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特許7599431粒子径分布測定装置、及び、粒子径分布測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】粒子径分布測定装置、及び、粒子径分布測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0205 20240101AFI20241206BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20241206BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
G01N15/0205
G01N21/03 Z
G01N21/49 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021558298
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041723
(87)【国際公開番号】W WO2021100514
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2019208665
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲司
(72)【発明者】
【氏名】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】名倉 誠
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156742(JP,A)
【文献】特開平09-171142(JP,A)
【文献】米国特許第04435080(US,A)
【文献】特表平11-507735(JP,A)
【文献】特開2016-114613(JP,A)
【文献】国際公開第2019/050035(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372614(US,A1)
【文献】特開2017-198468(JP,A)
【文献】特開2000-105186(JP,A)
【文献】特開2013-120107(JP,A)
【文献】特開2005-121414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/0205
G01N 21/03
G01N 21/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定距離離間する一対の透光板を具備するセル内に収容された試料に対して測定光を射出する光源と、試料において散乱された測定光を検出する1又は複数の検出器と、前記検出器の出力信号に基づいて前記試料に含まれる粒子群の粒子径分布を算出する粒子径分布算出器と、を備えた粒子径分布測定装置であって、
一対の前記透光板の少なくとも一方を動かし、前記セル内の試料に対して圧力又はせん断力を付与する力付与機構と、をさらに備え、
前記力付与機構は、前記一対の透光板を締め付ける締付部を備え、前記締付部が前記一対の透光板を締め付けることにより、圧力、又は、圧力及びせん断力を試料に付与し、
前記粒子径分布算出器が、散乱角とその散乱角における散乱光の強度からなる散乱パターンに基づいて、試料に対して付与される圧力又はせん断力が第1状態から第2状態に変化した時点の粒子径分布を算出するように構成されたことを特徴とする粒子径分布測定装置。
【請求項2】
前記力付与機構が、前記一対の透光板を互いに近づけて、前記セル内の試料に対して圧力を付与する、又は、前記一対の透光板の一方を他方に対して回動させて、前記セル内の試料に対してせん断力を付与するように構成された請求項1記載の粒子径分布測定装置。
【請求項3】
前記セル内に試料を圧送し、前記セル内における試料の圧力を変化させる圧送部をさらに備えた請求項1又は2記載の粒子径分布測定装置。
【請求項4】
試料に対して電場又は磁場の少なくとも一方を付与する電磁場付与機構をさらに備え、
試料に対して電場又は磁場が付与されている状態において、前記粒子径分布算出器が各時点での粒子径分布を算出するように構成された請求項1乃至3いずれかに記載の粒子径分布測定装置。
【請求項5】
試料に対して超音波を付与する超音波付与機構をさらに備え、
試料に対して超音波が付与されている状態において、前記粒子径分布算出器が各時点での粒子径分布を算出するように構成された請求項1乃至4いずれかに記載の粒子径分布測定装置。
