IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図1
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図2
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図3
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図4
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図5
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図6
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図7
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図8
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図9
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図10
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図11
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図12
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図13
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図14
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図15
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図16
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図17
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図18
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図19
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図20
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図21
  • 特許-研磨装置、及び研磨方法 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】研磨装置、及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20241206BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241206BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20241206BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20241206BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20241206BHJP
   B24B 37/30 20120101ALI20241206BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20241206BHJP
【FI】
B24B37/013
H01L21/304 622S
B24B49/10
B24B49/16
B24B37/12 D
B24B37/30 Z
B24B53/017 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020216919
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102275
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑多
(72)【発明者】
【氏名】高橋 太郎
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00-3/60,21/00-51/00,
53/017,53/12;
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドと、前記研磨パッドに対向して配置される研磨対象物との間で研磨を行うための研磨装置であって、
前記研磨パッドを保持するための研磨テーブルと、
前記研磨対象物を保持するための保持部と、
前記保持部を保持するための揺動アームと、
前記揺動アームを揺動するためのアーム駆動部と、
前記揺動アームが揺動する最大角度範囲のうち、揺動端を除く角度範囲で、前記揺動アームに加わるアームトルクを直接または間接に検知するアームトルク検知部と、
前記アームトルク検知部が検知した前記アームトルクに基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出する終点検出部と、を有することを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記アームトルク検知部は、前記揺動アームが一方向に揺動しているときにのみ前記揺動端を除く角度範囲で前記アームトルクを検知することを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】
前記アームトルク検知部は、前記揺動アームが両方向に揺動しているときに前記揺動端を除く角度範囲で前記アームトルクを検知することを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
【請求項4】
前記アームトルク検知部は、前記揺動端を除く角度範囲内の所定の角度において前記アームトルクを検知することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記アームトルク検知部は、前記揺動端を除く角度範囲内の複数の角度において前記アームトルクを検知し、
前記終点検出部は、揺動の少なくとも1周期について前記複数の角度において得られた
前記アームトルクを平均化して、平均化して得られた前記アームトルクに基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記揺動アームの、前記アーム駆動部への接続部において、前記アームトルク検知部は、前記揺動アームに加わる前記アームトルクを検知することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記アーム駆動部は、前記揺動アームを回転させる回転モータであり、
