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特許7599454オレフィンセパレータを含まないLIイオンバッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】オレフィンセパレータを含まないLIイオンバッテリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/403 20210101AFI20241206BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20241206BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20241206BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241206BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/434
H01M50/451
H01M50/457
H01M50/46
H01M50/489
H01M4/133
H01M4/134
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022093193
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2020507640の分割
【原出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2022130438
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】62/546,824
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘール, スブラマニヤ ピー.
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/196264(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/062461(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0220233(US,A1)
【文献】特開2016-225077(JP,A)
【文献】特開2009-163942(JP,A)
【文献】特表2020-532048(JP,A)
【文献】特開2007-023366(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106654118(CN,A)
【文献】特開2017-212040(JP,A)
【文献】特開2009-099328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリのためのセパレータを形成する方法であって、
処理領域に配置された第1の電極構造の表面及び第2の電極構造の表面に堆積される金属材料を蒸発プロセスにさらして、蒸発した金属材料を形成することであって、前記金属材料がアルミニウム(Al)である、蒸発した金属材料を形成することと、
前記第1の電極構造の前記表面に第1のセラミックセパレータ層を形成し、前記第2の電極構造の前記表面に第2のセラミックセパレータ層を形成するために、前記処理領域に反応性ガスを流入させることであって、
酸素を水蒸気にさらして、湿った酸素を形成することと、
前記湿った酸素を前記処理領域に導入することと
を含む、反応性ガスを流入させることと、
前記反応性ガスと蒸発した前記金属材料とを反応させて、前記第1の電極構造の前記表面に前記第1のセラミックセパレータ層を堆積し、前記第2の電極構造の前記表面に前記第2のセラミックセパレータ層を堆積することと
を含み、前記第1のセラミックセパレータ層が非多孔性材料を含み、前記第2のセラミックセパレータ層が多孔性材料を含む、
方法。
【請求項2】
前記セラミックセパレータ層が、水酸化酸化アルミニウム層である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸発プロセスが、熱蒸発プロセス又は電子ビーム蒸発プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸発プロセスが、前記金属材料を摂氏1300度と摂氏1600度との間の温度にさらすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のセラミックセパレータ層及び前記第2のセラミックセパレータ層が、1ナノメートルから3000ナノメートルの範囲の厚さを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記厚さが、10ナノメートルから500ナノメートルの範囲である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
湿式コーティング技術を使用して、前記第1の電極構造と前記第2の電極構造の少なくとも一方のエッジにセラミックエッジコーティングを堆積すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記セラミックエッジコーティングを堆積することが、前記第1の電極構造と前記第2の電極構造の前記少なくとも一方の前記表面に堆積される前記金属材料をさらす前に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記セラミックエッジコーティングを堆積することが、前記第1の電極構造の前記表面に前記第1のセラミックセパレータ層を堆積し、前記第2の電極構造の前記表面に前記第2のセラミックセパレータ層を堆積した後に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の電極構造が負電極である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の電極構造が正電極である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のセラミックセパレータ層と前記第2のセラミックセパレータ層の少なくとも一方の上にゲルポリマー層を堆積することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
電極構造を形成する方法であって、
処理領域に配置された負電極の表面及び正電極の表面の上に堆積される金属材料を、熱蒸発プロセス又は電子ビーム蒸発プロセスにさらして、蒸発した金属材料を形成することであって、前記金属材料がアルミニウム(Al)である、蒸発した金属材料を形成することと、
前記処理領域に反応性ガスを流入させることであって、
前記負電極の前記表面に第1のセラミックセパレータ層を形成し、前記正電極の前記表面に第2のセラミックセパレータ層を形成するために、酸素を水蒸気にさらして、湿った酸素を形成することと、
前記湿った酸素を前記処理領域に導入することと
を含む、反応性ガスを流入させることと、
前記反応性ガスと前記蒸発した金属材料とを反応させて、前記負電極の前記表面上に前記第1のセラミックセパレータ層を堆積し、前記正電極の前記表面上に前記第2のセラミックセパレータ層を堆積することと、
を含み、前記第1のセラミックセパレータ層が非多孔性材料を含み、前記第2のセラミックセパレータ層が多孔性材料を含む、
方法。
【請求項14】
前記第1のセラミックセパレータ層が非多孔性のリチウムイオン伝導性材料を含み、前記第2のセラミックセパレータ層が多孔性のリチウムイオン伝導性材料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記負電極が、グラファイト又はケイ素含有グラファイトから構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ゲルポリマー層が、前記第1のセラミックセパレータ層と前記第2のセラミックセパレータ層との間に挟まれた1つ又は複数のゲルポリマー層を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記正電極が、層間化合物、挿入化合物、又は電気化学的に活性なポリマーから構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のセラミックセパレータ層と前記第2のセラミックセパレータ層の少なくとも一方の上にゲルポリマー層を堆積することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、概して、セパレータ、前述のセパレータを含む、バッテリ及びコンデンサといった、高性能電気化学デバイス、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサやリチウムイオン(Liイオン)バッテリといった急速充電、大容量エネルギー貯蔵デバイスは、携帯用電子機器、医療、搬送、グリッド接続された大エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー貯蔵、及び無停電電源(UPS)を含む、ますます多くの用途で使用されている。
【0003】
Liイオンバッテリは、通常、アノード電極、カソード電極、及びアノード電極とカソード電極との間に配置されたセパレータを含む。セパレータは、カソード電極とアノード電極との間の物理的及び電気的な分離をもたらす電子絶縁体である。セパレータは、通常、微多孔性ポリエチレン及びポリオレフィンから作られる。電気化学反応中に、即ち充放電中に、Liイオンは、電解質を介して、2つの電極間のセパレータのポアを通って搬送される。したがって、イオン伝導性を高めるには、多孔性が高いことが望ましい。しかしながら、多孔性の高いセパレータの一部は、サイクリング中に形成されたリチウムデンドライト(dendrite)が電極間で短絡を起こすと、電気的短絡の影響を受けやすくなる。
【0004】
現在、バッテリセル製造業者はセパレータを購入しており、それらのセパレータは、アノード電極とカソード電極とともに別々のプロセスで積層されている。他のセパレータは、通常、ポリマーの湿式又は乾燥押し出し加工によって作られ、その後、ポリマーに孔(裂け目)を生成するために引き伸ばされる。セパレータはまた、Liイオンバッテリの中で最も高価な構成要素の1つであり、バッテリセルの材料費の20%以上を占める。
【0005】
ほとんどのエネルギー貯蔵用途では、エネルギー貯蔵デバイスの充電時間と容量が重要なパラメータである。加えて、このようなエネルギー貯蔵デバイスのサイズ、重量、及び/又は費用は、大きな重大な制限になる可能性がある。現在市販されているセパレータの使用には、多数の欠点がある。即ち、そのような市販の材料により、そのような材料から構成される電極の最小サイズが制限され、電気的短絡が発生し、製造方法が複雑になり、かつ材料が高価になる。更に、現在のセパレータの設計では、リチウムデンドライトの成長が頻繁に発生し、短絡につながることがある。
【0006】
したがって、当技術分野では、より小さく、より軽く、より費用効率の高い製造が可能なセパレータを備えた、より高速の充電、より大容量のエネルギー貯蔵デバイスが必要である。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施態様は、概して、セパレータ、前述のセパレータを含む、バッテリ及びコンデンサといった、高性能電気化学デバイス、並びにそれらの製造方法に関する。1つの実施態様では、バッテリのためのセパレータを形成する方法が提供される。方法は、処理領域に配置された電極構造の表面に堆積される金属材料を、蒸発プロセスにさらすことを含む。方法は、反応性ガスを処理領域に流入させることを更に含む。方法は、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを更に含む。
