IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-06
(45)【発行日】2024-12-16
(54)【発明の名称】リン含有難燃剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20241209BHJP
   C08G 18/46 20060101ALI20241209BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20241209BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20241209BHJP
【FI】
C08G18/38 078
C08G18/46 084
C08G18/50 075
C09K21/12
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020198645
(22)【出願日】2020-11-30
(62)【分割の表示】P 2019000978の分割
【原出願日】2014-04-15
(65)【公開番号】P2021059729
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2020-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】13163957.7
(32)【優先日】2013-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】バルボ ブロック,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】フェアビッツ,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】フレッケンシュタイン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】フプカ,ビルギット
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】北澤 健一
【審判官】小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/126179(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/126380(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/144726(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010312(US,A1)
【文献】特開昭49-003997(JP,A)
【文献】特開昭49-003996(JP,A)
【文献】特開昭49-006091(JP,A)
【文献】特開昭49-003998(JP,A)
【文献】特開昭49-000225(JP,A)
【文献】特表2013-526650(JP,A)
【文献】特表2014-515044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G2/00-85/00
C09K21/00-21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリオールと、一般式(I):
【化1】
[式中、Xは、Cl、Br、I、アルコキシ、又は水素を表し、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有化合物との反応によって得られる、又は得られたリン含有ポリオールであって、
前記リン含有ポリオールが、少なくとも1個の一般式(II):
【化2】
[式中、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有基を含み、
前記ポリオールが、エポキシドより製造されるポリエーテルポリオールからなる群から選択され、
R1及びR2の少なくとも1つが、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、アリール、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、又はC1~C16-アルキル-C6~C10-アリールを表し;
前記リン含有ポリオールが、2~4個のOH-官能価及び100~700g/モルの分子量を有し、
且つ
前記リン含有ポリオールのリン含有量が、7~12質量%であり、
前記リン含有ポリオールがハロゲンを含まない、
前記リン含有ポリオールが難燃剤である、
リン含有ポリオール。
【請求項2】
前記リンが、リン酸基、又はホスフィン酸基の形態で存在する請求項1に記載のリン含有ポリオール。
【請求項3】
前記リン含有ポリオールが、リン含有ポリオールの総質量に基づいて、7~12質量%のリン含有量を有する請求項1又は2に記載のリン含有ポリオール。
【請求項4】
少なくとも1種のポリオールと、一般式(I):
【化3】
[式中、Xは、Cl、Br、I、アルコキシ、又は水素を表し、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有化合物との反応によるリン含有ポリオールを調製する方法であって、
前記リン含有ポリオールが、少なくとも1個の一般式(II):
【化4】
[式中、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有基を含み、
前記ポリオールが、エポキシドより製造されるポリエーテルポリオールからなる群から選択され、
R1及びR2の少なくとも1つが、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、アリール、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、又はC1~C16-アルキル-C6~C10-アリールを表し;
前記リン含有ポリオールが、2~4個のOH-官能価及び100~700g/モルの分子量を有し、
且つ
前記リン含有ポリオールのリン含有量が、7~12質量%であり、
前記リン含有ポリオールがハロゲンを含まない、
前記リン含有ポリオールが難燃剤である、
方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のリン含有ポリオール、又は請求項4に記載の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの、難燃剤としての使用方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のリン含有ポリオール、又は請求項4に記載の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの、改善された燃焼特性を有するポリウレタンの調製のための使用方法。
【請求項7】
