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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】樹脂積層体及び実装構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/04 20060101AFI20241209BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20241209BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241209BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20241209BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
B32B27/04 Z
B32B27/38
G03F7/027 515
C08G59/14
C08G59/42
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020181489
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072180
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 祈之
(72)【発明者】
【氏名】高野 正臣
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-021769(JP,A)
【文献】国際公開第2011/071107(WO,A1)
【文献】特開2003-021769(JP,A)
【文献】特開2015-194547(JP,A)
【文献】特開2012-67225(JP,A)
【文献】特開2020-166253(JP,A)
【文献】特開2018-1604(JP,A)
【文献】特開平10-289785(JP,A)
【文献】特開2019-203963(JP,A)
【文献】特開2016-139043(JP,A)
【文献】特開2017-72760(JP,A)
【文献】特開2020-52280(JP,A)
【文献】特開2020-76913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08G59/00-59/72
G03C3/00
G03F7/004-7/04
7/06
7/075-7/115
7/16-7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体上に積層された樹脂層とを備える樹脂積層体であって、
前記樹脂層が、熱又は光によって硬化する樹脂組成物からなる未硬化領域と、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域とを有し、
前記樹脂層において前記未硬化領域から未硬化の前記樹脂組成物が平面方向に移動しないように、前記未硬化領域が周囲を前記樹脂組成物の硬化物で囲まれており、
前記未硬化領域の平面形状が幾何学的形状であり
前記未硬化領域内の前記樹脂組成物が80℃~110℃の温度範囲内における粘度が100Pa・s以下のものであり、
前記樹脂組成物がフルオレン骨格を有する化合物を含有し、かつ、
前記フルオレン骨格を有する化合物が、下記一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物であること、
を特徴とする樹脂積層体。
【化1】
[式(1)において、Arは、それぞれ独立して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、前記芳香族炭化水素基を構成する炭素に結合している水素原子の一部分が炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、又は、ハロゲン基で置換されていてもよい。R は、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基である。lは、それぞれ独立して、0~3の数である。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)で表される置換基又は下記一般式(3)で表される置換基である。Yは4価のカルボン酸残基である。Zは、それぞれ独立して、水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。nは平均値が1~20の数である。]
【化2】
【化3】
[式(2)及び(3)において、R は水素原子又はメチル基であり、R は炭素数2~10の2価のアルキレン基又はアルキルアリーレン基であり、R は炭素数2~20の2価の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。]
【化4】
[式(4)において、Wは2価又は3価のカルボン酸残基であり、mは1又は2である。]
【請求項2】
前記未硬化領域が素子を実装するための領域であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
前記未硬化領域の平面形状が円形、楕円形及び多角形からなるから選択される少なくとも1種の形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂積層体。
【請求項4】
請求項1~のうちのいずれか一項に記載の樹脂積層体の前記樹脂層を硬化した硬化樹脂積層体と、
前記硬化樹脂積層体中の硬化した樹脂層の前記未硬化領域が存在していた領域を実装領域として配置された素子と、
を備える実装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層体及び実装構造体に関し、より詳しくは、素子(例えば半導体素子)の実装に好適に用いることが可能な樹脂積層体及びそれを用いて得られる実装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路技術に対する近年の技術開発の主な傾向の一つは、部品のサイズを縮小することにある。半導体パッケージの小型化は集積回路の高性能化に直接影響を及ぼすだけでなく、電子システム全体の小型化、低コスト及び信頼性にも影響を与える重要なものである。そして、半導体素子のサイズが次第に縮小されて集積度が向上するのに伴って、半導体パッケージに対しては、更に高い要求がなされている。このような背景の下、近年では、半導体パッケージを製造する方法として様々な方法が提案されている。例えば、特開2008-021769号公報(特許文献1)には、基板上に積層した樹脂の粘度を制御することによって、半導体素子をμmオーダーの位置精度で実装する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-021769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、素子を実装するための基板として利用した場合に、素子を高い位置精度で所望の実装位置に移動させて効率よく配置することが可能であるとともに、素子を所望の向きに精度よく回転させて効率よく配置することが可能な樹脂積層体、及び、その樹脂積層体を用いて得られる実装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、支持体と、前記支持体上に積層された樹脂層とを備える樹脂積層体において、前記樹脂層を、熱又は光によって硬化する樹脂組成物からなる未硬化領域と、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域とを有するものとし、前記樹脂層において前記未硬化領域から未硬化の前記樹脂組成物が平面方向に移動しないように、前記未硬化領域は周囲を前記樹脂組成物の硬化物で囲まれたものとし、前記未硬化領域の平面形状を幾何学的形状とし、かつ、前記未硬化領域内の前記樹脂組成物を60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度における粘度が100Pa・s以下となるものとすることにより、実装時に採用される温度(60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度)において、実装領域として利用する未硬化領域内の樹脂組成物の粘度を上記特定の範囲とすることが可能となり、その未硬化領域の形状が幾何学的形状(幾何学パターン)となっているため、未硬化領域内において、その形状に由来して未硬化の樹脂組成物の表面張力の働く方向とその力の大きさを調整できることから、素子を実装するための基板として利用した場合に、配置した素子を、未硬化の樹脂組成物の表面張力を利用して、所望の実装位置(実装領域の形状に応じた実装位置:設計上目的とする実装位置)まで移動させて高い位置精度で効率よく配置させることが可能となるとともに所望の向き(実装領域の形状に応じた向き:設計上目的とする向き)に精度よく回転させて効率よく配置することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の樹脂積層体は、支持体と、前記支持体上に積層された樹脂層とを備える樹脂積層体であって、
前記樹脂層が、熱又は光によって硬化する樹脂組成物からなる未硬化領域と、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域とを有し、
前記樹脂層において前記未硬化領域から未硬化の前記樹脂組成物が平面方向に移動しないように、前記未硬化領域が周囲を前記樹脂組成物の硬化物で囲まれており、
前記未硬化領域の平面形状が幾何学的形状であり
前記未硬化領域内の前記樹脂組成物が80℃~110℃の温度範囲内における粘度が100Pa・s以下のものであり、
前記樹脂組成物がフルオレン骨格を有する化合物を含有し、かつ、
前記フルオレン骨格を有する化合物が、下記一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物であること、
を特徴とするものである。なお、ここにいう「未硬化領域の平面形状」とは前記樹脂層の表面の法線方向から視た場合の前記未硬化領域の形状(前記硬化領域と前記未硬化領域との境界部分の形状)を意味し、「平面方向」とは、前記樹脂層の表面と平行な方向(水平方向)を意味する。
【0007】
らに、上記本発明の樹脂積層体においては、前記未硬化領域の平面形状が円形、楕円形及び多角形からなるから選択される少なくとも1種の形状であることが好ましい(なお、ここにいう「多角形」には、通常の多角形の他、角が丸みを帯びた形状(いわゆる角丸の形状)も含む)。
【0008】
さらに、上記本発明の樹脂積層体においては、前記未硬化領域が素子を実装するための領域であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の実装構造体は、上記本発明の樹脂積層体の前記樹脂層を硬化した硬化樹脂積層体と、
前記硬化樹脂積層体中の硬化した樹脂層の前記未硬化領域が存在していた領域を実装領域として配置された素子と、