【請求項6】
試料の状態を光反応により変化させる作用光を前記セル内に照射する作用光照射器をさらに備え、
試料に対して作用光が照射されている状態において、前記粒子径分布算出器が各時点での粒子径分布を算出するように構成された請求項1乃至5いずれかに記載の粒子径分布測定装置。
【請求項7】
前記光源の測定光の射出方向が上側を向いており、
試料が前記光源の上側に配置されるとともに、1又は複数の前記検出器が試料で散乱される測定光を検出可能な位置に配置された請求項1乃至6いずれかに記載の粒子径分布測定装置。
【請求項8】
試料台と、1又は複数の前記検出器が収容され、内部が所定の圧力又は真空度に保たれる測定室と、
前記測定室の内外の圧力差によって、粉末の試料を含む気体を前記測定室の外側から前記測定室内へ導入する導入機構と、を備えた請求項7記載の粒子径分布測定装置。
【請求項9】
前記測定室内が、窒素雰囲気にされる請求項8記載の粒子径分布測定装置。
【請求項10】
前記試料台が、少なくとも顕微鏡での観察に使用可能に構成されている請求項8又は9記載の粒子径分布測定装置。
【請求項11】
互いに所定距離離間する一対の透光板を具備するセル内に収容された試料に対して測定光を射出する光源と、試料において散乱された測定光を検出する1又は複数の検出器と、前記検出器の出力信号に基づいて前記試料に含まれる粒子群の粒子径分布を算出する粒子径分布算出器と、を備えた粒子径分布測定装置を用いた粒子径分布測定方法であって、
前記一対の透光板を締め付けることにより、圧力、又は、圧力及びせん断力を試料に付与して、一対の前記透光板の少なくとも一方を動かし、
散乱角とその散乱角における散乱光の強度からなる散乱パターンに基づいて、前記セル内の試料に対して付与される圧力又はせん断力が第1状態から第2状態に変化した時点の粒子径分布を算出させることを特徴とする粒子径分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料に対して光を照射し、試料に含まれる粒子群により散乱される光に基づいて粒子群の粒子径分布を測定する粒子径分布測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子径分布測定装置では、特許文献1に示すように、例えばインクの原液等の高濃度且つ低粘度の被検液を測定する場合に、一対の透光板の間にスペーサを挟んで構成された光学測定用セルを用いている。従来の粒子径分布の測定では、例えばセル内における試料の状態が一定にしてから測定が行われている。
【0003】
ところで、粒子径分布が測定されている環境とは異なり、試料が実際に使用される環境では試料の状態が変化していることがある。このため、従来の粒子径分布の測定方法では、試料の状態が変化するような実際の環境において適切な評価基準となっていない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2910596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、試料の状態を変化させながら粒子径分布を測定できる粒子径分布測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る粒子径分布測定装置は、互いに所定距離離間する一対の透光板を具備するセル内に収容された試料に対して測定光を射出する光源と、試料において散乱された測定光を検出する1又は複数の検出器と、前記検出器の出力信号に基づいて前記試料に含まれる粒子群の粒子径分布を算出する粒子径分布算出器と、を備えた粒子径分布測定装置であって、一対の前記透光板の少なくとも一方を動かし、前記セル内の試料に対して圧力又はせん断力を付与する力付与機構と、をさらに備え、前記粒子径分布算出器が、試料に対して付与される圧力又はせん断力が第1状態から第2状態に変化した時点の粒子径分布を算出するように構成されたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る粒子径分布測定方法は、互いに所定距離離間する一対の透光板を具備するセル内に収容された試料に対して測定光を射出する光源と、試料において散乱された測定光を検出する1又は複数の検出器と、前記検出器の出力信号に基づいて前記試料に含まれる粒子群の粒子径分布を算出する粒子径分布算出器と、を備えた粒子径分布測定装置を用いた粒子径分布測定方法であって、一対の前記透光板の少なくとも一方を動かし、前記セル内の試料に対して付与される圧力又はせん断力が第1状態から第2状態に変化した時点の粒子径分布を算出させることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、圧力又はせん断力の変化に対する粒子径分布の変化を測定することが可能となる。したがって、実際の環境に近い状態での試料中の粒子の状態を評価ができ、試料について従来では得られなかった知見を得られるようになる。
