(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-04
(45)【発行日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ネオン精製装置及びネオン精製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 23/00 20060101AFI20241205BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20241205BHJP
F25J 3/02 20060101ALI20241205BHJP
F25J 3/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C01B23/00 A
B01D53/04 230
F25J3/02 Z
F25J3/08
(21)【出願番号】P 2024096976
(22)【出願日】2024-06-14
【審査請求日】2024-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230754
【氏名又は名称】水口 拓歩
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英久
(72)【発明者】
【氏名】足立 貴義
(72)【発明者】
【氏名】中川 祥一
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特許第3268177(JP,B2)
【文献】中国特許出願公開第106123490(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113086956(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116753677(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108955086(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102015002399(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第118026113(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 23/00
B01D 53/04
F25J 3/08
F25J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガスから窒素を吸着除去する吸着部と、
前記吸着部で窒素が吸着除去された窒素除去ガスからヘリウムを分離除去する分離部と、
前記分離部で分離除去されたヘリウムを含む分離ガスを、前記吸着部の吸着能力を再生する再生ガスとして前記吸着部に導入可能な再生ガス導入ラインと、を備える、ネオン精製装置。
【請求項2】
前記混合ガスの原料となる原料ガスが貯留されているバッファー容器と、
前記再生ガス、及び、前記吸着部に前記再生ガスが導入されることにより前記吸着部から脱離した窒素を含む脱離ガス、が混ざった状態の使用済みガスを前記バッファー容器に導入可能な使用済みガス還流ラインと、を備える、請求項1に記載のネオン精製装置。
【請求項3】
前記分離部でヘリウムが分離除去されたヘリウム除去ガスから更にヘリウムを分離除去する蒸留塔と、
前記蒸留塔で分離除去されたヘリウムを含む蒸留塔ガスを前記バッファー容器に導入可能な蒸留塔ガス還流ラインと、を備える、請求項2に記載のネオン精製装置。
【請求項4】
前記混合ガスを前記吸着部に導入する前に冷却可能な熱交換器を備える、請求項2又は3に記載のネオン精製装置。
【請求項5】
前記混合ガスを前記吸着部に導入する前に前記混合ガスから窒素を分離除去する予備分離部と、
前記予備分離部で分離除去された窒素を含む予備分離ガスを前記バッファー容器に導入可能な予備分離ガス還流ラインと、を備える、請求項4に記載のネオン精製装置。
【請求項6】
前記窒素除去ガスを前記分離部に導入する前に前記窒素除去ガスから窒素を更に除去するガードアブソーバを備える、請求項1~3のいずれか1つに記載のネオン精製装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1つに記載のネオン精製装置を用いたネオン精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオン精製装置及びネオン精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネオンは、空気中に約18ppm含まれており、放電管用封入ガスやエキシマレーザー発振用混合ガスの主成分として用いられる。ネオンは空気を液化蒸留して酸素、窒素、アルゴンを製造する際、窒素、ヘリウムおよび水素等と共に凝縮されないガスとして精留塔から放出される。このネオン、窒素、ヘリウムおよび水素が含まれる混合ガスからネオンを精製する方法として、特許文献1および2がある。
【0003】
特許文献1では水素等の酸化部、水分等除去部、低温による窒素の液化除去部、低温吸着による残留窒素等の除去部および精留塔により液化ネオンとしてネオンが精製されるプロセスが記載されている。
【0004】
特許文献2では、窒素除去部、低温吸着によるヘリウム、ネオンおよび水素を分離するプロセスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第10767923号明細書
【文献】特許第3268177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のプロセスでは、少なくともネオン、窒素及びヘリウムを含む混合ガスからネオンを精製するため、低温吸着による窒素等の除去が行われる。そのため、吸着塔を昇温して吸着剤から吸着成分を脱離させる、温度スイング法による吸着剤の再生が必要となる。この場合、吸着剤から吸着成分の脱離を促すために低温吸着で精製したガスを再生ガスとして用いる必要がある。しかしながら、再生ガス流量が少ない場合は吸着塔の昇温や吸着成分の脱離に時間が掛るため装置が大型化し、再生ガス流量が多い場合は、低温吸着で精製したガスが多く消費され、製品取り出し流量が低減してしまう。
