(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】測定器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241209BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2021048444
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】陳 曄
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雅之
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 晋一
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-87180(JP,A)
【文献】特開2010-92992(JP,A)
【文献】国際公開第2009/050786(WO,A1)
【文献】特開2012-174785(JP,A)
【文献】特開平8-145877(JP,A)
【文献】特開2001-147193(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0049913(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部を有するリングフレームに貼り付けられたシートの貼り付き強度を測定する測定器であって、
該リングフレームを支持できる環状の支持面を備える支持テーブルと、
該支持テーブルに載る該リングフレームに貼り付けられた該シートを該開口部の内側で上方から押圧する圧子と、
該圧子を該支持テーブルに対して昇降させる昇降ユニットと、
該圧子に掛かる荷重を測定する荷重測定部と、
該昇降ユニット及び該荷重測定部を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該荷重測定部により該圧子に掛かる荷重を測定しつつ該昇降ユニットを制御して該圧子を該シートに向けて下降させ該圧子に該シートを押圧させる測定制御部と、
該荷重測定部の測定結果を記憶する記憶部と、を有することを特徴とする測定器。
【請求項2】
該測定制御部は、該圧子に該シートを押圧させている間、該圧子に掛かる荷重の低下が観測されたときに該シートの該リングフレームからの剥離が生じたことを検出し、
該記憶部は、該圧子に掛かる荷重の低下が観測される直前の該圧子に掛かる荷重の測定値である最大荷重値を該測定結果として記憶することを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項3】
該測定制御部は、
該荷重測定部により測定される該圧子に掛かる荷重の測定値が所定の値に達するまでの間に該圧子に掛かる荷重の低下が観測された場合に該シートの該リングフレームへの貼り付き強度が不十分であると判定し、
該荷重測定部により測定される該圧子に掛かる荷重の測定値が所定の値に達するまでの間に該圧子に掛かる荷重の低下が観測されない場合に該シートの該リングフレームへの貼り付き強度が十分であると判定し、
該記憶部は、該測定結果として該測定制御部の判定結果を記憶することを特徴とする請求項1に記載の測定器。
【請求項4】
該支持テーブルの中心を貫き該支持面に垂直な方向に沿った回転軸の周りに該支持テーブルを回転させる回転ユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測定器。
【請求項5】
該支持テーブルに支持された該リングフレームの該開口部の内側において該シートに基板が貼り付けられている場合に該圧子が該基板を介して該シートを上方から押圧可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リングフレームに貼り付けられたシートの該リングフレームへの貼り付き強度を測定する測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に組み込まれるデバイスチップの製造工程では、半導体ウェーハや樹脂パッケージ基板に代表される板状の被加工物が円環状の切削ブレードを備える切削装置で切削されて、または、被加工物にレーザビームが照射されて、個片化される。切削装置やレーザ加工装置で加工される被加工物の裏面側には、予めダイシングテープと呼ばれる部材が貼られる。