前記アームトルク検知部は、前記回転モータの電流値から、前記揺動アームに加わる前記アームトルクを検知することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記終点検出部は、前記回転モータの前記電流値の微分値に基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出することを特徴とする、請求項に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記研磨装置は、前記研磨パッドのドレッシングを行うパッドドレッサーを有し、前記揺動アームが揺動しているときに、前記パッドドレッサーは前記ドレッシングを行うことを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記終点検出部は、前記揺動アームの揺動角度を求め、前記揺動角度に対応する前記アームトルクを求めることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の研磨装置。
【請求項11】
研磨パッドと、前記研磨パッドに対向して配置される研磨対象物との間で研磨を行う研磨方法において、
前記研磨パッドを研磨テーブルに保持し、
揺動アームが、前記研磨対象物を保持する保持部を保持し、
アーム駆動部が前記揺動アームを揺動し、
前記揺動アームが揺動する最大角度範囲のうち、揺動端を除く角度範囲で、前記揺動アームに加わるアームトルクを直接または間接に検知し、
検知した前記アームトルクに基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出することを特徴とする研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置、及び研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が進むにつれて回路の配線が微細化し、配線間距離も、より狭くなりつつある。半導体デバイスの製造では、シリコンウェハの上に多くの種類の材料が膜状に繰り返し形成され、積層構造を形成する。この積層構造を形成するためには、ウェハの表面を平坦にする技術が重要となっている。このようなウェハの表面を平坦化する一手段として、化学機械研磨(CMP)を行う研磨装置(化学的機械的研磨装置ともいう)が広く用いられている。
【0003】
この化学機械研磨(CMP)装置は、一般に、研磨対象物(ウェハ等の基板)を研磨するための研磨パッドが取り付けられた研磨テーブルと、研磨対象物を保持して研磨パッドに押圧するためにウェハを保持するトップリングを有する。研磨テーブルとトップリングはそれぞれ、駆動部(例えばモータ)によって回転駆動される。さらに、研磨装置は、研磨液を研磨パッド上に供給するノズルを備えている。ノズルから研磨液を研磨パッド上に供給しながら、トップリングによりウェハを研磨パッドに押し付け、さらにトップリングと研磨テーブルとを相対移動させることにより、ウェハを研磨してその表面を平坦にする。トップリングと、トップリングの駆動部の保持方式としては、これらを揺動アーム(片持アーム)の端部に保持する方式と、トップリングと、トップリングの駆動部をカルーセルに保持する方式がある。
【0004】
研磨装置では、研磨対象物の研磨が不十分であると、回路間の絶縁がとれず、ショートするおそれが生じる。また、過研磨となった場合は、配線の断面積が減ることによる抵抗値の上昇、又は配線自体が完全に除去され、回路自体が形成されないなどの問題が生じる。このため、研磨装置では、最適な研磨終点を検出することが求められる。
【0005】
研磨終点検出手段の1つとして、研磨が異材質の物質へ移行した際の研磨摩擦力の変化を検出する方法が知られている。研磨対象物である半導体ウェハは、半導体、導体、絶縁体の異なる材質からなる積層構造を有しており、異材質層間で摩擦係数が異なる。このため、研磨が異材質層へ移行することによって生じる研磨摩擦力の変化を検出する方法である。この方法によれば、研磨が異材質層に達した時が研磨の終点となる。
【0006】
また、研磨装置は、研磨対象物の研磨表面が平坦ではない状態から平坦になった際の研磨摩擦力の変化を検出することにより、研磨終点を検出することもできる。
【0007】
ここで、研磨対象物を研磨する際に生じる研磨摩擦力は、研磨テーブルまたはトップリングを回転駆動する駆動部の駆動負荷として現れる。例えば、駆動部が電動モータの場合には、駆動負荷(トルク)はモータに流れる電流として測定することができる。このため、モータ電流(トルク電流)を電流センサで検出し、検出したモータ電流の変化に基づいて研磨の終点を検出することができる。
【0008】
特開2004-249458号には、揺動アームの端部にトップリングを保持する方式において、研磨テーブルを駆動するモータのモータ電流を利用して研磨摩擦力を測定して、研磨の終点を検出する方法を開示する。カルーセルに複数のトップリングを保持する方式においては、カルーセル回転モータのトルク電流(モータ電流)検知による終点検知方法(特開2001-252866号、米国特許第6293845号)がある。また、カル
ーセルに取り付けたリニアモータにより横方向にトップリングが駆動される方式もある。この方式では、リニアモータのトルク電流(モータ電流)検知による終点検知方法(米国特許出願公開第2014/0020830号)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-249458号
【文献】特開2001-252866号
【文献】米国特許第6293845号
【文献】米国特許出願公開第2014/0020830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
研磨装置によって実行される研磨プロセスには、研磨対象物の種類、研磨パッドの種類、研磨砥液(スラリ)の種類、揺動アームの揺動の有無などの組み合わせによって複数の研磨条件が存在する。例えば研磨時に研磨の均一性(プロファイル)の改善を目的として揺動アームを揺動させて研磨を行う場合がある。このときに、研磨テーブルを駆動するモータ(回転モータ)のモータ電流を利用して研磨摩擦力を測定する場合、テーブルの回転中心とウェハの回転中心との距離が揺動アームの揺動によって変化する。このため、テーブルの回転モーメントの変化に起因する揺動アームの揺動周期に応じた変化が、回転モータのモータ電流に現れる。この結果、回転モータのモータ電流から研磨の終点を検出することが困難になる。
【0011】
揺動アームを揺動するためのモータ(揺動モータ)の電流値から揺動アームに加わるアームトルクを検知して、検知したアームトルクに基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出する方法(以下では「アームトルク法」と呼ぶ。)もある。アームトルク法の場合、揺動アームの揺動時には揺動モータが回転するため、揺動に起因してアームトルクが変化する。アームトルク法の場合、揺動アームの揺動時に揺動モータを回転させるためのトルクと比べて、ウェハとパッドとの間の研磨摩擦力の変化に伴うトルク変化が微小である。このため、揺動モータを回転させるためのトルクの影響を除去しなければトルク変化を検出することができず、研磨の終点を適切に検出することができないおそれがあり、過研磨などの問題が生じ得る。すなわちアームトルクの変動を精度よく検知して、研磨対象物の膜質変化及び/または研磨終点の検知を、従来よりも高精度で実現できることが好ましい。
【0012】
