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特許7598858高温セラミック構成要素のための原子層堆積コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】高温セラミック構成要素のための原子層堆積コーティング
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20241205BHJP
   C01F 17/218 20200101ALI20241205BHJP
   C01F 17/259 20200101ALI20241205BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20241205BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/02 D
C01F17/218
C01F17/259
C23C16/455
B32B9/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021530891
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 US2019064539
(87)【国際公開番号】W WO2020117979
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】16/211,335
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】ウー シャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】サン ジェニファー ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ライス マイケル アール
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0094348(US,A1)
【文献】特開2018-162205(JP,A)
【文献】特表2017-514991(JP,A)
【文献】特表2018-515691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
C01F 17/218
C01F 17/259
C23C 16/455
B32B 9/00
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた物品であって、
処理チャンバでの使用に適した物品と、
物品上に形成されたアモルファスカーボン接着層と、
アモルファスカーボン接着層上に形成されたコーティングであって、
、YZr、YZrOF、YAl12、YAl、YF、YOF、Y、Er、ErAl12、ErF、Er、La、Lu、Sc、ScF、Sc、Gd、GdF、Gd、Sm、及びDy、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される希土類金属含有セラミックを含み、
均一で、コンフォーマルで、無孔質であるコーティングとを備えるコーティングされ
た物品。
【請求項2】
物品はグラファイトを含み、
物品は、ヒータ、静電チャック、又はサセプタから選択される高温物品である、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項3】
コーティングは約100nmから約5μmの厚さを有している、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項4】
物品は、見通し内堆積処理には到達し難い表面を含む内部チャネルを備え、
コーティングは物品の内面にさらに形成されている、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【請求項5】
コーティングされた物品を形成する方法であって、
処理チャンバでの使用に適した物品を供給する工程であって、物品は第1熱膨張係数を有している工程と、
第2希土類セラミック化合物に対する第1希土類セラミック化合物のモル比を選択する工程であって、選択されたモル比で第1及び第2希土類セラミック化合物を含むセラミックコーティングが、原子層堆積によって物品の表面に堆積されると、第2熱膨張係数を有するセラミックコーティングが得られ、第2熱膨張係数は第1熱膨張係数からの10%以内になっている工程と、
物品の1つ以上の表面にアモルファスカーボン接着層を形成する工程と、
原子層堆積を実行して、アモルファスカーボン接着層上にセラミックコーティングを堆積させる工程とを含む方法。
【請求項6】
第1及び第2希土類化合物はそれぞれ、Y、YZr、YZrOF、YAl12、YAl、YF、YOF、Y、Er、ErAl12、ErF、Er、La、Lu、Sc、ScF、Sc、Gd、GdF、Gd、Sm、及びDyからなる群から独立して選択され、
第1及び第2希土類化合物は異なっている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1希土類セラミック化合物は希土類酸化物を含み、
第2希土類化合物は希土類オキシフッ化物又は希土類フッ化物を含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
第1希土類セラミックはYを含み、
第2希土類セラミックはYOyFを含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
セラミックコーティングは、均一で、コンフォーマルで、無孔質であり、
物品は、AlN、Al、及びグラファイトからなる群から選択される組成を含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
物品は、ヒータ、静電チャック、ノズル、ガス分配プレート、シャワーヘッド、静電チャック構成要素、チャンバ壁、ライナ、ライナキット、ガスライン、蓋、チャンバ蓋、ノズル、シングルリング、プロセスキットリング、ベース、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザ、冷却ベース、チャンバビューポート、ベローズ、フェースプレート、及び選択性変調器からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
コーティングの熱膨張係数は、物品の熱膨張係数からの10%以内である、請求項1に記載のコーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の諸実施形態は、物品、コーティングされたチャンバ構成要素、及びセラミックコーティングでチャンバ構成要素をコーティングする方法に関する。セラミックコーティングは、構成要素(例えば、高温ヒータ又は静電チャック)のすべての表面をコーティングする希土類金属含有層を含むことができる。セラミックコーティングを、原子層堆積(ALD)などの見通し外技術を使用して形成してもよい。
【背景】
【0002】
様々な半導体製造処理では、高温、高エネルギープラズマ、腐食性ガスの混合物、高応力、及びそれらの組み合わせが使用される。これらの極端な状態のために、しばしばチャンバ構成要素が浸食され、粒子汚染物質が生成される。
【0003】
通常、様々な方法で保護コーティングをチャンバ構成要素に堆積させる。その方法とは、溶射、スパッタリング、プラズマ溶射又は蒸着技術などである。これらの技術では、一般に、コンフォーマルで均一なコーティングを、構成要素の複雑な構造的フィーチャーに堆積させることができない。そのため、そのような構成要素の形状の複雑さには、設計上の制約が課せられている。さらに、これらの技術は、一般にヒータの性能に顕著な影響を与えずにヒータ構成要素をコーティングするには適していない。それは、ヒータの保護レベルを、より薄くて、欠陥密度の低い膜による保護レベルと同一にするには、比較的厚いコーティングを用いるからである。
【発明の概要】
【0004】
本明細書の諸実施形態には、高温物品のための原子層堆積コーティングが記載されている。一態様では、コーティングされた物品は、処理チャンバでの使用に適した物品を備え、この物品は、外面と、見通し内堆積処理には到達し難い内面を含む内部チャネルとを備える。コーティングされた物品は、物品の外面及び内面に形成されたコーティングをさらに備え、コーティングは希土類金属含有セラミックを含み、希土類金属含有セラミックは、Y、YZrO、YZr、YZrOF、YAl12、YAl、YF、Y、YOF、Er、ErAl12、ErF、E、ErOF、La、Lu、Sc、ScF、ScOF、Gd、Sm、Dy、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、コーティングは実質的に均一で、コンフォーマルで、無孔質である。
【0005】
別の一態様では、コーティングされた物品は、処理チャンバでの使用に適した物品と、物品上に形成されたアモルファスカーボン接着層と、アモルファスカーボン接着層上に形成されたコーティングとを備え、コーティングは希土類金属含有セラミックを含み、希土類金属含有セラミックは、Y、YZrO、YZr、YZrOF、YAl12、YAl、YF、Y、YOF、Er、ErAl12、ErF、E、ErOF、La、Lu、Sc、ScF、ScOF、Gd、Sm、Dy、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、コーティングは実質的に均一で、コンフォーマルで、無孔質である。
【0006】
別の一態様では、コーティングされた物品を形成する方法は、処理チャンバでの使用に適した物品を供給する工程であって、物品は第1熱膨張係数を有している工程と、第2希土類金属含有セラミック化合物に対する第1希土類金属含有セラミック化合物のモル比を選択する工程であって、選択されたモル比で第1及び第2希土類金属含有セラミック化合物を含むセラミックコーティングが、原子層堆積によって物品の表面に堆積されると、第2熱膨張係数を有するセラミックコーティングが得られ、第2熱膨張係数は第1熱膨張係数からの10%以内になっている工程と、原子層堆積を実行して、セラミックコーティングを物品の表面に堆積させる工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示は、添付図面の図の中で、限定としてではなく、例として示され、同様の参照符号は同様の要素を示す。
図1】処理チャンバの断面図を示す。
図2A】本明細書で説明される原子層堆積技術による堆積処理の一実施形態を示す。
図2B】本明細書に記載の原子層堆積技術による堆積処理の別の一実施形態を示す。
図2C】本明細書に記載の原子層堆積技術による堆積処理の別の一実施形態を示す。
