IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

特許7599796ロボットハンド用パッド、及びロボットハンド
<>
  • 特許-ロボットハンド用パッド、及びロボットハンド 図1
  • 特許-ロボットハンド用パッド、及びロボットハンド 図2
  • 特許-ロボットハンド用パッド、及びロボットハンド 図3
  • 特許-ロボットハンド用パッド、及びロボットハンド 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ロボットハンド用パッド、及びロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20241209BHJP
【FI】
B25J15/08 S
B25J15/08 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021070111
(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公開番号】P2022164979
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小浦 尚樹
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240855(JP,A)
【文献】特開2018-111172(JP,A)
【文献】特開2007-301168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を把持するロボットハンドの指部に配設されるロボットハンド用パッドであって、
互いに交差する溝で区画された複数の柱状ブロックを表面に有し、
各柱状ブロックは、合成樹脂により形成されており、上面が平坦であり、中空構造であることを特徴とするロボットハンド用パッド。
【請求項2】
該表面から裏面に貫通する貫通孔が設けられており、
該貫通孔に通された固定部材により該ロボットハンドの該指部に固定されることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド用パッド。
【請求項3】
該柱状ブロックの該上面は長方形状であり、
該溝の深さは、該柱状ブロックの該上面の各辺の長さよりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロボットハンド用パッド。
【請求項4】
該合成樹脂は、ポリウレタン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、又はフッ素ゴムであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のロボットハンド用パッド。
【請求項5】
該中空構造である該柱状ブロックの充填率は、50%以上80%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のロボットハンド用パッド。
【請求項6】
該柱状ブロックの根本は、ラウンド形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のロボットハンド用パッド。
【請求項7】
物品を把持するロボットハンドであって、
該物品に接触して該物品を挟み込んで把持する複数の該指部と、各該指部を互いに相対的に接近及び離間させる方向に移動できる指部移動機構と、を備え、
該指部には、請求項1乃至請求項のいずれかに記載のロボットハンド用パッドが配設されていることを特徴とするロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送、組み立て等に用いられる多関節ロボットの該物品を把持するロボットハンドに配設されるロボットハンド用パッド、及びロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の産業界では、様々な製品の製造工程において自動化が進められており、作業者の代わりに産業用ロボットが物品の搬送、組み立て、検査等の作業を行うことが一般的になっている。例えば、産業用ロボットの一つとして、人間の腕と似た動きが可能な多関節ロボットが広く用いられている。
【0003】
多関節ロボットは、先端部を3次元の直交座標系の軸(X軸、Y軸、Z軸)に沿って移動させるとともに、先端部をX軸の周りのU軸、Y軸の周りのV軸、Z軸の周りのW軸に沿って回転させることが可能であり、種々の複雑な動きを実現できる。そのため、多関節ロボットは汎用性が高く、あらゆる分野において頻繁に活用されている。
【0004】
物品を移動させたり姿勢を変化させたりする多関節ロボットは、物品を把持するロボットハンド(グリッパ)を先端部に備えている。ロボットハンドは、例えば、複数の指部(フィンガー)により構成されており、物品の周りに各指部を配置し、各指部を互いに近づけるように移動させることでこの物品を把持できる(例えば、特許文献1乃至4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-115914号公報
【文献】特開2011-131341号公報
【文献】特開2005-153114号公報