なお、研磨の終点を適切に検出することは、研磨と、研磨パッドのドレッシングが同時に行われる場合においても必要である。ドレッシングは、ダイヤモンド等の砥石が表面に配置されたパッドドレッサーを研磨パッドに当てて行う。パッドドレッサーにより、研磨パッドの表面を削り、又は、粗化して、研磨開始前に研磨パッドのスラリの保持性を良好にし、又は使用中の研磨パッドのスラリの保持性を回復させ、研磨能力を維持する。
【0013】
そこで、本発明の一形態は、トップリングを揺動アームに保持する方式において、揺動アームの揺動時にウェハとパッドとの間の摩擦力変化、すなわちアームトルクの変動を検知するときに、従来よりも改善された精度で検出して、研磨終点検出の精度を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、第1の形態では、研磨パッドと、前記研磨パッドに対向して配置される研磨対象物との間で研磨を行うための研磨装置であって、前記研磨パッドを保持するための研磨テーブルと、前記研磨対象物を保持するための保持部と、前記保持部
を保持するための揺動アームと、前記揺動アームを揺動するためのアーム駆動部と、前記揺動アームが所定の角度範囲で揺動しているときに、前記揺動アームに加わるアームトルクを直接または間接に検知するアームトルク検知部と、前記アームトルク検知部が検知した前記アームトルクに基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出する終点検出部と、を有することを特徴とする研磨装置という構成を採っている。
【0015】
第2の形態では、前記アームトルク検知部は、前記揺動アームが所定の一方向に揺動しているときに前記所定の角度範囲で前記アームトルクを検知することを特徴とする第1の形態記載の研磨装置という構成を採っている。
【0016】
第3の形態では、前記アームトルク検知部は、前記揺動アームが両方向に揺動しているときに前記所定の角度範囲で前記アームトルクを検知することを特徴とする第1の形態記載の研磨装置という構成を採っている。
【0017】
第4の形態では、前記アームトルク検知部は、前記所定の角度範囲内の所定の角度において前記アームトルクを検知することを特徴とする第1の形態ないし第3の形態のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0018】
第5の形態では、前記アームトルク検知部は、前記所定の角度範囲内の複数の角度において前記アームトルクを検知し、前記終点検出部は、揺動の少なくとも1周期について前記複数の角度において得られた前記アームトルクを平均化して、平均化して得られた前記アームトルクに基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出することを特徴とする第1の形態ないし第3の形態のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0019】
第6の形態では、前記揺動アームの、前記アーム駆動部への接続部において、前記アームトルク検知部は、前記揺動アームに加わる前記アームトルクを検知することを特徴とする、第1の形態ないし第5の形態のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0020】
第7の形態では、前記アーム駆動部は、前記揺動アームを回転させる回転モータであり、前記アームトルク検知部は、前記回転モータの電流値から、前記揺動アームに加わる前記アームトルクを検知することを特徴とする、第1の形態ないし第5の形態のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0021】
第8の形態では、前記終点検出部は、前記回転モータの前記電流値の微分値に基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出することを特徴とする、第1の形態ないし第5の形態のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0022】
第9の形態では、前記研磨装置は、前記研磨パッドのドレッシングを行うパッドドレッサーを有し、前記揺動アームが揺動しているときに、前記パッドドレッサーは前記ドレッシングを行うことを特徴とする、第1の形態ないし第8の形態のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0023】
第10の形態では、前記終点検出部は、前記揺動アームの揺動角度を求め、前記揺動角度に対応する前記アームトルクを求めることを特徴とする、第1の形態ないし第9の形態のいずれか1項に記載の研磨装置という構成を採っている。
【0024】
第11の形態では、研磨パッドと、前記研磨パッドに対向して配置される研磨対象物との間で研磨を行う研磨方法において、前記研磨パッドを研磨テーブルに保持し、揺動アームが、前記研磨対象物を保持する保持部を保持し、アーム駆動部が前記揺動アームを揺動
し、前記揺動アームが所定の角度範囲で揺動しているときに、前記揺動アームに加わるアームトルクを直接または間接に検知し、検知した前記アームトルクに基づいて、前記研磨の終了を示す研磨終点を検出することを特徴とする研磨方法という構成を採っている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す概略図である。
図3図3は、アームトルク検知部によるアームトルクの検知方法を説明するブロック図である。
図4図4は、トップリングが揺動する様子を示す図である。
図5図5は、トルクが相対的に安定している特定の揺動角度範囲の一例を示す図である。
図6図6は、トルクが相対的に安定している特定の揺動角度範囲の別の一例を示す図である。
図7図7は、トルクが相対的に安定している特定の揺動角度範囲のさらに別の一例を示す図である。
図8図8は揺動周期と特定の角度との関係を示す図である。
図9図9は、終点検出部が行う処理を示すフローチャートである。
図10図10は、終点検出部が取得したモータ回転速度の一例を示す図である。
図11図11は、終点検出部が積分して得たモータ角度の一例を示す図である。
図12図12は、終点検出部が取得したトルク指令値の一例を示す図である。
図13図13は、移動平均後のトルク指令値を示す図である。
図14図14は、トルク指令値を角度毎のトルク指令値に分割した図を示す。
図15図15は、データ補間により得られたトルク指令値を示す図である。
図16図16は、移動平均により得られたトルク指令値を示す図である。
図17図17は、各揺動周期毎の平均により得られたトルク指令値を示す図である。
図18図18は、移動平均により得られたトルク指令値を示す図である。
図19図19は、微分により得られた微分値を示す図である。
図20図20は、研磨テーブルのモータの電流と、アームトルクを示す図である。
図21図21は、パッドドレッサーが研磨パッド上の所定の領域を往復している時のパッドドレッサーの位置を示す図である。
図22図22は、アームトルクを微分した値と、電流を微分した値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置34の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、研磨装置34は、研磨パッド10と、研磨パッド10に対向して配置される研磨対象物との間で研磨を行う。研磨装置34は、研磨パッド10を保持するための研磨テーブル30と、研磨対象物である半導体ウェハ16等の基板を保持して研磨テーブル上の研磨面に押圧するトップリング31(保持部)とを備えている。
