(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】樹脂被覆方法、及び樹脂被覆装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241209BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241209BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20241209BHJP
B05C 11/02 20060101ALI20241209BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241209BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241209BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241209BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20241209BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20241209BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
H01L21/68 N
B05C9/12
B05C11/02
B05C11/10
B05C5/00 101
B05D7/24 301T
B05D3/12 C
B05D1/28
B05D3/06 102B
B05D3/12 D
(21)【出願番号】P 2021067526
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小田 敦
(72)【発明者】
【氏名】右山 芳国
(72)【発明者】
【氏名】椙浦 一輝
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009372(JP,A)
【文献】特開2018-200913(JP,A)
【文献】特開2021-027239(JP,A)
【文献】特開2021-019160(JP,A)
【文献】特開2019-186355(JP,A)
【文献】特開2012-079871(JP,A)
【文献】特開2005-243700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/683
B05C 9/12
B05C 11/02
B05C 11/10
B05C 5/00
B05D 7/24
B05D 3/12
B05D 1/28
B05D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に樹脂を被覆する樹脂被覆方法であって、
紫外線が照射されることで硬化する液状樹脂を該基板の該一方の面に供給する液状樹脂供給ステップと、
該基板の該一方の面に供給された該液状樹脂をカバーフィルムで覆い、該カバーフィルムを介して平坦な押圧面で該液状樹脂を押し広げる押圧ステップと、
押し広げられた該液状樹脂に紫外線を照射する第1の紫外線照射ステップと、
該第1の紫外線照射ステップの前又は後に、該基板の外周に沿って該液状樹脂に局所的に紫外線を照射する第2の紫外線照射ステップと、
該基板の該外周に沿ってカッターで該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断する切断ステップと、を備えることを特徴とする樹脂被覆方法。
【請求項2】
該第2の紫外線照射ステップは、該第1の紫外線照射ステップの後、かつ、該切断ステップと同時に実施されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆方法。
【請求項3】
該第2の紫外線照射ステップでは、該基板の該外周よりも外側で該液状樹脂に紫外線を照射し、
該切断ステップでは、該基板の該外周よりも外側で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂被覆方法。
【請求項4】
該第2の紫外線照射ステップでは、該基板の該一方の面上で該液状樹脂に紫外線を照射し、
該切断ステップでは、該基板の該一方の面上で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂被覆方法。
【請求項5】
基板の一方の面に樹脂を被覆する樹脂被覆装置であって、
該基板の他方の面を保持するチャックテーブルと、
紫外線が照射されることで硬化可能な液状樹脂を吐出するノズルを備え、該チャックテーブルに保持された該基板の該一方の面に該ノズルから該液状樹脂を供給する液状樹脂供給ユニットと、
平坦な押圧面を底面に有し、該液状樹脂供給ユニットで該基板の該一方の面に供給された該液状樹脂をカバーフィルムで覆いつつ該カバーフィルムを介して該押圧面で押圧して該液状樹脂を該基板の該一方の面に押し広げる押圧ユニットと、
該押圧ユニットで押し広げられた該液状樹脂に紫外線を照射する第1の紫外線照射ユニットと、
該基板の外周に沿って局所的に紫外線を照射する第2の紫外線照射ユニットと、
カッターと、該基板の外周に沿って該カッター及び該基板を相対的に移動させる移動部と、を有し、該基板の外周に沿って該カッターで該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断する切断ユニットと、を備えることを特徴とする樹脂被覆装置。
【請求項6】
該切断ユニットの該移動部は、底面に該第2の紫外線照射ユニットと、該カッターと、が固定された支持部と、該支持部の該底面に垂直な回転軸の周りに該支持部を回転させる回転駆動源と、をさらに有し、
該回転駆動源を作動させることで該第2の紫外線照射ユニット及び該カッターを該チャックテーブルで保持された該基板の外周に沿って移動できることを特徴とする請求項5に記載の樹脂被覆装置。
