(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】潜像印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェア
(51)【国際特許分類】
H04N 1/32 20060101AFI20241209BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20241209BHJP
G07D 7/005 20160101ALI20241209BHJP
G07D 7/12 20160101ALI20241209BHJP
G07D 7/20 20160101ALI20241209BHJP
【FI】
H04N1/32 144
B41M3/14
G07D7/005
G07D7/12
G07D7/20
(21)【出願番号】P 2021048023
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-005365(JP,A)
【文献】特開2019-062453(JP,A)
【文献】特開2009-171290(JP,A)
【文献】特許第3544536(JP,B2)
【文献】特許第4214262(JP,B2)
【文献】特許第5564498(JP,B2)
【文献】特許第4506345(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/32
B41M 3/14
G07D 7/005
G07D 7/12
G07D 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線光下で不可視画像が視認される潜像印刷物の印刷用データの作成方法であって、
前記不可視画像の基画像となる第1の画像データを取得し、白黒(モノトーン)のRGB画像データを得るステップと、
前記白黒(モノトーン)のRGB画像データを反転し、ネガ画像データを得るステップと、
前記白黒(モノトーン)のRGB画像データ及び前記ネガ画像データのトーンカーブを調整するステップと、
トーンカーブ調整後の前記白黒(モノトーン)のRGB画像データを、RGB色空間で表現した疑似ブラックパターンにより形成し、前記ネガ画像データを、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の純原色としてRGB色空間でそれぞれ表現した疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンにより形成し、前記疑似ブラック、前記疑似シアン、前記疑似マゼンタ及び前記疑似イエローの各パターンを互いに重なり合うことなく形成するステップと、
前記疑似ブラック、前記疑似シアン、前記疑似マゼンタ及び前記疑似イエローの各パターンを合成するステップと、
を備えることを特徴とする潜像印刷物用データの作成方法。
【請求項2】
前記疑似シアン、前記疑似マゼンタ、前記疑似イエロー及び前記疑似ブラックパターンの画線面積率により、前記不可視画像の階調を表すことを特徴とする請求項1に記載の潜像印刷物用データの作成方法。
【請求項3】
通常光下で肉眼視により可視画像が視認され、赤外線光下で不可視画像が視認される潜像印刷物の印刷用データの作成方法であって、
前記不可視画像の基画像となる第1の画像データを取得し、白黒(モノトーン)のRGB画像データを得るステップと、
前記白黒(モノトーン)のRGB画像データを反転し、ネガ画像データを得るステップと、
前記白黒(モノトーン)のRGB画像データ及び前記ネガ画像データのトーンカーブを調整するステップと、
可視画像の基画像となる第2の画像データを取得し、可視画像のRGB画像データを得るステップと、
前記可視画像のRGB画像データのトーンカーブを調整するステップと、
トーンカーブ調整後の前記ネガ画像データにトーンカーブ調整後の前記可視画像のRGB画像データを合成して合成画像データを得るステップと、
トーンカーブ調整後の前記白黒(モノトーン)のRGB画像データを、RGB色空間で表現した疑似ブラックパターンにより形成し、前記合成画像データを、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の純原色としてRGB色空間でそれぞれ表現した疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンにより形成し、前記疑似ブラック、前記疑似シアン、前記疑似マゼンタ及び前記疑似イエローの各パターンを互いに重なり合うことなく形成するステップと、
前記疑似ブラック、前記疑似シアン、前記疑似マゼンタ及び前記疑似イエローの各パターンを合成するステップと、
を備えることを特徴とする潜像印刷物用データの作成方法。
【請求項4】
前記疑似シアン、前記疑似マゼンタ、前記疑似イエロー及び前記疑似ブラックの各パターンをマトリックス状又はランダムに配置することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の潜像印刷物用データの作成方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の潜像印刷物用データの作成方法をコンピュータに実行させるための作成用ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅券、有価証券、身分証明書、その他証明書、重要書類、チケット、カード等の偽造防止及び改ざん防止機能が必要とされるセキュリティ印刷物に関し、特殊な基材やインクあるいは専用出力機を用いることなく、一般家庭用をはじめとする多種多様なプリンタから出力し、原本性やセキュリティ性を必要とされる潜像印刷物用データを作成する方法及び作成用ソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
旅券、有価証券、身分証明書、その他証明書、重要書類、チケット、カード等の印刷物において、偽造及び改ざん防止効果を印刷物に付与し、高いセキュリティ性を持たせることは重要である。これらの印刷物の偽造及び改ざん防止効果を付与する一般的な方法として、印刷物に対して何等かの手段と作用を加えることで、目視では認識することができない不可視画像を出現させるものがある。代表的な例としては、カラー複写機で色が正常に再現されないような機能性インキの付与や、複写では再現が不可能な画線によって構成されたコピー防止画線等を印刷物に付与する方法がある。
【0003】
しかしながら、近年、カラー複写機の高性能化が進み、複写の解像度や画像の再現性が向上したことにより、コピー防止画線による複写防止効果が低下してきている。また、通常光下では不可視である蛍光インキ等の機能性インキを印刷物に用いることについても、蛍光インキの材料等が市販され、誰でも容易に手に入るようになったことから偽造防止効果が低下してきている。
【0004】
本出願人は、上記の問題を解決すべく、特殊な基材やインクを用いることなく、高解像度な複写機を用いた複写による偽造防止策として、通常光下において肉眼で観察した場合に階調画像が視認され、赤外線カメラを用いて観察すると、異なる階調画像(潜像画像)を視認することができる潜像印刷物を出願している(特許文献1参照)。
【0005】
上述の潜像印刷物は、オフセット印刷機等を利用して、大量、かつ、連続的に印刷する方法と、プリンタで必要な都度印刷する方法がある。オフセット印刷機等を用いて印刷する場合は、データ作成におけるCMYKデータをダイレクトに印刷できることから、あらかじめ潜像画像となるブラック(K)インキと、階調画像となるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)インキの各々の色指定により製版データを作成し、刷版及び印刷を行えば、所望の印刷品質及び効果を有する潜像印刷物を容易に作成できるため、特段の困難性はない。
【0006】
