(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ線材の接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01B 5/08 20060101AFI20241205BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20241205BHJP
H01R 4/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01B5/08
C01B32/168
H01R4/02 Z ZNM
(21)【出願番号】P 2022512619
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013829
(87)【国際公開番号】W WO2021201096
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2020065007
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】杉原 和樹
(72)【発明者】
【氏名】會澤 英樹
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067657(JP,A)
【文献】特開2017-183281(JP,A)
【文献】特開2017-171546(JP,A)
【文献】特開2017-174689(JP,A)
【文献】特開2018-186071(JP,A)
【文献】特開2013-047402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/08
C01B 32/168
H01R 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ集合体が撚り合わされて束ねて形成されたカーボンナノチューブ線材と、
前記カーボンナノチューブ線材が接続される接続対象物と、
前記カーボンナノチューブ線材よりもはんだ濡れ性の高い導線と、
前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に対して直交する成分を有する断面に沿って形成された前記導線の貫通部と、
前記カーボンナノチューブ線材と前記接続対象物とを接続するはんだと、
を備えたカーボンナノチューブ線材の接続構造体であり、
前記はんだが、前記導線に沿って形成された前記貫通部を浸入しているカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項2】
前記接続対象物が、導電性部材である請求項1に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項3】
前記導電性部材が、金属製部材を備えた基板または他のカーボンナノチューブ線材である請求項2に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項4】
前記導線の一部が、前記カーボンナノチューブ線材の、前記接続対象物と対向しない部分から突出している請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項5】
前記接続対象物が、他のカーボンナノチューブ線材である、
前記カーボンナノチューブ線材の一方の端部と前記他のカーボンナノチューブ線材の一方の端部の外周面が接した接続部と、
を備えたカーボンナノチューブ線材の接続構造体であり、
前記接続部において、前記導線の貫通部が、前記カーボンナノチューブ線材と前記他のカーボンナノチューブ線材の長手方向に対して直交する成分を有する断面に沿って形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項6】
前記導線のうち、前記貫通部に位置する部位以外の少なくとも一部が、前記カーボンナノチューブ線材の外周部に巻かれている請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項7】
前記導線のうち、前記貫通部に位置する部位以外の少なくとも一部が、前記カーボンナノチューブ線材と前記他のカーボンナノチューブ線材の外周部に巻かれている請求項5に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に対して直交する成分を有する断面における、前記カーボンナノチューブ線材の断面積に対する前記貫通部における前記導線の断面積の割合が、5%以上99%以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ線材とカーボンナノチューブ線材が接続される接続対象物との接続構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)は、様々な特性を有する素材であり、多くの分野への応用が期待されている。CNTは、軽量であると共に、導電性、熱伝導性、機械的強度等の諸特性に優れることから、例えば、電線等の用途として、金属線に代わる線材としての適用が期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブが線材として使用される場合には、カーボンナノチューブ線材(以下、「CNT線材」ということがある。)の長尺化が必要となる。しかし、CNT線材の長尺化には、高度な技術が必要である。