少なくとも1種のイソシアネート(a)、少なくとも1種のポリオール(b)、及び少なくとも1種の請求項1~3のいずれか1項に記載のリン含有ポリオール、又は請求項4に記載の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの反応を含むポリウレタンの調製方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のリン含有ポリオールが、使用される全ポリオールの総量の1~30%の量で使用される請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリオールと、本明細書において定義される一般式(I)のリン含有化合物との反応を含む方法によって得られる、又は得られたリン含有ポリオール、及び少なくとも1種のポリオールと、一般式(I)のリン含有化合物との反応を含むリン含有ポリオールを調製する方法に関する。さらに、本発明は、本明細書に開示されたリン含有ポリオールの難燃剤としての使用方法、ポリウレタンの調製方法、及びそのポリウレタン自体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー、具体的にはポリウレタン、さらに具体的にはポリウレタンフォームに難燃性を与えるための多くの異なる方法がある。第一の方法は、炎が可燃物質に到達するのを防ぐためのクラスト(crust)の形成である。熱加水分解生成物は、ポリマーマトリクスから酸素を除去し、ポリマーの表面に、炭素層の形成を引き起こす。この炭素層は、炎が、その層の下に位置するプラスチックの熱分解か酸化分解のいずれかを引き起こすのを防ぐ。使用される用語は、膨張(intumescence)である。リン含有化合物は、及びこれらの有機リン化合物が一緒になって、火災の際には、炭化クラストを形成するために、広く使用される。有機リン難燃剤は、主にリン酸エステル、ホスホン酸エステル、又は亜リン酸エステルに基づく。
【0003】
ハロゲン化合物もまた、難燃剤として使用される。リン含有難燃剤とは対照的に、これらは炎の気相内で作用する。ここでは、低反応性遊離ハロゲン基が、ポリマーの分解生成物から生じる種々の高反応性遊離基を除去し、これにより遊離基による火炎伝播を阻害する。ここで、臭素含有難燃剤が特に効果的である。他の効果的な難燃剤は、リン酸だけでなくハロゲン塩素も含み、これにより上記機構の両方によって作用するリン酸トリクロロイソプロピル(TCPP)である。
【0004】
しかしながら、ハロゲン系難燃剤、特に臭素含有難燃剤は、毒物学的、環境的、及び規制的理由により、望ましくない。ハロゲン含有難燃剤はまた、火災の際に煙濃度を増加する。したがって、ハロゲン含有難燃剤の全面的な回避の達成が、試みられている。
【0005】
公知のハロゲンを含まない(halogen-free)難燃剤の例は、メラニン又はアンモニウムポリリン酸塩のような固体の難燃剤である。これらの固体粒子は、ポリマー、特にポリウレタンフォームの特性に悪影響を有する。固体の難燃剤はまた、ポリウレタンの製造中に、特に問題を引き起こす。例として、ポリウレタンの製造は、好ましくは、溶液の形態の物を含む、液体の出発物質を使用する。固体粒子の使用は、通常ポリウレタンの製造で使用される混合物における分離現象をもたらし、その結果、バッチ処理の有効期限は、約1日である。さらに、固体難燃剤粒子は、例えば発泡プラントにおける計量ユニットを摩耗させる。前記難燃剤はまた、発泡プロセス中の化学プロセスに悪影響を有し、且つフォームの特性に悪影響を有する。
【0006】
リン酸トリエチル(TEP)又はホスホン酸ジエチルエタン(DEEP)のような多くの液体難燃剤は、例として、これらの不快臭を付与し、プラスチックからの放出に寄与する。さらに、液体難燃剤は、ポリウレタンフォームの製造中の発泡反応、及びフォームの特性、例えば機械的特性に悪影響を有する。公知の液体難燃剤はまた、しばしば可塑剤としても作用する。
【0007】
排出量に関連する問題に対処するため、ポリウレタン用に、組み込み可能な難燃剤が開発されている。Exolit(登録商標)OP560(Clariant製)のような組み込み可能な難燃剤は、一般に、イソシアネートに対して2個以下の官能価を有し、しばしばポリウレタンフォームにおける架橋密度を減少させ、それにより、特に硬質ポリウレタンフォームにおいて、フォームの特性を損なう。
【0008】
WO2003/104374A1、WO2004/076509A2、及びWO2005/052031A1は、ホスホン酸反応した、超分岐ポリアクリロニトリル ポリアクリルアミド、ポリアミド、及びポリアミンの、錆防止剤、潤滑剤、繊維添加剤、及び難燃剤としての使用を記載する。窒素含有構造は、フォーム形成プロセスの触媒反応に激しく影響を与えるので、前記化合物は、ポリウレタン、及び特にポリウレタンフォーム用に使用するために適していない。
【0009】
WO2010/080425A1は、所望の反応温度に溶媒中のパラホルムアルデヒドを加熱する工程であり、前記溶媒は、少なくともパラホルムアルデヒドを溶解又は懸濁するために必要な量で存在する工程;少なくとも1種のアルキルホスファイトを、加熱されたパラホルムアルデヒドに添加し、ホスホン酸ヒドロキシメチルを提供する工程であり、前記アルキルホスファイトは、加熱されたパラホルムアルデヒドに、著しい発熱、及び結果として生じる高い/著しいレベルの酸副生成物を回避又は抑制する速度で添加され、反応媒体中に、少なくとも1種のヒンダードアミン触媒で、そのアミンにおける窒素が、有機基の第2級及び/又は第3級炭素直接結合される触媒が存在する工程;及び任意に、前記添加の完了後、反応混合物を高温に加熱する工程、を含む、ホスホン酸ヒドロキシメチルを作製する方法を開示する。ポリウレタンの調製用に得られた生成物の使用もまた、開示される。得られたポリウレタンは、ホルムアルデヒドの放出に関連する問題を示す。
【0010】
EP474076B1において、Bayer AGは、ポリカーボネート用の難燃剤として、高度に分岐したポリリン酸塩を記載する、芳香族ジヒドロキシ化合物で、及びホスホン酸エステル又はポリリン化合物で作製されている、これらの物質の構造は、それらに、ポリウレタン製造に使用されるポリオールにおける低い溶解性を与え、このことは、ポリウレタンにおいて、この種類の化合物を処理することを困難にさせる。
【0011】
WO2007/066383は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド等の、リン化合物で反応された超分岐ポリエステル、及びこれらの樹脂用の難燃剤としての使用を記載する。エステル基の低い熱及び加水分解安定性が、不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】WO2003/104374A1
【文献】WO2004/076509A2
【文献】WO2005/052031A1
【文献】WO2010/080425A1
【文献】EP474076B1
【文献】WO2007/066383
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、ポリウレタンの製造においても使用され得る、ハロゲンを含まない難燃剤を提供することであった。
【0014】
本発明の別の目的は、その使用が、ポリマー、特にポリウレタン、具体的にはポリウレタンフォームにおいて、放出をもたらさず、且つ、ポリマー、特にポリウレタン、具体的にはポリウレタンフォームにおけるその使用が、特性、特に機械的特性の障害をもたらさない難燃剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、少なくとも1種のポリオールと、一般式(I):
【化1】
[式中、Xは、Cl、Br、I、アルコキシ、又は水素を表し、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有化合物との反応を含む方法によって得られる、又は得られたリン含有ポリオールによって達成される。
【0016】
本発明に従うリン含有ポリオールは、少なくとも1種のポリオールと、一般式(I):
【化2】
[式中、Xは、Cl、Br、I、アルコキシ、又は水素を表し、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有化合物との反応を含む、リン含有ポリオールを調製する方法であり、それもまた、本発明の対象である、方法によって調製され得る。
【0017】
解決策として、ポリアルコールの部分的なリン酸化反応に基づいて、本発明に従うリン含有ポリオールが見出された。合成は、安価な原材料に基づいて、容易な一段階反応である。出発物質として使用され得るポリオールの多様性に起因して、広範囲のリン含有ポリオールが、要望どおりに性能及び処理を調節するために、容易に得られ得る。
