(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】可変的な高さで傾斜した格子の方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20241206BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023089554
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2021500857の分割
【原出願日】2019-07-01
【審査請求日】2023-06-20
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ, モーガン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー ティマーマン タイセン, ラトガー
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-79096(JP,A)
【文献】特開平3-246510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
G02B 5/18
G02B 27/01
G02B 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路において利用するための構造であって、
格子層が設けられた基板であって、前記格子層には陥凹構造が形成されており、前記陥凹構造は、
第1の末端、
第2の末端、及び
前記第1の末端から前記第2の末端へと変化する深さ
を含む、基板と、
前記陥凹構造の下方の前記格子層内に形成された複数のチャネルであって、各チャネルが複数の格子構造の一部分を部分的に画定し、前記複数のチャネルの底端が同一平面上にあり、前記複数の格子構造の上面が同一平面上にあり且つ前記陥凹構造の前記変化する深さを部分的に画定し、前記複数の格子構造の深さが、前記陥凹構造により画定された前記第1の末端から前記第2の末端へと変化
し、前記複数の格子構造のそれぞれが、前記基板に垂直な平面に対して25度と45度との間の角度にある、複数のチャネルと
を含む、構造。
【請求項2】
前記複数の格子構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと線形的に変化する、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
各格子構造は、深さが
5nmと
700nmの間である、請求項1に記載の構造。
【請求項4】
前記格子層は、屈折率が
1.3以上の光透過性材料から形成される、請求項1に記載の構造。
【請求項5】
導波路において利用するための構造であって、
格子層が設けられた基板と、
前記格子層に形成された陥凹部であって、深さが第1の方向、第2の方向及び第3の方向において変化し、三次元形状を画定する陥凹部と、
前記陥凹部の下方の前記格子層において形成された複数のチャネルであって、各チャネルが、複数の格子構造の一部分を部分的に画定し、前記複数のチャネルの底端が同一平面上にあり、前記複数の格子構造の深さが、前記陥凹部により画定されるように前記第1の方向、前記第2の方向及び前記第3の方向において変化
し、前記複数の格子構造のそれぞれが、前記基板に垂直な平面に対して25度と45度との間の角度にある、複数のチャネルと
を備える、構造。
【請求項6】
前記陥凹部が鞍点形状をしている、請求項
5に記載の構造。
【請求項7】
前記陥凹部が正の曲率を有する、請求項
5に記載の構造。
【請求項8】
前記陥凹部が負の曲率を有する、請求項
5に記載の構造。
【請求項9】
前記格子層は、屈折率が
1.3以上の光透過性材料から形成される、請求項
5に記載の構造。
【請求項10】
各格子構造は、深さが
5nmと
700nmの間である、請求項
5に記載の構造。
【請求項11】
導波路において利用するための構造であって、
格子層が設けられた基板であって、前記格子層には陥凹構造が形成されており、前記陥凹構造は、
第1の末端、
第2の末端、及び
前記第1の末端から前記第2の末端へと変化する深さ
を含む、基板と、
前記陥凹構造の下方の前記格子層内に形成された複数のチャネルであって、各チャネルが複数の格子構造の一部分を部分的に画定し、前記複数のチャネルの底端が同一平面上にあり、前記複数の格子構造の深さが、前記陥凹構造により画定されて、前記第1の末端から前記第2の末端へと非線形的に変化
し、前記複数の格子構造のそれぞれが、前記基板に垂直な平面に対して25度と45度との間の角度にある、複数のチャネルと
を含む、構造。
【請求項12】
前記複数の格子構造の前記深さが、前記第1の末端から前記第2の末端へと変動する、請求項
11に記載の構造。
【請求項13】
前記陥凹構造の前記深さが、第1の方向及び第2の方向に変化して、湾曲した形状を画定する、請求項
