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▶ アディジェ ソシエタ ペル アチオニの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20241205BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20241205BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241205BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/382
B23K26/00 P
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020210370
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2021098228
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】102019000025093
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508138955
【氏名又は名称】アディジェ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ パッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】マラ タネッリ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィア ストラーダ
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ プレヴィターリ
(72)【発明者】
【氏名】セルジオ マッテオ サバレーシ
(72)【発明者】
【氏名】マウリチオ スベッティ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-183455(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03159093(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01886757(EP,A1)
【文献】特表2018-506489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のワーク(2)のレーザ加工方法であって、
a)切断及び/又は穴開けを実行するために、前記ワーク(2)の作業ゾーン(7)のところで前記ワーク(2)にレーザビーム(5)を向けるステップと、
b)前記レーザビーム(5)と前記ワーク(2)の間の相対移動を、所定の速度で実行するステップと、
c)前記作業ゾーン(7)の複数の取得画像(9)を取得するステップと、
d)前記取得画像(9)から、少なくとも1つの特性パラメータの経時的変化を確定するステップと、
e)前記特性パラメータの前記経時的変化から、少なくとも1つの統計パラメータを計算するステップと、
f)前記統計パラメータから品質値を確定するステップと、
g)前記品質値に応じて、1つ又は複数のプロセスパラメータ、具体的には、前記レーザビーム(5)の少なくとも強度及び/又は前記レーザビーム(5)のレーザ周波数及び/又は前記レーザビーム(5)の焦点位置及び/又は前記所定の速度及び/又はガス噴射及び/又は前記ガス噴射のガス圧を制御するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも前記ステップc)~f)、具体的には前記ステップa)~f)が繰り返される、少なくとも1つのh)繰り返しステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップd)の間、所定の期間にわたって、前記経時的変化が確定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の期間が一定である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップe)の間、確率分布が、前記特性パラメータの前記経時的変化から確定され、前記統計パラメータが、前記確率分布から確定され、具体的には、前記統計パラメータが、前記確率分布のそれぞれの中央値、それぞれの分散及びそれぞれの歪度からなるグループの中で選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記統計パラメータ及び前記品質値が、ドロスの存在及び/又は形成及び/又は量の特徴を表す、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
