(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】高圧エアーを利用する装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241209BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241209BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241209BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01L21/78 F
H01L21/304 631
H01L21/68 P
B24B49/10
(21)【出願番号】P 2020150270
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】笠井 剛史
(72)【発明者】
【氏名】上原 健
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210386815(CN,U)
【文献】特開2016-203306(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096325(WO,A1)
【文献】特開平09-275055(JP,A)
【文献】特開2020-141005(JP,A)
【文献】特開2007-003069(JP,A)
【文献】脇田 邦稔,回転機械のオンライン総合監視システム「MSS」,計装,日本,工業技術社,1994年04月01日,第37巻第4号,第85-89頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
H01L 21/683
B24B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧エアーを内部で利用する装置であって、
本体と、
高圧エアー供給源から高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給するエアー配管と、
該エアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去するフィルターと、
該フィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器と、
該ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該高圧エアーに該油が混入していることを報知する報知ユニットと、
を備え、
該フィルター通過前の該高圧エアーに含まれる該有機ガスを検知する補助ガス検知器を該エアー配管にさらに備え、
該ガス検知器で該高圧エアーに含まれる該有機ガスが検出される一方で、該補助ガス検知器で該有機ガスが検出されない場合に該フィルターの汚染が進行していることを確認できることを特徴とする装置。
【請求項2】
該エアー配管に該高圧エアーを供給する該高圧エアー供給源は、エアーコンプレッサーであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該報知ユニットが該高圧エアーに該油が混入していることを報知した場合に該エアー配管を流れる該高圧エアーを遮断する遮断弁を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
高圧エアーを内部で利用する装置であって、
本体と、
高圧エアー供給源から高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給するエアー配管と、
該エアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去するフィルターと、
該フィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器と、
該ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該高圧エアーに該油が混入していることを報知する報知ユニットと、
該エアー配管の該フィルターよりも下流側に設けられ該エアー配管を流れる該高圧エアーを遮断する遮断弁と、
を備え、
該遮断弁は、該報知ユニットが該高圧エアーに該油が混入していることを報知した場合に該エアー配管を流れる該高圧エアーを遮断することを特徴とする装置。
【請求項5】
高圧エアーを内部で利用する装置であって、
本体と、
第1の高圧エアー供給源から高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給する第1のエアー配管と、
該第1のエアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去するフィルターと、
該フィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器と、
高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給する第2のエアー配管と、