一方で、近年はIT環境の整備が進み、コンピュータやプリンタがインフラとして整っていることから、偽造防止効果が求められる住民票や印鑑証明書、戸籍抄本や謄本といった各種証明証書に潜像画像を付与し、ネットワークを用いてプリンタで出力することで潜像印刷物を得る方法が注目を集めている。しかし、プリンタにより潜像印刷物を作成する際には各種課題があった。
【0007】
一つ目は、画像分解能の低さである。特許文献1は、
図9(a)に示す印刷模様部分(2a)のように、可視画像領域(a)と不可視画像領域(b)とがそれぞれに所望の位置関係を持ってマトリックス状に配置され、可視画像領域(a)は、赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)トナー、または顔料インク等で印刷され、不可視画像領域(b)は、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)に加え、赤外線吸収色素を含むブラック(K)トナー、または顔料インク等で印刷される。そして、不可視画像領域(b)におけるブラック(K)の画線面積によって、不可視画像(5)の連続階調が表現できる。
【0008】
このとき、連続階調を成す不可視画像の画像分解能を維持するために、不可視画像領域(b)は必要最低限度の画素数を保つ必要があった。しかし、解像度の低い出力デバイスでは連続階調を設けるために十分な画素を設定できず、出力デバイスで扱える範囲での画像分解能にとどまっていた。例えば、出力解像度が600dpiのカラープリンタでは、16階調の不可視画像を設けるには不可視画像領域(b)には少なくとも縦横4ピクセルの画素が必要であり、そこから換算される印刷網点の線数は60線/インチ相当の画像分解能となっていた。
【0009】
また、特許文献1に記載の技術の画線構成を成すドキュメントファイルは、基本的に32bitCMYK画像であり、
図9(a)の印刷模様部分(2a)に示されたシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のそれぞれの情報がそのまま印刷できる出力デバイスが求められる。すなわち、出力デバイスにおける色分解をオフに設定できるプリンタドライバを搭載した高価なカラー複合機やデジタル印刷機に限定されていた。
【0010】
一方、安価な家庭用プリンタを用いた場合、プリンタにおいて、黒やグレーはシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色のトナー、または顔料インクを混ぜても表現できるが、ブラック(K)だけでも印刷可能なので、プリンタドライバの制御系では、黒の部分から等量のシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色を取り除き、その分、ブラック(K)成分の量を増やすといったUCR手法(Under Color Removal:下色除去)が使われるのが一般的である。このため、
図9(b)に示すように、可視画像領域(a)は、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)で印刷されるが、不可視画像領域(b)は、ブラック(K)のみで印刷されてしまうと、不可視画像領域(b)全体が着色された状態となり、本来32bitCMYK画像のブラック(K)で構成していた不可視画像(5)の画線形状が表現できない状態となり、潜像印刷物を赤外線視した際に、潜像画像が視認できなくなるという問題があった。
【0011】
二つ目の課題は、プリンタメーカや機種の違いによる印刷品質ムラである。プリンタは、様々な製造メーカから多種多様な機種が販売されており、また、そのプリンタの制御方法、制御プログラム及びプリンタドライバなどは、各メーカによる独自開発が多いことから、プリンタで出力された印刷物の印刷品質に差が生じることがあった。例えば、同一の印刷画像データをコンピュータなどの画像処理装置に入力し、製造メーカ、機種、モデル等が異なるプリンタで出力した場合、それぞれのプリンタで印刷した印刷画像は、濃度や色相などが異なって印刷されていた。
【0012】
この原因が各プリンタのトナー濃度、色バランス及び出力方式などに起因する場合は、プリンタに既に具備する出力設定を変更すれば、濃度や色相の調整ができる。しかし、3つ目の課題として、パソコン処理におけるデータの変換に起因する印刷品質ムラがあった。具体的に説明すると、Windows(登録商標)やMacOS等では、OSレベルで標準色域として、RGB色域がサポートされており、CMYKデータをパーソナルコンピュータで処理する際にCMYKからRGB色空間へデータが変換される。そして、パーソナルコンピュータで作成したデータをプリンタ出力する際に、再びRGB色空間のデータからCMYKデータに再変換されるため、出力された潜像印刷物は、所望の濃度や色相でなくなることがあった。
【0013】
また、一般家庭用の簡易プリンタや充電池で動作するモバイルプリンタなどでは、RGBデータのみが入力可能なものもあり、CMYKデータが入力された場合は強引にRGBデータに変換されるため、当初作成したデータの色味と、出力された印刷画像の濃度や色相が異なる場合があった。
【0014】
上述したような、プリンタから出力された印刷物品質(印刷画像の濃度や色相)のばらつきは、データ作成時には意図していない色味となるだけでなく、潜像印刷物を赤外線光下で観察した際に潜像が視認できない、あるいは、当該印刷物を通常光下にて肉眼で観察する際に、本来は視認されない潜像画像が視認されるという問題があった。それに加えて、印刷物品質のばらつきが、印刷物の真偽判定に影響を与えるという問題もあった。
【0015】
そこで、本出願人は、画像データを色変換する印刷制御方式のプリンタであっても、適正な潜像画像を印刷することを課題として、CMYKの4原色の各色材が重なり合うことなく、各々の所定領域に分割配置されていることを特徴とする網点印刷物の作成方法として、CMYKデータを、光の3原色(RGB)に変換し、カラーマネジメント機能を用いずsRGB色域として処理し、前述のsRGB色域として処理した画像データを色料の3原色(CMY)及びKに変換し、所望の色料として出力する網点印刷物の印刷方法を出願している(例えば、特許文献2参照)。
【0016】
また、同様の課題を解決するために、別の公知技術として、符号化パターンであるKと図形情報であるCMYを組合せた印刷の制御方法であり、プリンタがRGBデータを受け取り、CMYKデータに変換する際、図形情報の印刷にK成分が使われないようにするため、RGB成分値の少なくとも1つが、それに対応するCMY成分の混入閾値以下にマッピングされる技術が開示されている。(例えば、特許文献3参照)。
【0017】
また、別の技術として、複数のプリンタドライバのうち、CMYKの色空間のデータを別の色空間のデータへ一旦変換させることなく印刷させることが可能な特定プリンタドライバを自動的に選択すると共に、印刷モードとして、CMYKの色空間のデータを別の色空間のデータへ一旦変換させることなく印刷させる高精細モードを自動的に選択し、識別画像が付加された印刷対象文書の印刷を行わせる技術がある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特許第3544536号公報
【文献】特許第4214262号公報
【文献】特許第5564498号公報
【文献】特許第4506345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献2の技術では、CMYKの各色情報をそのまま印刷できる出力デバイスや、出力デバイスにおける色分解をオフに設定できるプリンタドライバを搭載した高価なカラー複合機やデジタル印刷機では適用できたが、RGBデータのみが入力可能な一般家庭用の簡易プリンタや充電池で動作するモバイルプリンタなどでは、CMYKデータが入力されると強引にRGBデータに変換され、プリンタにおいて再度CMYKデータで印刷されるため、当該技術を用いても、印刷物用データの色味がそのまま印刷物として再現されないことがあった。
【0020】