【0009】
前記力付与機構の具体的な構成例としては、前記力付与機構が、前記一対の透光板を互いに近づけて、前記セル内の試料に対して圧力を付与する、又は、前記一対の透光板の一方を他方に対して回動させて、前記セル内の試料に対してせん断力を付与するように構成されたものが挙げられる。
【0010】
試料にかかる圧力を粒子径分布の測定中でも連続的に変化させられるようにするには、前記セル内に試料を圧送し、前記セル内における試料の圧力を変化させる圧送部をさらに備えたものであればよい。
【0011】
試料に対して電場又は磁場の少なくとも一方を付与する電磁場付与機構をさらに備え、試料に対して電場又は磁場が付与されている状態において、前記粒子径分布算出器が各時点での粒子径分布を算出するように構成されたものであれば、電磁波にさらされるような環境で使用される試料であっても粒子径分布の変化からその特性をさらに正確に評価できるようになる。
【0012】
試料中の粒子が凝集していた場合に、その凝集している状態から分裂していく過程を粒子径分布の測定結果から評価できるようにするには、試料に対して超音波を付与する超音波付与機構をさらに備え、試料に対して超音波が付与されている状態において、前記粒子径分布算出器が各時点での粒子径分布を算出するように構成されたものであればよい。
【0013】
例えば光反応により硬化性を有する試料の特性や光反応による経年変化等を粒子径分布の変化から評価できるようにするには、試料の状態を光反応により変化させる作用光を前記セル内に照射する作用光照射器をさらに備え、試料に対して作用光が照射されている状態において、前記粒子径分布算出器が各時点での粒子径分布を算出するように構成されたものであればよい。
【0014】
粒子径分布測定装置全体をコンパクトに構成できるようにするには、前記光源の測定光の射出方向が上側を向いており、試料が前記光源の上側に配置されるとともに、1又は複数の前記検出器が試料で散乱される測定光を検出可能な位置に配置されたものであればよい。
【0015】
試料についてセルを用いずに分散させた状態でも粒子径分布を測定できるようにするには、試料台と、1又は複数の前記検出器が収容され、内部が所定の圧力又は真空度に保たれる測定室と、前記容器の内外の圧力差によって、粉末の試料を含む気体を前記容器の外側から前記測定室内へ導入する導入機構と、を備えたものであればよい。
【0016】
粒子径分布測定時における試料への汚染を防ぐことができるようにするには、前記測定室内が、窒素雰囲気にされるものであればよい。
【0017】
粒子径分布が測定された後で、粒子の形状観察等の別の測定が容易に行えるようにするには、前記試料台が、少なくとも顕微鏡での観察に使用可能に構成されていればよい。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明の粒子径分布測定装置によれば、試料に付与される圧力やせん断力を変化させることによって試料に含まれる粒子の状態を変化させながら粒子径分布の変化を測定できる。この結果、従来の粒子径分布の測定では得られなかった知見を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る粒子径分布測定装置を示す模式図。
図2】第1実施形態におけるセルの模式的斜視図。
図3】第1実施形態におけるセルの模式的断面図。
図4】第1実施形態における力付与機構による試料の圧力の状態変化と粒子径分布の測定タイミングとの関係を示す模式図。
図5】第1実施形態の第1変形例を示す模式図。
図6】第1実施形態の第2変形例を示す模式図。
図7】第1実施形態の第3変形例を示す模式図。
図8】本発明の第2実施形態に係る粒子径分布測定装置を示す模式図。
【符号の説明】
【0020】
100・・・粒子径分布測定装置
LS ・・・光源
D1、D2・・・検出器
P2 ・・・粒子径分布算出器
1 ・・・力付与機構
12 ・・・締付部
T ・・・圧送部
2 ・・・作用光照射器
3 ・・・超音波付与機構
4 ・・・電磁場付与機構
5 ・・・試料台
6 ・・・密閉箱
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1実施形態に係る粒子径分布測定装置100について図1乃至図3を参照しながら説明する。第1実施形態の粒子径分布測定装置100は、縦型の装置として構成されており、セルC内に収容されている試料Sの状態を変化させながら、粒子径分布を測定できるように構成されている。ここで、試料Sの状態は試料Sにかかる圧力、せん断力、電場、磁場、振動、光反応によって変化させる。