【0003】
ダイシングテープは、樹脂等で形成された基材層と、該基材層の一方の面に設けられた粘着層と、を有するシートである。被加工物を分割し、シートを四方から外向きに拡張すると、形成された各チップ間の距離が開き、チップのピックアップが容易となる。ここで、形成されるチップの縦横のサイズが異なる被加工物では、形成されたチップの間隔を縦横方向で同程度に開くために、拡張方向によってシートの拡張量を変える必要がある。
【0004】
そこで、シートの四辺を挟持し、縦方向と横方向とで異なる拡張量でシートを拡張できる拡張装置が提案されている(特許文献1参照)。金属で形成され中央に開口部を有するリングフレームを予め準備しておき、この拡張装置でシートを拡張した状態で各チップを該開口部に収めつつ該リングフレームを該シートに貼り付け、リングフレームの外周に沿ってシートを切断してフレームユニットを形成する。このフレームユニットでは、各チップ間の間隔が保たれるため、ピックアップ装置でのチップのピックアップが容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、シートが拡張されると基材層とともに粘着層が薄くなるため、シートの粘着力が低くなる。そのため、時間の経過とともに徐々にシートのリングフレームへの接着力が低下したときに、最終的にシートがリングフレームから剥離してしまうとの問題が生じる。そこで、リングフレームに貼り付けられたときに所定の貼り付き強度を維持できるシートを選定する必要があり、所定の貼り付き強度を維持できるシートの拡張条件及び貼着条件の選定が必要となる。
【0007】
そして、シートの種別や拡張条件等に基づくシートのリングフレームへの貼り付き強度を評価するために、この貼り付き強度を測定できる測定器が望まれる。特に、方向によりシートの拡張量が変わる場合、接着層の厚みが場所により変化する等してリングフレームへの貼り付き強度が場所により変化することが考えられる。そのため、リングフレームへ貼り付けられたシートの貼り付き強度を各所で評価したいとの需要がある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、リングフレームへ貼り付けられたシートの貼り付き強度を測定できる測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、中央に開口部を有するリングフレームに貼り付けられたシートの貼り付き強度を測定する測定器であって、該リングフレームを支持できる環状の支持面を備える支持テーブルと、該支持テーブルに載る該リングフレームに貼り付けられた該シートを該開口部の内側で上方から押圧する圧子と、該圧子を該支持テーブルに対して昇降させる昇降ユニットと、該圧子に掛かる荷重を測定する荷重測定部と、該昇降ユニット及び該荷重測定部を制御する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該荷重測定部により該圧子に掛かる荷重を測定しつつ該昇降ユニットを制御して該圧子を該シートに向けて下降させ該圧子に該シートを押圧させる測定制御部と、該荷重測定部の測定結果を記憶する記憶部と、を有することを特徴とする測定器が提供される。
【0010】
好ましくは、該測定制御部は、該圧子に該シートを押圧させている間、該圧子に掛かる荷重の低下が観測されたときに該シートの該リングフレームからの剥離が生じたことを検出し、該記憶部は、該圧子に掛かる荷重の低下が観測される直前の該圧子に掛かる荷重の測定値である最大荷重値を該測定結果として記憶する。
【0011】
または、好ましくは、該測定制御部は、該荷重測定部により測定される該圧子に掛かる荷重の測定値が所定の値に達するまでの間に該圧子に掛かる荷重の低下が観測された場合に該シートの該リングフレームへの貼り付き強度が不十分であると判定し、該荷重測定部により測定される該圧子に掛かる荷重の測定値が所定の値に達するまでの間に該圧子に掛かる荷重の低下が観測されない場合に該シートの該リングフレームへの貼り付き強度が十分であると判定し、該記憶部は、該測定結果として該測定制御部の判定結果を記憶する。
【0012】
また、好ましくは、該支持テーブルの中心を貫き該支持面に垂直な方向に沿った回転軸の周りに該支持テーブルを回転させる回転ユニットをさらに備える。
【0013】