【0007】
特許文献2のプロセスでは、水素、ネオン、窒素及びヘリウムを含む混合ガスからネオンを精製するため、窒素除去塔の吸着剤に吸着した成分の脱離を促進する再生ガスとして窒素ガスを除去したネオンを含む精製ガスを使用する。そのため、製品取り出し流量が低減してしまったり、吸着剤に吸着した成分の脱離のために10-3Torrまで真空引きすることが必要となってしまったりとネオンを精製するプロセスとしては最適化されていない。
【0008】
本発明の目的は、ネオン、窒素及びヘリウムを含むガスからネオンを効率的に精製することが可能なネオン精製装置およびネオン精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様としてのネオン精製装置は、
(1)
ネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガスから窒素を吸着除去する吸着部と、
前記吸着部で窒素が吸着除去された窒素除去ガスからヘリウムを分離除去する分離部と、
前記分離部で分離除去されたヘリウムを含む分離ガスを、前記吸着部の吸着能力を再生する再生ガスとして前記吸着部に導入可能な再生ガス導入ラインと、を備える、ネオン精製装置、である。
【0010】
本発明の1つの実施形態としてのネオン精製装置は、
(2)
前記混合ガスの原料となる原料ガスが貯留されているバッファー容器と、
前記再生ガス、及び、前記吸着部に前記再生ガスが導入されることにより前記吸着部から脱離した窒素を含む脱離ガス、が混ざった状態の使用済みガスを前記バッファー容器に導入可能な使用済みガス還流ラインと、を備える、上記(1)に記載のネオン精製装置、である。
【0011】
本発明の1つの実施形態としてのネオン精製装置は、
(3)
前記分離部でヘリウムが分離除去されたヘリウム除去ガスから更にヘリウムを分離除去する蒸留塔と、
前記蒸留塔で分離除去されたヘリウムを含む蒸留塔ガスを前記バッファー容器に導入可能な蒸留塔ガス還流ラインと、を備える、上記(2)に記載のネオン精製装置、である。
【0012】
本発明の1つの実施形態としてのネオン精製装置は、
(4)
前記混合ガスを前記吸着部に導入する前に冷却可能な熱交換器を備える、上記(2)又は(3)に記載のネオン精製装置、である。
【0013】
本発明の1つの実施形態としてのネオン精製装置は、
(5)
前記混合ガスを前記吸着部に導入する前に前記混合ガスから窒素を分離除去する予備分離部と、
前記予備分離部で分離除去された窒素を含む予備分離ガスを前記バッファー容器に導入可能な予備分離ガス還流ラインと、を備える、上記(4)に記載のネオン精製装置、である。
【0014】
本発明の1つの実施形態としてのネオン精製装置は、
(6)
前記窒素除去ガスを前記分離部に導入する前に前記窒素除去ガスから窒素を更に除去するガードアブソーバを備える、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のネオン精製装置、である。
【0015】
本発明の第2の態様としてのネオン精製方法は、
(7)
上記(1)~(6)のいずれか1つに記載のネオン精製装置を用いたネオン精製方法、である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ネオン、窒素及びヘリウムを含むガスからネオンを効率的に精製することが可能なネオン精製装置およびネオン精製方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態としてのネオン精製装置を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態としてのネオン精製装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るネオン精製装置及びネオン精製方法の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において同一の構成には同一の符号を付している。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るネオン精製装置の第1実施形態としてのネオン精製装置100を示す図である。以下では、ネオン精製装置100の構成及びこのネオン精製装置100を用いたネオン精製方法について説明する。
【0020】
粗ネオンガス供給ライン1は粗ネオンガスをバッファー容器2へ供給するラインである。粗ネオンガスの主な組成は、ネオンが50vol%、ヘリウムが15vol%、水素が2vol%、残りが窒素である。ただし、粗ネオンガスの組成は上記に限定されるものではなく、粗ネオンガスを製造する空気分離装置の構成によって異なってよい。
【0021】
バッファー容器2は、粗ネオンガス供給ライン1からの粗ネオンガスと、ネオン精製装置100のプロセスの一部で還流される還流ガスとを受け入れ、原料ガスとして貯留して保持可能である。ここで、原料ガスとはバッファー容器2に貯留されているガスを意味し、具体的には、粗ネオンガス、又は、粗ネオンガスとネオン精製装置100からの還流ガスとが混合されたガス、を指す。還流ガスとしては、後述する予備分離部109からの還流ガス、後述する吸着部112からの還流ガス、及び、後述する蒸留塔18からの還流ガスが挙げられるが、これらに限定されない。バッファー容器2の材質は金属、樹脂のいずれでもよい。
【0022】