を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、素子を実装するための基板として利用した場合に、素子を高い位置精度で所望の実装位置に移動させて効率よく配置することが可能であるとともに、素子を所望の向きに精度よく回転させて効率よく配置することが可能な樹脂積層体、及び、その樹脂積層体を用いて得られる実装構造体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の樹脂積層体の一実施形態の樹脂層の表面を平面視した状態を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の樹脂積層体の一実施形態の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、場合により図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
〔樹脂積層体〕
本発明の樹脂積層体は、支持体と、前記支持体上に積層された樹脂層とを備える樹脂積層体であって、
前記樹脂層が、熱又は光によって硬化する樹脂組成物からなる未硬化領域と、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域とを有し、
前記樹脂層において前記未硬化領域から未硬化の前記樹脂組成物が平面方向に移動しないように、前記未硬化領域が周囲を前記樹脂組成物の硬化物で囲まれており、
前記未硬化領域の平面形状が幾何学的形状であり、かつ、
前記未硬化領域内の前記樹脂組成物が60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度における粘度が100Pa・s以下のものであること、
を特徴とするものである。
【0014】
本発明の樹脂積層体が備える前記支持体としては特に制限されず、目的に応じて、公知の基材を適宜利用でき、透明基材を利用してもよいし、あるいは、透明基材以外の基材を利用してもよい。このような透明基材としては、例えば、ガラス基板、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)、これらの表面上にITOや金などの透明電極が蒸着あるいはパターニングされた基材などを適宜利用できる。
【0015】
また、このような支持体上に積層された樹脂層は、熱又は光によって硬化する樹脂組成物(未硬化の樹脂組成物)からなる未硬化領域と、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域とを有するものである。このような樹脂層の未硬化領域を形成する前記樹脂組成物(未硬化の樹脂組成物)は、熱又は光によって硬化するものである。そのため、前記樹脂組成物(未効果)としては、熱又は光によって硬化する化合物(以下、場合により、単に「(A)成分」と称する)を含むものが好ましい。
【0016】
このような熱又は光で重合する化合物((A)成分)の種類は特に制限されず、モノマー、オリゴマー又は樹脂のいずれであってもよい。このようなオリゴマーや樹脂としては、熱や光の作用で、更に重合が進行するものであればよく、公知のものを適宜利用できる。このような熱又は光で重合する化合物としては、例えば、エポキシ系化合物、シリコーン系化合物、スチレン系化合物、ポリイミド系化合物、ポリアミド、不飽和ポリエステル系化合物、ビニルエステル系化合物、エポキシ変性(メタ)アクリル系化合物、ウレタン変性(メタ)アクリル系化合物等が挙げられる。
【0017】
また、このような樹脂組成物中に含有せしめる前記熱又は光で重合する化合物((A)成分)としては、前記樹脂層における前記硬化領域(以下、場合により単に「硬化部」と称する)及び前記未硬化領域(以下、場合により「未硬化部」と称する)を形成する際に、その硬化部と未硬化部の形状の制御がより容易となることから観点から、分子内に重合性不飽和基を有する化合物(以下、場合により単に「重合性不飽和基含有化合物」と称する)がより好ましい。ここで、重合性不飽和基の代表的な例としては、アクリル基又はメタクリル基(これらを併せて、以下、「(メタ)アクリル基」と称する)がある。
【0018】
このような重合性不飽和基含有化合物として好適に利用可能な化合物としては、例えば、エポキシ基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたヒドロキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物に、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又はそれらの酸一無水物及びテトラカルボン酸又はその酸二無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物が挙げられる。また、エポキシ(メタ)アクリレート酸付加物へと誘導されるエポキシ基を2個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物が好適なものとして挙げられ、ビスフェノール型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物を含むものとすることがより好ましい。
【0019】
このようなビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物が挙げられる。このような2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物を得るための反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、前記反応により得られるビスフェノール型エポキシ化合物は、一般にビスフェノール骨格を2つ以上含むエポキシ化合物を含むものとなる。また、このような反応に用いられるビスフェノール類としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール等が含まれる。この中でも、フルオレン-9,9-ジイル基を有するビスフェノール類が特に好ましい。
【0020】
また、このような樹脂組成物は、未硬化の状態における粘弾性の制御と、未硬化領域に素子を配置させた際に表面張力による素子の沈み込みを抑制する観点から、フルオレン骨格を有する化合物を含有することが好ましい。また、このようなフルオレン骨格を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物が好ましい一実施の形態として挙げられる。
【0021】
【化1】
【0022】
なお、式(1)において、Arは、それぞれ独立して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、その芳香族炭化水素基を構成する炭素に結合している水素原子の一部分が炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、又は、ハロゲン基で置換されていてもよい。また、式(1)において、Rは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0~3の数である。なお、このようなlは、1分子中におけるlの平均値が0~3の数となり、かつ、組成物中におけるlの平均値が0~3の数となるように選択される数であることが好ましい。さらに、式(1)において、Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される置換基であり、Yは4価のカルボン酸残基である。また、式(1)において、Zは、それぞれ独立して、水素原子または下記一般式(4)で表される置換基であり、1個以上は下記一般式(4)で表される置換基である。また、式(1)において、nは平均値が1~20の数である。
【0023】
ここで、上記芳香族炭化水素基は、前記炭素数の範囲内のものであれば無置換体でもよく、例えば、o,m,p-フェニレン、トルイレン、エチルフェニレン、n-プロピルフェニレン、イソプロピルフェニレン、直鎖または分岐したブチルフェニレン、ペンチルフェニレン基などが挙げられ、炭素数の範囲を超えない限り、2~4個の置換基で置換されていてもよい。
【0024】
【化2】
【0025】
【化3】
【0026】
式(2)及び(3)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基又はアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。なお、樹脂組成物中におけるpの平均値は0~5の数であることが好ましく、pの平均値が0~2の数であることがより好ましい。このようなpの平均値が上記範囲である場合には、アルキレンオキサイドという柔軟構造の分布が広範囲になることを抑制できるので、樹脂性能を低下させることなく、硬化させた際に、硬化膜として十分な硬化性を付与することができる。
【0027】
ここで、上記Rとして選択され得るアルキレン基としては、直鎖状または分岐状のいずれの構造のものでもよく、例えば、エチレン、エチリデン、ビニレン、ビニリデン、プロピレン、トリメチレン、プロペニレン、イソプロピリデン、テトラメチレン基等が挙げられる。また、上記Rとして選択され得るアルキルアリーレン基としては、前記炭素数の範囲内のものであれば無置換アリーレン基であってもよく、例えば、o,m,p-フェニレン、トルイレン、エチルフェニレン、n-プロピルフェニレン、イソプロピルフェニレン、直鎖又は分岐したブチルフェニレン、ペンチルフェニレン基等が挙げられる。
【0028】
【化4】
【0029】
式(4)において、Wは2価又は3価のカルボン酸残基であり、mは1又は2である。
【0030】
また、上記一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物としては、原料となるエポキシ化合物として、1分子内にいくつかのオキシアルキレン基を含むものを利用して得られるものであり、かつ、一般式(1)中のArが炭素数6~14の芳香族炭化水素基である化合物を使用することが好ましい。
【0031】
このような炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、2価のナフチル基及び水素原子の一部がアルキル基等で置換されていてもよいフェニレン基を好適に利用できる。ここで、重合性不飽和基含有化合物は、一般式(1)中のフルオレン基に結合する2つのArがいずれもナフチル基である(ビスナフトールフルオレン骨格を有する)か、又はいずれもフェニレン基である(ビスフェノールフルオレン骨格をする)ことが好ましい。これは、重合性不飽和基含有化合物を硬化してなる硬化膜(塗膜)は、加熱した際に発生するガスの量が少ないからである。
【0032】
ここで、上記一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物の製造方法について、より詳細に説明する。このような一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物の製造方法においては、先ず、前記エポキシ基を2個以上有する化合物として下記一般式(5)で表されるエポキシ化合物(a-1)(このようなエポキシ化合物(a-1)は、1分子内にいくつかのオキシアルキレン基を有してもよく、ビスナフトールフルオレン骨格又はビスフェノールフルオレン骨格を有するものとすることがより好ましい)を用い、エポキシ化合物(a-1)に、(メタ)アクリル酸、下記一般式(6)または下記一般式(7)で表される(メタ)アクリル酸誘導体のいずれか一方もしくは両方を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレート化合物を得る。
