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特許7599599導電助剤、分散液、電極、二次電池、多層カーボンナノチューブ粉末、平面状集合体、フィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクル
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  • 特許-導電助剤、分散液、電極、二次電池、多層カーボンナノチューブ粉末、平面状集合体、フィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】導電助剤、分散液、電極、二次電池、多層カーボンナノチューブ粉末、平面状集合体、フィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクル
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20241206BHJP
   C01B 32/16 20170101ALI20241206BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20241206BHJP
   G03F 1/62 20120101ALI20241206BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241206BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241206BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C01B32/16
C01B32/168
G03F1/62
H01M4/13
H01M4/139
H05K9/00 W
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024058117
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2023112657
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八代 有弘
(72)【発明者】
【氏名】有村 孝
(72)【発明者】
【氏名】亀井 恒
(72)【発明者】
【氏名】赤津 光俊
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-523254(JP,A)
【文献】特開2021-095314(JP,A)
【文献】特開2017-051384(JP,A)
【文献】特開2009-277736(JP,A)
【文献】特開2020-160345(JP,A)
【文献】特開平08-231210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
C01B 32/158
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安息角が10度~90度であり、かつ体積抵抗率が、5.0×10 -3 Ω・cm~9.2×10 -3 Ω・cmである多層カーボンナノチューブ粉末を含む、導電助剤。
【請求項2】
負極用の導電助剤である、請求項1に記載の導電助剤。
【請求項3】
請求項1に記載の導電助剤と、分散媒と、を含む、分散液。
【請求項4】
電極活物質と、請求項1に記載の導電助剤と、を含む電極。
【請求項5】
請求項に記載の電極を備える、二次電池。
【請求項6】
安息角が10度~90度であり、かつ体積抵抗率が、5.0×10 -3 Ω・cm~9.2×10 -3 Ω・cmである多層カーボンナノチューブ粉末。
【請求項7】
負極用の導電助剤である、請求項に記載の多層カーボンナノチューブ粉末。
【請求項8】
請求項又は請求項に記載の多層カーボンナノチューブ粉末と、分散媒と、を含む、分散液。
【請求項9】
電極活物質と、請求項又は請求項に記載の多層カーボンナノチューブ粉末と、を含む電極。
【請求項10】
請求項に記載の電極を備える、二次電池。
【請求項11】
請求項に記載の多層カーボンナノチューブ粉末を含む平面状集合体。
【請求項12】
請求項11に記載の平面状集合体を用いたフィルター。
【請求項13】
請求項11に記載の平面状集合体を用いた電磁波シールド。
【請求項14】
請求項11に記載の平面状集合体を用いた極端紫外線用ペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電助剤、分散液、電極、二次電池、多層カーボンナノチューブ粉末、平面状集合体、フィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称する場合がある)は、機械的特性及び電気的特性が良好であることから、種々の用途への使用が期待されている。例えば、特許文献1には、非水電解質二次電池(特に、リチウムイオン二次電池)が備える電極膜の導電性及び密着性に着目して、所定の物性(即ち、平均外径、BET比表面積、繊維長、G/D比、体積抵抗率、及び真密度)を所定の範囲で満たすカーボンナノチューブを使用することが提案されている。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、モバイル機器、電気自動車等の様々な分野の電源に利用されている。二次電池が備える電極材料においては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、グラフェン、CNT等の炭素質材料、金属材料等の導電助剤を用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-95314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極における導電性向上のために、従来より、カーボンナノチューブ等の炭素質材料を導電助剤として用いることは知られている。しかし、従来の導電助剤を用いた電極では十分な導電性が得られない場合があった。
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、導電性の向上効果に優れる導電助剤を提供することである。
本開示の別の実施形態が解決しようとする課題は、分散液、電極及び二次電池、並びに、多層カーボンナノチューブ粉末を提供することである。
本開示の更に別の実施形態が解決しようとする課題は、多層カーボンナノチューブ粉末を含む平面状集合体、平面状集合体を用いたフィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 引張強度が10MPa~100MPaである多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が10度~90度である多層カーボンナノチューブ粉末を含む、導電助剤。
<2> 前記多層カーボンナノチューブの最大長さが10μm~30000μmである、<1>に記載の導電助剤。
<3> 負極用の導電助剤である、<1>又は<2>に記載の導電助剤
<4> <1>~<3>のいずれか1つに記載の導電助剤と、分散媒と、を含む、分散液。
<5> 電極活物質と、<1>~<3>のいずれか1つに記載の導電助剤と、を含む電極。
<6> <5>に記載の電極を備える、二次電池。
<7> 引張強度が10MPa~100MPaかつ最大長さが1000μm~30000μmである多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が10度~90度である多層カーボンナノチューブ粉末。
<8> <7>に記載の多層カーボンナノチューブ粉末を含む平面状集合体。
<9> <8>に記載の平面状集合体を用いたフィルター。
<10> <8>に記載の平面状集合体を用いた電磁波シールド。
<11> <8>に記載の平面状集合体を用いた極端紫外線用ペリクル。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、導電性の向上効果に優れる導電助剤を提供することができる。
本開示の別の実施形態によれば、分散液、電極及び二次電池、並びに、多層カーボンナノチューブ粉末を提供することができる。
本開示の更に別の実施形態によれば、多層カーボンナノチューブ粉末を含む平面状集合体、平面状集合体を用いたフィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】多層カーボンナノチューブの集合体の一態様を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施できる。
【0011】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0012】
〔導電助剤〕
本開示に係る導電助剤は、引張強度が10MPa~100MPaである多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が10度~90度である多層カーボンナノチューブ粉末を含む。
【0013】
本開示において導電助剤とは、電極材料を用いて形成された電極において、電極活物質(具体的には、正極活性物質又は負極活性物質)と共存して導電性を補助する役割を担い、導電パスを形成する機能を有する物質を指す。
【0014】