11に記載の構造。
【請求項14】
各格子構造は、深さが
5nmと
700nmの間である、請求項
11に記載の構造。
【請求項15】
前記格子層が、
1.3以上の屈折率を有する光透過材料から形成されている、請求項
11に記載の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、表示装置での利用のための方法及び装置に関する。より詳細には、本開示は、導波路において利用するための格子構造を開示する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実は、概して、ユーザがあたかもそこに物理的に存在している、コンピュータが生成したシミュレート環境であると考えられる。仮想現実体験は、3Dで生成して、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:head-mounted display)で、例えば、実際の環境に取って代わる仮想環境を表示するための、レンズとしてのニアアイディスプレイパネルを有する眼鏡又は他のウェアラブルディスプレイデバイスで見ることが可能である。
【0003】
しかしながら拡張現実では、ユーザが、眼鏡又は他のHMD装置のディスプレイレンズを通じて実際の周囲環境を未だ見ることが可能であるが、さらに加えて、表示のために生成され実際の環境の一部として出現する仮想物体の画像も見ることが可能な体験が可能となる。拡張現実は、音声入力及び触覚入力といった任意の種類の入力、並びに、ユーザが体験する環境を強化又は拡張する仮想画像及び映像を含むことが可能である。新たな技術として、拡張現実には多くの課題及び設計上の制約が存在する。
【0004】
1つのこのような課題は、ユーザの様々な視点から十分な鮮明度を保ちながら、周囲環境に重ねられた仮想画像を表示することである。例えば、ユーザの片目の位置が、表示されている仮想画像と精確に合っていない場合には、ユーザは、歪んだ又は不鮮明な画像を見る可能性があり、又は、画像全体が見れない可能性がある。さらに、画像がぼやけていて、最適ではない視野角からは、所望の解像度を下回っている可能性がある。
【0005】
従って、拡張現実表示装置を製造するための改良された方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、概して、表示装置での利用のための方法及び装置に関する。より詳細には、本開示は、導波路において利用するための格子構造を開示する。
【0007】
一実施形態において、導波路において利用するための格子構造が提供される。本構造は、格子層が設けられた基板を有する。格子層には、第1の末端及び第2の末端を含む陥凹部が形成されている。陥凹部は、深さが第1の末端から第2の末端へと変化する。複数のチャネルが格子層において形成される。各チャネルが、複数の格子構造の一部分を部分的に画定する。複数の格子構造はまた、深さが、陥凹部により画定された第1の末端から第2の末端へと変化する。
【0008】
他の実施形態において、導波路において使用するための構造が提供される。本構造は、格子層が設けられた基板を含む。陥凹部が、格子層において第1の方向及び第2の方向において形成される。陥凹部は、深さが第1の方向及び第2の方向において変化し、三次元形状を画定する。複数のチャネルが、格子層において形成される。各チャネルが、複数の格子構造の一部分を部分的に画定する。複数の格子構造はまた、深さが、陥凹部により画定されるように第1の方向及び第2の方向において変化する。
【0009】
さらに別の実施形態において、格子構造を形成する方法が提供される。本方法は、格子層において陥凹部を形成することと、格子層の上にハードマスク及びフォトレジストスタックを形成することと、フォトレジストスタックをエッチングすることと、格子層において複数の格子構造を形成することを含む。
【0010】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ、それらの実施形態の一部が添付の図面に示される。しかしながら、添付の図面は例示的な実施形態を示しているに過ぎず、したがって、その範囲を限定するものとみなされるべきではなく、本開示は他の同等に有効な実施形態を許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書に記載の一実施形態に係る表示装置の概略的な断面図を示す。
【
図2】本明細書に記載の一実施形態に係るくさび形状の陥凹構造が形成された導波路の一部分の拡大断面図である。
【
図3】フォトレジストスタックが形成された
図2の導波路の拡大断面図である。
【
図4】パターニングされたハードマスクが形成された
図3の導波路の拡大断面図である。
【
図5】格子構造が形成された
図4の導波路の拡大断面図である。
【
図6】一実施形態による、導波路を作製する方法のフロー図である。
【
