(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】モリブデン複合材料およびそれを用いたモリブデン複合材料成形品並びにモリブデン複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 1/05 20230101AFI20241206BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20241206BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20241206BHJP
B22F 1/12 20220101ALI20241206BHJP
C22C 32/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C22C1/05 E
B22F1/00 P
B22F1/052
B22F1/12
C22C32/00 X
(21)【出願番号】P 2024105716
(22)【出願日】2024-06-28
【審査請求日】2024-07-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】上松 天
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第115007871(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/04- 1/059
C22C 32/00
B22F 1/00- 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンを主体とし、Tiの炭化物、Zrの炭化物、Hfの炭化物から選択される少なくとも1種の炭化物を2~10質量%含有し、モリブデン粉末と、炭化物粉末との混合粉末の焼結体であるモリブデン複合材料であって、
前記炭化物粉末を母点とするボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm
2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下である、
モリブデン複合材料。
【請求項2】
1800℃で8時間、真空中で加熱した後の室温における最大曲げ強度が1000MPa以上であり、かつ変形挙動が延性を示
し、前記変形挙動は、JIS Z 2248で規定される3号試験片の形状に切り出した試験片についてJIS Z 2248で規定される押曲げ法により判断し、前記試験片を支点間距離20mmで20mm押し込んだときに破断せずに曲がった場合を延性があるとした、請求項1に記載のモリブデン複合材料。
【請求項3】
1800℃で8時間、真空中で加熱した後のビッカース硬さが、200HV以上である、請求項1に記載のモリブデン複合材料。
【請求項4】
1800℃で8時間、真空中で加熱した前後のビッカース硬さについて、加熱前の硬さから加熱後の硬さを差し引いた減少値を加熱前の硬さで除した硬さ減少率(%)が30%以下である、請求項3に記載のモリブデン複合材料。
【請求項5】
前記モリブデン粉末と、前記炭化物粉末とを解砕・粉砕し、混合した前記混合粉末をホットプレスしたものである、請求項1記載のモリブデン複合材料。
【請求項6】
前記モリブデン粉末は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径D
Aveが2.5~4.0μm、メディアン径D50が2.0~3.5μmであり、前記炭化物粉末は、平均粒径D
Aveが1.5~3.0μm、メディアン径D50が1.0~2.5μmである、請求項5記載のモリブデン複合材料。
【請求項7】
前記混合粉末の平均粒径D
Aveが1.5~3.5μm、メディアン径D50が1.0~3.0μmである、請求項5記載のモリブデン複合材料。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項記載のモリブデン複合材料を所定形状に成形してなるモリブデン複合材料成形品。
【請求項9】
モリブデン粉末と、Tiの炭化物粉末、Zrの炭化物粉末、Hfの炭化物粉末から選択される少なくとも1種の炭化物粉末とを所定の割合で用意する工程と、
前記モリブデン粉末および前記炭化物粉末を解砕・粉砕し、混合
し、平均粒径D
Ave
が1.5~3.5μm、メディアン径D50が1.0~3.0μmである混合粉末を得る工程と、
前記混合粉末を焼結し、モリブデンを主体とし、Tiの炭化物、Zrの炭化物、Hfの炭化物から選択される少なくとも1種の炭化物を2~10質量%の範囲で含有する焼結体であり、
前記炭化物粉末を母点とするボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm
2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下であるモリブデン複合材料を得る工程、
とを具備するモリブデン複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記焼結体を得る工程は、1400℃以上1800℃以下の温度でホットプレス(HP)することにより実施する、請求項9記載のモリブデン複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記モリブデン粉末は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径D
Aveが2.5~4.0μm、メディアン径D50が2.0~3.5μmであり、前記炭化物粉末は、平均粒径D
Aveが1.5~3.0μm、メディアン径D50が1.0~2.5μmである、請求項9記載のモリブデン複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記モリブデン粉末および前記炭化物粉末を解砕・粉砕し、混合する工程をロッドミルにより実施する、請求項9記載のモリブデン複合材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載のモリブデン複合材料、又は請求項9~
12のいずれか一項に記載のモリブデン複合材料の製造方法で製造したモリブデン複合材料を、所定形状に成形し、モリブデン複合材料成形品を得る、モリブデン複合材料成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン複合材料およびそれを用いたモリブデン複合材料成形品並びにモリブデン複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リチウムイオン電池などの負極集電体として、銅箔の代わりに、PETなどの基材の表面のCuを蒸着した複合集電体が提案されている。
【0003】
このような複合集電体を製造するためのCu蒸着には、タングステン製の蒸着ボートが使用されている。
【0004】
しかしながら、タングステン製の蒸着ボートは耐熱性は良好であるが、耐久性に劣り、1回の使用で破損するという問題があった。
【0005】
そこで、タングステンよりは耐熱性に劣るが、加工性に優れるモリブデンをベースとし、これに高融点化合物を添加したモリブデン合金製の蒸着ボートを検討したが、強度的にも十分ではないという問題があった。
【0006】
従来、モリブデン合金としては、特許文献1~4が知られている。
【0007】
特許文献1、2では、モリブデンに遷移金属炭化物を添加する際に、メカニカルアロイング処理が必須条件となるが、この方法は、モリブデン粒子に炭化物粒子を埋め込むような高エネルギーの混合方法であり、生産コストや生産効率の面で問題となる。
【0008】
また、特許文献1では、熱間等方圧加圧法(HIP)により緻密化する工程が採用されており、この点も生産コスト、生産効率の面で問題となる。一方、特許文献2では、焼結方法として放電プラズマ焼結法(SPS)が用いられているが、SPSは比較的小さいサンプルを作製する方法であり、この点でも蒸着ボートの製造には適さない。
さらに、特許文献3には、Ti、Zr、Hfの炭化物等をモリブデンに添加した材料およびその製造方法が開示されている。特許文献3では、炭化物等の粒子の分散状態が悪くなると強度不足となることが記載されているが、粉末の混合方法や分散性の指標については明示されておらず、本発明のモリブデン複合材料における良好な炭化物粒子の分散性を得るための情報は提示されていない。さらに、特許文献3でも焼結方法としてHIPが採用されており、この点も生産コスト、生産効率の面で問題となる。
【0009】
また、特許文献4には、炭化チタン、炭化ハフニウム、炭化ジルコニウム、炭化タンタルをモリブデンに添加した材料が開示されている。特許文献4では、粉末の混合方法として、Mo粉末、TiC等の炭化物粉末を用意し、ボールミル等で混合すると記載されているが、分散性の指標は明示されていない。
【0010】
何れにしても、特許文献1~4によると、モリブデン合金としては、モリブデン粉末と添加物粒子との分散性と、焼結状態が問題となりそうではあるが、目標とする耐熱性と耐久性に優れ、生産コスト、生産効率の面でも優れたモリブデン複合材料の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第3271040号公報
【文献】特開2000-129389
【文献】特許第5546880号公報