図3】諸実施形態による、セラミックコーティングが形成された例示的なサセプタを示す。
図4】諸実施形態による、セラミックコーティングが形成された例示的なヒータセンブリを示す。
図5】諸実施形態による、内部チャネルが形成された例示的な構成要素の断面側面図を示す。
図6A】諸実施形態による、単一層が形成されている構成要素の表面の断面図を示す。
図6B】諸実施形態による、複数の層が形成されている構成要素の表面の断面図を示す。
図7】諸実施形態による、原子層堆積を使用してセラミックコーティングを形成する方法を示す。
図8】諸実施形態による、接着層及びセラミック層が形成されているグラファイト基板の透過型電子顕微鏡写真である。
【詳細な説明】
【0008】
本明細書に記載の諸実施形態は、コーティングされた物品及びコーティングが物品上に堆積される方法を取り扱う。コーティングは、希土類金属含有層(例えば、イットリウム含有酸化物層又はイットリウム含有フッ化物層)であってもよい。あるいは、コーティングは、1つ以上の接着層及び1つ以上のセラミック層を含む多層コーティングであってもよい。堆積処理は、原子層堆積(ALD)処理などの見通し外処理であってもよい。
【0009】
既存のセラミックヒータ及びコーティング方法にはいくつかの欠点がある。例えば、ヒータがプラズマに曝されると、さらには、例えば、ヒータがバルクセラミックAlN、Al又はSiCコーティングされたグラファイトで形成されている場合には、スパッタ収率と浸食速度が通常は高くなる。例えば、SiC及びTaCでコーティングされたグラファイトヒータは、フッ素含有化学物質と相容れない。プラズマ溶射及びSiCコーティングされたグラファイトヒータはコンフォーマルではない。したがって、それらの形状の複雑度には設計上の制約が課される。また、既存のヒータコーティングの熱膨張係数(CTE)を調整することは困難であることから、高温で異なるCTEを持つ基板への適用は制限される。ほとんどのヒータコーティングは、このCTEの不一致の問題を悪化させる厚いコーティングである。
【0010】
本開示の諸実施形態は、既存のヒータ技術の問題のいくつかを解決する。例えば、本開示の諸実施形態の利点には、希土類酸化物及びオキシフッ化物のALDコーティングがヒータ、静電チャック、その他の複雑な形状の構成要素にコンフォーマルなカバレッジを提供する能力が含まれる。なお、この複雑な形状の構成要素は、見通し内堆積技術では到達できない複雑で高アスペクト比の内部形状を含んでいる。さらに、希土類酸化物及びオキシフッ化物のALDコーティングを施されたヒータは、高エネルギープラズマ衝撃下で低いスパッタ収率を示し、化学的/ラジカル(例えば、NFラジカルからの)攻撃による劣化に対して高度な耐性がある。希土類酸化物及びオキシフッ化物のALDコーティングを施されたヒータはまた、他のコーティング技術と比較して、より高い温度に耐え(例えば、損傷を受けることなく曝され)得る。なお、他のコーティング技術ははるかに厚いコーティングを利用しているため、CTEの不一致が存在する場合により高い応力を発生させている。希土類酸化物及びオキシフッ化物のALDコーティングを施されたヒータも、当然ながら非常に高い抗酸化性能を示す。さらに、ALDコーティングには、諸実施形態においてコーティングCTEを種々の基板のCTEと一致させる防御向上が、ALDコーティング内の異なる構成材料の比率(例えば、2つ以上の金属のモル比)を調整することによって可能になるという効果がある。
【0011】
ヒータは、窒化アルミニウム(AlN)材料、又は同等の化学的耐性と機械的、熱的、電気的特性を有する他の適切な材料から形成されてもよい。ヒータ材料にワイヤ(例えば、タングステンワイヤ)を埋め込んで、電気を供給してもよい。諸実施形態では、ヒータ材料を、AlNセラミック、炭化ケイ素(SiC)セラミック、酸化アルミニウム(Al)セラミック、グラファイト、又はそれらの任意の組み合わせとしてもよい。ヒータ材料が異なると反応特性も異なって、ある組成が高温、低真空圧、強烈な化学作用に曝されると、別の組成よりも高い蒸気圧を有する反応物を形成することがある。例えば、AlN材料セラミックを備えた一般的な高温ヒータが、高温(例えば、最大約650℃)及び真空(例えば、約50ミリトルから約200ミリトル)の条件下で三フッ化窒素(NF)プラズマに曝される場合、この反応により、三フッ化アルミニウム(AlF)が生成される。この三フッ化アルミニウムの蒸気圧は、およそlog(p/kpa)=11.70-14950(T/K)である。したがって、AlFは昇華してチャンバ内の他の構成要素に堆積し得る。後続の処理工程で、堆積した材料は、他のチャンバ構成要素から剥がれ落ちたり、剥離したり、さもなければ引き離されたりして、粒子としてそこにあるウェハ上に堆積し、欠陥が生じることがある。
【0012】
ALDは、物品の表面との化学反応により、材料の制御された自己制限堆積を可能にする。ALDはコンフォーマルな処理であることに加えて、均一な処理でもあり、例えば約3nmあるいはそれ以上の厚さを有する非常に薄い膜を形成し得る。物品のすべての露出面には、同一の又はほぼ同一の量の材料が堆積している。本明細書に記載されているように、このヒータは、コーティングが施されていないヒータと同じ又は実質的に同じ熱伝導率と加熱能力を有し得る。ALD処理の一般的な反応サイクルは、前駆体(すなわち、単一の化学物質A)がALDチャンバに流れ込んで、物品の表面(物品内の細孔壁の表面を含む)に吸着されることから始まる。過剰な前駆体を、ALDチャンバから排出した後、反応物(すなわち、単一の化学物質R)をALDチャンバに導入し、続いて排出する。ALDの場合、材料の最終的な厚さは、実行する反応サイクルの回数に依存する。それは、各反応サイクルでは、1原子層又は1原子層の何分の一かのある特定の厚さの層が成長するからである。
【0013】
ALD技術は比較的低温(例えば、約25℃~約350℃)で材料の薄層を堆積させ得るので、構成要素のいかなる材料も損傷又は変形させない。さらに、ALD技術はまた、構成要素の複雑なフィーチャー(例えば、高アスペクト比のフィーチャー)内に材料の層を堆積させ得る。さらに、ALD技術は、一般に、無孔質の(すなわち、ピンホールがない)、比較的薄い(すなわち、1μm以下の)コーティングを生成する。このため、堆積の間の亀裂形成を排除し得る。
【0014】
図1は、諸実施形態による、コーティング層でコーティングされた1つ以上のチャンバ構成要素を有する半導体処理チャンバ100の断面図である。処理チャンバ100のベース材料は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)及びステンレス鋼(SST)のうちの1つ以上を含んでもよい。処理チャンバ100を、プラズマ処理条件を有する腐食性プラズマ環境が提供される処理に使用してもよい。例えば、処理チャンバ100は、プラズマエッチャ又はプラズマエッチングリアクタ、プラズマクリーナ、プラズマ強化化学気相堆積(CVD)又はALDのリアクタなどのためのチャンバであってもよい。コーティング層(例えば、セラミックコーティング)を備え得るチャンバ構成要素の例には、基板支持アセンブリ148、静電チャック(ESC)アセンブリ150、リング(例えば、プロセスキットリング又はシングルリング)、チャンバ壁、ベース、ガス分配プレート、シャワーヘッド、ライナ、ライナキット、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザ、冷却ベース、チャンバビューポート、チャンバ蓋などが含まれる。様々な技術を使用して構成要素上にコーティングを堆積させてもよい。その例には、ALD、スパッタリング、イオンアシスト堆積、プラズマ溶射コーティング、CVD、その他の当業者には理解されるであろう適切な技術がある。図示のように、一実施形態によれば、基板支持アセンブリ148はセラミックコーティング層136を有する。しかしながら、上に挙げたような、他のチャンバ構成要素のいずれもが、コーティング層を備えてもよいことを理解すべきである。
【0015】
コーティングを備え得るチャンバ構成要素の別の例は、高温ヒータセンブリである。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に説明されるコーティングが、ALDによって施される。ALDによって、実質的に均一な厚さのコンフォーマルなコーティングの適用が可能になり、複雑な形状及び高アスペクト比のフィーチャーを有する全種類の構成要素上で、このコーティングには気孔がない。
【0016】
いくつかの実施形態では、希土類金属を含むコーティングを成長又は堆積させるために、希土類金属含有前駆体と、酸素、フッ素、又は窒素からなる、又はそれらを含む反応物と共にALDを使用してもよい。希土類金属含有前駆体は、イットリウム、エルビウム、ランタン、ルテチウム、スカンジウム、ガドリニウム、サマリウム又はジスプロシウムを含んでもよい。コーティングを追加的又は代替的に成長又は堆積させるために、堆積される下地の構成要素材料と同じ又は類似の材料を有する接着層を堆積させる前駆体と共にALDを使用してもよい。例えば、アルミニウム含有前駆体と窒素含有反応物を使用してAlNを形成してもよく、又はアルミニウム含有前駆体と酸素含有反応物を使用して酸化アルミニウム(Al)を形成してもよい。スタック層又は耐摩耗層を接着層の上に成長又は堆積させるために、希土類金属を含む1つ以上の前駆体と共にALDを使用してもよい。いくつかの実施形態では、耐摩耗層を堆積させるために、スパッタリング、イオンアシスト堆積、プラズマ溶射コーティング、又はCVDを使用し得る。スタック層は、希土類金属含有材料と、別の酸化物、フッ化物又は窒化物の材料(Al、AlN、Y、YFなど)との交互の薄層を有してもよい。
【0017】
一実施形態では、希土類金属含有層は多結晶構造を有する。別の一実施形態では、希土類金属含有層はアモルファス構造を有してもよい。希土類金属含有層は、イットリウム、エルビウム、ランタン、ルテチウム、スカンジウム、ガドリニウム、サマリウム、及び/又はジスプロシウムを含んでもよい。例えば、希土類金属含有層は、イットリア(Y)、フッ化イットリウム(YF)、オキシフッ化イットリウム(Y)、イットリウムジルコニウム酸化物(YZrO)、酸化エルビウム(Er)、フッ化エルビウム(ErF)、オキシフッ化エルビウム(Er)、エルビウムアルミニウム酸化物(ErAl12)、酸化ジスプロシウム(Dy)、フッ化ジスプロシウム(DyF)、オキシフッ化ジスプロシウム(Dy)、酸化ガドリニウム(Gd)、フッ化ガドリニウム(GdF)、オキシフッ化ガドリニウム(Gd)、酸化スカンジウム(Sc)、フッ化スカンジウム(ScF)、オキシフッ化スカンジウム(ScOF)などを含んでもよい。諸実施形態では、希土類金属層は多結晶のY、YF、又はYである。他の諸実施形態では、希土類金属層はアモルファスのY、YF、又はYである。一実施形態では、希土類金属含有材料を、別の材料と共に共堆積させてもよい。例えば、希土類金属含有酸化物を、1つ以上の他の希土類化合物(Y、酸化ガドリニウム(Gd)及び/又はエルビウム(例えば、Er)など)と混合してもよい。コーティングのためのイットリウム含有酸化物を、例えば、YDy、YGd又はYErとしてもよい。イットリウム含有酸化物を、空間群Ia-3(206)の立方構造を有するYとしてもよい。添え字x、y、及びzを独立に、例えば、0.1から10の範囲の値としてもよい。