【0008】
別の実施態様では、バッテリを形成する方法が提供される。方法は、正電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを含む。正電極構造の表面に堆積される金属材料を蒸発プロセスにさらすことと、反応性ガスを処理領域に流入させることと、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、セラミックセパレータ層を堆積することとによって、セラミックセパレータ層が、正電極構造の表面に堆積される。正電極構造は、セラミックセパレータ層が間にある状態で、負電極と接合される。
【0009】
更に別の実施態様では、バッテリを形成する方法が提供される。方法は、負電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを含む。負電極構造の表面に堆積される金属材料を蒸発プロセスにさらすことと、反応性ガスを処理領域に流入させることと、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、負電極構造の上にセラミックセパレータ層を堆積することとによって、セラミックセパレータ層が、負電極構造の表面に堆積される。負電極構造は、セラミックセパレータ層が間にある状態で、正電極と接合される。
【0010】
更に別の実施態様では、バッテリを形成する方法が提供される。方法は、正電極構造の表面に第1のセラミックセパレータ層を堆積することを含む。正電極構造の表面に堆積される金属材料を蒸発プロセスにさらすことと、反応性ガスを処理領域に流入させることと、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、セラミックセパレータ層を堆積することとによって、セラミックセパレータ層が、正電極構造の表面に堆積される。方法は、負電極構造の表面に第2のセラミックセパレータ層を堆積することを更に含む。負電極構造の表面に堆積される金属材料を蒸発プロセスにさらすことと、反応性ガスを処理領域に流入させることと、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、負電極構造の上に第2のセラミックセパレータ層を堆積することとによって、第2のセラミックセパレータ層が、負電極構造の表面に堆積される。正電極と負電極は共に接合されてバッテリを形成する。
【0011】
更に別の実施態様では、バッテリのためのセパレータを形成する方法が提供される。方法は、処理領域に配置された電極構造の表面に堆積される金属材料を、蒸発プロセスにさらすことを含む。方法は、反応性ガスを処理領域に流入させることを更に含む。方法は、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを更に含む。反応性ガスを処理領域に流入させることは、湿った酸素を処理領域に流入させることを含む。
【0012】
更に別の実施態様では、バッテリを形成する方法が提供される。方法は、負電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを含む。セラミックセパレータ層を堆積することは、処理領域に配置された負電極構造の表面に堆積される金属材料を、蒸発プロセスにさらすことを更に含む。セラミックセパレータ層を堆積することは、反応性ガスを処理領域に流入させることを更に含む。セラミックセパレータ層を堆積することは、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、負電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを更に含み、反応性ガスを処理領域に流入させることが、湿った酸素を処理領域に流入させることを含む。方法は、負電極構造を、セラミックセパレータ層が間にある状態で、正電極構造と接合することを更に含む。
【0013】
更に別の実施態様では、バッテリを形成する方法が提供される。方法は、正電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを含む。セラミックセパレータ層を堆積することは、処理領域に配置された正電極構造の表面に堆積される金属材料を、蒸発プロセスにさらすことを含む。セラミックセパレータ層を堆積することは、反応性ガスを処理領域に流入させることを更に含む。セラミックセパレータ層を堆積することは、反応性ガスと蒸発した金属材料とを反応させて、正電極構造の表面にセラミックセパレータ層を堆積することを更に含む。反応性ガスを処理領域に流入させることは、湿った酸素を処理領域に流入させることを含む。方法は、正電極構造を、セラミックセパレータ層が間にある状態で、負電極構造と接合することを更に含む。
【0014】
上述の本開示の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約された実施態様のより具体的な説明が、実施態様を参照することによって得られ、それらの一部の実施態様が、添付の図面に例示されている。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施態様も許容しうるため、添付の図面は、本開示の典型的な実施態様のみを示しており、したがって、本発明の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従って形成されたセル構造の1つの実施態様の断面図を示す。
図2】本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従って形成されたセル構造の別の実施態様の断面図を示す。
図3】本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従って形成されたセル構造の更に別の実施態様の断面図を示す。
図4】本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従って形成されたセル構造の更に別の実施態様の断面図を示す。
図5】本書に記載の1つ又は複数の実施態様による、セル構造を形成するための方法の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。
図6】本書に記載の1つ又は複数の実施態様による、電極構造を形成するための方法の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。
図7】本書に記載の1つ又は複数の実施態様による、電極構造を形成するための方法の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。
図8】本書に記載の1つ又は複数の実施態様による、電極構造を形成するための方法の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。
図9】本書に記載の1つ又は複数の実施態様による、セラミックセパレータを形成するためのウェブツールの概略図を示す。
図10A】コーティングされていないカソード材料の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図10B】本書に記載の実施態様による、酸化アルミニウムでコーティングされたカソード材料のSEM画像を示す。
図11】本書に記載の実施態様に従って形成されたセラミックセパレータ層を有するセル構造の概略断面図のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を示すのに同一の参照番号を使用した。1つの実施態様の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の実施態様に有益に組み込まれることがあると想定されている。
【0017】
以下の開示は、セパレータ、前述のセパレータを含む高性能電気化学セル及びバッテリ、並びにそれらの製造方法を説明する。本開示の様々な実施態様の完全な理解をもたらすために、特定の詳細が以下の説明及び図1から図11に提示されている。電気化学セル及びバッテリに関連することが多い周知の構造及びシステムを説明する他の詳細は、様々な実施態様の説明を不必要に曖昧にすることを避けるために、以下の開示では説明されない。
【0018】
図に示した詳細、寸法、角度及び他の特徴の多くは、特定の実施態様の例示にすぎない。したがって、他の実施態様は、本開示の本質及び範囲から逸脱することなく、他の詳細、構成要素、寸法、角度及び特徴を有する可能性がある。加えて、本開示の更なる実施態様は、以下で説明されるいくつかの詳細がなくても実行することができる。
【0019】
本書に記載の実施態様は、TopMet(登録商標)、SmartWeb(登録商標)、TopBeam(登録商標)(これらのすべてが、カリフォルニア州サンタクララのApplied Materials、Inc.から入手可能である)といった、ロールツーロールコーティングシステムを使用して実行することができる高速蒸発プロセスを参照して、以下で詳細に説明されることになる。高速蒸発プロセスを実行可能な他のツールもまた、本書に記載の実施態様から利益を得るために適合されることがある。加えて、本書に記載の高速蒸発プロセスを可能にする任意のシステムは、利益を得るために使用することができる。本書に記載の装置の説明は、例示的なものであり、本書に記載の実施態様の範囲を限定するものと理解又は解釈されるべきではない。また、ロールツーロールプロセスとして説明されているが、本書に記載の実施態様は、個別のポリマー基板上で実行されてもよいと理解すべきである。
【0020】
「約(about)」という用語は、概して、示した値の±0.5%、1%、2%、5%、又は±10%までの範囲内を示す。例えば、約10nmのポアサイズは、概して、最も広い意味で10nm±10%、即ち、9.0-11.0nmを示している。加えて、「約(about)」という用語は、測定誤差(即ち、測定方法の制限による)、又は代替的には、群(例えば、ポアの母集団)の物理的特性の変動若しくは平均のいずれかを示す可能性がある。
【0021】
本書で使用される「るつぼ(crucible)」という用語は、るつぼが加熱されると、るつぼに供給される材料を蒸発させることができるユニットと理解されよう。要するに、るつぼは、固体材料を蒸気に変換するように適合されたユニットとして定義される。本開示の範囲内では、「るつぼ」及び「蒸発ユニット(evaporation unit)」という用語は、同義的に使用される。
【0022】
