(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】レーダ信号の処理
(51)【国際特許分類】
G01S 13/34 20060101AFI20241209BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20241209BHJP
G06F 1/08 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
G01S13/34
G01S13/931
G06F1/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020020597
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10 2019 103 514.7
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビヒル, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】アナスタソフ, リュドミル
(72)【発明者】
【氏名】イニアース, ロマン
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-197322(JP,A)
【文献】特開2013-079890(JP,A)
【文献】特開平05-094227(JP,A)
【文献】特開平11-143573(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0959348(KR,B1)
【文献】国際公開第2018/081481(WO,A1)
【文献】特開平08-166889(JP,A)
【文献】特開2006-284369(JP,A)
【文献】特開2017-219328(JP,A)
【文献】特開2007-034839(JP,A)
【文献】特開2014-211376(JP,A)
【文献】特開2011-232055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95,
G06F 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ信号を処理する方法であって、
- 処理クロック信号を調整することを含み、前記処理クロック信号が信号処理ユニットの動作周期を決定し、前記処理クロック信号が時間窓に基づいて決定され、
- 前記時間窓のサイズが、前記レーダ信号の部分を処理するために利用可能な最大時間に基づいて決定され、
- 前記時間窓の
開始及び終了が、レーダシステムのアクティブ送信部分の間に生じないよう決定される、方法。
【請求項2】
前記処理クロック信号が分周クロック分周器を介してクロック信号に基づいて調整される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーダ信号の前記部分が、各々が特に周波数のランプを含む、前記レーダ信号の送信部分及び/又は前記レーダ信号の受信部分を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理クロック信号を調整することが、前記信号処理ユニットが実行されるサイクル速度を低減又は増大させることを含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記処理クロック信号を調整することが、以下のこと、
- 前記時間窓の開始時において、
前記信号処理ユニットが駆動される前記処理クロック信号
の周波数に達するまで前記処理クロック信号の周波数を徐々に増大させること、及び/又は
- 前記時間窓の終了時において、
前記信号処理ユニットが駆動される前記処理クロック信号
の周波数に達するまで前記処理クロック信号の周波数を徐々に減少させること、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
レーダシステムであって、
- アンテナを介してレーダ信号を受信するように構成された受信器と、
- 処理ユニットであって、
- 処理クロック信号を調整するように構成されており、前記処理クロック信号が前記処理ユニットの動作周期を決定し、前記処理クロック信号が時間窓に基づいて決定され、
- 前記時間窓のサイズが、前記レーダ信号の部分を処理するために利用可能な最大時間に基づいて決定され、
- 前記時間窓の