本開示に係る導電助剤は、導電性の向上効果に優れる。即ち、本開示に係る導電助剤は、電極内において電極活物質と共存することにより、導電パスの形成性に優れた効果を発揮する。その理由は定かではないが、本開示に係る導電助剤に含まれる多層カーボンナノチューブ粉末が、特定範囲の引張強度を有する多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が上記範囲内であることにより、多層カーボンナノチューブ同士、又は、多層カーボンナノチューブと電極内で多層カーボンナノチューブと共存する材料(例えば、電極活物質及びその他の導電物質)とが、互いに接触した状態を保持し易くなり、多層カーボンナノチューブ粉末自体が有する優れた導電性と相俟って、電極内において安定な導電パスが形成されるためと推測される。
【0015】
また、カーボンナノチューブは分散媒(例えば、水)に分散し難い傾向を示すが、特定範囲の引張強度を有する多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が上記範囲内である多層カーボンナノチューブ粉末は、その一態様において、分散媒に対する分散性に
優れる。このため、電極の形成において、多層カーボンナノチューブ粉末を分散媒に分散させる際に、多層カーボンナノチューブ粉末の分散性が向上し、延いては電極内において安定な導電パスの形成に寄与するものと推測される。
【0016】
本開示において、「引張強度」とは、ISO 527-1の規格に記載の引張試験を参考にしながら測定される。
本開示に係る多層カーボンナノチューブの引張強度(即ち、多層カーボンナノチューブ粉末に粉砕される前の多層カーボンナノチューブの引張強度)は、シート、糸などの引張可能な状態において測定するものとする。
【0017】
本開示において、多層カーボンナノチューブがシートの状態であるとは、多層カーボンナノチューブ粉末に粉砕される前の多層カーボンナノチューブの集合体が、シート状の形態を有することを意味する。
本開示において、多層カーボンナノチューブが糸の状態であるとは、多層カーボンナノチューブ粉末に粉砕される前の多層カーボンナノチューブの集合体が、繊維状の形態を有することを意味する。
【0018】
引張強度は、以下の具体的な測定方法及び測定条件より測定する。
粉砕前の多層カーボンナノチューブがシート状である場合は、シート状の多層カーボンナノチューブ集合体を75mm×10mmに切り出したものを測定試料とし、引張試験装置(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS-Xシリーズ)の把持部に固定し、速度1mm/分にて引っ張り試験を行い、測定試料が破断した際の破断強度を引張強度とする。
粉砕前の多層カーボンナノチューブが糸状である場合は、繊維状の多層カーボンナノチューブを長さが500mmになるように切断したものを測定試料とし、引張試験装置(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS-Xシリーズ)の把持部に固定し、細線つかみ具(株式会社島津製作所製)を用いて、速度1mm/分にて引っ張り試験を行い、測定試料が破断した際の破断強度を引張強度とする。
なお、シート状の測定試料が上記大きさに満たない場合、又は、糸状の測定試料が上記長さに満たない場合、当該測定試料をそのまま用いて引張強度を測定する。
【0019】
多層カーボンナノチューブの引張強度は、10MPa~100MPaであり、30MPa~85MPaであることが好ましく、50MPa~70MPaであることがより好ましい。多層カーボンナノチューブの引張強度が50MPa以上であると、多層カーボンナノチューブの長さが十分に長いため、多層カーボンナノチューブの導電性を確保しやすい。多層カーボンナノチューブの引張強度が70MPa以下であると、シート状又は糸状の多層カーボンナノチューブを砕加工する際に必要な力が少なくて済むため、容易に加工できる。
【0020】
引張強度が10MPa~100MPaである多層カーボンナノチューブの粉砕加工法は、例えば、凍結粉砕法を用いることができる。凍結粉砕法は、多層カーボンナノチューブの集合体がシート状あるいは糸状のいずれにおいても、液体窒素で多層カーボンナノチューブの集合体を急冷することにより、多層カーボンナノチューブの弾性を消失させて粉砕を容易にする加工法である。その他、ボールミル等の公知の粉砕法による粉砕を実施してもよい。
【0021】
本開示において、「安息角」とは、一定の高さから水平面に落下させて堆積した粉体の山が、自発的に崩れることなく安定を保つときに、当該粉体の山の斜面と水平面とのなす角度を指す。
【0022】
本開示において、安息角は注入法により測定するものとする。注入法とは、円盤状の上面を有する測定台の上に、測定対象とする粉体を堆積させて、安息角を測定する方法である。注入法は、測定台の材質の影響を受け難く、円錐状に堆積した粉体と水平面とのなす角(即ち、安息角)は、分度器等の測定手段を用いて容易に測定できる。安息角の測定は、市販の測定機を用いて測定することもできる。市販の測定機としては、例えば、電磁式安息角測定器 AOR-57形(筒井理化学器械株式会社製)が挙げられる。
【0023】
安息角は、多層カーボンナノチューブの形状(大きさ、末端形状、等)、粒度などにより調整することができる。
【0024】
本開示に係る導電助剤において、多層カーボンナノチューブ粉末の安息角は、10度~90度(即ち、10度以上90度以下)であり、ある態様において、安息角は、10度以上40度未満が好ましく、20度以上40度未満がより好ましく、36度以上40度未満がさらに好ましい。
【0025】
多層カーボンナノチューブ粉末の流動性を確保して製造時の取り扱いが良好になる観点、及び、水溶媒への分散性が良好になる観点からは、安息角は10度以上70度未満が好ましく、10度以上50度未満がより好ましく、10度以上34度未満が特に好ましい。
【0026】
一方、多層カーボンナノチューブ粉末間の摩擦力が大きくなり導電パスを形成しやすくなる観点からは、安息角は、20度以上90度未満が好ましく、30度以上85度未満がより好ましく、36度以上80度未満が特に好ましい。
【0027】
本開示に係る導電助剤において、多層カーボンナノチューブ粉末は、水溶媒への分散性が良好になる観点から、嵩密度が、0.001g/cm~0.19g/cmが好ましく、0.002g/cm~0.1g/cmがより好ましく、0.005g/cm~0.08g/cmが更に好ましい。
一方、水溶媒へ導入しやすい観点、かつ、操作性を確保しやすい観点から、嵩密度は0.001g/cm以上が好ましく、0.002g/cm以上がより好ましく、0.005g/cm以上が更に好ましい。
【0028】
多層カーボンナノチューブ粉末の嵩密度は、タップ嵩密度により測定するものとする。
タップ嵩密度とは、多層カーボンナノチューブ粉末を充填した測定容器を、25mmの高さから固い表面に20回繰り返して落下させた後に測定した嵩密度の測定値を指す。
【0029】
本開示に係る導電助剤において、多層カーボンナノチューブ粉末は、主成分が炭素であるために、導電性が良好である。
【0030】
本開示において、多層カーボンナノチューブ粉末の導電性は、体積抵抗率により測定することができる。
【0031】
本開示において、20kNの条件でプレスした多層カーボンナノチューブ粉末の体積抵抗率が、5.0×10-2Ω・cm以下である場合、当該多層カーボンナノチューブ粉末は導電性に優れると判断することができる。
【0032】
多層カーボンナノチューブ粉末の体積抵抗率は、20kNのプレス条件で5.0×10-2Ω・cm以下であることが好ましく、1.0×10-4Ω・cm~3.0×10-2Ω・cmであることがより好ましく、1.0×10-4Ω・cm~2.0×10-2Ω・cmであることが更に好ましく、1.0×10-4Ω・cm~2.0×10-3Ω・cmであることが特に好ましい。
【0033】
多層カーボンナノチューブ粉末の体積抵抗率は、抵抗率計を用いて、25℃にて四探針法により測定する。抵抗率計としては、ロレスタ装置を用いることができる。
具体的には、ロレスタ装置(製品名:粉体抵抗測定システム MCP-PD51、低抵抗率計 ロレスタ-GP、粉体用低抵抗プローブ MCP-PD511(定電流印加方式4探針法)、いずれも日東精工アナリテック株式会社製)を用いて、多層カーボンナノチ
ューブ粉末を抵抗率測定プローブユニットに導入し、付属の油圧ポンプを用い、20kNでプレスして、目標の荷重に達した後、体積抵抗率(Ω・cm)を測定する。
【0034】
本開示に係る導電助剤は、引張強度が10MPa~100MPaである多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が10度~90度である多層カーボンナノチューブ粉末を含むものであれば特に制限はないが、優れた導電性が得られる観点から、当該多層カーボンナノチューブ粉末は、引張強度が10MPa~100MPaであり、かつ、最大長さが10μm~30000μmである多層カーボンナノチューブの粉砕物であることが好ましい。
【0035】
多層カーボンナノチューブの粉砕物を得るための粉砕処理は、特に制限されず、多層カーボンナノチューブを小片に破砕できる任意の粉砕処理を用いればよい。
【0036】
粉砕処理は、多層カーボンナノチューブを凍結させたまま粉砕する処理であってもよい。粉砕処理には、粉砕装置(例えば、ボールミル)を用いることが好ましい。粉砕装置は、粉砕に供する多層カーボンナノチューブの量に応じて適宜選択できる。粉砕装置としては、例えば、日本分析工業株式会社製のボールミル「JFC-300」を用いることができる。
【0037】