【0018】
本発明に従うリン含有ポリオールは、難燃剤として働き、且つ同時に、機械的特性を改善し得る(又は非反応性の難燃剤に関連して観察されるような特性の悪化を防止し得る)。本難燃剤は、リン含有量によって影響されるだけでなく、OH-官能価、及び相乗効果を示すポリアルコールの種類によっても影響される。
【0019】
部分的なリン酸化反応の程度を変えることによって、超分岐分子のヒドロキシル価は、軟質又は硬質フォームのいずれかに一般的な、OH価に調節され得る。したがって、そのリン含有ポリオールは、一般的なポリオールと容易に混合され得、発泡上の最小限の障害を示す。したがって、軟質及び硬質ポリウレタンフォーム用のオーダーメイドの(tailor-made)難燃剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のリン含有ポリオールは、少なくとも1個のリン含有基を含む。この少なくとも1個のリン含有基は、好ましくは一般式(II):
【化3】
[式中、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
の基である。
【0021】
R1及びR2は、同一又は異なって、好ましくはC1~C16-アルキル、C1~C16-アルコキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、又はアリールオキシである。Yは、好ましくはOであり、tは、好ましくは1である。
【0022】
R1及びR2は、同一であり、それぞれフェニル、メトキシ-フェニル、トリル、フリル、シクロヘキシル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、エトキシ、又はメトキシであることが特に好ましい。
【0023】
リン含有ポリオールはまた、2個以上の異なるリン含有基、好ましくは2個以上の異なる一般式(II)の基を含み得る。前記リンは、好ましくはリン酸基、又はホスフィン酸基(phosphinate group)の形態で存在する。
【0024】
したがって、さらなる実施形態によれば、本発明は、前記リンが、リン酸基、又はホスフィン酸基(phosphinate group)の形態で存在する、上記開示のリン含有ポリオールを対象とする。
【0025】
本発明に従う、少なくとも1個のリン含有基を含むリン含有ポリオールを製造するために、好ましくは少なくとも1種のポリオールを、一般式(I):
【化4】
[式中、Xは、Cl、Br、I、アルコキシ、又は水素を表し、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有化合物と反応させる。
【0026】
式(I)の化合物は、公知であり、市販され、又は文献周知の合成経路を使用することによって調製され得る。合成経路は、例として、Science of Synthesis 42(2008); Houben Weyl E1-2(1982); Houben Weyl 12(1963-1964)に記載されている。
【0027】
少なくとも1種のポリオール及び一般式(I)のリン含有化合物の反応は、塩基の存在下で行われ得る。
【0028】
適切な塩基の例は、水素化ナトリウム等の金属水素化物、又はトリエチルアミン若しくはヒューニッヒ塩基等の非求核アミン塩基、DBU等の二環式アミン、N-メチルイミダゾール、又はN-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、ピリジン、又はルチジン等の置換ピリジンである。トリエチルアミン及びN-メチルイミダゾールが、特に好ましい。ここで、塩基の使用され得る料は、一般に等モルである。しかしながら、塩基は、過剰に、又は、適切な場合、溶媒としても使用され得る。
【0029】
本発明に従うリン含有ポリオールの調製に使用されるポリオールは、一般に、少なくとも2個の反応性水素原子を有する、任意の適切なポリオール、例としては3~8個、好ましくは3、4又は5個の官能価、及び好ましくは100~700の分子量を有するものであり得る。したがって、例として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びそれらの混合物の群から選択されるポリオールを使用することができる。
【0030】
したがって、本発明のリン含有ポリオールは、好ましくは0~8個、好ましくは1~5個、特に2、3又は4個のOH-官能価を有する。したがって、さらなる実施形態によれば、本発明は、前記リン含有ポリオールが、0~8個のOH-官能価を有する、上記開示のリン含有ポリオールを対象とする。
【0031】
さらに、本発明のリン含有ポリオールは、好ましくは100~700g/モルの分子量を有する。したがって、さらなる実施形態によれば、本発明は、前記リン含有ポリオールが、100~700g/モルの分子量を有する、上記開示のリン含有ポリオールを対象とする。
【0032】
例として、ポリエーテルオールは、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシド等のエポキシドから、又はテトラヒドロフランから、活性水素を含む出発化合物、例えば、脂肪族アルコール、フェノール、アミン、カルボン酸、水、又は天然物質に基づく化合物、例えばスクロース、ソルビトール、又はマンニトールを、触媒の使用とともに使用することによって製造される。好ましくは、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドから製造されたポリエーテルオールが、ポリオールとして使用される。
【0033】
ポリオールは、好ましくは、2~800mgKOH/gの範囲の、特に25~250mgKOH/gの範囲の、さらに具体的には100~150mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0034】
出発物質の反応される量は、一般に所望の官能基化の程度に関して、化学量論量である。ポリオールのヒドロキシ官能価に関して過剰のリン成分を使用することが有利であり得る。ランダム部分リン酸化反応は、化学量論量より少ないリン成分を使用することによって達成され得る。使用される出発物質の比率は、少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールのリン含有量が、好ましくは少なくとも3質量%、特に好ましくは少なくとも5質量%、特に少なくとも7質量%であるようにされる。
【0035】
好ましくは少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールのリン含有量は、少なくとも3質量%、特に好ましくは4~12質量%の範囲、さらに好ましくは6~9質量%の範囲である。したがって、さらなる実施形態によれば、本発明は、前記リン含有ポリオールが、リン含有ポリオールの総質量に基づいて、3~12質量%のリン含有量を有する、上記開示のリン含有ポリオールを対象とする。
【0036】
式(I)の化合物の量と並行して、ここで規定されたリン含有量のための別の前提条件は、リン含有ポリオールにおける十分なOH基の存在である。これらの量は、リン含有ポリオールの製造中の反応の適切な実施を介して、特に、その変換、及びそれにより結果として得られるポリオールの分子量を制御する、少なくとも三官能性ポリオールの比率、及び反応時間を介して、調整され得る。ここで、ポリオールにおけるOH基の全て、又は一部がリン成分と反応される可能性がある。
【0037】