さらに、好ましくは、該支持テーブルに支持された該リングフレームの該開口部の内側において該シートに基板が貼り付けられている場合に該圧子が該基板を介して該シートを上方から押圧可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様にかかる測定器は、シートが貼り付けられたリングフレームを支持できる環状の支持面を備える支持テーブルと、シートを上方から押圧する圧子と、圧子を昇降させる昇降ユニットと、圧子に掛かる荷重を測定する荷重測定部と、を備える。そして、圧子で上方からシートを押圧しつつ該荷重を測定し、測定結果を制御ユニットの記憶部で記憶する。この記憶部に記憶される該測定結果を用いると、リングフレームに貼り付けられたシートの貼り付き強度を評価できる。
【0015】
例えば、シートの貼り付き強度として必要とされる強さに相当する荷重がシートに印加されるように圧子で該シートを押圧し、この時の荷重測定部の測定値によりシートの剥離の有無を判定する。または、圧子に掛かる荷重を荷重測定部で測定しつつ該圧子でシートを押圧して徐々に荷重を増大させ、該圧子に掛かる荷重の低下が観測されたときに該シートの剥離を検出し、この荷重の低下が観測される直前の測定値を最大荷重値とする。この最大荷重値の大小関係を複数のシート間で比較することにより貼り付き強度を評価する。
【0016】
したがって、本発明の一態様によると、リングフレームへ貼り付けられたシートの貼り付き強度を測定できる測定器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】リングフレームに貼り付けられたシートが配設された測定器を模式的に示す斜視図である。
【
図3】リングフレームへのシートの貼り付き強度を測定する測定器を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る測定器の測定対象物について説明する。
図2には、測定器2に配設された測定対象物1の斜視図が含まれており、
図3には、測定器2に配設された測定対象物1の断面図がふくまれている。
【0019】
本実施形態に係る測定器の測定対象物1は、金属等の材料で形成されたリングフレーム5と、該リングフレーム5に貼り付けられたシート3と、により構成される。リングフレーム5は中央に開口部5aを有し、シート3はこの開口部5aを塞ぐようにリングフレーム5に貼り付けられる。
【0020】
シート3は、ポリオレフィンやポリエステル等の樹脂材料で形成された基材層と、基材層の一方の面に設けられた粘着層と、を備える。シート3は、例えば、デバイスチップの原料となる半導体ウェーハに貼り付けられて使用される。半導体ウェーハを分割し、分割された半導体ウェーハが貼り付けられたシート3を四方から外向きに拡張すると、形成された各チップ間の距離が開き、チップのピックアップが容易となる。
【0021】
リングフレーム5を準備し、シート3を拡張した状態で各チップを開口部5aに収めつつ該リングフレーム5を該シート3に貼り付け、リングフレーム5の外周に沿ってシート3を切断してフレームユニットを形成する。このフレームユニットでは、各チップ間の間隔が保たれるため、ピックアップ装置でのチップのピックアップが容易となる。
【0022】
ただし、シート3が拡張されると基材層とともに粘着層が薄くなるため、シート3の粘着力が低くなる。そのため、時間の経過とともに徐々にシート3のリングフレーム5への接着力も低下したときに、最終的にシート3がリングフレーム5から剥離してしまうとの問題が生じる。
【0023】
そこで、リングフレーム5に貼り付けられたときに所定の貼り付き強度を維持できるシート3を選定する必要があり、所定の貼り付き強度を維持できるシート3の拡張条件及び貼着条件の選定が必要となる。本実施形態に係る測定器は、シート3の種別や拡張条件等に基づくシート3のリングフレーム5への貼り付き強度を評価するために、この貼り付き強度を測定する。
【0024】
次に、中央に開口部5aを有するリングフレーム5に貼り付けられたシート3の貼り付き強度を測定する本実施形態に係る測定器について説明する。
図1は、本実施形態に係る測定器2を模式的に示す斜視図である。
図2は、測定対象物1が配設された測定器2を模式的に示す斜視図であり、
図3は、シート3のリングフレーム5への貼り付き強度を測定する際の測定器2を模式的に示す断面図である。
【0025】