【0033】
【化5】
【0034】
式(5)において、Arは、それぞれ独立して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、その芳香族炭化水素基を構成する炭素に結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0~3の数である。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
式(6)及び(7)において、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数2~10の2価のアルキレン基又はアルキルアリーレン基であり、Rは炭素数2~20の2価の飽和又は不飽和の炭化水素基であり、pは0~10の数である。
【0038】
上記エポキシ化合物(a-1)と上記(メタ)アクリル酸誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。例えば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。このような反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、下記式(8)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「一般式(8)で表されるジオール(d)」ともいう)とすることができる。
【0039】
【化8】
【0040】
式(8)において、Arは、それぞれ独立して、炭素数6~14の芳香族炭化水素基であり、その芳香族炭化水素基を構成する炭素に結合している水素原子の一部分は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキルアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基又はハロゲン基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、上記の一般式(2)又は(3)で表される置換基であり、Rは、それぞれ独立して、炭素数2~4のアルキレン基であり、lは、それぞれ独立して、0~3の数である。
【0041】
ここで、一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物の製造に際して、上記一般式(8)で表されるジオール(d)の合成反応、及び、後述の反応(ジオール(d)の合成に続くジオール(d)と多価カルボン酸またはその無水物との反応)は、通常、溶媒中で(必要に応じて触媒を用いて)行う。
【0042】
このような溶媒としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒;ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒;シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0043】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応には触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては公知のものを適宜利用できる(例えば、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が記載されている)。
【0044】
次に、このような一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物の製造方法においては、上記エポキシ化合物(a-1)と上記(メタ)アクリル酸誘導体との反応で得られる一般式(8)で表されるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又はその酸無水物(b)と、テトラカルボン酸又はその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物(1分子内にカルボキシ基及び重合性不飽和基を有する化合物)を得る。
【0045】
一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物を合成するために使用される酸成分としては、一般式(8)で表されるジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であって、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又はそれらの酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを併用することが好ましい。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0046】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又はそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸又はそれらの酸一無水物等が含まれる。
【0047】
また、上記鎖式炭化水素ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物、及び任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0048】
また、上記脂環式ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸等の酸一無水物、及び任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0049】
また、上記芳香族ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の酸一無水物、及び任意の置換基が導入されたジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0050】
上記ジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸であることがより好ましい。
【0051】
また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸においては、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸又はトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
また、上記テトラカルボン酸又はその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物等が含まれる。
【0053】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。
【0054】
また、上記脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。
【0055】
また、芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸等が含まれる。
【0056】
また、上記テトラカルボン酸又はその酸二無水物(c)としては、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ここで、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、例えば、国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物群が挙げられ、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、ターフェニルジオール等)の2個のヒドロキシル基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基が反応してエステル結合した形の酸二無水物(これらの化合物を以下、「芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステル」と称する)である。
【0057】
上記テトラカルボン酸又はその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸が好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸がより好ましい。また、上記テトラカルボン酸又はその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。さらに、上記テトラカルボン酸又はその酸二無水物(c)としては、ナフタレンジオールのビス無水トリメリット酸エステルも好ましく用いることができる。なお、上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物、および芳香族ジオールのビス無水トリメリット酸エステルは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
一般式(8)で表されるジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応については、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0059】
ここで、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(d)、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、テトラカルボン酸二無水物(c)とのモル比が(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0060】
例えば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、重合性不飽和基を含有するジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[(d)/〔(b)/2+(c)〕]が0.5~1.0となるように反応させることが好ましい。ここで、モル比が1.0以下である場合には、未反応の重合性不飽和基を含有するジオールの含有量を増大させることがないので樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。一方、モル比が0.5以上の場合には、式(2)で表される重合性不飽和基含有化合物の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大することを抑制できることから、樹脂組成物の経時安定性を高めることができる。なお、重合性不飽和基含有化合物の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比は、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0061】