【文献】特許第5238259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、原料粉末の粒径等の素材条件、原料粉末の解砕・粉砕の条件、混合条件、焼結条件、成形条件等、種々の条件の組み合わせによって、得られた材料の耐熱性、加工性、強度などの耐久性が大きく異なることを把握した。特に、モリブデン複合材料の粉末の分散性は、耐久性に大きくかかわるが、原料の粒径分布や粉末の硬さが少しでも変わると混合条件との組み合わせによって何が最適かが把握し難いものであった。また、混合時の環境、特に気温なども分散状態に大きく影響することも知見した。
【0013】
そこで、種々のモリブデン複合材料を検討した結果、モリブデン複合材料のボロノイ(Voronoi)分割の平均面積に着目すると、耐久性の良好なモリブデン複合材料が把握できることを知見し、本発明を完成した。
【0014】
かかる本発明は、耐熱性と耐久性に優れ、生産コスト、生産効率の面でも優れたモリブデン複合材料およびそれを用いたモリブデン複合材料成形品並びにモリブデン複合材料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、モリブデンを主体とし、Tiの炭化物、Zrの炭化物、Hfの炭化物から選択される少なくとも1種の炭化物を2~10質量%含有し、モリブデン粉末と、炭化物粉末との混合粉末の焼結体であるモリブデン複合材料であって、ボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下である、モリブデン複合材料にある。
【0016】
本発明の第2の態様は、1800℃で8時間、真空中で加熱した後の室温における最大曲げ強度が1000MPa以上であり、かつ変形挙動が延性を示す、1に記載のモリブデン複合材料にある。
【0017】
本発明の第3の態様は、1800℃で8時間、真空中で加熱した後のビッカース硬さが、200HV以上である、1に記載のモリブデン複合材料にある。
【0018】
本発明の第4の態様は、1800℃で8時間、真空中で加熱した前後のビッカース硬さについて、加熱前の硬さから加熱後の硬さを差し引いた減少値を加熱前の硬さで除した硬さ減少率(%)が30%以下である、3に記載のモリブデン複合材料にある。
【0019】
本発明の第5の態様は、前記モリブデン粉末と、前記炭化物粉末とを解砕・粉砕し、混合した前記混合粉末をホットプレスしたものである、1記載のモリブデン複合材料にある。
【0020】
本発明の第6の態様は、前記モリブデン粉末は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径DAveが2.5~4.0μm、メディアン径D50が2.0~3.5μmであり、前記炭化物粉末は、平均粒径DAveが1.5~3.0μm、メディアン径D50が1.0~2.5μmである、5記載のモリブデン複合材料にある。
【0021】
本発明の第7の態様は、前記混合粉末の平均粒径DAveが1.5~3.5μm、メディアン径D50が1.0~3.0μmである、5記載のモリブデン複合材料にある。
【0022】
本発明の第8の態様は、1~7の何れかのモリブデン複合材料を所定形状に成形してなるモリブデン複合材料成形品にある。
【0023】
本発明の第9の態様は、モリブデン粉末と、Tiの炭化物粉末、Zrの炭化物粉末、Hfの炭化物粉末から選択される少なくとも1種の炭化物粉末とを所定の割合で用意する工程と、前記モリブデン粉末および前記炭化物粉末を解砕・粉砕し、混合して混合粉末を得る工程と、前記混合粉末を焼結し、モリブデンを主体とし、Tiの炭化物、Zrの炭化物、Hfの炭化物から選択される少なくとも1種の炭化物を2~10質量%の範囲で含有する焼結体であり、ボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下であるモリブデン複合材料を得る工程、とを具備するモリブデン複合材料の製造方法にある。
【0024】
本発明の第10の態様は、前記焼結体を得る工程は、1400℃以上1800℃以下の温度でホットプレス(HP)することにより実施する、9記載のモリブデン複合材料の製造方法にある。
【0025】
本発明の第11の態様は、前記モリブデン粉末は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径DAveが2.5~4.0μm、メディアン径D50が2.0~3.5μmであり、前記炭化物粉末は、平均粒径DAveが1.5~3.0μm、メディアン径D50が1.0~2.5μmである、9記載のモリブデン複合材料の製造方法にある。
【0026】
本発明の第12の態様は、前記混合粉末の平均粒径DAveが1.5~3.5μm、メディアン径D50が1.0~3.0μmである、11記載のモリブデン複合材料の製造方法にある。
【0027】
本発明の第13の態様は、前記モリブデン粉末および前記炭化物粉末を解砕・粉砕し、混合する工程をロッドミルにより実施する、9記載のモリブデン複合材料の製造方法にある。
【0028】