現在利用可能な世代のバッテリ、特にLiイオンバッテリは、多孔性ポリオレフィンセパレータを使用しており、このセパレータは、温度が上昇すると熱収縮の影響を受けやすく、正負の電極間で又は対応する電流コレクタ間で短絡を引き起こすことがある。加えて、一部のポリオレフィンセパレータには、濡れ性が悪いという問題がある。セパレータ上のセラミックコーティングは、電極間の直接接触の防止に役立ち、Li金属に関連した潜在的なデンドライト成長の防止にも役立つ。現在最先端のセラミックコーティングは、複合材を作るためのポリマー結合剤と、スラリを作るための溶剤との中に分散されたセラミック粒子の湿式コーティング(例えば、スロットダイ技術)を使用する。コーティングの厚さは、通常、ランダムなポア構造に通じるポリマーによって結合されたランダムに配向された誘電体材料を含め、およそ3ミクロンである。既存のセラミック粒子のコーティング方法では、このセラミック粒子のランダムな配向による捻じれを減らすのが難しい。更に、現在の湿式コーティング技術を用いて、現在のセラミックコーティングの厚さを減らすのも難しい。微細なセラミック粉末粒子の表面積増大を補償するために、現在の湿式コーティング技術は、スラリの粘性を引き下げるように結合剤と溶剤の量を増やすことを含む。このように、現在の湿式コーティング技術は、いくつかの問題に悩まされている。
【0023】
製造の観点から、乾燥方法によるセラミックコーティングのインシトゥ(その場)堆積が、コストと性能の両観点で好まれている。本開示において、薄い低イオン抵抗セラミックコーティングは、正電極の表面及び/又は負電極の表面上に直接形成され、セラミックコーティングは、金属又は金属化合物の反応性蒸発を使用する乾燥方法によって形成される。更に、セラミックコーティングは、適切な厚さ、マイクロ/ナノ構造、多層構造、形態、ポア構造及びポア/セラミック配向に関して調整可能である。
【0024】
従来のセラミックコーティングセパレータと比較して、本書に記載の反応性蒸発技術は、以下の利点のうちの少なくとも1つを有する。(1)薄いセパレータは不活性な構成要素の体積分率を低下させ、これに対応してエネルギー密度を高め、セパレータ全体にわたるイオン抵抗を低下させる。(2)コーティングの厚さと形態を制御することによって、捻じれたポアを減らし、セパレータ性能の向上につながる。(3)セラミックのポア表面は、電解質全体のイオン伝導率を高める。(4)適切に設計されたセラミックコーティングセパレータは、製造上の欠陥を判定するためのX線検出を高めよう。(5)セパレータのより高い電圧安定性と穿刺抵抗性は、ナノ複合材料コーティング制御によって実現可能である。セラミックコーティングセパレータのリチウムデンドライト抑制特性は、ナノ表面技術によって高められ、サイクル中に均一なリチウム金属の堆積と剥離を実現する。
【0025】
これまでに達成された結果には、以下が含まれる。(1)均一な300ナノメートルと600ナノメートルの厚さのAlOコーティングが、活性酸素環境でアルミニウム蒸発を使用して正電極上に堆積された。(2)スコッチテープの剥離試験では、AlOコーティングの接着が良好のようだ。(3)柱状のAlO構造と微結晶は、セラミックセパレータ層内で垂直に位置合わせされる。
【0026】
図1は、本書に記載の実施態様に従って形成されたセル構造100の1つの実施態様の断面図を示す。セル構造100は、本書に記載の実施態様に従って形成された1つ又は複数のセラミックセパレータ層130を有する。いくつかの実施態様では、セル構造100は、Liイオンバッテリ構造である。セル構造100は、正電流コレクタ110と、正電流コレクタ110の両側に形成された正電極(単数若しくは複数)120a、120b(まとめて120)と、1つ又は複数のセラミックセパレータ層(単数若しくは複数)130a-c(まとめて130)と、負電流コレクタ150と、負電流コレクタの両側に形成された負電極(単数若しくは複数)140a、140b(まとめて140)とを有する。図1では、電流コレクタがスタックを越えて延びるように示されているが、電流コレクタがスタックを越えて延びる必要はなく、スタックを越えて延びている部分は、タブとして使用されうることに留意されたい。加えて、両面(dual-sided)電極構造が示されているが、本書に記載の実施態様は、片面電極構造にも適用可能である。
【0027】
正電極120及び負電極140上にある電流コレクタ110、150は、それぞれ、同一の電子伝導体又は異なる電子伝導体でありうる。電流コレクタ110、150が構成されうる金属の例は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、スズ(Sn)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、これらの合金、及びこれらの組み合わせを含む。1つの実施態様では、電流コレクタ110、150のうちの少なくとも1つは、穿孔される。更に、電流コレクタは、任意の形状因子(例えば、金属の箔、シート、又はプレート)、形状、及びミクロ/マクロ構造のものでありうる。概して、角柱状セルでは、タブは電流コレクタと同一の材料で形成され、スタックの製造中に形成されてもよく、又は後で付加されてもよい。電流コレクタ110及び150を除くすべての構成要素は、リチウムイオン電解質を含む。
【0028】
負電極140又はアノードは、正電極120と互換性のある任意の材料でありうる。負電極140は、372mAh/g以上、好ましくは700mAh/g以上、最も好ましくは1000mAh/g以上のエネルギー容量を有しうる。負電極140は、グラファイト、ケイ素含有グラファイト(例えば、ケイ素(5%未満)混合グラファイト)、リチウム金属箔若しくはリチウム合金箔(例えば、リチウムアルミニウム合金)、又はリチウム金属及び/又はリチウム合金と、炭素(例えば、コークス、グラファイト)、ニッケル、銅、スズ、インジウム、ケイ素、これらの酸化物、又はこれらの組み合わせなどの材料との混合物から構成されうる。負電極140は、リチウムを含む層間化合物(intercalation compound)又はリチウムを含む挿入化合物を含む。
【0029】
正電極120又はカソードは、負電極140と互換性のある任意の材料であってもよく、層間化合物、挿入化合物、又は電気化学的に活性なポリマーを含みうる。適切な層間(intercalation)材料は、例えば、リチウム含有金属酸化物、MoS、FeS、MnO、TiS、NbSe、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、V13及びVを含む。適切なポリマーは、例えば、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、及びポリチオフェンを含む。正電極120又はカソードは、リチウムコバルト酸化物などの層状酸化物、リン酸鉄リチウムなどのカンラン石、又はリチウムマンガン酸化物などの尖晶石から作られてもよい。例示的なリチウム含有酸化物は、コバルト酸リチウム(LiCoO)などの層状、又はLiNiCo1-2xMnO、LiNiMnCoO(“NMC”)、LiNi0.5Mn1.5、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O、LiMnなどの混合金属酸化物、及びドープされたリチウム過剰層状層状材料(doped lithium rich layered-layered material)であってもよく、ここで、xはゼロ又はゼロ以外の数である。例示的なリン酸塩は、鉄カンラン石(LiFePO)であってもよく、それは、変種(LiFe(1-x)MgPOなど)、LiMoPO、LiCoPO、LiNiPO、Li(PO、LiVOPO、LiMP、又はLiFe1.5であり、ここで、xはゼロ又はゼロ以外の数である。例示的なフルオロリン酸は、LiVPOF、LiAlPOF、LiV(PO、LiCr(PO、LiCoPOF、又はLiNiPOFでありうる。例示的なケイ酸塩は、LiFeSiO、LiMnSiO、又はLiVOSiOでありうる。例示的な非リチウム化合物は、Na(POである。
【0030】
いくつかの実施態様では、正電極120は正電極粒子から形成される。いくつかの実施態様では、より高い電圧安定性、電解質との界面適合性、及びより長いバッテリサイクル寿命を増進するために、正電極粒子がコーティングされる。正電極粒子のコーティングは、ゾルゲル技術、正電極材料へのナノ粒子の乾燥コーティング、又は原子層堆積(ALD)技術によって実行されうる。
【0031】
本開示によるリチウムイオンセルのいくつかの実施態様では、リチウムは、例えば、負電極140でのカーボングラファイト(LiC)及び正電極120でのリチウムマンガン酸化物(LiMnO)若しくはコバルト酸リチウム(LiCoO)の結晶構造の原子層に含まれるが、いくつかの実施態様では、負電極140は、ケイ素、スズなどのリチウム吸収材料も含みうる。セルは、平面構造として示されていても、層のスタックを丸めることによって円筒状に形成されてもよく、更に、他のセル構成(例えば、プリズムセル、ボタンセル)が形成されてもよい。
【0032】
セル構成要素120、130、及び140に注入される電解質は、液体/ゲル又は固体ポリマーで構成することができ、それぞれ異なっていてもよい。いくつかの実施態様では、電解質は主として塩と媒質(例えば、液体電解質では、媒質は溶媒と称され、ゲル電解質では、媒質はポリマーマトリクスでありうる)を含む。塩は、リチウム塩でありうる。リチウム塩は、例えば、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiBF、及びLiClO、BETTE電解質(ミネソタ州ミネアポリスの3M Corp.から市販されている)及びこれらの組み合わせを含みうる。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、EC/PC、2-MeTHF(2-メチルテトラヒドロフラン)/EC/PC、EC/DMC(ジメチルカーボネート)、EC/DME(ジメチルエタン)、EC/DEC(ジメチルカーボネート)、EC/EMC(エチルメチルカーボネート)、EC/EMC/DMC/DEC、EC/EMC/DMC/DEC/PE、PC/DME、及びDME/PCを含みうる。ポリマーマトリクスには、例えば、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVDF:THF(PVDF:テトラヒドロフラン)、PVDF:CTFE(PVDF:クロロトリフルオロエチレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、及びPEO(ポリエチレン酸化物)が含まれうる。
【0033】
いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、ポアを有する多孔性(例えば、微多孔性)セラミック層(例えば、セパレータ膜)130を含む。いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、非多孔性である。いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、リチウムイオン伝導性材料を含む。リチウムイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性セラミック又はリチウムイオン伝導性ガラス若しくは液晶でありうる。いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、イオン伝導性である必要はないが、電解質(液体、ゲル、固体、これらの組み合わせなど)で満たされると、多孔性セラミックと電解質との組み合わせは、イオン伝導性となる。セラミックセパレータ層130は、少なくとも、電子的短絡(例えば、アノードとカソードの直接又は物理的接触)を防ぎ、デンドライトの成長を阻止するように適合される。セラミックセパレータ層130は、少なくとも、熱暴走の事象中にアノードとカソードとの間のイオン伝導性(又は流れ)を阻止(又は遮断)するように適合されてもよい。セラミックセパレータ層130は、アノードとカソードとの間をイオンが流れることができるほど十分に伝導力がなければならず、よって電流が選択された量だけ、セルによって生成されうる。セラミックセパレータ層130は、下にある電極材料に十分に接着すべきであり、即ち、分離が生じてはならない。本書で説明するように、セラミックセパレータ層130は、蒸発技術を使用して、下にある電極の上に形成される。
