(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】連続液液分離器及び連続液液分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 17/022 20060101AFI20241206BHJP
B01D 17/028 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B01D17/022 501
B01D17/028 A
(21)【出願番号】P 2021106528
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2024-03-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「機能性化学品の連続精密生産プロセス技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】石坂 孝之
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 哲
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-002676(JP,A)
【文献】特開昭53-011359(JP,A)
【文献】実公昭46-006221(JP,Y1)
【文献】実開昭64-056804(JP,U)
【文献】実開昭54-049678(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに完全に混和せず、軽液と重液の二相に分離する少なくとも二種類以上の成分からなる二相液体を、チャンバーの一の側面に設けた流入口から導入して、他の側面に設けた軽液排出口及び重液排出口から、軽液及び重液をそれぞれ排出する構造を有する連続液液分離器であって、
前記流入口と前記両排出口の間に軽液と重液の界面を調整する界面調整機構を備え、
前記界面調整機構は、
上流側から下流側に向けて上下間隔が漸減し、前記二相液体を上下二層に分離する2枚のメッシュ板、及び、
前記2枚のメッシュ板の下流側の端部に隣接し、前記2枚のメッシュ板とともに断面Y字状を形成する上下層セパレーターからなり、
前記上下層セパレーターにより固定される上下二層の界面の高さと、前記軽液排出口及び前記重液排出口の高さが同じである、連続液液分離器。
【請求項2】
前記2枚のメッシュ板の前記下流側の端部と前記上下層セパレーターの間には、気泡を逃がすための微小間隙を有する請求項1に記載の連続液液分離装置。
【請求項3】
互いに完全に混和せず、軽液、重液の二相に分離する少なくとも二種類以上の成分からなる二相液体を連続的に分離する方法であって、
一の側面に流入口を、他の側面に高さが同じ軽液排出口及び重液排出口を有するチャンバーに前記二相液体を連続的に導入し、
前記流入口と前記両排出口の間で、上流側から下流側に向けて上下間隔が漸減して設置され、重液の透過を抑制し、浮遊してくる軽液を透過させる2枚のメッシュ板により前記二相液体を上下二層に分離し、
前記2枚のメッシュ板とともに断面Y字状を形成し、前記両排出口と高さが同じ上下層セパレーターにより前記上下二層の界面を固定し、
前記軽液排出口及び前記重液排出口から、軽液及び重液をそれぞれ排出する、連続液液分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに完全に混和せず、軽液と重液の二相に分離する少なくとも二種類以上の成分からなる二相液体を、それぞれの比重に応じて連続的に分離する、連続液液分離器及び連続液液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学品の合成プロセスにおいて、従来は反応と分離・精製を多段階に繰り返すバッチ法による製造が行われていたが、この製造方法では、多量の廃棄物が生じるとともに、生成物の収量が低かった。そこで、近年では、環境負荷の低減と、コスト競争力の向上のために、多段階の反応と反応生成物の分離・精製とを連続的に行うことで、廃棄物の減少と高い収量を両立し、さらに自動運転、コンパクト化を目指すフロー法への転換が図られてきた。