粉砕処理に供する多層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブの集合体であってよい。粉砕処理に供する多層カーボンナノチューブの形状は、例えば、シート状(マット状とも称する)、糸状等であってよく、硬すぎず、一度に処理できる量が多いことから、シート状であることが好ましい。
【0038】
本開示における一態様は、引張強度が10MPa~100MPaであり、かつ、最大長さが1000μm~30000μmである多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が10度~90度である多層カーボンナノチューブ粉末(以下、「多層CNT粉末A」とも称する。)を含む。すなわち、本開示に係る導電助剤は、多層CNT粉末Aを含むことができる。
多層CNT粉末Aは、導電助剤としての適用の他、導電性インク、樹脂強化用フィラー、帯電防止剤、透明導電膜材料等の各種用途に用いることができ、その適用範囲は広い。
【0039】
本開示における別の一態様は、最大長さが1000μm~30000μmである多層カーボンナノチューブを含む多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、下記式(1)で示す粒径分布値(Dcnt)が0.5~10である多層カーボンナノチューブ粉末(以下、「多層CNT粉末B」とも称する。)を含む。
粒径分布値(Dcnt)=[Dn90-Dn10]/Dn50 ・・・式(1)
式(1)中、Dn90は、多層カーボンナノチューブの粉砕物を蒸留水に入れ、3時間放置した後、光学顕微鏡を用いて観測することで、90%基準下に測定した数平均粒径であり、Dn10は、10%基準下に測定した数平均粒径であり、Dn50は、50%基準下に測定した数平均粒径である。
【0040】
多層CNT粉末Bの粒径分布値(Dcnt)は、0.5~10であり、1.1~10が好ましく、2.0~10がより好ましい。
【0041】
また、上記の粉砕物は、粒径又は平均粒径:100~30000μm、及び、ストランド径:5~50000nmを同時に満足することが好ましい。
【0042】
多層CNT粉末Bは、最大長さが1000μm~30000μmである多層カーボンナ
ノチューブを含む多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、かつ、粒径分布値(Dcnt)が0.5~10であるため、導電性に優れ、かつ、分散媒(例えば、水)に対する分散性に優れる。カーボンナノチューブは分散媒(例えば、水)に分散し難い傾向を示すが、粒径分布値(Dcnt)が上記範囲内であることで、多層CNT粉末Bは、分散媒に対する分散性に優れる。このため、多層CNT粉末Bは、例えば、導電助剤として好適に用いることができる。すなわち、多層CNT粉末Bは、導電助剤に適用した場合に、それ自体が有する優れた導電性と相俟って、電極内における安定な導電パスを形成に寄与するものと推測される。
【0043】
多層CNT粉末Bは、導電助剤としての適用の他、導電性インク、樹脂強化用フィラー、帯電防止剤、透明導電膜材料等の各種用途に用いることができ、その適用範囲は広い。
【0044】
多層CNT粉末Cは、安息角が10度~90度であってもよい。すなわち、本開示に係る導電助剤は、多層CNT粉末Bのうち、安息角が10度~90度であるものを含むことができる。
【0045】
<多層カーボンナノチューブ>
本開示において、多層カーボンナノチューブ粉末を得るための多層カーボンナノチューブは、最大長さが10μm~30000μm(好ましくは、1000μm~30000μm)である多層カーボンナノチューブを含む。
【0046】
なお、以下に詳述する「多層カーボンナノチューブ」及び「多層カーボンナノチューブの製造方法」の説明においては、「カーボンナノチューブ」、「単層カーボンナノチューブ」、「多層カーボンナノチューブ」、及び、「最大長さが1000μm~30000μmである多層CNT」の用語は、それぞれ、「CNT」、「SWCNT」、「MWCNT」、及び、「ULMWCNT」と略称することがある。
【0047】
ULMWCNTは、最大長さが1000μm~30000μmであり、汎用のMWCNTに比較して、長さが長く、繊維の形状をとり得る。
【0048】
ここで、「繊維」という用語は、一寸法が他の2つの寸法より大きい構造を指すために一般に用いられる。繊維は横断面が円形である糸様繊維であってもよく、横断面が長方形のリボン様繊維であってもよく、中空であってもよく、あるいは他の形状を有していてもよい。導電性を高める観点から、ULMWCNTの横断面は円形であることが好ましく、中空であることが好ましい。
【0049】
繊維の形状をとることで、ULMWCNTは、互いに絡みやすい性質を有する。MWCNは、少なくとも1つのULMWCNTを含み、MWCNT同士が互いに絡み合い、より安定な集合体を形成し易いという観点からは、複数のULMWCNTを含む集合体であることが好ましい。以下、ULMWCNTを含む集合体を「ULMWCNT集合体」と略称することがある。
【0050】
MWCNTの集合体は、互いに絡み合った三次元構造の集合体であってもよい。
図1は、本開示におけるMWCNTの集合体の一態様を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図1に示すSEM写真からは、繊維状のULMWCNTが複数絡みあって集合体を形成していることがわかる。このようにSEM観察により、本開示におけるULMWCNTが絡み合った状態を確認することができる。
【0051】
ULMWCNTの長さは、1つのULMWCNTに着目し、隣接した視野角の複数のSEM写真を観察することで測定することができる。ここで、「ULMWCNTの長さ」と
はULMWCNTの長手方向の長さの測定値を指し、長さの測定値のうち最大値を「最大長さ」とする。
SEM写真の観察により、SEM写真の視野角内に、最大長さが1000μm~30000μmの範囲にあるMWCNTが1本観察された場合、観察されたMWCNTに、ULWMCNTが含まれることを確認できる。
【0052】
ULMWCNTは、SEM写真の視野角に複数本存在することが好ましい。SEM写真の視野角に含まれるMWCNT100本に着目して、それぞれの最大長さの測定を行い、観察したMWCNTのうち、最大長さが1000μm~30000μmの範囲にあるMWCNT(すなわち、ULMWCNT)が数換算で10%以上存在することが、ULMWCNT同士の絡み合いによるMWCNTの集合体の安定性がより向上するという観点から好ましく、20%以上存在することがより好ましく、30%以上存在することが更に好ましく、50%以上存在することが特に好ましい。
【0053】
ULMWCNTの直径は、SEM写真又は透過型電子顕微鏡(TEM)写真を観察することで測定することができる。ここで、直径とはULMWCNTの長手方向に対して直交する方向の長さを指し、1つのULMWCNTの異なる10ヶ所について直径を測定し、その平均値をそのULMWCNTの直径とする。
【0054】
ULMWCNTの長さは、1000μm~30000μmの範囲であり、1050μm~25000μmの範囲であることが好ましく、1100μm~20000μmの範囲であることがより好ましく、1200μm~18000μmであることが更に好ましく、1300μm~15000μmの範囲であることが特に好ましい。ULMWCNTの直径は、1nm~100nmであることが好ましく、2nm~80nmであることがより好ましく、3nm~50nmであることが更に好ましく、5nm~30nmであることが特に好ましい。
【0055】
ULMWCNTの長さ/直径比、所謂アスペクト比は、1000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、5000以上であることが更に好ましく、10000以上であることが特に好ましい。
アスペクト比は、1つのULMWCNTの最大長さと直径との比から算出することができる。測定の正確さの観点から、20本以上のULMWCNTの測定値の平均値を採用することが好ましい。
【0056】
また、分散性の観点からは、ULMWCNT集合体の比重は、1.5~2.5の範囲であることが好ましく、1.7~2.4の範囲であることがより好ましく、1.8~2.2の範囲であることが更に好ましい。
ULMWCNT集合体の比重は、JIS Z8807:2012「固体の密度及び比重の測定方法」に記載の方法で測定することができる。
【0057】
ULMWCNT集合体のMWCNTとしての純度は、熱重量分析により測定できる。例えば、熱分析装置(株式会社島津製作所製、DTG-60)を用いて、ULMWCNT集合体の熱重量(TG)曲線、及び、示差熱分析(DTA)曲線を得る。650℃~750℃付近にピークトップが現れるDTA曲線で最も大きな発熱ピークをMWCNTの燃焼とし、それ以外に現れる発熱ピークをMWCNT以外の物質の燃焼とする。TG曲線の重量減少率からMWCNTの純度を求める。ULMWCNT集合体の純度は、得られる導電性の観点からは、50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0058】
ULMWCNTは、製造時に用いる触媒である鉄由来のFe原子を0.01質量%~50質量%含むことがある。ULMWCNTは、Fe原子を、例えば、ULMWCNTの表面に吸着した状態、製造時に形成された繊維状のULMWCNTの内部に取り込まれた状態で含む場合がある。
【0059】
得られた繊維状のULMWCNTは、柔軟性で且つ強力であることが好ましい。
