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特許7599856ポリイミド樹脂及びその製造方法、感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び硬化被膜形成方法、層間絶縁膜、表面保護膜、電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂及びその製造方法、感光性樹脂組成物、パターン形成方法及び硬化被膜形成方法、層間絶縁膜、表面保護膜、電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/14 20060101AFI20241209BHJP
   G03F 7/021 20060101ALI20241209BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241209BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241209BHJP
   G03F 7/32 20060101ALI20241209BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20241209BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08G73/14
G03F7/021
G03F7/004 501
G03F7/038 504
G03F7/32
G03F7/40 501
G03F7/20 501
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020116772
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2021169443
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】16/848,439
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー ズバレフ
(72)【発明者】
【氏名】浦野 宏之
(72)【発明者】
【氏名】竹村 勝也
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 匡史
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】河合 義夫
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-036162(JP,A)
【文献】特表2010-524848(JP,A)
【文献】Macromolecules,1996年,29,8983-8986
【文献】Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,1996年,38(5),471-481
【文献】J. AM. CHEM. SOC.,2008年,130,14082-14083
【文献】J. Org. Chem.,1941年,6,105-119
【文献】REGISTRY(STN)[online],2015年12月07日,1/2-2/2頁,検索日 2023.12.14 CAS登録番号 1824109-09-2, 1270559-24-4, 1270432-63-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C08G
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含むものであることを特徴とする樹脂。
【化1】
(式中、Zはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。X~Xは-CO-、-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SO-、-SO-、-SONRX1-のいずれかを示し、これらは互いに同一でも異なっていても良い。但し、RX1は水素原子又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の1価炭化水素基である。Arはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の2価の芳香族基を示す。L~Lは独立して、ヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の2価炭化水素基を示す。x、yはそれぞれ独立に0又は1である。Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の4価炭化水素基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(2)中のXが-CO-、-NRX1-、-O-のうちいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記一般式(2)中のx及びyが0であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記構造単位(2)及び(3)に加え、更に下記一般式(4)で示される構造単位を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂。
【化2】
(式中、Lは単結合又は2価の連結基であり、R~Rはそれぞれ独立に任意の1価置換基を示す。w、zは0~3であり、これらが2以上の時、複数のR及びRが示す置換基は同じでも相異なっていても良い。)
【請求項5】
前記一般式(4)中のLが-CRf1f2-又は-SO-であり、但し、Rf1~Rf2はそれぞれ独立にフッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基であることを特徴とする請求項に記載の樹脂。
【請求項6】
(i)下記一般式(1)で示される化合物またはそれらより誘導される酸ハロゲン化物若しくは酸無水物と、(ii)下記一般式(5)と、(iii)下記一般式(6)~(7)で示される化合物のうち少なくとも1種類とを反応させることを特徴とする樹脂の製造方法。
【化3】
(式中、Zはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。X~Xは-CO-、-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SO-、-SO-、-SONRX1-のいずれかを示し、これらは互いに同一でも異なっていても良い。但し、RX1は水素原子又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の1価炭化水素基である。Arはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の2価の芳香族基を示す。L~Lは独立して、ヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の2価炭化水素基を示す。x、yはそれぞれ独立に0又は1である。)
【化4】
(式中、Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の4価炭化水素基を示す。Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の2価炭化水素基を示す。Xはヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-OCOX4、-OSOX4、-OSOX4のいずれかを示す。但し、RX4はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~10の1価炭化水素基である。)
【請求項7】
(A)請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂、
(B)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、及び
(D)溶剤、
を含むものであることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、(C)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むものであることを特徴とする請求項7に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化5】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
【請求項9】
(A’)請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の樹脂、
(B’)光酸発生剤、
(C’)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤、及び
【化6】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
(D)溶剤、
を含むものであることを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
(1)請求項7又は請求項8に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)前記感光材皮膜を加熱する工程、
(3)フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で前記感光材皮膜を露光する工程、及び
(4)アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
(I)請求項9に記載のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(II)前記感光材皮膜を加熱する工程、
(III)フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で前記感光材皮膜を露光する工程、及び
(IV)アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
前記工程(III)と前記工程(IV)との間に、露光後加熱工程を含むことを特徴とする請求項11に記載のパターン形成方法。
【請求項13】
請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のパターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を、温度100~300℃において加熱して後硬化する工程を含むことを特徴とする硬化被膜形成方法。
【請求項14】
請求項7若しくは請求項8に記載のポジ型感光性樹脂組成物、又は請求項9に記載のネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする層間絶縁膜。
【請求項15】
請求項7若しくは請求項8に記載のポジ型感光性樹脂組成物、又は請求項9に記載のネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする表面保護膜。
【請求項16】
請求項14に記載の層間絶縁膜又は請求項15に記載の表面保護膜を有するものであることを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂の構造単位として有用な化合物、該当化合物を用いて得られるポリイミド樹脂とその製造方法、該ポリイミド樹脂をベース樹脂に用いたポジ型感光性樹脂組成物又はネガ型感光性樹脂組成物、これらを用いたアルカリ水溶液による現像が可能なパターン形成方法、及び硬化被膜形成方法に関する。また、この硬化被膜を用いた層間絶縁膜、表面保護膜、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等様々な電子機器の小型化や高性能化に伴い、半導体素子においてもさらなる小型化、薄型化及び高密度化への要求が急速に高まっている。このため、生産性向上における基板面積の増大に対応でき、かつ、チップサイズパッケージあるいはチップスケールパッケージ(CSP)又は三次元積層といった高密度実装技術において、基板上に微細でアスペクト比の高い感光性絶縁材料の開発が望まれている。
【0003】
三次元積層といった高密度実装技術において、基板上にパターン形成可能な感光性絶縁材料としては、以前からポリイミド系材料やポリベンゾオキサゾール系材料が保護被膜や絶縁層として活用されており、その絶縁性、耐熱性、高伸度や高強度と言った優れた機械的特性、基板との密着性等が注目され続け、現在においても開発が旺盛である。
【0004】
従来、感光性のポリイミド系材料としては、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を利用した材料、例えば、ポリアミック酸のカルボキシル基に感光基をエステル結合により導入したもの(特許文献1、特許文献2)が提案されている。これらの提案では、パターン化された皮膜を形成した後、目的とするポリイミド皮膜を得るために、300℃を超える高温でのイミド化処理が必須である。
【0005】
しかし、近年デバイスへの熱負荷の低減や基板に対する応力低減等の要求により、250℃以下、さらに好ましくは200℃以下の低温で硬化可能なポリイミド系材料又はポリベンゾオキサゾール系材料が求められている。
【0006】
低温硬化可能な樹脂組成物としては、既にイミド化された溶剤可溶の樹脂を用いた感光性のポリイミド樹脂組成物が提案されている(特許文献3)。特許文献3に記載されているポリイミドを用いたネガ型感光性樹脂組成物は、パターン形成においてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた現像が実施されているものの、この特許文献3にはパターン形成における解像性能の具体的な記載がなされていない。
【0007】
耐熱性及び引張強度等の機械的特性に優れるポリイミド材料としては樹脂の構造中に剛直な平面構造を有する芳香族置換基を含む種々の材料が知られている(特許文献4)。これらの材料は非常に高いガラス転移点を有する上に高温条件下での重量減少が殆ど無く、引張強度にも優れているため、種々の耐熱、耐摩耗、絶縁性材料用途に広く用いられている。一方でこのようなポリイミド樹脂の有機溶剤に対する溶解性が乏しく、塗布形成時の溶剤として溶解力に優れるNMP等のアミド系溶剤を必要とするが、このような溶剤はその毒性の高さから近年環境規制の対象となっており、より低毒性な溶剤への置き換えが望まれている。
【0008】
さらに、このような置換基をリソグラフィー材料へ適用しようとした場合、ポリイミド樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性が著しく低下する事から、特にポジティブトーンリソグラフィーにおけるリソグラフィー性能を大きく損なう可能性がある。また、ネガティブトーンリソグラフィーにおいても前述した有機溶剤溶解性の低さによりリソグラフィー性能が損なわれることは避けられない。
【0009】
以上の事情からリソパターナブルなポリイミド材料に剛直な芳香族置換基を導入し機械的特性を改善するためには有機溶剤及びアルカリ水溶液に対する溶解性を確保する設計が必須である。
【0010】
有機溶剤溶解性を向上させたポリイミド材料としては9,9-ジフェニルフルオレン骨格を導入したものが知られている(特許文献5)。9,9-ジフェニルフルオレン骨格は平面性の高いフルオレン構造を有していながらも共役平面と垂直方向に置換基が配向する特性(カルド構造)から高い芳香環密度に対して有機溶剤へ良好な溶解性を示すとされており、この文献では塗布形成時の溶剤としてγ―ブチロラクトン単独溶剤を用いた性能評価が実施されている。一方、γ―ブチロラクトンは高い溶解力を有するもののその表面張力の高さから塗布不良を起こしやすいことが知られており、γ―ブチロラクトンと比較して溶解力が乏しいものの塗布性の観点からより望ましいとされているプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対するポリイミド樹脂の溶解性に関して上記文献では十分な記載がなされていない。
【0011】
さらに、カルド構造を含む構造単位として1,1-ジフェニルシクロヘキサン構造を有するポリイミド樹脂も知られている(特許文献6)。この構造単位は前述のフルオレン構造に対して芳香族密度が低く溶解性に優れる脂環式構造を有しているためより高い溶剤溶解性が期待できるが、一方で高い芳香族密度を有するポリイミド樹脂に対して耐熱性や機械的強度が劣ることが知られている。
【0012】
このように、今後、チップの高密度化、高集積化に伴い、絶縁保護膜の再配線技術におけるパターンの微細化も益々進むであろうことから、ポリイミド樹脂を用いた感光性樹脂組成物において、加熱によって得られるポリイミドのパターン及び保護被膜の機械特性、特に強度、更には、密着性等の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を具現化できる組成物が強く望まれている。
【0013】
また、パターン形成、硬化を施された絶縁保護膜は、種々の工程における耐熱性、種々用いられる化学薬品に対する耐性を具備していることも、強く望まれている。
【0014】
即ち、これらの特徴を一つとして欠けることなく全て持ち備えた感光性樹脂組成物の早急なる開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開昭49-115541号公報
【文献】特開昭55-45746号公報
【文献】特許第3232022号公報
【文献】特許第5233344号公報
【文献】国際公開第2019/151336号
【文献】特開2019-14828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、機械的強度、伸び等の優れた特徴を損なうことなく、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることのできる感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いることができるポリイミドを導くことのできる化合物、該化合物を用いて得られるポリイミド樹脂及びその製造方法を提供することを目的とする。また、パターン形成において、アルカリ水溶液に可溶な、解像性に優れ、微細なパターン形成が可能な上記ポリイミド樹脂を用いたポジ型感光性樹脂組成物及びネガ型感光性樹脂組成物を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明では、下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする化合物を提供する。
【化1】
(式中、Zはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。X~Xは-CO-、-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SO-、-SO-、-SONRX1-のいずれかを示し、これらは互いに同一でも異なっていても良い。但し、RX1は水素原子又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の1価炭化水素基である。Arはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の2価の芳香族基を示す。L~Lは独立して、ヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の2価炭化水素基を示す。x、yはそれぞれ独立に0又は1である。)
【0018】
このような化合物であれば、機械的強度、伸び等の優れた特徴を損なうことなくパターン形成可能な感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いることができるポリイミドを導くことができる。
【0019】
この場合、一般式(1)中のXが-CO-、-NRX1-、-O-のうちいずれかであることができる。
【0020】
このようなXは、汎用的な重縮合ポリマーに頻用される縮合連結基であり望ましい。
【0021】
また、上記化合物は、合成容易性及び原料入手性の観点から、一般式(1)中のx及びyが0であることが望ましい。
【0022】
また、本発明は、下記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含むものであることを特徴とする樹脂を提供する。
【化2】
(式中、Zはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。X~Xは-CO-、-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SO-、-SO-、-SONRX1-のいずれかを示し、これらは互いに同一でも異なっていても良い。但し、RX1は水素原子又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の1価炭化水素基である。Arはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の2価の芳香族基を示す。L~Lは独立して、ヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の2価炭化水素基を示す。x、yはそれぞれ独立に0又は1である。Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の4価炭化水素基を示す。)
【0023】