本発明の第14の態様は、1~7のいずれかのモリブデン複合材料、又は9~13のいずれかのモリブデン複合材料の製造方法で製造したモリブデン複合材料を、所定形状に成形し、モリブデン複合材料成形品を得る、モリブデン複合材料成形品の製造方法にある。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、耐熱性と耐久性に優れ、生産コスト、生産効率の面でも優れたモリブデン複合材料およびそれを用いたモリブデン複合材料成形品並びにモリブデン複合材料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】炭化物粒子が密に存在し、かつ均一に分散しているサンプルの電子顕微鏡(SEM)画像から、画像処理によって炭化物粒子を黒色の粒子として判別した画像の例である。
【
図2】
図1の粒子についてボロノイ領域を黒色で示した図である。
【
図3】炭化物粒子が密に存在するが、分散が均一でないサンプルのSEM画像から、画像処理によって炭化物粒子を黒色の粒子として判別した画像の例である。
【
図4】
図3の粒子についてボロノイ領域を黒色で示した図である。
【
図5】炭化物粒子が密に存在しないが、分散は均一であるサンプルのSEM画像から、画像処理によって炭化物粒子を黒色の粒子として判別した画像の例である。
【
図6】
図5の粒子についてボロノイ領域を黒色で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のモリブデン複合材料は、モリブデンを主体とし、Tiの炭化物、Zrの炭化物、Hfの炭化物から選択される少なくとも1種の炭化物を2~10質量%含有する焼結体である。
【0032】
本発明のモリブデン複合材料は、モリブデン粉末と、Tiの炭化物粉末、Zrの炭化物粉末、Hfの炭化物粉末から選択される少なくとも1種の炭化物粉末とを原料として製造される。
【0033】
ここで、炭化物粉末としては、Tiの炭化物粉末、Zrの炭化物粉末、Hfの炭化物粉末から選択される少なくとも1種の炭化物粉末を用いることができるが、特に、Zrの炭化物粉末が好ましい。その理由の1つめは、Tiの炭化物は焼結中あるいは加工中、使用中に一部が酸化した場合、昇華しやすい酸化チタンとなり、特に真空中での加熱では雰囲気の不純物の原因となりうることである。理由の2つめは、Hfの炭化物はZrの炭化物と同様の効果が得られるものの、材料価格がZrの炭化物よりはるかに高く、製品のコスト増につながることである。
【0034】
原料となるモリブデン粉末は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径DAveが2.5~4.0μm、メディアン径D50が2.0~3.5μmの粉末を用いるのが好ましい。
【0035】
また、原料となる炭化物粉末は、平均粒径DAveが1.5~3.0μm、メディアン径D50が1.0~2.5μmの粉末を用いるのが好ましい。
【0036】
本発明のモリブデン複合材料を得るためには、前記モリブデン粉末および前記炭化物粉末を解砕・粉砕し、混合し、混合粉末を得る。
【0037】
得られる混合粉末の平均粒径DAveが1.5~3.5μm、メディアン径D50が1.0~3.0μmであるのが好ましい。
【0038】
本発明において、前記モリブデン粉末と、前記炭化物粉末とを解砕・粉砕し、混合する工程の実施は、所望の混合粉末を得られるものであれば、特に限定されないが、ロッドミル(RM)により実施するのが好ましい。
【0039】
本発明のモリブデン複合材料を得るには、上述した複合材料を、1400℃以上1800℃以下の温度でホットプレス(HP)する。
【0040】
従来においては、熱間等方圧加圧法(HIP)により焼結体を得る手法があるが、HIPはHPに比べてコスト高であり、できれば避けたい手法であるが、本発明では、HP法により、相対密度が98%以上の焼結体を得ることができる。
【0041】
また、本発明のモリブデン複合材料は、耐熱強度および耐熱硬さが良好なものである。すなわち、加熱後の曲げ強度が良好であり、加熱後の硬さが良好であり、加熱による硬さの減少が小さいものである。
【0042】
加熱後の曲げ強度は、1000MPa以上、好ましくは、1100MPa以上であり、加えて曲げによる変形挙動が脆性破壊ではなく延性変形であることが好ましい。
【0043】
また、加熱後の硬さは、ビッカース硬さ(HV)で、200以上、好ましくは、220以上である。
【0044】
また、加熱前の硬さから加熱後の硬さを差し引いた減少値を加熱前の硬さで除した硬さ減少率(%)が30%以下、好ましくは20%以下である。
【0045】
なお、ここで、加熱後とは、蒸着ボートとしての使用を考慮し、1800℃で8時間の真空熱処理とした。
【0046】
