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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20241205BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/22 502L
H01J37/22 502H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022553305
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037168
(87)【国際公開番号】W WO2022070311
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 直子
(72)【発明者】
【氏名】津野 夏規
(72)【発明者】
【氏名】高田 哲
(72)【発明者】
【氏名】服部 裕斗
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/115876(WO,A1)
【文献】特開2009-004114(JP,A)
【文献】特開2007-172886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/28
H01J 37/22
H01J 37/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して照射される荷電粒子ビームを発生する荷電粒子源と、
前記試料に対して照射される光を発生する光源と、
前記試料に対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる二次荷電粒子を検出する第1検出器と、
前記試料が搭載されるステージと、
前記ステージに設置され、前記荷電粒子ビームおよび前記光が照射される位置調整マークと、
前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる二次光を検出する第2検出器と、
前記荷電粒子ビームの照射および前記光の照射を制御し、前記第1検出器による第1検出信号および前記第2検出器による第2検出信号を取得し、画像を生成して表示するコンピュータシステムと、
前記コンピュータシステムの制御に基づいて、前記ステージに対する前記荷電粒子ビームの照射位置および前記光の照射位置を設定し、前記光の照射位置と前記ステージとの距離を含む相対的な位置関係を変更する機構と、
を備え、
前記コンピュータシステムは、
前記位置調整マークに対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる前記第1検出信号に基づいて、前記位置調整マークが映った第1画像を生成し、
前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる前記第2検出信号に基づいて、前記位置調整マークの付近に前記光の照射領域が映った第2画像を生成し、
前記機構によって位置関係を変更する際に得られる前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射位置とを調整する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
試料に対して照射される荷電粒子ビームを発生する荷電粒子源と、
前記試料に対して照射される光を発生する光源と、
前記試料に対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる二次荷電粒子を検出する第1検出器と、
前記試料が搭載されるステージと、
前記ステージに搭載され、前記荷電粒子ビームおよび前記光が照射される位置調整試料と、
前記位置調整試料に対する前記光の照射によって得られる二次光を検出する第2検出器と、
前記荷電粒子ビームの照射および前記光の照射を制御し、前記第1検出器による第1検出信号および前記第2検出器による第2検出信号を取得し、画像を生成して表示するコンピュータシステムと、
前記コンピュータシステムの制御に基づいて、前記ステージに対する前記荷電粒子ビームの照射位置および前記光の照射位置を設定し、前記光の照射位置と前記ステージとの距離を含む相対的な位置関係を変更する機構と、
を備え、
前記位置調整試料は、シリコンウエハの表面において、第1領域として絶縁膜と、第2領域として導電性プラグおよびその下の不純物拡散層とが、周期的に配置されており、前記シリコンウエハと前記不純物拡散層とが形成する接合が活性化する波長の光が前記光として照射されることで、前記表面の帯電が除去または低減されて放出される二次荷電粒子が増加する構造を有し、
前記コンピュータシステムは、
前記位置調整試料に対する前記荷電粒子ビームおよび前記光の両方の照射によって得られる前記第1検出信号に基づいて、前記光の照射領域が強度分布として映った画像を生成し、
前記機構によって位置関係を変更する際に得られる前記画像に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射位置とを調整する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
試料に対して照射される荷電粒子ビームを発生する荷電粒子源と、
前記試料に対して照射される光を発生する光源と、
前記試料に対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる二次荷電粒子を検出する第1検出器と、
前記試料が搭載されるステージと、
前記ステージに設置され、前記荷電粒子ビームおよび前記光が照射される位置調整マークと、
前記ステージに搭載され、前記荷電粒子ビームおよび前記光が照射される位置調整試料と、
前記位置調整マークまたは前記位置調整試料に対する前記光の照射によって得られる二次光を検出する第2検出器と、
前記荷電粒子ビームの照射および前記光の照射を制御し、前記第1検出器による第1検出信号および前記第2検出器による第2検出信号を取得し、画像を生成して表示するコンピュータシステムと、
前記コンピュータシステムの制御に基づいて、前記ステージに対する前記荷電粒子ビームの照射位置および前記光の照射位置を設定し、前記光の照射位置と前記ステージとの距離を含む相対的な位置関係を変更する機構と、
を備え、
前記位置調整試料は、シリコンウエハの表面において、第1領域として絶縁膜と、第2領域として導電性プラグおよびその下の不純物拡散層とが、周期的に配置されており、前記シリコンウエハと前記不純物拡散層とが形成する接合が活性化する波長の光が前記光として照射されることで、前記表面の帯電が除去または低減されて放出される二次荷電粒子が増加する構造を有し、
前記コンピュータシステムは、
第1調整として、
前記位置調整マークに対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる前記第1検出信号に基づいて、前記位置調整マークが映った第1画像を生成し、
前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる前記第2検出信号に基づいて、前記位置調整マークの付近に前記光の照射領域が映った第2画像を生成し、
前記機構によって位置関係を変更する際に得られる前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射位置とを調整し、
第2調整として、
前記位置調整試料に対する前記荷電粒子ビームおよび前記光の両方の照射によって得られる前記第1検出信号に基づいて、前記光の照射領域が強度分布として映った画像を生成し、
前記機構によって位置関係を変更する際に得られる前記画像に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射位置とを調整する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
試料に対して照射される荷電粒子ビームを発生する荷電粒子源と、
前記試料に対して照射される光を発生する光源と、
前記試料に対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる二次荷電粒子を検出する検出器と、
前記試料が搭載されるステージと、
前記ステージに設置され、前記荷電粒子ビームおよび前記光が照射される位置調整マークと、
前記荷電粒子ビームの照射および前記光の照射を制御し、前記検出器による検出信号を取得し、画像を生成して表示するコンピュータシステムと、
前記コンピュータシステムの制御に基づいて、前記ステージに対する前記荷電粒子ビームの照射位置および前記光の照射位置を設定し、前記光の照射位置と前記ステージとの距離を含む相対的な位置関係を変更する機構と、
を備え、
前記検出器は、前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる光電子を検出し、
前記コンピュータシステムは、
前記位置調整マークに対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる前記検出信号に基づいて、前記位置調整マークが映った第1画像を生成し、
前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる前記検出信号に基づいて、前記位置調整マークの付近に前記光の照射領域が映った第2画像を生成し、
前記機構によって位置関係を変更する際に得られる前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射位置とを調整する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
請求項記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記ステージの上面に対応付けられる二次元の方向をX方向およびY方向とし、それに対し垂直な方向をZ方向とした場合に、
前記機構は、前記位置関係の変更として、前記ステージ上の前記位置調整マークの照射面に対する前記光の照射位置および前記荷電粒子ビームの照射位置を、前記X方向、Y方向、およびZ方向の各方向で変更し、前記ステージ上の前記位置調整マークの照射面に対する前記光の照射方向を変更する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
請求項2記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記ステージの上面に対応付けられる二次元の方向をX方向およびY方向とし、それに対し垂直な方向をZ方向とした場合に、
前記機構は、前記位置関係の変更として、前記ステージ上の前記位置調整試料の照射面に対する前記光の照射位置および前記荷電粒子ビームの照射位置を、前記X方向、Y方向、およびZ方向の各方向で変更し、前記ステージ上の前記位置調整試料の照射面に対する前記光の照射方向を変更する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
請求項3記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記ステージの上面に対応付けられる二次元の方向をX方向およびY方向とし、それに対し垂直な方向をZ方向とした場合に、
前記機構は、前記位置関係の変更として、前記ステージ上の前記位置調整マークの照射面に対する前記光の照射位置および前記荷電粒子ビームの照射位置を、前記X方向、Y方向、およびZ方向の各方向で変更し、前記ステージ上の前記位置調整マークの照射面に対する前記光の照射方向を変更し、また、前記ステージ上の前記位置調整試料の照射面に対する前記光の照射位置および前記荷電粒子ビームの照射位置を、前記X方向、Y方向、およびZ方向の各方向で変更し、前記ステージ上の前記位置調整試料の照射面に対する前記光の照射方向を変更する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項8】
請求項4記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記ステージの上面に対応付けられる二次元の方向をX方向およびY方向とし、それに対し垂直な方向をZ方向とした場合に、
前記機構は、前記位置関係の変更として、前記ステージ上の前記位置調整マークの照射面に対する前記光の照射位置および前記荷電粒子ビームの照射位置を、前記X方向、Y方向、およびZ方向の各方向で変更し、前記ステージ上の前記位置調整マークの照射面に対する前記光の照射方向を変更する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項9】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記位置調整マークは、高さが異なる複数の部分を有し、
前記コンピュータシステムは、
前記位置関係を変更した際に前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる前記第2検出信号に基づいて、前記光の照射領域の輝度および輝度変化を抽出し、前記輝度が閾値よりも低くなるような前記光の照射位置を特定し、
前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射位置とを一致させるように調整する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項10】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記位置調整マークは、上面を見た構成において、高さが最も高い上面部と、中心に設けられた穴と、前記穴に対し少なくとも一方向に延在するように設けられた溝とを有する、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項11】
