹脂(日新レジン社製、商品名:クリスタルレジン)に対してカーボンブラック(Strem Chemicals, Inc社製、商品名:アセチレンカーボンブラック(99.99%)(50%compressed)、平均粒径 42nm)5重量%を自転公転ミキサーにより混練した。混錬物をバーコーターによりアリルジグリコールカーボネート樹脂(CR-39)板に塗布し硬化して、厚さ150μmに形成した。吸収層11の表面に2液性エポキシ樹脂(日新レジン社製、商品名:クリスタルレジン)を塗布して厚さ150μmに形成し、実施例1で用いたPDMS製のモールドを用いて型押しし硬化させて、光閉じ込め構造を有する表面層12を形成し、赤外線吸収体を得た。
【0047】
[比較例1]
比較例1は、Al板上に実施例1と同様の表面層を有する。Al板に実施例1で用いた紫外線硬化樹脂液で実施例1と同様に、表面層を厚さ150μmに形成し、その表面に実施例1と同様のPDMS製のモールドを型押しして硬化させ、モールドを剥離して光閉じ込め構造を形成した。
【0048】
[比較例2]
比較例2は、実施例2の吸収層に光閉じ込め構造を形成したものである。実施例2と同様の配合の2液性エポキシ樹脂とカーボンブラックとの混錬物をPDMSシートに塗布して、実施例2と同様のPDMS製のモールドを型押しして硬化させ、モールドを剥離して光閉じ込め構造を形成した。
【0049】
[比較例3]
比較例3は、吸収層をシリコーン樹脂とカーボンブラックを含む樹脂層として、表面に光閉じ込め構造を形成したものである。二液式硬化性のシリコーン組成物(信越シリコーン社製主剤SIM-360、硬化剤CAT-360)の主剤と硬化剤を9:1で混合し、さらに、シリコーン組成物に対してカーボンブラックを5重量%混練し、脱泡後、
図6のS104およびその説明により形成したCR-39製のモールドの凹凸面に滴下して塗布して表面を覆い、さらに真空デシケータ内で脱泡後、室温で12時間放置して硬化させて剥離し、表面に光閉じ込め構造が形成されたシリコーンゴムを得た。
【0050】
[比較例4]
比較例4は、Al板上に実施例2と同様の表面層だけを有する。アルミニウム(Al)板に実施例2で用いた2液性エポキシ樹脂で実施例1と同様に、表面層を厚さ150μmに形成し、その表面に実施例1と同様のPDMS製のモールドを型押しして硬化させ、モールドを剥離して光閉じ込め構造を形成した。
【0051】
図7Aは、実施例1の半球全反射率を示す図であり、
図7Bは、比較例1の半球全反射率を示す図である。
図7Aおよび
図7Bを参照するに、実施例1は、波長が2μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.3%以下であり、特に、波長が5μm以上15μm以下の範囲において半球全反射率が0.2%以下であり、さらに、波長が7μm以上14μm以下の範囲において半球全反射率が0.1%以下であることが分かる。これに対して、比較例1は、2μm以上7μm以下の範囲および10μm以上15μm以下の特定の波長において半球全反射率が0.3%を超えていることが分かる。これから、実施例1は、吸収層にカーボンブラックを含んでいるので、上記の特定の波長においても赤外線を吸収していることが分かる。実施例1は基材にAl板を用いているが、比較例1と比較すると、吸収層による赤外線の吸収によりAl板による赤外線の反射の影響はないことが分かる。
【0052】
図8Aは、実施例2の半球全反射率を示す図であり、
図8B~
図8Dは、各々、比較例2~4の半球全反射率を示す図である。
図8Aを参照するに、実施例2は、波長が3μm以上15μm以下(つまり、5μm以上15μm以下を含む。)の範囲において半球全反射率が0.2%以下であり、さらに、波長が6μm以上14μm以下の範囲において半球全反射率が0.1%以下であることが分かる。
図8Bおよび
図8Cを参照するに、比較例2および3は、実施例2よりも3μm以上15μm以下の範囲の全体において半球全反射率が増加している。このことは、実施例2においては、表面層が設けられていて、表面層に顔料の一つであるカーボンブラックが含まれていない効果であると考えられる。
【0053】
図8Aおよび
図8Dを参照するに、比較例4においては、2μm以上7μm以下の範囲および11μm以上15μm以下の特定の波長において半球全反射率が0.3%を超えていることが分かる。比較例4には、カーボンブラックを含む吸収層が形成されていないのに対して、実施例2には当該吸収層が形成されているので、実施例2においては、上記の特定の波長においても赤外線を吸収していることが分かる。
【0054】