このような樹脂であれば、機械的強度、伸び等の優れた特徴を損なうことなくパターン形成可能な感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いることができる。
【0024】
この場合、構造単位(2)及び(3)に加え、更に下記一般式(4)で示される構造単位を含むものであることが好ましい。
【化3】
(式中、Lは単結合又は2価の連結基であり、R~Rはそれぞれ独立に任意の1価置換基を示す。w、zは0~3であり、これらが2以上の時、複数のR及びRが示す置換基は同じでも相異なっていても良い。)
【0025】
このような構造単位を含む樹脂は、フェノール単位の有する酸性ヒドロキシ基の効果により塩基性水溶液及び塩基性有機溶剤に可溶となるため、感光性または感放射線性添加剤及び溶解制御在を添加することにより水溶性及び有機溶剤溶解性を制御でき、結果としてリソグラフィーによるパターニングを好適に行うことが可能となる。
【0026】
この場合、前記一般式(4)中のLが-CRf1f2-又は-SO-であり、但し、Rf1~Rf2はそれぞれ独立にフッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0027】
このような樹脂は、フェノール性ヒドロキシ基の酸性度が高くなるため塩基性水溶液及び塩基性有機溶剤に対する溶解性がより大きくなり、リソグラフィーへの適用において好適である。
【0028】
また、本発明は、上記樹脂の製造方法であって、(i)上記化合物またはそれらより誘導される酸ハロゲン化物若しくは酸無水物と、(ii)下記一般式(5)と、(iii)下記一般式(6)~(7)で示される化合物のうち少なくとも1種類とを反応させることを特徴とする樹脂の製造方法を提供する。
【化4】
(式中、Yは上記と同様である。Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の2価炭化水素基を示す。Xはヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-OCOX4、-OSOX4、-OSOX4のいずれかを示す。但し、RX4はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~10の1価炭化水素基である。)
【0029】
このような樹脂の製造方法であれば、機械的強度、伸び等の優れた特徴を損なうことなくパターン形成可能な感光性樹脂組成物のベース樹脂を好適に製造することができる。
【0030】
また、本発明は、(A)上記樹脂、(B)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、及び(D)溶剤を含むものであることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0031】
また、上記に加えて、更に、(C)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【化5】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
【0032】
このようなポジ型感光性樹脂組成物であれば、(B)成分の感光剤を用いることで、パターン形成において、露光部がアルカリ水溶液の現像液に対して溶解速度が大きくなって可溶となり、未露光部においては上記感光剤のアルカリ溶解阻止のため溶解せず、好適なポジ像を得ることができる。
【0033】
また、本発明は、(A’)上記樹脂、(B’)光酸発生剤、(C’)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤、及び(D)溶剤を含むものであることを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【化6】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
【0034】
このようなネガ型感光性樹脂組成物であれば、(B’)成分の光酸発生剤を用いることによって、パターン形成において好適なネガ像を与えることができる。
【0035】
また、本発明は、
(1)上記ポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)前記感光材皮膜を加熱する工程、
(3)フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で前記感光材皮膜を露光する工程、及び
(4)アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0036】
このように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物においては、アルカリ水溶液によるアルカリ現像が可能である。
【0037】
また、本発明は、
(I)上記ネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(II)前記感光材皮膜を加熱する工程、
(III)フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で前記感光材皮膜を露光する工程、及び
(IV)アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0038】
このように、本発明のネガ型感光性樹脂組成物においても、アルカリ水溶液によるアルカリ現像が可能である。
【0039】
この場合、工程(III)と工程(IV)との間に、露光後加熱工程を含むことが好ましい。
【0040】
このように、露光後に加熱する工程(ポストエクスポージャーベーク(PEB))を含むことにより、架橋剤と重合体の架橋反応を促進することができる。
【0041】
また、本発明は、上記パターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を、温度100~300℃において加熱して後硬化する工程を含むことを特徴とする硬化被膜形成方法を提供する。
【0042】
本発明の硬化被膜形成方法であれば、感光性樹脂組成物の皮膜の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板等に対する密着力、耐熱性や強度、さらに電気特性を好ましいものとすることができる。
【0043】
また、本発明は、上記ポジ型感光性樹脂組成物、又は上記ネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする層間絶縁膜を提供する。
【0044】
このような本発明の層間絶縁膜は、優れた絶縁性を有しながら、優れた密着力を示し、かつ保護被膜として相応しい機械的強度を具備したまま、さらに微細なパターン形成を可能にするための解像性能を大幅に改善できる。
【0045】
また、本発明は、上記ポジ型感光性樹脂組成物、又は上記ネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする表面保護膜を提供する。
【0046】
このような本発明の表面保護膜は、基板等との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度等に優れる。
【0047】
また、本発明は、上記層間絶縁膜又は上記表面保護膜を有するものであることを特徴とする電子部品。
【0048】
このような本発明の電子部品は、上記層間絶縁膜又は上記表面保護膜を有するため信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0049】
以上のように、本発明の化合物であれば、機械的強度、伸び等の優れた特徴を損なうことなく、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることのできる感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いることができるポリイミドを導くことができる。そして、該化合物を用いて得られるポリイミド樹脂は、パターン形成において、アルカリ水溶液に可溶な、解像性に優れ、微細なパターン形成が可能なポジ型感光性樹脂組成物及びネガ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0050】
特に、本発明の化合物は環状の構造を有する母骨格とそれからカルド型に伸びる縮合連結基及び縮合連結基を有する芳香族置換基とを有しており、種々の重縮合ポリマーの原材料として用いることにより、構造変形自由度の低い3級縮合連結基によるTg及び引張強度向上と芳香族連結基のスタッキング相互作用により引張強度及び伸度を改善することが出来る。更に、カルド構造の有する有機溶剤溶解性促進効果により、種々の有機溶剤に対し高い溶解性を有する。
【0051】
さらに、本発明のポジ型感光性樹脂組成物、又はネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化被膜は、前記化合物に由来する構造により機械的強度、基板密着性、電気特性、信頼性、溶剤溶解性に優れた保護被膜となる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
上述のように、機械的強度、伸び等の優れた特徴を損なうことなく、パターン形成可能な感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いることができるポリイミド樹脂の開発が求められていた。
【0053】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、下記一般式(1)で示される化合物を用いて得られるポリイミド樹脂を感光性樹脂組成物のベース樹脂として用いた場合、このようなポリイミド樹脂は、アルカリ水溶液の現像液に可溶であることから、アルカリ水溶液現像が可能なポジ型感光性樹脂組成物、アルカリ水溶液現像が可能なネガ型感光性樹脂組成物のいずれにも活用可能で、これら感光性樹脂組成物を用いて得られたパターンは機械的強度、伸び等の優れたものであることを見出した。
【0054】
さらに、上記ポリイミド樹脂をベース樹脂として含む感光性樹脂組成物を用い、パターン形成、加熱によって得られた保護被膜は電気的特性、機械的特性、密着性が優れることを見出した。即ち、上記ポリイミド樹脂をベース樹脂として含む感光性樹脂組成物を用い形成したパターンを有して得られた硬化被膜が、電気、電子部品保護被膜、絶縁保護被膜として優れることを見出して、本発明を完成させた。なお、本明細書においては、電気・電子部品をまとめて「電子部品」ともいう。
【0055】
即ち、本発明は、後述する一般式(1)で示されるものであることを特徴とする化合物及びこれを構造単位として含む樹脂に関するものである。
【0056】
以下、本発明について詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
本発明では、下記一般式(1)で示されるものであることを特徴とする化合物を提供する。
【化7】
(式中、Zはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。X~Xは-CO-、-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SO-、-SO-、-SONRX1-のいずれかを示し、これらは互いに同一でも異なっていても良い。但し、RX1は水素原子又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の1価炭化水素基である。Arはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の2価の芳香族基を示す。L~Lは独立して、ヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の2価炭化水素基を示す。x、yはそれぞれ独立に0又は1である。)
【0058】
式(1)中、Zはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。
【0059】
Zで表される2価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチレン基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、ビニレン基、プロペン-1,2-ジイル基、プロペン-1,3-ジイル基等の直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和炭化水素基;シクロプロパン-1,2-ジイル基、シクロブタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘプタン-1,2-ジイル基、シクロヘプタン-1,3-ジイル基、シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,2-ジイル基、シクロオクタン-1,3-ジイル基、シクロオクタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基、シクロノナン-1,2-ジイル基、シクロノナン-1,3-ジイル基、シクロノナン-1,4-ジイル基、シクロノナン-1,5-ジイル基、シクロデカン-1,2-ジイル基、シクロデカン-1,3-ジイル基、シクロデカン-1,4-ジイル基、シクロデカン-1,5-ジイル基、シクロデカン-1,6-ジイル基、ノルボルナン-1,2-ジイル基、ノルボルナン-1,3-ジイル基、ノルボルナン-1,4-ジイル基、ノルボルナン-2,3-ジイル基、ノルボルナン-2,5-ジイル基、ノルボルナン-2,6-ジイル基、ノルボルナン-2,7-ジイル基、ベンゼン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,2-ジイル基、ビフェニル-2,2’-ジイル基、シクロペンテン-1,2-ジイル基、シクロヘキセン-1,2-ジイル基、シクロへプテン-1,2-ジイル基、シクロオクテン-1,2-ジイル基等の飽和または不飽和環状炭化水素基;上記直鎖状、分岐状又は環状炭化水素基及びメチレン基;エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ペンタン-1,1-ジイル基、ヘキサン-1,1-ジイル基、ヘプタン-1,1-ジイル基、オクタン-1,1-ジイル基、ノナン-1,1-ジイル基、デカン-1,1-ジイル基、シクロプロパン-1,1-ジイル基、シクロブタン-1,1-ジイル基、シクロペンタン-1,1-ジイル基、シクロヘキサン-1,1-ジイル基、シクロヘプタン-1,1-ジイル基、シクロオクタン-1,1-ジイル基、ビニリデン基、プロペン-1,1-ジイル基等の二価のgem-炭化水素基のうち任意の2種類以上が互いに結合する事によって成る2価置換基が挙げられる。
【0060】
さらに、前記2価炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0061】
また、前記2価炭化水素基は、その炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、エーテル結合、スルフィド結合、カルボニル基、エステル結合、-N(R)-(式中、Rは、水素原子、又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~30の1価炭化水素基である。)、アミド結合、イミノ結合、スルホニル基、スルフィニル基、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合、カーバメート結合、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0062】
前記Rで示される1価炭化水素基は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、エチニル基、ブチニル基、2-シクロヘキシルエチニル基、2-フェニルエチニル基等のアルキニル基、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等のアリール基、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基、ベンゾイルメチル基、1-ベンゾイルエチル基等のアラシル基等をいう。
【0063】
さらに、前記1価炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0064】
また、前記1価炭化水素基は、その炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、エーテル結合、スルフィド結合、カルボニル基、エステル結合、-N(R)-(式中、Rは、水素原子、又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~30の1価炭化水素基である。)、アミド結合、イミノ結合、スルホニル基、スルフィニル基、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合、カーバメート結合、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0065】
式(1)中、Zで示される置換基としては以下に示すものが特に好適である。但し、―*は結合手を表す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化8】
【0066】
式(1)中、X~Xは-CO-、-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SO-、-SO-、-SONRX1-のいずれかを示し、これらは同一であっても異なっていてもよい。式中RX1は水素原子または前記で示したものと同様のヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い1価炭化水素基を示し、その炭素数は1~30である。
【0067】
式(1)中、Arはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数2~30の2価の芳香族基を示す。具体的にはo-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、o-ナフチレン基、m-ナフチレン基、p-ナフチレン基、ana-ナフチレン基、epi-ナフチレン基、kata-ナフチレン基、peri-ナフチレン基、pros-ナフチレン基、amphi-ナフチレン基、ナフタレン-2,7-ジイル基等が挙げられる。
【0068】
さらに、前記2価芳香族基は、その水素原子の一部又は全部が前記と同様の1価炭化水素基に置換されていてもよい。
【0069】
さらに、前記2価芳香族基は、その水素原子の一部又は全部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0070】
また、前記2価芳香族基は、その炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、エーテル結合、スルフィド結合、カルボニル基、エステル結合、-N(R)-(式中、Rは、水素原子、又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~30の1価炭化水素基である。)、アミド結合、イミノ結合、スルホニル基、スルフィニル基、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合、カーバメート結合、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0071】
式(1)中、Arで示される置換基としては以下に示すものが特に好適である。但し、―*は結合手を表す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化9】
【0072】
式(1)中、L~Lは独立して、ヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の2価炭化水素基を示す。x、yはそれぞれ独立に0又は1である。
具体的には、エチレン基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基、ペンタデカン-1,15-ジイル基、ヘキサデカン-1,16-ジイル基、ヘプタデカン-1,17-ジイル基、ビニレン基、プロペン-1,2-ジイル基、プロペン-1,3-ジイル基等の直鎖又は分岐状の飽和又は不飽和炭化水素基;シクロプロパン-1,2-ジイル基、シクロブタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘプタン-1,2-ジイル基、シクロヘプタン-1,3-ジイル基、シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,2-ジイル基、シクロオクタン-1,3-ジイル基、シクロオクタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基、シクロノナン-1,2-ジイル基、シクロノナン-1,3-ジイル基、シクロノナン-1,4-ジイル基、シクロノナン-1,5-ジイル基、シクロデカン-1,2-ジイル基、シクロデカン-1,3-ジイル基、シクロデカン-1,4-ジイル基、シクロデカン-1,5-ジイル基、シクロデカン-1,6-ジイル基、ノルボルナン-1,2-ジイル基、ノルボルナン-1,3-ジイル基、ノルボルナン-1,4-ジイル基、ノルボルナン-2,3-ジイル基、ノルボルナン-2,5-ジイル基、ノルボルナン-2,6-ジイル基、ノルボルナン-2,7-ジイル基、ベンゼン-1,2-ジイル基、ナフタレン-1,2-ジイル基、ビフェニル-2,2’-ジイル基、シクロペンテン-1,2-ジイル基、シクロヘキセン-1,2-ジイル基、シクロへプテン-1,2-ジイル基、シクロオクテン-1,2-ジイル基等の飽和または不飽和環状炭化水素基;エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,1-ジイル基、ペンタン-1,1-ジイル基、ヘキサン-1,1-ジイル基、ヘプタン-1,1-ジイル基、オクタン-1,1-ジイル基、ノナン-1,1-ジイル基、デカン-1,1-ジイル基、シクロプロパン-1,1-ジイル基、シクロブタン-1,1-ジイル基、シクロペンタン-1,1-ジイル基、シクロヘキサン-1,1-ジイル基、シクロヘプタン-1,1-ジイル基、シクロオクタン-1,1-ジイル基、ビニリデン基、プロペン-1,1-ジイル基等の二価のgem-炭化水素基等が挙げられる。