請求項1記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記位置調整マークは、上面を見た構成において、第1材料で構成された上面部と、第2材料で構成された中心部とを有し、前記第2材料の限界振動数の方が前記第1材料の限界振動数よりも大きい、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項12】
請求項2記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記コンピュータシステムは、
前記画像の前記光の照射領域の強度分布を計測し、前記強度分布のピーク位置を算出し、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射領域の強度分布のピーク位置との距離を算出し、
前記距離に基づいて、前記機構によって前記位置関係を変更して、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射領域の強度分布のピーク位置とを一致させる、
荷電粒子ビーム装置。
【請求項13】
請求項2記載の荷電粒子ビーム装置において、
前記ステージの上面に、位置調整構造体を備え、
前記位置調整構造体は、高さが異なる複数の部分を有し、
前記複数の部分には、前記位置調整試料として複数の位置調整試料が設置され、
前記コンピュータシステムは、前記複数の部分の前記複数の位置調整試料に対する前記荷電粒子ビームおよび前記光の両方の照射によって得られる前記第1検出信号に基づいて、前記高さ毎に、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の強度分布のピーク位置との距離を算出し、前記高さと前記距離との関係を算出し、
前記ステージ上の照射面の高さに応じて、前記機構によって前記位置関係を変更して、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射領域の強度分布のピーク位置とを一致させる、
荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置は、電子顕微鏡やイオン顕微鏡等がある。顕微鏡は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)等がある。荷電粒子ビーム装置は、試料の観察や分析等の処理中に、試料が帯電することにより、二次荷電粒子像の明るさの変動や歪みを引き起こすことが知られている。これに対し、帯電抑制技術としては、一次荷電粒子ビームの照射領域に光等の電磁波を照射する技術が挙げられる。
【0003】
先行技術例としては、国際公開第2020/115876号(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、「本発明に係る荷電粒子線装置は、一次荷電粒子線のみを照射しているとき取得した第1観察画像と、前記一次荷電粒子線に加えて光を照射しているとき取得した第2観察画像との間の差分に基づき、前記一次荷電粒子線の照射位置と前記光の照射位置が合致しているか否かを判定する。また、前記第1観察画像と光量計測器による計測結果とを用いて、前記一次荷電粒子線の照射位置と前記光の照射位置が合致しているか否かを判定する。」旨の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/115876号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
試料に対し一次荷電粒子ビーム(以下、ビームと記載する場合がある)と光等の電磁波(以下、光と記載する場合がある)とを照射する機能を有する荷電粒子ビーム装置においては、光の照射領域または照射位置をなるべく明確に特定することが必要である。試料に対するビームの照射位置と光の照射位置とがずれている場合、良くない作用をもたらす可能性がある。例えば、光照射によって帯電を抑制する目的の場合において、それらの照射位置にずれがある場合に、帯電が除去されていない領域が残る可能性がある。また、例えば、二次電子に基づいて電位コントラスト像から電気特性を評価する場合において、電気特性の不良を検出できない可能性がある。
【0006】
また、従来、ユーザ操作等に基づいて、光照射領域とビーム照射位置とを概略的に合わせることは可能である。しかし、検査対象の試料表面に対し照射される光の収差成分や強度の分布は不均一な状態となる場合がある。そのため、その不均一性が、検査対象の二次電子観測信号の励起に対し影響を与える。その結果、二次電子観測信号の画像では、輝度分布に不安定さ(明るさの歪み等)が生じる場合があった。
【0007】
上記荷電粒子ビーム装置において、試料に対しビームと光との両方を照射して得たグレースケール画像等の二次電子画像から試料の電気特性や材料特性を評価する場合には、二次電子画像の輝度の安定化が望ましい。二次電子観測信号の光強度、および対応する二次電子画像の輝度の安定化のためには、ビームの照射位置と光の照射位置、特に光強度分布中心位置とを高精度に合わせることが望ましい。
【0008】
本開示の目的は、荷電粒子ビーム装置の技術に関して、ビームと光の照射領域または照射位置をなるべく明確に特定することができる技術、特に、ビームの照射位置と光の照射位置、特に光強度分布中心位置とを高精度に合わせることができる技術を提供することである。本開示の他の課題や効果等については[発明を実施するための形態]において示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のうち代表的な実施の形態は、以下に示す構成を有する。実施の形態の荷電粒子ビーム装置は、試料に対して照射される荷電粒子ビームを発生する荷電粒子源と、前記試料に対して照射される光を発生する光源と、前記試料に対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる二次荷電粒子を検出する第1検出器と、前記試料が搭載されるステージと、前記ステージに設置され、前記荷電粒子ビームおよび前記光が照射される位置調整マークと、前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる二次光を検出する第2検出器と、前記荷電粒子ビームの照射および前記光の照射を制御し、前記第1検出器による第1検出信号および前記第2検出器による第2検出信号を取得し、画像を生成して表示するコンピュータシステムと、前記コンピュータシステムの制御に基づいて、前記ステージに対する前記荷電粒子ビームの照射位置および前記光の照射位置を設定し、前記光の照射位置と前記ステージとの距離を含む相対的な位置関係を変更する機構と、を備え、前記コンピュータシステムは、前記位置調整マークに対する前記荷電粒子ビームの照射によって得られる前記第1検出信号に基づいて、前記位置調整マークが映った第1画像を生成し、前記位置調整マークに対する前記光の照射によって得られる前記第2検出信号に基づいて、前記位置調整マークの付近に前記光の照射領域が映った第2画像を生成し、前記機構によって位置関係を変更する際に得られる前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記荷電粒子ビームの照射位置と前記光の照射位置とを調整する。
【発明の効果】
【0010】
本開示のうち代表的な実施の形態によれば、荷電粒子ビーム装置の技術に関して、ビームと光の照射領域または照射位置をなるべく明確に特定することができ、特に、ビームの照射位置と光の照射位置、特に光強度分布中心位置とを高精度に合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1の荷電粒子ビーム装置の構成を示す。
図2】実施の形態1で、コンピュータシステムの構成例を示す。
図3】実施の形態1で、位置調整マークの構成例を示す。
図4】実施の形態1で、位置調整マークを用いた調整の例を示す。
図5】実施の形態1で、光照射位置に応じた輝度変化を示す。
図6】本開示の実施の形態2の荷電粒子ビーム装置の構成を示す。
図7】実施の形態2で、位置調整試料の構成例を示す。
図8】実施の形態2で、位置調整試料を用いた調整の例を示す。
図9】本開示の実施の形態3の荷電粒子ビーム装置の構成を示す。
図10】実施の形態3で、処理フローを示す。
図11】本開示の実施の形態4の荷電粒子ビーム装置の構成を示す。
図12】実施の形態4で、位置調整マークの構成例を示す。
図13】実施の形態4で、光照射位置に応じた輝度変化を示す。
図14】本開示の実施の形態5の荷電粒子ビーム装置の構成を示す。
図15】実施の形態5で、自動調整について示す。
図16】実施の形態5で、自動調整についての処理フローを示す。
図17】実施の形態5の変形例においける、自動調整方法について示す。
図18】本開示の実施の形態6の荷電粒子ビーム装置における、スタブおよび位置調整試料の構成例を示す。
図19】実施の形態6で、光強度分布、および高さと距離の関係等を示す。
図20】本開示の実施の形態7の荷電粒子ビーム装置の構成を示す。
図21】実施の形態7で、視野の移動について示す。
図22】実施の形態7で、光強度調整機構の構成例を示す。
図23】実施の形態7で、視野位置に応じた光強度の補正について示す。
図24】本開示の実施の形態8の荷電粒子ビーム装置の構成を示す。
図25】実施の形態8で、検査画像と参照画像との比較について示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、各構成要素の表現は、理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合がある。説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいは、そのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。プロセッサは、所定の演算が可能な装置や回路で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGAやASIC等が適用可能である。プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてインストールされてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体でもよい。プログラムは、複数のプログラムモジュールから構成されてもよい。
【0013】
<実施の形態1>
図1図5を用いて、本開示の実施の形態1の荷電粒子ビーム装置について説明する。図1等に示す実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、試料4等に対し、ビームb1と光a1との両方を照射することができる機能を有する。この機能は、制御に応じて、試料4等に対し、ビームb1のみを照射する場合と、光a1のみを照射する場合と、ビームb1と光a1との両方を同時に照射する場合とのいずれも可能な機能である。この機能を前提として、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置とを合わせる機能(調整機能等と記載する)を有する。この荷電粒子ビーム装置1は、この位置調整のために、ステージ6上に配置されるマークないしマーカである位置調整マーク10を有する。この荷電粒子ビーム装置1は、ユーザU1による画像を見ながらの操作に基づいて、ステージ6上の位置調整マーク10に対し、ビームb1と光a1との両方を照射して検出信号d1を得る。そして、この荷電粒子ビーム装置1は、検出信号d1に基づいて、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせを調整する。
【0014】
[1-1.概要]
実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、試料4に対して照射されるビームb1を発生する荷電粒子源と、試料4に対して照射される光a1を発生する光源8と、試料4に対してビームb1を照射することにより得られる二次電子等の二次荷電粒子b2を検出する検出器7である第1検出器と、試料4が搭載されるステージ6と、ステージ6に設けられ、光a1およびビームb1が照射される位置調整マーク10と、位置調整マーク10に対する光a1の照射によって得られる二次光としての光a2を検出する光検出器11である第2検出器とを備える。また、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、光a1の照射位置とステージ6(またはステージ6上の物体)の位置との距離を含む相対的な位置関係を変更できる機構(位置関係変更機構と記載する場合がある)を備える。この機構は、例えば光源8の駆動制御機構やステージ6の駆動制御機構がある。また、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、ビームb1や光a1の照射を制御し、試料4に対して光a1を照射するとともにビームb1を照射した際に第1検出器が検出した第1検出信号に基づいて、画像を生成して表示するコンピュータシステム2を備える。コンピュータシステム2は、荷電粒子ビーム装置1のコントローラである。
【0015】