ここで、少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールを製造するための反応は、好ましくは溶媒の存在下で実施される。リン酸化反応のために適切な溶媒は、DMSO等の不活性有機溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、又はクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素である。さらに適切である溶媒は、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、又はテトラヒドロフラン等のエーテルである。さらに適切である溶媒は、ヘキサン、ベンゼン、又はトルエン等の炭化水素である。さらに適切である溶媒は、アセトニトリル、又はプロピオニトリル等のニトリルである。さらに適切である溶媒は、アセトン、ブタノン、又はtert-ブチルメチルケトン等のケトンである。前記溶媒の混合物を使用することも可能であり、溶媒なしで操作することも可能である。
【0038】
反応は、通常0℃から反応混合物の沸点以下の温度で、好ましくは0~110℃、特に好ましくは室温~110℃で実施される。
【0039】
反応混合物は、通常の方法で、例えば、ろ過、水との混合、相の分離、及び適切な場合、粗生成物のクロマトグラフィ精製によって、仕上げ処理される。生成物は、減圧で、且つわずかに上昇された温度で、揮発性成分が除かれるか、又は精製される、高粘度の油の形態をとる場合がある。結果として得られる生成物が固体である範囲で、精製方法はまた、再結晶又は蒸解(digestion)を使用することもできる。
【0040】
少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールは、難燃剤として使用される。本発明のリン含有ポリオールは、架橋ポリマーにおいて、例えば、ポリウレタンフォーム等のポリウレタンにおいて使用され得る。
【0041】
少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールが、熱可塑性ポリウレタンを含む、熱可塑性プラスチックにおいて使用される場合、少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールは、いずれの場合にも、リン含有基及びOH基の全体に基づいて、10%未満の、特に好ましくは2%未満の遊離OH基を含み、さらに具体的には遊離OH基を含まない。これは、本発明のリン含有ポリオールと一般式(II)の化合物との、適切な比率での反応を介して達成される。
【0042】
本発明の目的のため、ポリウレタンは、全ての公知のポリイソシアネート重付加生成物を含む。これらは、イソシアネート及びアルコールの付加物を含み、且つそれらは、イソシアヌレート構造、アロファネート構造、ウレア構造、カルボジイミド構造、ウレトンイミン構造、及びビウレット構造を含み得、さらにイソシアネート付加体を含み得る修飾ポリウレタンも含む。これらの本発明のポリウレタンは、具体的には熱硬化性樹脂等の固体ポリイソシアネート重付加生成物、及び軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォーム又はインテグラルフォーム(integral foam)等のポリイソシアネート重付加生成物に基づくフォーム、さらにポリウレタンコーティング、及びバインダを含む。本発明の目的のため、用語ポリウレタンはまた、ポリウレタン及びさらなるポリマーを含むポリマーブレンド、さらに前記ポリマーブレンドからなるフォームも含む。少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールが、ポリウレタンフォームを製造することに使用されることが好ましい。
【0043】
本発明の目的のため、ポリウレタンフォームは、DIN7726に従うフォームである。DIN53421/DIN EN ISO604に従う10%圧縮での本発明の軟質ポリウレタンフォームについての圧縮応力値、又はこれらのフォームの圧縮強度は、15kPa以下、好ましくは1~14kPa、特に4~14kPaである。DIN53421/DIN EN ISO604に従う10%圧縮での本発明の半硬質ポリウレタンフォームについての圧縮応力値は、15kPaより大きい~80kPa未満である。本発明の半硬質ポリウレタンフォームの、及び本発明の軟質ポリウレタンフォームの、DIN ISO4590に従う連続気泡係数(open-cell factor)は、好ましくは85%より大きく、特に好ましくは90%より大きい。本発明の軟質ポリウレタンフォーム、及び本発明の半硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 5に見出される。
【0044】
10%圧縮での本発明の硬質ポリウレタンフォームについての圧縮応力値は、80kPa以上、好ましくは120kPa以上、特に好ましくは150kPa以上である。さらに硬質ポリウレタンフォームのDIN ISO4590に従う独立気泡係数(closed-cell factor)は、80%より大きく、好ましくは90%より大きい。本発明の硬質ポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 6に見出される。
【0045】
本発明の目的のため、弾性ポリウレタンフォームは、DIN7726に従うポリウレタンフォームであり、これらは、DIN53577に従い、それらの厚さの50%に達する短時間の変形の10分後に、初期厚さの2%を超えて残留変形を示さない。本フォームは、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、又は軟質ポリウレタンフォームであり得る。
【0046】
インテグラルフォームは、成形プロセスの結果として、密度が中心部より高い、周縁域を有するDIN7726に従うポリウレタンフォームである。ここで、中心部及び周縁域を平均した全体の密度は、好ましくは100g/Lを超える。本発明の目的のため、インテグラルポリウレタンフォームもまた、硬質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、又は軟質ポリウレタンフォームであり得る。本発明のインテグラルポリウレタンフォームに関するさらなる詳細は、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 7に見出される。
【0047】
ここで、ポリウレタンは、イソシアネート(a)を、ポリオール(b)と、本発明に従うリン含有ポリオール(c)と、及び適切な場合、発泡剤(d)と、触媒(e)と、並びに他の助剤及び添加剤(f)とを混合し、反応混合物を調製し、且つ反応を完了させることによって得られる。
【0048】
従って、本発明は、少なくとも1種のイソシアネート(a)、少なくとも1種のポリオール(b)、及び少なくとも1種の上記開示の少なくとも1個のリン含有ポリオール、又は上記開示の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの反応を含むポリウレタンの調製方法を対象にする。
【0049】
本発明のポリウレタンを製造するために使用されるポリイソシアネート成分(a)は、ポリウレタンを製造するための公知の全てのポリイソシアネートを含む。これらは、先行技術から公知の脂肪族、脂環式、及び芳香族の二官能性、又は多官能性イソシアネート、及びそれらの任意の所望の混合物も含む。例としては、ジフェニルメタン2,2”-、2,4”-、及び4,4”-ジイソシアネート、モノマー性ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、及び多数の環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体(ポリマーMDI)の混合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びそのオリゴマー、トリレン2,4-又は2,6-ジイソシアネート(TDI)及びこれらの混合物、テトラメチレンジイソシアネート及びそのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びそのオリゴマー、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、並びにそれらの混合物である。