本発明では、モリブデン複合材料において、炭化物の分散状態が、モリブデン複合材料の曲げ強度と密接に関係し、分散状態が良好なもので、所定の分散特性を有していれば、曲げ強度や硬さにむらも生じないことを知見した。
【0047】
ここで、所定の分散特性は、ボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下である、というものであるが、詳細は後述する。
【0048】
本発明のモリブデン複合材料の物性評価は、以下のように実施した。
(曲げ強度)
本発明のモリブデン複合材料から、JIS Z 2248で規定される3号試験片の形状を切り出し、JIS Z 2248で規定される押曲げ法によって曲げ強度を測定した。測定機器としては、イマダ製荷重測定スタンド「EMX-500N」に3点曲げ試験用治具「BT-500N」を組み合わせて使用した。
【0049】
(変形挙動)
上記の曲げ強度試験において、支点間距離20mmで試験片を20mm押し込んだとき、破断せずに曲がった場合は延性、破断した場合は脆性と判断した。
【0050】
(硬さ)
上記の曲げ強度試験に使用した後の端部で変形していない部分を切断して硬さ測定用試験片とし、JIS Z 2244で規定されるビッカース硬さ試験によって硬さを測定した。測定機器としては、ミツトヨ製マイクロビッカース硬さ試験機「HM-200」を使用した。
【0051】
本発明のモリブデン複合材料は、このように、耐熱強度、耐熱硬さが優れたものであるが、モリブデン複合材料中において炭化物の分散状態が最適な状態かどうかは把握できない。
【0052】
また、現状の耐熱強度や耐熱硬さが所望の範囲に入っても、分散状態が把握できないと、耐熱強度や耐熱硬さにむらがある可能性がある。
【0053】
さらに、現状の分散状態が最適なものであったとしても、原料粉末の粒径の分布状態の違いなどにより、解砕・粉砕および混合条件が同一な条件で行っても、焼結体での炭化物の分散状態が変わる可能性があり、常に、分散状態が良好で、現状の耐熱強度や耐熱硬さにむらがないことを把握することができない。
【0054】
本発明のモリブデン複合材料の炭化物の分散状態が良好であることは、上述した通り、ボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下であることにより把握できることを知見した。
【0055】
この分散性は、以下のように把握した。
(分散性)
上記の曲げ強度試験に使用した後の端部で変形していない部分を切断して断面を研磨したのち、日立ハイテクノロジーズ社製電子顕微鏡「TM4000Plus」を用いて、厚み方向の中央付近で水平方向に2mm間隔で3か所のSEM画像を撮影した。撮影したSEM画像について、画像解析ソフト「Image-J」を用いて、コントラストの違いからまず炭化物粒子の位置を認識した。続いて、「Image-J」の機能「Voronoi」を用いて、最も近い2つの粒子の境界から等距離の点が集合した直線で画像を分割した。すなわち、分割した領域(ボロノイ領域)にはそれぞれ1つの炭化物粒子が含まれ、炭化物粒子が密に存在する場所ではボロノイ領域の面積が小さくなり、炭化物粒子が疎に存在する場所ではボロノイ領域が面積は大きくなる。機能「Voronoi」で分割した領域のそれぞれの面積を「Image-J」で算出し、面積の総和を分割した領域の数で除してボロノイ領域の平均面積とした。さらに、ボロノイ領域の面積の標準偏差を平均面積で除して、ボロノイ領域の面積の変動係数とした。
【0056】
以下では、具体的な画像の例を用いて分散性の把握方法について説明する。
図1は、炭化物粒子が密に存在し、かつ均一に分散しているサンプルの電子顕微鏡(SEM)画像から、画像処理によって炭化物粒子を黒色の粒子として判別した画像の例である。さらに
図2は、
図1の粒子についてボロノイ領域を黒色で示したものである。
このサンプルについて他に2か所のSEM画像を撮影して、同様の画像処理をした結果を含めて平均すると、ボロノイ分割の平均面積は30μm
2、その面積の標準偏差は21μm
2となり、標準偏差を平均面積で除した変動係数は0.7となった。
なお、このサンプルは後述する実施例7に相当する。
【0057】
また、
図3は、炭化物粒子が密に存在するが、分散が均一でないサンプルのSEM画像から、画像処理によって炭化物粒子を黒色の粒子として判別した画像の例である。さらに
図4は、
図3の粒子についてボロノイ領域を黒色で示したものである。
このサンプルについて他に2か所のSEM画像を撮影して、同様の画像処理をした結果を含めて
図1のサンプルと同様にボロノイ分割の平均面積および変動係数を算出すると、ボロノイ分割の平均面積は30μm
2、その面積の変動係数は3.2となった。
なお、このサンプルは、後述する比較例15に相当する。
【0058】
また、
図5は、炭化物粒子が密に存在しないが、分散は均一であるサンプルのSEM画像から、画像処理によって炭化物粒子を黒色の粒子として判別した画像の例である。さらに