【0028】
研磨装置34は、トップリング31を保持するための揺動アーム110と、揺動アーム110を揺動するための揺動軸モータ14(アーム駆動部)と、揺動軸モータ14に、駆動電力を供給するドライバ18を有する。さらに研磨装置34は、揺動アーム110が所定の角度範囲で揺動しているときに、揺動アーム110に加わるアームトルクを直接または間接に検知するアームトルク検知部26と、アームトルク検知部26が検知したアームトルクに基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出する終点検出部28とを有する。
【0029】
本実施形態によれば、トップリング31を揺動アーム110に保持する方式において、揺動アーム110の揺動時に半導体ウェハ16と研磨パッド10との間の摩擦力変化、すなわちアームトルクの変動を検知するときに、従来よりも改善された精度で検出して、研磨終点検出の精度を向上させることができる。本実施形態では、トップリング31の揺動アーム110を揺動させながらトルク変動を検知する時に、後述するノイズ低減等により、従来よりもトルク変動を検知する感度を向上させている。既述のようにアームトルク法の場合、揺動アームの揺動時に揺動モータを回転させるためのトルクと比べて、ウェハとパッドとの間の研磨摩擦力の変化に伴うトルク変化が微小である。このため、揺動モータを回転させるためのトルクの影響を除去しなければトルク変化を検出することができず、研磨の終点を適切に検出することができないおそれがあり、過研磨などの問題が生じ得る。本実施形態は後述のように、揺動アーム110が所定の角度範囲で揺動しているときに研磨終点検出を行うことにより、この課題を解決する。
【0030】
本図において研磨テーブル30は、テーブル軸102を介してその下方に配置される駆動部であるモータ52に連結されており、そのテーブル軸102周りに回転可能になっている。研磨テーブル30の上面には研磨パッド10が貼付されており、研磨パッド10の表面101が半導体ウェハ16を研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル30の上方には研磨液供給ノズル(図示しない)が設置されており、研磨液供給ノズルによって研磨テーブル30上の研磨パッド10に研磨液Qが供給される。
【0031】
研磨装置34は、モータ52に、駆動電力を供給するドライバ118を有する。さらに研磨装置34は、研磨テーブル30が回転しているときに、研磨テーブル30に加わるトルクを検知するトルク検知部126を有してもよい。そして終点検出部28は、トルク検知部126が検知したトルクに基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出してもよい。さらに図2に示すように、研磨テーブル30の内部には、半導体ウェハ16内に渦電流を生成して、当該渦電流を検出することにより研磨終点を検知できる渦電流センサ50が埋設されていてもよい。そして終点検出部28は、渦電流センサ50が検知した渦電流に基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出してもよい。
【0032】
図2により、研磨装置34をさらに説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る研磨装置34の全体構成を示す概略図である。トップリング31は、半導体ウェハ16を研磨面101に対して押圧するトップリング本体24と、半導体ウェハ16の外周縁を保持して半導体ウェハ16がトップリングから飛び出さないようにするリテーナリング23とから構成されている。
【0033】
トップリング31は、トップリングシャフト111に接続されている。トップリングシャフト111は、図示しない上下動機構により揺動アーム110に対して上下動する。トップリングシャフト111の上下動により、揺動アーム110に対してトップリング31の全体を昇降させ位置決めする。
【0034】
また、トップリングシャフト111はキー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。この回転筒112はその外周部にタイミングプーリ113を備えている。揺動アーム110にはトップリング用モータ114が固定されている。上記タイミングプーリ
113は、タイミングベルト115を介してトップリング用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。トップリング用モータ114が回転すると、タイミングプーリ116、タイミングベルト115、およびタイミングプーリ113を介して回転筒112およびトップリングシャフト111が一体に回転し、トップリング31が回転する。
【0035】
揺動アーム110は、揺動軸モータ14の回転軸に接続されている。揺動軸モータ14は揺動アームシャフト117に固定されている。従って、揺動アーム110は、揺動アームシャフト117に対して回転可能に支持されている。
【0036】
トップリング31は、その下面に半導体ウェハ16などの基板を保持できる。揺動アーム110は、揺動アームシャフト117を中心として、旋回可能である。下面に半導体ウェハ16を保持したトップリング31は、揺動アーム110の旋回により、半導体ウェハ16の受取位置から研磨テーブル30の上方に移動される。そして、トップリング31を下降させて、半導体ウェハ16を研磨パッド10の表面(研磨面)101に押圧する。このとき、トップリング31および研磨テーブル30をそれぞれ回転させる。同時に、研磨テーブル30の上方に設けられた研磨液供給ノズルから研磨パッド10上に研磨液を供給する。このように、半導体ウェハ16を研磨パッド10の研磨面101に摺接させて、半導体ウェハ16の表面を研磨する。
【0037】
研磨装置34は、図1に示すように研磨テーブル30を回転駆動するテーブル駆動部(モータ52)を有する。研磨装置34は、研磨テーブル30に加わるテーブルトルクを検知するトルク検知部126を有してもよい。トルク検知部126は、回転モータであるテーブル駆動部の電流からテーブルトルクを検知することができる。ドライバ118は3相(UVW相)の電流54をモータ52に供給する。電流センサ56がそのうちの1相の電流を検知して、検知した電流をトルク検知部126に送る。トルク検知部126は、検知した電流を、テーブルトルクとして終点検出部28に送る。終点検出部28は、アームトルク検知部26が検知したアームトルクのみから研磨の終了を示す研磨終点を検出してもよいし、トルク検知部126が検知したテーブルトルクも考慮して、研磨の終了を示す研磨終点を検出してもよい。
【0038】
図2においては、揺動アーム110の、揺動軸モータ14への接続部において、アームトルク検知部26は、揺動アーム110に加わるアームトルクを検知する。具体的には、アーム駆動部は、揺動アーム110を回転させる揺動軸モータ(回転モータ)14であり、アームトルク検知部26は、揺動軸モータ14の電流値から、揺動アーム110に加わるアームトルクを検知する。揺動軸モータ14の電流値は、揺動アーム110の、揺動軸モータ14への接続部におけるアームトルクに依存する量である。揺動軸モータ14の電流値は本実施形態では、図3に示すドライバ18から揺動軸モータ14に供給される電流値18b、または、ドライバ18内で生成される後述する電流指令18aである。ここでアームトルクとは、揺動アーム110の旋回軸108を中心に揺動アーム110に対して働く、旋回軸108の周りの力のモーメントである。テーブルトルクとは研磨テーブル30の回転軸192を中心に研磨テーブル30に対して働く、回転軸192の周りの力のモーメントである。