【0022】
図1に示すように粒子径分布測定装置100は、上側に向かって測定光を射出する光源LSと、光源LSの上側に配置され、内部に試料Sが収容されるセルCと、セルC内の試料Sにより散乱された測定光を検出する複数の検出器D1、D2と、が筐体R内に収容されたものである。光源LSは測定光としてレーザ光を鉛直上向きに射出するものである。複数の検出器D1、D2は、光源LSの光軸上に配置され、セルCを透過した測定光を測定する前方検出器D1と、試料Sにより散乱された測定光を検出する4つの側方検出器D2とからなる。前方検出器D1については入射する測定光が反射され反射光が発生するのを防止するために光源LSの光軸に対して所定角度傾けて配置されている。
【0023】
加えて粒子径分布測定装置100は、CPU、メモリ、A/D、D/Aコンバータ、各入出力機器を備え、各機器と接続されたコンピュータCOMを備えている。コンピュータCOMは、メモリに格納されている粒子径分布測定装置用プログラムが実行されることにより、各機器の動作を制御する制御器P1と、各検出器D1、D2の出力に基づいて試料Sに含まれる粒子群の粒子径分布を算出する粒子径分布算出器P2としての機能を少なくとも発揮するように構成されている。
【0024】
また、この粒子径分布測定装置100は、試料Sに対して圧力又はせん断力をかける力付与機構1と、セルC内に試料Sを圧送する圧送部Tと、測定光を射出する光源LS以外にセルC内の試料Sに光反応を生じさせる作用光を照射する作用光照射器2と、セルCに対して超音波振動を付与する超音波振動付与機構3と、セルCに対して電磁場を印加する電磁場付与機構4と、を備えている。
【0025】
筐体R内は2つの部屋に分かれている。具体的には筐体Rの下部には、光源LS及び作用光照射器2が内部に収容される光源収容室R1が形成されている。また、筐体Rの上部には少なくともセルC及び各検出器D1、D2が収容される測定室R2が形成されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、セルCは互いに所定距離離間した一対の透光板C1と、透光板C1の間に設けられたスペーサC2と、を備えたものである。透光板C1は概略薄板円板状に形成されており、一方の透光板C1の内側面にはその外周部に円環状の蒸着膜が形成され前述したスペーサC2となる。透光板C1の一方には、測定光が通過しない部分に厚み方向に貫通する貫通穴が2つ設けられており、一方が各透光板C1の間に試料Sを導入するための導入孔C3、他方が透光板C1内から外部へ試料Sを導出するための導出孔C4として使用される。測定時には導入孔C3は試料Sを圧送する圧送部Tと配管を介して接続され、導出孔C4については封止部材C5で蓋がされる。
【0027】
このセルCには、内部に収容されている試料Sに対して圧力やせん断力を付与するための力付与機構1が取り付けられる。第1実施形態における力付与機構1は、セルCの一対の透光板C1を厚み方向に対して締め付ける締付部12を備えたものである。
【0028】
締付部12は、セルCの一対の透光板C1を外側から厚み方向に挟持するものである。第1実施形態の締付部12は、一対の透光板C1を収容する収容部12Cを有する第1挟持要素12Aと、当該第1挟持要素12Aとの間で一対の透光板C1を挟み込む第2挟持要素12Bとを備えている。そして、第1挟持要素12Aに対して第2挟持要素12Bを螺合させることによって、一対の透光板C1が挟持されるように構成されている。各挟持要素間での締め付けトルクを変化させることで、内部に収容されている試料Sに係る圧力を変化させることができる。また、第1挟持要素12Aに対して第2挟持要素12Bを螺合させていく際に、第2挟持要素12Bと接触する透光板C1にはトルクが発生するので、内部に収容されている試料Sに対してかかるせん断力も変化させることができる。すなわち、第2挟持要素12Bを第1挟持要素12Aに対して回転させることで、第1挟持要素12Aに載置されている透光板C1は固定した状態にしつつ、第2挟持要素12Bと接触する透光板C1を回転させて内部にある試料Sに対してせん断力を発生させることができる。なお、締付部12による試料Sへの圧力又はせん断力の状態変化は、トルクレンチ等を利用して人の手で調整してもよいし、モータ等の機械を用いて一対の透光板C1の離間距離を正確に制御して試料Sに対して付与される圧力を正確に制御してもよい。
【0029】