【請求項7】
該第2の紫外線照射ユニットは、該基板の該外周よりも外側において該液状樹脂に紫外線を照射でき、
該切断ユニットは、該基板の該外周よりも外側で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断できることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の樹脂被覆装置。
【請求項8】
該第2の紫外線照射ユニットは、該基板の該一方の面上で該液状樹脂に紫外線を照射でき、
該切断ユニットでは、該基板の該一方の面上で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断できることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の樹脂被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に樹脂を被覆する樹脂被覆方法、及び樹脂被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップは、複数のデバイスが表面に並べて配設された基板を裏面側から研削して薄化し、デバイス毎に該基板を分割することで形成される。基板の研削は、研削装置で実施される。研削装置では、裏面側を上方に露出させた状態で基板をチャックテーブルで保持し、円環軌道上を移動する研削砥石を該基板の裏面側に接触させて該基板を研削する。このとき、基板の表面側を保護するために、基板の表面には基材層及び糊層が積層された保護部材が予め貼着される。
【0003】
基板の表面側には、デバイスや配線を構成するパターン等が配設されている。また、基板の表面側には、デバイスの電極となるバンプが予め形成される場合がある。すなわち、基板の表面には、各種のパターンやバンプ等の凹凸形状が形成される。
【0004】
基板の表面の凹凸の高低差が大きい場合、基板の表面に保護部材が貼着されたときに糊層に凹凸が十分に吸収されず、保護部材の固定が不安定となる。また、保護部材が変形して基材層側の面が平坦にならず、研削装置のチャックテーブルで基板が均一に支持されない。この状態で基板を研削すると、基板の裏面が平坦とはならない。
【0005】
さらに、基板の外周部のデバイスが形成されない外周余剰領域にはパターンやバンプが形成されず、デバイスが形成されるデバイス形成領域よりも低くなるため、基板の外周部では保護部材を十分に貼着できない。そのため、基板を研削したときに基板の外周に欠けが生じ易くなる。基板の表面の凹凸を十分吸収できるように糊層の厚い保護部材を基板の表面側に貼着することが考えられるが、この場合、最終的に保護部材を基板から剥離する際に凹凸に糊層の残渣が残りやすく、デバイスチップの不良の原因となる。
【0006】
そこで、糊層のない樹脂フィルムを基板の表面の凹凸に密着させ、液状樹脂を樹脂フィルムの上に供給し、カバーフィルムを介して平坦な押圧面で液状樹脂を押圧して、該樹脂フィルム上に該液状樹脂を押し広げ、その後、液状樹脂を硬化する方法が開発された(特許文献1参照)。この方法では、凹凸の高低差を液状樹脂で吸収でき、かつ、糊層の残渣が基板の表面に残ることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、液状樹脂が紫外線硬化樹脂である場合、液状樹脂を硬化させる際に紫外線を過剰に液状樹脂に照射してしまうと該液状樹脂の粘着力が低下し、形成される樹脂層が剥離しやすくなる。その一方で、紫外線の照射量が少なすぎると液状樹脂が十分に硬化しない。そのため、紫外線は適切な照射条件で液状樹脂に照射されることが望まれる。
【0009】
ここで、基板の表面のデバイス形成領域を囲む外周余剰領域には、デバイス形成領域とは異なりバンプやデバイスが形成されないため、樹脂層の厚みが比較的大きくなる。そのため、デバイス形成領域に配設された液状樹脂を適度に硬化させるように液状樹脂に紫外線を照射すると、デバイス形成領域の外側の液状樹脂が十分に硬化しない。形成された樹脂層はデバイス形成領域の外側において切断されるが、樹脂層が十分に硬化していなければ切断に使用されるカッターの切れ味が低下しやすくなる。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基板の表面に供給された液状樹脂を全体で適切に硬化して基板の表面に樹脂を被覆する樹脂被覆方法、及び樹脂被覆装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、基板の一方の面に樹脂を被覆する樹脂被覆方法であって、紫外線が照射されることで硬化する液状樹脂を該基板の該一方の面に供給する液状樹脂供給ステップと、該基板の該一方の面に供給された該液状樹脂をカバーフィルムで覆い、該カバーフィルムを介して平坦な押圧面で該液状樹脂を押し広げる押圧ステップと、押し広げられた該液状樹脂に紫外線を照射する第1の紫外線照射ステップと、該第1の紫外線照射ステップの前又は後に、該基板の外周に沿って該液状樹脂に局所的に紫外線を照射する第2の紫外線照射ステップと、該基板の該外周に沿ってカッターで該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断する切断ステップと、を備えることを特徴とする樹脂被覆方法が提供される。
【0012】
好ましくは、該第2の紫外線照射ステップは、該第1の紫外線照射ステップの後、かつ、該切断ステップと同時に実施される。
【0013】
また、好ましくは、該第2の紫外線照射ステップでは、該基板の該外周よりも外側で該液状樹脂に紫外線を照射し、該切断ステップでは、該基板の該外周よりも外側で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断する。
【0014】
または、好ましくは、該第2の紫外線照射ステップでは、該基板の該一方の面上で該液状樹脂に紫外線を照射し、該切断ステップでは、該基板の該一方の面上で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断する。