また、特許文献3の技術は、プリンタによる色の制御方法であり、K成分が図形情報(CMY)の印刷に用いられないようにするため、RGB成分値に対応するCMY成分の混入閾値以下にマッピングするものであるが、当該マッピングにより印刷された図形情報の色相が影響を受けるため、作成時の色味がそのまま印刷物として再現することが難しい。
【0021】
また、特許文献4の技術についても、別の色空間にデータ変換させないことを目的としたプリンタの制御方法であり、パソコンやプリンタのメーカや機種ごとに別の色空間に変換させない機能を別途付与する必要があった。前述のとおり、プリンタの制御方法、制御プログラム及びプリンタドライバなどは、各製造メーカで独自開発されていることが多いことから、プリンタごとに出力された印刷物の印刷品質に差が生じる課題は残されていた。
【0022】
特に、近年におけるユーザのプリンタの使用環境は多種多様であり、様々なメーカや機種が存在する中で、特別な制御機能を伴わない一般家庭用の簡易プリンタや充電池で動作するモバイルプリンタであっても、良好な印刷品質で潜像印刷物を印刷できることが求められていた。
【0023】
本発明は上記事情に鑑み、プリンタのメーカや機種を問わず、良好な印刷品質(肉眼視で観察した際の潜像の隠蔽性、赤外視で観察した際の潜像の視認性、印刷物の鮮明性)を有する潜像印刷物を得るための、潜像印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、赤外光下で不可視画像が視認される潜像印刷物の印刷用データの作成方法であって、不可視画像の基画像となる第1の画像データを取得し、白黒(モノトーン)のRGB画像データを得るステップと、白黒(モノトーン)のRGB画像データを反転し、ネガ画像データを得るステップと、白黒(モノトーン)のRGB画像データ及び前記ネガ画像データのトーンカーブを調整するステップと、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データを、RGB色空間で表現した疑似ブラックパターンにより形成し、ネガ画像データを、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の純原色としてRGB色空間でそれぞれ表現した疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンにより形成し、疑似ブラック、疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンを互いに重なり合うことなく形成するステップと、疑似ブラック、疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンを合成するステップと、を備えることを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、通常光下で肉眼視により可視画像が視認され、赤外光下で不可視画像が視認される潜像印刷物の印刷用データの作成方法であって、不可視画像の基画像となる第1の画像データを取得し、白黒(モノトーン)のRGB画像データを得るステップと、白黒(モノトーン)のRGB画像データを反転し、ネガ画像データを得るステップと、白黒(モノトーン)のRGB画像データ及びネガ画像データのトーンカーブを調整するステップと、可視画像の基画像となる第2の画像データを取得し、可視画像のRGB画像データを得るステップと、可視画像のRGB画像データのトーンカーブを調整するステップと、トーンカーブ調整後のネガ画像データにトーンカーブ調整後の可視画像のRGB画像データを合成して合成画像データを得るステップと、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データを、RGB色空間で表現した疑似ブラックパターンにより形成し、合成画像データを、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の純原色としてRGB色空間でそれぞれ表現した疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンにより形成し、疑似ブラック、疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンを互いに重なり合うことなく形成するステップと、疑似ブラック、疑似シアン、疑似マゼンタ及び疑似イエローの各パターンを合成するステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の潜像印刷物用データの作成方法は、疑似シアン、疑似マゼンタ、疑似イエロー及び疑似ブラックの各パターンをマトリックス状あるいはランダムに配置することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の潜像印刷物用データの作成方法は、疑似シアン、疑似マゼンタ、疑似イエロー及び疑似ブラックパターンの画線面積率により、不可視画像及び/又は可視画像の階調を表すことを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、潜像印刷物用データの作成方法をコンピュータに実行させるための作成用ソフトウェアであることを特徴とする。
【0029】
本発明の潜像印刷物の印刷用データの作成方法及び作成用ソフトウェアによれば、良好な印刷品質の潜像印刷物を得るために、特殊な基材やインクを用いることなく、かつ、プリンタの印刷制御方法や出力機等の特段の制約がなく、多種多様なプリンタから潜像印刷物を出力し、原本性やセキュリティ性を必要とされる印刷物を得ることができる。
【0030】
また、本発明の潜像印刷物の印刷用データの作成方法及び作成用ソフトウェアによれば、プリンタごとに特化した潜像印刷物用データの作成が不要であり、ワンソースマルチユース的な使い方が可能であることから、潜像印刷物用データを作成する側にとって手間やコストがかからず、また、利用者側にとってもプリンタに対して煩雑な環境設定の必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態による潜像印刷物を通常光下において肉眼視で観察した状態と、赤外光下で観察した状態を示す図。
【
図2】本発明の別の実施の形態による潜像印刷物を通常光下において肉眼視で観察した状態と、赤外光下で観察した状態を示す図。
【
図3】本発明の実施の形態による潜像印刷物用データの作成装置を示すブロック図。
【
図4】本発明の実施の形態による潜像印刷物用データの作成方法を示すフローチャート。
【
図5】本発明の実施の形態において作成した潜像印刷物用データのプリンタにおけるデータ変換例と、従来技術を示す図。
【
図6】本発明の実施の形態において作成した潜像印刷物用データ及び該データをプリンタで出力した潜像印刷物を示す図。
【
図9】従来技術による潜像印刷物用データの一例とその部分拡大図を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0033】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態における潜像印刷物用データの作成方法について、まず、
図1及び
図2に基づき、作成の対象となる潜像印刷物(1)の説明をする。
【0034】
(潜像印刷物)
潜像印刷物(1)は、基材(2)に印刷が施された印刷物であり、
図1(a)に示すように、通常の肉眼視(T1)では、可視画像(4)(ここではグレー画像)、あるいは、
図2(a)に示すように、通常の肉眼視(T1)では、可視画像(4)(ここでは「PB」の文字)が観察される印刷物である。一方、カメラや光学式スキャナ等による赤外線視(T2)では、
図1(b)や
図2(b)に示すように、通常の肉眼視(T1)では視認されなかった不可視画像(5)(本実施の形態では顔画像)が視認される印刷物である。
【0035】
可視画像(4)及び不可視画像(5)に用いられる画像について限定はなく、可視画像(4)には、
図1(a)に示すようなフラットな無地画像のほか、文字、数字、記号、マーク、図柄、顔画像、風景等が適用できる。また、不可視画像(5)についても同様に、文字、数字、記号、マーク、図柄、顔画像、風景等、任意の画像が適用可能である。なお、可視画像(4)及び不可視画像(5)とも、2値画像でも、または顔画像のように連続階調を有する画像であってもよい。