該第2のエアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去する第2のフィルターと、
該第2のフィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知する第2のガス検知器と、
該第1のエアー配管の下流側及び該第2のエアー配管の下流側に接続された三方弁と、
該三方弁に接続され該本体内部に向かう内部配管と、
該ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該第1のエアー配管の内部で該高圧エアーに該油が混入していることを報知
し、該第2ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該第2のエアー配管の内部で該高圧エアーに該油が混入していることを報知する報知ユニットと、
を備え、
該三方弁で該第1のエアー配管及び該内部配管を接続しているときに該高圧エアーに含まれる該有機ガスが該ガス検知器により検出された場合、該三方弁を切り替えて該第1のエアー配管及び該内部配管の接続を解除するとともに該第2のエアー配管及び該内部配管を接続することを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧エアーの供給経路となる配管が接続され、高圧エアーを内部で利用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップは、シリコンやシリコンカーバイド等の材料からなるウェーハから製造される。まず、ウェーハの表面に互いに交差する複数の分割予定ラインを設定し、ウェーハの表面の分割予定ラインによって区画される各領域に、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスを形成する。次に、ウェーハを裏面側から研削して薄化し、分割予定ラインに沿ってウェーハを分割すると個々のデバイスチップを形成できる。
【0003】
ウェーハから個々のデバイスチップを形成する過程では、ウェーハを研削する研削装置やウェーハを分割する切削装置、及びレーザ加工装置等の装置が使用される(特許文献1乃至3参照)。そして、これらの装置では、ウェーハを保持するチャックテーブルの吸引源の駆動、加工されたウェーハの洗浄、及び、回転するスピンドルの軸受け等の様々な用途で高圧エアーが利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-246098号公報
【文献】特開2010-36275号公報
【文献】特開2012-2604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置の外部には、高圧エアー供給源となるエアーコンプレッサー等が設けられる。そして、高圧エアー供給源として機能する該エアーコンプレッサーが空気を圧縮し、配管を通して該装置に高圧エアーを供給する。この際、エアーコンプレッサーの内部で使用される潤滑油等の油が高圧エアーに混入するおそれがある。
【0006】
装置に供給される高圧エアーに油が混入していると、該装置で加工されるウェーハに油が付着してウェーハの品質の低下が生じたり、装置で使用される光学系に油が付着して劣化させたり、駆動機構に油が付着して動作不良を引き起こしたりする。そこで、高圧エアーが通過する配管の内部にフィルターを設け、高圧エアーに混入した油を該フィルターで除去するとの対策がとられる。
【0007】
しかしながら、フィルターの油による汚染が進行すると、高圧エアーに含まれる油を該フィルターで除去できない場合や、該フィルターに捕獲された油が該フィルターから放出される場合がある。これらの場合、そのまま装置の稼働が継続されると、装置の管理者等が気付かぬまま油による問題が拡大し、大きな損失が生じることもある。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、供給される高圧エアーを監視し、該高圧エアーに油が混入した際に報知できる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、高圧エアーを内部で利用する装置であって、本体と、高圧エアー供給源から高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給するエアー配管と、該エアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去するフィルターと、該フィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器と、該ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該高圧エアーに該油が混入していることを報知する報知ユニットと、を備え、該フィルター通過前の該高圧エアーに含まれる該有機ガスを検知する補助ガス検知器を該エアー配管にさらに備え、該ガス検知器で該高圧エアーに含まれる該有機ガスが検出される一方で、該補助ガス検知器で該有機ガスが検出されない場合に該フィルターの汚染が進行していることを確認できることを特徴とする装置が提供される。