【0073】
このような化合物を樹脂の構成単位として適用した場合、Tg、引張強度、伸度の向上及び種々の有機溶剤に対する高い溶解性を得る。
【0074】
またこのとき、前記一般式(1)中のXは汎用的な重縮合ポリマーに頻用される縮合連結基、特に-CO-、-NRX1-、-O-のうちいずれかであることが望ましい。但しRX1は上記と同様である。
【0075】
式(1)中、L~Lで示される置換基としては以下に示すものが特に好適である。但し、―*は結合手を表す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化10】
【0076】
さらに、前記一般式(1)中のx及びyは、合成容易性及び原料入手性の観点から0であることが望ましい。
【0077】
また、本発明では上記化合物を構成単位として含む樹脂であって、特に優れた物性を提供するものとして下記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含むことを特徴とする樹脂を提供する。
【化11】
(式中、Z、X~X、Ar、L~L、x、yは上記と同様である。Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の4価炭化水素基を示す。)
【0078】
前記式(3)中、Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の4価炭化水素基を示す。具体的にはエタン-1,1,1,2-テトライル基、エタン-1,1,2,2-テトライル基、プロパン-1,1,1,2-テトライル基、プロパン-1,1,2,2-テトライル基、プロパン-1,1,1,3-テトライル基、プロパン-1,1,2,3-テトライル基、プロパン-1,1,3,3-テトライル基、プロパン-1,2,2,3-テトライル基、ブタン-1,2,3,4-テトライル基、ペンタン-1,2,4,5-テトライル基、ヘキサン-1,2,5,6-テトライル基、ヘプタン-1,2,6,7-テトライル基、オクタン-1,2,7,8-テトライル基等の4価直鎖飽和炭化水素基;2-メチルプロパン-1,1,1,2-テトライル基、2-メチルプロパン-1,1,2,3-テトライル基、2-メチルプロパン-1,1,3,3-テトライル基、2,3-ジメチルブタン-1,2,3,4-テトライル基、3-メチルペンタン-1,2,4,5-テトライル基、3-メチルヘキサン-1,2,5,6-テトライル基等の4価分岐状飽和炭化水素基;シクロプロパン-1,1,2,2-テトライル基、シクロブタン-1,1,2,2-テトライル基、シクロブタン-1,1,2,3-テトライル基、シクロブタン-1,1,2,4-テトライル基、シクロブタン-1,1,3,3-テトライル基、シクロブタン-1,2,3,4-テトライル基、シクロペンタン-1,1,2,2-テトライル基、シクロペンタン-1,1,3,3-テトライル基、シクロペンタン-1,1,2,3-テトライル基、シクロペンタン-1,1,2,4-テトライル基、シクロペンタン-1,1,2,5-テトライル基、シクロペンタン-1,1,3,4-テトライル基、シクロペンタン-1,2,3,4-テトライル基、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトライル基、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトライル基、シクロヘキサン-1,2,3,5-テトライル基、シクロヘプタン-1,2,3,4-テトライル基、シクロヘプタン-1,2,4,5-テトライル基、シクロオクタン-1,2,3,4-テトライル基、シクロオクタン-1,2,4,5-テトライル基、シクロオクタン-1,2,5,6-テトライル基等の4価環状飽和炭化水素基;エテン-1,1,2,2-テトライル基、プロピレン-1,1,2,3-テトライル基、プロピレン-1,1,3,3-テトライル基、プロピレン-1,3,3,3-テトライル基、プロピレン-1,2,3,3-テトライル基、プロピレン-2,3,3,3-テトライル基等の4価鎖状不飽和炭化水素基;シクロペンテン-1,2,3,4-テトライル基、シクロペンテン-1,3,4,5-テトライル基、ベンゼン-1,2,3,4-テトライル基、ベンゼン-1,2,4,5-テトライル基、ナフタレン-1,2,3,4-テトライル基、ナフタレン-1,2,5,6-テトライル基、ナフタレン-1,2,6,7-テトライル基、ナフタレン-1,2,7,8-テトライル基、ナフタレン-2,3,5,6-テトライル基、ナフタレン-2,3,6,7-テトライル基等の4価不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。
【0079】
さらに、前記4価炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が前記と同様のヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の1価炭化水素基に置換されていてもよい。
【0080】
さらに、前記4価炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0081】
また、前記4価炭化水素基は、その炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、その結果、エーテル結合、スルフィド結合、カルボニル基、エステル結合、-N(R)-(式中、Rは、水素原子、又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~30の1価炭化水素基である。)、アミド結合、イミノ結合、スルホニル基、スルフィニル基、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合、カーバメート結合、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等を含んでいてもよい。
【0082】
式(3)中、Yで示される置換基としては以下に示すものが特に好適である。但し、―*は結合手を表す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化12】
【0083】
このような樹脂は、本発明にて提供される化合物を樹脂構成単位として含み、かつ強度及び耐久性に優れたポリイミド単位を含有する事により、優れた有機溶剤溶解性を有しながら、高引張強度、高伸度、高耐久性を実現できる。
【0084】
また、本発明では前記構造単位(2)及び(3)に加え、更に下記一般式(4)で示される構造単位を含むものであることを特徴とする樹脂を提供する。
【化13】
(式中、Lは単結合又は2価の連結基であり、R~Rはそれぞれ独立に任意の1価置換基を示す。w、zは0~3であり、これらが2以上の時、複数のR及びRが示す置換基は同じでも相異なっていても良い。)
【0085】
前記式(4)中、Lは単結合または2価の連結基を示す。
【0086】
として用いることができる2価の連結基としては、前記と同様のヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の2価炭化水素基;エーテル結合、スルフィド結合、カルボニル基、エステル結合、-N(R)-(式中、Rは、水素原子、又はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在してもよい炭素数1~29の1価炭化水素基である。)、アミド結合、イミノ結合、スルホニル基、スルフィニル基、スルホン酸エステル結合、スルホンアミド結合、カーボネート結合、カーバメート結合、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)等の2価ヘテロ原子含有基等が挙げられる。
【0087】
式(4)中、Lで用いることができる2価炭化水素基としては以下に示すものが特に好適である。但し、―*は結合手を表す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化14】
【0088】
~Rはそれぞれ独立に任意の1価置換基を示す。
【0089】
~Rとして用いることが出来る1価置換基としては、前記と同様のヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~30の1価炭化水素基;ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基等の1価のヘテロ原子含有基等が挙げられる。
【0090】
このような単位を含む樹脂は、フェノール単位の有する酸性ヒドロキシ基の効果により塩基性水溶液及び塩基性有機溶剤に可溶となる。このような特性を有する樹脂は、感光性または感放射線性添加剤及び溶解制御在を添加することにより水溶性及び有機溶剤溶解性を制御でき、結果としてリソグラフィーによるパターニングを行うことが可能となる。
【0091】
前記一般式(4)中のLとしては、-CRf1f2-又は-SO-が特に望ましい。但し、Rf1~Rf2はそれぞれ独立にフッ素原子または炭素数1~10のフルオロアルキル基である。
【0092】
f1~Rf2として用いることが出来るフルオロアルキル基としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2-モノフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基等の部分フッ素化炭化水素基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、へプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等のペルフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0093】
このような置換基を有する構造単位(4)を含む樹脂は、フェノール性ヒドロキシ基の酸性度が高くなるため塩基性水溶液及び塩基性有機溶剤に対する溶解性がより大きくなり、リソグラフィーへの適用において好適である。
【0094】
本発明のポリイミド樹脂は、アルカリ水溶液の現像液に可溶であることから、アルカリ水溶液現像が可能なポジ型感光性樹脂組成物、アルカリ水溶液現像が可能なネガ型感光性樹脂組成物のいずれにも活用可能で、これら感光性樹脂組成物を用いて得られたパターンは微細でかつパターン形状が良好である。
【0095】
[樹脂の製造方法]
さらに、本発明は、上記樹脂の製造方法であって、上記化合物またはそれらより誘導される酸ハロゲン化物若しくは酸無水物と、下記一般式(5)と、下記一般式(6)~(7)で示される化合物のうち少なくとも1種類とを反応させることを特徴とする樹脂の製造方法を提供する。
【化15】
(式中、Yは上記と同様である。Yはヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の2価炭化水素基を示す。Xはヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-OCOX4、-OSOX4、-OSOX4のいずれかを示す。但し、RX4はヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~10の1価炭化水素基である。)
【0096】
前記式(7)中、Yは前記と同様のヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~100の2価炭化水素基を示す。また、同式中RX4は前記と同様のヘテロ原子に置換されていてもよく、ヘテロ原子が介在しても良い炭素数1~10の1価炭化水素基を示す。
【0097】
式(7)中、Yで示される置換基としては以下に示すものが特に好適である。但し、―*は結合手を表す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化16】
【0098】
上記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含むポリイミド樹脂の製造方法は、前記一般式(1)で示される化合物のXの種類により異なる。
【0099】
(製造方法1)
前記一般式(1)中、Xが-CO-、-SO-又は-SO-である場合、同化合物は重縮合反応における求電子的モノマー単位として機能する。その重合活性を発現させるため、化合物末端にある-COH、-SOH又は-SOH基を酸ハロゲン化物又は酸無水物へと変換する必要がある。同化合物群を酸ハロゲン化物に変換する手法としては、単体ハロゲンとの反応及び塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化スルフリル、臭化チオニル、臭化オキサリル、臭化スルフリル、一塩化臭素及び一塩化ヨウ素等のハロゲン等価体との反応が挙げられる。また、酸無水物へ変換する手法としては、ハロゲン化炭酸エステル、炭酸エステル無水物、酸ハライド及びカルボジイミド等との反応が挙げられる。
【0100】
上記手法により活性化させた前記一般式(1)で示される化合物と任意のテトラカルボン酸二無水物及び任意のジアミンを反応させることにより、主鎖に上記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を有するポリアミック酸を得る。
【0101】
上記テトラカルボン酸二無水物の例としては、芳香族酸二無水物、脂環式酸二無水物、脂肪族酸二無水物等が挙げられる。芳香族酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシフタル酸二無水物、2,3,3’,4’-オキシフタル酸二無水物、2,3,2’,3’-オキシフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンズフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,6-ジフルオロピロメリット酸二無水物、1-トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、1,6-ジトリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、あるいはこれらの芳香族環をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換した酸二無水物化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
脂環式酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘプタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1-シクロヘキシルコハク酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,3,0]ノナン-2,4,7,9-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,4,0]デカン-2,4,7,9-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[4,4,0]デカン-2,4,8,10-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6,3,0,02,6]ウンデカン-3,5,9,11-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-5-カルボキシメチル-2,3,6-トリカルボン酸二無水物、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、オクタヒドロナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、テトラデカヒドロアントラセン-1,2,8,9-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジシクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-オキシジシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、及び“リカシッド”(登録商標)BT-100(以上、商品名、新日本理化(株)製)及びそれらの誘導体、あるいはこれらの脂環をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換した酸二無水物化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
脂肪族酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物、及びそれらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
これらの芳香族酸二無水物、脂環式酸二無水物、又は脂肪族酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0105】
上記ジアミンの例としては、ヒドロキシ基含有ジアミン、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。好ましいヒドロキシ基含有ジアミンとしては、例えば、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
芳香族ジアミンとしては、例えば、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’3,3’-テトラメチルベンジジン、2,2’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、2,2’3,3’-テトラクロロベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ビス[3-(3-アミノベンズアミド)-4-ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4-アミノフェニル-4’-アミノベンゾエート、4,4’-ジアミノベンズアニリド、あるいはこれらの芳香族環をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジアミン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
脂環式ジアミンとしては、例えば、シクロブタンジアミン、イソホロンジアミン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビスメチルアミン、トリシクロ[3,3,1,13,7]デカン-1,3-ジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,4-ジアミノシクロへキサン、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、cis-1,4-ジアミノシクロへキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエーテル、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-(3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン、あるいはこれらの脂環をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジアミン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン等のアルキレンジアミン類、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル等のエチレングリコールジアミン類、及び1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン等のシロキサンジアミン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
これらのヒドロキシ基含有ジアミン、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、又は脂肪族ジアミンは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0110】
また、シロキサンジアミン類も好適に用いることができる。
【0111】
さらに、上記モノマー単位に加え、ポリマー中で前記一般式(4)で表される単位を構成しうるジアミン化合物を用いることができる。
【0112】
(製造方法2)
前記一般式(1)中、Xが-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SONRX1-である場合、同化合物は重縮合反応における求核的モノマー単位として機能する。このとき、同化合物と任意のテトラカルボン酸二無水物及び任意のジアミンを反応させることにより、主鎖に上記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を有するポリアミック酸を得る。