圧送部Tは、例えば試料SをセルC内に圧送するポンプであって、制御器P1によりその吐出量が制御されてセルC内に圧送する試料Sの圧力を変化させるように構成されている。
【0030】
作用光照射器2は、例えば試料Sが光硬化性を有するものであれば、作用光として紫外線等を照射するものである。制御器P1によって作用光照射器2はその照射タイミングや照射時間が制御される。
【0031】
超音波振動付与機構3と、は例えばセルC又は締付部12に対して取り付けられた超音波振動子である。超音波振動子の発振タイミングや発振時間については制御器P1によって制御される。超音波振動の振幅や振動数は一定であってもよいし、経時的に変化するものであってもよい。
【0032】
電磁場付与機構4は、セルCの透光板C1の一方について厚み方向に貫通させ、セルC内の試料Sと一部接触するように設けられたコイル及び電極である。このように電磁場付与機構4は試料Sに接触しているので、試料Sに対して電磁場により粒子径やその他の性質について影響を十分に与えることができる。コイルに流される電流及び平行平板電極に印加される電圧については制御器P1によって制御される。セルCに対して付加される電場又は磁場は一定のものであってもよいし、経時的に変化するものであってもよい。
【0033】
粒子径分布算出器P2は、試料S中の粒子群の粒子径分布を各検出器D1、D2の出力に基づいて算出する。具体的には各検出器D1、D2の出力が示す、散乱角とその散乱角における散乱光の強度からなる散乱パターンと、Mie散乱理論から導かれる所定の理論演算式に基づいて、散乱パターンに対応する粒子径分布を算出する。ここで、粒子径分布算出器P2は、試料S中の粒子の状態が変化している状態で各時点での粒子径分布を経時的に算出するように構成されている。具体的には、セルCに対して圧力、せん断力、超音波振動、電場、磁場の少なくとも1つが付与されている状態、あるいは、セルCに対して作用光が照射されている状態で、粒子径分布は算出される。
【0034】
このように構成された第1実施形態の粒子径分布測定装置100によれば、例えば力付与機構1によってセルC内の試料Sにかかる圧力をある基準時点における第1状態から第2状態に変化させ、第2状態となった時点おける粒子径分布を算出することができる。より具体的には図4(a)に示すように力付与機構1により圧力を連続的に変化させながら各時点での粒子径分布の変化を測定することができる。また、図4(b)に示すように力付与機構1により圧力をステップ状に変化させ、それぞれ圧力の異なる各ステップ中における粒子径分布を測定することもできる。したがって、圧力変化に対する粒子径分布の変化の関係を得ることができる。例えば所定の圧力がかかっている場合には、粒子径に偏りがある、あるいは、ある圧力以上がかけられると凝集していた粒子が分離し、所望の粒子径分布を得られるといったことを知ることができる。
【0035】
また、電場又は磁場に対する粒子径分布の依存性についても知ることができる。
【0036】
試料Sに対して超音波振動を付加しながら粒子径分布の変化を測定すれば、凝集している粒子が分離するまでの時間や、現在の粒子径からさらに細かく分解されてしまい諸もの粒子径分布から外れてしまう時間等を知ることができる。
【0037】
作用光を照射しながら粒子径分布の変化を測定すれば、例えば光硬化等の光反応を生じる試料Sであれば、変化の前後において粒子の構造等にどのような変化が出ているかを粒子径分布の変化から知ることが可能となる。
【0038】
第1実施形態の変形例について図5乃至図7を参照しながら説明する。
【0039】
図5に示すように電磁場付与機構4についてはセルCの導入孔C3及び導出孔C4を塞ぐように設けて、内部の試料と接触できるようにしてもよい。
【0040】
また図6に示すように電磁場付与機構4は、一対の透光板C1の内側面に対向するように設けられた透明電極であってもよい。
【0041】
図7に示すように粒子径分布測定装置100は、セルC内に試料Sを収容した状態で粒子径分布を測定したものに限られない。例えば、試料分散装置等を用いて粉末状の試料Sをガラス板上に分散させておき、それを第1実施形態におけるセルCの位置に配置された透明の試料台5上に載置して測定を行っても構わない。また、試料Sが分散されたガラス板及び試料台5が収容されるようにアクリル材やガラス材で形成された透過性の密閉箱6を測定室R2内に設けておき、この密閉箱6内の窒素雰囲気にして粒子径分布を測定してもよい。加えて、密閉箱6内に封入されるガスの圧力をポンプ7で制御することによって試料Sに負荷される圧力を変化させながら粒子径分布を測定するといったことも可能である。
【0042】
