(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】埋込可能なグルコースモニタ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20241206BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241206BHJP
A61B 5/07 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/00 N
A61B5/07 100
(21)【出願番号】P 2020527947
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081303
(87)【国際公開番号】W WO2019101611
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-18
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クレム
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】松本 隆彦
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0011671(US,A1)
【文献】特開2013-126509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0016535(US,A1)
【文献】特表2013-509944(JP,A)
【文献】米国特許第4704029(US,A)
【文献】特表平11-508792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0160749(US,A1)
【文献】特表2016-502420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込まれたときに体液のグルコース濃度を測定するための埋込可能デバイスであって:
光をハウジングの内側から該埋込可能デバイスのハウジングの光透過部へ向けて放射するように構成された第1の光源;および
該第1の光源からハウジングの光透過部を通って戻った光を検出するように、かつ検出された光に基づく第1の電気信号を出力するように構成された第1の光学センサ;
を含むグルコース測定ユニットと:
外部無線通信デバイスと無線で通信するように構成された無線通信モジュールと;
を含むハウジングを含み:
第1の光源から放射された光は直線偏光され、光透過部を通してハウジングの外側の第1の領域へ放射され、
第1の光学センサは、ハウジングの外側の第1の領域から光透過部を通って戻った、旋光した直線偏光を検出するように構成され
第1の光学センサは、検出された旋光した光に基づく第1の電気信号を出力するように構成され、
該埋込可能デバイスは、さらに、
第1の光源から放射された光を第1の面に直線偏光するように配置された第1の直線偏光子と;
ハウジングの外側の第1の領域からの光を、第1の面と実質的に直交する第2の面に直線偏光するように配置された第2の直線偏光子と;
ハウジングの外側の第1の領域からの光を、第1の面と平行である第3の面に直線偏光するように配置された第3の直線偏光子とを含み、
グルコース測定ユニットはさらに、光透過部を通って戻った光を検出するように、かつ検出された光に基づく第2の電気信号を出力するように構成された第2の光学センサを含み;
第2の直線偏光子は、第1の光源からハウジングの外側の第1の領域へ放射された直線偏光の第1の部分が第2の直線偏光子に入射するように配置され、
第3の直線偏光子は、第1の光源からハウジングの外側の第1の領域へ放射された直線
偏光の第2の部分が第3の直線偏光子に入射するように配置され、
第1の光学センサは、ハウジングの外側の第1の領域から第2の直線偏光子を通過する直線偏光の第1の部分を検出するように配置され、
第2の光学センサは、ハウジングの外側の第1の領域から第3の直線偏光子を通過する直線偏光の第2の部分を検出するように配置され、
該埋込可能デバイスは干渉の影響を低減あるいは除去するために第1の電気信号と第2の電気信号とを処理するように構成され、そして、
無線通信モジュールは
、第1の電気信号
と第2の電気信号とに基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信するように構成される、前記埋込可能デバイス。
【請求項2】
無線通信モジュールは、電力を外部無線通信デバイスから無線で受けるように構成される、請求項1に記載の埋込可能デバイス。
【請求項3】
埋込可能デバイスは、人間の血管の中に埋込可能なように寸法設定される、請求項1または2に記載の埋込可能デバイス。
【請求項4】
ハウジングの外面は凹部を含み、この凹部は光透過部の少なくとも一部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の埋込可能デバイス。
【請求項5】
埋込可能デバイスはさらに、第1の光源からハウジングの外側の1つの点へ向けて放射される光を集束するように構成された少なくとも1つのレンズを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の埋込可能デバイス。
【請求項6】
埋込可能デバイスはさらに温度センサを含み、無線通信モジュールは、温度センサによって測定された温度に基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信するように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の埋込可能デバイス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の埋込可能デバイスと、外部無線通信デバイスとを含むシステムであって、埋込可能デバイスの無線通信モジュールは、処理された第1の電気信号と処理された第2の電気信号とに基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信するように構成される、前記システム。
【請求項8】
外部無線通信デバイスはスマートフォンである、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
グルコース濃度を測定し通信する方法であって:
請求項1~6のいずれか1項に記載の埋込可能デバイスの第1の光源が光を埋込可能デバイスのハウジングの光透過部へ向けて放射すること;
埋込可能デバイスの第1の光学センサが第1の光源から透過部を通って戻った光を検出すること;
埋込可能デバイスの第2の光学センサが第1の光源から透過部を通って戻った光を検出すること;
第1の光学センサが第1の光学センサによって検出された光に基づく第1の電気信号を出力すること;
第2の光学センサが第2の光学センサによって検出された光に基づく第2の電気信号を出力すること;
埋込可能デバイスは干渉の影響を低減あるいは除去するために第1の電気信号と第2の電気信号とを処理すること;そして、
埋込可能デバイスの無線通信モジュール
が第1の電気信号