【文献】特開2020-78857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面が粗い曲面であり、かつ、重量物である鋳物等の物品をロボットハンドの平板状の指部で把持しようとすると、指部と物品とが点接触となる。この場合、物品を持ち上げたとき、接触点を中心としてこの物品の重心が低くなるように物品が回転して、この物品の姿勢が崩れることがある。
【0007】
そこで、ロボットハンドの把持機構を改善して物品に作用させる把持力を上げることも考えられる。しかしながら、高い把持力を有するロボットハンドは電力の消費が大きくなる。また、高出力なロボットハンドは重量が大きいため、多関節ロボットの各部や該多関節ロボットを移動させる移動機構にかかる負荷が大きくなり、搬送可能な物品の重量の制限が大きくなる。
【0008】
また、ロボットハンドの指部の数を増やすことや、物品の形状に追従して指部の先端の向きが変わる機構をロボットハンドに設けることも考えられるが、ロボットハンドの構成が複雑化する。これは、ロボットハンドの製造コスト、運用コスト、及びメンテナンスコストの増大に直結し、多関節ロボットの故障率が増大して稼働率の低下に繋がる。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、多関節ロボットの構造を複雑化させることなく曲面や粗い面を有する物品を把持できるロボットハンド、及び物品をロボットハンドで把持できるようにするロボットハンド用パッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、物品を把持するロボットハンドの指部に配設されるロボットハンド用パッドであって、互いに交差する溝で区画された複数の柱状ブロックを表面に有し、各柱状ブロックは、合成樹脂により形成されており、上面が平坦であり、中空構造であることを特徴とするロボットハンド用パッドが提供される。
【0011】
なお、好ましくは、該表面から裏面に貫通する貫通孔が設けられており、該貫通孔に通された固定部材により該ロボットハンドの該指部に固定される。
【0012】
より好ましくは、該柱状ブロックの該上面は長方形状であり、該溝の深さは、該柱状ブロックの該上面の各辺の長さよりも大きい。
【0013】
さらに好ましくは、該合成樹脂は、ポリウレタン、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、又はフッ素ゴムである。また、好ましくは、該中空構造である該柱状ブロックの充填率は、50%以上80%以下である。さらに好ましくは、該柱状ブロックの根本は、ラウンド形状である。
【0014】
また、本発明の他の一態様によれば、物品を把持するロボットハンドであって、該物品に接触して該物品を挟み込んで把持する複数の該指部と、各該指部を互いに相対的に接近及び離間させる方向に移動できる指部移動機構と、を備え、該指部には、上述のロボットハンド用パッドが配設されていることを特徴とするロボットハンドが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係るロボットハンド用パッドは、格子状の溝で区画された複数の柱状ブロックを表面に有し、各柱状ブロックは、合成樹脂により形成されており上面が平坦である。そのため、このパッドが配設された指部を有するロボットハンドで物品を把持するとき、各柱状ブロックが該物品の形状に追従して変形するとともに、各柱状ブロックの上面が該物品の表面の形状に追従して変形する。したがって、指部が広い面積で該物品の表面に接して該物品を保持できるため、持ち上げられた該物品の姿勢が十分に維持される。
【0016】
したがって、本発明の一態様により、多関節ロボットの構造を複雑化させることなく曲面や粗い面を有する物品を把持できるロボットハンド、及び物品をロボットハンドで把持できるようにするロボットハンド用パッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】多関節ロボットを模式的に示す側面図である。
図2】ロボットハンドの先端部を模式的に示す斜視図である。
図3】ロボットハンド用パッドを模式的に示す斜視図である。
図4図4(A)は、実施形態に係るロボットハンド用パッドが物品に接触する様子を模式的に示す断面図であり、図4(B)は、溝のないパッドが物品に接触する様子を模式的に示す断面図であり、図4(C)は、上端が平坦ではないパッドが物品に接触する様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るロボットハンド用パッドが使用されるロボットハンドについて説明する。ロボットハンドは、例えば、物品の搬送、組み立て等に用いられる多関節ロボットの先端に取り付けられる部品である。図1は、多関節ロボット(ロボットアーム)2を示す側面図である。
【0019】
多関節ロボット2は、円錐台状の基台4を備える。基台4は移動機構に支持されてもよく、該移動機構で基台4を移動させることで多関節ロボット2を水平方向に移動できてもよい。基台4には円筒状の回転部材(回転軸)6が収容されており、回転部材6の上端側は基台4から露出している。また、基台4には、回転部材6の下端側に接続されたモータ等の回転駆動源(不図示)が収容されている。回転部材6は、回転駆動源によって鉛直方向(上下方向)と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0020】