また、ULMWCNT自体の導電性は、5000Ω-1・m-1以上であることが好ましく、10000-1・m-1以上であることがより好ましい。なお、ULMWCNT自体の導電性は、通常、1000000Ω-1・m-1以下である。
【0060】
<多層カーボンナノチューブの製造方法>
本開示におけるMWCNT(すなわち、ULMWCNTを含むMWCNT)の製造方法は、特に限定されない。
【0061】
本開示におけるMWCNTの製造方法としては、従来公知の化学的蒸着(CVD)法、触媒の存在下で炭素源を含むガス状反応物質を反応させる方法等の方法が適用できる。
【0062】
本開示におけるMWCNTは、例えば、特開2016-102047号公報に記載の製造方法を参照し、製造することができる。
以下、本開示におけるMWCNTの製造方法について、一例を挙げて説明する。但し、本開示におけるMWCNTの製造方法は、以下の例に限定されない。
【0063】
本開示におけるMWCNTの製造方法の一例としては、特開2016-102047号公報に記載の製造方法、すなわち、1つ又は複数の炭素源を含むガス状反応物質を反応器に通す工程と、反応器の反応領域内で1つ又は複数のガス状反応物質を触媒の存在下で反応させて、炭素を含む生成物粒子を形成する工程と、生成物粒子を凝集物へと凝集させる工程と、凝集物に力を加えて、凝集物を反応領域外に連続的に移動させる工程とを含む製造方法(以下、「製造方法X」とも称する。)が挙げられる。
製造方法Xによれば、取扱いが容易な、繊維状の凝集物の形態又はその他の凝集物の形態で、ULMWCNTを含むMWCNTを得ることができる。
【0064】
製造方法Xにおいて、生成物粒子に加えられる力は、機械的力であってもよい。
凝集物が繊維状のMWCNTである場合、生成物粒子に加えられる機械的力は、凝集物が巻きつけられる回転スピンドルによって加えることができる。繊維状CNTは、スピンドル上に回収されてもよいし、1つ又は複数回、スピンドルの周囲を回転した後、スピンドルが連続的に巻戻されることにより、他の箇所に蓄積されてもよい。
【0065】
スピンドルは、1つ又は複数のガス状反応物質の流動方向に対して、スピンドル軸が垂直又は平行に配置されることが好ましいが、それ以外の配向にて配置されてもよい。例えば、スピンドル軸がガス状反応物質の流動方向に対して25°の角度で配置されたスピンドルも、生成物粒子への機械的力の付与に好適に用いることができる。
【0066】
スピンドルは、2つの軸(例えば、2つの垂直軸)の周囲を回転し得る。特に、スピンドルは、ガス状反応物質の流動方向とそれぞれ垂直及び平行な軸の周囲を回転し得る。このようなスピンドルによれば、撚り数及び長さを制御するため、繊維状CNTである凝集物を引いたり撚り合わせたりすることができる。
【0067】
スピンドルの素材は、金属製、セラミック製、又は、樹脂製であってもよい。
スピンドルは、素材の特性、及び、MWCNTの使用目的に応じて、異なる好適な形状をとることができる。スピンドルは、スピンコーティング製法により、例えば、炭素生成
物を製造するための鋳型として用いることができる。好ましいスピンドルの形状は、棒形状又は箱形状である。
【0068】
繊維状のMWCNTは、スピンドル上に、又は、その他の箇所に蓄積され、コーティング厚及びその配向は、反応時間及び反応条件を制御することにより、又は、電場又はその他の場を炭素生成物に印加する条件により制御することができる。コーティング厚及び炭素生成物の配向は、例えば、ガスの流動力により制御することができる。
【0069】
スピンドルの回転速度は、0.01rpm(回転/分;以下、同じ。)~10000rpmであることが好ましく、0.1rpm~100rpmであることがより好ましい。
スピニング速度(すなわち、スピンドルの回転速度)は、物質が生成されるのと同様の速度で回収されるように調整されてもよい。スピンドルの回転速度によって、蓄積される繊維状のMWCNTの厚みを制御してもよい。好ましい一実施形態では、スピンドルが回転すると、繊維状CNTがスピンドルの軸方向に加工処理される。上記加工処理では、繊維状のMWCNTが、スピンドル上のある特定の一箇所においてのみ巻きつけられるのではなく、スピンドルに沿って等しく巻きつけられる。
【0070】
繊維状のMWCNTは、例えば、反応器中に置かれた基体によって、反応器の壁上に回収されてもよい。基体は、固定された基体であってもよく、繊維状のMWCNTが回収される場合に、繊維状のMWCNTに対して強くて等しい力を加えるために用いられる回転ガイドであってもよい。繊維技術に用いられる適切な基体の配置態様としては、互いに直交する位置に配置された2つのガイドからなる基体が挙げられる。
【0071】
製造方法Xにおいて、生成物粒子に加えられる機械的力は、加速ガス流により加えられる力であってもよい。加速ガス流は、生成物粒子を、狭い直径を有する反応器に通すか、又は、反応領域の下流にある毛細管に通すことにより発生させることができる。真空が生成物粒子に適用されてもよい。
【0072】
生成物粒子に加えられるその他の力としては、帯電プレートにより適切に印加される静電力が挙げられる。静電気力を用いる場合、生成物粒子が荷電されることを要する。帯電プレートを使用することで、MWCNTを帯電プレート上に互いに絡み合ったマットの形態で生成させることができる。
【0073】
また、生成物粒子に加えられるその他の力としては、磁力であってもよく、光源によって加えられる光子圧であってもよい。
【0074】
CNTの原料は、炭素源を含むガス状反応物質に代えて、炭素源を含む液体の形態で注入されてもよい。CNTの原料として液体を用いる場合には、単一注入口、又は、多注入口により注入することができ、例えば、シャワーヘッド配置で注入することができる。
【0075】
1つ又は複数のガス状反応物質は、500℃~1600℃で反応させることが好ましく、1000℃~1500℃又は1600℃(特には、1000℃~1500℃)で反応させることがより好ましい。温度勾配は反応器内で保持され、反応領域は反応器の生成物領域より高い温度に維持されることが好ましい。
【0076】
ガス状反応物質は、希釈剤として作用する1つ又は複数のガスと混合して用いてもよい。ガス状反応物質は、反応において直接的役割を担わないが一助となる役割を担うガスと混合してもよい。副産物である非晶質炭素が生成された場合に、非晶質炭素と反応することにより触媒上の反応部位を正常に維持してナノチューブを生成できるガスを希釈剤として用いることも好ましい。
【0077】
希釈剤として用いられ得るガスとしては、アルゴン又はその他の不活性ガス、水素、窒素、アンモニア、二酸化炭素、ヘリウム等が挙げられる。これらの中でも、希釈剤として用いられ得るガスとしては、水素が特に好ましい。希釈剤としてのガス流量は、2000mL(ミリリットル)/分以下であることが好ましく、400mL/分~800mL/分であることがより好ましい。
【0078】
ガス状反応物質及び任意の希釈剤のガス圧は、0.1bar~50barであることが好ましく、0.5bar~5barであることがより好ましく、1bar~2barであることが更に好ましい。炉からのガス流出がある場合には、流出したガスは、清掃に伴って又は伴わずにリサイクルが可能である。
【0079】
生成物粒子の組成等は、凝集物をモニタリングし、得られた情報に基づき、反応条件を変更することにより制御することができる。例えば、凝集物は、オンラインラマン分光法によりモニタリングすることができる。オンラインラマン分光法によれば、単層のCNTであるか、多層のCNTであるかを示すデータが得られる。また、CNTの直径及び結晶度を示すデータも得られる。凝集物は、オンライン導電率測定、ガス分析、反応領域の不透明度の測定及び/又は巻取り力の測定によってもモニタリングされ得る。
【0080】
凝集物を反応器から取り出す際には、反応器への空気の浸入を防止することが好ましい。希釈剤としてのガスが水素を含む場合、空気の流入を防止することは、例えば、水素及び空気の爆発性混合物が反応器中に形成されることを抑止する観点から特に重要である。
【0081】
製造方法Xにおける生成物粒子は、ULMWCNTを含む。また、製造条件によっては、MWCNTに加えて、SWCNTが含まれることがある。
【0082】
生成物粒子は、化学的蒸着法により生成されてもよい。生成物粒子が化学的蒸着法により生成される場合、ガス状反応物質である炭素源は、触媒の存在下で反応する。
【0083】
炭素源として適切な炭素含有化合物としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、芳香族炭化水素(例:ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ナフタレン又はメシチレン)、非芳香族炭化水素(例:メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エチレン、プロピレン又はアセチレン)、及び、酸素含有炭化水素(例:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、ポリエチレングリコール、1-プロパノール、ギ酸エチル、これらの2又はそれ以上の混合物を含む炭化水素)が挙げられる。
炭素含有化合物としては、一酸化炭素、メタン、エチレン又はアセチレンが好ましい。
【0084】
炭素源は、酸素を含むことが好ましい。エタノールは、特に好ましい炭素源である。
酸素は、他の方法により、例えば、希釈ガス又は水を含有する炭素源を用いる方法により、反応器中に導入され得る。
【0085】
炭素源であるガス状反応物質は、反応器内に0.01mL/分~10mL/分の速度で注入されることが好ましく、0.08mL/分~0.25mL/分の速度で注入されることがより好ましい。