一般式(1)で表される重合性不飽和基含有化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、通常1000~100000であることが好ましく、2000~20000であることがより好ましく、2000~8000であることが更に好ましい。このような重量平均分子量が1000以上の場合には、パターンの密着性の低下を抑制することができる。また、重量平均分子量が100000以下である場合には、樹脂組成物の溶液の溶液粘度を塗布に好適な範囲に調整しやすい。
【0062】
このような重合性不飽和基含有化合物の好適な化合物の他の一例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体で(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂が挙げられる。このような(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂(共重合体)を得るための方法としては、例えば、第一ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、第二ステップとして(メタ)アクリル酸を反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させる方法が挙げられる。また、このような(メタ)アクリル基とカルボキシル基を有する樹脂(共重合体)を得るための別の方法としては、第一ステップとして(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、第二ステップとしてグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、第三ステップでジカルボン酸又はトリカルボン酸の無水物を反応させるという方法が挙げられる。
【0063】
このような重合性不飽和基含有化合物の好適な化合物の更に別の一例としては、第一成分として分子中にエチレン性不飽和結合を有するポリオール化合物と、第二成分として分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物と、第三成分としてジイソシアネート化合物と、を反応させて得られるウレタン化合物が挙げられる。
【0064】
また、前記樹脂組成物は、熱又は光による硬化を促進させるために、上記(A)成分(好ましくは前記重合性不飽和基含有化合物)とともに、(メタ)アクリレート又はそれらのオリゴマーから選ばれた少なくとも1種以上のアクリレートのアルキレンオキサイド変性物(以下、場合により、単に「(B)成分」と称する)を含むことが好ましい。このような(B)成分としては、(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物の場合と、それら(メタ)アクリレートのオリゴマーのアルキレンオキサイド変性物の場合と、これら両者が含まれる場合とがある。
【0065】
このようなアルキレンオキサイド変性物((B)成分)を得るための原料として使用される(メタ)アクリレート(アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する)について例示すると、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、クロロヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するものや、例えばアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、コハク酸(メタ)アクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、デカフロロヘプチル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、ジブロモプロピル(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート類や、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート等の脂環式変性(メタ)アクリレート類や、例えばフェニキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート類や、例えばフェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、ブトキシ化リン酸(メタ)アクリレート、オクトキシ化リン酸(メタ)アクリレート等のリン含有(メタ)アクリレート類や、例えばスルホン酸ソーダ(メタ)アクリレート等の水溶性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0066】
また、このような(メタ)アクリレートの別の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能化合物が挙げられる。
【0067】
また、このような(メタ)アクリレートの更に別の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の化合物が挙げられる。
【0068】
また、前記アルキレンオキサイド変性物((B)成分)の原料となる(メタ)アクリレートオリゴマーは、上記した(メタ)アクリレートのオリゴマーが挙げられる。そして、これらの単官能、二官能及び三官能以上の(メタ)アクリレート又はこれらのオリゴマーについては、その1種のみを単独で使用できることは勿論、2種以上を併用して使用することもできる。
【0069】
前記アルキレンオキサイド変性物((B)成分)は、上記(A)成分(好ましくは前記重合性不飽和基含有化合物)の分子同士を架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためには三官能以上有するものを用いることが好ましい。また、モノマーの分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50~300であることが好ましく、アクリル当量は80~200であることがより好ましい。なお、(B)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0070】
また、前記樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10~90質量%であることが好ましい。また、前記樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、5~200質量部であることが好ましく、10~80質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して5質量部以上である場合には、樹脂に占める光反応性官能基が十分にあるため、十分な架橋構造が形成される。また、(B)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して200質量部以下である場合には、十分な硬化性を有する硬化膜を得ることができるので、パターンエッジをよりシャープにすることができる。
【0071】
樹脂組成物は、支持体との密着性を向上する目的でエポキシ基を有する化合物(以下、場合により、単に「(C)成分」と称する)を含有してもよい。このような(C)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリル基を有するモノマーの共重合体、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートに代表される脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、エポキシ化ポリブタジエン、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。これら成分としてはエポキシ当量が50~500g/eqの化合物が好ましい。さらに、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物を用いることがより好ましい。なお、(C)成分は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
また、前記樹脂組成物は、樹脂又は樹脂を形成するための成分(以下、両者を併せて樹脂成分ともいう)として、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分(硬化剤を使用するときは、それを含む)の他に、その他の光重合性のモノマー及びオリゴマーから選ばれた少なくとも1種の他の不飽和化合物(以下、場合により単に「(E)成分」と称する)を含んでいてもよい。このような(E)成分としては、不飽和基を1以上有する各種ビニルモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、スチレン):それらの各種オリゴマー(例えば不飽和基含有炭化水素樹脂);等が挙げられる。また、前記樹脂組成物が、その用途に応じて、優れた光硬化性、すなわち高感度化が要求される場合、前記(E)成分として、重合可能な二重結合を1分子中に2つ(二官能)以上、より好ましくは3つ(三官能)以上有するオリゴマー又はモノマーを配合することが好ましい。上記のオリゴマーやモノマーの配合割合に関して、一般に、3官能以上の多官能アクリレート等の配合が少ないと、十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合が発生する傾向にあり、また、3官能以上の多官能アクリレート等の配合が多すぎると、未露光部分でも現像できなくなる場合が発生し、重合度や酸無水物の構造によってはタックフリー性が低下する傾向にある。
【0073】
このような樹脂成分中の(A)成分100質量部に対する(C)成分及び(E)成分の割合は、それぞれ、(C)成分0~50質量部及び(E)成分0~100質量部であることが好ましく、(C)成分10~40質量部及び(E)成分0~40質量部であることがより好ましい。また、樹脂成分中の(A)成分の割合は30~80質量%、(B)成分と(E)成分の合計量の割合は10~40質量%、(C)成分の割合は5~50質量%程度がよい。
【0074】
さらに、前記樹脂組成物は、組成物中の成分(例えば(A)成分、(B)成分及び(E)成分として含有され得る成分)を光重合させるために、光重合開始剤及び増感剤からなる群から選択される少なくとも1種(以下、場合により、単に「(D)成分」と称する)を更に含有することが好ましい。このような(D)成分として用いることが可能な光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤、例えばミヒラーズケトン等のラジカル発生型のものや、トリアリールスルフォニウム塩、ジアリールヨウドニウム塩等のカチオン発生型等の光重合開始剤を適宜利用できる。このような成分(D)としての光重合開始剤は、これを単独で利用してもよいし、また、2種類以上を併用することもできる。なお、(D)成分として用いる光重合開始剤は、前記樹脂組成物が熱重合可能なものである場合には、必ずしも必要ではないが、感光、現像等によりパターンを形成させる場合は、含有させることが好ましい。