【0018】
一実施形態では、希土類金属含有層は、Y、YZr、YZrOF、YAl12(YAG)、YAl(YAM)、YF、Y、Er、ErAl12(EAG)、ErF、Er、La、Lu、Sc、ScF、Sc、Gd、SmDy、又はNdのうちの1つである。また、希土類金属含有層を、YAlO(YAP)、ErAl(EAM)、ErAlO(EAP)、GdAl、GdAlO、NdAl12、NdAl、NdAlO、YAlとY-ZrOの固溶体とから成るセラミック化合物、又は本明細書に記載の他のコーティング組成、他にランタン、ルテチウム、スカンジウム、ガドリニウム、サマリウム若しくはジスプロシウムの3元系変種、又は本明細書で論じられる他の希土類金属含有化合物としてもよい。前述の希土類金属含有材料はいずれも、微量の他の材料を含んでもよい。他の材料とは、ZrO、Al、SiO、B、Er、Nd、Nb、CeO、Sm、Yb、又は他の酸化物などである。
【0019】
いくつかの実施形態では、希土類金属含有層は、以下の組成から選択された量のY、ZrO、及び/又はAlを含む。すなわち、50~75mol%の範囲のY、10~30mol%の範囲のZrO、及び10~30mol%の範囲のAlであるか、40~99mol%の範囲のY、1~60mol%の範囲のZrO、及び0~10mol%の範囲のAlであるか、60~75mol%の範囲のY、20~30mol%の範囲のZrO、及び0~5mol%の範囲のAlであるか、60~70mol%の範囲のY、30~40mol%の範囲のZrO、及び0~10mol%の範囲のAlであるか、50~60mol%の範囲のY、及び40~50mol%の範囲のZrOであるか、40~60mol%の範囲のY、30~50mol%の範囲のZrO、及び10~20mol%の範囲のAlであるか、40~50mol%の範囲のY、20~40mol%の範囲のZrO、及び20~40mol%の範囲のAlであるか、70~90mol%の範囲のY、0~20mol%の範囲のZrO、及び10~20mol%の範囲のAlであるか、60~80mol%の範囲のY、0~10mol%の範囲のZrO、及び20~40mol%の範囲のAlであるか、40~60mol%の範囲のY、0~20mol%の範囲のZrO、及び30~40mol%の範囲のAlであるか、30~60mol%の範囲のY、0~20mol%の範囲のZrO、及び30~60mol%の範囲のAlであるか、20~40mol%の範囲のY、20~80mol%の範囲のZrO、及び0~60mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、20~30mol%の範囲のZrO、及び50~60mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、20~30mol%の範囲のZrO、及び40~50mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、10~20mol%の範囲のZrO、及び50~60mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、10~20mol%の範囲のZrO、及び40~50mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、20~30mol%の範囲のZrO、及び50~60mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、20~30mol%の範囲のZrO、及び40~50mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、10~20mol%の範囲のZrO、及び50~60mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、10~20mol%の範囲のZrO、及び40~50mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、40~50mol%の範囲のZrO、及び10~20mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、40~50mol%の範囲のZrO、及び20~30mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、50~60mol%の範囲のZrO、及び10~20mol%の範囲のAlであるか、0~10mol%の範囲のY、50~60mol%の範囲のZrO、及び20~30mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、40~50mol%の範囲のZrO、及び10~20mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、40~50mol%の範囲のZrO、及び20~30mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、50~60mol%の範囲のZrO、及び10~20mol%の範囲のAlであるか、10~20mol%の範囲のY、又は50~60mol%の範囲のZrO、及び20~30mol%の範囲のAlである。
【0020】
いくつかの実施形態では、希土類金属含有層は、以下の組成から選択された量のY及びZrOを含む。すなわち、1~99mol%の範囲のY、及び1~99mol%の範囲のZrOであるか、1~50mol%の範囲のY、及び50~99mol%の範囲のZrOであるか、50~99mol%の範囲のY、及び1~50mol%の範囲のZrOであるか、50~75mol%の範囲のY、及び25~50mol%の範囲のZrOであるか、40~61mol%の範囲のY、及び39~60mol%の範囲のZrOであるか、65~99mol%の範囲のY、及び1~35mol%の範囲のZrOであるか、65~80mol%の範囲のY、及び20~35mol%の範囲のZrOであるか、60~70mol%の範囲のY、及び30~40mol%の範囲のZrOであるか、1~11mol%の範囲のY、及び89~99mol%の範囲のZrOであるか、11~21mol%の範囲のY、及び79~89mol%の範囲のZrOであるか、21~31mol%の範囲のY、及び69~79mol%の範囲のZrOであるか、31~41mol%の範囲のY、及び59~69mol%の範囲のZrOであるか、41~51mol%の範囲のY、及び49~59mol%の範囲のZrOであるか、51~61mol%の範囲のY、及び39~49mol%の範囲のZrOであるか、61~71mol%の範囲のY、及び29~39mol%の範囲のZrOであるか、71~81mol%の範囲のY、及び19~29mol%の範囲のYFであるか、81~91mol%の範囲のY、及び9~19mol%の範囲のYFであるか、91~99mol%の範囲のY、及び1~9mol%の範囲のYFである。
【0021】
いくつかの実施形態では、希土類金属含有層は、以下の組成から選択された量のY、ZrO、Er、Gd、及び/又はSiOを含む。すなわち、40~45mol%の範囲のY、0~10mol%の範囲のZrO、35~40mol%の範囲のEr、5~10mol%の範囲のGd、及び5~15mol%の範囲のSiOであるか、30~60mol%の範囲のY、0~20mol%の範囲のZrO、20~50mol%の範囲のEr、0~10mol%の範囲のGd、及び0~30mol%の範囲のSiOであるか、30~45mol%の範囲のY、5~15mol%の範囲のZrO、25~60mol%の範囲のEr、及び0~25mol%の範囲のGdである。
【0022】
いくつかの実施形態では、希土類金属含有層は、以下の組成から選択される量のY及びYFを含む。すなわち、1~99mol%の範囲のY、及び1~99mol%の範囲のYFであるか、1~10mol%の範囲のY、及び90~99mol%の範囲のYFであるか、11~20mol%の範囲のY、及び80~89mol%の範囲のYFであるか、21~30mol%の範囲のY、及び70~79mol%の範囲のYFであるか、31~40mol%の範囲のY、及び60~69mol%の範囲のYFであるか、41~50mol%の範囲のY、及び50~59mol%の範囲のYFであるか、51~60mol%の範囲のY、及び40~49mol%の範囲のYFであるか、61~70mol%の範囲のY、及び30~39mol%の範囲のYFであるか、71~80mol%の範囲のY、及び20~29mol%の範囲のYFであるか、81~90mol%の範囲のY、及び10~19mol%の範囲のYFであるか、91~99mol%の範囲のY、及び1~9mol%の範囲のYFである。
【0023】
前述の範囲は例示的なものであり、各化合物の限界値にはいくらかの変動が存在し得ることを理解すべきである。例えば、「41~50mol%の範囲のY」と記載されている場合、41mol%以上から50mol%以下まで、及び近似値と測定の不確かさを考慮に入れた約41mol%から約50mol%までのすべての可能な量のYが含まれると理解される。
【0024】
再び図1を参照する。一実施形態では、処理チャンバ100は、チャンバ本体102と、シャワーヘッド130とを含み、これらは内部容積106を囲む。シャワーヘッド130は、シャワーヘッドベースとシャワーヘッドガス分配プレートとを備えてもよい。あるいは、シャワーヘッド130を、いくつかの実施形態では蓋及びノズルに入れ替えてもよく、又は、他の諸実施形態では複数の扇形シャワーヘッド区画及びプラズマ生成ユニットに入れ替えてもよい。チャンバ本体102は、アルミニウム、ステンレス鋼、又はチタンなどの他の適切な材料から製造されてもよい。チャンバ本体102は、一般に、側壁108と、底部110とを含む。シャワーヘッド130(又は蓋及び/若しくはノズル)、側壁108及び/又は底部110のうちの1つ以上は、コーティング層を備えてもよい。
【0025】
外側ライナ116を側壁108に隣接して配置して、チャンバ本体102を保護してもよい。外側ライナ116を、コーティング層で製造及び/又はコーティングしてもよい。一実施形態では、外側ライナ116は酸化アルミニウムで製造されている。
【0026】
排気ポート126を、チャンバ本体102内に画定してもよく、排気ポート126によって内部容積106をポンプシステム128に接続してもよい。ポンプシステム128は、1つ以上のポンプ及びスロットル弁を備え、これを利用して、処理チャンバ100の内部容積106の排気及び圧力調整を行ってもよい。