【0010】
好ましくは、該エアー配管に該高圧エアーを供給する該高圧エアー供給源は、エアーコンプレッサーである。
【0011】
さらに、好ましくは、該報知ユニットが該高圧エアーに該油が混入していることを報知した場合に該エアー配管を流れる該高圧エアーを遮断する遮断弁を備える。
【0012】
本発明の他の一態様によれば、高圧エアーを内部で利用する装置であって、本体と、高圧エアー供給源から高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給するエアー配管と、該エアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去するフィルターと、該フィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器と、該ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該高圧エアーに該油が混入していることを報知する報知ユニットと、該エアー配管の該フィルターよりも下流側に設けられ該エアー配管を流れる該高圧エアーを遮断する遮断弁と、を備え、該遮断弁は、該報知ユニットが該高圧エアーに該油が混入していることを報知した場合に該エアー配管を流れる該高圧エアーを遮断することを特徴とする装置が提供される。また、本発明のさらに他の一態様によれば、高圧エアーを内部で利用する装置であって、本体と、第1の高圧エアー供給源から高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給する第1のエアー配管と、該第1のエアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去するフィルターと、該フィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器と、高圧エアーが供給され、該高圧エアーを該本体内部に供給する第2のエアー配管と、該第2のエアー配管内を通過する該高圧エアーに含まれる油を除去する第2のフィルターと、該第2のフィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知する第2のガス検知器と、該第1のエアー配管の下流側及び該第2のエアー配管の下流側に接続された三方弁と、該三方弁に接続され該本体内部に向かう内部配管と、該ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該第1のエアー配管の内部で該高圧エアーに該油が混入していることを報知し、該第2ガス検知器が該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該第2のエアー配管の内部で該高圧エアーに該油が混入していることを報知する報知ユニットと、を備え、該三方弁で該第1のエアー配管及び該内部配管を接続しているときに該高圧エアーに含まれる該有機ガスが該ガス検知器により検出された場合、該三方弁を切り替えて該第1のエアー配管及び該内部配管の接続を解除するとともに該第2のエアー配管及び該内部配管を接続することを特徴とする装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る装置では、エアー配管内を通過する高圧エアーに含まれる油を除去するフィルターと、該フィルター通過後の該高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器と、を備える。そして、該装置は、ガス検知器が高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該高圧エアーに該油が混入していることを報知する報知ユニットをさらに備える。
【0014】
フィルター通過後の高圧エアーに有機ガスが含まれる場合、該フィルターの汚染が進行しており、油が該高圧エアーに混入していることが理解される。そのままでは、油が混入した高圧エアーが装置内部に供給されることとなるため、例えば、エアー配管を遮断することで高圧エアーに混入した油が装置の内部に侵入することを阻止できる。そして、汚染の進んだフィルターを交換することで、高圧エアーに混入する油をフィルターで十分に除去できるようになる。
【0015】
このように、本発明の一態様に係る装置では、報知ユニットによる報知を受けて油による問題が深刻化する前に対処できるため、復旧作業に要する時間的コスト及び金銭的コストも少なくて済む。
【0016】
したがって、本発明によると、供給される高圧エアーを監視し、該高圧エアーに油が混入した際に報知できる装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】高圧エアーが供給される装置と、高圧エアー供給源と、を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2(A)は、装置に組み込まれたエアー配管の一例を模式的に示す構成図であり、