従来のCNT線材の長尺化技術として、各カーボンナノチューブ糸から成長したカーボンナノチューブが、互いの接続相手側のカーボンナノチューブ糸及び/又は成長したカーボンナノチューブに絡みつくことにより、カーボンナノチューブ糸同士が接続されて、カーボンナノチューブ線材を長尺化することが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献1では、カーボンナノチューブ糸からカーボンナノチューブを成長させるために、カーボンナノチューブ糸同士を接続させる部位に触媒溶液を施与することでカーボンナノチューブを成長させて接続相手側のカーボンナノチューブ糸と絡みつける必要があるので、接続作業が煩雑であり、また、触媒溶液を使用するので、カーボンナノチューブ糸同士を接続させる部位の位置的な制御が難しいという問題があった。
【0005】
また、CNTは、上記の通り、導電性に優れることから、CNT線材は、電線等の用途として期待されており、接続相手先となるのは、CNT線材だけではなく、回路基板等の基板となることも想定される。しかし、カーボンナノチューブを成長させて接続相手側のカーボンナノチューブ糸と絡みつける特許文献1では、接続相手先がCNT線材以外の場合には、接続体を形成することができないという問題があった。
【0006】
一方で、金属線を接続対象物と接続する場合、接続作業が簡易であり、接続強度も得られることから、はんだ付けによって接続することがある。しかし、CNT線材は、金属線と比較してはんだ濡れ性に劣り、特に、CNT線材がカーボンナノチューブ集合体からなる素線が撚り合わされた撚り線の場合には、CNT線材の内部まではんだが浸入しにくいので、接続部の導電性と強度に問題があった。
【0007】
そこで、CNT線材をはんだ付けにより接続対象物と接続する場合には、予め、CNT線材に対し、親水性処理や粗面化処理を行う必要があった。従って、CNT線材をはんだ付けする場合には、やはり、接続作業が煩雑となってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、カーボンナノチューブ線材の接続対象物と所望の部位にて簡易な操作で接続でき、カーボンナノチューブ線材と接続対象物との接続部が、電気的接続性と機械的接続性に優れるカーボンナノチューブ線材の接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]カーボンナノチューブ集合体が撚り合わされて束ねて形成されたカーボンナノチューブ線材と、
前記カーボンナノチューブ線材が接続される接続対象物と、
前記カーボンナノチューブ線材よりもはんだ濡れ性の高い導線と、
前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に対して直交する成分を有する断面に沿って形成された前記導線の貫通部と、
前記カーボンナノチューブ線材と前記接続対象物とを接続するはんだと、
を備えたカーボンナノチューブ線材の接続構造体であり、
前記はんだが、前記導線に沿って形成された前記貫通部を浸入しているカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[2]前記接続対象物が、導電性部材である[1]に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[3]前記導電性部材が、金属製部材を備えた基板または他のカーボンナノチューブ線材である[2]に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[4]前記導線の一部が、前記カーボンナノチューブ線材の、前記接続対象物と対向しない部分から突出している[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[5]前記接続対象物が、他のカーボンナノチューブ線材である、
前記カーボンナノチューブ線材の一方の端部と前記他のカーボンナノチューブ線材の一方の端部の外周面が接した接続部と、
を備えたカーボンナノチューブ線材の接続構造体であり、
前記接続部において、前記導線の貫通部が、前記カーボンナノチューブ線材と前記他のカーボンナノチューブ線材の長手方向に対して直交する成分を有する断面に沿って形成されている[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[6]前記導線のうち、前記貫通部に位置する部位以外の少なくとも一部が、前記カーボンナノチューブ線材の外周部に巻かれている[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[7]前記導線のうち、前記貫通部に位置する部位以外の少なくとも一部が、前記カーボンナノチューブ線材と前記他のカーボンナノチューブ線材の外周部に巻かれている[5]に記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