目標品質値を設定するステップをさらに含み、
前記ステップg)の間、1つ又は複数の前記プロセスパラメータが、前記品質値及び前記目標品質値の関数として制御される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップg)の間、1つ又は複数の前記プロセスパラメータが、前記目標品質値に等しい品質値を実現するように制御される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各取得画像(9)が熱の画像である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップd)の間、閾値処理サブフェーズが実行され、前記閾値処理サブフェーズの間、各変換画像(23)を得るためにそれぞれの前記取得画像(9)がセグメント化される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記各取得画像(9)が高強度ゾーン(24)を含み、前記高強度ゾーン(24)が、具体的には、主要部分(25)と、前記主要部分(25)から延びる1つ又は複数の細長い部分(26)とを有し、
前記特性パラメータが、前記高強度ゾーン(24)の幅及び/又は長さ及び/又は強度によって、又はそれらに応じて、特定される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップf)の間、前記品質値が、前記統計パラメータから、線形関数又は非線形関数により得られる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップc)の間、前記取得画像(9)が、少なくとも1000フレーム/秒、具体的には少なくとも1500フレーム/秒のレートで取得される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された制御ユニット(3)を備える、ワーク(2)を切断且つ/又は穴開けするように構成されたレーザ加工機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2019年12月20日に出願されたイタリア特許出願第102019000025093号の優先権を主張し、その開示全体を参照によりここに援用する。
【0002】
本発明は、ワークを切断且つ/又は穴開けするためのレーザ加工方法に関する。具体的には、本発明は、連続モードで、切断又は穴開けステップ中に切断又は穴開けの品質を閉ループ制御する、さらに具体的には所定の加工品質を確保するために加工のプロセス制御をする、レーザ加工方法に関する。
【0003】
本発明はまた、ワークを切断且つ/又は穴開けするレーザ方法を実行するように構成されたレーザ加工機に関する。具体的には、本発明は、連続モードで、切断又は穴開けステップ中に切断又は穴開けの品質を閉ループ制御する、さらに具体的には所定の加工品質を確保するために加工の閉ループ制御をする、レーザ加工方法を実行するように構成された、レーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0004】
ワークを切断且つ/又は穴開けするためのレーザ加工機は周知である。典型的なレーザ加工機は、レーザビームの発光源と、ワーク用の支持体と、レーザビームの焦点位置を制御するための光学群と、ワークの加工中に生成された化合物をワーク自体から遠ざけるように方向付けるためのガス噴射を生成するように構成された発生装置と、レーザビームとワークの間の相対移動を実行するための移動装置とを備えている。
【0005】
使用時においては、ワークの切断又は穴開けの品質的な結果が、例えばレーザビームの強度や、ガス噴射の圧力、レーザビームとワークの間の相対移動の速度などによって決まる。
【0006】
例えば、ワークの切断又は穴開け部分の下縁にドロスが形成されることが知られている。
【0007】
理論的には、達成可能な最大限の品質、すなわち例えばドロス無しなどを実現するように、各パラメータを設定することが考案可能である。しかしながら、このような結果を実現するためには、それと同時に、生産性の低下を引き起こすように各プロセスパラメータを制御せざるを得ない。
【0008】
したがって、加工の生産性を最大化すると同時にその結果加工品質が確保されるようにパラメータを最適化するための情報を、例えばシミュレーション又は実用的な推定値から、或いは測定値から、得る必要がある。尚、このパラメータの最適化の結果、最適化されたパラメータのセットが確定されるが、これらのパラメータは静的なものであり、すなわちワークの加工中に変更されない。つまり、状況によっては、この最適化されたパラメータのセットを用いても、生産性、品質のどちらの面からも加工が最適に行われないことがある。