【0050】
トリレン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)又はこれらの混合物、モノマー性ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又は多数の環を有するジフェニルメタンジイソシアネート同族体(ポリマーMDI)並びにこれらの混合物を使用することが好ましい。その他の可能性のあるイソシアネートは、例として、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.2及び3.3.2に掲載されている。
【0051】
ポリイソシアネート成分(a)は、ポリイソシアネートプレポリマーの形態で使用され得る。前記ポリイソシアネートプレポリマーは、過剰の上記のポリイソシアネート(成分(a-1))を、ポリオール(成分(a-2))と、例えば30~100℃、好ましくは約80℃で反応させ、プレポリマーを生成することによって得られ得る。
【0052】
ポリオール(a-2)は、当業者に公知であり、例として、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.1に記載される。したがって、例として、使用されるポリオールは、(b)を受けて、以下に記載されるポリオールも含み得る。ここで、具体的な一実施形態において、ポリイソシアネートプレポリマーは、少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールも含み得る。
【0053】
使用され得るポリオールは、ポリウレタン製造用に公知であり、少なくとも2個の反応性水素原子を有する全ての化合物(b)、例えば2~8個の官能価、及び400~15000の分子量を有するものを含む。したがって、例として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びそれらの混合物の群から選択されるポリオールを使用することが可能である。
【0054】
例として、ポリエーテルオールは、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシド等のエポキシドから、又はテトラヒドロフランから、活性水素を含む出発化合物、例えば、脂肪族アルコール、フェノール、アミン、カルボン酸、水、又は天然物質に基づく化合物、例えばスクロース、ソルビトール、又はマンニトールを、触媒の使用とともに使用することによって製造される。ここで、塩基性触媒、又は複金属シアン化物触媒に関して、例として、PCT/EP2005/010124、 EP90444、又は WO05/090440に記載される通り、言及され得る。
【0055】
例として、ポリエステルオールは、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸から、及び多官能性アルコールから、ポリチオエーテルポリオールから、ポリエステルアミドから、ヒドロキシ基を含むポリアセタールから、及び/又はヒドロキシ基を含む脂肪族リン含有ポリオールから、好ましくはエステル化触媒の存在下で製造される。他の可能性のあるポリオールは、例として、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.1に記載される。
【0056】
ポリオール(b)はまた、鎖延長剤及び架橋剤も含む。鎖延長剤及び架橋剤のモル質量は、400g/モル未満であり、ここでイソシアネートに対して反応性の2個の水素原子を有する分子について使用される用語が、鎖延長剤であり、一方、イソシアネートに対して反応性の2個より多い水素を有する分子について使用される用語が、架橋剤である。ここで、鎖延長剤又は架橋剤を除外することが可能であるけれども、鎖延長剤又は架橋剤、あるいは適切であれば、それらの混合物の添加は、例えば硬度等の機械的特性を改善するために有利であることが判明している。
【0057】
鎖延長剤及び/又は架橋剤が使用される場合、ポリウレタンの製造用に公知である鎖延長剤及び/又は架橋剤を使用することが可能である。これらは、好ましくはイソシアネートに対して反応性の官能基を有する低分子量化合物であり、例としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、グリコール、及びジアミンである。他の可能性のある低分子量鎖延長剤及び/又は架橋外は、例として、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.2及び3.3.2に記載される。
【0058】
少なくとも1個のリン含有基を含む本発明のリン含有ポリオールは、成分(c)として使用される。ここで、少なくとも1個のリン含有基を含むリン含有ポリオール(c)(以下、リン含有ポリオール(c)とも称する)の比率は制限を受けず、主に、達成すべき難燃性の程度によって決まる。
【0059】
さらに、本発明によれば、リン含有ポリオールを、ポリウレタンの調製のために使用されるポリオール(b)に、例えば、適切な分子量を選択することによって、適応させることが可能である。したがって、例えば、調製されるポリウレタンの機械的特性を改善することが可能である。本発明によれば、2種以上の異なるリン含有ポリオールの混合物を使用することも可能である。
【0060】
ここで、リン含有ポリオールの比率は、例として、いずれの場合にも、成分(a)~(e)の総質量に基づいて、0.1~50質量%、好ましくは1~40質量%、特に好ましくは2~30質量%で変化し得る。ここで、完成したポリウレタン中のリン含有量は、いずれの場合にもポリウレタンの総質量に基づいて、好ましくは0.01~10質量%、特に好ましくは0.05~5質量%、特に0.1~5質量%である。
【0061】
使用されるポリオールの総量に基づいて、使用されるリン含有ポリオールの比率は調節され得る。例として、軟質フォームの調製については、ポリオールの総量に基づく、リン含有ポリオールの比率は、1~30%の範囲、好ましくは5~20%の範囲である。例として、硬質フォームの調製については、ポリオールの総量に基づく、リン含有ポリオールの比率は、2~50%の範囲、好ましくは10~40%の範囲である。
【0062】
さらなる実施形態によれば、本発明は、少なくとも1種のリン含有ポリオールが、使用される全ポリオールの総量の1~30%の量で、又は使用される全ポリオールの総量の2~50%の量で使用される、上記開示のポリウレタンの調製方法を対象とする。
【0063】
本発明の反応混合物は、ポリウレタンが、ポリウレタンフォームの形態をとることを目的とする場合、好ましくは発泡剤(d)も含む。ここで、ポリウレタンを製造するために公知の任意の発泡剤を使用することが可能である。これらは、化学的及び/又は物理的発泡剤を含み得る。これらの発泡剤は、例として、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.4.5に記載される。ここで、用語「化学的発泡剤」は、イソシアネートとの反応を介してガス状生成物を生じる化合物に使用される。これらの発泡剤の例は、水及びカルボン酸である。ここで、用語「物理的発泡剤」は、ポリウレタン製造用の出発物質に溶解又は乳化されており、ポリウレタン形性の条件下で蒸発する化合物に使用される。例として、これらは、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及びペルフルオロヘキサン等のペルフルオロアルカン、フルオロクロロカーボン、及びエーテル、エステル、ケトン、アセタール、及び/又は液状の二酸化炭素等のその他の化合物である。ここで、発泡剤の使用量は、所望通りであり得る。発泡剤の使用量は、好ましくは結果として得られるポリウレタンフォームの密度が、10~1000g/L、特に好ましくは20~800g/L、特に25~200g/Lになるような量である。