【0034】
セラミックセパレータ層130は、1つ又は複数のセラミック材料を含む。セラミック材料は、酸化物でありうる。セラミック材料は、例えば、酸化アルミニウム(Al)、AlO、AlOxNy、AlN(窒素環境で堆積されたアルミニウム)、水酸化酸化アルミニウム((AlO(OH))(例えば、ダイアスポア((α-AlO(OH)))、ベーマイト
、若しくはアクダライト(5Al・HO))、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、SiS、SiPO、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、MgO、TiO、Ta、Nb、LiAlO、BaTiO、BN、イオン伝導性ガーネット、イオン伝導性ペロブスカイト、イオン伝導性アンチペロブスカイト、多孔性ガラスセラミックなど、又はこれらの組み合わせから選択されうる。1つの実施態様では、セラミック材料は、多孔性酸化アルミニウム、多孔性-ZrO、多孔性-SiO、多孔性-MgO、多孔性-TiO、多孔性-Ta、多孔性-Nb、多孔性-LiAlO、多孔性-BaTiO、イオン伝導性ガーネット、イオン伝導性アンチペロブスカイト、多孔性ガラス誘電体、又はこれらの組み合わせからなる群から選択された材料である。セラミックセパレータ層130は、結合剤を含まないセラミック層である。いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、多孔性酸化アルミニウム層である。
【0035】
いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、リチウムイオン伝導性材料であってもよい。リチウムイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性セラミック又はリチウムイオン伝導性ガラス若しくはイオン伝導性液晶であってもよい。Liイオン伝導性材料は、例えば、LiPON、Li7La3Zr2O12の結晶相か又はアモルファス相のいずれかのドープされた変種、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12、及びLi3PS4、リン酸リチウムガラス、硫化物ガラス、(1-x)LiI-(x)LiSnS、xLiI-(1-x)LiSnS、硫化物と酸化物の混合電解質(結晶LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)LiSnS混合物、及びアモルファス(x)LiI-(1-x)LiSnSの1つ又は複数からなりうる。1つの実施態様では、xは、0と1との間(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9)である。Liイオン伝導性材料は、物理的気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、スプレー、ドクターブレード、印刷、又は多くのコーティング方法のいずれかを使用して、リチウム金属膜上に直接堆積させることができる。一部の実施態様に適した方法は、PVDである。いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、イオン伝導性である必要はないが、電解質(液体、ゲル、固体、これらの組み合わせなど)で満たされると、多孔性基板と電解質との組み合わせは、イオン伝導性となる。
【0036】
1つの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、リチウムイオン伝導性材料であり、リチウムイオン伝導性材料は、以下からなる群から選択される。LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO(0<x<1))、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12(0<x<3))、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、リチウム含有硫化物(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、LiPSX(xはCl、Br又はI))。
【0037】
いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、セラミックセパレータ層130の総重量に基づき、約50重量%から約100重量%の酸化アルミニウム(例えば、約75重量%から約100重量%、約85重量%から約100重量%の酸化アルミニウム)を含む。
【0038】
いくつかの実施態様では、セラミック材料は、酸化雰囲気で蒸発したガラスと混合される。例えば、セラミック層の物理的特性(柔軟性、破壊靭性など)を変更するために、SiOをAlに導入することができる。
【0039】
いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、複数のセラミック柱状突出部を含む。セラミック柱形状突出部は、柱形状突出部の底部(例えば、柱形状突出部が多孔性基板に接する場所)から、柱形状突出部の上部まで延びる直径を有しうる。セラミック柱状突出部は、通常、誘電体微粒子を含む。ナノ構造輪郭又はチャネルは、通常、誘電体微粒子間に形成される。
【0040】
いくつかの実施態様では、複数のセラミック柱状突出部は、多孔性の様々な形状のうちの1つ又は複数を含みうる。いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130の柱状突出部は、誘電材料の柱状突出部間にナノ多孔性構造を形成する。1つの実施態様では、ナノ多孔性構造は、10ナノメートル未満(例えば、約1ナノメートルから約10ナノメートル、約3ナノメートルから5ナノメートル)の平均ポアサイズ又は直径を有するようにサイズが決められた複数のナノポアを有しうる。別の実施態様では、ナノ多孔性構造は、約5ナノメートル未満の平均ポアサイズ又は直径を有するようにサイズが決められた複数のナノポアを有していてもよい。1つの実施態様では、ナノ多孔性構造は、約1ナノメートルから約20ナノメートルの範囲(例えば、約2ナノメートルから約15ナノメートルまで、又は約5ナノメートルから約10ナノメートルまで)の範囲の直径を有する複数のナノポアを有する。ナノ多孔性構造により、セラミックセパレータ層130の表面積が大幅に増加する。ナノ多孔性構造のポアは、液体電解質リザーバとして機能することができ、イオン伝導性のために過剰な表面積を提供する。理論により拘束されるものではないが、ナノ多孔性構造内に閉じ込められた電解質液/ゲルは、固体電解質と同様に作用すると考えられる。
【0041】
いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130は、同じ材料から形成された固体膜と比較すると、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は65%の多孔性を有しており、同じ材料から形成された固体膜と比較すると、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、又は70%までの多孔性を有している。
【0042】
多孔性は、推定が容易なため、通常使用される。しかしながら、屈曲度は、リチウム拡散経路を説明するための直接的な尺度である。屈曲度は、多孔性媒体内でリチウムが拡散する捻じれた経路を示す。例えば、拡散が直線的な経路に沿っている場合には、屈曲度は1に等しい。誘電体層内の複雑な形状寸法(例えば、不規則な粒子形状、広範囲に及ぶ粒子サイズ分布など)のため、屈曲度は容易には測定されない。直接的な技術的屈曲度、即ち、「直線的な」経路又はチャネルを導入することが望ましいと考えられている。本書で開示される蒸発プロセスを使用して形成されたセラミック層は、現在知られているスロットダイ技術又は他のスラリ堆積技術を使用して形成されたセラミック層と比較すると、低い屈曲度を示す。
【0043】
セラミックセパレータ層130は、1ナノメートルから3000ナノメートルの範囲内(例えば、10ナノメートルから600ナノメートルの範囲内、50ナノメートルから200ナノメートルの範囲内、100ナノメートルから150ナノメートルの範囲内)の厚さを有するコーティング層又は離散層でありうる。
【0044】
図2は、本書に記載の実施態様に従って形成されたセル構造200の別の実施態様の断面図を示す。いくつかの実施態様では、セル構造200は、Liイオンバッテリ構造である。セル構造100と同様に、セル構造200は、本書に記載の実施態様に従って形成されたセラミックセパレータ層130を有する。しかしながら、セラミックセパレータ層130に加えて、セル構造200はまた、セラミックセパレータ層130と対向する電極構造(この実施態様では負電極140a)との間に配置された1つ又は複数のゲルポリマー層210a、210b(まとめて210)を含む。正電極120bに接触するように示されているが、いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層130aが負電極140aに接触し、ゲルポリマー層210aが負電極140aに接触すると理解すべきである。理論に拘束されるものではないが、ゲルポリマー層は、共に接合されると、正電極と負電極との間の接着を改善するのに役立つと考えられる。
【0045】
ゲルポリマー層210のポリマーは、Liイオンバッテリ産業で現在使用されているポリマーから選択することができる。ゲルポリマー層を形成するために使用されうるポリマーの例は、限定するものではないが、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリエチレン酸化物(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びこれらの組み合わせを含む。理論に束縛されるものではないが、ゲルポリマー層210は、Li伝導性電解質を吸収して、デバイス製造中にゲルを形成することができ、このことは、良好な固体電解質界面(SEI)の形成に有益であり、抵抗の低下にも役立つと考えられる。いくつかの実施態様では、温かい液体とリチウムイオン伝導性塩の混合物を使用して、ゲル電解質又は液晶電解質が作られる。温かい液体の混合物は、らせん状に巻かれた電極又は積層電極に注入され、ネットワーク電極のポアを満たし、電解質は室温で固体又はゲルを形成する。ゲルポリマー層210は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、又は印刷によって形成することができる。ポリマーはまた、Applied Materials Metacoat機器を使用して堆積することができる。誘電体ポリマー層は、約5ナノメートルから約1マイクロメートルの厚さを有しうる。硫黄イオンを含む有機ポリマー(例えば、LiO混合物を含むポリフェニレンスルフィド)は、リチウム金属ベースのアノードに対して良好な結果を示し、場合によっては液晶電解質を形成する。
【0046】