実施例1、2、比較例1、2および4で用いたモールドは、以下のようにして作製した。厚さ0.8mmのCR-39の樹脂基板(製品名バリオトラック、フクビ化学工業社製、長瀬ランダウア社販売)に、量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所のAVFサイクロトロンにより加速エネルギー200MeVのネオン(Ne)イオンを照射した。照射密度は1×106/cm2に設定した。次いで、イオンビームを照射した樹脂基板を70℃、6.38規定(N)の水酸化ナトリウム水溶液に16時間浸漬してエッチングを行い、その後水洗および乾燥して、表面に微細な凹凸が形成されたCR-39板を得た。次いで、二液式硬化性のシリコーン組成物(信越シリコーン社製主剤SIM-360、硬化剤CAT-360)の主剤と硬化剤を9:1で混合し、CR-39板の凹凸面に滴下して真空デシケータ内で脱泡後、室温で12時間放置して硬化させて剥離し、表面に光閉じ込め構造が形成されたシリコーンゴムのモールドを得た。比較例3で用いたモールドは、上記の表面に微細な凹凸が形成されたCR-39板を用いた。
【0055】
半球全反射率は、日本分光社製のフーリエ変換赤外分光分析装置(製品名FT/IR-6300 typeA)に半球全反射率測定ユニット(金コート積分球)を使用し、波長2μm~15μm(波数667cm-1~5000cm-1)の範囲を4cm-1の波数間隔で測定した。参照標準として、校正値付き標準反射板(米国ラブスフェア社製、製品名インフラゴールド)を用いた。
【0056】
測定する試料は、積分球の試料ポートに配置した。バックグラウンド・レベル(BG)の補正は、試料ポートに何も配置せず、測定光を積分球の外部に逃がすようにした際に検出される信号レベルをBGレベルとして、試料配置時の信号から差し引いた。
【0057】
図9は、一実施形態に係る平面黒体装置の概略構成を示す模式図である。
図9を
図4と合わせて参照すると、平面黒体装置30は、
図4に示した赤外線吸収体20と、赤外線吸収体20の基材23に接触して配置されるアルミニウム板31と、温度制御部32とを有する。温度制御部32は、アルミニウム板31を加熱および冷却する機構(不図示)、アルミニウム板31の温度を測定するセンサ(不図示)等と接続されている。温度制御部32は、アルミニウム板31を介して赤外線吸収体20の温度を所定の温度に設定する。赤外線カメラIRCは、赤外線吸収体20が放射する赤外線の波長および強度を測定することで、測定温度を校正することができる。
【0058】
平面黒体装置30は、赤外線吸収体20の半球全反射率が極めて低いので、赤外線吸収体20の表面層12に反射した外部からの赤外線が極めて少ない。この赤外線は、赤外線カメラIRCの温度校正の際にノイズとなるが、極めて少ない。したがって、平面黒体装置30の温度制御部32により設定された温度に対応して赤外線吸収体20から放射される赤外線を赤外線カメラIRCが受光して、より精確に温度校正が可能となる。なお、平面黒体装置30は、赤外線吸収体20の代わりに
図1に示した赤外線吸収体10を用いてもよい。
【0059】
図10は、一実施形態に係る放射冷却装置の概略構成を示す模式図である。
図10を
図4と合わせて参照すると、放射冷却装置40は、断熱容器41と、断熱容器41の内部に収容された冷却対象物42に基材23が接触するように配置された赤外線吸収体20と、断熱容器41の上部の開口を覆うように配置され、断熱容器41の内部と外部との対流を防止して内部の温度上昇を抑制するフィルム43とを有する。放射冷却装置40は、赤外線吸収体20が放射した赤外線を、断熱容器41の開口からフィルム43を介して放射することで熱エネルギーを外部に排出し、それにより冷却対象物42を冷却することができる。放射冷却装置40は、例えば装置内のデバイスの放熱に適しており、
図10に示した冷却対象物42がデバイスでもよい。断熱容器41は、用途によっては必須のものではない。
【0060】
以上、本発明の実施形態および実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。上記実施形態および実施例では、赤外線波長おける半球全反射率について説明したが、赤外線吸収体は、可視光波長領域でも半球全反射率は極めて低いので、可視光波長領域でも反射防止材として用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
10、20 赤外線吸収体
11 吸収層
12 表面層
13 光閉じ込め構造
14 突起
15 カーボンブラックの粒子
23 基材
30 平面黒体装置
40 放射冷却装置