【0036】
(プリンタ)
作成の対象となる潜像印刷物(1)はプリンタで印刷されるものであり、プリンタの種類は、電子写真方式でもインクジェット方式でも、レーザープリンタ方式でもよく、方式は問わない。また、高価なカラー複合機やデジタル印刷機をはじめ、一般家庭用の簡易プリンタや充電池で動作するモバイルプリンタでも印刷可能である。
【0037】
(基材)
また、潜像印刷物(1)に用いられる基材(2)は、プリンタが印刷可能な面を備えていれば、材質は特に限定されるものではなく、上質紙、コート紙、アート紙や、プラスチック、フィルム、紙をフィルムでコーティングした複合基材等を用いることができる。
【0038】
(インク)
潜像印刷物(1)は、プリンタに標準装備されているCMYKの4色の色材を用いて印刷される。このとき、不可視画像(5)は赤外線吸収色素を含むブラック(K)トナー、または顔料インクで印刷される。また、通常の肉眼視で視認される不可視画像(5)以外の画像は、赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)トナーまたは顔料インクにより印刷される。
【0039】
具体的には、
図1(a)に示す通常の肉眼視で視認される潜像印刷物(1)の可視画像(4)は、不可視画像(5)以外の部分を、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の混色によるグレーで形成することにより、可視光下において、赤外線吸収色素を含むブラック(K)で印刷された不可視画像(5)と混色によるグレーの可視画像(4)が、ほぼ同色として視認されることから、不可視画像(5)を隠蔽することができる。
また、
図2(a)に示す潜像印刷物(1)の可視画像(4)も同様に、不可視画像(5)以外の部分を、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)で形成することで、可視光下では、赤外線吸収色素を含むブラック(K)で印刷された不可視画像(5)を隠蔽するとともに、任意の可視画像(4)を形成することができる。
【0040】
(潜像印刷物用データの作成装置(M))
次に、潜像印刷物用データの作成装置(M)について説明する。
図3は、潜像印刷物用データの作成装置(M)の構成を示すブロック図であり、潜像印刷物用データの作成装置(M)は、入力手段(M1)、編集手段(M2)、通信インターフェース(M3)、データベース(M4)及び表示手段(M5)を備える。
【0041】
入力手段(M1)は、少なくとも不可視画像入力手段(M1a)を有し、必要に応じて可視画像入力手段(M1b)を有する。不可視画像入力手段(M1a)は、赤外線光源下で観察した際に視認される不可視画像(5)の基となる不可視画像(5)を入力する手段である。また、可視模様入力手段(M1b)は、通常光下で肉眼視した際に観察される可視画像の基となる可視画像(4)を入力する手段である。不可視画像(5)及び可視画像(4)の入力は、デジタルカメラによる撮像、スキャナによるスキャニング等や、通信インターフェース(M3)及び/又はデータベース(M4)に予め記録された任意の画像を読み出して行う。
【0042】
不可視画像入力手段(M1a)又は可視模様入力手段(M1b)は、マウス、キーボード等によって構成され、市販のAdobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の画像処理ソフトを用いて、直接、不可視画像(5)及び可視画像(4)を作成してもよい。また、不可視画像入力手段(M1a)又は可視模様入力手段(M1b)は、編集手段(M2)で用いるトーンカーブ調整の値の入力や、各種画像処理を実行する指示の入力を行ってもよい。
【0043】
図3に示す編集手段(M2)は、少なくとも白黒(モノトーン)変換手段(M2a)、反転手段(M2b)、トーンカーブ調整手段(M2c)、疑似パターン適用手段(M2d)及び合成手段(M2e)を有する。
【0044】
白黒(モノトーン)変換手段(M2a)では、不可視模様入力手段(M1a)により入力した画像データをRGBの白黒(モノトーン)画像データ(5a)に変換する。
【0045】
反転手段(M2b)では、白黒(モノトーン)変換手段(M2a)により変換された白黒(モノトーン)画像データ(5a)のネガ画像データ(5c)を得るためのネガポジ反転を行う。
【0046】
トーンカーブ調整手段(M2c)では、白黒(モノトーン)変換手段(M2a)により得られた白黒(モノトーン)画像データ(5a)、反転手段(M2b)により得られたネガ画像データ(5c)にトーンカーブ調整を行う。また、潜像印刷物(1)に
図1(a)に示すようなフラットな無地画像ではなく、有意味情報の可視画像(4)を有する場合は、可視画像入力手段(M1b)により入力された可視画像データ(4a)にトーンカーブ調整を行う。
【0047】
疑似パターン適用手段(M2d)では、トーンカーブ調整後の画像データについて疑似ブラック(iK)、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターンを適用する。
【0048】
合成手段(M2e)では、疑似パターン適用手段(M2b)で得られた疑似シアン(iC)疑似マゼンタ(iM)疑似イエロー(iY)疑似ブラック(K)の各パターンを合成する。
【0049】
表示手段(M5)は、パーソナルコンピュータのモニタ、専用のモニタ等、特に限定されるものではない。また、表示手段(M5)は、潜像印刷物用データの作成に必須の構成ではない。
【0050】
なお、
図3に示す出力手段(P)は、潜像印刷物用データの作成装置(M)によって作成されたデータを基材(2)に印刷する手段であり、潜像印刷物用のデータの作成に必須の構成ではないが、出力手段(P)をカラー・レーザープリンタ、カラー・インクジェットプリンタ等によって構成し、潜像印刷物用データの作成装置(M)と接続して用いることで、データ作成から潜像印刷物(1)の作成までを一つの装置として行うことができる。
【0051】
(潜像印刷物用データの作成方法)
次に、前述した潜像印刷物用データの作成装置(M)を用いて潜像印刷物用データを作成する方法及びそのためのソフトウェアについて、
図4を用いて説明する。なお、
図4に示す処理フローは、処理の過程をわかりやすくするため、処理後の画像を合わせて説明する。
【0052】
潜像印刷物用データの作成方法は、
図4の実線で囲われたメイン処理フロー(F1)を少なくとも備え、必要に応じて更に
図4の点線で囲われたサブ処理フロー(F2)を備えている。
図4のメイン処理フロー(F1)のみの場合、
図1(a)に示すような通常の肉眼視ではフラットなグレー画像が観察されるが、赤外線光源下で観察する(T2)と、
図1(b)に示すような通常の肉眼視(T1)では視認されなかった不可視画像(5)が視認される潜像印刷物(1)が得られる。また、
図4のメイン処理フロー(F1)及びサブ処理フロー(F2)の両方を備える場合、
図2(a)に示すように、通常の肉眼視(T1)では、有意情報を含む可視画像(4)が視認され、赤外線視(T2)では、
図2(b)に示すような通常の肉眼視(T1)では視認されなかった不可視画像(5)が視認される潜像印刷物(1)が得られる。
【0053】
(メイン処理フロー(F1))
まず、
図4の実線で囲われたメイン処理フロー(F1)に基づき説明する。
【0054】
(Step1 不可視画像の指定・白黒変換)
図4に示すStep1では、潜像印刷物用データの作成装置(M)の不可視画像入力手段(M1a)により、不可視画像(5)の基画像となる第1の画像データ(5a)を指定する。本実施の形態では、不可視画像(5)の原画となる連続階調を有する顔画像等の画像が通信インターフェース(M3)又はデータベース(M4)から入力される。このとき入力ソースにはRGB画像データを用いる。なお、本実施の形態では、不可視画像(5)は連続階調を有する顔画像としているが、画像の種類は何ら限定されない。