【0086】
触媒としては、遷移金属群、特に、VIB族クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、又は、VIIIB遷移金属群が好ましい。具体的には、触媒としては、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及びプ
ラチナ(Pt)又はマンガン(Mn)、又は、これらの混合物が好ましい。ランタニド及びアクチニド列からの金属(例えばイットリウム(Y))も触媒として用いられ得る。Fe、Ni、Co、Mo及びこれらの混合物、例えば、Ni及びCoの混合物(質量比:50/50)、Fe及びNiの混合物、又は、Fe及びMoの混合物がより好ましい。
これらの遷移金属のいずれも、単独で、又は、列挙した他の遷移金属のいずれかと組み合せて用いられ、CNTの成長のための触媒としての機能を果たし得る。触媒は、列挙した2以上の金属の混合物であることが特に好ましい。
【0087】
触媒は、前駆体の分解により形成されることが好ましい。前駆体は、上記の1つ又は複数の金属の熱、光又はプラズマ分解性化合物、例えば、カルボニル又はシクロペンタジエニル有機金属化合物であることが好ましい。前駆体としては、フェロセン、鉄ペンタカルボニル、ニッケロセン及びコバルトセンが特に好ましい。適切には、少なくとも0.01質量%の前駆体が炭素源中に含まれ、0.2質量%~2.5質量%の前駆体が炭素源中に含まれることが好ましい。ある態様では、0.23質量%~2.3質量%の前駆体が炭素源中に含まれる。
触媒は、担体に担持させて用いてもよい。好ましい担体としては、シリカ及び酸化マグネシウムが挙げられる。
【0088】
炭素源は、促進剤の存在下で反応させることが好ましい。適切な促進剤は、硫黄、リン、モリブデン及びこれらの元素の有機化合物のうちの1つ又は複数である。また、チオフェンは、好ましい促進剤の1つである。適切には、10質量%まで(10質量%以下)の促進剤が炭素源中に含まれる。0.2質量%~6質量%の促進剤が炭素源中に含まれることが好ましい。促進剤として高濃度又は低濃度のチオフェンが用いられる場合、MWCNTが形成される。
例えば、0質量%又は1.5質量%~4.0質量%のチオフェンと1.0質量%~10.0質量%(特には、2.3質量%)のフェロセンとを含有するエタノールを用い、注入速度5.0mL/時間~30.0mL/時間(特には、7.5mL/時間)、水素流量400mL/分~800mL/分、及び、合成温度1100℃~1180℃の条件によれば、MWCNTが良好に形成される。
【0089】
製造方法Xによれば、少なくとも500μm、例えば、少なくとも1mmの長さを有する繊維状CNTを得ることができる。繊維状CNTは、糸状、マット状の形態を取り得る。
繊維状CNTの長さは、例えば、繊維状CNTを製造する際に用いるスピンドルの巻取り能力によって制御することができる。
【0090】
製造方法Xは、反応器の反応領域内で炭素源を反応させてCNTを生成する工程と、CNTに力を加えることによりCNTを凝集物へと凝集させる工程と、を含むことが好ましい。この製造方法によれば、繊維状CNTを容易に製造することができる。
【0091】
他の態様として、反応領域中で上記の方法によりULMWCNTを含むMWCNTを生成させた後、凝縮させてULMWCNTを含むMWCNTを形成すること、及び、反応領域の近くからMWCNTを連続的に引き抜くことを含む手段を取ってもよい。
また、他の態様として、反応領域中でULMWCNTを含むMWCNTを生成すること、反応領域からULMWCNTを含むMWCNTを連続的に静電気的に引き寄せること、及び、ULMWCNTを含むMWCNTを回収することを含む手段を取ってもよい。
【0092】
上記の製造方法Xは一例であり、ULMWCNTを含むMWCNTの製造方法は上記に限定されない。
【0093】
本開示に係る導電助剤は、電極に含まれることが好ましく、二次電池が備える電極に含まれることが好ましく、二次電池が備える負極に含まれることが好ましい。すなわち、本
開示に係る導電助剤は、負極用の導電助剤であることが好ましい。本開示に係る導電助剤を適用し得る電極及び二次電池については、後述する。
【0094】
〔分散液〕
本開示に係る分散液は、本開示に係る導電助剤と、分散媒と、を含む。
本開示に係る分散液は、本開示に係る導電助剤の分散媒に対する分散性が良好であり、且つ、導電性に優れる。
本開示に係る分散液は、電極の形成に用いることが好ましい。
【0095】
<導電助剤>
本開示に係る分散液が含む導電助剤は、既述した本開示に係る導電助剤と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0096】
<分散媒>
分散媒は、水を含むことが好ましく、水を主成分として含むことがより好ましい。
「水を主成分として含む」とは、分散媒に占める水の割合が50質量%超であることを意味する。分散媒に占める水の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、例えば、100質量%であってもよい。
【0097】
水は、特に限定されないが、例えば、不純物が少ない点において、蒸留水、イオン交換水、純水等であることが好ましい。
【0098】
分散媒は、水と親水性溶媒との混合液であってもよい。
親水性溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ブチレンカーボネート等のカーボネート化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル化合物;アセトン等のケトン化合物;メタノール、エタノール等の低級アルコール化合物;アセトニトリル等の溶媒が挙げられる。
分散媒が親水性溶媒を含む場合、分散媒に占める親水性溶媒の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0099】
分散液は、本開示に係る導電助剤及び分散媒に加え、分散液に使用し得るその他の成分を更に含んでもよい。
その他の成分としては、分散剤、消泡剤、帯電防止剤、本開示に係る導電助剤以外の導電助剤等が挙げられる。また、微量の不純物成分、所謂、不可避不純物等を更に含んでもよい。
【0100】
<分散剤>
分散液は、導電助剤の分散性及び分散安定性を更に向上させる目的で、分散剤を含んでいてもよい。
分散剤としては、特に限定されず、例えば、各種界面活性剤が挙げられる。また、分散剤としては、樹脂等の高分子化合物も挙げられる。
分散剤としては、界面活性剤が好ましい。
界面活性剤は、イオン性界面活性剤であってもよく、非イオン性界面活性剤であってもよく、特に限定されない。
界面活性剤は、1種単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。
【0101】
イオン性界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤
及び両性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例:ドデシルベンゼンスルホン酸)、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤;エーテルサルフェート系界面活性剤;ホスフェート系界面活性剤;カルボン酸系界面活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、芳香環を有するイオン性界面活性剤(所謂、芳香族系イオン性界面活性剤)が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤がより好ましい。
芳香族系イオン性界面活性剤は、多層カーボンナノチューブの分散能、分散安定能及び高濃度化に優れる傾向にある。
【0102】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の糖エステル系界面活性剤;ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチル等の脂肪酸エステル系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコール等のエーテル系界面活性剤;ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、芳香環を有するイオン性界面活性剤(所謂、芳香族系非イオン性界面活性剤)が好ましく、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルがより好ましく、ポリオキシエチレンフェニルエーテルが更に好ましい。
芳香族系非イオン性界面活性剤は、多層カーボンナノチューブの分散能、分散安定能及び高濃度化に優れる傾向にある。
【0103】
多層カーボンナノチューブの分散能、分散安定能及び高濃度化に優れるその他の分散剤として、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩のデモール N、デモール RN、デモール T(花王株式会社製)、ポリオキシエチレンステアリルエーテルのBrij S 100(Sigma-Aldrich社製)、ポリビニルピロリドン K30(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製)、カルボキシメチルセルロース(CMC)(例えば、ダイセルミライズ株式会社製)、デオキシコール酸ナトリウム(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製)、SOLSPERSETM W100、SOLSPERSETM W150(日本ルーブリゾール株式会社製)等が挙げられる。多層カーボンナノチューブの分散能、分散安定能及び高濃度化に優れる観点から、CMCが特に好ましい。