図3は、本書に記載の実施態様に従って形成されたセル構造300の別の実施態様の断面図を示す。いくつかの実施態様では、セル構造300は、Liイオンバッテリ構造である。セル構造200と同様に、セル構造300は、本書に記載の実施態様に従って形成された1つ又は複数のセラミックセパレータ層330a-c(まとめて330)及び1つ又は複数のゲルポリマー層310a、310b(まとめて310)を有する。1つ又は複数のセラミックセパレータ層330は、1つ又は複数のセラミックセパレータ層130に類似している。1つ又は複数のゲルポリマー層310は、1つ又は複数のゲルポリマー層210に類似している。しかしながら、ゲルポリマー層310aは、セラミックセパレータ層330aとセラミックセパレータ層330bとの間に配置されるか、又は「挟まれる(sandwiched)」。
【0047】
図4は、本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従って形成されたセル構造400の更に別の実施態様の断面図を示す。いくつかの実施態様では、セル構造400は、Liイオンバッテリ構造である。セル構造300と同様に、セル構造400は、1つ又は複数のセラミックセパレータ層430a-c(集合的に430)と、本書に記載の実施態様に従って形成された1つ又は複数のゲルポリマー層440a、440b(まとめて440)を有する。1つ又は複数のセラミックセパレータ層430は、1つ又は複数のセラミックセパレータ層(単数又は複数)130に類似している。1つ又は複数のゲルポリマー層440a、440b(まとめて440)は、1つ又は複数のゲルポリマー層210に類似している。しかしながら、ゲルポリマー層440aは、セラミックセパレータ層430aとセラミックセパレータ層430bとの間に配置されるか、又は「挟まれる(sandwiched)」。セル構造400は、オプションで、リチウム化前の層(pre-lithiation layer)410と、セラミックセパレータ層430とリチウム化前の層410との間に形成された保護膜420とを含む。したがって、図1-3に示されるように、負電極上にセラミックセパレータ層を直接堆積する代わりに、セラミックセパレータ層430は、保護膜420(存在する場合)又は保護膜420が存在しない場合に、リチウム化前の層410のいずれかに直接堆積される。
【0048】
いくつかの実施態様では、負電極140a上に形成されたリチウム化前の層410は、リチウム金属膜である。リチウム金属膜は、本書に記載の実施態様に従って形成されうる。いくつかの実施態様では、負電極140aは、上部にリチウム金属膜が形成されたケイ素グラファイトアノード又は酸化ケイ素グラファイトアノードである。リチウム金属膜は、負電極140aの第1サイクル容量損失から失われたリチウムを補充する。リチウム金属膜は、薄いリチウム金属膜(例えば、20ミクロン以下、約1ミクロンから約20ミクロン、又は約2ミクロンから約10ミクロン)でありうる。リチウム金属膜が負電極として機能するいくつかの実施態様では、リチウム金属膜は、負電極140に取って代わる。リチウム金属膜が負電極として機能するいくつかの実施態様では、リチウム金属膜は、負電流コレクタ150上に形成される。
【0049】
いくつかの実施態様では、保護膜420は、リチウム金属膜上に形成される。保護膜420は、通常、リチウム金属膜上にインシトゥで形成されない。保護膜420は、電気的に絶縁性であるが、リチウムイオンに対して十分に導電性である。1つの実施態様では、保護膜420は、非多孔性膜である。別の実施態様では、保護膜420は、多孔性膜である。1つの実施態様では、保護膜420は、約10ナノメートル未満(例えば、約1ナノメートルから約10ナノメートル、約3ナノメートルから約5ナノメートル)の平均ポアサイズ又は直径を有するようにサイズが決められる複数のナノポアを有する。別の実施態様では、保護膜420は、約5ナノメートル未満の平均ポアサイズ又は直径を有するようにサイズが決められた複数のナノポアを有する。1つの実施態様では、保護膜420は、約1ナノメートルから約20ナノメートルの範囲(例えば、約2ナノメートルから約15ナノメートル、又は約5ナノメートルから約10ナノメートル)の直径を有する複数のナノポアを有する。
【0050】
保護膜420は、1ナノメートルから200ナノメートルの範囲(例えば、5ナノメートルから200ナノメートルの範囲、10ナノメートルから50ナノメートルの範囲)の厚さを有するコーティング又は別個の層であってもよい。理論に拘束されないが、200ナノメートルを超える保護膜は、充電式バッテリ内の抵抗を増加させる可能性があると考えられている。
【0051】
保護膜420を形成するために使用されうる材料の例は、限定されないが、フッ化リチウム(LiF)、酸化アルミニウム、炭酸リチウム(LiCO)、及びこれらの組み合わせを含む。1つの実施態様では、保護膜420は、フッ化リチウム膜である。理論に拘束されるものではないが、保護膜420は、Li伝導性電解質を吸収して、デバイス製造中にゲルを形成することができ、このことは、良好な固体電解質界面(SEI)を形成するのに有益であり、抵抗を下げることにも役立つと考えられる。保護膜420は、蒸発又はスパッタリングなどの物理的気相堆積(PVD)、特殊原子層堆積(ALD)、スロットダイプロセス、薄膜転写プロセス、又は三次元リチウム印刷プロセスによって、リチウム金属膜上に直接堆積させることができる。PVDは、保護膜420の堆積のための好ましい方法である。保護膜420はまた、メタコート機器を使用して堆積させることもできる。
【0052】
セラミックセパレータ層430aは、保護膜420(存在する場合)又は保護膜420が存在しない場合には、リチウム化前の層410のいずれかに直接堆積させてもよい。セラミックセパレータ層430aは、リチウムイオン伝導性材料であってもよい。リチウムイオン伝導性材料は、リチウムイオン伝導性セラミック又はリチウムイオン伝導性ガラスであってもよい。Liイオン伝導性材料は、例えば、LiPON、Li7La3Zr2O12の結晶相か又はアモルファス相のいずれかのドープされた変種、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、Li2S-P2S5、Li10GeP2S12、及びLi3PS4、リン酸リチウムガラス、(1-x)LiI-(x)LiSnS、xLiI-(1-x)LiSnS、硫化物と酸化物の混合電解質(結晶LLZO、アモルファス(1-x)LiI-(x)LiSnS混合物、及びアモルファスxLiI-(1-x)LiSnS)の1つ又は複数からなりうる。1つの実施態様では、xは、0と1との間(例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、及び0.9)である。Liイオン伝導性材料は、物理的気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、スプレー、ドクターブレード、印刷、又は多くのコーティング方法のいずれかを使用して、リチウム化前の層410又は保護膜420の上に直接堆積させることができる。いくつかの実施態様に適した方法は、PVDである。いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層430aは、イオン伝導性である必要はないが、電解質(液体、ゲル、固体、これらの組み合わせなど)で満たされると、多孔性基板と電解質との組み合わせは、イオン伝導性となる。
【0053】
1つの実施態様では、セラミックセパレータ層430aは、リチウムイオン伝導性材料であり、リチウムイオン伝導性材料は、以下からなる群から選択される。LiPON、ガーネット型LiLaZr12の結晶相又はアモルファス相、LISICON(例えば、Li2+2xZn1-xGeO(0<x<1))、NASICON(例えば、Na1+xZrSi3-x12(0<x<3))、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、ドープされたアンチペロブスカイト組成物、リチウム含有硫化物(例えば、LiS、LiS-P、Li10GeP12及びLiPS)、並びにリチウムアルジロダイト(例えば、LiPSX(xはCl、Br又はI))。
【0054】
1つの実施態様では、負電極140上に形成されたセラミックセパレータ層430a、及び正電極120上に形成されたセラミックセパレータ層430bは、異なる材料である。例えば、1つの実施態様では、セラミックセパレータ層430aは、非多孔性リチウムイオン伝導性材料であり、セラミックセパレータ層430bは、多孔性リチウムイオン伝導性材料である。
【0055】
いくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層430は、非多孔性イオン伝導性電解質層であり、これは、いくつかのアノード材料組成物に追加の電気化学的安定性を提供しうる。例えば、1つの実施態様では、負電極140は、上部にリチウム化前の層410(例えば、リチウム金属膜)が形成されたケイ素又は酸化ケイ素混合グラファイトアノード材料であり、フッ化リチウム膜である保護膜420、及びセラミックセパレータ層430は、非多孔性リチウムイオン伝導性材料である。
【0056】
いくつかの実施態様では、方法500(図5を参照)、方法600(図6を参照)又は方法700(図7を参照)の前に、電極(例えば、負電極及び/又は正電極)の表面は、電極の表面の核形成/成長条件を強化するために、オプションで、表面変形処理にさらされる。いくつかの実施態様では、表面変形処理プロセスは、プラズマ処理プロセス(例えば、コロナ放電処理プロセス)である。表面変形処理プロセスは、処理混合ガス(treatment gas mixture)を処理領域内に供給することを含む。次いで、処理混合ガスからプラズマが形成され、電極の表面をプラズマ処理して、電極の少なくとも一部を励起状態に活性化することで、処理された上面を有する処理された電極が形成され、続いて堆積されたセラミックセパレータ層の核形成/成長条件を強化しうる。
【0057】
1つの実施態様では、処理混合ガスは、酸素含有ガス、不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム)、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。1つの実施態様では、処理領域内に供給される酸素含有ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、酸素ラジカル(O)、イオン化酸素原子、二酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、水蒸気、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。他の酸素含有ガスが使用されてもよい。
【0058】
酸化を含む本開示の1つの実施態様によれば、ガス源は、酸素ガス(O)を、質量流量コントローラを通してオゾン発生器に供給し、オゾン発生器は、酸素の大部分をオゾンガス(O)に変換する。結果として生じるOとOの酸素ベースの混合物と、おそらくいくつかの酸素ラジカルOと、イオン化された酸素原子又は分子は、処理領域に送られる。酸素ベースのガスは、処理領域内で電極の表面と反応し、電極は所定の、好ましくは低い温度に加熱されている。オゾンは、反応O→O+Oで自発的に迅速に解離する準安定分子であり、ここで、Oはラジカルであり、酸化可能である利用可能な物質と極めて迅速に反応する。オゾン発生器は、容量結合又は誘導結合されたプラズマ、又はUVランプ源を含む多くの形態で実施されうる。
【0059】