【0075】
また、このような成分(D)として用いることが可能な増感剤としては、例えば、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N―ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等のような公知の増感剤(光増感剤)を挙げることができ、これらは1種を単独用いてもよく、あるいは、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記(D)成分としては、前記光重合開始剤と前記増感剤(光増感剤)とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0076】
このような(D)成分の使用量(光重合開始剤及び増感剤の合計の使用量)は、(A)成分100質量部に対して0~10質量部であることが好ましく、0.01~10質量部であることがより好ましく、1~5質量部であることが特に好ましい。また、前記樹脂成分の総量((A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分の合計量)100質量部に対する(D)成分の使用量(光重合開始剤及び増感剤の合計の使用量)は、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。(D)成分の使用量が10質量部を超えると吸光割合が大きくなり、光が下部まで浸透しなくなる傾向にある。
【0077】
また、前記樹脂組成物としては、(A)成分としての重合性不飽和基含有化合物(より好ましくは上記一般式(1)で表される化合物);前記(B)成分;前記(C)成分;前記(D)成分;及び前記(E)成分を含むものであることが好ましい。
【0078】
また、前記樹脂層の未硬化領域を形成する樹脂組成物としては、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶解させることにより得られる溶液(樹脂組成物の溶液)を、支持体上に塗布した後又は特定の領域(未硬化領域とする領域)に導入した後、溶剤を蒸発除去することにより得られる、未硬化の樹脂組成物(溶剤除去後のもの)を利用してもよい。このような樹脂組成物を溶解させるために利用することが可能な溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、ジアセトンアルコール等のアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-ブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等が挙げられる。このような溶剤を用いて各成分を溶解、混合することにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。このような溶剤は、塗布性等の必要特性を得るために適宜利用すればよく、1種を単独で利用しもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。なお、樹脂組成物の溶液の溶液粘度をより効率よく調整することができるといった観点からは、2種以上の溶剤を用いることが好ましい。なお、このように2種以上の溶剤を用い、それらの配合割合を適宜調整することにより、樹脂組成物の溶液の溶液粘度を容易に調整することができる。そのため、2種以上の溶剤を用いた場合には、膜厚の増減を制御し易くなるだけなく、塗布時に支持体上に均一に広がるように組成物が広がる速度も調整(制御)できるので、塗布ムラや、ストリエーションの発生をより抑制することが可能である。さらに、蒸気圧が異なる溶剤を2種以上組み合わせた場合には、成膜後に塗膜表面のみがすぐに乾燥するように組成物の乾燥速度を調整したり、反対に組成物の乾燥速度が遅くなるように抑制する等、組成物の乾燥速度の調整(制御)が可能となり、これにより焼成時に塗膜をより均一に加熱することも可能となる。その結果、蒸気圧が異なる溶剤を2種以上組み合わせた場合には、膜厚のムラの発生をより抑制することも可能となる。このような溶剤の含有量は、目標とする溶液粘度によって変化するが、樹脂組成物と溶剤との混合物(溶液)の総量に対して60~90質量%であることが好ましい。
【0079】
さらに、前記樹脂組成物は、樹脂組成物の表面張力を調整するために、必要に応じて界面活性剤を含有してもよい。このような界面活性剤としては、シリコーン系、フッ素系等の公知の界面活性剤が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の例には、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが含まれる。フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが含まれる。また、このような界面活性剤は1種のみを単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用してもよい。また、前記界面活性剤の添加量は、後述の条件(I)を満たすように、樹脂組成物の表面張力を測定しながら決定することが好ましく、その添加量の範囲としては、樹脂組成物中0.001~0.1質量%とすることが好ましい。なお、このような界面活性剤の添加量の好適な範囲は、その種類によっても異なり、例えば、シリコーン系界面活性剤の場合には0.001~0.005質量%であることが好ましく、また、フッ素系界面活性剤の場合には0.01~0.1質量%であることが好ましい。
【0080】
また、このような界面活性剤の配合量を調整することにより、樹脂組成物の表面張力を調整することができる。このような樹脂組成物の表面張力をσとし、樹脂組成物から界面活性剤を除いた樹脂組成物の表面張力をσ0とした場合、式:
0.85≦σ/σ0≦1
で表される条件(I)を満たすように界面活性剤の配合量を調整することが好ましい。前記条件(I)を満たすように界面活性剤の配合量を調整することで、未硬化領域(未硬化部)に素子を配置した場合に、素子の沈み込みをより効果的に抑制することができる傾向にある。なお、通常、実験的には界面活性剤を添加する前にσ0を測定し、界面活性剤を添加した後にσを測定することになる。なお、表面張力σおよび表面張力σ0の測定方法は、例えば、プレート法自動表面張力計(協和界面科学社製Model:CBVP-Z)を用い、気温23℃、湿度50%の条件下、表面張力を測定することができる。
【0081】
さらに、前記樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、充填材、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤等の添加剤を配合することができる。
【0082】
このような添加剤として利用可能な前記硬化剤としては、エポキシ化合物に通常適用される公知の化合物を適宜利用できる。このように、前記硬化剤としては、エポキシ化合物の硬化剤として用いられるものを好適に利用することができ、例えば、アミン系化合物、多価カルボン酸系化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等を挙げることができる。また、このような多価カルボン酸系化合物としては、多価カルボン酸、多価カルボン酸の無水物、及び多価カルボン酸の熱分解性エステルを例示することができる。
【0083】
さらに、前記添加剤として利用可能な前記硬化促進剤としては、エポキシ化合物の硬化促進剤、硬化触媒、潜在性硬化剤等として知られる公知の化合物を適宜利用でき、例えば三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等を挙げることができる。
【0084】
前記添加剤として利用可能な、前記熱重合禁止剤および前記酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。また、前記充填材の例には、シリカ、チタニア等のナノサイズ粒子で塗膜の透明性を阻害しないものでかつ有機溶剤に分散することができるものが含まれる。更に、前記レベリング剤や前記消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。また、前記添加剤として利用可能なカップリング剤としてはシランカップリング剤が挙げられる。また、前記シランカップリング剤の例には3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0085】
また、樹脂組成物は、ドライフィルムのような形態として使用することも可能であり、露光、現像によって微細パターンを形成することも可能であるとともに、そのフィルムに未硬化の樹脂組成物(熱又は光によって硬化する樹脂組成物)からなる未硬化領域と、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域とを形成することが可能である。
【0086】
また、前記樹脂層は、熱又は光によって硬化する樹脂組成物からなる未硬化領域と、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域とを有するものである。このような樹脂層を形成するための方法は特に制限されないが、例えば、溶剤に溶解させることにより得られる前記樹脂組成物の溶液を支持体の表面に塗布し、形成された塗膜から溶剤を乾燥させて除去した後(このような乾燥のために、いわゆるプリベークを施してもよい)、溶剤除去後の前記塗膜の上にフォトマスクをあてて、紫外線を照射して露光部を硬化(光重合)させることによって、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域(硬化部)と、未硬化の樹脂組成物からなる未硬化領域(未硬化部)を形成して、前記支持体上に樹脂層を形成する方法を利用することができる。このような光重合により、支持体上に硬化部及び未硬化部を有する樹脂層をより効率よく形成することができる。なお、この場合、前記樹脂層の未硬化領域を形成する前記樹脂組成物としては、上述のように、溶剤に溶解させることにより得られる溶液(樹脂組成物の溶液)を、支持体上に塗布した後、得られる塗膜から溶剤を蒸発除去(乾燥除去)し、その後、未露光の部分に未硬化のまま残る樹脂組成物をそのまま利用することとなる。また、このように、前記樹脂層は、前記樹脂組成物を用いることで容易に形成することが可能である。
【0087】