と第2の電気信号とに基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋め込まれたときに体液のグルコース濃度を測定するための埋込可能デバイス、埋込可能デバイスを含むシステム、およびグルコース濃度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インスリン治療では一般に、糖尿病患者から血糖測定値を繰り返し取得する必要があることが多い。タイプI糖尿病の糖尿病患者は、血糖を1日に5~9回測定することがあるが、妊娠性糖尿病の患者は、毎日最大で11回測定することがある。
【0003】
知られている血糖試験法は、ランセットを使用して患者から血液試料を採取することを含む。ランセットを使用する血液採取は、特に高い試験頻度が必要とされる場合には、糖尿病患者にとって苦痛であり不快なことがある。1つの皮膚部位からの血液採取が繰り返されると、傷跡もしくは胼胝が形成されたり、または神経密度が高くなったりすることになり、ひいては血液を採取することが困難になる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、埋め込まれたときに体液のグルコース濃度を測定するための埋込可能デバイスが提供され、この埋込可能デバイスは:光をデバイスのハウジングの光透過部へ向けて放射するように構成された第1の光源、および第1の光源から光透過部を通って戻った光を検出するように、かつ検出された光に基づく第1の電気信号を出力するように構成された第1の光学センサを含むグルコース測定ユニットと;外部無線通信デバイスと無線で通信するように構成された無線通信モジュールとを含み、無線通信モジュールは、第1の電気信号に基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信するように構成される。埋込可能デバイスは、デバイスが埋め込まれた患者のグルコースレベルの連続遠隔監視を可能にし、ランセットまたは同様のデバイスを使用して血液試料を採取する必要がない。
【0005】
無線通信モジュールは、電力を外部無線通信デバイスから無線で受けるように構成される。この構成は、非再充電可能電池などの内部電源を交換する必要がない埋込可能デバイスを提供するという点で有利である。したがって、埋込可能デバイスは、長期間にわたってグルコースレベルを監視するために繰り返し使用することができ、電池切れの故にデバイスを交換する必要がない。いくつかの例では、デバイスは電池などの再充電可能電源を含むことができ、この電源は、無線通信モジュールで受けた電力によって再充電される。
【0006】
埋込可能デバイスは、人間の血管、または血液などの体液で十分に灌流される組織の中に埋込可能なように寸法設定される。このような埋込可能デバイスは、患者の血糖の正確な測定を可能にするので有利である。
【0007】
ハウジングの外面は凹部を含むことができ、この凹部は光透過部の少なくとも一部を含む。この凹部は、埋込可能デバイスのまわりの血液または間質液などの体液を動きやすくして、デバイスのまわりの体液が停滞しないことを確実にし、それゆえにより正確なグルコース読み取り値をもたらすことができるという点で有利である。いくつかの例では、ハウジングの外面は、やはり埋込可能デバイスのまわりの体液を動きやすくするための、1つまたはそれ以上の突起を含み得る。いくつかの例では、凹部は、ハウジングの1つまたはそれ以上の突起から形成される。凹部が存在することは、本明細書では様々な実施形態の他の機能と併せて説明されることがあるが、この凹部が存在することは必須ではない。
【0008】
埋込可能デバイスはさらに、第1の光源からハウジングの外側の1つの点へ向けて放射される光を集束するように構成された少なくとも1つのレンズを含み得る。このレンズは、環境光などの外部光源からの干渉を低減しながら、ハウジングを取り囲む体液中のグルコース濃度の正確な測定を可能にする。
【0009】
第1の光源から放射された光は直線偏光され、光透過部を通してハウジングの外側の第1の領域へ放射される。第1の光学センサは、ハウジングの外側の第1の領域から光透過部を通って戻った、旋光した直線偏光を検出するように構成される。第1の光学センサはさらに、検出された旋光した光に基づく第1の電気信号を出力するように構成される。この構成は、体液のグルコース濃度を測定するための簡単な配置をもたらす。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、埋込可能デバイスはさらに、第1の光源から放射された光を第1の面に直線偏光するように配置された第1の直線偏光子と、ハウジングの外側の第1の領域からの光を、第1の面と実質的に直交する第2の面に直線偏光するように配置された第2の直線偏光子と、ハウジングの外側の第1の領域からの光を、第1の面と平行である第3の面に直線偏光するように配置された第3の直線偏光子とを含み得る。グルコース測定ユニットはさらに、光透過部を通って戻った光を検出するように、かつ検出された光に基づく第2の電気信号を出力するように構成された第2の光学センサを含み得る。第2の直線偏光子は、第1の光源からハウジングの外側の第1の領域へ放射された直線偏光の第1の部分が第2の直線偏光子に入射するように配置される。第3の直線偏光子は、第1の光源からハウジングの外側の第1の領域へ放射された直線偏光の第2の部分が第3の直線偏光子に入射するように配置される。第1の光学センサは、ハウジングの外側の第1の領域から第2の直線偏光子を通過する直線偏光の第1の部分を検出するように配置され、第2の光学センサは、ハウジングの外側の第1の領域から第3の直線偏光子を通過する直線偏光の第2の部分を検出するように配置される。この配置は、体液中のグルコース濃度を干渉が抑制された状態で決定するための簡単な手段をもたらす。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、埋込可能デバイスはさらに、光をハウジングの外側の第2の領域へ光透過部を通して放射するように構成された第2の光源と、光透過部を通って戻った光を検出するように、かつ検出された光に基づく第2の電気信号を出力するように構成された第2の光学センサとを含み得る。埋込可能デバイスはさらに、第1の光源から放射された光を第1の面に直線偏光するように配置された第1の直線偏光子と、ハウジングの外側の第1の領域からの光を、第1の面と実質的に直交する第2の面に直線偏光するように配置された第2の直線偏光子と、第2の光源から放射された光を第3の面に直線偏光するように配置された第3の直線偏光子と、ハウジングの外側の第2の領域からの光を第4の面に直線偏光するように配置された第4の直線偏光子とを含むことができ、第4の面は第3の面と平行である。第2の直線偏光子は、第1の光源からハウジングの外側の第1の領域へ放射された直線偏光の少なくとも一部が第2の直線偏光子に入射するように配置される。第4の直線偏光子は、第2の光源からハウジングの外側の第2の領域へ放射された直線偏光の少なくとも一部が第4の直線偏光子に入射するように配置される。第1の光学センサは、第1の光源から放射され第2の直線偏光子を通った直線偏光の少なくとも一部を検出できるように構成される。第2の光学センサは、第2の光源から放射され第4の直線偏光子を通った直線偏光の少なくとも一部を検出できるように構成される。この配置は、体液中のグルコース濃度を干渉が抑制された状態で決定するための簡単な手段をもたらす。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、グルコース測定ユニットは屈折計である。この配置は、体液中のグルコース濃度を決定するための簡単な手段をもたらす。