【0113】
上記手法においては、前述と同様のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを用いることができる。
【0114】
さらに、上記モノマー単位に加え、前記一般式(7)で表される任意のカルボン酸又はそれより誘導される酸ハロゲン化物ないしは酸無水物を用いることが可能である。
【0115】
前記一般式(7)で表されるカルボン酸又はそれより誘導される酸ハロゲン化物ないしは酸無水物の例としては、例えば、3,4’-ジフェニルエーテル-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-3,3’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルヒド-3,4’-ジカルボン酸、ジフェニルスルヒド-4,4’-ジカルボン酸、1,4-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ジメチルビフェニルジカルボン酸、3,3’-ジメチルビフェニルジカルボン酸、2,2’3,3’-テトラメチルビフェニルジカルボン酸、2,2’-ジクロロビフェニルジカルボン酸、3,3’-ジクロロビフェニルジカルボン酸、2,2’3,3’-テトラクロロビフェニルジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-カルボキシフェノキシフェニル)スルホン、ビス[4-(3-カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(4-カルボキシフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-カルボキシフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-カルボキシフェニル)フルオレン、2,2’-ビス[3-(3-カルボキシベンズアミド)-4-カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4-カルボキシフェニル-4’-カルボキシベンゾエート、4,4’-ジカルボキシベンズアニリド、あるいはこれらの芳香族環をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジカルボン酸等;シクロブタンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン二酢酸、トリシクロ[3,3,1,13,7]デカン-1,3-ジカルボン酸、1,2-シクロヘキシルジカルボン酸、1,3-シクロヘキシルジカルボン酸、1,4-シクロへキサンジカルボン酸、trans-1,4-シクロへキサンジカルボン酸、cis-1,4-シクロへキサンジカルボン酸、4,4’-シクロヘキシルメタンジカルボン酸、3,3’-ジメチル-4,4’-シクロヘキシルメタンジカルボン酸、3,3’-ジエチル-4,4’-シクロヘキシルメタンジカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、4,4’-ジシクロヘキシルエーテルジカルボン酸、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルエーテルジカルボン酸、3,3’-ジエチル-4,4’-ジシクロヘキシルエーテルジカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジシクロヘキシルエーテルジカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジシクロヘキシルエーテルジカルボン酸、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルエーテルジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-カルボキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-カルボキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-カルボキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジエチル-4-カルボキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-(3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジカルボキシジシクロヘキシル)プロパン、あるいはこれらの脂環をアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換したジオール化合物等;エタンジカルボン酸、1,3-プロパンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,5-ペンタンジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、1,8-オクタンジカルボン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸等のアルキレンジカルボン酸類;ビス(カルボキシメチル)エーテル、ビス(2-カルボキシエチル)エーテル、ビス(3-カルボキシプロピル)エーテル等のポリエーテルジカルボン酸類、及び1,3-ビス(3-カルボキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-カルボキシブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-カルボキシプロピル)ポリジメチルシロキサン等のシロキサンジカルボン酸類又はこれらより誘導される酸ハライドや酸無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのジカルボン酸及びそれより誘導される酸ハロゲン化物又は酸無水物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0116】
ポリアミック酸の合成において上記一般式(1)で示される化合物、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、その他のジカルボン酸誘導体の割合は、ポリイミドの分子量の調整等に応じて適宜決められ、前記一般式(1)中、Xが-CO-、-SO-又は-SO-である場合、上記一般式(1)で示される化合物、テトラカルボン酸二無水物及びジカルボン酸誘導体とジアミンの比率は通常モル比で0.90~1.10、好ましくは0.95~1.05、より好ましくは0.98~1.02の範囲である。また、前記一般式(1)中、Xが-CONRX1-、-O-、-NRX1-、-S-、-SONRX1-である場合、上記一般式(1)で示される化合物及びジアミンとテトラカルボン酸二無水物及びジカルボン酸誘導体の比率は通常モル比で0.90~1.10、好ましくは0.95~1.05、より好ましくは0.98~1.02の範囲である。
【0117】
上記一般式(1)で示される化合物、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、その他のジカルボン酸誘導体の反応は通常、溶剤中で各モノマー成分を混合し、0~80℃、好ましくは10~50℃で行われる。
【0118】
溶剤の具体的な例としては、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル類、シクロヘキサノン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、2-へプタノン、2-オクタノン、アセトフェノン等のケトン類、酢酸ブチル、安息香酸メチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられ、好ましくはケトン類、エステル類、アミド類であり、特に好ましくはγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンである。これらの溶剤は、1種でも2種以上組み合わせて用いてもよい。通常、溶解粘度等を考慮して、ポリイミドの濃度が10~40質量%となる範囲で調整される。
【0119】
次に、上記得られたポリアミック酸の反応液に水と共沸可能なキシレン等の非極性溶媒を添加し、100~200℃、好ましくは130~180℃に加熱し、反応系から生成する水を除去しながら脱水閉環反応を行うことで上記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含むポリイミド樹脂を得ることができる。
【0120】
(重合体の分子量及び末端封止剤の導入)
構造単位(2)及び構造単位(3)を含むポリイミド樹脂、あるいは、構造単位(2)、構造単位(3)及び構造単位(4)を含むものであるポリイミド樹脂の好適な重量平均分子量は、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは7,000~50,000である。分子量が5,000以上であれば、基板上に上記ポリイミド樹脂をベース樹脂に用いた感光性樹脂組成物を所望な膜厚に成膜することが容易になり、分子量が100,000以下であれば、感光性樹脂組成物の粘度が著しく高いものとはならず、成膜できなくなる恐れがない。なお、本発明において、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の測定値である。
【0121】
構造単位(2)及び構造単位(3)を含むポリイミド樹脂、あるいは、構造単位(2)、構造単位(3)及び構造単位(4)を含むものであるポリイミド樹脂は、縮重合反応における分子量の制御、得られた重合体の経時における分子量の変化、即ちゲル化を抑制する目的で、末端封止剤により両末端を封止してもよい。酸二無水物と反応する末端封止剤としては、モノアミンや一価のアルコール等が挙げられる。また、ジアミン化合物と反応する末端封止剤としては、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物、二炭酸エステル類、ビニルエーテル類等が挙げられる。また、末端封止剤を反応させることにより、末端基として種々の有機基を導入することができる。
【0122】
酸無水物基末端の封止剤として用いられるモノアミンとしては、アニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、4-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-8-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-3-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-2-アミノナフタレン、1-アミノ-7-ヒドロキシナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-3-アミノナフタレン、1-アミノ-2-ヒドロキシナフタレン、1-カルボキシ-8-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-4-アミノナフタレン、1-カルボキシ-3-アミノナフタレン、1-カルボキシ-2-アミノナフタレン、1-アミノ-7-カルボキシナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-4-アミノナフタレン、2-カルボキシ-3-アミノナフタレン、1-アミノ-2-カルボキシナフタレン、2-アミノニコチン酸、4-アミノニコチン酸、5-アミノニコチン酸、6-アミノニコチン酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、アメライド、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、5-アミノ-8-メルカプトキノリン、4-アミノ-8-メルカプトキノリン、1-メルカプト-8-アミノナフタレン、1-メルカプト-7-アミノナフタレン、1-メルカプト-6-アミノナフタレン、1-メルカプト-5-アミノナフタレン、1-メルカプト-4-アミノナフタレン、1-メルカプト-3-アミノナフタレン、1-メルカプト-2-アミノナフタレン、1-アミノ-7-メルカプトナフタレン、2-メルカプト-7-アミノナフタレン、2-メルカプト-6-アミノナフタレン、2-メルカプト-5-アミノナフタレン、2-メルカプト-4-アミノナフタレン、2-メルカプト-3-アミノナフタレン、1-アミノ-2-メルカプトナフタレン、3-アミノ-4,6-ジメルカプトピリミジン、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、2,4-ジエチニルアニリン、2,5-ジエチニルアニリン、2,6-ジエチニルアニリン、3,4-ジエチニルアニリン、3,5-ジエチニルアニリン、1-エチニル-2-アミノナフタレン、1-エチニル-3-アミノナフタレン、1-エチニル-4-アミノナフタレン、1-エチニル-5-アミノナフタレン、1-エチニル-6-アミノナフタレン、1-エチニル-7-アミノナフタレン、1-エチニル-8-アミノナフタレン、2-エチニル-1-アミノナフタレン、2-エチニル-3-アミノナフタレン、2-エチニル-4-アミノナフタレン、2-エチニル-5-アミノナフタレン、2-エチニル-6-アミノナフタレン、2-エチニル-7-アミノナフタレン、2-エチニル-8-アミノナフタレン、3,5-ジエチニル-1-アミノナフタレン、3,5-ジエチニル-2-アミノナフタレン、3,6-ジエチニル-1-アミノナフタレン、3,6-ジエチニル-2-アミノナフタレン、3,7-ジエチニル-1-アミノナフタレン、3,7-ジエチニル-2-アミノナフタレン、4,8-ジエチニル-1-アミノナフタレン、4,8-ジエチニル-2-アミノナフタレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0123】
一方、酸無水物基末端の封止剤として用いられる一価のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、1-ノナノール、2-ノナノール、1-デカノール、2-デカノール、1-ウンデカノール、2-ウンデカノール、1-ドデカノール、2-ドデカノール、1-トリデカノール、2-トリデカノール、1-テトラデカノール、2-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、2-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、2-ヘキサデカノール、1-へプタデカノール、2-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、2-オクタデカノール、1-ノナデカノール、2-ノナデカノール、1-イコサノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2-プロピル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、4-メチル-3-ヘプタノール、6-メチル-2-ヘプタノール、2,4,4-トリメチル-1-ヘキサノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、イソノニルアルコール、3,7ジメチル-3-オクタノール、2,4ジメチル-1-ヘプタノール、2-ヘプチルウンデカノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール1-メチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタンモノメチロール、ジシクロペンタンモノメチロール、トリシクロデカンモノメチロール、ノルボネオール、テルピネオール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0124】
アミノ基末端の封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、及びモノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物等の酸無水物、2-カルボキシフェノール、3-カルボキシフェノール、4-カルボキシフェノール、2-カルボキシチオフェノール、3-カルボキシチオフェノール、4-カルボキシチオフェノール、1-ヒドロキシ-8-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-7-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-6-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-5-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-4-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-3-カルボキシナフタレン、1-ヒドロキシ-2-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-8-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-7-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-6-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-5-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-4-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-3-カルボキシナフタレン、1-メルカプト-2-カルボキシナフタレン、2-カルボキシベンゼンスルホン酸、3-カルボキシベンゼンスルホン酸、4-カルボキシベンゼンスルホン酸、2-エチニル安息香酸、3-エチニル安息香酸、4-エチニル安息香酸、2,4-ジエチニル安息香酸、2,5-ジエチニル安息香酸、2,6-ジエチニル安息香酸、3,4-ジエチニル安息香酸、3,5-ジエチニル安息香酸、2-エチニル-1-ナフトエ酸、3-エチニル-1-ナフトエ酸、4-エチニル-1-ナフトエ酸、5-エチニル-1-ナフトエ酸、6-エチニル-1-ナフトエ酸、7-エチニル-1-ナフトエ酸、8-エチニル-1-ナフトエ酸、2-エチニル-2-ナフトエ酸、3-エチニル-2-ナフトエ酸、4-エチニル-2-ナフトエ酸、5-エチニル-2-ナフトエ酸、6-エチニル-2-ナフトエ酸、7-エチニル-2-ナフトエ酸、8-エチニル-2-ナフトエ酸等のモノカルボン酸類及びこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、及びテレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、3-ヒドロキシフタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、1,2-ジカルボキシナフタレン、1,3-ジカルボキシナフタレン、1,4-ジカルボキシナフタレン、1,5-ジカルボキシナフタレン、1,6-ジカルボキシナフタレン、1,7-ジカルボキシナフタレン、1,8-ジカルボキシナフタレン、2,3-ジカルボキシナフタレン、2,6-ジカルボキシナフタレン、2,7-ジカルボキシナフタレン等のジカルボン酸類のモノカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN-ヒドロキシベンゾトリアゾールやN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物等が挙げられる。
【0125】
アミノ基末端の封止剤として用いられる二炭酸エステル化合物としては、二炭酸ジ-tert-ブチル、二炭酸ジベンジル、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチル等が挙げられる。
【0126】
アミノ基末端の封止剤として用いられるビニルエーテル化合物としては、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル等が挙げられる。
【0127】
アミノ基末端の封止剤として用いられるその他の化合物としては、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸フルオレニルメチル、クロロギ酸2,2,2-トリクロロエチル、クロロギ酸アリル、クロロギ酸-tert-ブチル、クロロギ酸-n-ブチル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸ベンジル、クロロギ酸アリル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソプロピル等のクロロギ酸エステル類、イソシアン酸ブチル、イソシアン酸1-ナフチル、イソシアン酸オクタデシル、イソシアン酸フェニル等のイソシアナート化合物類、ベンゾイルクロリド、メタンスルホン酸クロリド、p-トルエンスルホン酸クロリド等が挙げられる。
【0128】