フロー法における生成物の分離・精製手段として、生成物を含む被抽出液を該被抽出液と混和しない抽出液剤と接触させ、生成物を含む抽出液と被抽出液とからなる二相液体を、それぞれの比重に応じて液液分離する先行技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体流入部からチャンバー内に流入した比重が異なる液体の混合液体を層分離した後、上層の液体及び下層の液体を上側流出部及び下側流出部からそれぞれ流出させる連続分液装置であって、チャンバー内の界面の位置を界面検出手段により監視し、この界面の位置を所定位置に保持するように、流出経路の少なくとも一方に設けた流量調整手段を制御することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、軽液と重液に分離する二相液体を、軽液は上部の軽液排出口から、重液は下部の重液排出口から排出する連続液液分離器であって、重液排出口には、重液透過用多孔質膜が設置され、前記重液透過用多孔質膜が、前記重液透過用多孔質膜の上流と下流の間の差圧によっても、軽液の透過を妨げる重液保持力を発生させる材質、孔径を有し、軽液排出口には、前記重液透過用多孔質膜の上流の圧力が前記重液保持力を超えない孔径、膜面積を有する軽液透過用多孔質膜が設置されている分離器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-6387号公報
【文献】特開2019-130484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の連続液液分離器では、特許文献1に記載のように、層分離した上層と下層の界面位置を一定に保つため、界面監視装置や流量調整手段等の送液量や送液速度条件を調整するための付帯デバイスが必要であった。
一方、特許文献2に記載された連続液液分離器においては、重液、軽液のどちらか一方のみを透過させ、もう一方を透過させない多孔質膜を用いることで、重液と軽液を分離しているため、界面の監視や流量の調整を行う付帯デバイスを必要としない。しかしながら、特許文献2では、異なる液種に対する多孔質膜の透過、非透過の選択性を利用しているから、重液、軽液それぞれの濡れ性に応じて多孔膜の材質や孔径を調整する必要があり、汎用性に乏しい。
【0007】
本発明は、こうした現状を鑑みてなされたものであって、界面の監視や流量の調整を行う付帯デバイスを必要とせず、簡単な構成で種々の溶液系の相分離を行うことができる連続液液分離器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意、検討したところ、互いに完全に混和しない軽液と重液の二相に分離する二相液体が連続的に流入するチャンバー内に二相の界面の高さを固定する界面調整機構を設け、かつ、該界面、軽液排出口及び重液排出口のそれぞれの高さを同じにすることで、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、前記知見に基づいて、以下の手段を採用するものである。
(1)互いに完全に混和せず、軽液と重液の二相に分離する少なくとも二種類以上の成分からなる二相液体を、チャンバーの一の側面に設けた流入口から導入して、他の側面に設けた軽液排出口及び重液排出口から、軽液及び重液をそれぞれ排出する構造を有する連続液液分離器であって、前記流入口と前記両排出口の間に軽液と重液の界面を調整する界面調整機構を備え、前記界面調整機構は、上流側から下流側に向けて上下間隔が漸減し、前記二相液体を上下二層に分離する2枚のメッシュ板、及び、前記2枚のメッシュ板の下流側の端部に隣接し、前記2枚のメッシュ板とともに断面Y字状を形成する上下層セパレーターからなり、前記上下層セパレーターにより固定される上下二層の界面の高さと、前記軽液排出口及び前記重液排出口の高さが同じである、連続液液分離器。
(2)前記2枚のメッシュ板の前記両排出口側の端部には、気泡を抜くための微小間隙を有する前記(1)の連続液液分離装置。
(3)互いに完全に混和せず、軽液、重液の二相に分離する少なくとも二種類以上の成分からなる二相液体を連続的に分離する方法であって、一の側面に流入口を、他の側面に高さが同じ軽液排出口及び重液排出口を有するチャンバーに前記二相液体を連続的に導入し、前記流入口と前記両排出口の間で、上流側から下流側に向けて上下間隔が漸減して設置され、重液の透過を抑制し、浮遊してくる軽液を透過させる2枚のメッシュ板により前記二相液体を上下二層に分離し、前記2枚のメッシュ板とともに断面Y字状を形成し、前記両排出口と高さが同じ上下層セパレーターにより前記上下二層の界面を固定し、前記軽液排出口及び前記重液排出口から、軽液及び重液をそれぞれ排出する、連続液液分離方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、界面の監視や調整を行う付帯デバイスを必要とせず、種々の溶液系の相分離を行うことができる汎用性の高い連続液液分離器及び連続液液分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る連続液液分離器の概要を模式的に示す側面図
【
図2】従来の軽液排出口及び重液排出口がそれぞれ上下に設けられているセトラーにおいて、両排出口の高さが違う場合の説明図