【0009】
尚、切断及び/又は穴開け中に生成されるドロスの大まかな推定値を、いくつかのプロセス測定値の分析から得ることができる手段を備えた加工機が知られている。具体的には、こういった推定値は一般に、離散的な閾値上にあり、ドロスを例えば「無し」又は「有り」などと分類するが、切断されたワーク上に実際に存在するドロスを表す連続的な値を推定することはできない。それに加えて、制御が無い場合、具体的には閉ループ制御が無い場合には、ドロス無しを確保するプロセスパラメータの調整が経験的に行われても、それによって生産性の面からみた作業条件は最適ではなくなる傾向がある。
【0010】
この文脈で例えば、加工の進行を監視するためにフォトダイオードを使用することも知られている。
【0011】
しかしながら、例えば、フォトダイオードの使用では、ドロスの形成に関する信頼性のある情報を得ることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、この分野では、加工品質を、具体的には連続モード且つオンラインで、さらに具体的にはオンラインで連続的な推定変数を得て、監視且つ調整できる可能性を有する、ワークを切断且つ/又は穴開けするためのレーザ加工方法及び/又はレーザ加工機を、さらに改良する必要性が感じられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも1つを簡易且つ経済的な形で克服することを可能にする、切断且つ/又は穴開けするためのレーザ加工方法と、レーザ加工機の実現である。
【0014】
具体的には、本発明の目的は、品質の制御と、得られた品質に応じた加工機のプロセスパラメータの制御とを可能にする、切断且つ/又は穴開けするためのレーザ加工方法と、レーザ加工機の実現である。
【0015】
上述の目的は、本発明が独立請求項に記載のレーザ加工方法に関することから、本発明によって達成される。好ましい代替実施形態は、それぞれの従属請求項で保護される。
【0016】
上述の目的はまた、本発明が請求項14に記載のレーザ加工機に関することから、本発明によって達成される。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として提供される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるレーザ加工機の部分概略図である。
図2a図1の加工機の作動中に得られた取得画像の例である。
図2b図2aの対照画像の分析の一ステップを示す図である。
図2c図2aの対照画像の分析の一ステップを示す図である。
図3】複数の取得画像の分析から得られた特性パラメータの経時的変化の図である。
図4図1の加工機の作動中における、2つの異なる条件でのそれぞれの特性パラメータの経時的変化から得られた、特性パラメータの分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、符号1が、全般に、ワーク2を切断且つ/又は穴開けするように構成されたレーザ加工機全体を示す。
【0020】
優先的には、ワーク2は金属材料でできている。具体的には、ワーク2は平面且つ/又は管状の形状を有する。
【0021】
より詳細には、レーザ加工機1は、
レーザ加工機1の作動を制御するための制御ユニット3と、
制御ユニット3に動作的に接続され、レーザビーム5を発するように構成された、レーザビーム5の発光源4と、
レーザビーム5を制御するための、具体的にはレーザビーム5を光軸Aに沿ってワーク2且つ作業ゾーン7に向けるための、光学群6(制御ユニット3に動作的に接続されている)と、
制御ユニット3に動作的に接続された移動装置であって、具体的には切断及び/又は穴開けの形状を特定するために、所定の速度で、レーザビーム5とワーク2の間の相対移動を実行するように構成された移動装置と、を備える。
【0022】
尚、具体的には、作業ゾーン7は、ワーク2の、使用中レーザビーム5に曝される領域であり、したがって切断且つ/又は穴開けされる領域である。この作業ゾーン7は、レーザビーム5とワーク2の間の相対移動が行われるために、使用中は動的である。
【0023】
優先的には、レーザ加工機1はまた、
制御ユニット3に動作的に接続され、ワーク2の切断及び/又は穴開け中に生成された化合物をワーク2から遠ざけるように方向付けるためのガス噴射を生成するように構成された、発生装置(図示せず、それ自体は知られている)を、備える。
【0024】
いくつかの好ましい非限定的な実施形態によると、制御ユニット3は、レーザ加工機1のプロセスパラメータ、具体的にはレーザビーム5の強度及び/又はレーザビーム5のレーザ周波数及び/又はレーザビーム5の焦点位置及び/又はレーザビーム5とワーク2の間の相対移動の所定の速度及び/又はガス噴射及び/又はガス噴射のガス圧を、制御するように構成される。