【0027】
シャワーヘッド130を、チャンバ本体102の側壁108上に支持してもよい。シャワーヘッド130(又は蓋)は、これを開放して、処理チャンバ100の内部容積106へのアクセスを可能にしてもよく、これを閉じて、処理チャンバ100に気密を提供してもよい。ガスパネル158を処理チャンバ100に接続して、シャワーヘッド130又は蓋及びノズルを介して内部容積106に処理ガス及び/又はクリーニングガスを供給してもよい。シャワーヘッド130を、誘電体エッチング(誘電体材料のエッチング)に使用される処理チャンバに使用してもよい。シャワーヘッド130は、ガス分配プレート(GDP)133を備え、GDP133はその全体にわたって複数のガス供給孔132を有する。シャワーヘッド130は、アルミニウム又は陽極酸化アルミニウムのシャワーヘッドベース104に接合されたGDP133を備えてもよい。GDP133は、Si若しくはSiCから作られてもよく、又はY、Al、YAGなどのセラミックであってもよい。
【0028】
導体エッチング(伝導性材料のエッチング)に使用される処理チャンバの場合、シャワーヘッドではなく蓋を使用してもよい。蓋は、蓋の中心穴に適合する中心ノズルを備えてもよい。蓋はセラミックであってもよい。そのセラミックには、Al、Y、YAG、又はYAlとY-ZrOの固溶体とから成るセラミック化合物などがある。ノズルもまたセラミックであってもよい。そのセラミックには、Y、YAG、又はYAlとY-ZrOの固溶体とから成るセラミック化合物などがある。任意選択で、蓋、シャワーヘッドベース104、GDP133、及び/又はノズルをセラミックコーティングでコーティングしてもよい。
【0029】
処理チャンバ100内で基板を処理するために使用し得る処理ガスの例には、ハロゲン含有ガス(とりわけC、SF、SiCl、HBr、NF、CF、CHF、CH、F、NF、Cl、CCl、BCl及びSiFなど)の他にもO又はNOなどのガスも含まれる。コーティング層は、これらのガスの一部若しくは全部による、及び/又はこれらのガスから生成されるプラズマによる浸食に対して耐性を有し得る。キャリアガスの例には、N、He、Ar、及び処理ガスに対して不活性な他のガス(例えば、非反応性ガス)が含まれる。
【0030】
基板支持アセンブリ148は、シャワーヘッド130又は蓋の下の処理チャンバ100の内部容積106に配置される。基板支持アセンブリ148は、処理中に基板144を保持している。リング146(例えば、シングルリング)は、ESCアセンブリ150の一部を覆うことができ、処理中にプラズマに露出しないように覆われた部分を保護してもよい。一実施形態では、リング146はシリコン又は石英であってもよい。
【0031】
内側ライナ118を、基板支持アセンブリ148の周囲にコーティングしてもよい。内側ライナ118は、ハロゲン含有ガス耐性材料(外側ライナ116に関して述べた材料など)であってもよい。一実施形態では、内側ライナ118は、外側ライナ116と同じ材料から製造されてもよい。さらに、内側ライナ118を、セラミックコーティングでコーティングしてもよい。
【0032】
一実施形態では、基板支持アセンブリ148は、台座152を支持する取り付け板162と、ESCアセンブリ150とを備える。ESCアセンブリ150は、熱伝導性ベース164と、接着剤138によって熱伝導性ベースに接着された静電パック166とをさらに備える。一実施形態では、接着剤はシリコーン接着剤であってもよい。静電パック166の上面は、図示の実施形態ではセラミックコーティング層136によって覆われている。一実施形態では、セラミックコーティング層136は、静電パック166の上面に配置されている。別の一実施形態では、セラミックコーティング層136は、ESCアセンブリ150の露出面全体に配置される。この露出面には、熱伝導性ベース164及び静電パック166の外側及び側面周辺が含まれる。取り付け板162は、チャンバ本体102の底部110に連結されており、熱伝導性ベース164及び静電パック166へのユーティリティ(例えば、流体、電力線、センサリードなど)のルートを割り当てるための通路を備える。
【0033】
熱伝導性ベース164及び/又は静電パック166は、1つ以上の任意選択の埋め込み式加熱素子176、埋め込み式断熱材174、及び/又は導管168、170を備えて、基板支持アセンブリ148の横方向の温度プロファイルを制御してもよい。導管168、170は流体源172に流体的に接続され、この流体源は、導管168、170を通して温度調整流体を循環させてもよい。埋め込み式断熱材174は、一実施形態では、導管168、170の間に配置されてもよい。加熱素子176はヒータ電源178によって調整される。導管168、170及び加熱素子176を利用して、熱伝導性ベース164の温度を制御してもよく、こうして、静電パック166及び処理されている基板(例えば、ウェハ)144を加熱及び/又は冷却してもよい。静電パック166及び熱伝導性ベース164の温度を、複数の温度センサ190、192を使用して監視してもよい。コントローラ195を使用して、これら複数の温度センサを監視してもよい。
【0034】
静電パック166は、溝、メサ及び他の表面フィーチャーなどの複数のガス流路をさらに備えてもよい。これらのガス流路を、パック166及び/又はセラミックコーティング層136の上面に形成してもよい。ガス流路を、パック166に開けられた穴を介して、ヘリウムなどの熱伝達(又は裏面)ガスの供給源に流体的に接続してもよい。動作中、背面ガスを、制御された圧力でガス流路に供給して、静電パック166と基板144との間の熱伝達を高めてもよい。静電パック166は、チャッキング電源182によって制御された少なくとも1つのクランプ電極180を備えている。電極180(又は、パック166若しくはベース164に配置された他の電極)を、整合回路188を介して1つ以上の高周波電源184、186にさらに接続して、処理チャンバ100内の処理ガス及び/又は他のガスから形成されたプラズマを維持してもよい。電源184、186は、一般に、約50kHzから約3GHzの周波数を有し、最大約10,000ワットの電力出力を有する高周波信号を生成し得る。
【0035】
ALD技術により、比較的均一な厚さで気孔率ゼロの(すなわち、無孔質の)コンフォーマルなコーティングが、チャンバ構成要素の表面、及び従来の見通し内堆積技術では到達できない内部形状を含む複雑な形状を有するフィーチャーで可能になる。コーティングは耐プラズマ性を有しており、性能に影響を与えることなくプラズマ相互作用を低減し、構成要素の耐久性を向上させ得る。ALDで堆積された薄いコーティングは、その機能を妨げないように、構成要素の電気的特性、並びに相対的な形状及び幾何学的構成を維持し得る。コーティングはまた、構成要素の材料の揮発性を低下させることができ、構成要素の下地材料よりも低い蒸気圧を有する反応物を形成し得る。
【0036】
プラズマに対するコーティングの耐性は、「エッチングレート」(ER)によって測定され得る。このエッチングレートの単位は、マイクロメートル/時間(μm/hr)又はオングストローム/時間(Å/hr)である。測定期間は、コーティングが施された構成要素が運用され、プラズマに暴露されている全期間中である。測定を行う前の処理時間は異なっていてもよい。例えば、測定を、処理前に、又は約50処理時間で、又は約150処理時間で、又は約200処理時間などで実施する。ヒータ支持体及び/又は他の構成要素上に成長又は堆積させたコーティングの組成が変動すると、多数の相違する耐プラズマ性又は浸食速度値が生じる可能性がある。さらに、単一の組成を有しても、様々なプラズマに曝されたコーティングは、多数の相違する耐プラズマ性又は浸食速度値を有する可能性がある。例えば、耐プラズマ性材料には、第1種類のプラズマに関連する第1耐プラズマ性又は浸食速度と、第2種類のプラズマに関連する第2耐プラズマ性又は浸食速度が存在し得る。
【0037】
図2Aは、物品(例えば、ヒータ支持体、ヒータセンブリ全体、静電チャックの一部など)にコーティングを成長又は堆積させるALD技術による堆積処理200の一実施形態を示す。図2Bは、ALD技術による堆積処理201の一実施形態を示す。ここで、このALD技術は、多層耐プラズマ性コーティングを物品上に成長又は堆積させる。図2Cは、本明細書に記載のALD技術による堆積処理202の別の一実施形態を示す。
【0038】
ALD処理には様々な種類があり、いくつかの要因に基づいて特定の種類を選択できる。その要因とは、コーティングされる表面、コーティング材料、表面とコーティング材料の間の化学的相互作用などである。様々なALD処理法の一般原理は、コーティングされる表面をガス状化学的前駆体のパルスに繰り返し露出することによって薄膜層が成長する工程を含む。ここで、この前駆体は自己制限的に一度に一つずつ表面と化学的に反応する。
【0039】
図2A~2Cは、表面を有する物品210を示す。物品210は、半導体処理チャンバ構成要素の様々な材料を代表し得る。ここで半導体処理チャンバ構成要素は、高温ヒータ支持体及び/又は処理チャンバ内のヒータセンブリの全表面を含むが、これらに限定されない。物品210は、AlNを含む材料、セラミックなどの誘電体、金属-セラミック複合材(例えば、Al/SiO、Al/MgO/SiO、SiC、Si、AlN/SiOなど)、金属(アルミニウム、ステンレス鋼など)、グラファイト、又は他の適切な材料から作られてもよく、AlN、Si、SiC、Al、SiOなどの材料をさらに含んでもよい。一実施形態では、物品210は、ヒータ材料から構成される高温ヒータであり、このヒータ材料が有する熱伝導率は、約50W/mKから約300W/mK、又は約100W/mKから約250W/mK、又は約150W/mKから約200W/mK、又は約180W/mKである。また、ヒータ材料が有する比熱容量を、25℃で約0.15cal/g℃から25℃で約0.30cal/g℃、又は25℃で約0.20cal/g℃から25℃で約0.25cal/g℃、又は25℃で約0.25cal/g℃としてもよい。ヒータ材料はまた、約4.6から約5.7μm/m℃のCTEを有し得る。一実施形態では、物品210は、例えば、AlNセラミック材料から製造された、半導体処理チャンバのための高温ヒータである。そのような材料は、クリーニング中に処理チャンバ内のフッ素プラズマ(例えば、NF)と反応して、AlFを形成する。AlFは蒸気圧が高く、そのために、この反応物は昇華してチャンバ内の他の構成要素に堆積する。後続の処理工程で、堆積したAlFは、他のチャンバ構成要素から剥がれ落ちたり、剥離したり、さもなければ引き離されたりして、そこにあるウェハを粒子で汚染する。
【0040】