【0015】
本発明の他の一態様によると、基板の一方の面に樹脂を被覆する樹脂被覆装置であって、該基板の他方の面を保持するチャックテーブルと、紫外線が照射されることで硬化可能な液状樹脂を吐出するノズルを備え、該チャックテーブルに保持された該基板の該一方の面に該ノズルから該液状樹脂を供給する液状樹脂供給ユニットと、平坦な押圧面を底面に有し、該液状樹脂供給ユニットで該基板の該一方の面に供給された該液状樹脂をカバーフィルムで覆いつつ該カバーフィルムを介して該押圧面で押圧して該液状樹脂を該基板の該一方の面に押し広げる押圧ユニットと、該押圧ユニットで押し広げられた該液状樹脂に紫外線を照射する第1の紫外線照射ユニットと、該基板の外周に沿って局所的に紫外線を照射する第2の紫外線照射ユニットと、カッターと、該基板の外周に沿って該カッター及び該基板を相対的に移動させる移動部と、を有し、該基板の外周に沿って該カッターで該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断する切断ユニットと、を備えることを特徴とする樹脂被覆装置が提供される。
【0016】
好ましくは、該切断ユニットの該移動部は、底面に該第2の紫外線照射ユニットと、該カッターと、が固定された支持部と、該支持部の該底面に垂直な回転軸の周りに該支持部を回転させる回転駆動源と、をさらに有し、該回転駆動源を作動させることで該第2の紫外線照射ユニット及び該カッターを該チャックテーブルで保持された該基板の外周に沿って移動できる。
【0017】
また、好ましくは、該第2の紫外線照射ユニットは、該基板の該外周よりも外側において該液状樹脂に紫外線を照射でき、該切断ユニットは、該基板の該外周よりも外側で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断できる。
【0018】
または、好ましくは、該第2の紫外線照射ユニットは、該基板の該一方の面上で該液状樹脂に紫外線を照射でき、該切断ユニットでは、該基板の該一方の面上で該カバーフィルム及び該液状樹脂を切断できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係る樹脂被覆方法または樹脂被覆装置では、紫外線が照射されることで硬化する液状樹脂を基板の一方の面に供給し、平坦な押圧面で液状樹脂を押し広げる。その後、押し広げられた液状樹脂に紫外線を照射し、基板の外周に沿って該液状樹脂に局所的に紫外線を照射する。そのため、デバイス形成領域とその外側で液状樹脂の厚みが異なる場合においても、該デバイス形成領域において液状樹脂を適度に硬化させつつ、その外側においてカッターの切れ味が落ちないように液状樹脂を硬化できる。
【0020】
したがって、本発明の一態様によると、基板の表面に供給された液状樹脂を全体で適切に硬化して基板の表面に樹脂を被覆できる樹脂被覆方法、及び樹脂被覆装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(A)は、基板を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、基板を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(A)は、保持ステップを模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、液状樹脂供給ステップを模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は、押圧ステップを模式的に示す断面図であり、
図3(B)は、第1の紫外線照射ステップを模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4(A)は、第2の紫外線照射ユニット及び切断ユニットを模式的に示す側面図であり、
図4(B)は、第2の紫外線照射ステップ及び切断ステップを模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5(A)は、変形例に係る第2の紫外線照射ユニット及び切断ユニットを模式的に示す側面図であり、
図5(B)は、変形例に係る第2の紫外線照射ステップ及び切断ステップを模式的に示す断面図である。
【
図6】樹脂被覆方法の各ステップの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係る樹脂被覆方法及び樹脂被覆装置では、表面に複数のデバイスが形成された半導体ウェーハ等の基板の表面が樹脂で被覆される。まず、表面が樹脂で被覆される基板について説明する。
図1(A)は、基板1を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、基板1を模式的に示す断面図である。
【0023】
基板1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料から形成されるウェーハである。または、基板1は、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる略円板状の基板等である。
【0024】
基板1の表面1aには、互いに交差する複数の分割予定ライン3が設定される。分割予定ライン3で区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス5が形成されている。ただし、
図1(A)以外の図面では、デバイス5を省略している。基板1を裏面1b側から研削して薄化し、分割予定ライン3に沿って基板1を分割すると、個々のデバイスチップを形成できる。
【0025】
基板1の表面1aには、金属で形成された複数のバンプ7と呼ばれる凸部が設けられる。バンプ7は、それぞれ、デバイス5に電気的に接続されており、基板1が分割されてデバイスチップが形成されたとき、デバイス5に電気信号を入出力する際の電極として機能する。バンプ7は、例えば、金、銀、銅、又はアルミニウム等の金属材料で形成される。ただし、基板1の表面1aには必ずしもバンプ7が設けられていなくても良い。