【0039】
アームトルク検知部26によるアームトルクの検知方法を図3により説明する。ドライバ18は、制御部65から、揺動アーム110の位置に関する位置指令65aを入力される。位置指令65aは、揺動アームシャフト117に対する揺動アーム110の回転角度に相当するデータである。ドライバ18は、また、揺動軸モータ14に内蔵して取り付けられたエンコーダ36から、揺動アームシャフト117の回転角度36aを入力される。
【0040】
エンコーダ36は、揺動軸モータ14の回転軸の回転角度36a、すなわち揺動アームシャフト117の回転角度36aを検知することができるものである。図3では、揺動軸モータ14とエンコーダ36は、独立に図示されているが、実際は、揺動軸モータ14とエンコーダ36は、一体化している。このような一体型モータの一例として、フィードバックエンコーダ付き同期型ACサーボモータがある。
【0041】
ドライバ18は、偏差回路38と、電流生成回路40と、PWM回路42とを有する。偏差回路38は、位置指令65aと回転角度36aから、位置指令65aと回転角度36aの偏差38aを求める。偏差38aと、電流値18bは、電流生成回路40に入力される。電流生成回路40は、偏差38aと、現在の電流値18bから、偏差38aに応じた電流指令18aを生成する。PWM回路42は、電流指令18aを入力されて、PWM(Pulse Width Modulation)制御により、電流値18bを生成する。電流値18bは、揺動軸モータ14を駆動できる3相(U相、V相、W相)の電流である。電流値18bは揺動軸モータ14に供給される。
【0042】
電流指令18aは、揺動軸モータ14の電流値に依存する量であり、アームトルクに依存する量である。アームトルク検知部26は、電流指令18aに対して、AD変換、増幅、整流、実効値変換等の処理のうちの少なくとも1つの処理をしたのちに、終点検出部28に、アームトルク26aとして出力する。揺動軸モータ14には、モータの回転速度を検出するためのセンサ136が取り付けられている。回転速度を計測するセンサ136としては電磁式、ホール素子式、光式、誘導式等のセンサを用いることができる。センサ136は、検出したモータの回転速度138を終点検出部28に出力する。
【0043】
電流値18bは、揺動軸モータ14の電流値そのものであるとともに、アームトルクに依存する量である。アームトルク検知部26は、電流値18bから、揺動アーム110に加わるアームトルク26aを検知してもよい。アームトルク検知部26は、電流値18bを検出する際に、ホールセンサ等の電流センサを用いることができる。研磨テーブル30のテーブルトルクを検知するトルク検知部126も、アームトルク検知部26と同様に構成することができる。
【0044】
アームトルク法においては、揺動アームの揺動時に揺動モータが回転するため、揺動に起因してアームトルクが変化する。揺動軸モータ14を回転させるためのトルクの影響を除去して、研磨摩擦力にのみ起因するトルク変化を検出する必要がある。研磨摩擦力にのみ起因するトルク変化を検出する方法について以下説明する。図4は、トップリング31が揺動アーム110とともに揺動する様子を示す図である。本実施形態では揺動アーム110は、角度範囲58内で矢印60のように揺動する。ここで、角度範囲とは、揺動アーム110が旋回軸108を中心に揺動する時に、揺動アーム110が揺動する範囲の全体、又はその一部を角度(単位は度(°))で規定したものである。角度範囲58は本実施形態において、揺動アーム110が揺動する最大の角度範囲であり、かつ角度範囲58は一定である。すなわち揺動端62,64は研磨中、通常固定されている。揺動端62,64の位置を変えてもよい。揺動アーム110は角度範囲58において往復運動を行う。なお、研磨中に角度範囲58を大きくしたり、小さくしたりしてもよい。
【0045】
角度範囲58のうち揺動端62,64では、揺動方向を変えるために揺動アーム110の速度を変化させる。揺動アーム110に加速度が生じるため、揺動アーム110はオーバシュート、又はアンダーシュートが若干発生する。このように揺動端62、64では、揺動軸モータ14を回転させるためのトルクは一定ではなく、大きく変化する。揺動端62、64の近傍以外で、研磨摩擦力にのみ起因するトルク変化を検出することが好ましい。また、揺動中の特定領域では、ノイズが発生しやすい。そこで、本実施形態では、トルクが相対的に安定している特定の揺動角度範囲においてアームトルクを求めることとする
【0046】
図5は、トルクが相対的に安定している特定の揺動角度範囲の一例を示す図である。図5では、揺動アーム110が、角度範囲58の内側に位置する所定の角度範囲158で揺動しているときに、すなわち、角度範囲58全体で揺動している揺動アーム110が角度範囲158を通過するときに、アームトルク検知部26は揺動アーム110に加わるアームトルクを直接または間接に検知する。トルクが角度範囲158において安定している理由は、角度範囲58のうち揺動端62,64を含まない角度範囲58の内側であるからである。角度範囲158は例えば、角度範囲58の中心線128(図4参照)の前後の範囲である。角度範囲158の角度の大きさとしては、角度範囲58の角度の大きさを100%とすると、角度範囲158の角度の大きさは例えば50%である。終点検出部28は、アームトルク検知部26が検知したアームトルクに基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出する。
【0047】
図6は、トルクが相対的に安定している特定の揺動角度範囲の別の一例を示す図である。図6ではアームトルク検知部26は、揺動アーム110が所定の一方向120に揺動しているときに、角度範囲58の内側に位置する所定の角度範囲258でアームトルクを検知する。すなわち、角度範囲58全体で揺動している揺動アーム110が角度範囲258を一方向120に通過するときに、角度範囲258でアームトルクを検知する。アームトルクが所定の一方向120において安定している理由は、揺動アーム110の揺動方向が研磨テーブル30の回転方向と同じである(又は異なる)ためにアームトルクが安定するからである。すなわちアームトルクは、揺動アーム110の揺動方向が研磨テーブル30の回転方向と同じであるか、異なるかに応じて異なる。揺動アーム110が所定の一方向120に揺動しているときのアームトルクのみをモニタすると、研磨テーブル30の回転に起因するアームトルクの変化が減り、研磨パッド10と半導体ウェハ16との間の研磨摩擦力に起因するアームトルクの変化のみを検知しやすい。
【0048】
アームトルク検知部26は、揺動アーム110が所定の一方向120とは逆の所定の一方向122に揺動しているときに、角度範囲58の内側に位置する所定の角度範囲358でアームトルクを検知することとしてもよい。
【0049】