【0013】
屈折計はプリズムを含むことができ、第1の光源およびプリズムは、第1の光源から放射された光がプリズムを通ってプリズムの表面に入射するように配置され、第1の光学センサは、プリズムを通ってプリズムの表面で反射される、第1の光源から放射された光の一部を検出するように配置される。この配置は、体液中のグルコース濃度を決定するための特に簡単な手段をもたらす。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、グルコース測定ユニットは赤外分光計であり、第1の光源によって放射される光は赤外光であり、光透過部を通してハウジングの外側の領域へ放射され、第1の光学センサは、第1の光源からハウジング10の外側の領域を経由し光透過部を通って戻った赤外光を検出するように、かつ検出された赤外光に基づく第1の電気信号を出力するように構成される。この配置は、体液中のグルコース濃度を干渉が抑制された状態で決定するための簡単な手段をもたらす。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、埋込可能デバイスはさらに温度センサを含み、無線通信モジュールは、温度センサによって測定された温度に基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信するように構成される。この配置は、グルコース監視ユニットの出力を処理してグルコース濃度を決定するときに温度の影響が簡単に考慮に入れられ、それによって、より正確なグルコース濃度の値がもたらされることが可能になる。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、体液のグルコース濃度を測定するための埋込可能デバイスが提供され、このデバイスは:埋込可能デバイスが体液に取り囲まれているときに、少なくとも埋込可能デバイスと体液の間の境界面に光を放射するように構成された光源;および、埋込可能デバイスが体液に取り囲まれているときに、光源から境界面を通して放射された光の少なくとも一部を検出するように、かつ検出された光に基づく電気信号を出力するように構成された光学センサを含むグルコース測定ユニットと;外部無線通信デバイスと無線で通信するように構成された無線通信モジュールと;を含むハウジングを含み、
無線通信モジュールは、電気信号に基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信するように構成される。
【0017】
本開示の別の態様によれば、上述の埋込可能デバイス、および外部無線通信デバイスを含むシステムが提供され、埋込可能デバイスの無線通信モジュールは、第1の電気信号に基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信するように構成される。このシステムは、体液のグルコース濃度の簡単で目立たない測定を可能にする。
【0018】
外部無線通信デバイスはスマートフォンとすることができる。スマートフォンは、無線で埋込可能デバイスと通信するための特に簡単な手段である。
【0019】
本開示の別の態様によれば、埋め込まれたときに体液のグルコース濃度を測定する埋込可能デバイスの第1の光源によって、光を埋込可能デバイスのハウジングの光透過部へ向けて放射すること;埋込可能デバイスの第1の光学センサによって、第1の光源から透過部を通って戻った光を検出すること;第1の光学センサによって、検出された光に基づく第1の電気信号を出力すること;および埋込可能デバイスの無線通信モジュールによって、第1の電気信号に基づく信号を外部無線通信デバイスへ無線で送信することを含む方法が提供される。この方法は、体液のグルコース濃度の簡単で目立たない測定を可能にする。
【0020】
本開示の様々な態様の上記ならびに他の利点は、以下で説明する実施形態から明らかになろう。
【0021】
本開示の例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本開示の実施形態による埋込可能デバイスの前面図である。
【
図1B】本開示の実施形態による、凹部を有する埋込可能デバイスの前面図である。
【
図2】本開示の実施形態による埋込可能デバイスの概略断面図である。
【
図3】本開示の実施形態による埋込可能デバイスの一部の概略断面図である。
【
図4】本開示の実施形態による埋込可能デバイスの一部の概略断面図である。
【
図5】本開示の実施形態による埋込可能デバイスの一部の概略断面図である。
【
図6】本開示の実施形態による、反射率計を含む埋込可能デバイスの一部の概略断面図である。
【
図7】本開示の実施形態による、赤外分光計を含む埋込可能デバイスの一部の概略断面図である。
【
図8】本開示の実施形態による、埋込可能デバイスおよび外部無線通信デバイスを含むシステムの概略断面図であり、埋込可能デバイスが血管の中に埋め込まれている。
【
図9】本開示の態様による、体液のグルコース濃度を決定するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付の図面に例が示されている本開示の実施形態を詳細に参照する。同じ参照番号は全体を通して同じ要素を指す。
【0024】
埋め込まれたときに体液のグルコース濃度を測定する埋込可能デバイスが提供される。埋込可能デバイスおよび外部無線通信デバイスを含むシステムと、埋込可能デバイスおよび外部無線通信デバイスを使用してグルコース濃度を測定する方法とがさらに提供される。
【0025】
上述の体液は、グルコースを含む人間または動物体内の流体であり、グルコース濃度がインスリン治療のために測定される。体液は好ましくは血液であるが、別法または追加として間質液でもよい。血液は一般に、グルコース濃度の変化に対する応答性が間質液よりも高いので、人間または動物の間質液ではなく血液中のグルコース濃度を測定することが好ましい。
【0026】
図1は、本開示のいくつかの態様による埋込可能デバイス1を示す。埋込可能デバイス1はハウジング10を有し、埋込可能デバイス1の他の構成要素がハウジング10の内側にある。
【0027】
ハウジング10は、1つまたはそれ以上の波長の光を光透過部12の一方の側から別の側へ通過させる光透過部12を有する。したがって、光はハウジング10の外側からハウジング10の内側へと光透過部12を通って進むことができ、逆も同様である。ハウジング10の個別領域または窓は、
図1Aに示されるように、光透過部12を含み得る。あるいは、ハウジング10全体が光を透過してもよい。いくつかの例では、光透過部12は、ハウジング10の複数の個別領域を含み、これらの個別領域は、ハウジング10の光学的に不透明な部分によって分離されている。
【0028】
ハウジング10は、好ましくはガラスなどの生体適合性材料で作られ、そのため、埋込可能デバイス1は人間または動物に安全に埋め込むことができる。ハウジング10にガラスを使用することは、ガラスが光を通し、それゆえにハウジング10および光透過部12を同じ材料から単一の工程で形成できるという点で有利である。
【0029】
埋込可能デバイス1は、人間または動物体内の皮下に埋め込み予定のものである。好ましくは、埋込可能デバイス1は、人間または動物の血管の中に埋め込まれて、前記人間または動物の血液のグルコース濃度を測定することが可能になる。この場合、測定される特定の体液は血液になる。