開始及び終了が、前記レーダシステムのアクティブ送信部分の間に生じないよう決定される、処理ユニットと、
を備えるレーダシステム。
【請求項7】
前記処理ユニットが信号処理ユニットであるか、又は信号処理ユニットを含む、請求項
6に記載のレーダシステム。
【請求項8】
請求項
6又は
7に記載の少なくとも1つのレーダシステムを備える車両。
【請求項9】
デジタル処理デバイスのメモリ内に直接ロード可能であり、ソフトウェアコード部分を含むコンピュータプログラ
ムであって、前記ソフトウェアコード部分が、前記デジタル処理デバイスによる実行時に該デジタル処理デバイスに請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法を実行
させる、コンピュータプログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はレーダ応用に関し、具体的には、(例えば、少なくとも1つのアンテナを経由して)少なくとも1つのレーダセンサで取得されたレーダ信号を処理する効率的な方法に関する。この場合の処理するレーダ信号は、具体的には、センサ又はアンテナで受信されるレーダ信号を意味する。
【背景技術】
【0002】
自動車では何種類かのレーダが様々な用途に使用されている。例えば、レーダは、死角検出(駐車支援、歩行者保護、対面交通)、衝突緩和、車線変更支援、及び適応走行制御に使用可能である。レーダ機器の様々な使用事例シナリオは、様々な方向(例えば、後方、側方、前方)、変化する角度(例えば、方位角)、及び/又は様々な距離(短距離、中距離、又は長距離)が対象となりうる。例えば、適応走行制御では±18度にもなる方位角を利用する場合があり、レーダ信号は自動車の前方から放射されて、数百メートルにも及ぶ検出レンジを可能にする。
【0003】
レーダ源が信号を放射し、センサが反射信号を検出する。放射信号と検出信号との間の(例えば、動いている自動車がレーダ信号を放射していることに基づく)周波数シフトを用いて、放射信号の反射に基づく情報を取得することが可能である。センサで取得される信号のフロントエンド処理は高速フーリエ変換(FFT)を含んでよく、その結果として、信号スペクトル、即ち、信号の周波数分布を得ることが可能である。この信号の振幅は、エコーの量を示すことが可能であり、そのピークが、さらなる処理(例えば、前方を走行している別の自動車に基づく車速の調節)のために検出されて使用されることが必要なターゲットを表すことが可能である。
【0004】
レーダ処理装置からは様々なタイプの出力が得られ、例えば、制御装置に対するコマンド、少なくとも1つの制御装置で後処理されるべきオブジェクト又はオブジェクトリスト、少なくとも1つの制御装置で後処理されるべき少なくとも1つのFFTピークが得られる。FFTピークを利用すると、高性能の後処理が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
信号処理ユニット(signal processing unit、SPU)によって実行される高速処理が、特に、レーダアンテナを経由した送信期の間に、レーダユニットを乱し得る電源電流のとびを生じさせ得ることがとりわけ問題となる。
【0006】
解決されるべき問題は、上述された不利点を克服すること、及び特に、レーダシステムにおける信号を効率的に処理するための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は独立請求項の特徴に従って解決される。さらなる実施形態が従属請求項からもたらされる。
【0008】
本明細書において提案されている各例は、具体的には、以下のソリューションのうちの少なくとも1つに基づいてよい。具体的には、所望の結果に到達するために、以下の特徴の組み合わせが利用されてよい。この方法の特徴は、この機器、装置、又はシステムの任意の特徴と組み合わされてよく、或いはこの機器、装置、又はシステムの任意の特徴がこの方法の特徴と組み合わされてよい。
【0009】
レーダ信号を処理する方法であって、前記方法が、
- 処理クロック信号を調整することを含み、処理クロック信号が信号処理ユニットの動作周期を決定し、処理クロック信号が時間窓に基づいて決定され、
- 時間窓のサイズが、レーダ信号の部分を処理するために利用可能な最大時間に基づいて決定され、
- 時間窓の終了が、それがレーダシステムのアクティブ送信部分の間に生じないよう決定される、方法が提案される。
【0010】