そして、コンピュータシステム2は、位置調整マーク10に対しビームb1を照射した際に得られる第1検出信号に基づいて位置調整マーク10が映った画像を生成する。コンピュータシステム2は、光a1の照射位置とステージ6との位置関係を制御して変更した際に第2検出器から第2検出信号を得る。コンピュータシステム2は、上記位置調整マーク10の画像と上記第2検出信号とに基づいて、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置とを合わせるように調整する。コンピュータシステム2は、上記位置調整マーク10の画像と上記第2検出信号とをユーザU1に対し画像として表示し、ユーザU1による画像を見ながらの操作に基づいて、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置とを合わせするように調整する。ユーザU1は、画像を見ながらの操作によって、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせが容易に可能である。
【0016】
[1-2.荷電粒子ビーム装置]
図1は、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1の構成を示す。荷電粒子ビーム装置1は、大別して、真空室12を含む機構と、それに接続されるコンピュータシステム2とを備える。荷電粒子ビーム装置1は、電子光学系、光照射系、および画像生成系を備える。電子光学系は、真空室12内に配置されている、電子源101、偏光器102、電子レンズ103、試料4、試料ホルダ5、ステージ6、検出器7等によって構成されている。検出器7は、二次電子検出器であって、区別のために第1検出器とも記載する。
【0017】
光照射系は、光源8、光源調整ステージ9、位置調整マーク10、光検出器11、および光制御部13等によって構成されている。光検出器11は、区別のために第2検出器とも記載する。画像生成系は、制御部14、画像処理部15、および画像表示部16等によって構成されている。
【0018】
コンピュータシステム2は、制御部14、画像処理部15、画像表示部16、光制御部13、駆動制御部17、および記憶部18等を有する。制御部14は、主に電子光学系を制御する部分であり、検出器7からの検出信号d1(区別のために第1検出信号とも記載する)を取得する。光制御部13は、主に光照射系を制御する部分であり、光検出器11からの検出信号c1(区別のために第2検出信号とも記載する)を取得する。検出信号c1は、光a1の照射に基づいた二次光である光a2を検出した信号であり、光強度分布を持つ信号である。検出信号d1は、ビームb1のみの照射時の二次電子等の二次荷電粒子b2を検出した信号、もしくは、ビームb1と光a1との両方の照射時の二次荷電粒子b2を検出した信号である。
【0019】
駆動制御部17は、ステージ6等の機構を駆動制御する部分である。実施の形態1では、コンピュータシステム2は、駆動制御部17や光制御部13を制御することで、光a1の照射位置と、ステージ6(またはステージ6上の物体)の位置との距離を含む相対的な位置関係を変化させるように制御することができる。ステージ6の位置の制御は、少なくとも、図示するX方向およびY方向の移動の制御を含み、さらにZ方向の移動の制御が可能でもよい。公知技術であるため説明を省略するが、荷電粒子ビーム装置1は、真空室12内への試料4の搬送やステージ6上への試料4の配置、および真空室12内の真空排気制御等が可能である。
【0020】
説明上の方向および座標系として、図示するX方向、Y方向、Z方向を有する。X方向およびY方向は、ステージ6の上面に対応付けられる水平面を構成する直交する2つの方向であり、言い換えると、ステージ6が円形等の場合には径方向である。Z方向は、X方向およびY方向に対し垂直である鉛直方向であり、言い換えると高さ方向である。
【0021】
試料4は、観察対象であるウエハ等の試料である。試料4は、ステージ6上の試料ホルダ5に乗せられて保持される。なお、図1では、試料4の観察時ではなく、後述の位置調整マーク10への照射時の状態を図示している。この時、X方向において、位置X0は、位置調整マーク10の表面(高さ方向の基準位置としては位置Z0)に対するビームb1や光a1の照射位置を示す。位置合わせ後、通常の試料4の観察時には、ステージ6等の制御によって、この位置X0に試料4を配置することが可能である。説明を省略するが、同様に、Y方向においても、位置の移動や調整が可能である。本例では、Z方向については、位置Z0を基準位置としている。位置Z0は、ステージ6上の試料4の表面に対応する位置である。位置調整マーク10の表面も、この位置Z0に合わせるように配置されている。高さ方向の基準位置は、位置Z0に限らずに設定可能であり、例えばステージ6の上面を基準位置としてもよい。
【0022】
試料4を観察する場合、コンピュータシステム2は、制御部14から電子光学系等を駆動制御する。制御部14は、電子光学系の各部に対し、制御信号を与える。これに基づいて、荷電粒子源である電子源101から放出された一次荷電粒子ビームであるビームb1は、偏光器102によって偏光され、電子レンズ103によって収束され、ステージ6上の試料4の表面で走査される。走査はX方向やY方向で可能である。本例では、ステージ6上の試料4に対するビームb1の照射方向の基準はZ方向である。
【0023】
ビームb1が試料4の表面に照射されると、試料4の表面から二次荷電粒子b2として二次電子等が放出される。検出器7は、その二次荷電粒子b2を検出信号d1として検出する。検出器7は、二次元に配列された素子を有するので、二次荷電粒子b2による二次元の像を検出可能である。制御部14は、電子光学系の制御信号におけるビームb1の走査信号と同期させるようにして、検出器7からの二次電子信号を検出信号d1として検出・取得する。
【0024】
画像処理部15は、検出信号d1に基づいて、二次電子画像を生成する。この画像は二次元に配列された画素を有し、各画素は輝度等の情報を有する。画像表示部16は、画像処理部15で生成された二次電子画像を、表示画面において表示する。ユーザU1は、その表示画面でその画像を見ることができる。また、コンピュータシステム2は、各検出信号や二次電子画像等のデータを記憶部18に記憶する。
【0025】
実施の形態1等において、光源8は、例えばレーザ光源が適用され、照射される光a1はレーザ光である。光a1は、これに限らず適用可能である。他の種類の光としては、例えば、白色光を分光して特定の分光を集光した光を適用可能である。
【0026】
荷電粒子ビーム装置1は、光制御部13からの制御に基づいて、光源8からの光a1をステージ6上の物体に対し照射することができる。例えば、試料4に光a1を照射することで、試料4の帯電を抑制することができる。光源8は、制御に基づいて、光a1の照射のオン/オフやパワーを制御可能である。光源8には、光源調整ステージ9(言い換えると光源駆動機構)や、レンズ等の光学系が設けられている。光源調整ステージ9は、駆動によって光源8の位置や方向を調整する。この調整により、ステージ6上の物体に対する光a1の照射の位置や方向が調整可能である。光源8の位置は、例えば図示のX,Y,Z方向の各方向での位置が調整可能である。光源8の方向、すなわち光a1の照射の方向は、例えば図示の角度θ等で規定される方向が調整可能である。角度θは、Z方向に対する入射角である。
【0027】
なお、実施の形態1等では、光源8からの光a1は、図示のように、ステージ6に対して角度θを持って斜めから照射されるように、各機構が配置されている。これは、ステージ6に対しZ方向の上側には電子光学系等が配置されており、それらとの配置の重なりを避けているためである。各機構の配置等の構成は、これに限定されない。例えば、図1とは異なる位置に配置された光源8からの光を、ミラー等の光学系を用いて、ステージ6上の物体に対し所定の方向から照射する構成も可能である。また、光源8や光検出器11等の機構は、真空室12内の試料4等に対する光a1の照射や光a2の検出が可能なように、機構の一部が真空室12内に配置されるように実装されている。これらの機構の実装構成についても特に限定されない。
【0028】
光源8から照射された光a1は、ステージ6上の物体、例えば位置調整マーク10または試料4等の表面に照射され、二次光としての光a2が、光検出器11によって検出信号c1として検出される。検出信号c1は、信号線を通じて、制御部14や画像処理部16に送られる。光検出器11の一例は、2次元に撮像素子が配列されたCCDカメラである。光検出器11は、カメラに限らず、光の強度(対応する輝度)の変化が検出できるデバイスであればよい。
【0029】
荷電粒子ビーム装置1は、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせを行う際には以下のように制御する。荷電粒子ビーム装置1は、図1のような状態となるように、ステージ6を移動させて、ステージ6上の位置調整マーク10を位置X0に配置する。コンピュータシステム2は、制御部14から電子光学系を制御して、位置調整マーク10に対するビームb1の照射位置を制御する。また、コンピュータシステム2は、光制御部13から光源8および光源調整ステージ9を制御して、位置調整マーク10に対する光a1の照射位置を制御する。これにより、位置調整マーク10の位置Z0の表面に対し、ビームb1と光a1との両方が照射される。
【0030】
光源8から発振したレーザ光は、光源調整ステージ9や光学系によって、位置調整マーク10の表面に対する照射位置が調整される。光源8の位置が変更された場合には、それに伴って、光a1の照射位置も変更される。光源8の方向(例えば角度θ)が変更された場合には、それに伴って、光a1の照射位置も変更される。
【0031】
実施の形態1等で、照射する光a1としては、赤色の波長領域を使用する。光源8としては、単一波長のものを用いてもよいし、必要な波長範囲を含む可視光源の特定波長を選択するか、高調波発生等によって波長を変換したものでもよい。
【0032】
画像表示部16は、二次電子画像等の各種の画像を表示する他、ユーザU1による荷電粒子ビーム装置1の操作のためのGUIを伴う表示画面を提供する。ユーザU1は、表示画面を見ながら各種の設定や機構の操作等が可能である。
【0033】
[1-3.コンピュータシステム]
図2は、コンピュータシステム2の構成例を示す。コンピュータシステム2は、コンピュータ200と、コンピュータ200に接続される入力装置205や表示装置206とで構成されている。コンピュータ200は、プロセッサ201、メモリ202、通信インタフェース装置203、入出力インタフェース装置204、およびそれらを相互に接続するバス等で構成されている。入出力インタフェース装置204には、例えばキーボードやマウス等の入力装置205や、液晶ディスプレイ等の表示装置206が接続されている。通信インタフェース装置203は、図1の検出器7等の各部とも信号線で接続されており、それぞれとの間で信号の入出力または通信を行う。また、通信インタフェース装置203は、外部の装置(例えばサーバ)と所定の通信インタフェース(例えばLAN)で接続されて、外部の装置との通信を行ってもよい。
【0034】
プロセッサ201は、例えばCPU、ROM、RAM等で構成され、コンピュータシステム2のコントローラを構成する。プロセッサ201は、ソフトウェアプログラム処理に基づいて、コンピュータシステム2の機能および図1の制御部13等の各部を実現する。機能は、ビームb1と光a1の照射位置を位置合わせする調整機能を含む。
【0035】
メモリ202は、不揮発性記憶装置等で構成され、プロセッサ201等が使用する各種のデータや情報を格納する。メモリ202には、制御プログラム202A、設定情報202B、検出データ202C、および画像データ202D等が格納される。制御プログラム202Aは、機能を実現するためのプログラムである。設定情報202Bは、制御プログラム202Aの設定情報やユーザU1によるユーザ設定情報である。設定情報202Bは、例えば制御用の閾値等の情報を含んでもよい。検出データ202Cは、検出器7からの検出信号d1や光検出器11からの検出信号c1に対応するデータである。画像データ202Dは、画像表示部16に表示する画像のデータである。
【0036】
[1-4.位置調整マーク]
図3は、位置調整マーク10の構成例を示す。図3の上側の(a)は、位置調整マーク10をX-Y面で上から見た構成を示し、図3の下側の(b)は、位置調整マーク10をX-Z面で横から見た断面での構成を示す。(a)の上面を見た構成において、位置調整マーク10は、所定の直径R0の円形であり、上面部20、穴21、および溝22を有する。図示する点p1は、位置調整マーク10および穴21の中心位置である。溝22は、X方向の溝とY方向の溝とを合わせた十字形状を有し、溝22の幅は、穴21の直径R1と同じである。穴21は、直径R1の円形である。直径R1は、例えば、荷電粒子ビーム装置1の視野を最も低倍率とした場合・時に、その視野内に穴21が納まって見える大きさとする。なお、視野は、ビームb1に基づいて像として観察できる範囲である。そのために、穴21の直径R1は、例えば数100μmのオーダーの寸法とする。
【0037】
(b)の横から見た構成において、ステージ6の一部における上面のスタブに対して位置調整マーク10が搭載される場合の構成例を示している。位置調整マーク10は、例えばこのようにステージ6のスタブに対し着脱可能な構造を有してもよい。位置調整マーク10の下面側の一部は凸部となっており、スタブの凹部に入り込むようにして装着・固定される。また、本例では、光a1の照射位置が、位置調整マーク10および穴21の中心点p1に一致する場合を示している。スタブは、ステージ6の一部、例えば外周付近に用意されている、確認用のホルダの一種である。位置調整マーク10の設置の態様は、これに限定されない。
【0038】
上面部20は、高さの基準位置Z0にあり、ステージ6上面からは高さh0を有する。溝22は、ステージ6上面からは高さh1を有し、基準位置Z0である上面部20からは深さh2を有する。穴21は、基準位置Z0である上面部20からは深さh3を有し、溝22の深さh2よりも深い。穴21の下側の開口は、ステージ6のスタブへの装着によって閉じられている。
【0039】
[1-5.位置調整マークを用いた調整]