図2(B)は、装置に組み込まれたエアー配管の他の一例を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る装置2を模式的に示す斜視図である。
図1には、装置2で加工されるウェーハ1を含むフレームユニット11を模式的に示す斜視図が含まれている。フレームユニット11は、開口を備える環状のフレーム7と、該開口を塞ぐように該フレーム7に貼着されたダイシングテープ9と、開口の内側でダイシングテープ9に配設されたウェーハ1と、を備える。
【0019】
ウェーハ1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(窒化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板等である。
【0020】
ウェーハ1の表面は、互いに交差する複数の分割予定ラインで区画される。ウェーハ1の表面の分割予定ラインで区画された各領域には、ICやLSI、LED(Light Emitting Diode)等のデバイスが形成される。分割予定ラインに沿ってウェーハ1を分割すると、個々のデバイスチップが形成される。
【0021】
本実施形態に係る装置2は、例えば、環状の切削ブレードを備える切削装置である。ウェーハ1の分割は、例えば、該切削装置で実施される。ただし、本実施形態に係る装置はこれに限定されず、ウェーハ1等の被加工物にレーザビームをレーザ加工装置でもよく、被加工物を研削砥石で研削する研削装置でもよい。以下、本実施形態に係る装置2が切削装置である場合を例に説明する。
【0022】
ウェーハ1は、装置2に搬入される前にダイシングテープ9及びフレーム7と一体化されてもよく、そして、ウェーハ1と、ダイシングテープ9と、フレーム7と、を含むフレームユニット11が形成されてもよい。この場合、ウェーハ1が分割されて形成された個々のデバイスチップは、ダイシングテープ9に支持される。その後、ダイシングテープ9を拡張することでデバイスチップ間の間隔を広げると、デバイスチップのピックアップが容易となる。
【0023】
図1に示す通り、装置2の本体4の角部には、カセット13が載置されるカセットテーブル6が設けられている。カセットテーブル6は、昇降機構(不図示)により上下方向(Z軸方向)に昇降可能である。
図1では、カセットテーブル6に載置されたカセット13の輪郭を二点鎖線で示している。
【0024】
本体4の上面のカセットテーブル6に隣接する位置には、Y軸方向(左右方向、割り出し送り方向)に平行な状態を維持しながら互いに接近、離隔される一対のガイドレール8を含む仮置きテーブル10が設けられている。また、本体4の上面の仮置きテーブル10に隣接する位置には、カセットテーブル6に載置されたカセット13に収容されたフレームユニット11をカセット13から搬出する搬出ユニット12が設けられている。搬出ユニット12は、フレーム7を把持できる把持部を前面に有する。
【0025】
カセット13に収容されたフレームユニット11を搬出する際には、搬出ユニット12をカセット13に向けて移動させ、該把持部でフレーム7を把持し、その後、搬出ユニット12をカセット13から離れる方向に移動させる。すると、カセット13からフレームユニット11が仮置きテーブル10に引き出される。このとき、一対のガイドレール8をX軸方向に互い近接する方向に連動させて移動させ、該一対のガイドレール8でフレーム7を挟み込むと、フレームユニット11を所定の位置に位置付けられる。
【0026】
本体4の上面のカセットテーブル6に隣接する位置には、X軸方向(前後方向、加工送り方向)に長い開口4aが形成されている。開口4a内には、図示しないボールねじ式のX軸移動機構(加工送りユニット)と、X軸移動機構の上部を覆う蛇腹状の防塵防滴カバー26と、が配設されている。
【0027】
X軸移動機構は、X軸移動テーブル16の下部に接続されており、このX軸移動テーブル16をX軸方向に移動させる機能を有する。例えば、X軸移動テーブル16は、カセットテーブル6に近接する搬出入領域と、後述の切削ユニット32の下方の加工領域と、の間を移動する。
【0028】
X軸移動テーブル16上には、テーブルベース18と、該テーブルベース18に載るチャックテーブル20と、が設けられている。チャックテーブル20は、ウェーハ1を含むフレームユニット11を保持する機能を有し、上面が保持面22となる。チャックテーブル20の径方向外側には、フレーム7を把持するクランプ24が設けられている。チャックテーブル20は、上述したX軸移動機構によってX軸方向に移動する。
【0029】
チャックテーブル20は、保持面22に露出した多孔質部材を備える。チャックテーブル20の内部には、一端が該多孔質部材に接続され他端が吸引源(不図示)に接続された吸引路(不図示)が配設される。例えば、該吸引源はアスピレータであり、高圧エアーが供給されることで吸引力を生じる。
【0030】
仮置きテーブル10からチャックテーブル20へのフレームユニット11の搬送は、本体4の上面の仮置きテーブル10及び開口4aに隣接する位置に設けられた第1の搬送ユニット14により実施される。第1の搬送ユニット14は、本体4の上面から上方に突き出た昇降可能であるとともに回転可能な軸部と、軸部の上端から水平方向に伸長した腕部と、腕部の先端下方に設けられた保持部と、を有する。該保持部は、例えば、高圧エアーを利用して吸引力を生じさせ、該吸引力でフレームユニット11を保持する。