測定器2は、構成要素を収容する矩形状の外装カバー4を有する。外装カバー4の上面4aの中央部には円形の開口4bが形成されており、開口4bではリングフレーム5を支持できる環状の支持面6aを備える支持テーブル6が上方に露出している。支持テーブル6の上面の支持面6aの内側には、円形凹部8が形成されている。
【0026】
支持テーブル6は、交換可能であることが好ましい。そして、測定器2には、測定対象物1に含まれる可能性のある各種のリングフレーム5にそれぞれ対応できる複数の種類の支持テーブル6が準備されるとよい。すなわち、測定器2では、測定対象物1に含まれるリングフレーム5を適切に支持できる支持テーブル6が測定器2に予め配設され、使用されることが好ましい。
【0027】
測定器2では、支持面6aの内径が測定対象物1のリングフレーム5の開口部5aの径と概略一致し、支持面6aの外径が該リングフレーム5の外径よりも大きい支持テーブル6が使用される。
【0028】
また、支持面6aには、複数の位置決めピン6bが立設される。位置決めピン6bは、支持面6aに載置される測定対象物1のリングフレーム5の外側に側面が当たり、リングフレーム5の位置及び向きを決める。すなわち、リングフレーム5が測定に適した位置及び向きに合わせられるように位置決めピン6bの配置が決定される。
【0029】
特に、リングフレーム5の外周部に特定の形状の切り欠きが設けられている場合、この切り欠きの位置に合うように位置決めピン6bが配置されるとよい。この場合、位置決めピン6bによりリングフレーム5が高精度に所定の位置及び向きに合わせられる。後述のように、リングフレーム5に対するシート3の貼り付き強度が測定対象物1の複数の箇所で測定される場合、高精度な測定のためにリングフレーム5の位置合わせが重要となる。
【0030】
支持テーブル6は、該支持テーブル6の中心を貫く回転軸の周りに回転可能である。
図3には、支持テーブル6を回転させる回転ユニットとして機能するモーター26と、スピンドル28と、が示されている。後述の通り、回転ユニットを作動させると、測定対象物1におけるシート3の貼り付き強度の測定位置を変更できる。
【0031】
スピンドル28の上端は支持テーブル6の下面中央に固定されており、スピンドル28の下端はモーター26に収容されている。モーター26は、スピンドル28を回転させることで支持面6aに垂直な方向に沿って支持テーブル6の中心を貫く回転軸30の周りに該支持テーブル6を回転させる。
【0032】
支持テーブル6の上方には、支持面6aに載せられた測定対象物1におけるリングフレーム5に対するシート3の貼り付き強度を測定する測定ユニットが配設される。該測定ユニットは、シート3を上方から押圧する圧子18と、圧子18を昇降させる昇降ユニット12と、圧子18に掛かる荷重を測定する荷重測定部(センサー)16と、を含む。以下、シート3の貼り付き強度を測定する測定ユニットの構成について詳述する。
【0033】
外装カバー4の上面4aの後端部には、昇降ユニット12を収容した立設部10が設けられる。昇降ユニット12は、例えば、ボールねじ式の駆動機構により構成される。すなわち、立設部10の内部には、概略鉛直方向に沿ったガイドレール(不図示)と、該ガイドレールに沿って移動可能な移動体(不図示)と、該ガイドレールに沿ったボールねじ((不図示)と、が設けられる。該移動体には、該ボールねじに螺合されるナット部(不図示)が設けられている。
【0034】
該ボールねじの上端部には、該ボールねじを回転させるパルスモータ12aが設けられている。パルスモータ12aを作動させて該ボールねじを回転させると、該移動体が該ガイドレールに沿って移動する。立設部10の前面には、該移動体に基端部が接続された腕部14が通される開口12bが形成されている。開口12bは、昇降ユニット12により昇降する腕部14が昇降可能となるように、鉛直方向に長い形状とされる。
【0035】
立設部10から支持テーブル6の上方に向けて水平方向に伸びた腕部14の先端部には、測定ユニットの荷重測定部16が固定されている。荷重測定部16の下面には、棒状の圧子18が突き出ている。
【0036】
腕部14の長さは、圧子18が支持テーブル6の支持面6aの上方ではなく円形凹部8の上方に位置付けられるように決定される。特に、リングフレーム5の開口部5aの内側において、シート3に半導体ウェーハ等の基板が貼り付けられることが想定される領域と、該開口部5aと、の中間で圧子18がシート3を押圧できるように腕部14の長さが決定されることが好ましい。ただし、腕部14の長さはこれに限定されない。