[8]前記カーボンナノチューブ線材の長手方向に対して直交する成分を有する断面における、前記カーボンナノチューブ線材の断面積に対する前記貫通部における前記導線の断面積の割合が、5%以上99%以下である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ線材の接続構造体。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体の態様によれば、撚り線であるカーボンナノチューブ線材の長手方向に対して直交する成分を有する断面に沿って形成された、はんだ濡れ性の高い導線の貫通部を備え、はんだが導線に沿って貫通部を貫通していることにより、撚り線であるカーボンナノチューブ線材の、貫通部におけるカーボンナノチューブ集合体表面と導線の表面とに囲まれた領域等の内部に、はんだ濡れ性の高い部位(すなわち、導線の貫通部)を容易に作製できる。従って、はんだが導線の貫通部に沿ってカーボンナノチューブ線材の内部に流れ込み、はんだと導線と接続対象物が強固に接続され、結果、カーボンナノチューブ線材と接続対象物が強固に接続される。上記から、本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体では、カーボンナノチューブ線材の接続対象物と所望の部位にて簡易な操作で接続でき、カーボンナノチューブ線材と接続対象物との接続部が、電気的接続性と機械的接続性に優れるカーボンナノチューブ線材の接続構造体を得ることができる。
【0012】
本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体の態様によれば、導線の一部が、カーボンナノチューブ線材の、接続対象物と対向しない部分から突出していることにより、導線の突出部によって、はんだがカーボンナノチューブ線材の内部に円滑に流れ込むことができる。
【0013】
本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体の態様によれば、導線のうち、貫通部に位置する部位以外の少なくとも一部がカーボンナノチューブ線材の外周部に巻かれている巻き回し部を有することにより、前記巻き回し部にてはんだが貯留する。従って、はんだは所望の接続部とその近傍に確実に施与されて、より円滑にはんだがカーボンナノチューブ線材の内部に流れ込むことができる。また、巻き回し部にてはんだが貯留しやすいので、はんだが、所望の接続部とその近傍以外の部位に濡れ広がってしまうことを防止できる。
【0014】
本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体の態様によれば、カーボンナノチューブ線材の断面積に対する貫通部の断面積の割合が5%以上99%以下であることにより、さらに確実にはんだがカーボンナノチューブ線材の内部に流れ込むことができるので、カーボンナノチューブ線材と接続対象物の接続信頼性がさらに確実に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る接続構造体である、カーボンナノチューブ線材が基板に接続された接続構造体の説明図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る接続構造体に用いるカーボンナノチューブ線材に導線の貫通部を形成する説明図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る接続構造体に用いる、導線の貫通部を形成したカーボンナノチューブ線材の外周部に導線が巻かれている態様の説明図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る接続構造体である、カーボンナノチューブ線材が他のカーボンナノチューブ線材と接続された接続構造体の説明図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る接続構造体に用いる、導線の貫通部を形成したカーボンナノチューブ線材の外周部に導線が巻かれている態様の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体について説明する。まず、本発明の第1実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体について、説明する。なお、
図1は、本発明の第1実施形態に係る接続構造体である、カーボンナノチューブ線材が基板に接続された接続構造体の説明図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る接続構造体に用いるカーボンナノチューブ線材に導線の貫通部を形成する説明図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る接続構造体に用いる、導線の貫通部を形成したカーボンナノチューブ線材の外周部に導線が巻かれている態様の説明図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体1は、カーボンナノチューブ集合体(以下、「CNT集合体」ということがある。)が撚り合わされて束ねて形成されたカーボンナノチューブ線材(CNT線材)10と、CNT線材10が接続される接続対象物と、を備えている。CNT線材10の接続対象物は、導電性部材である。カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、接続対象物は基板20であり、基板20としては、例えば、金属製の基板、回路基板等、金属製部材を備えた基板が挙げられる。
【0018】
カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、CNT線材10の端部近傍が基板20に接続されて、CNT線材10と基板20との接続部40が形成されている。CNT線材10と基板20との接続には、はんだ41が使用されている。従って、はんだ41が、CNT線材10と接続対象物である基板20とを接続しており、CNT線材10は、基板20にはんだ付けされている。