【0031】
第1の搬送ユニット14で仮置きテーブル10からチャックテーブル20へフレームユニット11を搬送する際には、X軸移動テーブル16を移動させてチャックテーブル20を搬出入領域に位置付ける。そして、仮置きテーブル10に仮置きされているフレームユニット11のフレーム7を該保持部で保持し、フレームユニット11を持ち上げて、該軸部を回転させてフレームユニット11をチャックテーブル20の上方に移動させる。
【0032】
その後、フレームユニット11を下降させてチャックテーブル20の保持面22に載せる。そして、クランプ24でフレーム7を固定するとともに、チャックテーブル20でフレームユニット11のダイシングテープ9を介してウェーハ1を吸引保持する。
【0033】
装置2は、X軸移動テーブル16の搬出入領域から加工領域への移動経路の上方に、開口4aを横切るように配設された支持構造28を備える。そして、支持構造28には下方に向いた撮像ユニット30が設けられている。撮像ユニット30は、切削ユニット32の下方の加工領域へ移動するチャックテーブル20に吸引保持されたウェーハ1の表面を撮像し、表面に設けられた分割予定ライン3の位置及び向きを検出する。
【0034】
該加工領域には、チャックテーブル20に保持されたフレームユニット11のウェーハ1を切削(加工)する切削ユニット(加工ユニット)32が設けられている。切削ユニット32は、円環状の砥石部を外周に備える切削ブレード34と、先端部に切削ブレード34が装着され該切削ブレード34の回転軸となるY軸方向に沿ったスピンドル36と、を備える。回転するスピンドル36の軸受けでは、高圧エアーが利用される。
【0035】
スピンドル36の基端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル20で保持されたフレームユニット11に含まれるウェーハ1に回転する切削ブレード34を切り込ませると、ウェーハ1を切削(加工)できる。すべての分割予定ラインに沿ってウェーハ1を切削すると、ウェーハ1が分割されて個々のデバイスチップが形成される。その後、チャックテーブル20は、X軸移動機構により搬出入領域に移動される。
【0036】
本体4の上面の仮置きテーブル10及び開口4aに隣接する位置には開口4bが形成されており、開口4bには加工後のフレームユニット11を洗浄する洗浄ユニット38が収容されている。洗浄ユニット38は、フレームユニット11を保持するスピンナテーブルを備えている。スピンナテーブルの下部には、スピンナテーブルを所定の速さで回転させる回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0037】
装置2は、搬出入領域に位置付けられたチャックテーブル20から洗浄ユニット38にフレームユニット11を搬送する第2の搬送ユニット40を備える。第2の搬送ユニット40は、Y軸方向に沿って移動可能な腕部と、腕部の先端下方に設けられた保持部と、を有する。
【0038】
第2の搬送ユニット40でチャックテーブル20から洗浄ユニット38へフレームユニット11を搬送する際には、まず、フレームユニット11を該保持部で保持する。そして、腕部をY軸方向に沿って移動させ、フレームユニット11を洗浄ユニット38のスピンナテーブルの上に載せる。その後、スピンナテーブルでフレームユニット11を保持してウェーハ1を洗浄する。
【0039】
洗浄ユニット38でウェーハ1を洗浄する際には、スピンナテーブルを回転させながらウェーハ1の表面に向けて洗浄用の流体(代表的には、水と高圧エアーとを混合した混合流体)を噴射する。その後、高圧エアーがウェーハ1の表面に供給されて、ウェーハ1が乾燥される。そして、洗浄ユニット38で洗浄されたフレームユニット11は、カセットテーブル6に載るカセット13に収容される。
【0040】
カセット13にフレームユニット11を収容する際には、第1の搬送ユニット14を使用して洗浄ユニット38から仮置きテーブル10にフレームユニット11を搬送する。そして、搬出ユニット12をカセット13に向けて移動させてフレームユニット11をカセット13に押し入れる。
【0041】
このように、装置2では、カセット13からフレームユニット11が搬出され、フレームユニット11がチャックテーブル20で吸引保持され、フレームユニット11に含まれるウェーハ1が切削ユニット32で加工される。その後、フレームユニット11が洗浄ユニット38で洗浄されてカセット13に再び収容される。装置2では、カセット13から次々にフレームユニット11が搬出され、チャックテーブル20上において切削ユニット32で次々にウェーハ1が切削される。
【0042】
なお、装置2は、該装置2の各構成要素を制御する制御ユニット60を備える。制御ユニットは、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置、及び、フラッシュメモリ等の記憶装置を含むコンピュータによって構成される。記憶装置に記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御ユニット60は、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