【
図3】同セトラーにおいて、両排出口の高さが同じで界面の高さが違う場合の説明図
【
図4】同セトラーにおいて、両排出口と界面の高さが同じ場合の説明図
【
図5】重液が水相でメッシュ板が親水性で水相からメッシュ板へかかる圧力がない場合の毛管力の概略図
【
図6】重液が水相でメッシュ板が親水性で水相からメッシュ板へかかる圧力がある場合の毛管力の概略図
【
図7】本発明に係る分離器内の重液量の方が多い場合(実施例1)と軽液量の方が多い場合(実施例2)の送液状態を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、互いに完全に混和せず、軽液と重液の二相に分離する少なくとも二種類以上の成分からなる二相液体を、混合状態で流入させつつ、一定の界面高さの上下層に分離し、前記界面高さと同じ高さの軽液排出口及び重液排出口から各相をそれぞれ排出することができる連続液液分離装置、及び連続液液分離方法に関し、上下層に分離した液液界面を両排出口と同じ高さに固定するために、2枚のメッシュ板及び上下層セパレーターよりなる界面調整機構を設置する点に特徴を有する。
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る連続液液分離器の概要を
図1に模式的に示した。
以下、本実施形態の各構成について詳述するが、これらは、この発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
なお、本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0013】
<軽液排出口、重液排出口、及び軽液と重液の界面の高さ>
最初に、軽液排出口と重液排出口の高さを軽液と重液の界面と同じ高さにする必要性について述べる。
図2に示すように、軽液排出口及び重液排出口がそれぞれ上下に設けられているセトラーである場合、両排出口が液体から受ける圧力に差があると、下相の重液排出口から優先的に排出されてしまうので、界面監視装置や排出制御弁等が必要になる。
また、
図3に示すように、両排出口を同じ高さにした場合、界面が両排出口より低いときは、軽液が優先的に排出され、界面が両排出口より高いときは、重液が優先的に排出されてしまう。
そこで、
図4に示すように軽液排出口と重液排出口の両排出口の高さと、液液界面の高さを同じにした場合、上下相の排出口からバランスよく流出される。しかし、液液界面は常に一定とは限らないので、液液界面の高さを両排出口の高さと同じになるように固定することが必要となる。
【0014】
本発明では、二相液体を上下層に分離し、液液界面を両排出口と同じ高さに固定するために、2枚のメッシュ板及び上下層セパレーターよりなる界面調整機構を設置する点に特徴を有する。
【0015】
なお、実際には、各排出口は上下方向に有限の大きさを有するから、同じ高さとは、より正確には、軽液排出口の下端及び重液排出口の上端と、上下層セパレーターが固定する液液界面とが同じ高さであることを意味する。
【0016】
<メッシュ板>
本実施形態における2枚のメッシュ板は、重液をメッシュ板に固定する力(毛管力)を有する開口を有する。メッシュ板における毛管力、すなわち濡れ性の制御は、重液に対してのみで良い。
開口の形は、角形でも丸形でもよいが、角形の場合は半径rの円形に換算した開口径を有するものとする。
半径rの開口における重液の毛管圧Pcは、以下の式1で表されるから、毛管力は、開口径rに依存する。
(式1)
Pc=2γcosθ/r
(γ:重液と軽液の界面張力、θ:重液の接触角)
【0017】
図5は、重液が水相であり、メッシュ板の素材が親水性であり、メッシュ板にかかる水相の圧力がない場合の毛管力を示しているが、
図6は、重液が水相であり、メッシュ板の素材が親水性であり、メッシュ板にかかる水相の圧力がある場合の毛管力を説明する図である。メッシュ板が、重液(水相)に対して親和性があれば、水相からの圧力があってもなくても、メッシュ板の開口の毛管力により、重液(水相)はメッシュ板に固定される。
なお、重液が油相である場合は、軽液が油相、水相のいずれであっても、疎水性のメッシュ板を使用できる。
【0018】
メッシュ板の開口径は、0.2~5.0mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.75~2.0mm程度であれば、種々の組み合わせによる二相溶液の分離を行うことができる。
【0019】
本実施形態においてメッシュ板の材質は、特に限定されないが、例えば、親水性の材質としては、親水化ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、セラミックス、金属などが挙げられる。特にポリメタクリレートが好ましい。