本実施形態のネオン精製装置100は、バッファー容器2と後述する吸着部112とを接続する混合ガス導入ライン102を備える。本実施形態の混合ガス導入ライン102には、圧縮機3、水素酸化塔4、冷却器5、気液分離器6、水分除去塔7、熱交換器8、及び、気液分離器9が設けられている。但し、混合ガス導入ライン102の構成はこれに限定されない。以下では、説明の便宜上、混合ガス導入ライン102を通じて吸着部112に導入されるガスを総じて「ネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガス」又は単に「混合ガス」という場合がある。換言すれば、バッファー容器2の原料ガスは、混合ガスの原料となるガスである。
【0023】
圧縮機3は原料ガスをプロセスに必要な圧力に昇圧可能である。圧縮機3において昇圧された原料ガスは水素酸化塔4へ供給される。水素酸化塔4の塔内には触媒が充填されている。水素酸化塔4に導入される原料ガスは、例えば、水素酸化塔4が外部から加熱されることで加熱されてよい。また、水素酸化塔4に導入される原料ガスは、例えば、水素酸化塔4が備える加熱部により加熱されてもよい。水素酸化塔4導入前の原料ガスに酸素ガスを添加することで原料ガス中の水素と酸素が水素酸化塔4内で加熱反応し水に変換される。触媒としては白金、パラジウム、銅などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水素酸化塔4から排出される原料ガスは冷却器5を通過し、水素酸化塔4において加熱された原料ガスは室温以下に冷却される。冷却された原料ガスは気液分離器6へ導入される。気液分離器6に導入されたガスは、気液分離器6において、冷却により凝縮した水が液相側に、それ以外のものが気相側に分離される。
【0024】
気液分離器6の気相側のネオンを含むガスは水分除去塔7に導入される。水分除去塔7は温度スイングにより吸着と脱着を繰り返す方式である。水分除去塔7には乾燥剤が充填されている。この乾燥剤は、吸着により水分およびCO2を除去する。乾燥剤としてはモレキュラーシーブ、シリカゲル、活性アルミナなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水分除去塔7は主には少なくとも2つ以上の塔から構成され、装置の運転時にはある塔では吸着工程が実行され、別の塔では再生工程が実行される。再生時には外部ヒータ、もしくは加熱した窒素ガスなどで塔を加熱し、吸着した水分やCO2を除去する。なお、吸着工程と再生工程の切り替え時に発生するブローダウンガスはバッファー容器2に還流ガスとして回収されてもよい。ブローダウンガスを還流ガスとして回収することにより、原料ガスの総量に対する製品ネオンの収率を向上することができる。
【0025】
水分除去塔7により水分およびCO2が除去されたネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガスは、コールドボックス22内の熱交換器8へ導入される。この熱交換器8では混合ガスは温流体として導入され、例えば65Kから100Kの間の温度に冷却される。また、この熱交換器8には冷流体として、後述する気液分離器11におけるプロセスで分離された窒素を主成分とする液化ガスも導入される。さらに、本実施形態のネオン精製装置100は極低温冷凍機21を備えており、熱交換器8には極低温冷凍機21からの循環冷媒が供給される。極低温冷凍機21の方式はブレイトンサイクルを用いることが考えられるが、これに限定するものではない。循環冷媒としてはヘリウム、ネオン、水素、またはそれらを混合したガスを使用できる。
【0026】
熱交換器8で冷却されたネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガスは、予備分離部109に導入される。予備分離部109は、混合ガスを後述する吸着部112に導入する前に混合ガスから窒素を分離除去することができる。より具体的に、本実施形態の予備分離部109は、窒素を主成分とする液化ガスを液相側に、ネオンを主成分とするガスを気相側に分離可能な気液分離器9である。また、本実施形態のネオン精製装置100は、予備分離部109で分離除去された窒素を含む予備分離ガスをバッファー容器2に導入可能な予備分離ガス還流ライン309を備える。より具体的に、予備分離ガス還流ライン309は、気液分離器9とバッファー容器2とを接続するラインである。本実施形態の予備分離ガス還流ライン309には、膨張弁10と、気液分離器11が設けられている。気液分離器9で分離除去された窒素を主成分とする液化ガスは、膨張弁10に送られ、ジュール・トムソン膨張により減圧され、気液分離器11に導入される。気液分離器11では窒素を95%以上含む液化ガスが液相側に、ネオンとヘリウムとが濃縮されたガスが気相側に分離される。窒素を95%以上含む液化ガスは前述の通り、熱交換器8に冷流体として導入され、熱交換器8内で気化して大気に放出されることで排気される。気液分離器11の気相側のガスは、予備分離ガス還流ライン309を介して、バッファー容器2へ還流される。これにより、原料ガスの総量に対する製品ネオンの収率を向上することができる。
【0027】
気液分離器9の気相側のネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガスは、吸着部112に導入される。吸着部112は、この混合ガスから窒素を吸着除去する。より具体的に、本実施形態の吸着部112は、温度スイングにより吸着と脱着とを繰り返す、温度スイング方式(TSA)の低温吸着器12である。但し、低温吸着器12は、圧力スイング方式(PSA)であってもよいし、真空ポンプを用いる圧力スイング方式(VPSA)であってもよい。低温吸着器12には吸着剤が充填されており、65Kから100Kの間の温度において、ネオンを主成分とする混合ガス中の窒素を除去可能である。吸着剤としてはモレキュラーシーブや活性炭が挙げられるが、これらに限定されるものではない。低温吸着器12は主には少なくとも2つ以上の塔から構成されており、装置の運転時には、ある塔では吸着工程が実行され、別の塔では再生工程が実行される。
【0028】