回転部材6の上端側には回転機構(関節機構)8が接続され、回転機構8には柱状のアーム部材(下腕部)10の一端側が接続されている。回転機構8は、モータ等の回転駆動源を備えており、アーム部材10を水平方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させる。そのため、アーム部材10は回転機構8を支点として前後に進退できる。
【0021】
アーム部材10の他端側には回転機構(関節機構)12が接続され、回転機構12には柱状のアーム部材(上腕部)14の一端側が接続されている。回転機構12は、モータ等の回転駆動源を備えており、アーム部材14を水平方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるとともに、アーム部材14の長さ方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させる。回転機構12によって、アーム部材14は回転機構12を中心として回転するとともに自転する。
【0022】
アーム部材14の他端側には回転機構(関節機構)16が接続され、回転機構16には柱状のアーム部材(手首部)18の一端側が接続されている。回転機構16は、モータ等の回転駆動源を備えており、アーム部材18を水平方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させるとともに、アーム部材18の長さ方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させる。回転機構16によって、アーム部材18は回転機構16を中心として回転するとともに自転する。
【0023】
アーム部材18の他端側には、接続部材20が固定されている。そして、接続部材20にロボットハンド(グリッパ)22が装着される。ロボットハンド22は、複数の指部(フィンガー)28a,28bと、各指部28a,28bを互いに近づけるように移動させる指部移動機構24と、を備える。
【0024】
例えば、各指部28a,28bの基端側には、一部が指部移動機構24に収容されたロッド26a,26bの一端が接続されている。指部移動機構24の内部にはエアシリンダ(不図示)が組み込まれており、各ロッド26a,26bの他端が該エアシリンダのピストン(不図示)に接続されている。そして、指部移動機構24を作動させ、このピストンをエアシリンダの内部で移動させてロッド26a,26bを移動させることにより、各指部28a,28bを互いに接近及び離間するように移動できる。
【0025】
各指部28a,28bの先端の間に搬送対象となる物品を配置し、指部移動機構24を作動させて各指部28a,28bを互いに近づくように移動させる。すると、各指部28a,28bの先端がこの物品に接触し、この物品が指部28a,28bで挟持される。ただし、ロボットハンド22の指部移動機構24の仕組みはこれに限定されず、他の方式により指部28a,28bを移動させてもよい。
【0026】
多関節ロボット2は、多関節ロボット2の動作を制御する制御部(不図示)に無線又は有線で接続されている。例えば制御部は、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータを備えており、多関節ロボット2の各構成要素(基台4に収容された回転駆動源、回転機構8,12,16、ロボットハンド22等)の動作を制御するための制御信号を生成する。これにより、各構成要素が制御され、多関節ロボット2がロボットハンド22で物品を把持し、物品を移動させる。
【0027】
本実施形態に係るロボットハンド用パッド30a,30bは、ロボットハンド22の指部28a,28bの先端に固定されて使用される。そして、指部28a,28bは、このロボットハンド用パッド30a,30bを介して物品に接触し、該物品に把持力を作用させる。従来、指部28a,28bに本実施形態に係るロボットハンド用パッド30a,30bが配置されない場合、搬送対象の物品の形状や表面の凹凸の状態、硬さ次第では、該物品をロボットハンド22で適切に保持できないことがあった。
【0028】
例えば、曲面の多い形状であり、硬く、表面が粗い鋳物等の物品を平板状の指部28a,28bで挟んで把持したとき、指部28a,28bと該物品の接触面積が極めて小さくなることがある。この状態で物品が持ち上げられたとき、物品の重心がより低くなるように接触点を中心に物品が回転してしまい、物品の姿勢が変化してしまう。特に、物品の重量が大きくなるほど物品を回転させる力が大きくなるため、姿勢を維持しながら重量物をロボットハンド22で把持し続けるのは容易なことではない。
【0029】
そこで、指部28a,28bと、物品と、の接触面積を増やすために、指部28a,28b自体を柔らかく変形しやすい材料に変更することが考えられる。この場合、指部28a,28bで物品を把持する際に、指部28a,28bの接触面が物品の形状や粗い表面に追従して変形し、該接触面積が増大する。しかしながら、指部28a,28b自体が柔らかい場合、物品から受ける反作用の力により指部28a,28bが変形してしまう。そのため、物品に大きな把持力を作用できないため、物品がずれて落ちやすくなる。
【0030】
そこで、本実施形態に係るロボットハンド用パッド30a,30bが指部28a,28bの先端に取り付けられるとよい。図2は、本実施形態に係るロボットハンド用パッド30a,30bが取り付けられた指部28a,28bの先端を模式的に示す斜視図である。また、図3は、ロボットハンド用パッド30,30a,30bを模式的に示す斜視図である。以下、本実施形態に係るロボットハンド用パッド30,30a,30bについて説明する。