これらの高いオゾン濃度では、比較的高い酸化速度を達成するために、電極をあまり加熱する必要はない。また、オゾン濃度が高いため、オゾン分圧を低下させることができる。オゾンの割合が高いため、オゾンの酸化を20Torr未満の圧力で実行することができる。前述の表面変形技術は例示であり、選択された表面変形を達成する他の表面変形技術が使用されてもよいと理解すべきである。例えば、いくつかの実施態様では、この準備は、電極をコロナ処理にさらすこと、電極を化学的に処理すること(例えば酸化剤により)、又は高分子電解質を電極の表面に吸着又はグラフトすることを含みうる。逆帯電した材料の第1の層が電極に結合するために、帯電した電極を有することが適している場合がある。
【0060】
いくつかの実施態様では、表面変形処理プロセスは、電子ビーム処理プロセスである。電子ビーム源は、電極をコーティングする前に、電極の表面に方向付けられる。電子ビーム源は、線形源でありうる。電子ビームを放出する電子ビームデバイスは、通常、電子ビームがその幅全体にわたって電極に影響を与えるように適合されているため、電極の長手方向の動きにより、電極の表面全体(片側)が電子ビームで処理される。電子ビームデバイスは、例えば、電子フラッド銃、線形電子銃、電子ビームといった電子源でありうる。電子源で使用されるガスは、アルゴン、O、N、CO、又はHe、より具体的にはO、N、CO、又はHeでありうる。
【0061】
放出された電子で処理された電極は、電極とその後に堆積されるセラミックセパレータ層との間で改善された接着を達成するために、物理的、それぞれ構造的に、変更される。選択された効果は、1keVから15keVのエネルギーで、より典型的には5keVから10keV、例えば6keV、7keV、8keV又は9keVのエネルギーで、電子を供給することによって実現することができる。典型的な電子流は、20mAから1500mAまで、例えば500mAである。
【0062】
いくつかの実施態様では、方法500(図5を参照)、方法600(図6を参照)、方法700(図7を参照)、又は方法800(図8を参照)の前に、電極(例えば、負電極及び/又は正電極)の表面は、オプションで、冷却プロセスにさらされる。1つの実施態様では、電極構造の表面は、摂氏-20度と室温(即ち、摂氏20から22度)との間の温度(例えば、摂氏-10度と摂氏0度との間の温度)まで冷却されてもよい。いくつかの実施態様では、電極構造が移動するドラムを冷却することにより、電極構造が冷却されうる。他の能動的冷却手段が、電極構造を冷却するために使用されてもよい。蒸発プロセス中に、電極構造は、摂氏1000度を超える温度にさらされることがあるため、動作510、動作610、及び動作710の蒸発プロセスの前に、電極構造を冷却することが有益である。
【0063】
図5は、本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従って、セル構造を形成するための方法500の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。セル構造は、例えば、図1に示されるセル構造100でありうる。
【0064】
動作510で、負電極の表面及び正電極の表面のうちの少なくとも1つに堆積される材料は、処理領域に堆積される材料を蒸発させるために蒸発プロセスにさらされる。いくつかの実施態様では、負電極は負電極140であり、正電極は正電極120である。いくつかの実施態様では、堆積される材料は、単一の電極(例えば、負電極又は正電極のいずれか)の上に堆積される。いくつかの実施態様では、堆積される材料は、負電極と正電極の両方に堆積される。いくつかの実施態様では、負電極及び正電極への堆積は、同じ処理チャンバで行われてもよく、又は別々の処理チャンバで行われてもよい。いくつかの実施態様では、負電極及び正電極への堆積は、順次行われてもよく、又は同時に行われてもよい。
【0065】
蒸発材料は、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオビウム(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)、インジウム(In)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、イッテルビウム(Yb)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)又はこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。通常、堆積される材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属である。更に、蒸発材料はまた、2つ以上の金属の合金であってもよい。蒸発材料は、蒸発中に蒸発し、1つ又は複数の電極の表面がコーティングされる材料である。堆積される材料(例えば、アルミニウム)は、るつぼ内に提供することができる。例えば、アルミニウムは、熱蒸発技術によって、又は電子ビーム蒸発技術によって、蒸発させることができる。
【0066】
いくつかの実施態様では、蒸発材料は、ワイヤとして、るつぼに供給される。この場合、蒸発材料と反応性ガスの適切な比率が達成されるように、供給速度及び/又はワイヤ直径が選択されなければならない。いくつかの実施態様では、るつぼへの供給のための供給ワイヤの直径は、0.5mmと2.0mmとの間(例えば、1.0mmと1.5mmとの間)で選択される。これらの寸法は、蒸発材料で作られたいくつかの供給ワイヤを参照することがある。ワイヤの典型的な供給速度は、50cm/分と150cm/分との間(例えば、70cm/分と100cm/分との間)の範囲内にある。
【0067】
るつぼが、蒸気を生成するために加熱され、蒸気は、動作510で供給される反応性ガスと反応し、1つ又は複数の電極の表面をセラミックセパレータ層(例えば、セラミックセパレータ層130)でコーティングする。通常、るつぼは、るつぼの対向する側面に配置される、るつぼの電極に電圧を印加することによって加熱される。概して、本書に記載の実施態様によれば、るつぼの材料は導電性である。通常、るつぼの材料として使用される材料は、溶融及び蒸発に使用される温度までの温度耐性がある。通常、本開示のるつぼは、金属ホウ化物、金属窒化物、金属炭化物、非金属ホウ化物、非金属窒化物、非金属炭化物、窒化物、窒化チタン、ホウ化物、グラファイト、TiB、BN、BC、及びSiCからなる群から選択される1つ又は複数の材料から作られる。
【0068】
堆積される材料は、蒸着るつぼを加熱することにより、溶融され蒸発する。るつぼの第1の電気的接続及び第2の電気的接続に接続された電源(図示せず)を提供することにより、加熱を行うことができる。例えば、これらの電気的接続は、銅又は銅合金から作られた電極でありうる。したがって、加熱は、るつぼの本体を通って流れる電流によって行われる。他の実施態様によれば、加熱はまた、蒸発装置の放射ヒータ又は蒸発装置の誘導性加熱ユニットによっても実行されうる。
【0069】
本開示による蒸発ユニットは、通常、摂氏1300度と摂氏1600度との間の温度、例えば摂氏1560度に加熱することができる。これは、るつぼを通る電流を適宜調整することによって、又は放射を適宜調整することによって、行われる。通常、るつぼ材料は、その安定性が当該範囲の温度によって悪影響を受けないように、選択される。通常、1つ又は複数の電極の速度は、20cm/分と200cm/分との間の範囲内、より典型的には80cm/分と120cm/分との間の範囲内、例えば100cm/分などである。これらの場合、搬送のための手段は、基板をこれらの速度で搬送可能とすべきである。
【0070】
動作520で、反応性ガスは、蒸発材料と反応させるために、処理領域に流入され、少なくとも負電極の表面及び正電極の表面にセラミックセパレータ層を形成する。本書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる典型的な実施態様によれば、反応性ガスは、酸素含有ガス、窒素含有ガス、又はこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。本書に記載の実施態様で使用されうる例示的な酸素含有ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、酸素ラジカル(O)、イオン化酸素原子、二酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、水蒸気、又はこれらの組み合わせを含む。本書に記載の実施態様で使用されうる例示的な窒素含有ガスは、N、NO、NO、NH、又はこれらの組み合わせを含む。更なる実施態様によれば、追加のガス、通常、アルゴンなどの不活性ガスを、反応性ガスを含む混合ガスに追加することができる。それにより、通常、反応性ガスの量は、より容易に制御することができる。本書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる典型的な実施態様によれば、プロセスは、110-2mbarから110-6mbar(例えば、110-3mbar以下、110-4mbar以下)の典型的な雰囲気の真空環境で実行することができる。
【0071】
動作520で、いくつかの実施態様では、湿った酸素が反応性ガスとして使用されてもよい。湿った酸素は、水蒸気を含むキャニスターに酸素を流すことによって形成でき、蒸発した材料と反応して、水酸化酸化アルミニウム((AlO(OH))が形成され、電極の表面に堆積される。水酸化酸化アルミニウム((AlO(OH))は通常、ダイアスポア((α-AlO(OH)))、ベーマイト
、又はアクダライト(5Al・HO)の形態をとる。理論に拘束されるものではないが、水酸化酸化アルミニウムが熱力学的に安定しているだけでなく、水素結合が、セラミックセパレータ層の電極の表面への結合強度の改善にも役立つ。
【0072】
いくつかの実施態様では、動作520中に、反応性混合ガスからプラズマが形成される。いくつかの実施態様では、プラズマは酸素含有プラズマである。酸素含有プラズマは、蒸発した材料と反応して、電極の表面にセラミックセパレータ層を堆積する。1つの実施態様では、反応性混合ガスは、酸素含有ガス、不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム)、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。1つの実施態様では、処理領域内に供給される酸素含有ガスは、酸素(O)、オゾン(O)、酸素ラジカル(O)、イオン化酸素原子、二酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、水蒸気、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む。他の酸素含有ガスが使用されてもよい。いくつかの実施態様では、遠隔プラズマ源を使用してプラズマが形成され、処理領域に送られる。
【0073】
いくつかの実施態様では、動作520中に、ガス源は、酸素ガス(O)を、質量流量コントローラを通してオゾン発生器に供給し、オゾン発生器は、酸素の大部分をオゾンガス(O)に変換する。結果として生じるOとOの酸素ベースの混合物と、おそらくいくつかの酸素ラジカルOと、イオン化された酸素原子又は分子は、処理領域に送られる。酸素ベースのガスは、処理領域内で電極構造の表面と反応し、電極構造は所定の、好ましくは低温に加熱されている。オゾンは、反応O→O+Oで自発的に迅速に解離する準安定分子であり、ここで、Oはラジカルであり、酸化可能である利用可能な物質と極めて迅速に反応する。オゾン発生器は、容量結合又は誘導結合されたプラズマ、又はUVランプ源を含む多くの形態で実施されうる。