本実施形態のネオン精製装置100は、後述する分離部115で分離除去されたヘリウムを含む分離ガスを、吸着部112の吸着能力を再生する再生ガスとして吸着部112に導入可能な再生ガス導入ライン16を備える。より具体的に、本実施形態の再生ガス導入ライン16は、後述する分離部115としての気液分離器15と、吸着部112としての低温吸着器12と、を接続するラインである。このような再生ガス導入ライン16を備えることで、気液分離器15の気相ガスを低温吸着器12の再生ガスとして利用することができる。通常であれば再生ガスには低温吸着器12の出口精製ガスを用いることになるが、その再生ガスはネオンのロスを低減するためにバッファー容器2に還流する必要があり、その場合、プロセスガスの循環量が増加することになる。これは結果として、寒冷を発生させる極低温冷凍機21の負荷を上げることになり、高純度ネオンの製造に必要な動力が増加する。一方で、本実施形態では気液分離器15の気相ガスを、再生ガス導入ライン16を介して再生ガスとして用いる。プロセスのマスバランスの都合上、この気相ガスは排気する必要があり、再生ガスとして使用したとしてもネオンのロスを増加させることがない。そのため、ネオン収率を維持し、かつプロセスガス流量が増やすことなく高純度ネオンの製造に必要な動力を低減することができる。すなわち、ネオン、窒素及びヘリウムを含むガスからネオンを効率的に精製することができる。なお、再生ガスを低温吸着器12に導入する再生ガス導入ライン16には加熱器13が設けられており、加熱再生時に再生ガスを加熱することができる。また、吸着部112には外部加熱ヒータが設けられてもよい。
【0029】
本実施形態の吸着部112には、吸着部112のブローダウンガス、並びに、再生ガス及び吸着部112に再生ガスが導入されることにより吸着部112から脱離した窒素を含む脱離ガスが混ざった状態の使用済みガス、をネオン精製装置100の外部に排出可能な排出ライン312が接続されている。この排出ライン312には、分岐ラインとして、使用済みガス還流ライン313が接続されていてもよい。使用済みガス還流ライン313は、吸着部112とバッファー容器2とを接続するラインである。このような使用済みガス還流ライン313を備えることで、上記ブローダウンガス又は上記使用済みガスを、還流ガスとしてバッファー容器2に導入することが可能となる。つまり、このような使用済みガス還流ライン313を備えることで、原料ガスの総量に対する製品ネオンの収率を向上することができる。
【0030】
本実施形態のネオン精製装置100は、吸着部112と後述する分離部115とを接続する窒素除去ガス導入ライン315を備える。本実施形態の窒素除去ガス導入ライン315には、熱交換器14が設けられている。但し、窒素除去ガス導入ライン315の構成はこれに限定されない。以下では、説明の便宜上、窒素除去ガス導入ライン315を通じて分離部115に導入されるガスを総じて「吸着部112で窒素が吸着除去された窒素除去ガス」又は単に「窒素除去ガス」という場合がある。
【0031】
低温吸着器12の出口精製ガス(窒素除去ガス)は、熱交換器14へ導入される。この熱交換器14ではネオンとヘリウムを含む窒素除去ガスは温流体として導入され、例えば25Kから65Kの間の温度に冷却される。熱交換器14には熱交換器8を介して極低温冷凍機21からの循環冷媒が供給される。なお、
図1では極低温冷凍機21の循環冷媒が、極低温冷凍機21に対して直列に接続された熱交換器14及び熱交換器8を循環する形態を図示しているが、極低温冷凍機21の循環冷媒が、極低温冷凍機21に対して並列に接続された熱交換器14及び熱交換器8を循環する形態であってもよい。また、熱交換器14及び熱交換器8それぞれに対して個別に冷凍機が設けられてもよい。
【0032】
熱交換器14で冷却された窒素除去ガスは、分離部115に導入される。分離部115は、この窒素除去ガスからヘリウムを分離除去する。より具体的に、本実施形態の分離部115は、この窒素除去ガスからネオンを主成分とする液化ガスを液相側に、ヘリウムを主成分とするガスを気相側に分離可能な気液分離器15である。前述した通り、気液分離器15の気相ガスは再生ガス導入ライン16を介して低温吸着器12の再生ガスとして使用される。
【0033】
気液分離器15の液相側の液化ガスはネオンが主成分であり、この液化ガスは膨張弁17へ導入される。この液化ガスは膨張弁17においてジュール・トムソン膨張により減圧され、蒸留塔18の塔頂側へ導入される。蒸留塔18は、分離部115でヘリウムが分離除去されたヘリウム除去ガスから更にヘリウムを分離除去する。より具体的に、蒸留塔18はネオンとヘリウムとを蒸留分離可能である。蒸留塔18では、塔頂側にヘリウムを含むネオンガスが濃縮され、塔底側に99%以上の高純度ネオンが濃縮される。蒸留塔18の塔底側から抜き出したネオンは圧縮機20により圧縮され製品ネオンとして取り出される。なお、製品ネオンを液体で採取する場合は、圧縮機20の代わりに送液ポンプを用いてもよい。また、製品を圧縮する必要がない場合は、圧縮機20を用いずに製品ネオンを取り出してもよい。蒸留塔18には下降液を気化させて上昇ガスとする機能を有するリボイラ19が付帯されている。なお、蒸留塔18は規則充填塔、不規則充填塔、棚段塔のいずれであってもよい。リボイラ19の加熱方式としては、電気ヒータによる加熱方式や熱交換器を介した別の温流体による加熱方式などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、
図1では図示されていないが、蒸留塔18には上昇ガスを冷却して下降液とするコンデンサが付帯されていてもよい。また、本実施形態のネオン精製装置100は、蒸留塔18で分離除去されたヘリウムを含む蒸留塔ガスをバッファー容器2に導入可能な蒸留塔ガス還流ライン318を備える。より具体的に、蒸留塔ガス還流ライン318は、蒸留塔18の塔頂とバッファー容器2とを接続するラインである。このような蒸留塔ガス還流ライン318を備えることで、蒸留塔18の塔頂側に濃縮されたヘリウムを含む蒸留塔ガスを、蒸留塔ガス還流ライン318を介してバッファー容器2に還流ガスとして導入することができる。その結果、原料ガスの総量に対する製品ネオンの収率を向上することができる。
【0034】
<第2実施形態>
図2は、本発明に係るネオン精製装置の第2実施形態としてのネオン精製装置200を示す図である。以下では、ネオン精製装置200の構成及びこのネオン精製装置200を用いたネオン精製方法について説明する。