【0104】
分散液が分散剤を含む場合、分散剤の使用量は、特に限定されず、分散剤の種類、多層カーボンナノチューブの量、分散媒の量等に応じて、適宜設定できる。
【0105】
〔分散液の製造方法〕
分散液の製造方法は、特に限定されない。
分散液は、本開示に係る導電助剤を分散媒に分散させることにより製造できる。すなわち、本開示に係る分散液は、本開示に係る導電助剤を分散媒に分散させる工程(「分散工程」ともいう。)を含む方法により製造できる。
分散工程に用い得る分散媒は、既述のとおりである。
【0106】
分散方法は、特に限定されない。
分散方法としては、例えば、撹拌器、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、ディゾルバー、ペイントコンディショナー、マントン乳化装置、ジェットミル、超音波装置等の分散装置を用いる方法が挙げられる。
また、分散方法としては、例えば、公知の粉砕化手段、例えば、ボールミリング(例:ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ビーズミル等)、サンドミリング、コロイドミリング、ジェットミリング、ローラーミリング、縦型又は横型のアジテーターミル、アトライター、コロイドミル、3本ロールミル、パールミル、スーパーミル、インペラー、デスパーサー、KDミル、ダイナトロン、加圧ニーダー等の分散機を用いる方法も挙げられる。
分散方法としては、ジェットミルを用いる方法が好ましく、湿式ジェットミルを用いる方法がより好ましい。
湿式ジェットミルは、溶媒中の混合物を高速流として、耐圧容器内に密閉状態で配置されたノズルから圧送する分散装置である。湿式ジェットミルでは、耐圧容器内で対向流同士の衝突、容器壁との衝突、高速流によって生じる乱流、剪断流等により、多層カーボンナノチューブを分散させる。湿式ジェットミルとしては、株式会社常光製の超高圧ホモジナイザー(型番:NAGS20、NAGS100、JAGS200、NAGS1000等)を好適に用いることができる。但し、湿式ジェットミルは、これに限定されない。
分散装置として上記超高圧ホモジナイザーを用いる場合、分散の処理圧力は、10MPa~250MPaであることが好ましい。
【0107】
分散液の製造方法は、上記分散工程の前に、本開示に係る導電助剤である多層カーボンナノチューブ粉体を乾燥させる工程(「乾燥工程」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0108】
多層カーボンナノチューブに水分が付着していると、水の表面張力により、多層カーボンナノチューブ同士が互いに付着しやすくなり、分散性の低下が懸念される。従って、分散工程の前に導電助剤体の乾燥工程を行うことで、多層カーボンナノチューブ粉体に付着した水分が除去され、水分の付着による多層カーボンナノチューブ同士の付着が抑制され、本開示における多層カーボンナノチューブの分散媒中における分散性をより向上させることができる。
乾燥方法は、特に限定されない。
乾燥方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥及び加熱真空乾燥が挙げられる。
乾燥方法としては、加熱真空乾燥が好ましい。
乾燥温度は、特に限定されず、例えば、40℃~100℃であることが好ましい。
乾燥時間は、特に限定されず、乾燥温度、本開示における多層カーボンナノチューブへの水分の付着の程度等により、適宜設定できる。
【0109】
以下に、分散液の製造例を示すが、本開示に係る分散液の製造は、以下に限定されない。
【0110】
<製造例1:分散液の製造例>
本開示に係る導電助剤(例えば0.040g)を計量し、3つ口フラスコに投入する。導電助剤を投入後のフラスコに、分散媒であるイオン交換水を大過剰注入し(例えば20mL)常温(25℃、以下同じ)で撹拌する。この際、適宜、公知の分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)を添加してもよい。次いで、公知の分散装置(例えば、超音波照射装置又は湿式ジェットミル)を用いて、分散媒に導電助剤を分散させる。得られた分散液を更に常温で長時間(例えば、1時間~48時間)、スターラーで撹拌する。このようにして、本開示に係る分散液を得る。
【0111】
なお、多層CNT粉末A又は多層CNT粉末Bについても、当該粉末と、分散媒と、を含む分散液とすることができる。分散液が含み得る成分、及び、分散液の製造方法の詳細は、上記の本開示に係る分散液、及び、その分散液の製造方法の説明において、本開示に係る導電助剤を、態様A又は態様Bの多層カーボンナノチューブ粉体に読み替えればよい。
【0112】
〔電極及び二次電池〕
本開示に係る電極は、電極活物質と、本開示に係る導電助剤と、を含む。本開示に係る二次電池は、本開示に係る電極を備える。
本開示に係る電極は、本開示に係る導電助剤を含むことから、電極内における導電パスの形成性に優れる。そのため、本開示に係る二次電池は、サイクル特性に優れる。
以下、電極及び電極を備える二次電池の一実施形態について説明する。
【0113】
<電極>
電極は、上述した本開示に係る導電助剤を含むことができる。電極に含まれる導電助剤は、本開示に係る導電助剤と同一であり、以下では、導電助剤に関する説明は省略する。
多層CNT粉末A又は多層CNT粉末Bを導電助剤(好ましくは、負極用導電助剤)として用いてもよい。
【0114】
電極は、正極及び負極のうち少なくとも何れか1つであってもよい。
電極は電極活物質層を含んでもよい。電極は、集電体及び集電体上に配置された電極活物質層を含んでもよい。
【0115】
集電体は、電池に化学的変化を誘発せず且つ導電性を有するものであればよく、特に制限されるものではない。例えば、集電体としては、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、アルミニウム又はステンレススチールの表面を、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられてもよい。具体的には、銅、ニッケル等の炭素をよく吸着する転移金属を集電体として用いてもよい。
【0116】
電極活物質層は、電極活物質を含むことができる。電極活物質は、電極活物質粒子であることが好ましい。
【0117】
電極が正極である場合、電極活物質粒子は、特に制限されず、正極用電極材料に通常用いられる正極活物質を含むことができる。具体的には、正極活物質としては、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、1又はそれ以上の遷移金属で置換された化合物;LiFeなどのリチウム鉄酸化物;化学式Li1+c1Mn2-c1(0≦c1≦0.33)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-c2c2(ここで、MはCo、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、及びGaからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、0.01≦c2≦0.66を満たす。)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-c3c3(ここで、MはCo、Ni、Fe、Cr、Zn、およびTaからなる群から選択される少なくとも何れか1つであり、0.01≦c3≦0.1を満たす。)またはLiMnMO(ここで、MはFe、Co、Ni、Cu、及びZnからなる群から選択される少なくとも何れか1つである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMnなどが挙げられる。
【0118】
電極が負極である場合、電極活物質は、特に制限されず、負極用電極材料に通常用いられる負極活物質を含むことができる。具体的には、負極活物質は、黒鉛系活物質粒子又はシリコン系活物質粒子を含むことができる。黒鉛系活物質粒子としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、及び黒鉛化メソカーボンマイクロビーズからなる群から選択される1種以上を用いてもよい。人造黒鉛を用いることで、レート特性を改善することができる。
【0119】
シリコン系活物質粒子としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-C複合体、及びSi-Y合金(ここで、Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、13族元素、14族元素、希土類元素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素である。)からなる群から選択される1種以上を用いてもよい。シリコン系活物質粒子を用いることで、電池を高容量化することができる。
【0120】
電極活物質層は、バインダーをさらに含むことができる。バインダーは、特に制限されず、電極材料に通常用いられるバインダーを含むことができる。バインダーとしては、例えば、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、及びポリアクリル酸(polyacrylicacid)からなる群から選択される少なくとも1種の重合体、並びにこれら重合体が有する水素原子をLi、Na、Caなどで置換された重合体が挙げられる。