図6は、
図5の粒子についてボロノイ領域を黒色で示したものである。
このサンプルについて他に2か所のSEM画像を撮影して、同様の画像処理をした結果を含めて
図1のサンプルと同様にボロノイ分割の平均面積および変動係数を算出すると、ボロノイ分割の平均面積は100μm
2、その面積の変動係数は0.8となった。
なお、このサンプルは、後述する比較例5に相当する。
【0059】
(ボロノイ領域の平均面積の意味)
上記の方法で求められるボロノイ領域の平均面積が小さいほど、モリブデン複合材料全体として炭化物粒子が密に存在しているといえる。また、このボロノイ領域の平均面積はSEM画像全体の面積をその画像中に含まれる炭化物粒子の数で除した値と本質的に同じであるため、ある面積の断面に含まれる炭化物粒子の数によっても同じモリブデン複合材料の組織構造を定義できる。ただし、ボロノイ領域の平均面積やある面積の断面に含まれる炭化物粒子の数によって、モリブデン複合材料の全体的な炭化物粒子数の濃度は判別できるが、炭化物粒子の局所的な疎密のばらつきは定義できない。
【0060】
(変動係数の重要性)
そして、発明者らは、炭化物粒子の疎密のばらつき、言い換えれば炭化物粒子の分散性が、モリブデン合金の物性に重要な影響を与えることを見出した。すなわち、モリブデン母材に炭化物粒子を分散させて耐熱性を強化する材料において、重要なのは炭化物粒子の添加量というよりもいかに均一に炭化物粒子が分散しているかであり、炭化物粒子を添加しても局所的に炭化物粒子が存在しない場所が多く存在していると、その部分で加熱によるモリブデンの再結晶が進むため、局所的にモリブデンの結晶粒が粗大化して複合材料全体として高い耐熱性が得られない。そこで、炭化物粒子の疎密のばらつきの指標としてボロノイ領域の面積の変動係数を利用すれば、モリブデン複合材料の耐熱性をよく説明できるとの知見に至った。すなわち、この変動係数が小さいほど炭化物粒子は均一に分散していることになる。
以上の検討から、本発明のモリブデン複合材料の特徴を、炭化物粒子のボロノイ領域の平均面積が80μm2以下、かつその変動係数が1.8以下と指定した。
【0061】
炭化物粒子のボロノイ領域の平均面積が80μm2を超えると、全体的にモリブデンの再結晶を十分に抑制できず、モリブデンの結晶粒が粗大化して耐熱性が低下する。また、変動係数が1.8を超えると、炭化物粒子が疎な部分が存在し、局所的にモリブデンの再結晶による結晶粒粗大化が起きて耐熱性が低下する。
【0062】
このように特に、モリブデン複合材料の炭化物粒子の分散性は、炭化物粒子のボロノイ領域の平均面積および変動係数を把握することで確認でき、耐熱性が良好で、加熱後の曲げ強度が良好であることが、比較的簡便に把握できることが確認できた。よって、原料の粒径分布や粉末の硬さが少しでも変わって混合条件との組み合わせによって分散状態が変化したこと、又は、混合時の環境、特に気温などの影響で分散状態に大きく影響したことは、炭化物粒子のボロノイ領域の平均面積および変動係数により把握することができる。
【0063】
以下、本発明のモリブデン複合材料を製造する一実施形態に係る製造方法を説明する。
【0064】
本発明のモリブデン複合材料は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径DAveが2.5~4.0μm、メディアン径D50が2.0~3.5μmのモリブデン粉末と、平均粒径DAveが1.5~3.0μm、メディアン径D50が1.0~2.5μmの炭化物粉末(炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム)とを、所定の割合でモリブデン製ポットに投入し、モリブデン製のロッドを入れて回転架台でポットを1~24時間回転させることで粉末を解砕および粉砕そして混合(ロッドミル)して、混合粉末の平均粒径DAveを1.5~3.5μm、メディアン径D50を1.0~3.0μmにまで低下させたのち、1400℃以上1800℃以下の温度でホットプレス(HP)することで本発明のモリブデン複合材料が得られる。そして焼結体を所望の形状に加工することで本発明のモリブデン複合材料からなる製品であるモリブデン複合材料成形品を製造することができる。
【0065】
(製造方法のポイント1:原料およびRM後のモリブデン粉末粒径)
本発明のモリブデン複合材料の製造方法は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径DAveが2.5~4.0μm、好ましくは、2.8~3.7μm、メディアン径D50が2.0~3.5μm、好ましくは、2.2~3.3μmであるモリブデン粉末を原料に用いて、RMによってモリブデン粉末の平均粒径DAveを1.5~3.5μm、メディアン径D50を1.0~3.0μmにまで低下させるのが第1のポイントとなる。原料モリブデン粉末の平均粒径が大きすぎるとRMで炭化物粒子が均一に分散しにくく、小さすぎると原料モリブデン粉末が凝集して炭化物粒子が均一に分散しにくいため、所定の範囲とする必要がある。また、RM後のモリブデン粉末の平均粒径が大きすぎると焼結温度が高くなり所定の密度の焼結体が得られず、小さすぎるとHP時に密度が急上昇して気孔がトラップされてしまい所定の密度の焼結体が得られないため、所定の範囲とする必要がある。