酸無水物基末端の封止剤の導入割合は、本発明のポリイミド樹脂の原料である上記一般式(1)及び(5)で示されるテトラカルボン酸二無水物成分に対して、0.1~60モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5~50モル%、さらに好ましくは5~20モル%である。また、アミノ基末端の封止剤の導入割合は、ジアミン成分に対して、0.1~100モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5~90モル%である。また、複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0129】
本発明のポリイミド樹脂は、上述した一般式(2)で示される構造単位や一般式(3)で示される構造単位以外のポリイミド構造単位、ポリイミド前駆体の構造単位、ポリベンゾオキサゾール構造単位、ポリベンゾオキサゾール前駆体の構造単位を含有してもよい。
【0130】
[感光性樹脂組成物]
次に、本発明のポリイミド樹脂をベース樹脂とした感光性樹脂組成物に関して、説明する。本発明では、上述した本発明のポリイミド樹脂をベース樹脂として用いることにより、ポジ型感光性樹脂組成物やネガ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0131】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
まず、本発明のポリイミド樹脂をベース樹脂とした感光性樹脂組成物において、アルカリ現像可能なポジ型感光性樹脂組成物について説明する。本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、例えば以下に説明する2つの形態とすることができるが、これらに限定されない。
【0132】
本発明では
(A)上記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含む樹脂、
(B)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、及び
(D)溶剤、
を含むものであることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0133】
また、上記ポジ型感光性樹脂組成物は、更に、(C)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むことができる。
【化17】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
【0134】
このように、(B)成分の感光剤を用いることで、パターン形成において、露光部がアルカリ水溶液の現像液に対して溶解速度が大きくなり可溶となり、未露光部においては上記感光剤のアルカリ溶解阻止のため溶解せず、ポジ像を得ることができる。上記一般式(2)及び(4)で示される構造単位を含むものである樹脂は、樹脂自身がアルカリ可溶性を示すことから、開口したパターン底部においてスカム等の残渣、裾引き等のパターン劣化が生じ難くなり、微細なパターン形成に優位に働く。
【0135】
(第1の形態)
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の第1の形態は、
(A)上記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含むポリイミド樹脂、
(B)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、及び
(D)溶剤、
を含むものである。
【0136】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性を得るという観点において、上記構造単位(2)及び(3)を含む樹脂が上記一般式(4)で表される構造単位を有する場合、(A)成分100g中のフェノール性水酸基のモル数によって述べることができる。すなわち、(A)成分100g中、フェノール性水酸基のモル数が0.10mol以上0.40mol以下、さらに好ましくは0.20mol以上0.35mol以下、最も好ましくは0.25mol以上0.35mol以下である。フェノール性水酸基のモル数が0.10mol以上であれば、アルカリ水溶液である現像液に対して所望なアルカリ溶解速度を得ることができ、パターン形成時、パターンの開口に障害が生じたり、パターンの底部にスカムを観察したりすることがなく、解像性が損なわれる恐れがない。一方、(A)成分100g中フェノール性水酸基の(A)成分100g中へ導入できる量は、本発明のポリイミド樹脂の設計において0.40mol程度とすることができる。このとき最もアルカリ水溶液の現像液に対する高い溶解性を期待できる。しかしながら、本発明の感光性樹脂組成物を用いてパターニングを行った後、後硬化を行い、硬化被膜を形成することができるが、この硬化膜中アルカリ可溶性であるフェノール性水酸基が多く残存してしまう恐れがあり、得られた硬化膜のアルカリ性化学薬品に対する耐性が損なわれる懸念があるため、好ましいフェノール性水酸基の導入量はアルカリ可溶性を与えることのできる少ない量が好ましい。
【0137】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における(B)成分は、光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物である。(B)成分としては、1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基を分子中に有する化合物を挙げることができる。
【0138】
1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基を分子中に有する化合物としては、下記一般式(8)又は(9)で示される1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基を分子中に有する化合物が挙げられる。但し、―*は結合手を表す。
【0139】
【化18】
【0140】
上記1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基が導入される化合物として、具体的には、トリヒドロキシベンゾフェノン又はテトラヒドロキシベンゾフェノン、フェノール性水酸基を有する下記一般式(10)で示されるバラスト分子又は後記式(15)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が2,000~20,000、好ましくは3,000~10,000の範囲であるノボラック樹脂が好適に用いられる。即ち、下記に挙げられるフェノール性水酸基を有する樹脂や化合物のフェノール性水酸基の水素原子を上記1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換したものが(B)成分として好適に用いられる。
【化19】
【0141】
ここで、R101~R106はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、下記式(11)で示される基又は下記式(12)で示される基である。wは0~2の整数、zは0~2の整数であり、zが0の場合、wは1又は2である。Aは、zが0でかつwが1の場合、水素原子、メチル基、又は下記式(11)で示される基であり、zが0でかつwが2の場合、一方がメチレン基又は下記式(13)で示される基で、他方が水素原子、メチル基又は下記式(11)で示される基、zが1の場合、メチレン基又は下記式(13)で示される基である。zが2の場合、wが1のとき、Aはメチン基又は下記式(14)で示される基、wが2のときはAの一方がメチレン基又は下記式(13)で示される基で、他方がメチン基又は下記式(14)で示される基である。
【化20】
(式中、a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7はそれぞれ0~3の整数であるが、a1+a2≦5、a3+a4≦4、a6+a7≦3である。)
【0142】
この場合、上記式(10)の低核体(バラスト分子)は、ベンゼン環の数が2~20個、より好ましくは2~10個、更に好ましくは3~6個であり、且つ、フェノール性水酸基の数とベンゼン環の数の比率が0.5~2.5、より好ましくは0.7~2.0、更に好ましくは0.8~1.5のものであることが好適である。
【0143】
このような低核体(バラスト分子)として具体的には、下記の(B-1)~(B-44)が挙げられる。
【0144】
【化21】
【0145】
【化22】
【0146】
上記例示された低核体(バラスト分子)の中で、(B-3)、(B-29)、(B-33)、(B-38)等が好適に用いられ、これらのバラスト分子のフェノール性水酸基の水素原子を1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した化合物が、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の(B)成分に好適に用いられる。
【0147】
【化23】
(式中、mmは0~3の整数である。)
【0148】
上記式(15)で示される繰り返し単位を有するノボラック樹脂は、下記式(16)で示されるフェノール類、具体的にはo-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3,5-キシレノール等の少なくとも1種のフェノール類とアルデヒド類とを通常の方法で縮合させることにより合成することができる。
【0149】
【化24】
(式中、mmは0~3の整数である。)
【0150】
この場合、アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられるが、ホルムアルデヒドが好適である。
【0151】
なお、上記式(16)で示されるフェノール類とアルデヒド類との割合は、モル比で0.2~2、特に0.3~2の割合が好ましい。
【0152】
上記1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基が導入される化合物への1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基の導入方法としては、1,2-ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとフェノール性水酸基との塩基触媒による脱塩酸縮合反応を用いることが好ましい。上記式(10)で示されるバラスト分子、トリヒドロキシベンゾフェノン又はテトラヒドロキシベンゾフェノンの場合には、フェノール性水酸基の水素原子を1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換する割合は10~100モル%、好ましくは50~100モル%であり、上記式(15)で示される繰り返し単位を有するノボラック樹脂の場合、フェノール性水酸基の水素原子を1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換する割合は2~50モル%、好ましくは3~27モル%が好ましい。
【0153】
(B)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して1~50質量部、より好ましくは10~40質量部であることが好ましい。また、(B)成分の1種類又は2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0154】
このような(B)成分を配合することで、露光前においては(B)成分の溶解阻止性によってアルカリ水溶液に対する溶解性が抑制され、系はアルカリ不溶性となり、露光した際には(B)成分の感光剤は光により酸を発生させ、アルカリ水溶液に対する溶解速度が増大して、系はアルカリ可溶性となる。即ち、現像液にアルカリ水溶液を用いた場合、未露光部は現像液に溶解することがなく、露光部は現像液に可溶であることから、ポジ型のパターンを形成することが可能となる。
【0155】
次に、第1の形態のポジ型感光性樹脂組成物における(D)成分は溶剤である。(D)成分の溶剤は、(A)成分及び(B)成分を溶解するものであれば、限定されない。溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコール-モノ-tert-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。特に、乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はそれらの混合溶剤が好ましい。
【0156】
(D)成分の配合量は、(A)成分及び(B)成分の配合量の合計100質量部に対して50~2,000質量部が好ましく、特に100~l,000質量部が好ましい。
【0157】
(第2の形態)
次に本発明における第2の形態のポジ型感光性樹脂組成物について述べる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の第2の形態は、上記(A)、(B)及び(D)を含むポジ型感光性樹脂組成物に加えて、更に(C)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むものである。
【化25】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
【0158】
本発明の第2の形態のポジ型感光性樹脂組成物の(A)成分、(B)成分は上述した第1のポジ型感光性樹脂組成物と同じものを好適に用いることができる。
【0159】
本発明の第2形態のポジ型感光性樹脂組成物における(C)成分は、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基(アルコキシメチル基)を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤である。
【化26】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
【0160】
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物としては、例えばホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物、又はホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物が挙げられる。
【0161】
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物の調製は、例えば、まず公知の方法に従ってメラミンモノマーをホルマリンでメチロール化して変性、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性して、下記一般式(17)で示される変性メラミンとする。なお、上記アルコールとしては、低級アルコール、例えば炭素数1~4のアルコールが好ましい。
【0162】
【化27】
(式中、R12は同一でも異なってもよく、メチロール基、炭素数1~4のアルコキシ基を含むアルコキシメチル基又は水素原子であるが、少なくとも1つはメチロール基又は上記アルコキシメチル基である。)
【0163】
上記R12としては、例えば、メチロール基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基及び水素原子等が挙げられる。
【0164】
上記一般式(17)で示される変性メラミンとして、具体的にはトリメトキシメチルモノメチロールメラミン、ジメトキシメチルモノメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン等が挙げられる。 次いで、上記一般式(17)で示される変性メラミン又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)を、常法に従って、ホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させて、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物が得られる。
【0165】
また、上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物の調製は、例えば公知の方法に従って、所望の分子量の尿素縮合物をホルムアルデヒドでメチロール化して変性し、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性する。上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物の具体例としては、例えば、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。
【0166】
なお、これら変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0167】
次いで、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば(2-ヒドロキシ-5-メチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,2’,6,6’-テトラメトキシメチルビスフェノールA、下記式(C-3)~(C-7)で示される化合物等が挙げられる。
【化28】
【0168】
なお、上記架橋剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0169】
一方、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物としては、ビスフェノールA、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの水酸基を塩基存在下エピクロロヒドリンと反応することで得られる化合物を挙げることができる。多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物の好適な例としては、下記式(C-8)~(C-14)で示される化合物を挙げることができる。
【0170】
【化29】
(式中、tは、2≦t≦3である。(tは、整数に限定されない。))
【0171】
これら多価フェノールの水酸基を、例えば、グリシドキシ基に置換した化合物の1種又は2種を、架橋剤として使用することができる。
【0172】
多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物としては、上記置換基を2つ以上含有し、下記式(C-15)で示されるものを挙げることができる。
【化30】
(式中、点線は結合を示す。)
【化31】
(式中、1≦u≦3である。)
【0173】
一方、下記式(C-2)で示される基(グリシジル基を有した窒素原子)を2つ以上含有した化合物としては、下記式(C-16)で示されるものを挙げることができる。
【化32】
(式中、点線は結合を示し、Rcは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
【化33】
(式中、Wは炭素数2~12の直鎖状、分枝状、環状のアルキレン基、又は2価の芳香族基を示す。)
【0174】
上記式(C-16)で示される化合物としては、例えば下記式(C-17)~(C-20)で示される化合物を例示することができる。
【化34】
【0175】
また一方、上記式(C-2´)で示される基(グリシジル基を有した窒素原子)を2つ以上含有した化合物としては、下記式(C-21)で示される化合物を好適に用いることができる。
【化35】
【0176】
これら上記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物は、1種又は2種を架橋剤として使用することができる。
【0177】
(C)成分は、本発明のポリイミド前駆体を含む重合体を用いたポジ型感光性樹脂組成物のパターン形成後、後硬化において架橋反応を起こし、硬化物の強度をさらに上げる成分である。そのような(C)成分の重量平均分子量は、光硬化性及び耐熱性の観点から、150~10,000が好ましく、特に200~3,000のものが好ましい。
【0178】
(C)成分の配合量は、本発明の第2の形態のポジ型感光性樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対して0.5~50質量部が好ましく、特に1~30質量部が好ましい。
【0179】
また、本発明の第2形態のポジ型感光性樹脂組成物における(D)成分の溶剤としては、第1形態ポジ型感光性樹脂組成物において説明した溶剤と同様な溶剤を好適なものとして挙げることができる。
【0180】
(その他の成分)
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、以外の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、例えば、密着助剤、(E)界面活性剤等を挙げることができ、(E)界面活性剤としては、下記に例示した化合物等を好適に用いることができる。
【0181】
(E)界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0182】
これらの界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、フロラード「FC-4430」(住友スリーエム(株)製)、サーフロン「S-141」及び「S-145」(以上、旭硝子(株)製)、ユニダイン「DS-401」、「DS-4031」及び「DS-451」(以上、ダイキン工業(株)製)、メガファック「F-8151」(DIC(株)製)、「X-70-093」(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、フロラード「FC-4430」(住友スリーエム(株)製)及び「X-70-093」(信越化学工業(株)製)である。