【0030】
いくつかの実施形態では、埋込可能デバイス1は、動脈または静脈などの人間の血管の中に埋込可能なように寸法設定される。たとえば、デバイスは、1つの軸に沿って約5mm未満、好ましくは約3mm未満、より好ましくは約1.35~2mmの最大幅wを有し得る。
【0031】
いくつかの例では、構成された埋込可能デバイス1は、血液などの体液で十分に灌流される組織の中に埋め込まれる。たとえば、埋込可能デバイス1は、人間または動物の間質液の中に、たとえば皮膚のすぐ下に埋め込まれる。この場合、測定される特定の体液は間質液である。
【0032】
埋込可能デバイス1が埋め込まれた後、体液がハウジング10の光透過部12と接触する。埋込可能デバイス1が血管に埋め込まれた場合には、血液が光透過部12に接触する。埋込可能デバイス1が間質液中に埋め込まれた場合には、間質液が光透過部12に接触している。
【0033】
図1Bは、
図1Aの埋込可能デバイス1と同様の埋込可能デバイス1を示すが、ハウジング10の外面11は凹部14を含む。
図1Cは、
図1Bの埋込可能デバイスの、凹部14の側面視を示す側面図を示す。
【0034】
図1Cに示されるように、凹部14は、第1の側壁15、第2の側壁16、および底面17を含み得る。
【0035】
凹部14は、ハウジング10の外面11の溝とすることができる。別の実施形態では、凹部14は、埋込可能デバイス1の一方の側から埋込可能デバイス1の別の側へ体液が流れ得る導管または管でもよい。たとえば、導管は、ハウジング10の一方の側からハウジング10の反対側へ延びることがある。凹部14は、埋込可能デバイス1が埋め込まれているとき体液で充填される。
【0036】
凹部14をハウジング10に設けると、デバイスが埋め込まれたときに、埋込可能デバイス1の周囲の体液を動きやすくすることができる。こうすることは、埋込可能デバイス1が血管の中に埋め込まれた場合に、凹部は、埋込可能デバイス1の周囲または中を血液が容易に流れることを可能にすることがあるので、特に有利になり得る。そのため、血管を流れる血液が埋込デバイス1によって妨げられることが少ない。
【0037】
いくつかの例では、ハウジング10は、外面11に配置された1つまたはそれ以上の突起(図示せず)を含むことがある。1つまたはそれ以上の突起は、埋込可能デバイス1を人間または動物の体内の固定位置に、前記体内に埋め込まれた後に保持するように構成される。埋込可能デバイス1が血管の中に埋め込まれる場合、1つまたはそれ以上の突起は、血管の内壁に圧力をかけることによって埋込可能デバイス1を血管内の固定位置に保持するように構成される。
【0038】
図1Bおよび
図1Cに示された光透過部12は、ハウジング10の個別領域に、この場合には凹部14内全体に、含まれる。しかし、光透過部12は、この配置に限定されず、ハウジング10の別の部分に設置することができ、または、ハウジング10の全体を含み得る。
【0039】
図2は、本開示の実施形態による埋込可能デバイス1の概略断面図である。
【0040】
埋込可能デバイス1は、無線通信モジュール20、グルコース測定ユニット30、および光透過部12を有するハウジング10を含む。
【0041】
無線通信モジュール20は、好ましくは近距離無線通信(NFC)を使用して外部無線通信デバイス2(
図8に示す)と無線で通信するように構成されるが、無線通信の他の形態を使用することもできる。
【0042】
無線通信モジュール20は、好ましくは、電磁誘導によって外部無線通信デバイス2から電力を無線で受けるように構成される。
【0043】
無線通信モジュール20は、アンテナ22と、コンデンサまたは再充電可能電池などのエネルギー収納ユニット24と、集積回路などの制御ユニット26とを含む。アンテナ22は、無線信号を送受信するように構成されており、アンテナによる無線信号の送信が制御ユニット26によって制御される。エネルギー収納ユニット24は、外部無線通信デバイス2からアンテナ22を介して受けた電気エネルギーを収納する。制御ユニット26は、制御ユニット26によって実行予定の命令、および/またはグルコース測定ユニット30によって行われた測定に関連するデータを収納するためのメモリユニット(図示せず)を含み得る。制御ユニット26は、本明細書に記載のグルコース測定ユニット30の1つまたはそれ以上の動作を制御することができ、また本明細書に記載の、埋込可能デバイス1に関して本明細書に記載の方法ステップのいずれも実行することができる。
【0044】
グルコース測定ユニット30は、光源32および光学センサ34を含む。光源32は、1つまたはそれ以上の発光ダイオード(LED)を含むことができ、光をハウジング10の光透過部12に向けて、すなわちハウジング10の内側からハウジング10の外側へ放射するように構成される。光源32は、好ましくはエネルギー収納ユニット24によって電力供給され、制御ユニット26によって制御される。
【0045】
光センサとしても知られている光学センサ34は、受けた光を電気信号に変換することによって光を検出する。したがって光学センサ34は、検出光に基づく電気信号を出力する。光学センサ34は、フォトダイオードなどの1つまたはそれ以上の光検出器を含み得る。光学センサ34は、特定の波長、またはある範囲の波長を有する光を検出することができる。光学センサ34は可変とすることができる。すなわち、光学センサ34によって検出される特定の波長または波長の範囲は、可変とすることができる。このような光学センサ34によって検出されるこの波長は、光学センサ34に加えられる電圧を変えることによって選択される。
【0046】
光学センサ34は、ハウジング10の光透過部12を通って戻った光を検出するように、かつ検出された光に基づく電気信号を出力するように構成される。言い換えると、光学センサ34は、光源32によってハウジング10の内側からハウジング10の光透過部12に放射された、かつ光透過部12を通ってハウジング10の内側に戻った光を検出するように構成される。
【0047】
戻った光は、光源32から光透過部12を通過してハウジング10の外側の領域まで移動してから、光学センサ34によって光が検出されるハウジング10の内側へ、光透過部12を通過して戻ることができる。別の例では、戻った光は、光源32から光透過部12を通過して移動してから、光透過部12の表面で内部反射され、光学センサ34によって光が検出されるハウジング10の内側へ、光透過部12を通過して戻る。光が内部反射される光透過部12の表面は、ハウジング10の外面11の一部を形成し、埋込可能デバイス1が埋め込まれているときに体液と接触している。
【0048】
無線通信モジュール20は、光学センサによって出力された電気信号に基づく信号を外部無線通信デバイス2へ無線で送信するように構成される。言い換えると、無線通信モジュール20は、光学センサ34によって検出された光に対応する信号を、これが光の強度、光の旋光度、または光の屈折量のいずれに対応するものであるにせよ、送信するように構成される。そのため、この信号は、埋込可能デバイス1の付近の体液のグルコース濃度に対応するものでもある。
【0049】
無線通信モジュール20によって外部無線通信デバイス2へ送信された無線信号は、外部無線通信デバイス2、または別の装置によって処理されて、埋込可能デバイス1によって測定されている体液のグルコース濃度に依存する、グルコース濃度の値などの出力がもたらされる。埋込可能デバイス1は、ランセットを使用する標準的な血糖試験を最初に行うことによって較正される。