【0074】
いくつかの実施態様では、正電極及び/又は負電極の少なくとも1つのエッジがさらされたままである場合、短絡を回避するためにさらしたエッジに追加のセラミックエッジコーティングを堆積することが望ましいことがある。セラミックエッジコーティングは、セラミックセパレータ層と同じ材料を含みうる。セラミックエッジコーティングは、湿式堆積法(例えば、スロットダイコーティング)を使用して堆積されてもよく、その後、オプションの乾燥及び/又はカレンダリング動作が続く。セラミックエッジコーティングは、通常、セラミックセパレータ層と類似の厚さを有している。1つの実施態様では、動作510の前にエッジコーティングプロセスが行われる。別の実施態様では、動作520の後にエッジコーティングプロセスが行われる。
【0075】
動作530で、負電極と正電極は、セラミックセパレータ層がこれらの間にある状態で共に接合されて、セル構造、例えばセル構造100を形成する。
【0076】
図6は、本書で説明される1つ又は複数の実施態様に従ってセル構造を形成するための方法600の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。セル構造は、例えば、図2に示されるセル構造200であってもよい。方法600が、負電極の表面又は正電極の表面のいずれかにゲルポリマー層が堆積される動作630を含むことを除き、方法600は、方法500と同様である。いくつかの実施態様では、ゲルポリマー層は、ゲルポリマー層210である。いくつかの実施態様では、負電極は負電極140であり、正電極は正電極120である。いくつかの実施態様において、セラミックセパレータ層130は、単一の電極(例えば、負電極又は正電極)の上に堆積され、ゲルポリマー層210は、電極を共に接合する前に、他の電極の上に堆積される。
【0077】
動作610で、負電極の表面及び正電極の表面のうちの少なくとも1つに堆積される材料は、処理領域に堆積される材料を蒸発させるために蒸発プロセスにさらされる。動作610は、動作510と同様に実行されうる。動作620で、反応性ガスは、蒸発した材料と反応するために、処理領域に流され、少なくとも負電極の表面及び正電極の表面にセラミックセパレータ層を形成する。動作620は、動作520と同様に実行されうる。
【0078】
動作630では、ゲルポリマー層が、負電極の表面及び正電極の表面の少なくとも1つに堆積される。ゲルポリマー層210のポリマーは、Liイオンバッテリ産業で現在使用されているポリマーから選択することができる。ゲルポリマー層を形成するために使用されうるポリマーの例は、限定するものではないが、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリエチレン酸化物(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びこれらの組み合わせを含む。理論に束縛されるものではないが、ゲルポリマー層210は、Li伝導性電解質を吸収して、デバイス製造中にゲルを形成することができ、このことは、良好な固体電解質界面(SEI)の形成に有益であり、抵抗の低下にも役立つと考えられる。ゲルポリマー層210は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、又は印刷によって形成することができる。ポリマーはまた、Applied Materials Metacoat機器を使用して堆積することができる。誘電体ポリマー層は、約5ナノメートルから約1マイクロメートルの厚さを有しうる。
【0079】
動作640で、負電極と正電極は、セラミックセパレータ層及びゲルポリマー層がこれらの間にある状態で共に接合され、セル構造、例えばセル構造200を形成する。
【0080】
図7は、本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従ってセル構造を形成するための方法700の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。セル構造は、例えば、図3に示されるセル構造300でありうる。セラミックセパレータ層が、正電極と負電極の両方に堆積され、ゲルポリマー層が、負電極と正電極を共に接合する前に、セラミックセパレータ層の1つに堆積されることを除いて、方法700は、方法600と同様である。いくつかの実施態様では、ゲルポリマー層はゲルポリマー層310aであり、第1のセラミックセパレータ層はセラミックセパレータ層330aであり、第2のセラミックセパレータ層はセラミックセパレータ層330bである。いくつかの実施態様では、負電極は負電極140であり、正電極は正電極120である。
【0081】
動作710で、負電極の表面及び正電極の表面のうちの少なくとも1つに堆積される材料は、処理領域に堆積される材料を蒸発させるために蒸発プロセスにさらされる。動作710は、動作510及び動作610と同様に実行されうる。動作720では、反応性ガスは、蒸発材料と反応させるために、処理領域内に流され、負電極の表面に第1のセラミックセパレータ層を形成し、正電極の表面に第2のセラミックセパレータ層を形成する。いくつかの実施態様では、負電極及び正電極への堆積は、同じ処理チャンバで行われてもよく、又は別々の処理チャンバで行われてもよい。いくつかの実施態様では、負電極及び正電極への堆積は、順次行われてもよく、又は同時に行われてもよい。動作720は、動作520及び動作620と同様に実行されうる。
【0082】
動作730で、ゲルポリマー層が、第1のセラミックセパレータ層及び第2のセラミックセパレータ層の少なくとも1つの上に堆積される。ゲルポリマー層310のポリマーは、Liイオンバッテリ産業で現在使用されているポリマーから選択することができる。ゲルポリマー層を形成するために使用されうるポリマーの例は、限定するものではないが、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリエチレン酸化物(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びこれらの組み合わせを含む。ポリマーはまた、LiOなどの塩を含む液晶とすることができる。理論に束縛されるものではないが、ゲルポリマー層310は、Li伝導性電解質を吸収して、デバイス製造中にゲルを形成することができ、このことは、良好な固体電解質界面(SEI)の形成に有益であり、抵抗の低下にも役立つと考えられる。ゲルポリマー層310は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、又は印刷によって形成することができる。ポリマーはまた、Applied Materials Metacoat機器を使用して堆積することができる。誘電体ポリマー層は、約5ナノメートルから約1マイクロメートルの厚さを有しうる。
【0083】
動作740で、負電極及び正電極は、第1のセラミックセパレータ層、ゲルポリマー層、及び第2のセラミックセパレータ層がそれらの間にある状態で共に接合され、セル構造、例えばセル構造300を形成する。
【0084】
図8は、本書に記載の1つ又は複数の実施態様に従って電極構造を形成するための方法800の1つの実施態様を要約するプロセスフローチャートを示す。セル構造は、例えば、図4に示されるセル構造400でありうる。動作810で、負電極が提供される。負電極構造は、負電極140でありうる。
【0085】
動作820で、リチウム金属層が、負電極上に形成される。リチウム金属層は、リチウム化前の層410でありうる。1つの実施態様では、アルカリ金属膜が基板上に形成される。いくつかの実施態様では、負電極140が既に存在する場合、リチウム化前の層410が負電極140上に形成される。負電極140が存在しない場合、リチウム金属膜は、負電流コレクタ150上に直接形成されてもよい。リチウム金属の薄膜を堆積するための任意の適切なリチウム金属膜堆積プロセスが、リチウム金属の薄膜を堆積するために使用されてもよい。リチウム金属の薄膜の堆積は、蒸発、スロットダイプロセス、転写プロセス、スクリーン印刷又は三次元リチウム印刷プロセスといったPVDプロセスによるものでありうる。アルカリ金属の薄膜を堆積するためのチャンバは、電子ビーム蒸発器、熱蒸発器、若しくはスパッタリングシステムといったPVDシステム、薄膜転写システム(グラビア印刷システムといった大面積パターン印刷システムを含む)又はスロットダイ堆積システムを含みうる。
【0086】
動作830では、オプションで、保護層がリチウム金属層の上に形成される。保護層は、保護膜420でありうる。保護膜420は、フッ化リチウム膜又は炭酸リチウム膜でありうる。1つの実施態様では、保護膜420は、蒸発プロセスを介して形成される。基板上に堆積される材料は、処理領域で堆積される材料を蒸発させるために蒸発プロセスにさらされる。蒸発材料は、リチウム(Li)、フッ化リチウム(LiF)(例えば、超高純度単結晶リチウム)、酸化アルミニウム(AlOx)、炭酸リチウム(LiCO)、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。通常、堆積される材料は、リチウムなどの金属を含む。更に、蒸発材料はまた、無機化合物であってもよい。蒸発材料は、蒸発プロセス中に蒸発し、リチウム金属膜がコーティングされる材料である。堆積される材料(例えば、フッ化リチウム)は、るつぼ内に提供することができる。例えば、フッ化リチウムは、熱蒸発技術によって又は電子ビーム蒸発技術によって、蒸発させることができる。このAlOxは、nmの厚さとすることができるだろうが、非多孔性の可能性がある。一部の電気化学的条件下では、イオン伝導性のLi-Al-Oが形成されることがある。
【0087】
いくつかの実施態様では、蒸発材料は、ペレット形式でるつぼに供給される。いくつかの実施態様では、蒸発材料は、ワイヤとして、るつぼに供給される。この場合、蒸発材料と反応性ガスの求められる比率が達成されるように、供給速度及び/又はワイヤ直径が選択されなければならない。いくつかの実施態様では、るつぼへの供給のための供給ワイヤの直径は、0.5mmと2.0mmとの間(例えば、1.0mmと1.5mmとの間)で選択される。これらの寸法は、蒸発材料で作られたいくつかの供給ワイヤを参照することがある。ワイヤの典型的な供給速度は、50cm/分と150cm/分との間(例えば、70cm/分と100cm/分との間)の範囲内にある。
【0088】
蒸気を発生させ、リチウム金属膜を保護膜でコーティングするために、るつぼが加熱される。通常、るつぼは、るつぼの対向する側面に配置される、るつぼの電極に電圧を印加することによって加熱される。概して、本書に記載の実施態様によれば、るつぼの材料は導電性である。通常、るつぼの材料として使用される材料は、溶融及び蒸発に使用される温度までの温度耐性がある。通常、本開示のるつぼは、金属ホウ化物、金属窒化物、金属炭化物、非金属ホウ化物、非金属窒化物、非金属炭化物、窒化物、窒化チタン、ホウ化物、グラファイト、タングステン、TiB、BN、BC、及びSiCからなる群から選択される1つ又は複数の材料から作られる。
【0089】
堆積される材料は、蒸着るつぼを加熱することにより、溶融され蒸発する。るつぼの第1の電気的接続及び第2の電気的接続に接続された電源(図示せず)を提供することにより、加熱を行うことができる。例えば、これらの電気的接続は、銅又は銅合金から作られた電極でありうる。したがって、加熱は、るつぼの本体を通って流れる電流によって行われる。他の実施態様によれば、加熱はまた、蒸発装置の放射ヒータ又は蒸発装置の誘導性加熱ユニットによっても実行されうる。
【0090】