【0055】
不可視画像(5)は、プリンタにより赤外線吸収色素を含むブラック(K)トナー、または顔料インクで印刷される画像となるため、RGBチャンネルそれぞれの256階調をすべて同一となるモノトーン(白黒)表現とする。そのため、不可視画像入力手段(M1a)から入力された画像がカラー表現の24bitRGB画像データである場合は、編集手段(M2)の白黒(モノトーン)変換手段(M2a)により、白黒(モノトーン)に変換する処理を加え、白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)を得る。また、不可視画像入力手段(M1a)から入力された画像が、8bitグレースケール画像、または、仮に32bitCMYK画像であった場合は、モノトーンの24bitRGB画像に変換する処理を別途加え、白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)を得る。なお、不可視画像入力手段(M1a)から入力された画像がモノトーン(白黒)である場合は、この変換を省略できる。以上が、Step1である。
【0056】
(Step2 ネガポジ反転)
次にStep2では、Step1で得た白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)を反転したネガ画像データ(5c)を得る。すなわち、不可視画像データ(5a)と不可視画像データのネガ画像データ(5c)とはネガ・ポジの関係にある。本実施の形態では、白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)が連続階調を有するため、それを反転した不可視画像データ(5c)も連続階調を有している。
【0057】
(Step3 トーンカーブの調整)
Step3では、まず、白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)のトーンカーブを調整し、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)を得る。トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)は、プリンタにおいて、赤外線吸収色素を含むブラック(K)で印刷される画像となる。続いて、Step3では、更にネガ画像データ(5c)のトーンカーブを調整し、トーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)を得る。トーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)は、プリンタにおいて赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)で印刷される画像となる。
【0058】
ここで、Step3におけるトーンカーブの調整について説明する。トーンカーブの調整では、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)とトーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)とが、ネガ・ポジで合成した際に一律のフラットな濃度のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)となるように調整する。その際、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4種類の各パターンがそれぞれ重なり合わないように、つまり、プリンタで印刷される網点同士が重なり合わないようにするため、各パターンの画線面積率を25%以下とする必要がある。この構成にするため、RGB画像において適用されるトーンカーブを、約0%~25%の画線面積率の範囲(RGB画像では191~255の範囲)に調整する。
図4に示すように、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)及びネガ画像データ(5d)は、トーンカーブ調整前の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)及びネガ画像データ(5c)と比べて、淡い白黒(モノトーン)の画像データとなる。
【0059】
トーンカーブの調整は、例えば、市販のAdobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)のトーンカーブの変更機能を用いて所定のトーンカーブを設定することで可能である。また、トーンカーブは、印刷に用いられるプリンタの特性によって調整することができる。以上が、Step3の説明である。
【0060】
(Step4 疑似パターンの適用)
Step4では、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)及びトーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)に対して、疑似パターンを適用する。Step4では、まず、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)に、疑似ブラック(iK)パターンを適用する。次に、トーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)に、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターンを適用する。
【0061】
ここで、Step4における、疑似ブラック(iK)、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)について説明する。疑似ブラック(iK)、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)は、CMYK刷色の純原色であるブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)をRGB色空間で表現したものである。
【0062】
RGB色空間は赤、緑、青の光の三原色で表現される色空間のことであり、RGBはそれぞれ0から255の数値の組み合わせにより色が表現される。なお、RGBの数値は絶対的なものではなく、色域の広さに対する相対的な数値である。本実施の形態では、一例として、CMYK刷色におけるシアン(C)の純原色(100%の色)を、RGB色空間における疑似シアン(iC)として、R0、G159、B230で表現する。また、マゼンタ(M)の純原色(100%の色)を、疑似マゼンタ(iM)として、R194、G0、B123で表現する。同様にイエロー(Y)の純原色(100%の色)を疑似イエロー(iY)として、R255、G240、B0で表現する。また、ブラック(K)の純原色はR0、G0、B0で表現する。
【0063】
なお、前述では、疑似シアン(iC)として、R0、G159、B230で表現したが、疑似シアン(iC)は、R0、G255、B255など、数値が異なる組み合わせでも表現できる。同様に、疑似マゼンタ(iM)としてR255、G0、B255などの組み合わせや、疑似イエロー(iY)としてR255、G255、B0などの組み合わせでも表現可能である。つまり、疑似ブラック(iK)、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)は、概ねCMYK刷色のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)として表現される必要がある。
【0064】
ここで、前述の構成による効果について、従来技術と比較して説明する。
図5は、潜像印刷物用データを出力デバイスで出力する際のデータ変換例を示す図であり、
図5(a)は本発明について、
図5(b)は、従来技術について説明するものである。
図5(b)の従来技術のパターンは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)で構成されているのに対し、