【0050】
いくつかの実施形態では、埋込可能デバイス1はさらに、
図2に示された温度センサ39を含む。温度センサ39は、好ましくはグルコース測定ユニット30に隣接して、またはその付近に設置されるが、埋込可能デバイス1内の、温度を測定するのに望ましいどこにでも設置することができる。無線通信モジュール20は、温度センサ39によって測定された温度に基づく信号を外部無線通信デバイス2へ無線で送信するように構成される。この信号は、光学センサ34によって出力された信号に基づく上述の信号の一部であっても、または別の信号であってもよい。
【0051】
本明細書に記載のグルコース測定ユニット30によって行われる測定および動作は、温度に依存する。温度センサ39を設けることおよび温度測定値を取得することによって、埋込可能デバイス1によって得られた測定値を処理または解釈する場合に温度を考慮に入れることができる。しかし、温度センサ39は任意選択である。その理由は、温度は埋込可能デバイス1の一部を形成していないデバイスを使用して測定することができ、あるいは見積もることができるからである(たとえば、人体内の温度は37℃であると仮定することができる)。
【0052】
体液などの流体のいくつかの光学特性は、流体中のグルコース濃度によって変化する。これらの光学特性には、流体の比旋光度(特定の距離にわたって流体を通過する直線偏光の回転角)、流体の屈折率、および流体の赤外吸収スペクトルが含まれる。本開示のいくつかの態様によれば、これらの特性のうちの1つまたはそれ以上が、埋込可能デバイスによって直接または間接的に決定される。これらの特性のうちの1つまたはそれ以上に基づく出力をもたらすことによって、体液のグルコース濃度値が決定される。出力は、埋込可能デバイス1のハウジング10の光透過部12に向けて光を放射するように構成された光源32と、光源32から透過部12を通って戻った光を検出するように構成された光学センサ34とを使用してもたらされ、この出力は、検出された光、特に検出された光の強度または検出された光の屈折量に基づく電気信号である。
【0053】
前に論じたように、埋込可能デバイス1が埋め込まれると、体液がハウジング10の外面11で光透過部12に接触する。光源32からの光は、光透過部12を通過し、光透過部12に接触する流体と相互作用する。この相互作用は、ハウジング10の外側の、体液自体の中で、または体液と光透過部12の間の境界面で起こり得る。
【0054】
体液と相互作用した光の少なくとも一部が、ハウジング10の内側に向かって光透過部12を通って戻り、光学センサ34によって検出される。体液と光の間の相互作用には、体液による光の旋光、体液による光の少なくとも一部の吸収、または境界面の光の反射および/もしくは屈折が含まれ得る。したがって、光源32から放射された光は、体液中のグルコースによって何らかの形で変更される。相互作用/変更の量は、体液中のグルコース濃度に依存する。光学センサ34は、検出された光に基づく電気信号を出力し、この電気信号は、体液による光の変更の量に対応するものであり、それゆえに、体液のグルコース濃度に対応するものである。
【0055】
電気信号は、埋込可能デバイス1内で、たとえば制御ユニット26によって処理される。無線通信モジュール20は、光学センサ34から電気信号を受け、この電気信号に基づく信号を無線で外部無線通信デバイス2へ送信する。言い換えると、無線で送信される信号は電気信号に対応するものであり、電気信号は、体液中のグルコース濃度に対応するものである。
【0056】
無線通信モジュール20によって外部無線通信デバイス2へ送信された信号は、外部無線通信デバイス2のプロセッサ(図示せず)によってさらに処理されて、体液のグルコース濃度値がもたらされる。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態によれば、体液を通過する直線偏光の旋光が光学センサ34によって検出される。
【0058】
グルコースは光学活性材料である。すなわち、直線偏光の偏光面は、グルコース中を移動するにつれて回転する。グルコースの溶液では、直線偏光の偏光面の回転角αは、溶液中のグルコース濃度β、溶液を通過する光の経路長L、光の波長λ、およびグルコース溶液の温度Tに依存する。
【0059】
比旋光度[α]T
λは、溶液中の化合物の固有特性であり、溶液中の化合物の試料を通過する単色光線の偏光面の、単位距離・濃度の積当たりの回転角である。
【0060】
比旋光度は、溶液の温度および偏光の波長に依存する。溶液中のグルコースの濃度は、直線偏光が溶液中を移動するときに直線偏光の偏光面が回転する角度αと、溶液中を通過する直線偏光の経路長Lとを測定することによって決定される。容器の温度Tおよび直線偏光の波長λが分かっている、または見積もられる場合は、その温度および波長に対するグルコースの比旋光度[α]
T
λの値が検索される。次に、溶液中のグルコースの濃度βが、角度α、比旋光度[α]
T
λ、および経路長Lから、次式によって決定される:
【数1】
【0061】
血液または間質液などの体液を通過する直線偏光の旋光度の相当量が、体液の他の成分ではなく、グルコースによって生じると見積もられる。したがって、体液中の他の成分の光学活性は一般に無視される。したがって、体液を通過する直線偏光の回転角を決定することによって、体液中のグルコース濃度の良い近似値が決定される。体液中のグルコース濃度の決定は、埋込可能デバイス1によって、たとえば制御ユニット26によって、または外部の無線通信デバイス2によって実行される。
【0062】
グルコース濃度を決定することは、光学センサ34によって出力された電気信号、または外部無線通信デバイス2まで無線で送信される電気信号に基づく信号を処理して測定値を決定することを含み得る。グルコース濃度値は、測定値を、複数の測定値およびその対応するグルコース濃度値を含むルックアップテーブルと比較することによって決定される。
【0063】
図3は、
図1Bに示された埋込可能デバイスなどの、埋込可能デバイス1の部分概略断面図を示し、グルコース測定ユニット30は、体液中を移動する直線偏光の回転角αを測定するように構成される。
【0064】
図3の埋込可能デバイス1は、凹部14を含むように示されているが、いくつかの例では凹部14が存在しないことがある。
図3に示されるように、凹部14の第1の側壁15および第2の側壁16はそれぞれ、光透過部12の少なくとも一部を含む。光源32は、
図3の矢印で示されているように、光透過部12に向けて放射された光が、光透過性の第1の側壁15をハウジングの外側の領域まで通過してから、光透過性の第2の側壁16を通過して光学センサ34によって検出されるように、ハウジング10の中に配置される。いくつかの例では、光源32および光学センサ34は、
図4および
図5に示されているように、放射された光が光透過部12の同じ面、たとえば底面17を通って出て戻るようにハウジング10の中に配置される。
【0065】
図3に示されるように、光源32から放射された光は、第1の直線偏光子41によって直線偏光され、光透過部12を通ってハウジング10の外側の領域へ放射される。この領域は、埋込可能デバイスが埋め込まれたときには体液の中になる。
【0066】
本明細書に開示された実施形態のいずれとも同様に、埋込可能デバイス1は、光源32から放射された光を集束するように配置された少なくとも1つのレンズ46を含み得る。特に、レンズ46は、第1の光源32から放射された光をハウジング10の外側の1つの点に向けて集束すること、または光を光学センサ34に向けて集束することができる。