【0019】
CNT線材10は、1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブ(CNT)で構成されるカーボンナノチューブ集合体(CNT集合体)からなる素線が、複数、撚り合わされて束ねて形成されている。従って、CNT線材10は、CNT集合体からなる素線が撚り合わされて形成された撚り線である。ここで、CNT線材10とはCNTの割合が90質量%以上のCNT線材10を意味する。なお、CNT線材10におけるCNT割合の算定においては、メッキとドーパントは除かれる。CNT集合体の長手方向が、CNT線材10の長手方向を形成している。従って、CNT集合体は、線状となっている。CNT線材10における複数のCNT集合体は、その長軸方向がほぼ揃って配されている。従って、CNT線材10における複数のCNT集合体は、配向している。
【0020】
図2に示すように、カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、CNT線材10よりもはんだ濡れ性の高い導線30と、CNT線材10の長手方向に対して直交する断面に沿って形成された導線30の貫通部31と、を備えている。CNT線材10の径方向に沿って、CNT線材10に導線30を貫通させることで、CNT線材10の長手方向に対して直交する断面に沿って導線30の貫通部31が形成されている。カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、CNT線材10の長手方向に対して直交する断面の中心線に沿って導線30が貫通している。なお、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体では、説明の便宜上、CNT線材10の長手方向に対して直交する断面に導線30の貫通部31が形成されているが、CNT線材10の長手方向に対して直交する成分を有する断面であればよく、長手方向に対して直交する断面に限定されない。
【0021】
上記から、導線30の貫通部31における伸び方向は、CNT線材10の長手方向に対して、略直交方向となっている。CNT線材10は、CNT集合体からなる素線が撚り合わされて形成された撚り線なので、CNT線材10に、別途、貫通孔等を形成しなくても、CNT線材10に導線30を突き刺すことで、CNT線材10に導線30を貫通させることができる。また、CNT線材10に導線30を突き刺すことで、CNT線材10と導線30との間に隙間が形成される。カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、1本の導線30をCNT線材10に突き刺すことで、1つの貫通部31が形成されている。一方、貫通部は必ずしもCNT線材の長手方向に対して、略直交方向となっている必要はなく、例えば、導線がCNT線材10内で折り返され、導線の両端がCNT線材10の外周のどの位置から突出していてもよい。従って、CNT線材10内で、貫通部31が折れ曲がって形成されてもよい。本実施形態においても、後述の通り、はんだがCNT線材10の内部(つまり、導線30の外周とCNT集合体との間に形成された隙間)に流れ込む構造とすることができる。
【0022】
CNT線材10に導線30を突き刺すことでCNT線材10と導線30との間に隙間も形成されるので、CNT線材10が基板20にはんだ付けされる際に、はんだ41が、導線30に沿って貫通部31を貫通している。すなわち、CNT線材10が基板20にはんだ付けされる際に、導線30の外周とCNT線材10との間に形成された隙間、すなわち、CNT線材10の内部に沿ってはんだが流れ込むことで、はんだ41が貫通部31を貫通する。上記から、はんだ41の形成方向は、CNT線材10の長手方向に対して、略直交方向となっている。なお、
図2では、カーボンナノチューブ線材の接続構造体1の説明の便宜上、CNT線材10が基板20にはんだ付けされる際に貫通部31に施与されるはんだ41も図示している。
【0023】
図3に示すように、導線30のうち、接続部40において、貫通部31に位置する部位以外の少なくとも一部が、CNT線材10の外周面11にCNT線材10の周方向に沿って巻かれて、巻き回し部32が形成されている。上記から、導線30の貫通部31と巻き回し部32は、相互に連続している。また、巻き回し部32は、貫通部31の近傍に設けられている。なお、導線30の巻き回し部32は、CNT線材10の外周面11に接するように設けられている。導線30の貫通部31とCNT線材10の周方向に沿って巻かれた巻き回し部32が相互に連続していることにより、CNT線材10の内部にはんだ41が流れ込みやすくなり、CNT線材10と基板20の接続強度が向上する。
【0024】
導線30の巻き回し部32が形成されることで、導線30の一部が、CNT線材10の、基板20と対向しない部分から突出している態様となっている。すなわち、導線30が、導線30の巻き回し部32にて、CNT線材10の外周面11から突出している。また、
図3では、さらに、貫通部31に位置する導線30の先端部33が、CNT線材10の外周面11から外方向へ延出することで、導線30の一部が、CNT線材10の、基板20と対向しない部分から突出している態様となっている。また、接続対象物が基板20の場合、貫通部31を形成していない導線30の端部(先端部33)が、あらかじめ基板20とはんだ付け等で接続されていてもよい。
【0025】
巻き回し部32における導線30の巻き数は、特に限定されず、1回でも複数回でもよい。なお、