【0183】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
次に、本発明のポリイミド樹脂をベース樹脂とした感光性樹脂組成物において、アルカリ現像可能なネガ型感光性樹脂組成物について説明する。本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、例えば以下に説明する形態とすることができるが、これに限定されない。
【0184】
本発明では
(A’)上記一般式(2)および(3)で示される構造単位を含む樹脂、
(B’)光酸発生剤、
(C’)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤、及び
【化36】
(式中、点線は結合を示し、Rは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
(D)溶剤、
を含むものであることを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0185】
このように、(B’)成分の光酸発生剤を用いることによって、パターン形成において、露光部に酸を発生させて、添加した(C’)成分の架橋剤の架橋基と重合体の架橋反応点を架橋させることにより、露光部が現像液に対して不溶となりネガ像を得る組成物とすることもできる。
【0186】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の形態は、
(A’)構造単位(2)及び(3)を含むものであるポリイミド樹脂、
(B’)光酸発生剤、
(C’)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基又はグリシジル基を有する基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(C-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(C-2)又は(C-2´)で示される基を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤、及び
【化37】
(式中、点線は結合を示し、Rcは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、sは1又は2である。)
(D)溶剤、
を含むネガ型感光性樹脂組成物である。
【0187】
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物の(A’)成分は、構造単位(5)を含むポリイミド樹脂であって、上述したポジ型感光性樹脂組成物と同じ樹脂を好適に用いることができる。
【0188】
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、(B’)成分から発生する酸を触媒として、(C’)成分の架橋基が(A’)成分のポリマーと架橋することによって、ネガ型の感光性樹脂組成物を成すことができる。
【0189】
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物の(B’)成分は光酸発生剤である。光酸発生剤としては、波長190~500nmの光照射により酸を発生し、これが硬化触媒となるものを用いることができる。例えば、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、β-ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、イミド-イル-スルホネート誘導体、オキシムスルホネート誘導体、イミノスルホネート誘導体、トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0190】
上記オニウム塩としては、例えば、下記一般式(18)で示される化合物が挙げられる。
【化38】
(式中、R13は置換基を有してもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基、炭素数6~12のアリール基又は炭素数7~12のアラルキル基を表し、Mはヨードニウムカチオン又はスルホニウムカチオンを表し、Kは非求核性対向イオンを表し、jは2又は3である。)
【0191】
上記R13において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、2-オキソシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基;o-、m-又はp-メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、m-又はp-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-、3-又は4-メチルフェニル基、エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等の各基が挙げられる。
【0192】
の非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン;トリフレート、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等のフルオロアルキルスルホネート;トシレート、ベンゼンスルホネート、4-フルオロベンゼンスルホネート、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネート等のアリールスルホネート;メシレート、ブタンスルホネート等のアルキルスルホネート等が挙げられる。
【0193】
ジアゾメタン誘導体としては、下記一般式(19)で示される化合物が挙げられる。
【化39】
(式中、R14は同一でも異なってもよく、炭素数1~12の直鎖状、分岐状、もしくは環状のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基、炭素数6~12のアリール基もしくはハロゲン化アリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基を表す。)
【0194】
上記R14において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、1,1,1-トリクロロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基;o-、m-又はp-メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、m-又はp-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-、3-又は4-メチルフェニル基、エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン化アリール基としては、例えば、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、1,2,3,4,5-ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0195】
このような光酸発生剤としては、具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p-トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p-トルエンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸ビス(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p-トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、ジフェニル(4-チオフェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のオニウム塩;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロへキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec-アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-アミルスルホニル)ジアゾメタン、1-シクロへキシルスルホニル-1-(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1-シクロヘキシルスルホニル-1-(tert-アミルスルホニル)ジアゾメタン、1-tert-アミルスルホニル-1-(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン誘導体;ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジシクロへキシルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-(p-トルエンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジシクロへキシルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(メタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(トリフルオロメタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(1,1,1-トリフルオロエタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(tert-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(パーフルオロオクタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(シクロヘキサンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(ベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-フルオロベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-tert-ブチルベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(キシレンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(カンファースルホニル)-α-ジメチルグリオキシム等のグリオキシム誘導体;α-(ベンゼンスルホニウムオキシイミノ)-4-メチルフェニルアセトニトリル等のオキシムスルホネート誘導体;2-シクロヘキシルカルボニル-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン、2-イソプロピルカルボニル-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン等のβ-ケトスルホン誘導体;ジフェニルジスルホン、ジシクロへキシルジスルホン等のジスルホン誘導体;p-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2,4-ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体;1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体;フタルイミド-イル-トリフレート、フタルイミド-イル-トシレート、5-ノルボルネン2,3-ジカルボキシイミド-イル-トリフレート、5-ノルボルネン2,3-ジカルボキシイミド-イル-トシレート、5-ノルボルネン2,3-ジカルボキシイミド-イル-n-ブチルスルホネート、n-トリフルオロメチルスルホニルオキシナフチルイミド等のイミド-イル-スルホネート誘導体;(5-(4-メチルフェニル)スルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-(4-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニルスルホニルオキシイミノ)-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)-アセトニトリル等のイミノスルホネート、2-メチル-2[(4-メチルフェニル)スルホニル]-1-[(4-メチルチオ)フェニル]-1-プロパン等が挙げられる。これらの中でも、イミド-イル-スルホネート類、イミノスルホネート類、オキシムスルホネート類等が好適に用いられる。上記光酸発生剤は1種又は2種以上を用いることができる。
【0196】
上記(B’)成分の光酸発生剤の配合量は、光酸発生剤自身の光吸収及び厚膜での光硬化性の観点から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A’)成分100質量部に対して0.05~20質量部が好ましく、特に0.2~5質量部が好ましい。
【0197】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の(C’)成分は、ポジ型感光性樹脂組成物の第2形態において説明した(C)成分と同様な架橋剤を好ましく用いることができる。
【0198】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の(C’)成分は、上述した通り、(B’)成分から発生する酸を触媒として、(C’)成分の架橋基が(A’)成分のポリマーと架橋することによって、ネガ型のパターンを形成できることはもとより、パターン形成後、後硬化において架橋反応を起こし、硬化物の強度をさらに上げる成分である。そのような(C’)成分の重量平均分子量は、光硬化性及び耐熱性の観点から、150~10,000が好ましく、特に200~3,000のものが好ましい。
【0199】
(C’)成分の配合量は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対して0.5~50質量部が好ましく、特に1~30質量部が好ましい。
【0200】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における(D)成分は溶剤である。(D)成分の溶剤としては、(A’)成分、(B’)成分、及び(C’)成分を溶解するものであれば、限定されない。(D)成分としては、上記ポジ型感光性樹脂組成物の第1の形態もしくは第2の形態で例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0201】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物においても、(A’)成分、(B’)成分、(C’)成分、及び(D)成分以外のその他の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、例えば(F)増感剤、密着助剤、保存安定性を高めるための重合禁止剤、塗布性を向上させるために慣用されている(E)界面活性剤等を挙げることができる。(E)の界面活性剤は、前記ポジ型感光性樹脂組成物において説明した界面活性剤を同様に好ましく用いることができる。
【0202】
(F)増感剤としては、例えば7-N,N-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-3-テノニルクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-N,N-ジエチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-N,N-ジメトキシ)クマリン、3-チエニルカルボニル-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-N,N-メトキシクマリン、3-(4’-メトキシベンゾイル)クマリン、3,3’-カルボニルビス-5,7-(ジメトキシ)クマリン、ベンザルアセトフェノン、4’-N,N-ジメチルアミノベンザルアセトフェノン、4’-アセトアミノベンザル-4-メトキシアセトフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(N-エチル、N-メチル)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらの含有量は、本発明のポリイミド前駆体の重合体100質量部に対して、0.05~20質量部とすることが好ましく、0.1~10質量部とすることがより好ましい。
【0203】
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、必要に応じて、塩基性化合物を(G)成分として添加することができる。この塩基性化合物としては、光酸発生剤より発生する酸がレジスト皮膜を拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物が適している。そして、上記塩基性化合物の配合により、解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制し、基板依存性や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターン形状等を改善することができる。
【0204】
上記塩基性化合物としては、アンモニア、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体、さらに、下記一般式(20)で示される化合物等が挙げられる。
【化40】
【0205】
式中、p=1、2、又は3である。側鎖αは同一でも異なっていてもよく、下記一般式(21)~(23)で示されるいずれかの置換基とすることができる。側鎖βは同一でも異なっていてもよく、水素原子、又は直鎖状、分岐状もしくは環状の炭素数1~20のアルキル基を示し、エーテル結合もしくはヒドロキシル基を含んでもよい。また、側鎖α同士が結合して環を形成してもよい。
【化41】
【0206】
ここで、R300、R302、R305は炭素数1~4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R301、R304は水素原子又は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。R303は単結合又は炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基であり、R306は炭素数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であり、ヒドロキシル基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。なお、*-は結合末端を示す。
【0207】
第一級の脂肪族アミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、tert-アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0208】
第二級の脂肪族アミン類としては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N-ジメチルメチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0209】
第三級の脂肪族アミン類としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0210】
混成アミン類としては、例えば、ジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。
【0211】
芳香族アミン類及び複素環アミン類としては、例えばアニリン誘導体(例えば、アニリン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2-ニトロアニリン、3-ニトロアニリン、4-ニトロアニリン、2,4-ジニトロアニリン、2,6-ジニトロアニリン、3,5-ジニトロアニリン、N,N-ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p-トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えば、ピロール、2H-ピロール、1-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、2,5-ジメチルピロール、N-メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えば、オキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えば、チアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えば、イミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えば、ピロリン、2-メチル-1-ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えば、ピロリジン、N-メチルピロリジン、ピロリジノン、N-メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えば、ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4-(1-ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3-メチル-2-フェニルピリジン、4-tert-ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、1-メチル-2-ピリジン、4-ピロリジノピリジン、1-メチル-4-フェニルピリジン、2-(1-エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H-インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えば、キノリン、3-キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10-フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0212】