力付与機構1については、セルC内の試料Sに対して圧力だけを付与する、あるいは、せん断力のみを付与するように構成してもよい。セルC内の試料Sに対して圧力だけを付与できるようにするには、力付与機構1が、一対の透光板C1を回動させずに、それぞれの離間距離のみを変更可能に構成されていればよい。また、セルC内の試料Sに対してせん断力だけを付与できるようにするには、力付与機構1が、一対の透光板C1の離間距離を保ったまま、一対の透光板C1の少なくとも一方を回動させられるように構成されていればよい。加えて、第1実施形態では力付与機構1は、一方の透光板C1については固定したままで、他方の透光板C1のみを動かすように構成されていたが、力付与機構1が、両方の透光板C1をそれぞれ動かすようにしてもよい。また、力付与機構1は、一方の透光板C1は離間距離を変更可能に動かすとともに、他方の透光板C1についてはその場で回転させるように構成されていてもよい。
【0043】
次に第2実施形態の粒子径分布測定装置100について図8を参照しながら説明する。
【0044】
第2実施形態では、セルCを用いた粒子径分布の測定ではなく、測定室R2内に試料Sを分散させて、測定室R2内の透明部材で形成された試料台5上に付着させるようにしている。
【0045】
この実施形態では測定室R2内は吸引源9によって所定の真空度に保たれている。また、測定室R2の外壁部分には、粉末の試料Sを含む気体を容器の外側から前記測定室R2内へ導入する導入機構8が設けられている。導入機構8は、測定室R2の内外を仕切るとともにその大気側に粉末の試料Sが載置される仕切り膜81と、仕切り膜81の大気側を覆うように設けられたドーム状の弾性カバー82と、弾性カバー82内に設けられ仕切り膜81を破るための針部材83と、測定室R2側に設けられた多段ノズル84と、を備えている。弾性カバー82を押し込むことにより、針部材83で仕切り膜81が破れ、大気圧により測定室R2内へと粉末状の試料Sは測定室R2内へと吸引される。この際多段ノズル84によって粉末試料Sは圧縮、膨張が繰り返され、凝集している部分が砕かれ、粒度の細かい状態となって測定室R2内に導入される。その後、試料台5上に粉末状の試料Sを吹き付けることになる。
【0046】
このように第2実施形態の粒子径分布測定装置100であれば、セルCを用いずに粉末状の試料Sを粒子径分布の測定に適した状態にして堆積させることができる。また、縦型の粒子径分布測定装置100として構成されているので、重力を前提とした試料Sの導入が可能となり、試料台5上において粒子径分布の測定に適した均一な分散を実現できる。
【0047】
第2実施形態の変形例について説明する。
【0048】
測定室R2内に導入される粉末状の試料が付着する場合に備えて、各検出器D1、D2に試料や汚れの除去機構を設けてもよい。
【0049】
試料台5については粒子径分布の測定だけでなく、その他の測定装置でも共通して使用できるように構成してもよい。例えば粒子の形状観察を顕微鏡においてもすぐに行えるように、試料台に座標を共有するためのマーカを形成してもよい。また、顕微鏡に限らず、その他の光学分析、ラマン分光分析、X線分析、電子線分析等様々な用途に用いても構わない。
【0050】
その他の実施形態について説明する。
【0051】
粒子径分布を測定する原理については、静的光散乱法に限られるものではなく、動的光散乱法であっても構わない。
【0052】
実施形態では縦型の粒子径分布測定装置を例に挙げたが、各機器が水平平面内に配置される粒子径分布測定装置であっても、試料に対して圧力、せん断力、電場、磁場、超音波振動、作用光等を付与し、試料の状態を変化させながら粒子径分布の変化を測定しても構わない。
【0053】
試料に対して付与する圧力又はせん断力を変化させるには、例えばセルの姿勢を利用してもよい。例えばセルを水平状態から斜めに傾斜させることによって、試料にかかる力の向きを変化させて試料の状態を変化させるようにしてもよい。
【0054】
セルの周囲に温調機構を設けて置き、試料の温度を変化させながら粒子径分布を測定しても構わない。
【0055】
その他、本発明の趣旨に反しない限りおいて、様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士を組み合わせることを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、試料に付与される圧力やせん断力を変化させることによって試料に含まれる粒子の状態を変化させながら粒子径分布の変化を測定できる粒子径分布測定装置を提供できる。
図1
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図8