これは、調整された処理クロック信号のおかげで、信号処理を可変速度で実行することを可能にする。それゆえ、互いの後続の処理のための時間窓を、それらの間に間隙を全く有せず、又はごくわずかしか有せず、提供することが可能である。間隙を有しなければ、時間窓の間のオン/オフの切り替えを乱すことがなく、したがって、電源線を通じて伝達される外乱が存在しない。
【0011】
換言すれば、信号処理継続期間が連続的に広がっており、単一のDC電源電流を消費することによって、(さもなければ、SPUをオン及びオフに切り替えることによって生じるであろう電流のとびの代わりに)レーダシステムのシームレスな動作を確実にする。
【0012】
負荷のとびの有害な影響を緩和することのみに加えて、本明細書において提示される解決策は、取得期間の間に消費される電力を効率的に分散させるために用いられ得る。例えば、時間の50%において100%の処理能力で実行するSPUを用いる代わりに、SPUは、取得期間の全時間の間に50%の処理能力で実行され得る。これはまた、高い電流消費負荷に達することも回避するであろう。
【0013】
一実施形態によれば、時間窓の開始は、それがレーダシステムのアクティブ送信部分の間に生じないよう決定される。
【0014】
一実施形態によれば、処理クロック信号は分周クロック分周器を介してクロック信号に基づいて調整される。
【0015】
分周クロック分周器は、周波数分周器、クロック分周器、スケーラ、又はプリスケーラとしても知られる。それは、次式:fout=fin/nのように、入力周波数finに基づいて出力周波数foutを与える。ここで、nは整数である。
【0016】
これが、以上において定義されたとおりの要求を満たすように構成されたプログラム可能分周クロック分周器によって実施されることが一選択肢である。このような構成は1回又は数回行われ得る。
【0017】
分周クロック分周器の構成は、動作中、すなわち、実行時において行うことさえできる。
【0018】
一実施形態によれば、レーダ信号の部分は、各々が特に周波数のランプを含む、レーダ信号の送信部分及び/又はレーダ信号の受信部分を含む。
【0019】
前記処理を受けるレーダ信号の部分は、特に、本明細書において説明されるとおりの送信部分であり得る。送信部分は、レーダ信号、特に、様々な周波数のレーダ信号を放射及び受信するレーダチップ(又は任意のレーダユニット)に関連付けられ得る。レーダ信号がレーダユニットによって放射及び/又は受信される時間の間に、電源が電気エネルギーをレーダユニット及び信号処理ユニットに伝達する。信号処理ユニットがレーダ信号の送信部分の間にオンに切り替えられた(有効にされた)か、又はオフに切り替えられた(無効にされた)場合には、これは、負荷のとびをもたらし、それゆえ、レーダユニットによるレーダ信号の送信/受信を乱し、それゆえ、レーダシステムの全体的な認識を劣化させることになる。
【0020】
提案されているように、レーダ信号の送信部分又は受信部分の最中にこのような負荷のとびが存在しない場合には、このような外乱を低減又は回避することができる。
【0021】
一実施形態によれば、処理クロック信号を調整することは、信号処理ユニットが実行されるサイクル速度を低減又は増大させることを含む。
【0022】
それゆえ、SPUが実行される速度が分周クロック分周器によって調整され得る。
【0023】
一実施形態によれば、処理クロック信号を調整することは、以下のこと、
- 時間窓の開始時において、処理クロック信号の周波数に達するまで周波数を徐々に増大させること、及び/又は
- 時間窓の終了時において、処理クロック信号の周波数に達するまで周波数を徐々に減少させること、
のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
それゆえ、この解決策は、例えば、SPUが駆動される周波数をランプアップ及び/又はダウンさせることに向けられている。これは、(多くの隣接した時間窓のうちの)最初の時間窓の開始のため、及び(SPUのための動作の隣接した時間窓を有しない)時間窓の最後において特に有用である。このような方策は、電源の方での任意の電圧オーバシュート又はアンダーシュートを効果的に低減し、したがって、任意の潜在的な負荷のとびを緩和する。
【0025】