図5(a)に示す本発明の疑似パターンは、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)及び疑似ブラック(iK)の各パターンで構成されている。
【0065】
図5(b)のように、従来技術では、入力ソースがCMYK画像(e1)である場合、プリンタドライバによってRGB画像(e2)に変換され、また、出力デバイスに最適な専用カラープロファイルが適用され、プリンタドライバによって再びCMYK画像(e3)に変換されて印刷される。その際、CMYK画像(e1)のシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)がRGB画像(e2)に変換される際に、RGBカラーで表現された疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)及び疑似ブラック(iK)となり、シアン(C)マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のそれぞれのドットや画線の混色で黒色として表現されていた色成分は、疑似ブラック(iK)となる。
【0066】
さらに、RGB画像(e2)から再びCMYK画像(e3)に変換される際、専用カラープロファイルによっては、疑似ブラック(iK)は、ブラック(K)のみの色成分またはブラック(K)を主体とした少量のシアン(C)マゼンタ(M)イエロー(Y)を含む色成分に置き換わる。この専用カラープロファイルはユーザが書き変えられないため、
図1及び
図2に示すような潜像印刷物用データを安価な家庭用プリンタで印刷することは困難である。
【0067】
本発明では、
図5(a)に示すように、入力ソースがRGB画像データ(d1)であることから、プリンタで出力する際は、プリンタドライバによって専用カラープロファイルを介し、CMYK画像データ(d2)に変換されるが、前述のとおり、変換前のRGB画像データ(d1)に設けられた疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)及び疑似ブラック(iK)は、概ねシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)であることから、入力ソースのRGB画像データ(d1)と、変換されたCMYK画像データ(d2)のカラー構成は同等となる。このように、本発明では、プリンタドライバや専用カラープロファイルなどに何ら制約がないことから、潜像印刷物用データの色味をそのまま印刷物として再現可能となる。
【0068】
(疑似パターンの形状と配置)
次に、Step4において、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)及び疑似ブラック(iK)を適用する際のパターン形状と配置について説明する。まず、Step3で得られた、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像(5b)に対し、
図4に示すとおり、疑似ブラック(K)パターン(5e)のように配置する。また、同じくStep4において、Step3にて得られた、トーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)に対し、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)のように配置する。このとき、
図4に示すように、疑似ブラック(iK)パターン(5e)と疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)はそれぞれ重ならないように配置される。
【0069】
本実施の形態においては、疑似ブラック(iK)パターンをドットで配置している。例えば、トーンカーブ調整前の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a)の画像解像度が600dpiの場合、ドットのサイズは336μmであり、印刷物にすると75線/インチの線数に相当する。これを横32画素、縦16画素の画像の中に、疑似ブラック(iK)パターンをドットで配置し、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)が有する連続階調に従って疑似ブラック(iK)パターンのドットを配置する。
【0070】
また、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)も同様に、ドットで配置する。例えば、本実施の形態では、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)のそれぞれは8×8の画素の連結成分から成るドットで構成し、トーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)の連続階調に従って疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターンのドットを配置する。
【0071】
なお、ドットの大きさは、疑似ブラック(iK)パターン、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターンとも、適宜変更可能である。また、ドットのサイズは、ドットとドットとを連結させて、画線面積率を大きくすることができ、それにより不可視画像(5)を連続階調で表現することができる。なお、本発明において、画線面積率とは、単位面積あたりにおいてドット、画素又は画線が占める割合のことをいう。
【0072】
なお、本実施の形態では、疑似パターンはドットで形成されているが、各疑似パターンは、
図4に示すようなドットでもよいし、
図8に示すように画素でもよい。また、画線でもよく(図示せず)、これらの組み合わせで構成してもよい。また、前述のとおり、連続階調を表現するために、ドットとドットの連結、又は画素と画素の連結により、疑似パターンを構成する要素のサイズを変更することができる。さらに、疑似パターンは、
図4では、左から疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)及び疑似ブラック(iK)の順に形成されているが、順番に並ぶ必要はなく、ランダムでもよい。また、従来技術の
図9に示す印刷模様部分(2a)のように、可視画像領域(a)と不可視画像領域(b)とがそれぞれに所望の位置関係を持ってマトリックス状に配置されても構わない。さらに、疑似パターンの形状は、マトリックス状に規則的に配置されなくても、ランダムに配置されてもよい。
【0073】
なお、本発明において、「ドット」とは、印刷模様を形成する最小単位である印刷網点自体や画素自体、あるいは、印刷網点や画素を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、円や三角形、四角形を含む多角形等の各種図形も含まれる。また、「画線」とは、印刷模様を形成する最小単位である印刷網点や画素を特定の方向に連続して配置して形成した画像要素であって、点線や破線の分断線、直線、曲線及び波線等が含まれる。本発明の形態においては、ドット、画素あるいは画線が最終的にStep5において合成される際に、互いに重ならないように配置されればよい。
【0074】
なお、後述するが、疑似ブラック(iK)パターン(5e)と疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)は、ステップ5において合成されることから、合成された合成画像データ(5g)において、疑似ブラック(iK)パターン(5e)で構成された不可視画像(5)が目視において認識されないようするめに、必要に応じて疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)パターン(5f)を所望のカラーバランスで調整する。
【0075】
(Step5 疑似パターンの合成)