【0066】
(製造方法のポイント2:原料炭化物粉末粒径)
また、本発明のモリブデン複合材料の製造方法は、レーザー回折・散乱法で得られる平均粒径DAveが1.5~3.0μm、好ましくは、1.8~2.7μm、メディアン径D50が1.0~2.5μm、好ましくは、1.3~2.2μmである炭化物粉末を原料に用いるのが第2のポイントとなる。原料炭化物粉末の平均粒径が大きいとRM後の炭化物粉末の平均粒径も大きいままとなり、たとえモリブデン中に均一に炭化物粒子が分散したとしても炭化物由来の脆性が複合材料全体の強度の低下につながるうえ、炭化物粒子の個数が減ることでモリブデンの再結晶阻害効果が十分に得られず、局所的にモリブデン結晶粒が粗大化することによっても複合材料全体の強度が低下する。また、原料炭化物粉末の平均粒径が小さいとRM後の炭化物粉末の平均粒径も小さくなりすぎ、炭化物粒子が凝集して均一に分散しなくなるため、所定の範囲とする必要がある。
【0067】
(製造方法のポイント3:ロッドミルと条件)
また、上記のモリブデン粉末および炭化物粉末を原料として、RMによって粉末の一次粒子が凝集した粗大な粒子を解砕しつつ粉砕しながら、モリブデン粉末と炭化物粉末を混合することが第3のポイントとなる。効率よく解砕および粉砕を行うためには、回転速度を容器の径をD[m]とした場合に42.3/√Dで与えられる臨界回転速度[rpm]の0.55~0.8倍とすることが望ましい。なお、RMは粉末を解砕しつつ粉砕して同時に混合できる方法であれば他の既知の方法に置き換えてもよい。すなわち、ロッド以外の粉砕メディアを使用する混合方法、例えばボールミルに置き換えてもよいし、ポットの回転方法は他の装置を使用する方法、例えば遊星ボールミルを使用してもよいし、粉砕のエネルギーとして粉砕メディアの運動エネルギー以外を利用する方法、例えば原料のモリブデン粉末と炭化物粉末を混合したのちのジェットミルを採用してもよい。数ある混合方法からの選定およびその混合方法の条件を決定する判断材料として、混合した粉末を少量焼結した小さいサンプルを作製し、上述した炭化物粒子の分散性評価方法を用いて適切な分散性が得られているか確認することが望ましい。
【0068】
RM工程を1~24時間とした理由は、1時間未満では解砕や粉砕および混合による炭化物粒子の分散性向上の効果が得られないこと、そして24時間を超えるとそれ以上の解砕や粉砕および混合の効果が得られにくく、生産効率の悪化を招くことである。
【0069】
(ホットプレス条件)
HP工程では、95%以上の相対密度を有する焼結体が作製される。このような特性を有する焼結体を作製するためのHP温度は1400℃以上1800℃以下であることが好ましい。HP温度が低すぎると相対密度が低くなって複合材料の強度が低下し、高すぎるとモリブデンの結晶成長が進んで合金の強度が低下する。
【0070】
(既存技術との比較)
従来技術においては、モリブデンに遷移金属炭化物を添加した材料の製造方法として、メカニカルアロイングを用いた粉末の混合方法が示されている(特許第3271040号および特開2000-129389など)。しかしながら、モリブデン粒子に炭化物粒子を埋め込むような高エネルギーの混合方法は、本発明のモリブデン複合材料における炭化物粒子の分散性を得るには不要である。なお、メカニカルアロイングは、手間やコスト、1バッチ当たりに処理できる粉末量が小さいことで、生産コストの上昇や生産効率の悪化を招くため、本発明のモリブデン複合材料の製造方法としては不適である。
【0071】
また、従来においては、焼結法として熱間等方圧加圧法(HIP)により緻密化する工程が採用されている(特許第3271040号)が、HIPはHPに比べコストがかかるため、蒸着ボートなどの消耗品となる耐熱用途製品を生産するうえでは避けたい技術である。本発明ではHPにより相対密度98%以上の焼結体が得られるため、HIPは不適でありHPが適するものである。
【0072】
さらに、従来においては、焼結方法として放電プラズマ焼結法(SPS)が用いられているものがある(特開2000-129389)が、SPSは比較的小さいサンプルを作製する方法であり、蒸着ボートなどの耐熱用途製品を生産するうえでは不適である。本発明のモリブデン複合材料の製造方法としてはHPが適する。
【0073】