図4は、図3の位置調整マーク10を用いたビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせの調整について示す模式説明図である。図4の(1a),(1b),(2a),(2b),(2c)は、調整中の状態の遷移例を示す。図4の(A)における(1a)および(1b)は、検出器7の検出信号d1に基づいた二次電子画像の例であり、低倍率の画像である。図4の(B)における(2a),(2b),(2c)は、光検出器11の検出信号c1に基づいた画像(光検出器画像)の例である。なお、図4では穴21に着目し、溝22を省略している。
【0040】
まず、ユーザU1は、二次電子画像を画像表示部16にて目視確認する。位置調整マーク10の穴21全体が表示画面の画像で表示されるように、視野は低倍率とされる。ユーザは、画像を見ながら、操作によって、視野内に位置調整マーク10が映るようにする。操作は、位置関係変更機構の操作である。(1a)の画像301は、視野の二次電子画像であり、本例では穴21の一部が見えている状態である。ユーザU1は、画像を見ながら、操作302によって、視野内に位置調整マーク10の穴21全体が映るようにする。特に、ユーザU1は、操作302によって、視野の中心に穴21の位置を合わせるようにする。操作302の例は、視野を一定としたまま、ステージ6をX方向の右に移動させることである。これにより、(1b)のような画像303の状態となる。本例では、この画像303は、視野の中心点(2本の一点鎖線の交点として示す)に対し、穴21の中心点p1が殆ど一致した場合を示す。上記(A)の調整によって、まず、視野の中心に対応するビームb1の照射位置(図1での位置X0)と、位置調整マーク10の中心点p1とが位置合わせされた状態となる。
【0041】
次に、図4の(B)において、光a1を用いた調整が行われる。ユーザU1は、光検出器11の検出信号c1に基づいた画像(光検出器画像)を画像表示部16にて目視確認する。なお、画像表示部16の表示画面には、(A)のような二次電子画像と(B)のような光検出器画像との一方を切り替えて表示することも、両方を同時に並列で表示することも、いずれも可能である。まず、例えば(2a)のような画像305が表示される。画像305の枠は、二次電子画像の視野と同じとなるように合わせられてもよい。この光検出器画像では、位置調整マーク10の穴21と、光311とが映っている。光311は、図1の二次光である光a2に対応する光像であり、光強度分布を持つ光照射領域、光照射径として映っている。画像では、例えば、穴21は黒く、光311は白く見える。図1のように、位置調整マーク10に対し斜めの位置に光検出器11が配置されているので、画像305では、穴21等が斜めに歪んで楕円状の領域として見える。
【0042】
ユーザU1は、操作306によって、光源調整ステージ9を動かすことで光源8の位置等を変化させて、位置調整マーク10に対する光a1の照射位置を変化させる。これにより、ユーザU1は、穴21に光a1が照射されることで、光検出器画像内で光311の輝度が暗くなるような位置を探す。(2b)の画像307は、このような操作306中の光311の変化例を示している。矢印で示す方向308は、光a1の照射位置を変化させる際の移動方向の一例である。本例では、この移動方向を1つの方向308のみとしているが、これに限らず、光源調整ステージ9等の機構の操作に応じて各方向に移動が可能である。ユーザU1は、操作309および探索の結果、光311の輝度が最も暗くなる状態として、例えば、(2c)のような画像310の状態とする。この画像310では、光a1の照射位置が穴21内に入っていることで、その光a1に対応する光312の輝度が暗くなっている。
【0043】
上記(B)の調整によって、視野の中心に対応するビームb1の照射位置(図1での位置X0)と、位置調整マーク10の中心点p1と、光a1の照射位置とが位置合わせされた状態となる。すなわち、位置調整マーク10を用いて、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置とが位置合わせされた状態となる。
【0044】
[1-6.溝について]
図3の溝22は、必須ではなく、設けない構成も可能であり、設けない場合でも、図4と同様の調整が可能である。実施の形態1では、溝22を設けることで、図3の(a)のように上から見た円形の領域において、部分毎に異なる3種類の高さ・深さが設けられている。溝22の作用としては以下が挙げられる。図4でも説明したように、ユーザU1は、検出器7の検出信号d1に基づいた画像や光検出器11の検出信号c1に基づいた画像を見ながら、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせのための操作を行う。この操作は、ステージ6または光源8等を動かして、光a1とステージ6(特に位置調整マーク10)との相対的な位置関係を変化させる操作を含む。この操作に従い、視野の画像内では、位置調整マーク10に対する光a1の照射による輝度の状態が変化する。光a1が照射される箇所(上面部20、溝22、穴21)に応じて、異なる輝度として見える。なお、X-Y面において、光a1の照射位置とは、光強度分布の中心点、例えば強度がピークとなる点である。
【0045】
ユーザU1の操作(例えばステージ6の移動)に伴い、光a1の照射位置は、まず、上面部20か溝22になる場合が多い。操作に応じて、照射位置は、上面部20から溝22に変わったり、溝22から上面部20に変わったりする。例えば、照射位置が上面部20から溝22に変わった場合、それらの高さ・深さの違いから、光検出器画像での輝度が低くなる。よって、ユーザU1は、この輝度変化から、現在の光a1の照射位置が溝22内にあることがわかる。次に、操作に応じて、光a1の照射位置は、溝22に沿ってX方向またはY方向で移動される。これに従い、照射位置は、例えば溝22から穴21に変わる。この時、それらの高さ・深さの違いから、光検出器画像での輝度が大きく低くなる。よって、ユーザU1は、この輝度変化から、現在の光a1の照射位置が穴21内にあることがわかる。こうして、ユーザU1は、操作に応じて、画像内の光の輝度が最も低い状態となるように、光a1の照射位置を、位置調整マーク10の穴21の中心点p1付近に合わせることが容易に可能である。
【0046】
[1-7.光照射位置に応じた輝度変化]
図5は、図4の(B)のように位置調整マーク10に対する光a1の照射位置を変化させた場合における、光検出器11の検出信号c1に基づいた、光照射位置に応じた輝度変化を示す模式説明図である。図5の上側の(a)は、図3の(b)と同様の位置調整マーク10に対する光a1の照射位置の例を示す。光401,402,403は、光a1の照射の例である。本例では、各光の照射の方向(対応する角度θ)は一定であり、照射位置としてX方向の位置が異なる場合を示す。ユーザU1は、操作に基づいて、光源調整ステージ9によって光源8の位置等を変化させることで、位置調整マーク10の上面に対する光a1の照射位置を例えばX方向で移動させる。光401や光403は、照射位置(白点で示す)が上面部20または溝22となる例であり、光402は、照射位置が穴21内になる例である。
【0047】
図5の下側の(b)のグラフは、横軸が例えばX方向での光照射位置(言い換えると基準位置からの距離)であり、縦軸が輝度(言い換えると対応する光強度)である。光402のように、光a1の照射位置が穴21内になった場合・時には、グラフで示すように、輝度が低くなる。グラフの曲線は、穴21の中心点p1に対応する基準位置X0を中心として最も輝度が低くなり、位置X0から離れるほど輝度が高くなるような曲線である。
【0048】
実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、前述のように、位置調整マーク10を用いてユーザU1の操作によってビームb1と光a1の照射位置の位置合わせを行うことができる。さらに、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、その位置合わせを、コンピュータシステム2の処理による自動調整、またはユーザ操作支援のための半自動調整として行うことも可能である。自動調整の場合、コンピュータシステム2は、以下のような処理を行う。
【0049】
コンピュータシステム2は、図5の(b)のグラフについて、制御用に、輝度の閾値TH1を設定する。輝度が閾値TH1となる位置を、位置Xa,Xbで示す。位置Xaは、輝度が高い状態から低くなり始める位置の例である。位置Xbは、輝度が低い状態から再び高くなり始める位置の例である。コンピュータシステム2は、検出信号c1の画像と閾値TH1に基づいて、このような位置Xa,Xbを算出し、位置Xaと位置Xbとの距離Lxを算出する。コンピュータシステム2は、距離Lxの二分の一にある位置(図5での位置X0)を算出する。コンピュータシステム2は、算出した位置を、中心として、この中心の位置に、光a1の照射位置を合わせる。あるいは、コンピュータシステム2は、このような位置(位置X0)を、画像表示部16の表示画面で支援情報として表示する。そして、ユーザU1は、画像およびその支援情報を見ながら、操作によって、図4のように、光の輝度が最も低くなる位置を探して、その位置に光a1の照射位置を合わせるようにしてもよい。
【0050】
[1-8.効果等]
上記のように、実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1によれば、ビームb1と光a1の照射領域または照射位置をなるべく明確に特定することができ、特に、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置(特に光強度分布中心位置)とを高精度に合わせることができる。これにより、実施の形態1によれば、安定した輝度の二次電子画像を取得することができる。
【0051】
実施の形態1の荷電粒子ビーム装置1は、位置調整マーク10に対しビームb1を照射して二次電子画像を観察しながら位置調整マーク10を二次電子画像の視野中心に合わせ、次に位置調整マーク10に対し光a1を照射して輝度変化を光検出器11で検出して画像で観察し、最も輝度が低くなるように光源調整ステージ9等によって光a1の照射位置を調整する。これにより、二次電子画像の視野の中心と光a1の中心とを合わせることができ、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置とを合わせることができる。
【0052】
<実施の形態2>
図6図8を用いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2等における基本構成は実施の形態1と共通しており、以下では、実施の形態2等における実施の形態1とは異なる構成部分について説明する。図6等に示す実施の形態2の荷電粒子ビーム装置1は、ステージ6上に配置される位置調整試料60を用いて、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせを行う。この位置調整試料60は、通常の試料4(図1)とは別の、位置合わせ用のデバイスである。位置調整試料60は、観察対象の試料4がシリコンウエハである場合に、それに対応させた位置調整ウエハとして構成されている。位置調整試料60は、例えば、観察対象の試料4と概略的に同じ形状を有する。位置調整試料60の表面の構造は試料4とは異なる。
【0053】
[2-1.概要]
実施の形態2の荷電粒子ビーム装置1は、この位置調整用試料60に対し、シリコンウエハと不純物拡散層とが形成する接合が活性化する波長の光a1を照射することで、位置調整用試料60の表面の帯電を除去し、放出される二次電子を増加させる。コンピュータシステム2は、位置調整用試料60に対して光a1を照射するとともにビームb1を照射した際に第1検出器が検出した第1検出信号に基づいて生成した画像に現れる光強度分布を計測する。それに基づいて、コンピュータシステム2は、ビームb1の照射位置と光a1の強度分布のピーク位置との相関関係を算出する。コンピュータシステム2は、その相関関係に基づいて、光a1の照射位置とステージ6の位置との位置関係における変化量を算出し、その変化量に基づいて機構を制御して位置関係を変化させることで、ビームb1の照射位置と光a1の強度分布のピーク位置とを位置合わせするように調整する。
【0054】
実施の形態2の荷電粒子ビーム装置1は、実施の形態1と同様の構成要素に加え、ステージ6上に配置される位置調整用試料60を備える。この位置調整用試料60は、シリコンウエハの表面において、第1領域として絶縁膜が形成され、第2領域として導電性プラグが形成され、第2領域の下には不純物拡散層が形成され、表面において導電性プラグおおび不純物拡散層が周期的に配置されている。
【0055】
[2-2.荷電粒子ビーム装置]
図6は、実施の形態2の荷電粒子ビーム装置1の構成を示す。図6の構成は、図1の構成に対し主に異なる点としては、位置調整マーク10に代えて、位置調整試料60を有する。位置合わせの際には、図6のように、ステージ6上に位置調整用試料60が配置される。例えば、ステージ6上の試料ホルダ5に位置調整用試料60が搭載・固定される。なお、位置合わせ後では、操作に基づいて、ステージ6上に観察対象の試料4が配置され、視野に試料4が配置され、試料4の観察が可能である。
【0056】
荷電粒子ビーム装置1は、位置調整ウエハ60の表面に対し、ビームb1を照射するとともに光a1を照射する。これにより、位置調整試料60は、図7の光照射部分のPN接合65にキャリア612が発生し、二次電子放出量が変化するという構造を有する。
【0057】
[2-2.位置調整試料]
図7は、位置調整試料60の構造例を示し、特に位置調整試料60の表面付近の断面を示す。位置調整試料60は、P型半導体基板61にN型イオンドーピングにより形成されたN型半導体62(言い換えると不純物拡散層)によって、PN接合65が形成されている。各PN接合65(対応するN型半導体62)上には、導電性プラグとしてポリシリコン(Poly Si)プラグ63が形成されている。ポリシリコンプラグ63の側面は、SiO酸化膜等の絶縁膜64によって覆われている。位置調整試料60の表面であるX-Y面には、このような複数のポリシリコンプラグ63が所定の周期で配列されている。ポリシリコンプラグ63に用いる材料は、光源8からの光a1の波長の透過性が高い材料としている。この材料は、使用する光a1の波長に合わせた材料に変更されてもよい。