カルボキシル基を有する含窒素化合物としては、例えばアミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えば、ニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3-アミノピラジン-2-カルボン酸、メトキシアラニン等)等が例示される。
【0213】
スルホニル基を有する含窒素化合物としては、例えば3-ピリジンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示される。
【0214】
ヒドロキシル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物としては、例えば2-ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4-キノリンジオール、3-インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’-イミノジエタノール、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、2-(2-ヒドロキシエチル)ピリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリジノン、3-ピペリジノ-1,2-プロパンジオール、3-ピロリジノ-1,2-プロパンジオール、8-ヒドロキシユロリジン、3-クイヌクリジノール、3-トロパノール、1-メチル-2-ピロリジンエタノール、1-アジリジンエタノール、N-(2-ヒドロキシエチル)フタルイミド、N-(2-ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。
【0215】
アミド誘導体としては、例えばホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が例示される。イミド誘導体としては、例えばフタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。
【0216】
上記一般式(20)で示される化合物としては、例えばトリス[2-(メトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシメトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(1-メトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(1-エトキシエトキシ)エチル]アミン、トリス[2-(1-エトキシプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2-{2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24-ヘキサオキサ-1,10-ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18-テトラオキサ-1,10-ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13-テトラオキサ-7,16-ジアザビシクロオクタデカン、1-アザ-12-クラウン-4、1-アザ-15-クラウン-5、1-アザ-18-クラウン-6、トリス(2-ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2-アセトキシエチル)アミン、トリス(2-プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2-ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2-イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2-バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2-ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2-メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2-tert-ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2-(2-オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2-(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2-(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2-メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2-エトキシカルボニルエチル)アミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-(2-メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-(2-メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-(2-アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-(2-オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-(2-オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-[(2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N-ビス(2-アセトキシエチル)2-[(2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)2-(4-ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ホルミルオキシエチル)2-(4-ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-ホルミルオキシエチル)2-(2-ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N-ビス(2-メトキシエチル)2-(メトキシカルボニル)エチルアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ビス[2-(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N-(2-アセトキシエチル)ビス[2-(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N-(2-ヒドロキシエチル)ビス[2-(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N-(2-アセトキシエチル)ビス[2-(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N-(3-ヒドロキシ-1-プロピル)ビス[2-(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N-(3-アセトキシ-1-プロピル)ビス[2-(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N-(2-メトキシエチル)ビス[2-(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N-ブチルビス[2-(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N-ブチルビス[2-(2-メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N-メチルビス(2-アセトキシエチル)アミン、N-エチルビス(2-アセトキシエチル)アミン、N-メチルビス(2-ピバロイルオキシエチル)アミン、N-エチルビス[2-(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N-エチルビス[2-(tert-ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N-ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N-ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β-(ジエチルアミノ)-δ-バレロラクトンが例示できるが、これらに制限されない。上記塩基性化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0217】
上記塩基性化合物の配合量は、感度の観点から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対して0~3質量部が好ましく、特に0.01~1質量部が好ましい。
【0218】
[パターン形成方法]
さらに、本発明では、
(1)上述のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)感光材皮膜を加熱する工程、
(3)フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で感光材皮膜を露光する工程、及び
(4)アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0219】
このように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物においては、アルカリ水溶液によるアルカリ現像が可能である。
【0220】
またさらに、本発明では、
(I)上述のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(II)感光材皮膜を加熱する工程、
(III)フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で感光材皮膜を露光する工程、及び
(IV)アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0221】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物のベース樹脂は、上記一般式(4)で示される構造単位を含んでいる場合には、アルカリ水溶液による良好なアルカリ現像が可能となる。
【0222】
このとき、前記工程(III)と前記工程(IV)との間に、露光後加熱工程を含むことが好ましい。
【0223】
特に、上記一般式(2)及び(4)で示される構造単位を含むものである樹脂を含有する重合体を含むネガ型感光性樹脂組成物の場合、露光後に加熱する工程(ポストエクスポージャーベーク(PEB))を含むことにより、露光によって光酸発生剤から発生した酸を触媒として、架橋剤の架橋基と重合体の架橋反応点の架橋反応を促進することができる。
【0224】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物及びネガ型感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法に関して、説明を行う。
【0225】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物、ネガ型感光性樹脂組成物のいずれの場合においても、パターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えばシリコンウエハーあるいはSiO基板、SiN基板、もしくは銅配線等のパターンが形成されている基板に、感光性樹脂組成物をスピンコーティングの手法(スピンコート法)で塗布し、80~130℃、50~600秒間程度の条件でプリベークし、厚さ1~50μm、好ましくは1~30μm、さらに好ましくは5~20μmの感光材皮膜を形成する。
【0226】
スピンコート法では、感光性樹脂組成物をシリコン基板上へ5mL程度ディスペンスした後に基板を回転することによって、基板上へ感光性樹脂組成物を塗布することができる。このとき、回転速度を調整することで容易に基板上の感光材皮膜の膜厚を調整することが可能である。その後、プリベークにより残りの溶剤を取り除くことができる。
【0227】
次いで、目的のパターンを形成するためのマスクを上記の感光材皮膜上にかざし、i線、g線等の波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線を露光量1~5,000mJ/cm程度、好ましくは100~2,000mJ/cm程度となるように照射する。
【0228】
次に必要に応じ、ホットプレート上で60~150℃、1~10分間、好ましくは80~120℃、1~5分間露光後加熱処理(ポストエクスポージャベーク(PEB))してもよい。
【0229】
その後、現像を施す。上記の本発明の第1の形態、第2の形態のポジ型感光性樹脂組成物、及びネガ型感光性樹脂組成物において、いずれの組成もアルカリ水溶液によるアルカリ現像が可能である。
【0230】
一方、アルカリ現像に用いることのできる好適なアルカリ水溶液は、2.38%のテトラメチルヒドロキシアンモニウム(TMAH)水溶液である。現像は、スプレイ法、パドル法等通常の方法、現像液に浸漬すること等により行うことができる。その後、必要に応じて、洗浄、リンス、乾燥等を行い、所望のパターンを有するレジスト皮膜を得ることができる。
【0231】
さらに、本発明では、上述のパターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を、温度100~300℃において加熱して後硬化する工程を含む硬化被膜形成方法を提供する。
【0232】
即ち、上記パターン形成方法により得られたパターン形成された被膜をオーブンやホットプレートを用いて、温度100~300℃、好ましくは150~300℃、さらに好ましくは180~250℃において加熱、後硬化することで硬化被膜を形成することができる。後硬化温度が100~300℃であれば、感光性樹脂組成物の皮膜の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板に対する密着力、耐熱性や強度、さらに電気特性の観点から好ましい。そして、後硬化時間は10分間~10時間とすることができる。
【0233】
また、本発明では、上述のポジ型感光性樹脂組成物、又はネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものである層間絶縁膜を提供する。
【0234】
上記の形成されたパターンは、配線、回路及び基板等を覆う保護被膜(層間絶縁膜)を目的として使用されるが、これら形成されたパターン及び保護被膜は、優れた絶縁性を有しながら、被覆する配線、回路のCuのような金属層、基板上に存在する金属電極上、もしくは被覆する配線や回路に存在するSiNのような絶縁基板上などで優れた密着力を示し、かつ保護被膜として相応しい機械的強度を具備したまま、さらに微細なパターン形成を可能にするための解像性能を大幅に改善できるものである。
【0235】
また、本発明では、上述のポジ型感光性樹脂組成物、又はネガ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなるものである表面保護膜を提供する。
【0236】
上述したようにして得られた硬化被膜は、基板等との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びアルカリ性剥離液等に対する薬品耐性に優れ、それを保護被膜とした半導体素子の信頼性にも優れ、特に温度サイクル試験の際のクラック発生を防止でき、電気・電子部品、半導体素子等の表面保護膜として好適に用いられる。
【0237】
上記保護被膜(層間絶縁膜、表面保護膜)は、その耐熱性、薬品耐性、絶縁性から、再配線用途を含む半導体素子用絶縁膜、多層プリント基板用絶縁膜、ソルダーマスク、カバーレイフィルム用途等に有効である。
【0238】
即ち、本発明では、上述の層間絶縁膜又は表面保護膜を有するものである電子部品も提供する。
【0239】
本発明の樹脂は、上記一般式(2)及び(3)で示される構造単位を含むものであることから優れた電気的特性、機械的特性、密着性を持ち、かつアルカリ現像液に可溶であって微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができる。そして、パターンを有して得られたこれら硬化被膜を優れた電気、電子部品保護被膜、絶縁保護被膜とすることができる。また、これらの硬化被膜を有する電子部品を提供することができる。
【0240】
今後、チップの高密度化、高集積化に伴い、絶縁保護膜の再配線技術におけるパターンの微細化も益々進むであろうところ、本発明のポリイミド樹脂を用いた感光性樹脂組成物は、加熱によって得られるポリイミドのパターン及び保護被膜の機械特性、特に強度、更には、密着性等の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を具現化でき、微細化の要求に応えることができる。
【0241】
また、パターン形成、硬化を施された絶縁保護膜は、種々の工程における耐熱性、種々用いられる化学薬品に対する耐性を具備していることも、強く望まれているが、本発明の硬化被膜(層間絶縁膜、表面保護膜)は、この要望に応えることができる。
【0242】
このように、本発明の化合物、ポリイミド樹脂は、これらの特徴を一つとして欠けることなく全て持ち備えた優れた感光性樹脂組成物を提供することができる。
【実施例
【0243】
以下、合成例、比較合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0244】
下記合成例において、使用した化合物の化学構造式を以下に示す。
【化42】
【0245】
[合成例1]ジカルボン酸(XCA-1)の合成
4-(シアノメチル)安息香酸メチル25g(143mmol)、1,4-ジブロモブタン77g(357mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.8g(3.6mmol)の混合物に対し、70℃条件下50%水酸化ナトリウム水溶液114g(1.43mol)を滴下後6時間反応させた。反応液を室温まで冷却し、フラスコ内の液体部分を除去したのち残留したガム状沈殿をトルエンで数回洗浄した。氷冷しながら50%硫酸水溶液200mLを添加し、還流条件下1週間反応させた。沈殿した固体を濾過後イソプロピルエーテルで洗浄し、減圧乾燥することでジカルボン酸(XCA-1)を17g得た。
【0246】
[合成例2]ジカルボン酸(XCA-2)の合成
合成例1において1,4-ジブロモブタンを1,5-ジブロモペンタン82gに代え、それ以外は同様の処方でジカルボン酸(XCA-2)を10g得た。
【0247】
[合成例3]ジカルボン酸(XCA-3)の合成
合成例1において4-(シアノメチル)安息香酸メチルを2-(シアノメチル)安息香酸メチル25gに代え、それ以外は同様の処方でジカルボン酸(XCA-3)を18g得た。
【0248】
[合成例4]ジカルボン酸(XCA-4)の合成
合成例2において4-(シアノメチル)安息香酸メチルを2-(シアノメチル)安息香酸メチル25gに代え、それ以外は同様の処方でジカルボン酸(XCA-4)を12g得た。
【0249】
【化43】
【0250】
[合成例5]ジアミン(XAM-1)の合成
ジカルボン酸(XCA-1)5g、N,N-ジメチルホルムアミド78mg、クロロホルム50gの混合物に塩化チオニル12.7gを滴下し、還流条件下24時間反応させた。溶媒を減圧留去したのち得られたジカルボン酸クロライドに対し、塩化メチレン15gを加え、2Mアンモニア-メタノール溶液43gを滴下後室温で24時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた粗体をカラムクロマトグラフィーで精製することで、ジアミド化合物(IM-1)3.7gを得た。ジアミド化合物(IM-1)、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン4.5g、メタノール400mLの混合物に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン5.5gを滴下後還流条件下15分撹拌後、さらに追加で1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン4.5gを加えて1時間撹拌した。溶媒を減圧留去したのち酢酸エチル200g、水100gを加えて撹拌し、水層を除去後、有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水を用いて洗浄した。溶媒を減圧留去したのち得られた粗体をカラムクロマトグラフィーで精製することでジアミン(XAM-1)2.2gを得た。