図3では、説明の便宜上、導線30の巻き数は、4回としている。巻き回し部32において、導線30は、CNT線材10の長手方向に所定の間隔をあけて、CNT線材10の周方向に沿って巻かれている。また、巻き回し部32は、CNT線材10が基板20にはんだ付けされる際に、はんだ41を貯留させる機能を有している。なお、
図3では、カーボンナノチューブ線材の接続構造体1に、CNT線材10が基板20にはんだ付けされる際に施与されるはんだ41も図示している。
【0026】
CNT線材10よりもはんだ濡れ性の高い導線30としては、例えば、銅、銀, 白金, タングステン等の金属線を挙げることができる。また、はんだの種類としては、金属部材の接続に使用できるものであれば、特に限定されず、例えば、Sn-Pb系の鉛含有はんだや、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系、Sn-Zn系などの鉛フリーはんだが挙げられる。また、1箇所の貫通部31に施与するはんだ41の量は、特に限定されないが、その下限値は、接続部40における引張強度と電気的接続性を向上させる点から3.0mgが好ましい。一方で、1箇所の貫通部31に施与するはんだ41の上限値は、軽量化の点から、20mgが好ましく、6.0mgが特に好ましい。
【0027】
CNT線材10の直径は、特に限定されないが、例えば、20μm~1mmが挙げられる。また、CNT線材10を構成するCNTの素線の撚り本数は、特に限定されないが、例えば、2本~2千本が挙げられる。また、導線30の直径は、特に限定されないが、例えば、10μm以上1mm未満が挙げられる。
【0028】
カーボンナノチューブ線材の接続構造体1によれば、撚り線であるCNT線材10の長手方向に対して直交する断面に沿って形成された、はんだ濡れ性の高い導線30の貫通部31を備え、はんだ41が導線30に沿って貫通部31を貫通していることにより、CNT線材10に、はんだ濡れ性の高い内部(すなわち、導線30の外周とCNT線材10との間に形成された隙間)を容易に作製できる。従って、CNT線材10を基板20にはんだ接続する際に、はんだ41が導線30の貫通部31に沿って、すなわち、CNT線材10の径方向に沿って、CNT線材10の内部へ流れ込み、はんだ41と導線30と基板20が強固に接続され、結果、CNT線材10と基板20が強固に接続される。上記から、カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、導線30の貫通部31のCNT線材10における位置を適宜選択することで、CNT線材10の所望の部位にて基板20と簡易な操作で強固に接続できる。また、カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、CNT線材10と基板20との接続部40が、電気的接続性と機械的接続性に優れるカーボンナノチューブ線材の接続構造体を得ることができる。
【0029】
また、カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、導線30の一部が、CNT線材10の、基板20と対向しない部分から突出していることにより、導線30の突出部によって、はんだ41が導線30の延在方向に沿ってCNT線材10の内部に円滑に流れ込むことができる。
【0030】
また、カーボンナノチューブ線材の接続構造体1では、導線30のうち、貫通部31に位置する部位以外の少なくとも一部がCNT線材10の外周面11に巻かれている巻き回し部32を有することにより、CNT線材10を基板20にはんだ接続する際に、巻き回し部32にてはんだ41が貯留する。従って、はんだ41は所望の接続部40とその近傍に確実に施与されて、より円滑にはんだ41が導線30の延在方向に沿ってCNT線材10の内部に流れ込むことができる。また、巻き回し部32にてはんだ41が貯留しやすいので、はんだ41が、所望の接続部40とその近傍以外の部位に濡れ広がってしまうことを防止できる。
【0031】
CNT線材10の長手方向に対して直交する断面における、CNT線材10の断面積に対する貫通部31における導線30の断面積の割合は、特に限定されないが、5%以上99%以下が好ましく、10%以上99%以下がさらに好ましく、30%以上50%以下が特に好ましい。特に、導線30の断面積が30%以上50%以下では電気的接続性と機械的接続性の性能がピークに達し、軽量性、コストの観点からも好ましい。上記断面積の下限値は、確実にはんだ41が導線30の延在方向に沿ってCNT線材10の内部に流れ込むことで、CNT線材10と基板20の接続信頼性がさらに確実に向上する点から、10%が好ましく、電気的接続性の点から30%が特に好ましい。一方で、上記断面積の割合の上限値は、貫通部31及び巻き回し部32を形成する際のハンドリング性の点から、99%が好ましく、軽量化と電気的接続性のバランスを得る点から50%が特に好ましい。なお、上記断面積の割合は、(貫通部31における導線30の径方向の断面積/CNT線材10の径方向の断面積)×100にて算出する。断面積の割合を上記の値とすることで、カーボンナノチューブ線材に貫通した導線30の表面積を確保でき、はんだが浸入しやすくなる。その結果、電気的接続性と機械的接続性に優れるカーボンナノチューブ線材の接続構造体を得ることができる。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第2実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体は、第1実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体と主要な構成要素は共通しているので、第1実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る接続構造体である、カーボンナノチューブ線材が他のカーボンナノチューブ線材と接続された接続構造体の説明図である。