【0058】
荷電粒子ビーム装置1は、位置調整試料60の表面に対し、低加速エネルギーのビームb1(例えばビーム601)を照射する。この場合、位置調整試料60の表面から、二次荷電粒子b2として二次電子602が放出される。この時、表面のポリシリコンプラグ63から二次電子602が放出されることによって、ポリシリコンプラグ63の表面が正に帯電する。この帯電603の影響によって、この時の二次電子602の検出に基づいた二次電子画像では、輝度値が小さく、暗い画像となる。
【0059】
一方、荷電粒子ビーム装置1は、位置合わせの際、上記のようにビームb1が照射済みである位置調整試料60の表面に対し、光源8からの光a1(例えば光611)を照射する。PN接合65がある部分に対し、バンドギャップを超える波長域の光611が照射される。ポリシリコンプラグ63は、光611を良く透過し、透過した光はN型半導体62およびPN接合65に照射される。これによって、電荷を持つキャリア612が発生する。発生したキャリア612は、表面の正の帯電603によって偏っていた電荷を打ち消すように作用する。よって、光a1が照射されたポリシリコンプラグ63は、再び二次電子613の放出量が増加し、二次荷電粒子b2の検出に基づいた二次電子画像は、輝度値が大きく、明るい画像となる。
【0060】
本例では、位置調整試料60の表面における絶縁膜64とポリシリコンプラグ63との周期的な配置として、ポリシリコンプラグ63の行列状の配置としたが、これに限らずに可能である。
【0061】
[2-3.位置調整試料を用いた調整]
図8は、位置調整試料60を用いた位置合わせ時における、検出器7の検出信号d1に基づいた二次電子画像の表示例を示す模式説明図である。この二次電子画像は、視野に対応する画像において、ビームb1と光a1との両方が照射された場合の位置調整試料60の上面を観察した画像である。
【0062】
図8の(A)の二次電子画像である画像701は、四角で示す視野内に光a1の照射領域である光702が納まっている場合を示す。光702は、光a1の照射位置を中心として光強度分布を持つ領域であり、言い換えると照射径や光像である。本例では、視野の中心(2本の二点鎖線の交点として示す)に対し、概略的に光a1の照射位置が合っている場合を示す。視野のサイズは、光a1の照射径である光702の全体を確認できるように、例えば100~200μmとされる。図6のポリシリコンプラグ63の径R63は、視野のサイズに対して十分に細かい。そのため、コンピュータシステム2は、図8の(A)のように、光a1を照射した部分に光強度分布の光702が現れたような二次電子画像を取得することができる。
【0063】
図8の(B)は、(A)の一部の領域703の拡大図を示す。このように位置調整試料60の表面を拡大してみた場合、複数のポリシリコンプラグ63が行列状に配列された構造となっている。図7で説明した原理により、光a1が照射された部分(ポリシリコンプラグ63A)は相対的に明るくなり、光a1が照射されない部分(ポリシリコンプラグ63B)は相対的に暗くなる。なお、ポリシリコンプラグ63の径R63と間隔P63の寸法は、調整で用いる視野のサイズや画像のピクセル分解能等に応じて変更されてもよい。
【0064】
図8の(A)の画像での光702は、理想の円形となる場合である。この場合、光a1の照射中心である照射位置は、この光702の円形の中心点に相当する。荷電粒子ビーム装置1は、画像での光702が円形となるように、光源8やレンズ等の機構によって、光a1の照射における形状や収差等を補正する。照射面および画像での光702を円形とすることで、ユーザU1は、位置合わせの調整がよりしやすい。
【0065】
しかしながら、例えば図6のようにステージ6上の物体に対し斜めの方向から光a1を照射する構成であるため、機構による補正が無い場合には、画像での光の形状や強度分布には偏りや歪みが生じる。その場合、光a1の照射中心としての有効部分は、光a1の強度分布が最も強く表れる位置が相当する。この場合でも、ユーザU1は、二次電子画像を見ながら、光a1の強度分布が最も強く表れる位置(画像上で最も明るい位置)を、二次電子画像の視野の中心に合わせるように調整すればよい。これにより、位置調整試料60を通じて、視野の中心に対応付けられるビームb1の照射位置と、光aの照射位置とを位置合わせすることができる。
【0066】
なお、(A)の低倍率の視野の画像701では、位置調整試料60の表面の複数のポリシリコンプラグ63は、配列が細かいので、言い換えると密度が高いので、ユーザU1には殆ど見えない。よって、光702は、ユーザU1には、複数の円や点の群ではなく、殆ど1つの円形として見える。そして、その円形の光702の中で、明るさの濃淡が見える。
【0067】
なお、コンピュータシステム2は、各画像の表示の際には、グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)の一例として、視野の中心点等を、支援情報として表示してもよい。例えば、図示のような2本の一点鎖線を、視野の中心を表す線の画像として表示してもよい。
【0068】
[2-4.効果等]
実施の形態2の荷電粒子ビーム装置1によれば、ビームb1と光a1とを照射した際の第1検出信号に基づいてビームb1の照射位置と光a1の照射位置、特に光強度分布のピーク位置とを合わせることができる。これにより、安定した輝度の二次電子画像を取得することができる。
【0069】
実施の形態2の荷電粒子ビーム装置1は、位置調整試料60に対しビームb1と光a1を照射して取得した二次電子画像を観察しながら、光照射径の最も輝度が高い部分を視野中心に合わせるように、光源調整ステージ9等によって光a1の照射位置を調整する。実施の形態2によれば、先行技術例のように、ビーム照射時の第1検出信号と光照射時の第2検出信号との差分から光照射位置を合わせるような機構を用いることなく、ビームb1と光a1の照射時の検出信号d1のみを取得することで、ビームb1と光a1の照射位置を合わせることができる。
【0070】
実施の形態2では、図7のようにビームb1と光a1の照射に応じて放出される二次電子を多くして明るくする構造の位置調整試料60を用いることで、光検出器11を用いなくても、二次電子画像において光a1の強度分布を光照射径(光702)として視覚的に確認することができる。ユーザU1は、光a1の強度分布を視覚的に確認しやすい。これにより、ビームb1の照射位置と光a1の強度分布のピーク位置とを高精度に位置合わせすることができる。
【0071】
実施の形態2では、位置調整試料60の使用時には、検出器7からの検出信号d1を用いればよく、光検出器11の検出信号c1については用いない。実施の形態2では、光検出器11については、光a1の照射の際の光強度分布の確認等の用途で利用できる。変形例としては、光検出器11を設けない形態も可能である。
【0072】
位置調整試料60は、ウエハのままで使用する形態に限らない。位置調整試料60は、ウエハとして製造されたものを、荷電粒子ビーム装置1のステージ6上に搭載可能である好適なサイズに切り出したものとして使用されてもよい。
【0073】
本開示の例では、ビームb1と光a1との照射位置の差が数十μmオーダーである場合、および位置調整試料60のポリシリコンプラグ63のサイズ(径R63)が数μmオーダーである場合を想定した。すなわち、調整対象である照射位置の差の距離に対し、画像上の光702を構成する点のサイズが十分に小さい。これに限らず、構成要素は他のサイズも適用可能である。
【0074】
<実施の形態3>
図9図10を用いて、実施の形態3について説明する。図9等に示す実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1は、実施の形態1で説明した位置調整マーク10と、実施の形態2で説明した位置調整用試料60との両方を用いて、ビームb1と光a1の照射位置の位置合わせを、2段階の調整として行う。実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1は、まず位置調整マーク10を用いて粗調整(第1調整とする)を行い、次に位置調整用試料を用いて精調整(第2調整とする)を行う。第2調整は、第1調整での位置合わせ結果の精度よりも高い精度の位置合わせ結果にすることを意味する。
【0075】
なお、実施の形態3では、位置調整マーク10を粗調整(第1調整)に使用し、位置調整試料60を精調整(第2調整)に使用する場合を示すが、このような関係での使用には限定されない。実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1は、例えばユーザU1が選択したもの(位置調整マーク10または位置調整試料60)を用いて位置合わせ調整を行ってもよい。
【0076】
[3-1.荷電粒子ビーム装置]
図9は、実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1の構成を示す。図9の構成は、図1図6の構成に対し主に異なる点としては、ステージ6上に位置調整マーク10と位置調整試料60との両方が配置されている。位置調整マーク10の構成は実施の形態1と同様であり、位置調整試料60の構成は実施の形態2と同様である。荷電粒子ビーム装置1は、位置関係変更機構として例えばステージ6の移動の制御によって、基準位置X0(X方向でのビームb1の照射の基準位置)に対し、位置調整マーク10を配置することや、位置調整試料60を配置することが可能である。図9では基準位置X0に位置調整マーク10が配置されている状態を示す。
【0077】
[3-2.処理フロー]
図10は、実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1における、ビームb1と光a1との位置合わせを行う場合の処理や動作を含むフローを示し、ステップS101~S108を有する。本フローは、大別して、ステップS101~S103で示す第1調整と、ステップS104~S106で示す第2調整とを有する。
【0078】
ステップS101で、コンピュータシステム2は、位置関係変更機構(例えばステージ6)の駆動制御によって、ビームb1が照射される基準位置に、位置調整マーク10を配置する。ステップS102で、コンピュータシステム2は、制御部14の制御に基づいて、位置調整マーク10にビームb1を照射し、検出器7の検出信号d1に基づいて二次電子画像を生成して表示する。ユーザU1は、その画像を見ながら操作することで、視野内の中心に位置調整マーク10を合わせるように調整する(図4の(A)と同様)。
【0079】
ステップS103で、コンピュータシステム2は、光制御部13の制御に基づいて、位置調整マーク10に対し、光a1を照射し、光検出器11の検出信号c1に基づいて、光検出器画像を生成して表示する。ユーザU1は、その画像を見ながら操作することで、光a1の照射位置を位置調整マーク10(対応するビームb1の照射位置)に合わせるように調整する(図4の(B)と同様)。これにより、第1調整が終了する。
【0080】
次に、ステップS104で、コンピュータシステム2は、位置関係変更機構(例えばステージ6)の駆動制御によって、ビームb1が照射される基準位置に、位置調整試料60を配置する。ステップS105で、コンピュータシステム2は、制御部14の制御に基づいて、位置調整試料60に対し、ビームb1を照射する。それとともに、コンピュータシステム2は、光制御部13の制御に基づいて、位置調整試料60に対し、光a1を照射する。コンピュータシステム2は、検出器7の検出信号d1に基づいて二次電子画像を生成して表示する。
【0081】
ステップS106で、ユーザU1は、その画像を見ながら操作することで、視野内の中心(対応するビームb1の照射位置)に光a1の照射位置(光照射領域の光強度分布の中心)を合わせるように調整する(図8と同様)。これにより、第2調整が終了する。
【0082】
ステップS107で、コンピュータシステム2は、位置関係変更機構(例えばステージ6)の駆動制御によって、上記位置合わせ済みの基準位置に、観察対象の試料4を配置する。ステップS108で、コンピュータシステム2は、機構の制御によって、試料4に対し、ビームb1と光a1を照射し、検出信号d1に基づいた二次電子画像を得て、試料4の観察を行う。
【0083】
[3-3.効果等]
実施の形態3の荷電粒子ビーム装置1によれば、まず、光a1(レーザ光)を照射して輝度が低下した位置に光a1を合わせることができる構造の位置調整マーク10を用いて、粗調整(第1調整)を行うことができる。その後、その光a1(レーザ光)の波長の帯域を良く透過・吸収できる部分を持つ構造の位置調整用試料60を用いて、光a1とビームb1を照射して得た第1検出信号に現れる光強度分布とビーム照射位置とを合わせる精調整(第2調整)を行うことができる。実施の形態3によれば、ユーザU1による画像を見ながらの操作を交えながら、そのような2段階の調整を行うことで、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせを、高精度かつ効率的に実現できる。さらに、実施の形態3によれば、精調整(第2調整)を自動化することも可能であり、これにより、光a1とビームb1との位置関係の調整を、ユーザU1の作業手間を少なく簡便に実現することができる。
【0084】
<実施の形態4>
図11図13を用いて、実施の形態4について説明する。実施の形態4は、実施の形態1の変形例である。
【0085】
[4-1.荷電粒子ビーム装置]