また、前記樹脂層においては、前記未硬化領域から未硬化の前記樹脂組成物が平面方向に移動しないように、前記未硬化領域が周囲を前記樹脂組成物の硬化物(硬化領域)で囲まれている。なお、このような硬化領域と未硬化領域の状態等を、以下、図1及び図2に示す本発明の樹脂積層体の好適な一実施形態を参照しながら簡単に説明する。図1は、本発明の樹脂積層体の好適な一実施形態の樹脂層の表面を、該表面に対して垂直な方向(法線方向)から見た場合の平面図を模式的に示すものである。図1に示すように、樹脂層1は、硬化領域1Aと、未硬化領域1Bを有し、樹脂層1の表面の法線方向から視た場合に、硬化領域1Aと未硬化領域1Bとの境界線B内に未硬化領域1Bが存在している。すなわち、樹脂層1の表面の法線方向から視た場合に、硬化領域1Aは、未硬化領域1Bの周囲を囲うように形成されている。このように、未硬化領域1Bは周囲を前記樹脂組成物の硬化物(硬化領域1Aを構成するもの)により囲まれており、未硬化領域1Bの平面形状(境界線Bにより描かれる形状)は幾何学的形状(本例では円形)となっている。また、図2は、図1中のA-A’線を含みかつ図1に示す平面に対して垂直な方向の断面(樹脂層の表面の法線方向と平行な面)を模式的に示す断面図である。図2に示すように、支持体2上に、硬化領域1A及び未硬化領域1Bからなる樹脂層1が積層されており、硬化領域1Aの壁面(樹脂組成物の硬化物からなる周壁)Wに挟まれた領域内に未硬化領域1Bが存在している。このように、未硬化領域1B内の未硬化の樹脂組成物は、平面方向(矢印D1で模式的に示すような方向)に移動しないように樹脂組成物の硬化物で囲まれている。言い換えると、硬化領域1Aの壁面Wと、支持体の表面Sとが未硬化の樹脂組成物を収容する容器のように機能して、未硬化領域1B内の未硬化の樹脂組成物が平面方向に移動しないように、支持体上に配置されている。このように、硬化領域1Aは、未硬化領域1Bの周囲を囲う周壁(枠)のように機能する部位を有しており、未硬化領域1Bから周囲の領域に向かって(矢印D1で模式的に示すような方向に向かって)、未硬化の樹脂組成物が移動しないように、支持体の表面とともに未硬化の状態の樹脂組成物を収容(保持)している。
【0088】
以上、図1及び図2を参照して未硬化領域の状態について説明したが、本発明の樹脂積層体の実施形態(樹脂層の形態等)はこれに制限されるものではない。例えば、図1に示す未硬化領域の平面形状(未硬化領域の外周の平面形状:硬化領域との境界線により形成される形状)は円形であるが、未硬化領域の平面形状は、これに制限されるものではなく、いわゆる幾何学的形状であればよい。なお、ここにいう「幾何学的形状」は、円形、楕円形、多角形(より好ましくは正多角形:例えば正三角形、正方形、正五角形、正六角形、正八角形等)あるいはこれらを変形した種々の形状であってもよい。また、このような幾何学的形状(未硬化領域の平面形状)としては、円形、楕円形及び多角形からなる郡から選択される少なくとも1種の形状であることが好ましい(なお、ここにいう「多角形」には、通常の多角形の他、角が丸みを帯びた形状(いわゆる角丸の形状)も含む)。このような幾何学的形状の中でも、実装時に表面張力の働く方向とその力の大きさを制御し易いために、未硬化領域に実装する素子の形状と略同一形状であることが好ましい。例えば、正方形又は長方形の素子を実装する場合には、未硬化領域の平面形状がそれぞれ正方形又は長方形であることが好ましい。また、素子の移動等(自己整列化等)をより短時間で行うといった観点からは、未硬化領域の平面形状の大きさは、実装する素子に対して1.2倍~2.0倍の範囲の大きさとすることが好ましい。なお、図1及び図2に示す樹脂層においては未硬化領域は1つのみ形成されているが、未硬化領域の数は特に制限されず、複数の未硬化領域が規則的又は不規則に配列されて、樹脂層を平面視した場合に、樹脂層の表面に幾何学模様(幾何学パターン)を形成していてもよい。
【0089】
なお、前記樹脂層に形成された硬化領域は、その領域を構成する前記樹脂組成物の硬化物が前記未硬化領域の周囲を囲うように形成された構造部分(未硬化領域を囲う枠として機能するような部分:前記未硬化領域から前記樹脂組成物が平面方向に移動しないように囲い込むように形成された構造部分)を有する。このような硬化領域及び未硬化領域は、前述のように、樹脂組成物からなる塗膜を形成した後に、未硬化領域が所望の形状となるように形成されたマスクを利用して、光硬化させることで容易に形成させることができ、これにより、容易に前記未硬化領域及び前記硬化領域を有する樹脂層を形成することができる。
【0090】
また、このような硬化領域及び未硬化領域を有する樹脂層の膜厚は特に制限されず、その用途に応じて適宜調整すればよく、例えば、素子を配置するために利用する場合には、5μm~1000μmの範囲内とすることが好ましい。このような樹脂層の膜厚が、5μm未満であると、未硬化部に素子を配置した場合に、素子の沈み込みにより流動性の低下が起こり易くなる傾向にあり、他方、1000μmを超えると、膜の均一性の低下が起こり易くなる傾向にある。
【0091】
また、このような樹脂層の未硬化領域内の樹脂組成物(未硬化の樹脂組成物)は、60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度における粘度が100Pa・s以下(より好ましくは0.5~50Pa・s)のものである。このような樹脂組成物は、60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度における粘度が100Pa・s以下となるように、樹脂組成物中に含有させる各成分の種類及び量を適宜調整することにより達成することができる。すなわち、(A)成分や(B)成分等の各成分の種類及びその導入量等を適宜調整することで特定の温度領域で所望の粘度となるように樹脂組成物を形成することにより、60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度における樹脂組成物の粘度を100Pa・s以下とすることが可能となる。また、例えば、(A)成分をフルオレン骨格を有し重量平均分子量を1000~100000の範囲内とした樹脂を用いた樹脂組成物を調製することにより、60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度における粘度が100Pa・s以下の樹脂組成物を得ることが可能である。
【0092】
ここで、このような未硬化領域内の樹脂組成物の粘度の測定方法としては、測定装置としてレオメーターを用いて、測定温度を室温(23℃)~200℃の温度範囲で測定する方法を採用する。この場合、未硬化領域内の樹脂組成物と同様の未硬化の樹脂組成物からなる膜厚が200μmのフィルム(例えば、樹脂組成物の溶液の塗膜を乾燥したもの:この場合の乾燥条件は特に制限されず、溶剤の種類等に応じて適宜選択でき、110℃で10分間乾燥する条件を採用してもよい)を測定用の試料として準備し、レオメーターを用いて、室温(23℃)~200℃の温度範囲で昇温速度を5℃/minとし、荷重を7Nとする条件(周波数は1Hz)で、様々な温度で、粘度をそれぞれ測定する方法を好適に採用できる。なお、60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度で、前記粘度の条件(100Pa・s以下)を満たせば、素子の実装時の温度(60℃~150℃の範囲の温度)において、実装領域として利用する未硬化領域内の樹脂組成物の流動性を効率よく向上させることができ、配置した素子を所望の実装位置に高い位置精度で実装することが可能となるとともに素子の向きを所望の向きに制度よく回転(自己整列化)させて実装することも可能となる。そのため、例えば、60℃における粘度が100Pa・sを超えるものであっても、60℃~150℃の温度範囲内において、その他の温度(例えば90℃等)における粘度が100Pa・s以下となるような樹脂組成物であれば、本発明においては、60℃~150℃の温度範囲内のいずれかの温度における粘度が100Pa・s以下の樹脂組成物と判断する。このように、本発明においては、前記未硬化領域内の樹脂組成物は、前記温度範囲内のいずれかの温度で粘度が100Pa・s以下という条件を満たすものであればよい。なお、60℃~150℃の温度範囲内で実装を行う場合に、どのような昇温パターンで加熱するかを考慮して、特定の温度で粘度が100Pa・s以下になる樹脂組成物を設計することがより好ましい。また、このような未硬化領域内の樹脂組成物としては、より効率よく実装することが可能となることから、80℃~110℃の温度範囲内における粘度が100Pa・s以下の樹脂組成物であることがより好ましい。
【0093】
なお、本発明においては、樹脂層の未硬化領域内の樹脂組成物(未硬化の樹脂組成物)の粘度が、前記条件を満たすことから、その領域に素子を実装する場合に、樹脂層を60℃~150℃(より好ましくは80℃~110℃)の範囲内の実装温度に加熱した際に、未硬化領域の粘度を100Pa・s以下とすることが可能となり、これにより未硬化領域の流動性を高めて、その液面の表面張力によるセルフアライメント現象を利用することが可能となるため、素子を未硬化領域内において移動させて配置させることができ(複数の未硬化領域が存在する場合には各領域ごとに素子を自己整列化させることも可能となる)、本発明においては、所望の位置かつ所望の向きに素子を精度よく回転させて効率よく実装することが可能となるものと本発明者らは推察する。
【0094】
また、前記支持体と前記樹脂層とを備える本発明の樹脂積層体を製造するための方法としては、特に制限されないが、例えば、前記樹脂組成物の溶液を支持体の表面に塗布し、形成された塗膜に対してプリベークを施して溶剤を除去した後、溶剤除去後の前記塗膜の上にフォトマスクをあてて、放射線を照射(露光)して露光部を硬化(光重合)させることによって、前記樹脂組成物の硬化物からなる硬化領域(硬化部)と、未硬化の樹脂組成物からなる未硬化領域(未硬化部)を形成し、前記支持体上に、前記硬化領域と前記未硬化領域とを有する樹脂層を形成することで、本発明の樹脂積層体を得る方法を利用することができる。
【0095】
このような支持体に樹脂組成物の溶液を塗布する方法としては、特に制限されず、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等を用いることができる。このような方法によって、所望の厚さに塗布した後、プリベークにより溶剤を蒸発させて除去することにより、溶剤を除去した樹脂組成物からなる塗膜(被膜)を形成することができる。なお、このようなプリベークは、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行うことが好ましい。また、前記プリベークにおける加熱温度および加熱時間は、樹脂組成物中に含有されている溶剤の種類に応じて適宜選択すればよく、特に制限されない。例えば、加熱温度を60~110℃とし、かつ、加熱時間を1~30分間とする条件でプリベークを行ってもよい。
【0096】
このようなプリベーク後に行われる紫外線を照射(露光)は、公知の露光装置を用いて行ってもよい。また、このような露光に際しては、フォトマスクを介して露光することにより、フォトマスクのパターンに対応した部分(露光部)の樹脂組成物のみを感光させて硬化することができる。また、このような露光装置や放射線の照射条件は樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択すればよい。また、光源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を適宜用いることができる。このような光源を利用して露光を行うことにより、前記塗膜(被膜)中の前記露光部の樹脂組成物を光硬化させることができる。