【0031】
本実施形態に係るロボットハンド用パッド30は、格子状の溝38で区画された複数の柱状ブロック34を表面32aに有する。そして、各柱状ブロック34は、合成樹脂により形成されており、上面36が平坦である。なお、ロボットハンド用パッド30は、各柱状ブロック34を支持する平板状の基台(不図示)を有してもよい。または、全体が該合成樹脂で形成されていてもよい。
【0032】
ロボットハンド用パッド30には、表面32aから裏面32bに貫通する貫通孔40が設けられていてもよく、この場合、貫通孔40に通されたボルト又はねじ等の固定部材42によりロボットハンド22の指部28a,28bに固定される。
【0033】
ロボットハンド用パッド30は、例えば、合成樹脂材料をインクとした3Dプリンターにより製造できる。なお、3Dプリンターでロボットハンド用パッド30を形成する際、柱状ブロック34の全域を埋めるようにインク材料を使用する必要はなく、柱状ブロック34は中空構造でもよい。詳細は後述するが、柱状ブロック34が中空構造であると柱状ブロック34が変形しやすくなるため、ロボットハンド22の物品の把持力が増大する場合がある。
【0034】
樹脂材料は、柱状ブロック34の外面を構成するように設けられればよく、例えば、柱状ブロック34が占める領域のうち樹脂材料が占める領域の割合(充填率)が50%程度であることが好ましい。柱状ブロック34の充填率が50%よりも大幅に小さいと、柱状ブロック34の形状が十分に維持されなくなり、ロボットハンド22が物品に十分な把持力を作用できなくなる。その一方で、充填率が上がりすぎると、柱状ブロック34が剛性を増して、物品の形状に追従するように柱状ブロック34が変形しにくくなる。例えば、柱状ブロック34の充填率は、50%以上80%以下であることが好ましい。
【0035】
ただし、ロボットハンド用パッド30a,30bの製造方法はこれに限定されない。例えば、合成樹脂材料で形成されたプレートを準備し、鋸刃を有する工具を使用してプレートの表面に格子状の溝38を形成することでロボットハンド用パッド30を製造してもよい。
【0036】
ここで、ロボットハンド用パッド30を介してロボットハンド22の指部28a,28bが物品を把持する際の柱状ブロック34及び溝38の機能について説明する。図4(A)は、多関節ロボット2による搬送の対象となる物品1に接触するロボットハンド用パッド30,30a,30bの表面を拡大して模式的に示す断面図である。ただし、図4(A)では、説明の便宜のため、柱状ブロック34の形状や変形を強調している。
【0037】
図4(A)に示す通り、物品1に接触するとき、各柱状ブロック34はこの物品1の形状に追従するように変形する。より詳細には、指部28a,28bにより挟持される物品1が該物品1に接触する柱状ブロック34に反発力を作用させることで柱状ブロック34が湾曲する。その結果、物品1の表面1aの接触領域の外周縁においても、柱状ブロック34の上面36が広い面積で物品1に接触するようになる。
【0038】
この柱状ブロック34の変形は、ロボットハンド用パッド30の表面32aに格子状の溝38が設けられることにより実現される。すなわち、各柱状ブロック34の間に溝38が形成されていると、この溝38の空間が柱状ブロック34の変形余地及び変位余地となる。そのため、溝38が形成されていない場合と比較してロボットハンド用パッド30の表面32aが物品1の表面1aに追従するように変形しやすくなる。
【0039】
図4(B)は、溝38が形成されていないパッド44を物品1の表面1aに接触させた様子を模式的に示す断面図である。図4(B)に示す通り、溝38が形成されていないパッド44の表面44aは分断されることなく広い面積で連続している。そのため、物品1との接触点でパッド44が物品1から反発力を受けたとき、この接触点だけでなくその外側でも表面44aが変形して、該外側において物品1の表面1aと、パッド44の表面44aと、が離れる。すなわち、両者の接触面積が増大しにくい。
【0040】
また、図4(C)に示す通り、上面が平坦でない複数の四角錐状のブロック48が表面に並ぶパッド46を介して物品1を把持することも考えられる。この場合に、各ブロック48間に溝状の空間50が配設されるが、パッド46を介して物品1が把持されるとき、ブロック48が変形してもパッド46と物品1との接触面積は大きくは増大しない。
【0041】
図4(B)に示すパッド44や図4(C)に示すパッド46とは異なり、図3(A)に示す本実施形態に係るロボットハンド用パッド30では、複数の柱状ブロック34及び格子状の溝38が設けられており、柱状ブロック34の上面36が平坦である。そのため、ロボットハンド用パッド30を介して物品1が把持される際、柱状ブロック34が変形し、柱状ブロック34の上面36が広い面積で物品1に接触する。
【0042】
また、ロボットハンド用パッド30は、濡れて水が表面1aに付着した物品1をロボットハンド22で把持する場合にも好適に使用される。ロボットハンド用パッド30の表面32aに設けられた溝38は、物品1の表面1aに付着していた水の逃げ先となる。そのため、ロボットハンド用パッド30を介して物品1が把持されるとき、両者の間に水の層が形成されず、物品1がロボットハンド用パッド30に対して滑りにくくなる。
【0043】
したがって、本実施形態に係るロボットハンド用パッド30を指部28a,28bに配設すると、ロボットハンド22であらゆる物品1を把持しやすくなる。また、把持された物品1の姿勢の変化も生じにくくなる。