アームトルクは、揺動アーム110の揺動方向が研磨テーブル30の回転方向と同じであるか、異なるかによって変化するが、アームトルク検知部26は、揺動アーム110が両方向120,122に揺動しているときに所定の角度範囲258,358でアームトルクを検知することとしてもよい。すなわち、角度範囲58全体で揺動している揺動アーム110が角度範囲258を一方向120に、そして角度範囲258を一方向122に、通過するときに、角度範囲258、358でアームトルクを検知する。揺動アーム110の揺動方向が研磨テーブル30の回転方向と同じであるか、異なるかによるトルクの変化量が小さい場合があるからである。
【0050】
また両方向120,122でアームトルクを検知して、両方向120,122でのアームトルクの平均値を求めることも可能である。平均化により、研磨テーブル30の回転方向の違いに起因するアームトルクの変化を低減して、研磨パッド10と半導体ウェハ16との間の研磨摩擦力に起因するアームトルクの変化のみを検知することができる。
【0051】
図7は、トルクが相対的に安定している特定の揺動角度範囲のさらに別の一例を示す図である。アームトルク検知部26は、所定の角度範囲58内の所定の角度124においてアームトルクを検知することとしてもよい。ここで角度124は、角度範囲58の一方の端部(揺動端62)から測った角度である。角度124は角度範囲58内の1か所とは限らず、複数個所でもよい。複数個所でのアームトルクから平均化してアームトルクを算出
してもよい。
【0052】
所定の角度124は厳密に1つの角度、例えば4度という角度である必要はない。角度範囲58の角度の大きさを100%とすると、4度を中心に例えば1%に相当する角度範囲でもよい。また、揺動アーム110が両方向120,122に揺動しているときに、4度の位置に一方向120に回転して到達する時と、逆の一方向122に回転して到達する時がある。図6で説明した場合と同様に、4度の位置に一方向120に回転して到達する時のみを考慮してもよいし、逆の一方向122に回転して到達する時のみを考慮してもよい。両方向から4度に到達する時を考慮してもよい。
【0053】
アームトルクが所定の1つの角度124において安定する理由は、研磨テーブル30上における揺動アーム110の揺動位置が同じであるために、揺動アーム110が研磨テーブル30から受けるトルクが同じであると考えられるからである。従って、所定の角度124においてアームトルクの変化をモニタすると、研磨パッド10と半導体ウェハ16との間の研磨摩擦力に起因するアームトルクの変化のみを検知しやすいと考えられる。ただし、1つの角度124におけるアームトルクの変化のみで終点検知を行う場合、測定値に含まれるノイズの影響を受けやすく、ノイズを低減する必要がある。
【0054】
図5、6,7は、この順番でアームトルクを検知する角度範囲が狭くなっている。角度範囲が狭くなるにつれて、研磨テーブル30の回転による影響が減るため、研磨パッド10と半導体ウェハ16との間の研磨摩擦力に起因するアームトルクの変化のみを検知しやすい。しかし、角度範囲が狭くなるにつれて、検知できるアームトルクデータの数が減る。そのため、データ自体が有するノイズの影響が増えてくる。そのため、適切な角度範囲を選択する必要がある。
【0055】
一般的に、所定の角度範囲内でアームトルクを検知する場合、得られたアームトルクは通常、ノイズを含む。ノイズを低減するための1つの方法として平均化処理が行われる。平均化処理として時間平均する場合がある。例えば、検知された時系列データを複数個のデータについて移動平均してノイズを低減する。
【0056】
従って本実施形態において検知された時系列データを複数個のデータについて時間的に移動平均してもよい。別の方法として、検知された時系列データを揺動角度毎のデータに分類してから平均化してもよい。既述のように特定の1つの揺動角度におけるアームトルクの変化に着目した場合が、最も研磨テーブル30の回転と揺動アーム110の揺動との相互作用の影響を受けず、研磨パッド10と半導体ウェハ16との間の研磨摩擦力に起因するアームトルクの変化を示すと考えられるからである。
【0057】
時系列データを、そのまま平均化する場合、以下の問題もある。揺動アーム110はオーバシュート、又はアンダーシュートが若干発生する。また、揺動周期を一定にする制御は通常行われない。そのため揺動周期(揺動アーム110が所定の角度位置から1往復して当該角度位置に戻るまでの時間)は多少のばらつきが生じて、一定しない。時系列データを、そのまま平均化する場合、揺動周期が一定しないため、時間と角度位置との関係が一定しないため、揺動アーム110の角度位置が不明である。このために、最悪の場合、揺動の端部における誤差の多い測定値を利用することになり、研磨終点の精度が低下する。
【0058】
この点を図8により説明する。図8は揺動周期と特定の角度との関係を示す図である。図8の横軸は時間(秒:単位はsec)、縦軸はアームトルクの測定値(電圧:単位はV)である。黒丸は、図7に示す揺動端62でのアームトルクであり、白丸は、図7に示す角度124でのアームトルクである。揺動アーム110が一方の揺動端62から他方の揺
動端194に行き、次に揺動端194から揺動端62に戻ってくるまで1往復する時間132が揺動周期である。揺動アーム110が角度124から揺動端62まで移動する時間134は、図8に示すように一定ではない。
【0059】
従って時系列データを、そのまま平均化する場合、既述のように時間と角度位置との関係が一定しないため、揺動アーム110の角度位置が不明である。このために、最悪の場合、揺動の端部における誤差の多い測定値を利用することになる。従って、検知された時系列データを揺動角度毎のデータに分類してから平均化することが好ましい。以下の実施形態では、終点検出部28は、揺動アーム110の揺動角度を求め、揺動角度に対応するアームトルクを求める。
【0060】
アームトルク検知部26は、図5に示す所定の角度範囲158内の複数の角度においてアームトルクを検知し、終点検出部28は、揺動の少なくとも1周期について複数の角度において得られたアームトルクを平均化して、平均化して得られたアームトルクに基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出する。すなわち、検知された時系列データを揺動角度毎のデータに分類し、その後に平均化する。これは、別の表現をすると、角度位置でアームトルクを監視する、すなわち同じ角度位置でのアームトルクの変化に着目するということができる。または時系列データを揺動角度毎のデータに変換しているということができる。
【0061】
図9は、終点検出部28が行う処理を示すフローチャートである。終点検出部28は図5に示す所定の角度範囲158内に揺動アーム110があるときに、センサ136からモータ回転速度を電圧信号として取得する(ステップS10)。取得したモータ回転速度144の一例を図10に示す。図10(a)、10(b)において横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。図10(a)の一部140を、横軸方向に拡大したものが図10(b)である。図10(b)において縦軸方向には拡大していない。
【0062】