【0043】
上述のように、装置2では様々な箇所において様々な用途で高圧エアーが利用される。
図2(A)は、高圧エアー供給源42と、装置2と、接続関係を模式的に示す構成図である。高圧エアーは、例えば、高圧エアー供給源42として機能するコンプレッサーで空気を圧縮することで生成される。そして、高圧エアーは、ウレタンや塩化ビニル等で形成された耐圧チューブ等のエアー配管44を通して装置2に供給される。
【0044】
この際、エアーコンプレッサーの内部で使用される潤滑油等の油が高圧エアーに混入することがある。装置2に供給される高圧エアーに油が混入していると、装置2で加工されるウェーハ1に油が付着してウェーハ1から製造されるデバイスチップに電気特性不良が生じる場合がある。
【0045】
また、撮像ユニット30に油が付着して、該撮像ユニット30がウェーハ1の分割予定ラインを適切に検出できない状態となる場合がある。さらに、駆動機構に油が付着して動作不良を引き起こしたりする。そこで、高圧エアーが通過するエアー配管44の内部にフィルター46を設け、高圧エアー供給源42内を通過する高圧エアーに含まれる油をフィルター46で除去するとの対策がとられる。
【0046】
しかしながら、装置2を長期間稼働しているうちにフィルター46の油による汚染が進行し、該フィルター46から油が放出される場合がある。また、高圧エアー供給源42からエアー配管44に供給された高圧エアーに混入した油をフィルター46で十分に除去できなくなる。そこで、本実施形態に係る装置2では、供給される高圧エアーを監視し、該高圧エアーに油が混入したことを検出可能とした。
【0047】
フィルター46の汚染が進行し、フィルター46通過後の高圧エアーに油が混入する際、油に由来する有機ガスも該高圧エアーに含まれるようになる。そこで、本実施形態に係る装置2では、フィルター46通過後の高圧エアーを監視し、該高圧エアーに含まれる有機ガスを検出することで該高圧エアーに油が混入していることを検出して報知する。
【0048】
本実施形態に係る装置2は、
図2(A)に示す通り、フィルター46通過後の高圧エアーに含まれる有機ガスを検知するガス検知器48を備える。ガス検知器48は、エアー配管44の内部の壁面に設置される。ガス検知器48は、エアー配管44を通過する高圧エアーを監視し、高圧エアーに含まれる各種の成分に関する情報を次に説明する報知ユニット50に出力する機能を備える。例えば、ガス検知器48には、センシリオン株式会社製のガスセンサ“SGP30”を使用できる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る装置2は、ガス検知器48が高圧エアーに含まれる有機ガスを検知した際に該高圧エアーに油が混入していることを報知する報知ユニット50を備える。報知ユニット50は、例えば、装置2の制御ユニット60の機能により実現される。ここで、報知ユニット50は、該高圧エアーに油が混入していることを報知することに代えて該高圧エアーに有機ガスが含まれていることを報知してもよい。
【0050】
図1に示す通り、装置2は、各種の情報を表示できる表示モニタ52を備えてもよい。また、装置2の状態に応じて所定の色のランプを点灯させる警報ランプ54を備えてもよい。または、警報音を発することのできるスピーカー(不図示)を備えてもよい。
【0051】
報知ユニット50は、装置2に高圧エアー供給源42から装置2に供給される高圧エアーに有機ガスが含まれることをガス検知器48が検知した場合、例えば、表示モニタ52に警告情報を表示させる。または、異常状態を示す赤色の警報ランプ54を点灯させる。または、該スピーカーに警報音を発生させる。こうして、報知ユニット50は、装置2の使用者等に高圧エアーに有機ガスが含まれており、油が混入したことを報知する。
【0052】
装置2は、エアー配管44の内部に高圧エアーの流れを停止させる遮断弁56をさらに備えてもよい。例えば、遮断弁56は、報知ユニット50に電気的に接続された電磁弁であり、報知ユニット50からの指令を受けて開閉可能である。そして、報知ユニット50は、装置2に高圧エアー供給源42から装置2に供給される高圧エアーに有機ガスが含まれることをガス検知器48が検知した場合、遮断弁56を作動させて高圧エアーの流れを遮断し、装置2の内部に油が侵入するのを防止する。
【0053】
また、制御ユニット60により実現される報知ユニット50は、高圧エアーに混入した有機ガスが検出された場合、装置2の各所に問題を進行させないように、装置2の稼働を可能な限り早く停止させる。そして、作業者は、高圧エアー供給源42を点検し、または、フィルター46を交換する等の措置を実施し、装置2を再稼働させる。
【0054】
なお、高圧エアーの供給が停止している間に装置2の稼働を停止させると、装置2で実施される加工が止まり、被加工物の加工効率が低下することとなる。そこで、高圧エアーの供給が停止している間に、別の供給源から高圧エアーを装置2に供給し、装置2の稼働を継続してもよい。