【0097】
また、前記露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、放射線の波長の範囲は250~450nmであることが好ましい。このようにして、樹脂積層体を得ることができる。
【0098】
さらに、前記樹脂積層体を素子を実装するために利用する場合、未硬化領域への素子の配置(実装)方法は特に制限されないが、未硬化領域上に素子を置いた後、樹脂層を60℃~150℃(より好ましくは80℃~110℃)の範囲内の実装温度に加熱して、未硬化領域の粘度を100Pa・s以下とし、所望の位置かつ所望の向きに素子を配置せしめることにより実装する方法を採用することが好ましい。
【0099】
また、前記樹脂積層体を素子を実装するために利用する場合、素子を前記樹脂積層体の未硬化領域に配置(実装)した後、その未硬化領域に対して硬化(後硬化)を行う。このような後硬化の方法は特に制限されないが、未硬化領域に放射線を照射する方法を採用することができる。このように、未硬化領域に放射線を照射する方法としては、未硬化領域を露光する以外は、前記樹脂積層体を得る際に採用したプリベーク後の露光と同様の方法を採用できる。
【0100】
また、このように未硬化領域を硬化(後硬化)させた後には、必要に応じて180~250℃で、20~100分間、熱処理(ポストベーク)を施してもよい。ただし、製膜する支持体等の耐熱性が低い場合には、80~180℃で、30~100分間のポストベーク条件にできるように、樹脂組成物の配合を設計して、かかる条件でポストベークを施してもよい。また、このようなポストベークは、パターニングされた塗膜と支持体との密着性を高めるため等の目的で行われる工程である。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行うことが好ましい。
【0101】
このようにして、素子を前記樹脂積層体の未硬化領域に配置(実装)した後、未硬化領域を硬化させることにより、
前記樹脂積層体の前記樹脂層を硬化した硬化樹脂積層体と;前記硬化樹脂積層体中の硬化した樹脂層の前記未硬化領域が存在していた領域を実装領域として配置された素子を備える実装構造体を得ることができる。なお、このような実装構造体を利用する場合、必要に応じて支持体と素子が実装された硬化膜を剥離して利用してもよい。また、このような素子については、後述する。
【0102】
(実装構造体)
本発明の実装構造体は、上記本発明の樹脂積層体の前記樹脂層を硬化した硬化樹脂積層体と、前記硬化樹脂積層体中の硬化した樹脂層の前記未硬化領域が存在していた領域を実装領域として配置された素子とを備えるものである。
【0103】
また、このような実装構造体に実施する素子は、例えば、発光素子(発光ダイオード、半導体レーザ、エレクトロルミネッセンス(EL)素子など)、受光素子(フォトダイオード、CCDセンサ、MOSセンサなど)、電子素子(ICチップなど)などである。この素子は、半導体素子(発光素子、受光素子、電子走行素子など)のほか、圧電素子、焦電素子、光学素子(非線形光学結晶を用いる第2次高調波発生素子など)、誘電体素子(強誘電体素子を含む)、超伝導素子などの各種のものを含み、光エンコーダなどの各種のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に用いる微小な部品または要素であってもよい。素子の大きさ(チップサイズ)も特に制限されないが、例えば1mm以下あるいは例えば300μm以下あるいは例えば100μm以下の大きさのものである。基板上に実装する物体は、一つまたは複数であり、基板の用途や機能などに応じてその数、種類、配置、間隔などを適宜設計すればよい。
【0104】
このような実装構造体は、上記本発明の樹脂積層体の前記樹脂層の未硬化領域を実装領域として素子を配置した後、かかる未効果領域を硬化することにより得ることができる。このような製造方法は、上記本発明の樹脂積層体において説明している方法と同様の方法を採用できる。なお、本発明において「硬化樹脂積層体」とは、上記本発明の樹脂積層体の前記樹脂層を硬化させたものをいい、未硬化領域を硬化(後硬化:樹脂層を全面露光することにより硬化させてもよい)することで(硬化後、必要な場合には樹脂層全体をポストベークすることで)、効率よく形成することができる。
【実施例
【0105】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
(1)先ず、合成例1で使用する化合物の略称を以下に示す。なお、合成例中においては、化合物を下記略称で記載する。
BPFE:ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(上記一般式(5)で表される化合物(式中のArがベンゼン環のもの)、エポキシ当量256)
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
AA:アクリル酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0107】
(2)次に、合成例1で利用する化合物、合成例1で得られた重合性不飽和基含有化合物等の評価方法を以下に示す。
【0108】
[固形分濃度の測定]
固形分濃度は、合成例1で得られた重合性不飽和基含有化合物溶液(A)1g又は樹脂組成物(B)の溶液1gを用いて、それぞれガラスフィルター〔質量:W(g)〕に含浸させて秤量した後〔含浸後の質量:W(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の質量〔W(g)〕を測定して、次式(I)により求めた。
【0109】
〔固形分濃度(質量%)〕={(W-W)/(W-W)}×100 (I)。
【0110】
[エポキシ当量の測定]
合成例1で用いるBDPFのエポキシ当量は、BDPFをジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定することにより求めた。
【0111】
[酸価の測定]
合成例1で得られた重合性不飽和基含有化合物の酸価は、重合性不飽和基含有化合物溶液(A)をジオキサンに溶解させた後、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定することにより求めた。
【0112】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
合成例1で得られた重合性不飽和基含有化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuperH-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として求めた。
【0113】
[信頼性の評価]
測定試料として以下のようにして製造した評価用基板を利用し、測定装置としてタバイ・エスペック株式会社製の冷熱衝撃試験機TSB-1Lを用い、-65℃~125℃(さらし時間各5分)250サイクルの液相浸漬試験を行い、評価用基板において、ダンベル形状のパターン上に積層されている硬化膜に発生したクラックの発生数と、ダンベル形状のパターンの数との関係を求めて、樹脂組成物(B)の硬化物の信頼性を求めた。
【0114】
信頼性=[1-(クラック発生数/全パターン数)]×100(%)
〈評価用基板の調製〉
市販の両面銅張りFR-4基板(日立化成工業株式会社製MCL-E-67、銅配線厚み18μm)を用い、ダンベル形状のパターンが1350×4個描かれた評価用パターンを作製し、株式会社荏原電産ネオブラウンプロセスにより銅表面を粗化し、評価基板を得た。次に、前記評価基板上に樹脂組成物(B)の溶液をスピンコート法で20μm厚に塗布した。次いで、得られた塗膜を110℃で10分間加熱して溶剤を除去(乾燥)したのち、500Wの高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm(i-線)となるように露光して光硬化させ、これを現像液(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名V-2590D)を用いて現像したのち、空気雰囲気下に180℃、90分の条件でポストキュアして硬化させることにより、評価基板上に硬化膜が形成された評価用基板を得た。
【0115】
[解像度の評価法]
樹脂組成物(B)の溶液よりなる膜厚20μmの塗膜を形成し、その塗膜を110℃で10分間加熱して溶剤を除去(乾燥)したのち、500Wの高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm(i-線)となるように露光して光硬化させ、これを現像液(日鉄ケミカル&マテリアル社製、商品名V-2590D)を用いて現像した後、大気雰囲気下に180℃、90分の条件でポストキュアして硬化させ、硬化膜を得た。膜厚20μmで回路の形成を試みた場合に、回路として形成可能な最小のライン/スペースの線幅を測定し、その測定値(線幅)を解像度として評価とした。
【0116】
[耐熱性評価法]
測定試料として樹脂組成物(B)の溶液よりなる膜厚20μmの塗膜を形成し、その塗膜を110℃で10分間加熱して溶剤を除去(乾燥)し、樹脂組成物(B)よりなる膜を得た後、その膜を用いて公知の動的粘弾性法により、樹脂組成物(B)のガラス転移温度(Tg点)を測定した。
【0117】
[粘度の測定]
測定試料として、樹脂組成物(B)の溶液よりなる塗膜を形成した後に110℃で10分間加熱して溶剤を除去(乾燥)することにより得られる、未硬化の樹脂組成物(B)からなる膜厚200μmのフィルムを用い、かつ、測定装置としてレオメーター(アントンパール社製、商品名「MCR302」)を用いて、昇温速度5℃/min、荷重7Nの条件(周波数は1Hz)で、室温(23℃)~200℃までの温度範囲で、様々な温度において、樹脂組成物(B)の粘度を測定した。なお、樹脂組成物(B)の溶液を110℃で10分以上加熱する場合、加熱時間を変更(10分以上の範囲で変更)しても、得られる乾燥後のフィルムは基本的に同等の未硬化の樹脂組成物(B)からなるものと判断できるため(いずれも溶剤が十分に除去されて残存物は同等のものとなると判断できるため)、後述の各実施例において未硬化領域を形成する樹脂組成物(B)は、上記測定試料を形成する組成物と同等の組成物であるものとみなすことができる。
【0118】
(合成例1)
〈重合性不飽和基含有化合物の調製工程〉
還留冷却器付き250mLの四つ口フラスコ中に、BPFE(46.64g、0.09mol)、AA(13.12g、0.18mol)、TPP(0.24g)及びPGMEA(40.00g)を仕込み、100~105℃で12時間撹拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA(20.00g)を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0119】