【0037】
昇降ユニット12を作動させると、荷重測定部16及び圧子18を昇降できる。昇降ユニット12を作動させて測定対象物1が載せ置かれた支持テーブル6に向けて圧子18を下降させると、圧子18の下端がシート3の上面に接触する。圧子18をさらに下降させると、シート3が下方に押し伸ばされるとともに、シート3から上方に向く反発力を圧子18が受ける。
【0038】
圧子18の下端が角張った形状であると、シート3の貼り付き強度を測定する際に圧子18がシート3を破くおそれがある。これではリングフレーム5に対するシート3の貼り付き強度を適切に測定できない。そこで、圧子18の下端の形状は角のない形状であることが好ましく、半球状とされることがより好ましい。例えば、圧子18は、下端が半球形状で、主要部が1.2mm径の円筒状である。ただし、圧子18の形状はこれに限定されない。
【0039】
このように、圧子18は、支持テーブル6に載るリングフレーム5に貼り付けられたシート3を開口部5aの内側で上方から押圧する。荷重測定部16は、このとき圧子18に掛かる荷重(反発力)を測定する。荷重測定部16は、他の機器等と有線又は無線を介して接続されて使用される電子機器であり、荷重の測定値を接続された機器に送信する機能を有する。
【0040】
測定器2の外装カバー4の前面4cには、測定器2のユーザーインターフェース及び表示モニターの機能を兼ねるタッチパネル付きディスプレイ20が配される。ただし、タッチパネル付きディスプレイ20は、外装カバー4の他の面に設けられてもよい。タッチパネル付きディスプレイ20には、測定器2の各種の情報や操作画面が表示される。測定器2の使用者は、タッチパネル付きディスプレイ20を使用して測定器2を操作できる。なお、測定器2のユーザーインターフェース及び表示モニターは、これに限定されない。
【0041】
測定器2は、さらに、昇降ユニット12及び荷重測定部16等の各種の構成要素を制御する制御ユニット22を備える。制御ユニット22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0042】
補助記憶装置には、所定のプログラムを含むソフトウェアが記憶されている。このソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御ユニット22の機能が実現される。なお、補助記憶装置の一部は、制御ユニット22に特定の動作を実行させるプログラムを記憶した記憶部22aとして機能する。そして、記憶部22aに記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
【0043】
荷重測定部16には、制御ユニット22が接続されている。制御ユニット22は、記憶部22aに記憶されたソフトウェア等に従って測定器2の測定動作を制御する測定制御部22bを備える。測定制御部22bは、リングフレーム5に対するシート3の貼り付き強度を系毎に比較するための指標となる測定結果が得られるように昇降ユニット12及び荷重測定部16等を制御する。そして、記憶部22aは、測定結果を記憶する。
【0044】
図3を用いて測定器2における測定動作の第1の例について説明する。制御ユニット22(測定制御部22b)は、圧子18に掛かる荷重を荷重測定部16で測定しながら昇降ユニット12を制御して圧子18をシート3に向けて下降させ該圧子18に該シート3を押圧させる。圧子18でシート3が押圧されると、シート3が下方に押し伸ばされて、シート3のリングフレーム5に貼り付いた領域に力が掛かる。なお、支持テーブル6には円形凹部8が形成されているため、シート3は円形凹部8の中で変形し、床面に接しない。
【0045】
シート3の貼り付き強度を超える大きさの力が該領域にかかると、シート3がリングフレーム5から剥離する。シート3がリングフレーム5から剥離すると、圧子18で押圧されて変形するシート3が圧子18に掛ける反発力が低下する。そのため、荷重測定部16で観測される荷重の測定値が急激に減少する。制御ユニット22(測定制御部22b)は、圧子18にシート3を押圧させている間、該圧子18に掛かる荷重の低下が観測されたときにシート3のリングフレーム5からの剥離が生じたことを検出する。
【0046】