また、疎水性の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
【0020】
このような2枚のメッシュ板は、チャンバー内の上流側では、流路を上側、中間、下側に三分割しているが、下流側に向けて上下間隔が漸減するように配置されていることにより、中間流路は徐々に狭まり、下流側では上側流路、下側流路のみとなる。
二相液体中の重液のチャンバー内の液量がセパレーター高さを上回る場合、軽液はメッシュ板の上流側端部の空隙を流れることで上側流路に集約され、重液は下側流路と中間流路に集約されるが、中間流路は徐々に狭まるから、二相液体は2枚のメッシュ板の下流側端部において、軽液と重液の上下二層に分離される。
重液のチャンバー内の液量がセパレーター高さを下回る場合は、軽液は上側流路と中間流路を流れるが、中間流路は徐々に狭まるから、上記と同様に2枚のメッシュ板の下流側端部において、軽液と重液の上下二層に分離される。
【0021】
本発明の実施形態において使用可能な二相液体は、互いに完全に混和せず、軽液、重液の二相に分離する少なくとも二種類の成分からなる二相液体であり、例えば、水/ペンタン、水/ヘキサン、水/ヘプタン、水/オクタン、水/ノナン、水/デカン、水/シクロヘキサン、水/デカリン、水/ベンゼン、水/トルエン、水/キシレン、水/ニトロベンゼン、水/アニリン、水/フェノール、水/酢酸メチル、水/酢酸エチル、水/酢酸プロピル、水/酢酸ブチル、水/ジエチルエーテル、水/ジプロピルエーテル、水/ジブチルエーテル、水/ジフェニルエーテル、水/ブタノール、水/ヘキサノール、水/ヘプタノール、水/オクタノール、水/ノナノ-ル、水/デカノール、水/ブトキシエタノール、水/トリエチルアミン、水/クロロホルム、水/四塩化炭素、フロリナート/水、メタノール/ヘキサン、メタノール/シクロヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミド/ヘキサン、N-メチル-2-ピロリドン/ヘキサンなどが挙げられる。
【0022】
また、前記二成分からなる二相液体に無機塩や有機化合物を溶解させた三成分以上の二相液体が挙げられ、また、水/アセトン、水/ホルムアルデヒド、水/テトラヒドロフラン、水/N,N´-ジメチルホルムアミド、水/ジメチルスルホキシド、水/メタノール、水/エチレンカーボネート、水/酢酸などの混和した液体に、無機塩や有機化合物を溶解させて、軽液、重液の二相に分離したものが挙げられる。
【0023】
<上下層セパレーター>
本実施形態における上下層セパレーターは、2枚のメッシュ板の下流側端部に隣接し、前記2枚のメッシュ板とともに断面Y字状を形成しているから、軽液と重液の界面高さを維持、固定する作用を有する。
そして、最初に述べたように、軽液排出口及び重液排出口の高さを軽液と重液の界面高さと同じにすることにより、それぞれの排出口からバランスよく軽液及び重液を流出させることができる。
【0024】
なお、流入する液体には気泡が巻き込まれている場合、目詰まりを起こす恐れがあるから、前記2枚のメッシュ板の前記下流側の端部と前記上下層セパレーターの間には、気泡を逃がすための微小間隙を有していてもよい。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
アクリル系モノマーを用いて、光造形方式の3Dプリンター(製品名:formlabs社製form3)で、
図1に示す液液分離器を作製した。
この液液分離器は、流入口、軽液排出口、重液排出口を有する13×50×10mmの透明チャンバー内に、上流側の2枚のメッシュ板及び下流側の上下層セパレーターからなる界面調整部を有する
2枚のメッシュ板(13×15×0.5mm、角形の開口の目開き 2mm)は、流入側のチャンバー側面から20mm離れた位置を上流側の端部とし、上下間隔が6mmから下流側の端部に向けて対称的に漸減するように設置され、上下層セパレーター(13×15×1mm)は、2枚のメッシュ板の下流側の端部と排出口側のチャンバー側面を、前記軽液排出口及び重液排出口と同じ高さで結合するように設置されている。
前記軽液排出口及び重液排出口の管内径を2mm、長さを5cmとした。
前記液液分離器の流入口から、シクロヘキサン(軽液)と食紅で着色した水(重液)の二相液体を軽液:1.0mL/min、重液:0.5mL/minの流量で30分間送液した。
軽液排出口からはシクロヘキサン、重液排出口からは食紅で着色した水のみが排出された。
【0026】
(実施例2)