ALDの場合、表面への前駆体の吸着、及び吸着された前駆体と反応物の反応のどちらをも「半反応」と呼んでもよい。第1半反応の間、前駆体は物品210の表面に律動的に送られ、その期間は前駆体が表面に完全に吸着されるだけの十分な期間である。前駆体は表面上の有限数の利用可能な場所に吸着されて、表面に均一で連続な吸着層を形成するため、吸着は自己制限的である。前駆体が既に吸着されている場所は、吸着された場所が均一で連続なコーティング上に新たに利用可能な場所を形成する処理を受けない限り、及び/又は受けるまで、同じ前駆体をさらに吸着することに利用できない。典型的なその処理は、プラズマ処理、均一で連続な吸着層をラジカルに曝すことによる処理、又は表面に吸着された、最新の均一で連続な層と反応できる異なる前駆体の導入である。
【0041】
いくつかの実施形態では、2つ以上の前駆体が一緒に注入され、物品210の表面に吸着される。過剰な前駆体が排出され、次に、酸素含有反応物(又はフッ素含有反応物)が注入されて吸着質と反応し、(例えば、Y-Alの)構成要素層を形成する。この新しい層は、次のサイクルで前駆体の吸着に使用できる。
【0042】
図2Aにおいて、物品210を第1前駆体260に、物品210の表面が第1前駆体260で完全に吸着状態となって吸着層214を形成するまでの第1期間にわたって導入してもよい。続いて、物品210を第1反応物265に導入して吸着層214と反応させ、固体層216を成長させてもよい。(例えば、層216を完全に成長又は堆積させるため。ここで、成長及び堆積という用語は、本明細書では互換的に使用され得る。)単層のコーティングの場合、第1前駆体260を、Y、YF又はYなどの希土類金属含有材料のための前駆体としてもよい。前駆体の例には、イットリウム前駆体、ジルコニウム前駆体、エルビウム前駆体などが含まれる。接着層を使用する場合、第1前駆体260を、いくつかの実施形態では、Alを含有する前駆体としてもよい。層216が酸化物である場合、第1反応物265を、酸素、水蒸気、オゾン、酸素ラジカル、又は別の酸素源としてもよい。層216がAlNを含む場合、第1反応物265を、例えば、NH窒素ラジカル、又は他の窒素源としてもよい。層216がフッ化物である場合、フッ素含有反応物を使用してもよい。したがって、ALDを使用して、層216を形成し得る。層216を単層コーティングとしてもよく、又は多層コーティングの1つの層(すなわち、接着層)としてもよい。
【0043】
層216がAlN接着層である一実施例では、物品210(例えば、高温ヒータの表面)を、第1前駆体260(例えば、トリメチルアルミニウムすなわちTMA前駆体)に、物品の表面のすべての反応場所が消費されるまでの第1期間にわたって導入してもよい。残りの第1前駆体260を排出し、その後、NHの第1反応物265がリアクタに注入されて、第2半サイクルが開始される。NH分子が、第1半反応で生成されたAl含有吸着層と反応した後、AlNの層216が形成される。
【0044】
層216は、均一で、連続で、コンフォーマルになり得る。層216には、気孔がない(例えば、ゼロの気孔率を有する)か、諸実施形態では、ほぼゼロの気孔率を有する(例えば、気孔率が0%から0.01%)。いくつかの実施形態では、1回のALD堆積サイクルの後、層216は、1原子層未満から数原子までの厚さを有し得る。いくつかの有機金属前駆体分子は大型である。反応物265と反応した後、大きな有機配位子が存在しなくなり、はるかに小さな金属原子が残る場合がある。1回の完全なALDサイクル(例えば、前駆体260の導入とそれに続く反応物265の導入を含む)により、1つの単位格子よりも小さい平均厚さの層が形成され得る。例えば、TMA及びNHによって成長したAlN単分子層の成長速度は、通常は約1.0Å/サイクルであり、他方、AlN格子定数はa=3.111Å及びc=4.981Å(六方構造の場合)である。
【0045】
複数回の完全なALD堆積サイクルを実行して、より厚い層216を堆積させてもよい。各々の完全なサイクル(例えば、前駆体260の導入、排出、反応物265の導入、及び再度の排出を含む)で、1原子から数原子の追加分だけ厚さを増す。図示されているように、最大n回の完全なサイクルを実行して、層216を成長させてもよい。ここで、nは1より大きい整数値である。諸実施形態では、層216の厚さを、約5nmから約10μm、又は約25nmから約5μm、又は約50nmから約500nm、又は約75nmから約200nmとしてもよい。いくつかの実施形態では、コーティングの厚さを、約50nm、又は約75nm、又は約100nm、又は約125nm、又は約150nmとしてもよい。層216が接着層である場合には、接着層の厚さを、約1nmから約50nm、又は約2nmから約25nm、又は約5nmから約10nmとしてもよい。特定の実施形態では、接着層の厚さは、約1nm、又は約5nm、又は約10nm、又は約15nmである。
【0046】
層216が1つ以上の希土類金属含有材料を含むコーティングである場合、層216は、ヒータの熱的及び電気的な特性に大きな影響を与えることなく、強力な耐プラズマ性及び機械的特性を提供する。層216は、構成要素を浸食から保護し、絶縁耐力を強化又は維持し、約500℃まで、又は約550℃まで、又は約500℃から約550℃までの温度で亀裂に対して耐性を有し得る。層216が接着層である場合、希土類金属含有層(又はスタック層)の構成要素への密着性を向上させ、約650℃までの温度でのコーティングの亀裂を防ぎ得る。
【0047】
図2Bは、図2Aを参照して説明したように、接着層又はバリア層としての層216の堆積を含む堆積処理201を示している。しかしながら、図2Bの堆積処理201は、さらなる層220の堆積をさらに含んで、多層耐プラズマ性コーティングを形成する。したがって、層216が完了した後、層216を有する物品210を追加の1つ以上の前駆体270に、層216が1つ以上の追加の前駆体270で完全に吸着状態となって吸着層218を形成するまでの第2期間にわたって導入してもよい。続いて、物品210を反応物275に導入して吸着層218と反応させて、固体希土類金属含有酸化物層220を成長させてもよい(例えば、第2層220を完全に成長又は堆積させるために)。この固体希土類金属含有酸化物層220は、簡略化のために第2層220とも呼ばれる。この実施形態では、層216は、AlNを含む接着層又はバリア層であってもよい。したがって、第2層220は、ALDを使用して層216の上に完全に成長又は堆積される。一実施例では、前駆体270を、第1半サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体としてもよく、反応物275を、第2半サイクルで使用されるHOとしてもよい。
【0048】
第2層220は、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層を形成してもよい。この層は、均一で、連続で、コンフォーマルになり得る。第2層220の気孔率は、諸実施形態では非常に低い1%未満、さらなる諸実施形態では0.1%未満、及び諸実施形態では約0%、又はさらなる諸実施形態では気孔がないこともある。第2層220は、1回の完全なALD堆積サイクルの後、1原子未満から数原子(例えば、2~3原子)の厚さを有し得る。複数回のALD堆積段階を実施して、より厚い第2層220を堆積させてもよく、各段階では、1原子から数原子の追加分だけ厚さを増す。図示のように、完全な堆積サイクルをm回繰り返すことで、第2層220は目標の厚さを有し得る。ここで、mは1より大きい整数値である。諸実施形態では、第2層220は、約5ALDサイクル(例えば、約0.9Å/サイクル及び2つの半反応)から約5μmの厚さを有し得る。第2層220がスタック層の第1層である場合、その厚さを、約5ALDサイクルから約500nm、又は約6ALDサイクルから約250nm、又は約7ALDサイクルから約100nm、又は約8ALDサイクルから約50nmとしてもよい。諸実施形態では、スタックの第2層220の厚さは、約5から約15ALDサイクル、又は約6から約14ALDサイクル、又は約7から約13ALDサイクル、又は約8から約10ALDサイクルである。
【0049】
第2層220の厚さの層216の厚さに対する比は、200:1から1:200であってもよい。第2層220の厚さの層216の厚さに対する比がより高くなると(例えば、200:1、100:1、50:1、20:1、10:1、5:1、2:1など)、より優れた耐腐食性及び耐浸食性が得られる。他方、第2層220の厚さの層216の厚さに対する比がより低くなると(例えば、1:2、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100、1:200)、より優れた耐熱性(例えば、熱サイクルによって引き起こされる亀裂及び/又は層間剥離に対する耐性の改善)が得られる。
【0050】
第2層220は、本明細書で論じられる希土類金属含有酸化物層のいずれであってもよい。例えば、第2層220を、Y、YF又はYの単独又は1つ以上の他の希土類金属材料との組み合わせとしてもよい。いくつかの実施形態では、第2層220は、ALDによって共堆積された少なくとも2つの希土類金属含有前駆体の混合物から形成された単相材料である(例えば、Y、Er、及びAlの1つ以上の組み合わせ)。例えば、第2層220を、YEr又はYAlのうちの1つとしてもよい。一実施形態では、層216はアモルファスのAlNであり、第2層220は、多結晶又はアモルファスのイットリウム含有酸化物化合物(例えば、Y、YAl、YEr、など)であって、単独又は1つ以上の他の希土類金属含有材料との単相である。別の一実施形態では、物品210はグラファイト物品であり、層216はアモルファスカーボンであり、第2層220は多結晶又はアモルファスのイットリウム含有化合物(例えば、Y、YZrO、YF、YAl、YErなど)である。層216は、接着力を高めるだけでなく、イットリウム含有酸化物層の堆積前に堆積される応力緩和層として機能し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、第2層220は、Er、Y又はAlを含み得る。いくつかの実施形態では、第2層220は、ErAl(例えば、ErAl12)、YAl、YEr又はErAl(例えば、Y、Al及びErの単相固溶体)のうちの少なくとも1つの多成分材料である。
【0052】
いくつかの実施形態では、層216の厚さを、約1nmから約50nm、又は約2nmから約25nm、又は約5nmから約10nmとしてもよい。特定の実施形態では、層216の厚さは、約1nm、又は約5nm、又は約10nm、又は約15nmである。希土類金属含有層の厚さを、約5nmから約10μm、又は約25nmから約5μm、又は約50nmから約500nm、又は約75nmから約200nmとしてもよい。いくつかの実施形態では、第2層220の厚さを、約50nm、又は約75nm、又は約100nm、又は約125nm、又は約150nmとしてもよい。特定の実施形態では、層216及び第2層220を含むコーティングの合計厚さを、約50nm、又は約75nm、又は約100nm、又は約125nm、又は約150nmとしてもよい。