図11は、実施の形態4の荷電粒子ビーム装置1の構成を示す。実施の形態4の荷電粒子ビーム装置1は、前述の図1の光検出器11が不要であるため設けられておらず、検出系は1つの検出器7Bとして設けられている。検出器7Bは、入射側に、エネルギーフィルタ7Cが配置されている。制御部14は、検出器7Bおよびエネルギーフィルタ7Cと接続されている。制御部14は、エネルギーフィルタ7Cの切り替え等を制御する。制御部14は、検出器7Bからの検出信号e1を取得する。
【0086】
ステージ6上の物体に対する光源8からの光a1の照射に応じて、光電子a3が発生する。検出器7Bは、ビームb1の照射によって発生する二次荷電粒子b2と、光a1の照射によって発生する光電子a3との両方を検出する。ビームb1の照射に起因する二次荷電粒子b2と、光a1の照射に起因する光電子a3とでは、エネルギー差があり、二次荷電粒子b2の方が光電子a3よりも高エネルギーである。
【0087】
実施の形態4では、コンピュータシステム2は、ビームb1に基づいた二次荷電粒子b2を検出したい場合・時間と、光a1に基づいた光電子a3を検出したい場合・時間とで、検出を制御する。その制御の具体例として、制御部14は、エネルギーフィルタ7Cの切り替え等の制御をすることで、検出器7Bによって二次荷電粒子b2と光電子a3とを弁別して検出する。検出信号e1は、その時の切り替え等の制御に応じた内容の信号として、二次荷電粒子b2の検出信号、または光電子a3の検出信号となる。
【0088】
エネルギーフィルタ7Cは、例えば所定のエネルギー成分をカットオフし、別の所定のエネルギー成分をパスさせるフィルタである。コンピュータシステム2は、ビームb1を検出したい場合・時間では、エネルギーフィルタ7Cを第1状態に制御することで、二次荷電粒子b2を検出信号e1として検出する。コンピュータシステム2は、光電子a3を検出したい場合・時間では、エネルギーフィルタ7Cを第2状態に制御することで、光電子a3を検出信号e1として検出する。エネルギーフィルタ7Cの制御は、検出器7Bの入射側におけるエネルギーフィルタ7Cの挿入と非挿入との切り替えとしてもよい。画像処理部15は、検出信号e1に基づいて、二次電子画像や光電子画像を生成する。画像表示部16は、それらの画像を表示する。
【0089】
実施の形態4の荷電粒子ビーム装置1は、位置合わせの際には、実施の形態1と同様に、ステージ6上の位置調整マーク10に対し、ビームb1と光a1を照射し、検出器7Bの検出信号e1に基づいて、二次電子画像や光電子画像を表示する。光電子画像は、図4の(B)の光検出器画像と同様に、光電子a3による輝度が反映された画像となる。ユーザU1は、それらの画像を見ながら、位置関係変更機構(例えばステージ6や光源調整ステージ9)を操作することで、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置とを合わせることができる。
【0090】
[4-2.位置調整マーク]
図12は、実施の形態4における位置調整マーク10(10B)の構成例を示す。この位置調整マーク10Bは、図11の検出器7Bを含む構成に基づいて光電効果を利用する場合に対応した構造を有する。位置調整マーク10Bは、(a)の上から見た場合の構成では、例えば円形の上面部20と、中心の穴21とを有する。位置調整マーク10Bは、(b)の横から見た場合の構成では、例えば一定の高さh0を有する。
【0091】
位置調整マーク10Bは、上面部20が材料MAで構成され、穴21は、空洞ではなく、材料MBで構成されている。材料MAは、第1材質を有し、材料MBは、第2材質を有する。それらの材質は、所定の関係を有する。所定の関係は、例えば限界振動数vについての関係である。材料MAの限界振動数vをv0Aとし、材料MBの限界振動数vをv0Bとする。所定の関係は、v0B>v0Aであり、材料MBの限界振動数v0Bの方が材料MAの限界振動数v0Aよりも大きい。このような材質の関係を持つ構造によって、位置調整マーク10Bの表面において、光a1に対する光電子a3の発生の量に関する分布が形成される。本例では、少なくとも2種類の領域として、上面部20と穴21とが形成される。光a1の照射位置が上面部20である場合の光電子a3の量に対し、光a1の照射位置が穴21である場合の光電子a3の量は、低くなる。
【0092】
[4-3.光照射位置に応じた輝度変化]
図13は、図12の位置調整マーク10Bに対する光a1(レーザ光)の照射位置に応じた、光電子a3の検出の量の変化を示す。光a1の照射に対し、光電子a3と反射光a4とが生じる。下側のグラフは、X方向の光a1の照射位置と光電子a3の量との関係を示す。本例のグラフでは、光a1の照射位置が上面部20(材料MA)にある場合と、穴21(材料MB)にある場合とで、光電子量には概略的にEAとEBの違いが生じる。実施の形態4の荷電粒子ビーム装置1は、検出器7Bによって、位置調整マーク10Bからこのような光電子a3を検出信号e1として検出する。ユーザは、検出信号e1に基づいた光電子画像から、光電子a3の量の変化に応じた輝度の変化を目視確認できるので、位置合わせを容易に行うことができる。また、コンピュータシステム2は、光電子a3の量の差を検出し判断することにより、実施の形態1と同様に、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置合わせを調整することができる。
【0093】
光電効果による光電子a3を利用する場合において、位置調整マーク10は、上記材質の違いによる構造に限らず、前述の図3の例のように形状の違いによる構造も適用可能である。
【0094】
<実施の形態5>
図14図19を用いて、実施の形態5について説明する。実施の形態5は、光a1の照射位置をビームb1の照射位置に対して自動的に合わせる機能(自動調整機能)を有する。これにより、ユーザU1の操作を最低限として位置合わせが可能である。ユーザU1は、自動調整機能のみを用いて調整を行ってもよいし、前述の各実施の形態と同様に自分で操作してある程度調整した後に、自動調整機能による調整を行ってもよい。
【0095】
[5-1.荷電粒子ビーム装置]
図14は、実施の形態5の荷電粒子ビーム装置1の構成を示す。実施の形態5の荷電粒子ビーム装置1は、実施の形態2の図6の位置調整試料60を含む構成に加え、光源8の出射側にはレンズ51およびレンズ調整ステージ52を備える。レンズ51にはレンズ調整ステージ52が接続されている。光制御部13は、光源8、光源調整ステージ9、およびレンズ調整ステージ52の駆動を制御する。
【0096】
荷電粒子ビーム装置1は、レンズ調整ステージ52の駆動制御に基づいたレンズ51の調整によって、光源8からの光a1の照射方向等を変更できる。これにより、光源8の位置の制御と合わせて、ステージ6上の照射面に対する光a1の照射位置や角度θの変更が可能である。また、レンズ51およびレンズ調整ステージ52等を用いた光学系の設計によって、ステージ6上の照射面における光照射領域の形状を、理想の円形に近付けるように補正することができる。なお、このような機構は、前述の実施の形態1等でも同様に設けてもよい。
【0097】
[5-2.自動調整]
以下、実施の形態5におけるビームb1の照射位置と光a1の照射位置とを自動的に位置合わせする自動調整について説明する。
【0098】
図15は、自動調整の処理手順についての模式説明図である。荷電粒子ビーム装置1は、ステージ6上の位置調整試料60に対し、ビームb1と光a1を照射する。その時、検出信号d1に基づいた二次電子画像には、図15のグラフの例のように、光強度分布が現れる。コンピュータシステム2は、この光強度分布を計測することにより、ビームb1と光a1の照射位置を合わせることができる。レンズ51は、レンズ調整ステージ52によって、例えばX方向で位置が変更でき、それにより、照射面での光a1の照射位置が変更できる。
【0099】
図15のグラフは、分布関数であり、横軸が位置調整試料60の表面(例えばX方向)に対する光a1の照射位置(基準位置からの距離)、縦軸が光a1の輝度(対応する強度)である。ビームb1の照射の基準位置をX0とする。光a1の照射位置が例えば位置X1である場合、光強度分布は、図示のような分布関数となる。位置X1は、輝度が最も高いピーク位置であり、光a1の強度分布の中心である。コンピュータシステム2は、検出信号d1に基づいて、このような分布関数を把握する。σは、分布関数における分散である。コンピュータシステム2は、分布関数から、ビームb1の照射位置に対応する基準位置X0と、輝度のピークの位置X1との距離Kを算出する。この距離Kは、その時点における、光a1の照射位置として特に光強度分布の中心位置と、ビームb1の照射位置との差、言い換えると位置のずれである。よって、コンピュータシステム2は、この距離Kを小さくするように、位置関係変更機構にフィードバック制御を行う。コンピュータシステム2は、例えば、光源調整ステージ9やレンズ調整ステージ52を制御して、光源8の位置や光a1の照射方向を変更し、距離Kを小さくするように、光a1の照射位置を基準位置X0に近付ける。この制御は、フィードバック制御ループとして繰り返し行うことで、次第に距離Kを0に近付けることができる。
【0100】
図15の(B)の視野の画像901は、(A)の例に対応した、位置調整試料60が映った二次電子画像である。光902は、光強度分布を持つ光a1の照射径の例であり、補正によって理想の円形となっている。前述のように、位置調整試料60の構造によって、二次電子画像上で光902が可視化される。X方向でのA-A’の断面が、(A)の分布関数と対応している。荷電粒子ビーム装置1は、自動調整でのフィードバック制御の際、例えば光源8のX方向の位置を変更する、あるいはレンズ51の制御に応じて光a1の照射方向を変える等によって、光a1の照射位置に対応する分布関数のピークの位置X1をX方向で基準位置X0の方へ近付ける。ユーザU1から見た場合、光902の最も明るい部分である光強度分布中心が、視野の中心に近付けられる。これにより、次第に、視野の中心(基準位置X0)に、光a1の照射位置としての光強度分布中心を合わせることができる。Y方向においても同様の制御が行われる。
【0101】
[5-3.処理フロー]
図16は、図15の自動調整に係わる処理フローであり、ステップS161~S165を有する。ステップS161で、荷電粒子ビーム装置1は、位置調整試料60にビームb1と光a1を照射し、コンピュータシステム2は、その時に二次電子画像に現れる光強度分布を計測する。ステップS162で、コンピュータシステム2は、計測した光強度分布はガウシアン分布関数と同様であると想定し、計測した光強度分布とガウシアン分布関数とをフィッティングする。
【0102】
次に、ステップS163で、コンピュータシステム2は、分布関数の式から、分布関数のピーク位置とビームb1の照射位置(基準位置X0)との差である距離Kを算出する。距離Kは、例えば以下の式1に基づいて算出できる。式1中のxはX方向の位置である。
【0103】
【数1】
【0104】
ステップS164で、コンピュータシステム2は、位置関係変更機構(レンズ51、レンズ調整ステージ52、または光源調整ステージ9)に対し、算出した距離Kをフィードバックする制御を行う。これにより、距離Kが小さくなるようにする。ステップS165で、コンピュータシステム2は、現在の距離Kの値が殆ど0になったかどうか(K≒0)を判断する。より具体的には、コンピュータシステム2は、距離Kが所定の閾値TK以下になったかどうか(K≦TK)を判断する。距離Kが殆ど0になったか場合(Y)には、最適な位置合わせの調整ができたとみなし、本フローの終了となり、そうでない場合(N)にはステップS161に戻って同様にフィードバック制御等の繰り返しである。なお、上記のような制御の際に、位置関係変更機構のいずれの機構を使用するかについては、特に限定されない。
【0105】
[5-4.変形例-自動調整]
図17は、実施の形態5の変形例における、自動調整についての説明図である。ここでは、上記とは異なる自動調整方法を示す。(A)は、光強度分布の分布関数としてガウシアン分布の場合を示す。(B)は、光強度分布の分布関数としてアシンメトリな分布の場合を示す。1101は、輝度がピーク値となる光強度分布中心であり、分布の中央にある。1102は、ビームb1の照射位置(基準位置X0)に対応するビーム中心である。
【0106】
コンピュータシステム2は、例えば、光強度分布のグラフの最大値を輝度100%として、輝度が90%に低下した場合のグラフの幅Lxから、(1/2)Lxとなる光強度分布中心1101の座標(X方向の位置)を算出する。次に、コンピュータシステム2は、光強度分布中心1101の座標とビーム中心1102の座標とから、それらの差である距離Kを算出する。コンピュータシステム2は、得た距離Kを、位置関係変更機構にフィードバックする。
【0107】
上記変形例の自動調整方法によれば、光強度分布のグラフが(B)のようにアシンメトリな分布である場合でも、同様に、距離Kを算出することができる。
【0108】
[5-5.効果等]
実施の形態5によれば、光強度分布のピーク位置とビーム位置との相対的な位置関係を算出し、フィードバック制御することにより、光a1の照射位置をビームb1の照射位置に自動的に位置合わせすることができる。これにより、自動調整として、高精度な位置合わせが実現でき、ユーザU1の操作の手間も削減できる。
【0109】
<実施の形態6>
図18図19を用いて、実施の形態6について説明する。実施の形態6は、実施の形態2の変形例に相当する。実施の形態6は、ステージ6において、位置調整用の構造体として、高さの異なる位置調整スタブ(位置調整用のスタブないしホルダ)を有し、それらのスタブに位置調整試料60が設置可能である。実施の形態6では、高さの異なる位置に配置された位置調整試料60を用いて、ビームb1と光aとの照射位置の位置合わせの調整が可能である。実施の形態6では、照射面の高さが変わる場合にも、位置合わせが可能である。
【0110】
[6-1.位置調整スタブおよび位置調整試料(1)]