軽液排出口の管内径を1mm、長さ45cmと変更した以外は、実施例1と同じ液液分離器を用い、シクロヘキサン(軽液)と食紅で着色した水(重液)の二相液体を軽液:1.0mL/min、重液0.5mL/minの流量で30分間送液した。軽液排出口からはシクロヘキサン、重液排出口からは食紅で着色した水のみが排出された。
【0027】
(実施例3)
二枚のメッシュ板の角形の開口の目開きを1mmと変更した以外は、実施例1と同じ液液分離器を用い、実施例1と同じ条件で送液を行った。軽液排出口からはシクロヘキサン、重液排出口からは食紅で着色した水のみが排出された。
【0028】
(実施例4)
二相液体の流量を軽液:1mL/min、重液:1mL/minと変更した以外は、実施例1と同様にして送液を行った。軽液排出口からはシクロヘキサン、重液排出口からは食紅で着色した水のみが排出された。
【0029】
(実施例5)
二相液体の流量を軽液:4mL/min、重液:4mL/minと変更した以外は、実施例1と同様にして送液を行った。軽液排出口からはシクロヘキサン、重液排出口からは食紅で着色した水のみが排出された。
【0030】
(実施例6)
軽液を1-ブタノール80vol%/水20vol%の混合溶液、重液を水90vol%/1-ブタノール10vol%の混合溶液、軽液排出口及び重液排出口の管内径を1mm、長さ45cm、二相液体の流量を軽液:1mL/min、重液:1mL/minと変更した以外は、実施例1と同様にして送液を行った。軽液排出口からは軽液、重液排出口からは重液が排出された。
【0031】
(実施例7)
ポリアミド粉体を用いて、レーザー焼結造形方式の3Dプリンター(製品名:Sinterit社製LISA-PRO)で、軽液排出口及び重液排出口の管内径を1mm、開口の目開き1mmとした以外は実施例1と同じサイズの液液分離器を作製した。軽液を酢酸エチル、重液を水、二相液体の流量を軽液:1mL/min、重液:1mL/minと変更し、実施例1と同様にして送液を行った。軽液排出口からは軽液、重液排出口からは重液が排出された。
【0032】
(実施例8)
ポリアミド粉体を用い、実施例7と同じ3Dプリンターで、重液排出口の管内径を1mm、長さを45cm、開口の目開き1mmとした以外は実施例1と同じサイズの液液分離器を作製した。軽液をメタノール10vol%/n-ヘキサン90vol%の混合溶液、重液をメタノール40vol%/n-ヘキサン60vol%の混合溶液とし、二相液体の流量を軽液:1mL/min、重液:1mL/minと変更した以外は、実施例1と同様にして送液を行った。軽液排出口からは軽液、重液排出口からは重液が排出された。
【0033】
(実施例9)
ポリアミド粉体を用い、実施例7と同じ3Dプリンターで、軽液排出口及び重液排出口の管内径を1mm、開口の目開き1mmと変更した以外は実施例1と同じサイズの液液分離器を作製した。軽液をN,N-ジメチルホルムアミド5vol%/n-ヘキサン95vol%の混合溶液、重液をN,N-ジメチルホルムアミド90vol%/ヘキサン10vol%の混合溶液とし、実施例1と同様にして送液を行った。軽液排出口からは軽液、重液排出口からは重液が排出された。
【0034】
以上の実施例1~9の液液分離器の構成、及び送液条件を以下の表1にまとめた。
また、実施例1、2の結果を
図7の写真に示した。
【0035】
【0036】
図7で重液は濃いグレーで表示されている。チャンバー内の重液量の方が多い実施例1(左図)とチャンバー内の軽液量の方が多い実施例2(右図)のいずれの場合も、軽液排出口からは軽液が、重液排出口からは重液のみが排出され、上下層の界面は常に一定の高さに保たれることがわかった。
したがって、実施例1,2からは、軽液及び重液の液量がバランスしない場合であっても、上下層の界面は常に一定の高さに保たれ、軽液排出口と重液排出口とが同じ高さであるから、精密な液液分離を自動的に行うことができることがわかった。
【0037】
実施例3~5からは、メッシュ板の開口の目開きや、二相液体の流量がある程度の幅を有する範囲であっても、本発明の効果が十分に得られることがわかった。
実施例6~9からは、メッシュ板の素材や、二相液体の組み合わせを変更しても、連続的な相分離を効果的に行えることがわかった。
また、実施例2及び実施例8は、軽液排出口と重液排出口との管内径がバランスせず、排出後の軽液又は重液のいずれかにより負荷がかかる場合であるが、この程度の管内径の差であれば、界面高さが移動することなくそれぞれの排出口から相分離された液体が得られることがわかった。
以上により、本発明は、厳密なサイズ設定や送液条件を必要とせず、種々の二相液体の液液分離に汎用することができることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、簡単な構成を有する連続液液分離器を用いて、種々の溶液系の相分離が可能であるから、多様な化学品の連続精密生産プロセスに利用することができる。