【0053】
図2Cを参照する。いくつかの実施形態では、多層コーティングは3つ以上の層を含む。具体的には、コーティングは、別の材料(例えば、AlN、ZrO、Y、又は本明細書に開示される他の化合物)の一連の交互層及び希土類金属含有酸化物層を含むスタックを含み得るか、又は層216及び希土類金属含有酸化物層の一連の交互層を含み得る。いくつかの実施形態では、希土類金属含有酸化物層は、交互副層の層である。例えば、希土類金属含有酸化物層を、YとAlNの一連の交互副層、YとZrOの一連の交互副層、又はYとAlの一連の交互副層としてもよい。
【0054】
図2Cを参照する。層216を有する物品210を堆積チャンバに挿入してもよい。層216は、図2A又は図2Bを参照して説明したように形成されたものであってもよい。物品210を、1つ以上の希土類金属含有材料を含む1つ以上の前駆体280に、層216が1つ以上の前駆体280で完全に吸着状態となって層222を形成するまでの期間にわたって導入してもよい。続いて、物品210を反応物282に導入して層222と反応させ、層224を成長させてもよい。したがって、希土類金属含有層224は、ALDを使用して層216の上に完全に成長又は堆積させられる。一実施例では、前駆体280を、第1半サイクルで使用されるイットリウム含有前駆体としてもよく、反応物282を、第2半サイクルで使用されるHOとしてもよい。希土類金属含有層224を、Y、Er、ZrO、又は別の酸化物の第1酸化物としてもよい。
【0055】
層216及び金属酸化物層224を有する物品210を1つ以上の前駆体284に、層224が1つ以上の前駆体284で完全に吸着状態となって層226を形成するまでの期間にわたって導入してもよい。続いて、物品210を反応物286に導入して層226と反応させ、追加の層228を成長させてもよい。したがって、追加の層228(層224と同じ材料であってもよい)は、ALDを使用して希土類金属含有層224の上に完全に成長又は堆積させられる。
【0056】
図示されているように、希土類金属含有層224及び酸化アルミニウム層228の堆積をn回繰り返して、交互層のスタック237を形成してもよい。ここで、nは2より大きい整数値である。nは、目標の厚さと特性に基づいて選択された層の有限数を表す。交互層のスタック237を、複数の交互副層を含む希土類金属含有酸化物層と見なしてもよい。したがって、前駆体280、反応物284、前駆体284及び反応物286を、連続的に繰り返し導入して、追加の交互層230、232、234、236などを成長又は堆積させてもよい。層224、224、230、232、234、236などの各々を、単一原子層未満から数原子層までの平均厚さを有する非常に薄い層としてもよい。
【0057】
前述の交互層224~236は、1:1の比を有する。ここでは、各散在層に対して第1金属酸化物の単一層がある。しかし、他の諸実施形態では、異なる種類の層の間には、2:1、3:1、4:1などの異なる比率があり得る。例えば、一実施形態では、異なる材料の散在層ごとに2つのY層を堆積させてもよい。さらに、交互層224~236のスタック237は、2種類の金属層が交互に連続するものとして説明されている。しかし、他の諸実施形態では3種類以上の金属層を交互スタック237に堆積させてもよい。例えば、スタック237は、3つの異なる交互層を含んでもよい。
【0058】
交互層のスタック237が形成された後、アニール処理を実行して、異なる材料の交互層を相互に拡散させ、単相又は多相を有する複合酸化物を形成してもよい。したがって、アニール処理の後、交互層のスタック237は、単一の希土類金属含有酸化物層238になり得る。例えば、スタック内の層がY及びAlである場合、得られる希土類金属含有酸化物層238は、YAl12(YAG)相を含み得る。
【0059】
希土類金属含有材料の各層は、約5~10オングストロームの厚さを有することができ、約1から約10サイクルのALD処理を実行することで形成され得る。ここで、各サイクルによって、希土類金属含有材料のナノ層(又はナノ層よりもわずかに小さい若しくは大きい)が形成される。一実施形態では、希土類金属含有酸化物の各層は、約6回から約8回のALDサイクルを使用して形成される。各散在層は、約1回から約2回のALDサイクル(又は数回のALDサイクル)で形成されることができ、1原子未満から数原子までの厚さを有し得る。希土類金属含有材料の層は、それぞれ約5~100オングストロームの厚さを有してもよく、第2酸化物の層はそれぞれ、諸実施形態では約1~20オングストロームの厚さを、さらなる諸実施形態では1~4オングストロームの厚さを有し得る。交互層のスタック237は、約5nmから約3μmの合計厚さを有し得る。希土類金属含有材料の層の間の薄い散在層は、希土類金属含有層における結晶形成を防止し得る。これにより、アモルファスのイットリア層を成長させ得る。
【0060】
図2A~2Cを参照して説明される実施形態では、表面反応(例えば、半反応)は連続して行われ、諸実施形態では様々な前駆体と反応物は接触していない。新しい前駆体又は反応物を導入する前に、ALD処理が行われるチャンバを、不活性キャリアガス(窒素又は空気など)でパージして、いかなる未反応の前駆体及び/又は表面前駆体反応副生成物を除去してもよい。前駆体は各層で異なり、イットリウム含有酸化物層又は他の希土類金属含有酸化物層のための第2前駆体を、2つの希土類金属含有前駆体の混合物にして、これらの化合物の共堆積を促進し、単相の材料層を形成してもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの前駆体が使用され、他の諸実施形態では、少なくとも3つの前駆体が使用され、さらなる諸実施形態では、少なくとも4つの前駆体が使用される。
【0061】
ALD処理を、処理の種類に応じて様々な温度で実行してもよい。特定のALD処理にとっての最適温度範囲は「ALD温度ウィンドウ」と呼ばれる。ALD温度ウィンドウより低い温度は、低い成長速度及び非ALD型の堆積をもたらす場合がある。ALD温度ウィンドウを超える温度では、CVDメカニズムによって反応が起こる可能性がある。ALD温度ウィンドウは、約100℃から約650℃の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ALD温度ウィンドウは、約20℃から約200℃、又は約25℃から約150℃、又は約100℃から約120℃、又は約20℃から125℃である。
【0062】
ALD処理により、均一な厚さのコンフォーマルなコーティングが、複雑な幾何学的形状、高アスペクト比の穴(例えば、細孔)、及び3次元構造を有する物品及び表面で可能になる。各前駆体を表面に十分な時間をかけて曝露することにより、前駆体は分散し、3次元の複雑なフィーチャーのすべてを含む表面全体と完全に反応し得る。高アスペクト比構造でコンフォーマルなALDを達成するために利用される曝露時間は、アスペクト比の2乗に比例し、モデル化手法を使用して予測できる。さらに、ALD技術は他の一般的に使用されているコーティング技術よりも有利であり、それは、この技術ではその場での要求に応じて特定の組成又は調合での材料合成が可能であり、長く困難な原材料(粉末原料や焼結ターゲットなど)の製造を必要としないからである。いくつかの実施形態では、ALDを使用して、約3:1から300:1のアスペクト比を有する物品をコーティングする。
【0063】
本明細書に記載されているALD技術を用いて、YAl(例えば、YAl12)、YEr、YEr、又はYErなどの多成分膜を成長、堆積、又は共堆積させ得る。そのために、例えば、前駆体の適切な混合物を用いて、希土類金属含有酸化物を、単独で又は1つ以上の他の酸化物と組み合わせて成長させる。他の酸化物は、上記で説明されており、以下の実施例でもより詳細に説明される。
【0064】
いくつかの実施形態では、1つ以上の希土類金属含有材料を含む耐摩耗層を、スタック層の上に堆積させてもよい。耐摩耗層は、約5nmから約5000nm、約5nmから約1000nm、約100nmから約5000nm、又は約100nmから約500nmの厚さを有し得る。
【0065】
ここで、ALDによって希土類金属含有コーティングでコーティングされ得る様々な高温構成要素を参照する。図3は、ALDチャンバのための例示的なサセプタ300を示す。サセプタ300は保護コーティング(本明細書に記載の希土類金属含有セラミックコーティングなど)を有している。一実施形態では、薄膜保護コーティングはサセプタの上面のみをコーティングする。又は、薄膜保護コーティングはサセプタの上面と下面をコーティングする。薄膜保護層は、サセプタの側壁及びサセプタの内面をコーティングしてもよい。サセプタ300を使用して、複数のウェハを同時に支持し、均一に加熱してもよい。サセプタ300を、抵抗加熱素子又はランプを使用して放射加熱してもよい。一実施形態では、サセプタ300は、グラファイトなどの熱伝導性ベースを含む。サセプタ300は、複数の基板(例えば、複数のウェハ)を支持するのに十分な大きさになり得る円盤状の形状を有し得る。一実施形態では、サセプタの直径は1メートルを超える。
【0066】
サセプタ300は、1つ以上の凹部(ポケットとも呼ばれる)301~306を含み得る。それぞれの凹部は、処理中にウェハ又は他の基板を支持するように構成されてもよい。図示の実施例では、サセプタ300は、6つの凹部301~306を含む。ただし、他のサセプタは、より多くの凹部又はより少ない凹部を有し得る。凹部301~306の各々は、様々な表面フィーチャーを含む。凹部301の表面フィーチャーの例には、外側リング308、複数のメサ306、及びメサ306間のチャネル又はガス流路が含まれる。フィーチャーは、いくつかの実施形態では、約10~80マイクロメートルの高さを有し得る。
【0067】
凹部301~306及び表面フィーチャー(例えば、メサ306及び外側リング308)は、熱伝達(又は裏面)ガス(例えば、サセプタ300に穿孔された穴を通ったHe)の供給源に流体的に結合されてもよい。稼働中に、裏側ガスを制御された圧力でガス流路に供給して、サセプタ300と基板との間の熱伝達を高めることができる。
【0068】
サセプタ300は、リフトピン穴310をさらに備えてもよい。例えば、サセプタ300は3つのリフトピン穴を備え、これらのリフトピン穴がリフトピン(例えば、Alリフトピン)を支持してもよい。リフトピンは、サセプタ300へのウェハのロード及びアンロードを可能にする。サセプタ300は凹部315を備えることができ、この凹部を使用してサセプタを回転スピンドルに締め付けてもよい。凹部315は穴320を備え得る。この穴を使用して、サセプタ300を回転スピンドルに機械的に固定してもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、サセプタ300をグラファイトから形成し、ALDを使用してコーティングして、希土類金属含有コーティングを形成してもよい。希土類金属含有コーティングのサセプタ300への密着を促進するために、サセプタ300上に接着層(CVDによって堆積されたカーボン層など)を形成してもよい。