【0035】
粗ネオンガス供給ライン31は粗ネオンガスをバッファー容器32へ供給するラインである。粗ネオンガスの主な組成は、ネオンが50vol%、ヘリウムが15vol%、水素が2vol%、残りが窒素である。ただし、粗ネオンガスの組成は上記に限定されるものではなく、粗ネオンガスを製造する空気分離装置の構成によって異なってよい。
【0036】
バッファー容器32は粗ネオンガス供給ライン31からの粗ネオンガスと、ネオン精製装置200のプロセスの一部で還流される還流ガスとを受け入れ、原料ガスとして貯留して保持可能である。ここで、原料ガスとはバッファー容器32に貯留されているガスを意味し、具体的には、粗ネオンガス、又は、粗ネオンガスとネオン精製装置200からの還流ガスとが混合されたガス、を指す。還流ガスとしては、後述する吸着部138からの還流ガス、及び、後述する蒸留塔46からの還流ガスが挙げられるが、これらに限定されない。バッファー容器32の材質は金属、樹脂のいずれでもよい。
【0037】
本実施形態のネオン精製装置200は、バッファー容器32と後述する吸着部138とを接続する混合ガス導入ライン232を備える。本実施形態の混合ガス導入ライン232には、圧縮機33、水素酸化塔34、冷却器35、気液分離器36、及び、水分除去塔37が設けられている。但し、混合ガス導入ライン232の構成はこれに限定されない。以下では、説明の便宜上、混合ガス導入ライン232を通じて吸着部138に導入されるガスを総じて「ネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガス」又は単に「混合ガス」という場合がある。換言すれば、バッファー容器32の原料ガスは、混合ガスの原料となるガスである。
【0038】
圧縮機33は原料ガスをプロセスに必要な圧力に昇圧可能である。圧縮機33で昇圧された原料ガスは水素酸化塔34へ供給される。水素酸化塔34の塔内には触媒が充填されている。水素酸化塔34に導入される原料ガスは、例えば、水素酸化塔34が外部から加熱されることで加熱されてよい。また、水素酸化塔34に導入される原料ガスは、例えば、水素酸化塔34が備える加熱部により加熱されてもよい。水素酸化塔34導入前の原料ガスに酸素ガスを添加することで原料ガス中の水素と酸素が水素酸化塔34内で加熱反応し水に変換される。触媒としては白金、パラジウム、銅などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水素酸化塔34から排出される原料ガスは冷却器35を通過し、水素酸化塔34において加熱されたガスは室温以下に冷却される。冷却された原料ガスは気液分離器36へ導入される。気液分離器36に導入されたガスは、気液分離器36において、冷却により凝縮した水が液相側に、それ以外のものが気相側に分離される。
【0039】
気液分離器36の気相側のネオンを含むガスは水分除去塔37に導入される。水分除去塔37は温度スイングにより吸着と脱着を繰り返す方式である。水分除去塔37には乾燥剤が充填されている。この乾燥材は、吸着により水分およびCO2を除去する。乾燥剤としてはモレキュラーシーブ、シリカゲル、活性アルミナなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水分除去塔37は少なくとも2つ以上の塔から構成され、装置の運転時にはある塔では吸着工程が実行され、別の塔では再生工程が実行される。再生時には外部ヒータもしくは加熱した窒素ガスなどで塔を加熱し、吸着した水分やCO2を除去する。なお、吸着工程と再生工程の切り替え時に発生するブローダウンガスはバッファー容器32に還流ガスとして回収されてもよい。ブローダウンガスを還流ガスとして回収することにより、原料ガスの総量に対する製品ネオンの収率を向上することができる。
【0040】
水分除去塔37により水分およびCO2が除去されたネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガスは、吸着部138へ導入される。吸着部138は、この混合ガスから窒素を吸着除去する。本実施形態の吸着部138は、真空ポンプ39を用いた圧力スイングにより吸着と脱着とを繰り返す圧力スイング方式(VPSA)の窒素吸着塔38である。但し、窒素吸着塔38は、温度スイング方式(TSA)であってもよいし、真空ポンプを用いない圧力スイング方式(PSA)であってもよい。窒素吸着塔38には吸着剤が充填されており、吸着によりネオンを含むガス中の主に窒素を除去する。吸着剤としてはゼオライトや活性炭が挙げられるが、これらに限定されるものではない。窒素吸着塔38は少なくとも2つ以上の塔から構成されており、窒素吸着塔38でのネオンのロスを低減するために3塔以上の塔で構成されることが好ましい。窒素吸着塔38を構成する各塔それぞれには、真空ポンプ39が接続されている。真空ポンプ39は窒素吸着塔38の再生工程で使用され、吸着した窒素を圧力差によって脱離させることができる。
【0041】
本実施形態の吸着部138には、吸着部138のブローダウンガス、並びに、再生ガス及び吸着部138に再生ガスが導入されることにより吸着部138から脱離した窒素を含む脱離ガスが混ざった状態の使用済みガス、をネオン精製装置200の外部に排出可能な排出ライン438が接続されている。本実施形態の真空ポンプ39は、この排出ライン438に設けられている。この排出ライン438には、分岐ラインとして、使用済みガス還流ライン439が接続されていてもよい。使用済みガス還流ライン439は、吸着部138とバッファー容器32とを接続するラインである。このような使用済みガス還流ライン439を備えることで、上記ブローダウンガス又は上記使用済みガスを、還流ガスとしてバッファー容器32に導入することが可能となる。つまり、このような使用済みガス還流ライン439を備えることで、原料ガスの総量に対する製品ネオンの収率を向上することができる。
【0042】