終点検出部28は、取得したモータ回転速度144からノイズを除去するために時間に関する移動平均をとる(ステップS12)。移動平均を取ったのちに、モータ回転速度144を積分して、モータ角度146を算出する(ステップS14)。モータ角度146が揺動アーム110の回転位置である。モータ角度146は本実施形態の場合、図5に示す角度範囲158内にある。積分して得られたモータ角度146の一例を図11に示す。図11(a)、11(b)において横軸は時間(sec)であり、縦軸は角度(degree)である。図11(a)の一部142を、横軸方向に拡大したものが図11(b)である。図11(b)において縦軸方向には拡大していない。
【0063】
終点検出部28は、図11(b)に示す角度範囲158においてのみアームトルク26aを取得して終点検出に用いる、またはすべての角度範囲58においてアームトルク26aを取得するが、角度範囲158において取得されたアームトルク26aのみを終点検出に用いる。同様に、アームトルク検知部26も角度範囲158においてのみアームトルク26aを取得する、またはすべての角度範囲58においてアームトルク26aを取得するが、角度範囲158において取得されたアームトルク26aのみを終点検出部28に出力してもよい。
【0064】
終点検出部28は、モータ回転速度を電圧信号として取得する(ステップS10)ことと並行して、図5に示す所定の角度範囲158内に揺動アーム110があるときに、アームトルク検知部26からトルク指令値26aを電圧信号として取得する(ステップS16)。取得したトルク指令値26aの一例を図12に示す。図12において横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。
【0065】
終点検出部28は、取得したトルク指令値26aから揺動アーム110の揺動周期を求めるために自己相関をとる(ステップS18)。自己相関を求める理由は、揺動周期を算出するためである。揺動周期がわかるということは、揺動の端部の時刻がわかるということである。なお揺動の端部でトルク指令値26aはピーク値を取るため、ピーク値を検出することにより、揺動周期がわかる場合もある。しかし、トルク指令値26aのピーク値が明確でなく、従って周期が明確に検知できない場合があるからである。信号がノイズを含む場合、一般的に自己相関を求める方法の方が確実に周期を検出できる。揺動の端部の時刻がわかると、トルク指令値26aの移動平均をとるときに、揺動の端部付近における移動平均、又は揺動の端部をまたがる移動平均を実施することが防止できる。揺動の端部付近における移動平均、又は揺動の端部をまたがる移動平均は既述のように好ましくないからである。
【0066】
次に、終点検出部28は、取得したトルク指令値26aからノイズを除去するために時間に関する移動平均をとる(ステップS20)。このときに、揺動の端部付近における移動平均、又は揺動の端部をまたがる移動平均は行わない。図13に移動平均後のトルク指令値196を示す。図13において横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。
【0067】
終点検出部28は、モータ角度とトルク指令値を得ると、これらのデータから、揺動アーム110の揺動角度と、その角度に対応するトルク指令値を求めて、トルク指令値を角度毎のトルク指令値に分割する(ステップS22)。「分割」という用語を用いている理由は、本実施形態では揺動角度について、図5に示す角度範囲158を100分割しているためである。角度に対応するトルク指令値を求める方法は、モータ角度は揺動アーム110の揺動角度であることと、モータ角度を取得した時刻に取得したトルク指令値が、揺動アーム110の揺動角度に対応するトルク指令値であることから、揺動角度に対応するトルク指令値を求めることができる。
【0068】
図14にトルク指令値を角度毎のトルク指令値に分割した図を示す。1個の丸印152が、100分割された1個の角度におけるトルク指令値を表す。図14において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。縦方向に1列分のデータ150が、揺動アーム110が1往復する間、かつ角度範囲158内で取得されたトルク指令値である。ただし、縦方向に1列分のデータ150は、取得された時間がそれぞれ異なるために厳密に同一の時間軸上にあるわけではない。それぞれのデータは、それぞれのデータが取得された時間に対応した時間軸上の位置に配置されている。この点は、以下の図15,16についても同様である。
【0069】
縦方向に1列分のデータ150のうち、最上部付近のデータ160は、図5に示す角度範囲158の端部164、166付近のいずれかにおいて取得されたデータである。縦方向に1列分のデータ150のうち、最下部付近のデータ162は、図5に示す角度範囲158の164、166付近のいずれかにおいて取得されたデータである。この点は、以下の図15,16についても同様である。角度範囲158の端部164、166においては、端部164と端部166との間と比較して、アームトルクが大きいまたは小さいため、図14に示すような分布となる。角度範囲158の端部164、166においては、端部164と端部166との間と比較して、アームトルクが大きいまたは小さいことは、図12,13からわかる。
【0070】
次に、終点検出部28は、100分割されたトルク指令値の間のトルク指令値を求めるために、100分割されたトルク指令値の、時間的に隣接するトルク指令値の間のトルク指令値を、データ補間により求める(ステップS24)。データ補間の方法としては、線形補間や、2次関数による補間等が可能である。補間により得られたトルク指令値を図1
5に示す。図15において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。1本の横線154が、100分割された1個の角度におけるトルク指令値を表す。補間されたデータは、図15には図示していない。図15では、同じ角度である隣接する横線154の端部同士を直線で結んでいる。
【0071】
補間後、終点検出部28は、ノイズ除去のために移動平均を行う(ステップS26)。移動平均により得られたトルク指令値を図16に示す。図16において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。1個の点156が、100分割された1個の角度における移動平均後のトルク指令値を表す。補間されたデータは、図16には図示していない。図15では、同じ角度である隣接する点16同士を接続することはしていない。このため、図15において横方向に連続した1本の線のように見えるものは、孤立した点156が連続するように見えるものである。
【0072】
図14~16から、特に図16から以下のことがわかる。図16に顕著に表れているが、横方向に線状に伸びる複数の同一曲線を上下方向に並べたように見える。別の表現をすると、複数の横縞模様が上下方向に並んでいるように見える。例えば、最上部のデータ160同士、最下部のデータ162同士、最上部のデータ160と最下部のデータ162との間にあるデータ同士は、それぞれ1本の縞を構成しているように見える。実際は1本の縞は、複数の点156からなり、点156は連続しているわけではない。しかし、1本の縞に見えるということは、各揺動角度毎のアームトルクは研磨中、揺動アーム110が揺動しているにも関わらず、比較的緩やかな変化をするということを図16は示す。そして、研磨終了頃168,172にアームトルクは大きく変化するということも図16は示す。
【0073】