図18は、実施の形態6の荷電粒子ビーム装置1における、ステージ6上において、高さの異なる位置調整スタブ26、および位置調整スタブ26に設置された位置調整試料60の構成例を示す。ステージ6の表面の一部において、位置調整スタブ26として、高さが異なる3個のスタブ26A,26B,26Cが設けられている。スタブ26Aは高さhAを有し、スタブ26Bは高さhBを有し、スタブ26Cは高さhCを有する。hA<hB<hCである。それぞれの位置調整スタブ26には、位置調整試料60が設置可能となっている。スタブ26Aには試料60A、スタブ26Bには試料60B、スタブ26Cには試料60Cが設置されている。本例では、3個のうちの中央のスタブ26Bおよび試料60Bが基準となる。なお、X-Z断面のみ図示しているが、他の方向、X-Y面等での位置調整スタブ26や位置調整試料60の形状については、特に限定せず、例えば円柱や円盤等、Z方向に対する軸対象形状としてもよい。
【0111】
本例では、X方向で、ビームb1の照射位置に対応した基準位置X0に、スタブ26Bおよび試料60Bが配置されている。位置XAにはスタブ26Bおよび試料60Bが配置されている。位置XCにはスタブ26Cおよび試料60Cが配置されている。本例では、高さの基準位置Z0=0として、基準位置Z0に合わせて、スタブ26Bの上面が配置されており、hB=Z0である。スタブ26Aは、基準位置Z0よりも低い位置ZA=―100に配置されており、hA=ZAである。スタブ26Cは、基準位置Z0よりも高い位置ZC=+100に配置されており、hC=ZCである。本例では、このように±100の差で3種類の高さを設けているが、これに限らず、2種類以上の高さが設けられていればよい。本例では、位置調整試料60は3個の試料60A,60B,60Cから構成されているが、これに限らず、1個の位置調整試料60の面内において、高さが異なる複数の部分が設けられている構造としてもよい。
【0112】
図18では、基準位置X0のスタブ26Bの試料60Bの表面の中心に対し、ビームb1と光a1とが照射される場合を示している。なお、光a1の照射の角度として、Z方向に対する角度θと、X方向に対する角度φとを示す。θ+φ=90度である。
【0113】
[6-2.位置調整スタブおよび位置調整試料]
図19の(A)は、図18の位置調整スタブ26および位置調整試料60の構成において、ビームb1と光a1とを照射した場合の、光強度分布を重ねて図示した模式説明図である。(B)は、高さHと距離Kとの関係の例を表すグラフである。実施の形態6では、コンピュータシステム2は、光強度分布のピーク位置とビーム位置との差の距離Kと、照射位置の高さHとの関係を把握する。高さHは、Z方向での位置と対応している。また、コンピュータシステム2は、距離Kと高さHとの関係と、その関係に対応して位置関係を変更するための位置関係変更機構(レンズ調整ステージ52や光源調整ステージ9)の変化量との関係を把握する。変化量は、駆動の際の動作量や、制御の際の電圧等の量に対応付けられる。コンピュータシステム2は、予めそれらの関係を算出して、制御用の情報を設定しておく。コンピュータシステム2は、その情報に基づいて、照射対象となる高さHが変化した場合・時には、位置の差の距離Kが、所定の仕様値範囲内となるように、光a1の照射の機構を調整する。
【0114】
コンピュータシステム2は、例えば、仰角φ、高さH=hB=Z0=0を基準として、高さHがZC=+100の時の距離Kを、下記の式2から算出する。
式2: tanφ=100/K
【0115】
コンピュータシステム2は、その距離Kが仕様値範囲内であるかを判定する。コンピュータシステム2は、距離Kが仕様値範囲外である場合には、位置関係変更機構によって、仰角φ(対応する角度θ)を調整し、再度、距離Kが仕様値範囲内であるかを判定する。このような繰り返しで、高さHに応じた距離Kが仕様値範囲内となった場合には、調整が終了する。
【0116】
[6-3.効果等]
上記のように、実施の形態6によれば、高さが異なる複数の試料4を観察する場合や、面内に高さが異なる複数の箇所を有する試料4を観察する場合にも、それぞれの高さに適合できるように、ビームb1と光a1との照射位置の調整を簡便に実現でき、自動調整を行うことも可能である。この実施の形態6の荷電粒子ビーム装置1は、仕様として、位置合わせの調整機能に関して、所定の高さの範囲(ZA~ZCの±100の範囲)、およびX方向やY方向での所定の距離の範囲について、対応することができる。
【0117】
上記例では、高さHに関する仕様値範囲を位置ZAからZCまでの±100の範囲としたが、これに限定されない。調整に用いる高さHは、上記例の3種類の高さに限定されない。荷電粒子ビーム装置1や試料4の仕様に応じて、それらが変更されてもよい。位置関係変更機構による高さH(Z方向)の変更の際にどの機構を使用するかについても限定されず、光源調整ステージ9、レンズ調整ステージ52、ステージ6、その他の機構を使用できる。
【0118】
<実施の形態7>
図20図23を用いて、実施の形態7について説明する。実施の形態7の荷電粒子ビーム装置1は、前述の実施の形態に対し主に異なる構成点としては、ビームb1の照射位置をX-Y面内で移動させて視野自体を移動できること、およびその視野の移動に対応させて、光a1の照射位置とビームb1の照射位置との位置合わせを調整できることがある。これまでの実施の形態では、ビームb1の照射位置が一定の基準位置X0にあるとして、光a1の照射位置とビームb1の照射位置とを一致させるように調整する場合について説明した。これに限らず、目的に応じて、敢えて、光a1の照射位置とビームb1の照射位置とをずらすように、言い換えると所定の位置関係で異ならせるように、調整することも可能である。実施の形態7では、このような目的の場合に対応できる調整機能を有する。ビームb1の照射位置および視野の移動に応じて、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置関係が変化する。また、ビームb1の照射位置に応じて、光a1の照射条件・効果(光強度分布等)が異なり得る。実施の形態7では、ビームb1の照射位置と光a1の照射位置との位置関係に応じて、ビームb1の照射位置および視野毎に光a1の照射条件・効果が均一になるように制御する。
【0119】
[7-1.荷電粒子ビーム装置]
図20は、実施の形態7の荷電粒子ビーム装置1を示す。真空室12には、走査用の偏光器102のみならず、視野移動用の偏光器120が設けられている。制御部14は、偏光器120を制御することで、ビームb1の走査の視野をX-Y面内で移動させることができる。また、後述するが、光源8からの光a1の出射側には、光強度調整機構1400が設けられている。なお、実施の形態7では、検出器7の検出信号d1を用いて二次電子画像を観察する。光検出器11については、省略可能であるが、備える場合には、光検出器11の検出信号c1を用いて光a1の強度分布を確認することができる。
【0120】
[7-2.視野の移動]
図21は、実施の形態7で、X-Y面において、ステージ6上の物体に対する、ビームb1および光a1(レーザ光)の照射の例を示し、特に、ビームb1の照射位置の移動による視野の移動、および採り得る複数の視野の例を示す。図21では、対象物体表面における、光a1の照射による光照射領域1300と、ビームb1の照射位置1301および視野1302との位置関係を示す。光照射領域1300(言い換えると照射径、光像)は、理想の円形に補正されている場合を示す。図13は、検出器7の検出信号d1に基づいた二次電子画像としても得られる。視野の移動は、イメージシフトともいう。試料4を観察する場合、試料4の複数の箇所(例えば検査対象箇所)をそれぞれの視野として観察する場合がある。
【0121】
ビームb1の照射位置1301は、光a1の光照射領域1300の中心と一致した状態である場合の位置である。例えば、この照射位置1301は、前述の基準位置に相当し、例えば座標(X0,Y0)として表せる。この照射位置1301には、ビームb1がZ方向で照射される。逆に、最初、光a1の照射位置は、この照射位置1301に合わせられる。視野1302は、ビームb1の照射位置1301を中心として、視野1302の移動が無い状態で、偏光器102の制御に基づいてビームb1の2次元(X方向およびY方向)での走査を行う場合の走査領域である。視野1302の走査に応じて発生した二次荷電粒子a2は検出器7で検出信号d1として検出され、視野1302の二次電子画像として観察できる。なお、基準となる視野の位置は、中央の視野1302に限らず、移動可能な範囲とする領域1350内のいずれの視野としてもよく、例えば視野v1でもよい。
【0122】
一方、ステージ6を一定としたまま、制御部14からの視野移動用の偏光器120の制御に基づいて、ビームb1の照射位置をX-Y面内で変更でき、これにより、視野1302をX-Y面内で移動できる。例えば、視野1302から視野1303に移動できる。なお、候補である複数(本例では25個)の視野を、識別のため、視野v1~v25としても示す。
【0123】
このようなステージ6の移動を伴わない偏光器120を用いた視野の移動は、高速に実現できるので、複数の視野に含まれる複数のパターン形状等の測定や検査を行う上で、スループット向上に寄与できる。しかしながら、前述のように、光a1は光強度分布を有し、光a1の光照射領域1300内の位置に応じて光照射条件・効果が異なる。光照射条件・効果が異なるのであれば、二次荷電粒子b2の検出にも影響を与えるので、複数の視野間での光照射条件・効果の安定化が望ましい。しかし、複数の視野を用いたスループット向上と、複数の視野間の光照射条件・効果の安定化との両立は、従来では困難である。対策案としては、視野移動に光照射領域が追従するように制御すること、例えば光源調整ステージ9を駆動して光源8の位置を変更することも考えられる。しかし、このような機械的な移動を伴う構成の場合、高速な電磁偏光や静電偏光による視野移動への追従は困難である。
【0124】
そこで、実施の形態7の荷電粒子ビーム装置1は、機械的な移動を伴うことなく、複数の異なる視野の位置に対する光a1の照射条件・効果を安定化・均一化させるべく、視野の位置に応じた光a1の照射の制御を実行する。具体的には、コンピュータシステム2は、図21のような視野の位置の違いに依らずに光a1の照射条件・効果が均一となるように、光a1(レーザ光)の照射の光強度やビームb1の強度を調整する制御を行う。
【0125】
図21の例では、光照射条件・効果としては、光照射領域1300の中心の照射位置1301では最も光強度が高いが、径方向の周辺の位置になるほど光強度が低い。画像では、中心の視野1302では輝度が高くなり、周辺の視野1303になるほど相対的に輝度が低くなる。コンピュータシステム2は、これらの視野間での光照射条件・効果の違いを均一にするように、視野の位置に応じて、光a1の照射条件、具体的に光強度を変えるように制御を行う。
【0126】
[7-3.視野の位置に応じた調整]
図22は、図21のような視野の移動および位置に応じて、光a1の照射強度を調整するための機構についての構成例を示す。この機構は、光強度調整機構1400を含む。この構成例によれば、例えば図21の中心の視野1302と周辺の視野1303に対する光a1の照射条件・効果、具体的には光強度分布を、均一化することができる。
【0127】
図22の(A)は、光源8とステージ6上の物体1450(例えば試料4)との間の光a1の光路に配置される光強度調整機構1400を示す。光強度調整機構1400は、例として、光減衰素子保持部材1401と、光減衰素子保持部材1401の駆動機構1402とを有する。本例は、対象の物体1450の表面に対し、ビームb1が図13の照射位置1301(X0,Y0)に照射された場合を示す。前述のように、ビームb1の制御によって、照射位置1301は照射位置1301b等に移動可能であり、これにより視野1302が移動可能である。駆動機構1402は、光制御部13からの駆動制御に基づいて、光減衰素子保持部材1401を駆動して図示の移動方向1420に移動させることができる。これにより、光a1の光路上に、光減衰素子保持部材1401の所望の箇所を挿入した状態にすることができる。
【0128】
図22の(B)は、光減衰素子保持部材1401の平面として光路に対し垂直な平面の構成例を示す。例示するように、光減衰素子保持部材1401は、複数の異なるND(Neutral Density)フィルタ1430(F1,F2,F3)を備え、更に、光通過開口1406が形成されている。NDフィルタは、光減衰素子の例である。NDフィルタ1430は、所定の波長帯において波長を選ぶことなく、光量を制限するために使用される。光制御部13は、駆動機構1402を制御し、光減衰素子保持部材1401を矢印で示す移動方向1420へ移動させることによって、光a1の軌道1407を、NDフィルタF1~F3あるいは光通過開口1406のいずれかに位置付ける。NDフィルタF1~F3は、それぞれ光透過率が異なる。また、光通過開口1406は、光a1の通過を制限せずにそのまま通過させるために設けられている。これらの切り替えによって、所望の強度の光a1を、試料4等の物体1450に照射することができる。
【0129】
なお、実施の形態7では、透過率の異なるNDフィルタ1430の使い分けによって光強度を調整する例を示しているが、これに限られない。例えば、1つのフィルタで透過率を複数の状態に変えることができる可変NDフィルタを採用してもよい。複数のNDフィルタを重ねて所望の透過率を得るような構成を採用してもよい。更に、光源8からの光a1(レーザ光)の出力自体を変化させることによって光強度を調整する構成を採用してよい。あるいは、検出器7または検出器11での検出のレベル等を調整する構成を採用してもよい。
【0130】
[7-4.光強度調整方法]