【0026】
基板1の表面1aの複数のデバイス5が形成される領域を囲む外周側の領域は、外周余剰領域11と呼ばれている。基板1の表面1aの外周余剰領域11には、デバイス5が形成されておらず、デバイス5の電極となるバンプ7も形成されない。基板1の表面1aの外周余剰領域11に囲まれた領域は、デバイス形成領域9と呼ばれる。基板1の表面1aのデバイス形成領域9は平坦ではなく、デバイス5を構成する各パターンやバンプ7に起因した凹凸を有する。その一方で、表面1aの外周余剰領域11は平坦である。
【0027】
なお、表面1aが樹脂で被覆される基板1はこれに限定されない。例えば、平面上に並べられた複数のデバイスが封止樹脂により封止されて形成されるパッケージ基板でもよい。パッケージ基板の裏面側の封止樹脂を研削することでパッケージ基板を薄化し、該パッケージ基板をデバイス毎に分割すると、封止樹脂で封止された所定の厚さの個々のデバイスチップを形成できる。パッケージ基板の表面には個々のデバイスの電極となるバンプが形成されるため、パッケージ基板の表面も平坦ではなく凹凸を備える。
【0028】
基板1を研削装置で裏面1b側から研削して薄化すると、基板1を分割したときに所定の厚さに薄化されたデバイスチップが得られる。基板1を裏面1b側から研削する際、表面1a側を保護するために予め保護部材が表面1a側に貼着される。従来、基板1の表面1aの凹凸が小さい場合、基材層と、糊層と、が積層されたテープ状の保護部材が基板1の表面1aに貼着されていた。基板1に貼着された保護部材の露出面は平坦であり、該露出面を下向きに向けて基板1を支持テーブルに載せると、基板1が適切に支持される。
【0029】
しかし、基板1の表面1a側の凹凸が大きくなると、保護部材の糊層で該凹凸を十分吸収できずに、基板1に貼着された保護部材が変形し、基材層側の露出面が平坦とはならなくなる。この場合、研削装置に基板1を搬入すると支持テーブルに基板1が適切に支持されなくなり、基板1を裏面1b側から研削したときに基板1の裏面1bが平坦とはならない。そこで、基板1の表面1a上に液状樹脂を供給し、該液状樹脂を硬化させて保護部材を形成することが考えられる。
【0030】
例えば、基板1の表面1aを樹脂フィルムで覆い、この樹脂フィルム上に液状樹脂を供給し、カバーフィルムを介して平坦な押圧面で上方から該液状樹脂を押圧し、その後、該液状樹脂を硬化させる。液状樹脂に紫外線硬化樹脂を採用すると、紫外線で該液状樹脂を硬化できる。
【0031】
ただし、紫外線を過剰に液状樹脂に照射してしまうと該液状樹脂の粘着力が低下し、形成される樹脂層が剥離しやすくなる。その一方で、紫外線の照射量が少なすぎると液状樹脂が十分に硬化しない。そのため、紫外線は適切な照射条件で液状樹脂に照射されることが望まれる。
【0032】
ここで、基板1の表面1aの外周余剰領域11では、デバイス形成領域9とは異なりバンプ7やデバイス5が形成されないため、その分だけ樹脂層の厚みが比較的大きくなる。そのため、デバイス形成領域9に配設された液状樹脂を適度に硬化させるように液状樹脂に紫外線を照射すると、外周余剰領域11で液状樹脂が十分に硬化しない。形成された樹脂層はデバイス形成領域9の外側において切断されるが、樹脂層が十分に硬化していなければ切断に使用されるカッターの切れ味が低下しやすくなる。
【0033】
そこで、本実施形態に係る樹脂被覆方法及び樹脂被覆装置では、液状樹脂が硬化されて形成される樹脂層がデバイス形成領域9と、カッターが切り込む領域と、のそれぞれにおいてそれぞれの目的に合った硬度となるように、紫外線を該液状樹脂に照射する。以下、本実施形態に係る樹脂被覆方法の各ステップを説明するとともに、該樹脂被覆方法が実施される樹脂被覆装置について説明する。
【0034】
図6は、本実施形態に係る樹脂被覆方法の各ステップの流れを説明するフローチャートである。該樹脂被覆方法では、まず、基板1の一方の面(表面1a)を上方に向けて該基板1をチャックテーブルの保持面上に載せ、基板1をチャックテーブルで吸引保持する保持ステップS10を実施する。
図2(A)は、保持ステップS10を模式的に示す断面図である。
【0035】
図2(A)に示すように、樹脂被覆装置2は、基板1を吸引保持するチャックテーブル4を備える。チャックテーブル4の上面は、基板1を吸引保持する保持面4aとなる。チャックテーブル4は、例えば、保持面4aに露出する多孔質部材(不図示)と、該多孔質部材に接続された吸引機構(不図示)と、を備える。該多孔質部材は、基板1の径に相当する径を有する。基板1を保持面4a上に載せて該吸引機構を作動させると、基板1に負圧が作用して該基板1がチャックテーブル4に吸引保持される。
【0036】
なお、保持ステップS10では、基板1をチャックテーブル4に載せる前に、樹脂シート13を保持面4aに載せてもよく、基板1が樹脂シート13を介してチャックテーブル4に載せられてもよい。樹脂シート13は、例えば、ポリオレフィン系シート、ポリエチレン系シート等であり、単層でも積層されていてもよい。樹脂シート13の上面には糊層が設けられてもよく、基板1の他方の面(裏面1b)に該樹脂シート13の糊層が貼着されてもよい。
【0037】
本実施形態に係る樹脂被覆方法では、次に、液状樹脂供給ステップS20を実施する。
図2(B)は、液状樹脂供給ステップS20を模式的に示す断面図である。
図2(B)に示す通り、樹脂被覆装置2は、紫外線が照射されることで硬化可能な液状樹脂15を吐出するノズル8を備え、チャックテーブル4に保持された基板1の一方の面(表面1a)にノズル8から液状樹脂15を供給する液状樹脂供給ユニット6を備える。液状樹脂供給ユニット6は、樹脂被覆装置2のチャックテーブル4に隣接する位置に設けられている。
【0038】