【0064】
使用される触媒(e)は、通常ポリウレタン製造用に使用される任意の触媒を含み得る。これらの触媒は、例として、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.4.1に記載される。ここで、使用されるものの例としては、有機金属化合物、好ましくは有機スズ化合物、例えば、酢酸スズ、オクタン酸スズ、エチルヘキサン酸スズ、及びラウリン酸スズ等の有機カルボン酸のスズ塩、及び二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、及び二酢酸ジオクチルスズ等の有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)、あるいはネオデカン酸ビスマス(III)、2-エチルヘキサン酸ビスマス、及びオクタン酸ビスマス等のカルボン酸ビスマス、又は混合物である。他の可能性のある触媒は、塩基性アミン触媒である。これらの例としては、2,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン等のアミジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N-メチル-、及びN-エチル-N-シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-アザ-ビシクロ[3.3.0]オクタン、及び好ましくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の第三級アミン、並びにトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチル-、及びN-エチル-ジエタノールアミン、及びジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン化合物である。使用される触媒(e)は、金属触媒の、及び塩基性アミン触媒の混合物を含む。
【0065】
特に、比較的大過剰のポリイソシアネートが使用される場合、使用され得る他の触媒は、トリス(ジアルキルアミノアルキル)-s-ヘキサヒドロトリアジン、好ましくはトリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)-s-ヘキサヒドロトリアジン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、及びナトリウムメトキシド、カリウムイソプロポキシド等のアルカリ金属アルコラート、並びにギ酸カリウム、又はギ酸アンモニウム、若しくは対応する酢酸塩若しくはオクタン酸塩等のカルボン酸のアルカリ金属又はアンモニウム塩である。
【0066】
使用され得る触媒(e)の濃度の例は、成分(b)の質量に基づいて、触媒又は触媒組合せの形態で0.001~5質量%、特に0.05~2質量%である。
【0067】
助剤及び/又は添加剤(f)を使用することも可能である。ここで、ポリウレタンを製造するための公知の任意の助剤及び添加剤を使用することが可能である。例として、界面活性物質、泡安定剤、気泡調整剤、離型剤、フィラー、染料、顔料、難燃剤、加水分解安定剤、並びに静真菌性及び静菌性物質に関して言及され得る。これらの物質は、例として、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 3.4.4及び3.4.6~3.4.11に記載される。
【0068】
本発明のポリウレタンを製造する場合、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、リン含有ポリオール(c)及び、適切な場合、発泡剤(d)の反応される量は、一般にポリイソシアネート(a)のNCO基の、成分(b)、(c)、適切な場合(d)における反応性水素原子の総数に対する等量比が、0.75~1.5:1、好ましくは0.80~1.25:1になるような量である。発泡プラスチック(cellular plasitic)が、少なくともいくつかのイソシアヌレート基を含む場合、ポリイソシアネート(a)のNCO基の、成分(b)、(c)、適切な場合(d)における反応性水素原子の総数に対する使用される等量比は、通常1.5~20:1、好ましくは1.5~8:1である。ここで、1:1の比率は、イソシアネートインデックスの100に相当する。
【0069】
本発明の製造されるポリウレタンが、熱可塑性ポリウレタン、軟質フォーム、半硬質フォーム、硬質フォーム、又はインテグラルフォームである場合、本発明のポリウレタンを製造するために使用される具体的な出発物質(a)~(f)の間に、それぞれ量的及び質的な相違点がほんの少しある。したがって、例として、固体ポリウレタンは、発泡剤を使用せず、熱可塑性ポリウレタン用に、使用される出発物質は、主として厳密に二官能性である。例として、本発明のポリウレタンの弾性及び硬度を変化させるため、少なくとも2個の反応性水素原子を有する比較的高分子量化合物の官能価、及び鎖長を使用することも可能である。修飾のタイプは、当業者に公知である。
【0070】
例として、固体ポリウレタンを製造するための出発物質は、EP0989146又はEP1460094に記載され、軟質フォームを製造するための出発物質は、PCT/EP2005/010124及びEP1529792に記載され、半硬質フォームを製造するための出発物質は、“Kunststoffhandbuch,Band 7,Polyurethane” [Plastics handbook,volume 7, Polyurethanes],Carl Hanser Verlag,3rd edition,1993,chapter 5.4に記載され、硬質フォームを製造するための出発物質は、PCT/EP2005/010955に記載され、及びインテグラルフォームを製造するための出発物質は、EP364854、U.S.Pat.No.5,506,275、又はEP897402に記載される。いずれの場合にも、リン含有ポリオール(c)も、前記文献に記載された出発物質に添加される。
【0071】
本発明の別の実施形態において、リン含有ポリオール(c)は、OH基を有する。ここで、リン含有ポリオール(c)は、好ましくは、官能価、及びOH価に関して、結果として得られるポリマーの機械的特性にほとんど障害がないか、又は実際に、それらの改善があるように適合される。同時に、加工プロファイル(processing profile)の変化は最小化される。この種類の適合は、例として、化合物(c)のOH価及び官能価が、ポリウレタン製造用に使用されるポリオールのOH価及び官能価の領域の範囲内であるものにおいて達成され得る。
【0072】
リン含有ポリオール(c)が、OH基を有する場合、軟質ポリウレタンフォームの製造は、好ましくは、リン含有ポリオール(c)として、2~200mgKOH/g、特に好ましくは10~180mgKOH/g、特に20~100mgKOH/gのOH価を有し、好ましくは2~4、特に好ましくは2.1~3.8、特に2.5~3.5であるOH官能価を有する化合物を使用する。
【0073】
リン含有ポリオール(c)が、OH基を有する場合、硬質ポリウレタンフォームの製造は、好ましくは、リン含有ポリオール(c)として、2~800mgKOH/g、特に好ましくは50~600mgKOH/g、特に100~400mgKOH/gのOH価を有し、好ましくは2~8、特に好ましくは2~6であるOH官能価を有する化合物を使用する。
【0074】