次いで、得られた反応生成物にBPDA(13.45g、0.05mol)及びTHPA(6.96g、0.05mol)を仕込み、115~120℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有化合物溶液(A)を得た。このようにして得られた重合性不飽和基含有化合物溶液(A)の固形分濃度は57.3質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。また、溶液(A)中の重合性不飽和基含有化合物は、その原料等から、上記一般式(1)で表される化合物であることは明白である。
【0120】
〈樹脂組成物(B)の溶液の調製工程〉
固形分換算で60gの重合性不飽和基含有化合物溶液(A)、26gのトリメチロールプロパントリアクリレートエチレンオキサイド6モル付加物(東亞合成社製、商品名;アロニックスM-360)、12gのテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名;エピコートYX-4000)、0.08gの増感剤(ミヒラーケトン)、2gの光重合開始剤(チバガイギー社製、商品名;イルガキュアー651)及び100gのPGMEAを室温(23℃)で混合、分散させて、樹脂組成物(B)の溶液(溶剤:PGMEA、固形分:約50質量%)を得た。
【0121】
なお、得られた溶液中に含まれている樹脂組成物(B)について、上記評価方法を採用して評価を行った結果、樹脂組成物(B)は、信頼性;100%、解像度;20μm、Tg;200℃のものであった。なお、樹脂組成物(B)の各温度でのレオメーターで測定した粘度(上記「粘度の測定」の欄において説明した方法で測定した樹脂組成物(B)の各温度での粘度)は以下の通りである。
【0122】
<樹脂組成物(B)の粘度>
40℃:3000Pa・s
50℃:800Pa・s
60℃:300Pa・s
70℃:120Pa・s
80℃:50Pa・s
90℃:20Pa・s
100℃:10Pa・s
110℃:6Pa・s
120℃:4Pa・s
130℃:2Pa・s
140℃:2Pa・s
150℃:100Pa・s
160℃:1500Pa・s
170℃:30000Pa・s
180℃:80000Pa・s
200℃:80000Pa・s。
【0123】
(実施例1)
〈実装実験1-1〉
支持体としてガラス基板を用い、前記ガラス基板上に設けた実装領域に、搭載物として縦10mm×横10mm×厚さ20μmのアルミ製の基材を実装した。
【0124】
このような搭載物の実装に際しては、先ず、ガラス基板上に非実装領域に見立てた枠型を形成した。このような枠型は、枠の内部の平面形状が縦15mm、横15mmの正方形となり、かつ、枠の深さ(高さ)が750μmとなるように設計した。そして、このような枠型の内部の空間(縦15mm、横15mm、高さ750μmの空間)に、合成例1で得られた樹脂組成物(B)の溶液を流し込み、100℃30分加熱して溶剤を除去し、未硬化の樹脂組成物(B)からなりかつ平面形状が縦15mm、横15mmの正方形(幾何学的形状)である未硬化領域を形成した。なお、前記搭載物の実装に際しては、かかる未硬化領域を実装領域として利用した。また、前記搭載物としては、縦10mm×横10mm×厚さ20μmのアルミ製の基材を用意した。
【0125】
次に、ガラス基板上に形成された15mm×15mmの正方形(平面形状)の前記実装領域(前記未硬化領域)に、前記搭載物(10mm×10mmの正方形のアルミ製の基材)を埋め込むようにして配置(搭載)した。このようにして配置した直後の前記搭載物の中心は前記実装領域(枠型)の正方形の中心から位置ずれしており、また、前記搭載物の辺と前記実装領域の辺とは平行になっておらず、前記搭載物が角度ずれされた状態で配置されていた。
【0126】
次に、前記実装領域に前記搭載物が配置された上記ガラス基板を80℃に加熱した。なお、このような加熱により、実装領域内の樹脂組成物の粘度は100~1Pa・sの範囲の値(樹脂組成物(B)の80℃の粘度は50Pa・s)に低下し、これにより実装領域内の樹脂組成物の流動性が大幅に増大した。また、このような80℃の加熱により、前記実装領域に配置された前記搭載物(正方形のアルミ製の基材)は、前記実装領域の中心に向かって自然に(自ずと)移動しつつ、自然に(自ずと)ゆっくりと回転を初めた。そして、80℃に加熱し始めてから1分間経過した後には、前記搭載物(正方形のアルミ製の基材)の中心が、実装領域の中心に位置し、かつ、正方形の実装領域の辺と前記搭載物(正方形のアルミ製の基材)の辺とが平行に揃うように、搭載物が配置された状態となり、かかる状態で前記搭載物の動きが停止した。その後、前記実装領域内の樹脂組成物(B)を紫外線により全面露光し、実装領域を十分に硬化させた。このようして、前記搭載物(正方形のアルミ製の基材)を実装領域上に強固に固定して、ガラス基板上の実装領域に前記搭載物を実装した。
【0127】
このような実装実験1-1の結果から、実装温度(本実験では80℃)に加熱するといった簡便な工程のみで、実装領域内の樹脂組成物の粘度を100Pa・s以下とさせて、配置した搭載物を、所望の実装位置(設計上、実装領域の中心を実装位置として想定している)まで自ずと移動させて高い位置精度で効率よく実装することが可能となり、さらには、搭載物の向きが実装領域の形状に応じた向きになるように、搭載物を自ずと回転させることが可能となることが分かった。また、このように、加熱のみで自然に回転させて、搭載物の向きを実装領域の形状に応じた向きに揃えることが可能となることから、複数の実装領域を設けた場合には、搭載物を自己整列化(自己配列)させて実装することも可能であることが分かる。
【0128】
〈実装実験1-2〉
60~150℃までの温度範囲で、加熱温度を80℃から変更する以外は実装実験1-1と同様にした実験(実装実験1-2)を行い、温度の違いによる搭載物の動きの変化(目的の実装位置へ目的の方向に前記搭載物が配置されるまでの時間の長短)を確認した。このような実装実験1-2により、搭載物(正方形のアルミ製の基材)は、80℃~110℃の温度範囲で高い位置精度でかつ実装領域の形状に応じた向きに精度よく揃えて実装することが可能であることが確認された。なお、80℃~110℃の温度範囲における樹脂組成物(B)の粘度はいずれも100Pa・s以下であり、前記温度範囲内において実装領域内の樹脂組成物の流動性は十分に向上していた。
【0129】
(実施例2)
〈実装実験2-1〉
支持体としてガラス基板を用い、前記ガラス基板上に設けた実装領域に、搭載物として縦5mm×横5mm×厚さ0.1mmのシリコンチップを実装した。
【0130】
このような搭載物の実装に際しては、先ず、支持体としてガラス基板を用い、このガラス基板上に、合成例1で得られた樹脂組成物(B)の溶液を塗布して、厚み25μmの塗膜を形成した後、その塗膜を110℃で15分間加熱して溶剤を除去(乾燥)し、かかる塗膜の面上の縦10mm、横10mmの正方形状の領域に光が照射されないように、マスクを介して、支持体側から前記塗膜を露光して、樹脂組成物(B)の硬化物からなる硬化領域と、前記硬化領域に囲まれるように形成された、未硬化の樹脂組成物(B)からなる平面形状が縦10mm、横10mmの正方形状の未硬化領域とを形成して、ガラス基板上に、前記硬化領域と前記未硬化領域とを有する樹脂層を形成せしめた。そして、このようなガラス基板上の樹脂層においては、樹脂組成物(B)の硬化物からなる硬化領域を搭載物の非実装領域とし、かつ、平面形状が縦10mm、横10mmの正方形状の未硬化領域を搭載物の実装領域として利用して、かかる実装領域(前記未硬化領域)に縦5mm×横5mm×厚さ0.1mmの正方形状のシリコンチップを埋め込むようにして配置(搭載)した。このようにして配置した直後のシリコンチップ(正方形)の中心は実装領域(正方形)の中心から位置ずれしており、また、前記シリコンチップの辺と実装領域の辺とは平行になっておらず、前記搭載物が角度ずれされた状態で配置されていた。
【0131】
次に、前記実装領域に前記搭載物が配置された上記ガラス基板を80℃に加熱した。なお、このような加熱により、実装領域内の未硬化状態の樹脂組成物(B)の粘度は100Pa・s以下の値(樹脂組成物(B)の80℃の粘度は50Pa・s)に低下し、これにより実装領域内の樹脂組成物の流動性が大幅に増大した。また、このような80℃の加熱により、前記実装領域に配置された前記シリコンチップは、前記実装領域の中心に向かって自然に移動しつつ、自然にゆっくりと回転を初めた。そして、80℃に加熱し始めてから1分間経過した後には、前記シリコンチップ(正方形)の中心が実装領域(正方形)の中心に位置し、かつ、実装領域の辺と前記シリコンチップの辺とが平行に揃うように、前記シリコンチップが配置された状態となり、かかる状態で前記シリコンチップの動きが停止した。その後、前記実装領域内の樹脂組成物(B)を紫外線により全面露光し、実装領域を十分に硬化させた。このようして、前記前記シリコンチップを実装領域上に強固に固定して、ガラス基板上の実装領域に前記搭載物を実装した。
【0132】
このような実装実験2-1から、実装温度(80℃)に加熱するといった簡便な工程のみで、実装領域内の樹脂組成物の粘度を100Pa・s以下とさせて、配置した搭載物を、所望の実装位置(実装領域の中心)まで自ずと移動させて高い位置精度で効率よく実装することが可能となり、さらには、搭載物の向きが実装領域の形状に応じた向きになるように、搭載物を自ずと回転させることが可能となることが分かった。また、このように、加熱のみで自然に回転させて、搭載物の向きを実装領域の形状に応じた向きに揃えることが可能となることから、複数の実装領域を設けた場合には、搭載物を自己整列化(自己配列)させて実装することも可能であることが分かる。
【0133】
なお、上記実装実験2-1と実装実験1-1の結果から、搭載物の種類によらず、実装温度(本実験では80℃)において、実装領域内の樹脂組成物の粘度を100Pa・s以下とすることにより、所望の位置及び所望の向きに、搭載物を自然に移動させて、所望の実装構造体を効率よく製造できることが分かった。
【0134】
〈実装実験2-2〉
60~150℃までの温度範囲で、加熱温度を80℃から変更する以外は実装実験2-1と同様にした実験(実装実験2-2)を行い、温度の違いによる搭載物(シリコンチップ)の動きの変化(目的の実装位置へ目的の方向に前記搭載物が配置されるまでの時間の長短)を確認した。このような実装実験2-2により、前記搭載物は、80℃~110℃の温度範囲で高い位置精度でかつ実装領域の形状に応じた向きに精度よく揃えて実装することが可能であることが確認された。なお、80℃~110℃の温度範囲における樹脂組成物(B)の粘度はいずれも100Pa・s以下であり、前記温度範囲内において実装領域内の樹脂組成物の流動性は十分に向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0135】
以上説明したように、本発明によれば、素子を実装するための基板として利用した場合に、素子を高い位置精度で所望の実装位置に移動させて効率よく配置することが可能であるとともに、素子を所望の向きに精度よく回転させて効率よく配置することが可能な樹脂積層体、及び、その樹脂積層体を用いて得られる実装構造体を提供することが可能となる。したがって、本発明の樹脂積層体は、半導体素子等の素子を実装するための基板等として有用である。
【符号の説明】
【0136】
1…樹脂層、1A…樹脂層中の硬化領域、1B…樹脂層中の未硬化領域、2…支持体、B…未硬化領域の境界、W…硬化領域の壁面、S…支持体の表面。
図1
図2