液状樹脂供給ユニット6は、先端にノズル8が設けられたパイプ状の送液路を備える。この送液路は、チャックテーブル4の外側で保持面4aに垂直な方向に沿って伸長し回転可能な軸部(不図示)と、該軸部の上端から保持面4aに平行な方向に伸長した腕部と、を含む。この軸部の基端側には図示しない液状樹脂供給源が接続されており、この腕部の先端にノズル8が設けられている。
【0039】
液状樹脂供給ユニット6の軸部を回転させると、ノズル8は、腕部を半径とする円弧状の軌道上に沿って移動する。ノズル8は、チャックテーブル4の上方と、チャックテーブル4の外側と、の間で移動できる。腕部の長さは、軸部を回転させることでノズル8をチャックテーブル4の中央上方に位置付けられる長さとされる。
【0040】
液状樹脂供給ステップS20では、チャックテーブル4の保持面4aの中央の上方に、すなわち、基板1の一方の面(表面1a)の中央の上方にノズル8を位置付ける。そして、紫外線が照射されることで硬化する液状樹脂15を基板1の一方の面(表面1a)に供給する。
図2(B)には、基板1に供給された液状樹脂15の断面図が模式的に示されている。
【0041】
ここで、液状樹脂15は、後述の通り上方から押圧されて押し広げられ紫外線が照射されて硬化したときに十分な厚さの樹脂層を形成できる量で基板1に供給される。そして、液状樹脂15が基板1の一方の面(表面1a)に供給された後には、液状樹脂供給ユニット6の軸部を再び回転させることでノズル8がチャックテーブル4とは重ならない位置に位置付けられる。
【0042】
本実施形態に係る樹脂被覆方法では、次に、押圧ステップS30を実施する。
図3(A)は、押圧ステップS30を模式的に示す断面図である。押圧ステップS30では、基板1の一方の面(表面1a)に供給された液状樹脂15をカバーフィルム17で覆い、該カバーフィルム17を介して平坦な押圧面10aで該液状樹脂15を押し広げる。
【0043】
ここで、樹脂被覆装置2が備える押圧ユニット12について説明する。押圧ユニット12は、チャックテーブル4の上方に配設されている。
図3(A)には、押圧ユニット12を模式的に示す断面図が含まれている。押圧ユニット12は、液状樹脂15を上方から押圧する押圧部10を備える。押圧部10は、図示しない昇降機構により昇降可能である。押圧部10は、下面(底面)に平坦な押圧面10aを有する。押圧面10aは、チャックテーブル4の保持面4aに対して平行となるように高い精度で向きが設定されている。
【0044】
押圧部10は、押圧面10aでカバーフィルム17を保持できる。押圧ユニット12は、押圧面10aでカバーフィルム17を保持した状態で押圧部10を下降させ、カバーフィルム17を介して押圧面10aで液状樹脂15を上方から押圧する。その後、後述の第1の紫外線照射ユニット14で液状樹脂15を硬化したときに硬化された液状樹脂15と、カバーフィルム17と、が一体化されて保護部材となる。すなわち、カバーフィルム17は保護部材を構成する部材である。
【0045】
ここで、押圧部10は、押圧面10aでカバーフィルム17を保持するための図示しない保持機構を備える。例えば、押圧面10aには吸引源に接続された複数の吸引孔が設けられ、吸引孔からカバーフィルム17を吸引することでカバーフィルム17を押圧面10aで保持する。または、押圧部10は押圧面10aの近傍に静電チャック機構を有してもよく、該静電チャック機構を作動させて静電気力により押圧面10aでカバーフィルム17を保持してもよい。
【0046】
または、押圧部10は保持機構を備えていなくてもよい。この場合、例えば、カバーフィルム17の上面に糊層が設けられてもよく、カバーフィルム17は糊層で押圧面10aに接着されてもよい。または、カバーフィルム17の上面または押圧面10aに接着剤を塗布し、接着剤でカバーフィルム17が押圧面10aに保持されてもよい。
【0047】
押圧ステップS30では、押圧面10aでカバーフィルム17を保持する押圧部10が下降され、カバーフィルム17を介して液状樹脂15が押圧面10aで押圧される。
図3(A)には、押圧面10aで液状樹脂15が押圧される際の基板1、樹脂シート13、液状樹脂15、及びカバーフィルム17の断面図が模式的に示されている。液状樹脂15が押圧面10aで押圧されると、液状樹脂15が基板1の外周に向けて押し広げられる。
【0048】
このように、押圧ユニット12は、液状樹脂供給ユニット6で供給された液状樹脂15の上をカバーフィルム17で覆いつつ該カバーフィルム17を介して押圧面10aで該液状樹脂15を押圧して該液状樹脂15を基板1上に押し広げる機能を有する。
【0049】
ここで、液状樹脂供給ステップS20では、液状樹脂15が必要な厚み以上の厚みで基板1の一方の面(表面1a)の全面に十分に押し広げられるように、やや過剰な量で基板1に供給されることが好ましい。そして、押圧ステップS30では、最終的に必要な厚さで保護部材が基板1に設けられるように、押圧部10が所定の高さにまで下降される。このとき、余剰の液状樹脂15は、基板の外周1cよりも外側に溢れる。
【0050】
基板1の下方に予め樹脂シート13が敷かれていた場合、溢れた余剰の液状樹脂15は、樹脂シート13で受け止められる。そのため、液状樹脂15がチャックテーブル4の保持面4aに接触して該保持面4aを汚すことはない。
【0051】
次に、押圧ステップS30で押し広げられた液状樹脂15に紫外線を照射する第1の紫外線照射ステップS40を実施する。
図3(B)は、第1の紫外線照射ステップS40を模式的に示す断面図である。まず、第1の紫外線照射ステップS40で液状樹脂15に紫外線を照射する樹脂被覆装置2の第1の紫外線照射ユニット14について説明する。
【0052】
第1の紫外線照射ユニット14は、紫外線LED、紫外線蛍光灯等の紫外線源を含み、押圧ユニット12の押圧部10に取り付けられている。例えば、押圧部10は紫外線を透過する硬質部材により構成されており、押圧部10の上面には複数の第1の紫外線照射ユニット14が設けられている。なお、説明の便宜のために
図3(A)及び
図3(B)では、押圧部10を示す領域に付されるべきハッチングを省略している。
【0053】