【0025】
優先的には、制御ユニット3は、プロセスパラメータをフィードバックモードで制御するように構成される。
【0026】
尚、上記プロセスパラメータは、レーザ加工機1の作動を規定する全て(ほぼ全て)のパラメータである。
【0027】
有利には、レーザ加工機1はまた、加工工程、具体的には切断及び/又は穴開けを、監視するように構成された監視装置8を備える。具体的には、監視装置8は、作業ゾーン7の複数の取得画像9(図2aに取得画像の例が示されている)を取得するように構成される。
【0028】
具体的には、監視装置8は制御ユニット3に動作的に接続され、制御ユニット3は、少なくとも、取得画像9から抽出且つ/又は得られた情報に応じて、レーザ加工機1の作動を制御するように構成される。
【0029】
具体的には、監視装置8は、レーザ加工機1の作動中に取得画像9を取得するように構成される(つまり、監視装置8はオンラインモードで動作するように構成される)。
【0030】
いくつかの好ましい非限定的な実施形態によると、監視装置8は、プロセス放射、すなわち作業ゾーン7に存在する熱の熱的放射を捉えるように構成される。
【0031】
優先的には、発光源4は、ND:YAGレーザ、具体的にはファイバタイプのND:YAGレーザ、又は炭酸ガスレーザを備える。
【0032】
より詳細には、光学群6は、レーザビーム5をワーク2に向け、レーザビーム5の焦点を特定するように構成される。
【0033】
優先的には、光学群6は、発光源4からワーク2への光路Pを特定するように構成され、光路Pは、横向きの、具体的には光軸Aに垂直な、第1の部分P1と、光軸Aに同軸な第2の部分P2とを含む。つまり、レーザビーム5は部分P1と部分P2に沿って伝播し、それぞれ、P1は、P2に対して垂直であり、部分P2は、優先的には光軸Aと一致する。
【0034】
優先的には、光学群6は、レーザビーム5の焦点を特定するように構成された少なくとも1つの集束レンズ14を備え、具体的には、集束レンズ14は部分P2に配置される。
【0035】
より具体的には、光学群6はまた、レーザビーム5を部分P1から部分P2へ偏向させるように構成された、コリメートレンズ15と二色性ミラー16を備える。具体的には、コリメートレンズ15は部分P1に配置される。
【0036】
優先的には、二色性ミラー16は、レーザビーム5が第1の部分P1に沿った伝播から第2の部分P2に沿った伝播へ偏向するように配置される。
【0037】
より詳細には、上記移動装置は、ワーク2に対する相対的な前進方向D1へのレーザビーム5の移動を制御するように構成される。
【0038】
優先的には、上記移動装置は、ワーク2を支持するように構成された支持体(図示せず、それ自体は知られている)を備え、具体的には、上記支持体は、レーザビーム5とワーク2の間の相対移動を実現させるように作動するよう可動式になっている。
【0039】
或いは、又はそれに加えて、上記移動装置の少なくとも一部分が、レーザビーム5とワーク2の間の相対移動を実現させるようにワーク2を移動させるよう、上記支持体に組み込まれ且つ/又は関連付けられる。
【0040】
或いは、又はそれに加えて、上記移動装置は、発光源4及び/又は光学群6及び/又は光学群6の一部分を担持する、レーザビーム5を移動させるための可動支持台を備える。
【0041】
より詳細には、監視装置8は、取得画像9を取得するように構成された、例えばCCDやCMOSタイプなどの少なくとも1つのビデオカメラ17を備える。具体的には、ビデオカメラ17は、時間的に一続きの取得画像9を得るために、取得画像9を連続的に取得するように構成される。より具体的には、ビデオカメラ17は、少なくとも1000フレーム/秒、具体的には少なくとも1500フレーム/秒の頻度(周波数)で取得画像9を取得するように構成される。
【0042】
具体的には、ビデオカメラ17は、作業ゾーン7から発生する光束18を捉えるように構成され、その光束18は、使用中、第3の方向(第2の方向P2の反対)に伝播する。
【0043】
より具体的には、光束18は、作業ゾーン7におけるプロセス放射に対応する。
【0044】
優先的には、光束18は、光学群6の少なくとも一部分、具体的には集束レンズ14及び二色性ミラー16を通過する。
【0045】
優先的には、ビデオカメラ17は、光軸Aに対して同軸に配置される。具体的には、光束18は、部分P2に対して平行に伝播する。
【0046】
より詳細には、監視装置8はまた、所定の波長帯域の光をビデオカメラ17が確実に受け取るように構成された光学フィルタ群19を備える。具体的には、光学フィルタ群19は、近赤外で動作する(これは近赤外フィルタである)。
【0047】
具体的には、光学フィルタ群19は、上記第3の方向に対してビデオカメラ17の上流に配置される。
【0048】