【0067】
図3は、ハウジング10の中の、光源32と光透過部12の間の光路に設置されたレンズ46を示すが、そうしないでレンズ46は、ハウジング10の外面11の、光透過部12の表面などの任意の適切な位置に設置することもできる。
図3はまた、光源32とレンズ46の間の光路に設置された第1の直線偏光子41示すが、第1の直線偏光子41は、いくつかの例では、光路に沿ってレンズ46の後に設置することもできる。
【0068】
体液を通過する直線偏光は、前記体液中のグルコースによって旋光され、その結果、光の偏光面は、グルコースの濃度、および光がグルコース中を移動する距離に依存する量だけ回転する。光がグルコース中を移動する距離は、デバイスを埋め込む前に決定される。光学センサ34は、体液を通過しハウジング10の外側の領域から透過部12を通って戻った直線偏光の旋光を検出するように構成される。光学センサ34はさらに、検出された、旋光された光に基づく電気信号を出力するように構成される。この出力は、直線偏光の回転角αに基づく。
【0069】
図3に示されるように、ハウジングの外側の領域から透過部を通って戻った、旋光した直線偏光を検出することは、光源32と光学センサ34の間、光学センサ34とハウジング10の外側の領域との間、の光路に設置された第2の直線偏光子42を使用することを含む。第2の直線偏光子42の偏光面は、第1の直線偏光子41の偏光面に対して、第1の直線偏光子41の偏光面と好ましくは実質的に直交するように、光路のまわりに回転する。そのため、光源32および第1の直線偏光子41からの、光学センサ34によって検出される直線偏光の量は、光の旋光の量に依存する。この旋光は、直線偏光がグルコース含有体液を通過するときに起こる。旋光の量、したがって光学センサ34によって検出される光の量は、体液中のグルコース濃度に依存する。そのようにして、光学センサ34によって出力される電気信号は、直線偏光の旋光の量に基づいており、それゆえに体液中のグルコース濃度に基づいている。
【0070】
図3に示された埋込可能デバイス1は、たとえば、光源32から出ていない環境光などの光を検出する、光学センサ34からの干渉の影響を受けやすいことがある。
図4は、
図3と類似しているが、干渉を大幅に抑制するように構成された埋込可能デバイス1の部分概略断面図を示す。
図3に示された埋込可能デバイス1と同様に、
図4に示された埋込可能デバイス1は凹部14を含むが、凹部14が存在することは任意選択である。
【0071】
図3と同様に、
図4に示された埋込可能デバイス1は、光源32、第1の直線偏光子41および第2の直線偏光子42を含む。しかし、ここではグルコース測定ユニット30がさらに、第2の光学センサ36を含む。第1の光学センサ34および第2の光学センサ36はそれぞれ、1つまたはそれ以上のフォトダイオードを含み得る。
【0072】
図3の埋込可能デバイス1と同様に、
図4の第1の直線偏光子41は、光源32から光透過部12を通して放射された光を第1の偏向面で直線偏光するように構成され、この偏光は、ハウジング10の外側の領域へ放射される。第2の直線偏光子42は、ハウジング10の外側の領域からの光を、第1の面と実質的に直交する(すなわち、光学軸のまわりに90°回転した)第2の偏光面に直線偏光するように配置される。第3の直線偏光子43は、ハウジング10の外側の領域からの光を第3の偏光面に直線偏光するように配置され、この第3の面は、第1の面と平行である(すなわち、光学軸のまわりに0°回転している)。
【0073】
図4は、前述のように、光を集束するように構成された3つのレンズ46を示す。レンズ46のうちの1つまたはそれ以上は、光源32から放射された光を体液中の、ハウジング10の外側の1つの点または領域に集束するように配置される。第1の光学センサ34および第2の光学センサ36は、たとえばハウジングの外側の点または領域の近くの体液中で反射された、光源32から出ている光を検出するように配置される。検出光は、ハウジング10の外側の点または領域から第1の光学センサ34および第2の光学センサ36に向かって、1つまたはそれ以上のレンズ46によって集束されている。例示的な光路が、
図4に矢印で示されている。
【0074】
第2の直線偏光子42は、光源32からハウジング10の外側の領域へ放射された直線偏光の第1の部分が第2の直線偏光子42に入射するように配置される。言い換えると、第2の直線偏光子42は、光源32と第1の光学センサ34の間、ハウジング10の外側の領域と第1の光学センサ34の間、の光路に設置される。
【0075】
第3の直線偏光子43は、光源32からハウジング10の外側の領域へ放射された直線偏光の第2の部分が第3の直線偏光子43に入射するように配置される。言い換えると、第3の直線偏光子43は、光源32と第2の光学センサ36の間、ハウジング10の外側の領域と第2の光学センサ36の間、の光路に設置される。
【0076】
第1の光学センサ34は、ハウジング10の外側の領域から第2の直線偏光子42を通過する直線偏光の第1の部分を検出するように配置される。光源32から出た直線偏光のこの第1の部分は、第1の直線偏光子41によって第1の面に直線偏光されてから体液中のグルコースによって旋光されて、第2の直線偏光子42を通過し、第1の光学センサ34によって検出される。
【0077】
第2の光学センサ36は、ハウジング10の外側の領域から第3の直線偏光子43を通過する直線偏光の第2の部分を検出するように配置される。光源32から出た直線偏光のこの第2の部分は、第1の直線偏光子41によって第1の面に直線偏光された後に体液中のグルコースによって旋光されて、第3の直線偏光子43を通過し、第2の光学センサ36によって検出される。
【0078】
第1の光学センサ34および第2の光学センサ36は、検出された光強度に基づく、したがって光源32から放射された光の直線偏光面が旋光した角度に基づく、電気信号をそれぞれ出力するように構成される。第1の光学センサ34および第2の光学センサ36それぞれによって出力された複合信号S
PD1および複合信号S
PD2を使用して、直線偏光がグルコースによって旋光された角度αを、次式を用いて決定することができる:
【数2】
【0079】
前に論じたように、αの値を決定することによって、体液のグルコースの濃度に対応する値が決定される。
【0080】
信号SPD1およびSPD2は、光源32を通過する電流、チャネル利得、タイプ固有のLED放射強度、環境光、血液または他の体液の透過係数(食べた食物の種類および食物を食べてからの時間などの様々な要素の関数)、および直線偏光子の透過率などの要素に依存する。追加の第3の直線偏光子43および第2の光学センサ36を設けることによって、第1の光学センサ34および第2の光学センサ36によって出力される電気信号が処理されて、そうしなければ信号SPD1およびSPD2が依存する前述の要素の影響が低減または除去され、たとえば、環境光、埋込可能デバイス1の電気構成要素の雑音、または同様の寄生効果によってたとえば生じる、干渉の影響が低減する。そのため、これらの要素に依存しない、より正確なグルコース濃度の測定が行われる。
【0081】
図5は、
図4と類似している別の実施形態を示すが、ここではグルコース測定ユニット30はさらに、1つまたはそれ以上のLEDを再び含み得る第2の光源35を含む。
図4を参照して論じたのと同様に、
図5の光源32は(