【0033】
第1実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体では、導電性部材である接続対象物が基板であったが、
図4に示すように、第2実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、導電性部材である接続対象物が、他のCNT線材50となっている。カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、CNT線材10の一方端12が、他のCNT線材50の一方端52と接続されて、CNT線材10と他のCNT線材50との接続部40が形成されている。カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、CNT線材10の一方端12から他方端(図示せず)への伸びの方向は、他のCNT線材50の一方端52から他方端(図示せず)への伸びの方向とは、異なる方向となっている。
【0034】
また、接続部40では、CNT線材10の一方端12と他のCNT線材50の一方端52が並列配置されている。また、接続部40では、CNT線材10の外周面11と他のCNT線材50の外周面51が接した状態で、CNT線材10の一方端12と他のCNT線材50の一方端52が接続されている。
【0035】
接続部40には、導線30の貫通部31が設けられている。導線30の貫通部31は、並列配置されたCNT線材10と他のCNT線材50の部位の長手方向に対して直交する断面に沿って形成されている。CNT線材10と他のCNT線材50の径方向に沿って、CNT線材10と他のCNT線材50に導線30を貫通させることで、並列配置されたCNT線材10と他のCNT線材50の部位の長手方向に対して直交する断面に沿って導線30の貫通部31が形成されている。カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、並列配置されているCNT線材10の一方端12と他のCNT線材50の一方端52の長手方向に対して直交する断面の中心線に沿って導線30が貫通している。つまり、導線30はCNT線材10と他のCNT線50の両方に連続した貫通部31を有する。
【0036】
カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、並列配置されているCNT線材10と他のCNT線材50の部位に導線30を突き刺すことで、CNT線材10と他のCNT線材50に導線30を貫通させて貫通部31を形成することができる。カーボンナノチューブ線材の接続構造体2でも、1本の導線30をCNT線材10と他のCNT線材50に突き刺すことで、1つの貫通部31が形成されている。なお、他のCNT線材50は、CNT線材10と同じく、CNTの素線が複数撚り合わされて形成された撚り線である。
【0037】
CNT線材10の一方端12が他のCNT線材50の一方端52にはんだ付けされて、CNT線材が長尺化される際に、はんだ41が、導線30に沿って貫通部31を貫通する。従って、はんだ41は、貫通部31に沿ってCNT線材10の内部から他のCNT線材50の内部にわたっている。
【0038】
図4に示すように、導線30のうち、貫通部31に位置する部位以外の少なくとも一部が、CNT線材10と他のCNT線材50の外周部に周方向に沿って巻かれて、巻き回し部32が形成されている。巻き回し部32は、CNT線材10と他のCNT線材50が並列配置されている部位に設けられている。巻き回し部32では、CNT線材10の一方端12と他のCNT線材50の一方端52を束ねるように、導線30が巻き回されている。カーボンナノチューブ線材の接続構造体2でも、導線30の貫通部31と巻き回し部32は、相互に連続しており、また、巻き回し部32は、貫通部31の近傍に設けられている。
【0039】
カーボンナノチューブ線材の接続構造体2でも、導線30の巻き回し部32が形成されることで、導線30の一部が、CNT線材10の、他のCNT線材50と対向しない部分から突出している態様となっている。すなわち、導線30が、導線30の巻き回し部32にて、CNT線材10の外周面11から突出している。また、
図4では、貫通部31に位置する導線30の先端部33が、CNT線材10の外周面11から外方向へ延出することで、導線30の一部が、CNT線材10の、他のCNT線材50と対向しない部分から突出している態様となってもいる。
【0040】
カーボンナノチューブ線材の接続構造体2でも、巻き回し部32は、CNT線材10が他のCNT線材50とはんだ付けされる際に、はんだ41を貯留させる機能を有している。従って、はんだ41が、導線30の延在方向に沿ってCNT線材10の内部と他のCNT線材50の内部により円滑に流れ込むことができる。さらに、カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、巻き回し部32は、CNT線材10と他のCNT線材50との接続部40の接合強度をさらに向上させる機能を有している。さらに、カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、導線30はCNT線材10と他のCNT線材50を直接接続する機能を有しているので、CNT線材10と他のCNT線材50との間の引張強度を向上させることができる。