本開示による蒸発ユニットは、通常、摂氏800度と摂氏1200度との間の温度、例えば摂氏845度に加熱することができる。これは、るつぼを通る電流を適宜調整することによって、又は放射を適宜調整することによって、行われる。通常、るつぼ材料は、その安定性が当該範囲の温度によって悪影響を受けないように、選択される。通常、多孔性ポリマー基板の速度は、20cm/分と200cm/分との間の範囲内、より典型的には80cm/分と120cm/分との間の範囲内、例えば100cm/分などである。これらの場合、搬送のための手段は、基板をこれらの速度で搬送可能とすべきである。
【0091】
動作840において、リチウム金属層の表面及び/又は保護層の表面の少なくとも1つに堆積される材料は、処理領域に堆積される材料を蒸発させるために蒸発プロセスにさらされる。動作810は、動作510、動作610、及び動作710と同様に実行されうる。動作850において、反応性ガスは、蒸発材料と反応させるために、処理領域に流入され、リチウム金属層の表面及び/又は保護層の表面の少なくとも1つにセラミックセパレータ層を形成する。セラミックセパレータ層は、セラミックセパレータ層430aでありうる。いくつかの実施態様では、負電極及び正電極への堆積は、同じ処理チャンバで行われてもよく、又は別々の処理チャンバで行われてもよい。いくつかの実施態様では、負電極及び正電極への堆積は、順次行われてもよく、又は同時に行われてもよい。動作720は、動作520及び動作620と同様に実行されうる。
【0092】
オプションで、セラミックセパレータ層上にゲルポリマー層が形成される。ゲルポリマー層は、ゲルポリマー層440であり、動作730で説明したゲルポリマー層310と同様に形成されてもよい。ゲルポリマー層440のポリマーは、Liイオンバッテリ産業で現在使用されているポリマーから選択することができる。ゲルポリマー層を形成するために使用されうるポリマーの例は、限定するものではないが、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリエチレン酸化物(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びこれらの組み合わせを含む。理論に束縛されるものではないが、ゲルポリマー層440は、Li伝導性電解質を吸収して、デバイス製造中にゲルを形成することができ、このことは、良好な固体電解質界面(SEI)の形成に有益であり、抵抗の低下にも役立つと考えられる。ゲルポリマー層440は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、又は印刷によって形成することができる。ポリマーはまた、Applied Materials Metacoat機器を使用して堆積することができる。誘電体ポリマー層は、約5ナノメートルから約1マイクロメートルの厚さを有しうる。
【0093】
負電極及び正電極は、セラミックセパレータ層430a、ゲルポリマー層440a、及びセラミックセパレータ層430bがそれらの間にある状態で共に接合され、セル構造、例えばセル構造400を形成する。
【0094】
図9は、本書に記載の1つ又は複数の実施態様によるセラミックセパレータを形成するための統合された処理ツール900の概略図を示す。特定の実施態様では、統合された処理ツール900は、一列に配置された複数の処理モジュール又はチャンバ920及び930を備え、それぞれが材料の連続シート910に対して1つの処理動作を実行するように構成される。1つの実施態様では、処理チャンバ920及び930は、独立型のモジュール式処理チャンバであり、各モジュール式処理チャンバが、他のモジュール式処理チャンバから構造的に分離されている。したがって、独立型のモジュール式処理チャンバのそれぞれは、相互に影響を与えることなく、独立して配置、再配置、交換、又は保守することができる。特定の実施態様では、処理チャンバ920及び930は、材料の連続シート910の両面を処理するように構成される。統合された処理ツール900は、垂直に配向された材料の連続シート910を処理するように構成されているが、統合された処理ツール900は、異なる配向に配置された基板、例えば、水平に配向された材料の連続シート910を処理するように構成されてもよい。特定の実施態様では、材料の連続シート910は、フレキシブル導電性基板である。
【0095】
特定の実施態様では、統合された処理ツール900は、転写機構905を備える。転写機構905は、材料の連続シート910を、処理チャンバ920及び930の処理領域を通して移動させることができる任意の転写機構を含みうる。転写機構905は、共通の搬送アーキテクチャを含んでもよい。共通の搬送アーキテクチャは、システムのための巻き取りリール914及び供給リール912を備えたリールツーリールシステムを含みうる。巻き取りリール914及び供給リール912は、個別に加熱されてもよい。巻き取りリール914及び供給リール912は、各リール内に配置された内部熱源又は外部熱源を使用して、個別に加熱されてもよい。共通搬送アーキテクチャは、巻き取りリール914と供給リール912との間に配置された1つ又は複数の中間転写リール(913a及び913b、916a及び916b、918a及び918b)を更に含んでもよい。統合された処理ツール900は、単一の処理領域を有するものとして示されているが、特定の実施態様では、各プロセスに対して別個の又は個別の処理領域、モジュール、又はチャンバを有することが有利なことがある。個別の処理領域、モジュール、又はチャンバを有する実施態様について、共通の搬送アーキテクチャは、各チャンバ又は処理領域が個々の巻き取りリール及び供給リールと、巻き取りリールと供給リールとの間に配置された1つ又は複数のオプションの中間転写リールを有するリールツーリールシステムでありうる。共通の搬送アーキテクチャは、トラックシステムを含みうる。トラックシステムは、処理領域又は個別の処理領域に拡張する。トラックシステムは、ウェブ基板又は個別の基板のいずれかを搬送するように構成される。
【0096】
統合された処理ツール900は、材料の連続シート910を異なる処理チャンバを通して移動させるための供給リール912及び巻き取りリール914を含みうる。異なる処理チャンバは、セラミックセパレータ膜を堆積するための第1の処理チャンバ920と、セラミックセパレータ膜上にゲルポリマー層を堆積するための第2の処理チャンバ930とを含みうる。いくつかの実施態様では、完成した電極は、図に示されるように巻き取りリール914に収集されることはないだろうが、バッテリセルを形成するために、セパレータ及び正電極などと直接統合することもある。
【0097】
第1の処理チャンバ920は、材料の連続シート910上にセラミックセパレータ膜を堆積するように構成される。1つの実施態様では、第1の処理チャンバ920は蒸発チャンバである。蒸発チャンバは、るつぼ内に配置されうる蒸発源944a、944b(まとめて944)を含むように示される処理領域942を有しており、例えば、真空環境における熱蒸発器又は電子ビーム蒸発器(加熱しない)であってもよい。処理領域942に反応性ガスを供給するための第1のガス源950は、処理領域942に連結される。遠隔プラズマ源960は、処理領域にプラズマを供給するために処理領域に連結される。リモートプラズマ源960は、第2のガス源970と連結されてもよい。
【0098】
第2の処理チャンバ930は、材料のシート上に(例えば、セラミックセパレータ膜上に)ゲルポリマー層を堆積するように構成される。ゲルポリマー層は、本書に記載のイオン伝導性材料でありうる。ゲルポリマー層は、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、グラビアコーティング、ラミネーティング、又は印刷によって形成することができる。
【0099】
1つの実施態様では、第2の処理チャンバ930は、三次元印刷チャンバである。印刷チャンバは、ポリマーインクを印刷するための印刷源954a、954b(まとめて954)を含むように示されている処理領域952を有する。
【0100】
1つの実施態様では、処理領域942及び処理領域952は、処理中、真空下及び/又は大気圧未満の圧力のままである。処理領域942の真空レベルは、処理領域952の真空レベルに一致するように調整されてもよい。1つの実施態様では、処理領域942及び処理領域952は、処理中は大気圧のままである。1つの実施態様では、処理領域942及び処理領域952は、処理中に不活性ガス雰囲気下にとどまる。1つの実施態様では、不活性ガス雰囲気は、アルゴンガス雰囲気である。1つの実施態様では、不活性ガス雰囲気は、窒素ガス(N)雰囲気である。
【0101】
追加のチャンバが、統合された処理ツール900に含まれていてもよい。いくつかの実施態様では、追加のチャンバが、電解質可溶性結合剤の堆積を提供してもよく、又はいくつかの実施態様では、追加のチャンバが、電極材料(正又は負の電極材料)の形成を提供してもよい。いくつかの実施態様では、追加のチャンバが電極の切断を提供する。
【0102】
図10Aは、コーティングされていないカソード材料の走査電子顕微鏡(SEM)画像1000を示す。図10Bは、本書に記載の実施態様による酸化アルミニウムでコーティングされたカソード材料のSEM画像1010を示す。
【0103】
図11は、本書に記載の実施態様に従って形成されたセラミックセパレータ層を有するセル構造1100の概略断面図のSEM画像を示す。セル構造1100は、負電極と正電極との間に配置されたセラミックセパレータ層を含む。負電極の厚さは約55μmであり、推定される多孔性は20%未満である。正電極(例えば、LiCoO)の厚さは約65μmであり、推定される多孔性は約17%である。セラミックセパレータ層の厚さは、約12~14μmである。
【0104】
要するに、本開示の利点のいくつかは、セラミックセパレータ材料を直接電極材料の上に効率的に堆積することを含む。セラミックセパレータ材料を直接電極材料の上に堆積することができるため、ポリオレフィンセパレータが不要になる。ポリオレフィンセパレータをなくすことで、熱収縮の可能性が減る一方で、正電極と負電極との間の距離が短くなる。例えば、いくつかの実施態様では、本書に記載の実施態様に従って形成されたセラミックセパレータ層は、厚さが通常約20μm以上であるポリオレフィンセパレートと比較して、厚さが3μm以下となる。加えて、本書に記載の乾燥コーティング技術は、湿式コーティング技術が被るいくつかの欠点を被ることはない。例えば、湿式コーティング技術には溶媒が含まれ、これは下位の電極構造に吸着されることが多く、プロセス全体に余分な乾燥動作を追加する。更に、本書で説明するいくつかの実施態様では、セラミックセパレータ層堆積のプロセスは、堆積プロセス及び処理ツールに追加の乾燥成分を追加せずに、電極構造から残留水分を除去する真空コーティングプロセスである。
【0105】
本開示の要素又はその例示的態様又は実施態様を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味すると意図されている。
【0106】
「含む、備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図されており、列挙された要素以外にも追加の要素が存在しうることを意味する。
【0107】
上記は本開示の実施態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施態様及び更なる実施態様が考案されてもよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11