【0055】
図2(B)は、高圧エアーが2つの系統から供給される本実施形態に係る装置2aの構成を模式的に示す構成図である。
図2(B)に示す装置2aは、第1の高圧エアー供給源42aから高圧エアーが供給される第1のエアー配管44aと、第2の高圧エアー供給源42bから高圧エアーが供給される第2のエアー配管44bと、を備える。
【0056】
第1のエアー配管44aには、第1の高圧エアー供給源42aから供給された高圧エアーに含まれる油を除去する第1のフィルター46aと、該第1のフィルター46aの通過後の高圧エアーに含まれる有機ガスを検知する第1のガス検知器48aと、が配設される。第1のガス検知器48aは、報知ユニット50に電気的に接続されている。
【0057】
また、第2のエアー配管44bには、第2の高圧エアー供給源42bから供給された高圧エアーに含まれる油を除去する第2のフィルター46bと、該第2のフィルター46bの通過後の高圧エアーに含まれる有機ガスを検知する第2のガス検知器48bと、が配設される。第2のガス検知器48bは、報知ユニット50に電気的に接続されている。
【0058】
そして、第1のエアー配管44aの下流側及び第2のエアー配管44bの下流側には、三方弁58が接続される。三方弁58は、装置2aの本体4の内部に向かう内部配管44cに接続されており、第1のエアー配管44aと第2のエアー配管44bの一方と、該内部配管44cと、を切り替え可能に接続する。
【0059】
例えば、三方弁58で第1のエアー配管44a及び内部配管44cを接続し、第1の高圧エアー供給源42aから供給される高圧エアーを装置2aに供給する。このとき、第1のガス検知器48aで高圧エアーを監視する。そして、該高圧エアーに含まれる有機ガスが第1のガス検知器48aにより検出された場合、報知ユニット50は、高圧エアーへの油の混入を作業者に報知するとともに、三方弁58を切り替える。すなわち、第2の高圧エアー供給源42bから供給される高圧エアーが装置2aに供給される。
【0060】
この場合、第1のフィルター46aを交換する作業や第1の高圧エアー供給源42aを点検する作業等を実施する間にも、装置2aには高圧エアーが供給され続ける。そのため、第1の高圧エアー供給源42a等を復旧する作業を実施する間、装置2aにおける加工を停止させる必要がない。
【0061】
その後、第2のガス検知器48bで第2のエアー配管44bを流れる高圧エアーを監視し、該高圧エアーに含まれる有機ガスが第2のガス検知器48bで検出された場合、再び三方弁58を切り替える。すなわち、第1の高圧エアー供給源42aから供給される高圧エアーを装置2aに供給する。
【0062】
このように、一方の高圧エアーの供給系統に問題が生じた場合でも、該一方の高圧エアーの供給系統を復旧させる間に他方の高圧エアーの供給系統で装置2aに高圧エアーを供給し続けられる。なお、高圧エアーの供給系統の数は2を超えてもよく、3以上の高圧エアーの供給系統が準備されてもよい。
【0063】
以上に説明するとおり、本実施形態に係る装置は、供給される高圧エアーを監視して該高圧エアーに含まれる有機ガスを検出できる。そのため、高圧エアー供給源42,42a,42bで使用される潤滑油等の油が該高圧エアーに混入した場合においても、作業者等は該油に起因する問題が拡大する前に該問題に対処可能となる。
【0064】
なお、上記実施形態では、高圧エアーに混入した油を除去するフィルター46よりも下流側においてエアー配管44にガス検知器48が設けられる場合について説明したが、本発明の一態様に係る装置2はこれに限定されない。すなわち、装置2では、ガス検知器48に加え、エアー配管44の内部のフィルター46よりも上流側に補助ガス検知器が設けられてもよい。この場合、フィルター46の前後で高圧エアーを監視でき、油の発生源を特定しやすくなる。
【0065】
例えば、ガス検知器48で高圧エアーに含まれる有機ガスが検出される一方で、補助ガス検知器で該有機ガスが検出されない場合、フィルター46の汚染が進行し該フィルター46通過後の高圧エアーに油が混入していることを確認できる。また、補助ガス検知器で有機ガスが検出される場合、高圧エアー供給源42に何らかの不具合が生じていることが理解される。
【0066】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0067】
1 ウェーハ
3 分割予定ライン
9 ダイシングテープ
7 フレーム
11 フレームユニット
13 カセット
2,2a 装置
4 本体
4a,4b 開口
6 カセットテーブル
8 ガイドレール
10 仮置きテーブル
12 搬出ユニット
14,40 搬送ユニット
16 移動テーブル
18 テーブルベース
20 チャックテーブル
22 保持面
24 クランプ
26 防塵防滴カバー
28 支持構造
30 撮像ユニット
32 切削ユニット
34 切削ブレード
36 スピンドル
38 洗浄ユニット
42,42a,42b 高圧エアー供給源
44,44a,44b エアー配管
44c 内部配管
46,46a,46b フィルター
48,48a,48b ガス検知器
50 報知ユニット
52 表示モニタ
54 警報ランプ
56 遮断弁
58 三方弁
60 制御ユニット