第1の紫外線照射ユニット14は、押圧ユニット12で押し広げられた液状樹脂15に押圧部10を通して紫外線を照射して該液状樹脂15を硬化させる。ここで、押圧ユニット12で押し広げられた液状樹脂15は、基板1のデバイス形成領域9と、外周余剰領域11と、で厚みが異なる。第1の紫外線照射ステップS40では、主にデバイス形成領域9に配設された液状樹脂15を硬化させるのに適した強度で紫外線を液状樹脂15に照射する。
【0054】
例えば、第1の紫外線照射ステップS40では、第1の紫外線照射ユニット14は、波長365nmの紫外線を80mW/cm2程度の照射強度(照度)で基板1の全面に対して10秒間程度照射する。ただし、紫外線の照射条件はこれに限定されず、液状樹脂15の種別や厚み等により適宜調整される。
【0055】
その後、第1の紫外線照射ユニット14を停止させ、押圧部10を上昇させ押圧ユニット12をチャックテーブル4の上方から待避させると、カバーフィルム17が硬化された液状樹脂15の上に残る。すなわち、硬化した液状樹脂15と、カバーフィルム17と、が一体化された保護部材が基板1の一方の面(表面1a)に形成される。ここで、チャックテーブル4の保持面4a及び押圧面10aが互いに平行であるため、基板1の裏面1b及び保護部材の上面が互いに平行となる。
【0056】
本実施形態に係る樹脂被覆方法では、第1の紫外線照射ステップS40の次に、第2の紫外線照射ステップS50を実施し、その後に切断ステップS60を実施する。
図4(A)は、第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60が実施される前の状態を模式的に示す断面図であり、
図4(B)は、第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60を模式的に示す断面図である。
【0057】
樹脂被覆装置2は、第2の紫外線照射ステップS50に使用される第2の紫外線照射ユニット28と、切断ステップS60に使用される切断ユニット20と、を備える。樹脂被覆装置2は、例えば、チャックテーブル4とは異なる保持テーブル16を備える。そして、硬化した液状樹脂15が配設された基板1は、チャックテーブル4から保持テーブル16の上面16aに移され、保持テーブル16の上で第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60が実施される。
【0058】
ここで、第2の紫外線照射ユニット28及び切断ユニット20について説明する。第2の紫外線照射ユニット28は、次に説明するように切断ユニット20に組み込まれて使用される。第2の紫外線照射ユニット28は、図示しない昇降機構により切断ユニット20とともに昇降可能である。
【0059】
切断ユニット20は、カッター26と、基板1の外周1cに沿って該カッター26及び基板1を相対的に回転移動させる移動部と、を有する。切断ユニット20の該移動部は、例えば、底面に第2の紫外線照射ユニット28と、カッター26と、が固定された支持部24と、該支持部24の底面に垂直な回転軸22の周りに該支持部24を回転させるモーター等の回転駆動源(不図示)と、を有する。なお、回転駆動源は、支持部24に代えて保持テーブル16を回転させてもよい。
【0060】
カッター26は、ステンレス鋼等の金属材料で形成された鋭利な刃物である。移動部の回転駆動源を作動させることでカッター26を基板1の外周1cに沿って移動できる。例えば、カッター26は、回転駆動源を作動させることで回転移動するカッター26の環状軌道の半径が基板1の半径よりも大きくなるように、所定の位置で支持部24に固定される。ここで、支持部24から下方に伸長するカッター26の長さは、例えば、硬化された液状樹脂15を含む基板1の厚みよりも長い。
【0061】
第2の紫外線照射ユニット28は、例えば、カッター26よりも外側で該支持部24に固定される。この場合、回転駆動源を作動させたときに第2の紫外線照射ユニット28は基板1の外周1cに沿ってカッター26よりも外側を回転移動する。なお、第2の紫外線照射ユニット28は、例えば、紫外線LEDである。第2の紫外線照射ステップS50では、基板1の外周1cに沿って液状樹脂15に局所的に紫外線を照射する。
【0062】
第1の紫外線照射ステップS40により液状樹脂15にはすでに紫外線が照射されているが、基板1の一方の面(表面1a)のデバイス形成領域9よりも外側では液状樹脂15が厚いため、該液状樹脂15は十分には硬化していない。このままデバイス形成領域9よりも外側で液状樹脂15をカッター26で切断しようとすると、カッター26に高い負荷がかかりカッター26が激しく消耗して、カッター26の切断能力がすぐに低下する。この場合、カッター26を早期に交換する必要がある。
【0063】
そこで、第2の紫外線照射ステップS50では、カッター26が切り込む部分において液状樹脂15が十分に硬化するように、第2の紫外線照射ユニット28で基板1の外周1cに沿って局所的に紫外線を照射する。第2の紫外線照射ステップS50では、該回転駆動源を作動させて回転軸22を回転させ、第2の紫外線照射ユニット28を回転移動させながら、該第2の紫外線照射ユニット28を作動させることで実施される。
【0064】
なお、第2の紫外線照射ステップS50で液状樹脂15に照射される紫外線の強度は、デバイス形成領域9よりも外側において液状樹脂15が十分に硬化するように決定される。より詳細には、第2の紫外線照射ステップS50における紫外線の強度は、第1の紫外線照射ステップS40で照射される紫外線と、第2の紫外線照射ステップS50で照射される紫外線と、により当該部分の液状樹脂15が適度に硬化するように決定されるとよい。
【0065】
例えば、第2の紫外線照射ステップS50では、第2の紫外線照射ユニット28により液状樹脂15に波長365nmの紫外線を80mW/cm2程度の照射強度(照度)で液状樹脂15に照射する。ここで、回転軸22を10度/秒程度の回転速度で回転させ、回転軸22を360度以上の角度で回転させる。より好ましくは、回転軸22を380度回転させる。ただし、紫外線の照射条件はこれに限定されず、液状樹脂15の種別や厚み等により適宜調整される。