【0070】
図4は、諸実施形態による、ヒータセンブリ400のコーティングされた構成要素を示す。処理チャンバ100を適合させて、ヒータセンブリ400を備えてもよい。例えば、ヒータセンブリ400を、処理チャンバ100の内部容積106内のシャワーヘッド130又は蓋の下に配置してもよい。ヒータセンブリ400は、処理中に基板(例えば、ウェハ)を保持するための支持体405を備えており、支持体405は内部シャフト410の端部に取り付けられている。内部シャフト410を、処理チャンバ100の内部容積内に配置してもよい。内部シャフト410を、フランジ420を介して外部シャフト415に取り付け、外部シャフト415を、フランジ(図示せず)によって処理チャンバ100のチャンバ本体102に結合してもよい。支持体405はメサ406を含む。このメサは、支持体405のヒータ材料内に埋め込まれた電気構成要素(図示せず)に接続されている。処理チャンバ内で腐食性ガス及びプラズマに曝される可能性があるすべての表面は、本明細書に記載の諸実施形態によるコーティング425(例えば、セラミックコーティング)でコーティングされている。
【0071】
支持体405、シャフト410、415、及びフランジ420を、AlNを含むヒータ材料(例えば、AlNセラミック)から造ってもよい。一実施形態では、支持体405は、金属ヒータ及びセンサ層を、AlNセラミック層の間に挟んで備えてもよい。このようなアセンブリを高温炉で焼結して、一体型のアセンブリを作成してもよい。それらの層は、ヒータ回路、センサ要素、接地面、高周波グリッド、並びに金属及びセラミックの流路の組み合わせを含み得る。ヒータセンブリ400は、真空条件下(例えば、約1ミリトルから約5トル)で約650℃までのヒータ温度を提供し得る。
【0072】
コーティング425は、1つ以上の希土類金属含有酸化物材料を、支持体405の表面上及び/又は処理チャンバ内の腐食性のガス又はプラズマに曝される可能性のある、ヒータセンブリ400の全表面上に含み得る。コーティング425を単層コーティングとしても、多層コーティングとしてもよく、支持体405の材料の熱特性に、又はヒータセンブリ400の性能に、一般的にはほとんど又は全く影響を与えない。いくつかの実施形態では、コーティングは、約5nmから約10μm、又は約25nmから約5μm、又は約50nmから約500nm、又は約75nmから約200nmの厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、コーティングの厚さを、約50nm、又は約75nm、又は約100nm、又は約125nm、又は約150nmとしてもよい。
【0073】
図5は、諸実施形態による、内部チャネルが形成された例示的な構成要素500の断面側面図を示す。構成要素500は、前述のように、サセプタ、ヒータ、又は静電チャックの上面の代表例である。例えば、構成要素500をサセプタとしてもよく、このサセプタの全直径が1メートルであってもよい。構成要素500のフィーチャーは一定の縮尺で描かれておらず、単に構成要素500の内部チャネル及びその接続の例示を意図していることを理解すべきである。
【0074】
いくつかの実施形態では、構成要素500の本体502を1つ以上の材料から形成してもよい。いくつかの実施形態では、本体502を単一の材料から形成してもよい。その材料の例は、グラファイト、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、金属酸化物(セラミック又は希土類金属含有セラミックなど)である。
【0075】
構成要素500には、ガス流れのために複数のチャネルが形成されている。このチャネルを使用して、真空を生成又はガスを分配してもよい。チャネルは、構成要素500の下面506を貫通する中央開口部508と、中央開口部508と交差する主開口部510と、第1空洞518と、第2空洞522と、第1空洞518を第2空洞522に接続する空洞導管520と、構成要素500の上面504に沿ってチャッキング穴516とを備える。いくつかの実施形態では、内部チャネルを画定するために、構成要素500の一部を別々に製造して、合わせて接合してもよい。
【0076】
主開口部510は、中央開口部508と他のチャネルとの間にガス流路を提供する。この他のチャネルには、構成要素500内に形成され得る、図示されていない他のチャネルも含まれる。いくつかの実施形態では、主開口部510は、構成要素500を少なくとも部分的に又は完全に通過する。主開口部510を、例えばガンドリルを使用して形成してもよい。主開口部510の端部を密閉するためのプラグ512が備えられる。
【0077】
主開口部510の深さを、例えば、約0.3メートルから約0.8メートルの範囲としてもよく、いくつかの実施形態では、約0.5メートルとしてもよい。主開口部510の直径を、約3mmから約10mmの範囲としてもよく、いくつかの実施形態では、約6mmとしてもよい。いくつかの実施形態では、主開口部510のアスペクト比(深さ:直径)を、250:1から30:1の範囲としてもよく、又は第1数が整数であり、第2数が1である比の間の任意の範囲(例えば、200:1から40:1、100:1から70:1など)としてもよい。
【0078】
下面506から内側内面514までの中央開口部508の深さを、例えば、約15mmから約22mmの範囲としてもよく、特定の実施形態では、約18mmとしてもよい。中央開口部508の直径を、例えば、約2mmから5mmの範囲としてもよく、特定の実施形態では、約3mmとしてもよい。特定の実施形態では、中央開口部のアスペクト比を、22:1から4:1の範囲としてもよく、又は第1数が整数であり、第2数が1である比の間の任意の範囲(例えば、18:1から6:1、10:1から5:1など)としてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1空洞518及び第2空洞522は、空洞導管520によって接続されている。この空洞導管は、チャッキング穴516を通過する、むらのないガス流れが可能になるように分布している。いくつかの実施形態では、チャッキング穴516を使用して、ウェハを構成要素500の上面504に固定するための真空を提供してもよい。いくつかの実施形態では、第1空洞518又は第2空洞522のそれぞれの長さを、約50mmから約100mmの範囲としてもよく、特定の実施形態では、約75mmとしてもよい。第1空洞518又は第2空洞522のそれぞれの直径を、例えば、約2mmから6mmの範囲としてもよく、特定の実施形態では、約3mmとしてもよい。特定の実施形態では、中央開口部のアスペクト比を、50:1から8:1の範囲としてもよく、又は第1数が整数であり、第2数が1である比の間の任意の範囲(例えば、50:1から10:1、30:1から20:1など)としてもよい。いくつかの実施形態では、チャッキング穴516及び空洞導管520の直径の各々を、約0.5mmから約3mm、約0.5mmから1mm、約1mmから約3mm、又は約1mmから約1.5mmの範囲としてもよい。
【0080】
プラズマ処理で使用している間、構成要素500はプラズマに曝されるが、このプラズマには耐プラズマ性コーティング(例えば、本明細書に記載されているようなセラミックコーティング)が有益である。構成要素500の内部チャネルもプラズマに曝される可能性が高いので、それらの内面514をコーティングすることは有益である。例えば、コーティング530は、構成要素500の上面504及び下面506をコーティングするものとして示されている。見通し内堆積処理には到達し難い内面514をコーティングするために、コーティング530を、本明細書で説明されるように、ALD処理を使用して堆積させてもよい。
【0081】
図6Aは、物品602上にコーティングされた単一のコーティング604を有する、コーティングされた物品600の断面図を示す。同様に、図6Bは、物品652上にコーティングされた複数の層を有する、コーティングされた物品650の断面図を示す。物品602及び652は、本明細書に記載の物品/構成要素のいずれをも代表してよく、AlN、Al、グラファイト、又は希土類金属含有セラミックなどの適切な材料から形成されてもよい。
【0082】
コーティング604を、本明細書で論じられる希土類金属含有セラミックのいずれかを含むALDコーティングとしてもよい。例えば、コーティング604は、ALDのYコーティングであってもよく、物品602はAlNから形成されてもよい。
【0083】
コーティング654及び656を、同じ又は異なる材料から形成してもよい。いくつかの実施形態では、コーティング654及び656の1つ以上は、希土類金属含有セラミックを含み得る。いくつかの実施形態では、追加のコーティングを形成してもよい。いくつかの実施形態では、コーティング654を、物品652とコーティング656との間の接着を促進する接着層としてもよい。例えば、コーティング654を、CVDによって形成されたアモルファスカーボンを含むCVDカーボン接合層とし、コーティング656を、ALDのYコーティング又は別のALD希土類酸化物コーティングとして、物品652をグラファイト(例えば、結晶質又は半結晶質グラファイト)から形成してもよい。カーボン接合層を、熱分解カーボン接合層としてもよい。この熱分解カーボン接合層は、ALD希土類酸化物コーティングの接合を促進し得る。別の実施例として、コーティング654を、ALDのAlコーティングとし、コーティング656を、ALDのYコーティングとして、物品652をAlNから形成してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、物品602及び652の各々は、それぞれのコーティングとは異なるCTEを有し得る。2つの隣接する材料間のCTEの不一致が大きいほど、それらの材料のうちの一方が最終的に割れたり、剥がれたり、あるいは他の材料との接合状態を失ったりする可能性が高くなる。いくつかの実施形態では、コーティング604を、例えば、コーティング604と物品602との間のCTEの不一致を最小化するように形成することで、2つのCTE間の差が物品602のCTEの10%以内としてもよい。これは、図7に関してより詳細に説明されるように、コーティング604に存在する希土類金属含有化合物の比率を変化させることによって達成され得る。
【0085】
図7は、諸実施形態による、原子層堆積を使用してセラミックコーティングを形成する方法700を示す。方法700を用いて、本明細書に記載の任意の物品/構成要素をコーティングしてもよい。