シート3の剥離が生じる際の圧子18によるシート3の押圧力の大きさは、シート3のリングフレーム5への貼り付き強度に対応する。そこで、記憶部22aは、荷重測定部16で観測される荷重の低下が観測される直前の該荷重の測定値である最大荷重値を測定結果として記憶する。
【0047】
この最大荷重値は、シート3の貼り付き強度を表す一つの指標となる。例えば、シート3のリングフレーム5への貼り付け条件やシート3の種別、シート3の拡張条件を変更し、同様に測定器2において圧子18でシート3を押圧し、この最大荷重値を記憶部22aに記憶させる。この場合、記憶部22aに記憶された各系の最大荷重値を比較することで、シート3の貼り付き強度の大小を判定できる。
【0048】
測定器2における測定動作の第2の例について説明する。制御ユニット22(測定制御部22b)は、圧子18に掛かる荷重を荷重測定部16で測定しながら昇降ユニット12を制御して圧子18をシート3に向けて下降させ、荷重の測定値が所定の値となるまで該圧子18に該シート3を押圧させる。この所定の値は、シート3に求められる貼り付き強度に相当する大きさの測定値に設定されるとよい。
【0049】
荷重測定部16で測定される荷重の測定値が該所定の値に達する前にシート3がリングフレーム5から剥離すると、シート3が圧子18に掛ける荷重(反発力)が低下する。このとき、荷重測定部16で観測される荷重の測定値が急激に減少するため、制御ユニット22(測定制御部22b)は、シート3の剥離が生じたことを検出する。制御ユニット22(測定制御部22b)は、シート3のリングフレーム5への貼り付き強度が必要な水準を満たしておらず、不十分であると判定する。
【0050】
その一方で、荷重の測定値が該所定の値に達するまでの間に荷重測定部16で観測される荷重の測定値に急激な減少が観測されない場合、制御ユニット22(測定制御部22b)は、シート3のリングフレーム5からの剥離が生じていないと判定する。すなわち、制御ユニット22(測定制御部22b)は、シート3のリングフレーム5への貼り付き強度が必要な水準を満たしており、十分であると判定する。
【0051】
そして、記憶部22aは、荷重測定部の測定結果として、シート3のリングフレーム5からの剥離が生じているか否か、すなわち、貼り付き強度が十分であるか否かについての制御ユニット22(測定制御部22b)による判定結果を記憶する。
【0052】
以上に説明する通り、本実施形態に係る測定器2によると、リングフレーム5に貼り付けられたシート3の貼り付き強度を測定し、シート3の種別やリングフレーム5への貼着条件、シート3の拡張条件等の良否を判定できる。測定器2の使用者は、加工され分割された半導体ウェーハが貼り付けられたシート3を拡張してチップ間の間隔を広げ、リングフレーム5に該シート3を貼り付けるに際し、最適な種別のシート3や貼着条件、拡張条件を選択できる。
【0053】
ここで、半導体ウェーハが分割されて形成されるチップの縦横のサイズが異なる場合、形成されたチップの間隔が縦横方向で同程度に開かれるように、拡張方向によってシート3の拡張量が変えられる。方向によりシート3の拡張量が変わる場合、拡張されたシート3の接着層の厚みが場所により変化する等してリングフレーム5への貼り付き強度が場所により変化することが考えられる。そのため、リングフレーム5へ貼り付けられたシート3の貼り付き強度を各所で評価したいとの需要がある。
【0054】
そこで、本実施形態に係る測定器2では、圧子18で押圧するシート3の押圧箇所を切り替えつつ、シート3の各所でリングフレーム5への貼り付き強度を測定する。次に、圧子18による押圧箇所を切り替えながらシート3の貼り付き強度を測定する際の測定動作について説明する。
【0055】
なお、シート3における押圧箇所の違いによる貼り付き強度の差を評価する場合、測定器2の支持テーブル6に置かれる測定対象物1の向きが重要となる。そこで、測定対象物1が特定の向きで支持テーブル6に置かれるように、位置決めピン6bの配置が決定されるとよい。
【0056】
リングフレーム5の外周縁は一様な円状ではなく、リングフレーム5の外周部には直線形状や切り欠き等が設けられる。そこで、リングフレーム5の外周部の直線形状や切り欠きの配置に対応するように位置決めピン6bの配置が決定されるとよい。この場合、
図2に示す通り各位置決めピン6bに囲まれるように支持テーブル6の支持面6aにリングフレーム5を載せると、自動的にリングフレーム5の向きが特定の向きに向けられる。
【0057】