【0044】
特に、図3等に示す通り、柱状ブロック34の上面36が長方形状または正方形状であり、溝38の深さが柱状ブロック34の上面36の各辺の長さよりも大きい場合、柱状ブロック34がより変形しやすくなる。そのため、把持される物品1の姿勢の変動は極めて生じにくくなる。
【0045】
例えば、格子状の溝38の深さは、一つの柱状ブロック34の上面36の一方の辺の1倍より大きく、3倍よりも小さいことが好ましい。さらに、上面36の一方の辺よりも1.5倍以上2倍以下であることがより好ましい。例えば、一つの柱状ブロック34の上面36が4mm角の正方形である場合、溝38の深さは7mm程度であり幅が1mm程度とされることが好ましい。溝38の深さ及び幅がこのように決定されると、柱状ブロック34が十分に柔軟性をもつとともに物品1に十分な把持力を作用できる。
【0046】
なお、柱状ブロック34の根元は、応力が集中しやすくなる角型であるよりも図3に示すようなラウンド形状であることが好ましい。本実施形態に係るロボットハンド用パッド30は、柱状ブロック34の日常的な変形が想定される。そのため、柱状ブロック34の耐久性を上げるために柱状ブロック34の根元がラウンド形状であり根元にかけて柱状ブロック34が太くなることが好ましい。この場合、溝38の底部がラウンド形状となる。
【0047】
また、本実施形態に係るロボットハンド用パッド30に使用される合成樹脂は、例えば、ポリウレタン、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、フッ素ゴム等の材料であることが好ましい。ロボットハンド用パッド30に使用される合成樹脂がこれらの材料であると、柱状ブロック34が弾性変形しやすく物品1に十分な把持力を作用できる。
【0048】
以上の通り、本実施形態に係るロボットハンド用パッド30を多関節ロボット2のロボットハンド22の指部28a,28bに配設すると、表面が粗く、表面が曲面で構成され、重量の大きな物品1でもロボットハンド22で十分に把持できる。そして、多関節ロボット2で搬送される間、物品1が回転しにくく姿勢が維持されやすくなる。
【0049】
なお、上記の実施形態では、2つの指部28a,28bを備えるロボットハンド22でロボットハンド用パッド30が使用される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、ロボットハンド22は、3以上の指部を備えてもよく、そのそれぞれにロボットハンド用パッド30が配設されてもよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、多関節ロボット2のロボットハンド22が備える全ての指部28a,28bにロボットハンド用パッド30が配設される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。ロボットハンド22の複数の指部28a,28bの一部にだけロボットハンド用パッド30が配設されてもよい。
【0051】
さらに、上記の実施形態では、産業用の多関節ロボット2のロボットハンド22にロボットハンド用パッド30が使用される場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、本発明の一態様に係るロボットハンド用パッド30は、他のロボットハンドに使用されてもよく、ロボットハンド以外の道具等に配設されて使用されてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、ロボットハンド用パッド30が格子状の溝38で区画され、複数の柱状ブロック34の上面36が長方形または正方形である場合について説明した。すなわち、柱状ブロック34が直方体状である場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0053】
例えば、柱状ブロック34の上面36の形状は菱形や台形、平行四辺形等の四角形でもよく、柱状ブロック34は直方体以外の四角柱状でもよい。また、柱状ブロック34の上面36は六角形、八角形等の多角形状でもよく、柱状ブロック34は六角柱や八角柱等の多角柱状でもよい。
【0054】
さらに、ロボットハンド用パッド30が備える複数の柱状ブロック34は、すべて同一の大きさ及び形状でなくてもよい。ロボットハンド用パッド30は、互いに上面36の大きさや形状の異なる複数の種類の柱状ブロック34を備えてもよい。また、溝38は、ロボットハンド用パッド30の一端から他端に掛けて連続していなくてもよい。
【0055】
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
1 物品
1a 表面
2 多関節ロボット(ロボットアーム)
4 基台
6 回転部材(回転軸)
8 回転機構(関節機構)
10 アーム部材(下腕部)
12 回転機構(関節機構)
14 アーム部材(上腕部)
16 回転機構(関節機構)
18 アーム部材(手首部)
20 接続部材
22 ロボットハンド
24 指部移動機構
26a,26b ロッド
28a,28b 指部
30,30a,30b ロボットハンド用パッド
32a 表面
32b 裏面
34 柱状ブロック
36 上面
38 溝
40 貫通孔
42 固定部材
44 パッド
44a 表面
46 パッド
48 ブロック
50 空間
図1
図2
図3
図4