本実施形態のネオン精製装置200は、後述する分離部143で分離除去されたヘリウムを含む分離ガスを、吸着部138の吸着能力を再生する再生ガスとして吸着部138に導入可能な再生ガス導入ライン44を備える。より具体的に、本実施形態の再生ガス導入ライン44は、後述する分離部143としての気液分離器43と、吸着部138としての窒素吸着塔38と、を接続するラインである。この再生ガス導入ライン44を備えることで、気液分離器43の気相ガスを、再生ガス導入ライン44を介して、窒素吸着塔38に再生ガスとして供給することができる。これにより、吸着部138に吸着された窒素の脱離を促進でき、吸着部138としての窒素吸着塔38を小さく設計することができる。その結果、ネオンのロスを低減することができ、製造コスト低減が可能となる。すなわち、ネオン、窒素及びヘリウムを含むガスからネオンを効率的に精製することができる。なお、再生ガスを使用しない場合、脱離の効率が低下するため吸着塔の性能が低下するため、その分吸着剤を増やす必要がある。吸着剤を増やすために吸着塔のサイズを大きくすると、ネオンを含むガスのロスが大きくなる。また、再生ガスとして使用できるガスは窒素を含まず、かつ粗ネオンガス成分以外のガスを含まないことが好ましい。この条件に適合するガスは、ヘリウムガス又は製品ネオンガスであるが、前者のヘリウムガスを使用する場合は、使用されるヘリウムガスの分だけ高純度ネオンの製造コスト(すなわち、ネオンの精製コスト)が増加することになり、後者の製品ネオンガスを使用する場合は、ネオン収率が低下するため同様に高純度ネオンの製造コストが増加することになる。
【0043】
本実施形態のネオン精製装置200は、吸着部138と後述する分離部143とを接続する窒素除去ガス導入ライン443を備える。本実施形態の窒素除去ガス導入ライン443には、熱交換器40、ガードアブソーバ41、及び、熱交換器42が設けられている。但し、窒素除去ガス導入ライン443の構成はこれに限定されない。以下では、説明の便宜上、窒素除去ガス導入ライン443を通じて分離部143に導入されるガスを総じて「吸着部138で窒素が吸着除去された窒素除去ガス」又は単に「窒素除去ガス」という場合がある。
【0044】
吸着部138で窒素が吸着除去されたネオンを含む窒素除去ガスはコールドボックス50内の熱交換器40へ導入される。この熱交換器40ではネオンを含むガスは温流体として導入され、例えば44Kから100Kの間の温度に冷却される。本実施形態のネオン精製装置は極低温冷凍機49を備えており、熱交換器40には極低温冷凍機49からの循環冷媒が供給される。極低温冷凍機49の方式としてはブレイトンサイクルを用いることが考えられるが、これに限定するものではない。循環冷媒としてはヘリウム、ネオン、水素、またはそれらを混合したガスを使用できる。
【0045】
熱交換器40で冷却された窒素除去ガスはガードアブソーバ41に導入される。ガードアブソーバ41は、窒素除去ガスから、吸着部138で除去しきれない10~100ppmの窒素を除去可能である。ガードアブソーバ41には吸着剤が充填されており、44Kから100Kの間の温度において、窒素除去ガスから、吸着部138で除去しきれない10~100ppmの窒素を除去することができる。吸着剤としてはモレキュラーシーブや活性炭が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ガードアブソーバ41は定期点検等の装置全体を常温に戻す際に再生を行えば性能が維持されるように設計されてよい。なお、ガードアブソーバ41は複数設けられてもよい。
【0046】
ガードアブソーバ41の出口ガス(窒素除去ガス)は熱交換器42へ導入される。この熱交換器42ではネオンとヘリウムを含む窒素除去ガスは温流体として導入され、例えば25Kから44Kの間の温度に冷却される。熱交換器42には熱交換器40を介して極低温冷凍機49からの循環冷媒が供給される。なお、
図2では極低温冷凍機49の循環冷媒が、極低温冷凍機49に対して直列に接続された熱交換器42及び熱交換器40を循環する形態を図示しているが、極低温冷凍機49の循環冷媒が、極低温冷凍機49に対して並列に接続された熱交換器42及び熱交換器40を循環する形態であってもよい。また、熱交換器42及び熱交換器40それぞれに対して個別に冷凍機が設けられてもよい。
【0047】
熱交換器42で冷却された窒素除去ガスは、分離部143に導入される。分離部143は、この窒素除去ガスからヘリウムを分離除去する。より具体的に、本実施形態の分離部143は、この窒素除去ガスからネオンを主成分とする液化ガスを液相側に、ヘリウムを主成分とするガスを気相側に分離可能な気液分離器43である。前述した通り、気液分離器43の気相ガスは再生ガス導入ライン44を介して窒素吸着塔38の再生ガスとして使用される。
【0048】
気液分離器43の液相側の液化ガスはネオンが主成分であり、この液化ガスは膨張弁45へ導入される。この液化ガスは膨張弁45においてジュール・トムソン膨張により減圧され、蒸留塔46の塔頂側へ導入される。蒸留塔46は、分離部143でヘリウムが分離除去されたヘリウム除去ガスから更にヘリウムを分離除去する。より具体的に、蒸留塔46は気液接触によりネオンとヘリウムとを蒸留分離可能である。蒸留塔46では、塔頂側にヘリウムを含むネオンガスが濃縮され、塔底側に99%以上の高純度ネオンが濃縮される。ネオンは蒸留塔46の塔底側から抜き出され圧縮機48により圧縮されて製品ネオンとして取り出される。なお、製品ネオンを液体で採取する場合は、圧縮機48の代わりに送液ポンプを用いてもよい。また、製品を圧縮する必要がない場合は、圧縮機48を用いずに製品ネオンを取り出してもよい。蒸留塔46には下降液を気化させて上昇ガスとする機能を有するリボイラ47が付帯されている。なお、蒸留塔46は規則充填塔、不規則充填塔、棚段塔のいずれであってもよい。リボイラ47の加熱方式としては、電気ヒータによる加熱方式や熱交換器を介した別の温流体による加熱方式などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、