リン含有ポリオール(c)が、OH基を有する場合、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の製造は、好ましくは、リン含有ポリオール(c)として、2~600mgKOH/g、特に好ましくは10~400mgKOH/g、特に20~200mgKOH/gのOH価を有し、好ましくは1.8~2.2、特に好ましくは2.9~2.1、特に2.0であるOH官能価を有する化合物を使用する。
【0075】
ポリイソシアヌレートフォームが、ポリイソシアネート(a)のNCO基の、化合物(b)、(c)、並びに適切な場合、(d)及び(f)における反応性水素原子の総数に対する比率を、1.5~20:1で使用して、製造される場合、成分(c)のOH官能価は、好ましくは2~3であり、好ましくは20~800mgKOH/g、特に好ましくは50~60mgKOH/g、特に100~400mgKOH/gであるOH価を有する。
【0076】
しかしながら、全ての場合において、任意のリン含有ポリオール(c)を使用することも可能である。
【0077】
ここで、少なくとも1個のリン含有基を含むリン含有ポリオール(c)は、ポリオール(b)に可溶性であることが好ましい。ここで、「可溶性である」は、その後にポリウレタンを製造するために使用される量に相当する比率での、ポリオール成分(b)及び成分(c)の混合物において、50℃で24時間静置後に、肉眼で確認できる第2相が、形成されていないことを意味する。ここで、溶解性は、例として、成分(c)又は、本発明のリン含有ポリオールの、それぞれ、例えばアルキレンオキシドを使用することによる官能化を介して改善され得る。
【0078】
本発明はまた、上記開示のリン含有ポリオール、又は上記開示の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの、難燃剤としての使用方法を対象とする。さらに、本発明は、上記開示のリン含有ポリオール、又は上記開示の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの、改善された燃焼特性を有するポリウレタンの調製のための使用方法を対象とする。
【0079】
本発明はまた、上記開示のポリウレタンの調製方法によって得られる、又は得られたポリウレタンを対象とする。さらなる実施形態によれば、本発明は、前記ポリウレタンが、ポリウレタンフォームである上記開示のポリウレタンを対象とする。
【0080】
本発明は、以下の実施形態を含み、これらは、それらに規定されたそれぞれの相互依存性によって示されるように、実施形態の具体的な組合せを含む。
【0081】
1.少なくとも1種のポリオールと、一般式(I):
【化5】
[式中、Xは、Cl、Br、I、アルコキシ、又は水素を表し、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有化合物との反応を含む方法によって得られる、又は得られたリン含有ポリオール。
【0082】
2.前記リンが、リン酸基、又はホスフィン酸基の形態で存在する実施形態1に記載のリン含有ポリオール。
【0083】
3.前記リン含有ポリオールが、0~8個のOH-官能価を有する実施形態1又は2に記載のリン含有ポリオール。
【0084】
4.前記リン含有ポリオールが、リン含有ポリオールの総質量に基づいて、3~12質量%のリン含有量を有する実施形態1~3のいずれかに記載のリン含有ポリオール。
【0085】
5.前記リン含有ポリオールが、100~700g/モルの分子量を有する実施形態1~4のいずれかに記載のリン含有ポリオール。
【0086】
6.少なくとも1種のポリオールと、一般式(I):
【化6】
[式中、Xは、Cl、Br、I、アルコキシ、又は水素を表し、
Yは、O又はSを表し、
tは、0又は1であり、
R1及びR2は、独立して、C1~C16-アルキル、C2~C16-アルケニル、C2~C16-アルキニル、C1~C16-アルコキシ、C2~C16-アルケノキシ、C2~C16-アルキノキシ、C3~C10-シクロアルキル、C3~C10-シクロアルコキシ、アリール、アリールオキシ、C6~C10-アリール-C1~C16-アルキル、C6~C10-アリール-C1~C16-アルコキシ、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリール、C1~C16-アルキル-C6~C10-アリールオキシを表す。]
のリン含有化合物との反応を含む、リン含有ポリオールを調製する方法。
【0087】
7.前記リンが、リン酸基、又はホスフィン酸基の形態で存在する実施形態6に記載の方法。
【0088】
8.前記リン含有ポリオールが、0~8個のOH-官能価を有する実施形態6又は7に記載の方法。
【0089】
9.前記リン含有ポリオールが、リン含有ポリオールの総質量に基づいて、3~12質量%のリン含有量を有する実施形態6~8のいずれかに記載の方法。
【0090】
10.前記リン含有ポリオールが、100~700g/モルの分子量を有する実施形態6~9のいずれかに記載の方法。
【0091】
11.実施形態1~5のいずれかに記載のリン含有ポリオール、又は実施形態6~10のいずれかに記載の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの、難燃剤としての使用方法。
【0092】
12.実施形態1~5のいずれかに記載のリン含有ポリオール、又は実施形態6~10のいずれかに記載の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの、改善された燃焼特性を有するポリウレタンの調製のための使用方法。
【0093】
13.少なくとも1種のイソシアネート(a)、少なくとも1種のポリオール(b)、及び少なくとも1種の実施形態1~5のいずれかに記載のリン含有ポリオール、又は実施形態6~10のいずれかに記載の方法に従って得られる、若しくは得られたリン含有ポリオールの反応を含むポリウレタンの調製方法。
【0094】
14.前記少なくとも1種のリン含有ポリオールが、使用される全ポリオールの総量の1~30%の量で使用される実施形態13に記載の方法。
【0095】
15.実施形態13又は14に記載の方法によって得られる、又は得られたポリウレタン。
【0096】
16.前記ポリウレタンが、ポリウレタンフォームである実施形態15に記載のポリウレタン。
【実施例
【0097】
本発明を説明するため、実施例が使用される。
【0098】
1.リン含有ポリオールの合成
6Lミニプラント反応器中で、ポリオール(エトキシ化グリセロール(>1<6,5モルEO);787g、2.5モル)を、塩化メチレン(3L)及びトリエチルアミン(323g、3.2モル)に、不活性雰囲気下(N-不活性化)で溶解した。クロロリン酸ジフェニル(839g、3.1モル)を45分間で添加した(添加速度:1119g/時)。反応温度は、クロロリン酸ジフェニルの添加中、33℃を超えなかった。添加完了の後、反応混合物を、還流条件で(内部温度:42℃)、その後、室温で、さらに12時間撹拌した。
【0099】
その後、反応混合物を、それぞれ、水(1×1.5L)、NaOH(1×1.0L、5%w/w)、及び水(2×1.0L)で、続いて抽出した。水相を廃棄した。結果として生じた有機相を、MgSO(1.5kg)で一晩乾燥し、ガラスフィルターフリット(D3)を用いてろ過した。フィルターケーキを、追加の塩化メチレン(0.5L)で洗浄した。水相を合せて、塩化メチレンを、真空で蒸留によって、定量的に除去した(最終条件:700Pa(7mbar)、80℃)。
【0100】
生成物を透明な無色の油として単離した(1087g)。
【0101】
OH価:DIN53240に従って、100mgKOH/g;
酸価:DIN EN ISO2114に従って、<0.5mgKOH/g。
リン含有量:7.4%(元素分析)。
【0102】
2.ポリウレタンの合成
2.1 軟質ポリウレタンフォームの合成