具体的には、光学フィルタ群19は、低帯域フィルタ(例えば750nmのもの)とローパスフィルタ(例えば1000nmのもの)を備える。
【0049】
尚、レーザ加工機1の作動時には、作業ゾーン7のワーク2から材料を、レーザビーム5が具体的には加熱によって切り取り、ワーク2の厚み全体に沿って延びるスロットを作成する。具体的には、レーザビーム5は、ワーク2の第1の表面20から、その第1の表面20と反対側のワーク2の第2の表面21まで、ワーク2を切断する。より具体的には、表面20にはスロットの第1の縁部、その第1の縁部と反対側の、表面21にはスロットの第2の縁部が形成される。
【0050】
また、作業ゾーン7のワーク2の切断及び/又は穴開け中は、生成される化合物を、それらが冷える前に、ガス噴射で除去且つ/又は遠ざけるべきことが知られている。
【0051】
さらに、ワーク2の加工中に、第2の縁部にドロスが形成される可能性があることも知られている。具体的には、これは、レーザビーム5によって取り除かれた材料が、ワーク2から除去される前に冷え、その結果そこに留まってドロスを生成する故に発生する。
【0052】
具体的には、ドロスの生成は、1つ又は複数のプロセスパラメータに応じて発生する。プロセスパラメータとはつまり、レーザビーム5の強度及び/又はレーザビーム5のレーザ周波数及び/又はレーザビーム5の焦点位置及び/又はレーザビーム5とワーク2の間の相対移動の所定の速度及び/又はガス噴射及び/又はガス噴射のガス圧、などである。
【0053】
プロセスパラメータの制御は通常、ドロスの形成が実質的に抑制されるように行われる。しかしながら、それにより生産性が低下し、場合によってはコストも上昇する。
【0054】
本出願人は、ドロスの形成は必ずしも抑制する必要はなく、その許容できる存在及び量は、具体的な用途に応じて決まるということに気がついた。
【0055】
このため、以下に説明するように、まずは第一に、切断及び/又は穴開けの品質、並びに/或いはドロスの存在及び量を制御する(生成されるドロスの時間と量の両方について定量的且つ連続的に制御する)手段を、レーザ加工機1は備えている。
【0056】
有利には、制御ユニット3は、取得画像9から、具体的には取得画像9の分析から、品質値を確定するように構成される。
【0057】
具体的には、品質値は、切断及び/又は穴開けの品質を示す。より具体的には、品質値は、作業ゾーン7に形成されるドロスの存在及び/又は量を表す。
【0058】
いくつかの好ましい非限定的な実施形態によると、制御ユニット3は、レーザ加工機1の作動中に、品質値を、具体的には生成されるドロスの時間と量の両方の点から、連続的に確定するように構成される。このようにして、レーザ加工機1の作動中全体で、切断及び/又は穴開け品質の制御が確保される。
【0059】
優先的には、制御ユニット3は、取得画像9から品質値を分析且つ/又は確定するように構成された、分析ユニット22を備える。
【0060】
具体的には、分析群22は、各取得画像9から、少なくとも1つの特性パラメータ、優先的には複数の特性パラメータを、確定するように構成される(図2cを参照)。
【0061】
各取得画像9が経時的に異なる時点で確定されることを考慮すると、分析群22はまた、取得画像9の1つ又は複数の特性パラメータの各経時的変化(例えば図3を参照)も確定するように構成される。
【0062】
優先的には、分析群22はまた、1つ又は複数の特性パラメータの各経時的変化から、少なくとも1つの統計パラメータ、優先的には複数の統計パラメータを計算し、その1つ又は複数の統計パラメータを起点として、品質値を確立していくように構成される。具体的には、各経時的変化は、所定の一期間について検討され、具体的には、この所定の期間は一定である。
【0063】
より詳細には、分析群22は、具体的にはセグメント化によって、各取得画像9を(他とは独立して)変換画像23(図2bを参照)に変換して、それぞれの二値画像を得るように構成される。
【0064】
優先的には、各変換画像23(二値画像)は、第1の色(例えば白色)と第2の色(例えば黒色)を含む。
【0065】
各取得画像9は、プロセス放射の強度に関する情報の特徴を含んでいるとみなすべきである。具体的には、上記の第1の色と第2の色が、各変換画像23のそれぞれのゾーンに関連付けられ、これらのゾーンは、所定の強度閾値以上の強度をそれぞれ有する、それぞれの変換画像23のそれぞれのゾーンに対応する。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態によると、各取得画像9したがってそれぞれの変換画像23は、それぞれの高強度ゾーン24を含む。各高強度ゾーン24は、具体的には円の形状によって近似可能且つ/又は記述可能な、それぞれの主要部分25と、各主要部分25から延びる、具体的には相対的な前進方向D1に対して平行な方向D2に延びる、1つ又は複数のそれぞれの細長い部分26とを有する。具体的には、各高強度ゾーン24は(したがってそれぞれの主要部分25とそれぞれの細長い部分26も)、それぞれの取得画像9の、所定の強度閾値以上の強度を有するゾーンによって特定される。