【0041】
CNT線材10の長手方向における巻き回し部32の幅は、特に限定されないが、その下限値は、CNT線材10と他のCNT線材50とのはんだ付けを確実にする点から、0.3mm以上が好ましく、接合部の接合強度をさらに向上させる点から、0.5mm以上が特に好ましい。一方で、巻き回し部32の幅の上限値は、接合部40の軽量化の点から、3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下が特に好ましい。
【0042】
カーボンナノチューブ線材の接続構造体2によれば、撚り線であるCNT線材10の長手方向と接続対象物である他のCNT線材50の長手方向に対して直交する断面に沿って形成された、はんだ濡れ性の高い導線30の貫通部31を備え、はんだ41が導線30に沿って貫通部31を貫通していることにより、CNT線材10と他のCNT線材50に、はんだ濡れ性の高い内部(すなわち、導線30の外周とCNT線材10並びに他のCNT線材50との間に形成された隙間)を容易に作製できる。従って、CNT線材10と他のCNT線材50を接続する際に、はんだ41が導線30の貫通部31に沿って、すなわち、CNT線材10と他のCNT線材50の径方向に沿って、CNT線材10の内部と他のCNT線材50の内部へ流れ込み、はんだ41と導線30とCNT線材10と他のCNT線材50とが、それぞれ強固に接続され、結果、CNT線材10と他のCNT線材50が強固に接続される。上記から、カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、導線30の貫通部31のCNT線材10における位置を適宜選択することで、CNT線材10の所望の部位にて他のCNT線材50と簡易な操作で強固に接続でき、CNT線材を簡易に長尺化することができる。また、カーボンナノチューブ線材の接続構造体2では、CNT線材10と他のCNT線材50との接続部40が、電気的接続性と機械的接続性に優れるカーボンナノチューブ線材の接続構造体を得ることができる。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体について、図面を用いながら説明する。なお、第3実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体は、第1、第2実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体と主要な構成要素は共通しているので、第1、第2実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、
図5は、本発明の第3実施形態に係る接続構造体に用いる、導線の貫通部を形成したカーボンナノチューブ線材の外周部に導線が巻かれている態様の説明図である。
【0044】
図5に示すように、第3実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の接続構造体3では、CNT線材10の先端部13に導線30の貫通部31と巻き回し部32が形成されている。カーボンナノチューブ線材の接続構造体3では、CNT線材10の接続対象物は、例えば、基板や他のCNT線材(
図5では、基板20)であり、CNT線材10の先端部13が、接続対象物にはんだ付けされている。
【0045】
CNT線材10に巻き回し部32が形成されていることにより、CNT線材10の外周が巻き回し部32で保持されているので、外周面から圧力がかかり、CNT同士の接触面積の低下を防止し、導電性の低下を防止できる。この時、圧力は巻き回し部32が形成されているCNT線材10の外周面の全面にわたって略均等にかかることが好ましい。圧力を巻き回し部32全面にわたって略均等にかける方法として、例えば、巻き回し部32の巻き数を増やしたり、巻き回し部32の始点と終点をCNT線材10の長手方向に平行な位置に設置したりするなどの方法が挙げられる。
【0046】
次に、本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体について、他の実施形態を説明する。上記各実施形態のカーボンナノチューブ線材の接続構造体では、導線の巻き回し部が設けられていたが、導線の貫通部が形成されていればよく、巻き回し部は設けられていなくてもよい。また、上記各実施形態のカーボンナノチューブ線材の接続構造体では、1本の導線にて、貫通部と巻き回し部が設けられていたが、これに代えて、複数の導線にて貫通部と巻き回し部が設けられてよい。従って、導線の貫通部は、複数設けられてもよい。導線の貫通部が複数設けられていることにより、貫通部における導線の表面積がさらに増大し、はんだがさらに浸入しやすくなる。導線の複数の貫通部は、CNT線材の長手方向に対して直交する成分を有する一断面に形成されていてもよく、CNT線材の長手方向に対して直交する成分を有する複数の断面に形成されていてもよい。導線の複数の貫通部がCNT線材の長手方向に対して直交する成分を有する一断面に形成されていることにより、はんだが施与される接続部の領域が狭くなるので、コンパクトなカーボンナノチューブ線材の接続構造体を形成することができる。また、導線の複数の貫通部がCNT線材の長手方向に対して直交する成分を有する複数の断面に形成されていることにより、はんだが施与される接続部の領域が広くなるので、接合部の接合強度がさらに構造する。