ポリウレタンフォームを、表1及び表2に示した通り、まず、金属触媒及びイソシアネートを除く全ての成分を混合することによって製造した。その後、適切な場合、金属触媒を添加し、同様に撹拌することによって包含させた。イソシアネートを分けて秤量し、その後、ポリオール成分に添加した。混合物を反応が開始するまで混合し、その後、プラスチックフィルムを敷いた金属箱中に注ぎ込んだ。いずれの場合もバッチの総量は1800gであった。フォームは、一晩でその反応を完了し、のこぎりで切断して、試験片を作製した。
【0103】
【表1】
【0104】
以下の化合物を使用した:
ポリオール1:グリセリンに基づく、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール;OH価:35mgKOH/g;官能価:2.7
ポリオール2:スチレン-アクリロニトリルに基づくグラフトポリオール;固形分含有量:45%;グリセリンに基づくポリオキシプロピレンオキシエチレンポリオール;OH価:20mgKOH/g;官能価:2.7
触媒系1:金属触媒及びアミン触媒からなる標準触媒系
触媒系2:ギ酸で部分的にキャップされたアミン触媒
イソシアネート1:トルエン2,4-、及び2,6-ジイソシアネートの混合物
P-ポリオール1:クロロリン酸ジフェニル及びポリオール3の縮合生成物;OH価:8mgKOH/g;P含有量7.9%
P-ポリオール2:ジフェニルクロロフィネート及びポリオール4の縮合生成物;OH価:137mgKOH/g;P含有量7.3%
P-ポリオール3:クロロリン酸ジフェニル及びポリオール4の縮合生成物;OH価:112mgKOH/g;P含有量7.3%
TCPP:リン酸トリス(クロロイソプロピル)、市販ハロゲン含有難燃剤、P含有量9.46%
ポリオール3:プロポキシ化グリセリン;OH価:400mgKOH/g。
ポリオール4:エトキシ化不利セリン;OH価:535mgKOH/g。
【0105】
特性を測定するために、以下の方法を使用した。
【0106】
密度(kg/m):DIN EN ISO845
圧縮強度(kPa):DIN EN ISO3386
反発弾性(%):DIN EN ISO8307
空気透過性(dm/s):DIN EN ISO7231
難燃性:カリフォルニアTB117A。
【0107】
カリフォルニアTB117Aは、軟質PUフォームのための垂直の小規模のバーナー試験である。試料片の寸法は、30.5×7.5×1.3cmである。フォームを3.8cmn火炎で12秒間火をつける。
【0108】
試験は、
(a)全ての試験片の最大平均燃焼長さが、15cmより小さい。
(b)それぞれの試験片の最大燃焼長さが、20cmより小さい。
(c)平均後燃焼時間が、5秒間以下である。
(d)各試験片の個々の後燃焼時間が、10秒間以下である。
(e)平均後白熱時間が、15秒間以下である。
(f)試験は、104℃、24時間の調整前後で実施される。
である場合に、合格である。
【0109】
試験が、全ての試験片で合格である場合、又は1試験片が合格せず、さらなる5試験片が合格の場合、仕様が満たされる。表1は、本発明のハロゲンを含まない軟質ポリウレタンフォームが、同様又はより高いリン含有量を有する市販のTCPPを使用して調製された比較例のフォームのものと同様以上の、非常に優れた難燃性を示すことを表す。
【0110】
本発明に従う難燃剤の存在にもかかわらず、フォームの機械的特性は、障害を受けるより、むしろ改善されることも見出される。
【0111】
2.2 硬質ポリウレタンフォームの合成
硬質ポリウレタンフォームを表2に要約したように調製した。
【0112】
以下の製剤を使用した:
・46.5部のテレフタル酸及びDEGに基づくポリエステルポリオール、OH価:243mgKOH/g
・25部のプロポキシ化ソルビトール、OH価:495mgKOH/g
・6部のポリエチレングリコール、OH価:190
・20部の難燃剤
・2.5部の安定剤Niax L-6635(Momentive社から入手)
・0.7部の酢酸カリウム
・0.4~0.7部のNiax A1(Momentive社から入手)
・1.3~1.6部の水
・7部のn-ペンタン
・190のNCO-インデックスを与える量のLupranat M50(NCO含有量31.5%を有するBASF社のポリマーMDI)。
【0113】
ポリオール、安定剤、難燃剤、触媒、及び発泡剤を混合し撹拌する。続いてイソシアネートを、撹拌しながら添加し、全体の混合物を硬質ポリウレタンフォームに発泡させる。触媒の量を調節することによって、いずれの場合も硬化時間は45秒間である。密度は、発泡剤の量を介して、一定の45g/Lに調節する。
【0114】
【表2】
【0115】
以下の難燃剤を使用した:
P-ポリオール4:ジフェニルクロロフィネート及びポリオール4の縮合生成物;OH価:127mgKOH/g;P含有量6.9%
P-ポリオール5:ジフェニルクロロフィネート及びポリオール4の縮合生成物;OH価:75mgKOH/g;P含有量7.9%
DPK:リン酸ジフェニルクレジル
【0116】
不粘着時間(tack free time)は、撹拌開始時から、フォームが、ロッドと接触したときに、いかなる粘着効果もほとんど認められなくなる時までの時間として規定される。不粘着時間は、重合の有効性のための指標である。
【0117】
ボルト(bolt):成分の混合3、4、及び5分後、半径10mmの球状キャップを有する鋼製ボルトを、形成されたフォームに、引張圧縮疲労試験装置によって、10mm押し付ける。これを達成するために必要な最大力(N)が、フォームの効果の程度の指標である。フォームの脆弱性の指標として、ボルト試験において、フォームの表面が、目に見える破砕帯を示す時間を測定する。破砕帯が出現するのが早いほど、フォームの脆弱性が高い。
【0118】
燃焼性試験(flaming test)を、EN ISO11925-2に従って実施する。
【0119】
圧縮強度、及びE-モジュールを、DIN53421/DIN EN ISO604に従って測定した。
【0120】
表2における実施例は、本発明に従うハロゲンを含まない硬質ポリウレタンフォームが、ハロゲン含有の比較例のフォームと同様又は等しい、優れた燃焼防護性を示すことを実証する。さらに、改善された機械的特性、及びより低い火炎高さが、観察される。
【0121】
2.3 PIR硬質フォームの合成
ポリイソシアヌレート硬質フォームを表3に要約したように調製した。
【0122】
以下の製剤を使用した:
・65部の無水フタル酸及びDEGに基づくポリエステルポリオール、OH価:215mgKOH/g
・8部のポリエチレングリコール、OH価:190mgKOH/g
・25部の難燃剤
・2部の安定剤TegostabB8462(Evonik社から入手)
・0.7部のギ酸カリウム
・1.4~1.6部のNiax A1(Momentive社から入手)
・1.5~1.7部のギ酸、85%
・9部のn-ペンタン
・330のNCO-インデックスを与える量のLupranat M50(NCO含有量31.5%を有するBASF社のポリマーMDI)。
【0123】
ポリオール、安定剤、難燃剤、触媒、及び発泡剤を混合し撹拌する。続いてイソシアネートを、撹拌しながら添加し、全体の混合物を硬質ポリウレタンフォームに発泡させる。触媒の量を調節することによって、いずれの場合も硬化時間は45秒間である。密度は、発泡剤の量を介して、一定の45g/Lに調節する。
【0124】
【表3】
【0125】
以下の難燃剤を使用した:
・P-ポリオール6:ジフェニルクロロフィネート及びポリオール4の縮合生成物;OH価:123mgKOH/g;P含有量7.1%
・TEP:リン酸トリエチル
【0126】
BKZ5-試験:スイス基準(Swiss norm)BKZ/Vに従う火炎試験において、火炎高さをcmで測定する。
【0127】
曲げ強度:DIN53423に従って測定する。曲げは、フォームの成長方向に実施する。
【0128】
表3における実施例は、本発明に従うハロゲンを含まない硬質ポリウレタンフォームが、改善された圧縮強度、及び曲げ強度と合せて、優れた燃焼防護性を示すことを実証する。