【0067】
特に図2cを参照すると、各高強度ゾーン24の、具体的にはそれぞれの主要部分24及びそれぞれの細長い部分26の、幅w及び/又は長さl及び/又は強度によって、又はそれらに応じて、各特性パラメータが特定される。
【0068】
具体的には、分析群22は、各取得画像9及び/又は各変換画像23から、優先的には各変換画像23から、それぞれの幅w及び/又はそれぞれの長さl及び/又はそれぞれの強度を、確定するように構成される。
【0069】
具体的には、各高強度ゾーン24のそれぞれの幅wは、相対的な前進方向D1に対して垂直な方向D3の、高強度ゾーン24の最大の延びによって特定される。
【0070】
より具体的には、方向D3の最大の延びは、各主要部分24の方向D3の最大の延びに対応する。
【0071】
具体的には、各高強度ゾーン24のそれぞれの長さlは、高強度ゾーン24の重心cからの、高強度ゾーン24の方向D2の最大の延びとして特定される。具体的には、各長さlは、それぞれの細長い部分26の、重心cから最も離れている最大の延びに対応する。
【0072】
尚、各特性パラメータは、それぞれの長さl、それぞれの幅w又はそれぞれの強度だけでなく、それらの組み合わせ及び/又はそれらのそれぞれの時間微分係数によっても、特定され得る。
【0073】
より詳細には、分析群22はまた、各特性パラメータのそれぞれの経時的変化から、それぞれの確率分布(図4を参照)を確定し、それぞれの確率分布から、統計パラメータ(1つ又は複数)を確定するように構成される。具体的には、それぞれの統計パラメータ(1つ又は複数)は、上記確率分布のそれぞれの中央値、それぞれの分散及びそれぞれの歪度からなるグループの中で選択される。
【0074】
具体的には、図4は、各ワーク2の切断中に確定された確率分布の2つの例を示している。破線の確率分布は、実線で描かれた確率分布よりも高品質のレーザ切断から得られる。
【0075】
これらの図示された確率分布が示す違いは、異なるそれぞれの中央値、それぞれの分散及びそれぞれの歪度によって表し得ることは明らかである。
【0076】
より詳細には、分析群22は、非線形又は線形関数、具体的には非線形関数により、統計パラメータ(1つ又は複数)から品質値を確定するように構成される。優先的には、上記非線形関数はニューラルネットワークによって近似される。このニューラルネットワークは、使用中、品質値を確定するために統計パラメータ(1つ又は複数)を受け取る。
【0077】
優先的には、分析群22は、品質値の経時的変化を確定するように、具体的には時間と量の両方の点から、連続的に動作するように構成される。具体的には、分析群22は、各品質値を確定するために、所定の期間の間に連続して取得された複数の取得画像9を分析するように構成される。より具体的には、分析群22は、第1の品質値と、その第1の品質値に続く第2の品質値とをそれぞれ確定するために、第1の複数の取得画像9と、第2の複数の取得画像9とを分析するように構成される。少なくとも、第1の複数の取得画像9と第2の複数の取得画像9は、部分的に重なり合う。
【0078】
優先的には、第2の複数の取得画像9は、第1の複数の取得画像9と同じ数の取得画像9を含む。第2の複数の取得画像9は、所定の数の追加取得画像9を含み、この追加取得画像9は、(経時的変化に関して)第1の複数の取得画像9に属する取得画像9の後に取得されている(つまり、上記所定の数の追加取得画像9は、経時的変化に関して、第1の複数の取得画像9の最後の取得画像9の後に続く)。さらに、第1の複数の取得画像9のうち、上記所定の数と同一の数の取得画像9は、第2の複数の取得画像9よりも前に取得されており、それらの画像を第2の複数の取得画像9は含まない(すなわち、第1の複数の取得画像9のうち最も古い取得画像群は、第2の複数の取得画像9に含まれない)。具体的には、上記所定の数は1以上である。
【0079】
つまり、第1の複数の取得画像9と第2の複数の取得画像9は、同一幅の期間、具体的には所定の期間に等しい時間幅にまたがっている。一続きの第1の複数の取得画像9は、第2の複数の取得画像9全てよりも前に取得された取得画像9を含み、第2の複数の取得画像9は、少なくとも1枚は第1の複数の取得画像9全てよりも後に取得された、一続きの取得画像9を含む。
【0080】
より詳細には、制御ユニット3はまた、目標品質値の設定を、例えばレーザ加工機1のマンマシンインターフェースなどによって、受け取る且つ/又は可能にするように構成される。目標品質値は、所望の切断及び/又は穴開け品質を示す。例えば、目標品質値は、ドロスの存在及び/又は量を示す。具体的には、目標品質値は、ドロスの許容できる量を表す。