徐々に増大させることは、周波数を、SPUを駆動するための最大周波数であり得る、処理周波数に向けてランプアップさせることによって行われ得る。それはまた、最大周波数未満の周波数でもあり得るであろう。このランプアップは、同じ又は異なる長さ/高さを有し得る、離散的なステップで実現されてもよい。これはランプダウンについても言え、それに対して、ランプアップ及びランプダウンは同じ又は異なるランプパターンを利用してもよい。
【0026】
また、レーダシステムであって、
- アンテナを介してレーダ信号を受信するように構成された受信器と、
- 処理ユニットであって、
- 処理クロック信号を調整するように構成されており、処理クロック信号が処理ユニットの動作周期を決定し、処理クロック信号が時間窓に基づいて決定され、
- 時間窓のサイズが、レーダ信号の部分を処理するために利用可能な最大時間に基づいて決定され、
- 時間窓の終了が、それがレーダシステムのアクティブ送信部分の間に生じないよう決定される、処理ユニットと、
を備える、レーダシステムが提供される。
【0027】
一実施形態によれば、処理ユニットは信号処理ユニットであるか、又は信号処理ユニットを含む。
【0028】
また、本明細書において説明されるとおりの少なくとも1つのレーダシステムを備える車両が提案される。
【0029】
さらに、コンピュータプログラム製品が提供され、これはデジタル処理装置のメモリに直接ロード可能であり、本明細書に記載の方法の各ステップを実施するソフトウェアコード部分を含む。
【0030】
図面を参照して実施形態が示され、図解される。図面は、基本原理を示す役割を果たす。そのため、基本原理を理解するために必要な態様のみが示される。図面は原寸に比例していない。図面において、同じ参照符号は同様の特徴を表す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】レーダシステムの高周波(HF)送信の曲線を含む例示的な図を示す。
【
図2】(とりわけ)マイクロコントローラ(MCU:マイクロコントローラユニット)、信号処理ユニット(SPU)、メモリ、中央処理装置(CPU)、及びスケーラブルクロック制御ユニットを備える概略的なレーダシステムを示す。
【
図3】SPUによる改善された信号処理を有するレーダシステムのHF送信の曲線を含む例示的な図を示す。
【
図4】SDUがオン及びオフに切り替えられる際の、正の電圧負荷のとび及び負の電圧負荷のとびを視覚化する概略図を示す。
【
図5】モジュール又はSPUを動作させるための周波数が徐々にランプアップされ、ランプダウンされる例示的な図を示す。
【
図6】
図4に示されるシナリオと比べて、低減された正の電圧負荷のとび及び低減された負の電圧負荷のとびを有する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
オンザフライ信号処理レーダ適用物の高い性能のゆえに、高い電流負荷のとびが発生し得る。
【0033】
図1は、レーダシステムの高周波(HF)送信101の曲線を含む例示的な図を示す。HF送信101は、アクティブ送信部分102及びアイドル送信部分103を含むランプを指示する。それゆえ、レーダ信号がアクティブ送信部分102の間に送信され、反射されたレーダ信号がアイドル送信部分103の間に処理され得る。それゆえ、アクティブ送信部分102が終わった後に、信号処理104が開始し得る。信号処理104はレーダシステムの信号処理ユニットによって実行されてもよく、それはアクティブ状態105及び非アクティブ状態106を含み得る。時間t1において、信号処理ユニットは非アクティブ状態106からアクティブ状態105に変化する。信号処理は時間t2まで継続し、時間t2において、信号処理ユニットは時間t3まで非アクティブ状態106に戻る。
【0034】
本例では、時間t1は、HF送信101がアクティブ送信部分102からアイドル送信部分103に変化する瞬間に対応する。信号処理ユニット104はアクティブ状態105に切り替えられ、データを処理する。このような処理は時間t2において終了し、信号処理ユニット104はその非アクティブ状態106に入る。しかし、信号処理ユニット104の、そのアクティブ状態105からその非アクティブ状態106への変化は、レーダシステムのアクティブ送信102の部分の間に生じる電流のとび107(本明細書において「負荷のとび」とも称される)をもたらし、レーダシステムの低ノイズ要求に抵触するノイズ外乱を生じさせる。
【0035】
それゆえ、負荷のとびのサイズ及び/又はその発生を制御することが、高性能レーダ動作の低いノイズを確実にするための重要な側面になる。
【0036】