【0086】
方法700は、ブロック710から開始される。ここで、物品が供給される。物品は、本明細書に記載の物品/構成要素(高温ヒータ、静電チャック、サセプタなど)のいずれであってもよい。物品を、1つ以上の材料(AlN、Al、グラファイトなど)から形成してもよい。物品を、例えば、図2A~2Cの物品210として表される構成要素としてもよい。一実施形態では、物品とし得るものは、ヒータ、静電チャック、ノズル、ガス分配プレート、シャワーヘッド、静電チャック構成要素、チャンバ壁、ライナ、ライナキット、ガスライン、蓋、チャンバ蓋、ノズル、シングルリング、プロセスキットリング、ベース、シールド、プラズマスクリーン、フローイコライザ、冷却ベース、チャンバビューポート、ベローズ、フェースプレート、又は選択性変調器である。別の一実施形態では、物品は高温サセプタ(例えば、図3のサセプタ300によって表されるもの)である。別の一実施形態では、物品は高温ヒータ(例えば、図4のヒータセンブリ400によって表されるもの)である。別の一実施形態では、物品は静電チャック(例えば、図1のESCアセンブリ150によって表されるもの)である。
【0087】
ブロック720で、1つ以上の希土類金属含有セラミック化合物を選択する。セラミック化合物は、Y、YZr、YZrOF、YAl12、YAl、YF、Y、Er、ErAl12、ErF、ZrO、HfO、E、La、Lu、Sc、ScF、Sc、Gd、Sm、及びDyのうちの1つ以上を含み得る。
【0088】
任意選択であるブロック730で、2つのセラミック化合物を選択し、2つのセラミック化合物の間のモル比を選択することで、選択されたモル比のセラミック化合物を含むセラミックコーティングが、原子層堆積によって物品の表面に堆積されると、物品の第1CTEからの10%以内のCTEを有するセラミックコーティングが結果として得られる。セラミック化合物の比率を調整することにより、ALDコーティングを生成して、コーティングと物品との間のCTEの不一致を実質的に低減又は排除することが可能である。
【0089】
40℃から400℃の範囲内で、様々なセラミック化合物のCTEは次のとおりである。Yは7.2×10-6/℃、ZrOは10.5×10-6/℃、Alは7.2×10-6/℃、AlNは4.6×10-6/℃、SiCは4×10-6/℃、SiNは2.8×10-6/℃、Laは12.6×10-6/℃、及びErは6×10-6/℃。異なる比率で2つの化合物を含むコーティングの調整を化合物のCTEの線形結合、すなわち、CTEcoating=RCTE+RCTE、として計算してもよい。ここで、Rは特定の化合物のモル%である。例えば、Y対ZrOの3:1のモル比は、次のように計算される。0.66×7.2+0.33×10.5=8.2×10-6/℃。
【0090】
いくつかの実施形態では、第1セラミック化合物は希土類酸化物を含み、第2セラミック化合物は、希土類オキシフッ化物又は希土類フッ化物を含む。いくつかの実施形態では、第1セラミック化合物はYを含み、第2セラミック化合物はYを含む。
【0091】
ブロック740で、ALDを実行して(例えば、図2A~2Cに関して説明したように)、セラミック化合物、セラミック化合物の組み合わせ、又は選択された比率の2つの化合物の組み合わせを物品上に堆積させて、コーティングされた物品を製造する。いくつかの実施形態では、追加のコーティングを堆積させる。例えば、希土類金属含有化合物の複数の層を形成してもよい。いくつかの実施形態では、接着層を最初に物品上に堆積させる。この接着層をALD、CVD、又は他の堆積方法によって堆積させてもよい(例えば、CVDカーボン層)。
【0092】
いくつかの実施形態では、化合物をALDによって交互層の状態に堆積させて、選択した比率を達成する。たとえば、Y対ZrOの比率を3:1にするには、Yの3回の堆積とそれに続くZrOの1回の堆積を交互に行って、所望の厚さを達成する。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物の前駆体を共添加する(例えば、第1金属含有前駆体と第2金属含有前駆体の混合物を使用する)ことによって共堆積又は堆積される。
【0093】
以下の実施例は、本明細書に記載の実施形態の理解を助けるために記載されており、本明細書に記載され特許請求される実施形態を具体的に限定するものとして解釈されるべきではない。当業者の知識の範囲内にある、現在知られているか又は後に開発される全ての均等物の置換を含むそのような変形、及び実験設計における方案の変更又は軽微な変更は、本明細書に組み込まれた実施形態の範囲内にあるとみなされるべきである。これらの実施例を、上記の方法700を実行することによって達成し得る。
【0094】
コーティングされた物品は、セラミックコーティング(例えば、希土類金属含有コーティング)をさらに含んでもよい。一実施形態では、コーティングの組成を、Y、YZr、YZrOF、YAl12、YAl、ZrO、YF、Y、Er、ErAl12、ErF、E、La、Lu、Sc、ScF、Sc、Gd、GdF、Gd、Sm、Dy、又はそれらの組み合わせとしてもよい。一実施形態では、(例えば、図4A~2Cに関して説明したように)ALDを使用してコーティングを堆積させてもよい。
【0095】
コーティングされた物品は、構成要素とコーティング層との間に接着層をさらに備えてもよい。一実施形態では、接着層はアモルファスカーボン層である。
【0096】
例示的な一実施形態では、多結晶Yの2μm厚のALDコーティングがAlN基板上に形成される。
【0097】
別の例示的な一実施形態では、多結晶YZrOの50nm厚のALDコーティングがAl基板上に形成される。
【0098】
別の例示的な一実施形態では、多結晶YFの160nm厚のALDコーティングがAlN基板上に形成される。
【0099】
別の例示的な一実施形態では、Y、YZrO、又はYFのALDコーティングが、AlN基板上に形成されたAlバッファ層上に形成される。Alバッファ層は、反応界面層が希土類金属含有コーティングとAlN基板との間に形成されるのを防止し得る。
【0100】
別の例示的な一実施形態では、結晶性YのALDコーティングを接着層上に形成する。この接着層は、結晶性グラファイト基板上に形成されている。接着層を、CVDによって堆積されたアモルファスカーボン層としてもよい。このアモルファスカーボン層は、結晶性グラファイトとYの間の接合を促進する。この例示的な実施形態を図8に示す。図8は、接着層及びセラミック層が形成されているグラファイト基板の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【0101】
グラファイト物品上で希土類金属含有セラミックのコンフォーマルなコーティングを使用し、それらの間にカーボン層を配置しているこの特定の実施形態は、SiC層などの他の種類の中間層よりも有利である。グラファイトは比較的安価で、熱伝導率が高く、耐熱衝撃性が高いものの、多孔性であり、不純物を含んでいる。また、グラファイトはフッ素ベースのプラズマによって容易に浸食されるので、グラファイト本体をコーティングして細孔を埋めることと、耐プラズマ層を設けてグラファイトの不純物による処理済み基板の汚染を防ぐことは有益である。本明細書に記載されているようなコンフォーマルな耐プラズマ性コーティングは、グラファイト物品のコーティングに有益であるが、グラファイト表面の多孔性と粗さのために、コーティングの品質が低下する可能性がある。アモルファスカーボン接着層を利用することで、このアモルファスカーボン接着層はこの下にある焼結グラファイト基板よりも密度が高いので、高温動作下でのセラミック層と基板との間の接着を改善し得る。
【0102】
これらの前述の諸実施形態は、限定することを意図するものではなく、明示的に開示されていない他の諸実施形態が補足される。これら他の諸実施形態は、本明細書に記載された様々な実施形態を組み合わせたり、並べ替えたりした幾つかのものの1つであってもよい。
【0103】
上記の説明は、特定のシステム、構成要素、方法等の例などを数多く、具体的かつ詳細に説明しており、それは、本開示のいくつかの実施形態を良く理解してもらうことを目的としている。しかしながら、本開示の少なくともいくつかの実施形態は、こうした具体的かつ詳細な説明がなくても実施され得ることが当業者には明らかであろう。他の諸例では、本開示の実施形態を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の構成要素又は方法は詳細に説明されないか、又は単純なブロック図形式で提示される。したがって、具体的かつ詳細な説明は単なる例示である。特定の実施形態はこれらの例示的な説明とは異なる場合があるが、なおも本開示の範囲内にあると考えられる。
【0104】
この開示における「一」又は「1つの」実施形態への異なる参照は、必ずしも同じ実施形態への参照ではなく、そのような参照は、少なくとも1つを意味することに留意すべきである。本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」と言及した場合、その実施形態に関連して説明した特定の構成、構造、又は特性は少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所に「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という表現が出現しても、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すものではない。さらに、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することを意図している。本明細書で「約」又は「およそ」という用語が使用されている場合、提示された公称値が±1%の範囲内で正確であることを意味することが意図されている。
【0105】
本明細書における方法の動作は特定の順序で示され説明されているが、各方法の動作の順序を変更して、特定の動作が逆の順序で実行されるか、又は、ある動作が他の動作と少なくとも部分的に並行して実行されてもよい。別の一実施形態では、異なる動作の指示又は副動作は、断続的に及び/又は交互に行われてもよい。
【0106】
上記の説明は例示的であり、限定的ではないことを意図していることを理解するべきである。上記の説明を読み理解することにより、他の多くの実施形態が当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲に基づいて、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に決定されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8