図7A】本明細書に記載の複数の実施形態に係る陥凹構造の形状の例の拡大断面図である。
【
図7B】本明細書に記載の複数の実施形態に係る陥凹構造の形状の例の拡大断面図である。
【
図7C】本明細書に記載の複数の実施形態に係る陥凹構造の形状の例の拡大断面図である。
【
図8A】本明細書に記載の一実施形態に係る陥凹構造の三次元形状の斜視図である。
【
図8B】本明細書に記載の一実施形態に係る陥凹構造の三次元形状の斜視図である。
【
図8C】本明細書に記載の一実施形態に係る陥凹構造の三次元形状の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すために同一の参照番号を使用している。1の実施形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれうると想定されている。
【0013】
格子構造を備えた装置、及び格子構造を形成する方法が開示される。格子構造は、格子層における陥凹部を含む。複数のチャネルが格子層において形成され、格子層における傾斜した格子構造を画定する。陥凹部、及び傾斜した格子構造が、選択的なエッチングプロセスを用いて形成される。
【0014】
図1は、表示装置100において実装された導波路104の概略的な断面図である。表示装置100は、拡張現実、仮想現実、拡張現実と仮想現実が混ざり合い又は溶け合った現実の用途、及び、ハンドヘルドの表示デバイスといった他の表示用途のために構成されている。
【0015】
表示装置100は、例えばユーザの視点101から周囲環境130を見るユーザのために、導波路104介した周囲環境130のシースルー(see-through)観視のために、導波路104を利用する。表示装置100に実装されたときには、導波路104の第1の表面122が、ユーザの眼111の近傍に配置され、当該目111に対向している。導波路104の第2の表面124が、第1の表面122の反対側に配置されており、周囲環境130の近傍にあって当該周囲環境130に対向している。平面的なものとして図示されているが、導波路104は、望まれる用途に従って、湾曲してよく又は角度が付けられていてよいと考えられる。
【0016】
表示装置100は、生成された仮想画像の光線120を導波路104内へと方向付けるための画像マイクロディスプレイ128をさらに備える。仮想画像の光線120は、導波路104内を伝播する。一般に、導波路104は、入力カップリング領域106と、導波路領域108と、出力カップリング領域110とを含む。入力カップリング領域106は、画像マイクロディスプレイ128から光線120(仮想画像)を受信し、光線120は、導波路領域108を介して出力カップリング領域110へと進み、そこで、ユーザの視点101及び視野によって、周囲環境130に重なった仮想画像の可視化が可能となる。画像マイクロディスプレイ128は、ケイ素マイクロディスプレイ上の液晶といった、高解像度表示生成器であり、仮想画像の光線120を導波路104内に投影する。
【0017】
導波路104は、入力格子構造112、及び出力格子構造114を含む。入力格子構造112は、導波路104上の、入力カップリング領域106に対応する領域内に形成されている。出力格子構造114は、導波路104上の、出力カップリング領域110に対応する領域に形成されている。入力格子構造112及び出力格子構造114は、導波路104内での光の伝播に影響を与える。例えば、入力格子構造112は、光線120といった画像マイクロディスプレイ128からの光を入射(couple:結合)し、出力格子構造は、その光をユーザの眼111へと出射する(couple out)。
【0018】
例えば、入力格子構造112は、ユーザの眼111で表示される仮想画像の視野に影響を与える。出力格子構造114は、収束されて導波路104から出射される光線120の量に影響を与える。加えて、出力格子構造114は、ユーザの視点101からの仮想画像の視野を変えて、画像マイクロディスプレイ128の仮想画像をユーザが見ることが可能な視野角を広げる。他の例において、格子構造(図示せず)も、入力カップリング領域106と出力カップリング領域110との間の導波路領域108において形成される。追加的に、所望の格子構造がそれぞれに形成された複数の導波路104が、表示装置100を形成するために利用可能である。
【0019】
図2は、格子構造280(
図5)をそこに形成するための導波路200の拡大部の断面図である。本例において、導波路200は基板202を有し、基板202にはエッチング止め層204が形成されている。基板202は、ケイ素といった光透過性材料で作製される。エッチング止め層204は、基板202の上に形成されている。エッチング止め層204は、例えば、化学気相堆積(CVD:chemical vapor deposition)プロセス、物理的気相堆積(PVD:physical vapor depositio)プロセス、又はスピンオン(spin-on)プロセスによって形成される。エッチング止め層204は、とりわけ、窒化チタン、窒化タンタルといった、エッチングプロセスに対して耐性がある材料で作製される。