高性能レーダ電算処理のための一般的需要は、レーダシステムのモジュールの全電力消費を増大させる。これはより高い電流をもたらし、したがって、モジュールがオン/オフに切り替えられる際に、負荷のとびがより大きな影響を与える。
【0037】
それゆえ、本明細書において説明される例は、特に、信号処理継続期間及び/又はその速度の性能を細かい粒度で制御することを提案する。
【0038】
図2は、(とりわけ)マイクロコントローラ200(MCU:マイクロコントローラユニット)、信号処理ユニット(SPU)201、メモリ202、中央処理装置(CPU)203、及びスケーラブルクロック制御ユニット204を備える概略的なレーダシステムを示す。
【0039】
スケーラブルクロック制御ユニット204はSPU201の一部であってもよく、又はそれは別個のユニットとして構成されてもよい。SPU201はクロック信号206(「モジュールクロック」若しくは「クロック」とも称される)を入手してもよく、又は-代替例として-SPU201がそれ自体でこのようなクロック信号206を生成してもよい。
【0040】
スケーラブルクロック制御ユニット204はクロック信号206を計算して処理クロック信号205(「処理クロック」とも称される)にする。これは、クロック信号206を、負荷のとびの有害な影響が低減されるか、又はさらに、防止されるよう、柔軟な仕方で調整することを可能にする。
【0041】
スケーラブルクロック制御ユニット204は、クロック信号206に基づいて処理クロック信号205を生成する、分周クロック分周器として実現することができるか、又はそれは分周クロック分周器を含んでもよい。次に、処理クロック信号205は信号処理の目的のために用いられ得る。
【0042】
スケーラブルクロック制御ユニット204は、処理クロック信号205、ひいては信号処理継続期間の細かい粒度の構成を可能にする。
【0043】
調整された処理クロック信号205のおかげで、SPU201の処理継続期間インターバルを時間窓内にちょうど収めることができ、これにより、送信部分102は中断されない、すなわち、処理インターバルはこのような送信部分102の間に終了しない。
【0044】
したがって、負荷のとびが、
図1に示されるようにHF性能に有害な影響を及ぼし得ない。
【0045】
図3は、レーダシステムのHF送信301の曲線を含む例示的な図を示す。HF送信301は、アクティブ送信部分302及びアイドル送信部分303を含むランプを指示する。また、
図3は、レーダシステムのSPUの曲線304を示し、前記曲線304はアクティブ状態305及び非アクティブ状態306を含む。
【0046】
時間t1において、SPUは非アクティブ状態306からアクティブ状態305に変化し、後続の時間t2において、それは非アクティブ状態306に戻る。
【0047】
しかし、同じ時間t2又はほぼ同じ時間t2において(有意の間隙を有しない)、信号処理ユニットは非アクティブ状態306からアクティブ状態305に戻る。同じことが時間t3において繰り返される。これは、(
図1に示されるシナリオと比べて)負荷のとびを有しない最適化されたシナリオをもたらす。
【0048】
それゆえ、アクティブ送信部分302は、SPUがアクティブ状態305になっている時間窓内にちょうど収まる(
図3に示される例では、時間窓は、t1とt2との間、及びt2とt3との間にある)。これは、送信部分302の間に負荷のとびが発生することを回避する。
【0049】
選択肢として、時間窓は、特に、アクティブ送信部分302及び非アクティブ送信部分303と同じ長さであってもよい。このような例における時間窓は、アクティブ送信部分302が終了し、非アクティブ送信部分303が始まる時間においてのみ終了/開始する。
【0050】
スケーラブル制御ユニット204の分周クロック分周器を利用することで、2つの隣接したアクティブ状態305の間の任意の間隙を最小限に抑えることができ、これにより、任意の負荷のとびをさらに低減する。
【0051】
信号プロセッサが、300MHzに達する最大周波数で実行すると仮定すると、信号プロセッサの処理タスクの継続期間は0.4Tに達し得る。周波数を、例えば、180MHzに低減することは、処理タスクの継続期間をTに増大させ得る。この点に関して、Tは、2つの連続したアクティブ状態305が(実質的な)時間間隙を有することなく生じることを可能にする時間であり得る。信号プロセッサの周波数を設定する分周クロック分周器は、このような間隙を最小限に抑えるように構成され得る。処理タスクの継続期間Tは、