【0081】
優先的には、制御ユニット3は、確定された品質値(1つ又は複数)と目標品質値に応じて、プロセスパラメータを制御するように構成され、具体的には、切断及び/又は穴開けを継続する際、目標品質値と(ほぼ)同一の品質値を得るように構成される。
【0082】
尚、この説明の文脈では、「品質値」という語は、得られた品質レベルを表す。
【0083】
また、この説明の文脈では、「目標品質値」という語は、その目標品質値を、例えばオペレータなどが選択且つ/又は制御できることを示す。目標品質値は、最高品質の切断及び/又は穴開けを実現するように選択することもできるが(例えばドロスの形成を最小限に抑える、さらには回避するなどのために)、レーザ加工機1とその作動によって、制御且つ/又は任意に選択することが可能になる。
【0084】
具体的には、目標品質値は、所望の品質レベル、すなわち切断及び/又は穴開けによって実現すべき品質レベルを表す。
【0085】
使用時については、レーザ加工機1がワーク2を切断且つ/又は穴開けする。
【0086】
具体的には、レーザ加工機1の作動は、少なくとも以下のステップを含む。
a)切断及び/又は穴開けを実行するために、上記ワーク2の作業ゾーン7のところで上記ワーク2にレーザビーム5を向けるステップと、
b)具体的には切断及び/又は穴開けの形状を特定するために、所定の速度で、上記レーザビーム5と上記ワーク2の間の相対移動を実行するステップと、
c)上記作業ゾーン7の複数の取得画像9を取得するステップと、
d)上記取得画像9から、1つ又は複数の特性パラメータの経時的変化を確定するステップと、
e)各上記特性パラメータの経時的変化から、それぞれの少なくとも1つの統計パラメータを計算するステップと、
f)上記統計パラメータ(1つ又は複数)から品質値を確定するステップと、
g)上記品質値に応じて、具体的にはフィードバックで、1つ又は複数のプロセスパラメータ(レーザ加工機1のもの)、例えば、上記レーザビーム5の強度、上記レーザビーム5のレーザ周波数、上記レーザビーム5の焦点位置、上記レーザビーム5と上記ワーク2の間の相対移動の上記所定の速度、ガス噴射又は上記ガス噴射のガス圧などを制御するステップ。
【0087】
優先的には、レーザ加工機1の作動は、少なくとも上記ステップc)~f)、優先的には上記ステップa)~f)が繰り返される、1つ又は複数の繰り返しステップを含む。
【0088】
優先的には、上記ステップa)及びb)の間、上記ステップc)~g)が実行される。
【0089】
より詳細には、ワーク2にレーザビーム5を向ける上記ステップの間、発光源4がレーザビーム5を発し、光学ユニット6がそのレーザビーム5をワーク2に向ける。具体的には、制御ユニット2が、光学群6、具体的には集束レンズの制御によって、レーザビーム5の焦点を制御する。
【0090】
優先的には、ステップb)の間、ワーク2及び/又はレーザビーム5が移動する。具体的には、ステップb)の間、ワーク2を担持する支持体並びに/或いは発光源4及び/又は光学群6を担持する支持台が移動する。より優先的には、ワーク2のみを移動させるために、支持体のみが操作される。
【0091】
優先的には、ステップb)の間、監視装置8とワーク2の間でも、相対移動が実行される。具体的には、レーザビーム5と監視装置8との間では、相対移動は実行されない。
【0092】
尚、レーザビーム5とワーク2の間で相対移動が行われるため、作業ゾーン7もまた、時間の経過とともにワーク2に対して変化していく。
【0093】
より詳細には、ステップc)の間、取得画像9が、監視装置8、具体的にはビデオカメラ17によって、確定される。
【0094】
具体的には、ステップc)の間、ビデオカメラ17が、プロセス放射(すなわち熱)を捉える。
【0095】
具体的には、ステップc)の間、各取得画像9は、互いに別々の時点で取得される。したがって、各取得画像9は、やはり別々の作業ゾーン7に対応する。
【0096】
優先的には、ステップc)の間、取得画像9は、具体的には監視装置8、より具体的にはビデオカメラ17によって、少なくとも1000フレーム/秒、具体的には少なくとも1500フレーム/秒の周波数で取得される。
【0097】
より詳細には、ステップd)の間、各特性パラメータの経時的変化が、所定の期間、具体的には一定である所定の期間にわたって、確定される(つまり、各特性パラメータの確定に使用される取得画像9の数は一定であり、事前に設定される)。
【0098】
優先的には、ステップd)の間、変換サブステップが実行され、その間に、各取得画像9がそれぞれの変換画像23に変換される。その後、その変換画像23から、各特性パラメータが得られる。
【0099】
具体的には、上記変換ステップは閾値処理サブフェーズであり、その間に、各取得画像9が、それぞれの二値画像(変換画像23)を得るためにセグメント化される。