【0020】
格子層206が、エッチング止め層204の上に形成される。格子層206は、光透過性材料で形成される。一例において、格子層206は、窒化ケイ素又は酸化ケイ素といったケイ素ベースの材料、又は、酸化チタンといったチタンベースの材料で作製される。格子層206の材料は、約1.3以上といった、例えば1.5さえ上回る高い屈折率を有する。一般に、格子層206は、厚さが約1ミクロン未満、例えば約150ミクロンと約700ミクロンとの間である。例えば、格子層206は、厚さが、約200nmから約600nmの間、例えば、約300nmから約500nmの間、例えば、約400nmである。
【0021】
格子層206が形成された後で、陥凹部220が格子層206において形成される。陥凹部220は、任意の適切な陥凹構造及び形状をしていてよく、くさび形状、錐台形状、又は、円錐形状等であってよいが、これらに限定されない。
図2に図示するように、陥凹部220は、平面的で不等辺のくさび形状の構造をしており、第1の末端230と第2の末端232との間の長さLを有する。陥凹部220の深さDは、第1の末端230から第2の末端232へと増大する。即ち、陥凹部220の深さDは、第1の末端230において最小であり、第2の末端232において最大である。深さDは、約0nmから約700nmの範囲、例えば約100nmと約600nmとの間、例えば約200nmと約500nmとの間の範囲にある。例えば、深さDは、約300nmと約400nmとの間であり、例えば約350nmである。
図2の実施形態において、長さLは、深さDと比較して実質的により大きい。例えば、長さLは約25mmであるが、第1の末端230での深さDは、約0nmと約50nmとの間であり、第2の末端232での深さDは、約250nmと約700nmとの間である。従って、陥凹部220は、陥凹部220の表面と、格子層206の表面206aにより画定される平面と、の間で測定される角度θとして示される、実質的に浅い傾斜部である。本例において、角度θは1度より小さく、例えば、0.1度より小さく、約0.0005度等である。陥凹部220の傾きは、ここでは明確にするために、誇張された角度θで示される。
【0022】
一例において、陥凹部220は、格子層206の領域を選択的にエッチングすることにより形成される。例えば、陥凹部220の第1の部分220aが、格子層206を遅いエッチング速度及び/又は低出力でエッチングすることにより形成される。第2の部分220bが、格子層206を、部分220aよりも上げたエッチング速度及び/又は出力でエッチングすることにより形成される。同様に、第3の部分220cが、格子層206を、部分220a、220bよりも速いエッチング速度及び/又は高い出力でエッチングすることにより形成される。ここでは、図示するために、3つの部分が利用されている。しかしながら、任意の所望の数の部分を、陥凹部220を形成するため利用し、1回の作業ステップ、又は複数のステップでエッチングしうる。さらに、エッチングは、滑らかに増大する間隔(即ち、エッチング速度及び/又は出力)で行うことが可能であり、これにより、陥凹部220は滑らかな表面を有する。一例において、格子構造280のための領域が、例えば、マスク(例えば、フォトリソグラフィーマスク、若しくは近接マスク)、又はエッチングビームを利用することで、陥凹部220の形成前に画定される。外形が滑らかな陥凹部220を形成することが、粗い(即ち、階段状等の)構造と比較して光線の回折及び投影をより良好に制御することで、画質を向上させる。従って、格子構造280全体で出射される光の出力が、著しくより均一である。
【0023】
図3は、フォトレジストスタック(積層体)250が形成された導波路200の一区分である。コンフォーマルなハードマスク208が、格子層206の上に形成されている。ハードマスク208は、例えば、化学気相堆積プロセスを用いて窒化チタンから作製される。一例において、ハードマスク208は、厚さが約30nmと約50nmの間、例えば、約35nmと約45nmの間である。フォトレジストスタック250は、底面反射防止膜(BARC:back anti-reflective coating)210、ケイ素反射防止膜(SiARC:silicon anti-reflective coating)212、及び、フォトレジスト214を含む。BARC210は、スピンオンプロセスを用いて形成され、これにより、BARC210の上面210aが、実質的に平坦(即ち、基板202の表面202aに対して平行)である。BARC210を形成するためにスピンオンプロセスを利用することで、BARC210を平坦化するためにエッチングプロセス又は研磨プロセスが必要ではなく、これにより、薄いBARC210及び/又はその下にある格子層206をオーバーエッチングし又は損傷を与える可能性が無くなる。