図5に関して以下では第1の光源32と呼ぶ)、光をハウジング10の外側の(第1の)領域へ光透過部12を通して放射するように構成され、第2の光源35は、光をハウジング10の外側の(第2の)領域へ光透過部12を通して放射するように構成される。第1の領域および第2の領域は同一であり得る。
【0082】
図5の第1の直線偏光子41は、第1の光源32から光透過部12を通して放射された光を第1の偏向面で直線偏光するように構成され、この光は、ハウジング10の外側の第1の領域へ放射される。第2の直線偏光子42は、ハウジング10の外側の第1の領域からの光を、第1の面と実質的に直交する(すなわち、光学軸のまわりに90°回転した)第2の面に直線偏光するように配置される。
【0083】
図5の第4の直線偏光子44は、第2の光源35から光透過部12を通して放射された光を第3の偏向面で直線偏光するように構成され、この光は、ハウジング10の外側の第2の領域へ放射される。
【0084】
第3の直線偏光子43は、ハウジング10の外側の第2の領域からの光を第4の面に直線偏光するように配置され、この第4の面は、第3の面と平行である(すなわち、光学軸のまわりに0°回転している)。第4の面は、第3の面と平行であり得る。
【0085】
第2の直線偏光子42は、第1の光源32からハウジング10の外側の第1の領域へ放射された直線偏光の少なくとも一部が第2の直線偏光子42に入射するように配置される。言い換えると、第2の直線偏光子42は、第1の光源32と第1の光学センサ34の間、ハウジング10の外側の第1の領域と第1の光学センサ34の間、の光路に設置される。
【0086】
第3の直線偏光子43は、第2の光源35からハウジング10の外側の領域へ放射された直線偏光の少なくとも一部が第3の直線偏光子43に入射するように配置される。言い換えると、第4の直線偏光子44は、第2の光源35と第2の光学センサ36の間、ハウジング10の外側の第2の領域と第2の光学センサ36の間、の光路に設置される。
【0087】
第1の光学センサ34は、第1の光源32から放射され(ハウジング10の外側の第1の領域を経由し)第2の直線偏光子42を通った直線偏光の少なくとも一部を検出できるように構成される。第2の光学センサ36は、第2の光源35から放射され(ハウジング10の外側の第2の領域を経由し)第3の直線偏光子43を通った直線偏光の少なくとも一部を検出できるように構成される。
【0088】
好ましくは、第1の光学センサ34は、第2の光源35によって放射された光を検出しないように埋込可能デバイス1の中に配置され、第2の光学センサ36は、第1の光源32によって放射された光を検出しないように埋込可能デバイス1の中に配置される。この配置により、第1の光学センサ34および第2の光学センサ36によって出力される電気信号への干渉の影響が低減する。
【0089】
第1の光学センサ34および第2の光学センサ36は、検出された光強度に基づいた、したがって第1の光源32または第2の光源35からの適切な偏光の旋光角度に基づいた、電気信号をそれぞれ出力するように構成される。第1の光学センサ34および第2の光学センサ36それぞれによって出力された複合信号S
PD1および複合信号S
PD2を使用して、直線偏光がグルコースによって旋光された角度αを、次式を用いて決定することができる:
【数3】
【0090】
前に論じたように、決定されたαの値を用いて、体液のグルコースの濃度に対応する値が決定される。
【0091】
図3の埋込可能デバイス1と比較して追加の第3の直線偏光子43、第4の直線偏光子44、および第2の光学センサ36を設けることによって、第1の光学センサ34および第2の光学センサ36によって出力される電気信号が処理されて、たとえば環境光によって生じる干渉の影響が低減する。そのため、より正確なグルコース濃度の測定が行われる。
【0092】
いくつかの実施形態では、グルコース測定ユニットは屈折計であり、光学センサ34によって出力される電気信号は、光透過部12と接触する体液の屈折率n2に基づく。
【0093】
グルコースを含む体液の屈折率n2は、体液中のグルコース濃度の関数になる(すなわち、グルコース濃度に依存する)。体液のグルコース濃度が変化すると、体液の屈折率も変化する。体液の屈折率は、屈折計を用いて決定される。体液の屈折率を決定することによって、グルコース濃度の値が決定される。この決定には、光学活性に関して論じたルックアップテーブルを使用することが含まれ得る。
【0094】
図6は、グルコース測定ユニット30が屈折計である埋込可能デバイス1の部分概略断面図を示す。屈折計はプリズム60を含み、光源32およびプリズム60は、光源32から放射された光がプリズム60を通ってプリズム60の表面61に入射するように配置される。言い換えると、また
図6に矢印で示されるように、プリズム60および光源32は、光源32から放射された光がプリズム60に入り、プリズム60の表面61に達するまでプリズム60を通って移動するように位置している。
【0095】
埋込可能デバイス1が埋め込まれていると、体液が表面61と接触する。そのため、光透過部12はプリズム60を含む。
【0096】
表面61への光の入射角θ1に応じて、光源32から放射された光の一部がプリズム60の表面61において、体液・プリズム境界面において、反射される(すなわち内部全反射される)。光学センサ34は、この反射された光の一部を、光がプリズム60を通って戻りプリズムを出た後に検出するように配置される。特に、光学センサ34は、(内部全)反射光の屈折角θ2を測定するように配置される。
【0097】
図6は、光学センサ34をCCDセンサ62として示している。CCDセンサ62上の反射光の位置を用いて屈折角θ
2が決定され、したがって、表面61と接触する体液の屈折率が決定される。したがって、CCDセンサ62は、体液の屈折率に基づく電気信号を出力する。
【0098】
入射角θ
1、屈折角θ
2、プリズム60の屈折率n
1、および体液の屈折率n
2の間の関係は、次式で与えられる:
【数4】
【0099】
したがって、入射角θ1およびプリズム60の屈折率n1がすでに分かっている場合には、屈折角θ2を測定することによって、体液の屈折率n2の値を決定することができる。体液の屈折率の値を用いて体液のグルコース濃度の値を、たとえば体液の屈折率の値をルックアップテーブルと比較することによって、または体液の屈折率の値について追加の計算を行うことによって、決定することができる。
【0100】
光源32の絶対輝度および体液の光透過などの要素が屈折角に影響を及ぼさず、それゆえにグルコース濃度の決定値に影響を及ぼさないので、屈折計を使用して屈折角を測定することによって、グルコース濃度の正確な値を決定することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、グルコース測定ユニットは赤外分光計である。グルコースを含む体液の赤外吸収スペクトルは、グルコース濃度によって変化する。体液の赤外吸収を測定することによって、グルコース濃度の値を決定することができる。この決定には、光学活性に関して論じたルックアップテーブルを使用することが含まれる。
【0102】
図7は、グルコース測定ユニットが赤外分光計である実施形態を示す。
【0103】
光源32によって放射される光は赤外光であり、光透過部12を通してハウジング10の外側の領域へ放射される。光学センサ34は、光源32からハウジング10の外側の領域を経由し光透過部12を通って戻った赤外光を検出するように、かつ検出された赤外光に基づく、したがって体液のグルコース濃度に基づく電気信号を出力するように構成される。