【0066】
次に、切断ステップS60について説明する。切断ステップS60では、基板1の外周1cに沿ってカッター26でカバーフィルム17及び液状樹脂15を切断する。切断ステップS60では、まず、切断ユニット20を下降させてカッター26をカバーフィルム17及び液状樹脂15に切り込ませる。
【0067】
ここで、基板1の他方の面(裏面1b)側に樹脂シート13を敷いていた場合、切断ステップS60では樹脂シート13もカッター26で切断する。このとき樹脂シート13に切り込むカッター26の先端(下端)が保持テーブル16の上面16aに接触しないように、保持テーブル16の上面16aには基板1の径と同等の径の環状の逃げ溝18が設けられているとよい。この場合、樹脂シート13に切り込んだカッター26が逃げ溝18に進み、保持テーブル16に接触しない。
【0068】
なお、液状樹脂供給ステップS20、押圧ステップS30、第1の紫外線照射ステップS40が実施されたチャックテーブル4において、保持テーブル16の逃げ溝18に相当する逃げ溝が保持面4aに設けられてもよい。この場合、第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60がチャックテーブル4上で実施されてもよく、樹脂被覆装置2は保持テーブル16を備えていなくてもよい。
【0069】
切断ステップS60では、カッター26を下降させてカバーフィルム17及び液状樹脂15をカッター26で切り込んだ後、回転軸22の上端に接続された回転駆動源を作動させてカッター26を基板1の外周1cに沿って回転移動させる。すると、カッター26が基板1の外周1cよりも外側で該外周1cに沿ってカバーフィルム17及び液状樹脂15を切断し、液状樹脂15の不要部分が切り離される。そして、表面1aが保護部材となる樹脂(硬化した液状樹脂15)で被覆された基板1が得られる。
【0070】
本実施形態に係る樹脂被覆方法では、第2の紫外線照射ステップS50が実施されるため、切断ステップS60においてカッター26が切り込む部分で液状樹脂15が予め十分に硬化される。すなわち、基板1の一方の面(表面1a)に供給された液状樹脂15の全体が適切に硬化されて基板1の表面1aに樹脂が被覆される。そのため、液状樹脂15に切り込むカッター26に過度な負荷がかかることはなく、カッター26の切断能力は維持されやすくなる。
【0071】
なお、第2の紫外線照射ステップS50は、第1の紫外線照射ステップS40の後、かつ、切断ステップS60と同時に実施されてもよい。
図4(B)は、切断ステップS60が第2の紫外線照射ステップS50と同時に実施される場合を模式的に示す断面図である。
【0072】
この場合、第2の紫外線照射ユニット28を作動させて紫外線を液状樹脂15に照射しつつ切断ユニット20を下降させてカッター26を該液状樹脂15に切り込ませる。そして、第2の紫外線照射ユニット28を作動させたまま回転軸22の上端に接続された回転駆動源を作動させてカッター26を基板1の外周1cに沿って回転移動させ、液状樹脂15を切断する。
【0073】
液状樹脂15の材料となる紫外線硬化樹脂の種別や性質次第では、紫外線の照射を受けて瞬時に液状樹脂15が硬化する。そのため、第2の紫外線照射ユニット28による液状樹脂15への紫外線の照射と、カッター26による該液状樹脂15への切り込みと、がほぼ同時となる場合においても、適度に硬化した状態の液状樹脂15がカッター26で切断される。そのため、カッター26にかかる負荷を低減できる。第2の紫外線照射ステップS50と、切断ステップS60と、を同時に実施できると、回転軸22を回転させる回転駆動源の作動が一度で済むため、作業効率がよい。
【0074】
ここまで、第2の紫外線照射ステップS50では基板1の外周1cよりも外側で液状樹脂15に紫外線を照射し、切断ステップS60では基板1の外周1cよりも外側でカバーフィルム17及び液状樹脂15を切断する場合について説明した。しかしながら、第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60はこれに限定されない。
【0075】
例えば、第2の紫外線照射ステップS50では、基板1の一方の面(表面1a)上で液状樹脂15に紫外線を照射し、切断ステップS60では、基板1の一方の面(表面1a)上でカバーフィルム17及び液状樹脂15を切断してもよい。次に、変形例に係る第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60について説明するとともに、変形例に係る切断ユニット20a及び第2の紫外線照射ユニット28aについて説明する。
【0076】
図5(A)は、変形例に係る切断ユニット20a及び第2の紫外線照射ユニット28aを模式的に示す側面図であり、
図5(B)は、変形例に係る第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60を模式的に示す断面図である。以下の説明では、上記のそれぞれの形態からの変更点について主に説明する。そのため、その他の点については上記の説明を適宜参照できる。
【0077】
変形例に係る切断ユニット20aにおいては、カッター26aは、回転駆動源を作動させることで回転移動するカッター26aの環状軌道の半径が基板1の半径よりも小さくなるように、所定の位置で支持部24に固定される。より詳細には、回転移動するカッター26aの環状軌道の半径が基板1の半径よりも小さく、かつ、基板1の表面1aのデバイス形成領域9の半径よりも大きくなるようにカッター26aが支持部24に固定される。
【0078】
また、変形例に係る切断ユニット20aでは、支持部24から下方に伸長するカッター26aは、外周余剰領域11における硬化された液状樹脂15の厚みと、カバーフィルム17の厚みと、の和を超える長さとされる。カッター26を基板1の一方の面(表面1a)の外周余剰領域11に向けて下降して液状樹脂15に切り込ませ、回転軸22を回転させると、基板1の一方の面(表面1a)上でカバーフィルム17及び液状樹脂15を切断できる。