図1における時間インターバルt2-t1に対応し得る。
【0052】
図4は、既存のレーダ解決策におけるさらに別の有害な影響を視覚化する概略図を示す。全体的な電算処理性能が高いほど、このような電算処理が有効又は無効にされる際に正の電圧負荷のとび401及び負の電圧負荷のとび402の影響は高くなる。
【0053】
これは、このような電圧オーバシュート及び/又は電圧アンダーシュートが電源のコンセプトの範囲又は限度を超え、これが、機能的安全警報、リセット、又は同様のものをトリガし、レーダシステムのシームレスな動作を阻害し得る場合に、重大になり得る。
【0054】
それゆえ、上述された分周クロック分周器は、処理クロックのアップランプ及び/又はダウンランプシーケンスを供給するように構成され得る。これは、モジュール又はSPU201が、処理の最高速度(又は最高速度に及ばない任意の高い速度)に徐々に達すること、並びにより低い速度又は休止状態に徐々に達することを可能にする。
【0055】
これは、処理周期の開始及び/又は終了時における負荷のとびの有害な影響をさらに抑制する。
【0056】
図5は、モジュール又はSPU201を時間t1から時間t3まで動作させるための周波数が所定の最大周波数f
maxまで徐々にランプアップされる例示的な図を示す。モジュール又はSPU201は、この周波数f
maxで時間t3から時間t4まで実行させられる。時間t4の後に、周波数は時間t6まで0に徐々にランプダウンされる。これは、特に、処理周期の穏やかな開始及び穏やかな終了を可能にする。
【0057】
図5に示されるランプは主に例示の目的を果たす。ランプはより多数又はより少数の段階を含んでもよく、ランプは非対称的であってもよく、すなわち、周波数を減少させるために用いられる段階の数と比べて、周波数を増大させる異なる数の段階を含んでもよい。ランプは異なるサイズ又は形状を有してもよい。ランプの各々のためのタイミングは同じであってもよく、又はそれは異なってもよい。また、ランプは2つの動作周波数の間で適用されてもよく、少なくとも1つの動作周波数は0である必要はない。
【0058】
図6は、
図4に示されるシナリオと比べて、低減された正の電圧負荷のとび601及び低減された負の電圧負荷のとび602を有する概略図を示す。
図6に示されるランプのコンセプトのおかげで、電圧オーバシュート及び電圧アンダーシュートが大幅に低減され、これにより、電源のコンセプト、ひいてはレーダシステムのシームレスな動作を損なうことをも回避する。
【0059】
1つ以上の例では、本明細書に記載の各機能は、少なくとも一部がハードウェアの形で実施されてよく、例えば、特定のハードウェアコンポーネント又はプロセッサの形で実施されてよい。より一般的には、これらの手法は、ハードウェア、プロセッサ、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせの形で実施されてよい。これらの機能は、ソフトウェアの形で実施された場合には、コンピュータ可読媒体上で1つ以上の命令又はコードとして記憶されるか又は伝送されてよく、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されてよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体又は通信媒体などであってよく、コンピュータ可読記憶媒体は、データ記憶媒体などの有形媒体に相当し、通信媒体は、(例えば、通信プロトコルに従って)コンピュータプログラムを1つの場所から別の場所に転送することを促進する任意の媒体を含む。このように、コンピュータ可読媒体は、一般に、(1)持続的な、有形のコンピュータ可読記憶媒体、又は(2)信号又は搬送波などの通信媒体に相当してよい。データ記憶媒体は、本開示に記載の技術の実施のための命令、コード、及び/又はデータ構造体を取り出すために1つ以上のコンピュータ又は1つ以上のプロセッサによってアクセス可能な任意の利用可能媒体であってよい。コンピュータプログラム製品は、コンピュータ可読媒体を含んでよい。
【0060】