図2では図示されていないが、蒸留塔46には上昇ガスを冷却して下降液とするコンデンサが付帯されていてもよい。また、本実施形態のネオン精製装置200は、蒸留塔46で分離除去されたヘリウムを含む蒸留塔ガスをバッファー容器32に導入可能な蒸留塔ガス還流ライン246を備える。より具体的に、蒸留塔ガス還流ライン246は、蒸留塔46の塔頂とバッファー容器32とを接続するラインである。これにより、蒸留塔46の塔頂側に濃縮された蒸留塔ガスを、蒸留塔ガス還流ライン246を介してバッファー容器32に還流ガスとして導入することができる。その結果、原料ガスの総量に対する製品ネオンの収率を向上することができる。
【0049】
本発明に係るネオン精製装置及びネオン精製方法は、上述した実施形態に示す具体的な構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形、変更、組み合わせが可能である。
【実施例】
【0050】
本発明に係るネオン精製装置を用いた実施例について以下に説明する。
【0051】
(実施例1)
実施例1では、
図1に示すネオン精製装置100を用いて、高純度ネオンの製造(ネオンの精製)を行った。
【0052】
まず、粗ネオンガス供給ライン1を通じてバッファー容器2へ粗ネオンガスを供給した。粗ネオンガスの仕様は表1の通りであった。
【0053】
【0054】
次いで、バッファー容器2の原料ガスを圧縮機3に導入した。圧縮機3では原料ガスを30barまで圧縮した。圧縮されたガスに0.1Nm3/hの流量で酸素ガスを添加し、原料ガスと酸素とが混合されたガスを水素酸化塔4へ送ガスした。水素酸化塔4は外部ヒータにより加熱されており、触媒反応により原料ガス中の水素と酸素を反応させ、水に変換した。水素酸化塔4の出口ガスは冷却器5を通過し、気液分離器6へ導入され大部分の水分が除去された。気液分離器6の気相側のガスは水分除去塔7に導入され、ガス中の水分およびCO2が除去され、それぞれの濃度は10ppb未満となった。なお、水分除去塔7は2塔式であり片方の塔が吸着工程で、もう片方が再生工程となる。それぞれの塔にはモレキュラーシーブが充填されている。
【0055】
水分除去塔7の出口のネオンを含むガスをコールドボックス22内の熱交換器8へ導入した。この熱交換器8でネオンを含むガスを68Kまで冷却し、気液分離器9へ導入した。気液分離器9の気相ガス中の窒素濃度は2%であった。気液分離器9の液相側の液化ガスを膨張弁10を介して1.5barまで減圧し、気液分離器11に導入した。気液分離器11の液相側の液化ガス中の窒素濃度は99%以上であり、この液化ガスを熱交換器8に冷流体として導入した。この液化ガスは、熱交換により気化したのち、系外へ放出された。気液分離器11の気相ガスは80%以上のネオンを含んでいるため、バッファー容器2に還流した。
【0056】
気液分離器9の気相ガスは低温吸着器12へ導入され、ネオンを含むガス中の窒素濃度は10ppb未満となった。低温吸着器12は2塔式であり片方の塔が吸着工程で、もう片方の塔が再生工程となる。各吸着塔には吸着剤として活性炭が充填されている。低温吸着器12の再生工程は主には加熱工程と冷却工程からなる。本実施例1では、加熱工程時は気液分離器15の気相ガスを再生ガス導入ライン16を介して加熱器13に導入し、加熱器13でガスを200Kまで加温し、再生ガスとして吸着塔の出口側より導入した。吸着塔より脱離した窒素を含む再生ガスは系外へ放出される。窒素の脱離完了後は、冷却工程となり、本実施例1では冷却工程時は気液分離器15の気相ガスを再生ガス導入ライン16を介して加熱器13に導入し、加熱器13でガスを65Kまで加温し、再生ガスとして吸着塔の出口側より導入をした。このときの再生ガスは系外へ放出した。吸着塔が68Kまで冷却された時点で再生工程は完了とした。いずれの工程でも再生ガス流量は1.7Nm3/hであった。
【0057】
低温吸着器12の出口精製ガスを熱交換器14へ導入し、この熱交換器14でネオンとヘリウムから成るガスを31Kまで冷却し、気液分離器15へ導入した。気液分離器15の気相ガスはネオンとヘリウムとから成り、ヘリウムを85%以上含んでいた。前述の通り、低温吸着器12の再生ガスとして使用した。気液分離器15の液相側の液化ガスは膨張弁17を介して3barに減圧されたのち、蒸留塔18の塔頂側へ導入され、気液接触によりネオンとヘリウムを蒸留分離した。蒸留塔18は不規則充填物が充填された充填塔である。蒸留塔18にはリボイラ19が付帯しており、リボイラ19は電気ヒータ式を採用した。蒸留塔18の塔頂ガスはネオンを含んでいるため、バッファー容器2に還流した。また、蒸留塔18の塔底ではネオンが濃縮しており、圧縮機20を介して高純度ネオンガス製品として抜き出した。高純度ネオンはネオン濃度が99.99%以上であり、その流量は4.6Nm3/hであった。
【0058】
ネオン精製装置100には寒冷源として極低温冷凍機21が付帯されており、熱交換器8と熱交換器14に対して冷媒を供給した。極低温冷凍機21はブレイトンサイクル式を採用しており、冷媒用の循環圧縮機にはターボ圧縮機を採用した。また、冷媒にはヘリウムガスを使用した。本実施例1では極低温冷凍機21の運転動力として28kWを要した。
【0059】
比較として、気液分離器15の気相ガスではなく、低温吸着器12の出口ガスを再生ガスとして使用する場合、実施例1と同様に1.7Nm3/hのガスを再生ガスとして使用する必要がある。その場合には、ネオンのロスを低減するために再生ガスとして使用した低温吸着器12の出口ガスはバッファー容器2に還流する必要がある。結果として、ネオン精製装置100で循環するガス量が大きくなり、必要な寒冷量が大きくなる。上記の運転方法では極低温冷凍機21の運転動力は32kWであった。
【0060】
つまり、本発明に関する技術を利用することで、高純度ネオン製造(ネオン精製)に必要な動力を15%低減することができた。
【0061】
(実施例2)
実施例2では、
図2に示すネオン精製装置200を用いて、高純度ネオンの製造(ネオンの精製)を行った。
【0062】
まず、粗ネオンガス供給ライン31を通じてバッファー容器32へ粗ネオンガスを供給した。粗ネオンガスの仕様は実施例1と同様に表1の通りであった。