【0121】
<二次電池>
二次電池は、負極、正極、正極と負極との間に介在したセパレータ、及び電解質を含んで構成されてもよい。正極及び負極のうち少なくとも1つは、本開示に係る電極であり、負極が本開示に係る電極であることが好ましい。
【0122】
セパレータは、負極と正極を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、二次電池においてセパレータとして用いられるものであれば特に制限されない。セパレータは、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、且つ、電解液含湿能力に優れることが好ましい。セパレータとして、具体的には、多孔性高分子フィルムが挙げられる。多孔性高分子フィルムは、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、及びエチレン/メタクリレート共重合体等のポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルム、又はこれらフィルムを2層以上積層した積層構造体であってもよい。また、セパレータは、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布であってもよい。また、耐熱性又は機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質含みのコーティングされたセパレータであってもよい。セパレータは、選択的に単層又は多層構造とすることができる。
【0123】
電解質としては、リチウムイオン二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0124】
具体的には、電解質は、非水系有機溶媒と金属塩とを含むことができる。
非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。
【0125】
カーボネート系有機溶媒のうち環状カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として誘電率が高くてリチウム塩をよく解離させるので、非水系有機溶媒として好ましく用いることができる。非水系有機溶媒として、このような環状カーボネートにジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネート等の低粘度、低誘電率の直鎖状カーボネートを適宜な割合で混合して用いると、高い電気伝導率を有する電解質を得ることができるのでより好ましい。
【0126】
金属塩としては、リチウム塩であってよい。リチウム塩は、非水電解液に溶解されやすい物質である。リチウム塩のアニオン部としては、例えば、F、Cl、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF 、(CFPF、(CF、CFSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN、及び(CFCFSOからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0127】
電解質には、電解質の構成成分非水系有機溶媒及び金属塩の他にも、電池の寿命特性の向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的に、例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、又は三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。
【0128】
上記した二次電池は、二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及び電池モジュールを含む電池パックに構成することができる。電池モジュール及び電池パックは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ-インハイブリッド電気自動車、及び電力貯蔵用システムからなる群から選択される中大型デバイスの電源として用いることができる。
【0129】
以下に、電極及び二次電池の製造例を示すが、本開示に係る電極及び二次電池の製造は、以下に限定されない。
【0130】
<製造例2:電極(負極)及び二次電池の製造例>
負極活物質として公知の人造黒鉛、負極用導電助剤として、本開示に係る分散液及び公知のカーボンブラック、負極用バインダーとして公知のスチレンブタジエンゴム(SBR)及び公知のカルボキシメチルセルロース(CMC)を所定の質量比にて蒸留水に混合して、負極用スラリーを製造する。
負極用スラリーを、負極集電体(Cu)に、塗布、乾燥、及び、圧延して、最終厚さ(
即ち、集電体と負極活物質層との合計厚さ)を調節して、負極を作製する。
その後、負極用スラリーが塗布された集電体を、さらに、オーブンで乾燥させて負極を製造する。
次いで、公知の正極用スラリーを正極集電体(Al)に、塗布、乾燥、及び、圧延して、最終厚さ(即ち、集電体と正極活物質層との合計厚さ)を調節して、正極を作製する。正極用スラリーとしては、例えば、特表2022-521422号公報の段落[0096]に記載の正極スラリーを用いることができる。
負極及び正極との間にセパレータを介在させてモノセルを製造し、電解液を注入してリチウムイオン二次電池を製造する。
【0131】
リチウムイオン二次電池は、容量維持率により、サイクル特性を評価することができる。
具体的には、リチウムイオン二次電池を45℃で、充電C-レート(Rate)は1.0C、放電C-レート(Rate)は1.0Cに固定して、寿命評価を行い、100サイクルでの容量維持率(%)を評価する。
本開示に係る導電助剤を用いることにより、電極内で好ましく導電パスが構築されるため、サイクル特性に優れる。
【0132】
本開示に係る平面状集合体は、本開示に係る多層カーボンナノチューブ粉末を含む。本開示に係る平面状集合体に含まれる本開示に係る多層カーボンナノチューブ粉末の割合は、平面状集合体の全質量に対して、通常1質量%以上である。本開示に係る平面状集合体は、最大長さが1000μm未満のカーボンナノチューブ粉末(特には、多層カーボンナノチューブ粉末)等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0133】
[平面状集合体の作製方法]
本開示に係る平面状集合体の作製方法は、特に限定されない。
本開示に係る平面状集合体は、本開示に係る多層カーボンナノチューブ粉末、又は、本開示に係る多層カーボンナノチューブ粉末と最大長さが1000μm未満のカーボンナノチューブ粉末(特には、多層カーボンナノチューブ粉末)等のその他の成分とを、水又はその他の流体に分散させ、1回又は2回以上濾過することにより、例えば、不織布状の平面状集合体として、作製することができる。
【0134】
本開示に係る平面状集合体のある実施形態としては、例えば、フィルムが挙げられる。
【0135】
本開示に係る平面状集合体は、例えば、フィルター、電磁波シールド、極端紫外線(EUV:Extreme ultraviolet)用ペリクルに有用である。
【実施例
【0136】
以下に実施例を挙げて、本開示に係る導電助剤について、更に具体的に説明する。本開示に係る導電助剤は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0137】
(実施例1)
1.MWCNT1の準備
MWCNT1として、「多層カーボンナノチューブ」(カタログ番号:901019,50-90nm diameter,>95% carbon basis、Sigma-Aldrich社製)を準備した。
【0138】
2-1.分散液1の調製
以下の材料を、混合し、日本精機(株)製のエースホモジナイザーで1時間処理を行うことで事前分散を実施し、事前分散液1を得た。
(分散液組成)
・上記で得たMWCNT1 1.1g
・CARBOXYMETHYL CELLULOSE SODIUM SALT HIGH VISCOSITY(MP Biomedicals社製) 1.65g
・純水 547.2g
湿式ジェットミルとして(株)常光製の超高圧ホモジナイザー(型番:NAGS100)を用いて、上記事前分散液1の本分散を実施し、分散液1を得た。
ノズル径:0.22mm
圧力:85MPa
回数:8回
方式:循環方式
【0139】
2-2.引張強度
分散液1を22mm×75mm×3mmのスライドガラス形シリコン板(堂阪イーヱム(株)製、#08-1044)に流し、100℃に加熱して乾燥させたものを測定試料とし、引張試験装置(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-IS)の把持部に固定し、速度1mm/分にて引っ張り試験を行った。
その結果、引張強度は、11.5MPaであった。
【0140】
3.最大長さ
MWCNT1の互いに隣接する複数のSEM写真(倍率:5000倍)にて、100本のMWCNTに着目して観察したところ、最大長さの最大値は50μmであった。
【0141】
4.MWCNT粉末1の製造