【0100】
具体的には、特に図2bを参照すると、上記閾値処理サブフェーズの間、第1の色(例えば白色)が、所定の強度閾値以上の強度をそれぞれ有する、各変換画像23(二値画像)のそれぞれのゾーンに関連付けられ、第2の色(例えば黒色)が、所定の強度閾値未満の強度をそれぞれ有する、各取得画像9のそれぞれのゾーンに関連付けられ、各変換画像23(二値画像)のそれぞれのゾーンが、それぞれの取得画像9(二値画像)のそれぞれのゾーンに対応する。
【0101】
具体的には、上記閾値処理サブフェーズの間、各変換画像23を得るために、所定の強度閾値に基づいて、それぞれの取得画像9の各ピクセルが第1の色又は第2の色に関連付けられる。第1の色は、所定の強度閾値以上の強度を有するピクセルに関連付けられ、第2の色は、所定の強度閾値未満の強度を有するピクセルに関連付けられる。
【0102】
優先的には、ステップd)の間、各変換画像23(二値画像)が1つ又は複数の特性パラメータを確定するために分析され、これらの特性パラメータは、高強度ゾーン24の幅及び/又は長さ及び/又は強度によって、又はそれらに応じて特定される。
【0103】
具体的には、ステップd)の間、各高強度ゾーン24のそれぞれの幅wは、高強度ゾーン24、具体的にはそれぞれの主要部分25の、方向D3の最大の延びによって特定される。
【0104】
具体的には、ステップd)の間、各高強度ゾーン24のそれぞれの長さlは、高強度ゾーン24の重心cから方向D2の、高強度ゾーン24、具体的には細長い部分の最大の延びによって特定される。
【0105】
より詳細には、ステップe)の間、各特性パラメータの経時的変化から、それぞれの確率分布が確定され(図4を参照)、各確率分布によって、統計パラメータ(1つ又は複数)が確定される。具体的には、各統計パラメータは、それぞれの確率分布のそれぞれの中央値、それぞれの分散及びそれぞれの歪度からなるグループの中で選択される。
【0106】
より詳細には、ステップf)の間、品質値が、統計パラメータ(1つ又は複数)から、非線形又は線形関数、優先的には非線形関数により得られる。
【0107】
具体的には、上記非線形関数は、1つ又は複数の統計パラメータをパラメータとして受け取る人工ニューラルネットワークによって、近似される。
【0108】
いくつかの好ましい非限定的な実施形態によると、上記統計パラメータ(1つ又は複数)及び上記品質値は、ドロスの存在及び/又は形成及び/又は量の特徴を表す。
【0109】
優先的には、レーザ加工機1の作動はまた、目標品質値を設定するステップを含む。この目標品質値は、所望の切断及び/又は穴開け品質を特定する。具体的には、このステップの間、特定の目的に十分な切断及び/又は穴開けの品質を設定し、品質と価格の比を最適化できる可能性が、ユーザに提供される。
【0110】
より詳細には、ステップg)の間、プロセスパラメータが、確定された品質値及び目標品質値に応じてチェックされる。
【0111】
優先的には、ステップg)の間、プロセスパラメータ(1つ又は複数)が、目標品質値にほぼ等しい品質値を実現するように制御される。
【0112】
本発明によるレーザ加工機1とその作動方法の特徴を考察すると、それによって得られる利点は明らかである。
【0113】
具体的には、レーザ加工機1とその作動により、切断又は穴開け品質を、具体的には時間と量の両方の点から、連続的に監視することが可能になり、また、確定された品質値によって定量的に表された品質に応じて、その作動を制御することが可能になる。
【0114】
他の利点は、特性パラメータの経時的変化の処理から得られる統計パラメータを使用することにある。これによって、特定の位置及び特定の時点だけを対象にして確定できる情報ながら、より大きなデータセットを反映する、離散的でない情報を、得ることが可能になる。このようにして、確定の精度が向上する。
【0115】
他の利点は、目標品質値を設定できる可能性にある。このようにして、ワーク2の品質と価格の比を最適化できる可能性が、オペレータに提供される。
【0116】
最後に、本明細書で説明且つ例示したレーザ加工機1と作動方法に対して、特許請求の範囲によって定義される保護の範囲から逸脱しない修正及び変更を加えてもよいことは明らかである。
【符号の説明】
【0117】
1 レーザ加工機
2 ワーク
3 制御ユニット
4 発光源
5 レーザビーム
6 光学群
7 作業ゾーン
8 監視装置
9 取得画像
14 集束レンズ
15 コリメートレンズ
16 二色性ミラー
17 ビデオカメラ
18 光束
19 光学フィルタ群
20 ワークの第1の表面
21 ワークの第2の表面
22 分析群
23 変換画像
24 高強度ゾーン
25 高強度ゾーンの主要部分
26 高強度ゾーンの細長い部分
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4