【0024】
次に、SiARC212が、BARC210の上に形成される。SiARC212は、例えば化学気相堆積プロセス又はスピンオンプロセスを用いて、ケイ素ベースの材料から形成される。フォトレジスト214が、SiARC212の上に形成される。フォトレジスト214は、例えば、フォトリソグラフィープロセスを用いて、ポリマー材料から形成される。一例において、フォトレジスト214が、スピンオンコーティングを用いて形成され、1つ以上の格子線が露光されて、フォトレジスト214が現像される。フォトレジスト214が形成された後で、フォトレジストスタック250が、エッチングプロセスを用いてパターニングされる。BARC210及びSiARC212によるパターニングは例示的な方法であると理解されたい。ここでは、他のパターニング方法も利用されうる。パターニング方法は、一般に、パターニングされる構造の大きさ及び形状に関連して選択される。
【0025】
図4は、
図3のフォトレジストスタック250がエッチングされ除去された後の導波路200の断面図である。フォトレジストスタック250をエッチングすることで、
図4に示すようにハードマスク208がパターニングされる。ハードマスク208は、
図5に示す傾斜した格子構造280を形成するためのパターンガイドとして機能する。傾斜した格子構造280は、格子層206の範囲内に形成された1つ以上のチャネル270の間で画定される。チャネル270を形成するために、格子層206が再び、選択的なエッチングプロセスを用いてエッチングされる。一例において、傾斜した格子構造280が、くさび形状の陥凹部220を形成するために利用されたプロセスと類似したプロセスを用いて、しかし逆の順序で形成される。例えば、第3の部分220cに対応する領域が、遅いエッチング速度及び/又は低出力でエッチングされる。第2の部分220bに対応する領域が、第3の部分220cよりも速いエッチング速度及び/又は高い出力でエッチングされる。第1の部分220aに対応する領域が、部分220b、220cよりも速いエッチング速度及び/又は高い出力でエッチングされる。一例において、エッチング止め層204が、傾斜した格子構造280の画定を改善するためにエッチングされる。傾斜した格子構造280が形成された後で、ハードマスク208が、エッチングプロセスを用いて、任意選択的に除去される。
【0026】
各傾斜した格子構造280が、深さdを有して形成される。例えば、傾斜した格子構造280は、深さdが約5nmと約700nmとの間、約100nmと約600nmとの間、例えば約500nmでありうる。傾斜した格子構造280の深さは、ユーザへの画像の投影のための所望の波長(即ち、色彩)に従って選択される。
図5の実施形態において、傾斜した格子構造の深さdは、(透視で示される)陥凹部220の第1の末端230から第2の末端232へと減少する。各傾斜した格子構造280の上面280aが、陥凹部220の傾斜に対応する角度が付けられた平面290を画定する。追加的に、各傾斜した格子構造280は、エッチング止め層204の表面204aに対して垂直な平面に対して測定された角度φを有しうる。角度φは、例えば約0度と約70度との間、例えば約25度と約45度との間、例えば約35度である。本明細書に記載の格子構造280を形成することで、所望の画像面に向かう光の回折及び投影が改良されるため、導波路200によって投影される画像の鮮明度が実質的に改善される。傾斜した格子構造280の形状を制御することで、様々な波長(即ち、様々な色彩)の回折の変化が、画質を改善するために制御される。傾斜した格子構造280によりもたらされる制御の向上に因り、光学効率(即ち、ユーザの視点への所望の波長の投影)が大幅に改善される。さらに、望まれない波長の投影が低減され、従って、投影される画像の鮮明度及び画質が上がる。
【0027】
図2~
図5では、平面的で傾斜した、くさび形状の陥凹部220が示されている。しかしながら、本明細書に記載のエッチングプロセスによって、有利に、陥凹部220が、1つ以上の方向において、傾斜及び/又は湾曲を有することが可能となる。従って、陥凹部220は、先に記載したように、任意の適切な形状を有しうる。
図7A~
図7Cは、陥凹部220のために利用することが可能な形状の他の例を示している。例えば、
図7Aは、導波路700の格子層706における、実質的に二等辺三角形状の陥凹部720を示している。陥凹部720は、各周辺領域720a、720bから中央領域720cに向かって延在する2つの平面的な傾斜部を有する。
図7Bは、導波路730の格子層736における他の陥凹部750を示している。陥凹部750は、湾曲した凹面状の構造をしており、周辺領域750a、750bでは深さDが浅く、中央領域750cにおいて深さが増大する。一例において、陥凹部750は、放物線状の形状をしている。例えば、深さDは、周辺領域750a、750bから中央領域750cへと非線形的に増大する。