【0047】
また、上記各実施形態のカーボンナノチューブ線材の接続構造体では、巻き回し部において、導線は、CNT線材の長手方向に所定の間隔をあけて巻かれていたが、これに代えて、所定の間隔をあけずに、導線同士を接触させた状態で巻かれていてもよい。
【実施例】
【0048】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、以下の実施例の態様に限定されるものではない。
【0049】
まず、CNTを作製し、得られた複数のCNTからCNT素線を作製する。次いで、得られた複数のCNT素線を撚り合わせてCNTの撚り線を作製する。CNTは、例えば、浮遊触媒法(特許第5819888号)、基板法(特許第5590603号)等の方法で作製することができる。また、CNT素線は、例えば、乾式紡糸(特許第5819888号、特許第5990202号、特許第5350635号)、湿式紡糸(特許第5135620号、特許第5131571号、特許第5288359号)、液晶紡糸(特表2014-530964号公報)等の方法で作製することができる。
【0050】
実施例1
7本のCNTの素線を撚り合わせたCNT線材(直径0.2mm)を2本用意し、2本のCNT線材の端部同士を並列配置させた。導線として1本の銅線(直径0.025mm)を用意し、2本のCNT線材を並列配置させた部位に銅線を突き刺して、2本のCNT線材に銅線の貫通部を形成した。さらに、2本のCNT線材の外周部を、2本のCNT線材を束ねるようにして、貫通部を形成した銅線で巻いて巻き回し部を形成し、接続構造体を作成した。巻き回し部の幅は1mmとした。
実施例2
導線として1本の銅線に代えて2本の銅線を使用し、CNT線材の長手方向に直交する断面上に、2本の銅線が略直交するように突き刺したこと以外は実施例1と同様の方法で接続構造体を作成した。
実施例3
直径0.025mmの銅線に代えて直径0.080mmの銅線を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で接続構造体を作成した。
実施例4
1本の銅線に代えて2本の銅線を使用し、CNT線材の長手方向に直交する断面上に、2本の銅線が略直交するように突き刺したこと以外は実施例3と同様の方法で接続構造体を作成した。
実施例5
直径0.025mmの銅線に代えて直径0.250mmの銅線を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で接続構造体を作成した。
実施例6
1本の銅線に代えて2本の銅線を使用し、CNT線材の長手方向に直交する断面上に、2本の銅線が略直交するように突き刺したこと以外は、実施例5と同様の方法で接続構造体を作成した。
【0051】
貫通部と巻き回し部にはんだを施与して、2本のCNT線材を接続してCNT線材を直線状に長尺化し、本発明のカーボンナノチューブ線材の接続構造体のサンプルを作製した。はんだとして、実施例1~6では、いずれも、鉛系はんだを使用した。また、参考例として、接続していない1本のCNT線材(7本のCNTの素線を撚り合わせたCNT線材(直径0.2mm))を用いた。
【0052】
評価項目と評価方法は以下の通りである。
(1)カーボンナノチューブ線材の接続構造体の貫通部における、カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する導線の径方向の断面積の割合
カーボンナノチューブ線材の接続構造体の貫通部における、カーボンナノチューブ線材の径方向の断面積に対する導線の径方向の断面積の割合は、カーボンナノチューブ線材の接続構造体の断面を切り出し、SEM取得した画像に基づいて、貫通部における導線の径方向の断面積/CNT線材の径方向の断面積と計算して算出した。
【0053】
(2)抵抗値
カーボンナノチューブ線材の接続構造体の抵抗値は、低電圧ソースメータ(ケースレー社製、装置名「2401 SourceMeter」)及びデジタルマルチメータ(ケースレー社製、装置名「2000 multimeter」)にカーボンナノチューブ線材の接続構造体を接続し、4端子法により抵抗測定を実施した。
【0054】
(3)引っ張り強度
カーボンナノチューブ線材の接続構造体のサンプルの両端部を試験者が把持して引っ張り、該サンプルの接続状況を目視にて観察した。
〇:引っ張っても接続部は切れず、接続構造に変化がない
△:引っ張ると接続構造が変化するが、電気的接続が維持できている
×:引っ張ると接続部がばらける
【0055】
評価結果を下記表1に示す。
【0056】
【0057】
上記表1から、2本のCNT線材をはんだで接続した接続構造体である実施例1~6では、いずれも1本のCNT線材と同程度の抵抗値に低減でき、電気的接続性に優れていた。また、実施例1~6では、引っ張り強度も良好であり、機械的接続性にも優れており、特に、カーボンナノチューブの断面積に対する、銅線の割合が10%以上の実施例2~6では機械的接続性がさらに優れていた。さらに、銅線の割合が30%以上の実施例4~6では、抵抗値の低減が顕著に確認された。
【0058】
また、実施例1~6の接続部を基板とはんだで接続させた場合も、機械的強度、電気的接続性、共に、優れていた。
【符号の説明】
【0059】
1、2、3 カーボンナノチューブ線材の接続構造体
10 カーボンナノチューブ線材
30 導線
31 貫通部
41 はんだ