MWCNT粉末1は、冷凍粉砕機(日本分析工業(株)製、JFC-2000)を用いて、MWCNT1を粉砕することで得た。MWCNT1を75ml用の試料容器に5g入れ、さらにタングステンカーバイド製の鋼球を試料容器に1個入れた後、試料容器を粉砕ロッドに装着した。試料容器全体を液体窒素中に浸して、MWCNT1および鋼球を冷却した後、粉砕ロッドを上下に往復運動させることによって、試料容器内部の鋼球を運動させてMWCNT1を粉砕した。
凍結保持時間:5分
粉砕時間:2分
【0142】
5.安息角の測定
MWCNT粉末1の安息角を既述の注入法により測定した。円盤状の上面を有する測定台の上に、十分な量のMWCNT粉末1を堆積させて、円錐状に堆積した粉体と水平面とのなす角を、分度器を用いて測定した。
その結果、安息角は35度であった。
【0143】
6.体積抵抗率の測定
ロレスタ装置(製品名:粉体抵抗測定システム MCP-PD51、低抵抗率計 ロレスタ-GP、粉体用低抵抗プローブ MCP-PD511(定電流印加方式4探針法)、いずれも日東精工アナリテック株式会社製)を用いて、MWCNT粉末1を粉体抵抗率測定プローブユニットに導入し、付属の油圧ポンプを用い、20kNでプレスして、目標の荷重に達した後、体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
その結果、体積抵抗率は、20kNで9.2×10-3Ω・cmであった。
【0144】
(実施例2)
1.ULMWCNTを含むMWCNT2の準備
ULMWCNTを含むMWCNT2は、気相中でCNT束の自己集合と直接相互作用する浮遊触媒法(CVD法)により作製した。
まず、400℃~700℃に温度制御された貫流反応器内のキャリアガスの連続流にFe原子を含む金属触媒前駆体としてフェロセン、および、促進剤としてチオフェンを導入した。キャリアガスは、窒素及びアルゴンの混合ガスを使用した。キャリアガスの流量は、30000sccm(standard cubic centimeter per minute)とした。
貫流反応器内の温度を上記範囲に維持することで、金属触媒前駆体は、粒子状金属触媒として生成された。金属触媒を生成する領域を第1の温度ゾーンと称する。
【0145】
次に、キャリアガス流の中に、炭素源であるメタンを放出した。金属触媒と炭素源とを第1の温度ゾーンの下流にある1400℃に温度制御された第2の温度ゾーンに供給した。第2の温度ゾーンは、カーボンナノチューブ凝集体を生成するのに十分な温度に維持されている。
【0146】
第2の温度ゾーンでは、温度制御流通反応器内に電場を生成させ、これによりULMWCNTを含むMWCNTの凝集体が生成された。
凝集体は、100℃~500℃に温度制御された流通型反応器の排出口を介して連続排出としてULMWCNTを含むMWCNTの凝集体が排出され、連続放電により、ULMWCNTを含むシート状のMWCNTを収集した。
得られたULMWCNTを含むシート状MWCNTは、ULMWCNT及びMWCNTを含む。
得られたULMWCNTを含むシート状MWCNTは、脱イオン水で10秒間洗浄し、ULMWCNTを含むMWCNT2を得た。
【0147】
2.引張強度
実施例2のULMWCNTを含むMWCNT2を、5mm×100mmに切り出したものを測定試料とし、引張試験装置(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-IS)の把持部に固定し、速度1mm/分にて引っ張り試験を行った。
その結果、引張強度は、11.3MPaであった。
【0148】
3.最大長さ
ULMWCNTを含むMWCNT2を用いて、実施例1と同様にして最大長さを測定した結果、最大長さの最大値は3500μmであった。
【0149】
4.ULMWCNTを含むMWCNT粉末2の製造
ULMWCNTを含むMWCNT2を用いて、粉砕時間を変更した以外は実施例1と同様にして、ULMWCNTを含むMWCNT粉末2を得た。
粉砕時間:7分
【0150】
5.安息角の測定
ULMWCNTを含むMWCNT粉末2を用いて、実施例1と同様にして安息角を測定した結果、安息角は60度であった。
【0151】
6.体積抵抗率の測定
ULMWCNTを含むMWCNT粉末2を用いて、実施例1と同様にして体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率は、20kNで5.0×10-3Ω・cmであった。
【0152】
(実施例3)
1.ULMWCNTを含むMWCNT粉末3の製造
ULMWCNTを含むMWCNT2を用いて、粉砕時間を変更した以外は実施例1と同様にして、ULMWCNTを含むMWCNT粉末3を得た。
粉砕時間:10分
【0153】
2.安息角の測定
ULMWCNTを含むMWCNT粉末3を用いて、実施例1と同様にして安息角を測定した結果、安息角は45度であった。
【0154】
3.体積抵抗率の測定
ULMWCNTを含むMWCNT粉末3を用いて、実施例1と同様にして体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率は、20kNで5.2×10-3Ω・cmであった。
【0155】
(比較例1)
1.MWCNT4の準備
MWCNT4として、「多層カーボンナノチューブ」(カタログ番号:FT7000,C-nano社製)を準備した。
【0156】
2-1.分散液4の調製
MWCNT4を用いて、実施例1と同様にして分散液4を得た。
【0157】
2―2.引張強度
分散液4を用いて、実施例1と同様にして引張強度を測定した結果、引張強度は6.9MPaであった。
【0158】
3.最大長さ
MWCNT4を用いて、実施例1と同様にして最大長さを測定した結果、最大長さの最大値は20μmであった。
【0159】
4.MWCNT粉末4の製造
MWCNT4を用いて、実施例1と同様にして、MWCNT粉末4を得た。
【0160】
5.安息角の測定
MWCNT粉末4を用いて、実施例1と同様にして安息角を測定した結果、安息角は60度であった。
【0161】
6.体積抵抗率の測定
MWCNT粉末4を用いて、実施例1と同様にして体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率は、20kNで2.2×10-2Ω・cmであった。
【0162】
(比較例2)
1.MWCNT5の準備
MWCNT5として、「多層カーボンナノチューブ」(カタログ番号:FT9100,C-nano社製)を準備した。
【0163】
2-1.分散液5の調製
MWCNT5を用いて、実施例1と同様にして分散液5を得た。
【0164】
2―2.引張強度
分散液5を用いて、実施例1と同様にして引張強度を測定した結果、引張強度は2.3MPaであった。
【0165】
3.最大長さ
MWCNT5を用いて、実施例1と同様にして最大長さを測定した結果、最大長さの最大値は15μmであった。
【0166】
4.MWCNT粉末5の製造
MWCNT5を用いて、実施例1と同様にして、MWCNT粉末5を得た。
【0167】
5.安息角の測定
MWCNT粉末5を用いて、実施例1と同様にして安息角を測定した結果、安息角は60度であった。
【0168】
6.体積抵抗率の測定
MWCNT粉末5を用いて、実施例1と同様にして体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率は、20kNで1.7×10-2Ω・cmであった。
【0169】
(比較例3)
1.MWCNT6の準備
MWCNT6として、「多層カーボンナノチューブ」(カタログ番号:FT6120,C-nano社製)を準備した。
【0170】
2-1.分散液6の調製
MWCNT6を用いて、実施例1と同様にして分散液6を得た。
【0171】
2―2.引張強度
分散液6を用いて、実施例1と同様にして引張強度を測定した結果、引張強度は8.2MPaであった。
【0172】
3.最大長さ
MWCNT6を用いて、実施例1と同様にして最大長さを測定した結果、最大長さの最大値は250μmであった。
【0173】
4.MWCNT粉末6の製造
MWCNT6を用いて、実施例1と同様にして、MWCNT粉末6を得た。
【0174】
5.安息角の測定
MWCNT粉末6を用いて、実施例1と同様にして安息角を測定した結果、安息角は55度であった。
【0175】
6.体積抵抗率の測定
MWCNT粉末6を用いて、実施例1と同様にして体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率は、20kNで1.5×10-2Ω・cmであった。
【0176】
以上の結果を表1に示す。
【0177】
【表1】

【0178】
実施例1~3で得られた多層カーボンナノチューブ粉末は、引張強度が10MPa~100MPaである多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、かつ安息角が10度~90度であることが確認された。実施例1~3で得られた多層カーボンナノチューブ粉末は、体積抵抗率が、5.0×10-3Ω・cm~9.2×10-3Ω・cmであり、5.0×10-2Ω・cm以下であることから、いずれも導電性の向上効果に優れる導電助剤である。
【要約】
【課題】導電性の向上効果に優れる導電助剤、分散液、電極、二次電池、並びに、多層カーボンナノチューブ粉末、平面状集合体、フィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクルの提供。
【解決手段】引張強度が10MPa~100MPaである多層カーボンナノチューブの粉砕物であり、安息角が10度~90度である多層カーボンナノチューブ粉末を含む、導電助剤、分散液、電極、二次電池、並びに、多層カーボンナノチューブ粉末、平面状集合体、フィルター、電磁波シールド及び極端紫外線用ペリクル。
【選択図】なし
図1