【0079】
そして、変形例に係る第2の紫外線照射ユニット28aは、基板1の一方の面(表面1a)上で外周余剰領域11において液状樹脂15に紫外線を照射できるように、支持部24に固定される。
【0080】
変形例に係る第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60を同時に実施する場合、まず、第2の紫外線照射ユニット28aを作動させて紫外線を外周余剰領域11の一つの領域に照射しつつ、切断ユニット20aを下降させる。そして、紫外線が照射され液状樹脂15が硬化された該領域にカッター26aを切り込ませる。このとき、カッター26aの下端を基板1の表面1aまたはその近傍に到達させる。
【0081】
その後、第2の紫外線照射ユニット28aの作動を継続しながら回転軸22に接続された回転駆動源を作動させてカッター26aを環状軌道上で回転移動させる。すると、基板1の一方の面上において液状樹脂15が基板1の外周1cに沿って切断され、液状樹脂15の余剰部分が切除される。結果として、硬化した液状樹脂15及びカバーフィルム17により構成される保護部材により基板1の表面1aが被覆される。
【0082】
ここで、変形例に係る切断ステップS60では、カッター26aは基板1の裏面1bよりも下方に進むことはない。そのため、保持テーブル16は、
図4(A)及び
図4(B)で説明された逃げ溝18を有していなくてもよい。また、第2の紫外線照射ステップS50及び切断ステップS60を実施する際に、第1の紫外線照射ステップS40等が実施されるときに基板1が保持されていたチャックテーブル4から基板1を移動させる必要がない。
【0083】
すなわち、樹脂被覆装置2は、チャックテーブル4とは別に保持テーブル16を備える必要はなく、チャックテーブル4から保持テーブル16に基板1を移動させるための搬送ユニット等を備える必要もない。この場合、樹脂被覆装置2の構成を極めて簡略化でき、樹脂被覆装置2の製造コストや運用コスト、メンテナンスコスト等を低減できる。
【0084】
しかも、変形例に係る切断ステップS60では基板1の表面1aの外周余剰領域11でカッター26aが硬化した液状樹脂15に切り込むため、液状樹脂供給ステップS20では基板1の表面1aを完全に覆う量で液状樹脂15を基板1に供給する必要がない。例えば、押圧ステップS30で押圧ユニット12により液状樹脂15を上方から押圧したときに基板1の外周1cの外側に液状樹脂15が溢れない量で液状樹脂供給ステップS20において液状樹脂15を基板1に供給してもよい。
【0085】
押圧ステップS30において基板1の外周1cよりも外側に液状樹脂15が溢れ出ない場合、溢れ出る液状樹脂15を受け止めるために使用される樹脂シート13を基板1の裏面1b側に予め敷く必要もない。樹脂シート13を使用しない場合、硬化した液状樹脂15及びカバーフィルム17で構成される保護部材で基板1の表面1aを被覆した後、基板1を裏面1b側から加工する際に、樹脂シート13を剥離させる手間もかからない。
【0086】
以上に説明する通り、本実施形態に係る樹脂被覆方法及び樹脂被覆装置2によると、基板1の表面1aに供給された液状樹脂15を全体で適切に硬化して基板1の表面1aに樹脂を被覆できる。そのため、他の部分における液状樹脂15の硬さ等を考慮することなくデバイス形成領域9における液状樹脂15が適度に硬化される条件により第1の紫外線照射ステップS40で紫外線を液状樹脂15に照射できる。すなわち、デバイス形成領域9における液状樹脂15の表面1aへの貼着強度を高度に制御できる。
【0087】
従来、基板1の表面1aに予め樹脂フィルムを密着させ、その上に液状樹脂を供給して硬化させることで該表面1aと、樹脂フィルム(液状樹脂)と、の適度な貼着強度を確保していた。これに対して、本実施形態に係る樹脂被覆方法等では、基板1の表面1aへの液状樹脂15の貼着強度を制御できるため、従来、基板1の表面1aに密着させていた樹脂フィルムの密着工程や、該密着工程を実現する構成、該樹脂フィルムそのものを省略できる。
【0088】
なお、上記実施形態では、第1の紫外線照射ステップS40の後に第2の紫外線照射ステップS50を実施する場合について説明した。すなわち、第1の紫外線照射ユニット14により液状樹脂15に紫外線を照射した後、第2の紫外線照射ユニット28,28aにより液状樹脂15に紫外線を照射する場合について説明した。しかしながら、本発明の一態様に係る樹脂被覆方法及び樹脂被覆装置2はこれに限定されない。
【0089】
すなわち、本発明の一態様に係る樹脂被覆方法及び樹脂被覆装置2では、第2の紫外線照射ステップS50を実施した後に第1の紫外線照射ステップS40を実施してもよい。換言すると、第2の紫外線照射ユニット28,28aにより液状樹脂15に紫外線を照射した後、第1の紫外線照射ユニット14により液状樹脂15に紫外線を照射してもよい。
【0090】
この場合においても、凹凸形状を有するデバイス形成領域9と、液状樹脂15が厚くなる外周余剰領域11と、のそれぞれにおいて液状樹脂15を適度に硬化させるだけの強度で紫外線を照射できる。そのため、基板1の表面1aの全域を適度に硬化した液状樹脂15で被覆できる。
【0091】
その他、上記実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0092】
1 基板
1a 表面
1b 裏面
1c 外周
3 分割予定ライン
5 デバイス
7 バンプ
9 デバイス形成領域
11 外周余剰領域
13 樹脂シート
15 液状樹脂
17 カバーフィルム
2 樹脂被覆装置
4 チャックテーブル
4a 保持面
6 液状樹脂供給ユニット
8 ノズル
10 押圧部
10a 押圧面
12 押圧ユニット
14 第1の紫外線照射ユニット
16 保持テーブル
16a 上面
18 逃げ溝
20,20a 切断ユニット
22 回転軸
24 支持部
26,26a カッター
28,28a 第2の紫外線照射ユニット