図9のフローチャートに戻ると、終点検出部28は、移動平均を求めた(ステップS26)後に、各揺動周期毎(時間毎)の平均値を算出する(ステップS28)。これは、図16に示す縦方向に1列分のデータ150について平均値を算出することである。得られた平均化されたトルク指令値174を図17に示す。図17において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。トルク指令値174は各揺動周期毎(時間毎)の平均値であるために、時間的に不連続に算出される。図17に示すトルク指令値174は、時間的に不連続なトルク指令値174を直線で結んで得られた折れ線グラフである。
【0074】
終点検出部28は次に、トルク指令値174の、時間に関する移動平均を求める(ステップS30)。移動平均によって得られたトルク指令値176を図18に示す。図18において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)である。
【0075】
終点検出部28は次に、トルク指令値176の微分を求める(ステップS32)。終点検出部28は次に、微分されたトルク指令値176の、時間に関する移動平均を求める(ステップS34)。移動平均によって得られた微分値178を図19に示す。図19において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電圧(V)/時間(分)である。
【0076】
終点検出部28は、次に微分値178から研磨終点に達したかどうかを判定する。これは微分値178が研磨終点の検出のための所定の検出条件を満たすかどうかによって判定する(ステップS36)。所定の検出条件は例えば、微分値178が所定の値よりも大きいかどうかである。所定の検出条件は、これに限られるものではない。所定の検出条件は例えば、図18に示すトルク指令値176が所定値よりも大きいかどうかでもよい。
【0077】
終点検出部28は、図19の微分値178、又は図18のトルク指令値176が研磨終点の検出のための所定の検出条件を満たすと判断した場合は研磨終点を検出したと判断する(ステップS38)。この時、研磨は終了する。一方、終点検出部28は、微分値17
8が研磨終点の検出のための所定の検出条件を満たさないと判断した場合は、研磨終点の検出を続行するためにステップS10,S16に戻る。
【0078】
以上の実施形態では、研磨装置は、研磨パッドのドレッシングを行うパッドドレッサー33を有するが、揺動アーム110が研磨のために揺動しているときに、パッドドレッサー33はドレッシングを行っていないとした。しかし、揺動アーム110が研磨のために揺動しているときに、パッドドレッサー33がドレッシングを行ってもよい。
【0079】
揺動アーム110が研磨のために揺動しているときに、パッドドレッサー33がドレッシングを行うと、アームトルクの検出に悪影響を与える可能性がある。パッドドレッサー33がドレッシングを行うと、アームトルクの検出に悪影響を与えるかどうかについて実験をした結果を図20~22に示す。図20~22に示す実験によると、ドレッシングは研磨テーブル30のモータ52の電流に対しては大きな影響を与えるが、アームトルクに対しては影響が極めて少ないことが確認された。
【0080】
図20は、研磨テーブル30を駆動するモータ52の電流180と、アームトルク182を示す。図20において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電流(A)である。図20には、パッドドレッサー33がドレッシングのために、研磨パッド10上の所定の領域を1往復する時に要する1周期の時間184も示す。パッドドレッサー33が研磨パッド10上の所定の領域を往復している時のパッドドレッサー33の位置186を図21に示す。図21において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は距離(mm)である。位置186は、研磨パッド10上の所定の基準点から測定したパッドドレッサー33の位置である。
【0081】
図22に、アームトルク182を微分した値188と、電流180を微分した値190を示す。図22において、横軸は時間(sec)であり、縦軸は電流(A)/時間(分)である。図20,22からモータ52の電流180は、パッドドレッサー33の揺動運動に同期したノイズが現れることがわかる。一方、アームトルク182には、パッドドレッサー33の揺動運動に同期したノイズが現れないことがわかる。従って、揺動アーム110が研磨のために揺動しているときに、パッドドレッサー33がドレッシングを行っても、アームトルク182を精度良く検出することができる。
【0082】
なお、アームトルクの検知方法は、揺動アーム110を駆動する揺動軸モータ揺動軸モータ14の電流をモニタする方法以外も可能である。例えば、揺動アーム110に、揺動アーム110のトルク変動を検出するトルクセンサを接着等により配置してもよい。トルクセンサとしては、ロードセルやヒズミゲージを用いることができる。
【0083】
研磨パッド10と、研磨パッド10に対向して配置される半導体ウェハ16との間で研磨を行う研磨方法について次に説明する。図1に示す研磨装置34を用いた研磨方法では、研磨パッド10を研磨テーブル30に保持し、揺動アーム110が、半導体ウェハ16を保持するトップリング31を保持する。揺動軸モータ14が揺動アーム110を揺動する。揺動アーム110が所定の角度範囲158で揺動しているときに、アームトルク検知部26が、揺動アーム110に加わるアームトルク26aを直接または間接に検知する。終点検出部28は、検知したアームトルク26aに基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出する。
【0084】
なお本発明の実施形態の動作は、以下のソフトおよび/またはシステムを用いて行うことも可能である。例えば、システム(研磨装置)は、全体を制御するメインコントローラ(制御部)と、各部(駆動部、保持部、終点検出部)の動作を制御する複数のサブコントローラとを有する。メインコントローラおよびサブコントローラは、それぞれ、CPU,
メモリ、記録媒体と、各部を動作させるために記録媒体に格納されたソフトウェア(プログラム)を有する。本発明の実施形態の研磨方法、例えば、終点検出部が実行する「検知したアームトルク26aに基づいて、研磨の終了を示す研磨終点を検出する方法」はソフトウェア(プログラム)によって実行することもできる。
【0085】
以上、本発明の実施形態の例について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10…研磨パッド
14…揺動軸モータ
16…半導体ウェハ
26…アームトルク検知部
28…終点検出部
30…研磨テーブル
31…トップリング
33…パッドドレッサー
34…研磨装置
50…渦電流センサ
52…モータ
56…電流センサ
58…角度範囲
110…揺動アーム
111…トップリングシャフト
117…揺動アームシャフト
120…一方向
122…一方向
124…角度
126…トルク検知部
158…角度範囲
174、176…トルク指令値
180…電流
182…アームトルク
184…時間
18a…電流指令
258…角度範囲
26a…トルク指令値
358…角度範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22