限定ではなく例として、そのようなコンピュータ可読記憶媒体としては、RAM、ROM、EEPROM、CD-ROM又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、又は他の磁気記憶装置、フラッシュメモリ、又は他の任意の、命令又はデータ構造体の形の所望のプログラムコードを記憶することに使用可能であって、コンピュータによるアクセスが可能な媒体があってよい。また、厳密には、任意の接続が、コンピュータ可読媒体、即ち、コンピュータ可読伝送媒体と呼ばれる。例えば、ウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから命令が送信される際に、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、又は、赤外線、電波、マイクロ波などの無線技術が使用される場合、それらの同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア、DSL、又は、赤外線、電波、マイクロ波などの無線技術は、媒体の定義に包含される。しかしながら、当然のこととして、コンピュータ可読記憶媒体及びデータ記憶媒体は、接続、搬送波、信号、又は他の過渡媒体を包含せず、その代わりに持続的な有形記憶媒体を対象とする。本明細書では、ディスク(disk)及びディスク(disc)は、コンパクトディスク(CD)、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク(DVD)、フロッピーディスク、及びブルーレイディスクを包含し、ディスク(disk)は、通常、データを磁気的に再生するが、ディスク(disc)は、データをレーザで光学的に再生する。上述のものの組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲に含まれてしかるべきである。
【0061】
命令は、1つ以上のプロセッサで実行されてよく、例えば、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、又は他の同等の集積論理回路又はディスクリート論理回路で実行されてよい。したがって、本明細書では「プロセッサ」という用語は、上述の構造のいずれか、又は他の任意の、本明細書に記載の技術の実施に適する構造を意味してよい。さらに、態様によっては、本明細書に記載の機能性は、エンコード及びデコードを行うように構成された専用ハードウェア及び/又はソフトウェアモジュールの中で与えられてよく、或いは複合コーデックの形で組み込まれてよい。また、これらの技術は、1つ以上の回路又は論理素子で完全に実施可能である。
【0062】
本開示の技術は、無線送受話器、集積回路(IC)、又はICのセット(例えば、チップセット)を含む、多様な機器又は装置において実施されてよい。本開示では、本開示の技術を実施するように構成された装置の機能面を強調するために様々なコンポーネント、モジュール、又はユニットを示しているが、これらは、必ずしも、別々のハードウェアユニットで実現することが必須ではない。むしろ、上述のように、様々なユニットが、単一ハードウェアユニットとしてまとめられてよく、或いは、適切なソフトウェア及び/又はファームウェアとの組み合わせで、上述の1つ以上のプロセッサを含む相互運用ハードウェアユニットの集合体によって与えられてよい。
【0063】
本発明の様々な例示的実施形態を開示してきたが、当業者であれば明らかなように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、本発明の利点のうちの幾つかを達成する様々な変更及び修正が行われてよい。当業者であれば明らかなように、同じ機能を実施する他のコンポーネントが適切に代用されてよい。当然のことながら、特定の図面に関して説明された特徴が、他の図面の特徴と組み合わされてよく、これは、そのことが明示的に言及されていない場合でも行われてよい。さらに、本発明の方法は、適切なプロセッサ命令を使用する、全てがソフトウェアの実施態様で達成されてよく、或いは、ハードウェアロジックとソフトウェアロジックとの組み合わせを利用して同じ結果を達成するハイブリッド実施態様で達成されてよい。そのような、本発明の概念に対する修正は、添付の特許請求の範囲によってカバーされるものとする。
【符号の説明】
【0064】
101 高周波送信
102 アクティブ送信部分
103 アイドル送信部分
104 信号処理
105 アクティブ状態
106 非アクティブ状態
107 電流のとび
200 マイクロコントローラ
201 信号処理ユニット
202 メモリ
203 中央処理装置
204 スケーラブルクロック制御ユニット
205 処理クロック信号
206 クロック信号
301 HF送信
302 アクティブ送信部分
303 アイドル送信部分
305 アクティブ状態
306 非アクティブ状態