特許第5546880号に開示された技術では、Ti、Zr、Hfの炭化物等をモリブデンに添加した材料およびその製造方法が示されている。同特許では炭化物等の粒子の分散状態が悪くなると強度不足となることが記載されているが、粉末の混合方法や分散性の指標については明示されておらず、本発明のモリブデン複合材料における良好な炭化物粒子の分散性を得るための情報は提示されていない。さらに、同特許では焼結方法としてHIPが採用されているが、HIPはHPに比べコストがかかるため、蒸着ボートなどの消耗品となる耐熱用途製品を生産するうえでは避けたい。同特許では「一般的な粉末焼結法で得られる焼結体の相対密度は90%程度」とあり、高密度の焼結体を得るためにHIPを採用したと考えられるが、本発明ではHPにより相対密度98%以上の焼結体が得られるため、HIPは不適でありHPが適する。
【0074】
特許第5238259号に開示された技術では、炭化チタン、炭化ハフニウム、炭化ジルコニウム、炭化タンタルをモリブデンに添加した材料が示されている。同特許では、粉末の混合方法として「原料粉として、Mo粉末、TiC等の炭化物粉末を用意し、ボールミル等で混合する。Mo粉末としては平均粒径5μm以下、炭化物粉末は平均粒径2μm以下のものが好ましく、より好ましくは(Mo粉末の平均粒径>炭化物粉末の平均粒径)であり、さらに好ましくは[Mo粉末の平均粒径>3(炭化物粉末の平均粒径)]である。炭化物粉末の平均粒径がMo粉末の平均粒径より小さい方が、炭化物がMoの粒界相に均一に分散し易い。」と記載されているが、分散性の指標が明示されておらず、本発明のモリブデン複合材料を得るための情報は十分に開示されていない。さらに、同特許では炭化物粒子のアスペクト比が2以上かつ20未満に指定されており、そのようなアスペクト比を得るには1900℃以上の焼結あるいは圧延ないし鍛造が適すると記載されているが、本発明のモリブデン複合材料の製造においては1900℃以上の焼結は過剰でありモリブデンの結晶粒成長が進むため不適であり、さらに圧延や鍛造は強度に異方性を生じるため、蒸着ボードなどの耐熱用途製品には適さない場合がある。
【0075】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。
【0076】
表1および表2に、本特許の請求範囲となる実施例と、本特許の有効性を示すための比較例を記載する。
【0077】
実施例1から16は、モリブデン粉末と炭化物粉末とを、本特許の請求範囲の添加濃度になるように秤量したのち、ロッドミルで1~24時間解砕・粉砕および混合を行った混合粉末を、1750℃でホットプレスをして得た焼結体から、試験片を切り出して各種測定を行った結果、分散性が本特許の範囲内に入ったものである。
【0078】
比較例1から10は、モリブデン粉末と炭化物粉末とを、本発明の範囲外の添加濃度になるようになるように秤量したのち、ロッドミルで1~24時間解砕・粉砕および混合を行った混合粉末を、1750℃でホットプレスをして得た焼結体から、試験片を切り出して各種測定を行った結果である。
【0079】
比較例11から16は、モリブデン粉末と炭化物粉末とを、本発明の範囲の添加濃度になるように秤量したのち、タンブラー式混合器で1~24時間混合または1時間未満のロッドミルを行った混合粉末を、1750℃でホットプレスをして得た焼結体から、試験片を切り出して各種測定を行った結果である。
【0080】
比較例17,18は、それぞれ市販品の純モリブデン板材および酸化ランタン入りモリブデン板材の各種測定の結果である。表1および表2の結果から、発明者らは、モリブデンを主体とし、Tiの炭化物、Zrの炭化物、Hfの炭化物から選択される少なくとも1種の炭化物を2~10質量%の範囲で含有する焼結体であり、ボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下であるモリブデン複合材料であれば、従来から市販されている純モリブデン板材および酸化ランタン入りモリブデン板材よりも加熱後の強度や硬さに優れ、また硬さの変化が小さい材料が得られ、蒸着ボートなどの耐熱用途で必要とされる加熱後の強度や硬さを満足するとの知見に至った。
【0081】
【0082】
【要約】
【課題】耐熱性と耐久性に優れ、生産コスト、生産効率の面でも優れたモリブデン複合材料およびそれを用いたモリブデン複合材料成形品並びにモリブデン複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】モリブデンを主体とし、Tiの炭化物、Zrの炭化物、Hfの炭化物から選択される少なくとも1種の炭化物を2~10質量%含有し、モリブデン粉末と、炭化物粉末との混合粉末の焼結体であるモリブデン複合材料であって、ボロノイ(Voronoi)分割の平均面積が、80μm2以下であり、ボロノイ(Voronoi)分割の面積の変動係数である標準偏差/平均値が1.8以下である、モリブデン複合材料。
【選択図】 なし