測定器2は、シート3の最初の押圧箇所を圧子18で押圧し、シート3の貼り付き強度を測定する。その後、次の押圧箇所を圧子18で押圧してシート3の貼り付き強度を測定するために、モーター26を作動させてスピンドル28を回転させることで回転軸30の周りに支持テーブル6を回転させ、該次の押圧箇所を圧子18の下方に位置付ける。
【0058】
その後、同様に圧子18でシート3を押圧してシート3の貼り付き強度を測定する。こうして、モーター26を作動させて押圧箇所を変化しながら圧子18で次々にシート3を押圧すると、シート3の各所における貼り付き強度を測定できる。
【0059】
なお、シート3の拡張方向は、第1の方向と、該第1の方向に直交する第2の方向と、で個別に設定されうる。そのため、第1の方向及び第2の方向への拡張量の差がシート3の貼り付き強度に与える影響を評価したい場合、少なくともシート3の2カ所でシート3の貼り付き強度が測定されるとよい。より詳細には、シート3の最初の押圧箇所を圧子18で押圧してシート3の貼り付き強度を測定した後、支持テーブル6を90°回転させて、次の押圧箇所を圧子18で押圧してシート3の貼り付き強度を測定する。
【0060】
ここで、シート3の貼り付き強度の評価位置は2カ所に限定されず、圧子18による押圧箇所は2カ所を超えて設定されてもよい。この場合、より詳細にシート3の各所における貼り付き強度をより詳細に解析できる。ただし、圧子18で押圧された箇所の周囲ではシート3のリングフレーム5への貼り付き強度が低下するため、一つのシート3における各押圧箇所は互いに所定の距離だけ離間するように選定されることが好ましい。
【0061】
以上に説明する通り、本実施形態に係る測定器2によると、リングフレーム5に貼り付けられたシート3の貼り付き強度をシート3の各所で測定し、方向により異なる拡張量でシート3を拡張する際のシート3の拡張条件の良否を評価できる。
【0062】
なお、上記実施形態では、シート3及びリングフレーム5からなる測定対象物1において、シート3を圧子18で押圧してシート3のリングフレーム5への貼り付き強度を測定する場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様に係る測定器2はこれに限定されない。すなわち、測定対象物1は、シート3及びリングフレーム5以外の他の要素を含んでいてもよい。
【0063】
例えば、半導体ウェーハを分割して複数のチップを形成し、この複数のチップをシート3に貼着し、シート3を外側に拡張して各チップの間隔を広げ、各チップを開口部5aに収容するようにリングフレーム5をシート3に貼着する。そして、リングフレーム5の外周縁に沿ってリングフレーム5を切断すると、チップと、シート3と、リングフレーム5と、が一体となったフレームユニットが形成される。
【0064】
複数のチップはフレームユニットの状態でピックアップ装置に搬送され、該ピックアップ装置でピックアップされる。ここで、フレームユニットの搬送時に該フレームユニットに予期せぬ衝撃が加わると、チップが大きく揺れてシート3のリングフレーム5からの剥離が誘発される。
【0065】
そこで、シート3及びリングフレーム5の実使用の態様に近い状態でシート3の貼り付き強度の測定を実施するために、測定対象物1には、チップを模した基板が含まれてもよい。この場合、測定器2では、シート3に貼り付けられた基板を圧子18で押圧することで、圧子18が該基板を介してシート3を上方から押圧するとよい。
【0066】
さらに、基板がシート3に貼り付けられていると、実使用時を再現した状態でシート3のリングフレーム5への貼り付け強度を測定できる。そのため、圧子18がシート3を直接的に押圧する場合においても、より有用な測定結果を得るために、基板がシート3に貼り付けられていることが好ましい。
【0067】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0068】
1 測定対象物
3 シート
5 リングフレーム
5a 開口部
2 測定器
4 外装カバー
4a 上面
4b 開口
4c 前面
6 支持テーブル
6a 支持面
6b 位置決めピン
8 円形凹部
10 立設部
12 昇降ユニット
12a パルスモータ
12b 開口
14 腕部
16 荷重測定部
18 圧子
20 タッチパネル付きディスプレイ
22 制御ユニット
22a 記憶部
22b 測定制御部
26 モーター
28 スピンドル
30 回転軸