図23は、視野の位置に応じた光強度調整方法の一例を示す。本例では、図22に例示する機構の光減衰素子保持部材1401のNDフィルタ1430を用いて、視野の位置に依らずに光照射条件・効果を均一化する構成例について説明する。前述のように、光照射効果は、特定の分布、例えばガウシアン分布となって現れる。そのため、視野移動領域(例えば図21の領域1350)内でその光照射効果を安定させるには、視野の位置に応じた補正を行うことが望ましい。より具体的には、図23に例示するように、特徴量が視野の位置に依らずに均一になるように、コンピュータシステム2は、視野の位置に応じてNDフィルタ1430を切り替える。特徴量は、視野内の所望の部位の輝度等である。
【0131】
図23の上側の(a)のグラフは、横軸が例えばX方向の位置、縦軸が光強度に関する特徴量である。制御用に、所望の特徴量の値が設定される。グラフの位置に対応させて、図23の下側には、図21と同様の複数の視野の例を示す。例えば、X方向での周辺の視野1501では、特徴量が値f1程度となっている。視野1502では特徴量が値f2程度となっている。光照射領域の中央の視野1503では、特徴量がピークの値f3となっている。
【0132】
光減衰効果1511は、視野1501の位置では、値f1に合わせて、0とし、光通過開口1406を用いる。光減衰効果1512は、視野1502の位置では、値f2に合わせて、第1NDフィルタ(例えばNDフィルタF1)を用いる。光減衰効果1513は、視野1503の位置では、値f3に合わせて、第2NDフィルタ(例えばNDフィルタF2)を用いる。このように、NDフィルタの切り替えによって、各視野位置での光減衰効果が、所望の特徴量の値f1に合わせるように調整される。
【0133】
上記のような切り替えを行うべく、コンピュータシステム2は、予め、所定の記憶媒体のメモリに、光減衰の補正用の制御情報として、例えばテーブルを設定・記憶しておく。このテーブルは、例えば、視野位置情報と、フィルタ種類とを含む情報が関連付けられて設定されている。視野位置情報は、視野の識別情報、視野移動用の偏光器120の偏光量や信号量等である。コンピュータシステム2は、テーブルに基づいて、視野の位置に応じて、光強度調整機構1400の駆動機構1402を制御し、光減衰素子保持部材1401のNDフィルタ1430等の挿入の状態を切り替える。
【0134】
例えば、周辺の視野1501(v11)にビームb1が偏光した時には、光a1が光通過開口1406を通過するように制御される。視野1502(v12)に偏光した時にはNDフィルタF1を通過するように制御される。中央の視野1503(v13)に偏光した時にはNDフィルタF2を通過するように制御される。このような制御によって、視野の位置に依らずに光照射条件・効果を均一にすることができる。
【0135】
上記テーブルの生成のためには例えば以下の方法が適用できる。予め、荷電粒子ビーム装置1は、例えば試料4に光a1を照射し、その光照射効果が残っている状態で、少なくとも一方向に視野を移動させつつ、各視野の特徴量を取得する。そして、これらの異なる視野位置での特徴量が均一となるように、例えば特徴量の差分が所定値未満となるように、視野に応じたNDフィルタが選択される。そして、テーブルには、視野位置とフィルタ種類との適用の関係が設定される。なお、光強度調整機構1400として、光強度あるいは光減衰量を連続的に調整できる機構を採用する場合には、テーブルには、位置に応じた光強度あるいは光減衰量等の関係が設定されればよい。
【0136】
なお、検出器7を用いて同様の制御を実現する場合、視野の特定部位の輝度を特徴量とし、その特徴量が視野に応じて均一となるような、検出器7の出力回路のゲインやオフセット量を決め、その関係をテーブルに記憶しておくようにしてもよい。光調整のための評価基準となる特徴量としては、視野内の特定位置の輝度に限らず、視野内の2つ以上の関心領域(ROI:Region Of Interest)間のコントラスト、パターン寸法値等を用いてもよい。
【0137】
また、上述のようにして取得された視野位置(または位置座標)毎の調整量の関係を、関数等の計算式やプログラムとして規定し記憶してもよい。上記方法によって、視野位置に依らずに安定した光照射条件・効果に基づいた測定や検査を効率的に行うことができる。
【0138】
なお、図23の例示では、光a1の照射領域の光強度分布が理想の円形に補正されている場合において、一方向(例えばX方向)の補正データを算出・取得する例について説明した。ここで、図20等のように、光a1が対象物体表面である照射面に対し角度θ等で斜方に入射する構成の場合、照射面における光a1の照射領域の光照射条件・効果、具体的には光強度分布は、方向毎に異なる分布となる場合がある。例えば、光強度分布がX方向とY方向とでは異なる場合がある。この場合には、異なる複数の方向の方向毎に、補正データを算出・取得することが望ましい。一方で、光照射領域の中心に対し、方向に依らずに、殆ど同じ光強度分布を示す場合には、一方向で取得した補正データを各方向に共通に適用する構成としてもよい。いずれにしても、照射面での実際の光強度分布を考慮して、視野位置に応じて光強度を均一化できるように、補正のテーブル等を規定すればよい。
【0139】
また他にも、視野間の光照射条件・効果を均一にするための方法としては、画像処理での調整、光源8の光出力の調整、ビームb1のプローブ電流の調整、撮像の際のフレーム数の調整等を適用してもよい。更に、視野間の均一化に資する他のパラメータを調整する方法を適用してもよい。
【0140】
例えばフレーム数の調整によって視野間の特徴量の均一化を実現する手法の例は以下である。画像処理部15には、対象物体に対する複数回のビームb1の二次元走査に基づいて得られる複数の二次元画像データを記憶するフレームメモリ等の記憶媒体を備える。検出器7の出力する検出信号d1は、走査用の偏光器102によるビームb1の走査に同期して、フレームメモリ等の記憶媒体に記憶される。このフレームメモリに記憶されている画像信号(言い換えると複数のフレーム)は、画像処理部15に備える演算装置によって、所定の演算が行われる。この演算は、積算、例えば加算平均である。この演算の結果、観察に好適な画像である積算画像が生成される。このような積算の際のフレーム数が多い方が、高シグナル/ノイズ比の画像を生成することができる。
【0141】
例えば、画像処理部15は、異なる複数の視野の積算画像のコントラストが均一となるように、積算対象となるフレーム数を選択する。具体的には、画像処理部15は、試料4のパターン形状のエッジ部分の輝度とエッジ以外の背景部分の輝度との輝度比が所定の誤差の範囲に収まるように、視野位置毎のフレーム数を設定し、それを荷電粒子ビーム装置の稼働条件として設定する。このような手法によっても、視野間の光照射条件・効果の均一化を実現可能である。
【0142】
[7-5.効果等]
上記のように、実施の形態7の荷電粒子ビーム装置1によれば、ビームb1と光a1との照射位置の関係を所定の関係に制御し、複数の視野間で光照射条件・効果を安定化・均一化することができる。そして、複数の視野を用いた試料4の観察等の場合に、トータルでのスループット向上等の効果が得られる。
【0143】
<実施の形態8>
図24図25を用いて、実施の形態8について説明する。実施の形態8の荷電粒子ビーム装置は、SEMとしての機能を有し、試料4に対するビームb1および光a1の照射に基づいて得られる二次電子画像を用いて、例えば欠陥検査を行う機能を有する。
【0144】
従来、欠陥検査を行うための一方法としては、欠陥検査対象となる試料を撮影したSEM画像(検査画像と記載する)と、予め取得された参照画像とを比較する検査方法がある。検査画像は、検査対象部分となるパターン形状等の部分を撮影した画像である。検査対象部分は、例えば上位の欠陥検査装置で欠陥や異物が存在すると判定された部分である。参照画像は、例えば対象試料の検査対象部分のパターン形状と同じで欠陥が無いパターン形状等を持つ試料のそのパターン形状等の部分を撮影した画像である。例えば、SEMは、これらの画像の比較に基づいて、画像間の相違点を、異物や欠陥として抽出する。
【0145】
一方で、検査画像と参照画像とにおける画像取得条件が異なる場合、対象試料に欠陥が存在しなくても、画像取得条件の違いゆえの画像間の相違点を、誤って欠陥として認識してしまう可能性がある。画像取得条件の1つとして、撮影時の光照射条件が挙げられる。
【0146】
そこで、この実施の形態8では、検査画像と参照画像とを比較して欠陥等を抽出する検査方法において、以下のような検査方法を提案する。この検査方法は、検査対象部分と同じ形状のパターンが存在する部分を参照画像にするという条件だけではなく、検査画像と光照射条件も同じである参照画像を取得して比較対象にする。
【0147】
[8-1.荷電粒子ビーム装置]
図24は、実施の形態8の荷電粒子ビーム装置1であるSEMを含む、システムの構成を示す。この荷電粒子ビーム装置1の構成は、図1等と同様であり、図1での位置調整マーク10等は不要であるが、備えてもよい。このSEMは、図20と同様に、視野の移動を可能とする偏光器120等も備える。このSEMのコンピュータシステム2の上位には、通信を介して、検査装置3が接続されている。検査装置3は、例えば光学式検査装置である。検査装置3は、欠陥検査の際に、対象試料についての欠陥や異物の有無を判定し検出する。検査装置3は、検査結果等の情報801を、コンピュータシステム2に送信する。あるいは、コンピュータシステム2は、検査装置3にアクセスして情報801を参照してもよい。コンピュータシステム2は、その情報801に基づいて、対象試料の欠陥等を画像で確認して抽出する欠陥検査を行う。ユーザU1は、そのような欠陥検査の作業を行う。
【0148】
[8-2.欠陥検査方法]
図25は、実施の形態8における欠陥検査方法についての説明図を示す。図25では、X-Y面において、検査画像取得領域1601と、参照画像取得領域1602と、光a1(レーザ光)の光照射領域1600との間の位置関係を示す。検査画像取得領域1601は、現在の検査の際に検査画像を生成するために検出・取得される複数の領域1611である。実線の領域は取得されるが、破線の領域は取得されない。参照画像取得領域1602は、参照画像として取得される複数の領域1612である。検査画像取得領域1601や参照画像取得領域1602は、破線の範囲内にある、選択された複数の視野に対応する複数の領域を指す。検査画像取得領域1601の各領域を、識別のために、番号1~25で示す。参照画像取得領域1602の各領域を、識別のために、r1~r25で示す。
【0149】
図25のSEMにおける制御装置であるコンピュータシステム2、あるいはこのSEMの動作プログラム(言い換えるとレシピ)を生成する演算装置は、上位の検査装置3から出力される情報801を参照する。コンピュータシステム2は、この情報801における欠陥等の位置を表す座標情報に基づいて、欠陥等を含む領域1611を、検査画像取得領域として設定する。本例では、番号2,3,10,11,12,13,20,21,24の領域1611は、欠陥等があると判定されている領域である。コンピュータシステム2は、それらの複数の領域1611の複数の画像を取得するようなレシピを生成する。それと共に、コンピュータシステム2は、それらの複数の欠陥等の領域1611が含まれるように、光a1による光照射領域1621(対応する光照射位置等)を設定する。本例では、光照射領域1621の中心である光照射位置は、番号13の領域にある。
【0150】
更に、コンピュータシステム2は、検査対象の試料4である半導体デバイスのレイアウトデータ上、検査画像取得領域1601として設定された複数の領域1611の位置にあるパターン形状と同じパターン形状が形成されている領域1612を、参照画像として取得する。そのために、コンピュータシステム2は、領域r2,r3,r10,r11,r12,r13,r20,r21,r24で示す複数の領域1612の画像を取得するように、レシピを設定する。それとともに、コンピュータシステム2は、検査画像取得領域1601の光照射領域1621と同じ光照射条件で光a1が照射されるように、参照画像取得領域1602に対し、光照射領域1622を設定する。例えば領域r13が光a1の照射位置として設定される。
【0151】
本例では、参照画像としては、検査対象の試料4とは別の欠陥等が無い試料4を用いて、新たに参照画像が撮影される。もしくは、検査対象の試料4において、検査対象の領域とは別の、欠陥等が無い領域を用いて、新たに参照画像が撮影される。荷電粒子ビーム装置は、上記のように設定されたレシピを用いて、検査画像と参照画像とを撮影して取得し、それらの画像の比較で、検査画像の領域1611についての欠陥等の有無を判断する。
【0152】
このような比較検査では、偏光器120を用いた視野(対応する領域)の移動によって、複数の領域1611の複数の画像を高速に撮影できる。なおかつ、この比較検査では、検査画像と参照画像とにおいて、比較する領域(例えば番号2の領域1611と、領域r2の領域1612)間で、光強度分布等の光照射条件が揃えられているので、高精度の比較検査が可能であり、画像取得条件の違いゆえの画像間の相違点を誤って欠陥として認識してしまうことを防止できる。
【0153】
なお、一旦取得した参照画像取得領域についてのデータは、光照射条件等の情報とともに記憶しておくことで、その後の検査の際にそのデータを参照して利用可能である。
【0154】
<付記>
以上、本開示の実施の形態は、上記には限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。実施の形態の構成要素は、追加や削除や置換等が可能である。また、各実施の形態の組合せによる形態も可能である。各構成要素は、単数としても複数としてもよい。実施の形態の荷電粒子ビーム装置は、汎用型のSEM等にも適用できる。
【符号の説明】
【0155】
1…荷電粒子ビーム装置、2…コンピュータシステム、4…試料、6…ステージ、7…検出器、8…光源、9…光源調整ステージ、10…位置調整マーク、11…光検出器、12…真空室、13…光制御部、14…制御部、15…画像処理部、16…画像表示部、17…駆動制御部、18…記憶部、a1…光、b1…ビーム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25