【0251】
[合成例6]ジアミン(XAM-2)の合成
合成例5においてジカルボン酸(XCA-1)を合成例3で合成したジカルボン酸(XCA-3)5gに代え、それ以外は同様の処方でジアミン(XAM-2)2.4gを得た。
【0252】
【化44】
【0253】
[合成例7]ジカルボン酸(XCA-5)の合成
合成例5と同様の手法によりジカルボン酸(XCA-1)5gより調製したジカルボン酸クロライドに対し4-ヒドロキシ安息香酸6.5g、塩化メチレン50gを加え撹拌した。反応液を氷冷し、トリエチルアミン11g、N,N-ジメチルアミノピリジン260mg、塩化メチレン10gの混合溶液を滴下した後、室温で24時間反応させた。5%塩酸50gで反応を停止し、析出した固体を濾取し、tert-ブチルメチルエーテルにて洗浄したのち乾燥させることでジカルボン酸(XCA-5)6gを得た。
【0254】
[合成例8]ジアミン(XAM-3)の合成
合成例5と同様の手法によりジカルボン酸(XCA-1)5gより調製したジカルボン酸クロライドに対し4-ニトロフェノール6.5g、塩化メチレン50gを加え撹拌した。反応液を氷冷し、トリエチルアミン11g、N,N-ジメチルアミノピリジン260mg、塩化メチレン10gの混合溶液を滴下した後、室温で24時間反応させた。次いでジイソプロピルエーテル100gを加え氷冷下1時間撹拌し、析出した固体を濾取した。得られた固体を飽和塩化アンモニウム水溶液30g、亜鉛7gと共に60℃で24時間撹拌した。反応液を氷冷し、20%塩酸50gを滴下後8時間撹拌し亜鉛を溶解させた。析出した固体を濾取した後飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に懸濁させて1時間撹拌後、固体を濾取し氷冷したアセトニトリルで数回洗浄した。固体を減圧乾燥する事により、ジアミン(XAM-3)4.9gを得た。
【0255】
[合成例9]ポリアミドイミド樹脂(A-1)の合成
撹拌機、温度計を具備した300mlのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)10g(27.3mmol)、p-アミノフェノール0.32g(2.94mmol)、N-メチル-2-ピロリドン40gを加え、室温で撹拌し溶解した。別途合成例1で合成したジカルボン酸(XCA-1)1.38g(5.87mmol)をN-メチル-2-ピロリドン50gに溶解した溶液に氷冷下塩化チオニル698mg(5.87mmol)を滴下し、室温まで昇温後3時間撹拌する事でジカルボン酸クロリド溶液を調製し、その溶液に対し3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)7.29g(23.5mmol)を加え溶解させた後、先に調製した2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンのN-メチル-2-ピロリドン溶液に対して滴下した。室温で3時間撹拌後、この反応液にキシレン15gを加え、180℃で生成する水を系外へ除きながら6時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、この反応液を超純水650mLの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリアミドイミド樹脂(A-1)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量32,000であった。
【0256】
[合成例10]ポリアミドイミド樹脂(A-2)の合成
合成例9においてジカルボン酸(XCA-1)を合成例2で得られたジカルボン酸(XCA-2)1.46g(5.87mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリアミドイミド樹脂(A-2)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量33,000であった。
【0257】
[合成例11]ポリアミドイミド樹脂(A-3)の合成
合成例9においてジカルボン酸(XCA-1)を合成例3で得られたジカルボン酸(XCA-3)1.38g(5.87mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリアミドイミド樹脂(A-3)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量30,000であった。
【0258】
[合成例12]ポリアミドイミド樹脂(A-4)の合成
合成例9においてジカルボン酸(XCA-1)を合成例4で得られたジカルボン酸(XCA-4)1.46g(5.87mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリアミドイミド樹脂(A-4)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量31,000であった。
【0259】
[合成例13]ポリイミド樹脂(A-5)の合成
撹拌機、温度計を具備した300mlのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10g(27.3mmol)、合成例5で合成したジアミン(XAM-1)1.32g(7.48mmol)、p-アミノフェノール0.41g(3.74mmol)、N-メチル-2-ピロリドン40gを加え室温で撹拌し溶解した。その溶液に対し3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)11.6g(37.4mmol)をN-メチル-2-ピロリドン50gに溶解した溶液を滴下した。室温で3時間撹拌後、この反応液にキシレン15gを加え、180℃で生成する水を系外へ除きながら6時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、この反応液を超純水650mLの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリイミド樹脂(A-5)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量30,000であった。
【0260】
[合成例14]ポリイミド樹脂(A-6)の合成
合成例13においてジアミン(XAM-1)を合成例6で得られたジアミン(XAM-2)1.46g(5.87mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A-6)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量30,000であった。
【0261】
[合成例15]ポリアミドイミド樹脂(A-7)の合成
合成例9においてジカルボン酸(XCA-1)を合成例6で得られたジカルボン酸(XCA-5)2.79g(5.87mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリアミドイミド樹脂(A-7)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量32,000であった。
【0262】
[合成例16]ポリイミド樹脂(A-8)の合成
合成例13においてジアミン(XAM-1)を合成例7で得られたジアミン(XAM-3)3.12g(7.48mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A-8)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量31,000であった。
【0263】
[比較合成例1]ポリイミド樹脂(A-9)の合成
撹拌機、温度計を具備した300mlのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10g(27.3mmol)、p-アミノフェノール0.32g(2.94mmol)、N-メチル-2-ピロリドン40gを加え、室温で撹拌し溶解した。N-メチル-2-ピロリドン50gに3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)9.11g(29.4mmol)を加え溶解させた後、先に調製した2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンのN-メチル-2-ピロリドン溶液に対して滴下した。室温で3時間撹拌後、この反応液にキシレン15gを加え、180℃で生成する水を系外へ除きながら6時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、この反応液を超純水650mLの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリイミド樹脂(A-9)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量35,000であった。
【0264】
[比較合成例2]ポリアミドイミド樹脂(A-10)の合成
合成例9においてジカルボン酸(XCA-1)を4,4‘-ビフェニルジカルボン酸1.43g(5.87mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリアミドイミド樹脂(A-10)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量29,000であった。
【0265】
[比較合成例3]ポリアミドイミド樹脂(A-11)の合成
合成例9においてジカルボン酸(XCA-1)をセバシン酸1.19g(5.87mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリアミドイミド樹脂(A-11)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量34,000であった。
【0266】
[比較合成例4]ポリイミド樹脂(A-12)の合成
合成例13においてジアミン(XAM-1)を4,4’-ベンジジン1.38g(7.48mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A-12)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量31,000であった。
【0267】
[比較合成例5]ポリイミド樹脂(A-13)の合成
合成例13においてジアミン(XAM-1)を1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン2.19g(7.48mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A-13)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量32,000であった。
【0268】
[比較合成例6]ポリイミド樹脂(A-14)の合成
合成例13においてジアミン(XAM-1)を9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン2.61g(7.48mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A-14)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量32,000であった。
【0269】
[比較合成例7]ポリイミド樹脂(A-15)の合成
合成例13においてジアミン(XAM-1)を4,4’-シクロヘキシリデンジアニリン1.99g(7.48mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A-15)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量32,000であった。
【0270】
II.感光性樹脂組成物の調製
上記合成例9~合成例16で合成した樹脂(A-1)~(A-8)及び比較合成例1~7で合成した樹脂(A-9)~(A-15)をベース樹脂として使用して、表1に記載した組成と配合量で、樹脂換算30質量%の樹脂組成物を調製した。その後、撹拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製1.0μmフィルターで精密濾過を行って感光性樹脂組成物を得た。表中溶剤のPGMEAはプロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、GBLはγ―ブチロラクトンを示す。
【0271】
【表1】
【0272】
表1に示した感光性樹脂組成物1~8は、上述した本発明のポジ型感光性樹脂組成物に関するものである。比較感光性樹脂組成物1~7は、上述した本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、ベース樹脂として本発明の重合体の代わりに比較合成例1~7で合成した重合体を用いたものである。
【表2】
【0273】
表2に示した感光性樹脂組成物9~16は、上述した本発明のネガ型感光性樹脂組成物に関するものである。比較感光性樹脂組成物8~14は、上述した本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、ベース樹脂として本発明の重合体の代わりに比較合成例1~7で合成した重合体を用いたものである。
【0274】
なお、表1及び表2中、キノンジアジド化合物である感光剤(感光剤1)、光酸発生剤(光酸発生剤1)、架橋剤(CL-1)~(CL-3)の詳細は以下の通りである。
【0275】
感光剤(感光剤1)
【化45】
(式中、Qは下記式(24)で示される1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基又は水素原子を示し、Qの90%が下記式(24)で示される1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基に置換されている。)
【化46】
【0276】
光酸発生剤(光酸発生剤1)
【化47】
【0277】
架橋剤(CL-1)
【化48】
【0278】
架橋剤(CL-2)
エポキシ樹脂:ADEKA(株)社製 EP4000L
【0279】
架橋剤(CL-3)
【化49】
【0280】
III.パターン形成
上記の感光性樹脂組成物1~16、比較感光性樹脂組成物1~14をシリコン基板上へ5mLディスペンスした後に基板を回転することによって、即ち、スピンコート法によって、パターン形成後施す後硬化の加熱後に膜厚が10μmとなるように塗布した。即ち、後硬化工程後、膜厚が減少することを予め検討し、後硬化後の仕上がり膜厚が10μmとなるように塗布時の回転数を調整した。
次に、ホットプレート上100℃、2分間のプリベークを施した。そして次に、ニコン社製i線ステッパーNSR-2205i11を用いてi線露光、パターン形成を行った。パターン形成においては、ポジ型パターン用、ネガ型パターン用のマスクを、適宜、使用した感光性樹脂組成物に合わせて用いた。該マスクは、縦横1:1配列の20μmのホールが形成できるパターンを有し、50μm~20μmまでは10μm刻み、20μm~10μmまでは5μm刻み、10μm~1μmまでは1μm刻みのホールパターンが形成できるものである。
【0281】
次に、加熱工程(露光後ベーク)を実施したものは、下記表4に示した通りの条件で実施した。
【0282】
現像工程においてはアルカリ水溶液を現像液として、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として用いた。2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の1分間のパドル現像を3回実施した後、超純水によるリンスを行った。
【0283】
次いで、得られた基板上パターンをオーブンを用いて200℃で2時間、窒素パージしながら後硬化を行った。
【0284】
次に、得られたホールパターンの形状が観察できるように、各基板を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてホールパターン形状を観察した。後硬化後の膜厚10μmにおける最小となる開口ホールの口径を求め、パターンの形状を評価した。これらの結果と合わせ、最小パターンを形成できた感度を表3及び表4に示した。
【0285】
なお、ホールのパターン形状は下記のような基準で評価し、表3及び表4中に評価結果を示し、また上記組成物が均一な溶液ではなく、濁りが見られるものは評価不可とした。
良好:ホールが矩形又は順テーパー形状(ホール上部の寸法が底部の寸法より大きい形状)が観察されたもの
不良:逆テーパー形状(ホール上部の寸法が底部の寸法より小さい形状)、オーバーハング形状(ホール上部が張り出した形状)、著しい膜減りが観察されたもの、又はホール底部に残渣が観察されたもの
【0286】
IV.破断伸度、破断強度
上記の感光性樹脂組成物1~16、比較感光性樹脂組成物1~14をアルミ基板上へ硬化後の仕上がり膜厚が10μmとなるようにスピンコートした。次に、ホットプレート上110℃、4分間のプリベークを施し、感光性樹脂膜を得た。
【0287】
その後、オーブンを用いて200℃で2時間、窒素パージしながら硬化を行い、感光性樹脂硬化膜を得た。次に、硬化膜付きウェハを、幅10mm、長さ60mmの短冊状に割断し、20質量%の塩酸に浸漬することで硬化膜を基板から剥離した。得られた硬化膜を島津製作所社製オートグラフAGX-1KNを用いて破断伸度及び破断強度の測定を行った。測定は1サンプルにつき10回行いその平均値を表2中に示した。破断伸びは大きいことが好ましく、20%以上であることがより好ましい。破断強度は大きいことが好ましく、100MPa以上がより好ましい。
【0288】
V.溶剤溶解性
上記合成例9~合成例16及び比較合成例1~7で合成した樹脂(A-1)~(A-15)をベース樹脂とし、30質量%のプロピレングルコールモノメチルエーテルアセテートの樹脂溶液を調製した。終夜攪拌した後、溶液の状態として、透明なものを〇、白濁したものを△、不溶またはゲル化したものを×として、表3中に示した。
【0289】
まず、ポジ型感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物1~8、比較感光性樹脂組成物1~7)を用い、パターニングを行った結果と硬化膜の破断伸度及び破断強度、溶剤溶解性の結果を表3に示す。なお、表中の溶剤溶解性は、感光性樹脂組成物1~8及び比較感光性樹脂組成物1~7のそれぞれに含まれる樹脂(A-1)~(A-15)のものである。
【0290】
【表3】
【0291】
表3に示すように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液現像において良好なパターン形状を示し、最小ホール寸法は仕上がり膜厚10μmと比較して小さい値を示すことから、アスペクト比の1以上を達成することができることが分かった。
【0292】
また表3に示すように、良好な溶剤溶解性を示しつつ、良好な機械特性を有する硬化膜を得る、つまりは、硬化膜の機械特性と溶剤溶解性を両立することが分かった。
【0293】
一方、比較感光性樹脂組成物2,4-6を用いた硬化膜は、本発明の組成物から得られる硬化膜と比べ同等の機械特性を有するものの、樹脂の溶剤溶解性が低く(比較例2,4-6)、また、溶剤溶解性に優れたものは、硬化膜の機械特性が乏しかった(比較例1,3,7)。このように、一般式(2)で示される構造単位を含まない樹脂をベース樹脂とする比較感光性樹脂組成物を用いた硬化膜は、上記性能の両立が難しいことが分かった。
特に、9,9-ジフェニルフルオレン骨格を導入した樹脂(特許文献5参照)を用いた比較例6の硬化膜は、実施例と同程度の機械特性を有するものの、樹脂の溶剤溶解性が低いこと、1,1-ジフェニルシクロヘキサン構造を有する樹脂(特許文献6参照)を用いた比較例7の硬化膜は、ある程度の溶剤溶解性を有するものの、硬化膜の強度は実施例には及ばなかったことから、単にカルド構造を構造単位として含むだけでは、本発明のように硬化膜の機械特性と溶剤溶解性とを両立できないことは明らかである。
【0294】
次に、ネガ型感光性樹脂組成物(感光性樹脂組成物9~16、比較感光性樹脂組成物8~14)を用い、パターニングを行った結果と硬化膜の破断伸度及び破断強度を表4に示す。なお、感光性樹脂組成物9~16及び比較感光性樹脂組成物8~14それぞれに含まれる樹脂(A-1)~(A-15)の溶剤溶解性については、表3に示した通りである。
【0295】
【表4】
【0296】
表4に示すように、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、アルカリ水溶液現像において良好なパターン形状を示し、最小ホール寸法は仕上がり膜厚10μmと比較して小さい値を示すことから、アスペクト比の1以上を達成することができることが分かった。
【0297】
また表4に示すように、良好な溶剤溶解性を示しつつ、良好な機械特性を有する硬化膜を得る、つまりは、硬化膜の機械特性と溶剤溶解性を両立することが分かった。
【0298】
一方、比較感光性樹脂組成物を用いた硬化膜は、本発明の組成物から得られる硬化膜と比べ同等の機械特性(破断伸度、破断強度)を有し、溶剤溶解性に優れたものは無く、このように、一般式(2)で示される構造単位を含まない樹脂をベース樹脂とする比較感光性樹脂組成物を用いた硬化膜は、上記性能の両立が難しいことが分かった。
【0299】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。