【0063】
次いで、バッファー容器32の原料ガスを圧縮機33に導入した。圧縮機33では原料ガスを30barまで圧縮した。圧縮されたガスに0.1Nm3/hの流量で酸素ガスを添加し、原料ガスと酸素とが混合されたガスを水素酸化塔34へ送ガスした。水素酸化塔34は外部ヒータにより加熱されており、触媒反応により原料ガス中の水素と酸素を反応させ、水に変換した。水素酸化塔34の出口ガスは冷却器35を通過し、気液分離器36へ導入され大部分の水分が除去された。気液分離器36の気相側のガスは水分除去塔37に導入され、ガス中の水分およびCO2が除去され、それぞれの濃度は10ppb未満となった。なお、水分除去塔37は2塔式であり片方の塔が吸着工程で、もう片方が再生工程となる。それぞれの塔にはモレキュラーシーブが充填されている。
【0064】
水分除去塔37の出口のネオンを含むガスを窒素吸着塔38へ導入した。このネオンを含むガス中の窒素濃度は10ppmであった。窒素吸着塔38は4塔式であり一つの塔が吸着工程で、別の一つの塔が再生工程、残りの2塔は塔切替時に行われる均圧工程の状態である(
図2は2塔式であるが、実施例2では4塔式としている)。各吸着塔には吸着剤としてゼオライトが充填されている。窒素吸着塔38の再生工程は脱圧工程、真空排気工程、排気再生工程からなる。脱圧工程は吸着時の圧力を均圧工程の塔に分配する工程である。本実施例2では2回の均圧工程により7.5barまで脱圧をした。排気工程は真空ポンプ39を用いて吸着塔を真空排気することで吸着した窒素を脱離させる工程である。本実施例2では、排気工程では0.05barまで真空排気を行った。このときの排気ガスは系外へ放出した。排気再生工程は真空ポンプ39による真空排気を行いながら、再生ガスを流すことで窒素の脱離をより促進する工程である。本実施例2では、再生ガスとして気液分離器43の気相ガスを再生ガス導入ライン44を介して利用した。吸着窒素を含む再生ガスは真空ポンプ39を介して系外へ放出した。再生ガスの流量は1.6Nm
3/hであった。このとき、窒素吸着塔38でのネオンを含むガスの回収率は90%であった。
【0065】
窒素吸着塔38の出口のネオンを含むガスをコールドボックス50内の熱交換器40へ導入した。この熱交換器40でネオンを含むガスを68Kまで冷却し、ガードアブソーバ41へ導入した。ガードアブソーバ41の出口では窒素濃度は10ppb未満であった。
【0066】
ガードアブソーバ41の出口精製ガスを熱交換器42へ導入し、この熱交換器42でネオンとヘリウムから成るガスを31Kまで冷却し、気液分離器43へ導入した。気液分離器43の気相ガスはネオンとヘリウムから成り、ヘリウムを85%以上含んでいる。前述の通り、同ガスは再生ガス導入ライン44を介して窒素吸着塔38の再生ガスとして使用される。気液分離器43の液相側の液化ガスは膨張弁45を介して3barに減圧されたのち、蒸留塔46の塔頂側へ導入され、気液接触によりネオンとヘリウムを蒸留分離した。蒸留塔46は不規則充填物が充填された充填塔である。蒸留塔46にはリボイラ47が付帯しており、リボイラ47は電気ヒータ式を採用した。蒸留塔46の塔頂ガスはネオンを含んでいるため、バッファー容器32に還流した。また、蒸留塔46の塔底ではネオンが濃縮しており、圧縮機48を介して高純度ネオンガス製品として抜き出した。高純度ネオンはネオン濃度が99.99%以上であり、その流量は4.0Nm3/hであった。
【0067】
ネオン精製装置200には寒冷源として極低温冷凍機49が付帯されており、熱交換器40と熱交換器42に対して冷媒を供給した。極低温冷凍機49はブレイトンサイクル式を採用しており、冷媒用の循環圧縮機にはターボ圧縮機を採用した。また、冷媒にはヘリウムガスを使用した。本実施例2では極低温冷凍機49の運転動力として23kWを要した。
【0068】
比較として、窒素吸着塔38の再生工程において再生ガスを使用せず、排気工程のみで再生を実施する場合、吸着剤の性能を最大幅で利用できないため、吸着剤の量を増やす必要があり、その分ネオンを含むガスのロスが増加する。上記の場合では窒素吸着塔38でのネオンを含むガスの回収率は85%となった。そのため、製品の高純度ネオンガスの流量は3.7Nm3/hになる。このときの極低温冷凍機49の運転動力は23kWで同等であった。
【0069】
つまり、本発明に関する技術を利用することで、高純度ネオンの製造量(ネオンの精製量)を8%増加させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明はネオン精製装置及びネオン精製方法に関する。
【符号の説明】
【0071】
1、31:粗ネオンガス供給ライン
2、32:バッファー容器
3、33、20、48:圧縮機
4、34:水素酸化塔
5、35:冷却器
7、37:水分除去塔
8、14、40、42:熱交換器
6,9、11、15、36、43:気液分離器
10、17、45:膨張弁
12:低温吸着器
13:加熱器
16、44:再生ガス導入ライン
18、46:蒸留塔
19、47:リボイラ
21、49:極低温冷凍機
22、50:コールドボックス
38:窒素除去塔
41:ガードアブソーバ
100、200:ネオン精製装置
102、232:混合ガス導入ライン
109:予備分離部
112、138:吸着部
115、143:分離部
312、438:排出ライン
313、439:使用済みガス還流ライン
315、443:窒素除去ガス導入ライン
318、246:蒸留塔ガス還流ライン
【要約】
【課題】ネオン、窒素及びヘリウムを含むガスからネオンを効率的に精製することが可能なネオン精製装置およびネオン精製方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るネオン精製装置は、ネオン、ヘリウム及び窒素を含む混合ガスから窒素を吸着除去する吸着部と、前記吸着部で窒素が吸着除去された窒素除去ガスからヘリウムを分離除去する分離部と、前記分離部で分離除去されたヘリウムを含む分離ガスを、前記吸着部の吸着能力を再生する再生ガスとして前記吸着部に導入可能な再生ガス導入ラインと、を備える。
【選択図】
図1