次に、Step5の疑似パターンの合成について説明する。Step5では、Step4で得られた疑似ブラック(K)パターン(5e)と、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)を合成し、合成画像データ(5g)を得る。言い換えると、Step5の疑似パターンの合成では、疑似ブラック(iK)のドット群と疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)のドット群とがRGB画像データとして合成される。なお、合成画像データ(5g)は、プリンタにおいて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のトナー、又は顔料インクで印刷される画像データである。
【0076】
Step5で得られた合成画像データ(5g)をプリンタで印刷した潜像印刷物(1)は、
図4の合成画像データ(5g)に示す、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)及び疑似ブラック(iK)から成るドットの大きさと位置関係がそのまま反映されたシアン(C)、マゼンタ、(M)イエロー(Y)及びブラック(K)となる。この潜像印刷物(1)を通常光下で肉眼視すると、
図1(a)に示すようなフラットなグレーの可視画像(4)が観察されるが、赤外線光源下で観察する(T2)と、
図1(b)に示すような肉眼視(T1)では視認されなかった不可視画像(5)が視認される。以上が、
図4の実線で囲われたメイン処理フロー(F1)である。
【0077】
続いて、
図4の点線で囲われたサブ処理フロー(F2)に基づき説明する。
【0078】
(Step6 可視画像の指定)
図4に示すStep6では、潜像印刷物用データの作成装置(M)の可視画像入力手段(M1b)により、可視画像(4)の基画像となる第2の画像データ(4a)を指定する。本実施の形態では、可視画像(4)の原画となる可視画像データ(4a)が通信インターフェース(M3)又はデータベース(M4)から入力される。このとき入力ソースには、Step1と同様に、24bitRGB画像データを用いる。なお、本実施の形態では、可視画像データ(4a)としてアルファベットの例で説明しているが、画像の種類は何ら限定されない。
【0079】
本実施の形態では、可視画像データ(4a)は24bitRGB画像であるが、可視画像入力手段(M1b)から入力された画像が8bitグレースケール画像、又は32bitCMYK画像であった場合は、24bitRGB画像に変換する処理を別途加える。
【0080】
(Step7 トーンカーブの調整)
次に、Step7では、Step6で得た可視画像データ(4a)のトーンカーブを調整し、トーンカーブ調整後の可視画像のRGB画像データ(4b)を得る。ステップ7のトーンカーブは、任意で調整可能であり、本実施の形態では、トーンカーブを印刷後のシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の最高濃度がそれぞれ50%を超えないように調整される。トーンカーブ調整後の可視画像のRGB画像データ(4b)は、プリンタにおいて赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)で印刷される画像である。
【0081】
(Step8 画像の合成)
次に、Step8の画像の合成では、トーンカーブ調整後の可視画像のRGB画像データ(4b)とトーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)の各RGB画像データを乗算することによって合成し、トーンカーブ調整後の合成画像データ(6)を得る。トーンカーブ調整後の合成画像データ(6)は、印刷後はシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)で印刷される画像である。以上が、
図4の点線で囲われたサブ処理フロー(F2)である。
【0082】
本実施の形態では、Step8の画像の合成で得られたトーンカーブ調整後の合成画像データ(6)に対して、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)パターンのそれぞれは、8×8の画素の連結成分から成るドットで構成し、トーンカーブ調整後の合成画像データ(6)の連続階調に従って、それぞれの画素の連結成分が増減するように形成する。このように、ドットの大きさは、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターンとも、適宜変更可能であり、ドットの大小により、可視画像(4)を連続階調で表現することができる。なお、得られたトーンカーブ調整後の合成画像データ(6)への、疑似CMYパターンの適用については、前述したStep4の疑似CMYパターンの適用と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
Step5により得られた画像データ(5g’)を
図4に示す。また、Step5により得られた画像データ(5g’)とその拡大図を
図6(a)に示す。
図4及び
図6(a)に示すように、画像データ(5g’)は、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)及び疑似ブラック(iK)から成るドットが、それぞれ重ならないように配置されている。
図6(b)は、画像データ(5g’)をプリンタ出力して得られた潜像印刷物(1)とその拡大図である。潜像印刷物(1)は、画像(5g’)におけるドットの大きさと位置関係がそのまま反映されたシアン(C)、マゼンタ、(M)イエロー(Y)及びブラック(K)の色材で形成されている。
【0084】
この潜像印刷物(1)を通常光下で肉眼視すると、
図2(a)に示すような可視画像(4)が観察され、赤外線光源下で観察する(T2)と、
図2(b)に示すような肉眼視(T1)では視認されなかった不可視画像(5)が視認される。
【0085】
(ソフトウェア)
また、本発明は、コンピュータに、潜像印刷物用データの作成方法を実行させるための作成用ソフトウェアである。
【0086】
本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0087】
(実施例1)
図3に示す潜像印刷物用データの作成装置(M)を用いて、
図4に示すフローに従い、
図2に示す潜像印刷物(1)を作成した。
【0088】
Step1では、不可視画像入力手段(M1a)において、第1の画像データとして解像度600dpiの24bitRGB画像データ(5a)を入力し、編集手段(M2)の白黒(モノトーン)変換手段(M2a)により、白黒(モノトーン)に変換する処理を加え、白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)を得た。また、Step6では、可視画像入力手段(M1b)において第2の画像データとして解像度600dpiの24bitRGB画像データ(アルファベットの「PB」)を入力し、可視画像データ(4a)を得た。
【0089】
Step2では、Step1で得た白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)を反転し、顔画像のネガ画像データ(5c)を作成した。
【0090】
Step3では、白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a’)のトーンカーブを調整し、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5b)を得た。また、更にネガ画像データ(5c)のトーンカーブを調整し、トーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)を得た。
【0091】
さらに、Step7において、入力された可視画像データ(4a)のトーンカーブを調整し、トーンカーブ調整後の可視画像データ(4b)を作成した。
【0092】