図7Cは、導波路760の格子層766における他の陥凹部780を示している。陥凹部780は、深さDが第1の末端780aから第2の末端780bへと変動し、従って、陥凹部780の周期的な深さDのパターンを形成する。深さDが線形的に、のこぎり歯状に変動する陥凹部780が示されている。しかしながら、深さDは非線形的に変化し、これにより、陥凹部220は深さDが波状に変動しうることが考えられる。陥凹部、例えば陥凹部720、750、及び780cの深さDは、陥凹部の長さLにわたって、第1の末端(即ち、720a、750a、780a)から第2の末端(即ち、720b、750b、780b)へと線形的又は非線形的に変化しうる。
【0028】
他の例において、陥凹部220は、三次元形状を有する。即ち、深さが、
図8A~
図8Cの例に示すように、1つ以上の方向に、例えば2つの方向(即ち、第1の方向X、及び、第2の方向Y)に変化する。
図8Aは、鞍点形状に湾曲している(即ち、双曲放物面形状をしている)陥凹部820を示している。
図8Bは、正の曲率を有する楕円放物面の形状をした陥凹部850を示している。
図8Cは、負の曲率を有する楕円放物面の形状をした陥凹部880を示している。陥凹部の三次元形状は、
図8A~
図8Cの例には限定されない。他の所望の形状、例えば、とりわけ、正の曲率又は負の曲率を有する平方領域における放物面、楕円面、及び、線形状に傾斜した形状もここでは考えられ、利用されうる。これらの場合には、陥凹部の深さが、X方向とY方向の両方において変化する。従って、傾斜した格子構造の上面、例えば
図5の上面280aは、陥凹部の湾曲の形状により規定されるように曲線状をしている。陥凹部の形状及び/又は深さは、X方向及びY方向における変化に限定されない。例えば、陥凹部の深さは、3つの方向、4つの方向、又はそれ以上の方向において変化しうる。さらに加えて、本明細書ではデカルト座標系を用いて図示したが、くさび形状の構造は、他の座標系を用いて、例えば、極座標系、円筒座標系、又は、球面座標系を用いて形成されうる。本明細書の実施形態は、有利に、陥凹部のための所望の形状を形成するために利用されうる。
【0029】
図6は、導波路における格子構造、例えば、傾斜した格子構造280を形成する方法600を示すフローチャートである。導波路は、一般に、基板上に形成される。一例において、基板は、ケイ素ベースのガラス基板であり、任意選択的なエッチング止め層及び格子層がその上に形成される。他の例において、基板は、エッチング止め層が無いガラス基板である。このようなケースでは、基板は、当該基板上に直接的に形成された格子層及び格子構造として機能する。工程602において、陥凹部が、任意選択的なエッチング止め層の上の格子層において形成される。一例において、陥凹部が、先に記載したように、基板の領域を選択的に処理するエッチングプロセスを用いて形成される。工程604において、コンフォーマルなハードマスクが、格子層の上に堆積させられる。底面反射防止膜(BARC)と、ケイ素反射防止膜(SiARC)と、フォトレジストと、を含むフォトレジストスタックが、ハードマスクの上に形成される。底面反射防止膜が、スピンオン技術を用いて形成され、これにより、当該膜の表面が実質的に平面的である。
【0030】
工程606において、フォトレジストスタックがエッチングされて、ハードマスク上に所望のパターンが形成される。工程608において、ハードマスク及び格子層が、選択的なエッチングプロセスを用いてエッチングされて、先に記載したように、格子層において格子構造を形成する。工程610において、存在するときには、エッチング止め層が任意選択的にエッチングされ、格子構造の形状の画定が改善される。工程612において、ハードマスクが、例えばエッチングプロセスを用いて、任意選択的に除去される。
【0031】
本明細書に記載の実施形態を利用することで、傾斜した格子構造を有する導波路が形成される。傾斜した格子構造は、導波路を透過する光をより良好に収束して方向付け、従って、投影される画像の鮮明度を改善することで、導波路の機能を改善する。傾斜した格子構造によって、所望の画像面に投影される光の波長に対する改善された制御がもたらされる。導波路によって出射される光の出力の均一性が、著しくより均一である。本明細書に記載の実施形態は、導波路を形成するために利用される層に損傷を与えうる制作プロセス、例えば機械的な研磨を無くすことで、導波路の制作をさらに改善する。さらに、本明細書に記載の実施形態によって、格子が二次元又は三次元の形状を有することが可能となり、このことにより、より範囲が広い用途において導波路を利用することが可能となる。
【0032】
以上の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱することなく、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてもよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。