【0104】
場合により、グルコース測定ユニット30は、光源32によって放射された光をフィルタリングするように構成された第1のフィルタ70を、特定の波長の光だけが第1のフィルタ70を通過し、光透過部12を通ってハウジング10の外側の領域へ放射されるように含む。場合により、グルコース測定ユニット30は、光源32から光透過部12を通って戻った光をフィルタリングするように構成された第2のフィルタ72を、特定の波長の光だけが第2のフィルタ72を通過し、光学センサ34によって検出されるように含む。光学センサ34は、可変帯域の波長の光を検出するように構成される。光学センサ34によって検出される波長の帯域は、光学センサ34に加えられる電圧を変えることによって調整される。
【0105】
本開示はまた、上述の実施形態のいずれかによる外部無線通信デバイス2および埋込可能デバイス1を含むシステムにも関する。
図8は、埋込可能デバイス1が患者4(人間または動物など)の血管3の中に埋め込まれたときの、このようなシステムを示す。
【0106】
埋込可能デバイス1の無線通信モジュール20と同様に、外部無線通信デバイス2は、アンテナ、電源および制御ユニット(図示せず)を含む。使用中、外部無線通信デバイス2は、埋込可能デバイス1のすぐ近くに持ってこられる。埋込可能デバイス1が患者4に埋め込まれている場合、このことは、外部無線通信デバイス2を患者4の皮膚5の近傍まで、たとえば、皮膚5から約2cm未満の距離内に持ってくることを含み得る。
【0107】
外部無線通信デバイス2は、外部無線通信デバイス2のアンテナと埋込可能デバイス1のアンテナ22との間の電磁誘導によって、電力を埋込可能デバイス1に無線で伝送する。埋込可能デバイス1のアンテナ22に電流が誘導されて、デバイス内のグルコース測定ユニット30などの、いずれの電気回路にも電力が提供される。
【0108】
電力を受けることに応答して、または外部通信デバイスによって埋込可能デバイス1へ送信された追加の無線信号を受けることに応答して、埋込可能デバイス1は、埋込可能デバイス1のハウジング10と接触する体液のグルコース濃度の測定を進める。埋込可能デバイス1の光源32は、光を埋込可能デバイス1のハウジング10の光透過部12に向けて放射する。埋込可能デバイス1の光学センサ34は、光透過部12を通って戻った光を検出し、この検出光に基づく電気信号を出力する。埋込可能デバイス1の無線通信モジュール20は、電気信号に基づく信号を外部無線通信デバイス2へ無線で送信するように構成される。埋込可能デバイス1によって外部無線通信デバイス2へ無線で送信された信号は処理されて(たとえば、外部無線通信デバイス2によって)、体液のグルコース濃度の値が決定される。
【0109】
本開示はまた、埋込可能デバイス1および外部無線通信デバイス2に関連する上述の工程のいずれかを実行する方法にも関連する。
【0110】
図9は、本開示の実施形態による方法を示す。工程901で、上述の埋込可能デバイス1の光源32によって光が、埋込可能デバイス1のハウジング10の光透過部12へ向けて放射される。工程902で、埋込可能デバイス1の光学センサ34が、第1の光源32から光透過部12を通って戻った光を検出する。工程903で、検出された光に基づく電気信号が光学センサ34によって出力される。工程904で、埋込可能デバイス1の無線通信モジュール20が、電気信号に基づく信号を外部無線通信デバイス2へ無線で送信する。前に論じたように、埋込可能デバイス1によって外部無線通信デバイス2へ無線で送信される信号は処理されて(たとえば、外部無線通信デバイス2によって)、体液のグルコース濃度の値が決定される。
【0111】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0112】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0113】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0114】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0115】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0116】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0117】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0118】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0119】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0120】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0121】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0122】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0123】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0124】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本開示に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0125】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0126】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0127】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0128】
当業者には、本明細書に記載のAPI、配合物、装置、方法、システムおよび諸実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または除去)が、このような修正、およびありとあらゆるその等価物を包含する本開示の全範囲および趣旨から逸脱せずに加えられることが理解されよう。
【0129】
特許請求の範囲は本願において、構成の特定の組み合わせに対して明確に示されているが、本開示の範囲はまた、本明細書に明示的または暗黙的に開示されたあらゆる新規構成またはあらゆる構成の新規組み合わせを、またはこれらのあらゆる一般化を、その構成がいずれかの請求項に現に特許請求されているものと同じ開示に関連していようといまいと、またその構成が本開示で緩和するのと同じ技法的問題のいずれかまたは全部を緩和しようとしまいと、含むことを理解されたい。本出願者は本願で、新しい特許請求の範囲が、本願の、または本願から派生したいずれかのさらなる出願の実施中に、このような構成および/または構成の組み合わせに対し明示されることを通知する。
【0130】
いくつかの実施形態を図示し説明したが、当業者には、その範囲が特許請求の範囲に定義されている本開示の原理から逸脱することなく、これらの実施形態に変更が加えられ得ることが理解されよう。