Step8では、トーンカーブ調整後の可視画像データ(4b)とトーンカーブ調整後のネガ画像データ(5d)の各RGB画像データを乗算により合成し、トーンカーブ調整後の合成画像データ(6)を作成した。
【0093】
次に、Step4では、Step3で得られた、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像(5b)に対し、疑似ブラック(K)パターン(5e)をドットにより配置した。また、Step8にて得られた、トーンカーブ調整後の合成画像データ(6)に対し、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)をドットにより配置した。このとき、
図4に示すように、疑似ブラック(iK)パターン(5e)と疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)のドットは、合成した際にそれぞれ重ならないように配置した。
【0094】
Step5では、Step4で得られた疑似ブラック(K)パターン(5e)と、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)を合成し、合成画像データ(5g)を得た。
【0095】
Step5で得られた合成画像データ(5g)は、出力手段(P)であり、解像度が600dpiである、リコー(登録商標)社製レーザープリンタ SP-740を用いて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)トナーにより、白色のカラーコピー用上質紙(Ncolor081 富士ゼロックス社製)に印刷した。
【0096】
このようにして作成した潜像印刷物(1)を通常光下において肉眼で観察したところ、
図2(a)に示す「PB」のアルファベットが視認できた。また、この潜像印刷物(1)を、赤外線カメラを用いて観察すると、
図2(b)に示すように、通常の肉眼視(T1)では視認されなかった不可視画像(5)(顔画像)が視認できた。
【0097】
このように、本発明は、プリンタの印刷制御方法や出力機等の特段の制約がなく、多種多様なプリンタから、所望の濃度や色相を備える潜像印刷物(1)を得ることができる。これにより、潜像印刷物用データを作成する側にとって手間やコストがかからず、また、利用者側にとってもプリンタに対して煩雑な環境設定の必要がない。
【0098】
(実施例2)
実施例2は、
図7に示すとおり、災害時に発行が必要となる罹災証明書の例であり、通常光下において肉眼視で観察できる可視画像(4)が罹災証明書を発行する地方自治体のロゴマーク(アルファベットの「PB」)であり、赤外カメラで観察できる不可視画像(5)が罹災証明書の発行を依頼する個人の顔画像である、潜像印刷物(1)用の画像データの作成例である。実施例2では、スマートフォンが
図3に示す潜像印刷物用データの作成装置(M)であり、
図4の処理フローを具備している。言い換えると、本発明のソフトウェアをスマートフォンにインストールした専用アプリケーションを用いて、潜像印刷物用データが作成される。なお、実施例2では、Step1、Step4及びStep6について説明し、それ以外は実施例1と同様であることから、説明を省略する。
【0099】
Step1では、不可視画像入力手段(M1a)から入力される第1の画像データは、罹災証明書の発行を依頼する個人の顔画像とし、スマートフォンにて個人の顔画像を撮像し、編集手段(M2)の白黒(モノトーン)変換手段(M2a)としてスマートフォンに備わる機能を用いて、白黒(モノトーン)に変換する処理を加え、解像度600dpiの白黒(モノトーン)のRGB画像データ(5a)を得た。また、Step6では、可視画像入力手段(M1b)において第2の画像データとして、罹災証明書を発行する地方自治体のロゴマーク(アルファベットの「PB」)である解像度600dpiの24bitRGB画像データを入力し、可視画像データ(4a)を得た。
【0100】
Step4では、Step3で得られた、トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像(5b)に対し、疑似ブラック(K)パターン(5e)を画素により配置した。また、Step8にて得られた、トーンカーブ調整後の合成画像データ(6)に対し、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターン(5f)を画素により配置した。このとき、
図4に示すように、疑似ブラック(iK)パターン(5e)と疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及びイエロー(iY)の各パターン(5f)の画素は、合成した際にそれぞれ重ならないように配置した。
【0101】
また、疑似ブラック(iK)パターンで構成された不可視画像(5)が目視で視認されないように、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)パターンのカラーバランスをそれぞれ調整した。
【0102】
なお、疑似パターンの配置は、
図8の上段に示すように、疑似ブラック(iK)、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)及び疑似イエロー(iY)の各パターンを画素により、砂目状のランダム配置で形成した。
【0103】
Step5で得られた合成画像データ(5g)について、スマートフォンから、出力手段(P)であるキャノン(登録商標)社製モバイルプリンタPIXUS(登録商標)iP110に無線送信し、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)インクにより、白色のカラーコピー用上質紙(Ncolor081 富士ゼロックス社製)に印刷した。
【0104】
このように、本発明は、地震等の災害時にネットワークを使用できない際の罹災証明書等の速やかな発行をはじめ、原本性やセキュリティ性を必要とされる証明書等の簡易発給にも利用できる。
【0105】
また、実施例2のように、誤差拡散ディザのような砂目状の画素配列を用いれば、出力デバイスの解像度が600dpiであった場合、潜像印刷物(1)に600dpi相当の画像分解能を有する可視画像(4)及び不可視画像(5)を形成できる。つまり、出力デバイスにおける最大の画像分解能で表現できる。これにより、安価な家庭用の簡易プリンタや充電池で動作するモバイルプリンタでも設定された画像解像度の画素単位にまで画像分解能を高めることができる。
【0106】
また実施例2は、疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)、疑似ブラック(iK)パターンが砂目状の画素によるランダム配置であり、自由度があることから、出力デバイスにおける最大の画像分解能によって表現可能なディティールで文字、図形等の任意の意匠を設けることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 潜像印刷物
2 基材
3 赤外線カメラ
4 可視画像
4a 第2の画像データ
4b トーンカーブ調整後の可視画像のRGB画像データ
5 不可視画像
5a 第1の画像データ
5a’ 白黒(モノトーン)のRGB画像データ
5b トーンカーブ調整後の白黒(モノトーン)のRGB画像データ
5c ネガ画像データ
5d トーンカーブ調整後のネガ画像データ
5e 疑似ブラック(K)パターン
5f 疑似シアン(iC)、疑似マゼンタ(iM)、疑似イエロー(iY)の各パターン
5g 合成画像データ
6 トーンカーブ調整後の合成画像データ
M 潜像印刷物用データの作成装置
M1 入力手段
M1a 不可視画像入力手段
M1b 可視画像入力手段
M2 編集手段
M2a 白黒(モノトーン変換手段)
M2b 反転手段
M2c トーンカーブ調整手段
M2d 疑似パターン適用手段
M2e 合成手段
M3 通信インターフェース
M4 データベース
M5 表示手段
P 出力手段
F1 メイン処理フロー
F2 サブ処理フロー
T1 通常の肉眼視
T2 赤外線視